説明

新規材料の組合せ合成方法

【課題】組み合わせ合成により巨大な磁気抵抗性コバルト化合物を製造する装置を提供する。
【解決手段】支持体上の予め定められた領域に成分を送り出し同時にその成分を反応させて少なくとも二つの材料を形成することによって異なった材料のアレイを製造した支持体を用いることによって組み合わせ合成を行う。これらの方法を利用して製造できる他の材料は、共有結合型網状構造固体、イオン固体及び分子固体である。例えば、無機材料、有機金属材料、金属間材料、セラミック有機ポリマー及び複合材料である。一旦製造されると、これらの材料は、磁気抵抗性のような有用な性質のためスクリーニングでき、有用な性質を有する新規の材料を並行して合成及び分解する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、単一の基材表面上に、既知の配置の異なる材料のアレイ(array)を、並行して、付着、合成及びスクリーニングするための方法及び装置に関するものである。本発明は、例えば、共有ネットワーク固体、イオン性固体及び分子固体を調製するのに適用することができる。より詳しくは、本発明は、無機材料、金属間材料、金属合金、セラミック材料、有機材料、有機金属材料、非生物学的有機ポリマー、複合体材料(例えば、無機複合体、有機複合体又はこれらの組合せ)等を調製するのに適用することができる。これらの材料は、調製したら、例えば、電気的、熱的、機械的、形態的、光学的、磁性的、化学的及び他の特性を初めとする有用な特性に関して、並行してスクリーニングすることができる。
【発明の背景】
【0002】
本出願は、1994年10月18日に出願の米国特許出願08/327,513号の部分継続出願であり、該米国特許出願の教示内容は参照としてここに包含するものである。
【0003】
本発明は、エネルギー省によって授与された契約番号DE−AC03−76SF00098による政府援助によってなされたものである。
【0004】
新規な化学的及び物理学的特性を有する新しい材料の発見によって、しばしば、新規で有用な技術の開発がもたらされる。現在は、超伝導体、ゼオライト、磁性材料、ケイ光体、非線形光学材料、熱電材料及び高誘電性及び低誘電性材料のような材料の発見及びその最適化における盛んな活動がおこなわれている。残念なことに、広範な固体の化学特性が十分に研究されているが、組成物の性質を確実に予測することを可能にする一般的な原則は殆ど分かっていない。更に、特定の三次元構造が有する物理特性を論理的に予想することは困難である。例えば、1987年のYBa2Cu37-8超伝導体の合成について考えてみる。K2NiF4構造に適合するLa2-xSrxCuO4超伝導体の発見(Bendnorz,J.G.及びK.A.Muller,Z.Phy.B64:189(1986))のすぐ後に、圧力を施すと転移温度が上昇することが観察された(Chuら,Phys.Rev.Lett.58:405(1987))。Chuらは、より小さな元素、すなわちイットリウムをランタンに代えて同じ効果が得られるという希望の元に、同じ化学量論量のY−Ba−Cu−O化合物を合成することを試みた。彼らは93K以上で超伝導性を見出したが、K2NiF4構造を有する相は観察されなかった(Wuら,Phys.Rev.Lett.58:908(1987))。ニッケル及びジルコニウムの2元化合物(Ni5Zr、Ni7Zr2、Ni3Zr、Ni2Zr8、Ni10Zr7、Ni11Zr9、NiZr及びNiZr2)のような比較的単純な金属間化合物に関しても、何故に、ある化学量論しか起こらないのかは未だに理解されていない。
【0005】
明らかに、新規な化学的及び物理的特性を有する新規な材料の調製は、我々の現在の理解ではせいぜい偶然の産物である。したがって、新規な材料の発見は、新規な化合物を合成し分析する能力に大きく依存する。3個、4個、5個、6個又はそれ以上の元素からなる組成物を製造するのに用いることのできるものとして、周期律表に約100個の元素が与えられており、大量の可能な新規化合物が殆ど未研究のままである。したがって、新規材料を合成し、かかる材料を有用な特性に関してスクリーニングするための、より効率的で、経済的で、規則的なアプローチに関する当該技術における必要性が存在する。
【0006】
自然が新規な機能を有する分子を生成するプロセスの一つは、分子の大きな収集(ライブラリー)の構築及びこれらのライブラリーの所望の特性を有する分子に関する体系的なスクリーニングを包含する。かかるプロセスの例は、人間の免疫系である。これは、約数週間の間、約1012個の抗体分子を分類して、外部からの病原体に特異的に結合するものを見出すというものである(Nisonoffら,The Antibody Molecule(Academic Press,New York,1975))。分子の大きなライブラリーを構築してスクリーニングするというこの概念は、最近、医薬の発見プロセスに適用されている。新規な医薬の発見は、未知の構造の錠に適合する鍵を発見するプロセスに擬することができる。問題に対する一つの解決法は、一つが錠に適合するという希望の元に数多くの異なる鍵を単純に製造し試験することである。
【0007】
この論理を用いて、ペプチド、オリゴヌクレオチド及び他の小分子の大きなライブラリー(1014分子以下)の合成及びスクリーニングのための方法が開発された。例えば、Geysenらは、ペプチド合成を幾つかのロッド又はピン上で並行して行う方法を開発した(J.Immun.Meth.102:259-274(1987)、参照として本明細書中に包含する)。概して、Geysenらの方法は、ポリマーロッドの先端を官能化させ、先端を別々のアミノ酸の溶液中に逐次浸漬する工程を含んでいる。Geysenらの方法に加えて、固体表面上に異なるペプチド及び他のポリマーの大きなアレイを合成する技術が最近導入された。Pirrungらは、例えば、光指向性(light-directed)で、空間呼び出し可能な(spatially-addressable)合成方法を用いて、ペプチド及び他の分子のアレイを生成させる技術を開発した(米国特許5,143,854号及びPCT公開WO90/15070号参照、これらは参照として本明細書中に包含する)。更に、Fodorらは、とりわけ、ケイ光強度データを集計する方法、種々の感光性保護基、マスク技術、及び光指向性(light-directed)で、空間呼び出し可能な(spatially-addressable)合成方法を開発した(Fodorら、PCT公開WO92/10092号参照、その教示は参照として本明細書中に包含する)。
