説明

新規ジアリールスルホン化合物、及びその製造方法

【課題】高屈折率で透明性に優れた合成樹脂を与える単量体として、従来の化合物と比較して安価であって、且つ少なくとも同等の性能を有する化合物、及びその製造方法を提供する。
【解決手段】一般式(1):


(式中、R〜R及びR1’〜R4’は、同一又は異なって、それぞれ、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基又はハロゲン原子を示し、Rは、炭素数2〜5のアルケニル基を示す。)で表されるジアリールスルホン化合物、並びに
4,4’−ジメルカプトアリールスルホン塩とハロゲン化物とを溶媒中で反応させることを特徴とする上記一般式(1)で表されるジアリールスルホン化合物の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機光学材料用樹脂を形成するための単量体として有用な新規ジアリールスルホン化合物、及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
合成樹脂よりなる光学材料は、ガラス等の無機材料と比較して軽量であり、成形加工性等にも優れており、取扱いが簡単であることから、近年、各種用途に広く用いられている。このような有機光学材料用樹脂として、従来から、ポリスチレン系樹脂、ポリメチルメタクリレート系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ジエチレングリコールジアリルカーボナート樹脂等が用いられている。
【0003】
しかしながら、従来の有機光学材料用樹脂は、低い屈折率、大きな複屈折、高い分散性等の欠点を有し、耐熱性や耐衝撃性にも劣るため、必ずしも満足できるものではなかった。特にレンズ用材料として用いられているジエチレングリコールジアリルカーボナート樹脂(CR−39)等は、屈折率が1.50と低いため、レンズとして使用した場合にはコバ厚や中心厚が厚くなるため、レンズの外観が悪くなり、また重量の増大を招くという欠点がある。
【0004】
このため、有機光学材料用樹脂用の材料について、屈折率を向上させる試みがなされている。例えば、下記特許文献1及び2には、高屈折率で透明性に優れた樹脂を与える単量体として、下記化学式(a):
【0005】
【化1】

【0006】
(式中、R及びRは、水素原子又はメチル基である)で表されるジアリールスルフィド化合物が記載されている。
【0007】
また、下記特許文献3にも、同様に、高屈折率で透明性に優れた樹脂を与える単量体として、下記化学式(b):
【0008】
【化2】

【0009】
で表されるジアリールスルフィド化合物が記載されている。
【0010】
これらのジアリールスルフィド化合物は、高屈折率で透明性に優れた樹脂を与える単量体とされているが、その製造には、高価な化合物である下記化学式:
【0011】
【化3】

【0012】
で表される4,4’−ジメルカプトジアリールスルフィド化合物が必要であり、該化合物を原料として得られる上記化学式(a)及び(b)のジアリールスルフィド化合物は高コストで経済性に劣るものとなる。このため、高屈折率で透明性に優れた樹脂を与えることができる単量体として、より安価な材料が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】WO 1990/04587
【特許文献2】特開平3−109368号公報
【特許文献3】特開平9−3058号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、上記した従来技術の現状に鑑みてなされてものであり、その主な目的は、高屈折率で透明性に優れた合成樹脂を与える単量体として、従来の化合物と比較して安価であって、且つ少なくとも同等の性能を有する化合物を提供することであり、更に、その製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明者は、上記した目的を達成すべく鋭意研究を重ねてきた。その結果、特定の置換基を有する新規なジアリールスルホン化合物が、高屈折率及び高硬度を有し、且つ良好な透明性を有する樹脂を形成し得る単量体として優れた性能を有することを見出した。そして、該アリールスルホン化合物は、安価な物質であるジメルカプトアリールスルホン化合物を原料として、経済的に有利な条件で容易に製造できることを見出し、ここに本発明を完成するに至った。
【0016】
即ち、本発明は、下記の新規ジアリールスルホン化合物及びその製造方法を提供するものである。
項1. 一般式(1):
【0017】
【化4】

【0018】
(式中、R〜R及びR1’〜R4’は、同一又は異なって、それぞれ、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基又はハロゲン原子を示し、Rは、炭素数2〜5のアルケニル基を示す。)で表されるジアリールスルホン化合物。
項2. Rが、ビニル基又はイソプロペニル基である上記項1に記載のジアリールスルホン化合物。
項3. R〜R及びR1’〜R4’がいずれも水素原子であり、Rがビニル基又はイソプロペニル基である上記項1に記載のジアリールスルホン化合物。
項4. 一般式(2):
【0019】
【化5】

