説明

新規バクテリオファージおよびこれを含む抗菌組成物

本発明は、新規バクテリオファージに関し、さらに詳しくは、ネズミチフス菌(Salmonella typhimurium)、家禽チフス菌(Salmonella gallinarum)またはひな白痢菌(Salmonella pullorum)を特異的に死滅させることが可能なバクテリオファージ、前記バクテリオファージを有効成分として含むネズミチフス菌により誘発されるサルモネラ症とサルモネラ食中毒、家禽チフス菌により誘発される家禽チフス、ひな白痢菌により誘発されるひな白痢などの感染性疾病の予防または治療用組成物、前記バクテリオファージを有効成分として含む家畜用飼料、飲用水、洗浄剤および消毒剤に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規バクテリオファージに係り、さらに詳しくは、ネズミチフス菌(Salmonella typhimurium)、家禽チフス菌(Salmonella gallinarum)またはひな白痢菌(Salmonella pullorum)を特異的に死滅させることが可能なバクテリオファージ、前記バクテリオファージを有効成分として含むネズミチフス菌により誘発されるサルモネラ症とサルモネラ食中毒、家禽チフス菌により誘発される家禽チフス、ひな白痢菌により誘発されるひな白痢などの感染性疾病の予防または治療用組成物、前記バクテリオファージを有効成分として含む家畜用飼料、飲用水、洗浄剤および消毒剤に関する。
【背景技術】
【0002】
サルモネラ菌は、腸内菌とのグラム陰性の通性嫌気性細菌1属(条件無酸素菌である)で無芽胞性の桿菌であり、一般に周毛性鞭毛による運動性を有する。サルモネラ菌の遺伝子塩基構成成分をみれば、GC含有程度が50〜52%であって、大腸菌(Escherichia coli)および赤痢菌(Shigella)と類似である。サルモネラ菌属は、ヒトにだけでなく、各種家畜に感染して多様な疾病を起こす病原性微生物である。サルモネラ種としての腸炎菌(Salmonella enterica)は、血清学的区別による区分によってGallinarum、Pullorum、Typhimurium、Enteritidis、Typhi、Choleraesuis、derbyなどを含んだ多くの血清型(serovar)を有する(Bopp CA, Brenner FW, Wells JG, Strokebine NA. Escherichia, Shigella, Salmonella. In Murry PR, Baron EJ, et al eds Manual of clinical Microbiology. 7th ed. Washington DC American Society for Microbiology 1999;467-74 ; Ryan KJ. Ray CG (editors) (2004). Sherris Medical Microbiology (4th ed). McGraw Hill. ISBN 0-8385-8529-9)。これらのうち、家禽に特異的なGallinarumとPullorum、ヒトに特異的なTyphi、豚に特異的なSalmonella Choleraesuisとderby、および疾病を起こす対象動物が多様な人畜共通血清型の腸炎菌(Salmonella enterica)とネズミチフス菌(Salmonella typhimurium)などが疾病を起こして農家および消費者に莫大な被害を与えることもある。
【0003】
家禽におけるサルモネラ菌が起こす疾病の例として、家禽チフス(Fowl Typhoid、FT)がある。この家禽チフスは、家禽チフス菌(Salmonella gallinarum、以下「SG」という)を病原体とし、鳥および七面鳥などの鳥類に発生する急・慢性の伝染病であって、全ての日齢に現れる敗血症による高い斃死率が特徴である。最近、ヨーロッパ、南米、アフリカおよび東南アジアなどでは発生頻度が高いと報告されており、その被害が増加している。韓国では、1992年以来、家禽チフスの発生が主に褐色産卵鶏農場に対して全国的に拡散してきた(Kwon Yong-Kook. 2000 annual report on avian diseases. Information publication by National Veterinary Research & Quarantine Service. March, 2001; Kim Ae-Ran et al., The prevalence of pullorum disease-fowl typhoid in grandparent stock and parent stock in Korea, 2003, Korean J Vet Res(2006) 46(4): 347~353)。
【0004】
ひな白痢(pullorum disease)もサルモネラ菌を原因とする疾病であって、ひな白痢菌(Salmonella Pullorum、以下「SP」という。)によって発病される。ひな白痢は、日齢または季節を問わずに発病するが、初生雛時期に最も感受性が高いことが特徴である。去る1世紀の間、韓国を含んだ全世界にわたって、母鶏から卵への経卵伝染による1〜2週齢未満の日齢ひなに発生して被害が深刻であった疾病であって、去る80年代以後にその発生が非常に減少したが、近年90年代中盤以後さらに増加する趨勢にある(Kwon Yong-Kook. 2000 annual report on avian diseases. Information publication by National Veterinary Research & Quarantine Service. March, 2001; Kim Ae-Ran et al., The prevalence of pullorum disease-fowl typhoid in grandparent stock and parent stock in Korea, 2003, Korean J Vet Res(2006) 46(4): 347~353)。
【0005】
韓国では、1990年代以後、家禽チフトとひな白痢の発病が増加している趨勢にあり、濃家に大きい経済的損失を与えている。このため、2004年から弱毒化SG生菌ワクチンをブロイラー(broiler)に使用して家禽チフスに対して予防しようとしたが(Kim Ae-Ran et al., The prevalence of pullorum disease-fowl typhoid in grandparent stock and parent stock in Korea, 2003, Korean J Vet Res(2006) 46(4): 347~353)、ワクチンの効果に対する使用者の疑問が提起されており、産卵鶏(Layer)では経卵伝染のおそれで生菌ワクチンの使用が許可されていない。家禽チフスとは異なり、ひな白痢は現在商業化された予防策はない。よって、家禽チフトとひな白痢を予防することが可能な方法の模索が至急な実情である。
【0006】
一方、ネズミチフス菌(Salmonella typhimurium、以下「ST」という。)は、SGおよびSPとは異なり、宿主特異性なしで疾病を起こす人畜共通感染菌である(Zoobises Report; United Kingdom 2003)。
【0007】
STは、家禽、豚、牛などでサルモネラ症(salmonellosis)を誘発する。サルモネラ症は、サルモネラ菌により誘発される、家畜における急性または慢性の消化器伝染病であって、発熱、腸炎および敗血症を主な症状とし、肺炎、関節炎、 流産および乳腺炎も誘発するおそれがある。サルモネラ症は、全世界的に発生し、季節的には主に夏季に最も多く発病する(T.R. Callaway et al. Gastrointestinal microbial ecology and the safety of our food supply as related to Salmonella. J Anim Sci 2008.86:E163-E172)。牛の場合、一般に食欲不振、発熱、黄色下痢、および血の混じった粘液便などの症状が特徴であるが、子牛の場合は、急性感染の際に数日内に斃死し、妊娠中には血流を通じて胎牛に感染して敗血症により斃死して早流産が発生するおそれがある(www.livestock.co.kr)。豚の場合、急性敗血症型、急性腸炎型および慢性腸炎型に分けられる。急性敗血症型は2〜4ヶ月齢の子豚に発生し、発病2〜4日以内に大部分が斃死する。急性腸炎型は、肥育期に発病し、下痢、高熱、肺炎および神経症状を伴い、重症の場合には皮膚変色も現れる。慢性腸炎型は下痢を伴い続ける(www.livestock.co.kr)。
【0008】
