説明

新規の豚サーコウイルス2型及びその用途

【課題】新規の豚サーコウイルス2型及びその用途を提供する。
【解決手段】宿主細胞で複製能にすぐれる新規のPCV2及びその用途を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規の豚サーコウイルス2型及びその用途に関する。
【背景技術】
【0002】
豚サーコウイルス2型(PCV2:porcine circovirus type 2)は、小さく(直径17ないし22nm)、正20面体型(icosahedral)、外皮のない単鎖円形ゲノムを含むDNAウイルスである。PCV2は、PCV1(porcine circovirus type 1)と約80%の配列同一性を有している。しかし、PCV1が一般的に非病原性であるのに比べ、PCV2に感染した豚は、離乳後、全身消耗性症候群(PMWS:porcine multisystemic wasting syndrome)、豚呼吸器複合疾病(PRDC:porcine respiratory disease complex)、PCV2による腸炎、PCV2に起因する生殖器疾患、豚皮膚炎腎臓炎症候群(PDNS:porcine dermatitis nephritis syndrome)、萎縮、呼吸器症状、下痢、黄疸及び胃潰瘍を含んだ症状を引き起こす。PCV2は、サーコウイルス科(circoviridae)の一員である。PCV2ゲノムは、ウイルスDNA−ポリメラーゼをコーディングせず、その感染サイクルの完成は、細胞酵素に依存する。
【0003】
PCV2が豚に接種された場合、ウイルス複製は、多くの変異(variation)がある。PCV2は、PRRSV(porcine reproductive and respiratory syndrome virus)または豚パルボウイルス(porcine parvovirus)のような他のウイルスと同時に接種される場合、さらに多く複製されるということが観察されている(非特許文献1,2)。
【0004】
PCV2に感染された細胞の培地中でのPCV2の力価は、一般的に3.4ないし4.5log10TCID50/mlであると知られている。特許文献1には、豚サーコウイルスを、培養培地中の連続動物細胞株の細胞に接種する段階と、前記連続動物細胞株をエンドゾーム・リソゾームシステム酸性化の一つ以上の抑制剤の存在下で、培地中で培養する段階と、前記培地及び/または感染された連続動物細胞株から、前記豚サーコウイルスを分離する段階とを含む豚サーコウイルスのインビトロ(in vitro)培養方法が開示されている。
【0005】
前記先行技術によっても、宿主細胞で高い複製能を有する新しいPCV2が相変らず要求されている。特に、エンドゾーム・リソゾームシステム酸性化の一つ以上の抑制剤のようなウイルス複製促進剤を別途に付加せずとも、複製能にすぐれるウイルスが依然として要求されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第7,566,562号明細書
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Allan et al.,(2000) Arch Virol.145,2421-2429
【非特許文献2】Allan et al.,(2000) J Vet Med B.47,81-94
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の一具体例は、宿主細胞で複製能にすぐれる新規のPCV2ウイルスを提供することである。
【0009】
本発明の他の具体例は、宿主細胞で複製能にすぐれる新規のPCV2ウイルスを不活性化させる方法を提供することである。
【0010】
本発明の他の具体例は、宿主細胞で複製能にすぐれる新規のPCV2ウイルスの不活性化された形態を含む免疫原性組成物を提供することである。
【0011】
本発明の他の具体例は、前記免疫原性組成物を利用し、動物においてPCV2ウイルスの感染を予防または治療する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記課題を解決するために、本発明は、不活性化されたサーコウイルスPCV2 GC0504及びPCV2 GC0505からなる群から選択された一つ以上の不活性化されたウイルスを含む、動物のサーコウイルス感染を治療または予防するための組成物を提供する。
【0013】
前記課題を解決するために、本発明はまた、サーコウイルスPCV2 GC0504及びPCV2 GC0505からなる群から選択された一つ以上のウイルスをホルマリンと反応させて不活性化されたサーコウイルスを得る段階を含む、不活性化されたサーコウイルスを生産する方法を提供する。
【0014】
前記課題を解決するために、本発明はまた、有効量の前記組成物を動物に投与する段階を含む、動物のサーコウイルス感染を治療または予防する方法を提供する。
【0015】
前記課題を解決するために、本発明はまた、配列番号1のヌクレオチド配列を有するゲノムを含むサーコウイルスPCV2 GC0504を提供する。
【0016】
前記課題を解決するために、本発明はまた、配列番号4のヌクレオチド配列を有するゲノムを含むサーコウイルスPCV2 GC0505を提供する。
【発明の効果】
【0017】
本発明の一具体例によるサーコウイルスPCV2 GC0504及び/またはPCV2 GC0505は、宿主細胞で高い複製能を有する。
【0018】
本発明の一具体例による組成物によれば、多様なPCV2a及びPCV2bのうち、一つ以上のウイルスに対して免疫原性を有することができる。
【0019】
本発明の一具体例による不活性化されたサーコウイルスを生産する方法によれば、不活性化されたサーコウイルスを生産できる。
【0020】
本発明の一具体例による動物へのサーコウイルスの感染を治療または予防する方法によれば、PCV2a及びPCV2bのうち、一つ以上のウイルス感染から動物を効率的に予防または治療できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】PCV2の濃度によって、リアルタイムPCRを行った結果を示すグラフである。
【図2】子豚に、実験群別のPCV2単独攻撃接種後、鼻腔を介したPCV2排出を測定した結果を示すグラフである。
【図3】子豚に、実験群別のPCV2とPRRSVとの混合攻撃接種後、鼻腔を介したPCV2排出を測定した結果を示すグラフである。
【図4】子豚に、実験群別のPCV2単独攻撃接種後、糞便を介したPCV2排出を測定した結果を示すグラフである。
【図5】子豚に、実験群別にPCV2とPRRSVとの混合攻撃接種後、糞便を介したPCV2排出を測定した結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の一具体例は、不活性化されたサーコウイルスPCV2(PCV2:porcine circovirus type 2) GC0504及びPCV2 GC0505からなる群から選択される一つ以上の不活性化されたウイルスを含む、動物でサーコウイルスの感染を治療または予防するための組成物を提供する。
【0023】
前記PCV2 GC0504は、配列番号1のヌクレオチド配列を有するゲノム配列を有するものでありうる。前記ゲノムは、それぞれ配列番号1の51番ないし992番の配列によって構成されるORF1ヌクレオチド配列、及び配列番号1の1037番ないし1735番の配列に相補的な配列によって構成されるORF2ヌクレオチド配列を有するものでありうる。ORF1ヌクレオチド配列は、正鎖(positive strand)であり、レプリカ剤蛋白質をコーディングできる。ORF2ヌクレオチド配列は、負鎖(negative strand)であり、キャプシド(capsid)蛋白質をコーディングできる。前記OFR1蛋白質及びORF2蛋白質は、それぞれ配列番号2及び3のアミノ酸配列を有するものでありうる。
【0024】
前記PCV2 GC0504は、宿主細胞で高い増殖性を有しており、ウイルス粒子を得るのに有利である。従って、前記PCV2 GC0504は、不活性化サーコウイルス・ワクチンを製造するのに効率的に使われうる。前記PCV2 GC0504は、例えば、8%ウシ胎児血清(FBS)が補充されたダルベッコ・フォークト変法イーグル最小必須培地(DMEM)(DMEM 900ml、FBS 100ml、ストレプトマイシン100μg/ml、ペニシリン200IU/ml及びカナマイシン100μg/ml)培地中で、単層が形成されたPK−15細胞の培地を除去した後、トリプシン処理を行って細胞を切除し、104.6TCID50/0.1mlのPCV2を細胞浮遊液に添加して接種し、37℃で3,4日間静置培養した後、細胞に対して三回凍結融解を反復して細胞を完全に破壊した後、2,500rpmで15分間遠心分離した後で得られた上層液でのウイルス含有量が、平均105.6TCID50/ml以上、例えば105.6ないし106.0TCID50/mlと高い増殖性を有するものでありうる。前記高い増殖性は、増殖促進剤、例えば、グルコサミン不在下でも達成されうる。
【0025】
前記PCV2 GC0505は、配列番号4のヌクレオチド配列を有するゲノム配列を有するものでありうる。前記ゲノムは、それぞれ配列番号4の51番ないし992番のヌクレオチド配列からなるOFR1のヌクレオチド配列、及び配列番号4の1036番ないし1734番のヌクレオチド配列に相補的なヌクレオチド配列からなるOFR2のヌクレオチド配列を有するものでありうる。ORF2ヌクレオチド配列は、負鎖であり、キャプシド蛋白質をコーディングできる。前記OFR1蛋白質及びORF2蛋白質は、それぞれ配列番号5及び6のアミノ酸配列を有するものでありうる。
【0026】
前記PCV2 GC0505は、宿主細胞で高い増殖性を有しており、ウイルス粒子を得るのに有利である。従って、前記PCV2 GC0505は、不活性化サーコウイルス・ワクチンを製造するのに効率的に使われうる。前記PCV2 GC0505は、例えば、8%ウシ胎児血清(FBS)が補充されたDMEM(DMEM900ml、FBS100ml、ストレプトマイシン100μg/ml、ペニシリン200IU/ml及びカナマイシン100μg/ml)培地中で、単層が形成されたPK−15細胞の培地を除去した後、トリプシン処理を行って細胞を切除し、104.6TCID50/0.1mlのPCV2を細胞浮遊液に添加して接種し、37℃で3,4日間静置培養した後、細胞に対して三回凍結融解を反復して細胞を完全に破壊した後、2,500rpmで15分間遠心分離した後で得られた上層液でのウイルス含有量が、平均105.6TCID50/ml以上、例えば、105.6ないし106.0TCID50/mlと高い増殖性を有するものでありうる。前記高い増殖性は、増殖促進剤、例えば、グルコサミン不在下でも達成されうる。
【0027】
