説明

新規コーティング剤

【課題】塗装面に防汚性を付与し、塗装面に光沢や撥水性を付与することで美観を向上させ、更にこれらの効果を長期間にわたり持続することができるコーティング剤を提供する。
【解決手段】特定の主骨格を有するポリシラザンと、変性シリコーンオイル及び/又は硬化性シリコーン樹脂とを含有するコーティング剤であり、前記変性シリコーンオイルがアミノ変性シリコーン、エポキシ変性シリコーン、カルビノール変性シリコーン、メルカプト変性シリコーン、カルボキシル変性シリコーン、ヒドロキシ変性シリコーン、アルコキシ変性シリコーン、メチルハイドロジェンシリコーン、及びシラザン変性シリコーンのうち少なくとも一種であり、前記硬化性シリコーン樹脂が下記平均組成式(B)で表される硬化性シリコーン樹脂である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規コーティング剤、特に車両(自動車、電車等)の車体、航空機の機体、家具、建物の外壁等の塗装表面用のコーティング剤に関する。
【背景技術】
【0002】
車両(自動車、電車等)の車体、航空機の機体、家具、建物の外壁等の塗装表面は、自然環境の下、埃、排気ガス、アスファルトやピッチ、雨、紫外線等の影響により退色、汚染が進行し、艶の消失などにより美観が損なわれていく。そのため、従来、各種塗装艶出し保護剤や、各種コーティング組成物が用いられてきている。
【0003】
例えば、ワックス類、シリコンオイル又はシリコンワニスなどの艶出し剤と、特定の紫外線吸収剤とを、それぞれ特定の量で含有する塗装艶出し保護剤が提案されている(特許文献1参照)。
【0004】
また、コーティング組成物として、脂肪族炭化水素系溶剤、石油系溶剤、芳香族系溶剤、アルコール及びフッ素系溶剤から選択された1種あるいは2種以上の有機溶剤をベースとし、前記ベース中に、(a)水分硬化性シリコーン樹脂と、(b)反応促進剤と、(c)分子の側鎖に少なくとも1つ以上の反応性有機基を有する反応性シリコーンオイルと、を含有するコーティング組成物(特許文献2参照)や、無機ポリシラザン、希釈溶剤、及び触媒を含有する防汚コーティング液(特許文献3参照)等が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平06−065541号公報
【特許文献2】特開2010−31074号公報
【特許文献3】WO2002−088269
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に開示されている塗装艶出し保護剤及び特許文献2に開示されているコーティング組成物の何れにおいても、耐久性が不十分であり、艶(艶出し性)ないし光沢性、防汚性、及び撥水性等の特性を長期にわたって維持することは困難である。
【0007】
また、特許文献3に開示されている防汚コーティング液は、耐久性を十分に有するものの、艶や、撥水性といった美観の向上効果においては満足のいくものではない。
【0008】
これら従来の技術事情に鑑みて、本発明の一視点において、本発明は、塗装面に防汚性を付与し、塗装面に光沢や撥水性を付与することで美観を向上させ、更にこれらの効果を長期間にわたり持続することができるコーティング剤、特に塗装面用コーティング剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明においては、特定のコーティング剤を用いる。この特定のコーティング剤は、第一成分として特定のポリシラザンと、第二成分として特定の変性シリコーンオイル及び/又は第三成分として特定の硬化性シリコーン樹脂とを含有する。このような組成によれば、車両(自動車、電車等)、航空機の機体、家具、建物の外壁等の塗装表面(塗装面)に塗布することにより、その塗装面が汚染等から保護されるとともに、塗装面に艶ないし光沢や撥水性を付与することでその美観が向上する。また、それらの効果は長期にわたって維持される。
【0010】
即ち、本発明は、第一の視点において、
下記一般式(A)で表される単位からなる主骨格を有するポリシラザンと、変性シリコーンオイル及び/又は硬化性シリコーン樹脂とを含有し、前記変性シリコーンオイルがアミノ変性シリコーン、エポキシ変性シリコーン、カルビノール変性シリコーン、メルカプト変性シリコーン、カルボキシル変性シリコーン、ヒドロキシ変性シリコーン、アルコキシ変性シリコーン、メチルハイドロジェンシリコーン、及びシラザン変性シリコーンのうち少なくとも一種であり、前記硬化性シリコーン樹脂が下記平均組成式(B)で表される硬化性シリコーン樹脂であることに特徴を有するコーティング剤を提供することができる:
【化1】