STにより家禽、豚、牛にサルモネラ症が発病すると、治療薬剤で完治させることが非常に難しい。これはサルモネラ菌が各種薬剤に強い耐性を有し、臨床症状を示す間、一般な抗菌剤が浸透し得ない細胞内に寄生するため、抗生剤を含んで、STにより発病されるサルモネラ症を抑制するための効果的な方法が未だない(www.lhca.or.kr)。
【0009】
また、STは、家畜の疾病を誘発するうえ、家畜および製品を介してヒトに感染してサルモネラ食中毒を誘発することができる。感染した家畜(すなわち、肉類、家禽類、卵およびこれらの副産物)を食資材として使用した、煮込んでいない飲食を摂取したときに人体に伝染される。ヒトにサルモネラ食中毒が発病すると、一般に頭痛、発熱、激しい腹痛、下痢、悪心、嘔吐などの症状が生ずる。症状は、通常、感染6〜72時間後に現れて4〜7日間持続し、場合によっては一層長持ちすることもある(NSW+HEALTH. 2008.01.14.)。
【0010】
米国の疾病管理センター(CDC)の統計によれば、2005年〜2008年の間に発生したヒトの食中毒を起こす原因菌のうちサルモネラが16%を占めており、特にSTが18%にも至る。また、1973年〜1984年の間に発生したヒトのサルモネラ食中毒のうち、鶏が中間媒介体として作用した場合が5%の比率を示し、牛肉が19%、豚肉が7%、酪農製品が6%、七面鳥が9%の比率をそれぞれ示すと報告されたことがある。1974〜1984年に屠鳥処理段階で肉用鶏に対して微生物学的調査を行った結果によれば、サルモネラ菌が35%以上を占めることが報告された。また、1983年には、サルモネラ菌の存在は、鶏の屠体では50.6%、七面鳥では68.8%、グースでは60%、豚肉では11.6%、牛肉では1.5%であった。これと共に2007年の統計によれば、サルモネラは生家禽肉と生豚肉でそれぞれ5.5%、1.1%発見された。特にSTは大部分汚染した豚肉、家禽肉、牛肉に由来すると明らかにされた(www.cdc.gov (Centers for Disease Control and Prevention (CDC))。2002年にFAOとWHOが行ったリスク評価では、卵と家禽肉を介して伝播されたサルモネラ食中毒の発病率が家禽類のサルモネラ有病率と密接な関係にあると明らかにされた。すなわち、家禽類のサルモネラ有病率が減少すると、ヒトのサルモネラ食中毒の発病率も減少するという意味である(Salmonella control at the source; World Health Organization. International Food Safety Authorities Network (INFOSAN) Information Note No. 03/2007)。最近では、家畜だけでなく、ピーナッツ、ほうれん草、トマート、ピスタチオ、コショウ、クッキードウなどの多様な飲食材料からきたサルモネラ菌が起こす発病により、飲食物の安全に対する懸念が提起されている(Jane Black and Ed O’Keefe. Overhaul of Food Safety Rules in the Works. Washington Post Staff Writers Wednesday, July 8, 2009)。
【0011】
このようにサルモネラ菌による被害のため、ドイツではサルモネラ菌による感染が報告されるように義務付けられている(§6 and §7 of the German law on infectious disease prevention, Infektionsschutzgesetz)。1990年〜2005年にわたって20万件から約5万件に減少したと公式的に記録されたが、5名中の約1名がサルモネラ菌保菌者として推定されており、米国ではサルモネラ菌感染が約4万件程度毎年報告されている(en.wikipedia.org/wiki/Salmonella#cite_note-2)。
【0012】
したがって、家畜のサルモネラ症および家畜由来ヒトにおけるサルモネラ食中毒を起こすSTの統制方法の模索が至急な状況である。米国FDAとUSDAは米国内で100万件超過の病気を誘発する原因菌としてのサルモネラ菌を予防するための多様な措置を具体化した。これと共にデンマーク飼育場におけるサルモネラ菌管理費用に対する費用効果の分析結果、サルモネラ菌を管理することにより、2001年度に少なくとも1410万ドルを節約することができたという報告がある(Salmonella control at the source. World Health Organization. International Food Safety Authorities Network(INFOSAN) Information Note No. 03/2007)。
【0013】
一方、バクテリオファージは、特定の細菌にのみ感染して細胞の成長を統制する細菌特異的ウイルスであって、細菌宿主なしでは自己増殖が不可能である。バクテリオファージは、一本鎖或いは二本鎖のDNAまたはRNAが遺伝物質として核酸を構成しており、この核酸をタンパク質外皮で包んでいる単純な構造であって、二十面体の頭に尾がある形態、二十面体の頭に尾がない形態、およびフィラメント形態の3つの基本型構造に分けられる。バクテリオファージは、形態学的な構造と遺伝物質によって分類される。二本鎖DNAを遺伝物質として有し且つ二十面体の頭からなるバクテリオファージは、尾の模様によって収縮性尾形態のマイオウイルス(Myoviridae)、長い無収縮性尾形態のシフォビラーダ(Siphoviridae)、および短い無収縮性尾形態のポドウイルス(Podoviridae)に分類される。RNAまたはDNAを遺伝物質として有し且つ二十面体の頭に尾がないバクテリオファージは、頭の形態、頭の構成成分、および外皮有無によって分類される。最後に、DNAを遺伝物質として有するフィラメント形態のバクテリオファージは、大きさ、模様、外皮およびフィラメント構成成分によって分類される(H.W.Ackermann. Frequency of morphological phage descriptions in the year 2000; Arch Virol (2001) 146:843-857; Elizabeth Kutter et al. Bacteriophages biology and application; CRC press)。
【0014】
細菌を感染させるとき、バクテリオファージは細菌の表面にくっ付いて自分の遺伝物質を細胞内に注入した後、溶菌性(lytic)または溶原性(lysogenic)を示す。溶菌性の場合、バクテリオファージが細胞機構を用いて自分の構造物を作った後、新規バクテリオファージ粒子を放出させることにより、細胞を破壊または溶解する。溶原性の場合、自分の核酸を細菌宿主細胞の染色体に取り入れ、細菌を破壊することなく細胞と共に複製されるが、一定の条件になると溶菌性に転換される(Elizabeth Kutter et al. Bacteriophages biology and application. CRC press)。
【0015】
バクテリオファージの発見以後、これを感染疾病治療剤として用いるための研究が行われてきたが、広範囲な宿主範囲(broad target spectrum)を有する抗生剤の特性に比べて、宿主特異性(specific target spectrum)を有するバクテリオファージが競争から外されて関心を受けていない。ところが、抗生剤の誤・濫用により抗生剤耐性菌の問題が深刻になり、食品内の抗生剤残留による人体への悪影響に対するおそれが加えられている(Cislo, M et al. Bacteriophage treatment of suppurative skin infections. Arch Immunol.Ther.Exp. 1987.2:175-183; Kim sung-hun et al., Bacteriophage; New Alternative Antibiotics. biological research information center, BRIC)。特に、動物の成長促進のために飼料に添加する抗生剤(antimicrobial growth promoters、AGP)が抗生剤耐性誘発の主要原因であることが明らかにされることにより、AGPの使用を禁止する政策が立案され、ヨーロッパ連合では2006年から全てのAGPの使用が禁止されており、韓国では2009年に一部AGPの使用禁止が施行されており、向後2013〜2015年には全面禁止が予想されている。
【0016】
