説明

新規ピペラジン誘導体

【構成】 一般式[I]で表わされる化合物およびその塩類、ならびに当該化合物またはその塩類を有効成分とする脳神経障害の治療剤。


[式中、R1 は低級アルキル、シクロアルキル、フェニル、フェニル低級アルキルまたはフェノキシ低級アルキルで、該フェニル環およびシクロアルキルは低級アルキル、低級アルケニル、低級アルキニル、ヒドロキシ、低級アルコキシまたは低級アルキレンジオキシで置換されていてもよい。R2 およびR3 はH、ハロゲン、低級アルキル、ヒドロキシ、低級アルコキシまたはシアノを、AおよびBは低級アルキレンを、nは0または1を示す。]
【効果】 痴呆症、うつ病、精神分裂病、不安症等の脳神経機能障害、免疫異常や内分泌異常に伴なう疾患、消化器系潰瘍等の治療剤として有用である。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明はσレセプターに対する親和性を有し、痴呆症、うつ病、精神分裂病、不安症等の脳神経機能障害、免疫異常や内分泌異常に伴なう疾患、消化器系潰瘍等の治療剤として有用な新規化合物に関するものである。
【0002】
【従来の技術】1,2−ジフェニルエチルピペラジン誘導体は鎮痛剤として数多く研究され(特公昭47−6304、特公昭49−188、J. Med. Chem., 18, 1240 (1975)他)、ピペラジン環の4位にアルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、フェニルアルキル基等の置換基を導入したものやフェニル環にハロゲン原子、ヒドロキシ基、低級アルコキシ基等の置換基を導入した化合物が報告されている。
【0003】また、ピペラジン環の4位がフェニルアルキル基やフェノキシアルキル基で置換された1,2−ジフェニルエチルピペラジン誘導体がカルシウム拮抗作用や脳神経機能改善作用を有することも報告されている(特開昭63−141966、特開平3−7229)。
【0004】以上のように、研究の焦点は1,2−ジフェニルエチルピペラジン誘導体のフェニル環への置換基の導入や、ピペラジン環の4位への各種置換基の導入に関するものであり、二つのフェニル基をつなぐアルキレン鎖に酸素原子を導入することは研究されていなかった。
【0005】一方、σレセプターに対する研究が最近数多くなされ、σレセプターに強い親和性を有する化合物が痴呆症、うつ病、精神分裂病、不安症等の脳神経機能障害、免疫異常や内分泌異常に伴なう疾患、消化器系潰瘍等の疾患の治療剤として有用であることが明らかとなりつつある(J. Neuropsychiatry Clin. Neurosci.,1, 7-15 (1989); Eur. J. Biochem., 200, 633-642 (1991); J. Pharmacol. Exp. Ther., 255, 1354-1359 (1990) )。しかしながら、σレセプターに強い親和性を有する1,2−ジフェニルエチルピペラジン誘導体については未だ報告されていなかった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】上記のように、1,2−ジフェニルエチルピペラジン誘導体のフェニル環への置換基の導入や、ピペラジン環の4位への各種置換基の導入については数多くの研究がなされているが、二つのフェニル基をつなぐアルキレン鎖に酸素原子を導入した化合物については未だ研究されておらず、この化合物の合成研究およびその薬理作用についての研究は非常に興味ある課題であった。
【0007】ところで、1,2−ジフェニルエチルピペラジン誘導体の中にはモルヒネ様の身体依存性を有する化合物もあることが報告されている(特公昭61−33827)。モルヒネ様の身体依存性のある化合物は医薬として用いることは好ましくないので、そのような身体依存性の無い化合物を見いだすことも重要な課題であった。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明者等はジフェニルアルキルピペラジン誘導体のアルキレン鎖に着目し、アルキレン鎖に酸素原子を導入した新規ピペラジン誘導体の合成を行ない、その薬理作用を検討した。
【0009】まず、[ 3H](+)−N−アリルノルメタゾシン([ 3H](+)−SKF−10047)を標識リガンドとして、本発明のピペラジン誘導体とσレセプターとの親和性を検討した結果、本発明のピペラジン誘導体はσレセプターに対し強い親和性を有することがわかった。また、SKF−10047と同様にσレセプターのリガンドとして知られている(+)−ペンタゾシン((+)−PTZ)の標識ラベル化合物([ 3H](+)−PTZ)についても上記親和性を検討したところ、本発明のピペラジン誘導体は[ 3H](+)−SKF−10047の場合と同様、σレセプターに対する強い親和性を示した。このことから、本発明化合物は、σレセプターが関与する疾患である痴呆症、うつ病、精神分裂病、不安症等の脳神経機能障害、免疫異常や内分泌異常に伴なう疾患、消化器系潰瘍等の治療剤として有用であることが明らかとなった。
【0010】次に、もう一つの課題であるモルヒネ様作用の有無について実験を行った。モルヒネ様作用を有する化合物は、μレセプターに対して強い親和性を有することが知られており(Life Sci., 33(Sup 1), 431 (1983))、μレセプターに対する親和性が弱ければ、その化合物のモルヒネ様作用は弱いと判断することができる。そこで、[ 3H][D−Ala2 ,N−Me−L−Phe4 ,Gly−ol5]エンケファリン([ 3H]DAMGO)を標識リガンドとして、新規ピペラジン誘導体のμレセプターに対する親和性を検討した結果、親和性は非常に弱く、モルヒネ様作用を実質上示さないことがわかった。
【0011】
【発明の開示】本発明は下記一般式[I]で表わされる新規ピペラジン化合物およびその塩類(以下、本発明化合物とする)を提供するものである。
【0012】
【化4】


[式中、R1 は低級アルキル基、シクロアルキル基、フェニル基、フェニル低級アルキル基またはフェノキシ低級アルキル基を示し、フェニル基、フェニル低級アルキル基またはフェノキシ低級アルキル基のフェニル環およびシクロアルキル基は1個ないし複数個の低級アルキル基、低級アルケニル基、低級アルキニル基、ヒドロキシ基、低級アルコキシ基または低級アルキレンジオキシ基で置換されていてもよい。
【0013】R2 およびR3 は同一もしくは異なって、水素原子、ハロゲン原子、低級アルキル基、ヒドロキシ基、低級アルコキシ基またはシアノ基を示す。
【0014】AおよびBは同一もしくは異なって低級アルキレン基を示す。
【0015】nは0または1を示す。以下同じ。]
【0016】上記の定義をさらに詳しく説明すると、低級アルキルとは、メチル、エチル、プロピル、ヘキシル、イソプロピル、tert.-ブチル等の1〜6個の炭素原子を有する直鎖または分枝のアルキルを示し、低級アルケニルとは、ビニル、アリル、ヘキセニル等の二重結合を含む2〜6個の炭素原子を有する直鎖または分枝のアルケニルを示し、低級アルキニルとは、エチニル、プロピニル、ヘキシニル等の三重結合を含む2〜6個の炭素原子を有する直鎖または分枝のアルキニルを示し、低級アルコキシとは、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ヘキシルオキシ、イソプロポキシ、tert.-ブトキシ等の1〜6個の炭素原子を有する直鎖または分枝のアルコキシを示し、シクロアルキルとは、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル等の3〜8個の炭素原子を有するシクロアルキルを示し、低級アルキレンとは、メチレン、エチレン、(ジメチル)メチレン、(ジエチル)メチレン等の1〜6個の炭素原子を有する直鎖または分枝のアルキレンを示し、低級アルキレンジオキシとは、メチレンジオキシ、エチレンジオキシ、(ジメチル)メチレンジオキシ、(ジエチル)メチレンジオキシ等の2個の酸素原子の間に1〜6個の炭素原子を有する直鎖または分枝のアルキレンが存在するアルキレンジオキシを示し、ハロゲン原子とは、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素を示す。
【0017】塩類としては、塩酸塩、硫酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩等の医薬として許容される塩類が挙げられる。
【0018】本発明化合物のうち、好ましい例としては、R1 が低級アルキル基、シクロアルキル基、フェニル基、フェニル低級アルキル基またはフェノキシ低級アルキル基、R2 およびR3 が同一もしくは異なって、水素原子、ハロゲン原子、低級アルキル基、低級アルコキシ基またはシアノ基の化合物が挙げられる。より好ましい例は、R1 がシクロヘキシル基またはフェニルエチル基、R2 が水素原子またはハロゲン原子、R3 が水素原子、ハロゲン原子または低級アルコキシ基で示される化合物である。特に、R2 が水素原子またはフッ素原子、R3 が水素原子、フッ素原子またはメトキシ基である化合物が好ましい。また、AおよびBの低級アルキレン基については、ともにメチレン基が好ましい。
【0019】本発明化合物のうち特に優れた作用を有する化合物の例として、1−(2−ベンジルオキシ−1−フェニルエチル)−4−シクロヘキシルピペラジン、1−(1−ベンジルオキシメチル−2−フェニルエチル)−4−シクロヘキシルピペラジン、4−シクロヘキシル−1−[2−(4−フルオロベンジルオキシ)−1−フェニルエチル]ピペラジン、4−シクロヘキシル−1−[2−(4−メトキシベンジルオキシ)−1−フェニルエチル]ピペラジンおよび1−(2−ベンジルオキシ−1−フェニルエチル)−4−(2−フェニルエチル)ピペラジン、さらにそれぞれの塩類ならびに立体異性体、光学活性体が挙げられる。
【0020】本発明化合物の代表的な合成法は、下記a)およびb)である。
【0021】a)
【化5】