但し、R、R及びRは、それぞれ独立して水素原子、アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、アリール基、又はこれらの基以外でケイ素に直結する基が炭素である基、アルキルシリル基、アルキルアミノ基、或いはアルコキシ基を表し、R、R及びRの少なくとも1つは水素原子である;
【化2】

但し、Rは少なくとも一種の炭素原子数1〜8の置換又は非置換炭化水素基を表し、Rは水素原子並びに炭素原子数1〜4のアルキル基及びアルケニル基から選ばれる原子又は有機基を表し、aは0<a≦2を満たす正数であり、bは0.01≦b≦3を満たす正数であり、0.01<a+b≦3である。
【0011】
本発明の第二の視点において、下記一般式(A)で表される単位からなる主骨格を有するポリシラザンと、変性シリコーンオイルと、硬化性シリコーン樹脂とを含有し、前記変性シリコーンオイルがアミノ変性シリコーン、エポキシ変性シリコーン、カルビノール変性シリコーン、メルカプト変性シリコーン、カルボキシル変性シリコーン、ヒドロキシ変性シリコーン、アルコキシ変性シリコーン、メチルハイドロジェンシリコーン、及びシラザン変性シリコーンのうち少なくとも一種であり、前記硬化性シリコーン樹脂が下記平均組成式(B)で表される硬化性シリコーン樹脂であることに特徴を有するコーティング剤を提供することができる:
【化3】

但し、R、R及びRは、それぞれ独立して水素原子、アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、アリール基、又はこれらの基以外でケイ素に直結する基が炭素である基、アルキルシリル基、アルキルアミノ基、或いはアルコキシ基を表し、R、R及びRの少なくとも1つは水素原子である;
【化4】

但し、Rは少なくとも一種の炭素原子数1〜8の置換又は非置換炭化水素基を表し、Rは水素原子並びに炭素原子数1〜4のアルキル基及びアルケニル基から選ばれる原子又は有機基を表し、aは0<a≦2を満たす正数であり、bは0.01≦b≦3を満たす正数であり、0.01<a+b≦3である。
【発明の効果】
【0012】
本発明のコーティング剤によれば、塗布直後のみならず、自然環境での暴露条件に置いても、塗布面において汚れの付着や光沢の劣化が少なく、高い撥水性を付与することができ、長期間にわたり塗装面の美観を維持することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための形態について説明する。
【0014】
本発明のコーティング剤は、有効成分として、特定のポリシラザンと、特定の変性シリコーンオイル及び/又は特定の硬化性シリコーン樹脂とを混合することにより得られる。
【0015】
本発明のコーティング剤では、第一成分(有効成分)として、特定のポリシラザンを使用する。本発明において使用するポリシラザンは、下記一般式(A)で表される単位からなる主骨格を有する化合物であればよい。好ましくは数平均分子量が100〜50000であるもの、より好ましくは数平均分子量が500〜10000であるものが選択される。
【0016】
【化5】

