説明

新規アミロイド親和性化合物

【課題】アミロイドを標的とした画像診断プローブとして有効な化合物及び該化合物を配合した生体組織に沈着したアミロイドの検出試薬を提供する。
【解決手段】下記式にて表される化合物及び該化合物を配合してなる生体組織に沈着したアミロイドの検出試薬。


式中、Rは放射性ハロゲン置換基、mは1〜4の整数である。本化合物は、生体組織に沈着したアミロイドへの親和性を有すると共に、正常組織からの良好なクリアランスを有している。本発明により、生体内における良好なアミロイド描出能を有する、新規なアミロイド親和性化合物及び生体組織に沈着したアミロイドの検出試薬を得ることが可能となった。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は頭部変性疾患の診断に用いる化合物に関する。より詳しくは、アルツハイマー病を初めとするアミロイドが蓄積する疾患の診断において、病巣部位におけるアミロイドの検出に有用な化合物に関する。
【背景技術】
【0002】
アミロイドと呼ばれる繊維状蛋白質が体内の種々の器官あるいは組織に沈着することにより発症する疾患は、アミロイドーシスと総称されている。アミロイドーシスに共通しているのはアミロイドと呼ばれるβシート構造に富んだ繊維状蛋白質が全身の諸臓器あるいは局所に沈着し、その臓器や組織における機能異常を生じる点である。
【0003】
アミロイドーシスの代表的疾患であるアルツハイマー病(以下、ADという)は、認知症の原因となる疾患として知られている。この病気は、漸次進行性にアミロイドが脳に沈着して死に至る疾患であるため、他のアミロイドーシスと比較しても社会的関心の高い疾患であるといえる。近年、先進各国では社会の高齢化に伴いAD患者数が急激に増加しており、社会的な問題となっている。
【0004】
病理組織学的見地によると、ADは、老人斑(senile plaques)の出現、神経原繊維変化(neurofibrillary
tangles)及び広範な神経脱落の3つの脳内病理所見によって特徴付けられる。老人斑はアミロイドを主要構成成分とする構造物であり、AD発症における最初期、すなわち臨床症状が出現する10年以上前に出現する脳内の病理所見とされる。
【0005】
ADの診断は、CT及びMRI等の画像診断を補助的に組み合わせた上で、種々の認知機能評価(例えば、長谷川式スケール、ADAS-JCog、MMSE等)を行うことにより実施されている。しかし、このような認知機能評価に基づく方法は、発症初期における診断感度が低く、さらに、各個人が生来有する認識機能により診断結果が影響を受けやすいという欠点がある。また、確定診断には疾患部の生検が不可欠であるため、患者の存命中にADの確定診断を行うことは、現状では事実上不可能である(非特許文献1)。
【0006】
一方、老人斑を構成するアミロイドはアミロイドβ蛋白質(以下、Aβという)の凝集体であることが報告されており、さらにAβの凝集体がβシート構造をとることで神経細胞毒性を示すことが多くの研究より報告されている。これらの知見に基づき、Aβの脳内への沈着が引き金となり、その下流の現象として神経原繊維変化の形成及び神経脱落が起こるとする、いわゆる「アミロイドカスケード仮説」が提唱されている(非特許文献2)。
【0007】
このような事実に基づき、近年、アミロイドに高い親和性を有する化合物をマーカーとして用い、ADをインビボ(in vivo)で検出する試みがなされている。
このような脳内アミロイド画像診断用プローブの多くは、アミロイドに対する親和性が高く、かつ脳移行性の高い疎水性の低分子化合物を、種々の放射性核種、例えば11C、18F及び123I等で標識した化合物である。具体例として、6−ヨード−2−[4’−(N,N−ジメチルアミノ)フェニル]ベンゾチアゾール(以下、TZDMという)や6−ヒドロキシ−2−[4’−(N−メチルアミノ)フェニル]ベンゾチアゾール(以下、6−OH−BTA−1という)を始めとする種々のチオフラビン誘導体(特許文献1、非特許文献3)、(E)−4−メチルアミノ−4’―ヒドロキシスチルベン(以下、SB−13という)や(E)−4−ジメチルアミノ−4’―ヨードスチルベン(以下、m−I−SBという)を初めとするスチルベン化合物(特許文献2、非特許文献4、非特許文献5)、6−ヨード−2−[4’−(N,N−ジメチルアミノ)フェニル]ベンゾオキサゾール(以下、IBOXという)、6−[2−(フルオロ)エトキシ]−2−[2−(2−ジメチルアミノチアゾール−5−イル)エテニル]ベンゾオキサゾールを初めとするベンゾオキサゾール誘導体(非特許文献6,非特許文献7)、2−(1−{6−[(2−フルオロエチル)(メチル)アミノ]−2−ナフチル}エチリデン)マロノニトリル(以下、FDDNPという)を初めとするDDNP誘導体(特許文献4、非特許文献8)及び6−ヨード−2−[4’−(N,N−ジメチルアミノ)フェニル]イミダゾ[1,2−a]ピリジン(以下、IMPYという)を初めとするイミダゾピリジン誘導体(特許文献3、非特許文献9)等を11Cや放射性ハロゲンで標識した化合物が報告されている。さらに、これらの画像診断用プローブの一部については、ヒトイメージング研究が実施され、AD患者において健常例とは明らかに異なる脳への放射能集積を示すことが報告されている(非特許文献10、非特許文献11、非特許文献12、非特許文献13)。
また、国際公開2007/002540号パンフレットには、アミロイド親和性基にエチレングリコール又はポリエチレングリコールを介して放射性同位体標識部位結合させた一連の化合物が、開示されている(特許文献5)。
さらに、国際公開2007/063946号パンフレットには、脳内での代謝を抑える目的で、5員の芳香族複素環式基を結合させた一連の化合物が、開示されている(特許文献6)。
【0008】
【特許文献1】特表2004−506723号公報
【特許文献2】特表2005−504055号公報
【特許文献3】特表2005−512945号公報
【特許文献4】特表2002−523383号公報
【特許文献5】国際公開第2007/002540号パンフレット
【特許文献6】国際公開第2007/063946号パンフレット
【非特許文献1】J. A.Hardy & G. A. Higgins, “Alzheimer’s Disease: The AmyloidCascade Hypohesis.”, Science, 1992, 256, p.184-185
【非特許文献2】G. McKhann et al., “Clinical diagnosis of Alzheimer’s disease:Report of the NINCDS-ADRDA Work Group under the auspices of Department ofHealth and Human Services Task Force on Alzheimer’s Disease.”, Neurology, 1984,34, p.939-944
【非特許文献3】Z.-P. Zhuang et al., “Radioiodinated Styrylbenzenes and Thioflavins asProbes for Amyloid Aggregates.”, J. Med. Chem., 2001,44, p.1905-1914
【非特許文献4】MasahiroOno et al., “11C-labeled stilbene derivatives as Aβ-aggregate-specific PET imagingagents for Alzheimer’s disease.”, Nuclear Medicine and Biology, 2003, 30,p.565-571
【非特許文献5】H. F.Kung et al., “Novel Stilbenes as Probes for amyloid plaques .”, J. American Chemical Society, 2001,123, p.12740-12741
【非特許文献6】Zhi-Ping Zhuanget al., “IBOX(2-(4’-dimethylaminophenyl)-6- iodobensoxazole):a ligand for imaging amyloidplaques in the brain.”, Nuclear Medicine and Biology, 2001, 28, p.887-894
【非特許文献7】Furumoto Y et al., “[11C]BF-227:A New 11C-Labeled 2-Ethenylbenzoxazole Derivative for Amyloid-β Plaques Imaging.”, European Journal of Nuclear Medicine andMolecular Imaging, 2005, 32, Sup.1, P759
【非特許文献8】EricD. Agdeppa et al.,“2-Dialkylamino-6-Acylmalononitrile Substituted Naphthalenes(DDNP Analogs): Novel Diagnostic and Therapeutic Tools in Alzheimer’sDisease.”, Molecular Imaging and Biology, 2003, 5, p.404-417
【非特許文献9】Zhi-Ping Zhuanget al., “Structure-Activity Relationship of Imidazo[1,2-a]pyridinesas Ligands for Detectingβ-AmyloidPlaques in the Brain.”, J. Med. Chem, 2003, 46,p.237-243
【非特許文献10】W. E.Klunk et al., “Imaging brain amyloidin Alzheumer’s disease with Pittsburgh Compound-B.”,Ann. Neurol., 2004, 55, p.306-319
【非特許文献11】Nicolaas P. L. G. Verhoeffet al., “In-Vivo Imaging of Alzheimer Disease β-Amyloid With [11C]SB-13 PET.”, AmericanJournal of Geriatric Psychiatry, 2004, 12, p.584-595
【非特許文献12】HiroyukiArai et al., "[11C]-BF-227 AND PET to Visualize Amyloidin Alzheimer's Disease Patients", Alzheimer's & Dementia: The Journal ofthe Alzheimer's Association, 2006, 2, Sup.1, S312
【非特許文献13】ChristopherM. Clark et al., "Imaging Amyloid with I123 IMPY SPECT", Alzheimer's &Dementia: The Journal of the Alzheimer's Association, 2006, 2, Sup.1, S342
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記の様に、アミロイドを対象とした画像診断プローブとして、種々の化合物が開示され、臨床応用に向けて検討が進められている。
TZDM、IBOX及びm−I−SBのヨードを[125I]で標識した化合物は、正常マウスを用いた実験の結果、投与後2分点において、いずれも脳内への移行が認められている。しかしこれらの化合物は、正常組織からのクリアランスが十分ではなく、投与後の時間経過に伴い、徐々に脳内に集積する傾向を示している(特表2005−512945号公報、Zhi-Ping Zhuang et al.,Nuclear Medicine
and Biology, 2001, 28, p.887-894、H. F. Kung et al.,J. Am. Chem. Soc., 2001,
123, p.12740-12741)。正常組織からのクリアランスが十分でないと、アミロイド集積部位において十分なコントラストが得られないといった問題がある。SB−13を[11C]で標識した化合物については、ラットを用いた実験により正常組織からのクリアランスを有することが示されているが、そのクリアランス速度は十分に速いとはいえない(Masahiro Ono et al., Nuclear Medicine and Biology, 2003, 30,
p.565-571)。
【0010】
一方、IMPYを初めとするイミダゾピリジン骨格を有する化合物は、投与後脳内へ移行してアミロイドに集積するといった性質を有すると共に、上述した化合物とは異なり正常組織からのクリアランスが早いといった優れた性質を有することが、[125I]標識化合物を用いた実験の結果明らかとされている。しかし、IMPYは、復帰突然変異試験にて陽性を示す化合物であり、この化合物を画像診断プローブとして用いるには、その投与量や投与形態につき十分な注意が必要となる。(国際公開第03/106439号パンフレット)
FDDNPについても、復帰突然変異試験にて陽性を示すことが、報告されている。(国際公開第03/106439号パンフレット)
【0011】
本発明は、アミロイドを標的とした画像診断プローブとして種々の化合物が開示されているものの、臨床使用に耐え得る性能を有することが確認された化合物は未だ存在していないという上記事情に鑑みてなされたものであり、アミロイドを標的とした画像診断プローブとして有効な化合物及び該化合物を配合した生体組織に沈着したアミロイドの検出試薬を得ることを目的とした。
【課題を解決するための手段】
【0012】
発明者等は鋭意検討を重ねた結果、イミダゾピリジン−フェニル骨格を有し、フェニル基にアルキル鎖を介して水酸基を結合させた一連の化合物により、アミロイドを標的とした画像診断プローブとして有効な化合物を提供し得ることを見出し、本発明を完成した。
【0013】
本発明の一側面によると、下記式(1):
【0014】
【化4】