サーコウイルスPCV2 GC0504及びPCV2 GC0505からなる群から選択された一つ以上のウイルスは、それらウイルスのゲノム配列から、当業界に公知の方法によって生産されうる。前記ウイルスの生産は、例えば、前記ゲノム配列をPCV2の宿主細胞または宿主動物に投与し、投与された宿主細胞または宿主動物から、感染性あるPCV2ウイルスを分離することによってなされうる。前記宿主細胞は、PK−15細胞でありうる。前記宿主動物は、豚でありうる。例えば、前記ウイルスの生産は、配列番号1または2のヌクレオチド配列を有するサーコウイルスPCV2 GC0504またはPCV2 GC0505のゲノムDNAを得て、前記DNAを組換えベクターに導入した後、PCV2の宿主細胞または宿主動物に投与し、投与された宿主細胞または宿主動物から、感染性あるPCV2ウイルスを分離することによってなされうる。例えば、配列番号1または2のPCV2 GC0504またはPCV2 GC0505のゲノムDNAは、DNA合成法によって準備されうる。前記合成は、ゲノムDNAの全部またはその断片の形態で合成できる。断片の形態で合成された場合、前記合成された断片を連結(ligation)し、前記ゲノムDNAを準備できる。前記連結には、DNA連結酵素(ligation enzyme)及びDNAキナーゼ(kinase)などの酵素が使われうる。PCV2 GC0504またはPCV2 GC0505のゲノムDNAは、約1.8kbの長さを有するものであり、当業界に公知の技術によって容易に合成されうる。前記合成されたゲノムDNAは、それ自体またはベクターに導入された形態で、宿主細胞または宿主動物に投与されうる。前記ウイルスの生産は、例えば、援用によってその全体内容が本明細書に含まれる米国特許公開第2004/0253270A1号公報(例えば、0084ないし0086、実施例2ないし5及び図1)及びFenaux,Mら(J.Vir.Jan.2002,p.541-551)に記載された方法によってなされうる。それらの方法をPCV2 GC0504またはPCV2 GC0505を生産するのに作用させれば、合成されたゲノムDNAをテンプレートとして、唯一の制限酵素部位、例えばSAcII部位を有するフォワード及びリバースのプライマー対を使用し、PCV2 GC0504またはPCV2 GC0505の全長ゲノムをポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を介して増幅できる。PCV2ゲノム連続ダイマー(tandem dimer)を含むDNAクローンを得るために、前記PCR産物をベクター、例えば、TAge plasmid vector(Clontech,Palo Alto,Clif)に連結させ、大腸菌DH5a能力細胞(competent cell)を形質転換させることができる。形質転換された細胞からベクターを分離し、全長ゲノムの存在を確認し、前記制限酵素、例えば、SAcIIで前記ベクターを切り、切除されたPCV2ゲノムDNAを、DNAリガーゼ(ligase)を使用して互いに連結することによって、連続ダイマーを製造できる。その後、前記連続ダイマーは、pBluescript SK(+) vector(pSK)(Stratagene Inc.,La Jolla,Calif.)にクローニングされ、PCV2ゲノムの連続ダイマーを含む組換えプラスミド(以下、PCV2分子DNAクローン(PCV2 molecula rDNA clone)とする)が製造されうる。次に、前記PCV2分子DNAクローンは、PK−15細胞にインビトロ(in vitro)トランスフェクション(transfection)されうる。前記トランスフェクションされた細胞を培養した後、細胞を破砕した後でウイルスを分離することによって、前記PCV2ウイルスを得ることができる。このように得られたPCV2ウイルスは、インビボ(in vivo)で宿主動物、例えば豚に接種例えば、鼻腔を介して接種され、前記動物から分離されうる。
【0028】
前記不活性化されたサーコウイルスPCV2 GC0504及びPCV2 GC0505は、宿主細胞に感染せずに病理学的症状を引き起こさずに免疫原性を有するもの、または宿主細胞に感染するが、病理学的症状を引き起こさずに免疫原性を有するものでありうる。前記病理学的症状は、サーコウイルスと関連した業界で公知のサーコウイルスの宿主感染によって引き起こされる細胞、組織または個体で発生する症状でありうる。前記病理学的症状は、例えば、先天性振戦(congenital tremor)、離乳後の全身性消耗性症候群(PMWS:postweaning multisystem wasting syndrome)、衰弱(wasting)、呼吸困難(dyspnea)、頻呼吸(tachypnea)、黄疸、下痢、せき、中枢神経系不安、体重損失、急性血管炎(Langohr,2010,Vet pathol.Vol 47,p140-147)、繁殖疾患(流産、死産、ミイラ胎児など)(Hansen,2010,Vet Microbiol.,Epub ahead of print)及び豚皮膚炎腎炎症候群(PDNS:porcine dermatitis nepropathy syndrome)からなる群から選択される一つ以上の症状でありうる。
【0029】
前記不活性化(attenuation)は、当業界に公知の任意の方法によってなされうる。例えば、前記不活性化は、細胞、例えばPK−15細胞のような細胞株で継代培養(repeated passage)したり、ウイルス関連のエンドヌクレアーゼの活性化によってなされうる。また、前記不活性化は、化学的方法、例えば、前記ウイルスをホルムアルデヒド(ホルマリン)、パラホルムアルデヒド、β−プロピオラクトンまたはエチレンイミンあるいはその誘導体に曝露させること、またはUV(ultraviolet)照射によってなされうる。前記不活性化の一例として、前記PCV2 GC0504及びPCV2 GC0505からなる群から選択された一つ以上のウイルスを、ホルムアルデヒドと反応させることによって、不活性化されたものでありうる。前記反応でホルムアルデヒドは、反応液の総重量に対して、0.2ないし0.5重量%の量で含まれるものでありうる。前記反応は、室温で撹拌、例えば100rpmで10ないし24時間なされうる。
【0030】
前記組成物は、対象動物でPCV2の感染によって引き起こされる病理学的症状を治療または予防するためのものでありうる。前記病理学的症状は、例えば、先天性振戦、離乳後の全身性消耗性症候群(PMWS)、衰弱、呼吸困難、頻呼吸、黄疸、下痢、せき、中枢神経系不安、体重損失、及び豚皮膚炎腎炎症候群(PDNS)からなる群から選択される一つ以上の症状でありうる。
【0031】
前記組成物において、前記組成物に含まれるPCV2 GC0504及びPCV2 GC0505の量は、選択される動物、疾病の軽重、年齢及び組成物の剤形などによって、当業者が適切に選択できる。例えば、PCV2 GC0504及びPCV2 GC0505の量は、それぞれ一回容量当たり104.5TCID50以上の量、例えば、104.5TCID50ないし106.5TCID50の量で含まれるものでありうる。
【0032】
前記組成物において、感染を予防または治療する対象である前記サーコウイルスは、PCV2a及びPCV2bからなる群から選択されるものでありうる。例えば、前記サーコウイルスは、PCV2a及びPCV2bを含むものでありうる。PCV2は、現在までPCV2a,2b 2つの遺伝型に分類されると報告されており、PCV2aとPCV2bとの二種の遺伝型は、さらに細部ストレイン(strain)には分類されないと知られている。従って、本発明の一具体例による不活性化されたPCV2 GC0504及びPCV2 GC0505を含む前記組成物は、PCV2aまたはPCV2bに属するウイルス、すなわちPCV2を、いずれも防御できる。
【0033】
前記組成物は、獣医学的に許容可能な担体をさらに含むことができる。前記担体は、前記組成物の免疫原性を維持するために当業界に公知の任意のものになりうる。例えば、前記担体は、希釈剤、賦形剤、アジュバント(adjuvant)及び凍結乾燥安定化剤(freeze-drying stabilizer)からなる群から選択された一つ以上を含むものでありうる。前記希釈剤は、例えば、滅菌水を含んだ水及びバッファからなる群から選択される一つ以上になりうる。前記アジュバントは、前記PCV2 GC0504及びPCV2 GC0505の免疫原性を増大させることができるものであり、当業界に公知の任意のものでありうる。例えば、前記アジュバントは、水酸化アルミニウム、サポニン、ポリホスファゼン及びmontanide gel(登録商標)からなる群から選択される一つ以上でありうる。前記凍結乾燥安定化剤は、例えば、ソルビトール、マニトール、澱粉、蔗糖、デキストリンまたはブドウ糖のような炭水化物、アルブミンまたはカゼインのような蛋白質、それら化合物の誘導体またはアルカリ金属リン酸塩のようなバッファになりうる。前記担体は、選択される担体の種類などによって、当業者がその量を適切に決定できる。前記組成物は、例えば、組成物総重量を基準に前記担体は、5%ないし15%の量で含まれるものでありうる。
【0034】
本発明の一具体例は、前記組成物で、前記PCV2 GC0504及びPCV2 GC0505は、1ml当たり104.5TCID50以上の量、例えば、104.5TCID50ないし106.5TCID50の量で含み、組成物総重量を基準に、5%ないし15%のmontanide gel(登録商標)を含むものでありうる。montanide gel(登録商標)(SEPPIC、Paris、France)は、合成ポリマーと水性ゲルとからなる組成物である。
【0035】
前記組成物は、免疫原性組成物として当業界に公知の任意の剤形でありうる。前記組成物は、非経口または経口型剤形の形態でありうる。前記組成物は、例えば、凍結乾燥された形態、顆粒剤、散剤、液剤、錠剤、カプセル剤、または乾燥シロップ剤または注射剤の形態でありうる。凍結乾燥された形態は、使用前に滅菌された液体担体、例えば滅菌水に溶かして使用できる。
【0036】
前記組成物の投与は、免疫原性組成物を投与する方法に係わる当業界に周知の任意の方法によって投与されうる。例えば、静脈内、筋肉内、経口、経皮(transdermal)、粘膜、鼻内(intranasal)、気管内(intratracheal)または皮下投与のような任意の投与経路を介して個体に投与できる。前記組成物は、全身的にまたは局部的に投与されうる。
【0037】
前記組成物において、前記動物は、豚、マウス及びモルモット(guinea pig)からなる群から選択されるものでありうる。
【0038】
本発明の他の具体例は、サーコウイルスPCV2 GC0504及びPCV2 GC0505からなる群から選択された一つ以上のウイルスをホルマリンと反応させて不活性化されたサーコウイルスを得る段階を含む、不活性化されたサーコウイルスを生産する方法を提供する。
【0039】
前記反応は、前記ホルマリンを含む反応溶液中に、前記ウイルスを添加して放置することによってなされうる。前記ホルマリンは、反応溶液総重量に対して、0.2ないし0.5重量%の量で含まれるものでありうる。前記反応は、室温でなされうる。反応時間は、10時間ないし24時間でありうる。前記反応は、撹拌、例えば、100rpmで撹拌しつつなされうる。
