説明

新規ペンタシル型ゼオライトおよびその合成方法

【課題】薄片状ペンタシル型ゼオライト粒子およびその製造方法を提供する。
【解決手段】薄片状結晶片の厚さが20〜100nm、幅が0.5〜5μmの範囲にあるペンタシル型ゼオライト粒子は、SiO2、Al23およびM2O(Mはアルカリ金属)からなるZSM−5型ゼオライトであり、SiO2/Al23モル比が15〜500の範囲にあり、M2O/Al23モル比が1±0.2の範囲にある。下記の工程(a)〜(f)により製造される。(a)アルミン酸アルカリ水溶液と珪酸アルカリ水溶液と水酸化アルカリ水溶液と水とを混合して透明性アルミノシリケート溶液を調製する工程、(b)珪酸アルカリ水溶液を混合する工程、(c)グルテンを混合する工程、(d)硫酸水溶液を混合して混合ヒドロゲルスラリーを調製する工程、(f)120〜300℃で5〜200時間、水熱処理する工程。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薄片状結晶片粒子からなり、新規ペンタシル型ゼオライト粒子およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ペンタシル型ゼオライトはクラッキング反応、ハイドロクラッキング反応、その他炭化水素変換反応、環境用触媒などの触媒や担体、吸着剤などに広く利用されている。
ペンタシル型ゼオライトは通常、有機構造規程剤を使用して構成されるが、有機構造規程剤は高価であり、また、有機物は環境問題から排水等に流出させることが規制されている。このため、有機構造規程剤を回収して再利用することが検討されている。さらに、触媒として用いるには有機構造規程剤を焼成して除去する必要があった。
【0003】
本願出願人は有機構造規程剤を使用することなく、硬化剤を使用してZSM−5型ゼオライトが合成できることを開示しているが、得られるZSM−5型ゼオライト粒子は数十μmと大きいものであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭59−196339号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、ゼオライトの外部比表面積が大きいほど、あるいは粒子径が小さいほど高い反応活性を示すことから、用途に制限があった。
上記問題点に鑑み、従来になかった形状のペンタシル型ゼオライトの製造を目的に鋭意検討した結果、アルミン酸ナトリウムと珪酸ナトリウムと水酸化ナトリウムと水とを混合した所定組成範囲の透明性アルミノシリケート溶液と、珪酸ナトリウム水溶液とを混合し、これに少量のグルテンを混合し、ついで硫酸を加えて所定モル比範囲の混合ヒドロゲルスラリーとして水熱処理すると、薄片状ZSM−5型ゼオライト粒子が得られることを見出して本発明を完成するに至った。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、薄片状ペンタシル型ゼオライト粒子およびその製造方法を提供することを目的としている。
本発明に係るペンタシル型ゼオライト粒子は、薄片状結晶片粒子からなり、薄片状結晶片粒子の厚さが20〜100nmの範囲にあり、薄片面の幅が0.5〜5μmの範囲にあることを特徴としている。
【0007】
前記ペンタシル型ゼオライト粒子がSiO2、Al23およびM2O(Mはアルカリ金属)からなるZSM−5型ゼオライトであり、SiO2/Al23モル比が15〜500の範囲にあり、M2O/Al23モル比が1±0.2の範囲にあることが好ましい。
【0008】
本発明に係るペンタシル型ゼオライト粒子の製造方法は、下記の工程(a)〜(f)からなることを特徴としている。
(a)アルミン酸アルカリ水溶液と珪酸アルカリ水溶液と水酸化アルカリ水溶液と水とを混合して下記酸化物組成範囲の透明性アルミノシリケート溶液を調製する工程
2O/Al23 =13〜20 (Mはアルカリ金属を示す)
SiO2/Al23 =12〜18
2O/Al23 =150〜400 (Al23を1とした)
(b)SiO2/M2Oモル比が1〜5の範囲にある珪酸アルカリ水溶液を、透明性アルミノシリケート溶液のSiO2を1モルとしたときに珪酸アルカリ水溶液のSiO2のモル比が1〜3となる範囲で混合する工程
(c)グルテンを、Al23の重量を1としたときに0.01〜0.4の範囲で混合する工程
(d)ついで、下記モル比範囲となるように硫酸水溶液を混合して混合ヒドロゲルスラリーを調製する工程
2O/Al23 =2〜5
(Mはアルカリ金属を示す。なお、硫酸添加により、中和されたM2Oは、M2SO4となっている)
SiO2/Al23 =18〜1000
2O/Al23 =300〜2000
2SO4/Al23 =15〜30 (Al23を1とした)
(f)120〜300℃で5〜200時間、水熱処理する工程
前記透明性アルミノシリケート溶液を、前記工程(b)で混合する前に0〜50℃で1〜1000時間熟成することが好ましい。
【0009】
前記工程(d)についで、下記工程(e)を行うことが好ましい。
(e)0〜50℃で1〜100時間熟成する工程
前記工程(c)における透明性アルミノシリケート溶液と珪酸アルカリ水溶液との混合比率が、透明性アルミノシリケート溶液のSiO2のモル数を1としたときに珪酸アルカリ水溶液のSiO2のモル数が0.5〜3の範囲であることが好ましい。
【0010】
得られたペンタシル型ゼオライト粒子が薄片状結晶片粒子であり、薄片状結晶片粒子の厚さが20〜100nmの範囲にあり、薄片面の幅が0.5〜5μmの範囲にあることが好ましい。
【0011】
また、得られたペンタシル型ゼオライト粒子がSiO2、Al23およびM2OからなるZSM−5型ゼオライトであり、SiO2/Al23モル比が15〜500の範囲にあり、M2O/Al23モル比が1±0.2の範囲にあることが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、薄片状のペンタシル型ゼオライト粒子が調製され、かかる粒子は、薄片状に由来する、大きな粒子に比して拡散性に優れ、触媒として選択性に優れることが期待される。また、膜にすると、吸着分離膜としても期待される。さらに膜分離としては、膜の反対に混合ガスが存在し、膜を通してゼオライトの細孔を通過できる小さい分子ガスが通過し、通過できないガスはそのまま残り、分離精製が可能となることが期待されている。
