説明

新規ジェミニ型フェノール化合物

【課題】酸化防止剤、耐熱安定剤、重合禁止剤、紫外線吸収剤等のプラスチック添加剤や、老化防止剤等のゴム添加剤、医薬品、界面活性剤、除草剤、殺虫剤、殺菌剤、可塑剤、安定剤等の中間物質、感熱記録媒体の顕色剤等としての利用が可能な、新規なジェミニ型フェノール化合物を提供する。
【解決手段】主鎖部分中にアミド基、尿素基等の水素結合性会合基を有する1鎖型フェノール化合物が、スペーサーを介して対象に結合したジェミニ型構造を有し、4−ヒドロキシフェニル基のパラ位にアミド、尿素基等を有する化合物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は新規ジェミニ型フェノール化合物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、フェノール化合物は酸化防止剤、耐熱安定剤、重合禁止剤、紫外線吸収剤等のプラスチック添加剤や、老化防止剤等のゴム添加剤、医薬品、界面活性剤、除草剤、殺虫剤、殺菌剤、可塑剤、安定剤等の中間物質、感熱記録媒体の顕色剤、電子材料、液晶材料等として用いられるフェノール樹脂原料等として利用され、例えば特許文献1にはフェノール誘導体がゴム老化防止剤として用いられることが記載され、特許文献2、3にはフェノール化合物を感熱記録媒体の顕色剤として用いる技術が開示されている。
【0003】
【特許文献1】特開2007−224166号公報
【特許文献2】特開平10−67177号公報
【特許文献3】特開平10−67726号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら従来のフェノール化合物からなるプラスチック添加剤、ゴム添加剤は、熱的安定性が乏しかったり、老化防止効果等が不十分であるという問題があった。また従来のフェノール化合物からなる顕色剤を用いた感熱記録媒体は、安定な発色性と良好な消色性とを有する可逆性感熱記録媒体であるが、顕色剤であるフェノール化合物は1分子あたり、4−ヒドロキシフェニル基を1個しか持たないためモル比で発色剤(ロイコ染料)の3〜4倍もの顕色剤を添加しなければならなかった。
本発明者等は研究の結果、プラスチック添加剤、ゴム添加剤、顕色剤等としての利用が可能な、1分子当たり4−ヒドロキシフェニル基2個を有する新規ジェミニ型フェノール化合物を得ることに成功し、本発明を完成するに至った。
【課題を解決するための手段】
【0005】
即ち本発明は、下記一般式(1)で示される新規ジェミニ型フェノール化合物である。
【0006】
【化1】

【発明の効果】
【0007】
ジェミニ型化合物は、1鎖型化合物2分子がスペーサーを介して対象に結合した構造を有し、一般的に1鎖型化合物に比べて、熱的に安定であり、また分子同士が規則的な配列を組みやすいため、より大きな官能基効果が得られることが知られている。本発明の新規ジェミニ型フェノール化合物はジェミニ型の構造を持ち、且つ、主鎖に官能基を持つことにより、さらに分子の規則的配列及び熱的安定性が向上し、特に、酸化防止剤、耐熱安定剤、重合禁止剤、紫外線吸収剤等のプラスチック添加剤、老化防止剤等のゴム添加剤、感熱記録媒体の顕色剤分野に効果が期待される。また、酸化防止剤、重合防止剤、紫外線吸収剤、老化防止剤等としては、4−ヒドロキシフェニル基のパラ位にアミド、尿素基を有することで、電子受容性能の向上も期待される。
顕色剤の分野では、本発明の新規ジェミニ型フェノール化合物は、主鎖部分中にアミド基、尿素基等の水素結合性会合基を有する1鎖型フェノール化合物が、スペーサーを介して対象に結合したジェミニ型構造を有しているため、従来の1鎖型フェノール化合物に比べ、分子間凝集力への寄与が高まり、より規則的な分子集合構造をとって安定化するため、発色状態が安定し、画像保存性の向上が期待されるとともに、低い運動エネルギーでロイコ染料と作用でき、ロイコ染料の発色に大きなエネルギーを必要せず、感熱記録媒体へのダメージが軽減される。また、従来のフェノール化合物からなる顕色剤に比べ、発色効率が向上し、半分程度のモル比で安定な発色性を有する可逆性感熱記録媒体を得ることが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
一般式(1)で示される本発明の新規ジェミニ型フェノール化合物は、具体的には下記式(2)〜(7)で示される化合物である。
【0009】
【化2】

