説明

新規スルホン化トリアリールアミンポリマーおよびその製造方法

【課題】安価で工業的に安定的に得られる原料を用いて、少ない工程数で水やアルコールに溶け易い新規なスルホン化トリアリールアミンポリマーを製造する方法を提供する。
【解決手段】式(7)


(式中、Arは置換基を有していてもよい炭素数6〜20の芳香族基を表し、mは1以上の整数であり、Arはハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、アルケニル基、アリール基、アリールアミノ基またはヘテロアリール基から選ばれる置換基を有していてもよいベンゼン環を表す)で表されるトリアリールアミンポリマーに対し、スルホン化剤を塩基性極性溶媒中で反応させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水またはアルコールに可溶且つ耐熱性に優れた新規スルホン化トリアリールアミンポリマーおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
三級アリールアミノ基が連続的に結合した構造を有するトリアリールアミンポリマーは、耐熱性、耐溶剤性に優れた構造材料として知られている(例えば、特許文献1参照)。また、耐熱安定性を向上させた有機EL材料としても有用である(例えば、特許文献2参照)。
【0003】
ところで、近年、塗布性に優れる水分散性の向上した導電性高分子材料として、スルホン化ポリスチレンを含むポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)/ポリスチレンスルホン酸(PEDOT/PSS)が、多く用いられている(例えば、特許文献3〜4参照)。一方、従来のスルホン化トリアリールアミンポリマーは、特殊な極性有機溶媒であるジメチルスルホキシドやN,N−ジメチルホルムアミドに、水またはメタノールを添加した溶媒系で使用可能となることが報告されている程度であり(例えば、特許文献5および非特許文献1参照)、汎用の極性溶媒である水またはアルコールへの溶解性は未だ不十分である。
【0004】
また、スルホン化トリアリールアミンポリマーの製造法としては、スルホン化したトリフェニルアミノ臭素化合物とトリフェニルアミノホウ素化合物とをカップリング反応で重合した例が開示されているが、上記の製造法は反応の工程数が多く、複雑で実用的とは言い難い(例えば、特許文献5および非特許文献1参照)。
【0005】
一方、一般的な芳香族アミン化合物のスルホン化方法としては、アミド硫酸、並びにN−アルキルスルファミド酸を用いてスルホン化芳香族アミン化合物を得る方法が知られている(例えば、非特許文献2〜3参照)。他に、三酸化硫黄と、ピリジン、またはトリエチルアミン、N,N−ジメチルホルムアミドのような塩基性溶剤との錯体をスルホン化剤として用いた例が報告されている(例えば、特許文献6参照)。しかし、これまでにトリアリールアミンポリマーを直接スルホン化した報告はない。
【0006】
以上のように、安価で工業的に安定的に得られる原料を用いて、少ない工程数でスルホン化トリアリールアミンポリマーを効率的に合成することは極めて困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平11−21349号公報
【特許文献2】特開2004−292782号公報
【特許文献3】特開平7−90060号公報
【特許文献4】特開2010−114066号公報
【特許文献5】中国特許第1,827,666号公報
【特許文献6】特開平10−110110号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Journal of Materials Chemistry(2006),16(24),2387−2394頁
【非特許文献2】日本化学会編(丸善)、 新実験化学講座 14有機化合物の合成と反応III(1978),1780頁
【非特許文献3】Journal of Chemical Society Perkin Trans.1,(1972),2663−2666頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記の背景技術に鑑みてなされたものであり、安価で工業的に安定的に得られる原料を用いて、少ない工程数で製造できる、水およびアルコールに可溶となる新規なスルホン化トリアリールアミンポリマーおよびその製造方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち、本発明は以下に示すとおり、末端の窒素原子が2個のスルホン化芳香族基と結合した構造を有し、水およびアルコールに可溶となる新規なスルホン化トリアリールアミンポリマーおよびその製造方法に関するものである。尚、前記の製造方法(例えば、特許文献3および非特許文献1参照)では、末端の窒素原子が2個のスルホン化芳香族基と結合した構造とすることは難しい。
【0012】
[1]下記式(1)で表されることを特徴とするスルホン化トリアリールアミンポリマー。
【0013】
【化1】

(式中、Arは各々独立して置換基を有していてもよい炭素数6〜20の芳香族基を表し、Arは下記一般式(2)で表される置換基を表す。mは1以上の整数である。Xは水素原子、Li,K,Naのアルカリ金属、NH(Rで表されるアミン塩を表す。その際、Rは各々独立して水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基もしくはアリール基を表す。)
【0014】
【化2】

(式中、Rは水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、アルケニル基、アリール基、アリールアミノ基またはヘテロアリール基を表す。Xは一般式(1)のXと同意義を表す。aは1〜4の整数である。)
[2]一般式(1)において、Arは下記一般式(3)〜(6)で表される構造のいずれかであることを特徴とする上記[1]に記載のスルホン化トリアリールアミンポリマー。
【0015】
【化3】

【0016】
【化4】

【0017】
【化5】

【0018】
【化6】

(式中、RおよびRは各々独立して水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、アルケニル基、アリール基、アリールアミノ基またはヘテロアリール基であり、Rは他の置換基と縮合環を形成してもよい。AはS,O,SO,CO,CHまたはC(CHを表す。bは1〜4の整数、cは1〜3の整数である。)
[3]下記式(7)
【0019】
【化7】