【0013】
このため、本発明の薄片状ペンタシル型ゼオライト粒子は、触媒、触媒担体、吸着剤等として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】実施例1で得られた薄片状ペンタシル型ゼオライト粒子のSEM写真を示す。
【図2】上記図1の拡大写真を示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の好適な実施形態について、詳細に説明する。
まず、本発明に係るペンタシル型ゼオライト粒子について説明する。
【0016】
ペンタシル型ゼオライト粒子
本発明に係るペンタシル型ゼオライト粒子は、薄片状結晶片粒子からなる。
薄片状結晶片粒子の厚さは20〜100nm、さらには25〜80nmの範囲にあることが好ましい。薄片状結晶片粒子の厚さが前記範囲を越えて薄いものは、本発明の方法では得ることが困難である。また厚さが前記範囲を越えるものは、本発明の方法では得ることが困難であり、得られたとしても、薄片形状と異なるものとなることが多い。このような、薄片状であると、拡散性に優れるために活性、選択性に優れるという効果が発現される。
【0017】
なお、ここでいう拡散性とは、粒子径が大きい場合、膜が厚い場合など、粒子内にとどまり、反応を繰り返すと副反応によって目的物以外が生成して、選択性が低下しやすくなるのに対し、薄膜であると主反応が起きた後、速やかに粒子外に拡散することが期待できる。
【0018】
薄片面の幅は0.5〜5μm、さらには0.6〜4μmの範囲にあることが好ましい。薄片面の幅が前記範囲にないものは得ることが困難であり、また、厚さとの関連で薄片とは言い難いものとなる。
【0019】
ペンタシル型ゼオライト粒子は、薄片状結晶片粒子から形成されるが、一部ないし全体として、集合体粒子からなるものであってもよい。
本発明では、薄片状結晶片集合体の平均粒子径(二次粒子径)は0.5〜20μm、1〜15μmの範囲にあることが好ましい。
【0020】
二次粒子径が小さいと、実質的に集合体でない薄片状粒子と同じものであり、また、二次粒子径が大きすぎると、成形して使用する際に成形性が低下し、緻密で強度などに優れた成形体を得ることが困難であり、これを触媒として用いた場合に選択性の向上が期待できないという問題点がある。
【0021】
前記した薄片状結晶片粒子の厚さ、薄片面幅および薄片状結晶片集合体の平均粒子径は、粒子の透過型電子顕微鏡写真(TEM)を撮影し、50個の薄片および粒子について薄片状結晶片粒子の厚さ、薄片面の幅および薄片状結晶片集合体の粒子径を測定し、その平均値として求めることができる。
【0022】
前記ペンタシル型ゼオライト粒子は、SiO2、Al23およびNa2OからなるZSM−5型ゼオライトであることが好ましい。ZSM−5型ゼオライトは熱的安定性、水熱安定性に優れ、Al23含有量に応じた活性点を有し、触媒として特に有用である。
【0023】
ZSM−5型ゼオライトのSiO2/Al23モル比は15〜500、さらには20〜400の範囲にあることが好ましい。ZSM−5型ゼオライトのSiO2/Al23モル比が前記範囲より小さいものは、得ることが困難であり、得られたとしても結晶度が低く、触媒として用いても充分な活性が得られない場合がある。ZSM−5型ゼオライトのSiO2/Al23モル比が前記範囲より大きいものは得ることが困難である。これらの場合、いずれもZSM−5型ゼオライトを構成せず、ペンタシル型ゼオライト粒子を形成しないことがある。
【0024】
本発明のペンタシル型ゼオライト粒子は、さらに、M2O(Mはアルカリ金属)を含み、M2O/Al23モル比が1±0.2の範囲にあることが好ましい。アルカリ金属としては、通常、ナトリウムやカリウム、好ましくはナトリウムである。
【0025】
通常、ペンタシル型ゼオライト、ZSM−5型ゼオライトの合成には、有機構造規程剤(有機テンプレート)としてテトラアルキルアンモニウムハイドロオキサイド(TAAOH)、あるいは界面活性剤等が用いられる。このように従来から提案されていた有機構造規程剤(有機テンプレート)以外を使用しても、通常ペンタシル型ゼオライトを得ることが困難である。別途、これら有機構造規程剤を用いる代わりにNaCl等の鉱化剤を用いるとペンタシル型ゼオライトが得られるが、粒子の大きさが大きくなりすぎて触媒に用いた場合に活性、選択性が不充分になる場合があった。
【0026】
これに対し、本発明では、後述する製造方法に示されるように、グルテンを使用するペンタシル型ゼオライトが生成し、しかもその形状を薄片状とすることができる。その理由については明らかではない。また、本発明では、通常従来公知の有機構造規定剤は使用することなく製造できるが、結晶化時間を短縮する、結晶度を向上させる、粒子の大きさを変更する等の目的で少量の従来公知の有機構造規程剤(有機テンプレート)を使用することは可能であり、これを排除するものではない。
【0027】
なお、前記M2Oは、触媒等に用いる場合、イオン交換、酸洗浄等常法によってアルカリを除去して用いることができる。
つぎに、本発明に係るペンタシル型ゼオライト粒子の製造方法について説明する。
【0028】
ペンタシル型ゼオライト粒子の製造方法
本発明に係るペンタシル型ゼオライト粒子の製造方法は、下記の工程(a)〜(f)からなることを特徴としている。
【0029】
工程(a)
アルミン酸アルカリ水溶液と珪酸アルカリ水溶液と水酸化アルカリ水溶液と水とを混合して下記酸化物組成範囲の透明性アルミノシリケート溶液を調製する。
【0030】
透明性アルミノシリケート溶液を調製するには、下記酸化物モル比の範囲内にあり、透明性を有する溶液が得られれば特に制限はないが、アルカリ源としては、水酸化ナトリウムが常用され、アルミナ源としてはアルミン酸ソーダ、アルミナゾル、アルミナゲル、アルミナ微粉末等、シリカ源としてはケイ酸ソーダ、シリカゾル、シリカゲル、シリカ微粉末等が好適に用いられる。アルミナゾル、アルミナゲル、アルミナ微粉末を用いる場合は予め水酸化アルカリ水溶液に溶解して用いることが好ましい。また、シリカゾル、シリカゲル、シリカ微粉末を用いる場合も予め水酸化アルカリ水溶液に溶解して用いることが好ましい。
