説明

新規コンドロイチン硫酸プロテオグリカン、そのコア蛋白質、それをコードするDNAおよびそれに対する抗体

【課題】 脳の新規プロテオグリカン及びこれを単離するための抗体の提供。
【解決手段】 ラット由来の特定なアミノ酸配列のバリンから514番目のトレオニンまでのアミノ酸配列をもつかあるいは特定なアミノ酸配列の31番目のバリンから545番目のトレオニンまでのアミノ酸配列をもち、コンドロイチン硫酸を結合した分子量約150kDの脳内に存在するコンドロイチン硫酸プロテオグリカン及びそれをコードするDNA。このプロテオグリカンと反応する抗体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規なコンドロイチン硫酸プロテオグリカン、そのコア蛋白質、それをコードするDNAおよびそれに対する抗体に関する。
【背景技術】
【0002】
プロテオグリカンはグリコサミノグリカンが共有結合的に蛋白質(コア蛋白質)に結合した化合物の総称である。それらは細胞表面と細胞外空間に局在し、ケモトロフィック(chemotrophic)因子、細胞接着分子さらには細胞外マトリックス糖タンパク質(非特許文献1、2)等に結合することによって体細胞上でさまざまな調節効果をもつと推定されている。
【0003】
また哺乳動物の脳のタンパク質についての最近の生化学的研究において、脳の発生過程で様々なプロテオグリカンが正確に調節されて発現することが明らかにされた(非特許文献3、4)。このようなプロテオグリカンの分子発生学的に調節された発現は神経膠繊維(非特許文献5)、視覚システム(非特許文献6)、そして大脳皮質のバレル(barrel)システム(非特許文献7−9)のような脳中のいくつかの複雑な構造形成に関与している。インビトロでの研究で、同様に神経系プロテオグリカンがたとえば軸索発生におけるニューロンの形態形成に関与することが示された。このプロテオグリカンはインビトロでの軸索の成長におけるポジテイブ(非特許文献10、11)とネガテイブ(非特許文献12−15)の両方の効果に関与する。
【0004】
神経系プロテオグリカンの機能については、他の体細胞におけるコア蛋白質の一次構造が明らかにされてきているのでそれに伴って様々なことが明らかになってきている。そのような研究の進展の成果として、多くのプロテオグリカンのコア蛋白質が似たような配列モチーフを有しており、いくつかのファミリーにグループ化できることを明らかにされた。ニューロカン(Neurocan)(非特許文献16)、ブレビカン(brevican)(非特許文献17)、バーシカン(versican)(非特許文献18)そしてBEHAB(非特許文献19)は可溶性コンドロイチン硫酸プロテオグリカンファミリーのメンバーである。これらの配列はヒアルロン酸結合ドメインのタンデム繰り返し構造を含んでいる。N−シンデカン(N-syndecan)(非特許文献20)は多くの似たような膜貫通ドメインと細胞質ドメインを含むヘパラン硫酸プロテオグリカンであるシンデカンファミリーのメンバーである。さらに最近、コンドロイチン硫酸プロテオグリカンであるフォスファカン(phosphacan)/6B4プロテオグリカンが受容体様タンパク質であるチロシンフォスファターゼ、RPTPβ/ζ(非特許文献21、22)の細胞質外性変異体であることが明らかにされた。
【0005】
前記したように最近多数のコア蛋白質の一次構造が報告されてきた。しかしながら、脳においては多くのプロテオグリカンがまだ未同定のままである。ラット脳の膜結合分画において少なくとも16種類のコア蛋白質があるが(非特許文献4)、わずかに3種類の膜結合型プロテオグリカンの完全な一次構造が報告されているのみである。つまりNG2(非特許文献23)、グリピカン(glypican)(非特許文献24)そしてセレブログリカン(cerebroglycan)(非特許文献25)である。
【非特許文献1】Ruoslahti, E. (1989) J. Biol. Chem. 264, 13369-13372
【非特許文献2】Ruoslahti, E. and Yamaguchi, Y. (1991) Cell 64, 867-869
【非特許文献3】Oohira, A., Matsui, F., Matsuda, M., Takida, Y. and Kuboki, Y. (1988)J. Biol. Chem. 263, 10240-10246
【非特許文献4】Herndon, M. E. and Lander, A. D. (1990) Neuron 4, 949-961
【非特許文献5】Maeda, N., Matsui, F. and Oohira, A. (1992) Dev. Biol. 151, 564-574
【非特許文献6】Sur, M., Frost, D. O. and Hockfield, S. (1988) J. Neurosci. 8, 874-882
【非特許文献7】Crossin, K. L., Hoffman, S., Tan, S.-S. and Edelman, G. M.(1989) Dev. Biol. 136, 381-392
【非特許文献8】Oohira, A., Matsui, F., Watanabe, E., Kushima, Y. and Maeda, N. (1994) Neuroscience 60, 145-157
【非特許文献9】Watanabe, E., Aono, S., Matsui, F., Yamada, Y., Naruse, I. and Oohira, A. (1995) Eur. J. Neurosci. 7, 547-554
【非特許文献10】Lander, A. D., Fujii, D. K. and Reichardt, L. F. (1985) Proc. Natl.Acad. Sci. USA 82, 2183-2187
【非特許文献11】Riopelle, R. J. and Dow, K. E. (1990) Brain Res. 525, 92-100
【非特許文献12】Cole, G. J. and McCabe, C. F. (1991) Neuron 7, 1007-1018
【非特許文献13】Oohira, A., Matsui, F. and Katoh-Semba, R. (1991) J. Neurosci. 11, 822-827
【非特許文献14】Grumet, M., Flaccus, A. and Margolis, R. U. (1993) J. Cell Biol. 120, 815-824
【非特許文献15】Dou, C.-L. and Levine, J. M. (1994) J. Neurosci. 14, 7616-7628
【非特許文献16】Rauch, U., Karthikeyan, L., Maurel, P., Margolis, R. U. and Magolis,R. K. (1992) J. Biol. Chem. 267, 19536-19547
【非特許文献17】Yamada, H., Watanabe, K., Shimonaka, M. and Yamaguchi, Y. (1994) J.Biol. Chem. 269, 10119-10126
【非特許文献18】Zimmermann, D. R. and Rouslahti, E. (1989) EMBO J. 8, 2975-2981
【非特許文献19】Jaworski, D. M. and Kelly, G. M. (1994) J. Cell Biol. 125, 495-509
【非特許文献20】Carey, D. J., Evans, D. M., Stahl, R. C., Asundi, V. K., Conner, K.J., Garbes, P. and Cizmeci-Smith, G. (1992) J. Cell Biol. 117, 191-201
【非特許文献21】Maurel, P., Rauch, U., Flad, M., Margolis, R. K. and Margolis, R. U.(1994) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 91, 2512-2516
【非特許文献22】Maeda, N., Hamanaka, H., Shintani, T., Nishiwaki, T. and Noda, M. (1994) FEBS Letters 354, 67-70
【非特許文献23】Nishiyama, A., Dahlin, K. J., Prince, J. T., Johnstone, S. R. and Stallcup, W. B. (1991) J. Cell Biol. 114, 359-371
【非特許文献24】Karthikeyan, L., Maurel, P., Rauch, U., Margolis, R. K. and Margolis, R. U. (1992) Biochem. Biopys. Res. Commun. 188, 395-401
【非特許文献25】Stripp, C. S., Litwack, E. D. and Lander, A. D. (1994) J. Cell Biol.124, 149-160
【非特許文献26】Bitter, T. and Muir, H. E. (1962) Anal. Biochem. 4, 330-334
【非特許文献27】Watanabe, E., Fujita, S. C., Murakami, F., Hayashi, M. and Matsumura, M. (1989) Neuroscience 29, 645-657
【非特許文献28】Scott, M. G., Crimmins, D. L., McCourt, D. W., Tarrand, J. J., Eyerman, M. C. and Nahm, M. H. (1988) Biochem. Biophys. Res. Commun. 155, 1353-1359