で表されることを特徴とする化合物並びにその塩、又は該化合物を配合してなる、生体組織に沈着したアミロイドの検出試薬が提供される。
【0015】
ここで、生体組織としては、アミロイドーシスにおいてアミロイドが沈着することが知られている種々の組織とすることができる。このような生体組織の代表例としては、脳、心臓、肺、膵臓、骨、関節等が挙げられ、最も代表的な生体組織としては、脳が挙げられる。脳を対象とした場合における、代表的なアミロイドーシスは、アルツハイマー病及びレビー小体型痴呆である。
【0016】
式(1)中、Rは放射性ハロゲン置換基、mは1〜4の整数である。
放射性ハロゲンとしては、SPECTやPETにおいて通常用いられている核種を用いることができる。好ましくは、18F、76Br、123I、124I、125I及び131Iからなる群より選択される放射性ハロゲンを用いることができ、より好ましくは18F又は123Iを用いることができる。
【0017】
なお、Rの結合部位は、イミダゾピリジン環における6位の炭素であることが好ましく、ヒドロキシアルキル基の結合部位は、フェニル基の4’位の炭素であることが好ましい。従って、好ましい態様において、本発明の一側面に係る化合物は、下記式(3):
【0018】
【化5】

で表される化合物並びにその塩であり、本発明に係る生体組織に沈着したアミロイドの検出試薬は、前記式(3)で表される化合物並びにその塩を配合してなるものである。ここで、式(3)中のR及びmは、前記式(1)におけるものと同様である。
【0019】
本発明の別の一側面によると、下記式(2):
【0020】
【化6】

で表される化合物並びにその塩が提供される。
【0021】
式(2)中、Rは非放射性ハロゲン置換基、ニトロ基、アルキル鎖が炭素数1〜4の長さであるトリアルキルアンモニウム基、アルキル鎖が炭素数1〜4の長さであるトリアルキルスタニル置換基又はトリフェニルスタニル基からなる群より選ばれる基であり、mは1〜4の整数である。
【0022】
なお、Rの結合部位は、イミダゾピリジン環における6位の炭素であることが好ましく、ヒドロキシアルキル基の結合部位は、フェニル基の4’位の炭素であることが好ましい。従って、好ましい態様において、本発明の一側面に係る化合物は、下記式(4):
【0023】
【化7】