【0017】
但し、上記式中、R、R及びRは、それぞれ独立して水素原子、アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、アリール基、又はこれらの基以外でケイ素に直結する基が炭素である基、アルキルシリル基、アルキルアミノ基、或いはアルコキシ基を表し、R、R及びRの少なくとも1つは水素原子である。
【0018】
したがって、このようなポリシラザンを単独で使用することは勿論のこと、当該ポリシラザンと他のポリマーとの共重合体や、当該ポリシラザンと他の化合物との混合物を利用することもできる。これらのポリシラザンには、鎖状、環状、又は架橋構造を有するもの、或いは分子内にこれらの複数の構造を同時に有するものがあり、これらの何れも前記ポリシラザンとして使用することができる。これらは、単独で用いてもよいし、或いは2種以上の混合物として用いてもよい。前記ポリシラザンの反応性は非常に高い。したがって、空気中の水分の存在により前記ポリシラザン同士が常温で容易に反応し、前記ポリシラザンと後述する特定の変性シリコーンオイル(第二成分)と特定の硬化性シリコーン樹脂(第三成分)とが常温で容易に反応することによって、前記ポリシラザンは綿密な被膜を形成する。この被膜が、良好な艶、撥水性、及び防汚性を付与する。
【0019】
前記ポリシラザンとしては、例えば、特開平8−170051号公報、特開2006−216704号公報に報告されているものを使用することができる。
【0020】
また、前記ポリシラザンとしては市販されているものを使用することができる。また、前記ポリシラザンとして市販されているものの中には、有機溶剤に溶解された形態にあるものがあり、このようなものも使用することができる。前記有機溶剤に溶解された形態にあるもの(ポリシラザン有機溶剤溶液)として、例えば、「アクアミカ」の商品名で商品番号NN110、NN310、NL110A、NL120A、NL150A、NL160A、NP110、NP140、SP140、UP140(いずれもAZエレクトロニックマテリアルズ社製)等が市販されており、これらを使用することができる。好ましくはNN310及びNP140から選択される。
【0021】
本発明のコーティング剤では、第二成分(有効成分)として、特定の変性シリコーンオイルを使用する。本発明において使用するポリシラザンは、アミノ変性シリコーン、エポキシ変性シリコーン、カルビノール変性シリコーン、メルカプト変性シリコーン、カルボキシル変性シリコーン、ヒドロキシ変性シリコーン、アルコキシ変性シリコーン、メチルハイドロジェンシリコーン、及びシラザン変性シリコーンから選択される。これらは、単独で用いてもよいし、また2種以上を組み合わせて用いてもよい。好ましくはアミノ変性シリコーン、カルビノール変性シリコーン、ヒドロキシ変性シリコーン及びシラザン変性シリコーンから選択され、更に好ましくはシラザン変性シリコーンが選択される。なお、後述する実施例において、前記変性シリコーンオイルのうち、アミノ変性シリコーン、カルビノール変性シリコーン、ヒドロキシ変性シリコーン、アルコキシ変性シリコーン及びシラザン変性シリコーンでその効果が実証された。これらは前記ポリシラザンとの反応性を有するものであるが、シラザン変性シリコーンは最も容易に反応するため高い効果が得られると考えられる。これらと同様に、前記ポリシラザンとの反応性を有するメルカプト変性シリコーン、カルボキシル変性シリコーン、メチルハイドロジェンシリコーン及びエポキシ変性シリコーンも本発明において使用できることは明らかである。
【0022】
前記変性シリコーンとしては市販されているものを使用することができる。具体的には、アミノ変性シリコーンとしてモメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製TSF4701、旭化成ワッカーシリコーン社製WT1250等;エポキシ変性シリコーンとして東レ・ダウコーニング社製BY16-839、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製YF3965等;カルビノール変性シリコーンとして旭化成ワッカーシリコーン社製IM15、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製XF42-B0970等;メルカプト変性シリコーンとして信越化学工業社製KF-2001等;カルボキシ変性シリコーンとして信越化学工業社製X-22-162C、東レ・ダウコーニング社製BY16-880等;ヒドロキシ変性シリコーンとして東レ・ダウコーニング社製BY16-873、旭化成ワッカーシリコーン社製CT601M等;アルコキシ変性シリコーンとして信越化学工業社製X-24-9011等;メチルハイドロジェンシリコーンとして旭化成ワッカーシリコーン社製H-Siloxane等;シラザン変性シリコーンとしてKPN-3504等を使用することができる。
【0023】
前記変性シリコーンオイルは、前記ポリシラザンと、或いはこれと後述する特定の硬化性シリコーン樹脂と常温で容易に反応することによって、被膜を形成する。
【0024】
本発明のコーティング剤では、第三成分(有効成分)として、特定の硬化性シリコーン樹脂を使用する。本発明において使用する硬化性シリコーン樹脂は、下記平均組成式(B)で表される化合物であり、好ましくはオリゴマー程度、より好ましくは分子量(重量平均分子量)200〜4500ないし粘度2〜110mm/secの化合物である。前記硬化性シリコーン樹脂は、空気中の水分と前記ポリシラザン、或いはこれと前記変性シリコーンオイルの存在により、硬化性シリコーン樹脂同士の反応及び前記硬化性シリコーン樹脂と前記ポリシラザン、或いはこれらと前記変性シリコーンオイルとの反応が常温で容易に起こることにより、被膜を形成する。
【0025】
【化6】

