説明

新規デバイス

本発明は、シリンジに充填する方法に関する。前記シリンジにおいては、縦長で管状のシリンジ外筒部(11)が可動性プランジャーにより閉じられた第1端部(11A)と、第2端部(11B)にある注射針に適した連結部とを有し、内腔の第2端部は貫通可能なクロージャー(14)により閉じられている。前記シリンジに充填するには、貫通可能なクロージャーに充填針(31)を通し、該針を介して液体を外筒部に充填し、続いてクロージャーから充填針を抜き取る。好適には、ペネトレーター(17)を外筒部の第2端部に取り付けてクロージャーを貫通させ、これによりクロージャーを介した流体連通を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリンジ(注射器)、ならびにシリンジに充填する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
シリンジ(特に皮下用シリンジ)は、通常は該シリンジに取り付けられた中空の注射針を用いて、皮膚から注入することにより医薬を送達するための周知のデバイスである。
【0003】
典型的なシリンジは、注射用の液体を入れるための縦長で管状のシリンジ外筒部を含み、該外筒部は長軸方向に向かい合って位置する第1開放端部と第2開放端部とを有する。一方の端部(本明細書中では「第1端部」と呼ぶ)はプランジャーを収容するために開放されており、該プランジャーは注射針に適した連結部がある反対側の第2端部に向かって該外筒部に沿って移動する。外筒部にはプランジャーが組み込まれているが、該プランジャーは、第1端部から第2端部に向かって移動し、それにより針を介してシリンジから液体を押し出すようになっている。US-A-3,884,229には、貫通可能なクロージャーで封止された液状薬剤のカートリッジを組み込んだシリンジが開示されており、該シリンジは針を有するペネトレーターを備え、この針が該クロージャーを貫通して、該ペネトレーターを通って、該ペネトレーターの反対側の端部にある注射針のための連結部までの導管を提供する。ペネトレーターに貫通可能なクロージャーを貫通させて外筒部の内部と注射針との間に連絡を設ける同様のシリンジが、EP-A-0239673、EP-A-0276160、US-A-3,989,044、US-A-4,227,528、US-A-4,196,732およびWO-A-88/00478に開示されている。
【0004】
シリンジに液体を充填する際には、液体内容物の汚染を避けること、特に無菌状態を維持することが肝要である。これは至難なことである。通常、シリンジは外筒部の開放端部のうちの一方から充填され、これはプランジャーを外筒部に挿入する前に第1開放端部から行うか、または上記の針のための連結部もしくは貫通可能なクロージャーを取り付ける前に第2開放端部から行う。このことは、シリンジに充填し終わるまでシリンジ外筒部はこれらの端部のうち少なくとも一方が開放されたままでなければならないことを意味し、シリンジに充填し終わるのを待つ間にシリンジが汚染される可能性がある。
【0005】
WO-A-2003/028785には、シリンジに充填するための方法が開示されており、ここではプランジャーが貫通可能な可融性材料で作られており、そして、該プランジャーで第1開放端部を閉鎖し、続いてプランジャーに充填針を通し、針を介してシリンジ外筒部に充填し、針を抜き取ってから、残存する穿刺孔をヒートシールによりふさぐことにより、シリンジに充填する。そのようなプランジャーは通常は比較的厚く、該プランジャーに充填針を通すためには相当大きな穿刺力を必要とする。さらに、プランジャーは外筒部内で比較的滑動しやすいことが意図されるため、プランジャーに充填針を通す際に加えられる力によってプランジャーが動かないように、何らかの方策を採らなければならない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、新規なシリンジの構成を提供することであり、また、この新規なシリンジの構成に基づいてシリンジに充填し、組み立てるための、とりわけ上記の問題を解決する、新規な方法を提供することである。本発明の他の目的および効果は、以下の説明から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、注射用の液体を入れる内腔を画定する縦長で管状のシリンジ外筒部を含むシリンジが提供され、該外筒部は長軸方向に向かい合って位置する第1端部と第2端部とを有し、第1端部から第2端部に向かう方向に該内腔に沿って移動するプランジャーを組み込みこんでおり、それにより、第2端部を経てシリンジから液体を押し出すようになっている。ここで、
