説明

新規ポリ(エチレングリコール)修飾化合物およびその用途

【課題】ペプチド部分とポリ(エチレングリコール)部分とを含有するペプチド系化合物
の提供。
【解決手段】本発明は、ポリ(エチレングリコール)部分(好ましくは直鎖状)が、20K
ダルトンより大きい(好ましくは20〜60Kダルトンの)分子量を有する、ペプチド部分と
ポリ(エチレングリコール)部分を含有するペプチド系化合物に関する。ペプチド部分は
モノマーであっても、ダイマーであっても、あるいはオリゴマーであってもよい。そのよ
うなペプチド系化合物は適宜リンカー部分および/またはスペーサー部分を含有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は米国特許法第119条(e)項に基づき、同時係属の2003年5月12日出願の米国仮出
願第60/470,246号に対し、優先権を主張する。この優先権出願の内容は参照してその全体
が本開示に取り込まれる。
【0002】
本発明は、ポリ(エチレングリコール)あるいは「PEG」を有する多数のペプチド系化
合物の修飾に関する。特に、本発明はPEG、好ましくは20〜60Kダルトンの直鎖状のPEG部
分で修飾されたペプチドモノマー、ペプチドダイマーおよびペプチドオリゴマーに関する
。さらに、本発明はそのようなPEG修飾化合物を用いた新規治療方法に関する。
【背景技術】
【0003】
近年、タンパク質の研究が進むにつれ、様々な活性を有する多数のペプチドが見出され
てきている。遺伝子組換え技術及びペプチドの有機合成法の進展に伴い、これらの生理活
性ペプチドおよびそれらの構造類似化合物が大量に得られるようになった。特別な活性を
有するこれらのペプチドの多くは医薬品にとって極めて有用である。
【0004】
そのようなペプチドの例としては、エリスロポエチン(EPO)受容体(EPO-R)に結合す
るペプチドがあげられる。EPOは165アミノ酸を有し、24番目、38番目、83番目および126
番目の4個所のアミノ酸にグリコシル化部位を有する、分子量約34,000の糖タンパク質ホ
ルモンである。EPOは赤血球前駆細胞の体細胞分裂と分化を刺激し、赤血球の産生を確実
にする。EPOは赤血球細胞形成過程で必須であり、このホルモンは、赤血球の低産生また
は産生の欠損により特徴付けられる血液の疾患の診断および治療の両方に潜在的に有用な
用途を有する。EPO-Rに相互作用する多くのペプチドが発見されている(Wrightonらの米
国特許第5,773,569号;およびWrightonらの米国特許第5,830,851号;Smith-Swintoskyら
のWO01/91780参照)。
【0005】
しかし、特に循環系に投与された場合のペプチドのクリアランスは一般的に非常に速い
。それゆえ、そのようなペプチドの持続性を改良することが望ましい。加えて、ペプチド
が異なる種の動物から得られ、ペプチドタンパク質工学によりデザインされ、および/ま
たは目的のものとは異なる構造を有する場合、抗体産生により重篤な症状を引き起こす危
険性がある。したがって、そのようなペプチドの抗原性を改良することも望ましい。これ
らのペプチドを医薬品として使用するために、改良された抗原性と持続性の両者を有する
ことが必要である。
【0006】
ポリ(エチレングリコール)のような巨大分子化合物を用いたペプチドの化学修飾が各
種ペプチドの抗原性と持続性を改良するのに効果的であることが示されている。それゆえ
、ポリ(エチレングリコール)およびポリ(エチレングリコール)誘導体はペプチド修飾
巨大分子試薬として広く用いられてきた。
【0007】
最も一般的な形状として、ポリ(エチレングリコール)は次の構造を有する:
【化1】

【0008】
上記のポリマー、アルファ-、オメガ-ヒドロキシル ポリ(エチレングリコール)は、
HO-PEG-OHという簡略な形態で表され、-PEG-という記号は次の構造単位を表す:
【化2】

【0009】
特定の理論または作用機序に限定されることなく、長鎖様PEG分子または部分は大量に
水和しており、水媒体に入れると速い運動状態になると考えられている。この速い運動は
、PEGの大量排除を引き起こすと考えられており、他の分子の接近と干渉を防止する。結
果として、(ペプチドのような)他の化学物質が結合すると、PEGポリマー鎖はそのよう
な化学物質を免疫応答および他のクリアランス機構から保護することができる。その結果
、PEG化は薬物動態を最適化し、バイオアベイラビリティ(bioavailability)を増加し、
免疫原性と投与回数を減少することにより、改良薬剤に効力と安全性をもたらす。
【0010】
例えば、PEGのいくつかの活性誘導体は、タンパク質および酵素に結合し、有益な結果
をもたらす。PEGは有機溶媒に可溶である。酵素に結合したPEGは、有機溶媒に可溶で活性
のあるPEG-酵素抱合体となる。PEGのタンパク質への結合は、未修飾タンパク質と比較し
て、免疫原性と腎臓でのPEG-タンパク質抱合体のクリアランス速度を減少し、抱合体の血
液循環寿命を劇的に増加する。
【0011】
例えば、治療用タンパク質、例えばインターロイキン類(Knauf, M. J.ら、J. Biol. C
hem. 1988、263、15,064;Tsutsumi, Y.ら、J. Controlled Release 1995、33、447)、
インターフェロン類(Kita, Y.ら、Drag Des. Delivery 1990、6、157)、カタラーゼ(A
buchowski, A.ら、J. Biol. Chem. 1977、252、3,582)、スーパーオキシド ディスムタ
ーゼ(Beauchamp, C. O.ら、Anal. Biochem. 1983、131、25)、およびアデノシンデアミ
ナーゼ(Chen, R.ら、Biochim. Biophy. Acta 1981、660、293)へのPEGの共有結合は生
体内での半減期を延長し、および/またはその免疫原性および抗原性を減少させることが
報告されている。
【0012】
加えて、表面に結合するPEGは、表面へのタンパク質および細胞の吸着を減少させ、表
面の電気的性質を変化させることができる。同様に、リポソームに結合するPEGはこれら
の粒子の血液循環寿命を大いに増加し、それにより場合によっては薬物送達の有用性を増
加することができる(J. M. Harris編、「ポリエチレングリコール化合物の生物医学的・
バイオ技術的応用(Biomedical and Biotechnical Applications of Polyethylene Glyco
l Chemistry)」、プレナム(Plenum)社、ニューヨーク、1992)。
【0013】
Johnsonらの米国特許第5,767,078号は、EPO-Rに結合できるペプチドモノマーのダイマ
ー化を開示している。ダイマー化はモノマーの共有結合に基づく。PEGはダイマー形成に
好ましいリンカーである。ここで具体的に用いられるPEGは3400または5000ほどの分子量
を有する。
【0014】
Smith-SwintoskyらのWO 01/91780は、成長因子型の受容体の結合とシグナルの開始を示
すペプチドのダイマーおよびマルチマーを開示している。開示されるリンカーはポリエチ
レングリコールである。開示されるリンカーはポリエチレングリコールである。しかし、
該文献にはPEGの適切な大きさやクラス(例えば、直鎖)を選択するための指針は提供さ
れていない。
【0015】
Weiらの米国特許第6,077,939号は、ポリペプチド、およびヒドラゾン結合もしくは還元
ヒドラゾン結合またはオキシム結合もしくは還元オキシム結合を介してN-末端のα-炭素
原子に共有結合する水溶性ポリマーから実質的になる組成物を開示している。水溶性ポリ
マーの分子量の範囲は200〜200Kダルトンの範囲である。PEGは水溶性ポリマーの例として
開示されている。PEGの分子量はほんの700から20Kダルトンであり、わずか5KダルトンのP
EG部分が好ましいといわれている。
【0016】
BaluらのWO 01/38342は、二つのペプチド鎖を結合するC1-12結合部分により形成される
ダイマーを開示している。これはダイマーのN-末端をPEG化し得ることを示している。し
かし、該公報は用いたPEGの分子量を特定もしていなければ、直鎖状か、分枝状かも示し
ていない。
【0017】
Saiferら(Adv. Exp. Med. Biol. (1994), 366: 377-87)は、1〜9本の高分子量(35K
〜120Kダルトン)のPEGを結合させたウシおよび組換え型ヒトのCu, Znスーパーオキシド
ディスムターゼ(SOD)のPEG付加体を記載している。Somackら(Free Rad. Res. Comms
. (1991), 12-13: 553-562)は、1〜4本の高分子量(41K〜72Kダルトン)のPEGを含むSOD
付加体を記載している。これら二つの参考文献はどちらもPEGを用いてペプチドを修飾す
ることを教示していない。その上、これらの化合物に用いられたPEG部分は、直鎖状PEGと
は反対に、分枝していると考えられている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
PEG修飾ペプチド系化合物部位でなされた進歩にもかかわらず、改良された抗原性と持
続性を有する新規PEG修飾化合物の必要性が残されている。
【0019】
この項における、および本明細書全体における参考文献の引用および/または議論は、
そのような文献が本発明の先行技術であることを承認していると解すべきではない。
【課題を解決するための手段】
【0020】
発明の要約
本発明は、ペプチド部分と、ポリ(エチレングリコール)部分が直鎖状で、20Kダルト
ン以上の分子量を有するようなポリ(エチレングリコール)部分とを含有するペプチド系
化合物に関する。
【0021】
好ましくは、ポリ(エチレングリコール)部分は約20〜60Kダルトンの分子量を有して
いる。より好ましくは、ポリ(エチレングリコール)部分は約20〜40Kダルトンの分子量
を有している。最も好ましくは、PEGは約20Kダルトンの分子量を有している。
【0022】
好ましくは、該ポリ(エチレングリコール)部分は1.20以下、より好ましくは1.1以下
、最も好ましくは1.05以下の多分散値(Mw/Mn)を有する。
【0023】
好ましくは、ペプチド部分はダイマーであり、リンカー部分で結合した二つのモノマー
ペプチドを含有する。その上、そのようなダイマーおよび他のマルチマーはヘテロダイマ
ーまたはヘテロマルチマーであってよい。
【0024】
一態様において、ペプチド部分はエリスロポエチン受容体に結合するペプチド類から選
択される。そのようなEPO-R結合ペプチド類の限定されない例としては、公開された国際
出願PCT/US00/32224(公開番号WO 01/38342 A2)、PCT/US96/09810(公開番号WO 96/4074
9)およびPCT/US01/16654(公開番号WO 01/91780 A1);米国特許第5,767,078号、第5,77
3,569号、第5,830,851号、第5,986,047号に開示されたものをあげることができる。さら
に、本発明のペプチド部分として用いることができる他の例示的なEPO-R結合ペプチド類
は、2003年5月12日出願の米国仮出願番号第60/479,245号に記載されている。本発明のペ
プチド部分として用いることができるさらに他のEPO-R結合ペプチド類の例は、2003年5月
12日出願の米国仮出願番号第60/469,993号に記載されている。またさらなる本発明のペプ
チド部分として用いることができるEPO-R結合ペプチド類は2003年5月12日出願の米国仮出
願第60/470,244号に記載されている。
【0025】
別の態様では、ペプチド部分はトロンボポエチン受容体(「TPO-R」)に結合するペプ
チド類から選択される。そのようなTPO-R結合ペプチド類の限定されない例は、米国特許
第6,552,008号、第6,506,362号、第6,498,155号、第6,465,430号、第6,333,031号、第6,2
51,864号、第6,121,238号、第6,083,913号、第5,932,546号、第5,869,451号、第5,683,98
3号、第5,677,280号、第5,668,110号、および第5,654,276号;ならびに公開された米国特
許出願第2003/0083361号、第2003/0009018号、第2002/0177166号および第2002/0160013号
に記載されている。
【0026】
好ましくは、そのようなペプチド系化合物はさらに、ペプチド部分とポリ(エチレング
リコール)部分との間にスペーサー部分を含有する。より好ましくは、スペーサー部分は
次の構造を有し:
-NH-(CH2)α-[O-(CH2)β]γ-Oδ-(CH2)ε-Y-
ここで、α、β、γ、δおよびεはそれぞれ整数であり、その数値は独立に選択される。
そのようなスペーサー部分は、より詳細に、「ポリ(エチレングリコール)修飾ペプチド
系化合物の新規スペーサー部分」という名称で、2003年5月12日出願の米国特許仮出願第6
0/469,996号に記載されている。
【0027】
好ましい態様では、
αは、1α6である整数;
βは、1β6である整数;
εは、1ε6である整数;
δは、0または1;
γは、0γ10である整数;および
YがNHまたはCOのいずれかである。
【0028】
特定の好ましい態様では、γ>1のとき、β=2である。
【0029】
特に好ましい一態様では、
α=β=ε=2;
γ=δ=1;および
YがNHである。
【0030】
他の態様では、
γ=δ=0;
2α+ε5;および
YはCOである。
【0031】
特定の別の態様では、
γ=δ=0;
α+ε=5;および
YはCOである。
【0032】
本発明はさらに、上記の一つまたはそれ以上のペプチド系化合物を含有する医薬組成物
に関する。
【発明を実施するための形態】
【0033】
詳細な説明
定義
ペプチド類のアミノ酸残基は以下のように略記する:フェニルアラニンはPheまたはF;
ロイシンはLeuまたはL;イソロイシンはIleまたはI;メチオニンはMetまたはM;バリンは
ValまたはV;セリンはSerまたはS;プロリンはProまたはP;スレオニンはThrまたはT;ア
ラニンはAlaまたはA;チロシンはTyrまたはY;ヒスチジンはHisまたはH;グルタミンはGl
nまたはQ;アスパラギンはAsnまたはN;リジンはLysまたはK;アスパラギン酸はAspまた
はD;グルタミン酸はGluまたはE;システインはCysまたはC;トリプトファンはTrpまたは
W;アルギニンはArgまたはR;およびグリシンはGlyまたはG。ペプチド類の非通常アミノ
酸は以下のように略記する:1-ナフチルアラニンは1-nal;2-ナフチルアラニンは2-nal;
N-メチルグリシン(サルコシンとしても知られる)はMeGまたはSc;およびアセチル化グ
リシン(N-アセチルグリシン)はAcG; ホモセリンメチルエーテルはHsm。
【0034】
「ペプチド」または「ポリペプチド」は、モノマーがアミド結合によりαアミノ酸が連
結しているポリマーをいう。ペプチドは2個またはしばしばそれより長いアミノ酸モノマ
ーである。一般に、当分野および本発明の文中で用いる場合、用語「ペプチド」は長さに
してわずか数個のアミノ酸残基のポリペプチドをいう。特に、本発明のペプチド類は好ま
しくは長さ約50アミノ酸残基以下、より好ましくは長さ約5〜40アミノ酸残基、さらによ
り好ましくは長さ約17〜40アミノ酸残基である。それに対して、ポリペプチドは任意の数
のアミノ酸残基を含有する。それゆえ、ポリペプチドはペプチド類、ならびにより長いア
ミノ酸の配列、例えば長さ数百のアミノ酸残基のタンパク質類を含む。
【0035】
本発明で用いられるペプチドはより長いポリペプチド配列、例えばタンパク質の配列の
部分である、またはそれに「由来する」ものであってよい。
【0036】
ここで用いられるように、語句「薬学的に許容される」は、ヒトに投与した際に「一般
に安全とされている」、例えば、生理学的に許容され、アレルギー反応または類似の有害
反応、例えば胃の異常、めまい等を生じない分子全体および組成物をいう。好ましくは、
ここで用いられているように、用語「薬学的に許容される」は、動物、特にヒトへの使用
のために連邦政府または州政府の監督官庁により認可され、あるいは米国薬局方または他
の一般的に認識される薬局方に掲載されることを意味する。用語「キャリア」は化合物と
共に投与される希釈剤、助剤、賦形剤またはビヒクルをさす。そのような製剤キャリアは
、水、およびピーナッツ油、ダイズ油、鉱油、ゴマ油等の石油、動物、植物または合成由
来の油を含む油類などの滅菌した液体である。水または水溶液、食塩溶液およびブドウ糖
溶液およびグリセロール溶液がキャリアとして好ましく、特に注射溶液として用いられる
。適当な製剤キャリアは、E.W. Martinの「レミントンの薬剤科学(Remington's Pharmac
eutical Sciences)」に記載されている。
【0037】
ここで用いられているように、用語「アゴニスト」は、その相補的な生物学的活性のあ
る受容体に結合し、その受容体を活性化し、生物学的応答を引き起こす、または受容体の
元からある生物学的活性を促進するような生物学的活性リガンドをいう。
【0038】
PEG部分
本発明で用いられるPEG部分は直鎖状で、20Kダルトンまたはそれ以上の分子量を有する
。好ましくは、PEGは約20〜60Kダルトンの分子量を有する。より好ましくは、PEGは約20
〜40Kダルトンの分子量を有する。最も好ましくは、PEGは20Kダルトンの分子量を有する