【0010】
【化3】

【0011】
【化4】

【0012】
【化5】

【0013】
【化6】

【0014】
【化7】

【0015】
上記式(2)で示すフェノール系化合物を得るには、例えばまず炭素数1〜18のハロゲン化アルキルと、炭素数1〜12の第1級ジアミンとを反応させるか、炭素数1〜18の第1級アミンと、炭素数1〜12のジハロゲン化アルキルと反応させて第1の中間体を合成する(第1工程)。次に、第1の中間体と炭化水素基の炭素数が1〜12の二塩基酸モノエステル酸塩化物とを反応させた後、エステル部位をケン化分解して第2の中間体を合成し(第2工程)、縮合剤、縮合助剤を用い、第2の中間体とp−アミノフェノールとの縮合反応(第3工程)によって、上記式(2)で示すフェノール系化合物を得ることができる。
【0016】
上記式(3)で示すフェノール系化合物を得るには、例えばまず炭素数1〜18のハロゲン化アルキルと、炭素数1〜12の第1級ジアミンとを反応させるか、炭素数1〜18の第1級アミンと、炭素数1〜12のジハロゲン化アルキルと反応させて第1の中間体を合成する(第1工程)。次に、第1の中間体と炭化水素基の炭素数が1〜12の二塩基酸モノエステル酸塩化物とを反応させた後、エステル部位をケン化分解して第2の中間体を合成し(第2工程)、第2の中間体とアジド化合物を用いたクルチウス転移反応を行い、続いてこの転移生成物とp−アミノフェノールとを反応させ(第3工程)、上記式(3)で示すフェノール系化合物を得ることができる。
【0017】
上記式(4)で示すフェノール系化合物を得るには、例えばまず炭素数1〜18のハロゲン化アルキルと、炭素数1〜12の第1級ジアミンとを反応させるか、炭素数1〜18の第1級アミンと、炭素数1〜12のジハロゲン化アルキルと反応させて第1の中間体を合成する(第1工程)。次に、炭化水素基の炭素数が1〜12の二塩基酸モノエステルとアジド化合物を用い、クルチウス転移反応をさせ、続いてこの転移生成物と第1の中間体とを反応させた後、エステル部位をケン化分解して第2の中間体を合成し(第2工程)、縮合剤、縮合助剤を用い、第2の中間体とp−アミノフェノールとを縮合反応させ(第3工程)、上記式(4)で示すフェノール系化合物を得ることができる。
【0018】
上記式(5)で示すフェノール系化合物を得るには、例えばまず炭素数1〜18のハロゲン化アルキルと、炭素数1〜12の第1級ジアミンとを反応させるか、炭素数1〜18の第1級アミンと、炭素数1〜12のジハロゲン化アルキルと反応させて第1の中間体を合成する(第1工程)。次に、炭化水素基の炭素数が1〜12の二塩基酸モノエステルとアジド化合物を用い、クルチウス転移反応をさせ、続いてこの転移生成物と第1の中間体とを反応させた後、エステル部位をケン化分解して第2の中間体を合成し(第2工程)、第2の中間体とアジド化合物を用いたクルチウス転移反応を行い、続いてこの転移生成物とp−アミノフェノールとを反応させ(第3工程)、上記式(5)で示すフェノール系化合物を得ることができる。
【0019】
上記式(6)で示すフェノール系化合物を得るには、例えばまず炭素数1〜18のハロゲン化アルキルと、炭素数1〜12の第1級ジアミンとを反応させるか、炭素数1〜18の第1級アミンと、炭素数1〜12のジハロゲン化アルキルと反応させて第1の中間体を合成する(第1工程)。次に、第1の中間体と炭化水素基の炭素数2〜12の不飽和カルボン酸エステルとを反応させるか、炭化水素基の炭素数1〜12のハロゲン化カルボン酸エステルを反応させた後、エステル部位をケン化分解して第2の中間体を合成し(第2工程)、縮合剤、縮合助剤を用い、第2の中間体とp−アミノフェノールとを縮合反応させ(第3工程)、上記式(6)で示すフェノール系化合物を得ることができる。
【0020】