内腔の第2端部は貫通可能なクロージャーにより閉鎖され、
該クロージャーに近接して、導管を組み込んだペネトレーターがあり、該ペネトレーターが少なくとも部分的に該クロージャーを貫通して、該導管が該クロージャーを通る流体連通をもたらすようになっている。
【0008】
シリンジ外筒部は、ガラス、または好ましくは半透明のプラスチック材料(例えば公知のCOCポリマー)などの慣用の材料から作ることができる。プランジャーは広く慣用されているものでよく、例えば使用者による操作のための操作用シャフトに接続される。
【0009】
貫通可能なクロージャーは、例えば、内腔を横断するクロージャー壁(例えば、円筒形の管状外筒部の直径に相当する直径のディスク形クロージャー壁)で構成される。あるいは、貫通可能クロージャーは、例えば、第1端部から第2端部に向かって凸状の、内腔を横断するクロージャー壁(例えば、凸状のドーム形クロージャー壁)で構成される。あるいは、かかるクロージャーは外筒部のこの第2端部でノズル出口を閉鎖するプラグまたはキャップであってもよい。かかるクロージャー壁は、好ましくは穿刺により容易に貫通可能な材料(例えば、エラストマー材料)で作られる。貫通可能クロージャーは、例えば、かかる壁の脆弱な領域(例えば、穿刺可能な脆弱領域)を含んでいてもよい。例えば、クロージャーは、該クロージャーの隣接部分よりも薄くなっている貫通可能領域を含む。かかる領域は、一体的に薄くされた領域でありうる。例えば、凸状クロージャー壁の最上部が、該クロージャー壁の隣接部分(例えば、辺縁部分)と比較して薄くなっている。かかる領域は、これに加えてまたはこれとは別に、該クロージャーを通る開口部を含んでいてもよく、この開口部が薄い貫通可能な(例えば、穿刺可能な)メンブレンで閉鎖されている。かかる領域は、これに加えてまたはこれとは別に、前もって形成された穿刺孔を含んでいてもよく、この穿刺孔は、該クロージャーの脆弱な領域を残すように、例えば穿刺孔に隣接するクロージャーの材料を溶融させることにより、または何らかの別の方法で穿刺孔を閉じることにより、部分的にシールされていてもよい。該クロージャーが全体的にまたは部分的に弾性材料で作られている場合、かかる穿刺孔は、該クロージャーの自然な弾力により貫通の前には閉じられる。かかる弾力により、穿刺孔の周囲の弾性材料が近寄ってきて穿刺孔を閉ざすが、その穿刺孔はその後容易にペネトレーターにより再び開いた状態のままにされる。そのような穿刺孔は、それが作られた後に、例えばヒートシールにより(例えば穿刺箇所にレーザービームを照射することにより)閉鎖することが可能であり、そのようにして形成されたクロージャーは続いて容易に貫通される。例えば、これとは別にまたはこれに加えて、かかる穿刺孔を貫通の前に薄い貫通可能なメンブレンで閉鎖してもよい。クロージャーは、該クロージャーが定位置にあるときに、外筒部にプラグのように嵌まるスカート部を備えているのが好適である。そのようなスカート部は、定位置に配置したときにクロージャーを安定化させるのに役立ち、また、クロージャーと外筒部との密閉接触を、例えば外筒部とクロージャーとの間の接触領域を増大させることにより、容易にすることができる。
【0010】
例えば、そのような既存の穿刺孔は、針で作られたものである。こうした針は中空の充填針とすることができ、この針をクロージャーに通して、そこから液体を外筒部に導入しておき、続いてその針を引き抜くと、後に穿刺孔が残る。このことは、外筒部の内部がプランジャー(第1端部を閉鎖している)とクロージャー(第2端部を閉鎖している)とにより防護されていて、空のシリンジを無菌状態で提供しうるという利点を有する(本明細書中で「無菌」とは、周囲環境と比較して微生物などの望ましくない汚染物による汚染のレベルが幾分なりとも低下していることを含み、特に医学的に許容される状態にまで汚染が低下していることを含む)。例えば、シリンジ外筒部、プランジャーおよびクロージャーは、無菌環境で無菌状態に製造され、無菌環境で組み立てられる。WO-A-2005/005128には、バイアルとそのエラストマークロージャーとをそのように製造する方法が開示されており、この開示された方法を応用してもよい。それにより、シリンジ外筒部の内部を、上記の方法で充填している間、無菌的に保つことができ、それゆえ、好都合なことに、充填前に(例えば照射により)シリンジの外側を滅菌するだけでよいことになる。好ましくは、かかる充填方法に用いる充填針は角錐形の尖端を有し、そのような尖端は貫通の間にクロージャー材料の粒状物(これはシリンジの内部を汚染しうる)が形成されるリスクを低減させることがわかっている。特に好適な充填針が、例えばWO-A-2004/096114に開示されている。
【0011】