【0026】
但し、上記式中、Rは少なくとも一種の炭素原子数1〜8の置換又は非置換炭化水素基を表し、Rは水素原子並びに炭素原子数1〜4のアルキル基及びアルケニル基から選ばれる原子又は有機基を表し、aは0<a≦2を満たす正数であり、bは0.01≦b≦3を満たす正数であり、0.01<a+b≦3である。
【0027】
前記硬化性シリコーン樹脂として、具体的には、信越化学工業社製KR-500、東レ・ダウコーニング社製QP8-5314等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよいし、また2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0028】
前記変性シリコーンオイル及び/又は硬化性シリコーン樹脂の合計含有量は、ムラなく施工するため、前記ポリシラザン1重量部に対して、好ましくは0.1〜500重量部程度、より好ましくは0.3〜400重量部程度、更に好ましくは0.3〜100重量部程度、更に好ましくは1〜80重量部程度、特に好ましくは1〜50重量部程度が選択される。0.1重量部未満の場合には、撥水性が不良となる傾向があり、500重量部を超える場合には、艶と耐久性が不良となる傾向があるため好ましくない。
【0029】
本発明のコーティング剤の作用機序について考察してみるならば、本発明のコーティング剤は、第一成分として特定のポリシラザンと、第二成分として特定の変性シリコーンオイル及び/又は第三成分として特定の硬化性シリコーン樹脂とを含有する。本発明のコーティング剤を塗装面に塗布すると、空気中の水分の存在により前記ポリシラザンが重合反応し、同時に、前記ポリシラザンは前記変性シリコーン及び/又は前記硬化性シリコーン樹脂とも反応し、塗装面上に被膜(コーティング膜)が形成される。したがって、前記ポリシラザンは、形成される被膜と塗装面との密着性に大きく寄与していると考えられる。また、前記ポリシラザンの反応性は非常に高いことから、前記ポリシラザンは、前記変性シリコーン及び/又は前記硬化性シリコーン樹脂の反応に対する触媒作用も有すると考えられる。これらが、本発明のコーティング剤が高い耐久性を示す要因であり、前記ポリシラザンは本発明のコーティング剤において欠くことのできない成分であると考えられる。すなわち、本発明の効果は、前記被膜の形成により得られると考えられる。本発明のコーティング剤が、塗装面に優れた防汚性や、艶ないし光沢、撥水性を付与し、これを長期にわたって維持する効果を有する主な理由として、この被膜の形成が挙げられる。なお、前記変性シリコーン及び/又は前記硬化性シリコーン樹脂は、形成される被膜に光沢(艶)や撥水性といった美観向上の機能を付与する成分であると考えられる。
【0030】
本発明のコーティング剤には、本発明の目的ないし効果を阻害しない範囲で、必要に応じ、希釈溶媒として有機溶剤、反応促進剤として各種触媒、拭き上げ性改善剤として各種微粉末等を配合することができる。また、必要に応じ、安定化剤、凍結防止剤、防請剤、防腐剤、紫外線吸収剤、色素等を配合することもできる。
【0031】
本発明のコーティング剤を使用する方法は特に困難は無く、これを、必要に応じ一定濃度に希釈して、車両等、目的とするものの表面(特に塗装面)に対し噴霧、塗布等の通常行われるコーティング剤による表面処理を行うとよい。例えば、本発明のコーティング剤をスポンジや布等に含浸させ、塗装面を擦る等して塗布した後、布で拭き上げる方法や、刷毛塗り、エアゾールスプレーによる方法を、目的や用途に応じて選択して使用することができる。その後、必要により乾燥することにより、塗装面全体に防汚性、光沢性(艶)及び撥水性等において長期にわたって優れた塗装面への被膜を形成することができる。
【0032】
以下、実施例及び比較例により本発明を詳細に説明する。但し、本発明はこれらの実施例及び比較例に限定されるものではない。尚、%値は特に説明が無い限り重量%で表されている。
【実施例】
【0033】
下記表1及び2の組成に従って各種のコーティング剤を調製した。すなわち、各成分を撹拌、混合して、コーティング剤を得た。
【0034】
【表1】