【0040】
本発明の他の具体例は、有効量の前記のような本発明の一具体例による組成物を動物に投与する段階を含む、動物のサーコウイルス感染を治療または予防する方法を提供する。
【0041】
前記投与は、免疫原性組成物を投与する方法に係わって、当業界に周知の任意の方法によってなされうる。前記投与は、経口または非経口で投与されるものでありうる。前記投与は、例えば、静脈内、筋肉内、経口、経皮、粘膜、鼻内、気管内、直腸内または皮下投与するものでありうる。前記投与は、前記組成物を全身的にまたは局部的に投与するものでありうる。前記投与は、注射(injection)または注入(infusion)によってなされるものでありうる。
【0042】
前記投与は、一回以上、例えば二回以上投与されるものでありうる。前記投与は、二回投与されるものであり、例えば、一回投与後の二週間後に、二回目の投与を行うものでありうる。前記投与の対象になる動物は、豚、マウス及びモルモットからなる群から選択されるものでありうる。
【0043】
前記「有効量(effective amount)」は、動物でPCV2の感染を予防または治療するのに効果的な量を意味する。前記治療または予防というのは、動物でPCV2の感染を防止するだけではなく、PCV2感染によって引き起こされる症状を除去及び減少させるものを含む。前記有効量は、選択される動物、疾病の軽重、年齢及び組成物の剤形などによって、当業者が適切に選択できるのである。例えば、前記有効量は、一回容量当たりそれぞれ104.5TCID50以上の量、例えば、104.5TCID50ないし106.5TCID50の量のPCV2 GC0504及びPCV2 GC0505ウイルスをそれぞれ含む量でありうる。
【0044】
前記組成物については、前記の通りである。前記動物は、PCV2感染によって病理学的症状が引き起こされる任意の動物になりうる。例えば、前記動物は、豚、マウス及びモルモットからなる群から選択されるものでありうる。
【0045】
本発明の他の具体例は、配列番号1のヌクレオチド配列を有するゲノムを含むサーコウイルスPCV2 GC0504を提供する。
【0046】
前記ゲノムは、それぞれ配列番号1の51番ないし992番の配列によって構成されるORF1ヌクレオチド配列、及び配列番号1の1037番ないし1735番の配列に相補的な配列によって構成されるORF2ヌクレオチド配列を有するものでありうる。ORF1ヌクレオチド配列は、正鎖であり、レプリカ剤蛋白質をコーディングできる。ORF2ヌクレオチド配列は、負鎖であり、キャプシド蛋白質をコーディングできる。前記OFR1蛋白質及びORF2蛋白質は、それぞれ配列番号2及び3のアミノ酸配列を有するものでありうる。
【0047】
前記サーコウイルスPCV2 GC0504は、配列番号1のゲノム配列によって発現されるウイルス粒子であるならば、いずれのものも含む。前記サーコウイルスPCV2 GC0504は、配列番号2及び3のアミノ酸配列からなる前記OFR1及びORF2からなる一つ以上のアミノ酸配列をウイルス粒子中に含むものでありうる。前記サーコウイルスPCV2 GC0504は、PCV2−2aウイルスである。
【0048】
前記PCV2 GC0504は、宿主細胞で高い増殖性を有しており、不活性化サーコウイルス・ワクチンを製造するのに効率的である。前記PCV2 GC0504は、例えば、8%ウシ胎児血清(FBS)が補充されたDMEM(DMEM 900ml、FBS 100ml、ストレプトマイシン100μg/ml、ペニシリン200IU/ml及びカナマイシン100μg/ml)培地中で単層が形成されたPK−15細胞の培地を除去した後、トリプシン処理を行って細胞を切除し、104.5TCID50/0.1mlのPCV2を細胞浮遊液に添加して接種し、37℃で3,4日間静置培養した後、細胞に対して三回凍結融解を反復して細胞を完全に破壊した後、2,500rpmで15分間遠心分離した後で得られた上層液でのウイルス含有量が、平均105.6ないし106.0TCID50/mlと高い増殖性を有するものでありうる。PCV2 GC0504は、PCV2−2aに属するウイルスである。
【0049】
前記サーコウイルスPCV2 GC0504は、不活性化される場合、多種のPCV2aのストレインに対して免疫原性を有することができる。
【0050】
本発明の他の具体例は、配列番号2のヌクレオチド配列を有するゲノムを含むサーコウイルスPCV2 GC0505を提供する。
【0051】
前記PCV2 GC0505は、配列番号4のヌクレオチド配列を有するゲノム配列を有するものでありうる。前記ゲノムは、それぞれ配列番号4の51番ないし992番のヌクレオチド配列からなるOFR1のヌクレオチド配列、及び配列番号4の1036番ないし1734番のヌクレオチド配列に相補的なヌクレオチド配列からなるOFR2のヌクレオチド配列を有するものでありうる。ORF1ヌクレオチド配列は、正鎖であり、レプリカ剤蛋白質をコーディングできる。ORF2ヌクレオチド配列は、負鎖であり、キャプシド蛋白質をコーディングできる。前記OFR1蛋白質及びORF2蛋白質は、それぞれ配列番号5及び6のアミノ酸配列を有するものでありうる。前記PCV2 GC0505は、前記配列番号4のゲノムによって発現されるウイルス粒子であるならば、いずれのものも含む。前記PCV2 GC0505は、例えば、配列番号5及び6のアミノ酸配列からなる前記OFR1及びORF2からなる一つ以上のアミノ酸配列をウイルス粒子中に含むものでありうる。PCV2 GC0505は、PCV2−2bに属するウイルスである。
【0052】
前記PCV2 GC0505は、宿主細胞で高い増殖性を有しており、不活性化サーコウイルス・ワクチンを製造するのに効率的である。前記PCV2 GC0505は、例えば、8%ウシ胎児血清(FBS)が補充されたDMEM(DMEM 900ml、FBS 100ml、ストレプトマイシン100μg/ml、ペニシリン200IU/ml及びカナマイシン100μg/ml)培地中で単層が形成されたPK−15細胞の培地を除去した後、トリプシン処理を行って細胞を切除し、104.5TCID50/0.1mlのPCV2を細胞浮遊液に添加して接種し、37℃で3,4日間静置培養した後、細胞に対して三回凍結融解を反復して細胞を完全に破壊した後、2,500rpmで15分間遠心分離した後で得られた上層液でのウイルス含有量が、平均105.6TCID50/ml以上、例えば105.6ないし106.0TCID50/mlと高い増殖性を有するものでありうる。
【0053】
前記サーコウイルスPCV2 GC0505は、不活性化される場合、多種のPCV2bのストレインに対して免疫原性を有することができる。
【0054】
前記PCV2 GC0504及びPCV2 GC0505のそれぞれは、豚細胞株でインビトロまたはインビボで複製されうる。前記細胞株は、例えば、不死化された(immortalized)ものでありうる。前記細胞株は、例えば、豚腎臓の表皮細胞株(epithelial cell line)PK−15及びSK、モノミエロイド細胞株3D4/31及び精巣細胞株(testicular cell line ST)からなる群から選択されるものでありうる。
【0055】
本明細書に言及された配列は、配列目録ファイルを介しても提出され、それら配列目録は、本明細書に援用によってその全体内容が含まれうる。
【実施例】
【0056】
以下、本発明について、実施例を介してさらに詳細に説明する。しかし、それら実施例は、本発明を例示的に説明するためのものであり、本発明の範囲がそれら実施例に限定されるものではない。
【0057】
実施例1
1.ウイルスの分離及び増殖性の確認
2005年から2007年までの間、依頼された豚検査サンプルからのPCR(polymerase chain reaction)及びIFA(indirect immunoflorescence assay)診断法を介して、PCV(porcine circovirus)ウイルスを分離した。それら分離株を、PK−15細胞に感染させて培養し、増殖されたウイルス粒子の数を測定した後、増殖性が最も高い分離株を選別した。
【0058】
まず、8%ウシ胎児血清(FBS)が補充されたDMEM(DMEM 900ml、FBS 100ml、ストレプトマイシン100μg/ml、ペニシリン200IU/ml及びカナマイシン100μg/ml)培地中で、PK−15細胞を37℃で培養し、細胞単層を形成させた。次に、単層が形成されたPK−15細胞の培地を除去した後、トリプシン処理を行って細胞を切除し、得られたウイルス含有細胞浮遊液に含まれたウイルスの含有量が、104.5TCID50/0.1mlに調整されたPCV2を添加して接種し、37℃で3,4日間静置培養した。培養後で得られた細胞に対して三回凍結融解を反復し、細胞を完全に破壊した後、2,500rpmで15分間遠心分離した。遠心分離後に得られた上層液に対し、PCR及びIFAを利用し、PCV2ウイルスの含有量を測定した。その結果、2個の分離株が高いウイルス含有量を示すことを確認し、それら分離株を、それぞれPCV2 GC0504及びPCV2 GC0505と命名した。PCV2 GC0504は、PCV2−2aタイプのウイルスであり、配列番号1のゲノム配列を有する。PCV2 GC0505は、PCV2−2bタイプのウイルスであり、配列番号2のゲノム配列を有する。前記PCV2 GC0504及びPCV2 GC0505は、それぞれ平均して105.6ないし107.0TCID50/ml細胞培養液の含有量で複製され、一般的に公知のPCV2ウイルスの増殖性に比べ、10倍以上高い増殖性を示すことを確認した。従って、前記PCV2 GC0504及びPCV2 GC0505からなる一つ以上のウイルスは、増殖性が高いために、弱毒化(attenuation)または不活性化されたワクチンを製造するのに必要なウイルスを効率的に提供できる。このように得られたPCV2ウイルス(以下、「バルクウイルス」とする)を、以下のウイルス不活性化に使用した。
【0059】
ここで、前記PCRは、リアルタイムPCR(real−PCR)法によって行われた。リアルタイムPCRに適用する試薬として、タカラバイオ(株)のSYBR green製品を使用した。106.0TCID50/mlのPCV2 GC0505が10倍希釈された試料をテンプレートとして、PCV2のORF2に特異的なプライマー(5’−TAG GTT AGG GCT GTG GCC TT−3’:フォワードプライマー、配列番号7)、及び5’−CCG CAC CTT CGG ATA TAC TG−3’:リバースプライマー、配列番号8)をプライマーとして、94℃で10秒間維持した後、94℃で5秒及び60℃で40秒間40回反復した。増幅産物の予想サイズは、263bpである。その結果、10TCID50/mlの濃度でも、前記ウイルスを首尾よく検出できた(図1)。図1は、PCV2の濃度によってリアルタイムPCRを行った結果を示す図面である。
【0060】
前記リアルタイムPCRで測定されたCt値と、IFA法によって測定されたウイルス力価との相関関係は、下記数式1のように表示される。
【0061】
【数1】