で表される化合物並びにその塩である。ここで、式(4)におけるR及びmは、前記式(2)におけるものと同様である。
【発明の効果】
【0024】
本発明により、生体内における良好なアミロイド描出能を有する、新規なアミロイド親和性化合物及び生体組織に沈着したアミロイドの検出試薬を得ることが可能となった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
(標識前駆体化合物の合成)
以下、6−トリブチルスタニル−2−[4’−(ヒドロキシメチル)フェニル]イミダゾ[1,2−a]ピリジンを合成する場合を例にとり、本発明に係る化合物の合成方法について説明する。
【0026】
6−トリブチルスタニル−2−[4’−(ヒドロキシメチル)フェニル]イミダゾ[1,2−a]ピリジンの合成にあたっては、まず、公知の方法(例えば、図1、工程1に示す方法)にて合成された4’−(ヒドロキシメチル)アセトフェノンと臭化第二銅とを反応させ、2−ブロモ−4’−(アセトキシメチル)アセトフェノンを得る(図1、工程2)。この反応は、定法、例えば文献(King L. Carroll & Ostrum G. Kenneth,
Journal of Organic Chemistry, 1964, 29(12), p.3459-3461)記載の方法に従って行うことができる。
【0027】
次に、上記で合成した2−ブロモ−4’−(アセトキシメチル)アセトフェノンを2−アミノ−5−ヨードピリジンと反応させ、2−[4’−(アセトキシメチル)フェニル]−6−ヨードイミダゾ[1,2−a]ピリジンを合成する(図1、工程3)。この工程は、例えば、下記の要領にて行うことができる。
【0028】
まず、2−ブロモ−4’−(アセトキシメチル)アセトフェノンと2−アミノ−5−ヨードピリジンとをアセトニトリル等の不活性溶媒に溶解し、還流温度にて2〜6時間反応させると2−[4’−(アセトキシメチル)フェニル]−6−ヨードイミダゾ[1,2−a]ピリジンの臭化水素酸塩が生成し、白色沈殿を生じる。このときの溶媒としては、アセトニトリルの他、メタノールやアセトンといった、同様の反応にて通常用いられる溶媒を用いることができる。また、反応温度は還流することができる温度であればよく、例えばアセトニトリルを溶媒とした場合は110℃とすることができる。なお、用いる溶媒の量は、反応に十分な量であればよいが、多過ぎると反応物の沈殿を得ることができないため、注意が必要である。例えば、1mmol相当の2−ブロモ−4’−(アセトキシメチル)アセトフェノンを用いて反応させる場合は、約3〜6mLの溶媒を用いればよい。
【0029】
次に、反応液をろ過して沈殿物をろ別後、この白色沈殿をメタノール/水混液(2:5)に懸濁し、これに飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を沈殿物に対して大過剰となるように加えると、2−[4’−(アセトキシメチル)フェニル]−6−ヨードイミダゾ[1,2−a]ピリジンが遊離して沈殿が生ずる。この新たに生じた沈殿をろ取することによって、本工程の目的物である2−[4’−(アセトキシメチル)フェニル]−6−ヨードイミダゾ[1,2−a]ピリジンを得ることができる(図1、工程3)。メタノール/水混液の量は、反応させるために十分な量であれば特に限定する必要はないが、多すぎると生成物の析出の妨げとなるため注意が必要である。また、炭酸水素ナトリウムの量は、反応基質である前記沈殿物に対して大過剰であれば特に限定する必要はない。
【0030】
次いで、2−[4’−(アセトキシメチル)フェニル]−6−ヨードイミダゾ[1,2−a]ピリジンにアルコール溶媒中でアルカリ条件を与えるといった公知の方法によりアセチル基を除去し、2−[4’−(ヒドロキシメチル)フェニル]−6−ヨードイミダゾ[1,2−a]ピリジンを得る(図1、工程4)。
【0031】
得られた2−[4’−(ヒドロキシメチル)フェニル]−6−ヨードイミダゾ[1,2−a]ピリジンをジオキサンに溶解し、トリエチルアミンを加えた後、ビストリブチルスズ及び触媒量のテトラキストリフェニルホスフィンパラジウムを添加する。この反応液を約90℃に加熱して一昼夜程度反応させた後、溶媒を留去し、クロマトグラム精製を行って、目的物である6−トリブチルスタニル−2−[4’−(ヒドロキシメチル)フェニル]イミダゾ[1,2−a]ピリジンを得ることができる(図2、工程1)。このとき、ビストリブチルスズの量は、反応基質に対して過剰量となる条件を満たす量であればよく、具体的には反応基質である2−[4’−(ヒドロキシメチル)フェニル]−6−ヨードイミダゾ[1,2−a]ピリジンに対してモル比にして1.5倍程度であれば良い。
【0032】
なお、イミダゾピリジン環にトリブチルスタニル置換基以外のトリアルキルスタニル置換基を結合させた化合物を得る場合は、図2の工程1でビストリブチルスズを用いる代わりに、目的に応じた種々のビストリアルキルスズを用いればよい。例えば、イミダゾピリジン環にトリメチルスタニル置換基を結合させた化合物を合成する場合は、図2の工程1においてビストリメチルスズを用いて上記と同様の反応を行えばよい。
【0033】
また、イミダゾピリジン環における置換基の結合部位が異なる化合物や、2つの置換基が結合した化合物を得る場合には、図1の工程3において、2−アミノ−5−ヨードピリジンの代わりに、目的化合物に対応した種々の化合物を用いて公知の方法によって反応を行えば良い。
【0034】
(放射性ハロゲン標識化合物の合成方法)
次に、放射性ヨード標識体化合物を例にとり、本発明の別の一側面に係る、放射性ハロゲン標識化合物の製造方法について説明する。
【0035】
放射性ヨード標識体化合物の合成は、上記の要領にて合成した標識前駆体化合物を不活性有機溶媒に溶解し、これに公知の方法にて得られた[123I]ヨウ化ナトリウム溶液等を加え、酸及び酸化剤を加えて反応させることによって行うことができる。標識前駆体化合物を溶解させる不活性有機溶媒としては標識前駆体及び[123I]ヨウ化ナトリウム等との間で反応性を有さない種々の溶媒を用いることができ、好ましくはメタノールを用いることができる。
【0036】
酸は種々のものを用いることができ、好ましくは塩酸を用いることができる。
酸化剤は、反応液中のヨウ素を酸化させることができるものであれば特に限定する必要はなく、好ましくは過酸化水素又は過酢酸を用いることができる。酸化剤の添加量は、反応溶液中のヨウ素を酸化させるのに十分な量であれば良い。
【0037】
ヨウ素以外の放射性ハロゲン標識体は、合成目的に応じた標識前駆体を、目的に応じた放射性ハロゲンで標識することによって合成することができる。
【0038】
(本発明に係る診断剤の調製方法及び使用方法)
本発明に係る診断剤は、他の一般に知られている放射性診断剤と同様、本発明に係る放射性ハロゲン標識化合物を所望により適当なpHに調整された水又は生理食塩水、あるいはリンゲル液等に配合させた液として調製することができる。この場合における本化合物の濃度は、配合された本化合物の安定性が得られる濃度以下とする必要がある。本化合物の投与量は、投与された薬剤の分布を画像化するために十分な濃度であれば特に限定する必要はない。例えば、ヨウ素−123(123I)標識化合物及びフッ素−18(18F)標識化合物の場合は、体重60kgの成人一人当り50〜600MBq程度、静脈投与又は局所投与して使用することができる。投与された薬剤の分布は、公知の方法にて画像化することができ、例えばヨウ素−123(123I)標識化合物の場合はSPECT装置、フッ素−18(18F)標識化合物の場合はPET装置を用いて画像化することができる。
【0039】
以下、実施例、比較例及び参考例を記載して本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの内容に限定されるものではない。なお、下記実施例において、実験に供する化合物の名称を、表1の様に定義した。
【0040】
【表1】