(式中、Arおよびmは一般式(1)のArおよびmと同意義を表し、Arは下記一般式(8)で表される置換基を表す。)
【0020】
【化8】

(式中、Rおよびaは一般式(2)のRおよびaと同意義を表す。)
で表されるトリアリールアミンポリマーに対し、スルホン化剤を塩基性極性溶媒中で反応させることを特徴とする上記[1]または[2]に記載のスルホン化トリアリールアミンポリマーの製造方法。
【0021】
[4]スルホン化剤が、アミド硫酸、三酸化硫黄からなる群より選択される化合物を含むことを特徴とする上記[3]に記載のスルホン化トリアリールアミンポリマーの製造方法。
【0022】
[5]塩基性極性溶媒が、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチル−2−ピロリドン、ピリジン、トリエチルアミンからなる群より選択される化合物を含むことを特徴とする上記[3]または[4]に記載のスルホン化トリアリールアミンポリマーの製造方法。
【発明の効果】
【0023】
本発明のスルホン化トリアリールアミンポリマーは、従来にない新規なスルホン化トリアリールアミンポリマーであり、水またはアルコールに可溶且つ耐熱性に優れるという特徴を有し、また本発明の製造方法によれば、安価で工業的に安定的に得られる原料を用いて、少ない工程数でスルホン化トリアリールアミンポリマーを効率的に合成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】実施例1の合成例1で得られたトリアリールアミンポリマーのIRチャートを示す。
【図2】実施例1の合成例2で得られたトリアリールアミンポリマーのIRチャートを示す。
【図3】実施例1で得られたスルホン化トリアリールアミンポリマーのIRチャートを示す。
【図4】実施例11で得られたスルホン化トリアリールアミンポリマーのアミン塩のH−NMRスペクトルを示す。
【図5】実施例11で得られたスルホン化トリアリールアミンポリマーのアミン塩の13C−NMRスペクトルを示す。
【図6】実施例13で得られたスルホン化トリアリールアミンポリマーのアミン塩のH−NMRスペクトルを示す。
【図7】実施例13で得られたスルホン化トリアリールアミンポリマーのアミン塩の13C−NMRスペクトルを示す。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0026】
本発明のスルホン化トリアリールアミンポリマーは、一般式(1)で表される化合物であり、一般式(1)において、Arは置換基を有していてもよい炭素数6〜20の芳香族基であり、その中でも特に、一般式(3)〜(6)で表される構造のいずれかであることが好ましい。
【0027】
一般式(3)においては、下記一般式(9)で表される構造がさらに好ましい。
【0028】
【化9】

(式中、Rおよびbは一般式(3)のRおよびbと同意義を表し、dは1〜2の整数である。)
一般式(3)におけるRは、上記の定義に該当すれば特に限定されるものではなく、具体的には、例えば水素原子の他;フッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子;メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert−ペンチル基、シクロペンチル基、n−へキシル基、2−エチルブチル基、3,3−ジメチルブチル基、シクロヘキシル基、n−へプチル基、シクロヘキシルメチル基、n−オクチル基、トリフルオロメチル基等のアルキル基;メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、sec−ブトキシ基、n−ペンチルオキシ基、イソペンチルオキシ基、ネオペンチルオキシ基、シクロペンチルオキシ基、n−ヘキシルオキシ基、2−エチルブトキシ基、3,3−ジメチルブトキシ基、シクロヘキシルオキシ基、n−ヘプチルオキシ基、シクロヘキシルメチルオキシ基、n−オクチルオキシ基、トリフルオロメトキシ基等のアルコキシ基;エテニル基、2−プロペニル基、1−メチルエテニル基、3−ブテニル基、1−メチル−2−プロペニル基、4−ペンテニル基等のアルケニル基;フェニル基、2−メトキシフェニル基、3−メトキシフェニル基、2−メチルフェニル基、3−メチルフェニル基、2−ヒドロキシフェニル基、3−ヒドロキシフェニル基、4−トリフルオロメチルフェニル基、3−(トリフルオロメトキシ)フェニル基等のアリール基;ジフェニルアミノ基、ジ−p−トリルアミノ基等のアリールアミノ基;および2−チエニル基、2−ピリジル基等のヘテロアリール基を挙げることができる。より好ましくは、水素原子、アルキル基、アリールアミノ基のいずれかである。また、Rは他の置換基と縮合環を形成してもよい。
【0029】
また、一般式(4)におけるRは、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、アルケニル基、アリール基、アリールアミノ基またはヘテロアリール基であり、具体的には上記Rと同じものを挙げることができ、その中でも水素原子、フッ素原子、炭素数1〜3のメチル基、エチル基、n−プロピル基等のアルキル基、アルコキシ基、アリールアミノ基またはヘテロアリール基が好ましく、特に水素原子、炭素数1〜3のメチル基、エチル基、n−プロピル基等のアルキル基、アルコキシ基のいずれかであることが好ましい。
【0030】
一般式(1)において、Arは一般式(2)で表される置換基である。
【0031】
一般式(2)におけるRは、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、アルケニル基、アリール基、アリールアミノ基またはヘテロアリール基であり、具体的にはRと同じものを挙げることができる。
【0032】
一般式(1),(2)におけるXは、水素原子、Li,K,Naのアルカリ金属、NH(Rで表されるアミン塩であり、Rは各々独立して水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基もしくはアリール基を表し、具体的には水素原子、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基等の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、フェニル基、ナフチル基、フェナントレニル基等のアリール基である。そして、任意に置換していてもよい置換基としては、ヒドロキシ基、アミノ基、ニトリル基、カルボキシ基、スルホン酸基、リン酸基等が挙げられる。
【0033】
ここで、アミン塩を形成する第一級アミンの具体例としては特に限定されないが、メチルアミン、エチルアミン、n−プロピルアミン、イソプロピルアミン、n−ブチルアミン、イソブチルアミン、sec−ブチルアミン、tert−ブチルアミン、2−アミノエタノール、3−アミノ−1−プロパノール、2−(2−アミノエトキシ)エタノール、3−アミノプロピロニトリル、エチレンジアミン、1,4−ブタンジアミン、グリシン、タウリン、O−ホスホリルエタノールアミン等が挙げられる。より好ましくはメチルアミン、エチルアミン、2−アミノエタノール、3−アミノ−1−プロパノール、2−(2−アミノエトキシ)エタノールである。
【0034】
また、アミン塩を形成する第二級アミンの具体例としては特に限定されないが、ジメチルアミン、メチルエチルアミン、ジエチルアミン、ジエタノールアミン等が挙げられる。より好ましくはジメチルアミン、ジエチルアミンである。
【0035】
さらに、アミン塩を形成する第三級アミンの具体例としては特に限定されないが、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリn−プロピルアミン、トリn−ブチルアミン等が挙げられる。より好ましくはトリメチルアミン、トリエチルアミンである。
【0036】
本発明のスルホン化トリアリールアミンポリマーは、上記の定義に該当すれば特に限定はなく、下記一般式(10)〜(13)で表されるものが好ましい。
【0037】
【化10】