【0020】
(式中、R〜R及びR1’〜R4’は、同一又は異なって、それぞれ、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基又はハロゲン原子を示し、Mは塩基のカチオン部位を示す。)で表される4,4’−ジメルカプトアリールスルホン塩と、一般式(3);
【0021】
【化6】

【0022】
(式中、Rは炭素数2〜5のアルケニル基を示し、Xはハロゲン原子を示す。)で表されるハロゲン化物とを反応させることを特徴とする一般式(1);
【0023】
【化7】

【0024】
(式中、R〜R、R1’〜R4’及びRは、上記に同じ)で表されるジアリールスルホン化合物の製造方法。
項5. 一般式(2)
【0025】
【化8】

【0026】
(式中、R〜R、及びR1’〜R4’は、同一又は異なって、それぞれ、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基又はハロゲン原子を示し、Mは塩基のカチオン部位を示す。)で表される4,4’−ジメルカプトアリールスルホン塩が、一般式(2−1):
【0027】
【化9】

【0028】
(式中、R〜R、及びR1’〜R4’は上記に同じ)で表される4,4’−ジメルカプトアリールスルホン化合物と塩基とを反応させて得られるものである、上記項4に記載のジアリールスルホン化合物の製造方法。
項6. 一般式(2−1):
【0029】
【化10】

【0030】
(式中、R〜R、及びR1’〜R4’は、同一又は異なって、それぞれ、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基又はハロゲン原子を示す。)で表される4,4’−ジメルカプトアリールスルホン化合物、塩基、及び一般式(3):
【0031】
【化11】

【0032】
(式中、Rは炭素数2〜5のアルケニル基を示し、Xはハロゲン原子を示す。)で表されるハロゲン化物を有機溶媒中で混合することによる、上記項4に記載のジアリールスルホン化合物の製造方法。
項7. Rが、ビニル基又はイソプロペニル基である上記項4〜6のいずれかに記載のジアリールスルホン化合物の製造方法。
項8. R〜R及びR1’〜R4’がいずれも水素原子であり、Rがビニル基又はイソプロペニル基である上記項4〜6のいずれかに記載のジアリールスルホン化合物の製造方法。
項9. 一般式(3)で表されるハロゲン化物が、アクリル酸クロリド、アクリル酸ブロミド、メタクリル酸クロリド、及びメタクリル酸ブロミドからなる群から選ばれた少なくとも一種である上記項4〜8のいずに記載のジアリールスルホン化合物の製造方法。
項10. 塩基が、金属水酸化物、金属炭酸塩、第3級アミン及び金属の水素化物からなる群から選ばれた少なくとも一種である上記項4〜9のいずれかに記載のジアリールスルホン化合物の製造方法。
【0033】
以下、本発明の新規ジアリールスルホン化合物及びその製造方法について具体的に説明する。
【0034】
新規ジアリールスルホン化合物
本発明の新規ジアリールスルホン化合物は、下記一般式(1):
【0035】
【化12】

【0036】
(式中、R〜R及びR1’〜R4’は、同一又は異なって、それぞれ、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基又はハロゲン原子を示し、Rは、炭素数2〜5のアルケニル基を示す。)で表される文献未載の新規化合物である。該ジアリールスルホン化合物は、例えば、高い屈折率と良好な透明性を有する光学材料用合成樹脂を与える単量体等として有用な化合物である。
【0037】
上記一般式(1)において、R〜R及びR1’〜R4’で表される炭素数1〜4のアルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基等の直鎖状又は分枝鎖状のアルキル基を例示でき、特にメチル基が好ましい。ハロゲン原子としては、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等を例示でき、特に、塩素原子が好ましい。
【0038】
で表される炭素数2〜5のアルケニル基は、好ましくは、1個又は2個の炭素−炭素二重結合を有する直鎖状又は分枝状の炭素数2〜5のアルケニル基であり、具体例として、ビニル基、アリル基、イソプロペニル基、1−ブテニル基、イソブテニル基等を挙げることができる。特に、ビニル基、イソプロペニル基などが好ましい。
【0039】
上記一般式(1)で表される化合物の内で、好適な化合物の具体例としては、R〜R及びR1’〜R4’が全て水素原子であって、Rがビニル基である化合物、R〜R及びR1’〜R4’が全て水素原子であって、Rがイソプロペニル基である化合物等を挙げることができる。
【0040】
ジアリールスルホン化合物の製造方法
上記一般式(1):
【0041】
【化13】