このような流れに基づき、バクテリオファージの研究がさらに関心を集めている。バクテリオファージを用いて大腸菌O157:H菌を統制するための7種のバクテリオファージが2002年に米国特許登録(米国登録特許第6,485,902号−Use of bacteriophages for control of Escherichia coli O157)された。また、Nymox社では、多様な種の微生物を統制する2種のバクテリオファージに対して2005年に米国特許登録(米国登録特許第6,942,858号)を受けた。バクテリオファージに関する研究が盛んに行われるにつれて、産業界ではバクテリオファージを用いた多様な商品を開発している。ヨーロッパのEBI food system社では、バクテリオファージを用いて、リステリア菌による食中毒を防止する食品添加剤製品Listerix−P100を開発して最初に米国FDAの承認を受けたとともに、同一概念のリステリア菌統制食品添加型バクテリオファージ製品LMP−102を開発してGRAS(Generally regarded as safe)の認証を受けた。また、2007年には、OmniLytics社により、屠畜過程中に大腸菌O157が牛肉製品を汚染させることを防ぐための洗浄液として、バクテリオファージを用いた製品が開発され、USD’s FSIS(USDA’s Food Safety and Inspection Service)から承認された。Clostridium sporogenes phage NCIMB 30008 and Clostridium tyrobutiricum phage NCIMB 30008は、それぞれ2003年と2005年にヨーロッパで飼料保存剤として登録され、飼料内の汚染したクロストリジウム菌の統制を目的とする製品として開発された。このような研究は、バクテリオファージが、抗生剤治療の難しい細菌、或いは畜産物などを汚染させる人畜共通伝染菌などを食品段階で統制することを可能にする研究が持続的に行われていることを示す。
【0017】
しかし、大部分のバクテリオファージに関する研究は、大腸菌、リステリア菌、クロストリジウム属菌を統制することに主力している。サルモネラ菌も人畜共通伝染菌であって、このサルモネラ菌に対する被害が減っていない。また、前述したが、STは様々な薬剤に対して耐性を有し易いため、現在韓国では伝染病予防法施行令(大統領令第16961号)、伝染病予防法施行規則(保健福祉部令第179号)および国立保健院職制(大統領令第17164号)によって耐性監視を行っている。よって、サルモネラ菌を統制することが可能なバクテリオファージの開発が必要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
本発明者らは、抗生剤の誤・濫用による抗生剤耐性菌の問題点、食品内の抗生剤の残留問題および過去抗生剤のように広範囲な宿主範囲の問題点を解決するために、家畜の主要疾病を起こすサルモネラ菌を選択的に死滅させることが可能な新規バクテリオファージを自然源から分離し、これらの形態的、生化学的および遺伝的特性を確認した。その結果、前記バクテリオファージが、これらの益菌には影響を与えることなくネズミチフス菌(salmonella typhimurium、ST)、家禽チフス菌(Salmonella gallinarum、SG)およびひな白痢菌(Salmonella pullorum、SP)を全て死滅させることができるうえ、耐酸性、耐熱性および耐乾性にも優れることを確認した。また、ネズミチフス菌により誘発される家畜サルモネラ症および家畜由来サルモネラ食中毒、および家禽における家禽チフス菌またはひな白痢菌により誘発される疾患、特に家禽チフスまたはひな白痢の予防または治療目的で用いることが可能な組成物、およびサルモネラ菌を統制することができる多様な製品、すなわち動物飼料添加剤、動物飲用水、畜舎消毒剤および肉加工洗浄剤にも適用可能であることを確認し、本発明を完成した。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明の目的は、ネズミチフス菌(salmonella typhimurium、ST)、家禽チフス菌(Salmonella gallinarum、SG)またはひな白痢菌(Salmonella pullorum、SP)に対して死滅能を有する新規バクテリオファージを提供することにある。
【0020】
本発明の他の目的は、前記バクテリオファージを有効成分として含むネズミチフス菌、家禽チフス菌またはひな白痢菌感染性疾病の予防または治療用組成物を提供することにある。具体的に、抗生剤として使用される予防または治療用組成物を提供することにある。
本発明の別の目的は、前記バクテリオファージを有効成分として含む家畜用飼料および飲用水を提供することにある。
【0021】
本発明の別の目的は、前記バクテリオファージを有効成分として含む消毒剤および洗浄剤を提供することにある。
【0022】
本発明の別の目的は、前記バクテリオファージを有効成分として含む組成物を用いて、ネズミチフス菌により誘発される家畜のサルモネラ症または家畜由来サルモネラ食中毒を予防または治療する方法を提供することにある。
【0023】
本発明の別の目的は、家禽における家禽チフス菌およびひな白痢菌感染性疾病としての家禽チフスまたはひな白痢を予防または治療する方法を提供することにある。
【発明の効果】
【0024】
本発明の新規バクテリオファージは、ネズミチフス菌、家禽チフス菌およびひな白痢菌に対して特異的死滅能を有し、耐酸性、耐熱性および耐乾性にも優れるという利点を持つ。よって、前記バクテリオファージは、ネズミチフス菌、家禽チフス菌またはひな白痢菌感染性疾病であるサルモネラ症、サルモネラ食中毒、家禽チフスまたはひな白痢の予防または治療用途として利用可能であるうえ、ネズミチフス菌、家禽チフス菌およびひな白痢菌の統制用途としても利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】図1はΦCJ2の電子顕微鏡写真である。形態学上、正二十面体の頭(isometric capside)および無収縮性の尾(long non-contractile tail)からなる形態型(morphotype)シフォビラーダ科(siphoviridae)に属する。
【図2】図2は分離されたバクテリオファージΦCJ2のSDS−PAGE結果である。バクテリオファージのタンパク質パターンを示すもので、約40kDaの主タンパク質が観察され、その他にも約65kDa、17kDaおよび15kDaのタンパク質が観察される(Invitrogen社のSee−blue plus 2 prestained−standard をマーカーとして使用した)。
【図3】図3は分離されたバクテリオファージΦCJ2のPFGE結果である。ΦCJ2の全体ゲノムサイズは約43kbpである(Bio−rad社の5kbp DNA size standardをサイズマーカーとして使用した)。
【図4】図4はΦCJ2のゲノムDNAの各プライマーセットを用いたPCR結果を示すもので(A;配列番号4と5のプライマーセットでPCR増幅、B;配列番号6と7のプライマーセットでPCR増幅、C;配列番号8と9のプライマーセットでPCR増幅)、各A、BおよびC laneは全て約1kbpのPCR産出物を持つ。
【図5】図5はバクテリオファージΦCJ2の耐酸性実験結果である。pH2.1、2.5、3.0、3.5、4.0、5.5、6.4、6.9、7.4、8.0および9.0における生存バクテリオファージの数を示す。対照群と比較して、pH2.5まではバクテリオファージΦCJ2の活性を失わないが、pH2.1では活性を完全に失う。
【図6】図6はバクテリオファージΦCJ2の耐熱性実験結果である。37、45、53、60、70および80℃で0、10、30、60および120分毎に時間別に装置しておいたときの生存バクテリオファージの数を示す。60℃で2時間まで露出されても活性を失わない。70℃以上では10分露出後に活性を完全に失う。
【図7】図7はバクテリオファージΦCJ2の耐乾性実験結果である。スピードバキュームドライヤー(speed vacuum dryer、SVD)を用いて60で120分間乾燥処理したものである。乾燥の後、元来のタイターと相対的な安定性を比較したとき、活性が減少しないことが分かる。
【図8】図8はバクテリオファージΦCJ2の単回経口投与毒性試験ラットの体重変化を示し(○;20mM Tris−HClと2mM MgClとの混合溶液を投与した雄対照群、●;1×10pfu濃度のΦCJ2を投与した雄実験群、■;20mM Tris−HClと2mM MgClとの混合溶液を投与した雌対照群、□;1×1012pfu濃度のΦCJ2を投与した雌実験群である)、実験結果、14日経過後にも対照群と比較して有意性のある体重変化の差異は観察されなかった。
【図9】図9はバクテリオファージΦCJ2の単回静脈投与毒性試験ラットの体重変化を示し(○:20mM Tris−HClと2mM MgClとの混合溶液を投与した雄対照群、●:1×10pfu濃度のΦCJ2を投与した雄実験群、■:20mM Tris−HClと2mM MgClとの混合溶液を投与した雌対照群、□:1×1012pfu濃度のΦCJ2を投与した雌実験群である。)、実験結果、14日経過後にも対照群と比較して有意性のある体重変化の差異は観察されなかった。
【発明を実施するための形態】
【0026】