【0062】
数式1で、yはCt値、xはIFA力価(log10)であり、単位は、TCID50/0.1mlである。数式1による相関係数R=0.9988であり、99.9%ほどの信頼度を示す。このように確立されたリアルタイムPCRは、10TCID50/1mlのウイルス濃度まで検出できる高い敏感度を有しており、測定時間も短いので、本発明の実施例で、ウイルス測定方法として使用した。
【0063】
また、サンドウィッチ間接ELISA(sandwich indirect ELISA)でもって、次の通りの過程を行い、PCV2ウイルスに対する抗体を測定した。
【0064】
まず、PCV2特異抗体を、5ないし10μl/mlでコーティング・バッファ(coating buffer)(NaHCO 2.93g、NaCO 1.59g、水1,000ml:0.5Mカルボネートバッファ、pH9.6)に希釈し、100μlずつELISAプレートの各ウェルに分注し、37℃で2時間吸着させた。抗体が吸着したELISAプレートをPBS(phosphate buffered saline)−Tで三回洗浄した。遮断バッファ(blocking buffer)(BSA(bovine serum albumin) 1ないし2g、PBS 100ml:1ないし2%BSA)200μlずつ全てのウェルに入れ、37℃で2時間反応させた。プレートを三回洗浄した。次に、PCV2抗原をPBSで10倍ないし20倍希釈した後、全てのウェルに入れ、37℃で1時間反応させた。プレートを三回洗浄し、抗原が感作されたプレートに、検査試料(血清)を、希釈バッファ(dilution buffer)(NaCl 8.0g、無水KHPO 0.2g、無水NaHPO 1.19g、KCl 0.2g、水1,000ml:pH7.2−7.4)を利用し、1:50に希釈してウェルに分注した後、37℃で1時間反応させた。洗浄バッファ(washing buffer)(Tween 20 0.5ml、PBS 1,000ml:0.05%PBST)で五回洗浄し、前記希釈バッファで希釈されたanti−GP IgG HRP接合体(conjugate)を100μlずつ添加した後、37℃で1時間反応させた。プレートを五回洗浄し、100μlオルトフェニレンジアミン(OPD)基質を各ウェルに分注して室温で10分間反応させた後、50μl停止溶液(stop solution)(2.5M HSO)を添加した後、492nmで吸光度を測定した。
【0065】
前記分離されたPCV2 GC0504及びPCV2 GC0505は、それぞれ単層が形成されたPK−15細胞にウイルスを接種して37℃で72時間培養し、ウイルス感染液を回収し、2,500rpmで15分間遠心分離した後、その上層液または前記上層液を凍結乾燥し、−80℃以下の温度で保存した。
【0066】
2.ウイルス不活性化及び不活性化ウイルスを含む免疫原性組成物の製造
(2.1)ウイルス不活性化
前記1で回収されたバルクウイルスのうち、含有量が106.0TCID50/ml以上であるものを選別し、不活性化に使用した。バルクウイルス(8%ウシ胎児血清(FBS)が補充されたDMEM(DMEM 900ml、FBS 100ml、ストレプトマイシン100μg/ml、ペニシリンIU/ml及びカナマイシン100μg/ml)培地中のウイルス)に、ホルマリンの最終濃度が0.3%なるように添加した後、24時間室温で放置し、PCV2 GC0504及びPCV2 GC0505をそれぞれ不活性化させた。このように不活性化されたPCV2 GC0504及びPCV2 GC0505を免疫原性組成物を製造するためのバルクとした。
【0067】
(2.2)免疫原性組成物の製造
(2.1)で準備されたPCV2 GC0504及びPCV2 GC0505ウイルスは、それぞれの最終濃度が106.0TCID50/mlになるように調節した後、45:45の割合で混合し、Motanide gel(登録商標)を10%(w/w)になるように添加し、1時間以上室温で100rpmで撹拌した。このように得られた免疫原性組成物は、pH6.0−8.0の範囲に維持し、ホルマリン含有量がpH0.3重量%以下になるように維持した。取り立てての言及がない限り、ここで製造された免疫原性組成物を、以下の実験で使用した。前記免疫原性組成物を、以下「ワクチン」という。
【0068】
(3)不活性化確認及び安全性確認
(3.1)不活性化確認試験
不活性化された試料を遠心させた後、適当量を透析膜に入れ、4℃で試料の100倍量以上のリン酸緩衝溶液(PBS)で一晩透析し、不活性化剤を除去したものを試験材料とした。
【0069】
豚初代腎臓細胞またはPK−15細胞を、組織培養用フラスコ(25cm)で増殖させた。初代培養細胞は、4ないし7日間培養された細胞を使用し、PK−15細胞は、試験前にサーコウイルス1型の感染がないことを確認した。増殖された細胞から細胞培養液を除去した後、前記試験材料1mlを組織培養された細胞に接種し、37℃で1時間感作させた。1時間後、新しい細胞維持用培地を加え、7日間培養しつつ細胞変性効果を確認した。上層液を除去した後、IFA法を利用して豚サーコウイルスが増殖したか否かを確認した。
【0070】
その結果、豚初代腎臓細胞またはPK−15細胞で、豚サーコウイルスによる特異な細胞変性効果(CPE)、またはその他ウイルスによるCPEは、確認されなかった。また、細胞上層液で、鶏、豚の血球について凝集(HA)が起こらず、IFAについても、ウイルスは検出されなかった。
【0071】
(3.2)安全性確認試験
体重15〜20gのマウス8匹、体重300〜400gのモルモット4匹を試験動物として使用した。また、PCV2関連ワクチンを接種せず、関連疾病に露出されていない生後3ないし5週齢の健康な子豚2匹を試験動物として使用した。
【0072】
マウス8匹は、それぞれ0.5ml(106.0TCID50/ml)の前記組成物を腹腔に接種し、モルモット4匹は、前記組成物を筋肉または皮下に2mlずつ(106.0TCID50/ml)接種し、残りの2匹は、2mlずつ腹腔に接種し、7日間観察し、異常なく生存しているか否か観察した。子豚2匹に一回容量(dose、106.0TCID50/ml)の量を、右側首部位の筋肉に接種した後、1ないし2時間以内に、過敏反応及び発熱反応が示されているか否かを調べ、注射部位に化膿及び懐死のような副作用なしに生存しているか否かを21日間観察した。その結果、記述された試験方法によって、それぞれのロット別に、マウス、モルモット及び子豚に前記組成物を接種した結果、試験期間の間何の異常もなしにいずれも生存した。
【0073】
(3.3)力価試験
前記免疫原性組成物を動物に投与し、血清で抗体を測定した。抗体測定試験は、前記のようなELISA法または間接蛍光抗体検査法(IFA)を実施した。
【0074】
体重300ないし350gのモルモット10匹を準備し、8匹は接種群、2匹は対照群として、接種群には皮下に、前記組成物0.5ml(106.0TCID50/ml)を接種し、3週間後に2匹の対照群と共に採血し、IFAまたは間接サンドウィッチELISAで抗体価を測定した。
【0075】
ELISA試験で、抗体力価は、接種群平均吸光度(O.D.)値(T)を、対照群平均吸光度(O.D.)値(C)で割ったT/C値が2.0以上であり、IFA試験で、接種群の抗体力価は、平均128倍以上であり、対照群は、陰性であるものを免疫原性組成物として適切性についての判定基準とした。下記表は、ELISAを利用して測定された抗体力価を示している。
【0076】
【表1】