【0008】
これらの種々の方法を用いて、何千又は何百万の異なる元素を含むアレイを形成することができる(1991年12月6日出願の米国特許出願805,727号参照、参照として本明細書中に包含する)。半導体製造技術へのそれらの関連性の結果として、これらの方法は、「超大スケール固定化ポリマー合成(Very Large Scale Immobilized Polymer Synthesis)」又は「VLSIPS」法と称されるようになった。かかる技術は、例えば、ペプチド及びオリゴヌクレオチドのような種々のリガンドをスクリーニングして、抗体のようなレセプターに対するそれらの相対結合親和性を決定することにおいて実質的に成功を収めている。
【0009】
かかるライブラリーを製造するために現在用いられている固体相合成法は、構築ブロックを段階的、すなわち逐次的にカップリングして、対象の化合物を形成する工程を含む。例えば、Pirrungらの方法においては、基材の表面に光解離性の基を結合させ、基材の選択された領域を光に曝露してその領域を励起させ、光解離性の基を有するアミノ酸モノマーを励起された領域に結合させ、所望の長さ及びシーケンスのポリペプチドが合成されるまで励起及び結合工程を繰り返すことによって、ペプチドアレイを基材上に合成する。構築ブロック(例えばアミノ酸)を逐次的にカップリングして対象の化合物を形成することを含むこれらの固体相合成法は、多くの無機及び有機化合物を調製するのに容易に用いることはできない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記の説明から、無機材料のような材料のライブラリーを、基材上に既知の配置で合成しスクリーニングするための方法及び装置が求められていることは明らかである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、その上の予め定められた領域に異なる材料のアレイを有する基材の製造及び使用のための方法及び装置を提供するものである。その上に異なる材料のアレイを有する基材は、材料の成分を基材上の予め定められた領域に施し、成分を同時に反応させて少なくとも二つの材料を形成させることによって調製される。本発明の方法及び装置を用いて調製することのできる材料としては、例えば、共有ネットワーク固体、イオン性固体及び分子固体が挙げられる。より詳しくは、調製することのできる材料としては、無機材料、金属間材料、金属合金、セラミック材料、有機材料、有機金属材料、非生物学的有機ポリマー、複合体材料(例えば無機複合体、有機複合体又はこれらの組合せ)等が挙げられる。これらの材料は、調製したら、例えば、電気的、熱的、機械的、形態的、光学的、磁性的、化学的及び他の特性を初めとする有用な特性に関して、並行してスクリーニングすることができる。したがって、本発明は、新しい有用な特性を有する新規な材料を並行して合成及び分析するための方法及び装置を提供するものである。有用な特性を有することが分かった材料は、引き続き大スケールで製造することができる。
【0012】
本発明の一態様においては、第1の材料の第1の成分を基材の第1の領域に施し、第2の材料の第1の成分を同じ基材の第2の領域に施す。その後、第1の材料の第2の成分を基材の第1の領域に施し、第2の材料の第2の成分を基材の第2の領域に施す。場合によっては、更なる成分を用いてプロセスを繰り返して、基材上に、予め定められた、すなわち既知の配置で成分の広範なアレイを形成する。その後、成分を同時に反応させて、少なくとも二つの材料を形成する。成分は、数多くの異なる施工方法の任意のものを用いて、任意の化学量論、例えば勾配化学量論で、基材の予め定められた領域に逐次的に又は同時に施すことができる。
【0013】
本発明の他の態様においては、方法は、実質的に同等の濃度の同一の反応成分を第1及び第2の基材の両方の反応領域に施し、その後、第1の基材上の成分を第1の反応条件に、第2の基材上の成分を第2の反応条件にかけることによって、材料の少なくとも二つの異なるアレイを形成するために提供される。この方法を用いて、種々の反応パラメーターの効果を、多くの材料に関して同時に研究することができ、その結果、このような反応パラメーターを最適化することができる。変化させることのできる反応パラメーターとしては、例えば、反応物質の量、反応物質溶媒、反応温度、反応時間、反応を行う圧力、反応を行う雰囲気、反応を停止させる速度、反応物質を付着させる順番等が挙げられる。
【0014】
本発明の送出系では、精密に秤量された少量の各反応体成分が各反応域に送り込まれる。これは色々な送出技術をそれぞれ単独で使用するか、又は色々なマスキング技術と併用して達成することができる。例えば、各種反応体を基体上のある選択された領域に送り出すために薄膜蒸着技術を物理的マスキング技術又は写真平版技術と組み合わせて用いることができる。反応体は非晶質フィルム、エピタキシャルフィルム、又は格子及び超格子構造として送り出すことができる。更に、このような技術を用いると、反応体を均一な分布で、又はある化学量論的勾配で各部位に送り出すことができる。別法として、これら各種反応体成分は液滴又は粉末の形でディスペンサーから当該反応域に沈着させることができる。適したディスペンサーに、例えばマイクロピペット、インキ・ジェット印刷技術の改造機構及び電気永動ポンプがある。
【0015】
当該成分が基体上の前以て定められた領域に送り出されたら、それら成分を多数の異なる合成経路を用いて反応させて一群の材料アレイを形成させることができる。これら成分は、例えば溶液をベースにした合成技術、光化学的技術、重合技術、鋳型指向(template directed)合成技術、エピタキシャル成長技術を用い、ゾル・ゲル法、熱、赤外又はマイクロ波による加熱、か焼、焼結又はアニーリング、水熱法、フラックス法、溶媒の蒸発による結晶化等々で反応させることができる。その後、その材料のアレイは有用な性質を有する材料についてスクリーニングにかけることができる。
【0016】