【非特許文献29】Sambrook, J., Fritsch, E. F. and Maniatis, T. (1989) Molecular Cloning: a Laboratory Manual, 2nd Ed., Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, NY
【非特許文献30】Altschul, S. F., Gish, W., Miller, W., Myers, E. W. and Lipman, D. J. (1990) J. Mol. Biol. 215, 403-410
【非特許文献31】Chomczynski, P. and Sacchi, N. (1987) Anal. Biochem. 162, 156-159 32. Kozak, M. (1984) Nucleic Acids Res. 12, 857-872
【非特許文献32】Kyte, J. and Doolittle, R. F. (1982) J. Mol. Biol. 157, 105-132
【非特許文献33】Sabatini, D. D., Kreibich, G., Morimoto, T. and Adesnik, M.(1982) J. Cell Biol. 92, 1-22
【非特許文献34】Hubbard, S. C. and Ivatt, R. J. (1981) Ann. Rev. Biochem. 50, 555-583
【非特許文献35】Tomita, M., Furthmayr, H, and Marchesi, V. T. (1978) Biochemistry 17, 4756-4770
【非特許文献36】Bourdon, M. A., Krusius, T., Campbell, S., Schwartz, N. B. and Ruoslahti, E. (1987) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 84, 3194-3198
【非特許文献37】Krueger Jr, R. C., Fields, T. A., Hildreth IV, J. and Scwartz, N. B.(1990) J. B. Biol. Chem. 265, 12075-12087
【非特許文献38】Doolittle, R. F., Feng, D. F. and Johnson, M. S. (1984) Nature 307,558-560
【非特許文献39】William, A. F. and Barklay, A. N. (1988) Annu. Rev. Immunol. 6, 381-405
【非特許文献40】Naeme, P. J., Christopher, J. E. and Baker, J. R. (1986) J. Biol. Chem. 261, 3519-3535
【非特許文献41】Graff, J. M., Stumpo, D. J. and Blackshear, P. J. (1989) J. Biol. Chem. 264, 11912-11919
【非特許文献42】Kemp, B. E. and Pearson, R. B. (1990) Trends Biochem. Sci. 15, 342-346
【非特許文献43】Doege, K. J., Sasaki, M., Kimura, T. and Yamada, Y. (1991) J. Biol.Chem. 266, 894-902
【非特許文献44】Bernfield, M., Kokenyasi, R., Kato, M., Hinkes, M. T., Spring., J.,Gallo, R. J. and Lose, E. J. (1992) Annu. Rev. Cell. Biol. 8, 365-398
【非特許文献45】Levine, J. M. and Card, J. P. (1987) J. Neurosci. 7, 2711-2720
【非特許文献46】Goldstein, L. A., Zhou, L. J., Picker, C. N., Mintry, R. F.,Bargatze, R. F., Ding, J. F. and Butcher, E. C. (1989) Cell 56, 1063-1072
【非特許文献47】Jackman, R. W., Beeler, D. L., Van de Water, L. and Rosenberg, R. D.(1986) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 83, 8834-8838
【非特許文献48】Barnea, G., Grumet, M., Milev, P., Silvennoinen, O., Levy, J. B., Sap, J. and Schlessinger, J. (1994) J. Biol. Chem. 269, 14349-14352
【非特許文献49】Strubin, M., Mack, B. and Long, E. O. (1984) EMBO J. 3, 869-972
【非特許文献50】Segrest, J. P. and Jackson, R. L. (1972) Methods Enzymol. 28, 54-63
【非特許文献51】Saunders, S., Jalkanen, M., O'Farrell, S. and Bernfield, M.(1989) J. Cell Biol. 108, 1547-1556
【非特許文献52】Breuner, B., Quentin, E., Cully, Z., Gotte, M. and Kresse, H. (1991)J. Biol. Chem. 266, 13224-13232
【非特許文献53】Hawkins, R. L. and Seeds, N. W. (1986) Brain Res. 398, 63-70
【非特許文献54】Jalink, K. and Moolenaar, W. H. (1992) J. Cell Biol. 118, 411-419
【非特許文献55】Monard, D., Niday, E., Limat, A. and Solomon, F. (1983) Prog. BrainRes. 58, 359-364
【非特許文献56】Monard, D. (1988) Trends Neurosci. 11, 541-544
【非特許文献57】Pottman, R. N., Ivins, J. K. and Buettner, H. M. (1989) J.Neurosci. 9, 4269-4280
【非特許文献58】Suiden, H. S., Stone, S. R., Hemmings, B, A. and Monard, D. (1992) Neuron 8, 363-375
【非特許文献59】Matsui, F., Watanabe, E. and Oohira, A. (1994) Neurochem. International 25, 425-431
【非特許文献60】Doege, K., Sasaki, M., Horigan, E., Hassel, J. R. and Yamada, Y. (1987) J. Biol. Chem. 262, 17757-17767
【非特許文献61】Huber, S., Winterhalter, K. H. and Vaughan, L. (1988) J. Biol. Chem.263, 752-756
【非特許文献62】Kurusius, T. and Rouslahti, E. (1986) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 83, 7683-7687
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
新規のプロテオグリカンを発見し精製、同定することは、脳研究の進展をもたらし、脳疾患の新規の診断方法の確立、脳疾患の新規の治療方法および予防方法の開発につながる。とくに本発明の膜結合型新規プロテオグリカンは神経の軸索発生に関与しこれらを通じて神経系形態形成に関与していると推定される。本発明者らは、このような脳の新規なプロテオグリカンの探索を行ない、新規なプロテオグリカンを見出した。従って、本発明の課題は、脳における新規なプロテオグリカンを発見し、精製そして同定し、これを提供することである。さらに、本発明の課題は、このような新規プロテオグリカンの発見のためには、ツールとしての脳に特異的な膜結合型プロテオグリカンに対する抗体の作成が必要とされており、このような抗体を提供することにある。またさらに本発明のプロテオグリカン又は蛋白質をコードするDNAを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは前記課題を解決するために、最初に新規のプロテオグリカンの分離同定を試みた。次いで分離した新規プロテオグリカンに対する抗体作成を試み、得られた抗体を利用して前記新規プロテオグリカンに対するcDNAを得、全遺伝子構造を解析した後このコンドロイチン硫酸プロテオグリカンが脳に特異的なものであることを確認し、本発明を完成させるに至った。
【発明の効果】
【0008】
本発明の新規コンドロイチン硫酸プロテオグリカンは神経回路網の正常な形成に寄与すると考えられるので神経疾患等の新規診断法の開発、神経疾患等の予防や治療に用いることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
次に、本発明を詳細に説明する。