【0041】
(実施例1)2−[4’−(ヒドロキシメチル)フェニル]−6−ヨードイミダゾ[1,2−a]ピリジン(非放射性ヨード体)の合成
【0042】
4’−アセチルベンズアルデヒド300mg(2.02mmol相当)をテトラヒドロフラン20mLに溶解し、これにトリアセトキシ水素化ホウ素ナトリウム471mL(2.22mmol相当)を滴下した。これを室温下で2時間攪拌した後、80℃でさらに2時間攪拌した。反応終了後、室温まで冷却し、飽和塩化アンモニウム水溶液を加えて酢酸エチルで3回抽出を行った。合わせた酢酸エチル層を、水及び飽和食塩水で洗浄した後、無水硫酸ナトリウムで乾燥後減圧濃縮し、得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液:ヘキサン/酢酸エチル=3/1)にて精製を行い、4’−(ヒドロキメチル)アセトフェノン242mg(1.61mmol相当)を得た(図1、工程1)。
【0043】
臭化第二銅496mg(2.23mmol相当)に酢酸エチル5.0mLを加えて懸濁させ、これに4’−(ヒドロキメチル)アセトフェノン461mg(2.81mmol相当)を加え、加熱還流した。2.5時間後、反応液を室温まで冷却してろ過を行い、ろ液を減圧濃縮した。得られた粗生成物を、フラッシュシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液:ヘキサン/酢酸エチル=5/1)で精製し、2−ブロモ−4’−(アセトキシメチル)アセトフェノン196mg(0.856mmol相当)を得た(図1、工程2)。
【0044】
2−ブロモ−4’−(アセトキシメチル)アセトフェノン196mg(0.856mmol相当)と2−アミノ−5−ヨードピリジン244mg(0.658mmol相当)をアセトニトリル4.0mLに溶解し、110℃の油浴にて2.5時間加熱還流した。反応終了後、反応液を室温まで冷却し、沈殿物をろ別したのち、アセトニトリルで洗浄し、減圧下乾燥させた。得られた粗結晶は、水5.0mL−メタノール2.0mL混液に懸濁させた後、これに飽和炭酸水素ナトリウム溶液を約10mL加え、超音波洗浄器で10分間振とうした。得られた混合物から、沈殿物をろ別して水でよく洗浄し、減圧下乾燥して、2−[4’−(アセトキシメチル)フェニル]−6−ヨードイミダゾ[1,2−a]ピリジン150mg(0.446mmol相当)を得た(図1、工程3)。
【0045】
2−[4’−(アセトキシメチル)フェニル]−6−ヨードイミダゾ[1,2−a]ピリジン150mg(0.456mmol相当)をメタノール5.0mLに溶解し,炭酸カリウム189mg(1.37mmol相当)を加えた後、室温で3時間攪拌した。反応終了後、飽和塩化アンモニウム水溶液と水を加え、析出した沈殿物をろ別した。ろ別した沈殿物を水、アセトニトリルの順で洗浄し、2−[4’−(ヒドロキシメチル)フェニル]−6−ヨードイミダゾ[1,2−a]ピリジン120mg(0.343mmol相当)を得た(図1、工程4)。
【0046】
得られた2−[4’−(ヒドロキシメチル)フェニル]−6−ヨードイミダゾ[1,2−a]ピリジンのNMR測定結果(内部標準物質:テトラメチルシラン)は、以下の通りであった。
【0047】
使用NMR装置:JNM−ECP−500(日本電子株式会社製)
H−NMR(溶媒:重ジメチルスルホキシド、共鳴周波数:500MHz):d 8.90 ( s, 1H ), 8.29 ( s,
1H ), 7.91 ( d, J = 7.8 Hz, 2H ), 7.42-7.38 ( m, 4H ), 5.22 ( brs, 1H ), 4.52 ( s, 2H )。
【0048】
(実施例2)6−トリブチルスタニル−2−[4’−(ヒドロキシメチル)フェニル]イミダゾ[1,2−a]ピリジンの合成
【0049】
実施例1で得られた、2−[4’−(ヒドロキシメチル)フェニル]−6−ヨードイミダゾ[1,2−a]ピリジン50.0mg(0.143mmol相当)をジオキサン2.0mLに溶解し、トリエチルアミン1.0mLを加えた後、ビストリブチルスズ0.11mL(0.21mmol相当)とテトラキストリフェニルホスフィンパラジウム10.9mg(触媒量)を加えた。反応混合物を90℃で24時間攪拌した後、溶媒を減圧下留去し、残渣をフラッシュシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液:ヘキサン/酢酸エチル=1/1)にて精製を行い、6−トリブチルスタニル−2−[4’−(ヒドロキシメチル)フェニル]イミダゾ[1,2−a]ピリジン48.3mg(0.0941mmol相当)を得た(図2、工程1)。
【0050】
得られた6−トリブチルスタニル−2−[4’−(ヒドロキシメチル)フェニル]イミダゾ[1,2−a]ピリジンのNMR測定結果(内部標準物質:テトラメチルシラン)は、以下の通りであった。
【0051】
使用NMR装置:JNM−ECP−500(日本電子株式会社製)
H−NMR(溶媒:重クロロホルム、共鳴周波数:500MHz):d 7.98 ( s, 1H ), 7.94 ( d, J = 7.8 Hz, 2H ), 7.83 (
s, 1H ), 7.61 ( d, J = 8.7 Hz, 1H ), 7.43 ( d, J = 7.8 Hz, 2H ),
7.16 ( d, J = 8.7, 1H ), 4.73 ( s, 2H ), 1.90 ( brs,
1H ), 1.62-1.49 ( m, 6H ), 1.39-1.32 ( m, 6H ), 1.19-1.05 ( m, 6H ), 0.91 ( t, J =
7.3 Hz, 9H )。
【0052】
13C−NMR(溶媒:重クロロホルム、共鳴周波数:125MHz):d 145.7, 144.8, 140.6, 133.4, 131.4, 130.1, 127.4, 126.2,
122.2, 117.1, 107.2, 65.2, 29.0, 27.3, 13.7, 9.8。
【0053】
(実施例3)2−[4’−(ヒドロキシメチル)フェニル]−6−[123I]ヨードイミダゾ[1,2−a]ピリジンの合成
【0054】
6−トリブチルスタニル−2−[4’−(2”−ヒドロキシエチル)フェニル]イミダゾ[1,2−a]ピリジンのメタノール/ジメチルスルホキシド=9/1混合溶液(濃度:1mg/mL)100μLに、2mol/L塩酸90μL、1mmol/mLヨウ化ナトリウム15μL、562MBqの[123I]ヨウ化ナトリウム150μL、10%(W/V)過酸化水素20μLを添加した。当該混合液を50℃にて10分間静置した後、下記の条件のHPLCに付して2−[4’−(ヒドロキシメチル)フェニル]−6−[123I]ヨードイミダゾ[1,2−a]ピリジン画分を分取した。
【0055】
HPLC条件:
カラム:Phenomenex Luna C18(商品名、Phenomenex社製、サイズ:4.6×150mm)
移動相:0.1%トリフルオロ酢酸を含む水/0.1%トリフルオロ酢酸を含むアセトニトリル=80/20→0/100(17分)
流速:1.0 mL/分
検出器:紫外可視吸光光度計(検出波長:282nm)及び放射線検出器(raytest社 STEFFI型)
【0056】
当該画分に水10mLを添加した液を逆相カラム(商品名:Sep−Pak(登録商標) Light C8 Cartridges、Waters社製、充填剤の充填量145mg)に通液し、2−[4’−(ヒドロキシメチル)フェニル]−6−[123I]ヨードイミダゾ[1,2−a]ピリジンを当該カラムに吸着捕集した。このカラムを水1mLで洗浄した後、ジエチルエーテル1mLを通液して2−[4’−(ヒドロキシメチル)フェニル]−6−[123I]ヨードイミダゾ[1,2−a]ピリジンを溶出させた。得られた放射能量は合成直後において161.6MBqであった。また、下記の条件によるTLC分析を行ったところ、その放射化学的純度は97%であった。
【0057】
TLC分析条件:
TLCプレート:Silica Gel 60 F254(製品名、メルク社製)
展開相:クロロホルム/メタノール/トリエチルアミン=100/1/2
検出器:Rita Star(製品名、raytest社製)
【0058】
(実施例4)2−[4’−(2”−ヒドロキシエチル)フェニル]−6−ヨードイミダゾ[1,2−a]ピリジン(非放射性ヨード体)の合成
【0059】
塩化アルミニウム1.68g(12.6mmol相当)を1,2−ジクロロエタン10mLに溶解し、水浴で10℃に冷却した。これに塩化アセチル0.939mL(13.2mmol相当)を滴下して1.5時間攪拌した後、室温にもどし、酢酸フェネチル985mg(6.00mmol相当)を加えてさらに2時間攪拌した。反応終了後、反応液を氷水に滴下し、ジクロロメタンで3回抽出を行った。合わせたジクロロメタン層を、水及び飽和食塩水で洗浄した後、無水硫酸ナトリウムで乾燥後減圧濃縮し、4’−(2”−アセトキシエチル)アセトフェノンの粗精製物1.78gを得た(図3、工程1)。