本発明のもう1つの態様では、単一の基体上、前以て定められた領域に一群の無機材料アレイが設けられる。このようなアレイは10、102、103、104、105又は106以上の異なる無機化合物より成ることができる。ある種の態様において、単位面積当たりの領域数密度は0.04領域/cm2以上、更に好ましくは0.1領域/cm2以上、それより更に好ましくは1領域/cm2以上、それより更に好ましくは10領域/cm2以上、それより更に好ましくは100領域/cm2以上である。最も好ましい態様では、単位面積当たりの領域数密度は1,000領域/cm2以上、更に好ましくは10,000領域/cm2以上、それより更に好ましくは100,000領域/cm2以上、それより更に好ましくは10,000,000領域/cm2以上である。
【0017】
もう1つの面から見ると、本発明は単一の基体上に一群の材料アレイを形成し;有用な性質を有する1つの材料についてそのアレイをスクリーニングにかけ;そしてその有用な性質を有するその材料を更なる量で作ることにより製造される、有用な性質を有する材料を提供するものである。こうして、本発明は新規で有用な性質を有する新規な材料の合成と分析を平行して行うための方法と装置を提供する。
前記の方法を用いて新しい一群のジャイアント磁気抵抗性(GMR)コバルト酸化物を発見した。薄膜蒸着技術をマスキング技術と併用すると、Ln1-xxCoOz(式中、Lnは、例えばY及びLaであり、Mは、例えばPb、Ca、Sr及びBaであり、xは約0.1から約0.9の範囲の値を有し、そしてzは約2から約4の範囲の値を有する)の組成と化学量論関係を有する一群の材料アレイが形成された。一旦形成されたら、これら材料アレイをそれらの内で有用な性質を有する材料についてスクリーニングにかけた。更に詳しくは、これら材料アレイを、なかんずくジャイアント磁気抵抗性(GMR)を有する特定の材料についてスクリーニングにかけた。このようにスクリーニングを行うときに、大きな磁気抵抗性(MR)はLa1-x-(Ba,Sr,Ca)x-CoOz試料(式中、xは約0.1から約0.9の範囲の値を有し、そしてzは約2から約4の範囲の値を有する)に見いだされた。有用な性質を有する材料が同定されたら、そのような材料が更なる量で製造された。
【0018】
そのように製造を行う際に、この新規なGMRコバルト酸化物群における化合物は、次の一般式:Ay・(1-x)y・xCoOzを有することが確認された。ただし、上記の式において、Aはランタン(La)、イットリウム(Y)、セリウム(Ce)、プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)、プロメチウム(Pm)、サマリウム(Sm)、ユーロピウム(Eu)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、ホルミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)、イッテルビウム(Yp)及びルテシウム(Lu)より成る群から選ばれる金属であり;Mはカルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、バリウム(Ba)、鉛(Pb)、タリウム(Tl)及びビスマス(Bi)より成る群から選ばれる金属であり;yは約1から約2の範囲を有し;xは約0.1から約0.9の範囲の値を有し;そしてzは約2から約4の範囲の値を有する。更に、この新規なGMRコバルト酸化物群の化合物は、一般に、層状のペロブスキー石型構造に関連した構造を有することが確認された。
【0019】
本発明の本質と利点の更なる理解は、本明細書の残りの部分と添付図面を参照することにより実現されるだろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
(目次)
I.用語
II.概略
III.基質上の反応部位の分離
IV.反応物成分の供給方法
A.薄膜付着法を用いる供給
B.ディスペンサーを用いる供給
V.多ターゲット薄膜付着システム
VI.支持体に対するディスペンサーの移動
VII.成分アレイ(array)を反応させるための合成経路
VIII.物質アレイをスクリーニングする方法
IX.代替の態様
X.実施例
A.16酸化銅薄膜物質のアレイの合成
B.128酸化銅薄膜フィルム物質のアレイの合成
C.BiSrCaCuOとYBaCuOを含む128個の酸化銅薄層材料のアレイの合成
D.酸化コバルトの薄層材料アレイの合成
E.16の異なる有機高分子のアレイの合成
F.ゼオライトアレイの合成
G.噴霧沈積法を用いた酸化銅化合物のアレイの合成
H.16個の異なった亜鉛珪酸塩リン光体のアレイの合成
I.スパッター法とフォトリソグラフィー遮蔽法の組み合わせを用いた酸化銅の薄いフイルム材料のアレイの合成
XI.結論
【0021】
(I.用語)
ここで使用される以下の用語は以下の意味を有する。
【0022】
1.基材:リジッドあるいはセミリジッドな表面をもつ材料である。多くの態様では、基材の少なくとも一面は実質的に平面であるが、物理的に引き離された合成領域として、例えば、ディンプル、ウェル、隆起部、トレンチなどを異材料で形成して設けることが好ましい態様もある。好ましい態様では、基材自体に、合成領域の一部あるいは全部を形成するウェルや隆起部、トレンチなどを設けることもある。また、表面に形成されたディンプル内や他の領域表面上に、微細なビーズやペレットを配したり、あるいは微細なビーズやペレット自体が基材の表面を形成する態様もある。
【0023】
2.既定領域:既定領域は、基材上のローカライズされた領域であり、選択された材料の形成に用いられ、既知領域、反応領域、選択領域、あるいは単に領域と表現されることもある。既定領域は、線形、円形、矩形、楕円形、くさび形など所望の形状とすることができる。また、既定領域、即ち反応サイトは、例えば、対象反応成分で覆われたビーズやペレットから形成することができる。この態様では、ビーズやペレットはタグにより識別することができる。このタグは、例えば、エッチングにより施されたバイナリのバーコードなどであり、どの材料が積層されたかなどの履歴を示すものである。既定領域、即ち異なる材料が合成される領域は25cm2未満であり、好ましくは10cm2未満であり、より好ましくは5cm2未満であり、より好ましくは1cm2未満であり、さらに好ましくは1mm2未満であり、より好ましくは0.5mm2未満である。また、10,000μm2未満、1,000μm2未満、100μm2未満、さらには10μm2未満であることがもっとも好ましい。