上記式(7)で示すフェノール系化合物を得るには、例えばまず炭素数1〜18のハロゲン化アルキルと、炭素数1〜12の第1級ジアミンとを反応させるか、炭素数1〜18の第1級アミンと、炭素数1〜12のジハロゲン化アルキルと反応させて第1の中間体を合成する(第1工程)。次に、第1の中間体と炭化水素基の炭素数2〜12の不飽和カルボン酸エステルとを反応させるか、炭化水素基の炭素数1〜12のハロゲン化カルボン酸エステルを反応させた後、エステル部位をケン化分解して第2の中間体を合成し(第2工程)、第2の中間体とアジド化合物を用いたクルチウス転移反応を行い、続いてこの転移生成物とp−アミノフェノールとを反応させ(第3工程)、上記式(7)で示すフェノール系化合物を得ることができる。
【0021】
上記第1工程に用いられる炭素数1〜18のハロゲン化アルキルとしては、例えばブロモメタン、ブロモエタン、1−ブロモプロパン、1−ブロモブタン、1−ブロモペンタン、1−ブロモへキサン、1−ブロモヘプタン、1−ブロモオクタン、1−ブロモノナン、1−ブロモデカン、1−ブロモウンデカン、1−ブロモドデカン、1−ブロモトリデカン、1−ブロモテトラデカン、1−ブロモペンタデカン、1−ブロモヘキサデカン、1−ブロモヘプタデカン、1−ブロモオクタデカン、クロロメタン、クロロエタン、1−クロロプロパン、1−クロロブタン、1−クロロペンタン、1−クロロへキサン、1−クロロヘプタン、1−クロロオクタン、1−クロロノナン、1−クロロデカン、1−クロロウンデカン、1−クロロドデカン、1−クロロトリデカン、1−クロロテトラデカン、1−クロロペンタデカン、1−クロロヘキサデカン、1−クロロヘプタデカン、1−クロロオクタデカン等が挙げられ、炭素数1〜12の第1級ジアミンとしては、メチレンジアミン、エチレンジアミン、1,3−プロパンジアミン、1,4−ブタンジアミン、1,5−ペンタンジアミン、1,6−ヘキサンジアミン、1,7−ヘプタンジアミン、1,8−オクタンジアミン、1,9−ノナンジアミン、1,10−デカンジアミン、1,11−ウンデカンジアミン、1,12−ドデカンジアミン等が挙げられる。また炭素数1〜18の第1級アミンとしてはメチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、ペンチルアミン、ヘキシルアミン、ヘプチルアミン、オクチルアミン、ノニルアミン、デシルアミン、ウンデシルアミン、ドデシルアミン、トリデシルアミン、テトラデシルアミン、ペンタデシルアミン、ヘキサデシルアミン、ヘプタデシルアミン、オクタデシルアミン等が挙げられ、炭素数1〜12のジハロゲン化アルキルとしてはジブロモメタン、1,2−ジブロモエタン、1,3−ジブロモプロパン、1,4−ジブロモブタン、1,5−ジブロモペンタン、1,6−ジブロモヘキサン、1,7−ジブロモヘプタン、1,8−ジブロモオクタン、1,9−ジブロモノナン、1,10−ジブロモデカン、1,11−ジブロモウンデカン、1,12−ジブロモドデカン、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、1,3−ジクロロプロパン、1,4−ジクロロブタン、1,5−ジクロロペンタン、1,6−ジクロロヘキサン、1,7−ジクロロヘプタン、1,8−ジクロロオクタン、1,9−ジクロロノナン、1,10−ジクロロデカン、1,11−ジクロロウンデカン、1,12−ジクロロドデカン等が挙げられる。
【0022】
式(2)、(3)で示される化合物を得るために、第2工程において、第1工程で得られた第1の中間体と反応させる炭化水素基の炭素数が1〜12の二塩基酸モノエステル酸塩化物としては、例えばマロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、1,9−ノナンジカルボン酸、1,10−デカンジカルボン酸、1,11−ウンデカンジカルボン酸、1,12−ドデカンジカルボン酸等の二塩基酸から、公知の方法によって得られる二塩基酸モノエステル酸塩化物等が挙げられる。式(4)、(5)で示される化合物を得るために、第2工程において、第1工程で得られた第1の中間体と反応させる炭化水素基の炭素数が1〜12の二塩基酸モノエステルとしては、式(2)、(3)で示される化合物を得るために使用した炭化水素基の炭素数が1〜12の二塩基酸から、公知の方法によって得られる二塩基酸モノエステル等が挙げられる。