例えば、そのような針をクロージャーに通す。該クロージャーの弾性は、針が引き抜かれたときに、クロージャーの材料を近寄らせて、それにより後に残る穿刺孔をある程度まで閉じることができる。このことは、充填針を使ってシリンジ外筒部に液体を導入した後に、シリンジを汚染する機会がかなり少なくなるという利点をもたらす。こうした場合に比べて、液体が外筒部に導入された後、シリンジが第1端部または第2端部で開放されたままで、外筒部の第1開放端部にプランジャーを挿入することによる閉鎖、または第2開放端部にクロージャーを取り付けるによる閉鎖を待っている場合には、シリンジの汚染の機会がより多くなるだろう。さらに好都合なことに、かかる充填針を用いて充填し、閉鎖された穿刺孔を後に残す場合には、シリンジを粒状物について半透明の壁を通して検査することができるので、公知のシリンジの場合よりも汚染のおそれが少なくなる。
【0012】
貫通可能なクロージャー(例えば壁)はクランプ部により外筒部の第2端部に近接して保持することができるが、該クランプ部は例えば外筒部の第2端部の周囲のカラーであり、外筒部とクロージャーとの間の液密シールを形成するのに十分な圧で、該クロージャーにのしかかって該クロージャーを第2端部に押し付ける。そのようなクランプ部は、外筒部の第2端部にスナップ嵌めすることができる。例えば、外筒部の第2端部はシールフランジを(典型的には外筒部の第2端部の周囲に)備えることができ、かかるフランジにクロージャーがクランプ部により押し付けられる。クロージャーと接したそのようなフランジの表面は、リング状のシールリッジを含み、それによりフランジとクロージャーとの間のシールを強化することができる。かかるクランプ部もまた、上記と同様に無菌環境で製造することができる。
【0013】
ペネトレーターは、これが少なくとも部分的にクロージャーを貫通したときに、クロージャーを通る導管を提供することにより、クロージャーを介した連通(すなわち、外筒部の内部と外部との連通)をもたらす。ペネトレーターはほぼ管状の部材(その管状内腔に沿って液体が流れる)で構成され、貫通可能クロージャーを少なくとも部分的に貫通するように作られた一端部を有する。典型的には、かかる端部は概ね尖っており、例えばその頂点付近に穴を有するほぼ円錐形の端部である。ペネトレーターは、皮下用注射針のためのコネクタを、例えば一体的に、備えていてもよい。例えば、かかる管状ペネトレーターの反対側の端部が、例えば一体的に、皮下用注射針のためのコネクタを備えている。そのようなコネクタを用いると、外筒部の第2端部を経てシリンジから押し出された液体を、例えばその液体を患者に注射するために、そこに接続された針を通して導入することができる。かかるコネクタは、例えば、典型的な皮下用注射針の雌型コネクタに嵌まる雄型部材として成形される。ペネトレーターのコネクタは、針に連結する前には安全栓を備えていてもよい。かかる安全栓は、広く知られたタイプのものであってよく、例えば針コネクタノズルを覆うキャップである。
【0014】
ペネトレーターはシリンジに取り付けるように構成することができる。かかる取付けは、ペネトレーターと外筒部との間の、またはペネトレーターと上記のクランプ部(クロージャーを定位置に保持する)との間の、スナップ嵌めによるかみ合いにより行うことができる。ペネトレーターがクランプ部とかみ合う場合には、このかみ合いを、ペネトレーターが外筒部にクロージャーを押し付けることによりクロージャーと外筒部との間のシールを強化するために、利用することが有利である。
【0015】
ペネトレーターはフランジ表面を備えることができるが、そのフランジ表面は、外筒部の上記シールフランジにのしかかるクロージャー表面とは反対側の表面にのしかかる。クロージャーと接蝕しているそのようなフランジ表面は、フランジ表面とクロージャーとの間のシールを強化するためのリング状のシールリッジを備えることができる。
【0016】
プランジャーは広く慣用されているもの、すなわちエラストマーのシリンダーであってよく、これは好ましくは外筒部の内径よりも直径がやや大きくなっていて、その結果プランジャーの弾性によって外筒部の内腔の内表面に対して該プランジャーが通常の様式で拡がりながら押し付けられる。好ましくは、外筒部の第1端部にはバックストップが設けられ、これにより第1端部を介して外筒部からプランジャーが外れることを阻止する。そのようなバックストップは、この第1端部からプランジャーが離れそうになった場合にプランジャーにのしかかる迫台(abutment)を備えることができる。そのような迫台は、外筒部の内径から内側に若干突き出たフランジを含む。