【0035】
【表2】



【0036】
[試験片の調製]
前記組成のコーティング剤を、JIS K 2396(自動車用艶出しコーティング剤)に規定されている白色試験片及び黒色試験片に、ウレタンスポンジを用いて均一に塗布した。その際、各試験片の一部の領域をブランク面(未施工(未処理)面)として残しておき、その他の領域にコーティング剤を均一に塗布した。5分間放置した後、正常な布を用いて表面を拭き取った。このとき、ふき取りが困難な場合はキシレンを含浸させた布を用いて再度拭き取った。その後1日間室温で放置して、各種試験片を得た。
【0037】
[試験方法1]艶(光沢性)の評価
上記で得られた黒色試験片について、コーティング剤を塗布した面とブランク面との艶の違いを目視で評価した。その後、更に、6ヶ月間屋外に暴露した後、同様に、コーティング剤を塗布した面とブランク面との艶の違いを目視で評価した。なお、6ヶ月間の屋外における暴露の間、試験片については、1ヶ月に1回、スポンジを用いて水道水による水洗いを施した。
【0038】
尚、評価基準は次の通りである。
◎:ブランク面と比較し艶が非常によい
○:ブランク面と比較し艶がまずまずよい
△:ブランク面と艶の違いがほとんどない
×:ブランク面と艶の違いが全くない
【0039】
[試験方法2]撥水性の評価
上記で得られた黒色試験片にハンドスプレーで水道水を噴霧し、塗装面上における被膜の撥水状態を目視で評価した。その後、更に、6ヶ月間屋外に暴露した後、同様に、塗装面上における被膜の撥水状態を目視で評価した。なお、6ヶ月間の屋外における暴露の間、試験片については、1ヶ月に1回、スポンジを用いて水道水による水洗いを施した。
【0040】
尚、評価基準は次の通りである。
◎:よく撥水する
○:まずまず撥水する
△:やや撥水が弱い
×:ほとんど撥水しない
【0041】
[試験方法3]6ヶ月後の汚れ付着性(防汚性)の評価
上記で得られた白色試験片を、6ヶ月間屋外に暴露した。その後、コーティング剤を塗布した面とブランク面の汚れの付着状態の違いを目視で評価した。
【0042】
尚、評価基準は次の通りである。
◎:ブランク面と比較し明らかに黒ずみが少ない
○:ブランク面と比較して若干黒ずみが少ない
△:ブランク面とほぼ同等の黒ずみ
×:ブランク面に比べ黒ずみが激しい
【0043】
上記試験方法1〜3により行った試験の結果を下記表3に示す。
【0044】
【表3】