式(6)、(7)で示される化合物を得るために、第2工程において、第1工程で得られた第1の中間体と反応させる炭化水素基の炭素数2〜12の不飽和カルボン酸エステルとしては、例えばアクリル酸メチル、アクリル酸メチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸アリル、アクリル酸フェニル、アクリル酸ベンジル、3−ブテン酸メチル、4−ペンテン酸メチル、5−ヘキセン酸メチル、6−ヘプテン酸メチル、7−オクテン酸メチル、8−ノネン酸メチル、9−デセン酸メチル、10−ウンデセン酸メチル、11−ドデセン酸メチル、12−トリデセン酸メチル等が挙げられる。また、炭化水素基の炭素数1〜12のハロゲン化カルボン酸エステルとしては、ブロモ酢酸、3−ブロモプロパン酸、4−ブロモブタン酸、5−ブロモペンタン酸、6−ブロモヘキサン酸、7−ブロモヘプタン酸、8−ブロモオクタン酸、9−ブロモノナン酸、10−ブロモデカン酸、11−ブロモウンデカン酸、12−ブロモドデカン酸、13−ブロモトリデカン酸、クロロ酢酸、3−クロロプロパン酸、4−クロロブタン酸、5−クロロペンタン酸、6−クロロヘキサン酸、7−クロロヘプタン酸、8−クロロオクタン酸、9−クロロノナン酸、10−クロロデカン酸、11−クロロウンデカン酸、12−クロロドデカン酸、13−クロロトリデカン酸等のハロゲン化カルボン酸から、公知の方法によって得られるハロゲン化カルボン酸エステル等が挙げられる。式(4)、(5)で示される化合物を得るために第2工程において第1工程で得られた第1の中間体と反応させるアジド化合物は、例えばアジ化ナトリウム、アジ化ジフェニルホスホリル等が挙げられる。
【0023】
式(2)、(4)、(6)で示される化合物を得るために、第3工程において、第2工程で得られた第2の中間体と反応させる縮合剤としては、例えばN,N′−ジイソプロピルカルボジイミド、N,N′−ジシクロヘキシルカルボジイミド、N−エチル−N′−3−ジメチルアミノプロピルカルボジイミド、(1−ヒドロキシベンゾトリアゾール−1−イルオキシ)トリス(ジメチルアミノ)ホスホニウムヘキサフルオロホスファート、1−[ビス(ジメチルアミノ)メチレン]−1−ヒドロキシベンゾトリアゾリウム−3−オキシドヘキサフルオロホスファート等が挙げられる。縮合助剤としては、1−ヒドロキシベンゾトリアゾール、N−ヒドロキシスクシンイミド、3−ヒドロキシ−4−オキソ−3,4−ジヒドロ−1,2,3−ベンゾトリアジン、1−ヒドロキシ−7−アザベンゾトリアゾール等が挙げられる。式(3)、(5)、(7)で示される化合物を得るために、第3工程において、第2工程で得られた第2の中間体と反応させるアジド化合物は、式(4)、(5)で示される化合物を得るために第2工程において用いるアジド化合物等が挙げられる。なお、これら第1工程から第3工程までのすべての合成法は、本発明のフェノール化合物を得るための一例であり、本発明は何らこれら製造方法に限定されるものではない。
【0024】
本発明のジェミニ型フェノール化合物は、顕色剤として用いた場合、1分子中に4−ヒドロキシフェニル基を1個有する1鎖型のフェノール化合物に比べ、より低いエネルギーでロイコ染料と反応するため、感熱記録媒体への熱ダメージも少なくすることができる。特に、融点の低いものに関しては、より低いエネルギーの印加で発色が可能である。例えば、融点が160℃以下のジェミニ型フェノール化合物としては、式(4)においてl=5、m=2、n=4で示される化合物や、l=11、m=2、n=4で示される化合物等が挙げられる。
【実施例】
【0025】
以下、実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明する。
実施例1
1−プロパノール2500gに、1−ブロモドデカン250.0g、エチレンジアミン20.1gを加え、還流下8時間攪拌した。室温に冷却した後、結晶を濾別、乾燥後、トルエンで加熱洗浄し、室温で結晶を濾別した。得られた結晶を水酸化ナトリウム水溶液で攪拌、洗浄した。結晶を濾別、水洗、乾燥し、式(8)に示すN,N′−ジドデシルエチレンジアミン34.7gを得た。分析値を表1に示す。
【0026】
【化8】