2O/Al23 =13〜20 (Mはアルカリ金属を示す)
SiO2/Al23 =12〜18
2O/Al23 =150〜400
(Al23を1モルとした)
【0031】
混合順序は特に制限はないが、通常、水酸化アルカリ水溶液にアルミン酸ナトリウム水溶液を加え攪拌溶解・冷却を行い、水酸化アルカリ・アルミン酸ナトリウム混合水溶液とする。ついで、この水溶液を珪酸アルカリ水溶液に混合する。
【0032】
混合液は、混合後、直ちに使用することもできるが、後述する工程(b)で使用する前に、0〜50℃、さらには10〜40℃で100〜1000時間熟成することが好ましい。
【0033】
このような熟成を行うことによって、混合物は透明性を有し、再現性よくペンタシル型ゼオライト粒子を得ることができる。
2O/Al23 モル比は13〜20、さらには14〜18の範囲にあることが好ましい。この比率にあれば、所望のペンタシル型ゼオライト粒子を調製できる。なお、透明性アルミノシリケート溶液のM2O/Al23モル比が低すぎると、透明性アルミノシリケート溶液の透明性が低く、大きなゲル状粒子が残存することがあり、このような透明性アルミノシリケート溶液を用いて結晶化を行っても所望のペンタシル型ゼオライト粒子が得られないことがある。また、M2O/Al23モル比が大きすぎても、ペンタシル型ゼオライト粒子が得られないことがある。
【0034】
透明性アルミノシリケート溶液のSiO2/Al23 モル比は12〜18、さらには13〜17の範囲にあることが好ましい。透明性アルミノシリケート溶液のSiO2/Al23モル比が前記範囲にない場合はペンタシル型ゼオライト粒子が生成しないが、生成しても結晶度が低く、場合によっては他の結晶型の粒子が副生することがある。
【0035】
透明性アルミノシリケート溶液のH2O/Al23 モル比は150〜400、さらには180〜350の範囲にあることが好ましい。
透明性アルミノシリケート溶液のH2O/Al23 モル比が低すぎると、透明性アルミノシリケート溶液の透明性が低く、大きなゲル状粒子が残存することがあり、このような透明性アルミノシリケート溶液を用いて結晶化を行っても所望のペンタシル型ゼオライト粒子が得られないことがある。H2O/Al23 モル比が高すぎても、得られるペンタシル型ゼオライト粒子の粒子径が大きくなるとともに結晶性が低下する場合がある。
【0036】
工程(b)
次に、SiO2/Na2Oモル比が1〜5の範囲にある珪酸アルカリ水溶液を、透明性アルミノシリケート溶液のSiO2を1モルとしたときに珪酸アルカリ水溶液のSiO2のモル比が1〜3、好ましくは1.1〜2.5となる範囲で混合する。
珪酸アルカリ水溶液のSiO2/Na2Oモル比は前記範囲にあれば、本発明のペンタシル型ゼオライトが合成される。
【0037】
工程(c)
ついで、珪酸アルカリ水溶液を添加した透明性アルミノシリケート溶液にグルテンを混合する。なお、グルテンは、予め珪酸アルカリ水溶液に混合されても、透明性アルミノシリケート溶液に混合されても、さらに双方に混合されていてもよい。
【0038】
グルテンは、小麦、大麦、ライ麦等の穀物の胚乳から生成される蛋白質の一種であり、グルテン前駆体を含む穀物粉に水を加えるとグルテンが生成し、水で洗うとグルテンを抽出することができる。本発明では精製したグルテンを使用してもよいが、小麦粉などの穀物粉を直接使用してもよい。この場合、実際に含まれているグルテン量が、混合量となる。
【0039】
グルテンの混合量はAl23の重量を1としたときに重量比が0.01〜0.4、さらには0.02〜0.35の範囲にあることが好ましい。
グルテンの混合量が少なすぎると、粒状あるいは棒状のペンタシル型ゼオライトの混合物が生成する場合がある。グルテンの混合量が多すぎても、次工程(d)で均一な混合ヒドロゲルスラリーにならず、スラリーの粘度が高くなるためか、結晶性が不充分になったり、薄片状結晶片粒子が得られず、塊状の粒子となる場合がある。
【0040】
工程(d)
ついで、下記モル比範囲となるように硫酸水溶液を混合して混合ヒドロゲルスラリーを調製する。
【0041】
2O/Al23 =2〜5
(Mはアルカリ金属を示す。なお、硫酸添加により、中和されたM2Oは、M2SO4となっているので、この比には含まれない)
SiO2/Al23 =18〜1000
2O/Al23 =300〜2000
2SO4/Al23 =15〜30
(Al23を1モルとした)
【0042】
上記において、加えた硫酸はアルカリと反応して硫酸アルカリを生成したとした硫酸アルカリを意味し、M2Oは中和に関与しない過剰のアルカリを示す。
混合ヒドロゲルスラリーのM2O/Al23 モル比が小さすぎると、結晶化に長時間を要したり、場合によっては結晶度が不充分となる場合がある。M2O/Al23 モル比が高すぎても、ペンタシル型ゼオライト粒子が得られないことがある。
【0043】
混合ヒドロゲルスラリーのSiO2/Al23 モル比が小さすぎても、ペンタシル型ゼオライト粒子が得られない場合があり、得られたとしても結晶度が不充分となることがある。また、混合ヒドロゲルスラリーのSiO2/Al23 モル比が大きすぎても、結晶化に長時間を要したり、ペンタシル型ゼオライト粒子が得られないことがある。
【0044】
混合ヒドロゲルスラリーのH2O/Al23 モル比が小さすぎると、薄片状結晶片粒子、薄片状結晶片集合体粒子が得られず、不規則な凝集粒子が生成し、しかも結晶性が不充分となる場合があり、混合ヒドロゲルスラリーのH2O/Al23モル比が大きすぎても結晶化に長時間を要したり、結晶化しても結晶性が不充分となる傾向がある。
【0045】
混合ヒドロゲルスラリーのM2SO4/Al23 モル比が小さすぎる場合は、前記M2O/Al23 モル比が5を越える場合があり、混合ヒドロゲルスラリーのM2SO4/Al23 モル比が大きすぎても前記M2O/Al23 モル比が2未満となる場合があり、いずれも、結晶化に長時間を要したり、ペンタシル型ゼオライト粒子が得られないことがある。
【0046】