【0045】
[試験結果]
表3より、実施例のコーティング剤試料は、艶(光沢性)においていずれも比較例のコーティング剤試料と同等若しくはそれ以上であり、撥水性が高く、汚れの付着も少ないことが確認された。また、実施例のコーティング剤試料において、これらの効果が長期にわたって維持されることも確認された。
【0046】
以上のことから、本発明のコーティング剤は、その組成により、塗装面に優れた防汚性や、艶ないし光沢、撥水性を付与し、これらの効果を長期にわたって維持することができる。したがって、本発明のコーティング剤は優れている。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明によれば、車両(自動車、電車等)の車体、航空機の機体、家具、建物の外壁等の塗装表面(塗装面)に、長期間にわたって艶ないし光沢性、撥水性、防汚性に優れた効果を発揮する被膜を塗装表面等に付与できる。したがって、本発明は、工業的に極めて有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(A)で表される単位からなる主骨格を有するポリシラザンと、変性シリコーンオイル及び/又は硬化性シリコーン樹脂とを含有し、前記変性シリコーンオイルがアミノ変性シリコーン、エポキシ変性シリコーン、カルビノール変性シリコーン、メルカプト変性シリコーン、カルボキシル変性シリコーン、ヒドロキシ変性シリコーン、アルコキシ変性シリコーン、メチルハイドロジェンシリコーン、及びシラザン変性シリコーンのうち少なくとも一種であり、前記硬化性シリコーン樹脂が下記平均組成式(B)で表される硬化性シリコーン樹脂であることを特徴とするコーティング剤:
【化1】


但し、R、R及びRは、それぞれ独立して水素原子、アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、アリール基、又はこれらの基以外でケイ素に直結する基が炭素である基、アルキルシリル基、アルキルアミノ基、或いはアルコキシ基を表し、R、R及びRの少なくとも1つは水素原子である;
【化2】

但し、Rは少なくとも一種の炭素原子数1〜8の置換又は非置換炭化水素基を表し、Rは水素原子並びに炭素原子数1〜4のアルキル基及びアルケニル基から選ばれる原子又は有機基を表し、aは0<a≦2を満たす正数であり、bは0.01≦b≦3を満たす正数であり、0.01<a+b≦3である。
【請求項2】
下記一般式(A)で表される単位からなる主骨格を有するポリシラザンと、変性シリコーンオイルと、硬化性シリコーン樹脂とを含有し、前記変性シリコーンオイルがアミノ変性シリコーン、エポキシ変性シリコーン、カルビノール変性シリコーン、メルカプト変性シリコーン、カルボキシル変性シリコーン、ヒドロキシ変性シリコーン、アルコキシ変性シリコーン、メチルハイドロジェンシリコーン、及びシラザン変性シリコーンのうち少なくとも一種であり、前記硬化性シリコーン樹脂が下記平均組成式(B)で表される硬化性シリコーン樹脂であることを特徴とするコーティング剤:
【化3】

但し、R、R及びRは、それぞれ独立して水素原子、アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、アリール基、又はこれらの基以外でケイ素に直結する基が炭素である基、アルキルシリル基、アルキルアミノ基、或いはアルコキシ基を表し、R、R及びRの少なくとも1つは水素原子である;
【化4】

但し、Rは少なくとも一種の炭素原子数1〜8の置換又は非置換炭化水素基を表し、Rは水素原子並びに炭素原子数1〜4のアルキル基及びアルケニル基から選ばれる原子又は有機基を表し、aは0<a≦2を満たす正数であり、bは0.01≦b≦3を満たす正数であり、0.01<a+b≦3である。
【請求項3】
前記ポリシラザン1重量部に対して、前記変性シリコーンオイル及び/又は硬化性シリコーン樹脂の合計含有量が0.1〜500重量部である請求の範囲1又は2記載のコーティング剤。
【請求項4】
前記変性シリコーンオイルがシラザン変性シリコーンである請求の範囲1〜3何れか記載のコーティング剤。

【公開番号】特開2012−153849(P2012−153849A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−16227(P2011−16227)
【出願日】平成23年1月28日(2011.1.28)
【出願人】(592007612)横浜油脂工業株式会社 (29)
【Fターム(参考)】