クロージャーが第2端部で定位置にある間に第1開放端部から外筒部にプランジャーを挿入すると、外筒部内に過剰な圧が生じるが、バックストップは、この過剰な圧に抗ってプランジャーを定位置に保持し、かつ、汚染の侵入に対する追加の防護として過剰な圧を維持することができる。さらに、そのようなバックストップは、第2端部でクロージャーを通して挿入された充填針からシリンジに液体が導入されることによりこの過剰な圧が上昇するという点で、さらなる役割も果たしうる。かかるバックストップはまた、円錐形の入口を備えることができ、プランジャーがこれ対応して円錐形の先端部をもつことによりシリンジの第1開放端部への挿入の際にプランジャーの誘導および圧縮を助ける。かかるバックストップは、例えばスナップ嵌め連結により、第1開放端部側で外筒部に取付け可能である。シリンジの第1開放端部から離れた方に向いているプランジャーの端部は、中央に凹部を備え、それにより、外筒部への挿入に際して、プランジャーの圧縮および変形を補助することができる。
【0017】
したがって、本発明のシリンジの好ましい具体的な構成は、縦長で管状のシリンジ外筒部を含み、これが注射用の液体を入れる内腔を画定し、該外筒部は長軸方向に向かい合って位置する第1端部と第2端部とを有し、プランジャーを組み込んでいるが、該プランジャーは第1端部から第2端部に向かう方向に内腔に沿って移動し、それにより第2端部を介してシリンジから液体を押し出すようになっている。ここで、
内腔の第2端部は貫通可能なクロージャーにより閉鎖されているが、該クロージャーは該内腔を横切るクロージャー壁の形状で、エラストマー材料で作られており、前もって形成された穿刺孔(脆弱領域を提供し、この領域でクロージャーが貫通される)において貫通可能であり、
クロージャーはクランプ部により外筒部の第2端部でフランジ表面に隣接して保持され、該クランプ部は外筒部の第2端部にあり、外筒部とクロージャーとの間に液密シールを形成するのに十分な圧でクロージャーにのしかかって該クロージャーを第2端部に押し付けており、
クロージャーに近接して、導管を組み込んだペネトレーターがあり、該ペネトレーターが少なくとも部分的にクロージャーを貫通することにより、該導管が外筒部の内部と外部との間に流体連通をもたらすようになっており、該ペネトレーターはほぼ管状の部材(その管状内腔に沿って液体が流れる)で構成され、貫通可能クロージャーを少なくとも部分的に貫通するように構成された一端部を有する。該ペネトレーターの反対側の端部は皮下用注射針のためのコネクタを備える。
【0018】
本明細書中で「少なくとも部分的に貫通する」とは、クロージャーの外側から少なくとも部分的に内側へとペネトレーターが通過することを含み、例えば、クロージャーを穿刺して物理的に破壊すること、ペネトレーターによりクロージャーに既に存在する孔を拡げること、ペネトレーターによりクロージャーの脆弱領域を破壊してクロージャーを通る開口部を作り出すこと、ならびに流体連通をもたらすペネトレーターによるクロージャーの他のいかなる種類の貫通をも含む。
【0019】
本発明はさらに、液体が充填されたシリンジを用意する方法を提供し、該方法は以下のステップ:
注射用の液体を入れる内腔を画定する管状のシリンジ外筒部を用意するステップ、ここで、該外筒部は長軸方向に向かい合って位置する第1端部と第2端部とを有し、第1端部はプランジャーを収容するために開放されていて、該プランジャーが該外筒部に沿って反対側の第2端部に向かって移動することにより、第2端部を経てシリンジから液体を押し出すようになっており、該外筒部はこのようなプランジャーを組み込みこんでおり、第2端部には該外筒部に注射針を取り付けるための連結部があり、該内腔の第2端部は貫通可能なクロージャーにより閉じられていること、
充填針を貫通可能なクロージャーに通し、該針を介して液体を該外筒部に充填するステップ、
続いて該クロージャーから充填針を抜き取るステップ、
を含む。
【0020】
好ましくは、前記方法は、第2端部側で外筒部に、導管を組み込んだペネトレーターを取り付けるさらなるステップを含み、それにより該ペネトレーターが該クロージャーを少なくとも部分的に貫通し、その結果該導管がクロージャーを通る流体連通をもたらすようになる。このステップは、ペネトレーターと外筒部との間、またはペネトレーターと、クロージャーを定位置に保持するクランプ部との間を、スナップ嵌めでかみ合わせるステップを含むのが好適である。
【0021】
好ましくは、クロージャーから充填針を抜き取った後に、例えば該クロージャーから充填針を抜き取るステップとペネトレーターを取り付けるステップとの間に、例えばヒートシールにより残存穿刺孔を閉じる(すなわち、穿刺孔の近傍のクロージャーの材料を熱で溶融または軟化させることにより、材料を融合させて穿刺孔を閉じる)更なるステップが存在する。ヒートシールは例えば穿刺箇所にレーザービームを照射することによるもの、および/または薄い貫通可能なメンブレンによって穿刺孔を閉じることによるもの、あるいは穿刺孔の付近でクロージャーにシール用物質をあてがうことによるものである。