[式中、R4 は低級アルカノイル基、低級アルコキシカルボニル基等のアミノ基の保護基を示し、Xはハロゲン原子、低級アルカンスルホニルオキシ基等の脱離基を示す。]
【0022】a)の方法は、まず式[II]で表わされる化合物のアミノ基を保護して式[III ]の化合物とし、これに式[IV]の化合物を反応させて、式[III ]の化合物を式[V]の化合物に導き、次いでアミノ基の保護基を外して式[VI]の化合物とした後、式[VII ]の化合物と反応させ、ピペラジン環を形成し本発明化合物[I]を得る方法である。
【0023】また、式[II]の化合物と式[IV]の化合物を水素化ナトリウム等の塩基の存在下で反応させることにより、直接、式[VI]の化合物に導くことも可能である。
【0024】b)
【化6】


[式中、Yはハロゲン原子を示す。]
【0025】b)の方法は、a)に示した方法により得られた式[VI]の化合物に2−ブロモエタノール等のハロゲン化アルコールを反応させて式[VI]の化合物を式[VIII]の化合物とした後、これに塩化チオニルまたは塩化メタンスルホニル等を反応させ、式[VIII]の化合物を式[IX]の化合物に導き、次いでR1 NH2 を反応させ、ピペラジン環を形成し本発明化合物[I]を得る方法である。
【0026】上記の方法によって得られた化合物は、常法により前述の様な塩類とすることができる。
【0027】一般式[I]で表される化合物には光学異性体が存在するが、それらは全て本発明に含まれる。光学活性な原料を用いると光学活性体が得られるが、ラセミ体を原料として用いた場合には、光学分割剤等を用い、ラセミ型の生成物を光学分割することができる。
【0028】本発明化合物の有用性を調べるべく、まず本発明化合物のσレセプターに対する親和性についての実験を行なった。詳細については後述の薬理試験の項で示すが、[ 3H](+)−SKF−10047を標識リガンドとして、本発明化合物とσレセプターとの親和性を検討した結果、本発明化合物はσレセプターに対し強い親和性を示すことがわかった。さらに、[ 3H](+)−PTZを標識リガンドとして上記親和性を検討したところ、本発明化合物は[ 3H](+)−SKF−10047の場合と同様、σレセプターに対する強い親和性を示した。
【0029】次に、本発明化合物がモルヒネ様作用を示すかどうかについての実験を行なった。モルヒネ様作用を有する化合物は、μレセプターに対し強い親和性を有することが知られており、μレセプターに対する親和性が弱ければ、その化合物のモルヒネ様作用は弱いと判断することができる。そこで、[ 3H]DAMGOを標識リガンドとして本発明化合物のμレセプターに対する親和性を調べた。その結果、本発明化合物のμレセプターに対する親和性は弱く、本発明化合物は実質上モルヒネ様作用を示さないことがわかった。
【0030】ある化合物を医薬品として応用するには、効果発現量と副作用発現量の差が大きいことが好ましい。すなわち、本発明においてはσレセプターとの親和性が強く、μレセプターに対する親和性が弱いことが好ましいこととなり、後述の実験結果は本発明化合物が医薬品として優れたものであることを立証するものである。
【0031】さらに、脳血管障害による痴呆症の疾患モデルとして知られている虚血による学習障害モデル、すなわち Pulsinelli 等の方法(Stroke, 10, 267-272 (1979))により、4動脈を閉塞し脳虚血状態にしたラットを用いて実験を行なったところ、本発明化合物は学習障害に対する改善作用を有していた。
【0032】また、脳内アセチルコリン量を増加させる化合物は、痴呆症等の治療剤として有用であると報告されている(New Engl. J. Med., 315, 1241-1245 (1986))ことから、Matsuno らの文献(Brain Res., 575, 315-319 (1992) )に基づき、ラット脳内のアセチルコリン量を測定したところ、本発明化合物はアセチルコリンの増加作用を示した。
【0033】以上の薬理試験の結果から、本発明化合物はσレセプターが関与する疾患である痴呆症、うつ病、精神分裂病、不安症等の脳神経機能障害、免疫異常や内分泌異常に伴なう疾患、消化器系潰瘍等の治療剤として広い医薬用途を有し、特に脳神経機能障害治療剤として有用であることがわかった。
【0034】本発明化合物の投与方法としては経口、非経口のいずれでも良く、投与剤型としては錠剤、カプセル剤、軟カプセル剤、顆粒剤、注射剤等が挙げられ、通常の製剤方法として汎用されている技術を用いて本発明化合物を製剤化することができる。例えば、錠剤、カプセル剤、軟カプセル剤、顆粒剤等の経口剤は、必要に応じて、乳糖、デンプン、結晶セルロース、植物油等の増量剤、ステアリン酸マグネシウム、タルク等の滑沢剤、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルピロリドン等の結合剤、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロースカルシウム等の崩壊剤、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、マクロゴール、シリコン樹脂等のコーティング剤、ゼラチン皮膜等の皮膜剤を用いて製剤化することができる。投与量は症状、剤型等により適宜選択されるが、通常1日1mg〜1000mg、好ましくは1mg〜200mgを1回または数回に分け投与すればよい。
【0035】
【実施例】
参考例1(R)−1−ベンジルオキシメチル−2−フェニルエチルアミン 塩酸塩(参考化合物1−1)
【化7】