<1>本発明のコンドロイチン硫酸プロテオグリカンの抽出と部分精製以下の方法で新規コンドロイチン硫酸プロテオグリカンの抽出を行うことができる。哺乳動物(例えばラット等)の脳をタンパク質分解酵素阻害剤(例えば2mMフェニルメチルスルフォニルフルオライド等)、金属キレート剤(例えば20mM エチレンジアミン四酢酸(EDTA)等)及び還元剤(例えば10mM N−エチルマレイミド等)を含む緩衝液(例えばリン酸緩衝食塩水(PBS)等)でホモジナイザー等を用いてホモジナイズし、ホモジネートは高速遠心等を行い、不溶性物質を得る(再度ホモジネーションと高速遠心等を繰り返してもよい)。この不溶性物質をタンパク質分解酵素阻害剤と界面活性剤(例えばトリトン系界面活性剤(ノニデットP−40(商品名)等)等)を含む緩衝液中でホモジナイズした後、遠心等を行なって上清としてコンドロイチン硫酸プロテオグリカン粗画分が得られる。
【0010】
このようにして得られたコンドロイチン硫酸プロテオグリカン粗画分よりコンドロイチン硫酸プロテオグリカンの部分精製を行うことができる。すなわち該粗画分をそのまま又は凍結乾燥等の後、界面活性剤(例えばトリトン系界面活性剤(ノニデットP−40(商品名)等)等)、金属キレート剤(例えばEDTA等)、還元剤(例えばN−エチルマレイミド等)及び蛋白質分解酵素阻害剤(例えばフェニルメチルスルフォニルフルオライド等)を含む高濃度尿素液(例えば4M尿素)を含む緩衝液(尿素緩衝液)の適量に分散する。その後同尿素緩衝液で透析する。高速遠心(例えば27,000g,30分間)後、上清を尿素緩衝液で平衡化した陰イオン交換樹脂(例えばDEAEセファセル等)と混合する。該陰イオン交換樹脂を常法に従って回収し、カラムに詰め、尿素緩衝液中で食塩の濃度勾配(例えば 0.1Mから 0.7Mへの直線濃度勾配)によってコンドロイチン硫酸プロテオグリカンを溶出する。プロテオグリカン画分(0.45から0.68M NaClの濃度で溶出される画分)を集め、常法に従って(例えば限外濾過等)、濃縮する。濃縮試料について次にセファロースCL−4B(ファルマシア製)等のゲル濾過剤を用いてゲル濾過クロマトグラフを行う。
【0011】
コンドロイチン硫酸プロテオグリカン画分(Kavは0.11から0.65)を集め、常法で濃縮(例えば限外濾過等)する。プロテオグリカンを酢酸カリウム(例えば約 1.3%(w/v)を含むエタノール水溶液(例えば約95%濃度のエタノール)の添加によって溶液から沈澱させる。沈澱物は氷冷下、酢酸カリウム(例えば1%(W/V))を含むエタノール水溶液(例えば約75%エタノール)で洗浄し、減圧乾燥する。乾燥物を適量のグアニジン塩酸(好ましくは4M)を含む緩衝液(グアニジン緩衝液)等に溶解し、オクチルセファロース等を用いて疎水クロマトグラフィーを行い、界面活性剤(例えばトリトン系界面活性剤(ノニデットP−40(商品名)等)等)の濃度勾配によって溶出する。コンドロイチン硫酸プロテオグリカン画分(例えばノニデットP−40の場合 0.3%から 0.6%のノニデットP−40濃度の画分)を集め、上述したようにエタノール等で沈澱し、乾燥する。こうして得たコンドロイチン硫酸プロテオグリカンは、グアニジン緩衝液中で塩化セシウム(CsCl)密度勾配遠心法(例えば初期密度1.38g/ml)によって常法に従い遠心(例えば150,000Xg で30時間)してさらに精製してもよい。こうして精製されたコンドロイチン硫酸プロテオグリカンを得ることができる。こうして得られるコンドロイチン硫酸プロテオグリカンはドデシル硫酸ナトリウム−ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS−PAGE)で還元条件下において約150キロダルトン(kDa)のバンドを形成する。
【0012】
また本発明により、本発明のコンドロイチン硫酸プロテオグリカンのコア蛋白質のアミノ酸配列が明らかにされたので、アミノ酸からコア蛋白質を合成し、当該コア蛋白質に糖鎖を共有結合させることによっても本発明のコンドロイチン硫酸プロテオグリカンを得ることができる。また本発明により、本発明のコンドロイチン硫酸プロテオグリカンのコア蛋白質をコードするDNAの塩基配列が明らかにされたので、このDNAから当該コア蛋白質を発現させ、発現させて得られるコア蛋白質に糖鎖を共有結合させることによっても本発明のコンドロイチン硫酸プロテオグリカンを得ることができる。
【0013】
<2>コア蛋白質の精製
次にコア蛋白質は、部分的に前田ら(非特許文献22)によって記述されたプロテオグリカン型蛋白質であるチロシンホスファターゼの部分精製のために使われた方法に従って精製することができる。すなわち、哺乳動物全脳から調製した核除去分画を1%CHAPS等で可溶化する。可溶化したものはDEAE−樹脂(例えばDEAEトヨパール)等の陰イオン交換樹脂のカラムに負荷し常法によって、高濃度食塩(例えば約 0.6M)溶液等で溶出する。続いてCsCl密度勾配遠心にて分画する。得られた分画をコンドロイチナーゼABCで消化し、SDS−PAGE(例えば6%ポリアクリルアミド等)等によって分離しコア蛋白質を得ることができる。こうして得られたコア蛋白質は還元条件下のSDS−PAGE法で120kDaのバンドを形成する。またこのコア蛋白質はウエスタンブロットを用いて、後述の新規のコンドロイチン硫酸プロテオグリカンを認識するモノクローナル抗体によって認識される。また本発明により、本発明のコンドロイチン硫酸プロテオグリカンのコア蛋白質のアミノ酸配列が明らかにされたので、アミノ酸からコア蛋白質を合成することもできる。また本発明により、本発明のコンドロイチン硫酸プロテオグリカンのコア蛋白質をコードするDNAの塩基配列が明らかにされたので、このDNAから当該コア蛋白質を発現させ、コア蛋白質を得ることもできる。
【0014】
<3>本発明の抗体の製造
本発明の抗体は、本発明のプロテオグリカンおよび本発明の蛋白質の両者あるいはどちらか一方と結合する抗体であり、ポリクローナル、モノクローナルのいずれでもよい。本発明の抗体は、上記のようにして製造された本発明のプロテオグリカンもしくはそのコア蛋白質またはこれらと他の蛋白質との融合蛋白質を抗原として、常法に従って例えば以下のように作製することが可能である。ポリクローナルな本発明の抗体は、例えばマウス、ラット、モルモット、ウサギ、ヤギ、ヒツジ等の被免疫動物を上記抗原で免疫し、これらの動物から血清を採取することによって得ることができる。被免疫動物を免疫する際に、補助剤(アジュバント)を併用することは、抗体産生細胞を賦活するので望ましい。得られた抗血清から、常法によってイムノグロブリン分画を精製してもよい。
【0015】
モノクローナルな本発明の抗体は、例えば次のようにして得られる。すなわち、上記抗原をマウス、ラット、モルモット、ウサギ、ヤギ、ヒツジ等の被免疫動物の腹腔内、皮下、足蹠(footpad)に投与した後に脾臓又は膝窩リンパ節を摘出し、これらから採取した細胞と腫瘍細胞株であるミエローマ細胞とを細胞融合させてハイブリドーマを樹立し、得られたハイブリドーマを連続増殖させ、さらに得られたハイブリドーマからの本発明のプロテオグリカンまたは本発明の蛋白質に対する特異抗体を継続的に産生する細胞株を選別する。こうして選別された株を好適な培地で培養することによって、培地中にモノクローナルな本発明の抗体が得られる。あるいは、マウスの腹腔などの生体内にて前記ハイブリドーマを培養することによって、モノクローナルな本発明の抗体を大量に製造することができる。細胞融合に用いる細胞としては、脾細胞以外にリンパ節細胞および末梢血中のリンパ細胞等を用いることができる。また、ミエローマ細胞株は、異種細胞種由来のものに比べ同種細胞種由来のものが望ましく、安定な抗体産生ハイブリドーマを得ることができる。
【0016】
得られたポリクローナル抗体およびモノクローナル抗体の精製法としては、硫酸ナトリウム、硫酸アンモニウム等による塩析、低温アルコール沈殿およびポリエチレングリコールまたは等電点による選択的沈殿分別法、電気泳動法、DEAE(ジエチルアミノエチル)−誘導体、CM(カルボキシメチル)−誘導体等のイオン交換体を用いたイオン交換クロマトグラフィー、プロテインAまたはプロテインGを用いたアフィニティークロマトグラフィー、ハイドロキシアパタイトクロマトグラフィー、抗原を固定化した免疫吸着クロマトグラフィー、ゲル濾過法および超遠心法等を挙げることができる。なお本発明の抗体を、抗原結合部位(Fab)を分解しないプロテアーゼ(例えばプラスミン、ペプシン、パパイン等)で処理して得られるFabを含むフラグメントとしても良い。また本発明の抗体をコードする遺伝子の塩基配列もしくは抗体のアミノ酸配列が決定されれば、遺伝子工学的に本発明の抗体のFabを含むフラグメントやキメラ抗体(例えば本発明の抗体のFab部分を含むキメラ抗体等)を作製することができ、このようなフラグメントやキメラ抗体も、本発明の抗体に包含される。
【0017】
本発明の抗体の製造方法の一例を以下に述べるが、これに限定されるものではない。本発明のコンドロイチン硫酸プロテオグリカンを、例えば2週間間隔で完全および不完全フロイントアジュバントとともマウスの腹腔に投与する。4回目にブースターとして投与した後、マウスを屠殺し脾臓細胞はポリエチレングリコールを用いてミエローマ細胞と融合する。培地中で選択したハイブリドーマを培養後、該ハイブリドーマを培養上清を用いて本発明のコンドロイチン硫酸プロテオグリカンと反応する抗体の有無でウエスタンブロッテイングによってスクリーニングする。陽性ハイブリドーマは限界希釈法によってクローン化する。確立したハイブリドーマ細胞株はウエスタンブロットでコンドロイチン硫酸プロテオグリカン(分子量約150kDa)又はコア蛋白質(約120kDa)と反応する抗体を製造した。
【0018】
抗体生産はしかしながら他の方法によっても製造することができる。つまり抗体はコア蛋白質が配列表配列番号2に示す1番目のバリン(Val)から514番目のトレオニン(Thr)までのアミノ酸と相同性を有するアミノ酸配列で示されるプロテオグリカン、配列表配列番号2に示される252番目のリジン(Lys)から398番目のシステイン(Cys)までのアミノ酸配列もしくはそれと相同性を有するアミノ酸配列を含み、糖鎖を有していても良い蛋白質またはそれらのペプチドフラグメントをヒト以外の哺乳動物に免疫し、該動物の体液から採取することができ、または該動物の抗体産生細胞によって産生され、該プロテオグリカンおよび該蛋白質の両者あるいはどちらか一方と反応する抗体であって、そのような抗体の製造方法であれば抗体生産の方法として用いることができる。なお、得られた抗体によって認識される蛋白質もしくはそのフラグメントは脳に局在している。上記の方法で得られた抗体は、さらに公知の方法で精製してもよい。