【0027】
【表1】

【0028】
トルエン300gに、上記N,N′−ジドデシルエチレンジアミン20.0g、トリエチルアミン15.3g、コハク酸モノエチルクロリド20.7gを加え、還流下6時間攪拌した。トルエンを減圧留去した後、水酸化ナトリウムを溶解させたエタノール・水混合液を加え、還流下2時間攪拌した。次いで、反応液を塩酸で酸性とし、室温で2時間攪拌した。析出した結晶を濾別、水洗、乾燥後、エタノールで再結晶し、式(9)に示す中間体カルボン酸1を18.9g得た。中間体カルボン酸1の分析値を表2に示す。
【0029】
【化9】

【0030】
【表2】

【0031】
テトラヒドロフラン200gに、上記中間体カルボン酸1を10.0g、1−ヒドロキシベンゾトリアゾール5.6g、N,N′−ジイソプロピルカルボジイミド4.7g、p−アミノフェノール4.0gを加え、還流下3時間攪拌した。室温に冷却後、結晶を濾別、メタノールで再結晶し、化合物1を11.3g得た。得られた化合物1の融点は195℃であり、赤外線吸収スペクトル(KBr錠剤法)の1633cm−1に第3アミドのC=O伸縮振動及び第2アミドのC=O伸縮振動に基づく吸収が認められた。また、この化合物1の元素分析結果を表3に示す。元素分析の結果は、化合物1は式(2)におけるl=11、m=2、n=2で示されるフェノール化合物と一致しており、赤外線吸収スペクトル及び元素分析結果より、化合物1が式(2)で示す構造のフェノール化合物であることが確認された。
【0032】
(表3)

【0033】
実施例2
1−プロパノール2500gに、1−ブロモへキサン250.0g、エチレンジアミン30.3gを加え、還流下12時間攪拌した。室温に冷却した後、結晶を濾別、乾燥後、トルエンで加熱洗浄し、室温で結晶を濾別した。得られた結晶を水酸化ナトリウム水溶液で攪拌、洗浄した。結晶を濾別、水洗、乾燥し、式(10)に示すN,N′−ジヘキシルエチレンジアミン19.5gを得た。分析値を表1に示す。
【0034】
【化10】

【0035】
トルエン300gに、上記N,N′−ジヘキシルエチレンジアミン20.0g、トリエチルアミン26.6g、コハク酸モノエチルクロリド36.0gを加え、還流下6時間攪拌した。トルエンを減圧留去した後、水酸化ナトリウムを溶解させたエタノール、水混合液を加え、還流下2時間攪拌した。次いで、反応液を塩酸で酸性とし、室温で2時間攪拌した。析出した結晶を濾別、水洗、乾燥後、エタノールで再結晶し、式(11)に示す中間体カルボン酸2を23.2g得た。中間体カルボン酸2の分析値を表2に示す。
【0036】
【化11】

【0037】
テトラヒドロフラン200gに、上記中間体カルボン酸2を10.0g、1−ヒドロキシベンゾトリアゾール7.9g、N,N′−ジイソプロピルカルボジイミド6.5g、p−アミノフェノール5.6gを加え、還流下3時間攪拌した。室温に冷却後、結晶を濾別、メタノールで再結晶し、化合物2を8.4g得た。得られた化合物2の融点は177℃であり、赤外線吸収スペクトル(KBr錠剤法)の1622cm−1に第3アミドのC=O伸縮振動及び第2アミドのC=O伸縮振動に基づく吸収が認められた。この化合物2の元素分析結果を表4に示す。元素分析の結果は、化合物2は式(2)におけるl=5、m=2、n=2で示されるフェノール化合物と一致しており、赤外線吸収スペクトル及び元素分析結果より、化合物2が式(2)で示す構造のフェノール化合物であることが確認された。
【0038】
(表4)

【0039】
実施例3
1−プロパノール2500gに、1−ブロモドデカン250.0g、1,6−ヘキサンジアミン38.8gを加え、還流下10時間攪拌した。室温に冷却した後、結晶を濾別、乾燥後、トルエンで加熱洗浄し、室温で結晶を濾別した。得られた結晶を水酸化ナトリウム水溶液で攪拌、洗浄した。結晶を濾別、水洗、乾燥し、式(12)に示すN,N′−ジドデシルへキサンジアミン33.9gを得た。分析値を表1に示す。
【0040】
【化12】