【0022】
シリンジは、本発明の方法のためには、その内部(すなわち、外筒部、プランジャーおよびクロージャーにより囲まれた容積)を無菌状態で提供するのが好適である。充填針をクロージャーに通す前に、例えば照射を用いて(例えば電子線照射を用いて)クロージャーの外表面を滅菌するのが好適である。
【0023】
シリンジ、その外筒部、そのプランジャー、貫通可能クロージャー、ペネトレーター、シリンジの他の部品、およびそれらの要素をかみ合わせる方法の好適で好ましい特徴は、上記の通りである。
【0024】
好ましくは、本発明の方法および上記の先行するステップは、無菌環境で(例えば清浄空気の下方層流中で)実施する。こうした環境の使用は、医療用シリンジのための充填・組立方法では標準的である。典型的には、プランジャーとクロージャーが定位置にあるシリンジ外筒部は、コンベヤーラインに載せられて、充填ステーション近傍まで運ばれ、そこで充填針をクロージャーに通して外筒部に充填し、続いて取付けステーション近傍に運ばれて、そこでペネトレーターを取り付ける。充填ステーションと取付けステーションとの間には、シールステーションがあってもよく、そこでは例えばヒートシールによって既存の穿刺孔を閉じることができる。ヒートシールは、例えば穿孔部へのレーザービームの照射によるもの、および/または薄い貫通可能メンブレンにより穿刺孔をふさぐことによるもの、あるいは穿刺孔の近傍でクロージャーにシール用物質をあてがうことによるものである。
【0025】
本方法の効果は、シリンジの上記の利点から導かれる。例えば、充填針を用いてシリンジ外筒部に液体を導入した後に、シリンジに汚染物が混入する機会を少なくすること、および半透明の壁材料で作られた壁を通してシリンジの内容物を粒状物について検査することが可能であることであり、これは公知のシリンジ充填・組立方法を用いた場合よりも汚染のおそれを少なくする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
本発明を、単に例示として添付の図面を参照して、以下に説明する。
【0027】
図1および2では、シリンジ10の全体像が示されている。シリンジ10は、注射用の液体(示していない)を入れる縦長で管状のシリンジ外筒部11を含み、該外筒部は、長軸方向に向かい合って位置する第1開放端部11Aと第2開放端部11Bとを有する。外筒部11は慣用の半透明のポリマーから作られており、一般的な従来の構造をした内部プランジャー12を組み込んでいる。該プランジャーを第1端部11Aから第2端部11Bに向かう方向に動かすと、シリンジ10から第2端部11Bを経て液体が押し出される。外筒部11の第2端部11Bは、外筒部11の第2端部11Bの周囲にシールフランジ12を一体的に形成しており、フランジ12の表面はリング形のナイフエッジ型シールリッジ13を一体的に含んでいる。
【0028】
第2端部11Bは貫通可能クロージャー14により閉じられているが、該クロージャーは、外筒部の円形断面に対応してディスク形をした、厚さ約1mmのエラストマー材料壁で構成されており、かつ中央部の一体的に薄くなっている領域15を含んでいる。クロージャー14はフランジ12上に設置され、リング形シールリッジ13がフランジ12とクロージャー14との間のシールを強化する。
【0029】
クロージャー14はクランプ部16により外筒部の端部11Bに隣接する定位置に保持されるが、該クランプ部は、外筒部11の第2端部11Bのまわりにリング形カラーの形状をしていて、フランジ12に対してクロージャー14を押しつけるように該クロージャーにのしかかっており、そしてフランジ12の下側とスナップ嵌め方式でかみ合って(図に示すとおり)、外筒部11とクロージャー14との間に液密シールを形成するのに十分な圧力をクロージャー14に加えている。
【0030】
ペネトレーター17は、フランジ18により外筒部11に取り付けられる。フランジ18はクロージャー14を定位置に保持するクランプ部16とスナップ嵌め方式でかみ合っている。例えば、フランジ18のスカート部19が、クランプ部16の周囲の対応する溝110とかみ合う。ペネトレーター17のフランジ18は、フランジ12にのしかかるクロージャー14の表面とは反対側の該表面にのしかかるフランジ表面111を有し、また、フランジ18はフランジ表面111とクロージャー14との間のシールを強化するためのリング形のシールリッジ112を有する。