【0019】
<4>cDNAライブラリーとコンドロイチン硫酸プロテオグリカンに対するcDNAクローンの分離
哺乳動物の全脳から得られるポリ(A)+ を用いて鋳型およびランダムプライマーとして使用するcDNAライブラリー(非特許文献22)を調製する。また哺乳動物の全脳から得られるポリ(A)+ を用いて鋳型およびオリゴd(T)プライマーとして使用するcDNAライブラリーを構築する。これらのcDNAライブラリーは、先に得られたコンドロイチン硫酸プロテオグリカンを認識するモノクローナル抗体等を用いて免疫学的にスクリーニングすることができる。免疫学的スクリーニングはサムブロックら(Sambrook et al)の文献(非特許文献29)に記述されたようにして行なうことができる。陽性クローンを免疫学的スクリーニングによって分離し常法に従ってDNAの配列決定等を行うことで、配列表配列番号1に示されるDNAを得ることができる。こうして30残基のシグナルペプチドと新規コンドロイチン硫酸プロテオグリカンのコア蛋白質をすべてコードする514残基のアミノ酸をコードするcDNAを得ることができた。
【0020】
こうして見い出され同定された新規コンドロイチン硫酸プロテオグリカンは脳に局在し、他の知られているいずれのプロテオグリカンとも相同性を示さない故、本発明のコンドロイチン硫酸プロテオグリカンは新規なコンドロイチン硫酸プロテオグリカンであって(図1)、これらはニューロンの形態形成に関与すると考えられるので、神経系疾患等に対する診断方法、治療薬や予防薬としての使用が期待さる。また、治療あるいは予防における投与経路としては静脈注射、動脈注射、脳室内投与、ウイルス遺伝子を利用した遺伝子工学的投与手段等を用いることができる。
【0021】
<5>本発明のプロテオグリカン
本発明のプロテオグリカンは次の性質を有するコア蛋白質と糖鎖とからなるコンドロイチン硫酸プロテオグリカンである。
(A)コア蛋白質の一次構造:配列表配列番号2の1番目のバリン(Val)から514番目のトレオニン(Thr)までのアミノ酸配列もしくはそれと相同性を有するアミノ酸配列を有する。
(B)糖鎖:分子量約30キロダルトンのコンドロイチン硫酸を含有する。
(C)本プロテオグリカンにノイラミニダーゼ、O−グリコシダーゼまたはN−グリコシダーゼを作用させると糖鎖が遊離する。
【0022】
さらに分子量が、還元条件下におけるドデシル硫酸ナトリウム−ポリアクリルアミドゲル電気泳動において約150キロダルトンであることを特徴とする該コンドロイチン硫酸プロテオグリカンも本発明に含まれる。
【0023】
<6>本発明の糖蛋白質
次の性質を有する糖蛋白質も本発明に含まれる。
(A)分子量:(a)ドデシル硫酸ナトリウム−ポリアクリルアミドゲル電気泳動で還元条件下において約120キロダルトンのバンドを形成する、(b)ノイラミニダーゼ、O−グリコシダーゼおよびN−グリコシダーゼの酵素反応後、ドデシル硫酸ナトリウム−ポリアクリルアミドゲル電気泳動で還元条件下において約100キロダルトンのバンドを形成する、(B)蛋白質の一次構造:配列表配列番号2に示す1番目のバリン(Val)から514番目のトレオニン(Thr)までのアミノ酸配列あるいはそれと相同性を有するアミノ酸配列を有する。
【0024】
<7>本発明の蛋白質
配列表配列番号2に示す1番目のバリン(Val)から514番目のトレオニン(Thr)までのアミノ酸配列あるいはそれと相同性を有するアミノ酸配列を含み、糖鎖を有していてもよい蛋白質も本発明に含まれる。さらには、配列表配列番号2の252番目のリジン(Lys)から398番目のシステイン(Cys)までのアミノ酸配列は本発明のプロテオグリカンや蛋白質の特徴であるので、配列表配列番号2の252番目のリジン(Lys)から398番目のシステイン(Cys)までのアミノ酸配列あるいはそれと相同性を有するアミノ酸配列を含み、糖鎖を有していてもよい蛋白質も本発明に含まれ、上記それぞれのプロテオグリカンや蛋白質をコードするDNAも本発明に含まれる。
【0025】
このような蛋白質には、例えば配列表配列番号2に示す−30番目のメチオニン(Met)から514番目のトレオニン(Thr)までのアミノ酸配列あるいはそれと相同性を有するアミノ酸配列を含み、糖鎖を有していてもよい蛋白質が包含される。本発明においてアミノ酸配列において相同性を有するとは、本発明のプロテオグリカン及び蛋白質が由来する生物種が相違しても同一機能を有するプロテオグリカン及び蛋白質においては一定の割合のアミノ酸配列が維持され、共通性を有していることを意味する。例えば既知のコンドロイチン硫酸プロテオグリカンであるバーシカンでは、ニワトリ由来の該プロテオグリカンとヒト由来の該プロテオグリカンのコア蛋白質のうち、活性ドメインのアミノ酸配列は、96%の相同性を有している。また既知の膜結合型プロテオグリカンであるシンデカンのコア蛋白質ではマウスとヒトとの間でアミノ酸配列に高い相同性部分を有することが知られている。したがって本発明のプロテオグリカン及び蛋白質も、種間におけるアミノ酸配列の相同性は約60〜90%以上と想定される。
【0026】
本発明の一例のcDNAの遺伝子配列から推定される蛋白質はシグナルペプチドドメイン、コンドロイチン硫酸結合ドメイン(CSアタッチメント)、塩基性アミノ酸のクラスター、システイン含有ドメイン、膜貫通ドメイン(transmembrane domain)そして細胞質ドメイン(cytoplasmic domain)の各部分からなると推定される(図1)。本発明の脳に局在する新規コンドロイチン硫酸プロテオグリカンをニューログリカンCと命名した(以下、NGCという)。NGCのmRNAはノーザンブロットによる分析において、新生児および成熟哺乳動物の脳中に 3.1kbの単一mRNAとして検出されるが、しかし腎臓、肝臓、肺臓、筋肉のいずれからも検出されない。コア蛋白質の配列はいかなる他の既知のタンパク質とも有意のホモロジーを示さなかった。このことはニューログリカンC(NGC)が新規のプロテオグリカンであることを示している。
【0027】
また、本発明には配列表配列番号4の31番目のバリン(Val)から545番目のトレオニン(Thr)までのアミノ酸配列あるいはそれと相同性を有するアミノ酸配列を含み、糖鎖を有していてもよい蛋白質、配列表配列番号4の283番目のリジン(Lys)から429番目のシステイン(Cys)までのアミノ酸配列あるいはそれと相同性を有するアミノ酸配列を含み、糖鎖を有していてもよい蛋白質も包含される。これらはヒト由来の蛋白質であることから、ヒトに対して用いる医薬品として特に好ましい。このような蛋白質には、例えば配列表配列番号4に示す1番目のメチオニン(Met)から545番目のトレオニン(Thr)までのアミノ酸配列あるいはそれと相同性を有するアミノ酸配列を含み、糖鎖を有していてもよい蛋白質が包含される。
【0028】
なお本発明蛋白質は、必ずしも単独の蛋白質でなくてもよく、必要により融合蛋白質の一部となっていてもよい。融合蛋白質は、公知の遺伝子工学的手法により製造することができ、通常、本発明の蛋白質をコードするDNAを任意の蛋白質をコードするDNAと連結させることによって得た組換えDNAから発現させることによって得ることができる。
【0029】
また本発明の蛋白質には、配列表配列番号2に示されるアミノ酸配列と配列番号4に示されるアミノ酸配列との間で共通するアミノ酸をその順序で含むアミノ酸配列を有し、糖鎖を有していてもよい蛋白質も包含される。配列表配列番号2に示されるアミノ酸配列と配列番号4に示されるアミノ酸配列との間で共通しないアミノ酸は任意のアミノ酸でよい。ただし、配列表配列番号4の282番目のメチオニン(Met)に対応する配列表配列番号2のアミノ酸はないものとする。
【0030】
<8>本発明のDNA
本発明には、上記のプロテオグリカン、糖蛋白質及び蛋白質をコードするDNAが包含される。例えば配列表配列番号2に示す1番目のバリン(Val)から514番目のトレオニン(Thr)までのアミノ酸配列あるいはそれと相同性を有するアミノ酸配列を含み、糖鎖を有していてもよい蛋白質をコードする塩基配列を有するDNAとして具体的には、配列表配列番号1の103番目のグアニン(G)から1644番目のシトシン(C)までの塩基配列を含むDNAが例示される。また、配列表配列番号2の252番目のリジン(Lys)から398番目のシステイン(Cys)までのアミノ酸配列あるいはそれと相同性を有するアミノ酸配列を含み、糖鎖を有していてもよい蛋白質をコードするDNAとして具体的には、配列表配列番号1の856番目のアデニン(A)から1296番目のシトシン(C)までの塩基配列を含むDNAが例示される。このようなDNAには、配列表配列番号1に示す13番目のアデニン(A)から1644番目のシトシン(C)までの塩基配列を含むDNAも含まれる。
【0031】
配列表配列番号4の31番目のバリン(Val)から545番目のトレオニン(Thr)までのアミノ酸配列あるいはそれと相同性を有するアミノ酸配列を含み、糖鎖を有していてもよい蛋白質をコードする塩基配列を有するDNAとして具体的には、配列表配列番号3の91番目のグアニン(G)から1635番目のシトシン(C)までの塩基配列を含むDNAが例示される。配列表配列番号4の283番目のリジン(Lys)から429番目のシステイン(Cys)までのアミノ酸配列あるいはそれと相同性を有するアミノ酸配列を含み、糖鎖を有していてもよい蛋白質をコードする塩基配列を有するDNAとして具体的には、配列表配列番号3の847番目のアデニン(A)から1287番目のシトシン(C)までの塩基配列を含むDNAが例示される。このようなDNAには、配列表配列番号3に示す1番目のアデニン(A)から1635番目のシトシン(C)までの塩基配列を含むDNAも含まれる。
【0032】