【0041】
トルエン300gに、上記N,N′−ジドデシルへキサンジアミン20.0g、トリエチルアミン13.4g、コハク酸モノエチルクロリド18.2gを加え、還流下6時間攪拌した。トルエンを減圧留去した後、水酸化ナトリウムを溶解させたエタノール・水混合液を加え、還流下2時間攪拌した。次いで、反応液を塩酸で酸性とし、室温で2時間攪拌した。析出した結晶を濾別、水洗、乾燥後、エタノールで再結晶し、式(13)に示す中間体カルボン酸3を18.6g得た。中間体カルボン酸3の分析値を表2に示す。
【0042】
【化13】

【0043】
テトラヒドロフラン200gに、上記中間体カルボン酸3を10.0g、1−ヒドロキシベンゾトリアゾール5.2g、N,N′−ジイソプロピルカルボジイミド4.2g、p−アミノフェノール3.6gを加え、還流下3時間攪拌した。室温に冷却後、結晶を濾別、メタノールで再結晶し、化合物3を7.4g得た。得られた化合物3の融点は197℃であり、赤外線吸収スペクトル(KBr錠剤法)の1618cm−1に第3アミドのC=O伸縮振動及び第2アミドのC=O伸縮振動に基づく吸収が認められた。この化合物3の元素分析結果を表5に示す。元素分析の結果は、化合物3は式(2)におけるl=11、m=6、n=2で示されるフェノール化合物と一致しており、赤外線吸収スペクトル及び元素分析結果より、化合物3が式(2)で示す構造のフェノール化合物であることが確認された。
【0044】
(表5)

【0045】
実施例4
トルエン200gに、実施例1で得た中間体カルボン酸1を10.0g、トリエチルアミン3.7g、ジフェニルリン酸アジド10.1gを加え、80℃で2時間攪拌した後、p−アミノフェノール4.0gを加え、80℃で2時間攪拌した。室温に冷却後、結晶を濾別、イソプロピルアルコールで再結晶し、化合物4を8.2g得た。この化合物4の融点は188℃であり、赤外線吸収スペクトル(KBr錠剤法)の1637cm−1に第3アミドのC=O伸縮振動、1635cm−1に尿素のC=O伸縮振動に基づく吸収が認められた。この化合物4の元素分析結果を表6に示す。元素分析の結果は、化合物4は式(3)におけるl=11、m=2、n=2で示されるフェノール化合物と一致しており、赤外線吸収スペクトル及び元素分析結果より、化合物4が式(3)で示す構造のフェノール化合物であることが確認された。
【0046】
(表6)

【0047】
実施例5
トルエン200gに、実施例2で得た中間体カルボン酸2を10.0g、トリエチルアミン5.2g、ジフェニルリン酸アジド14.2gを加え、80℃で2時間攪拌した後、p−アミノフェノール5.6gを加え、80℃で2時間攪拌した。トルエンを減圧留去した後、エタノールと水を加えて析出した結晶をメチルエチルケトンで加熱洗浄し、化合物5を9.5g得た。化合物5の融点は207℃であり、赤外線吸収スペクトル(KBr錠剤法)の1633cm−1に第3アミドのC=O伸縮振動、1618cm−1に尿素のC=O伸縮振動に基づく吸収が認められた。この化合物5の元素分析結果を表7に示す。元素分析の結果は、化合物5は式(3)におけるl=5、m=2、n=2で示されるフェノール化合物と一致しており、赤外線吸収スペクトル及び元素分析結果より、化合物5が式(3)で示す構造のフェノール化合物であることが確認された。
【0048】
(表7)

【0049】
実施例6
トルエン250gに、アジピン酸モノエチルエステル15.7g、トリエチルアミン9.1g、ジフェニルリン酸アジド24.7gを加え、80℃で2時間攪拌し、次いで、実施例1で得たN,N′−ジドデシルエチレンジアミン16.2gを加え、80℃で2時間攪拌した。トルエンを減圧留去した後、水酸化ナトリウムを溶解させたエタノール・水混合液を加え、還流下2時間攪拌した。次いで、反応液を塩酸で酸性とし、室温で2時間攪拌した。析出した結晶を濾別、水洗、乾燥後、ヘキサンで加熱洗浄し、式(14)に示す中間体カルボン酸4を18.1g得た。中間体カルボン酸4の分析値を表2に示す。
【0050】
【化14】