【0042】
(式中、R〜R、R1’〜R4’及びRは、上記に同じ)で表されるジアリールスルホン化合物は、例えば、下記一般式(2):
【0043】
【化14】

【0044】
(式中、R〜R、及びR1’〜R、は上記に同じ、Mは塩基のカチオン部位を示す。)で表される4,4’−ジメルカプトアリールスルホン塩と、一般式(3);
【0045】
【化15】

【0046】
(式中、Rは炭素数2〜5のアルケニル基を示し、Xはハロゲン原子を示す。)で表されるハロゲン化物とを反応させることによって得ることができる。
【0047】
上記一般式(2)で表される4,4’−ジメルカプトアリールスルホン塩は、下記一般式(2−1):
【0048】
【化16】

【0049】
(式中、R〜R、及びR1’〜R4’は、上記に同じ)で表される4,4’−ジメルカプトアリールスルホン化合物と塩基とを反応させることによって得ることができる。
【0050】
上記一般式(2−1)で表される4,4’−ジメルカプトアリールスルホン化合物は、公知化合物であり、式中のR〜R及びR1’〜R4’の具体例は、上記一般式(1)と同様である。該4,4’−ジメルカプトジアリールスルホン化合物の具体例としては、4,4’−ジメルカプトジフェニルスルホン、1,1’−ジメチル−4,4’−ジメルカプトジフェニルスルホン、2,2’−ジメチル−4,4’−ジメルカプトジフェニルスルホン、1,1’−ジメチル−2,2’−ジメチル−4,4’−ジメルカプトジフェニルスルホン等を挙げることができ、特に、4,4’−ジメルカプトジフェニルスルホンが好ましい。
【0051】
塩基としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の金属水酸化物、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等の金属炭酸塩、トリエチルアミン、トリブチルアミン等の第3級アミン、水素化ナトリウム、水素化カリウム等の金属の水素化物が挙げられる。特に、反応性と経済性の面から水酸化ナトリウム又は水素化ナトリウムが好ましい。
【0052】
これらの塩基を用いる場合には、上記一般式(2)で表される4,4’−ジメルカプトアリールスルホン塩において、Mで表されるカチオン部位は、使用する塩基に対応するカチオン部位となる。例えば、M+で表すと、Na、K、NR3H(Rはエチル基、ブチル基などのアルキル基である)等となる。
【0053】
上記した一般式(2−1)で表される4,4’−ジメルカプトアリールスルホン化合物と塩基との反応は、通常、溶媒中で両者を混合することによって行うことができる。溶媒としては、水又は有機溶媒を用いることができる。有機溶媒としては、例えば、n−ヘキサン、n−ヘプタン、シクロヘキサン、トルエン、キシレン等の炭化水素類、クロロベンゼン、o−ジクロロベンゼン等のハロゲン炭化水素類、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、N−メチルピロリドン等の非プロトン性極性溶媒が挙げられる。有機溶媒を用いる場合には、塩基としては、上記した第3級アミン、金属の水素化物等の非水系の塩基を用いることが好ましい。
【0054】
塩基の使用量は、4,4’−ジメルカプトアリールスルホン化合物1モルに対して1〜10モル程度とすることが好ましく2〜2.4モル程度とすることがより好ましい。
【0055】
溶媒中の4,4’−ジメルカプトアリールスルホン化合物の濃度は1〜30重量%程度が好ましく、5〜15重量%程度がより好ましい。
【0056】
4,4’−ジメルカプトアリールスルホン化合物と塩基との反応の反応温度は、0〜70℃程度とすることが好ましく、30〜60℃程度とすることがより好ましい。
【0057】
反応時間については、例えば0.5〜20時間程度とすればよい。
【0058】
また、上記した方法によって一般式(2−1)で表される4,4’−ジメルカプトアリールスルホン化合物と塩基とを反応させて一般式(2)で表される4,4’−ジメルカプトアリールスルホン塩を得ることに代えて、一般式(2)で表される4,4’−ジメルカプトアリールスルホン塩を入手して、そのまま用いてもよい。
【0059】
一般式(2)で表される4,4’−ジメルカプトアリールスルホン塩と一般式(3):
【0060】
【化17】