【0039】
PEG部分は本発明の化合物に共有結合で、直接的にペプチド部分、リンカー部分、また
はスペーサー部分に結合する。一実施態様において、PEG部分はペプチドモノマーまたは
ダイマーの少なくとも一つの末端(N-末端またはC-末端)に結合する:例えば、ペプチド
ダイマーのそれぞれのN-末端は結合したPEG部分(合計二つのPEG部分)を有する。一態様
において、PEGは二つのペプチドモノマーをダイマー化するリンカーとして機能する:例
えば、単一のPEG部分は同時にペプチドダイマーの両方のN-末端に結合することができる
。別の態様では、PEGはペプチドモノマーまたはダイマーのスペーサー部分に結合する。
好ましい態様では、PEGはペプチドダイマーのリンカー部分に結合する。高度に好ましい
態様において、PEGはスペーサー部分に結合し、前記スペーサー部分はペプチドダイマー
のリンカーLk部分に結合する。最も好ましくは、PEGはスペーサー部分に結合し、前記ス
ペーサー部分はリジンリンカーのカルボニル炭素またはリジンアミドのリンカーのアミド
窒素を介してペプチドダイマーに結合する。
【0040】
本発明のペプチド系化合物は複数のPEG部分(例えば、2、3、4、あるいはそれ以上)を
含有できる。特定の態様において、PEG部分は二つの直鎖状モノマーPEG鎖を含有する。好
ましくは、二つの直鎖状モノマーPEG鎖は、リジン残基またはリジンのアミド(カルボキ
シル基がアミド -CONH2に置換されているリジン残基)を介して結合している。より好ま
しくは、二つのPEG鎖はリジンのαおよびεアミノ基と結合し、一方カルボキシル基はス
ペーサー部分への結合のために、ヒドロキシスクシンイミジルエステルとして活性化され
る。例えば、リジンのアミドが二つのモノマーPEG鎖を結合すると、ダイマーは構造的に
は式I(Formula I)のように図示され、式IIの(Formula II)ように要約される:
【化3】