なお、本発明では、上記混合ヒドロゲルスラリーにNa2SO4、K2SO4等の硫酸塩の他、NaCl等の塩を結晶化を制御する鉱化剤として追加して使用することができる。
【0047】
工程(e)
前記工程(c)についで、下記工程(e)を行うことが好ましい。
(e)0〜50℃、好ましくは10〜40℃で1〜100時間熟成する。
熟成温度が前記範囲にあれば、再現性よく薄片状結晶片粒子および/または薄片状結晶片集合体粒子であるペンタシル型ゼオライト粒子が得られる。
【0048】
工程(f)
工程(d)(工程(e)を行なった場合は、工程(e))の後、120〜300℃、好ましくは140〜250℃で5〜200時間、水熱処理する。
【0049】
水熱処理温度が低ければ、結晶化に長時間を要したり、ペンタシル型ゼオライト粒子が得られない場合があり、得られたとしても結晶性が不充分となる場合がある。水熱処理温度が高すぎても、ペンタシル型ゼオライト粒子の結晶性が低下したり、他の結晶が副生する場合がある。
【0050】
水熱処理後、周知の方法によりスラリーを濾過し、固形分を分離し、洗浄し、乾燥してゼオライト粒子を回収する。
本発明の製造方法により得られるペンタシル型ゼオライト粒子は、前記した特性を有する。
【0051】
このようなペンタシル型ゼオライト粒子は、各種樹脂成形体のフイラー、各種ガスおよび液などの分離膜、燃料電池などの電解質膜およびメンブランリアクターなどの用途に用いることができ、また、炭化水素の吸着・分離剤、炭化水素(特にn−パラフィン)のクラッキング触媒、異性化触媒あるいは触媒担体として有用である。
【0052】
[実施例]
以下、本発明を実施例により詳細に説明する。
[実施例1]
透明性アルミノシリケート溶液(S1)の調製
Al23濃度22wt%、Na2O濃度17wt%のアルミン酸ナトリウム水溶液51gを、濃度42wt%の水酸化ナトリウム水溶液211gに撹拌しながら加えて溶解し、30℃まで冷却した。この溶液を、撹拌しながらSiO2濃度24wt%、Na2O濃度7.7wt%の珪酸ナトリウム水溶液413gに撹拌しながら添加した。このときの組成は酸化物モル比で
Na2O/Al23=16
SiO2/Al23=15
2O/Al23=230
であった。ついで、この溶液を35℃で15時間静置熟成して透明性アルミノシリケート溶液(S1)を調製した。
【0053】
混合ヒドロゲルスラリー(M1)の調製
ついで、SiO2濃度24wt%、Na2O濃度7.7wt%の珪酸ナトリウム水溶液550gに水11gと、前記透明性アルミノシリケート溶液(S1)675gを加え攪拌混合した。このとき、珪酸アルカリ水溶液のSiO2のモル数と透明性アルミノシリケート溶液(S1)のSiO2のモル数との比は1.33であった。
【0054】
ついで、小麦粉(日清フーズ(株)製:薄力粉、グルテン含有量12重量%)18.7gを混合し、充分撹拌した後、これに濃度25wt%の硫酸水溶液846gを加え、室温で3時間攪拌熟成して、混合ヒドロゲルスラリー(M1)を調製した。
【0055】
このときの組成は酸化物モル比で
Na2O/Al23=2.60
SiO2/Al23=35.0
2O/Al23=920
2SO4/Al23=19.6
グルテン/Al23 重量比=0.2
であった。
【0056】
Na型ZSM−5(1)の合成
混合ヒドロゲルスラリー(M1)をオートクレーブに充填し、170℃で50時間、撹拌しながら水熱処理を行った。その後、70℃まで冷却し、生成物を取り出し濾過、洗浄、乾燥してNa型ZSM−5型ゼオライト(1)を合成した。
【0057】
Na型ZSM−5(1)について、X線回折装置により結晶形・結晶化度、蛍光X線分析により組成(モル比)、BET法による比表面積およびTEMにより形状サイズ(薄片状結晶片粒子の厚さ、薄片面の大きさ(平均径)および薄片状結晶片集合体の平均粒子径)を測定し、結果を表1に示した。
【0058】
なお、結晶化度は、市販ZSM−5型ゼオライト(ZEOLYST社製:CBV8014)をNaイオン交換して乾燥したものを基準とし、X線回折装置で(101)、(011)、(501)、(303)および(133)面の総ピーク高さ(H0)を求め、同様にNa型ZSM−5型ゼオライト(1)について総ピーク高さ(H)を求め、次式により求めた。
【0059】
結晶化度=H/H0×100(%)
Na型ZSM−5型ゼオライト(1)のSEM写真を図1に、これの拡大写真を図2に示した。
【0060】
[実施例2]
混合ヒドロゲルスラリー(M2)の調製
実施例1において、小麦粉(日清フーズ(株)製:薄力粉、グルテン含有量12重量%)を4.7g用いた以外は同様にして混合ヒドロゲルスラリー(M2)を調製した。
【0061】
このときの組成は酸化物モル比で
Na2O/Al23=2.60
SiO2/Al23=35.0
2O/Al23=920
2SO4/Al23=19.6
グルテン/Al23 重量比=0.05
であった。
【0062】
Na型ZSM−5(2)の合成
実施例1において、混合ヒドロゲルスラリー(M2)を用いた以外は同様にしてNa型ZS
M−5型ゼオライト(2)を合成した。
Na型ZSM−5(2)について、結晶形・結晶化度、組成、比表面積および形状サイズを測定し、結果を表1に示した。
【0063】
[実施例3]
混合ヒドロゲルスラリー(M3)の調製
実施例1において、小麦粉(日清フーズ(株)製:薄力粉、グルテン含有量12重量%)28.1g用いた以外は同様にして混合ヒドロゲルスラリー(M3)を調製した。
このときの組成は酸化物モル比で 、
Na2O/Al23=2.60
SiO2/Al23=35.0
2O/Al23=920
2SO4/Al23=19.6
グルテン/Al23 重量比=0.3
であった。
【0064】
Na型ZSM−5(3)の合成
実施例1において、混合ヒドロゲルスラリー(M3)を用いた以外は同様にしてNa型ZSM−5型ゼオライト(3)を合成した。
Na型ZSM−5(2)について、結晶形・結晶化度、組成、比表面積および形状サイズを測定し、結果を表1に示した。
【0065】
[実施例4]
Na型ZSM−5(4)の合成
実施例1において、水熱処理を150℃で100時間行った以外は同様にしてNa型ZSM−5(4)を合成した。
Na型ZSM−5(2)について、結晶形・結晶化度、組成、比表面積および形状サイズを測定し、結果を表1に示した。