【0061】
(式中、Rは上記に同じであり、Xはハロゲン原子である)で表されるハロゲン化物との反応は、水、有機溶媒、水と有機溶媒の混合溶媒などの溶媒中で行うことができる。有機溶媒としては、一般式(2−1)で表される4,4’−ジメルカプトアリールスルホン化合物と塩基との反応に用いる溶媒と同様の溶媒を用いることができる。
【0062】
例えば、上記した方法で水を溶媒として一般式(2)で表される4,4’−ジメルカプトアリールスルホン塩を得た場合には、該4,4’−ジメルカプトアリールスルホン塩を含む水溶液中に一般式(3)で表されるハロゲン化物をそのまま混合してもよく、或いは、一般式(3)で表されるハロゲン化物を有機溶媒に溶解した溶液と、4,4’−ジメルカプトアリールスルホン塩を含む水溶液とを混合してもよい。
【0063】
また、有機溶媒を溶媒として一般式(2)で表される4,4’−ジメルカプトアリールスルホン塩を得た場合には、その溶媒中において、一般式(3)で表されるハロゲン化物をそのまま混合してもよく、或いは、一般式(3)で表されるハロゲン化物を有機溶媒に溶解した溶液を添加して混合してもよい。
【0064】
また、一般式(2−1)で表される4,4’−ジメルカプトアリールスルホン化合物、塩基、及び一般式(3)で表されるハロゲン化物を有機溶媒中に同時に添加して反応させてもよい。この場合、有機溶媒中で、一般式(2−1)で表される4,4’−ジメルカプトアリールスルホン化合物と塩基が反応して、一般式(2)で表される4,4’−ジメルカプトアリールスルホン塩が形成され、これが一般式(3)で表されるハロゲン化物と反応するものと考えられる。
【0065】
一般式(3)で表されるハロゲン化物において、Rで表される基の具体例は、上記一般式(1)と同様である。Xで表されるハロゲン原子としては、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等を例示でき、特に、塩素原子が好ましい。
【0066】
一般式(3)で表されるハロゲン化合物の具体例としては、アクリル酸クロリド、アクリル酸ブロミド、メタクリル酸クロリド、メタクリル酸ブロミドを挙げることができる。特に、アクリル酸クロリド、メタクリル酸クロリド等が好ましい。
【0067】
一般式(3)で表されるハロゲン化物の使用量は、一般式(2)で表される4,4’−ジメルカプトアリールスルホン塩1モルに対して、2〜10モル程度とすることが好ましく、2〜2.4モル程度とすることがより好ましい。
【0068】
一般式(2)で表される4,4’−ジメルカプトアリールスルホン塩と一般式(3)で表されるハロゲン化物との反応を水と有機溶媒との混合溶媒中で行う場合には、有機溶媒1重量部に対して水の使用量は0.1〜100重量部程度が好ましい。有機溶媒のみ使用する場合は、N−メチルピロリドンが好ましく、有機溶媒と水との混合溶媒を用いる場合は、トルエン/シクロヘキサン/水の混合溶媒が好ましい。
【0069】
反応溶液中の4,4’−ジメルカプトアリールスルホン塩の濃度としては1〜30重量%程度が好ましく、5〜15重量%程度がより好ましい。
【0070】
反応温度については、特に限定的ではないが、0〜70℃程度とすることが好ましく、30〜60℃程度とすることがより好ましい。
【0071】
反応時間については、例えば0.5〜20時間程度とすればよい。
【0072】
反応後は、混合溶媒を用いた場合には、有機層と水層を分液し、有機層を水洗した後、溶媒を留去することにより、目的とする一般式(1)で表されるジアリールスルホン化合物を得ることができる。また、水を溶媒とした場合には、濾過などの方法で目的とする一般式(1)のジアリールスルホン化合物を容易に分離することができる。
【発明の効果】
【0073】
本発明の方法によれば、安価な物質である一般式(2)で表される4,4’−ジメルカプトアリールスルホン化合物を原料として、簡単な製造工程によって、収率良く目的とするジアリールスルホン化合物を得ることができる。
【0074】
この方法で得られるジアリールスルホン化合物は、高い屈折率と良好な透明性を有する光学材料用合成樹脂を与える単量体等として有用な化合物であり、例えば、眼鏡用プラスチックレンズ、フレネルレンズ、レンチキュラーレンズ、光ディスク基盤、プラスチック光ファイバー等の光学材料の原料として有効に利用できる。
【発明を実施するための形態】
【0075】