【0041】
式Iにおいて、N2はリジンのε-アミノ基の窒素原子を表し、N1はリジンのα-アミノ基
の窒素原子を表す。好ましい態様では、二つのペプチドモノマーのC-末端リジンはL-リジ
ンである。別の態様では、一つまたはそれ以上のリジン残基がD-リジンであってよい。
【0042】
化合物が一つ以上のPEG部分を含有する場合、複数のPEG部分は同一または異なる化学部
分であってよい(例えば、異なる分子量のPEG)。いくつかの場合では、PEG化の程度(ペ
プチドに結合したPEG部分の数、および/またはPEGが結合したペプチドの総数)は、PEG化
反応におけるPEG分子対ペプチド分子の比率、ならびに反応混合物中にそれぞれがあるな
らば合計濃度に影響を受ける。一般に、(過剰でない未反応のペプチドおよび/またはPEG
に提供される反応効率という点からの)最適PEG対ペプチド比は、望ましいPEG化の程度(
例えば、モノ-、ジ-、トリ-等)、選択したポリマーの分子量、ポリマーが分枝している
か否か、特定の結合方法の実験条件のような因子により決定される。
【0043】
当業者に入手可能な多くのPEG結合方法がある[例えば、Goodsonら(1990)Bio/Technol
ogy 8: 343(部位特異的突然変異誘発後のグリコシル化部位におけるインターロイキン-2
のPEG化);EP 0 401 384(PEGとG-CSFとのカプリング);Malikら、(1992)Exp. Hemat
ol. 20: 1028-1035(トレシルクロリドを用いたGM-CSFのPEG化);PCT公開番号WO 90/128
74(システイン特異的mPEG誘導体を用いて組換え導入したシステイン残基を含むエリスロ
ポエチンのPEG化);米国特許第5,757,078号(EPOペプチドのPEG化);米国特許第5,612,4
60号(ポリペプチド修飾のためのポリアルキレン酸化物の活性炭酸塩),米国特許第5,672
,662号(バイオ技術応用のためのポリ(エチレングリコール)およびプロピオン酸または
ブタン酸とモノ置換した関連ポリマー、およびその官能基誘導体);米国特許第6,077,93
9号(ペプチドのN-末端α-炭素のPEG化);Veroneseら、(1985)Appl. Biochem. Bioech
nol 11: 141-142(PEG-ニトロフェニルカーボネート (「PEG-NPC」)またはPEG-トリクロ
ロフェニルカーボネートを用いたペプチドのN-末端α-炭素のPEG化);およびVeronese (
2001) Biomaterials 22: 405-417 (ペプチドおよびタンパク質のPEG化についての総説)を
参照)。
【0044】
例えば、PEGは反応基を介してアミノ酸残基に共有結合させることができる。反応基は
活性化PEG分子が結合し得る基である(例えば、遊離のアミノ基またはカルボキシル基)
。例えば、N-末端アミノ酸残基とリジン(K)残基は遊離のアミノ基を有し;およびC-末
端アミノ酸残基は遊離のカルボキシル基を有する。スルフィドリル基(例えば、システイ
ン残基上に見出されるもの等)もまた、PEG結合のための反応基として用いることができ
る。加えて、ポリペプチドのC-末端に特異的に活性基(例えば、ヒドラジド基、アルデヒ
ド基および芳香族アミノ基)を導入するための酵素介助法が記載されている[Schwarzら(
1990)Methods Enzymol.184: 160;Roseら(1991)Bioconjugate Chem. 2: 154;Gaertne
rら(1994)J. Biol. Chem. 269: 7224]。
【0045】
例えば、PEG分子は、異なる反応部分を有するメトキシ化PEG(「mPEG」)を用いてアミ
ノ基に結合させることができる。そのような反応部分の限定されない例としては、スクシ
ンイミジルスクシネート(SS)、スクシンイミジルカーボネート(SC)、mPEG-イミデー
ト、パラ-ニトロフェニルカーボネート(NPC)、スクシンイミジルプロピオネート(SPA
)および塩化シアヌルがあげられる。反応部分を有するようなmPEG類の限定されない例と
しては、mPEG-スクシンイミジルスクシネート(mPEG-SS)、mPEG-スクシンイミジルカー
ボネート(mPEG-SC)、mPEG-イミデート、mPEG-パラ-ニトロフェニルカーボネート(mPEG
-NPC)、mPEG-スクシンイミジルプロピオネート(mPEG-SPA)およびmPEG-塩化シアヌルが
あげられる。
【0046】
PEGの結合が非特異的であり、特異的なPEG結合を含むペプチドが望まれる場合、目的の
PEG化化合物はPEG化化合物の混合物から精製することができる。例えば、N-末端PEG化ペ
プチドが所望されるならば、N-末端PEG化型はランダムにPEG化されたペプチドの集団から
精製(すなわち、この部分を他のモノPEG化部分から分離)することができる。
【0047】
好ましい態様において、PEGは部位特異的にペプチドに結合する。成長ホルモン放出因
子の強いアナログのN-末端、側鎖およびC-末端の部位特異的PEG化は、固相合成により実
施される[Felixら、(1995)Int. J. Peptide Protein Res. 46: 253]。別の部位特異的
な方法には、N-末端スレオニンの過ヨウ素酸ナトリウム酸化により生ずるN-末端の反応ア
ルデヒド基を介した部位特異的方法でのリポソーム表面移植PEG鎖の先端にペプチドを結
合する方法をあげることができる [Zalipskyら(1995)Bioconj. Chem. 6: 705]。しかし
、この方法はN-末端にセリン残基またはスレオニン残基を有するポリペプチドに限定され
る。
【0048】
一方法において、選択的N-末端PEG化は、特定のタンパク質の誘導体化で利用可能な異
なる型の主要なアミノ基(リジン対N-末端)の差がある反応性を利用する還元アルキル化
によって達成される。適切な反応条件下で、PEGを含むカルボニル基はペプチドのN-末端
に選択的に結合する。例えば、リジン残基のε-アミノ基とペプチドのN-末端のα-アミノ
基のpKaの違いを生かすpHで反応を行うことにより、タンパク質のN-末端を選択的にPEG化
することができる。そのような選択的結合により、他の反応基(例えば、リジン側鎖のア
ミノ基)の顕著な修飾なしに、PEG化が主としてタンパク質のN-末端で起きる。還元アル
キル化を用いて、PEGはタンパク質をカプリングするために単一の反応性アルデヒドを有
するべきである(例えば、PEGプロピオンアルデヒドを用いることができる)。
【0049】
部位特異的突然変異誘発は、部位特異的ポリマー結合をペプチドにさせるために用いら
れるさらなるアプローチである。この方法により、ペプチドのアミノ酸配列は適当な反応
基をペプチド内の目的の位置へ取り込むようにデザインされる。例えば、WO 90/12874は
、システイン残基の挿入または他の残基のシステイン残基への置換により修飾されたタン
パク質の部位特異的PEG化を記載している。この公報はまた、EPOに組換え的に導入された
システイン残基を用いてシステイン特異的mPEG誘導体を反応することによるmPEG-エリス
ロポエチン(「mPEG-EPO」)の調製を記載している。
【0050】
PEG部分がスペーサー部分またはリンカー部分に結合する場合、類似した結合反応を用
いることができる。この場合、リンカーまたはスペーサーは反応基を含み、適切な相補的
反応基を含む活性化PEG分子が共有結合を生じるために用いられる。好ましい態様では、
リンカーまたはスペーサーの反応基は末端反応基である(すなわち、リンカーまたはスペ
ーサーの末端に位置する)。
本発明のペプチド、ペプチドダイマーおよび他のペプチド系分子は、水溶性ポリマーを
該分子の受容体結合部(例えば、ペプチド+スペーサー)につなげる各種化学物質のいず
れかを用いて、水溶性ポリマー(例えばPEG)に結合することができる。典型的な態様は
、水溶性ポリマーが受容体結合部に共有結合するために、単一の結合接合部を用いるが、
別の態様では、異なる種の水溶性ポリマーが、別の結合接合部(スペーサーとの、および
/またはスペーサーまたは両方のペプチド鎖との共有結合接合部を含む)で、受容体結合
部に結合するような、さらなる変種を含む複数の結合接合部を用いることができる。いく
つかの態様では、ダイマーまたは高次マルチマーは異なる種のペプチド鎖(すなわち、ヘ
テロダイマーまたは他のヘテロマルチマー)を含有する。一例であって、これに限られな
いが、ダイマーはPEG結合接合部を有する第一のペプチド鎖と、PEG結合接合部を欠くか、
第一のペプチド鎖とは異なる結合化学物質を用いる第二のペプチド鎖とを含有し、いくつ
かの変法では、スペーサーはPEG結合接合部を含むか、またはこれを欠き、前記スペーサ
ーは、PEG化されていれば、第一および/または第二のペプチド鎖のものとは異なる結合化
学物質を利用する。さらなる態様は受容体結合部のスペーサー部分に結合するPEG、およ
び分子のペプチド部分のアミノ酸の一つの側鎖に結合する異なる水溶性ポリマー(例えば
、炭水化物)を利用する。
【0051】
多種のポリエチレングリコール(PEG)類は、受容体結合部(ペプチド+スペーサー)
のPEG化に用いることができる。実質的に、適切な反応性PEG試薬を用いることができる。
好ましい態様では、反応性PEG試薬は、受容体結合部への接合部にカルバメート結合また
はアミド結合を形成する。適当な反応性PEG類には、NOF社(〒150-6019 東京都渋谷区恵
比寿4丁目20-3 恵比寿ガーデンプレイスタワー)の薬物送達システムカタログ(2003)
およびネクター・セラピューティクス(35806 アラバマ州ハンツビル ディスカバリー
ドライブ490)の分子工学技術カタログ(2003)で市販されているものが含まれるが、こ
れらに限定されない。例えば、限定されないが、次のPEG試薬が各種態様で、しばしば好
ましく用いられる:mPEG2-NHS、mPEG2-ALD、マルチアームPEG、mPEG(MAL)2、mPEG2(MAL)
、mPEG-NH2、mPEG-SPA、mPEG-SBA、mPEG-チオエステル、mPEG-ダブルエステル、mPEG-BTC
、mPEG-ButyrALD、mPEG-ACET、ヘテロ官能基PEG類(NH2-PEG-COOH、Boc-PEG-NHS、Fmoc-P
EG-NHS、NHS-PEG-VS、NHS-PEG-MAL)、PEGアクリレート類(ACRL-PEG-NHS)、PEG-リン脂
質(例えば、mPEG-DSPE)、当業者により選択された化学物質により活性化されるグリセ
リン系PEGのGLシリーズを含むサンブライト(SUNBRITE)シリーズのマルチアームPEG、限
定はされないが、カルボキシル-PEG、p-NP-PEG、トレシル-PEG、アルデヒドPEG、アセタ
ール-PEG、アミノ-PEG、チオール-PEG、マレイミド-PEG、ヒドロキシル-PEG-アミン、ア
ミノ-PEG-COOH、ヒドロキシル-PEG-アルデヒド、カルボン酸無水物型PEG、機能化PEG-リ
ン脂質および他の類似および/または特定の応用と使用について当業者により選択された
適切な反応性PEG-リン脂質。
【0052】
ペプチド部分
ヒトを含む動物、微生物または植物由来の任意のペプチド、および遺伝子工学により、
および合成により産生されたペプチドをペプチド部分として用いることができる。例とし
ては、EPO−Rに結合するペプチドおよびTPO-Rに結合するペプチドが含まれる。
【0053】
好ましくは、ペプチド部分は、一つまたはそれ以上のペプチドを含有し、各ペプチドの
長さは50アミノ酸以下、より好ましくは約10〜25アミノ酸、最も好ましくは約12-18アミ
ノ酸である。
【0054】
好ましい一態様において、ペプチド部分は、米国特許第5,773,569号;第5,830,851号;
およびWrightonらの第5,986,047号;WrightonらのPCT公開番号WO 96/40749;JohnsonとZi
vinの米国特許第5,767,078号およびPCT公開番号 96/40772;BaluのPCT公開番号WO 01/383
42;Smith-SwintoskyらのWo 01/91780;2003年5月12日出願の米国仮出願第60/470,245号
;2003年5月12日出願の米国仮出願第60/469,993号;および2003年5月12日出願の米国仮出
願第60/470,244号に開示されるようなEPO-Rに結合するペプチド類から選択される。
【0055】
好ましい別の態様では、ペプチド部分はトロンボポエチン受容体(「TPO-R」)に結合
するペプチド類から選択される。そのようなTPO-R結合ペプチドの限定されない例として
は、米国特許第6,552,008号、第6,506,362号、第6,498,155号、第6,465,430号、第6,333,
031号、第6,251,864号、第6,121,238号、第6,083,913号、第5,932,546号、第5,869,451号
、第5,683,983号、第5,677,280号、第5,668,110号、および第5,654,276号;および公開米
国特許出願第2003/0083361号、第2003/0009018号、第2002/0177166号および第2002/01600
13号に開示されるものがあげられる。
【0056】
一態様において、ペプチド部分は、長さ10〜40、またはそれ以上のアミノ酸残基で、配
列X3X4X5GPX6TWX7X8を有するモノマーペプチドである。ここでそれぞれのアミノ酸は標準
的な一文字略記で示される;X3はC;X4はR、H、LまたはW;X5はM、FまたはI;X6は20個の
遺伝コードされるL-アミノ酸のいずれか一つから独立に選択される;X7はD、E、I、Lまた
はV;X8はCで、該ペプチドはエリスロポエチン受容体(EPO-R)に結合し、活性化し、あ
るいは同様にEPOアゴニストとして作用する。
【0057】
別の態様では、ペプチド部分は、コアのアミノ酸配列 LYACHMGPITX1VCQPLR を含有す
る、長さ17〜約40アミノ酸のモノマーペプチドであり、ここでそれぞれのアミノ酸は標準
的な一文字略記で示され;X1はトリプトファン(W)、1-ナフチルアラニン(1-nal)また
は2-ナフチルアラニン(2-nal)である。
【0058】
また別の態様では、ペプチド部分は、Ac-Ile-Glu-Gly-Pro-Thr-Leu-Arg-Gln-Nal(1)-Le
u-Ala-Ala-Arg-SarまたはAc-Ile-Glu-Gly-Pro-Thr-Leu-Arg-Gln-Trp-Leu-Ala-Ala-Arg-Sa
r等の配列を有する一つまたはそれ以上のTPO-R結合ペプチドを含有する。
【0059】
本発明のいくつかの態様によれば、20個の遺伝的にコードされたL-アミノ酸または立体
異性のD-アミノ酸のいずれかから独立に選択される、二つまたはそれ以上の、好ましくは
2〜6アミノ酸残基が上記のコア配列の一方または両方の末端にカップリングする。例えば
、配列GGはしばしばペプチドの合成の際に容易にコア配列の一方または両方の端に付加さ
れる。本発明はまた、これらのペプチドの結合体およびその誘導体、ならびにEPO-R結合
性を保持したペプチドのペプチド擬似体を提供する。
【0060】
20個の通常アミノ酸の立体異性体(例えば、D-アミノ酸)、a,a-二置換アミノ酸等の非
天然アミノ酸、N-アルキルアミノ酸、乳酸、および他の非通常アミノ酸もまた、本発明の
化合物に適した成分である。非通常アミノ酸の例としては、限定されるものではないが、
β-アラニン、3-ピリジルアラニン、4-ヒドロキシプロリン、O-ホスホセリン、N-メチル
グリシン、N-アセチルセリン、N-ホルミルメチオニン、3-メチルヒスチジン、5-ヒドロキ
シリジン、ノルロイシン、ならびに他の類似アミノ酸およびイミノ酸が含まれる。
【0061】
好ましい態様において、本発明のペプチド部分はコア配列の二つのシステイン残基の間
に分子内ジスルフィド結合を含んでいる。例えば:
【化4】