【0066】
[実施例5]
Na型ZSM−5(5)の合成
実施例1において、水熱処理を200℃で40時間行った以外は同様にしてNa型ZSM−5(5)を合成した、
Na型ZSM−5(5)について、結晶形・結晶化度、組成、比表面積および形状サイズを測定し、結果を表1に示した。
【0067】
[実施例6]
混合ヒドロゲルスラリー(M6)の調製
SiO2濃度24wt%、Na2O濃度7.7wt%の珪酸ナトリウム水溶液450gに水26gと、実施例1と同様にして調製した透明性アルミノシリケート溶液(S1)736g を加え攪拌混合した。このとき、珪酸アルカリ水溶液のSiO2のモル数と透明性アルミノシリケート溶液(S1)のSiO2のモル数との比は1.0であった。
【0068】
ついで、小麦粉(日清フーズ(株)製:薄力粉、グルテン含有量12重量%)20.4gを混合し、充分撹拌した後、これに濃度25wt%の硫酸水溶液849gを加え、室温で3時間攪拌熟成して、混合ヒドロゲルスラリー(M6)を調製した。
【0069】
このときの組成は酸化物モル比で
Na2O/Al23=2.6
SiO2/Al23=30
2O/Al23=840
2SO4/Al23=18.1
グルテン/Al23 重量比=0.2
であった。
【0070】
Na型ZSM−5(6)の合成
混合ヒドロゲルスラリー(M6)をオートクレーブに充填し、170℃で40時間、撹拌しながら水熱処理を行った後、冷却し、生成物を取り出し濾過、洗浄、乾燥してNa型ZSM−5(6)を合成した。
Na型ZSM−5(6)について、結晶形・結晶化度、組成、比表面積および形状サイズを測定し、結果を表1に示した。
【0071】
[実施例7]
混合ヒドロゲルスラリー(M7)の調製
SiO2濃度24wt%、Na2O濃度7.7wt%の珪酸ナトリウム水溶液780gに水27gと、実施例1と同様にして調製した透明性アルミノシリケート溶液(S1)478g を加え攪拌混合した。このとき、珪酸アルカリ水溶液のSiO2のモル数と透明性アルミノシリケート溶液(S1)のSiO2のモル数との比は2.68であった。
【0072】
ついで、小麦粉(日清フーズ(株)製:薄力粉、グルテン含有量12重量%)13.3gを混合し、充分撹拌した後、これに濃度25wt%の硫酸水溶液849gを加え、室温で3時間攪拌熟成した後、これに濃度25wt%の硫酸水溶液789gを加え、室温で3時間攪拌熟成して、混合ヒドロゲルスラリー(M7)を調製した。
【0073】
このときの組成は酸化物モル比で
Na2O/Al23=2.6
SiO2/Al23=55
2O/Al23=1280
2SO4/Al23=25.8
グルテン/Al23 重量比=0.2
であった。
【0074】
Na型ZSM−5(7)の合成
混合ヒドロゲルスラリー(M7)をオートクレーブに充填し、170℃で60時間、撹拌しながら水熱処理を行った後、冷却し、生成物を取り出し濾過、洗浄、乾燥してNa型ZSM−5(7)を合成した。
Na型ZSM−5(7)について、結晶形・結晶化度、組成、比表面積および形状サイズを測定し、結果を表1に示した。
【0075】
[実施例8]
透明性アルミノシリケート溶液(S8)の調製
Al23濃度22wt%、Na2O濃度17wt%のアルミン酸ナトリウム水溶液51gを、濃度35.9wt%の水酸化ナトリウム水溶液197.6gに撹拌しながら加えて溶解し、30℃まで冷却した。この溶液を、撹拌しながらSiO2濃度24wt%、Na2O濃度7.7wt%の珪酸ナトリウム水溶液413gに撹拌しながら添加した。このときの組成は酸化物モル比で
Na2O/Al23=14
SiO2/Al23=15
2O/Al23=230
であった。
ついで、この溶液を35℃で15時間静置熟成して透明性アルミノシリケート溶液(S8)を調製した。
【0076】
混合ヒドロゲルスラリー(M8)の調製
ついで、SiO2濃度24wt%、Na2O濃度7.7wt%の珪酸ナトリウム水溶液550gに水111gと、前記透明性アルミノシリケート溶液(S2)661gを加え攪拌混合した。このとき、珪酸アルカリ水溶液のSiO2のモル数と透明性アルミノシリケート溶液(S2)のSiO2のモル数との比は1.33であった。
【0077】
ついで、小麦粉(日清フーズ(株)製:薄力粉、グルテン含有量12重量%)18.7gを混合し、充分撹拌した後、これに濃度25wt%の硫酸水溶液759gを加え、室温で3時間攪拌熟成して、混合ヒドロゲルスラリー(M8)を調製した。
【0078】
このときの組成は酸化物モル比で
Na2O/Al23=2.60
SiO2/Al23=35.0
2O/Al23=920
2SO4/Al23=17.6
グルテン/Al23 重量比=0.2
であった。
【0079】
Na型ZSM−5(8)の合成
混合ヒドロゲルスラリー(M8)をオートクレーブに充填し、170℃で60時間、撹拌しながら水熱処理を行った後、冷却し、生成物を取り出し濾過、洗浄、乾燥してNa型ZSM−5(8)を合成した。
Na型ZSM−5(8)について、結晶形・結晶化度、組成、比表面積および形状サイズ
を測定し、結果を表1に示した。
【0080】
[実施例9]
透明性アルミノシリケート溶液(S9)の調製
Al23濃度22wt%、Na2O濃度17wt%のアルミン酸ナトリウム水溶液51gを、濃度47.2wt%の水酸化ナトリウム水溶液224.9gに撹拌しながら加えて溶解し、30℃まで冷却した。この溶液を、撹拌しながらSiO2濃度24wt%、Na2O濃度7.7wt%の珪酸ナトリウム水溶液413gに撹拌しながら添加した。このとき
の組成は酸化物モル比で
Na2O/Al23=18
SiO2/Al23=15
2O/Al23=230
であった。
ついで、この溶液を35℃で15時間静置熟成して透明性アルミノシリケート溶液(S9)を調製した。
【0081】
混合ヒドロゲルスラリー(M9)の調製
ついで、SiO2濃度24wt%、Na2O濃度7.7wt%の珪酸ナトリウム水溶液550gに水10gと、前記透明性アルミノシリケート溶液(S3)688gを加え攪拌混合した。このとき、珪酸アルカリ水溶液のSiO2のモル数と透明性アルミノシリケート溶液(S3)のSiO2のモル数との比は1.33であった。
【0082】