1)(R)−1−ヒドロキシメチル−2−フェニルエチルアミン(3.0g)のテトラヒドロフラン(25ml)溶液にジ−tert.-ブチルジカルボナート(4.3g)のテトラヒドロフラン(25ml)溶液を撹拌しながら滴下する。反応液を減圧濃縮して(R)−N−tert.-ブトキシカルボニル−1−ヒドロキシメチル−2−フェニルエチルアミン3.1g(62%)を得る。
【0036】mp 93〜95℃[α] D20 +27.9°(c=1.0,メタノール)
IR(KBr,cm-1)3357,2984,2939,1687,1529,1444,1367,1316,1270,1168
【0037】2)窒素雰囲気下、60%水素化ナトリウム鉱油懸濁物(0.35g)のジメチルホルムアミド(40ml)懸濁液に、氷−塩化ナトリウムで冷却しながら(R)−N−tert.-ブトキシカルボニル−1−ヒドロキシメチル−2−フェニルエチルアミン(2.0g)および臭化ベンジル(4.1g)のジメチルホルムアミド(20ml)溶液を滴下する。反応液を氷冷下さらに1時間撹拌する。反応液に水を加え、ジエチルエーテルで抽出する。有機層を水、飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥後減圧濃縮する。得られる油状物をシリカゲルカラムクロマトで精製し、(R)−1−ベンジルオキシメチル−N−tert.-ブトキシカルボニル−2−フェニルエチルアミン2.2g(82%)を得る。
【0038】[α] D20 +17.6°(c=0.6,メタノール)
IR(Film,cm-1)1713,1496,1454,1391,1366,1249,1170,1118,1056,1028
【0039】3)(R)−1−ベンジルオキシメチル−N−tert.-ブトキシカルボニル−2−フェニルエチルアミン(2.0g)を塩化水素/酢酸エチル溶液に溶解し、2時間撹拌する。反応液を減圧濃縮して標記化合物(参考化合物1−1)1.4g(86%)を得る。
【0040】mp 154〜155℃[α] D20 −33.1°(c=1.0,メタノール)
IR(KBr,cm-1)2862,1598,1509,1496,1453,1362,1171,1116,1086
【0041】参考例1と同様に操作し、下記化合物を得る。
【0042】・(S)−1−ベンジルオキシメチル−2−フェニルエチルアミン 塩酸塩(参考化合物1−2)
mp 155〜156℃[α] D20 +34.7°(c=1.0,メタノール)
IR(KBr,cm-1)2863,1598,1509,1496,1453,1362,1171,1117,1086
【0043】・(R)−1−(4−クロロベンジルオキシメチル)−2−フェニルエチルアミン 塩酸塩(参考化合物1−3)
mp 143〜149℃[α] D20 −38.3°(c=1.0,メタノール)
IR(KBr,cm-1)2868,2673,2582,2502,1584,1504,1457,1120
【0044】・(S)−1−(4−クロロベンジルオキシメチル)−2−フェニルエチルアミン 塩酸塩(参考化合物1−4)
mp 150〜152℃[α] D20 +39.0°(c=1.0,メタノール)
IR(KBr,cm-1)2879,2674,2583,2503,1584,1504,1457,1120
【0045】・(R)−1−(4−シアノベンジルオキシメチル)−2−フェニルエチルアミン 塩酸塩(参考化合物1−5)
mp 157〜165℃[α] D20 −41.9°(c=1.0,メタノール)
IR(KBr,cm-1)2860,2739,2577,2227,1609,1583,1496,1456,1357,1104
【0046】・(R)−1−(4−tert.-ブチルベンジルオキシメチル)−2−フェニルエチルアミン 塩酸塩(参考化合物1−6)
mp 155〜160℃[α] D20 −37.2°(c=1.0,メタノール)
IR(KBr,cm-1)2866,1614,1586,1508,1496,1475,1456,1134
【0047】・(R)−1−ベンジルオキシメチル−2−(4−メチルフェニル)エチルアミン 塩酸塩(参考化合物1−7)
【0048】・(R)−1−ベンジルオキシメチル−2−(4−メトキシフェニル)エチルアミン 塩酸塩(参考化合物1−8)
【0049】・(R)−1−ベンジルオキシメチル−2−(4−フルオロフェニル)エチルアミン 塩酸塩(参考化合物1−9)
【0050】・(R)−1−ベンジルオキシメチル−2−(4−クロロフェニル)エチルアミン 塩酸塩(参考化合物1−10)
【0051】・(R)−1−ベンジルオキシメチル−2−(4−シアノフェニル)エチルアミン 塩酸塩(参考化合物1−11)
【0052】参考例2(R)−2−(4−メトキシベンジルオキシ)−1−フェニルエチルアミン(参考化合物2−1)
【化8】


窒素気流下、60%水素化ナトリウム鉱油懸濁物(1.6g)のテトラヒドロフラン(10ml)懸濁液に、氷冷下、(R)−2−ヒドロキシ−1−フェニルエチルアミン(5.0g)のテトラヒドロフラン(70ml)溶液を滴下し、2時間加熱還流する。反応液を氷冷し、塩化4−メトキシベンジル(6.3g)のテトラヒドロフラン(20ml)溶液を滴下し、室温下10時間撹拌する。この溶液を水、飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥後減圧濃縮する。得られる油状物をシリカゲルカラムクロマトで精製し、標記化合物(参考化合物2−1)4.8g(51.2%)を得る。
【0053】[α]D 25 −24.1°(c=1.0,クロロホルム)
IR(Film,cm-1)3379,3029,2855,1612,1513,1248,1088,1034,822,758,702
【0054】参考例2と同様に操作し、下記化合物を得る。
【0055】・(R)−2−(3,4−ジメトキシベンジルオキシ)−1−フェニルエチルアミン(参考化合物2−2)
[α] D20 −12.9°(c=1.5,メタノール)
IR(Film,cm-1)2934,2902,2855,1593,1515,1464,1453,1265,1238,1157,1138,1087,1028,763,702
【0056】・(R)−2−(2−フルオロベンジルオキシ)−1−フェニルエチルアミン(参考化合物2−3)
[α] D20 −22.1°(c=1.2,メタノール)
IR(Film,cm-1)3029,2897,2859,1587,1492,1455,1356,1231,1114,1088,842,758,701
【0057】・(R)−2−(3−フルオロベンジルオキシ)−1−フェニルエチルアミン(参考化合物2−4)
[α] D20 −18.8°(c=0.5,メタノール)
IR(Film,cm-1)3381,3306,3062,3029,2858,1618,1590,1488,1451,1255,1106,868,759,701
【0058】・2−ベンジルオキシ−1−(2−フルオロフェニル)エチルアミン(参考化合物2−5)
IR(Film,cm-1)3381,3312,3064,3031,2859,1584,1488,1454,1359,1224,1097,834,759,698
【0059】・2−ベンジルオキシ−1−(4−メトキシフェニル)エチルアミン(参考化合物2−6)
IR(Film,cm-1)3378,2853,1610,1512,1247,832,737,698
【0060】参考例3(R)−2−(4−フルオロベンジルオキシ)−1−フェニルエチルアミンフマル酸塩(参考化合物3)
【化9】


窒素気流下、60%水素化ナトリウム鉱油懸濁物(0.32g)のテトラヒドロフラン(3ml)懸濁液に、氷冷下、(R)−2−ヒドロキシ−1−フェニルエチルアミン(1.0g)のテトラヒドロフラン(15ml)溶液を滴下し、1.5時間加熱還流する。反応液を氷冷し、塩化ベンジル(1.3g)のテトラヒドロフラン(5ml)溶液を滴下し、40℃で20時間撹拌する。有機層を水、飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥後減圧濃縮する。得られる油状物をシリカゲルカラムクロマトで精製後、メタノール(20ml)とフマル酸(0.55g)を加え、減圧濃縮を経て標記化合物(参考化合物3)1.5g(57%)を得る。
【0061】mp 124〜126℃[α] D20 −14.2°(c=1.0,メタノール)
IR(KBr,cm-1)3065,3040,2877,2518,1697,1511,1281,1221,1094,828,640
【0062】参考例4(R)−2−ベンジルオキシ−1−フェニルエチルアミン(参考化合物4−1)
【化10】