【0062】
ダイマーおよびオリゴマーペプチド
好ましい態様において、本発明のモノマーペプチド部分はダイマー化またはオリゴマー
化されてダイマーまたはオリゴマーを形成する。
【0063】
一態様において、本発明のペプチドモノマーをビオチン/ストレプトアビジン系を用い
てオリゴマー化することができる。ペプチドモノマーのビオチン化類似体は標準的技術で
合成できる。例えば、ペプチドモノマーをC-末端ビオチン化できる。これらのビオチン化
モノマーはその後、ストレプトアビジンとインキュベートすることにより[例えば、4:1
のモル比で、室温、リン酸緩衝液化食塩水(PBS)またはHEPES緩衝液化RPMI培地(Invitr
ogen)中、1時間]、オリゴマー化される。この態様の変法において、ビオチン化ペプチド
モノマーは、多くの市販されている抗ビオチン抗体のいずれか一つ[例えば、Kirkegaard
& Perry Laboratories, Inc.(ワシントンDC)のヤギ抗ビオチンIgG]とインキュベートす
ることによりオリゴマー化される。
【0064】
リンカー
好ましい態様では、本発明のペプチドモノマーは少なくとも一つのリンカー部分に共有
結合することによりダイマー化する。リンカー(Lk)部分は好ましくは、必要ではないが
、任意に一つまたは二つの-NH-結合部を末端に有し、任意に一つまたはそれ以上の得られ
る炭素原子が低級アルキル置換基に置換されているC1-12結合部分である。好ましくは、
リンカーLkは-NH-R-NH-を含有し、ここでRは他の分子部分に結合できるような(例えば、
固体支持体の表面に存在するような)カルボキシル基またはアミノ基のような官能基に置
換された低級(C1-6)直鎖状炭化水素である。最も好ましくは、リンカーはリジン残基ま
たはリジンのアミド(カルボキシル基がアミド部分-CONH2に置換されているリジン残基)
である。好ましい態様において、リンカーはそれぞれのモノマーのC-末端アミノ酸に同時
に結合して、二つのペプチドモノマーのC-末端を架橋する。
【0065】
例えば、C-末端リンカーLkがリジンアミドである場合、ダイマーは構造的に式I(Formu
la I)で示されるように表され、式II(Formula II)で示されるように要約される:
【化5】

【0066】
式Iにおいて、N2はリジンのε-アミノ基の窒素原子を表し、N1はリジンのα-アミノ基
の窒素原子を表す。ダイマー構造は、リジンを含有するリンカー部分のαおよびεアミノ
基の両方に結合するペプチドを示すために[ペプチド]2-Lkと、リジンを含有するリンカー
部分のαおよびεアミノ基の両方に結合するN-末端をアセチル化したペプチドを示すため
に[Ac-ペプチド]2-Lkと、分子内ジスルフィドループを含むそれぞれのペプチドを有する
、リジンを含有するリンカー部分のαおよびεアミノ基の両方に結合するN-末端をアセチ
ル化したペプチドを示すために[Ac-ペプチド、ジスルフィド]2-Lkと、分子内ジスルフィ
ドループと、リンカー部分のC-末端とPEG部分の間に共有結合を形成するスペーサー分子
を含むそれぞれのペプチドを有する、リジンを含有するリンカー部分のαおよびεアミノ
基の両方に結合するN-末端をアセチル化したペプチドを示すために[Ac-ペプチド、ジスル
フィド]2-Lk-スペーサー-PEGと記載される。
【0067】
一般的に、必要ではないが、分子間ジスルフィド結合の形成とは別の技術によりダイマ
ー化したペプチドダイマーもまた、ペプチドモノマーのシステイン残基の間に一つまたは
それ以上のジスルフィド結合を含む。例えば、二つのモノマーは一つまたはそれ以上の分
子間ジスルフィド結合により架橋される。好ましくは、二つのモノマーは少なくとも一つ
の分子内ジスルフィド結合を含む。最も好ましくは、ペプチドダイマーのモノマー両方は
分子内ジスルフィド結合を含み、その結果、それぞれのモノマーは環状基を含む。
【0068】
ペプチド修飾
また、本発明の他の化合物を産生するために、本発明のペプチド化合物のアミノ末端お
よび/またはカルボキシ末端を修飾できる。アミノ末端修飾には、メチル化(すなわち、-
NHCH3または-N(CH3)2)、アセチル化(例えば、酢酸またはそのハロゲン化誘導体、例え
ばα-クロロ酢酸、α-ブロモ酢酸、またはα-ヨード酢酸との)、ベンジルオキシカルボ
ニル(Cbz)基の付加、またはRCOO-で定義されるカルボキシレート官能基またはR-SO2-で
定義されるスルホニル官能基(ここでRはアルキル、アリール、ヘテロアリール、アルキ
ルアリール等および類似の基からなる群から選択される)を含む任意のブロッキング基を
用いたアミノ末端のブロッキングが含まれる。また、プロテアーゼ感受性を減少し、ある
いはペプチド化合物の構造を限定するために、N-末端にdesアミノ酸を取り込むことがで
きる(その結果、N-末端アミノ基はなくなる)。好ましい態様では、N-末端はアセチル化
されている。最も好ましい態様では、N-末端グリシンはアセチル化され、N-アセチルグリ
シン(AcG)となっている。
【0069】
カルボキシ末端の修飾としては、遊離酸をカルボキシアミド基に置換する、または構造
的制約を導入するためにカルボキシ末端にラクタム環を形成することがあげられる。また
、本発明のペプチドを環状化し、またはペプチドの末端にdesアミノまたはdesカルボキシ
残基を取り込むことができ、その結果末端のアミノ基またはカルボキシル基がなくなり、
プロテアーゼ感受性を減少し、あるいはペプチド化合物の構造を限定することができる。
本発明の化合物のC-末端官能基としては、アミド、アミド低級アルキル、アミドジ(低級
アルキル)、低級アルコキシ、ヒドロキシおよびカルボキシ、およびそれらの低級エステ
ル誘導体、ならびにその薬学的に許容される塩をあげることができる。
【0070】
天然に存在する20個の遺伝的にコードされるアミノ酸(または立体異性Dアミノ酸)の
側鎖を他の側鎖、例えば、アルキル、低級アルキル、環状4-、5-、6-または7-員アルキル
、アミド、アミド低級アルキル、アミドジ(低級アルキル)、低級アルコキシ、ヒドロキ
シ、カルボキシ、およびそれらの低級エステル誘導体等の基、および4-、5-、6-または7-
員複素環と置換できる。特に、プロリン残基の環サイズが5員から4、6または7員に変えら
れるプロリン類似体を用いることができる。環状基は飽和であっても、不飽和であっても
よく、不飽和の場合、芳香環または非芳香環である。複素環基には好ましくは、一つまた
はそれ以上の窒素、酸素および/または硫黄ヘテロ原子が含まれる。そのような基の例と
しては、フラザニル、フリル、イミダゾリジニル、イミダゾリル、イミダゾリニル、イソ
チアゾリル、イソクサゾリル、モルホリニル(例えば、モルホリノ)、オキサゾリル、ピ
ペラジニル(例えば、1-ピペラジニル)、ピペリジル(例えば、1-ピペリジル、ピペリジ
ノ)、ピラニル、ピラジニル、ピラゾリジニル、ピラゾリニル、ピラゾリル、ピリダジニ
ル、ピリジル、ピリミジニル、ピロリジニル(例えば、1-ピロリジニル)、ピロリニル、
ピロリル、チアジアゾリル、チアゾリル、チエニル、チオモルホリニル(例えば、チオモ
ルホリノ)、およびトリアゾリルをあげることができる。これらの複素環基は置換されて
いても、非置換であってもよい。基が置換されている場合、置換基はアルキル、アルコキ
シ、ハロゲン、酸素、または置換もしくは非置換フェニルである。
【0071】
また、容易にリン酸化および他の方法[例えば、Hrubyら、(1990)Biochem J. 268: 24
9-262に記載されている方法]により、ペプチド部分を修飾できる。
【0072】
本発明のペプチド部分はまた、類似の生物活性を有する非ペプチド化合物の構造モデル
として機能する。当業者は、リードペプチド化合物と同様または類似の所望の生物活性を
有するが、溶解性、安定性ならびに加水分解およびタンパク質分解に対しての感受性につ
いて、リードよりも良い活性を有する化合物を構築するための各種技術が得られることを
認識する[MorganとGainor(1989)Ann. Rep. Med. Chem. 24:243-252参照]。これらの
技術には、ペプチドのバックボーンをホスホネート、アミデート、カルバメート、スルホ
ンアミド、2級アミンおよびN-メチルアミノ酸からなるバックボーンに置換することが含
まれる。
【0073】
モノマーペプチド部分、ダイマーペプチド部分またはオリゴマーペプチド部分は直接PE
G部分に結合するか、または一つまたはそれ以上のスペーサー部分を介して結合する。
【0074】
スペーサー部分
モノマー、ダイマーまたはオリゴマーペプチド部分がスペーサー部分を介してPEG部分
に結合している態様において、スペーサー部分は任意に、末端に-NH-結合部または-C(O)O
-基を有する部分である。例えば、スペーサーは、他の分子部分に結合することができる
、カルボキシル基またはアミノ基等の官能基、または一つもしくはそれ以上のグリシン(
G)残基、または6-アミノヘキサン酸等のアミノヘキサン酸(Ahx);またはリジン(K)
残基、またはリジンアミド(K-NH2、カルボキシル基がアミド部分-CONH2に置換されてい
るリジン残基)と任意に置換される低級(C1-12)直鎖状炭化水素である。
【0075】
好ましい態様では、スペーサー部分は次の構造を有する:
【化6】