【0024】
3.放射:例えば、電子ビーム放射やガンマ放射、X線放射、紫外線放射、可視光線、赤外線放射、マイクロ波放射、電波など、波長が10-14〜1014mで、選択的に印加されるエネルギーのことである。また、「照射」は、これらの放射が表面に対してなされる場合を指す。
【0025】
4.成分:ここでは、他と反応して特定の材料を形成する個別の化学物質であり、反応物または反応物成分などとも表される。つまり、成分あるいは反応物は他と反応する分子であり、この反応により新たな分子、つまり物質を形成する。例えば、HCl+NaOH→NaCl+HOの反応で、HClとNaOHが成分あるいは反応物にあたる。
【0026】
5.材料:ここでは、固体状化合物、伸張固体、伸張溶液、分子あるいは原子群、結晶などのことである。
【0027】
6.共有結合型網状構造固体(Covalent Network Solids):共有結合のネットワークで保持された原子により構成される固体である。このような共有結合型網状構造固体には、例えば、ダイアモンド、シリコン窒化物、グラファイト、バンクミスタフラーレン(bunkmisterfullerene)、有機ポリマーが含まれるが、これらに限定されるものではなく、段階的な合成ができないものであればよい。
【0028】
7.イオン固体:反電荷による電気的な誘引力で保持される陽イオン、陰イオンとしてモデル化される固体である。このようなイオン固体には、例えば、CaF,CdCl,ZnCl,NaCl,AgF,AgCl,AgBrや尖晶石(例えば、ZnAl,MgAl,FrCrなど)が含まれるが、これらに制限されるものではない。
【0029】
8.分子固体:分子間力により保持された原子や分子から構成される固体である。このような分子固体には、例えば、伸張固体、固体ネオン、有機化合物、合成または有機金属(例えば、テトラチアフルバレン−テトラシアノキノジメタン(TTF−TCNQ))、液晶(例えば、環状のシロキサン)や蛋白質結晶が含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0030】
9.無機材料:炭素を主要な元素としない材料のことである。炭素酸化物、炭素硫化物やメタルカーバイドなどが無機材料とされている。無機化合物としては、本発明の方法を用いて合成可能な下記のものが一例として挙げられるが、これらに限定されるものではない。
(a)金属間化合物(または中間構成要素):金属間化合物は、臨界点温度以下で長距離秩序の結晶構造を形成する金属材料特有のものである。このような材料は、特定の割合で結合した2つの金属の原子が、その2つの金属の構造とは異なる構造の結晶を形成する(例えば、NiAl,CrBe2,CuZnなど)。
(b)金属合金:金属の特性をもち、少なくとも1つが金属である2つ以上の化学物質を混合した組成物。
(c)磁性合金:シリコン−鉄などの強磁性を示す合金や、少量の他の元素(例えば、銅、アルミニウム、クロム、モリブデン、バナジウムなど)を含んだ鉄−ニッケル合金、あるいは鉄−コバルト合金などである。
(d)セラミックス:通常、セラミックスとは、酸化金属やホウ酸化物、炭化物、窒化物あるいはこれらの材料を混合したものを指す。セラミックスは、無機物、非金属、非分子固体であり、単結晶材料及び結晶構造材料の双方を有する。ここでは、本発明を用いた特性で形成、スクリーニングされる材料の実例としてセラミックスが挙げられている。そのような材料は例えば、アルミナ、ジルコニウム、シリコン炭化物、窒化アルミニウム、窒化シリコン、YBa2Cu37-8超伝導体、La2-xSrxCuO4超伝導体、Bi2CaSr2Cu28+x超伝導体、Ba1-xxBiO3超伝導体、ReBaCu超伝導体、フェライト(BaFe1219)、ゼオライトA(Na12[(SiO2)12(AlO2)]・27H2O)、軟磁石、永久磁石、高比誘電率材料(BaTiO3)、ピエゾ材料(例えば、ジルコン鉛酸チタン酸塩(PZT)、NaNbO3,NaTaO3)、光電子材料(例えば、リチウムニオブ酸塩(LiNbO3))、ジャイアント磁気抵抗材料(GMR)などである。ここで用いられるジャイアント磁気抵抗材料は、磁界中での抵抗値が、無印加時より5%以上変化するのもの、つまり、抵抗値変化率の絶対値が5%以上のものをいう。
即ち、|ΔR/R|>5%であり、ここで、抵抗値の変化は次式で求められる。
ΔR/R=((磁界印加時の抵抗値)−(無印加時の抵抗値))/(無印加時の抵抗値)
【0031】
10.有機材料:通常、炭素と水素を含んだ化合物であり、これに酸素や窒素などが含まれる場合もある。ただし、この場合、炭素は、例えば、炭酸塩などの臨界状態ではない。本発明の方法を用いて合成可能な有機材料の例を以下に示すが、これらに限定されるものではない。
(a)非生物有機ポリマー:多数の繰り返し単位による巨大分子から構成される非金属材料である。このような材料は、天然物として存在するだけでなく合成によっても生成可能であり、また架橋構造を有する場合もある。さらに、重合状態も多様であり、ホモポリマー、コポリマー、あるいはより高次のポリマー(例えば、ターポリマーなど)にもなりうる。「非生物」なので、α−アミノ酸やヌクレオチドなどは含まれない。さらに、「非生物有機ポリマー」としては、ビルディングブロックの線形あるいは段階的結合により合成されるポリマーは含まない。本発明の方法を用いて生成されるポリマーは、例えば、ポリウレタン、ポリエステル、ポリカーボネイト、ポリエチレンイミン、ポリアセテート、ポリスチレン、ポリアミド、ポリアニリン、ポリアセチレン、ポリピロールなどであるが、これらに限定されるものではない。
【0032】
11.有機金属材料:炭素原子が金属原子と直接結びついたR−Mタイプの化合物(例えば、テトラエチル鉛(Pb(C25)4)、フェニルソーダ(C65・Na)、ジメチル亜鉛(Zn(CH3)2)など)である。
【0033】
12.複合材料:マクロレベルでの形態や組成が異なる2つの材料を組み合わせたものである。化合後であっても、各構成物同士は完全に混ざり合うというわけではない。各構成物は、無機物でも、有機物でも、あるいはその組み合わせであってもよい。この定義には、例えば、ドープ材料や、分散金属触媒、あるいは他の不均一の固体なども含まれる。
【0034】