【0051】
テトラヒドロフラン200gに、中間体カルボン酸4を10.0g、1−ヒドロキシベンゾトリアゾール4.9g、N,N′−ジイソプロピルカルボジイミド4.1g、p−アミノフェノール3.5gを加え、還流下3時間攪拌した。室温に冷却後、結晶を濾別、ジエチルエーテルで加熱洗浄し、化合物6を8.8g得た。化合物6の融点は152℃であり、赤外線吸収スペクトル(KBr錠剤法)の1622cm−1に尿素のC=O伸縮振動、1656cm−1に第2アミドのC=O伸縮振動に基づく吸収が認められた。この化合物6の元素分析結果を表8に示す。元素分析の結果は、化合物6は式(4)におけるl=11、m=2、n=4で示されるフェノール化合物と一致しており、赤外線吸収スペクトル及び元素分析結果より、化合物6が式(4)で示す構造のフェノール化合物であることが確認された。
【0052】
(表8)

【0053】
実施例7
トルエン150gに、アジピン酸モノエチルエステル16.8g、トリエチルアミン9.7g、ジフェニルリン酸アジド26.5gを加え、80℃で2時間攪拌し、次いで、実施例2で得たN,N′−ジヘキシルエチレンジアミン10.0gを加え、80℃で2時間攪拌した。トルエンを減圧留去した後、水酸化ナトリウムを溶解させたエタノール・水混合液を加え、還流下2時間攪拌した。次いで、反応液を塩酸で酸性とし、室温で2時間攪拌した。析出した結晶を濾別、水洗、乾燥後、ヘキサンで加熱洗浄し、式(15)に示す中間体カルボン酸5を14.1g得た。中間体カルボン酸5の分析値を表2に示す。
【0054】
【化15】

【0055】
テトラヒドロフラン200gに、中間体カルボン酸5を10.0g、1−ヒドロキシベンゾトリアゾール6.6g、N,N′−ジイソプロピルカルボジイミド5.4g、p−アミノフェノール4.6gを加え、還流下3時間攪拌した。室温に冷却後、結晶を濾別、メタノールで再結晶し、化合物7を8.0g得た。化合物7の融点は136℃であり、赤外線吸収スペクトル(KBr錠剤法)の1622cm−1に尿素のC=O伸縮振動、1656cm−1に第2アミドのC=O伸縮振動に基づく吸収が認められた。この化合物7の元素分析結果を表9に示す。元素分析の結果は、化合物7は式(4)におけるl=5、m=2、n=4で示されるフェノール化合物と一致しており、赤外線吸収スペクトル及び元素分析結果より、化合物7が式(4)で示す構造のフェノール化合物であることが確認された。
【0056】
(表9)

【0057】
実施例8
トルエン200gに、実施例6で得た中間体カルボン酸4を10.0g、トリエチルアミン3.3g、ジフェニルリン酸アジド8.8gを加え、80℃で2時間攪拌した後、p−アミノフェノール3.5gを加え、80℃で2時間攪拌した。室温に冷却後、結晶を濾別、イソプロピルアルコールで再結晶し、化合物8を6.0g得た。化合物8の融点は179℃であり、赤外線吸収スペクトル(KBr錠剤法)の1635cm−1に尿素のC=O伸縮振動に基づく吸収が認められた。この化合物8の元素分析結果を表10に示す。元素分析の結果は、化合物8は式(5)におけるl=11、m=2、n=4で示されるフェノール化合物と一致しており、赤外線吸収スペクトル及び元素分析結果より、化合物8が式(5)で示す構造のフェノール化合物であることが確認された。
【0058】
(表10)

【0059】
実施例9
テトラヒドロフラン200gに、実施例7で得た中間体カルボン酸5を10.0g、トリエチルアミン4.4g、ジフェニルリン酸アジド11.8gを加え、80℃で2時間攪拌した後、p−アミノフェノール4.6gを加え、80℃で2時間攪拌した。室温に冷却後、結晶を濾別、アセトニトリルで加熱洗浄した後、さらにメチルエチルケトンで加熱洗浄し、化合物9を2.2g得た。化合物9の融点は166℃であり、赤外線吸収スペクトル(KBr錠剤法)の1637cm−1に尿素のC=O伸縮振動に基づく吸収が認められた。この化合物9の元素分析結果を表11に示す。元素分析の結果は、化合物9は式(5)におけるl=5、m=2、n=4で示されるフェノール化合物と一致しており、赤外線吸収スペクトル及び元素分析結果より、化合物9が式(5)で示す構造のフェノール化合物であることが確認された。
【0060】
(表11)