ここで、α、β、γ、δおよびεはそれぞれ整数であり、その数値は独立に選択される。
【0076】
好ましい態様において、
αは、1α6である整数;
βは、1β6である整数;
εは、1ε6である整数;
δは、0または1;
γは、0γ10である整数;および
YがNHまたはCOのいずれかである。
【0077】
特定の好ましい態様では、γ>1のとき、β=2である。
【0078】
特に好ましい一態様では、
α=β=ε=2;
γ=δ=1;および
YがNHである。
【0079】
他の態様では、
γ=δ=0;
2α+ε5;および
YはCOである。
【0080】
一態様では、
γ=δ=0;
α+ε=5;および
YはCOである。
【0081】
本発明によれば、水溶性部分(好ましくはPEG)は、スペーサーのNH末端に結合する。
水溶性部分は直接スペーサーに結合してもよいし、間接的に、例えばアミドまたはカルバ
メート結合を用いて結合してもよい。ペプチド部分はスペーサーのY末端に結合する。ス
ペーサーはペプチドのC-末端またはN-末端のいずれに結合してもよい。それゆえ、スペー
サーがペプチドのC-末端に結合する態様において、YはNHである。スペーサーがペプチド
のN-末端に結合する態様において、YはCOである。好ましい態様では、本発明のスペーサ
ーは下記のリジンリンカーによりペプチドダイマーに結合する。そのような態様において
、スペーサーは好ましくはリンカー部分のC-末端に結合し、YはNHである。別の好ましい
態様では、本発明のスペーサーは三官能基リンカー(下記)の部分としてペプチドに結合
する。その態様において、YはCOであり、三官能基リンカーのN原子とアミド結合を形成す
る。
【0082】
スペーサー部分はペプチド合成の間にペプチドに取り込まれ得る。例えば、スペーサー
が遊離アミノ基と、別の分子部分へ結合させる第二の官能基(例えば、カルボキシル基ま
たはアミノ基)とを含む場合、スペーサーは固体支持体に結合され得る。その後、ペプチ
ドは直接、スペーサーの遊離アミノ基に、標準的な固相法により合成される。
【0083】
好ましい態様において、二つの官能基を含むスペーサーは最初に第一の官能基を介して
固体支持体に結合される。ダイマーペプチドを合成する場合、任意に、ペプチド合成の開
始部位として機能できる二つまたはそれ以上の官能基、および他の分子部分を結合できる
さらなる官能基(例えば、カルボキシル基またはアミノ基)を持っているリンカーLk部分
は、スペーサーの第二の官能基とリンカーの第三の官能基を介してスペーサーに結合する
。その後、二つのペプチドモノマーが、リンカーLk部分の二つの反応性窒素基上に直接、
固相合成技術の変法で合成される。例えば、遊離のアミン基を持つ固体支持体を結合した
スペーサーは、リンカーの遊離のカルボキシル基を介してリジンリンカーと反応すること
ができる。
【0084】
ペプチド部分がスペーサー部分に結合する別の態様では、当該スペーサー部分はペプチ
ド合成後にペプチドに結合され得る。そのような結合を当分野で十分確立した方法により
達成することができる。一実施態様において、リンカーは、少なくとも一つの、合成され
たペプチドの標的官能基に結合させるのに適している官能基を含む。例えば、遊離アミン
基を有するスペーサーはペプチドのC-末端カルボキシル基と反応できる。別の例では、遊
離のカルボキシル基を有するスペーサーはペプチドN-末端またはリジン残基の遊離のアミ
ン基と反応できる。また別の例では、遊離のスルフィドリル基を含むスペーサーは酸化に
よりペプチドのシステイン残基に結合し、ジスルフィド結合を形成する。
【0085】
医薬組成物
本発明の別の局面では、上記PEG修飾ペプチド系化合物の医薬組成物が提供される。そ
のような組成物の投与により軽減される、または調節される症状には上記のようなものが
あげられる。そのような医薬組成物は、経口、非経口(筋肉内、腹腔内、静脈内(IV)ま
たは皮下注射)、経皮(受身的に、またはイオントフォレーゼもしくはエレクトロポレー
ションを用いた)、経粘膜(経鼻、経膣、経直腸または舌下)投与経路による、または生
物侵食挿入を用いた投与のためのもので、それぞれの投与経路に適した剤形に製剤される
。一般に、薬学的に許容されうる希釈剤、防腐剤、溶解剤、乳化剤、助剤および/または
キャリアとともに、有効量の治療ペプチド(例えば、EPO-Rに結合するペプチド)を含有
する医薬組成物が本発明に包含される。そのような組成物には、各種緩衝液内容物(例え
ば、Tris-HCl、酢酸塩、リン酸塩)、pH、およびイオン強度の希釈剤;界面活性剤および
溶解剤(例えば、Tween 80、Poysorbate 80)、抗酸化剤(例えば、アスコルビン酸、メ
タ重亜硫酸ナトリウム)、防腐剤(例えば、チメロサール、ベンジルアルコール)および
充填物質(例えば、ラクトース、マンニトール)等の添加剤;ポリ乳酸、ポリグリコール
酸等の重合化合物の微粒子調剤、またはリポソームへの物質の取り込みが含まれる。ヒア
ルロン酸もまた用いることができる。そのような組成物は、本タンパク質および誘導体の
物理的状態、安定性、インビボの放出速度およびインビボのクリアランスに影響する。例
えば、ここに参照して取り込まれる、レミントンの薬剤科学、第18版(1990、マック・パ
ブリッシング・カンパニー、18042、ペンシルベニア州イーストン)、1435-1712ページを
参照とする)。組成物は液体の形状で、あるいは乾燥粉末(例えば、凍結乾燥)の形状で
調製される。
【0086】
経口送達
ここでの使用を意図しているのは経口固体剤形であり、これは、ここに参照して取り込
まれる、レミントンの薬剤科学、第18版(1990、マック・パブリッシング・カンパニー、
18042、ペンシルベニア州イーストン)、第89章に記載されている。固体剤形には、錠剤
、カプセル、丸薬、トローチまたはトローチ剤、カプセル、小球、粉末または顆粒が含ま
れる。リポソームによるカプセル封入またはタンパク質様体によるカプセル封入が本組成
物を製剤するために用いられる(例えば、米国特許第4,925,673号に報告されたタンパク
質様ミクロスフェア)。リポソーム・カプセル封入体が用いられ、リポソームは各種ポリ
マーから誘導される(例えば、米国特許第5,013,556号)。治療のために可能な固体剤形
の記載は、ここに参照して取り込まれる、現代薬剤学(Modern Pharmaceutics)、G.S.Ba
nkerとC.T.Rhodes編、第10章(1979)のMarshall, K.によりなされている。一般に、製剤
にはEPO-Rアゴニストペプチド(またはその化学修飾体)および、胃の環境から保護し、
腸において生物活性物質を放出するために不活性成分を含有する。
【0087】
ここで使用を意図しているのはまた、経口投与のための液体剤形で、薬学的に許容され
る乳化剤、溶液、懸濁剤およびシロップを含み、不活性希釈剤;湿潤剤、乳化剤および懸
濁剤等の助剤;ならびに甘味剤、着香料および香料を含む他の成分を含む。
【0088】
ペプチドは化学的に修飾され、その結果として、誘導体の経口送達が効果的となる。一
般に、意図される化学修飾は、少なくとも一つの部分の成分分子自身への結合であり、前
記部分は、(a) タンパク質分解の阻害;および(b) 胃または腸からの血流への取り込みを
可能にする。成分または成分類の全体的な安定性の増加および体内の循環時間の増加も望
まれる。上で議論したように、PEG化は薬剤用途のための好ましい化学修飾である。用い
られる他の部分には、プロピレングリコール、エチレングリコールとプロピレングリコー
ルとのコポリマー、カルボキシメチルセルロース、デキストラン、ポリビニルアルコール
、ポリビニルピロリドン、ポリプロピレン、ポリ-1,3-ジオキソランおよびポリ-1,3,6-チ
オキソカンが含まれる[例えば、「薬剤としての酵素」HocenbergとRoberts編(ウィリー-
インターサイエンス:ニューヨーク州ニューヨーク)367-383ページのAbuchowskiとDavis
(1981)「溶解性ポリマー-酵素アダクト(Soluble Polymer-Enzyme Adducts)」;およびN
ewmarkら、(1982)J. Appl. Biochem. 4:185-189を参照する]。
【0089】
経口製剤については、放出場所は胃、小腸(十二指腸、空腸または回腸)または大腸で
ある。当業者は、胃で溶けず、十二指腸または腸のどこかで物質を放出するような入手可
能な製剤を有している。好ましくは、放出は、ペプチド(または誘導体)の保護、または
ペプチド(または誘導体)の放出のいずれかにより、胃環境以外に、例えば腸において、
胃環境の有害効果を避けるであろう。
【0090】
胃における十分な耐性を確実にするために、少なくともpH 5.0まで不浸透性のコーティ
ングが必須である。腸溶性コーティングとして用いられるより一般的な不活性成分の例と
しては、セルロースアセテート・トリメリテート(CAT)、ヒドロキシプロピルメチルセ
ルロース・フタレート(HPMCP)、HPMCP 50、HPMCP 55、ポリビニルアセテート・フタレ
ート(PVAP)、Eudragit L30D、アクアテリック、セルロースアセテート・フタレート(C
AP)、Eudragit L、Eudragit Sおよびシェラックがある。これらのコーティングは混合フ
ィルムとして用いることができる。
【0091】
コーティングまたはコーティングの混合物はまた、錠剤に用いることができるが、胃に
対して保護されない。これには糖衣または、錠剤を飲み込みやすくするコーティングが含
まれる。カプセルは、乾いた治療剤(すなわち粉末)の送達のために、(ゼラチンのよう
な)ハードシェルからなり、液体剤形には、ソフトゼラチンシェルが用いられる。カプセ
ルのシェル材は厚いデンプンまたは他の食用紙である。丸薬、トローチ剤、成型錠剤また
は錠剤粉薬には、モイスト・マッシング法(moist massing technique)を用いることが
できる。
【0092】
ペプチド(または誘導体)を、粒子径約1 mmの顆粒または小球形状の細かい多微粒子と
して製剤に含むことができる。カプセル投与のための材料の製剤はまた、粉末状の、軽く
圧縮したプラグ(plugs)として、または錠剤としてさえありうる。これらの治療剤は圧
縮により調製される。
【0093】
着色剤および/または着香料もまた含まれる。例えば、ペプチド(または誘導体)は(
例えば、リポソームまたはミクロスフェアのカプセル化により)製剤化され、その後さら
に、食用の産物内、例えば着色剤と着香料を含む冷飲料に含有される。
【0094】
不活性物質を用いて、ペプチド(または誘導体)の容量を希釈または増加することがで
きる。これらの希釈剤には、炭水化物、特にマンニトール、α-乳糖、無水乳糖、セルロ
ース、ショ糖、修飾デキストランおよびデンプンが含まれる。カルシウム三リン酸、炭酸
マグネシウムおよび塩化ナトリウムを含む特定の無機塩類もまた充填剤として用いること
ができる。市販の希釈剤のいくつかは、Fast-Flo、Emdex、STA-Rx 1500、Emcompressおよ
びAvicellである。
【0095】
錠剤分解物質は、固体剤形中に治療剤の製剤として含まれ得る。錠剤分解物質として用
いられる物質は、これに限定されないが、デンプンに基づく市販の錠剤分解物質であるEx
plotabを含むデンプンである。デンプングリコレート・ナトリウム、Amberlite、カルボ
キシメチルセルロース・ナトリウム、ウルトラミロペクチン(ultramylopectin)、アル
ギン酸ナトリウム、ゼラチン、オレンジピール、酸カルボキシメチルセルロース、カイメ
ンおよびベントナイトは全て用いることができる。錠剤分解物質はまた、不溶性の陽イオ
ン交換樹脂であってもよい。粉末増粘剤が錠剤分解物質および結合剤として用いられ、寒
天、カラヤ(Karaya)またはトラガカント等の増粘剤が含まれ得る。アルギン酸およびそ
のナトリウム塩もまた錠剤分解物質として有用である。
【0096】
結合剤は、ペプチド(または誘導体)剤を保持するとともに硬い錠剤を形成するために
用いることができ、アカシア、トラガカント、デンプンおよびゼラチン等の天然産物由来
の物質が含まれる。他のものとしては、メチルセルロース(MC)、エチルセルロース(EC
)およびカルボキシメチルセルロース(CMC)がある。ポリビニルピロリドン(PVP)およ
びヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)を共にペプチド(または誘導体)を粒状
化するためにアルコール溶液中で用いることができる。
【0097】
減摩剤をペプチド(または誘導体)の製剤に含めて、製剤工程の間の張り付きを防ぐこ
とができる。潤滑剤はペプチド(または誘導体)とダイ壁との間の層として用いられ、こ
れらには、限定はされないが、そのマグネシウム塩およびカルシウム塩を含むステアリン
酸、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、流動パラフィン、植物油およびロウが含まれ
得る。ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸マグネシウム、各種分子量のポリエチレン
グリコール、カーボワックス(Carbowax)4000および6000等の可溶性潤滑剤もまた用いる
ことができる。
【0098】
製剤中の薬剤の流動性を改善する流動促進剤は、圧縮の間の再配列を助けるために添加
することができる。流動促進剤には、デンプン、タルク、発熱性シリカおよび水和ケイア
ルミン酸塩が含まれ得る。
【0099】
ペプチド(または誘導体)の水性環境への溶解を助けるために、界面活性剤を湿潤剤と
して添加し得る。界面活性剤には、陰イオン界面活性剤、例えばラウリル硫酸ナトリウム
、スルホコハク酸ジオクチルナトリウムおよびスルホン酸ジオクチルナトリウムが含まれ
得る。陽イオン界面活性剤を用いてもよく、塩化ベンザルコニウムまたは塩化ベンゼトミ
ウムが含まれる。界面活性剤として製剤中に含まれ得る潜在的な非イオン性界面活性剤の
リストは、ラウロマクロゴル400、ポリオキシル40ステアレート、ポリオキシエチレン硬
化ヒマシ油10、50および60、モノステアリン酸グリセロール、ポリソルベート 40、60、6
5および80、スクロース脂肪酸エステル、メチルセルロースおよびカルボキシメチルセル
ロースである。これらの界面活性剤は、単独で、または異なる比の混合物として、タンパ
ク質または誘導体の製剤中に存在している。
【0100】
ペプチド(または誘導体)の取り込みを潜在的に促進する添加剤は例えば、脂肪酸であ
る、オレイン酸、リノール酸およびリノレン酸である。
【0101】
制御放出の経口製剤が望ましい。ペプチド(または誘導体)は、拡散または浸出機構の
いずれかにより放出させる不活性マトリックス、例えば増粘剤に組み込むことができる。
ゆっくり変化するマトリックスもまた製剤中に取り込んでもよい。いくつかの腸溶性もま
た、遅延放出効果を有する。制御放出の別の形態はオロス・セラピューティック・システ
ム(Oros Therapeutic System)(Alza社)に基づく方法によるものである、すなわち薬剤
は、浸透圧効果のために単一の小孔を通って、水が入り、薬剤が押し出される半透膜中に
封入される。
【0102】
他のコーティングは製剤に用いられる。これらにはコーティングパンに応用される各種
の糖が含まれる。ペプチド(または誘導体)もまた、フィルムコートした錠剤に加えられ
、この例で用いられる物質は二つの群に分けられる。第一は非腸溶性物質で、メチルセル
ロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、メチルヒドロキシ-エチルセ
ルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピル-メチルセルロース、カ
ルボキシ-メチルセルロース・ナトリウム、プロビドンおよびポリエチレングリコールが
含まれる。第二の群は通常フタル酸のエステルである腸溶性物質からなる。
【0103】
物質の混合は、最適フィルムコーティングを提供するのに使用し得る。フィルムコーテ
ィングはパンコーターまたは流動床で、あるいは圧縮コーティングにより行ってもよい。
【0104】
非経口送達
本発明による非経口投与のための製剤には、滅菌した水性または非水性の溶液類、懸濁
剤または乳化剤が含まれる。非水性溶媒またはビヒクルの例は、プロピレングリコール、
ポリエチレングリコール、植物油、例えばオリーブ油およびコーン油、ゼラチン、および
エチルオレアート等の注射可能な有機エステルである。そのような剤形はまた、防腐剤、
湿潤剤、乳化剤および分散剤等の助剤を含み得る。それらは例えば、細菌保持フィルター
を通した濾過により、組成物に滅菌した剤を取り込むことにより、組成物を放射線照射す
ることにより、あるいは組成物を加熱することにより滅菌できる。それらはまた、使用直
前に滅菌水または他の滅菌した注射溶剤を用いて製造することができる。
【0105】
直腸または膣送達
直腸または膣投与のための組成物は好ましくは、有効成分に加え、カカオバターまたは
坐剤ロウ等の賦形剤を含む坐剤である。経鼻または舌下投与のための組成物もまた、当業
者に周知の標準的な賦形剤を用いて調製される。
【0106】
肺送達
EPO-Rアゴニストペプチド(またはその誘導体)の肺送達も本発明において意図される
。ペプチド(または誘導体)は吸入の間に哺乳動物の肺に送達され、肺上皮層から血流へ
行き来する[例えば、Adjeiら(1990)Pharmaceutical Research 7: 565-569 ; Adjeiら(
1990)Int. J. Pharmaceutics 63: 135-144(酢酸ロイプロリド);Braquetら(1989)J.
Cardiovascular Pharmacology 13(sup5): 143-146(エンドセリン-1); Hubbardら(19
89)Annals of Internal Medicine, Vol.III, pp. 206-212(α1-アンチトリプシン);S
mithら(1989)J. Clin. Invest. 84: 1145-1146(α-l-プロテイナーゼ); Osweinら(
1990)「タンパク質のエアゾール化("Aerosolization of Proteins")」、肺薬剤送達に
関するシンポジウムIIの紀要(Proceedings of Symposium on Respiratory Drug Deliver
y II)コロラド州キーストーン(組換えヒト成長ホルモン);Debsら(1988)J. Immunol
.140: 3482-3488(インターフェロン-γおよび腫瘍壊死因子α);およびPlatzらの米国
特許第5,284,656号(顆粒球コロニー刺激因子)を参照]。全身的効果のための肺への薬剤
送達の方法および組成物については、Wongらの米国特許第5,451,569号に記載されている