ついで、小麦粉(日清フーズ(株)製:薄力粉、グルテン含有量12重量%)18.7gを混合し、充分撹拌した後、これに濃度25wt%の硫酸水溶液932gを加え、室温で3時間攪拌熟成して、混合ヒドロゲルスラリー(M9)を調製した。
【0083】
このときの組成は酸化物モル比で
Na2O/Al23=2.60
SiO2/Al23=35.0
2O/Al23=970
2SO4/Al23=21.6
グルテン/Al23 重量比=0.2
であった。
【0084】
Na型ZSM−5(9)の合成
混合ヒドロゲルスラリー(M9)をオートクレーブに充填し、170℃で60時間、撹拌しながら水熱処理を行った後、冷却し、生成物を取り出し濾過、洗浄、乾燥してNa型ZSM−5(9)を合成した。
Na型ZSM−5(9)について、結晶形・結晶化度、組成、比表面積および形状サイズを測定し、結果を表1に示した。
【0085】
[比較例1]
混合ヒドロゲルスラリー(RM1)の調製
実施例1において、小麦粉を混合しなかった以外は同様にして混合ヒドロゲルスラリー(RM1)を調製した。
【0086】
このときの組成は酸化物モル比で
Na2O/Al23=2.60
SiO2/Al23=35.0
2O/Al23=920
2SO4/Al23=19.6
であった。
【0087】
Na型ZSM−5(R1)の合成
混合ヒドロゲルスラリー(RM1)をオートクレーブに充填し、170℃で60時間、撹拌しながら水熱処理を行った後、冷却し、生成物を取り出し濾過、洗浄、乾燥してNa型ZSM−5(R1)を合成した。
【0088】
Na型ZSM−5(R1)について、結晶形・結晶化度、組成、比表面積を測定し、結果を表1に示した。なお、Na型ZSM−5(R1)は棒状粒子で、短軸長が0.7μm、長軸長が1.4μmであった。
【0089】
[比較例2]
混合ヒドロゲルスラリー(RM2)の調製
実施例1において、小麦粉(日清フーズ(株)製:薄力粉、グルテン含有量12重量%)0.08gを混合した以外は同様にして混合ヒドロゲルスラリー(RM2)を調製した。
【0090】
このときの組成は酸化物モル比で
Na2O/Al23=2.60
SiO2/Al23=35.0
2O/Al23=920
2SO4/Al23=19.6
グルテン/Al23 重量比=0.001
であった。
【0091】
Na型ZSM−5(R2)の合成
混合ヒドロゲルスラリー(RM2)をオートクレーブに充填し、170℃で60時間、撹拌しながら水熱処理を行った後、冷却し、生成物を取り出し濾過、洗浄、乾燥してNa型ZSM−5(R2)を合成した。
【0092】
Na型ZSM−5(R2)について、結晶形・結晶化度、組成、比表面積を測定し、結果を表1に示した。なお、Na型ZSM−5(R2)は棒状粒子で、短軸長が0.7μm、長軸長が1.4μmであった。
【0093】
[比較例3]
混合ヒドロゲルスラリー(RM3)の調製
実施例1において、小麦粉(日清フーズ(株)製:薄力粉、グルテン含有量12重量%)42gを混合した以外は同様にして混合ヒドロゲルスラリー(RM3)を調製した。
【0094】
このときの組成は酸化物モル比で
Na2O/Al23=2.60
SiO2/Al23=35.0
2O/Al23=920
2SO4/Al23=19.6
グルテン/Al23 重量比=0.45
であった。
【0095】
Na型ZSM−5(R3)の合成
混合ヒドロゲルスラリー(RM3)をオートクレーブに充填し、170℃で60時間、撹拌しながら水熱処理を行った後、冷却し、生成物を取り出し濾過、洗浄、乾燥してNa型ZSM−5(R3)を合成した。
Na型ZSM−5(R3)について、結晶形・結晶化度、組成、比表面積を測定し、結果を表1に示した。なお、Na型ZSM−5(R3)は明確な薄片状粒子は認められず、約10μmの凝集粒子であった。
【0096】
[比較例4]
透明性アルミノシリケート溶液(RS4)の調製
Al23濃度22wt%、Na2O濃度17wt%のアルミン酸ナトリウム水溶液51gを、濃度21.0wt%の水酸化ナトリウム水溶液170.3gに撹拌しながら加えて溶解し、30℃まで冷却した。この溶液を、撹拌しながらSiO2濃度24wt%、Na2O濃度7.7wt%の珪酸ナトリウム水溶液413gに撹拌しながら添加した。このときの組成は酸化物モル比で
Na2O/Al23=10
SiO2/Al23=15
2O/Al23=230
であった。
ついで、この溶液を35℃で15時間静置熟成して透明性アルミノシリケート溶液(RS4)を調製した。
【0097】
混合ヒドロゲルスラリー(RM4)の調製
ついで、SiO2濃度24wt%、Na2O濃度7.7wt%の珪酸ナトリウム水溶液650gに水16gと、前記透明性アルミノシリケート溶液(RS1)749gを加え攪拌混合した。このとき、珪酸アルカリ水溶液のSiO2のモル数と透明性アルミノシリケート溶液(RS1)のSiO2のモル数との比は1.33であった。
【0098】
ついで、小麦粉(日清フーズ(株)製:薄力粉、グルテン含有量12重量%)18.7gを混合し、充分撹拌した後、これに濃度25wt%の硫酸水溶液694gを加え、室温で3時間攪拌熟成して、混合ヒドロゲルスラリー(RM4)を調製した。
【0099】
このときの組成は酸化物モル比で
Na2O/Al23=2.60
SiO2/Al23=35.0
2O/Al23=770
2SO4/Al23=13.6
グルテン/Al23 重量比=0.2
であった。
【0100】
Na型ZSM−5(R4)の合成
混合ヒドロゲルスラリー(RM4)をオートクレーブに充填し、170℃で60時間、撹拌しながら水熱処理を行った後、冷却し、生成物を取り出し濾過、洗浄、乾燥してNa型ZSM−5(R4)を合成した。
【0101】
Na型ZSM−5(R4)について、結晶形・結晶化度、組成、比表面積を測定し、結果を表1に示した。なお、Na型ZSM−5(R4)は明確な薄片状粒子は認められず、約5μmの凝集粒子であった。
【0102】
[比較例5]
透明性アルミノシリケート溶液(RS5)の調製
Al23濃度22wt%、Na2O濃度17wt%のアルミン酸ナトリウム水溶液51gを、濃度45.4wt%の水酸化ナトリウム水溶液311.6gに撹拌しながら加えて溶解し、30℃まで冷却した。この溶液を、撹拌しながらSiO2濃度24wt%、Na2O濃度7.7wt%の珪酸ナトリウム水溶液413gに撹拌しながら添加した。このときの組成は酸化物モル比で