【0031】
ペネトレーター17は、管状内腔114(これに沿って液体が流れる)を有するほぼ管状の部材113により提供される導管を組み込んでいる。ペネトレーター17は、貫通可能クロージャー14を少なくとも部分的に貫通するように構成された下方(図に示すとおり)端部115を有し、端部115はほぼ円錐形の部材であり、内腔114が円錐の尖端近くの穴で開口している。ペネトレーター17の反対側の端部116は標準的な皮下用注射針(示していない)のための標準的な雄型コネクタの形に一体的に成形されている。端部116には安全栓117が取り付けられている。
【0032】
ペネトレーター17は、クロージャー14を貫通して、導管114が外筒部11の内部と外部の間に流体連通をもたらすことが分かる。クロージャー14は薄くした領域15で貫通可能であり、ここでクロージャーが貫通される。図3から分かるように、既に形成されている穿刺孔が薄い領域15に設けられているが、これはクロージャー14の自然な弾力により貫通の前には閉じている。かかる弾力により、穿刺孔の周囲のエラストマー材料が近寄って穿刺孔を閉ざすが、その穿刺孔は容易にペネトレーター17の端部115により再び開いた状態のままにされる。
【0033】
図4および図5では、本発明の別のシリンジ10の第2端部11Bに隣接する部分が長軸断面図として示されている。図1および図2と対応する部品には、対応する番号が付してある。図4および図5のシリンジでは、貫通可能クロージャー14は凸状ドーム形のクロージャー壁141を含み、その最上部は貫通可能領域15を有している。貫通可能領域15はクロージャー14のドーム部141の隣接部分と比較して薄くなっている。この領域15が一体的に薄くした領域である。クロージャー14はまた、外筒部11の内腔にプラグのように嵌まるスカート部142を含む。クランプ部16は、上向きのスカート161と、内向きのスナップ嵌めビード162とを含み、ペネトレーター17とスナップ嵌めでかみ合う。図5では、ビード162と定位置でスナップ嵌めによりかみ合ったペネトレーター17を有する、図4に示されたシリンジの部分が示されている。この構成では、ペネトレーター17自体の下方端部がクロージャー14にのしかかってクロージャー14を外筒部11の端部11Bに押しつけ、さらにクランプ部16によっても該クロージャーは端部11Bに押しつけられている。図5では、ペネトレーター17がクロージャー14のドーム部141を貫通しているのが見て取れるが、これに先立って充填針(図4および図5では示していない)がこのドーム部141をすでに通過していて穿刺孔(図4および図5では示していない)が存在する。
【0034】
図6では、シリンジ10の第1端部11Aの細部が示されている。バックストップ40が外筒部の第1端部11Aに設けられる。バックストップ40は外筒部11とスナップ嵌めでかみ合うスリーブ部41を含み、また外筒部11の内径よりも若干小さな内径を有するため、フランジ42が外筒部の内径の内側にやや突き出るようになっている。図6には、いかにしてプランジャー12がフランジ42にもたれかけて、外筒部11の開放端部11Aから出てしまわないようになっているかが示されている。バックストップ40は円錐形の入口43を有し、そしてプランジャー12はそれに対応して円錐形の先端121を有する。シリンジ10の第1開放端部11Bから離れた方のプランジャー12の端部は中央に凹部122を備え、これが開放端部11Aからの外筒部11への挿入の際にプランジャー12の圧縮と変形を補助し、かつシャフト(図6には示されていない。図1および図3では35として示される)をかみ合わせるのに役立つ。バックストップ40はまた、成形された基部44を有し、これが充填用のコンベヤーに外筒部11を載せるのを補助する。
【0035】
図3では、シリンジを組み立てるプロセスが模式的に示されている。
【0036】
図3.1では、シリンジ10は、上記と同様、注射用の液体を入れる縦長で管状のシリンジ外筒部11を含んで示され、ここで第2端部11Bは、薄くした中央領域15を有する貫通可能クロージャー14により閉じられ、クロージャー14はクランプ部16により外筒部11の定位置に保持されている。外筒部11の内部と、外筒部11の内部に接触している外筒部11、プランジャー12、およびクロージャー14の全表面は無菌である。無菌状態は、外筒部11、プランジャー12、クロージャー14、およびクランプ部16を無菌環境で製造し、かつ組み立てることにより達成される。
【0037】