(II.概略)
本発明は、既定領域に材料アレイを有する基材を生成及び使用するための方法及び装置を提供する。ここに記載される発明は、主に無機材料の生成に関するが、本発明を他の材料の生成にも適用することができる。本発明に含まれる方法で生成可能な材料は、例えば、共有結合型網状構造固体、イオン固体、分子固体などである。より詳細には、本発明に含まれる方法で生成可能な材料は、無機材料、金属間材料、金属合金、セラミック材料、有機材料、有機金属材料、非生物有機ポリマー、複合材料(例えば、無機物化合物、有機物化合物、またはこれらの組み合わせ)が含まれるが、これに限定されるものではなく、本発明の開示に基づいて当業者であれば生成可能な他の材料も含まれる。
【0035】
生成された材料アレイを有する基材はあらゆる用途に応用可能である。例えば、生成された基材をスクリーニングすることで、有用な性質を有する材料となる。つまり、材料アレイは単一の基材上で合成される。単一基材上で材料アレイを合成させることで、有用な性質を持つようなスクリーニングを容易に行うことができる。スクリーニングにより、例えば、電気的、熱的、機械的、形態学的、光学的、磁気的、化学的性質が得られる。また特に、伝導率、超伝導率、比抵抗性、熱伝導性、異方性、硬度性、結晶性、透過性、磁気抵抗性、浸透性、周波数倍加性、光電子放射性、保磁力、誘電強度、または、本発明の開示に基づいて当業者であれば想到可能なあらゆる性質をスクリーニングにより得ることができる。多様な材料アレイを合成及びスクリーニングすることによりもたらされる効果は、新たな性質を有する新規材料の合成が可能となることである。有用な性質を有する材料は連続的かつ大量に製造される。有用な材料の製造を本発明の方法で行えば、基本的に同様な構成や性質を有する有用な材料を他の様々な方法を用いて大量に製造可能であることは、当業者には明らかであろう。
【0036】
一般的に、材料アレイは、基材の既定領域上に材料の成分を連続的に供給し、少なくとも2つの材料が形成されるように、これらの成分を同時に反応させることで生成される。一の態様として、第一材料の第一成分を基材上の第一既定領域に供給し、第二材料の第一成分を同一基材上の第二既定領域に供給する。その後、第一材料の第二成分を第一領域に供給し、第二材料の第二成分を第二領域に供給する。各成分は、一様あるいは傾斜するように供給されることで、一つの既定領域内に単一化学量あるいは多量の化学量をもたらす。また、単結晶膜、エピタキシャル膜、格子構造または超格子構造などが反応物として供給される。この成分を追加しながら処理を繰り返すことで、基材上の既定領域に大規模な成分アレイが形成される。このとき、同時に成分の反応が起こり、少なくとも2つの材料が形成されるのである。後述するように、あらゆる供給手法により、複数の成分を順次あるいは同時に基材上の既定領域に供給することができる。
【0037】
本発明の方法では、様々な合成手法により、基材上の既定領域に供給された成分を反応させることができる。例えば、溶液をベースにした合成技術、光化学的技術、重合技術、鋳型指向合成技術、エピタキシャル成長技術を用い、ゾル−ゲル法、熱、赤外又はマイクロ波による加熱、か焼、焼結又はアニーリング、熱水法、フラックス法、溶媒の蒸発による結晶化などを用いて成分を反応させる。また、当業者であれば対象成分の同時反応を可能とする他の有用な合成手法も明らかであろう。
【0038】
反応は平行して処理されるので、反応ステップ数は最小化される。さらに、異なる反応部位における反応条件は独立に制御できる。例えば、反応種量、反応溶媒、反応温度、反応時間、反応をクエンチする速度、反応種の蒸着順序などは基質上の反応部位ごとに変えることができる。こうして、例えば、第1物質の第1成分と第2物質の第1成分は同じ又は異なりうる。もし第1物質の第1成分が第2物質の第1成分と同じならばこの成分は基質上の第1及び第2部位に等量あるいは異なった量で提供することができる。これは第1物質の第2成分及び第2物質の第2成分などについても全く同様である。第1及び第2物質の第1成分のように、第1物質の第2成分及び第2物質の第2成分は同じでも異なっていてもよく、もし同じであるならば、この成分は基質上の第1及び第2部位に等量あるいは異なった量で提供することができる。さらに、与えられた基質上のあらかじめ定められた部位に、成分は均一に、あるいは勾配を持たせた形式で分配されうる。加えて、同じ成分が基質上の第1及び第2部位に同一の濃度で分配される場合は、反応が実行される反応条件(例えば反応温度、反応時間など)は反応部位ごとに変えられる。
【0039】
さらに、本発明の1つの態様では、本方法は、実質的に同じ反応成分を実質的に同一の濃度で第1及び第2基質双方の反応部位に分配し、その後、幅広い組成のアレイ中の、第1基質上の成分を第1組の反応条件に、及び第2基質上の成分を第2組の反応条件にかけることにより、少なくとも2つの異なった物質のアレイを形成するために提供される。本方法を用いて様々な反応パラメーターの結果を研究することができ、そして順に最適化される。変わりうる反応パラメーターとは例えば反応種量、反応溶媒、反応温度、反応時間、反応が処理される圧力、反応が行われる雰囲気、反応が抑制される場合の反応速度、蒸着された反応種の順序などである。他の変わりうる反応パラメーターは当業者に明らかであろう。
【0040】
独立の反応部位の反応成分はしばしば隣接する反応部位への移動を防がなくてはならない。最も簡単には、基質上の反応部位間に様々な成分が反応部位間を相互拡散しないように十分な量のスペースをとっておくことで確保できる。さらに、基質上の様々な反応部位間に適当な隔壁を提供することで確保できる。1つの方法としては、機械的装置あるいは物理的構造によって基質上の様々な反応部位の境界を定める。壁、あるいは物理的隔壁は例えば、独立の反応部位の反応成分が隣接する反応部位へ移動することを防ぐために用いることができる。この壁、あるいは物理的隔壁は合成が実行された後は除くことができる。当業者は、物質のアレイのスクリーニングの前に壁あるいは物理的隔壁を除けることはしばしば有益であると判断するであろう。
【0041】