【0060】
得られた4’−(2”−アセトキシエチル)アセトフェノン粗精製物1.78gをメタノール20mLに溶解し、炭酸カリウム1.24(9.0mmol相当)を加え1時間攪拌した。反応終了後、飽和塩化アンモニウム水溶液を加え、酢酸エチルで3回抽出を行った。合わせた酢酸エチル層を、水及び飽和食塩水で洗浄した後、無水硫酸ナトリウムで乾燥後減圧濃縮した。得られた粗生成物につきシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液:ヘキサン/酢酸エチル=2/1)にて精製を行い、4’−(2”−ヒドロキエチル)アセトフェノン461mg(2.81mmol相当)を得た(図3、工程2)。
【0061】
臭化第二銅1.51g(6.46mmol相当)に酢酸エチル20mLを加えて懸濁させ、これに4’−(2”−ヒドロキエチル)アセトフェノン461mg(2.81mmol相当)を加え、加熱還流した。3時間後、反応液を室温まで冷却してろ過を行い、ろ液を減圧濃縮した。得られた粗生成物を、フラッシュシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液:ヘキサン/酢酸エチル=7/1)で精製し、2−ブロモ−4’−(2”−アセトキシエチル)アセトフェノン656mg(2.70mmol相当)を得た(図3、工程3)。
【0062】
2−ブロモ−4’−(2”−アセトキシエチル)アセトフェノン656mg(2.70mmol相当)と2−アミノ−5−ヨードピリジン601mg(2.73mmol相当)をアセトニトリル10mLに溶解し、110℃の油浴にて3時間加熱還流した。反応終了後、反応液を室温まで冷却し、沈殿物をろ別したのち、アセトニトリルで洗浄し、減圧下乾燥させた。得られた粗結晶をメタノール20mLに懸濁させた後、これに炭酸カリウム1.49g(10.8mmol相当)を加え、さらに1時間攪拌した。反応終了後,水(10.0mL)を加え、析出した沈殿物をろ別した。ろ別した沈殿物を水、アセトニトリルの順で洗浄し、2−[4’−(2”−ヒドロキシエチル)フェニル]−6−ヨードイミダゾ[1,2−a]ピリジン397mg(0.753mmol相当)を得た(図3、工程4)。
【0063】
得られた2−[4’−(2”−ヒドロキシエチル)フェニル]−6−ヨードイミダゾ[1,2−a]ピリジンのNMR測定結果(内部標準物質:テトラメチルシラン)は、以下の通りであった。
【0064】
使用NMR装置:JNM−ECP−500(日本電子株式会社製)
H−NMR(溶媒:重ジメチルスルホキシド、共鳴周波数:500MHz):d 8.82 ( s, 1H), 8.27 ( s,
1H ), 7.85 ( d, J = 8.2 Hz, 2H ), 7.42 ( s, 1H ), 7.29 ( d, J =
8.2 Hz, 2H ), 3.62 ( t, J = 6.9 Hz, 2H ), 2.75 ( t, J = 6.9 Hz,
2H )。
【0065】
13C−NMR(溶媒:重クロロホルム、共鳴周波数:125MHz):d 144.7, 143.3, 139.4, 132.1, 131.2, 131.0, 129.2, 125.4,
117.7, 110.5, 108.4, 77.3, 61.8。
【0066】
(実施例5)6−トリブチルスタニル−2−[4’−(2”−ヒドロキシエチル)フェニル]イミダゾ[1,2−a]ピリジンの合成
【0067】
2−[4’−(2”−ヒドロキシエチル)フェニル]−6−ヨードイミダゾ[1,2−a]ピリジン96.1mg(0.264mmol相当)をジオキサン4.0mLに溶解し、トリエチルアミン2.0mLを加えた後、ビストリブチルスズ0.20mL(0.40mmol相当)とテトラキストリフェニルホスフィンパラジウム18.3mg(触媒量)を加えた。反応混合物を90℃で18時間攪拌した後、溶媒を減圧下留去し、残渣をフラッシュシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液:ヘキサン/酢酸エチル=2/1)にて精製を行い、6−トリブチルスタニル−2−[4’−(2”−ヒドロキシエチル)フェニル]イミダゾ[1,2−a]ピリジン96.2mg(0.182mmol相当)を得た(図4、工程1)。
【0068】
得られた6−トリブチルスタニル−2−[4’−(2”−ヒドロキシエチル)フェニル]イミダゾ[1,2−a]ピリジンのNMR測定結果(内部標準物質:テトラメチルシラン)は、以下の通りであった。
【0069】
使用NMR装置:JNM−ECP−500(日本電子株式会社製)
H−NMR(溶媒:重クロロホルム、共鳴周波数:500MHz):d 7.92 ( s, 1H ), 7.84 ( d, J
= 7.8 Hz, 2H ), 7.75 ( s, 1H ), 7.53 ( d, J = 8.7 Hz, 1H ), 7.23 ( d, J
= 7.8 Hz, 2H ), 7.09 ( d, J = 8.7, 1H ), 3.84 ( t, J = 6.4 Hz, 2H
), 2.85 ( t, J = 6.4 Hz, 2H ), 1.90 ( brs, 1H
), 1.58-1.42 ( m, 6H ), 1.32-1.26 ( m, 6H ), 1.12-0.99 ( m, 6H ), 0.85 ( t, J = 7.3 Hz, 9H )。
【0070】
(実施例6)2−[4’−(2”−ヒドロキシエチル)フェニル]−6−[123I]ヨードイミダゾ[1,2−a]ピリジンの合成
【0071】
6−トリブチルスタニル−2−[4’−(2”−ヒドロキシエチル)フェニル]イミダゾ[1,2−a]ピリジンのメタノール/ジメチルスルホキシド=9/1混合溶液(濃度:1mg/mL)60μLに、2mol/L塩酸80μL、1mmol/mLヨウ化ナトリウム15μL、537MBqの[123I]ヨウ化ナトリウム120μL、10%(W/V)過酸化水素15μLを添加した。当該混合液を50℃にて10分間静置した後、実施例3と同様の条件によるHPLCに付して2−[4’−(2”−ヒドロキシエチル)フェニル]−6−[123I]ヨードイミダゾ[1,2−a]ピリジン画分を分取した。
【0072】
当該画分に水10mLを添加した液を逆相カラム(商品名:Sep−Pak(登録商標) Light C8 Cartridges、Waters社製、充填剤の充填量145mg)に通液し、2−[4’−(2”−ヒドロキシエチル)フェニル]−6−[123I]ヨードイミダゾ[1,2−a]ピリジンを当該カラムに吸着捕集した。このカラムを水1mLで洗浄した後、ジエチルエーテル1mLを通液して2−[4’−(2”−ヒドロキシエチル)フェニル]−6−[123I]ヨードイミダゾ[1,2−a]ピリジンを溶出させた。得られた放射能量は合成直後において348MBqであった。また、実施例3と同様の条件によるTLC分析を行ったところ、その放射化学的純度は99%であった。
【0073】
(実施例7)2−[4’−(3”−ヒドロキシプロピル)フェニル]−6−ヨードイミダゾ[1,2−a]ピリジン(非放射性ヨード体)の合成
【0074】
塩化アルミニウム8.40g(63mmol相当)を1,2−ジクロロエタン50mLに溶解し、水浴で10℃に冷却した。これに塩化アセチル4.69mL(66mmol相当)を30分かけて滴下し、2.5時間攪拌した。その後、反応液を室温にもどし、3−フェニルプロピルアセテート5.35g(30mmol相当)を20分かけて加え、さらに2時間攪拌した。反応終了後、反応液を氷水に滴下し、ジクロロメタンで3回抽出を行った。合わせたジクロロメタン層を、水及び飽和食塩水で洗浄した後、無水硫酸ナトリウムで乾燥後減圧濃縮し、4’−(3”−アセトキシプロピル)アセトフェノンの粗精製物8.36gを得た(図5、工程1)。
【0075】
得られた4’−(3”−アセトキシプロピル)アセトフェノン粗精製物8.36gをメタノール100mLに溶解し、炭酸カリウム6.22(45.0mmol相当)を加え2時間攪拌した。反応終了後、飽和塩化アンモニウム水溶液を加え、酢酸エチルで3回抽出を行った。合わせた酢酸エチル層を、水及び飽和食塩水で洗浄した後、無水硫酸ナトリウムで乾燥後減圧濃縮した。得られた粗生成物につきシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液:ヘキサン/酢酸エチル=2/1)にて精製を行い、4’−(3”−ヒドロキシプロピル)アセトフェノン2.68g(15.0mmol相当)を得た(図5、工程2)。
【0076】