一様態において、本発明は、ネズミチフス菌(Salmonella typhimurium)、家禽チフス菌(Salmonella gallinarum)またはひな白痢菌(Salmonella pullorum)に特異的死滅能を有する新規バクテリオファージに関する。
【0027】
本発明のバクテリオファージは、形態学上、正二十面体の頭(isometric capside)および無収縮性の尾(long non-contractile tail)からなる形態型(morphotype)シフォビラーダ科(siphoviridae)に属し、全体ゲノムサイズが43kbpであり、40kDaサイズのタンパク質を主要構造タンパク質として有することを特徴とする。
【0028】
具体的に、本発明のバクテリオファージは、サルモネラ菌のうち、ネズミチフス菌(Salmonella typhimurium)、家禽チフス菌(Salmonella gallinarum)およびひな白痢菌(Salmonella pullorum)を選択的に感染させ、他の種は感染させない種特異性を有する。
【0029】
本発明のバクテリオファージは、遺伝学的に全体ゲノムサイズが43kbpであり、配列番号1、2および3よりなる群から選ばれた一つまたはそれ以上の核酸分子を全体ゲノムの一部として含むことができ、好ましくは配列番号1〜3に示される核酸分子を全体ゲノムの一部として含む。
【0030】
本発明のバクテリオファージは、遺伝学的に配列番号4と5、配列番号6と7および配列番号8と9よりなる群から選ばれた一つまたはそれ以上のプライマーセットでPCRを行った場合、それぞれ約1kbp程度のPCR産出物を有する。好ましくは、前記プライマーセット全てでPCRを行った場合、それぞれ約1kbp程度のPCR産出物を有する。
【0031】
本発明において、用語「核酸分子」は、DNA(gDNAおよびcDNA)およびRNA分子を包括的に含む意味を有し、核酸分子における基本構成単位のヌクレオチドは、自然のヌクレオチドだけでなく、糖または塩基部位が変形された類似体(analogue)を含む概念である。
【0032】
本発明のバクテリオファージは、遺伝学的に主要構造タンパク質として40kDaサイズのタンパク質を有する。
【0033】
また、本発明のバクテリオファージは、耐酸性および耐熱性の生化学的特徴を有するが、pH2.5〜pH9.0の広いpH範囲で安定的に生存する耐酸性を有し、37℃〜60℃範囲の温度、すなわち高温でも安定的に生存することが可能な耐熱性を有する。また、高温乾燥の後にも安定的に生存する耐乾性を有する。このような耐酸性、耐熱性および耐乾性は本発明のバクテリオファージをST、SGおよびSP由来の家畜疾病または家畜由来ヒトに誘発できる疾病の予防および治療用として使用するにおいて、多様な温度およびpH範囲の適用を可能にする。
【0034】
本発明者は、屠鶏場近くの下水から試料を採取し、ST、SGおよびSPに対する特異的死滅能を有し且つ前述した特徴を有する本発明のバクテリオファージを同定し、これをバクテリオファージΦCJ2と命名し、2008年12月17日に韓国微生物保存センター(Korean Culture Center of Microorganisms、ソウル市西大門区弘済1洞361−221)に寄託番号第KCCM10976P号で寄託した。
【0035】
本発明の具体的な一実施例によれば、屠鶏場近くの下水から試料を採取し、試料から、宿主細胞STを溶菌するバクテリオファージを分離し、これらがSGおよびSPを特異的に溶菌させることができることを確認した(表1)。また、これらのバクテリオファージ(ΦCJ2)を電子顕微鏡によって形態学的に観察した結果、形態型(morphotype)シフォビラーダ科(siphoviridae)に属することを確認した(図1)。
【0036】
また、ΦCJ2のタンパク質パターンを分析した結果、バクテリオファージの主要構造タンパク質として約40kDaのタンパク質を含むことを確認した(図2)。
【0037】
また、ΦCJ2の全体ゲノムサイズを分析した結果、約43kbpのサイズを持つことを確認した(図3)。これらの遺伝的特性を分析した結果、配列番号1〜3の核酸分子を全体ゲノムの一部として含むことを確認し(実施例6)、前記配列番号1〜3を基にして他種間の類似性を比較した結果、現在まで知られているバクテリオファージとの類似性が非常に低いため、新規バクテリオファージであることを確認した(表2)。遺伝的特性をさらに具体的に分析した結果、ΦCJ2に特異的なプライマーセット(primer set)、具体的に、配列番号4と5、配列番号6と7、および配列番号8と9のプライマーセットでPCRを行ったとき、特定サイズのPCR産出物であるそれぞれ約1kbpの産出物が得られることを確認した(図4)。
【0038】
また、ΦCJ2をSGとSPに感染させたとき、溶菌斑(phage plaqueであって、soft agarで一つのバクテリオファージによって宿主細胞が溶菌されて形成されるクリアゾーン(clear zone))の大きさおよび濁度などが同一であった。
【0039】
また、ΦCJ2の安定性を多様なph範囲および温度で調査した結果、pH2.5〜9.0(図5)および37℃〜60℃の広い範囲で安定的に生存(図6)するうえ、高温乾燥の際に60℃で120分間も安定性を維持することを確認した(図7)。これは、本発明のバクテリオファージΦCJ2を、サルモネラ菌を統制することができる多様な製品へ適用することが容易であることを意味する。
【0040】
他の様態において、本発明は、前記バクテリオファージを有効成分として含むネズミチフス菌(Salmonella typhimurium)、家禽チフス菌(Salmonella gallinarum)およびひな白痢菌(Salmonella pullorum)よりなる群から選ばれた一つまたは2つ以上のサルモネラ菌により誘発された感染性疾病の予防または治療用組成物に関する。
【0041】
好適な一実施態様として、前記治療用組成物は抗生剤を含むことができる。
【0042】
本発明のバクテリオファージは、ネズミチフス菌(Salmonella typhimurium)、家禽チフス菌(Salmonella gallinarum)およびひな白痢菌(Salmonella pullorum)を特異的に死滅させることが可能な抗菌活性を有するので、これらの菌により誘発される疾病を予防または治療するための目的で利用できる。好ましくは、ネズミチフス菌による疾病としてはたとえばサルモネラ症またはサルモネラ菌食中毒を挙げることができ、家禽チフス菌による疾病としてはたとえば家禽チフスを挙げることができ、ひな白痢菌による疾病としてはたとえばひな白痢を挙げることができるが、これに限定されない。
【0043】
本発明において、用語「サルモネラ症」とは、サルモネラ菌感染により発熱頭痛、下痢、嘔吐などを伴う症状を総称する。すなわち、サルモネラ菌属の細菌により起る疾病を総称する。サルモネラ症は、腸チフスなどの症状を示す敗血症型と食中毒の急性胃腸炎型に大別され、腸炎、食中毒、急性菌血症などが含まれる。
【0044】
本発明において、用語「予防」とは、組成物の投与により疾病を抑制させ或いは発病を遅延させる全ての行為を意味し、「治療」とは、組成物の投与により前記疾病の症状が好転されるか、或いは前記疾病が抑制または軽減および有利に変更される全ての行為を意味する。
【0045】
本発明の前記組成物は、5×10〜5×1012pfu/mlのΦCJ2を含み、好ましくは1×10〜1×1010pfu/mlのΦCJ2を含む。
【0046】
本発明の前記組成物は、薬学的に許容される担体をさらに含むことができ、担体と共に製剤化されて食品、医薬品および飼料添加剤として提供できる。
【0047】
本発明において、用語「薬学的に許容される担体」とは、生物体を刺激せず、投与化合物の生物学的活性および特性を阻害しない担体または希釈剤をいう。液状溶液に製剤化される組成物において許容される薬剤学的担体としては、滅菌および生体に適した、食塩水、滅菌水、リンガー液、緩衝食塩水、アルブミン注射溶液、デキストロース溶液、マルトデキストリン溶液、グリセロール、エタノール、およびこれらの成分の少なくとも一つを混合して使用することができ、必要に応じて抗酸化剤、緩衝液、静菌剤などの他の通常の添加剤を添加することができる。また、希釈剤、分散剤、界面活性剤、結合剤よび潤滑剤を付加的に添加して、例えば水溶液、懸濁液、乳濁液などの注射用剤形、丸薬、カプセル、顆粒または錠剤に製剤化することができる。
【0048】
本発明の予防または治療用組成物は、疾患部位への塗布または噴霧方法で用いることができ、その他にも経口投与または非経口投与によって投与することもできる。非経口投与の場合、静脈内投与、腹腔内投与、筋肉内投与、皮下投与または局部投与を用いて行うことができる。
【0049】
本発明の前記組成物の適切な塗布、噴霧および投与量は、製剤化方法、投与方式、対象となる動物および患者の年齢、体重、姓、疾病症状の程度、飲食、投与時間、投与経路、排泄速度および反応感応性などの要因によって異なる。通常の熟練した医師または獣医師は、目的の治療に効果的な投与量を容易に決定および処方することができる。