Na2O/Al23=22
SiO2/Al23=15
2O/Al23=260
であった。
ついで、この溶液を35℃で15時間静置熟成して透明性アルミノシリケート溶液(RS5)を調製した。
【0103】
混合ヒドロゲルスラリー(RM5)の調製
ついで、SiO2濃度24wt%、Na2O濃度7.7wt%の珪酸ナトリウム水溶液500gに水8gと、前記透明性アルミノシリケート溶液(S1)705gを加え攪拌混合した。
【0104】
このとき、珪酸アルカリ水溶液のSiO2のモル数と透明性アルミノシリケート溶液(RS5)のSiO2のモル数との比は1.33であった。
ついで、小麦粉(日清フーズ(株)製:薄力粉、グルテン含有量12重量%)18.7gを混合し、充分撹拌した後、これに濃度25wt%の硫酸水溶液1004gを加え、室温で3時間攪拌熟成して、混合ヒドロゲルスラリー(RM5)を調製した。
【0105】
このときの組成は酸化物モル比で
Na2O/Al23=2.60
SiO2/Al23=35.0
2O/Al23=1100
2SO4/Al23=25.6
グルテン/Al23 重量比=0.2
であった。
【0106】
Na型ZSM−5(R5)の合成
混合ヒドロゲルスラリー(RM5)をオートクレーブに充填し、170℃で60時間、撹拌しながら水熱処理を行った後、冷却し、生成物を取り出し濾過、洗浄、乾燥してNa型ZSM−5(R5)を合成した。
【0107】
Na型ZSM−5(R5)について、結晶形・結晶化度、組成、比表面積を測定し、結果を表1に示した。なお、Na型ZSM−5(R5)は明確な薄片状粒子は認められず、約3μmの粒状粒子であった。
【0108】
[比較例6]
透明性アルミノシリケート溶液(RS6)の調製
Al23濃度22wt%、Na2O濃度17wt%のアルミン酸ナトリウム水溶液79gを、濃度42wt%の水酸化ナトリウム水溶液327gに撹拌しながら加えて溶解し、30℃まで冷却した。この溶液を、撹拌しながらSiO2濃度24wt%、Na2O濃度7.7wt%の珪酸ナトリウム水溶液638gに撹拌しながら添加した。このときの組成は酸化物モル比で
Na2O/Al23=16
SiO2/Al23=15
2O/Al23=230
であった。
ついで、この溶液を35℃で15時間静置熟成して透明性アルミノシリケート溶液(RS6)を調製した。
【0109】
混合ヒドロゲルスラリー(RM6)の調製
ついで、SiO2濃度24wt%、Na2O濃度7.7wt%の珪酸ナトリウム水溶液85gに水23gと、前記透明性アルミノシリケート溶液(S1)1043gを加えて攪拌混合した。このとき、珪酸アルカリ水溶液のSiO2のモル数と透明性アルミノシリケート溶液(RS3)のSiO2のモル数との比は0.13であった。
【0110】
ついで、小麦粉(日清フーズ(株)製:薄力粉、グルテン含有量12重量%)29gを混合し、充分撹拌した後、これに濃度25wt%の硫酸水溶液938gを加え、室温で3時間攪拌熟成して、撹拌しながら混合ヒドロゲルスラリー(RM6)を調製した。
【0111】
このときの組成は酸化物モル比で
Na2O/Al23=2.60
SiO2/Al23=17.0
2O/Al23=610
2SO4/Al23=14.0
グルテン/Al23 重量比=0.2
であった。
【0112】
Na型ZSM−5(R6)の合成
混合ヒドロゲルスラリー(RM6)をオートクレーブに充填し、170℃で40時間、撹拌しながら水熱処理を行った。その後、70℃まで冷却し、生成物を取り出し濾過、洗浄、乾燥してNa型ZSM−5(R6)を合成した。
Na型ZSM−5(R6)について結晶形を測定したが、モルデナイト型ゼオライトが混晶していた。従って、その他は測定しなかった。
【0113】
[比較例7]
透明性アルミノシリケート溶液(RS7)の調製
Al23濃度22wt%、Na2O濃度17wt%のアルミン酸ナトリウム水溶液26gを、濃度42wt%の水酸化ナトリウム水溶液105.6gに撹拌しながら加えて溶解し、30℃まで冷却した。この溶液を、撹拌しながらSiO2濃度24wt%、Na2O濃度7.7wt%の珪酸ナトリウム水溶液206gに撹拌しながら添加した。このときの組成は酸化物モル比で
Na2O/Al23=16
SiO2/Al23=15
2O/Al23=230
であった。
ついで、この溶液を35℃で15時間静置熟成して透明性アルミノシリケート溶液(RS7)を調製した。
【0114】
混合ヒドロゲルスラリー(RM7)の調製
ついで、SiO2濃度24wt%、Na2O濃度7.7wt%の珪酸ナトリウム水溶液1361gに水29gと、前記透明性アルミノシリケート溶液(RS4)34gを加え攪拌混合した。このとき、珪酸アルカリ水溶液のSiO2のモル数と透明性アルミノシリケート溶液(RS7)のSiO2のモル数との比は66.0であった。
【0115】
ついで、小麦粉(日清フーズ(株)製:薄力粉、グルテン含有量12重量%)8.7gを混合し、充分撹拌した後、これに濃度25wt%の硫酸水溶液692gを加え、室温で3時間攪拌熟成して、混合ヒドロゲルスラリー(RM7)を調製した。
【0116】
このときの組成は酸化物モル比で
Na2O/Al23=2.60
SiO2/Al23=1005
2O/Al23=18000
2SO4/Al23=320.8
グルテン/Al23 重量比=0.2
であった。
【0117】
Na型ZSM−5(R7)の合成
混合ヒドロゲルスラリー(RM7)をオートクレーブに充填し、170℃で50時間、撹拌しながら水熱処理を行った。その後、70℃まで冷却し、生成物を取り出し濾過、洗浄、乾燥してNa型ZSM−5(R4)を合成した。
Na型ZSM−5(R4)について結晶形を測定したが、無定型であった。従って、その他は測定しなかった。
【0118】
[比較例8]
Na型ZSM−5(R8)の合成
Al23濃度22wt%、Na2O濃度17wt%のアルミン酸ナトリウム水溶液17.3gを水298.4gで稀釈し、これをSiO2濃度24wt%、Na2O濃度7.7wt%の珪酸ナトリウム水溶液326.3gと水83.6gの稀釈珪酸ナトリウム水溶液に添加し、均一溶液とし、これに小麦粉(日清フーズ(株)製:薄力粉、グルテン含有量12wt%)6.3gを混合し、充分撹拌した。(A液)