以下、実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明する。
実施例1 ビス(4−アクリロイルチオフェニル)スルホンの製造
攪拌機、温度計、冷却管およびガス導入管を備えた内容積10mlのフラスコに、4,4’−ジメルカプトジフェニルスルホン1.95g(6.9mmol)及び10重量%の水酸化ナトリウム水溶液6.00g(15.0mmol)を加えた後、液温10℃に冷却した(反応液A)。一方で、攪拌機、温度計、冷却管およびガス導入管を備えた内容積25mlのフラスコに、アクリル酸クロリド1.31g(14.5mmol)、シクロヘキサン5.00g及びトルエン2.00gを加えた後、液温を10℃に冷却し、反応液Aを30秒で滴下し、攪拌しながら20℃で1時間反応させた。
【0076】
反応終了後、反応液を濾過することにより、白色粉末として、ビス(4−アクリロイルチオフェニル)スルホン1.08gを得た。4,4‘−ジメルカプトジフェニルスルホンに対する収率は、40%であった。
H NMR d 5.70(d,J=9.2Hz,2H)、6.34−6.49(m, 4H)、 7.55(d,J=6.8Hz,4H)、7.88(d,J=6.8Hz,4H);
元素分析(C1814として) ;
計算値 C:55.36%、H:3.61%、O:16.39%、S:24.63%
実測値 C:55.28%、H:3.58%、O:16.43%、S:24.70%
屈折率 ;1.639
実施例2 ビス(4−アクリロイルチオフェニル)スルホンの製造
攪拌機、温度計、冷却管およびガス導入管を備えた内容積10mlのフラスコに、4,4’−ジメルカプトジフェニルスルホン1.95g(6.9mmol)及び10重量%の水酸化ナトリウム水溶液6.00g(15.0mmol)を加えた後、液温10℃に冷却した。その後、アクリル酸クロリド1.31g(14.5mmol)を30秒で滴下し、攪拌しながら20℃で1時間反応させた。反応終了後、反応液を濾過することにより、白色粉末として、ビス(4−アクリロイルチオフェニル)スルホン0.95gを得た。4,4’−ジメルカプトジフェニルスルホンに対する収率は、35%であった。
【0077】
実施例3 ビス(4−メタクリロイルチオフェニル)スルホンの製造
攪拌機、温度計、冷却管およびガス導入管を備えた内容積10mlのフラスコに、4,4’−ジメルカプトジフェニルスルホン1.95g(6.9mmol)及び10重量%の水酸化ナトリウム水溶液6.00g(15.0mmol)を加えた後、液温10℃に冷却した(反応液A)。一方で、攪拌機、温度計、冷却管およびガス導入管を備えた内容積25mlのフラスコに、メタクリル酸クロリド1.52g(14.5mmol)、シクロヘキサン5.00g及びトルエン3.00gを加えた後、液温を10℃に冷却し、反応液Aを30秒で滴下し、攪拌しながら20℃で1時間反応させた。
【0078】
反応終了後、反応液を濾過することにより、白色粉末として、ビス(4−メタクリロイルチオフェニル)スルホン2.58gを得た。4,4’−ジメルカプトジフェニルスルホンに対する収率は、90%であった。
H NMR d 2.00(s, 6H)、5.77(s,2H)、6.21(s,2H)、7.60(d, J=6.8Hz,4H)、7.98(d, J=6.8Hz,4H);
元素分析(C2018として) ;
計算値 C:57.39%、H:4.33%、O:15.29%、S:22.98%
実測値 C:57.30%、H:4.38%、O:15.35%、S:22.96%
屈折率 ;1.631
実施例4 ビス(4−メタクリロイルチオフェニル)スルホンの製造
攪拌機、温度計、冷却管およびガス導入管を備えた内容積10mlのフラスコに、4,4‘−ジメルカプトジフェニルスルホン1.95g(6.9mmol)、水素化ナトリウム0.36g(15.2mmol)及びN−メチルピロリドン6.00gを加えた後、液温10℃に冷却した。その後、メタクリル酸クロリド1.52g(14.5mmol)を30秒で滴下し、攪拌しながら20℃で1時間反応させた。反応終了後、反応液に水5.0gを加えた後、濾過することにより、白色粉末として、ビス(4−メタクリロイルチオフェニル)スルホン2.44gを得た。4,4‘−ジメルカプトジフェニルスルホンに対する収率は、85%であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(1):
【化1】