【0061】
実施例10
エタノール150gに、実施例1で得たN,N′−ジドデシルエチレンジアミン10.0g、アクリル酸メチル5.4gを加え、還流下で10時間攪拌した。反応後、エタノールを減圧留去した後、水酸化ナトリウムを溶解させたエタノール・水混合液を加え、還流下2時間攪拌した。次いで、反応液を塩酸で酸性とし、室温で2時間攪拌した。析出した結晶を濾別、水洗、乾燥後、メチルエチルケトンで再結晶し、式(16)に示す中間体カルボン酸6を7.5g得た。中間体カルボン酸6の分析値を表2に示す。
【0062】
【化16】

【0063】
テトラヒドロフラン200gに、上記中間体カルボン酸6を10.0g、1−ヒドロキシベンゾトリアゾール6.3g、N,N′−ジイソプロピルカルボジイミド5.1g、p−アミノフェノール4.4gを加え、還流下3時間攪拌した。室温に冷却後、結晶を濾別、メタノールで再結晶し、化合物10を5.7g得た。化合物10の融点は195℃であり、赤外線吸収スペクトル(KBr錠剤法)の1618cm−1に第2アミドのC=O伸縮振動に基づく吸収が認められた。この化合物10の元素分析結果を表12に示す。元素分析の結果は、化合物10は式(6)におけるl=11、m=2、n=2で示されるフェノール化合物と一致しており、赤外線吸収スペクトル及び元素分析結果より、化合物10が式(6)で示す構造のフェノール化合物であることが確認された。
【0064】
(表12)

【0065】
実施例11
エタノール300gに、実施例3で得たN,N′−ジドデシルへキサンジアミン20.0g、アクリル酸メチル9.5gを加え、還流下で10時間攪拌した。反応後、エタノールを減圧留去した後、水酸化ナトリウムを溶解させたエタノール・水混合液を加え、還流下2時間攪拌した。次いで、反応液を塩酸で酸性とし、室温で2時間攪拌した。析出した結晶を濾別、水洗、乾燥後、メチルエチルケトンで再結晶し、式(17)に示す中間体カルボン酸7を5.0g得た。中間体カルボン酸7の分析値を表2に示す。
【0066】
【化17】

【0067】
トルエン100gに、上記中間体カルボン酸7を5.0g、トリエチルアミン1.9g、ジフェニルリン酸アジド5.1gを加え、80℃で2時間攪拌した後、p−アミノフェノール2.0gを加え、80℃で2時間攪拌した。室温に冷却後、結晶を濾別、イソプロピルアルコールで再結晶し、化合物11を2.5g得た。化合物11の融点は172℃であり、赤外線吸収スペクトル(KBr錠剤法)の1618cm−1に尿素のC=O伸縮振動に基づく吸収が認められた。この化合物11の元素分析結果を表13に示す。元素分析の結果は、化合物11は式(7)におけるl=11、m=6、n=2で示されるフェノール化合物と一致しており、赤外線吸収スペクトル及び元素分析結果より、化合物11が式(7)で示す構造のフェノール化合物であることが確認された。
【0068】
(表13)

【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明のジェミニ型フェノール化合物は、酸化防止剤、耐熱安定剤、重合禁止剤、紫外線吸収剤等のプラスチック添加剤や、ゴム老化防止剤等のゴム添加剤、医薬品、界面活性剤、除草剤、殺虫剤、殺菌剤、可塑剤、安定剤等の中間物質、感熱記録媒体の顕色剤等としての利用が期待され、顕色剤として用いた場合、従来のフェノール化合物からなる顕色剤に比べ、発色効率が向上し、半分程度のモル比で安定な発色性を有する可逆性感熱記録媒体を得ることが可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で示される新規ジェミニ型フェノール化合物。
【化1】


【公開番号】特開2009−137921(P2009−137921A)
【公開日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−319249(P2007−319249)
【出願日】平成19年12月11日(2007.12.11)
【出願人】(000114318)ミヨシ油脂株式会社 (120)
【Fターム(参考)】