臭化第二銅1.50g(6.44mmol相当)に酢酸エチル20mLを加えて懸濁させ、これに4’−(3”−ヒドロキシプロピル)アセトフェノン500mg(2.80mmol相当)を加え、加熱還流した。2時間後、反応液を室温まで冷却してろ過を行い、ろ液を減圧濃縮した。得られた粗生成物を、フラッシュシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液:ヘキサン/酢酸エチル=3/1)で精製し、2−ブロモ−4’−(3”−アセトキシプロピル)アセトフェノン702mg(2.73mmol相当)を得た(図5、工程3)。
【0077】
2−ブロモ−4’−(3”−アセトキシプロピル)アセトフェノン702mg(2.73mmol相当)と2−アミノ−5−ヨードピリジン601mg(2.73mmol相当)をアセトニトリル15mLに溶解し、110℃の油浴にて2時間加熱還流した。反応終了後、反応液を室温まで冷却し、沈殿物をろ別したのち、アセトニトリルで洗浄し、減圧下乾燥させた。得られた粗結晶は、水2.0mL−メタノール1.0mL混液に懸濁させた後、これに飽和炭酸水素ナトリウム溶液を約10mL加え、超音波洗浄器で10分間振とうした。得られた混合物から、沈殿物をろ別して水でよく洗浄し、減圧下乾燥して、2−[4’−(3”−アセトキシプロピル)フェニル]−6−ヨードイミダゾ[1,2−a]ピリジン607mg(1.60mmol相当)を得た(図5、工程4)。
【0078】
2−[4’−(3”−アセトキシプロピル)フェニル]−6−ヨードイミダゾ[1,2−a]ピリジン450mg(1.07mmol相当)をメタノール10.0mLに溶解し、炭酸カリウム444mg(3.21mmol相当)を加えた後、室温で20時間攪拌した。反応終了後、水(10.0mL)を加え、析出した沈殿物をろ別した。ろ別した沈殿物を水、アセトニトリルの順で洗浄し、2−[4’−(3”−ヒドロキシプロピル)フェニル]−6−ヨードイミダゾ[1,2−a]ピリジン403mg(1.07mmol相当)を得た(図5、工程5)。
【0079】
得られた2−[4’−(3”−ヒドロキシプロピル)フェニル]−6−ヨードイミダゾ[1,2−a]ピリジンのNMR測定結果(内部標準物質:テトラメチルシラン)は、以下の通りであった。
【0080】
使用NMR装置:JNM−ECP−500(日本電子株式会社製)
H−NMR(溶媒:重ジメチルスルホキシド、共鳴周波数:500MHz):d 8.38 ( d, J = 0.9 Hz, 1H ), 7.86 ( d, J =
7.8 Hz, 2H ), 7.43 ( s, 1H ), 7.34-7.33 ( m, 2H ), 7.32-7.26 ( m, 2H ),
3.72-3.69 ( m, 2H ), 2.76 ( t, J = 7.8 Hz, 2H ), 1.95-1.92 ( m, 2H )。
【0081】
(実施例8)6−トリブチルスタニル−2−[4’−(3”−ヒドロキシプロピル)フェニル]イミダゾ[1,2−a]ピリジンの合成
【0082】
2−[4’−(3”−ヒドロキシプロピル)フェニル]−6−ヨードイミダゾ[1,2−a]ピリジン100mg(0.264mmol相当)をジオキサン4.0mLに溶解し、トリエチルアミン2.0mLを加えた後、ビストリブチルスズ0.20mL(0.40mmol相当)とテトラキストリフェニルホスフィンパラジウム18.3mg(触媒量)を加えた。反応混合物を90℃で18時間攪拌した後、溶媒を減圧下留去し、残渣をフラッシュシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液:ヘキサン/酢酸エチル=2/1)にて精製を行い、6−トリブチルスタニル−2−[4’−(3”−ヒドロキシプロピル)フェニル]イミダゾ[1,2−a]ピリジン96.8mg(0.189mmol相当)を得た(図6、工程1)。
【0083】
得られた6−トリブチルスタニル−2−[4’−(3”−ヒドロキシプロピル)フェニル]イミダゾ[1,2−a]ピリジンのNMR測定結果(内部標準物質:テトラメチルシラン)は、以下の通りであった。
【0084】
使用NMR装置:JNM−ECP−500(日本電子株式会社製)
H−NMR(溶媒:重クロロホルム、共鳴周波数:500MHz):d 7.98 ( s, 1H ), 7.88 ( d, J = 7.9 Hz, 2H ), 7.80 (
s, 1H ), 7.59 ( d, J = 8.7 Hz, 1H ), 7.28-7.26 ( m, 2H ), 7.15 ( d, J
= 8.7, 1H ), 3.72-3.69 ( m, 2H ), 2.75 ( t, J = 7.3 Hz, 2H ), 1.96-1.91
( m, 2H ), 1.61-1.50 ( m, 6H ), 1.39-1.32 ( m, 6H ), 1.13-1.04 ( m, 6H ),
0.92-0.89 ( m, 9H )。
【0085】
(実施例9)2−[4’−(3”−ヒドロキシプロピル)フェニル]−6−[123I]ヨードイミダゾ[1,2−a]ピリジンの合成
【0086】
6−トリブチルスタニル−2−[4’−(3”−ヒドロキシプロピル)フェニル]イミダゾ[1,2−a]ピリジンのメタノール/ジメチルスルホキシド=9/1混合溶液(濃度:1mg/mL)60μLに、2mol/L塩酸40μL、1mmol/mLヨウ化ナトリウム15μL、166.9MBqの[123I]ヨウ化ナトリウム40μL、10%(W/V)過酸化水素20μLを添加した。当該混合液を50℃にて10分間静置した後、実施例3と同様の条件によるHPLCに付して2−[4’−(3”−ヒドロキシプロピル)フェニル]−6−[123I]ヨードイミダゾ[1,2−a]ピリジン画分を分取した。
【0087】
当該画分に水10mLを添加した液を逆相カラム(商品名:Sep−Pak(登録商標) Light C8 Cartridges、Waters社製、充填剤の充填量145mg)に通液し、2−[4’−(3”−ヒドロキシプロピル)フェニル]−6−[123I]ヨードイミダゾ[1,2−a]ピリジンを当該カラムに吸着捕集した。このカラムを水1mLで洗浄した後、ジエチルエーテル1mLを通液して2−[4’−(3”−ヒドロキシプロピル)フェニル]−6−[123I]ヨードイミダゾ[1,2−a]ピリジンを溶出させた。得られた放射能量は合成直後において49.8MBqであった。また、実施例3と同様の条件によるTLC分析を行ったところ、その放射化学的純度は97%であった。
【0088】
(参考例1)[123I]−IMPYの合成
【0089】
文献(Zhi-Ping Zhuang
et al., J. Med. Chem, 2003, 46, p.237-243)記載の方法に従い、6−トリブチルスタニル−2−[4’−(N,N−ジメチルアミノ)フェニル]イミダゾ[1,2−a]ピリジンを合成し、メタノールに溶解した(濃度:1mg/mL)。当該溶液53μLに、1mol/L塩酸 75μL、224〜253MBqの[123I]ヨウ化ナトリウム60〜70μL、1mmol/L
ヨウ化ナトリウム溶液 10μL、10%(W/V)過酸化水素15μLを添加した。当該混合液を50℃にて10分間静置した後、実施例3と同様の条件によるHPLCに付して[123I]−IMPY画分を分取した。
【0090】
当該画分に水10mLを添加した液を逆相カラム(商品名:Sep−Pak(登録商標)Light
C8 Cartridges、Waters社製、充填剤の充填量:145mg)に通液し、[123I]−IMPYを当該カラムに吸着捕集した。このカラムを水1mLで洗浄した後、ジエチルエーテル1mLを通液して[123I]−IMPYを溶出させた。得られた放射能量は合成直後において41〜57MBqであった。また、実施例3と同様の条件にてTLC分析を行ったところ、その放射化学的純度は93%であった。
【0091】
(実施例10〜12、比較例1)オクタノール抽出法を用いた分配係数の測定
【0092】
化合物の血液脳関門(以下、BBBという)透過性の指標として一般に知られている、オクタノール抽出法を用いた分配係数(以下、logPoctanolという)を測定した。
【0093】
(方法)
化合物1のジエチルエーテル溶液、化合物2のジエチルエーテル溶液、化合物3のジエチルエーテル溶液及び[123I]−IMPYのジエチルエーテル溶液を、それぞれ10mg/mLアスコルビン酸含有生理食塩液にて希釈し、放射能濃度20〜36MBq/mLに調整した。これらの液各10μLを、それぞれオクタノール2mLに添加し、さらに10mmol/Lリン酸緩衝液(pH7.4)2mLを加えて30秒間攪拌した。それぞれの混合液を低速遠心機(形式:CTD4,日立工機株式会社製)で遠心分離(2000 回転/分×60分間)した後、オクタノール層及び水層を各1mL分取し、それぞれの放射能カウントをオートウェル・ガンマシステム(形式:ARC−301B、Aloka社製)にて計測した。得られた放射能カウントを用い、式(1)よりlogPoctanol値を算出した。
【0094】
【数1】