1)(R)−2−ヒドロキシ−1−フェニルエチルアミン(15.1g)のピリジン(60ml)溶液に、氷冷下、無水酢酸(31.2ml)を滴下する。反応液を室温で3時間撹拌後減圧濃縮し、酢酸エチルを加える。この溶液を水、飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥後、減圧濃縮して(R)−2−アセトキシ−N−アセチル−1−フェニルエチルアミン18.8g(77%)を得る。
【0063】mp 117〜118℃[α] D20 −71.5°(c=0.5,メタノール)
IR(KBr,cm-1)3296,1731,1652,1556,1376,1249,1042,701
【0064】2)(R)−2−アセトキシ−N−アセチル−1−フェニルエチルアミン(19.6g)のテトラヒドロフラン(200ml)溶液に、水酸化リチウム・一水和物(7.4g)の水溶液(200ml)を加え、2時間撹拌する。反応液に6N塩酸(15ml)を加え、反応液を減圧濃縮する。濃縮液に塩化ナトリウムを加え、酢酸エチルで抽出する。有機層を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥後、減圧濃縮して(R)−N−アセチル−2−ヒドロキシ−1−フェニルエチルアミン13.5g(85%)を得る。
【0065】mp 101〜102℃[α] D20 −109.4°(c=0.5,メタノール)
IR(KBr,cm-1)3190,1640,1560,1376,1314,1067,699,557
【0066】3)窒素雰囲気下、60%水素化ナトリウム鉱油懸濁物(1.1g)のジメチルホルムアミド(100ml)懸濁液に、氷−塩化ナトリウムで冷却しながら、(R)−N−アセチル−2−ヒドロキシ−1−フェニルエチルアミン(4.5g)のジメチルホルムアミド(30ml)溶液および臭化ベンジル(4.7g)のジメチルホルムアミド(30ml)溶液を滴下し、室温で1.5時間撹拌する。反応液に水を加え、酢酸エチルで抽出する。有機層を水、飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥後、減圧濃縮して(R)−N−アセチル−2−ベンジルオキシ−1−フェニルエチルアミン4.4g(65%)を得る。
【0067】mp 100〜101℃[α] D20 −45.7°(c=0.5,メタノール)
IR(KBr,cm-1)3271,1644,1560,1112,1087,764,748,701
【0068】4)(R)−N−アセチル−2−ベンジルオキシ−1−フェニルエチルアミン(2.6g)のエタノール(40ml)溶液に2N塩酸(40ml)を加え、20時間還流する。反応液を減圧濃縮後、水を加えて濃縮物を溶解し、得られる水溶液をジエチルエーテル−酢酸エチル混液(1:1)で洗浄する。水層を炭酸カリウムの添加によりアルカリ性にし、酢酸エチルで抽出する。有機層を水、飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥後、減圧濃縮して標記化合物(参考化合物4−1)1.4g(65%)を得る。
【0069】[α] D20 −20.6°(c=0.5,メタノール)
IR(Film,cm-1)3379,3028,2855,1603,1452,1094,738,699
【0070】参考例4と同様に操作し、下記化合物を得る。
【0071】・(S)−2−ベンジルオキシ−1−フェニルエチルアミン(参考化合物4−2)
[α] D20 +18.1°(c=0.6,メタノール)
IR(Film,cm-1)3379,3029,2856,1603,1453,1094,737,699
【0072】実施例1(R)−1−(1−ベンジルオキシメチル−2−フェニルエチル)−4−シクロヘキシルピペラジン 二塩酸塩(化合物1−1)
【化11】


1)(R)−1−ベンジルオキシメチル−2−フェニルエチルアミン 塩酸塩(参考化合物1−1、0.2g)のジメチルホルムアミド(20ml)溶液に、N,N−ビス(2−クロロエチル)シクロヘキシルアミン 塩酸塩(0.35g)、ヨウ化ナトリウム(0.37g)および炭酸カリウム(0.69g)を加え、50℃で1時間撹拌する。反応液に水を加え、酢酸エチルで抽出する。有機層を水、飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥後減圧濃縮する。得られる油状物をシリカゲルカラムクロマトで精製し、(R)−1−(1−ベンジルオキシメチル−2−フェニルエチル)−4−シクロヘキシルピペラジン0.25g(77%)を得る。
【0073】IR(Film,cm-1)2927,2853,2811,1495,1453,1158,1123,1067,1028,982
【0074】2)(R)−1−(1−ベンジルオキシメチル−2−フェニルエチル)−4−シクロヘキシルピペラジン(0.18g)のメタノール(10ml)溶液に塩化水素/メタノール溶液を加え、減圧濃縮を経て標記化合物(化合物1−1)0.18g(83%)を得る。
【0075】mp 267〜269℃(分解)
[α] D20 −18.6°(c=1.0,クロロホルム)
IR(KBr,cm-1)2936,2908,2506,2341,1494,1445,1124,1099,751
【0076】実施例1と同様に操作し、下記化合物を得る。
【0077】・(S)−1−(1−ベンジルオキシメチル−2−フェニルエチル)−4−シクロヘキシルピペラジン 二塩酸塩(化合物1−2)
mp 267〜268℃(分解)
[α] D20 +18.2°(c=1.0,クロロホルム)
IR(KBr,cm-1)2936,2907,2507,2324,1494,1445,1124,1099,751
【0078】・(R)−1−(1−ベンジルオキシメチル−2−フェニルエチル)−4−(2−フェニルエチル)ピペラジン 二塩酸塩(化合物1−3)
mp 262〜266℃(分解)
[α] D20 −15.1°(c=1.0,メタノール)
IR(KBr,cm-1)3063,3032,2992,2918,2497,1480
【0079】・(S)−1−(1−ベンジルオキシメチル−2−フェニルエチル)−4−(2−フェニルエチル)ピペラジン 二塩酸塩(化合物1−4)
mp 251〜253℃(分解)
[α] D20 +15.9°(c=1.0,メタノール)
IR(KBr,cm-1)3063,3032,2992,2918,2498,1480
【0080】・(R)−1−[1−(4−クロロベンジルオキシメチル)−2−フェニルエチル]−4−シクロヘキシルピペラジン 二塩酸塩(化合物1−5)
mp 280℃以上[α] D20 −26.1°(c=1.0,クロロホルム)
IR(KBr,cm-1)2994,2978,2942,2901,2863,2643,2428,1489,1445
【0081】・(S)−1−[1−(4−クロロベンジルオキシメチル)−2−フェニルエチル]−4−シクロヘキシルピペラジン 二塩酸塩(化合物1−6)
mp 280℃以上[α] D20 +25.5°(c=1.0,クロロホルム)
IR(KBr,cm-1)2994,2978,2943,2901,2862,2643,2428,1489,1444
【0082】・(R)−1−[1−(4−シアノベンジルオキシメチル)−2−フェニルエチル]−4−シクロヘキシルピペラジン 二塩酸塩(化合物1−7)
mp 266〜267℃[α] D20 −30.0°(c=1.0,クロロホルム)
IR(KBr,cm-1)3013,2995,2977,2940,2858,2642,2511,2428,2226,1492
【0083】・(R)−1−[1−(4−tert.-ブチルベンジルオキシメチル)−2−フェニルエチル]−4−シクロヘキシルピペラジン 二塩酸塩(化合物1−8)
mp 269〜271℃(分解)
[α] D20 −27.9°(c=1.0,メタノール)
IR(KBr,cm-1)3428,3061,3003,2938,2863,2502,2250,1483,1449,1402
【0084】・(R)−1−(1−ベンジルオキシメチル−2−フェニルエチル)−4−フェニルピペラジン 二塩酸塩(化合物1−9)
【0085】・(R)−1−[1−ベンジルオキシメチル−2−(4−メチルフェニル)エチル]−4−シクロヘキシルピペラジン 二塩酸塩(化合物1−10)
【0086】・(R)−1−[1−ベンジルオキシメチル−2−(4−メトキシフェニル)エチル]−4−シクロヘキシルピペラジン 二塩酸塩(化合物1−11)
【0087】・(R)−1−[1−ベンジルオキシメチル−2−(4−フルオロフェニル)エチル]−4−シクロヘキシルピペラジン 二塩酸塩(化合物1−12)
【0088】・(R)−1−[1−ベンジルオキシメチル−2−(4−クロロフェニル)エチル]−4−シクロヘキシルピペラジン 二塩酸塩(化合物1−13)
【0089】・(R)−1−[1−ベンジルオキシメチル−2−(4−シアノフェニル)エチル]−4−シクロヘキシルピペラジン 二塩酸塩(化合物1−14)
【0090】実施例2(R)−1−(1−ベンジルオキシメチル−2−フェニルエチル)−4−シクロペンチルピペラジン 二塩酸塩(化合物2−1)
【化12】