【0107】
治療薬の肺への送達のためにデザインされた様々な機械装置はこの発明の実施における
使用のために意図され、限定はされないが、噴霧器、定量吸入器、および粉吸入器を含み
、そのすべては当業者に熟知されている。本発明の実施に適している市販の装置のいくつ
かの特定の例としては、ウルトラベント噴霧器(Ultravent nebulizer)(Mallinckrodt
Inc.、ミズーリ州セントルイス);Acorn II噴霧器(Marquest Medical Products、コロ
ラド州エングルウッド);ベントリン(Ventolin)定量吸入器(Glaxo Inc.、ノースカロ
ライナ州リサーチ・トライアングル・パーク);およびスピンへーラー粉吸入器(Spinha
ler)(Fisons Corp.、マサチューセッツ州べドフォード)がある。
【0108】
そのような全ての装置は、ペプチド(または誘導体)の投与に適した製剤の使用が必要
である。典型的には、それぞれの製剤は用いられる装置の型に特異的で、治療に有用な通
常の希釈剤、助剤および/またはキャリアに加え、適当な推進剤物質の使用を含めること
ができる。また、リポソーム、ミクロカプセルまたはミクロスフェア、包接錯体または他
の型のキャリアの使用も意図される。化学修飾ペプチドも、化学修飾の型または用いる装
置の型に依存して、異なる製剤に調製することができる。
【0109】
ジェットまたは超音波、いずれの噴霧器の使用にも適している製剤は、典型的には、溶
液mLあたり約0.1〜25 mgの生物学的活性のあるタンパク質の濃度で水に溶解したペプチド
(または誘導体)を含有する。製剤はまた、緩衝液および単糖を(例えば、タンパク質の
安定化および浸透圧調節のため)含めてもよい。噴霧器製剤はまた、エアゾール形成時に
溶液が噴霧化することにより引き起こされるペプチド(または誘導体)の表面に誘導され
る凝集を減少する、または防止するために、界面活性剤を含むことができる。
【0110】
定量吸入装置の使用のための製剤は一般に、界面活性剤と共に推進剤に懸濁したペプチ
ド(または誘導体)を含む微粉末を含有する。推進剤は、この目的に用いられる従来から
の物質で、例えば、トリクロロフルオロメタン、ジクロロジフルオロメタン、ジクロロテ
トラフルオロエタノールおよび1,1,1,2-テトラフルオロエタンを含む、クロロフルオロカ
ーボン、ヒドロクロロフルオロカーボン、ヒドロフルオロカーボン、またはヒドロカーボ
ン、またはそれらの組み合わせである。適した界面活性剤には、ソルビタン・トリオレア
ートおよびダイズレシチンが含まれる。オレイン酸もまた界面活性剤として有用である。
【0111】
粉吸入装置から投薬される製剤には、ペプチド(または誘導体)を含む微細乾燥粉末を
含有し、装置からの粉末の投薬が容易になる量、例えば製剤重量の50〜90%で、乳糖、ソ
ルビトール、ショ糖またはマンニトール等の充填剤を含めることができる。ペプチド(ま
たは誘導体)は、最も好都合には、末梢肺に最も効率よく送達するために、平均粒子径10
mm(ミクロン)以下、最も好ましくは0.5〜5 mmの微粒子で調製される。
【0112】
経鼻送達
EPO-Rアゴニストペプチド(または誘導体)の経鼻送達もまた意図される。経鼻送達は
、鼻への治療薬の投与後、肺への薬剤の堆積の必要なしに、ペプチドを直接血流に入れる
ものである。経鼻送達用製剤にはデキストランまたはシクロデキストランを用いた製剤が
含まれる。
【0113】
用量
全てのペプチド化合物について、さらに研究するために、各種患者の各種症状の治療の
ための適切な用量レベルに関する情報が明らかとなり、当業者は、レシピエントの治療の
状況、年齢、および一般的な健康を考慮し、適正な投与を確定できる。選択された用量は
所望の治療効果、投与経路および所望の治療期間に依存する。一般的には、1日体重1 kg
当り0.001〜10 mgの用量レベルが哺乳動物に投与される。一般的には、静脈内注射または
輸液のため、用量を減らしてもよい。投薬の計画は循環半減期および用いられる製剤に依
存して変化し得る。
【0114】
本発明のペプチド(またはその誘導体)を、一つまたはそれ以上のさらなる活性成分ま
たは医薬組成物とともに投与することができる。
【0115】
実施例
以下の実施例は発明の例示であり、限定されない。
【実施例1】
【0116】
H-TAP-Boc分子の合成
ステップA:Cbz-TAPの合成
【化7】

TAP(10 g、67.47 mmol、アルドリッチケミカル社から入手)の無水ジクロロメタン(D
CM)(100 ml)溶液を0℃に冷却した。ベンジルクロロホルメート(Cbz-Cl、Cbz=カルボ
キシベンジルオキシ)(4.82 ml、33.7 mmol)の無水DCM(50 ml)溶液をゆっくり6-7時
間かけて、TAP溶液に滴下ロートを用いて添加し、反応混合物の温度をその間0℃に維持し
た。得られた混合物を室温(〜25℃)に暖めた。さらに16時間後、DCMを真空下で除去し
、残渣を3N HClとエーテルで分配した。水層を回収し、NaOHの50%水溶液でpH8-9に中和
し、酢酸エチルで抽出した。酢酸エチル層を無水Na2SO4で乾燥し、真空下で濃縮して、粗
モノ-Cbz-TAP(5 g、収率約50%)を得た。この化合物をさらに精製せずにステップBの反
応に用いた。
【0117】
ステップB:Cbz-TAP-Bocの合成
【化8】

Boc2O(3.86 g、17.7 mmol、Boc=tert-ブトキシカルボニル)を激しく撹拌したCbz-TAP
(5 g、17.7 mmol)のヘキサン懸濁液(25 ml)に添加した。撹拌を室温で一晩続けた。
反応液をDCM(25 ml)で希釈し、10%クエン酸水溶液(2回)、水(2回)およびブライン
(brine)で洗浄した。有機層を無水Na2SO4で乾燥させ、真空下で濃縮した。粗産物(収
量 5 g)を直接ステップCの反応に用いた。
【0118】
ステップC:Boc-TAPの合成
【化9】