なお、遺伝暗号の縮重による異なった塩基配列のDNAも本発明のDNAに包含されることは、当業者であれば容易に理解されるところである。これらのDNAのいずれもが本発明DNAに包含される。また本発明には、本発明のDNAに相補的なDNAまたはRNAが包含される。さらに本発明DNAは、上記蛋白質をコードするコード鎖のみの一本鎖であってもよいし、この一本鎖及びこれと相補的な配列を有するDNA鎖またはRNA鎖とからなる二本鎖であってもよい。また本発明DNAには、公知の遺伝子工学的手法によって本発明DNAに任意の蛋白質をコードするDNAや、機能を有するDNAを連結させることによって得た組換えDNAも包含される。なお、染色体由来の本発明蛋白質の遺伝子は、コード領域にイントロンを含むことが予想されるが、そのようなイントロンで分断されているDNA断片であっても、本発明蛋白質をコードする限り、本発明DNAに含まれる。すなわち、本明細書において「コードする」とは、転写時にプロセッシング等を受けて最終的に目的の蛋白質を生じ得る塩基配列を有することも包含する。
【0033】
以下に本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明は下記実施例によって何等制限されるものではない。
【実施例1】
【0034】
膜結合型コンドロイチン硫酸プロテオグリカンの抽出
10日齢スプラグ−ドウリー(Sprague−Dawley)ラットの脳(通常実験当たり100匹のラット;Slc:SD系統;SLC(株)製)をプロテアーゼ阻害剤として2mMのフェニルメチルスルフォニルフルオライド、20mMのEDTA及び10mMのN−エチルマレイミドを含む氷冷リン酸塩緩衝食塩水(phosphate-buffered saline) (PBS)(2ml/脳)中でテフロングラスホモジナイザーを用いてホモジナイズした。ホモジナイゼーションおよびそれに続く工程は特に示していない限り、全て4℃で行なった。ホモジネートは27,000Xgで40分間遠心した。沈澱物を同じ溶液で再度ホモジネーションした。遠心後、PBS−不溶性物質を前記プロテアーゼ阻害剤と1%ノニデット(Nonidet)P−40を含むPBS(2ml/脳)中で0℃においてホモジナイズした。ホモジネートをマグネチックスターラーで60分間撹拌し、次に27,000Xgで40分間遠心した。上清はとっておき、沈澱物を再度界面活性剤含有緩衝液で処理し遠心した。遠心後、これらの界面活性剤含有上清を合わせ、凍結乾燥した。
【実施例2】
【0035】
膜結合型コンドロイチン硫酸プロテオグリカンの部分精製
実施例1で得られた凍結乾燥残渣を、0.2 %ノニデットP−40、0.1 M NaCl、2mM EDTA、1mM N−エチルマレイミド及び0.2 mMフェニルメチルスルフォニルフルオライドを含む4M尿素、50mMトリス塩酸緩衝液、pH7.5 (尿素緩衝液)中に脳1個当り1mlの割合で分散した、そしてこの分散液は同緩衝液を用いて透析した。27,000Xgで30分間遠心後、上清を尿素緩衝液で平衡化したDEAEセファセル樹脂(ファルマシア社製)と脳1個当り1mlの割合で混合し、混合物をマグネチックスターラーで2時間撹拌した。このDEAEセファセル樹脂を6,500Xg 、10分間の遠心によって回収し、そして尿素緩衝液で2回洗浄した。この樹脂をガラスカラムに詰め、この樹脂からプロテオグリカンを0.1 Mから0.7 MのNa Clを含む尿素緩衝液での直線濃度勾配によって溶出した。
【0036】
プロテオグリカン画分(0.45から0.68MのNaCl濃度で溶出)を集め、そしてダイアフロー YM−10メンブラン(アミコン(株)製)を使って5mlに濃縮した。濃縮した溶液を、0.2 %ノニデットP−40と前記プロテアーゼインヒビターとを含む4Mグアニジン塩酸、50mM トリス塩酸 pH7.5 を用いてセファロースCL−4B(ファルマシア社製)のカラム(直径1.6 cm×100cm)上でクロマトグラフを行った。プロテオグリカン画分(Kav0.11から0.65)を集め、ダイアフローYM−10メンブランを用いて3mlに濃縮した。プロテオグリカンを1.3 %(W/V)酢酸カリウムを含む3倍容の95%エタノールを添加して溶液から沈澱した。沈澱物を0℃で1%(W/V)酢酸カリウムを含む75%エタノールで2回洗浄し、減圧下P2O5で乾燥した。得られた乾燥物を室温で4Mグアニジン塩酸、50mMトリス塩酸、pH7.5(グアニジン塩酸緩衝液)10ml中に溶解した。この溶液をオクチルセファロース(ファルマシア社製)のカラム(直径1.6 cm径×5.0 cm)に負荷した。ノニデットP−40を0%から0.8 %(V/V)含むグアニジン塩酸緩衝液で直線濃度勾配によって溶出を行った。0.3 %から0.6 %のノニデットP−40濃度で溶出した画分を集め、そして集めた画分中のプロテオグリカンをエタノールで沈澱し上述したようにして乾燥した。
【0037】
さらに、得られたプロテオグリカンを、初期密度1.38g/ml(4Mグアニジン塩酸、50mMトリス塩酸、pH7.5)のCsCl密度勾配によってRPS−65Tローター(日立社製)を用いて10℃で150,000Xg で30時間超遠心することによって精製した。遠心後、試料を7分画して集めた。分画番号2から6の試料を集め、4℃でPBSに対して透析を行った。プロテオグリカン溶液中のヘキスロン酸(hexuronate)とタンパク質の含量を Bitter and Muir法(非特許文献26)及びタンパク質分析キット(Bio-Rad社製)によってそれぞれ測定した。この精製方法によって、100個の脳からヘキスロン酸含量約3マイクロモル(蛋白質含量2.2mg)のプロテオグリカンを得た。
【0038】
また、可溶性プロテオグリカンをプロテアーゼインヒビターを含むPBSで10日齢のラットの脳から公知の方法(非特許文献3)で抽出し精製した。すなわち、プロテオグリカンを、DEAEセファロースを用いたカラムクロマトグラフィーとセファロースCL−4Bを用いたゲル濾過によって分画し、精製した。0.45から0.60の範囲のKavを有する画分をウエスタンブロット分析のために用いた。
【実施例3】
【0039】
グリコシダーゼを用いる膜結合型コンドロイチン硫酸プロテオグリカンの処理
プロテオグリカンのコア蛋白質からコンドロイチン硫酸側鎖とヘパラン硫酸側鎖を除去するため、膜結合型コンドロイチン硫酸プロテオグリカン(ウロン酸含量50nmol)をプロテアーゼの含まれていないコンドロイチナーゼABC(EC4.2.2.4;生化学工業(株)製)で消化し、次にヘパリチーゼI(heparitinase I)(EC4.2.2.8;生化学工業(株)製)で消化した(非特許文献8参照)。得られた蛋白(コアグリコプロテイン)を、続いて2mM EDTA、1mM N−エチルマレイミド、0.2 mMフェニルメチルスルフォニルフルオライド及び0.07mMペプスタチンを含む50mM酢酸ナトリウム緩衝液、pH5.0100μl中でノイラミニダーゼ2mIU(EC 3.2.1.18;ナカライテスク社製)で37℃、1時間処理した。酵素反応を0℃で 1.3%酢酸カリウムを含む95%エタノール300μlの添加によって停止させた。1時間後コア糖蛋白質(以下、コアグリコプロティン)を遠心によって沈澱させた。コアグリコプロテインを説明書の指示に従ってコアプロテインの変性後さらに1 IU Nーグリコシダーゼ F(EC 3.2.2.18;ベーリンガーマンハイム社製)を用いるかあるいは1mIUのO−グリコシダーゼ(EC3.2.1.97;ベーリンガーマンハイム社製)を用いて37℃で24時間消化することによって脱グリコシレーションした。
【実施例4】
【0040】
ゲル電気泳動とウエスタンブロット分析
膜結合型コンドロイチン硫酸プロテオグリカンを6%分離ゲルと3%スタッキングゲルを用いてジチオスライトールでの還元条件下でドデシル硫酸ナトリウム−ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS−PAGE)によって分離した。それらを4℃で20%(V/V)メタノールを含む25mMトリス、192mMグリシン(pH8.3 )中で一昼夜60Vでポリビニリデンジフルオライド(PVDF)膜(イモビロン−P(商品名);ミリポアー社製)に電気泳動的に移動(転写)させた。抗体の非特異的結合を阻止するため、該膜を1%スキムミルク(DIFCO ラボラトリース社製)を含むPBS中でインキュベートした。次にこの膜を後記実施例5のハイブリドーマの培養上清(マウスモノクローナル抗体を含む)で4℃、一昼夜処理し、そしてベクタステイン(Vectastain)ABCキット(ベクター研究所製)を用いてPBS中で染色した。いくつかの実験においては、免疫染色の強度はイメージスキャナー(GT−6500;エプソン社)を経てコンピューター(LC520;アップル社)とアプリケーションソフト、NIHイメージプログラム(パブリックドメイン)を用いて定量した。
【実施例5】
【0041】
モノクローナル抗体の製造
各種モノクローナル抗体は公知の方法(非特許文献27参照)によって製造した。すなわち、膜結合型コンドロイチン硫酸プロテオグリカンの調製物(50μgタンパク質/投与)を2週間間隔で完全および不完全フロイントアジュバントとともBALB/cマウスの腹腔に注射した。4回目にブースターとして投与後、マウスを屠殺し、得られた脾臓細胞をポリエチレングリコールを用いてPAIミエローマ細胞と融合した。HAT培地中で選択したハイブリドーマを10%ウシ胎児血清を含むRPMI1640培地(シグマ社製)で培養した。培養されたハイブリドーマを培養上清を用いてプロテオグリカンと反応する抗体の有無でウエスタンブロッテイングによってスクリーニングした。陽性ハイブリドーマは限界希釈法によってクローン化した。選択されたハイブリドーマより得られたモノクローナル抗体C1,C3,C5及びC15が実施例2の膜結合型コンドロイチン硫酸プロテオグリカンと反応した。これらの4つの抗体のすべてがマウスモノクローナル抗体イソタイピングキット(イムノタイプ(商品名);シグマ社製)を用いてIgG1 であると決定された。
【実施例6】
【0042】
コアグリコプロテインの精製