【0050】
本発明の組成物を有効成分として含む経口投与剤形としては、例えば錠剤、トローチ剤、ローゼンジ(lozenge)、水溶性または油性懸濁液、調製粉末または顆粒、エマルジョン、ハードまたはソフトカプセル、シロップ、またはエリキシル剤に製剤化することができる。錠剤およびカプセルなどの剤形に製剤化するために、ラクトース、サッカロース、ソルビトール、マンニトール、澱粉、アミロペクチン、セルロースまたはゼラチンなどの結合剤、第二リン酸カルシウムなどの賦形剤、コーンスターチまたはサツマイモ澱粉などの崩壊剤、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、フマル酸ステアリルナトリウムまたはポリエチレングリコールワックスなどの潤滑油を含むことができ、カプセル剤形の場合、前述した物質以外にも、脂肪油などの液体担体をさらに含むことができる。
【0051】
本発明の組成物を有効成分として含む非経口投与用剤形としては、皮下注射、静脈注射または筋肉内注射などの注射用形態、坐剤注入方式または呼吸器を介して吸入可能にするエアロゾル剤などのスプレイー用に製剤化することができる。注射用剤形に製剤化するためには、本発明の組成物を安定剤または緩衝剤と共に水で混合して溶液または懸濁液に製造し、これをアンプルまたはバイアルの単位投与用に製剤化することができる。エアロゾル剤などのスプレイー用に剤形化する場合、水分散された濃縮物または湿潤粉末が分散するように推進剤などが添加剤と共に配合できる。
【0052】
本発明において、用語「抗生剤」は、薬剤の形で動物に提供されて菌を死滅させることが可能な製剤を意味し、防腐剤、殺菌剤および抗菌剤を総称する。前記動物はヒトを含む哺乳動物である。本発明のバクテリオファージは、既存の抗生剤に比べてサルモネラ菌に対する特異性が非常に高いので、益菌は死滅させず、特定病原菌のみを死滅させることができ、薬物耐性または抵抗性を誘導しないため、既存の抗生物質に比べて製品寿命が長い新規抗生剤として利用できる。
【0053】
本発明の具体的な一実施例によれば、ラットにおける安定性評価のために単回経口投与毒性、静脈注射毒性および腸内正常細菌毒性に対する試験を行い、1×1012pfu濃度のΦCJ2を単回経口投与して毒性試験を行うとき、特異的な臨床症状または死亡個体は発生しておらず(表4および表5)、1×1012pfu濃度のΦCJ2を静脈注射して毒性試験を行うとき、前述と同様に特異的な臨床症状または死亡個体は発生しておらず(表6および表7、図9)、1×1011pfu/ml濃度のΦCJ2を段階希釈して腸内正常細菌毒性試験を行うとき、ΦCJ2の最高濃度でも腸内細菌の成長が抑制されていないことを確認し(表8)、安定性があることを確認した。
【0054】
また、ΦCJ2をSG感染鶏の飼料として使用した実験によって、ΦCJ2投薬群が無投薬群より有意的に高い防御率を示すことを確認し(表9)、予防および治療の可能性があることを確認した。
【0055】
別の様態において、本発明は、前記バクテリオファージを有効成分として含む家畜用飼料または飲用水に関する。
【0056】
畜産業および水産業で使用される飼料添加用抗生剤は予防目的で使用されているが、予防目的の抗生剤投与は、耐性菌の発生可能性を高め、家畜に残留する抗生剤がヒトに伝達される可能性があって問題である。抗生剤が肉類を介して人体に吸収されると、抗生剤耐性を誘発して疾病の拡散を招くおそれもある。また、飼料に混せて食わせる抗生剤の種類が多い。これは多剤耐性菌発生確率が高まるという問題点がある。よって、さらに自然親和的でありながら既存抗生剤使用時の問題を解決する新規の飼料添加剤用抗生物質として本発明の前記バクテリオファージを用いることができる。
【0057】
本発明の家畜用飼料は、バクテリオファージを飼料添加剤の形で別途に製造して飼料に混合させるか、或いは飼料製造の際に直接添加させて製造することができる。本発明の飼料内バクテリオファージは、液状または乾燥状態であり、好ましくは乾燥粉末形態である。乾燥方法は、通風乾燥、自然乾燥、噴霧乾燥および凍結乾燥が使用できるが、これに限定されない。本発明のバクテリオファージは粉末形態で飼料重量の0.05〜10重量%、好ましくは0.1〜2重量%の成分比で混合できる。また、家畜用飼料は、本発明のバクテリオファージの他にも、飼料の保存性を高めることが可能な通常の添加剤をさらに含むことができる。
【0058】
本発明の飼料添加剤には、非病原性の別の微生物がさらに添加できる。添加できる微生物としては、タンパク質分解酵素、脂質分解酵素および糖転換酵素を生産することが可能なバチルスサブチリス(Bacillus subtilis)などの枯草菌、牛の胃などの嫌気的条件で生理的活性および有機物分解能のある乳酸菌属(Lactobacillus sp.)、家畜の体重を増加させ、牛乳の産乳量を増やすうえ、飼料の消化吸収率を高めるという効果を示すアスペルギルスオリザエ(Aspergillus oryzae)などの糸状菌(J AnimalSci 43: 910-926, 1976)、およびサッカロミセスセレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)などの酵母(J Anim Sci 56:735-739, 1983)よりなる群から選択できる。
【0059】
本発明におけるΦCJ2を含む飼料は、植物性としては穀物類、堅果類、食品加工副産物類、藻類、繊維質類、製薬副産物類、油脂類、澱粉類、粗びき粉類、穀物副産物類などがあり、動物性としてはタンパク質類、無機物類、油脂類、鉱物性類、油脂類、単細胞タンパク質、動物性プランクトン類、残りの飲食物などがあり、これに限定されない。
【0060】
本発明におけるΦCJ2を含む飼料添加剤には、品質低下を防止するために添加する結合剤、乳化剤、保存剤などがあり、効用増大のために飼料に添加するアミノ酸剤、ビタミン剤、酵素剤、生菌剤、香味剤、非タンパク窒素化合物、ケイ酸塩剤、緩衝剤、着色剤、抽出剤、オリゴー糖などがあり、その他にも、飼料混合剤などをさらに含むことができ、これに限定されない。
【0061】
また、飲用水に混合して供給することにより、持続的に腸内サルモネラ菌の数を減少させることができ、サルモネラ清浄家畜の生産を模索することができる。
【0062】
別の様態において、本発明は、前記バクテリオファージを有効成分として含む消毒剤または洗浄剤に関する。
【0063】
前記バクテリオファージを有効成分として含む消毒剤は、食中毒予防などの食品衛生にその活用価値が高い。具体的に、食品産業でサルモネラ菌汚染防止用消毒剤および食品添加剤として活用でき、畜産業分野でもサルモネラ菌清浄畜産物の生産に活用できる。また、生活下水処理場で放流水内のサルモネラ除去のための撒布にも活用でき、家畜の活動領域、家畜屠畜場、家畜斃死地域、家畜調理場所および調理設備に使用でき、場所はこれに限定されない。
【0064】
また、前記バクテリオファージを有効成分として含む洗浄剤は、生きている家畜の皮膚表面、毛および身体の各部位に付いており或いは感染可能なサルモネラの除去に使用できる。
【0065】
別の様態において、本発明は、前記ネズミチフス菌(Salmonella typhimurium)、家禽チフス菌(Salmonella gallinarum)またはひな白痢菌(Salmonella pullorum)に特異的死滅能を有するバクテリオファージを用いてネズミチフス菌、家禽チフス菌またはひな白痢菌感染性疾病を治療する方法に関する。
【0066】
別の様態において、本発明は、前記ネズミチフス菌、家禽チフス菌またはひな白痢菌感染性疾病の予防または治療用組成物を用いてネズミチフス菌、家禽チフス菌またはひな白痢菌感染性疾病を治療する方法に関する。
【0067】
本発明の前記組成物は、薬学的製剤の形で動物に投与され、或いは家畜の飼料または飲用水に混合してこれを摂食させる方法によって投与されることが可能であり、好ましくは飼料添加剤の形で飼料に混合されて投与できる。
【0068】
本発明の組成物の投与経路は、目的組織に到達することが可能な限りは、経口または非経口の多様な経路を介して投与でき、具体的に、口腔、直腸、局所、静脈内、腹腔内、筋肉内、動脈内、経皮、経鼻、吸入などを介して通常の方式で投与できる。
【0069】
本発明の治療方法は、本発明の組成物を薬学的有効量で投与することを含む。適切な総1日使用量が正しい医学的判断範囲内において処置医によって決定できることは、当業者には自明である。特定の患者に対する具体的な治療的有効量は、達成しようとする反応の種類と程度、患者の年齢、体重、一般健康状態、性別および食餌、投与時間、投与経路および組成物の分泌率、治療期間、具体的組成物と共にまたは同時に使用される薬物を始めとした多様な因子、および医薬分野によく知られている類似因子に応じて異ならせて適用することが好ましい。
【0070】