ステップBの粗Cbz-TAP-Bocをメタノール(25 ml)に溶解し、5% Pd存在下、炭素(5%
w/w)で、膨張圧の元で、16時間水素化した。混合液を濾過し、メタノールで洗浄し、そ
の濾液を真空下で濃縮し、粗H-TAP-Boc産物(収量 3.7 g)を得た。
ステップA-C後の全体収量は約44%(用いたCbz-Clの量に基づく計算)である。
【実施例2】
【0119】
C-末端をもつペプチドへのスペーサーの結合
下記反応スキームは、スペーサーのC-末端をもつペプチドへの結合の方法を説明してい
る。
【化10】

H-TAP-Bocを実施例1に従って調製した。DCCはN.N'-ジシクロヘキシルカルボジイミド
である。
【実施例3】
【0120】
遊離の側鎖の酸をもつペプチドへのスペーサーの結合
下記反応スキームは、スペーサーの遊離の側鎖の酸をもつペプチドへの結合の方法を説
明している。
【化11】

TFAはトリフルオロ酢酸である。
【実施例4】
【0121】
mPEG-NPCを用いたペプチドのPEG化
【化12】

ここでmPEG-NPCは次の構造を有する:
【化13】

【実施例5】
【0122】
mPEG-SPAを用いたペプチドのPEG化
【化14】

ここでmPEG-SPAは次の構造を有する:
【化15】

【実施例6】
【0123】
スペーサーの結合とペプチドの合成
下記反応スキームは、スペーサーの固体支持体への結合と該固体支持体上でのペプチド
の合成の方法を説明している。
【化16】

【実施例7】
【0124】
樹脂に結合したスペーサーをもつペプチドダイマーの合成
ステップA:TentaGelリンカーの合成
【化17】

TentaGelブロミド(2.5 g、0.48 mmol/g、ラップ・ポリマー(Rapp Polymere)社、ド
イツから入手)、フェノール系リンカー(5等量)およびK2CO3(5等量)を20 mLのN,N-ジ
メチルホルムアミド(DMF)中で70℃まで14時間加熱した。室温まで冷却後、樹脂を洗浄
し(0.1 N HCl、水、アセトニトリル(ACN)DMF、MeOH)、あめ色の樹脂になるまで乾燥
させた。
【0125】
ステップB:TentaGelリンカー-TAP(Boc)の合成
【化18】

上記ステップAの樹脂2.5 gとH-TAP-Boc(1.5 g、5等量)および氷酢酸(34 μl、5等
量)をメタノール(MeOH)/テトラヒドロフラン(THF)の1:1の混合液中で合わせ、一晩
振盪した。シアノホウ化水素ナトリウム 1 M(5等量)のTHF水溶液を混合液に添加し、さ
らに7時間振盪した。樹脂を濾過、洗浄(DMF、THF、0.1 N 塩酸、水、MeOH)し、乾燥さ
せた。少量の樹脂をDCM中の塩化ベンジルとジイソプロピルエチルアミン(DIEA)を用い
て洗浄し、70%トリフルオロ酢酸(TFA)-DCMを用いて切断し、LCMSおよびHPLCでチェッ
クした。
【0126】
ステップC:TentaGelリンカー-TAP-Lysの合成
【化19】

上記ステップBの樹脂を、Fmoc-Lys(Fmoc)-OH(Fmoc=9-フルオレニルメトキシカルボニ
ル、5等量のアミノ酸と、0.5 M でDMFに溶解し、続いて10等量のDIEAを添加した、5等量
のHATU(N,N,N',N'-テトラメチル-O-(7-アザベンゾトリアゾール-1-イル)ウロニウム ヘ
キサフルオロホスフェート)から調製)の活性化溶液で処理し、緩やかに14時間振盪した
。樹脂をその後洗浄(DMF、THF、DCM、MeOH)し、保護樹脂が得られるまで乾燥させた。
残留アミン基は、樹脂を10%無水酢酸、DCM中20%ピリジンの溶液で20分間処理し、上述
のように洗浄することによりキャップされた。Fmoc基は、樹脂をDMF中30%ピペリジンで2
0分間緩やかに振盪し、続いて洗浄(DMF、THF、DCM、MeOH)、および乾燥することにより
除去した。
【0127】
ステップD:TentaGelリンカー-TAP-Lys(ペプチド)2の合成
【化20】

上記ステップCの樹脂をHBTU/HOBt活性化を用いたFmoc-アミノ酸カプリングとピペリジ
ンを用いたFmoc除去の繰り返しサイクルにかけ、両方のペプチド鎖を同時に構築した。こ
の反応は、アプライドバイオシステム社から市販されているABI433自動ペプチド合成機で
都合よく実施した。最後のFmoc除去後、末端のアミン基をDMF中の無水酢酸(10等量)とD
IEA(20等量)を用いて、20分間アシル化し、続いて上記のように洗浄した。
【0128】
ステップE:樹脂の切断
【化21】

上記ステップDの樹脂をTFA(82.5%)、フェノール(5%)、エタンジチオール(2.5%
)、水(5%)およびチオアニソール(5%)の溶液に3時間室温で懸濁した。あるいは、T
FA(95%)、水(2.5%)およびトリイソプロピルシラン(2.5%)等の切断カクテルもま
た用いることができる。TFA溶液は5℃まで冷却し、Et2Oを注いでペプチドを沈殿させた。
減圧下での濾過と乾燥により、スペーサーを有する所望のペプチドを得た。C18カラムを
用いた分取HPLCをかけた精製から、スペーサーを有する純粋ペプチドダイマーを得た。
【0129】
ステップF:酸化
還元システイン残基を有する(スペーサーに結合する)ダイマーのペプチドを酸化し、
ジスルフィド結合を有するダイマーペプチドを得た。
【化22】

ダイマーペプチドを20% DMSO/水(1 mgの乾燥重量のペプチド/mL)に溶解し、室温で3
6時間放置した。反応混合物をC18 HPLCカラム(ウォーターズ デルタ-パック C18、粒子
径15ミクロン、ポアサイズ300オングストローム、40 mm×200 mmの長さ)にロードし、40
分にわたるACN/水/0.01% TFA中の5〜95% ACNの直線濃度勾配により、ペプチドを精製
した。所望のペプチドを含む画分の凍結乾燥により、ふわふわした白色の固体酸物を得た

【実施例8】
【0130】
スペーサー、mPEG-NPCを有するペプチドダイマーのPEG化
【化23】

例えば
【化24】

スペーサーに結合したダイマーペプチドを、等量(モル基準)の活性化PEG類(NOFコー
ポレーション(日本)製、ネクター・セラピューティクス(Nektar Therapeutics)(米
国)(旧シェアウォーター・コーポレーション(Shearewater Corp.))販売のmPEG-NPC
)と乾燥DMF中で混合し、透明な溶液を得た。5分後、4等量のDIEAを上記溶液に加えた。
混合液を周囲温度で14時間撹拌し、C18逆相HPLCで精製した。PEG化ペプチドの構造をMALD
I質量分析法により確認する。
mPEG-NPCは次の構造を有する:
【化25】

【実施例9】
【0131】
スペーサー、mPEG-SPAを有するペプチドダイマーのPEG化
【化26】

スペーサーを有するペプチドダイマーのPEG化はまた、mPEG-SPAを用いて実施できる。m
PEG-SPAは次の構造を有する。
【化27】

【実施例10】
【0132】
イオン交換による精製
【化28】

実施例8で得られた上記化学式の試料を用いて、ペプチド-スペーサー-PEG結合体の精
製に適したイオン交換支持体を同定した。
一般的な手順は次のとおりであった:
イオン交換樹脂(2-3 g)を1 cmカラムに充填し、ナトリウム型への置換(溶出液がpH
14になるまでカラムに0.2 N NaOHを流した)、水素型への置換(溶出液が充填したときの
pHになるまで0.1 N HClまたは0.1 M HOAcで溶出した)およびpH 6になるまで25% ACN/水
による洗浄を行った。結合前のペプチドまたはペプチド-PEG結合体のいずれかを25% ACN
/水(10 mg/mL)に溶解し、そのpHをTFAで3より低く調整し、独立の実験としてカラムに
充填した。2-3カラム容の25% ACN/水で洗浄し、5 mL画分に集めた後、ペプチドを25% AC
N/水中0.1 M NH4OAcで溶出することによりカラムから遊離させ、再度5 mLフラクションに
集めた。HPLC分析により、画分が目的のペプチドを含むことが明らかとなった。蒸発光散
乱検出器(ESLD)を用いた解析により、ペプチドがカラムについている場合およびNH4Oac
溶液で溶出された場合(通常4〜10画分)、非結合PEGは夾雑物として検出されないことが
示された。最初の洗浄緩衝液(通常最初の2画分)中にペプチドが溶出される場合、目的
のPEG結合体および過剰のPEGの分離は観察されなかった。
【0133】
イオン交換支持体は、ペプチド-PEG結合体と未反応(または加水分解した)PEGとのそ
の分離能ならびに開始ダイマーペプチドの保持能に基づいて選択した。モノS HR 5/5強陽
イオン交換プレロードカラム(アマシャム・バイオサイエンシズ)、SE53セルロース微粒
子強陽イオン支持体(ワットマン(Whatman))およびSPセファロース ファーストフロ
ー強陽イオン交換支持体(アマシャム・バイオサイエンシズ)が適切なイオン交換支持体
として同定された。
【実施例11】
【0134】
α-アミノ酸に基づく三官能基分子の合成
構造
【化29】

m=1-5、n=1-14、mおよびnは整数であり、
ここでXが
【化30】

である構造を有する分枝三官能基分子を次の反応スキームに従って合成した:
【化31】

m=1-5、n=1-14、mおよびnは整数である。
そのような三官能基分子は同時にリンカーおよびスペーサーとして作用し得る。
【実施例12】
【0135】
3級アミドに基づく三官能基分子の合成
構造
【化32】

m=1-5、n=1-14、mおよびnは整数であり、
ここでXが
【化33】

である構造を有する分枝三官能基分子を次の反応スキームに従って合成した:
【化34】

m=1-5、n=1-14、mおよびnは整数である。
そのような三官能基分子は同時にリンカーおよびスペーサーとして作用できる。
【実施例13】
【0136】
ホモ三官能基分子の合成
構造
【化35】

m=1-2、n=1-6、mおよびnは整数であり、
ここでXが
【化36】

である構造を有する分枝三官能基分子を次の反応スキームに従って合成した:
【化37】

m=1-2、n=1-6、mおよびnは整数である。
そのようなホモ三官能基分子は同時にリンカーおよびスペーサーとして作用できる。
【実施例14】
【0137】
三官能基分子を用いたC-末端ダイマー化およびPEG化
構造
【化38】

を有する三官能基分子を実施例12に従って作製した。
この三官能基分子を次の反応スキームに従ったC-末端ダイマー化およびPEG化に用いた

【化39】

【実施例15】
【0138】
三官能基分子を用いたN-末端ダイマー化およびPEG化
以下に従って三官能基分子を作製した:
【化40】

【0139】
0℃のDCM 200 mL中、Boc-βAla-OH(10.0 g、52.8 mmol)(Boc=tert-ブトキシカルボ
ニル)とジエチルイミノジアセテート(10.0 g、52.8 mmol)の溶液に、DCC(10.5 g、50
.9 mmol)を5分以上かけて加えた。白色沈殿が2分以内に形成された。反応混合物を室温
まで温め、24時間撹拌した。尿素を焼結フィルター(中程度の多孔度)で濾過し、溶媒を
減圧下で除去した。残留物を500 mLのEtOAc(EtOAc=酢酸エチル)に含ませ、上述のよう
に濾過し、分別ロートに移した。有機相を洗浄し(飽和NaHCO3、ブライン、1 N HCl、ブ
ライン)、乾燥(MgSO4)、濾過し、乾燥することにより無色の油を得た。この油を10分
以内に固化し、白色の結晶固体を得た。
【0140】
【化41】