【0095】
(結果)
結果を表2に示す。この表に示すように、化合物1、化合物2及び化合物3のlogPoctanolの値は、1〜3の間の値を示していた。BBBを透過可能な化合物においては、logPoctanol値は1〜3の間の値の値であることが知られている(Douglas D. Dischino
et al., J.Nucl.Med., (1983), 24, p.1030-1038)。以上の結果より、化合物1、化合物2及び化合物3は、IMPY同様にBBB透過性を有することが示唆された。
【0096】
【表2】

【0097】
(実施例13〜15、比較例2)脳内移行性及びクリアランスの測定
【0098】
化合物1、化合物2及び化合物3を用い、雄性のWistar系ラット(7週齢)における脳への放射能集積の経時的変化を測定した。
【0099】
(方法)
化合物1を10mg/mLアスコルビン酸含有生理食塩液に溶解した液(放射能濃度20MBq/mL)、化合物2を10mg/mLアスコルビン酸含有生理食塩液に溶解した液(放射能濃度36MBq/mL)、及び、化合物3を10mg/mLアスコルビン酸含有生理食塩液に溶解した液(放射能濃度25MBq/mL)をそれぞれ調製し、試料溶液とした。この試料溶液を、チオペンタール麻酔下で尾静脈より雄性のWistar系ラット(7週齢)に投与した(投与量:0.05mL、投与した放射能:1.0〜1.8MBq相当)。投与後2分、5分、30分、60分に腹部大動脈より脱血した上で脳を採取し、脳の質量を測定し、さらに脳の放射能をシングルチャネルアナライザー(検出器型番:SP−20、応用光研工業株式会社製)を用いて計測した(以下、本実施例にてAとする)。また、残り全身の放射能量を同様に測定した(以下、本実施例にてBとする)。これらの測定結果を用い、下記式(2)より、各解剖時間点における、脳への単位重量当たりの放射能集積量(%ID/g)を算出した。
【0100】
別に、[123I]−IMPYを10mg/mLアスコルビン酸含有生理食塩液に溶解した液(放射能濃度16MBq/mL)を調製し、上記と同様の操作を行って、各解剖時間点における、脳への単位重量当たりの放射能集積量(%ID/g)を算出した。
なお、実施例13〜15、比較例2のそれぞれは、各時間点において、それぞれ3匹の動物を用いて実験を行った。
【0101】
【数2】