(式中、R〜R及びR1’〜R4’は、同一又は異なって、それぞれ、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基又はハロゲン原子を示し、Rは、炭素数2〜5のアルケニル基を示す。)で表されるジアリールスルホン化合物。
【請求項2】
が、ビニル基又はイソプロペニル基である請求項1に記載のジアリールスルホン化合物。
【請求項3】
〜R及びR1’〜R4’がいずれも水素原子であり、Rがビニル基又はイソプロペニル基である請求項1に記載のジアリールスルホン化合物。
【請求項4】
一般式(2):
【化2】

(式中、R〜R及びR1’〜R4’は、同一又は異なって、それぞれ、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基又はハロゲン原子を示し、Mは塩基のカチオン部位を示す。)で表される4,4’−ジメルカプトアリールスルホン塩と、一般式(3);
【化3】

(式中、Rは炭素数2〜5のアルケニル基を示し、Xはハロゲン原子を示す。)で表されるハロゲン化物とを反応させることを特徴とする一般式(1);
【化4】

(式中、R〜R、R1’〜R4’及びRは、上記に同じ)で表されるジアリールスルホン化合物の製造方法。
【請求項5】
一般式(2)
【化5】

(式中、R〜R、及びR1’〜R4’は、同一又は異なって、それぞれ、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基又はハロゲン原子を示し、Mは塩基のカチオン部位を示す。)で表される4,4’−ジメルカプトアリールスルホン塩が、一般式(2−1):
【化6】

(式中、R〜R、及びR1’〜R4’は上記に同じ)で表される4,4’−ジメルカプトアリールスルホン化合物と塩基とを反応させて得られるものである、請求項4に記載のジアリールスルホン化合物の製造方法。
【請求項6】
一般式(2−1):
【化7】

(式中、R〜R、及びR1’〜R4’は、同一又は異なって、それぞれ、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基又はハロゲン原子を示す。)で表される4,4’−ジメルカプトアリールスルホン化合物、塩基、及び一般式(3);
【化8】

(式中、Rは炭素数2〜5のアルケニル基を示し、Xはハロゲン原子を示す。)で表されるハロゲン化物を有機溶媒中で混合することによる、請求項4に記載のジアリールスルホン化合物の製造方法。
【請求項7】
が、ビニル基又はイソプロペニル基である請求項4〜6のいずれかに記載のジアリールスルホン化合物の製造方法。
【請求項8】
〜R及びR1’〜R4’がいずれも水素原子であり、Rがビニル基又はイソプロペニル基である請求項4〜6のいずれかに記載のジアリールスルホン化合物の製造方法。
【請求項9】
一般式(3)で表されるハロゲン化物が、アクリル酸クロリド、アクリル酸ブロミド、メタクリル酸クロリド、及びメタクリル酸ブロミドからなる群から選ばれた少なくとも一種である請求項4〜8のいずに記載のジアリールスルホン化合物の製造方法。
【請求項10】
塩基が、金属水酸化物、金属炭酸塩、第3級アミン及び金属の水素化物からなる群から選ばれた少なくとも一種である請求項4〜9のいずれかに記載のジアリールスルホン化合物の製造方法。

【公開番号】特開2011−195486(P2011−195486A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−62865(P2010−62865)
【出願日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【出願人】(000195661)住友精化株式会社 (352)
【Fターム(参考)】