【0141】
粗ジエステルを75 mLのTHF(THF=テトラヒドロフラン)に含ませ、75 mLのMeOH(MeOH=
メタノール)および50 mLの水を加えた。この溶液に水25 mL中KOH(KOH=水酸化カリウム
)(8.6 g、153 mmol)の溶液を添加した。反応混合物は淡黄色に変化した。12時間の撹
拌後(pHは〜12のまま)、有機溶媒をロータリーエバポレーターで除去し、得られたスラ
リーをEt2O(Et2O=ジエチルエーテル)と飽和NaHCO3に分配した。合わせた水相をpH 1に
酸性化し、NaClで飽和し、EtOAcで抽出した。EtOAc相を洗浄し(ブライン)、乾燥し(Mg
SO4)、濃縮することにより、白色固体の13.97 gの産物を得た(2ステップで90.2%)。
【0142】
注:DCC反応をACN中で実施すると収率が73%に低下した。DICを用いると、副産物であ
る尿素は、目的の産物からクロマトグラフィなしでは除去できなかった;DCC尿素はクロ
マトグラフィなしで定量的に除去できる。反応はまた、水溶性カルボジイミドを用いても
十分うまくいく。
【0143】
【化42】

【0144】
50 mLのACN中の2価酸(1.00 g、3.29 mmol)とヒドロキシスクシンイミド(0.945 g、8
.21 mmol)の溶液に、DCC(1.36 g、6.59 mmol)を5分以上かけて添加した。白色沈殿が
直ちに形成された。反応混合物を22時間撹拌し、濾過してDCC尿素を除去した。溶媒を減
圧下で除去し、残留物をEtOAc(250 mL)に含ませ、分別ロートに移した。有機相を洗浄
し(飽和NaHCO3、ブライン、1 N HCl、ブライン)、乾燥し(MgSO4)、濃縮し、白色固体
を得た。この個体を75mLのACNに含ませ、濾過し、濃縮し、1.28gの産物を白色固体として
得た(収率78.2%)。
【0145】
注:収率はTHFで31%、DMF(DCCに代わりDICを用いた)で68%、DCM/DMFで57%に低下
した。開始の2価酸はACNに可溶であり、DCC添加前に溶解しない物質があるならば、濾過
し、除去しておくのがよい。
【0146】
この三官能基分子を次の反応スキームに従って、N-末端ダイマー化およびPEG化に用い
た:
【化43】

【実施例16】
【0147】
mPEG2-リジノール-NPCの合成
市販のリジノールを過剰のmPEG2で処理し、mPEG2-リジノールを形成させる。その後、m
PEG2-リジノールを過剰のNPCで処理し、mPEG2-リジノール-NPCを形成させる。
【実施例17】
【0148】
三官能基分子(PEG部分は二つの直鎖状PEG鎖を含有する)を用いたPEG化
構造
【化44】

を有する三官能基分子を実施例15に従って作製した。
【0149】
ステップ1-三官能基リンカーのペプチドモノマーへのカプリング:
リンカーとのカプリングのために、2等量のペプチドを1等量の三官能基リンカーと乾燥
DMF中で混合し、透明な溶液を得、2分後に5等量のDIEAを添加する。この混合液を周囲温
度で14時間撹拌する。溶媒を減圧下で除去し、粗産物をDCM中80% TFAに溶解してBoc基を
除去し、C18逆相HPLCを用いて精製する。ダイマーの構造をエレクトロスプレー質量分析
により確認する。このカプリング反応は、それぞれのモノマーのリジン残基のε-アミノ
基の窒素原子にリンカーを結合する。
【0150】
【化45】

【0151】
ステップ4-ペプチドダイマーのPEG化:
カルバメート結合を介したPEG化:
ペプチドダイマーとPEG類(mPEG2-リジノール-NPC)を1:2のモル比で乾燥DMF中で混合
し、透明な溶液を得る。5分後、4等量のDIEAを上記溶液に加える。混合液を周囲温度で14
時間撹拌し、C18逆相HPLCを用いて精製する。PEG化ペプチドの構造をMALDI質量で確認す
る。精製ペプチドはまた、以下に概略するように陽イオン交換クロマトグラフィによる精
製にかけれた。
【0152】
【化46】

【0153】
アミド結合を介したPEG化
ペプチドダイマーとPEG類(mPEG2-Lys-NHS)を1:2のモル比で乾燥DMF中で混合し、透
明な溶液を得る。mPEG2-Lys-NHSは例えば、ネクター・セラピューティクス(35806、アラ
バマ州ハンツビル ディスカバリードライブ 490)のモレキュラー・エンジニアリング
・カタログ(2003)の商品番号2Z3X0T01として市販されている。5分後、10等量のDIEAを
上記溶液に加える。混合液を周囲温度で2時間撹拌し、C18逆相HPLCを用いて精製する。PE
G化ペプチドの構造をMALDI質量で確認した。精製ペプチドはまた、以下に概略するように
陽イオン交換クロマトグラフィによる精製にかけた。
【0154】
【化47】

【0155】
本発明は、明細書に記載された特定の実施態様による範囲に限定されない。実際、本明
細書に記載されたものに加えて、発明の各種の改変が前述の記載および後述の図面から当
業者には明らかとなるであろう。そのような改変は追加クレームの範囲内にあることを意
図している。
【0156】
特許、特許出願、プロトコールおよび各種刊行物を含む多くの参考文献が本発明の記載
に引用され、議論されている。そのような参考文献の引用および/または議論は、本発明
の記載を単に明確にするだけのものであり、そのような参考文献のいずれかが本明細書に
記載される発明の「先行文献」であることを承認しているわけではない。本明細書におい
て引用され、議論された全ての参考文献はその全体を参照して、およびそれぞれの参考文
献が個々に参照して取り込まれるかのような程度まで、取り込まれる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリ(エチレングリコール)部分が直鎖状で、分子量が20Kダルトン以上の、ペプチド
部分とポリ(エチレングリコール)部分とを含有するペプチド系化合物。
【請求項2】
ポリ(エチレングリコール)部分が20〜40Kダルトンの分子量を有する、請求項1記載
の化合物。
【請求項3】
ポリ(エチレングリコール)部分が1.20以下の多分散値(Mw/Mn)を有する、請求項2
記載の化合物。
【請求項4】
ペプチド部分が単一ペプチドを含有するペプチドモノマーである、請求項1記載の化合
物。
【請求項5】
ペプチド部分がリンカー部分を介して結合している二つのペプチドを含有するペプチド
ダイマーである、請求項1記載の化合物。
【請求項6】
それぞれのペプチドが50アミノ酸以下のモノマーを含有する、請求項4または5記載の
化合物。
【請求項7】
それぞれのペプチドが約10〜25アミノ酸モノマーを含有する、請求項6記載の化合物。
【請求項8】
それぞれのペプチドが約12〜18アミノ酸モノマーを含有する、請求項7記載の化合物。
【請求項9】
ペプチド部分がエリスロポエチン受容体に結合するペプチドを含有する、請求項1記載
の化合物。
【請求項10】
ペプチド部分がトロンボポエチン受容体に結合するペプチドを含有する、請求項1記載
の化合物。
【請求項11】
さらにペプチド部分とポリ(エチレングリコール)部分との間にスペーサー部分を含有
する、請求項1記載の化合物。
【請求項12】
スペーサー部分が構造:
-NH-(CH2)α-[O-(CH2)β]γ-Oδ-(CH2)ε-Y-
を有し、ここでα、β、γ、δおよびεはそれぞれ整数で、その数値は独立に選択される
、請求項1記載の化合物。
【請求項13】
αが、1α6である整数;
βが、1β6である整数;
εが、1ε6である整数;
δが、0または1;
γが、0γ10である整数;および
YがNHまたはCOのいずれかである、
請求項12記載の化合物。
【請求項14】
γ>1およびβ=2である、請求項13記載の化合物。
【請求項15】
(a) ペプチド系化合物がペプチド部分とポリ(エチレングリコール)部分を含有し、該
ポリ(エチレングリコール)部分が直鎖状で、分子量が20Kダルトン以上の、ペプチド系
化合物;ならびに
(b) 一つまたはそれ以上の薬学的に許容されうる希釈剤、保存料、安定化剤、乳化剤、補
助剤および/またはキャリア;
を含有する医薬組成物。
【請求項16】
ポリ(エチレングリコール)部分が20〜40Kダルトンの分子量を有する、請求項15記
載の組成物。
【請求項17】
ポリ(エチレングリコール)部分が1.20以下の多分散値(Mw/Mn)を有する、請求項1
5記載の組成物。
【請求項18】
ペプチド部分が単一ペプチドを含有するペプチドモノマーである、請求項15記載の組
成物。
【請求項19】
ペプチド部分がリンカー部分を介して結合している二つのペプチドを含有するペプチド
ダイマーである、請求項15記載の組成物。
【請求項20】
それぞれのペプチドが50アミノ酸以下のモノマーを含有する、請求項18または19記
載の組成物。
【請求項21】
それぞれのペプチドが約10〜25アミノ酸モノマーを含有する、請求項20記載の組成物

【請求項22】
それぞれのペプチドが約12〜18アミノ酸モノマーを含有する、請求項21記載の組成物

【請求項23】
ペプチド部分がエリスロポエチン受容体に結合するペプチドを含有する、請求項15記
載の組成物。
【請求項24】
ペプチド部分がトロンボポエチン受容体に結合するペプチドを含有する、請求項15記
載の組成物。
【請求項25】
さらにペプチド部分とポリ(エチレングリコール)部分との間にスペーサー部分を含有
する、請求項15記載の組成物。
【請求項26】
スペーサー部分が構造:
-NH-(CH2)α-[O-(CH2)β]γ-Oδ-(CH2)ε-Y-
を有し、ここでα、β、γ、δおよびεはそれぞれ整数で、その数値は独立に選択される
、請求項15記載の組成物。
【請求項27】
αが、1α6である整数;
βが、1β6である整数;
εが、1ε6である整数;
δが、0または1;
γが、0γ10である整数;および
YがNHまたはCOのいずれかである、
請求項26記載の組成物。
【請求項28】
γ>1およびβ=2である、請求項27記載の組成物。
【請求項29】
ポリ(エチレングリコール)部分が20〜60Kダルトンの分子量を有する、請求項1記載
の化合物。
【請求項30】
ポリ(エチレングリコール)部分が20Kダルトンの分子量を有する、請求項1記載の化
合物。
【請求項31】
ポリ(エチレングリコール)部分が少なくとも一つの直鎖状のポリ(エチレングリコー
ル)鎖である、請求項1記載の化合物。

【公開番号】特開2012−158598(P2012−158598A)
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−92128(P2012−92128)
【出願日】平成24年4月13日(2012.4.13)
【分割の表示】特願2006−532999(P2006−532999)の分割
【原出願日】平成16年5月12日(2004.5.12)
【出願人】(503210245)アフィーマックス・インコーポレイテッド (13)
【氏名又は名称原語表記】Affymax, Inc.
【Fターム(参考)】