【0038】
【化11】

【0039】
【化12】

【0040】
【化13】

(式中、mおよびXは一般式(1)のmおよびXと同意義を表し、Aは一般式(5)のAと同意義を表し、Rおよびaは一般式(2)のRおよびaと同意義を表し、Rは一般式(4)のRと同意義を表し、dは一般式(9)のdと同意義を表す。)
本発明のスルホン化トリアリールアミンポリマーは、特に以下の化合物が好ましい。
【0041】
【化14】

【0042】
【化15】

【0043】
【化16】

【0044】
【化17】

【0045】
【化18】

【0046】
【化19】

【0047】
【化20】

(式中、mおよびXは一般式(1)のmおよびXと同意義を表す。)
本発明のスルホン化トリアリールアミンポリマーの重量平均分子量は、ポリスチレン換算で500〜500,000の範囲が好ましく、より好ましくは1,000〜10,000の範囲である。
【0048】
次に、本発明のスルホン化トリアリールアミンポリマーの製造方法について説明する。
【0049】
本発明の一般式(1)で表されるスルホン化トリアリールアミンポリマーは、下記一般式(7)
【0050】
【化21】

(式中、Arおよびmは一般式(1)のArおよびmと同意義を表し、Arは下記一般式(8)で表される置換基を表す。)
【0051】
【化22】

(式中、Rおよびaは一般式(2)のRおよびaと同意義を表す。)
で表されるトリアリールアミンポリマーに対し、スルホン化剤を塩基性極性溶媒中で反応させることで得ることができる。
【0052】
原料であるトリアリールアミンポリマーとしては、下記一般式(21)〜(24)表されるものが特に好ましい。
【0053】
【化23】

【0054】
【化24】

【0055】
【化25】

【0056】
【化26】

(式中、mは一般式(1)のmと同意義を表し、Aは一般式(5)のAと同意義を表し、Rおよびaは一般式(2)のRおよびaと同意義を表し、Rは一般式(4)のRと同意義を表し、dは一般式(9)のdと同意義を表す。)
トリアリールアミンポリマーの製造方法としては特に限定はなく、例えば特開2004−292782号公報に記載の方法により合成することができる。即ち、ジハロゲン化芳香族、アニリン、ナトリウム−tert−ブトキシドおよびo−キシレンをパラジウム錯体触媒およびトリターシャリーブチルホスフィン溶液を添加して反応させた後、アニリンをさらに反応させて下記一般式(25)で表されるトリアリールアミンポリマーとし、次いで得られたトリアリールアミンポリマー、97%ナトリウム−tert−ブトキシド、ブロモベンゼン、およびo−キシレンを仕込んだ混合液にパラジウム錯体およびトリターシャリーブチルホスフィン溶液を添加して反応し、一般式(7)で表されるトリアリールアミンポリマーを得ることができる。
【0057】
【化27】