1)封管中で、(R)−1−ベンジルオキシメチル−2−フェニルエチルアミン 塩酸塩(参考化合物1−1、5.0g)のエタノール(80ml)溶液に2−クロロエタノール(15.6g)、ヨウ化ナトリウム(18.7g)および炭酸カリウム(8.6g)を加え、150℃で15時間撹拌する。不溶物をろ去し、減圧濃縮後、水を加え、酢酸エチルで抽出する。有機層を水、飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥後減圧濃縮する。得られる油状物をシリカゲルカラムクロマトで精製し、(R)−1−ベンジルオキシメチル−N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−2−フェニルエチルアミン6.5g(95%)を得る。
【0091】[α] D20 −3.7°(c=1.0,メタノール)
IR(Film,cm-1)3410,3027,3006,2926,2862,1495,1454,1064
【0092】2)(R)−1−ベンジルオキシメチル−N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−2−フェニルエチルアミン(7.0g)のクロロホルム(20ml)溶液に、氷−塩化ナトリウムで冷却しながら塩化チオニル(7.6g)のクロロホルム(20ml)溶液を滴下後、25分間還流する。反応液を減圧濃縮し、得られる油状物をシリカゲルカラムクロマトで精製し、(R)−1−ベンジルオキシメチル−N,N−ビス(2−クロロエチル)−2−フェニルエチルアミン 塩酸塩2.0g(24%)を得る。
【0093】[α] D20 +8.7°(c=1.0,メタノール)
IR(Film,cm-1)3086,3063,3028,3004,2954,2860,2359,1603,1585,1496
【0094】3)(R)−1−ベンジルオキシメチル−N,N−ビス(2−クロロエチル)−2−フェニルエチルアミン 塩酸塩(0.5g)のジメチルホルムアミド(30ml)溶液にシクロペンチルアミン(0.13g)、炭酸カリウム(1.0g)およびヨウ化ナトリウム(0.56g)を加え、60℃で3時間撹拌する。反応液に水を加え、酢酸エチルで抽出する。有機層を水、飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥後減圧濃縮する。得られる油状物をシリカゲルカラムクロマトで精製し、(R)−1−(1−ベンジルオキシメチル−2−フェニルエチル)−4−シクロペンチルピペラジンを得、これに塩化水素/メタノール溶液を加え、減圧濃縮を経て標記化合物(化合物2−1)0.1g(18%)を得る。
【0095】mp 247〜248℃(分解)
[α] D20 −19.4°(c=1.0,クロロホルム)
IR(KBr,cm-1)3008,2959,2874,2364,1492,1455,1360
【0096】実施例2と同様に操作し、下記化合物を得る。
【0097】・(S)−1−(1−ベンジルオキシメチル−2−フェニルエチル)−4−シクロペンチルピペラジン 二塩酸塩(化合物2−2)
mp 239〜241℃(分解)
[α] D20 +19.2°(c=1.0,メタノール)
IR(KBr,cm-1)3031,2960,2874,2364,1493,1452,1368
【0098】・(R)−1−(1−ベンジルオキシメチル−2−フェニルエチル)−4−(2−メチルシクロヘキシル)ピペラジン 二塩酸塩(化合物2−3)
mp 250〜253℃[α] D20 −13.0°(c=0.31,メタノール)
IR(KBr,cm-1)2931,2424,1454,1065,750,701
【0099】・(R)−1−(1−ベンジルオキシメチル−2−フェニルエチル)−4−(3−メチルシクロヘキシル)ピペラジン 二塩酸塩(化合物2−4)
mp 258〜261℃[α] D20 −16.4°(c=0.64,メタノール)
IR(KBr,cm-1)2929,2366,1455,749,700
【0100】・(R)−1−(1−ベンジルオキシメチル−2−フェニルエチル)−4−(4−メチルシクロヘキシル)ピペラジン 二塩酸塩(化合物2−5)
mp 266〜267℃[α] D20 −16.0°(c=0.67,メタノール)
IR(KBr,cm-1)2929,2258,1483,1452,1051,1002,748,700
【0101】・(R)−1−(1−ベンジルオキシメチル−2−フェニルエチル)−4−(2,3−ジメチルシクロヘキシル)ピペラジン 二塩酸塩(化合物2−6)
mp 249〜250℃(分解)
[α] D20 −16.9°(c=0.72,メタノール)
IR(KBr,cm-1)2934,2366,1495,1454,1377,1290,1096,1066,750,699
【0102】・(R)−1−(1−ベンジルオキシメチル−2−フェニルエチル)−4−(1−エチニルシクロヘキシル)ピペラジン 二塩酸塩(化合物2−7)
mp 224〜225℃[α] D20 −17.1°(c=0.67,メタノール)
IR(KBr,cm-1)3365,3296,3155,2935,2291,2105,1452,1282,1069,730,700
【0103】・(R)−1−(1−ベンジルオキシメチル−2−フェニルエチル)−4−シクロプロピルピペラジン 二塩酸塩(化合物2−8)
mp 219℃(分解)
[α] D20 −24.0°(c=1.0,メタノール)
IR(KBr,cm-1)3033,2973,2882,2358,1493,1453,1381,1280,1201
【0104】・(R)−1−(1−ベンジルオキシメチル−2−フェニルエチル)−4−シクロブチルピペラジン 二塩酸塩(化合物2−9)
mp 231〜233℃(分解)
[α] D20 −20.1°(c=1.0,メタノール)
IR(KBr,cm-1)3856,3030,2970,2364,1494,1455,1399,1113
【0105】・(R)−1−(1−ベンジルオキシメチル−2−フェニルエチル)−4−シクロヘプチルピペラジン 二塩酸塩(化合物2−10)
mp 280℃(分解)
[α] D20 −16.8°(c=1.0,メタノール)
IR(KBr,cm-1)3029,2994,2932,2863,2639,1494,1446,1288,1101
【0106】・(R)−1−(1−ベンジルオキシメチル−2−フェニルエチル)−4−(1−ビニルシクロヘキシルピペラジン 二塩酸塩(化合物2−11)
【0107】実施例3(R)−1−(2−ベンジルオキシ−1−フェニルエチル)−4−シクロヘキシルピペラジン 二塩酸塩(化合物3−1)
【化13】