【0077】
前記表1に示されているように、前記免疫原性組成物は、対照群に比べて実験群において、免疫原性組成物として適切な程度に高い免疫原性があると確認された。
【0078】
3.免疫原性組成物の有効性確認
ここでは、前記免疫原性組成物が、動物で免疫を誘導するのに必要な最小量(以下、「最小免疫に必要な抗原量」とする)を決定し、前記免疫原性組成物が動物に接種されたとき、免疫誘導能と増体率との差異など、有効性が認定されるか否かを確認した。
【0079】
前記最小免疫量の測定には、PCV2の力価がそれぞれ103.5,104.5,105.5または106.5TCID50/mlになるようにしたことを除いては、前記免疫原性組成物と同じ組成物を使用した(4倍数として使用する)。有効性測定には、前記免疫原性組成物を使用した。
【0080】
最小免疫に必要な抗原量は、子豚に対して実験した。豚サーコウイルスに対して抗体が陰性である15匹の3週齢子豚に2週間隔で、PCV2ワクチン抗原含有量が、それぞれ103.5,104.5,105.5,106.5TCID50/mlである試験ワクチンを、一次、二次接種し、3匹を対照としておき、ワクチン接種前、二次接種後2週間目に採血し、PCV2に対するELISA抗体価を測定した。
【0081】
前記免疫原性組成物の有効性は、子豚に対して実験した。豚サーコウイルスに対して抗体が陰性である4匹の3週齢子豚に2週間隔で、前記免疫原性組成物を一次、二次接種し、2匹を対照としておき、二次接種2週間、4週間、2ヵ月、3ヵ月、4ヵ月後に採血し、前記方法のようにPCVに対するELISA抗体価及びIFAを介したSN抗体価(Fortら,2007,Vet Microbiol 125,p244-255)を測定した。ELISA抗体価は、抗原によって誘導される全ての抗体を示し、SN抗体価は、血清中和抗体価であり、血清内に存在する抗体のうち、ウイルスのような病源体を中和させることができる抗体のレベルを示す。
【0082】
また、子豚について、前記免疫原性組成物において、豚増体率に及ぼす影響を測定した。接種前、二次接種前、二次接種2週後、二次接種6週間後、子豚の体重を測定して増体率を確認した。
【0083】
最小免疫に必要な抗原量を測定した結果、PCV2抗原含有量別に、二回接種した後、ELISA抗体価を測定した結果、表2に示されるように、103.5TCID50/mlでも、抗体価の変化が確認されたが、104.5TCID50/ml以上の抗原含有量で接種したとき、対照群に比べて、非常に有意性のある(p<0.05)抗体価上昇が誘導された(表2)。
【0084】
【表2】