コアグリコプロティンは、前田ら(非特許文献22)によって述べられたプロテオグリカン型タンパク質であるチロシンホスファターゼの部分精製のために使われた方法(非特許文献22)に従って精製した。すなわち、8日齢ラットの全脳から調製した核除去画分を1%CHAPS(3−〔(3−コールアミドプロピル)ジメチルアンモニオ〕−1−プロパンスルホン酸)で可溶化した。可溶化したものをDEAEトーヨーパール(トーソー(株)製)のカラムに負荷し、0.25M NaClで洗浄し、つづいて0.6 M NaClで溶出した。溶出物(カラムから得られた負に荷電した部分精製物)からプロテオグリカンを分離するためCsCl密度勾配超遠心にて分画した。遠心後、勾配を10分画にして集めた。これらの画分をコンドロイチナーゼABCで消化後分析したところ、3つの最も低い密度の画分中に140kDaと120kDaのタンパク質が主要な成分として検出された(非特許文献22中の (図2を参照)。従って、これらの画分中のプロテオグリカンをコンドロイチナーゼABCで消化し、得られたコアグリコプロテインをSDS−PAGE(6%ポリアクリルアミド)によって分離した。このコアグリコプロテインはPVDF膜に移され、そして120kDaのコアグリコプロテインのバンドを手術用メスで切りだした。120kDaのコアグリコプロテインはウエスタンブロットにおいて4つのモノクローナル抗体C1,C3,C5及びC15によって認識された。
【0043】
この精製された120kDaコアグリコプロテインのアミノ酸配列分析を行った。120kDaのコアグリコプロテインの断片をスコットら(Scott et al)の文献(非特許文献28)に記述されたように臭化シアン(CNBr)処理によって得た。完全なコアグリコプロテインとその断片とを上述したようにSDS−PAGEによって分離した。そして該タンパク質とその断片とを10%メタノールを含む10mMCAPS(3−(シクロヘキシルアミノ)プロパンスルホン酸)緩衝液(pH11)中で0.3 A(アンペア)で4℃、3時間でPVDF膜に移した。0.5 %ポンシュー レッド(Ponceau Red)含有1%酢酸で染色後、タンパク質のバンドを膜から切り出し、そしてタンパク質のアミノ酸配列を自動タンパク質シークエンサー(PPSQ−10;島津)で決定した。
【実施例7】
【0044】
cDNAライブラリーとcDNAクローンの分離
18日齢(P18)スプラグ−ドウリー(Sprague-Dawley)ラットの全脳から得られるポリ(A) +RNAを鋳型として使い、ランダムプライマーを用いて構築したλgt11cDNAライブラリーを利用した。他のλgt11cDNAライブラリーは、8日齢(P8)スプラグ−ドウリーラットの全脳から得られるポリ(A) +RNAを鋳型として使い、オリゴ(dT)プライマーを用いて構築した。これらのcDNAライブラリーはモノクローナル抗体C1,C3,C5及びC15の培養上清の混合液を用いて1×106 プラークを免疫学的にスクリーニングした。免疫学的スクリーニングはサムブロックら(Sambrook et al)の文献(非特許文献29)に記述されたようにして免疫的検出のためのベクタステイン(Vectastain)ABCキットを用いて行なった。
【0045】
最初の2つのクローン、(ランダムプライマーcDNAライブラリーからの)(NGC1と(オリゴ−d(T)プライマーcDNAライブラリーからの)(NGC3が免疫学的スクリーニングによって単離され、続いてクローンを32P標識cDNAプローブを用いてプラークハイブリダイゼーションによって得た。プラークハイブリダイゼーションとノーサンブロッテイングのためのcDNAプローブはメガプライム(Megaprime)DNAラベリングシステム(アマーシャム インターナショナル社製)を用いて標識した。(gt11クローンからのcDNA挿入物を精製し、そして pBluescript II プラスミドベクター(ストラトジーンクローニングシステム社製)中にサブクローンした。
【実施例8】
【0046】
DNAの配列決定
配列決定のために制限酵素を用いたデレーションによるサブクローニングを行なった。DNA配列決定は自動DNAシークエンサー(AlfII/Alfredコンバインドシステム;ファーマシア社)を用いてTaq ポリメラーゼと色素標識プライマーを使用し、行なった。配列の編集(Editing) と分析はGENETYX ソフトウエアー(ソフトウエアー開発(株))を用いて行われた。リーデングフレームは120kDaのコアグリコプロテインのN末端アミノ酸配列とCNBr処理によって得られたその断片についての本発明者らのデーターから裏付けられた。ジーンバンク(GenBank)(Release87)とスイス−プロット(Swiss−Prot)(Release31)中の配列との比較は部分配列探索ツールを用いて行った(非特許文献30)。
【実施例9】
【0047】
ノーサンブロット分析
全RNAはチョムジンスキーおよびサッキー(Chomczynsky and Sacchi)らの文献(非特許文献31)に記述されたようにして生後7日および成熟ラットの脳から抽出し、同様に腎臓、肝臓、肺臓そして筋肉からも抽出した。ポリ(A)+ RNAはその方法手順にしたがってオリゴテックス−dT30(タカラバイオケミカル社製)を用いて精製した。ポリ(A)+ RNA(5μg)を 2.2M ホルムアルデヒドを含む1%アガロースゲル上で電気泳動し、PVDF膜(イモビロン−N、ミリポア社製)に移した(転写した)。(NGC1からの682塩基対挿入物を32P−dCTPで標識しそして3×106 cpm/mlの濃度でプローブとして用いた。このフィルターを最後に0.2 ×SSC(SSC:0.15 NaClと0.015 M 酢酸ナトリウム)中で68℃で洗浄しオートラジオグラフィーのためX−線フィルム(富士フィルム社)に露光した。
【実施例10】
【0048】
モノクローナル抗体の特徴
本発明者らは、4種類のハイブリドーマ細胞株(C1,C3,C5そしてC15)を確立した。それぞれがウエスタンブロットにおいて膜結合型コンドロイチン硫酸プロテオグリカンの調製品と反応する抗体(モノクローナル抗体C1,C3,C5およびC15)を生産した。この4種類のモノクローナル抗体(MAb)全ては抗原として用いた膜結合型コンドロイチン硫酸プロテオグリカンの調製品が試験されたとき平均分子量150kDaに相当する非常に広いバンドを認識した(図3Aレーン1、MAb C5を用いたイムノブロット)。膜結合型コンドロイチン硫酸プロテオグリカンの調製品をコンドロイチナーゼABCで消化した時、120kDaのタンパク質のバンドがMAb C5を用いたイムノブロットで検出された(図3Aレーン2および図3Bレーン1)。ヘパリチナーゼで処理してもこのバンドは移動しなかった(図3Aレーン3)。10日齢ラットの脳から得られたPBS可溶性プロテオグリカンの調製品を多量に用いてウエスタンブロットで分析したとき、75kDaのコアグリコプロテインがMAb C5で弱く検出された。MAb C5は肝臓、肺臓、腎臓、筋肉そして軟骨のような神経系以外から調製したいかなるプロテオグリカンのコアグリコプロテインとも反応しなかった。
【0049】
プロテオグリカンがコンドロイチン硫酸鎖に加えてオリゴ糖側鎖を有する可能性を試験するため、コアグリコプロテインを図3Bに示したように3つのグリコシダーゼ(ノイラミダーゼ、O−グリコシダーゼ、N−グリコシダーゼ)で順に消化しそして脱グリコシレーションされたコア蛋白質の分子量をSDS−PAGEで測定した(図3Bレーン2、3、4)。グリコシダーゼとのそれぞれの処理はSDS−PAGE上でのコア蛋白質のバンドの移動度の増加をひきおこした。コア蛋白質を認識するMAb C5の能力はいずれのグリコシダーゼとの消化によっても影響されなかった。それ故、MAb C5によって認識されるエピトープはポリペプチド部分に存在していると思われる。
【0050】
ラット大脳皮質におけるプロテオグリカンの発現をMAb C5を用いた免疫組織化学的染色によって試験した。すなわち、生後0日で、MAb C5で免疫染色した結果から該プロテオグリカンは発生中の神経細胞と関連していた(図4A)。同様の染色パターンは生後7日の大脳皮質にも見られた(図4B)。成熟脳においては、大脳皮質の免疫染色の強度は減少した。大脳皮質におけるプロテオグリカンの一時的発現を定量するため、種々の発生段階(12日胚(E12)から成熟まで)での大脳皮質のPBS−不溶性抽出物をコンドロイチナーゼABCで消化し、イムノブロッテイングを行い免疫標識されたバンドの強度を定量した。少量のプロテオグリカンが16日胚(E16)から18日胚(E18)において検出された。プロテオグリカンの量は生後20日(P20)付近で最大レベルに達するほどに増加した(図4C)。P20の後、プロテオグリカンの量は減少した。そして成熟大脳皮質においては、このプロテオグリカンは発現の最大レベルの約半分となった。
【実施例11】
【0051】
cDNAクローンの分離
120kDaのコアグリコプロテインを精製し、それをCNBrで処理することによって数種のペプチドに分解し、完全なコアグリコプロテインと2つのペプチドの部分N末端アミノ酸配列を決定した。完全なコアグリコプロテインのN末端配列はアミノ酸の一文字表記でVPAREAGSAIEAEELであった。完全に異なったN末端配列がCNBrによって消化された2つの生産物(15kDaと24kDa)中で見いだされた。15kDaと24kDaのペプチドについてそれぞれ(M)VPGGSISLRPRPGDPGKDLA及び(M)GRFPGSPであった。
【0052】