(式中、Arおよびmは一般式(1)のArおよびmと同意義を表す。)
本反応に用いるスルホン化剤としては、例えばアミド硫酸、三酸化硫黄からなる群より選択される化合物が挙げられ、単一でも混合して使用してもよい。
【0058】
また、スルホン化剤の使用量としては特に限定されるものではなく、原料であるトリアリールアミンポリマーの繰り返し単位中のベンゼン環(ポリスチレン換算での数平均分子量Mnから推定)に対し、5〜100倍モルの範囲が好ましく、さらに好ましくは10〜50倍モルの範囲である。
【0059】
本反応に用いる塩基性溶剤としては、例えばN,N−ジメチルホルムアミド、N−メチル−2−ピロリドン、ピリジン、トリエチルアミンが挙げられるが、臭気等の操作性からN,N−ジメチルホルムアミドおよびN−メチル−2−ピロリドンが好ましく、単一でも混合して使用してもよい。
【0060】
本発明のスルホン化トリアリールアミンポリマーの製造は、好ましくは常圧下、窒素、アルゴン等の不活性ガス雰囲気下で実施し、仮に加圧条件であっても実施することが可能である。
【0061】
本反応において反応温度は、スルホン化トリアリールアミンポリマーを製造することが可能な反応温度であれば特に限定するものではなく、0〜200℃が好ましく、さらに好ましくは20〜180℃、特に好ましくは20〜150℃の範囲である。
【0062】
また、本発明であるスルホン化トリアリールアミンポリマーのアンモニウム塩もしくはアミン塩は、一般式(1)で表されるスルホン化トリアリールアミンポリマー(Xが水素原子である。)を、無溶媒または極性溶媒中で、アンモニアまたは第一級アミン,第二級アミン,第三級アミン等のアミン類と反応させることで得ることができる。
【0063】
本発明においてアミン類の使用量としては特に限定されるものではなく、所望のスルホン化トリアリールアミンポリマーの塩が得られれば任意に調整可能であり、スルホン化トリアリールアミンポリマーの繰り返し単位中のスルホン酸基に対し、0.1〜100倍モルの範囲が好ましく、さらに好ましくは0.5〜50倍モルの範囲であり、特に好ましくは1.0〜20倍モルの範囲である。
【0064】
本反応において使用される溶剤としては、スルホン化トリアリールアミンポリマーが溶解する溶媒であれば特に限定はなく、水やアルコールなどの極性溶媒が挙げられる。
【0065】
本反応において反応温度は、スルホン化トリアリールアミンポリマーのアミン塩を製造することが可能な反応温度であれば特に限定するものではなく、0〜150℃が好ましく、さらに好ましくは20〜100℃、特に好ましくは20〜60℃の範囲である。
【0066】
本反応において、スルホン化トリアリールアミンポリマーのアミン塩の単離方法は、特に制限はなく、反応後に溶媒や低沸点成分を留去し、必要に応じて溶媒で洗浄した後、乾燥する方法が挙げられる。また、用途によっては必ずしも精製や単離をする必要はなく、例えば、スルホン化トリアリールアミンポリマーの水溶液またはアルコール溶液に、アンモニアやアミン類を添加した溶液を塗布液として使用することもできる。さらに、必ずしもすべてのスルホン酸基を中和する必要はなく、任意に添加量を変えることで部分的にスルホン酸基の中和量を制御でき、それによってpHの調整などが可能である。
【0067】
本発明のスルホン化トリアリールアミンポリマーのアンモニウム塩およびアミン塩の重量平均分子量は、ポリスチレン換算で500〜500,000の範囲が好ましく、より好ましくは1,000〜10,000の範囲である。
【0068】
本発明における水またはアルコールに対する良好な溶解性とは、25℃で0.5重量%以上溶解することであり、好ましくは2重量%以上溶解することである。
【0069】
本発明における良好な耐熱性とは、大気中、室温から100℃付近までに水や低沸点成分や溶媒等を除いた後、100〜150℃の範囲で重量減少が1%以下であることを示す。好ましくは100〜200℃で重量減少が1%以下である。
【0070】
本発明であるスルホン化トリアリールアミンポリマーは、水またはアルコールなどの極性溶媒に可溶であることから、極めて良好な成膜性を有している。よって、スピンコーティング法、キャスティング法、バーコード法、ロールコート法などの従来公知の塗布法が利用できる。
【実施例】
【0071】
本発明を以下の実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定して解釈されるものではない。なお、本実施例における生成物の収率は、単離重量で確認した。また、物性値の測定は下記の機器を用いて実施した。
【0072】
[NMR測定]
装置:VARIAN製、Gemini−200
[紫外可視分光]
装置:島津製作所製、紫外可視分光光度計 UV−3100
[赤外分光分析]
装置:パーキンエルマー製、System2000 FT−IR
測定方法:KBr法
[GPC測定]
装置:東ソー製、HLC−8200、
カラム:東ソー製、G4000HXL−G3000HXL−G2000HXL
[熱分析装置]
1)熱分解温度測定
装置:マックサイエンス社製、TG−DTA 2000
条件:窒素雰囲気下、α−アルミナ(標準)10mg、試料10mg、昇温速度は10℃/min、25℃から500℃までの範囲において測定した。
【0073】
2)耐熱性評価
装置:リガク社製、Thermo Plus TG8120
条件:大気中、α−アルミナ(標準)10mg、試料10mg、事前処理として、室温から5℃/minで100℃まで昇温し、同温度で20分間ホールドした後、耐熱性評価を行った。評価は、100℃から2℃/minで150℃まで昇温し、15分間ホールドしたときまでの重量減少量を測定した。
【0074】
実施例1
a)トリアリールアミンポリマーの合成1(合成例1)
冷却管、温度計を装着した1000mlの四つ口丸底フラスコに、室温下、4,4’−ジヨードビフェニル 20.30g(0.05mol)、アニリン 5.12g(0.055mol)、97%ナトリウム−tert−ブトキシド 11.53g(0.12mol;ヨウ素原子に対して1.2当量)およびo−キシレン 400.16gを仕込んだ。この混合液に、予め窒素雰囲気下で調製したトリス(ジベンジリデンアセトン)二パラジウムクロロホルム錯体 0.23g(0.25mol;ヨウ素原子に対して0.25mol%)およびトリターシャリーブチルホスフィン 1.6ml(パラジウム原子に対して原子4当量)のo−キシレン(31ml)溶液を添加した。その後、窒素雰囲気下、温度を120℃まで昇温し、120℃で過熱撹拌しながら17時間熟成した。17時間後、アニリン 0.9g(0.01mol)を添加し、さらに3時間反応を行った。反応終了後、この反応混合物を約80℃まで冷却した後、水 50.1gを添加し、さらに90%アセトン水溶液(1650ml)の撹拌溶液へゆっくり加えた。ろ過により固体をろ別回収し、アセトン、水、アセトンの順番で洗浄した後、減圧乾燥し、淡黄色粉体 11.8gを得た(94%)。得られた粉体をTHF系GPCで分析した結果、ポリスチレン換算で重量平均分子量5,500および数平均分子量3,100(分散度1.8)であった。また、得られたポリマーをH−NMR、13C−NMRおよび赤外分光分析により測定したところ、下記一般式(26)で表されるトリアリールアミンポリマーであることが確認された。H−NMR、13C−NMRおよび赤外分光分析の測定結果をそれぞれ表1および図1に示す。特に赤外分光分析では、3300cm−1付近にNH基の吸収が見られた。
【0075】
【化28】