以下、実施例によって本発明をさらに詳細に説明する。ところが、これらの実施例は本発明を例示的に説明するためのもので、本発明の範囲を限定するものではない。
【0071】
〔発明の様態〕
〔実施例1:サルモネラ菌に感染するバクテリオファージの分離〕
(1−1.バクテリオファージのスクリーニングおよび単一バクテリオファージの分離)
屠鶏場および近くの下水終末処理場の試料50mlを遠心分離管に移して4000rpmで10分間遠心分離した後、上澄み液を0.45μmのフィルターを用いて濾過した。150μLのST振とう培養液(OD600=2)と2mLの10×Luria−Bertani培地(以下「LB培地」という。トリプトン10;酵母抽出液5g;NaCl10g;最終体積が1Lとなるように)に18mLの試料濾過液を混ぜた。これを37℃で18時間培養した後、培養液を4000rpmで10分間遠心分離し、その上澄み液を0.2μmのフィルターを用いて濾過した。LBプレートに3mLの0.7%寒天(w/v)、150μLのST振とう培養液(OD600=2)を混ぜ注いで固めた後、その上に10μLの試料培養濾過液を滴下して37℃で18時間培養した(0.7%寒天を用いて固体培地上に付着するものをtop−agarとし、top−agarで成長する宿主細胞を用いてバクテリオファージが溶菌することを観察する方法をソフトアガオーバーレイ(soft agar overlay)方法と定義する)。
【0072】
溶菌の起った試料培養濾過液を適当に希釈して150μLのST振とう培養液(OD600=2)と混ぜた後、ソフトアガオーバーレイを行って単一溶菌斑を獲得した。一つの溶菌斑が一つのバクテリオファージからなっていると見なすから、単一バクテリオファージを純粋分離するために一つの溶菌斑を取って400μLのSM溶液(NaCl、5.8g;MgSO7HO、2g;1M Tris−Cl(pH7.5)、50mL;HO、最終体積が1Lとなるように)に入れて4時間室温に静置して単一バクテリオファージを純粋分離した。分離されたバクテリオファージを大量確保するために単一バクテリオファージ溶液の上澄み液100μLを取った後、12mLの0.7%寒天および500μLのST振とう培養液と混合して、直径150mmのLB培地でソフトアガオーバーレイを実施した。完全に溶菌の起ったプレートに15mLのSM溶液を注いだ後、4時間室温で若干振とうしてトップアガ内のバクテリオファージを流出させた。バクテリオファージの流出したSM溶液を回収した後、最終体積の1%となるようにクロロホルムを添加して10分間よく混ぜた後、4000rpmで10分間遠心分離した。ここで、得られた上澄み液を0.2μmのフィルターで濾過して冷蔵保管した。
【0073】
(1−2.バクテリオファージの大量培養)
選別されたバクテリオファージをSTを用いて大量培養した。STを振とう培養して1.5×1010cfu(colony forming unit)となるように分注して4000rpmで10分間遠心分離した後、これを4mLのSM溶液に再浮遊させた。ここに7.5ラ10pfu(plaque forming unit)のバクテリオファージを接種してMOI(multiplicity of infection)=0.005に作った後、37で20分間静置した。これを150mLのLB培地が入ったフラスコに接種した後、5時間37℃で培養した。最終体積の1%となるようにクロロホルムを添加し、20分間振とうした。DNaseIとRNaseAをそれぞれ最終濃度1μg/mLとなるように添加し、30分間37℃で静置させた。最終濃度がそれぞれ1Mと10%(w/v)になるようにNaClおよびPEG(polyethylene glycol)を入れた後、4で3時間追加静置させた。4、12000rpmで20分間遠心分離した後、上澄み液を除去した。5mLのSM溶液に沈殿物を再浮遊させた後、20分間室温に静置させた。ここに4mLのクロロホルムを添加した後、よく攪拌し、4℃、4000rpmで20分間遠心分離した。上澄み液を0.2μmのフィルターで濾過して、グリセロール密度勾配法(密度:40%、5%グリセロール)を用いた超遠心分離(35,000rpm、1時間、4℃)によってバクテリオファージを精製し、これをバクテリオファージΦCJ2と命名した。精製したΦCJ2は300μLのSM溶液に再浮遊した後、タイターを測定した。前記ΦCJ2は2008年12月17日に韓国微生物保存センター(Korean Culture Center of Microorganisms、ソウル市西大門区弘済1洞361−221)に寄託番号第KCCM10976P号で寄託した。
【0074】
〔実施例2:ΦCJ2のサルモネラ菌感染有無の調査〕
選別されたバクテリオファージがST以外に他種のサルモネラ菌に対して溶菌活性を示すかを検査するために、他種のサルモネラ菌に交差感染を試みた。その結果、ΦCJ2はSE(Salmonella enterica Serotype Enteritis)、SC(Salmonella enterica Serotype Choleraesuis)、SD(Salmonella enterica Serotype Derby)およびSA(Salmonella enterica subsp. Arizonae)、SB(Salmonella enterica subsp. Bongori)には感染していない。ST ATCC14028菌株以外に他のST菌株に対して交差感染を実施した場合、SGとSPとは異なり、溶菌率が40%未満であることを確認し、これによりヨCJ2はSGおよびSP特異的バクテリオファージであると言える(実施例11参照)。その結果を表1に示した。SGを宿主として用いて生産したヨCJ2は、STで生産されたものと同一の溶菌斑模様、形成された溶菌の透明性程度、タンパク質パターンおよびゲノムサイズを示した。
【0075】
【表1】

【0076】
〔実施例3:ΦCJ2の形態観察〕
精製されたΦCJ2を0.01%のゼラチン溶液に希釈した後、2.5%のグルタルアルデヒド溶液で固定した。これをcarbon−coated mica plate(ca.2.5×2.5mm)に滴下して10分間適応させた後、滅菌蒸留水で洗浄した。カーボンフィルムを銅グリッド(copper grid)に挿入して4%の酢酸ウラニル(uranyl acetate)で30〜60秒間染色し、乾燥を行った後、透過電子顕微鏡(JEM−1011トランスミッションエレクトロンマイクロスコープ(transmission electron microscope)、80kV、倍率×120,000〜×200,2000)で検鏡した。その結果、分離されたΦCJ2の形態は図1のとおりであり、形態学上、正二十面体の頭と無収縮性の尾からなる形態型シフォビラーダ科(siphoviridae)に属することが分かった。
【0077】
〔実施例4:ΦCJ2のタンパク質パターン分析〕
1011pfu/mLタイターの精製されたΦCJ2溶液15μLと5X SDS試料溶液3μLを混ぜた後、5分間沸騰した。4〜12%のNuPAGE Bis−Tris(Invitrogen社)ゲルでΦCJ2の全体タンパク質を展開した。クマシーブルー染色溶液を用いてゲルを1時間常温で染色した。その結果、タンパク質パターンは、図2のように約40kDaの主要タンパク質が観察され、その他にも約65kDa、17kDa、および15kDaのタンパク質が観察されたことを示す。
【0078】
〔実施例5:ΦCJ2の全体ゲノムDNAサイズの分析〕
超遠心分離によって精製されたΦCJ2のゲノムDNAを抽出した。具体的に精製されたΦCJ2培養液にEDTA(ethylenediaminetetraacetic acid(pH8.0))、プロテイナーゼK、およびSDS(sodium dodecyl sulfate)をそれぞれ最終濃度20mM、50μg/mL、および0.5%(w/v)となるように添加した後、50で1時間静置した。同量のフェノール(pH8.0)を添加し、よく混ぜた後、室温で12000rpmで10分間遠心分離した。上澄み液を収得して同量のPC(フェノール:クロロホルム=1:1)を添加し、よく混ぜた後、室温で12000rpmで10分間遠心分離した。その後、上澄み液を収得して同量のクロロホルムをよく混ぜた後、室温で12000rpmで10分間遠心分離した。上澄み液を収得した後、3Mの酢酸ナトリウムを全体体積の1/10で混ぜ、2倍量の冷たい95%のエタノールを添加した後、−20℃で1時間静置させた。しかる後に、0℃で10分間12000rpmで遠心分離した後、上澄み液を完全に除去し、しかる後に、底部のDNAを50μLのTE(Tris−EDTA(pH8.0))溶液に溶かした。抽出したDNAを10倍希釈してOD260で吸光度を測定することにより濃度を測定した。全体ゲノムDNA1μgを1%PFGE(pulse-field gel electrophoresis)アガロースゲルにロードした後、BIORAD PFGEシステムの7番プログラム(size range 25-100 kbp; switch time ramp 0.4-2.0 seconds, linear shape; forward voltage 180 V; reverse voltage 120 V)を用いて常温で20時間展開した。ΦCJ2のゲノムDNAのサイズは図3に示すように約43kbpであった。