図3.2では、中空の充填針31(角錐状の尖端を有する)がクロージャー14を通過し、液体32が針31から外筒部11に導入される。続いて針が抜き取られ、薄くした領域15を通る穿刺孔33が後に残される。クロージャー14に針31を通す直前に、クロージャー14の外表面とクランプ部16の隣接領域を、そこにある微生物を不活性化するのに十分なことが知られている強度の電子線に曝露することにより滅菌しておく。充填針31には外側に排気用の溝(示していない)が設けられており、この溝は、液体32が外筒部11に導入されて内部の空気に取って代わる際に、外筒部11内の空気を排出させる。
【0038】
図3.3では、ペネトレーター17(上記と同様)とクランプ部16(上記と同様)とのスナップ嵌め連結による、シリンジ10へのペネトレーター17の取り付けが示されている。ペネトレーター17の円錐状尖端115が、薄くした領域15を通る残存穿刺孔33でクロージャー14を貫通し、それにより導管114が外筒部11の内部と外部の間に流体連通をもたらす。安全栓117がペネトレーター17のコネクタ部113を閉じる。ペネトレーター17をクランプ部16に取り付ける前に、ペネトレーター17を滅菌して、そこを汚染している可能性のある微生物を不活性化する。
【0039】
図3.4は図1に対応するが、ここでは外筒部11に液体32が入っている。
【0040】
図3.5には、どのようにシリンジ10を用いるかが示されている。安全栓117は取り除かれ、標準的な皮下用注射針34がコネクタ116とかみ合わされる。ここでプランジャー12が第1端部11Aから第2端部11Bに向かう方向に動かされ、これによって、従来のシャフト35への手圧により、第2端部11Bを経て、導管114および針34を通って、シリンジから液体32が押し出される。
【0041】
図7では、シリンジに充填して、それを組み立てるプロセスが図4、図5および図6の外筒部を用いて模式的に示されている。すぐに気づくであろうが、図7.1、図7.2、図7.3、図7.4および図7.5は、それぞれ図3.1、図3.2、図3.3、図3.4および図3.5におおむね対応している。しかしながら、ステップ7.6が追加されており、このステップは充填針31がクロージャー14に通された後で、液体32がステップ7.2で外筒部11に導入される前に行われる。ステップ7.6では、プランジャー12が外筒部11に沿って第2端部11Bに向かってその最終的な使用位置にまで道具50(プランジャー12を上向きに押す)により移動されるが、このとき外筒部11内の空気は針31の排気溝(示していない)から逃散する。上向きに押される際に、プランジャー12は外筒部の無菌の内部に沿って動くだけなので、無菌状態に対するリスクを最小限に抑えていることに留意されたい。
【0042】
図3および図7に模式的に例示した方法は、無菌環境で、例えば清浄空気の下方層流中で、実施するのが好ましい。好ましくは、シリンジ10は図3および図7に示した工程のためにコンベヤー(示していない)に載せる。コンベヤーは、充填ステーション(示していない)(ここでクロージャー14に針が通される)、および取付けステーション(示していない)(ここでペネトレーター17がクランプ部16にスナップ嵌めで取り付けられる)を通って連続的にシリンジ10を運ぶ。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明のシリンジの長軸方向の断面図を示す。
【図2】図1のシリンジの第2端部の拡大図である。
【図3】本発明のシリンジ組立・充填方法を模式的に示す。
【図4】本発明の別のシリンジの一部分の長軸方向断面図を示す。
【図5】本発明の別のシリンジの一部分の長軸方向断面図を示す。
【図6】本発明の別のシリンジの一部分の長軸方向断面図を示す。
【図7】本発明の別のシリンジ組立・充填方法を模式的に示す。
【符号の説明】
【0044】
10 シリンジ全体
11 外筒部
11A 外筒部の第1端部
11B 外筒部の第2端部
12 プランジャー
121 プランジャーの円錐形端部
122 中央の凹部
13 シールリッジ
14 貫通可能クロージャー
141 クロージャーのドーム部
142 スカート部
15 一体的に薄くした領域
16 クランプ部
161 スカート
162 スナップ嵌めビード
17 ペネトレーター
18 フランジ
19 スカート部
110 溝
111 フランジ表面
112 シールリッジ
113 管状部材
114 管状内腔
115 ペネトレーター下方端部
116 反対側のペネトレーター端部
117 安全栓
31 充填針
32 液体
33 残存穿刺孔
34 皮下注射針
35 シャフト
40 バックストップ
41 スリーブ
42 フランジ
43 バックストップの円錐形入口
44 成形基部
50 道具

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体が充填されたシリンジを用意する方法であって、以下のステップ:
注射用の液体を入れる内腔を画定する管状のシリンジ外筒部を用意するステップ、ここで、該外筒部は長軸方向に向かい合って位置する第1端部と第2端部とを有し、第1端部はプランジャーを収容するために開放されていて、該プランジャーが該外筒部に沿って反対側の第2端部に向かって移動することにより、第2端部を経てシリンジから液体を押し出すようになっており、該外筒部はこのようなプランジャーを組み込みこんでおり、第2端部には該外筒部に注射針を取り付けるための連結部があり、該内腔の第2端部は貫通可能なクロージャーにより閉じられていること、
充填針を貫通可能なクロージャーに通し、該針を介して液体を該外筒部に充填するステップ、
続いて該クロージャーから充填針を抜き取るステップ、
を含む、上記方法。
【請求項2】
前記クロージャーから充填針を抜き取るステップの後に、導管を組み込んだペネトレーターを第2端部の側で前記外筒部に取り付けて、該ペネトレーターが少なくとも部分的に該クロージャーを貫通するようにし、その結果該導管が該クロージャーを通る流体連通をもたらすさらなるステップを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ペネトレーターが、ほぼ管状の部材から構成され、該管状部材の管状内腔に沿って液体を流すことができ、該ペネトレーターは貫通可能クロージャーを少なくとも部分的に貫通するように構成された一端部を有し、かつ皮下用注射針のためのコネクタを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記ペネトレーターと前記外筒部との間、または該ペネトレーターと、該外筒部の定位置に前記クロージャーを保持するクランプ部との間をスナップ嵌めでかみ合わせることを特徴とする、請求項2または3に記載の方法。
【請求項5】
前記クロージャーから充填針を抜き取るステップの後に、残存する穿刺孔を閉じるさらなるステップが存在することを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記クロージャーから充填針を抜き取るステップとペネトレーターを取り付けるステップとの間に、残存する穿刺孔を閉じるさらなるステップが存在することを特徴とする、請求項2〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
残存する穿刺孔を閉じるさらなるステップをヒートシールにより行うことを特徴とする、請求項5または6に記載の方法。
【請求項8】
前記シリンジを、前もってその内部を無菌状態としておくことを特徴とする、請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記充填針を前記クロージャーに通す前に、該クロージャーの外表面を滅菌することを特徴とする、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
充填針を前記クロージャーに通し、続いて前記プランジャーを第2端部に向かって外筒部に沿ってその最終的な使用位置にまで動かして、該外筒部内の空気を排気させることを特徴とする、請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
プランジャーとクロージャーが定位置にあるシリンジ外筒部をコンベヤーラインに載せ、該外筒部を充填ステーションに隣接する位置にまで運び、ここで充填針を該クロージャーに通して該外筒部に充填し、続いて該外筒部を取付けステーションに隣接する位置にまで運び、ここで前記ペネトレーターを取り付けることにより実施することを特徴とする、請求項1〜10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記充填ステーションと前記取付けステーションとの間に、残存する穿刺孔を閉じるシールステーションが存在することを特徴とする、請求項11に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2008−521532(P2008−521532A)
【公表日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−543792(P2007−543792)
【出願日】平成17年11月30日(2005.11.30)
【国際出願番号】PCT/EP2005/012949
【国際公開番号】WO2006/058786
【国際公開日】平成18年6月8日(2006.6.8)
【出願人】(305060279)グラクソスミスクライン バイオロジカルズ ソシエテ アノニム (169)
【Fターム(参考)】