b)トリアリールアミンポリマーの合成2(合成例2)
冷却管、温度計を装着した1000mlの四つ口丸底フラスコに、室温下、合成例1で得られたトリアリールアミンポリマー 11.65g(ポリスチレン換算で数平均分子量3,100)、97%ナトリウム−tert−ブトキシド 19.55g(0.20mol;推定NH原子数に対して26当量)、ブロモベンゼン 11.73g(0.08mol;推定NH原子数に対して10当量)、およびo−キシレン 400.32gを仕込んだ。この混合液に、予め窒素雰囲気下で調製したトリス(ジベンジリデンアセトン)二パラジウムクロロホルム錯体 0.10g(0.11mmol;推定NH原子数に対して14.7mol%)およびトリターシャリーブチルホスフィン 1.6ml(パラジウム原子に対して原子8当量)のo−キシレン(29ml)溶液を添加した。その後、窒素雰囲気下、温度を120℃まで昇温し、120℃で過熱撹拌しながら1時間熟成した。反応終了後、この反応混合物を約80℃まで冷却した後、水 150.1gを添加し、さらに92%アセトン水溶液(2050ml)の撹拌溶液へゆっくり加えた。ろ過により固体をろ別回収し、アセトン、水、アセトンの順番で洗浄した後、クロロベンゼン 662.6gに溶解し、濃縮後、アセトン(800ml)の撹拌溶液へゆっくり加えて、再沈殿で固体をろ別回収し、アセトン、水、アセトンの順番で洗浄した。ろ過した固体を減圧乾燥して淡黄色粉体 8.6gを得た(66%)。得られた粉体をTHF系GPCで分析した結果、ポリスチレン換算で重量平均分子量5,500および数平均分子量3,700(分散度1.5)であった。また、得られたポリマーをH−NMR、13C−NMRおよび赤外分光分析により測定したところ、下記一般式(27)で表されるトリアリールアミンポリマーであることが確認された。H−NMR、13C−NMRおよび赤外分光分析の測定結果をそれぞれ表1および図2に示す。特に赤外分光分析では、合成例1で示された3300cm−1付近のNH基の吸収消失が確認された。
【0076】
【化29】

c)スルホン化トリアリールアミンポリマーの合成
冷却管、温度計を装着した500mlの四つ口丸底フラスコに、室温下、合成例2で得られたトリアリールアミンポリマー 8.00g(ポリスチレン換算で数平均分子量3,700)、アミド硫酸 136.18g(1.40mol;N−フェニルN−ビフェニルアミンを繰り返し単位とした場合の推定分子数に対して40当量)、およびN−メチルピロリドン 209.55gを仕込んだ。この混合液を窒素雰囲気下、温度120〜140℃で30分間加温した。反応終了後、N−メチルピロリドンを減圧留去しながら濃縮し、99%アセトン水溶液(1900ml)の撹拌溶液へゆっくり加えた。ろ過により固体をろ別回収し、水(150ml)に溶解した後、アセトン(1500ml)で再沈殿した。さらに、水(150ml)に再溶解した後、アセトン(500ml)とメタノールの混合液(500ml)で再沈殿を繰り返した。メタノール(2000ml)に溶解し、濃縮後、アセトン(1900ml)の撹拌溶液へゆっくり加えて、再沈殿で固体をろ別回収し、アセトンで洗浄した。ろ過した固体を減圧乾燥して灰白色粉体 11.4gを得た。得られた粉体をH−NMR、13C−NMRおよび赤外分光分析により測定したところ、下記一般式(28)で表されるスルホン化トリアリールアミンポリマーであることが確認された。H−NMR、13C−NMRおよび赤外分光分析の測定結果をそれぞれ表1および図3に示す。特に赤外分光分析では、1000〜1100cm−1付近の大きなピークはスルホン基由来の吸収と推定される。さらに、H−NMRでピークが全体的に低磁場へシフトし、13C−NMRで合成例1,2で示された118ppm付近のアニリン基のp位の炭素原子に由来すると推定されるピークの消失が確認された。次に、熱分析装置(TG−DTA)で熱分解温度を測定した結果、282℃だった。さらに、耐熱性評価を行った結果、重量減少率は1%以下で良好な耐熱性を示した。
【0077】
【化30】