4種のMAb C1,C3,C5及びC15の混合液を用いて免疫学的にスクリーニングすることによって、P18のラット脳から誘導された(gt11 cDNAライブラリー(ランダムプライマー)から一個の陽性クローン(λNGC1)を単離し、P8のラット脳から誘導された(gt11cDNAライブラリー(オリゴ−d(T)プライマー)から他の陽性クローン(λNGC3)を最初に単離した。λNGC1とλNGC3はそれぞれ682塩基対と1398塩基対のインサートcDNAをそれぞれ含む(図5)。λNGC1に由来するβ−ガラクトシダーゼとの融合タンパク質はMAb C1とのみ反応し、MAb C3、C5及びC15とは反応しなかった。対照的にλNGC3に由来する融合タンパク質はMAb C3、C5及びC15と反応したが、MAb C1とは反応しなかった。さらに分析を行なうためにλNGC1とλNGC3をpBluescriptIIプラスミドベクター中にサブクローンした(以下それぞれをpNGC1とpNGC3という)。これらのクローンの信頼性は120kDaのコアグリコプロテインと24kDaのCNBr処理で得られた断片のアミノ酸配列がpNGC1中のインサートcDNA(第6図アンダーライン部分参照)から推定したアミノ酸配列の範囲内で一致し、そして15kDaのCNBr処理で得られた断片のアミノ酸配列がpNGC3中のインサートcDNAから推定したアミノ酸配列の範囲内で一致することから明白に立証された(図6参照、下線部分)。
【0053】
pNGC1中のインサートcDNAを〔32P〕−dCTPで標識しそしてこれに重なっているcDNAクローンを同定するためのプローブとして用い、P18のラット脳から誘導された(gt11 cDNA ライブラリー(ランダムプライマー)から4種類のcDNAクローン(λNGC7、λNGC13、λNGC15及びλNGC19)が、重なっているcDNA部分を含み、プロテオグリカンのコア蛋白質を全てコードするcDNAを得た。 図5はプロテオグリカン、すなわちニューログリカンC(NGC)の完全な配列の決定のために用いた異なったcDNAクローンの位置を示す。
【実施例12】
【0054】
NGCのコア蛋白質の予想構造
NGCのコア蛋白質を全てコードするcDNA配列と推定アミノ酸配列を図6に示した。これらのクローンは544アミノ酸をコードする読み取り枠(オープンリーデングフレーム)を含む2,107塩基対以上をカバーしている。算出された分子量(molecular mass)は58,612Daであった。3'未翻訳領域は463ヌクレオチドからなり、ポリアデニル化シグナル(AATAAA)を含む。このコーデイング領域において、CNBr切断による2種類の生産物の配列(下線部分)が同定された。120kDaのコアグリコプロテインのN末端アミノ酸配列(図6のアミノ酸残基31番ではじまる配列(下線部分))を決定した。13番目のヌクレオチドから始まるATGトリプレット付近のヌクレオチド配列は翻訳の開始部位に対応する配列に相当する(非特許文献32)。cDNAの5'領域の12塩基対は5'未翻訳領域である。最初のメチオニンから成熟コア蛋白質の最初のアミノ酸残基(バリン)までに疎水性アミノ酸配列があるがこれは恐らくシグナルペプチド配列である。カイテとドウーリトル(Kyte and Doolittle)ら(非特許文献33)の方法による予想タンパク質アミノ酸配列の疎水性か親水性かの分析(図2)から2個の塩基性残基に続く24アミノ酸からなる(図6のアミノ酸残基番号426−450)カルボキシル末端付近に第2の疎水性配列が明らかになった(図6、破線)。この配列はサバチニら(Sabatini et al)(非特許文献34)によって提案された膜貫通ドメインについての性質に一致する。
【0055】
NGCのコアグリコプロテインはグリシン(10.5%)、ロイシン(9.9 %)、プロリン(9.0 %)、グルタミン酸(8.1 %)、セリン(7.9 %)そしてスレオニン(7.7 %)残基に富んでいる。計算より求められたNGCのpIは4.9 である。コアグリコプロテイン中に全部で10のシステイン残基が見いだされた。これら全てはNGCの中央に位置し、膜貫通ドメインより細胞の外側に位置している。NGCのコアグリコプロテインの推定される細胞外ドメインは3つのN−グリコシレーション可能な部位(非特許文献35)をふくみそしてO−結合糖鎖が結合可能な3つのセリンースレオニンクラスター(図6のアミノ酸残基番号143−144、188−189及び271−272)を含む(非特許文献36)。
【0056】
図6のアミノ酸番号残基31から281のN−末端領域は8個のセリン−グリシン(SG)あるいはグリシン−セリン(GS)のジペプチド配列を含んでいる。これらのジペプチドは、コンドロイチン硫酸の結合部位に合致するコア−部位の配列であると考えられる(非特許文献18、37)。この8個のセリン残基のまわりのアミノ酸配列はSGXG(非特許文献37)と(E/D)GSG(E/D)(非特許文献18)で示されるグリコサミノグリカンの結合部位に対応する配列とは異なっている。しかしながら、これらの対応する配列はコア蛋白質へグリコサミノグリカンが結合し得る唯一の配列ではない。例えば、ニューロカンにおいて、コンドロイチン硫酸鎖が結合しているセリン残基付近の配列はEEVASGQED(非特許文献16)である。アグリカン、バーシカン、シンデカン、デコリン及びIX型コラーゲンのようなプロテオグリカンにおけるコンドロイチン硫酸の結合部位に特徴的なアミノ酸の配列は前にSG/GSがそして酸性アミノ酸残基が続くことが報告されている(図7)。コンドロイチン硫酸の結合において酸性アミノ酸残基の重要性は同様に別の文献に記述されている(非特許文献18、37、38)。NGCコア蛋白質の8個のSG/GS−ジペプチドの付近にこれらに対応する配列が並んでいる。NGCは予想される細胞外ドメイン中に2個の付加的ジペプチド配列((図2の341番と374番のセリン残基)を含む。しかしながら、これらのジペプチドはコンドロイチン硫酸の結合部位に対応する配列と関連していなかった。従って、N−末端ドメインを推定コンドロイチン硫酸結合ドメインとした。塩基性アミノ酸の短い配列KRRKRRRRIR(図6のアミノ酸残基番号282−291)が仮のコンドロイチン硫酸結合ドメインに近接して見いだされた(2本下線で示す)。さらに塩基性アミノ酸の短い配列の後に、10個のシステイン残基を含む133個のアミノ酸(図6のアミノ酸残基番号292−425)からなる領域が見だされた。
【0057】
またNGCの細胞質ドメインはプロテインキナーゼによってリン酸化可能な部位となるセリンおよびスレオニン残基を含む。図6のアミノ酸残基番号465番のスレオニン残基付近のアミノ酸配列(KLRRTNK)と521番のセリン残基付近のアミノ酸配列(SPK)はグラフら(Graff et al)(非特許文献42)によって提案されたプロテインキナーゼCによるリン酸化部位に対応する配列(X(R/K)XX(T/S)X(R/K))に類似している。NGCがリン酸化されるかどうかは決定されていないけれども、NGCがシグナル伝導に関与している可能性はある。仮の細胞質ドメインは2つのチロシン残基を含む。しかしこれらのチロシン残基に接続する配列はチロシンのリン酸化に対して報告された対応する配列とは異なっている(非特許文献43)。図8はNGCコア蛋白質の提案されるドメイン構造の図示的表現である。
【0058】
アミノ酸レベルでのデータベース検索によりNGCの小さな部位がアグリカン、および軟骨のコンドロイチン硫酸プロテオグリカン(非特許文献44)のコアプロテインと似ている。この類似する領域は全てNGCの推定の細胞外ドメイン中に分布している。推定のコンドロイチン硫酸結合ドメインにおいて、11のホモロジーのあるクラスターを同定した:NGCの (図2のアミノ酸残基番号45−94とアグリカンの残基番号907−956(32%同一性/48%化学的相似性);以下同様に残基番号とその同一性、相似性を示すと26−70と967−1011(29%/56%);53−103と955−1005(22%/47%);88−113そして1585−1610(42%/54%);117−151と1649−1683(31%/40%);43−92と1130−1179(28%/38%);50−94と892−936(27%/47%);59−108と1233−1282(22%/44%);122−163と1296−1337(29%/36%);109−153と1705−1749(31%/40%);及び90−114と1108−1132(32%/56%)である。アグリカンにおいてホモロジーのあるクラスターの全ては推定されるコンドロイチン硫酸結合部位ドメインに局在している。NGCのシステイン含有ドメイン中に本発明者らは3つのホモロジーのあるクラスターを見いだした: (図2のアミノ酸残基番号287−322と1827と1862(31%同一性/42%化学的相似性);以下同様に348−386と1898−1936(23%/38%);及び401−411と1998−2008(55%/55%)である。アグリカン中の対応するホモロジーのあるクラスターの全ては同様にアグリカンのシステイン含有ドメインのひとつに局在している。ラットアグリカンとNGCのホモロジーのある配列の図示的配列が図9に示されている。アグリカンはいくつかの構造的に異なったドメインからなる、つまり、免疫グロブリン様ドメインとN末端部位中でのヒアルロン酸結合領域の2回の繰り返し、中央部のコンドロイチン硫酸結合部位ドメインとEGF様ドメイン、レクチン様ドメイン及びカルボキシ末端部位での補体調節タンパク質様ドメインからなる(非特許文献44)(図9参照)。いくつかの他のコンドロイチン硫酸プロテオグリカン、例えばバーシカン(非特許文献18)、ニューロカン(非特許文献16)、ブレビカン(非特許文献17)そしてBEHAB(非特許文献19)は同様にこれらのドメインを含む。従って、これらは全てアグリカンファミリーのメンバーであるとされる。NGCはこのファミリーのメンバーではない、なぜならNGCコア蛋白質はコンドロイチン硫酸結合ドメインを除いてこれらのいかなるドメインももたないからである(図9)。
【実施例13】
【0059】
ノーサンブロット分析
NGCのmRNAの組織分布をノーザンブロット分析によって検討し(図10)、3.1 kbの単一転写産物が7日齢と成熟ラットの脳の分析で検出された。ここでNGCのコーデイング領域とNGCのmRNAの間の長さの違いはmRNAにおける5'未翻訳領域と3'非コーデイング領域(図5、矢印)の存在に帰する。この転写産物は腎臓、肝臓、肺臓そして筋肉の分析では検出されなかった。
【実施例14】
【0060】
ヒト由来のNGCのクローニング