【0079】
〔実施例6:ΦCJ2の遺伝的特性分析〕
分離したΦCJ2の遺伝的特性を調べるために、ΦCJ2のゲノムDNA5μgをEcoRV制限酵素で同時に処理した。ベクターとしては、pCL(promega社)をSmaI制限酵素で切断した後、CIP(calf intestinal alkaline phosphatase)処理したものを使用した。gDNA切片とベクターの量が3:1となるように反応条件を合わせて混ぜた後、16で5時間ライゲーションを行った。これを、大腸菌の一種であるDH5瘢ラ胞に導入させた。このように形質転換された転換体をスペクチノマイシンおよびX−gal含有のLB平板培地にプレートし、通常の青白コロニー選別法によって3つのコロニーを選別した。選別されたコロニーをスペクチノマイシンの含まれた培養培地で16時間振とう培養した。ここで、プラスミド精製キット(Promega社)を用いてプラスミドを抽出した。このプラスミドのクローニング有無をM13フォワードとM13リバースプライマーセットを用いてPCRによって確認し、挿入断片のサイズが1kbp以上となるものを選んでM13フォワードとM13リバースプライマーセットを用いて塩基配列を分析した。こうして得た遺伝子塩基配列が配列番号1、2および3に示されており、それぞれの大きさは約3.1kbp、1.7kbpおよび800bp程度である。その解読塩基配列の類似性をNCBI blastxプログラムを用いて分析した結果が下記表2に示されている。
【0080】
表2に示すように、ΦCJ2は、配列番号1の解読塩基配列の前部はサルモネラファージKS7のBPKS7gp07およびSETP3の外殻タンパク質と約90%の相同性を有し、配列番号1の解読塩基配列の後部もサルモネラファージKS7、ファージSET3のBPKS7gp04およびSPSV3_gp41とそれぞれ75%、66%の相同性を有する。また、配列番号2の解読塩基配列の前部はサルモネラファージSETP3の機能未知タンパク質(hypothetical protein)SPSV_gp02と91%の相同性を示し、配列番号2の解読塩基配列の後部もサルモネラファージSETP3のテールコンポナントプロテイン(tail component protein)と94%の相同性を示した。配列番号3の解読塩基配列もサルモネラファージKS7のBPKS7gp41、ファージSETP3のDNAポリメラーぜと69%の相同性を有することが分かった。配列番号1、2および3のDNA塩基配列をNCBI blastnプログラムを用いて分析した結果を考察すると、サルモネラファージKS7、SETP3と約60〜70%の相同性があることが分かった。しかし、完璧に同一のものではないので、ΦCJ2はサルモネラ菌に感染する新規バクテリオファージと判断された。
【0081】
【表2】

【0082】
〔実施例7:ΦCJ2特異的プライマー塩基配列の製作〕
ΦCJ2を同定するために、ΦCJ2特異的プライマーを配列番号1、2および3に基づいて製作した。配列番号4と5、配列番号6と7、および配列番号8と9をそれぞれプライマーセットとしてPCRを行った。0.1μgのバクテリオファージ全体ゲノムDNAと0.5pmolのプライマーをpre−mix(Bioneer社)に添加し、最終体積が20μLとなるように合わせた。これを変性(denaturation);94℃1分、アニーリング(annealing);53℃で1分、重合(polymeration);72℃で1分の条件で30サイクルPCRを行った。その結果、配列番号4と5、配列番号6と7、および配列番号8と9をプライマーセットとして用いた場合、全て約1kbpのPCR産物を得た。その結果を図4に示した。
【0083】
〔実施例8:バクテリオファージのpHによる安定性の調査〕
ΦCJ2が鶏の胃内の低いpHで安定性を保有するかを確認するために、多様なpH範囲(pH2.1、2.5、3.0、3.5、4.0、5.5.6.4、6.9、7.4、8.2および9.0)で安定性の調査実験を行った。多様なpH溶液(酢酸ナトリウム溶液(pH2.1、pH4.0、pH5.5およびpH6.4)、クエン酸ナトリウム溶液(pH2.5、pH3.0およびpH3.5)、リン酸ナトリウム溶液(pH6.9およびpH7.4)、およびトリス溶液(Tris−HCl(pH8.2およびpH9.0)をそれぞれ2Mに製作した。100μLのpH溶液と同量の1.0×1011pfu/mlタイターのバクテリオファージ溶液を混ぜて各pH溶液の濃度が1Mとなるようにした後、1時間常温で静置した。これらを段階希釈し、ソフトアガオーバーレイ方法を用いて各段階の希釈液を10μLずつ滴下した後、37℃で18時間培養して溶菌有無によってタイターを測定した。元来のΦCJ2のタイターと比較してpH変化によるタイター変化によって相対的安定性を確認したが、実験結果、pH2.5までは活性を失わず非常に安定的であることが分かった。しかし、pH2.1では活性を失った。その結果を図5に示した。
【0084】
〔実施例9:バクテリオファージの温度による安定性の調査〕
バクテリオファージの製品剤形のうち、飼料添加剤として用いる場合、バクテリオファージの剤形過程で発生する熱に対する安全性を確認するための実験を行った。1.0×1011pfu/mLタイターのΦCJ2の溶液200μLを37℃、45℃、53℃、60℃、70℃および80℃の温度条件下でそれぞれ0分、10分、30分、60分および120分静置させた。処理した実験培養液を段階希釈し、ソフトアガオーバーレイ方法を用いて各段階の希釈液を10μLずつ滴下した後、37℃で18時間培養して溶菌有無によってタイターを測定した。元来のΦCJ2のタイター、温度および露出時間の変化によるて相対的安定性を確認したが、60℃で2時間まで露出されても活性を多く失わないことが分かった。しかし、70℃以上では10分間露出の後に活性が急激に減少するが、一定の比率活性を維持した。その結果を図6に示した。
【0085】
〔実施例10:バクテリオファージの乾燥に対する安定性の調査〕
バクテリオファージの製品剤形のうち、飼料添加剤として用いる場合、バクテリオファージの剤形過程で発生する乾燥条件に対する安全性を確認した。耐熱性確認実験によって導出した結果に基づき、60℃120分の条件下における高温乾燥実験を行った。1.0×1011pfu/mLタイターのΦCJ2の溶液200μLをスピードバキューム(speed−Vacuum Concentrator5301、Eppendorf)を用いて乾燥させた。乾燥の後に得られたペレットを、初期溶液と同量のSM溶液を入れて4で1日間完全に再浮遊させた。処理した実験培養液を段階希釈して、ソフトアガオーバーレイ方法で各段階の希釈液を10μLずつ滴下させた後、37℃で18時間培養して溶菌有無によってタイターを測定した。乾燥の後、元来のタイターと相対的な安定性を比較したとき、活性が減少しないことが分かった。その結果を図7に示した。
【0086】
ΦCJ2が、実験に使用されたSG(SG SGSC2293)、SP(SP SGSC2295)、およびST(ST ATCC14028)以外に、ソウル大学校獣医科大学鳥類疾病学室で分離した韓国の野生分離株SG、SPそれぞれ20株に対して溶菌活性を持つか否かについて確認した。各菌株の振とう培養液(OD600=2)150μLを混ぜてソフトアガオーバーレイ方法を行い、1010pfu/mLタイターのΦCJ2の溶液を10μLずつ滴下した後、37℃で18時間培養して溶菌斑形成有無を観察した。野生分離株SGとSPに対して100%溶菌率を示すことを確認することができた。その結果を下記表3に示した。また、下記表3には記載していないが、野生分離株ST20株に対して溶菌活性有無も確認した結果、溶菌率が80%であることが分かった。よって、ΦCJ2はSG、SPおよびSTに特異的なバクテリオファージといえる。
【0087】
【表3】

【0088】
〔実施例12:バクテリオファージの毒性評価〕
ΦCJ2のラットにおける安全性評価を実施して毒性評価を行った。毒性試験は単回経口投与毒性、静脈注射毒性、腸内正常細菌毒性で行われた。
【0089】
単回経口投与毒性試験は、ラットで単回経口投与による急性毒性を調査し、概略の致死量を得るために実施した。特定病原性部材(SPF)ラット(SD)7週齢雄雌それぞれ12匹をΦCJ2投与前日に絶食させた。投与当日、経口投与用ゾンデを用いて1×1012pfu濃度のΦCJ2を雄雌それぞれ6匹に経口投与し、対照群として、6匹には20m Tris−HClと2mM MgClとの混合溶液を経口投与した後、4時間後にさらに飼料給餌を始めた。投与当日には投与後30分に観察を行い始めて4時間まで毎時間観察し、14日間は1日1回一般症状を観察して記録した。実験結果、死亡個体は発生しておらず、ΦCJ2による毒性症状および特異的な臨床症状も現れておらず、その結果は表4と表5に示した。体重は投与前、投与後1、3、7、10および14日に体重を測定して記録し、その結果、対照群に比べて有意性のある体重変化の差異は観察されておらず、その結果は図8に示した。体重変化の観察結果、ΦCJ2が食欲を減少させ或いは体重を変化させる毒性反応を誘発していないことが分かった。生存動物を剖検して肉眼で全ての臓器を検査した結果、特異的な異常は観察されなかった。