【0102】
(結果)
結果を表3に示す。表3に示すように、化合物1、化合物2及び化合物3は、投与後2分点において、123I−IMPY同様、高い放射能集積が認められ、その後60分にかけて速やかに消失する傾向を示していた。この結果より、化合物1、化合物2及び化合物3は、123I−IMPYと同様、高い脳移行性及び速やかな脳からのクリアランスを有することが示唆された。
【0103】
【表3】

【0104】
(実施例16〜18)脳内アミロイドの描出の確認
【0105】
本発明に係る化合物が脳内アミロイドを描出し得るかを評価するため、下記の実験を行った。
【0106】
(方法)
(1)Aβ1−42(和光純薬工業)をリン酸緩衝液(pH7.4)で溶解して37℃で72時間振盪させ、1mg/mLの凝集Aβ懸濁液(以下、本実施例にてアミロイド懸濁液という)を得た。
【0107】
(2)チオペンタール麻酔下、雄性Wistar系ラット(7週齢)の片側扁桃核へ上記アミロイド懸濁液を2.5μL(25μg相当)注入し、対照として、反対側の扁桃核にリン酸緩衝生理食塩液(pH7.4)を2.5μL注入した。アミロイド懸濁液及びリン酸緩衝生理食塩液(pH7.4)注入1日後のラットを、検体とした。
【0108】
(3)化合物1を10mg/mLアスコルビン酸含有生理食塩液に溶解した液(放射能濃度20MBq/mL)、化合物2を10mg/mLアスコルビン酸含有生理食塩液に溶解した液(放射能濃度36MBq/mL)、化合物3を10mg/mLアスコルビン酸含有生理食塩液に溶解した液(放射能濃度25MBq/mL)をそれぞれ調製し、試料溶液とした。この試料溶液を、チオペンタール麻酔下、上記ラットに尾静脈より投与した(投与量:0.5mL、投与した放射能:10〜18MBq相当)。
【0109】
(4)投与60分後に脳を摘出して、ミクロトーム(形式:CM3050S、LEICA社製)を用いて厚さ10μmの脳切片を作製した。当該脳切片をイメージングプレート上で20時間露光させた後、バイオイメージングアナライザー(形式:BAS−2500、富士写真フィルム株式会社製)を用いて画像解析を行った。
【0110】
(5)バイオイメージングアナライザーを用いた上記画像解析の終了後、チオフラビンTによる病理染色を行って蛍光顕微鏡(株式会社ニコン製、形式:TE2000−U型、励起波長:400〜440nm、検出波長:470nm)を用いたイメージングを行い、当該切片上にアミロイドが沈着していることを確認した(図・7b、図8b及び図9b)。
【0111】
(結果)
アミロイド脳内注入ラットの脳切片におけるオートラジオグラム及びチオフラビンT染色のイメージを図7〜図9に示す。この図に示すように、いずれの化合物においても、アミロイド懸濁液を注入した側の扁桃核において、明らかな放射能集積が認められた。また、放射能集積部位におけるチオフラビンT染色の結果より、当該部位においてアミロイドが存在していることが確認された。一方、生理食塩液を注入した側の扁桃核においては、他の部位と比較した有意な放射能集積は確認されなかった。
この結果より、化合物1、化合物2及び化合物3は、脳内アミロイドの描出能を有することが示唆された。
【0112】
(実施例19)復帰突然変異試験
【0113】
化合物4の遺伝子突然変異誘発性を調べるため、ネズミチフス菌(Salmonella
typhimurium)のTA98、TA100を用いる復帰突然変異試験(以下、Ames試験という)を行った。
【0114】
試験はS9mix無添加とS9mix添加の場合について実施した。陰性対象はジメチルスルホオキサイド(以下、DMSOという)を用いた。陽性対象はS9mix無添加とする場合は2−(2−フリル)−3−(5−ニトロ−2−フリル)アクリルアミド(以下、AF−2という)を用い、S9mix添加の場合は2−アミノアントラセン(以下、2−AAという)を用いた。
【0115】
試験用プレートへ添加する被験液として、化合物4をDMSOで溶解した最高濃度液(化合物濃度:50mg/mL)及び最高濃度液をDMSOで希釈した各濃度の被験液を調製した。S9mix無添加とする場合の陽性対象については、試験菌株にTA98を用いる場合はAF−2をDMSOで溶解した被験液(化合物濃度:1μg/mL)、試験菌株にTA100を用いる場合はAF−2をDMSOで溶解した被験液(化合物濃度:0.1μg/mL)を用いた。S9mixを添加する場合の陽性対象については、試験菌株にTA98を用いる場合は2−AAをDMSOで溶解した被験液(化合物濃度:5μg/mL)、試験菌株にTA100を用いる場合は2−AAをDMSOで溶解した被験液(化合物濃度:10μg/mL)を用いた。
【0116】
各被験液の添加液量は0.1mL/プレートとし、陰性対象についてはDMSOのみを0.1mL/プレートとなるように添加した。各被験液と各試験菌株とを混合後、軟寒天を用いて試験用プレート上の培地へ重層し、37℃で48時間培養した。別に、各被験液とS9mixと試験菌株を混合後、軟寒天を用いて試験用プレート上の培地へ重層し、37℃で48時間培養した。判定は、培養後のプレートにおける復帰突然変異コロニー数をカウントすることにより行い、復帰突然変異コロニー数が陰性対照の2倍以上の値を示し、更に濃度に依存して増加した場合を陽性とした。
【0117】
結果を表4に示す。化合物4処理群における復帰変異コロニー数は、いずれの菌株ともS9mix添加の有無および被験物質添加量にかかわらず、陰性対照物質処理群の2倍未満であった。一方、陽性対照物質処理群は、明らかな復帰変異コロニー数の増加を示していた。以上の結果より、化合物4はAmes陰性と判定され、遺伝子突然変異誘発性は無いものと判断された。
【0118】
【表4】

【産業上の利用可能性】
【0119】
本発明に係る化合物は、診断薬分野において利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0120】
【図1】2−[4’−(ヒドロキシメチル)フェニル]−6−ヨードイミダゾ[1,2−a]ピリジン(非放射性ヨード体)の合成スキーム。
【図2】6−トリブチルスタニル−2−[4’−(ヒドロキシメチル)フェニル]イミダゾ[1,2−a]ピリジンの合成スキーム。
【図3】2−[4’−(2”−ヒドロキシエチル)フェニル]−6−ヨードイミダゾ[1,2−a]ピリジン(非放射性ヨード体)の合成スキーム。
【図4】6−トリブチルスタニル−2−[4’−(2”−ヒドロキシエチル)フェニル]イミダゾ[1,2−a]ピリジンの合成スキーム。
【図5】2−[4’−(3”−ヒドロキシプロピル)フェニル]−6−ヨードイミダゾ[1,2−a]ピリジン(非放射性ヨード体)の合成スキーム。
【図6】6−トリブチルスタニル−2−[4’−(3”−ヒドロキシプロピル)フェニル]イミダゾ[1,2−a]ピリジンの合成スキーム。
【図7】(a)2−[4’−(3”−ヒドロキシプロピル)フェニル]−6−[123I]ヨードイミダゾ[1,2−a]ピリジン投与後の脳切片におけるオートラジオグラム及び(b)チオフラビンT染色試料の蛍光顕微鏡像(アミロイド懸濁液投与部位の拡大表示)。
【図8】(a)2−[4’−(2”−ヒドロキシエチル)フェニル]−6−[123I]ヨードイミダゾ[1,2−a]ピリジン投与後の脳切片におけるオートラジオグラム及び(b)チオフラビンT染色試料の蛍光顕微鏡像(アミロイド懸濁液投与部位の拡大表示)。
【図9】(a)2−[4’−(ヒドロキシメチル)フェニル]−6−[123I]ヨードイミダゾ[1,2−a]ピリジン投与後の脳切片におけるオートラジオグラム及び(b)チオフラビンT染色試料の蛍光顕微鏡像(アミロイド懸濁液投与部位の拡大表示)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1):
【化1】

(式中、Rは放射性ハロゲン置換基、mは1〜4の整数である。)で表されることを特徴とする、化合物並びにその塩。
【請求項2】
が、18F、76Br、123I、124I、125I又は131Iからなる群より選択される放射性ハロゲンである、請求項1記載の化合物並びにその塩。
【請求項3】
下記式(2):
【化2】

(式中、Rは非放射性ハロゲン置換基、ニトロ基、アルキル鎖が炭素数1〜4の長さであるトリアルキルアンモニウム基、アルキル鎖が炭素数1〜4の長さであるトリアルキルスタニル置換基又はトリフェニルスタニル基からなる群より選ばれる基、mは1〜4の整数である。)で表される、化合物並びにその塩。
【請求項4】
下記式(1):
【化3】

(式中、Rは放射性ハロゲン置換基、mは1〜4の整数である。)で表されること化合物並びにその塩を配合してなる、生体組織に沈着したアミロイドの検出試薬。
【請求項5】
が、18F、76Br、123I、124I、125I又は131Iからなる群より選択される放射性ハロゲンである、請求項4記載の生体組織に沈着したアミロイドの検出試薬。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−120591(P2009−120591A)
【公開日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−269517(P2008−269517)
【出願日】平成20年10月20日(2008.10.20)
【出願人】(000230250)日本メジフィジックス株式会社 (75)
【Fターム(参考)】