実施例2
冷却管、温度計を装着した50mlのナス型フラスコに、室温下、合成例2で得られたトリアリールアミンポリマー 0.04g(ポリスチレン換算で数平均分子量3,700)、アミド硫酸 0.68g(70mmol;N−フェニルN−ビフェニルアミンを繰り返し単位とした場合の推定分子数に対して42当量)、およびN−メチルピロリドン 1.01gを仕込んだ。この混合液を窒素雰囲気下、温度を150℃まで昇温し、10分間加温した。反応終了後、アセトン20mlを添加し、撹拌洗浄、デカンテーションを2回行い、濃縮して黒色の固体を0.26g得た。このうち0.10gを超音波処理で水1.24gに溶解し、アセトン5.51gを加えて再沈殿し、アセトン洗浄後、0.07gの灰白色の粉体を得た。得られた粉体をH−NMR、13C−NMRおよび赤外分光分析により測定したところ、上記一般式(28)で表されるスルホン化トリアリールアミンポリマーであることが確認された。H−NMRおよび13C−NMRの測定結果をそれぞれ表1に示す。
【0078】
比較例1
冷却管、温度計を装着した50mlのナス型フラスコに、室温下、窒素雰囲気で合成例2で得られたトリアリールアミンポリマー 0.04g(ポリスチレン換算で数平均分子量3,700)、60%発煙硫酸 1.81g(6.06mmol;N−フェニルN−ビフェニルアミンを繰り返し単位とした場合の推定分子数に対して38当量)を仕込んだ。この混合液を窒素雰囲気下、25℃で24時間撹拌した。反応終了後、アセトン 20mlを添加し単離したが、水またはメタノールに不溶な黒変物であり、目的物は得られなかった。
【0079】
尚、表1に、合成例1,2と実施例1,2、並びに比較例1で得られた化合物の水およびメタノールへの溶解性(3重量%)の比較も併せて示した。それらの結果から、実施例1,2で得られたスルホン化トリアリールアミンポリマーは水およびメタノールに可溶であることが分かる。
【0080】
【表1】

実施例3
スルホン化トリアリールアミンポリマーのリチウム塩の合成
50mlのナス型フラスコに、室温下、実施例1で得られたスルホン化トリアリールアミンポリマー 0.20g(スルホン酸基の推定含有量、0.3mmol)、水 5.0g、炭酸リチウム 20.0mg(0.27mmol)を仕込んだ。この混合液を窒素雰囲気下、室温で撹拌しながら14時間熟成した。14時間後、減圧しながら水を留去し、さらに減圧乾燥し、褐色の鱗片状粉体 0.20gを得た。得られた粉体をH−NMRおよび赤外分光分析により測定したところ、スルホン化トリアリールアミンポリマーのリチウム塩であることが確認された。H−NMRの測定結果を表2に示す。また、得られた粉体は、水への溶解性(10重量%)が向上したが、その結果も併せて表2に示した。
【0081】
実施例4
スルホン化トリアリールアミンポリマーのナトウム塩の合成
50mlのナス型フラスコに、室温下、実施例1で得られたスルホン化トリアリールアミンポリマー 0.20g(スルホン酸基の推定含有量、0.3mmol)、水 5.0g、96%水酸化ナトリウム 11.3mg(0.27mmol)を仕込んだ。この混合液を実施例3と同様に反応後、処理して褐色の鱗片状粉体 0.20gを得た。得られた粉体はH−NMRおよび赤外分光分析によりスルホン化トリアリールアミンポリマーのナトリウム塩であることが確認された。H−NMRの測定結果を表2に示す。また、得られた固体は、水への溶解性(10重量%)が向上したが、その結果も併せて表2に示した。
【0082】
実施例5
スルホン化トリアリールアミンポリマーのカリウム塩の合成
50mlのナス型フラスコに、室温下、実施例1で得られたスルホン化トリアリールアミンポリマー 0.20g(スルホン酸基の推定含有量、0.3mmol)、水 5.0g、85%水酸化カリウム 17.8mg(0.27mmol)を仕込んだ。この混合液を実施例3と同様に反応後、処理して褐色の鱗片状粉体 0.20gを得た。得られた粉体はH−NMRおよび赤外分光分析によりスルホン化トリアリールアミンポリマーのカリウム塩であることが確認された。H−NMRの測定結果を表2に示す。また、得られた固体は、水への溶解性(10重量%)が向上したが、その結果も併せて表2に示した。
【0083】
実施例6
スルホン化トリアリールアミンポリマーのアンモニウム塩の合成
50mlのナス型フラスコに、室温下、実施例1で得られたスルホン化トリアリールアミンポリマー 0.20g(スルホン酸基の推定含有量、0.3mmol)、水 5.0g、28%アンモニア水 16.4mg(0.27mmol)を仕込んだ。この混合液を実施例3と同様に反応後、凍結乾燥し、さらに減圧乾燥して、褐色の粉体 0.21gを得た。得られた粉体はH−NMRおよび赤外分光分析によりスルホン化トリアリールアミンポリマーのアンモニウム塩であることが確認された。H−NMRの測定結果を表2に示す。また、得られた固体は、水への溶解性(10重量%)が向上したが、その結果も併せて表2に示した。次に、熱分析装置(TG−DTA)で熱分解温度を測定した結果、271℃だった。さらに、耐熱性評価を行った結果、重量減少率は1%以下で良好な耐熱性を示した。
【0084】
実施例7
スルホン化トリアリールアミンポリマーのトリメチルアミン塩の合成
50mlのナス型フラスコに、室温下、実施例1で得られたスルホン化トリアリールアミンポリマー 0.20g(スルホン酸基の推定含有量、0.3mmol)、水 5.0g、30%トリメチルアミン水溶液 53.2mg(0.27mmol)を仕込んだ。この混合液を実施例6と同様に反応後、処理して褐色の粉体0.22gを得た。得られた粉体はH−NMRおよび赤外分光分析によりスルホン化トリアリールアミンポリマーのトリメチルアミン塩であることが確認された。H−NMRの測定結果を表2に示す。また、得られた固体は、水への溶解性(10重量%)が向上したが、その結果も併せて表2に示した。次に、熱分析装置(TG−DTA)で耐熱性を評価した結果、重量減少率は1%以下で良好な耐熱性を示した。
【0085】
実施例8
スルホン化トリアリールアミンポリマーのトリエチルアミン塩の合成
50mlのナス型フラスコに、室温下、実施例1で得られたスルホン化トリアリールアミンポリマー 0.20g(スルホン酸基の推定含有量、0.3mmol)、水 5.0g、トリエチルアミン 27.3mg(0.27mmol)を仕込んだ。この混合液を実施例6と同様に反応後、処理して褐色の粉体 0.20gを得た。得られた粉体はH−NMRおよび赤外分光分析によりスルホン化トリアリールアミンポリマーのトリエチルアミン塩であることが確認された。H−NMRの測定結果を表2に示す。また、得られた固体は、水への溶解性(10重量%)が向上したが、その結果も併せて表2に示した。次に、熱分析装置(TG−DTA)で耐熱性を評価した結果、重量減少率は1%以下で良好な耐熱性を示した。
【0086】
【表2】