【0085】
表3は、前記免疫原性組成物を子豚に投与し、抗体価を測定した結果を示す表である。
【0086】
【表3】

【0087】
表4及び表5は、前記免疫原性組成物を子豚に投与し、子豚の体重を測定した結果を示す表である。該表は、前記組成物を接種する前から接種した後の6週まで、接種群と対照群との体重を測定した結果である。接種群は、二次接種2週後である7週齢から、対照群に比べて平均体重が1kgほどさらに重く、13週齢で、平均体重が対照群に比べて4kgさらに重かった。
【0088】
【表4】

【0089】
【表5】

【0090】
以上のように、不活性化された豚サーコウイルスを含む免疫原性組成物の有効性を確認するために動物に投与した後、抗体価を測定した結果、接種群は、対照群に比べて、優秀な抗体価上昇を確認することができた。抗原含有量別に、子豚に前記免疫原性組成物を投与した結果、104.5TCID50/ml以上で、抗体価上昇が有意的に誘導されたということが分かるとき、前記免疫原性組成物に前記不活性化されたウイルスが、最小104.5TCID50/ml以上の含有量で含まれねばならないことを確認することができた。子豚の免疫原性試験を介しても、投与群の抗体価が対照群に比べ、はるかに上昇することを確認することができた。子豚に対する増体率試験でも、投与群が対照群に比べて高い増体率を示した。
【0091】
4.子豚に対する攻撃接種試験
前記免疫原性組成物を豚に投与し、PCV2を前記豚に投与し、前記豚が前記組成物の投与によって防御能が向上しているか否かを確認した。
【0092】
免疫原性組成物は、前記の(2.2)によって製造されたものを使用した。生後3週齢の子豚14匹を攻撃接種対象とした。子豚攻撃接種用ウイルス株は、緑十字の獣医薬品で分離したPCV2ストレインを使用した。PCV2の場合、PK−15細胞で37℃、48時間培養して採毒した後、5,000×gで10分間遠心分離した後、上層液を105.0TCID50/mlになるように希釈して使用した。
【0093】
前記組成物の投与は、前記組成物の子豚に対する防御能を確認するために、3週齢のSPF(specific pathogen free)子豚14匹を選定し、8匹には接種群として前記組成物1ml(106.0TCID50/ml)を2週間隔で二回筋肉接種し、残りの6匹には、ワクチンを接種しなかった。
【0094】
二次接種2週後に、試験群2グループと対照群2グループとに分け、準備されたウイルス株で攻撃接種を実施した後、14日間臨床症状を観察した。
【0095】
−第1グループ試験群(PCV2攻撃接種):第1グループ試験群には、3週齢の子豚4匹を選定し、前記組成物1mlを2週間隔で二回筋肉接種し、2週後(7週齢)にPCV2を攻撃接種した。
【0096】
−第1グループ対照群(PCV2攻撃接種):第1グループ対照群には、3週齢の子豚2匹を選定し、7週齢でPCV2を攻撃接種した。
【0097】
−第2グループ試験群(PCV2+PRRSV(porcine reproductive and respiratory syndrome virus)攻撃接種):第2グループ試験群には、3週齢の子豚4匹を選定し、前記組成物1mlを2週間隔で二回筋肉接種し、2週後(7週齢)に、PCV2とPRRSVとを攻撃接種した。
【0098】
−第2グループ対照群(PCV2+PRRSV攻撃接種):第2グループ対照群には、3週齢の子豚2匹を選定し、7週齢でPCV2とPRRSVとを攻撃接種した。
【0099】
−無接種対照群:無接種対照群には、3週齢の子豚2匹を選定し、7週齢でワクチン接種や攻撃接種を行わなかった。
【0100】
また、攻撃接種された子豚で、PCV2ウイルスが排出されているか否かを確認した。ウイルスが排出されているか否かは、攻撃接種日、攻撃接種後3日,7日,10日,14日,17日,20日,25日,31日目で、それぞれ鼻腔と直腸とを滅菌された綿棒でスワッブ(swab)し、ウイルス含有量を測定した。前記PCV2ウイルス含有量は、リアルタイムPCR(SYBR Premix Ex Taq 2X、TAKARA(登録商標))を介して決定した。前記鼻腔及び直腸のスワッブで得たPBS由来のそれぞれ100μl試料から抽出したDNAをテンプレートとして、次のPCRプライマーと条件とを使用し、リアルタイムPCRを実施した。リアルタイムPCRを利用して得たCt値から、あらかじめ求めておいたIFAを介したTCID50の相関関係、すなわち、前記数式1を利用してIFA力価(titer)を求めた。
【0101】
リアルタイムPCRは、PCV2のORF2に特異的なプライマー(5’−TAG GTT AGG GCT GTG GCC TT−3’:フォワードプライマー、配列番号7、及び5’−CCG CAC CTT CGG ATA TAC TG−3’:リバースプライマー、配列番号8)をプライマーとして、95℃で10秒間維持した後、95℃で5秒及び60℃で40秒間30回反復した後、95℃で1分間維持した後、55℃で30秒及び95℃で30秒間維持した。増幅産物の予想サイズは、263bpである。PCR混合物の組成(総体積25μl)は、蒸溜水9.5μl、SYBR Premix Ex Taq 2X 12.5μl、プライマー(フォワード(10pmol)0.5μl、リバース(10pmol)0.5μl、テンプレート(DNA)2μlを含んでいる。
【0102】
攻撃接種実験の結果、PCV2を攻撃接種した第1グループ試験群と、PCV2+PRRSVを攻撃接種した第2グループ試験群とでは、これといった異常が観察されなかったが、前記組成物を接種せずにPCV2を攻撃接種した対照群では、目やに、下痢などのPCVAD(porcine circovirus associated disease)関連症状が観察された。特に、PCV2を攻撃接種した第1グループ対照群と、PCV2とPRRSVとを同時に攻撃接種した第2グループ対照群とでは、接種後1週間後から、沈欝、軟便、荒くなった皮毛、萎縮、リンパ節肥大のような典型的なPCV2感染症状が観察され、第2グループ対照群で、攻撃接種後11日目に1匹が斃死した。前記組成物接種群と無接種対照群は、ほぼ正常所見をしめした。
【0103】
表6は、攻撃接種後の第1グループ(PCV2攻撃接種群)試験群の臨床症状を示す。
【0104】
【表6】

【0105】
表7は、攻撃接種後の第1グループ(PCV2攻撃接種群)対照群(非ワクチン群)の臨床症状を示す。
【0106】
【表7】

【0107】
表8は、攻撃接種後の第2グループ(PCV2+PRRSV攻撃接種群)試験群(ワクチン群)の臨床症状を示す。
【0108】
【表8】

【0109】
表9は、攻撃接種後の第2グループ(PCV2+PRRSV攻撃接種群)対照群(非ワクチン群)の臨床症状を示す。
【0110】
【表9】

【0111】
鼻腔を介したウイルス排出を測定した結果、前記ワクチン接種後にPCV2を攻撃接種した第1グループ試験群と、ワクチン接種後にPCV2+PRRSVを攻撃接種した第2グループ試験群とでは、対照群に比べて、鼻腔を介したPCV2の排出が顕著に減ったことを確認することができた。第1グループ試験群と第2グループ試験群は、一日平均排出量が、最大100.12TCID50/0.1mlの排出量だけを示したが、対照群は、最大100.81TCID50/0.1mlのPCV2排出を示した。PCV2を接種した第1グループ対照群と、PCV2+PRRSVを接種した第2グループ対照群とでは、接種後3日目からPCV2の排出が確認された。第1グループ対照群は、一日平均排出量が、最大101.17TCID50/0.1ml、試験群Bは、最大101.73TCID50/0.1mlの範囲を示してPCV2を排出した。これに比べ、無接種対照群では、PCV2ウイルスの排出が確認されなかった(図2及び図3参照)。
【0112】
図2は、子豚に試験群別へのPCV2単独攻撃接種後、鼻腔を介したPCV2排出を測定した結果を示す図面である。図2で、DPIは、接種後の日数(date after post infection)を示し、y軸のIFAlog10は、リアルタイムPCRを介して測定されたCt値をIFA力価に換算した値である。
【0113】
図3は、子豚に試験群別に、PCV2とPRRSVとの混合攻撃接種後、鼻腔を介したPCV2排出を測定した結果を示す図面である。図3で、x軸及びy軸は、図2に示したところと同一である。
【0114】
直腸を介したウイルス排出を測定した結果、前記ワクチン接種後にPCV2を攻撃接種した第1グループ試験群と、前記ワクチン接種後にPCV2+PRRSVを攻撃接種した第2グループ試験群とでは、対照群に比べて糞便を介したPCV2の排出が顕著に減ったことを確認することができた。第1グループ試験群と第2グループ試験群は、一日平均排出量が、最大100.42TCID50/0.1mlの排出量だけを示したが、無接種対照群は、最大101.58TCID50/0.1mlのPCV2排出を示した。PCV2を接種した第1グループ対照群と、PCV2+PRRSVを接種した第2グループ対照群とでは、接種後の3日目からPCV2の排出が確認された。第1グループ対照群は、一日平均排出量が、最大101.95TCID50/0.1ml、第2グループ対照群は、最大101.44TCID50/0.1mlの範囲を示してPCV2を排出した。これに比べて、無接種対照群では、PCV2ウイルスの排出が確認されなかった(図4及び図5参照)。
【0115】
図4は、子豚に、試験群別へのPCV2単独攻撃接種後に、糞便を介したPCV2排出を測定した結果を示す図面である。図4で、x軸及びy軸は、図2に示したところと同一である。
【0116】
図5は、子豚に、試験群別へのPCV2とPRRSVとの混合攻撃接種後、糞便を介したPCV2排出を測定した結果を示す図面である。図5で、x軸及びy軸は、図2に示したところと同一である。
【0117】
以上のように、本実施例で製造された不活性化された豚サーコウイルスを含むワクチンの有効性を確認するために、豚を利用して病原性試験及び防御効能試験を行った。その結果、ワクチン接種後、攻撃接種を行ったグループが、ワクチン接種を行わずに攻撃接種をしたグループに比べ、特異的な臨床症状がほぼ観察されず、鼻腔や糞便を介したウイルスの排出期間が、ワクチン接種群が対照群に比べてさらに短く、ウイルス排出量も、ワクチン接種群が非ワクチン群に比べて有意的に少ないことを確認した。これによって、前記ワクチンは、豚における防御能にすぐれるワクチンであることを確認することができた。
【0118】
5.野外臨床試験及び結果
(5.1)野外臨床試験
本実施例で製造された不活性化された豚サーコウイルスを含むワクチンを、一般野外農場で生育される豚に投与した後、ワクチンとしての安全性及び有効性があるか否かを確認した。
【0119】
前記ワクチンは、前記のように製造し、野外試験農場は、3ヵ所の農場を選択し、3ヵ所の農場は、それぞれ約500匹あまり(以下、第1群農場)、200匹あまり(以下、第2群農場)、及び200匹あまり(以下第3群農場)の親豚を生育させる規模の農場であり、農場の地理的位置は、互いに異なっている。試験に提供された豚の匹数と採血に利用された豚の匹数は、下記表10に示した。
【0120】
【表10】