(R)−2−ベンジルオキシ−1−フェニルエチルアミン(参考化合物4−1、0.65g)およびN,N−ビス(2−クロロエチル)シクロヘキシルアミン塩酸塩(0.75g)のジメチルホルムアミド(40ml)溶液にヨウ化ナトリウム(0.86g)および炭酸カリウム(1.19g)を加え、60℃で5時間撹拌する。反応液に水を加え、酢酸エチルで抽出する。有機層を水、飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥後減圧濃縮する。得られる油状物をシリカゲルカラムクロマトで精製後、塩酸/エタノール溶液を加え、減圧濃縮を経て標記化合物(化合物3−1)0.69g(53%)を得る。
【0108】mp 245℃[α] D20 −25.6°(c=0.5,メタノール)
IR(KBr,cm-1)2939,2404,1456,1104,942,924,750,706
【0109】実施例3と同様に操作し、下記化合物を得る。
【0110】・(S)−1−(2−ベンジルオキシ−1−フェニルエチル)−4−シクロヘキシルピペラジン 二塩酸塩(化合物3−2)
mp 245〜246℃[α] D20 +24.8°(c=0.5,メタノール)
IR(KBr,cm-1)2935,2403,1456,1117,943,924,748,699
【0111】・(R)−1−(2−ベンジルオキシ−1−フェニルエチル)−4−シクロペンチルピペラジン 二塩酸塩(化合物3−3)
mp 239〜240℃[α] D20 −30.3°(c=0.5,メタノール)
IR(KBr,cm-1)2979,2360,1454,1383,1106,1028,746,699
【0112】・(R)−1−(2−ベンジルオキシ−1−フェニルエチル)−4−フェニルピペラジン 二塩酸塩(化合物3−4)
mp 171〜181℃[α] D20 −28.2°(c=1.0,メタノール)
IR(KBr,cm-1)2982,2952,2887,2434,2312,1598,1494,1452,1105,755,700
【0113】・(R)−1−(2−ベンジルオキシ−1−フェニルエチル)−4−(2−フェニルエチル)ピペラジン 二塩酸塩(化合物3−5)
mp 220℃[α] D20 −25.3°(c=0.5,メタノール)
IR(KBr,cm-1)2986,2368,1455,1373,1116,951,746,697
【0114】・(R)−1−(2−ベンジルオキシ−1−フェニルエチル)−4−[2−(3,4−ジメトキシフェニル)エチル]ピペラジン 二塩酸塩(化合物3−6)
mp 220〜221℃[α] D20 −22.6°(c=0.5,メタノール)
IR(KBr,cm-1)2982,2367,1518,1454,1262,1113,1028,701
【0115】・(R)−1−(2−ベンジルオキシ−1−フェニルエチル)−4−ブチルピペラジン 二塩酸塩(化合物3−7)
mp 216℃[α] D20 −29.5°(c=0.5,メタノール)
IR(KBr,cm-1)2961,2362,1457,1386,1095,946,749,699
【0116】・(S)−1−(2−ベンジルオキシ−1−フェニルエチル)−4−ブチルピペラジン 二塩酸塩(化合物3−8)
mp 218℃[α] D20 +27.9°(c=0.5,メタノール)
IR(KBr,cm-1)2961,2361,1457,1386,1100,945,749,699
【0117】・1−[2−ベンジルオキシ−1−(4−メトキシフェニル)エチル]−4−シクロヘキシルピペラジン 二塩酸塩(化合物3−9)
mp 245℃(分解)
IR(KBr,cm-1)2938,2406,1611,1517,1246,1178,1104,1037
【0118】実施例4(R)−1−(2−ベンジルオキシ−1−フェニルエチル)−4−[2−(3,4−メチレンジオキシフェノキシ)エチル]ピペラジン 二マレイン酸塩(化合物4−1)
【化14】


(R)−2−ベンジルオキシ−1−フェニルエチルアミン(参考化合物4−1、0.34g)およびN,N−ビス(2−クロロエチル)−2−(3,4−メチレンジオキシフェノキシ)エチルアミン 塩酸塩(0.51g)のジメチルホルムアミド(30ml)溶液にヨウ化ナトリウム(0.45g)および炭酸カリウム(0.62g)を加え、70℃で20時間撹拌する。反応液に水を加え、酢酸エチルで抽出する。有機層を水、飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥後減圧濃縮する。得られる油状物をシリカゲルカラムクロマトで精製後、エタノールとマレイン酸(0.16g)を加え、減圧濃縮を経て標記化合物(化合物4−1)0.29g(28%)を得る。
【0119】mp 150℃[α] D20 −18.2°(c=0.5,メタノール)
IR(KBr,cm-1)2369,1699,1621,1488,1355,1188,869,705
【0120】実施例4と同様に操作し、下記化合物を得る。
【0121】・(R)−1−(2−ベンジルオキシ−1−フェニルエチル)−4−(2−フェノキシエチル)ピペラジン 二マレイン酸塩(化合物4−2)
【0122】・(R)−1−(2−ベンジルオキシ−1−フェニルエチル)−4−[2−(3,4−ジメトキシフェノキシ)エチル]ピペラジン 二マレイン酸塩(化合物4−3)
【0123】・(R)−4−シクロヘキシル−1−[2−(3,4−ジメトキシベンジルオキシ)−1−フェニルエチル]ピペラジン 二マレイン酸塩(化合物4−4)
mp 151〜152℃[α] D20 −12.1°(c=1.0,メタノール)
IR(KBr,cm-1)3013,2930,2861,2355,1695,1620,1469,1356,1138,868,770,701,647,586
【0124】・(R)−4−シクロヘキシル−1−[2−(2−フルオロベンジルオキシ)−1−フェニルエチル]ピペラジン 二マレイン酸塩(化合物4−5)
mp 176〜178℃[α] D20 −13.2°(c=1.0,メタノール)
IR(KBr,cm-1)3020,2939,2861,2347,1697,1621,1459,1352,1223,869,761,654,586,436
【0125】・(R)−4−シクロヘキシル−1−[2−(3−フルオロベンジルオキシ)−1−フェニルエチル]ピペラジン 二マレイン酸塩(化合物4−6)
mp 173〜175℃[α] D20 −12.2°(c=0.5,メタノール)
IR(KBr,cm-1)3019,2937,2859,2360,1699,1621,1460,1353,869,762,657,438
【0126】・1−[2−ベンジルオキシ−1−(2−フルオロフェニル)エチル]−4−シクロヘキシルピペラジン 二マレイン酸塩(化合物4−7)
mp 153〜155℃IR(KBr,cm-1)3032,2927,2855,2351,1699,1581,1450,1355,1282,1095,867,757,648,580
【0127】実施例5(R)−4−シクロヘキシル−1−[2−(4−メトキシベンジルオキシ)−1−フェニルエチル]ピペラジン 二フマル酸塩(化合物5−1)
【化15】


N,N−ビス(2−クロロエチル)シクロヘキシルアミン塩酸塩(1.11g)のジメチルホルムアミド(10ml)溶液にヨウ化ナトリウム(1.28g)および炭酸カリウム(1.18g)を加え、室温下で撹拌する。この反応液を(R)−4−メトキシベンジルオキシ−1−フェニルエチルアミン(参考化合物2−1、1.0g)のジメチルホルムアミド(30ml)溶液に加え、40℃で2時間、70℃で2時間、さらに100℃で3時間撹拌する。反応液に水を加え、酢酸エチルで抽出する。有機層を水、飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥後減圧濃縮する。得られる油状物をシリカゲルカラムクロマトで精製後、メタノールとフマル酸(0.14g)を加え、減圧濃縮を経て標記化合物(化合物5−1)18mg(9.4%)を得る。
【0128】mp 192℃[α] D20 −14.1°(c=1.3,メタノール)
IR(KBr,cm-1)2936,2859,2500,1873,1715,1659,1583,1430,1300,1173,978,923,761,638,456
【0129】実施例5と同様に操作し、下記化合物を得る。
【0130】・(R)−4−シクロヘキシル−1−[2−(4−フルオロベンジルオキシ)−1−フェニルエチル]ピペラジン 二フマル酸塩(化合物5−2)
mp 186〜187℃[α] D20 −12.2°(c=0.3,メタノール)
IR(KBr,cm-1)2943,2862,2436,1893,1713,1660,1574,1514,1431,1309,1180,926,771,642,455
【0131】実施例64−シクロヘキシル−1−[1−(2−フェニルエトキシメチル)−2−フェニルエチル]ピペラジン 二塩酸塩(化合物6−1)
【化16】