別の方法としては、例えば疎水性物質を、独立の反応部位の周囲部位を被覆するために用いることができる。このような物質は水性の(及び他のある種の極性の)溶液が基質上の隣接する反応部位に移動するのを防ぐ。勿論、非水性あるいは無極性溶液が用いられる場合は、異なる表面コーティングが要求される。さらに、適当な物質(例えば、基質物質、疎水性コーティング、反応溶媒など)を選択することにより、基質表面について液滴の接触角を制御することができる。反応部位内の溶液によって反応部位周囲部分が濡れずに残るので、接触角が大きいことが望まれる。
【0042】
本発明の分配システムでは、少量で精密に計量された量の各反応成分が各反応部位に分配される。これは様々な分配技術を用いて、単独あるいは様々なマスキング技術との結合により達成してもよい。例えば、様々な反応成分を基質上の選択された部位に分配するために、物理的なマスキングあるいはフォトリソグラフィー技術と結合した薄層蒸着技術を用いることができる。さらに詳細には、集積回路の組立およびエピタキシャル成長物質に用いられる他の技術と同様に、スパッタリングシステム、スプレー技術、レーザーアブレーション技術、電子線あるいは熱による蒸発、イオン注入あるいはドーピング技術、化学蒸着法(CVD)は、様々な反応成分の高度に均一な層を基質上の選択された部位に蒸着させるのに適用することができる。選択的にマスク、ターゲット及び/または基質の相対的な図形を変えることによって基質上の各定められた部位内あるいは選択的に基質上の全ての定められた部位にわたって反応成分の勾配を蒸着することができる。このような薄層蒸着技術は反応成分が関係のある反応部位のみに分配されることが確保されるように一般的にマスキング技術との結合で用いられる。
【0043】
さらに、前記に加えて、様々な反応成分は関係のある反応部位上にディスペンサーから液滴又は粉の形態で蒸着されうる。例えば従来のミクロピペッティング装置は、キャピラリーから5ナノリットル又はさらに少量の体積の液滴を分配するのに応用できる。このような液滴は、マスクを用いれば300μm又はそれ以下の直径を有する反応部位内に合わせることができる。ディスペンサーは従来のインクジェットプリンターに用いられる形式のものにすることもできる。このようなインクジェットディスペンサーシステムは例えば、パルス圧式ディスペンサーシステム、バブルジェット(登録商標)式ディスペンサーシステム及びスリットジェット式ディスペンサーシステムなどを含む。これらのインクジェットディスペンサーシステムは5ピコリットルもの少量の体積の液滴を分配できる。さらに、このようなディスペンサーシステムは手動で、又は選択的に、例えばロボット技術により自動にすることができる。
【0044】
本発明のディスペンサーは様々な従来システムによって適切な反応部位に関して調整することができる。このようなシステムはマイクロ電子工学装置の組立及び試験技術において広く用いられているが、反応成分の液滴を独立の反応部位に1秒あたり5000滴までの速度で分配できる。このようなシステムのX−Y並進精度は1μm以内である。このようなシステムのディスペンサーステージの位置は当業者に周知の様々な方法によって基質の位置に関して校正できる。例えば、基質表面上に1又は2のみの参照点しかないときは、基質上の各反応部位の位置決めをするために「死算(dead reckoning)」方法が提供されうる。このようないかなるシステムにおける参照マークも容量、抵抗あるいは光センサーを用いて精密に認識されうる。選択的に、カメラを用いた「視角」システムを用いることができる。
【0045】
本発明の他の態様として、ディスペンサーは関係する反応部位について、磁気的あるいは光学的記憶媒体分野で用いられるものの類似のシステムによって調整できる。例えば、反応成分が蒸着されるべき反応部位は円板基質上のトラック及びセクターの位置により認識される。ディスペンサーは円板基質が回転する間に適切なトラックに移動する。適切な反応部位がディスペンサーの下に位置したときに、反応溶液の液滴が放出される。
【0046】
いくつかの態様では、反応部位は基質表面内でへこみによってさらに定められてもよい。これはヘッド又は他のセンシング装置が基質表面に接触するあるいは基質表面に沿って滑る必要があるときに特に有用である。へこみはディスペンサーを関係ある反応部位に導く認識マークとしての役割を果たすこともできる。
【0047】
(III.基質上の反応部位の分離)
好適な態様では、本発明の方法は単一の基質表面上の既知の位置における異なる物質のアレイを準備するのに用いられる。本質的に、発明において考えられるあらゆる基質が用いることができる。基質は有機、無機、生物学的、非生物学的、あるいはこれらの結合であって、粒子、糸状、沈殿、ゲル、シート、チューブ、球体、コンテナ、キャピラリー、パッド、スライス、フィルム、プレート、スライドなどとして存在しうる。基質は、例えば円板、球体、円などのいかなる便利な形を有していてもよい。基質は好適には平らで、しかし選択的に様々な表面形状をとってもよい。例えば、基質は異なる物質の合成が起こる膨らんだ、あるいはくぼんだ部位を含んでいてもよい。基質及び表面は好適には説明された反応が実行されるところに堅い支柱(support)を形成する。基質は、例えばポリマー、プラスチック、パイレックス(登録商標)、クオーツ、レジン、シリコン、シリカ又はシリカベースの物質、炭素、金属、無機ガラス、無機結晶、膜などを含む幅広く多様な物質であってもよい。他の基質物質は本開示のレビューにおいて当業者には容易に明らかになるであろう。固体基質表面は基質として同一の物質からなるが、あるいは選択的に異なることもありうる。すなわち基質が異なる物質で被覆されることもありうる。さらに、基質表面は関係ある成分が分配されるところに(例えばセルロースなどの)吸収材を含むことができる。最も好適には基質及び基質表面物質は合成される物質の種類に依存し、いかなる場合における選択も当業者には容易に明らかになるであろう。
【0048】
いくつかの態様では、基質上のあらかじめ定められた部位及び各別個の物質が合成される場所は、25cm2より小さく、好適には10cm2以下、より好適には5cm2以下、さらに好適には1cm2以下、さらにもっと好適には1mm2以下、そしてさらに好適には0.5mm2以下である。最も好適な態様では、部位は約10,000μm2以下、好適には1,000μm2以下、より好適には100μm2以下、さらに好適には10μm2以下の面積を有する。
【0049】