実施例9
スルホン化トリアリールアミンポリマーのメチルアミン塩の合成
30mlの反応管に、室温下、実施例1で得られたスルホン化トリアリールアミンポリマー 0.20g(スルホン酸基の推定含有量、0.3mmol)、メタノール 5.0g、40%メチルアミン水溶液 2ml(18.0mmol)を仕込んだ。この混合液を窒素雰囲気下、室温で撹拌しながら16時間熟成した。その後、減圧しながら溶媒を留去し、100℃で2時間真空乾燥して、淡黄色の粉体 0.15gを得た。得られた粉体はH−NMR、13C−NMRおよび赤外分光分析により、スルホン化トリアリールアミンポリマーのメチルアミン塩であることが確認された。次に、熱分析装置(TG−DTA)で耐熱性を評価した結果、重量減少率は1%以下で良好な耐熱性を示した。また、水に2重量%以上溶解し、良好な水溶性を示した。
【0087】
実施例10
スルホン化トリアリールアミンポリマーのn−ブチルアミン塩の合成
30mlの反応管に、室温下、実施例1で得られたスルホン化トリアリールアミンポリマー 0.20g(スルホン酸基の推定含有量、0.3mmol)、メタノール 5.0g、n−ブチルアミン 83mg(1.1mmol)を仕込んだ。この混合液を窒素雰囲気下、室温で撹拌しながら16時間熟成した。その後、減圧で溶媒を留去し、ヘキサン/エタノール=5/1(v/v)の混合液で洗浄・ろ過した後、100℃で2時間真空乾燥して、淡黄色の粉体 0.13gを得た。得られた粉体はH−NMR、13C−NMRおよび赤外分光分析により、スルホン化トリアリールアミンポリマーのn−ブチルアミン塩であることが確認された。次に、熱分析装置(TG−DTA)で耐熱性を評価した結果、重量減少率は1%以下で良好な耐熱性を示した。また、水に2重量%以上溶解し、良好な水溶性を示した。
【0088】
実施例11
スルホン化トリアリールアミンポリマーのtert−ブチルアミン塩の合成
実施例10のn−ブチルアミンをtert−ブチルアミン 83mg(1.1mmol)に変更した以外は、実施例10の方法に準拠して行い、淡黄色の粉体 0.22gを得た。得られた粉体はH−NMR、13C−NMRおよび赤外分光分析により、スルホン化トリアリールアミンポリマーのtert−ブチルアミン塩であることが確認された。次に、熱分析装置(TG−DTA)で耐熱性を評価した結果、重量減少率は1%以下で良好な耐熱性を示した。また、水に2重量%以上溶解し、良好な水溶性を示した。
【0089】
実施例12
スルホン化トリアリールアミンポリマーの2−アミノエタノール塩の合成
実施例10のn−ブチルアミンを2−アミノエタノール 70mg(1.1mmol)に変更した以外は、実施例10の方法に準拠して行い、淡黄色の粉体 0.14gを得た。得られた粉体はH−NMR、13C−NMRおよび赤外分光分析により、スルホン化トリアリールアミンポリマーの2−アミノエタノール塩であることが確認された。次に、熱分析装置(TG−DTA)で耐熱性を評価した結果、重量減少率は1%以下で良好な耐熱性を示した。また、水に2重量%以上溶解し、良好な水溶性を示した。
【0090】
実施例13
スルホン化トリアリールアミンポリマーのジメチルアミン塩の合成
実施例9の40%メチルアミン水溶液を50%ジメチルアミン水溶液 1ml(9.6mmol)に変更した以外は、実施例9に準拠して行い、淡黄色の粉体 0.14gを得た。得られた粉体はH−NMR、13C−NMRおよび赤外分光分析により、スルホン化トリアリールアミンポリマーのジメチルアミン塩であることが確認された。次に、熱分析装置(TG−DTA)で耐熱性を評価した結果、重量減少率は1%以下で良好な耐熱性を示した。また、水に2重量%以上溶解し、良好な水溶性を示した。
【0091】
実施例14
スルホン化トリアリールアミンポリマーのn−ヘキシルアミン塩の合成
実施例10のn−ブチルアミンをn−ヘキシルアミン 115mg(1.1mmol)に変更した以外は、実施例10に準拠して行い、淡黄色の粉体 0.22gを得た。得られた粉体はH−NMR、13C−NMRおよび赤外分光分析により、スルホン化トリアリールアミンポリマーのn−ヘキシルアミン塩であることが確認された。次に、熱分析装置(TG−DTA)で耐熱性を評価した結果、重量減少率は1%以下で良好な耐熱性を示した。
【0092】
実施例15
スルホン化トリアリールアミンポリマーのジn−ブチルアミン塩の合成
実施例10のn−ブチルアミンをジn−ブチルアミン 147mg(1.1mmol)に変更した以外は、実施例10に準拠して行い、淡黄色の粉体 0.24gを得た。得られた粉体はH−NMR、13C−NMRおよび赤外分光分析により、スルホン化トリアリールアミンポリマーのジn−ブチルアミン塩であることが確認された。次に、熱分析装置(TG−DTA)で耐熱性を評価した結果、重量減少率は3%であった。
【産業上の利用可能性】
【0093】
本発明のスルホン化トリアリールアミンポリマーは、従来にない新規なスルホン化トリアリールアミンポリマーであり、汎用の極性溶媒である水またはアルコールに可溶且つ耐熱性に優れるという特徴を有し、本発明の製造方法によれば、安価で工業的に安定的に得られる原料を用いて、少ない工程数でスルホン化トリアリールアミンポリマーを効率的に合成することができる。
【0094】
この新規なスルホン化トリアリールアミンポリマーは、スルホン酸基による酸性が弱められているため、装置等への腐食を回避することができる。そして、これらは構造材料、有機EL材料、導電性高分子、帯電防止剤等への利用が期待される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で表されることを特徴とするスルホン化トリアリールアミンポリマー。
【化1】