1)1−(2−フェニルエトキシメチル)−2−フェニルエタノール(0.7g)のジクロロメタン(4ml)溶液にトリエチルアミン(0.57ml)および塩化メタンスルホニル(0.32ml)のジクロロメタン(4ml)溶液を氷冷下滴下し、20分間撹拌する。反応液を減圧濃縮した後、水を加え、酢酸エチルで抽出する。有機層を水、飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥後減圧濃縮する。得られる油状物をシリカゲルカラムクロマトで精製し、1−(2−フェニルエトキシメチル)−2−フェニルエチルメタンスルホネート0.75g(82%)を得る。
【0132】IR(Film,cm-1)3086,3062,3028,2937,2867,1734,1604,1496
【0133】2)1−(2−フェニルエトキシメチル)−2−フェニルエチルメタンスルホネート(0.6g)にジエタノールアミン(0.57g)を加え、150℃で2時間撹拌する。反応液を1N塩酸の添加により酸性とし、ジエチルエーテルで洗浄する。水層を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液で弱アルカリ性とし、酢酸エチルで抽出する。有機層を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥後減圧濃縮する。得られる油状物をシリカゲルカラムクロマトで精製し、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−1−(2−フェニルエトキシメチル)−2−フェニルエチルアミン0.12g(19%)を得る。
【0134】IR(Film,cm-1)3416,3061,3026,2922,2863,1495,1454,1406,1112
【0135】3)N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−1−(2−フェニルエトキシメチル)−2−フェニルエチルアミン(0.11g)のクロロホルム(2ml)溶液に、塩化チオニル(0.07ml)のクロロホルム(0.5ml)溶液を滴下後、40分間還流する。反応液を減圧濃縮して得られるN,N−ビス(2−クロロエチル)−1−(2−フェニルエトキシメチル)−2−フェニルエチルアミン塩酸塩をジメチルホルムアミド(3ml)に溶解する。この溶液に、シクロヘキシルアミン(0.04g)、ヨウ化ナトリウム(0.14g)および炭酸カリウム(0.27g)を加え、50℃で2時間撹拌する。反応液に水を加え、酢酸エチルで抽出する。有機層を水、飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥後減圧濃縮する。得られる油状物をシリカゲルカラムクロマトで精製後、塩化水素/メタノール溶液を加え、減圧濃縮を経て標記化合物(化合物6−1)55mg(36%)を得る。
【0136】mp 280℃以上IR(KBr,cm-1)3028,3008,2983,2933,2859,2646,2515,2378,1493
【0137】実施例6と同様に操作し、下記化合物を得る。
【0138】・4−シクロヘキシル−1−[1−[2−(4−メトキシフェニル)エトキシメチル]−2−フェニルエチル]ピペラジン 二塩酸塩(化合物6−2)
【0139】[製剤例]本発明化合物の製剤処方の一例を以下に示す。
【0140】
(錠剤)
本発明化合物 1mg 乳糖 120mg 結晶セルロース 38mg 低置換度ヒドロキシプロピルセルロ−ス 5mg ヒドロキシプロピルセルロ−ス−L 5mg ステアリン酸マグネシウム 1mg 計 170mg
【0141】
本発明化合物 5mg 乳糖 175mg 結晶セルロース 68mg 低置換度ヒドロキシプロピルセルロ−ス 10mg ヒドロキシプロピルセルロ−ス−L 10mg ステアリン酸マグネシウム 2mg 計 270mg
【0142】


【0143】


【0144】
【発明の効果】
「薬理試験」本願化合物の有用性を調べるべく、σレセプターとμレセプターに対する親和性についての実験を行なった。
【0145】
【0146】1.σレセプターとの親和性1−1.標識リガンドとして[ 3H](+)−SKF−10047を用いた場合Matsuno らの文献(Eur. J. Pharmacol., 231, 451-457 (1993) )に準じて、[ 3H](+)−SKF−10047を標識リガンドとして用い、以下の方法によりσレセプターに対する親和性を求めた。
【0147】(実験方法)膜標品の調製は Tam らの論文(Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 80, 6703-6707 (1983) )に準じて、以下の方法により行った。
【0148】Hartley 系モルモット(体重300〜400g)から脳を摘出し、脳重量の8倍量のトリス−塩酸緩衝液(50mM、pH7.7、0.32Mのショ糖を含む)中でホモジナイズした後、遠心して上清を得た。その上清を20分間超遠心して得られたペレットをトリス−塩酸緩衝液(50mM、pH7.7、以下同じ)に懸濁し、再度遠心することにより膜標品を得た。
【0149】予め[ 3H](+)−SKF−10047の特異的結合量を次の手法で求めておいた。トリス−塩酸緩衝液に懸濁させた膜標品に、トリス−塩酸緩衝液に溶解させた[ 3H](+)−SKF−10047(5nM)を加え(被験化合物は加えず)、25℃で30分間反応させた。反応終了後、反応液をガラスフィルターで吸引ろ過し、フィルター上の放射能を液体シンチレーションカウンターで測定し、総結合量を求めた。また、膜標品に[ 3H](+)−SKF−10047(5nM)と放射活性を持たない(+)−SKF−10047(100μM)の混合物を添加し(被験化合物は加えず)、上記と同様の方法を用いて膜標品との結合量を求め、非特異的結合量とした。このようにして得られた総結合量と非特異的結合量との差を特異的結合量とした。
【0150】次に、膜標品と[ 3H](+)−SKF−10047の結合量を被験化合物の存在下で測定し、被験化合物の濃度を変えることにより、先に求めた[ 3H](+)−SKF−10047の特異的結合量が50%抑制される被験化合物の濃度(IC50)を求めた。
【0151】(結果)表1に実験結果の一例として、化合物1−1、化合物2−1、化合物3−1、化合物3−5についての結果を示す。
【0152】
【表1】


表1に示されるように、本発明化合物は[ 3H](+)−SKF−10047の特異的結合量を低濃度で顕著に阻害することが認められ、本発明化合物はσレセプターに対し強い親和性を有することが判明した。
【0153】1−2.標識リガンドとして[ 3H](+)−PTZを用いた場合DeHaven-Hudkins らの文献(Eur. J. Pharmacol., 227, 371-378 (1992) )に準じて、[ 3H](+)−PTZを標識リガンドとして用い、以下の方法によりσレセプターに対する親和性を求めた。
【0154】(実験方法)膜標品の調製は Tam らの論文(Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 80, 6703-6707 (1983))に準じて、以下の方法により行った。
【0155】Hartley 系モルモット(体重300〜400g)から脳を摘出し、脳重量の8倍量のトリス−塩酸緩衝液(50mM、pH7.7、0.32Mのショ糖を含む)中でホモジナイズした後、遠心して上清を得た。その上清を20分間超遠心して得られたペレットをトリス−塩酸緩衝液(50mM、pH7.7、以下同じ)に懸濁し、再度遠心することにより膜標品を得た。
【0156】予め[ 3H](+)−PTZの特異的結合量を次の手法で求めておいた。トリス−塩酸緩衝液に懸濁させた膜標品に、トリス−塩酸緩衝液に溶解させた[ 3H](+)−PTZ(5nM)を加え(被験化合物は加えず)、37℃で150分間反応させた。反応終了後、反応液をガラスフィルターで吸引ろ過し、フィルター上の放射能を液体シンチレーションカウンターで測定し、総結合量を求めた。また、膜標品に[ 3H](+)−PTZ(5nM)と放射活性を持たない(+)−PTZ(100μM)の混合物を添加し(被験化合物は加えず)、上記と同様の方法を用いて膜標品との結合量を求め、非特異的結合量とした。このようにして得られた総結合量と非特異的結合量との差を特異的結合量とした。
【0157】次に、膜標品と[ 3H](+)−PTZの結合量を被験化合物の存在下で測定し、被験化合物の濃度を変えることにより、先に求めた[ 3H](+)−PTZの特異的結合量が50%抑制される被験化合物の濃度(IC50)を求めた。
【0158】(結果)表2に実験結果の一例として、化合物3−1、化合物3−5、化合物5−1、化合物5−2についての結果を示す。
【0159】
【表2】