好適な態様では、単一の基質は少なくとも10種の異なった物質を、より好適には少なくとも100種の異なった物質を合成する部位を有する。さらに好適な態様では、単一の基質は103、104、105、106以上の、あるいはさらに多くの物質を合成する部位を有する。いくつかの態様では、分配工程は、たとえその工程が3、4、5、6、7、8、あるいはそれ以上の成分を中に有する物質を形成するために容易に応用できるとしても、2程度の少ない成分を有する物質を提供するために繰り返される。単位面積当たりの部位の密度は0.04部位/cm2以上、より好適には0.1部位/cm2以上、さらに好適には1部位/cm2以上、さらにもっと好適には10部位/cm2以上、そしてさらに好適には100部位/cm2以上である。最も好適な態様では、単位面積当たりの部位の密度は、1,000部位/cm2以上、より好適には10,000部位/cm2以上、さらに好適には100,000部位/cm2以上、さらにもっと好適には10,000,000部位/cm2以上である。
【0050】
他の態様では、基質は一連の小さなビーズまたはペレットであることができる(以後『ビーズ』という)。使用するビーズの数は合成する物質の数によって決まり、ざっと2個から無限個のビーズであることができる。この態様では、各ビーズは問題の反応成分で均一に塗布された後反応する。これは、たとえば、それぞれが特定反応物成分の溶液を含む一連の容器を用いることにより容易に行われる。ビーズは、物質のアレイをつくるのに用いられる成分の数に相当する群に均等に分けられる。次に、各群のビーズを容器の1つに入れて、そこで各ビーズの表面に溶液状態にある成分の1つのコーティングが行われる。ビーズは次に1つの群にいっしょにプールされ、加熱されて各ビーズ表面に乾燥した成分層を生成する。このプロセスを数回繰返して各ビーズに異なる反応成分のアレイをつくる。一旦ビーズに問題の成分が付着すると、ビーズを反応させて、物質のアレイをつくる。すべてのビーズを同じ反応条件で反応させる場合もあり、させない場合もある。特定ビーズに付着した成分の履歴を調べるのに質量分析法を用いることができる。あるいはまた、各ビーズは付着した成分の履歴のみならずその化学量論を示すタブを有することができる。タブは、たとえば、分光法を用いて読み取ることができるようにビーズ表面にエッチングした二元タブであることができる。物質のアレイを有する単一基質と同様に、個々のビーズまたはペレットはそれぞれ有用な性質を有する物質について選別することができる。
【0051】
より詳細には、基質として一連のビーズを用いBi、Cu、CaおよびSrを素材として物質のアレイをつくろうとする場合には、たとえば、Bi(NO33、Cu(NO33、Ca(NO33およびSr(NO33の水溶液を含有する4個の容器が用いられるであろう。ビーズの一部はBi(NO33溶液を含む容器に加えられ、ビーズの一部はCU(NO33溶液に加えられ、ビーズの一部はCa(NO33溶液を含む容器に加えられ、最後に、ビーズの一部はSr(NO33溶液を含む容器に加えられる。ビーズが容器に含まれる反応物成分で均一に塗布されると、ビーズを容器から取り出し、乾燥し、エッチングし、いっしょに1グループにプールした後、さらに分割して問題の前記反応物成分を含む容器に加える。場合により補足的反応物成分についてこのプロセスを繰り返して、各ビーズに成分の膨大なアレイを生成させる。膨大な成分のアレイを含むビーズの膨大なアレイを生成させるこの方法に多くの変更をなし得ることは当業者には容易に明らかであろう。たとえば、いつくかのビーズは2成分のみで塗布され、他は3成分以上で塗布されることができる。いくつかのビーズは同じ成分で2回以上塗布することができ、一方他のビーズは一定の成分で唯一回塗布される。
【0052】
さきに述べたように、基質は平が好ましいが、種々の別の表面形状をとることができる。基質表面の形状に関係なく、個々の反応領域中の反応物成分は近傍反応領域に移動しないようにすることが肝要である。極めて簡単にいえば、これは、種々の成分が反応領域の間で混ざり合うことができないように、基質上の領域間に十分な間隔を残すことによって確実に得ることができる。さらに、これは基質上の種々の反応領域間に適当な障壁を付与することによって得ることができる。基質上の種々の領域を限定するのに機械的装置または物理的構造物を用いることができる。たとえば、個々の反応領域の反応物成分は隣接反応領域に移行しないように壁や他の物理的障壁を用いることができる。もしくは個々の反応領域の反応物成分が隣接反応領域に移行しないようにくぼみや他のへこみを用いることができる。
【0053】
本発明で用いる基質がくぼみや他のへこみを含むような場合には、そのくぼみは基質上に密な充填ができるほど小さくなければならない。そのくぼみは直径が1mm未満、好ましくは直径が0.5mm未満、より好ましくは直径が10,000μm未満、さらにより好ましくは直径が100μm、なおさらにより好ましくは直径が25μm未満であるのが好ましい。
【0054】
このような特性を有するくぼみはレーザー、加圧またはエッチング法を含む種々の方法でつくることができる。適当なくぼんだ基質表面は、たとえば、コンパクト光学ディスクをつくるのに通常用いられるもののような押印「マスター」を基質に圧しつけることによってつくることができる。さらに、写真平版法を用いる等方性または異方性エッチング法を用いることができる。このような方法では、マスクを通して基質上の反応領域を形成する。マスクを通して基質に照射後、光レジストの選択した領域を除去して、基質上の反応領域の構造を形成する。くぼみは標準的なプラズマまたはウェットエッチング法で基質に切り込むことができる。基質がガラスまたはケイ素物質であれば、適当なウェットエッチング材はフッ化水素または半導体デバイス加工分野で用いられる他の一般的なウェットエッチングを剤を含むことができる。半導体デバイス加工分野で通常用いられる適当なプラズマエッチング剤も使用することができる。このようなプラズマエッチング剤には、たとえばハロゲン含有ガスと不活性ガスとの混合物がある。プラズマエッチングは、場合によっては最大50μmの深さを得ることができるけれども、一般には深さが10μm未満のくぼみをつくる。
【0055】