(式中、Arは各々独立して置換基を有していてもよい炭素数6〜20の芳香族基を表し、Arは下記一般式(2)で表される置換基を表す。mは1以上の整数である。Xは水素原子、Li,K,Naのアルカリ金属、NH(Rで表されるアミン塩を表す。その際、Rは各々独立して水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基もしくはアリール基を表す。)
【化2】

(式中、Rは水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、アルケニル基、アリール基、アリールアミノ基またはヘテロアリール基を表す。Xは一般式(1)のXと同意義を表す。aは1〜4の整数である。)
【請求項2】
一般式(1)において、Arは下記一般式(3)〜(6)で表される構造のいずれかであることを特徴とする請求項1に記載のスルホン化トリアリールアミンポリマー。
【化3】

【化4】

【化5】

【化6】

(式中、RおよびRは各々独立して水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、アルケニル基、アリール基、アリールアミノ基またはヘテロアリール基であり、Rは他の置換基と縮合環を形成してもよい。AはS,O,SO,CO,CHまたはC(CHを表す。bは1〜4の整数、cは1〜3の整数である。)
【請求項3】
下記式(7)
【化7】

(式中、Arおよびmは一般式(1)のArおよびmと同意義を表し、Arは下記一般式(8)で表される置換基を表す。)
【化8】

(式中、Rおよびaは一般式(2)のRおよびaと同意義を表す。)
で表されるトリアリールアミンポリマーに対し、スルホン化剤を塩基性極性溶媒中で反応させることを特徴とする請求項1または2に記載のスルホン化トリアリールアミンポリマーの製造方法。
【請求項4】
スルホン化剤が、アミド硫酸、三酸化硫黄からなる群より選択される化合物を含むことを特徴とする請求項3に記載のスルホン化トリアリールアミンポリマーの製造方法。
【請求項5】
塩基性極性溶媒が、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチル−2−ピロリドン、ピリジン、トリエチルアミンからなる群より選択される化合物を含むことを特徴とする請求項3または4に記載のスルホン化トリアリールアミンポリマーの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−211297(P2012−211297A)
【公開日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−164831(P2011−164831)
【出願日】平成23年7月27日(2011.7.27)
【出願人】(000003300)東ソー株式会社 (1,901)
【Fターム(参考)】