32P標識したcDNAプローブをラットのNGCのDNA断片(制限酵素XbaI-Hind III 消化DNA断片:配列表1の塩基番号624〜1735)をもとにして作製した。これをプローブとし2歳の健常な女性の側頭皮質より作製した市販のcDNAライブラリー(Stratagene Cloning System社) からプラークハイブリダイゼーションによって相同性の高い塩基配列を有するクローンを単離した。プラークハイブリダイゼーションの宿主には大腸菌(Escherichia coli) XL-1 blue MRF'(Stratagene Cloning System社) を用いた。ハイブリダイゼーションの条件は、60℃、3xSSC(SSC:0.15M NaCl、0.015M酢酸ナトリウム) 中で行い、洗浄は60℃、0.1 xSSCで行った。単離したDNAクローンは、pBluescriptII(Stratagene Cloning System社) にサブクローンした。
【0061】
DNAの塩基配列決定は、実施例8と同様に行った。NGCのコア蛋白質を全てコードするcDNA配列と推定アミノ酸配列を配列番号2に示した。これらのクローンは545アミノ酸をコードする読み取り枠(オープンリーディングフレーム)を含む1740塩基対以上をカバーしている。算出された蛋白質の分子量は58538.89(未確定の3アミノ酸残基を除く)であった。またラットのNGC遺伝子との相同性は83.6%であった。また、ヒト由来のNGCをコードするDNA の塩基配列から推定されるアミノ酸配列を、配列番号2に併記した。ラットのNGCとの相同性は83.9%であった。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】本発明のコンドロイチン硫酸プロテオグリカンの模式図を示す。CS−アタッチメントドメイン、塩基性アミノ酸クラスタードメイン、システイン含有ドメイン、膜貫通ドメイン及び細胞質内アミノ酸配列ドメインよりなる。
【図2】本発明のコンドロイチン硫酸プロテオグリカンのアミノ酸配列の疎水性及び親水性分析結果を示す。横軸が 図6に示したアミノ酸残基番号を示し、縦軸はマイナスが疎水性を示し、プラスが親水性を示す。
【図3】10日齢ラットから部分精製した膜結合型コンドロイチン硫酸プロテオグリカンのポリアクリルアミドゲル上での電気泳動図を示す。
【図4】ラット大脳皮質におけるNGCの発現パターンを示す。(A) 0日齢ラットの大脳皮質の前顎断切片をMAb C5で免疫染色したもの。(B) 7日齢ラットの大脳皮質の前顎断切片をMAb C5で免疫染色したもの。(C) 本発明のプロテオグリカンのコアグリコプロテインの相対発生量の変化。
【図5】本発明のラットNGCをコードするクローンを示す。
【図6】本発明のラットNGCのcDNA配列と推定アミノ酸配列を示す。アミノ酸は一文字表記法を用いた。
【図7】本発明のラットNGC、バーシカン、アグリカン、ニューロカン、シンデカン、デコリン及びIX型コラーゲンのグリコサミノグリカン結合又は結合可能な部位のアミノ酸配列を示す。
【図8】NGCコア蛋白質の構造の模式図を示す。
【図9】ラットNGCのアミノ酸配列とラットアグリカン(非特許文献61)のアミノ酸配列との対比を示す。NGCとラットアグリカンとの類似したクラスターの中央部位間を線で結んだ。CS,CS1,CS2及びCS3はコンドロイチン硫酸結合ドメインを、IGは、免疫グロブリン様ドメインを、H1及びH2はヒアルロン酸結合ドメインを、KSは、ケラタン硫酸結合ドメインを、G(ELC)はEGF様ドメイン、レクチン様ドメイン及び補体調節タンパク質様ドメインを含むグロブラードメインを、Gはグロブラードメインを、Tは膜貫通ドメインを、CPは細胞質ドメインをそれぞれ示す。アミノ酸残基数をスケールで示している。
【図10】7日齢ラットの脳(B7)、成熟ラットの脳(Ba)、成熟ラット腎臓(K)、肝臓(Li)、肺臓(Lu)及び筋肉(M)からのNGCのmRNAのノーザンブロットを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の方法で製造され、かつ、以下の性質を有するコンドロイチン硫酸プロテオグリカンを、ヒト以外の哺乳動物に免疫し、該動物の体液から採取することができるか、または該動物の抗体産生細胞によって産生される、以下の性質を有する抗体。
(プロテオグリカンの製造方法)
工程1:ラットの脳を2mM フェニルメチルスルフォニルフルオライド、20mM EDTA及び10mM N−エチルマレイミドを含むリン酸塩緩衝食塩水中でホモジナイズし、そのホモジネートを27,000xgで40分間遠心して沈澱物を回収する。(本工程および以下の工程は特に示していない限り全て4℃で行う。)
工程2:工程1で回収した沈殿物について、再度、工程1と同様にホモジネーションし、遠心して、不溶性物質を回収する。
工程3:工程2で回収した不溶性物質を、2mM フェニルメチルスルフォニルフルオライドと1%ノニデット P−40を含むリン酸塩緩衝食塩水中で0℃においてホモジナイズし、ホモジネートを回収する。
工程4:工程3で回収したホモジネートを60分間撹拌し、次いでこれを27,000xgで40分間遠心して上清を回収し、これを凍結乾燥する。
工程5:工程4で得られた凍結乾燥物を、0.2 %ノニデットP−40、0.1 M NaCl、2mM EDTA、1mM N−エチルマレイミド及び0.2 mMフェニルメチルスルフォニルフルオライドを含む4M尿素、50mMトリス塩酸緩衝液(pH7.5)中に分散し、次いで同緩衝液に対して透析する。
工程6:工程5における透析後の溶液を27,000xgで30分間遠心し、上清を回収する。
工程7:工程6で回収した上清を、尿素緩衝液で平衡化したDEAE−樹脂と混合し、この混合物を2時間撹拌する。
工程8:工程7における撹拌後のDEAE−樹脂を回収し、これを尿素緩衝液で洗浄する。
工程9:工程8における洗浄後のDEAE−樹脂をカラムにつめ、次いで尿素緩衝液中でNaClの直線濃度勾配(0.1 Mから0.7 M)をかけ、0.45から0.68MのNaCl濃度で溶出される画分を回収する。
工程10:工程9で回収された画分を濃縮し、この濃縮液を、0.2 %ノニデットP−40と2mM フェニルメチルスルフォニルフルオライドとを含む4Mグアニジン塩酸、50mM トリス塩酸緩衝液(pH7.5)を用いたセファロースCL−4Bのカラム(直径1.6 cm×100cm)のクロマトグラフィーに付し、Kavが0.11から0.65の範囲にある画分を回収する。
工程11:工程10で回収された画分を濃縮する。
工程12:工程11で得られた濃縮液に、1.3 %(W/V)酢酸カリウムを含む3倍容の95%エタノールを添加して、沈殿物を形成させる。
工程13:工程12で形成された沈澱物を、0℃で、1%(W/V)酢酸カリウムを含む75%エタノールで洗浄し、減圧乾燥する。
工程14:工程13で得られた乾燥物を、室温で、グアニジン塩酸緩衝液(4Mグアニジン塩酸、50mMトリス塩酸、pH7.5)に溶解する。
工程15:工程14で得られた溶液をオクチルセファロースのカラム(直径1.6 cm×5.0 cm)に負荷し、グアニジン塩酸緩衝液中でノニデットP−40の直線濃度勾配(0%から0.8 %(V/V))をかけ、0.3 %から0.6 %(v/v)のノニデットP−40濃度で溶出される画分を回収する。
工程16:工程15で回収した画分にエタノールを添加して沈殿物を形成させ、この沈殿物を減圧乾燥する。
工程17:工程16で得られた乾燥物を、グアニジン塩酸緩衝液(4Mグアニジン塩酸、50mMトリス塩酸、pH7.5)中で塩化セシウム密度勾配遠心法(初期密度1.38g/ml;10℃;150,000xg で30時間)に付する。
工程18:工程17の処理が終了した試料を7つに分画し、その第2番目から第6番目の画分を回収する。
工程19:工程18で回収した画分をリン酸塩緩衝食塩水に対して透析して、コンドロイチン硫酸プロテオグリカン画分を取得する。
(プロテオグリカンの性質)
(A)糖鎖:分子量約30キロダルトンのコンドロイチン硫酸を含有する。
(B)本プロテオグリカンにノイラミニダーゼ、O−グリコシダーゼまたはN−グリコシダーゼを作用させると糖鎖が遊離する。
(C)分子量が、還元条件下におけるドデシル硫酸ナトリウム−ポリアクリルアミドゲル電気泳動において150キロダルトンである。
(抗体の性質)
(1) 上記のプロテオグリカンに結合する。
(2) 上記のプロテオグリカンをコンドロイチナーゼABCで消化して得られる産物に 結合する。
(3) 上記(2)により得られる産物をさらにヘパリチナーゼIで消化して得られる産 物に結合する。
(4) 上記(3)により得られる産物をさらにノイラミニダーゼで消化して得られる産 物に結合する。
(5) 上記(4)により得られる産物を、さらにN−グリコシダーゼ及びO−グリコシ ダーゼのいずれの酵素で消化して得られる産物にも結合する。
(6) エピトープが、上記のプロテオグリカンのポリペプチド部分に存在する。
【請求項2】
モノクローナル抗体である、請求項1に記載の抗体。
【請求項3】
マウス由来であり、かつ、イソタイプがIgG1である、請求項1又は2に記載の抗体。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の抗体を用いることを特徴とする、大脳皮質の免疫組織化学的染色方法。
【請求項5】
大脳皮質に存在するプロテオグリカンを請求項1〜3のいずれか1項に記載の抗体で検出するステップを含む、大脳皮質の成熟度の検知法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2007−204473(P2007−204473A)
【公開日】平成19年8月16日(2007.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−17680(P2007−17680)
【出願日】平成19年1月29日(2007.1.29)
【分割の表示】特願平8−317060の分割
【原出願日】平成8年11月13日(1996.11.13)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【出願人】(000195524)生化学工業株式会社 (143)
【Fターム(参考)】