【0121】
ワクチンの接種は、生後3〜4週齢の接種群子豚に、前記ワクチンを一頭当たり1mlずつ一次筋肉接種し、約2週後に同じ方法で二次接種を実施した。採血は、子豚の場合、ワクチン接種前(3週齢)、二次接種2週後(7週齢)、5週後(10週齢)、8週後(13週齢)、11週後(16週齢)に採血して血清を分離した。
【0122】
子豚の臨床症状は、次の通り観察した。まず、接種後、接種反応を観察するために、ワクチン接種直後に、局所的、全身的な接種反応を観察した。
【0123】
試験期間の間、ワクチン接種群及び対照群いずれも、採血時期と同一に周期別に、臨床症状を観察し、主要臨床症状観察項目として、咳、食欲不良、くしゃみ、鼻漏、呼吸困難、嘔吐、高熱、出血(鼻、口)、元気不足、全身衰弱、下痢などを確認し、その成績を記録した。試験ワクチンの野外効果と安全性とを確認するために、ワクチン接種後、体温測定、体重測定、抗体価測定を施行した。体温測定は、接種前、接種後4時間後、接種後1日から2日目までは、朝昼晩の三回体温を測定し、3日目から7日目まで1日一回測定し、体重測定は3週齢、10週齢、13週齢、16週齢で測定した。
【0124】
PCV2に対する抗体価測定は、3週齢、7週齢、10週齢、13週齢、16週齢で実施した。採血された全ての動物の抗体価は、PCV2の競争的ELISA(competitive ELISA)抗体価(Synbiotics社)を測定した。具体的な抗体検査ELISA法は、下記の通りである。
【0125】
PCV2 Ab Mono Blocking(PCV2 competitive ELISA)法:
まず、対照液及びサンプルを準備した。使用前にバイアル(vial)を振った後、A1とA2とのウェルに陰性対照液100μl、ウェルのB1とB2とには、陽性対照液100μlを分注した。次に、サンプルをサンプル希釈液を利用して1:100に希釈した後、1ウェル当たり100μlずつ分注した。1つのサンプル当たり、1ウェルにだけ分注したり、あるいは1サンプル当たり2つのウェルに分注して平均値を得た。接着フィルムでウェルを覆った。37℃±3℃で、1時間±5分培養した。洗浄液で1:10に希釈した後、プレートの接着フィルムを除去して四回洗浄した。
【0126】
接合体液を、接合体液希釈液を利用して1:100に希釈した。希釈された接合体液を、1ウェル当たり100μlずつ分注し、新しい接着フィルムでウェルを覆った。37℃±3℃で1時間±5分培養した。洗浄液で1:10に希釈した後、プレートの接着フィルムを除去して四回洗浄した。次に、基質液を1ウェル当たり100μl分周し、プレートを軽く振った。光を遮断した後、室温で30分±5分培養した。培養後、反応停止液を1ウェル当たり50μl入れ、プレートを振った。波長450nmでOD値を測定した。
【0127】
結果は、次の基準によって判定した。対照液のOD値範囲は、次の通りである。
−陰性対照液のOD値範囲>0.500
−陽性対照液のOD値範囲≦0.300
【0128】
中和抗体価(SNc)は、次の数式2によって計算した。
【0129】
【数2】

【0130】
また、野外試験農場の試験に使われた豚の斃死率を測定し、斃死豚のPCV2検査(PCR、IHC(immunohistochemistry)、サルモネラ検査(PCR))を実施した。
【0131】
(5.2)野外臨床試験の結果
(5.2.1)第1群農場
ワクチン接種前並びにワクチン接種後の7日間、ワクチン接種群と対照群との体温を毎日測定した。その結果、ワクチン接種群と対照群との全ての個体が、ワクチン接種後7日間、正常体温範囲内であると確認された。
【0132】
ワクチン接種前(生後3週)と10週齢、13週齢、16週齢とで、ワクチン接種群と対照群との体重を測定した。ワクチン接種前、ワクチン群の平均体重が多少低かったが、10週齢時には、ワクチン接種群と対照群との体重差がほとんどなく、13週齢と16週齢とのとき、ワクチン接種群の体重が対照群に比べ、平均して多少大きく示された。表11は、ワクチン接種群と対照群との体重変化(単位:kg、n=20)を示す。
【0133】
【表11】

【0134】
ワクチン接種前(生後3週)並びに7週齢、10週齢、13週齢、16週齢で、ワクチン接種群と対照群とからそれぞれ採血し、PCV2のELISA抗体価と、IFAを利用した中和抗体価(SN)とを測定した。ワクチン接種群の場合、二次接種2週後(7週齢)に、抗体陽性率が接種前よりはるかに上昇し、16週齢まで陽性率が維持されると分かった。対照群の場合、試験期間の間、抗体陽性率が上昇または低下し、しワクチン接種群に比べて低い数値を示した。中和抗体価は、接種前(3週齢)に対照群がむしろワクチン群より高かったが、ワクチン接種後の2週間目後である7週齢では、逆転現象が現れ、ワクチン群が対照群に比べて、有意性のある高い中和抗体価を示した(p<0.05)。表12(ワクチン接種群のPCV2抗体価を測定した結果)と表13(対照群のPCV2抗体価を測定した結果)は、第1群農場で、ワクチン接種群と対照群とのPCV2抗体価を測定した結果を示す。
【0135】
【表12】

【0136】
【表13】

【0137】
ワクチン接種群の場合、ワクチン接種後の16週間に斃死がなく、対照群で、7週齢で1匹が斃死した。対照群の斃死豚の組織試料をテンプレートにしたPCR検査の結果、リンパ節及び肺いずれもPCV2陽性を示し、組織IHC染色で陰性であった。
【0138】
試験期間中、斃死豚を対象にサルモネラ検査を実施し、いずれも陰性と確認された。
【0139】
ワクチン接種群と対照群との臨床症状を16週齢まで観察した。ワクチン接種群の場合、ほぼ正常所見を示したが、対照群では、沈欝、軟便、荒くなった皮毛、萎縮などのPCV2感染症状を示す個体を観察できた。表14(ワクチン接種群の臨床症状)と表15(対照群の臨床症状)は、ワクチン接種群と対照群との臨床症状観察の結果を示す。
【0140】
【表14】

【0141】
【表15】

【0142】
(5.2.2)第2群農場
ワクチン接種前並びにワクチン接種後7日間、ワクチン接種群と対照群との体温を毎日測定した。その結果、ワクチン接種群と対照群との全ての個体が、ワクチン接種後7日間、正常体温範囲内であると確認された。
【0143】
ワクチン接種前(生後3週)及び10週齢、13週齢、16週齢で、ワクチン接種群と対照群との体重を測定した。10週齢までは、ワクチン接種群と対照群との体重差がほとんどなく、13週齢と16週齢とのとき、ワクチン接種群の体重が、対照群に比べて、平均して多少多く示された。表16は、ワクチン接種群と対照群との体重変化(単位:kg、n=20)を示す。
【0144】
【表16】

【0145】
ワクチン接種前(生後3週)及び10週齢、13週齢、16週齢で、ワクチン接種群と対照群とからそれぞれ採血し、PCV2のELISA抗体価と、IFAによる中和抗体価(SN)とを測定した。ワクチン接種群の場合、二次接種2週後(7週齢)に、抗体が接種前より大きく増加し、16週齢まで高いレベルの抗体が維持されると分かった。対照群の場合、徐々に陽性率と抗体価とが上昇し、13週齢からワクチン群と類似したレベルで示された。中和抗体価は、接種前10倍以下と類似したレベルであったが、ワクチン二回接種後2週目(7週齢)には、ワクチン群の場合に平均25倍、対照群の場合に平均10倍のレベルと、有意性ある差(p<0.05)を示し、10週齢までは、その差がさらに大きくなったが、13週齢からは、対照群も抗体価が上昇し、ワクチン群と類似したレベルに示された。表17(ワクチン接種群のPCV2抗体価変化)と表18(対照群のPCV2抗体価変化)は、第2群農場で、ワクチン接種群と対照群とのPCV2抗体価を測定した結果を示す。
【0146】
【表17】

【0147】
【表18】

【0148】
ワクチン接種群及び対照群いずれも、観察期間中には斃死がなかった。
【0149】
ワクチン接種群と対照群との臨床症状を16週齢まで観察した。ワクチン接種群の場合、ほぼ正常所見を示したが、対照群では、3匹ほどが軟便、荒くなった皮毛などの所見を示しただけであり、特別の臨床症状は観察されなかった。表19(ワクチン接種群の臨床症状)と表20(対照群の臨床症状)は、ワクチン接種群と対照群との臨床症状観察の結果を示す。
【0150】
【表19】

