説明

新規ケイ酸質肥料

【課題】散布性に優れ、ケイ酸質肥料(資材)として利用しやすいALC廃棄物利用の新規ケイ酸質肥料の提供を目的とする。
【解決手段】軽量気泡コンクリート廃材を粉砕し、これにバインダーを混合し、造粒する。
ALCの廃棄物を粉末に粉砕した後にバインダーを混合して造粒化すると、みかけ比重が0.90〜1.10レベルにまで高くなるとともに、粒度分布が安定するので農業機械で機械散布が可能になる。
造粒化してもALCの有する多孔性は維持され、土壌へのケイ酸の溶出性が高い。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築材料として広く使用されている軽量気泡コンクリート(ALC:Autoclaved Lightweight Concrete)の産業廃棄物を用いた新規ケイ酸質肥料に関する。
【背景技術】
【0002】
軽量気泡コンクリートは軽量であるうえに、優れた断熱性、遮音性、不燃性等を有しているので、工場、オフィスビル、一般住宅等において壁材、床材、間仕切り材、断熱層等の建材として広く採用されつつある。
軽量気泡コンクリート(以下ALCと称する)の急速な普及に伴って、建築資材から排出される切り屑等の産業廃棄物の量も増大の一途をたどっている。
ALCは、ケイ酸石灰等を主成分としていて発泡による多孔質となっていることから、土壌中へのケイ酸溶出性が高く、ケイ酸質資材として農業用にも利用されつつある。
特に、軽量気泡コンクリートを粉末にしたものは、孔隙構造を有する粉末肥料として認められ、ケイ酸質肥料として使用されている(農業技術大系)。
【0003】
しかし、ALC粉末肥料には次のような問題点があった。
まず、ALCは発泡した軽量資材であることから粉末にしただけでは「みかけ比重」が約0.65以下と軽く、粒が細かく粒径が0.5mm未満のものも多いので、圃場に機械散布する時は、遠くまで飛ばず散布が不均一になる。
また、他の土壌改良資材や一般肥料と混合ブレンドして使用する場合に、粒度やみかけ比重差が大きく、ALC粉末肥料が均一に混合できない。
さらには、運搬荷姿が大きくなりスペース的な理由から運送コスト高になっている。
【0004】
【非特許文献1】農業技術大系,第7−1巻P.346「軽量気泡コンクリート粉末肥料」
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記技術に有する欠点を解消すべく散布性に優れ、ケイ酸質肥料(資材)として利用しやすいALC廃棄物利用の新規ケイ酸質肥料の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の技術的思想上の趣旨は、軽量気泡コンクリート廃材を粉砕し、これにバインダーを混合し、造粒した点にある。
ここで、軽量気泡コンクリート(ALC)を粉砕する目的は、バインダーと混合するためであり、粉砕手段は微細に粉砕できる限りにおいて、振動ミル、ボールミル等各種方法を採用できる。
また廃材とは、ALCを建材として使用する際に発生する切り屑のみならず、各種産業廃棄物として排出されるものを含む。
【0007】
廃棄物ALCに水分が比較的多く含まれている場合には、粉砕しやすいように乾燥してもよい。
【0008】
本発明に使用するバインダーの例としては、ベントナイト等の鉱物系バインダー、植物性バインダーの他に、ポリビニールアルコール系バインダー、ポリ酢酸ビニル系バインダー、ポリアクリル系バインダー、アクリル酸ナトリウム等の合成バインダーなどが挙げられる。
また、サトウキビ等からの製糖残渣である廃糖蜜等もバインダーとして利用できる。
【発明の効果】
【0009】
本発明においては、ALCの廃棄物を粉末に粉砕した後にバインダーを混合して造粒化したことにより、みかけ比重が0.90〜1.10レベルにまで高くなるとともに、粒度分布が安定するので農業機械で機械散布が可能になる。
造粒化してもALCの有する多孔性は維持され、土壌へのケイ酸の溶出性が高い。
これにより、ALC廃棄物を利用した優れたケイ酸質肥料(資材)となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明における肥料の製造例を以下説明する。
建材の切り屑として発生したALCは、水分が約28質量%含有していたので乾燥し、その後にボールミルで微粉砕した。
これにベントナイト系バインダーを約10質量%の割合で混合し、湿式造粒機で造粒した後に乾燥して製品化した。
また、造粒の大きさは用途に応じて0.5〜4.5mmレベルの範囲から選定される。
このようにして得られた粒子の、みかけ比重は約0.90〜1.10と安定していた。
なお、比較のためにバインダーを用いずにALC粉末を造粒してみると粒度分布に大きなバラツキが生じた。
【0011】
上記にて得られた肥料を(1g/生土1kg)の割合で施用し、湛水、30℃、4週間静置後に遠心分離機により土壌溶液を抽出し、ケイ酸濃度を分析した結果を図1の表に示す。
なお比較のために、無施用の生土及び従来のALC粉末(1g/生土1kg)施用の値も示す。
その結果、ケイ酸濃度は生土(無施用ブランク)7.1ppmに対して、本発明に係る肥料は15.8ppmもあり、ALCを単に粉末しただけのものよりも高かった。
これにより、ケイ酸質肥料としての特性を改善し、かつ、散布性を向上させることができた。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】ケイ酸の溶出性評価結果を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軽量気泡コンクリート廃材を粉砕し、これにバインダーを混合し、造粒して得られたことを特徴とするケイ酸質肥料。

【図1】
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【公開番号】特開2006−104011(P2006−104011A)
【公開日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−292047(P2004−292047)
【出願日】平成16年10月5日(2004.10.5)
【出願人】(597166316)いなほ化工株式会社 (2)
【Fターム(参考)】