【0090】
【表4】

【0091】
【表5】

【0092】
静脈注射毒性試験は、バクテリオファージが血液に存在する場合、毒性を調査するために実施した。特定病原性部材(SPF)ラット(SD)7週齢雄雌それぞれ10匹に対して実験を行った。投与当日に3mLの注射器を用いて1×1012pfu濃度のΦCJ2を雄雌それぞれ5匹の尾静脈に投与し、20mM Tris−HClと2mM MgClとの混合溶液を対照群として5匹の尾静脈に投与した。経口投与試験と同様の条件で死亡個体数、一般症状、体重変化および剖検結果を確認し、その結果はそれぞれ表6、表7および図9に示した。試験期間中に死亡個体は発生しておらず、ΦCJ2による毒性症状および臨床症状も現れていない。また、ΦCJ2対照群と比較して有意性のある体重変化の差異は観察されていないことからみて、ΦCJ2の投与が毒性反応を誘発しないことが分かった。それだけでなく、生存動物を剖検して内部臓器を検査した結果、特異的な異常は観察されていない。
【0093】
【表6】

【0094】
【表7】

【0095】
最後に、腸内正常細菌毒性試験は、バクテリオファージが腸内細菌代表種にどんな影響を及ぼすかを確認するために、人体腸内正常細菌を代表する菌株として動物医薬品毒性試験に告示された9種の細菌(Bacteroides fragilis (ATCC25285)、Bacteroides ovatus(ATCC8483)、Fusobacterium prausnitzii (ATCC 27766)、Bifidobacterium Longum(KACC 20597, ATCC15697)、Clostridium perfringens(ATDD13124)、Peptococcus anaerobius (ATCC27337)、Enterococcus faecalis (KACC 11304, ATCC35308)、Lactovacillus acidophilus (KACC12419, ATCC 4356)、Escherichia coli (KACC 10005, ATCC 35607))に対してΦCJ2の毒性を予測する実験を実施した。1×1011pfu/mLのΦCJ2を段階希釈して96ウェルプレートに100μLずつ分注した後、9種の細菌培養液を添加して所定の培養条件で18〜48時間培養した。菌の濃度を測定して、菌の成長が抑制された最低濃度を確認した結果、ΦCJ2の最高濃度においても菌の成長が抑制されていないものと確認され、これを表8に示し、腸内の代表的な正常細菌に対する統制能力がないものと確認された。
【0096】
【表8】

【0097】
〔実施例13:バクテリオファージの効能評価〕
ΦCJ2のST、SGおよびSPに対する予防および治療程度の可能性を確認するために、鶏で効能評価実験を行った。
【0098】
20羽の1日齢褐色産卵鶏を10羽ずつ10個の試験群(ΦCJ2投薬群+無投薬攻撃群1つ)に割り当て、試験鶏に、ΦCJ2をg当り10pfuで混合した飼料およびmL当り10pfuで混合した飲み水を1週間供給し、1週目に羽当たりSG0197 10cfuと各ファージ10pfu(MOI=10)を500μLのTSBに混合した後、氷上に放置してから1時間以内に口腔を介して接種した。2週間斃死率を観察し、生存した試験鶏を剖検して病変有無を確認し、細菌を分離した。その結果は表9のとおりである。ΦCJ2投薬群は無投薬群に比べて有意的に高い(P<0.05)防御率を示すことが分かった。
【0099】
【表9】

【産業上の利用可能性】
【0100】
本発明のバクテリオファージは、ネズミチフス菌(Salmonella typhimurium)、家禽チフス菌(Salmonella gallinarum)およびひな白痢菌(Salmonella pullorum)に対して特異的死滅能を有するが、益菌を死滅させず、耐酸性、耐熱性および耐乾性に優れるので、ネズミチフス菌、家禽チフス菌およびひな白痢菌感染性疾病、特にサルモネラ症、サルモネラ食中毒、家禽チフスおよびひな白痢の予防または治療目的の治療剤、抗生剤、家畜用飼料、家畜飲用水、消毒剤および洗浄剤などに広範囲に利用できる。
【受託番号】
【0101】
KCCM10976P

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ネズミチフス菌(salmonella typhimurium)、家禽チフス菌(Salmonella gallinarum)またはひな白痢菌(Salmonella pullorum)に特異的死滅能を有し、形態学上、正二十面体の頭(isometric capside)および無収縮性の尾(long non-contractile tail)を有する形態型(morphotype)B1、シフォビラーダ科(siphoviridae)に属し、全体ゲノムサイズが43kbpであり、40kDaサイズのタンパク質を主要構造タンパク質として有することを特徴とする、バクテリオファージ。
【請求項2】
前記バクテリオファージは、形態学的に図1に示された形態型を有することを特徴とする、請求項1に記載のバクテリオファージ。
【請求項3】
前記バクテリオファージは、配列番号1、2および3よりなる群から選ばれた一つまたはそれ以上の核酸分子を全体ゲノムの一部として含むことを特徴とする、請求項1に記載のバクテリオファージ。
【請求項4】
前記バクテリオファージは、配列番号4と5、配列番号6と7、および配列番号8と9よりなる群から選ばれた一つまたはそれ以上のプライマーセットでPCRを行った場合、それぞれ1kp程度のPCR産出物を有することを特徴とする、請求項1に記載のバクテリオファージ。
【請求項5】
前記バクテリオファージは、pH2.5〜pH9.0の範囲で耐酸性を有し、37℃〜60℃の範囲で耐熱性を有し、60℃で120分間乾燥させたときに耐乾性を有することを特徴とする、請求項1に記載のバクテリオファージ。
【請求項6】
前記バクテリオファージは寄託番号第KCCM10976P号であることを特徴とする、請求項1に記載のバクテリオファージ。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項のバクテリオファージを有効成分として含むネズミチフス菌(Salmonella typhimurium)、家禽チフス菌(Salmonella gallinarum)およびひな白痢菌(Salmonella pullorum)よりなる群から選ばれた一つまたは2つ以上のサルモネラ菌により誘発された感染性疾病の予防または治療用組成物。
【請求項8】
前記ネズミチフス菌感染性疾病はサルモネラ症またはサルモネラ食中毒であり、前記家禽チフス菌感染性疾病は家禽チフスであり、前記ひな白痢菌感染性疾病はひな白痢であることを特徴とする、請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
抗生剤として使用されることを特徴とする、請求項7に記載の予防または治療用組成物。
【請求項10】
請求項1〜6のいずれか1項のバクテリオファージを有効成分として含むことを特徴とする、家畜用飼料または飲用水。
【請求項11】
請求項1〜6のいずれか1項のバクテリオファージを有効成分として含むことを特徴とする、消毒剤または洗浄剤。
【請求項12】
請求項1〜6のバクテリオファージを用いてネズミチフス菌、家禽チフス菌およびひな白痢菌よりなる群から選ばれた一つまたは2つ以上のサルモネラ菌により誘発された感染性疾病を治療する方法。
【請求項13】
請求項7の組成物を用いてネズミチフス菌、家禽チフス菌およびひな白痢菌よりなる群から選ばれた一つまたは2つ以上のサルモネラ菌により誘発された感染性疾病を治療する方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2011−511626(P2011−511626A)
【公表日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−544247(P2010−544247)
【出願日】平成21年9月7日(2009.9.7)
【国際出願番号】PCT/KR2009/005061
【国際公開番号】WO2010/074388
【国際公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【出願人】(508064724)シージェイ チェイルジェダン コーポレイション (32)
【Fターム(参考)】