表2に示されるように、[ 3H](+)−SKF−10047を標識リガンドとして検討した場合と同様に、本発明化合物が[ 3H](+)−PTZの特異的結合量を低濃度で顕著に阻害し、σレセプターに対し強い親和性を有することを認めた。
【0160】2.μレセプターとの親和性Nabeshima らの文献(Eur. J. Pharmacol., 114, 197-207 (1985) )に準じて、以下の方法によりμレセプターに対する親和性を求めた。なお、μレセプターの[ 3H]標識リガンドとしては、高いμレセプター選択性が報告されている(Br. J. Pharmac., 77, 461-469 (1982) )[ 3H]DAMGOを用いた。
【0161】(実験方法)膜標品の調製は Kosterlitz らの論文(Br. J. Pharmac., 68, 333-342 (1980) )に準じて、以下の方法により行った。
【0162】Wistar系雄性ラット(体重約300g)から脳を摘出し、脳重量の20倍量のトリス−塩酸緩衝液(50mM、pH7.7、以下同じ)中でホモジナイズした後、15分間超遠心してペレットを得た。このペレットをトリス−塩酸緩衝液に懸濁後、37℃で30分間インキュベーションし、15分間超遠心して得られたペレットを膜標品とした。
【0163】予め[ 3H]DAMGOの特異的結合量を次の手法で求めておいた。トリス−塩酸緩衝液に懸濁させた膜標品に、トリス−塩酸緩衝液に溶解させた[ 3H]DAMGO(1nM)を加え(被験化合物は加えず)、25℃で30分間反応させた。反応終了後、反応液をガラスフィルターで吸引ろ過し、フィルター上の放射能を液体シンチレーションカウンターで測定し、総結合量を求めた。また、膜標品に[ 3H]DAMGO(1nM)と5μMナロキソンの混合物を添加し(被験化合物は加えず)、上記と同様の方法を用いて膜標品との結合量を求め、非特異的結合量とした。このようにして得られた総結合量と非特異的結合量との差を特異的結合量とした。
【0164】次に、膜標品と[ 3H]DAMGOの結合量を被験化合物の存在下で測定し、被験化合物の濃度を変えることにより、先に求めた[ 3H]DAMGOの特異的結合量が50%抑制される被験化合物の濃度(IC50)を求めた。
【0165】(結果)表3に実験結果の一例として、化合物1−1、化合物2−1、化合物3−1、化合物3−5についての結果を示す。
【0166】
【表3】


表3に示されるように、本発明化合物は[ 3H]DAMGOの特異的結合量をほとんど阻害しないことが認められた。このことより、本発明化合物のμレセプターに対する親和性は非常に弱く、モルヒネ様作用をほとんど示さないことが判明した。
【0167】以上の薬理試験の結果から、本発明化合物はσレセプターに対し強い親和性を有し、かつ、モルヒネ様作用をほとんど示さず、σレセプターが関与する疾患である痴呆症、うつ病、精神分裂病、不安症等の脳神経機能障害、免疫異常や内分泌異常に伴なう疾患、消化器系潰瘍等の治療剤として広い医薬用途を有し、特に脳神経機能障害治療剤として有用であることが明らかとなった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】 下記一般式[I]で表わされる化合物およびその塩類。
【化1】


[式中、R1 は低級アルキル基、シクロアルキル基、フェニル基、フェニル低級アルキル基またはフェノキシ低級アルキル基を示し、フェニル基、フェニル低級アルキル基またはフェノキシ低級アルキル基のフェニル環およびシクロアルキル基は1個ないし複数個の低級アルキル基、低級アルケニル基、低級アルキニル基、ヒドロキシ基、低級アルコキシ基または低級アルキレンジオキシ基で置換されていてもよい。R2 およびR3 は同一もしくは異なって、水素原子、ハロゲン原子、低級アルキル基、ヒドロキシ基、低級アルコキシ基またはシアノ基を示す。AおよびBは同一もしくは異なって低級アルキレン基を示す。nは0または1を示す。]
【請求項2】 下記一般式[I]で表わされる化合物およびその塩類。
【化2】


[式中、R1 は低級アルキル基、シクロアルキル基、フェニル基、フェニル低級アルキル基またはフェノキシ低級アルキル基を示し、フェニル基、フェニル低級アルキル基またはフェノキシ低級アルキル基のフェニル環およびシクロアルキル基は1個ないし複数個の低級アルキル基、低級アルケニル基、低級アルキニル基、低級アルコキシ基または低級アルキレンジオキシ基で置換されていてもよい。R2 およびR3 は同一もしくは異なって、水素原子、ハロゲン原子、低級アルキル基、低級アルコキシ基またはシアノ基を示す。AおよびBは同一もしくは異なって低級アルキレン基を示す。nは0または1を示す。]
【請求項3】 下記一般式[I]で表わされる化合物およびその塩類。
【化3】


[式中、R1 はブチル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、フェニル基、フェニルエチル基またはフェノキシエチル基を示し、フェニルエチル基またはフェノキシエチル基のフェニル環およびシクロヘキシル基は1個ないし2個のメチル基、ビニル基、エチニル基、メトキシ基またはメチレンジオキシ基で置換されていてもよい。R2 は水素原子、フッ素原子、塩素原子、メチル基、メトキシ基またはシアノ基を示す。R3 は水素原子、フッ素原子、tert.-ブチル基、メトキシ基またはシアノ基を示す。Aはメチレン基またはエチレン基を、Bはメチレン基を示す。nは0または1を示す。]
【請求項4】 R1 がシクロヘキシル基、フェニルエチル基またはフェノキシエチル基を示し、該フェニルエチル基またはフェノキシエチル基のフェニル環およびシクロヘキシル基は1個ないし複数個の低級アルキル基、低級アルケニル基、低級アルキニル基、ヒドロキシ基、低級アルコキシ基または低級アルキレンジオキシ基で置換されていてもよい請求項1記載の化合物およびその塩類。
【請求項5】 R1 がシクロヘキシル基またはフェニルエチル基を示し、該フェニルエチル基のフェニル環およびシクロヘキシル基は1個ないし複数個の低級アルキル基、低級アルケニル基、低級アルキニル基、ヒドロキシ基、低級アルコキシ基または低級アルキレンジオキシ基で置換されていてもよい請求項1記載の化合物およびその塩類。
【請求項6】 R1 がシクロヘキシル基またはフェニルエチル基を示し、R2 が水素原子またはハロゲン原子を示し、R3 が水素原子、ハロゲン原子または低級アルコキシ基を示し、AおよびBがともにメチレン基である請求項1記載の化合物およびその塩類。
【請求項7】 R1 がシクロヘキシル基またはフェニルエチル基を示し、R2 が水素原子またはフッ素原子を示し、R3 が水素原子、フッ素原子またはメトキシ基を示し、AおよびBがともにメチレン基である請求項1記載の化合物およびその塩類。
【請求項8】 R1 がシクロヘキシル基、R2 およびR3 が水素原子、AおよびBがメチレン基である請求項1記載の化合物およびその塩類。
【請求項9】 R1 がシクロヘキシル基、R2 が水素原子、R3 がフッ素原子、AおよびBがメチレン基である請求項1記載の化合物およびその塩類。
【請求項10】 R1 がシクロヘキシル基、R2 が水素原子、R3 がメトキシ基、AおよびBがメチレン基である請求項1記載の化合物およびその塩類。
【請求項11】 R1 がフェニルエチル基、R2 およびR3 が水素原子、AおよびBがメチレン基である請求項1記載の化合物およびその塩類。
【請求項12】 1−(2−ベンジルオキシ−1−フェニルエチル)−4−シクロヘキシルピペラジンおよびその塩類。
【請求項13】 1−(1−ベンジルオキシメチル−2−フェニルエチル)−4−シクロヘキシルピペラジンおよびその塩類。
【請求項14】 4−シクロヘキシル−1−[2−(4−フルオロベンジルオキシ)−1−フェニルエチル]ピペラジンおよびその塩類。
【請求項15】 4−シクロヘキシル−1−[2−(4−メトキシベンジルオキシ)−1−フェニルエチル]ピペラジンおよびその塩類。
【請求項16】 1−(2−ベンジルオキシ−1−フェニルエチル)−4−(2−フェニルエチル)ピペラジンおよびその塩類。
【請求項17】 請求項1から請求項16記載の化合物またはその塩類を有効成分とする脳神経機能障害の治療剤。