別途、濃度11.2wt%の塩酸水溶液115.9gを準備した。(B液)
つぎに、濃度16.6wt%の塩化ナトリウム水溶液372gを調製し、撹拌しながらA液およびB液を添加し、水性反応混合物を調製した。
【0119】
このときの組成は酸化物モル比で
Na2O/Al23=2.6
SiO2/Al23=35
2O/Al23=1830
HCl/Al23=9.5
NaCl/Al23=34.0
グルテン/Al23 重量比=0.2
であった。
【0120】
水性反応混合物をオートクレーブに充填し、185℃で48時間、撹拌しながら水熱処理を行った。その後、70℃まで冷却し、生成物を取り出し濾過、洗浄、乾燥してNa型ZSM−5型ゼオライト(R8)を合成した。
【0121】
Na型ZSM−5型ゼオライト(R8)について、結晶形・結晶化度、組成、比表面積および形状サイズを測定し、結果を表1に示した。なお、Na型ZSM−5型ゼオライト(R8)は棒状粒子で、短軸長が0.4μm、長軸長が2.1μmであった。
【0122】
[比較例9]
ZSM−5(R9)の合成
SiO2濃度20wt%のシリカゾル(日揮触媒化成社製:SI−550)水溶液1500gを水472gで稀釈し、これに濃度40wt%のテトラプロピルアンモニウムハイドロオキサイド190gを添加し、均一溶液とした。この溶液を撹拌しながらAl23濃度22wt%、Na2O濃度17wt%のアルミン酸ナトリウム水溶液23.2gを添加し、これに小麦粉(日清フーズ(株)製:薄力粉、グルテン含有量12重量%)8.5gを混合し、充分撹拌して水性反応混合物を調製した。
【0123】
このときの組成は酸化物モル比で
Na2O/Al23=5.1
SiO2/Al23=100
2O/Al23=2000
TPAOH/Al23=7.5
グルテン/Al23 重量比=0.2
であった。
【0124】
水性反応混合物をオートクレーブに充填し、150℃で60時間、撹拌しながら水熱処理を行った。その後、70℃まで冷却し、生成物を取り出し濾過、洗浄、乾燥してZSM−5型ゼオライト(R9)を合成した。
【0125】
ZSM−5型ゼオライト(R9)について、結晶形・結晶化度、組成、比表面積および形状サイズを測定し、結果を表1に示した。なお、Na型ZSM−5型ゼオライト(R9)は棒状粒子で、短軸長が2.0μm、長軸長が2.2μmであった。
【0126】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
薄片状結晶片からなり、
薄片状結晶片の厚さが20〜100nmの範囲にあり、
薄片面の幅が0.5〜5μmの範囲にあることを特徴とするペンタシル型ゼオライト粒子。
【請求項2】
前記ペンタシル型ゼオライト粒子がSiO2、Al23およびM2O(Mはアルカリ金属)からなるZSM−5型ゼオライトであり、SiO2/Al23モル比が15〜500の範囲にあり、M2O/Al23モル比が1±0.2の範囲にあることを特徴とする請求項1に記載のペンタシル型ゼオライト粒子。
【請求項3】
下記の工程(a)〜(f)からなることを特徴とするペンタシル型ゼオライト粒子の製造方法。
(a)アルミン酸アルカリ水溶液と珪酸アルカリ水溶液と水酸化アルカリ水溶液と水とを混合して下記酸化物組成範囲の透明性アルミノシリケート溶液を調製する工程
2O/Al23 =13〜20 (Mはアルカリ金属を示す)
SiO2/Al23 =12〜18
2O/Al23 =150〜400 (Al23を1モルとした)
(b)SiO2/M2Oモル比が1〜5の範囲にある珪酸アルカリ水溶液を、透明性アルミノシリケート溶液のSiO2を1モルとしたときに珪酸アルカリ水溶液のSiO2のモル比が1〜3となる範囲で混合する工程
(c)グルテンを、Al23の重量を1としたときに0.01〜0.4の範囲で混合する工程
(d)ついで、下記モル比範囲となるように硫酸水溶液を混合して混合ヒドロゲルスラリーを調製する工程
2O/Al23 =2〜5
(Mはアルカリ金属を示す。なお、硫酸添加により、中和されたM2Oは、M2SO4となっている)
SiO2/Al23 =18〜1000
2O/Al23 =300〜2000
2SO4/Al23 =15〜30 (Al23を1モルとした)
(f)120〜300℃で5〜200時間、水熱処理する工程
【請求項4】
前記透明性アルミノシリケート溶液を、前記工程(b)で珪酸アルカリ水溶液と混合する前に0〜50℃で1〜1000時間熟成することを特徴とする請求項3に記載のペンタシル型ゼオライト粒子の製造方法。
【請求項5】
前記工程(d)についで、下記工程(e)を行うことを特徴とする請求項3または4に記載のペンタシル型ゼオライト粒子の製造方法。
(e)0〜50℃で1〜100時間熟成する工程
【請求項6】
前記工程(c)における透明性アルミノシリケート溶液と珪酸アルカリ水溶液との混合比率が、透明性アルミノシリケート溶液のSiO2のモル数を1としたときに珪酸アルカリ水溶液のSiO2のモル数が0.5〜3の範囲であることを特徴とする請求項3〜5のいずれかに記載のペンタシル型ゼオライト粒子の製造方法。
【請求項7】
得られたペンタシル型ゼオライト粒子が、薄片状結晶片粒子であり、薄片状結晶片粒子の厚さが20〜100nmの範囲にあり、薄片面の幅が0.5〜5μmの範囲にあることを特徴とする請求項3〜6のいずれかに記載のペンタシル型ゼオライト粒子の製造方法。
【請求項8】
得られたペンタシル型ゼオライト粒子が、SiO2、Al23およびM2OからなるZSM−5型ゼオライトであり、SiO2/Al23モル比が15〜500の範囲にあり、M2O/Al23モル比が1±0.2の範囲にあることを特徴とする請求項3〜7のいずれかに記載のペンタシル型ゼオライト粒子の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−246339(P2011−246339A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−42198(P2011−42198)
【出願日】平成23年2月28日(2011.2.28)
【出願人】(000190024)日揮触媒化成株式会社 (458)
【Fターム(参考)】