【0151】
【表20】

【0152】
(5.2.3)第3群農場
ワクチン接種前並びに接種後7日間、ワクチン接種群と対照群との体温を毎日測定した。その結果、測定期間内で、ワクチン接種群及び対照群いずれも、正常体温範囲を維持した。
【0153】
ワクチン接種前(生後3週)及び10週齢、13週齢、16週齢で、ワクチン接種群と対照群との体重を測定した。10週齢後、ワクチン接種群の体重が対照群に比べて平均し大きく示された。表21は、ワクチン接種群と対照群との体重変化(単位:kg、n=20)を示す。
【0154】
【表21】

【0155】
ワクチン接種前(生後3週)及び10週齢、13週齢、16週齢で、ワクチン接種群と対照群とからそれぞれ採血し、PCV2のELISA抗体価と、IFAを使用した中和抗体価(SN)とを測定した。ワクチン接種群の場合、二次接種2週後(7週齢)に、抗体陽性匹数と抗体価とが接種前より大きく増加し、16週齢では、いずれも陽性と高レベルの抗体が維持されると分かった。対照群の場合、徐々に抗体陽性匹数が増加したが、16週齢でも陰性個体が確認された。中和抗体価は、ワクチン接種前10倍以下と類似したレベルであったが、二次ワクチン接種後、ワクチン群平均抗体が33倍、対照群平均抗体が15倍と、有意性ある差を示した(p<0.05)。そして、このような有意性ある差は、16週齢まで維持された。表22(ワクチン接種群のPCV2抗体価変化)と表23(対照群のPCV2抗体価変化)は、第3群農場で、ワクチン接種群と対照群とのPCV2抗体価を測定した結果を示す。
【0156】
【表22】

【0157】
【表23】

【0158】
試験期間の間、ワクチン群及び対照群いずれでも斃死は発生しなかった。
【0159】
ワクチン接種群と対照群との臨床症状を16週齢まで観察した。ワクチン接種群及び対照群いずれも、ほぼ正常所見を示したが、対照群では、一部個体が咳、軟便などの症状を示したが、抗生物質の治療後、まもなく回復した。表24(ワクチン接種群の臨床症状)と表25(対照群の臨床症状)は、ワクチン接種群と対照群との臨床症状観察の結果を示す。
【0160】
【表24】

【0161】
【表25】

【0162】
(5.3)結論
以上の試験を介して、本実施例の不活性化された豚サーコウイルスを含むワクチンに対する野外農場での安全性と免疫原性との立証を試みた。
【0163】
本試験は、野外農場3ヵ所で、子豚130頭を共試して実施され、適用方法は、子豚には3週齢一次、5週齢二次で1mlずつ筋肉接種した。接種後の接種反応について述べれば、接種後1〜2時間後に現れる局所的、全身的反応は、全く観察されず、試験期間の間の臨床症状を観察した結果、呼吸困難、嘔吐、出血、高熱、全身衰弱などの特異な臨床症状は全く示されなかった。いくつかの個体で食欲低下現象が発生したが、数日内に再び食欲を回復する様相を示した。
【0164】
3ヵ所の野外農場の結果から、二次接種を実施した後、全体的な抗体価レベルについて述べれば、子豚における接種前の抗体価に比べ、二次接種後のサーコウイルスに対する抗体陽転率(sero-conversion)が90%以上を示し、優秀な免疫原性を示した。
【0165】
そして、ワクチン接種後16週齢まで、自然累積斃死率は、ワクチン群及び対照群いずれもほとんど見られなかったが、増体率は、ワクチン群が対照群に比べて高く、同じ日齢台の平均体重において、大差を示した。以上の結果から見るとき、前記ワクチンは、野外農場での安全性と防御効果とが十分にあることが立証された。
【0166】
6.比較実験
本発明の不活性化された豚サーコウイルスを含むワクチンと、既許可の他の類似製品との効能比較試験を実施し、本願発明のワクチンの有効性を評価した。比較対象製品は、サーコフレックス(Ingelvac CircoFlex(登録商標) 309−129、30991−kr2)(ベーリンガーインゲルハイム動物薬品(株)、韓国)を使用した。Ingelvac CircoFlex(登録商標)は、精製されたサーコウイルス抗原(purified circovirus antigen:PCV(登録商標))を抗原として含んでおり、賦形剤は、イムプラン・フレックス(Impran FLEX(登録商標))という水性ポリマー(aqueous polymer)を含む製品である。
【0167】
比較試験に使われた動物は、前記第1群農場の3週齢子豚であった。試験群Aは、本発明のワクチンの接種群であり、3週齢と5週齢とに1mlずつ耳根部に筋肉接種し、試験群Bは、サーコフレックス接種群であり、3週齢に1mlずつ一回耳根部に筋肉接種した。そして、試験群Cは、非ワクチン対照群とした(表26)。
【0168】
【表26】

【0169】
効能比較はサーコフレックスの製品特性上、血清学的変化がなく、ワクチン接種後の離乳匹数、7週齢体重、出荷匹数、斃死率を記録して効能を比較した。
【0170】
離乳率では、全ての試験群で大差は見られなかったが、出荷率では、対照群に比べて、ワクチン群がさらに高い率を示し、ワクチン群内でも、サーコフレックスワクチン群に比べて、本発明のワクチン接種群が高い率を示した(表27)。そして、7週齢時の平均体重も、対照群に比べてワクチン群が、高いレベルに示され、ワクチン群間の平均体重は、類似したレベルであった(表27)。表27は、ワクチン接種後の離乳数(率)、7週齢平均体重(n=20)及び出荷数(率)の比較結果を示す。
【0171】
【表27】

【0172】
以上のように、現在市販中の類似製品である「サーコフレックス」と本発明のワクチンとの効能を、養豚場で一定期間の間適用して試験した結果、7週齢時の平均体重と出荷率とにおいて、サーコフレックスよりも優秀な成績を示し、本発明のワクチンの効能が非常に優秀であるということを確認した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
不活性化されたサーコウイルスPCV2 GC0504及びPCV2 GC0505からなる群から選択される一つ以上の不活性化されたウイルスを含む、動物でサーコウイルスの感染を治療または予防するための組成物。
【請求項2】
前記PCV2 GC0504が、配列番号1のヌクレオチド配列を有するゲノム配列を有することを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記PCV2 GC0505が、配列番号4のヌクレオチド配列を有するゲノム配列を有することを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記不活性化が、前記PCV2 GC0504及びPCV2 GC0505からなる群から選択される一つ以上のウイルスを、ホルムアルデヒドと反応させることによる不活性化であることを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
PCV2 GC0504及びPCV2 GC0505が、それぞれ一回容量当たり104.5TCID50ないし106.5TCID50の量で含まれることを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
感染を予防または治療する対象である前記サーコウイルスが、PCV2a及びPCV2bからなる群から選択されることを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
感染を予防または治療する対象である前記サーコウイルスが、PCV2a及びPCV2bを含むことを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
獣医学的に許容可能な賦形剤をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
前記賦形剤が、montanide gelであることを特徴とする請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
前記賦形剤が、組成物総重量を基準に、5%ないし15%の量で含まれることを特徴とする請求項8に記載の組成物。
【請求項11】
前記動物が、豚、マウス及びモルモットからなる群から選択されることを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項12】
サーコウイルスPCV2 GC0504及びPCV2 GC0505からなる群から選択された一つ以上のウイルスを、ホルマリンと反応させて不活性化されたサーコウイルスを得る段階を含む、不活性化されたサーコウイルスを生産する方法。
【請求項13】
前記ホルマリンが、反応溶液総重量に対して、0.2ないし0.5重量%であることを特徴とする請求項12に記載の方法。
【請求項14】
有効量の請求項1ないし請求項11のうちいずれか1項に記載の組成物を、動物に投与する段階を含む、動物のサーコウイルスの感染を治療または予防する方法。
【請求項15】
前記動物が、豚、マウス及びモルモットからなる群から選択されることを特徴とする請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記投与が、経口投与または非経口投与であることを特徴とする請求項14に記載の方法。
【請求項17】
前記投与が、注射によってなされることを特徴とする請求項14に記載の方法。
【請求項18】
配列番号1のヌクレオチド配列を有するゲノムを含むサーコウイルスPCV2 GC0504。
【請求項19】
配列番号4のヌクレオチド配列を有するゲノムを含むサーコウイルスPCV2 GC0505。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−162534(P2011−162534A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−118205(P2010−118205)
【出願日】平成22年5月24日(2010.5.24)
【出願人】(510143446)グリーン クロス ベテリナリー プロダクツ カンパニー リミテッド (1)
【Fターム(参考)】