適切にくぼみをつけた表面の別の調製法は光化学的にエッチング可能なガラスまたはポリマーシートを使用する。たとえば、「FOTOFORM」と呼ぶ光化学的にエッチング可能なガラスがCorning Glass Company(New York)から入手できる。マスクを通して放射線に暴露すると、このガラスは水溶液に可溶になる。その後照射したガラスを適当な溶液で簡単に洗うと、くぼみのある表面になる。この物質の場合には、アスペクト比が10対1以上(深さ対直径)で深さが最大0.1インチのよく形成されたくぼみをつくることができる。くぼみの直径は厚さが250μmのガラス層の場合には僅か25μmとすることができる。さらに、くぼみをつけた表面は問題の成分を供給する吸着剤(たとえばセルロース)を含むことができる。
【0056】
くぼみをつけた表面を用いるときでさえも、基質物質が反応領域のパラメータ以上には確実に濡れなくすることが重要な場合が多い。極めて簡単にいえば、これは、種々の成分が反応領域の間で相互に混ざり合うことができないように、基質上の領域間に十分な間隔を残すことによって確実に得ることができる。さらに、濡れに影響する物理的相互作用を抑制し、それによって個々の反応領域中の溶液が周囲表面を濡らさず、また、他の反応領域を汚染しないことが確実にできるために他の方法を適用することができる。液体の小滴が固体表面を濡らすか濡らさないかは3つの張力によって支配される:液体・空気界面の表面張力、固体・液体界面の界面張力および固体・空気界面の表面張力、液体・空気および液体・固体の張力の合計が固体・空気張力よりも大きい場合には液滴はビーズを形成する(「レンジング」と呼ぶ現象)。他方、液体・空気大きい液体・固体の張力が固体・空気張力よりも小さい場合には、液滴は一定位置にとどまる代わりに表面に広がる。表面張力は、滴が表面に広がらないような張力であるとしても接触角または湿潤角(すなわち滴の端部と固体基質との角度)は滴が比較的大きな面積を覆う(恐らく一定反応領域の限界を越えて広がる)ほど小さいことがある。さらに、小さな湿潤角は液体ビーズから逃げて広がる薄膜(約10ないし20Å)「前駆物質フィルム」の生成をもたらすことができる。大きな湿潤角は基質上のより小さな表面積を縮めて、前駆物質フィルムを形成しない「高い」ビーズをもたらす。とくに、湿潤角が約90°よりも大きい場合には前駆物質フィルムは形成されない。
【0057】
化学組成物、さらには基質表面の局部的表面自由エネルギーを制御する方法には当業者には明らかな種々の方法がある。化学蒸着法のみならず集積回路の加工に適用される他の方法を基質表面の選択した領域に極めて均一な層を付着させるために適用することができる。たとえば、反応物水溶液を用いる場合には、反応領域内の区域表面は親水性であることができ、一方、反応領域を包囲する表面は疎水性であることができる。それにより表面自由エネルギー、かつ同様に反応物溶液の滴の接触角を制御するために、基質上の場所ごとに表面化学を変えることができる。このようにして、反応領域のアレイが基質表面に形成される。
【0058】
さらに、さきに述べたように、ここの反応領域中の反応物成分を、種々の成分が反応領域の間で相互に混ざり合うことができないように、基質上の領域間に十分な間隔を残すことによって隣接反応領域に移行させないようにすることができる。
【0059】
(IV.反応物成分の供給方法)
本発明の供給システムにおいて、少量の正確に計量された量の各反応物成分を各反応領域に供給する。これは、種々の供給法単独かまたは種々の供給法と種々の物理的マスキング法もしくは写真平版法との組合わせを用いて行うことができる。本発明の方法に用いるのに適する供給法は、概して薄膜付着技術の使用を含む方法およびディスペンサーの使用を含む方法に分類することができる。
【0060】
(A.薄膜付着法を用いる供給)
基質上の予め定めた領域に種々の反応物の薄膜を付着させるために物理的マスキング法または写真平版法と組合わせた薄膜付着法を用いることができる。このような薄膜付着法は一般に次の4つの部類に分けることができる:蒸発法、グロー放電法、気相化学的方法および液相化学的方法。これらの部類に含まれるものに、たとえばスパッター法、スプレー法、レーザーアブレーション法、電子ビームまたは熱蒸発法、イオン注入またはドーピング法、化学蒸着法のみならず集積回路の加工に用いられる他の方法がある。これらの方法はすべて、基質上の選ばれた領域に種々の反応物の極めて均一な層、すなわち薄膜を付着させるのに適用することができる。さらに、マスク、供給源および/または基質の相対的形状を調整することによって、このような薄膜付着法を、基質上の個々の反応領域、あるいはまた基質上のすべての反応領域に均一な勾配をつけるのに用いることができる。本発明の方法に用いることができる種々の薄膜付着法を概観するには、たとえばHandbook of Thin-Film Deposition Process and Techniques,NoyesPublication(1988)を参照されたい。同書はあらゆる目的のために本明細書に参考資料として集録してある。
【0061】
種々の反応物の薄膜は物理的マスキング法とともに蒸発法を用いて基質上に付着させることができる。一般に熱蒸発または真空蒸着法では次の逐次工程を行う:(1)ターゲット物質を沸騰または昇華させることによって蒸気を発生させ;(2)その蒸気を源から基質に送り;さらに(3)その蒸気を基質表面の固体フィルムに凝縮させる。蒸発法で用いることができる蒸発物、すなわちターゲット物質は、驚くべき範囲の化学反応性および蒸気圧をカバーし、したがってターゲット物質を蒸発させるのに種々の源を用いることができる。このような源には、たとえば、抵抗加熱フィラメント、電子ビーム;伝導、放射または高周波誘導によって加熱したるつぼ;ならびにアーク、点火線およびレーザーがある。本発明の好ましい態様では、源としてレーザー、フィラメント、電子ビームまたはイオンビームを用いて蒸発法を用いる薄膜イオン付着が用いられる。本発明のさらに好ましい態様では、蒸発法を用いる薄膜付着は源としてレーザーを用いて行われる。このようなレーザーアブレーション源では、蒸発を生じさせるのに十分な力を有するエクサイマーまたはYAGレーザーをのぞき窓から真空中に置かれるターゲット物質に指向させる。ターゲット物質を蒸発させ、その蒸気を源から基質に移行させ、その蒸気を凝縮させ基質表面の固体薄膜とする。前記の蒸発法を用い、異なる物理的マスクを通して逐次連続付着を用いて基質上の反応物のアレイすなわち並列合成を生成させることができる。
【0062】
分子線エピタキシー(MBE)はエピタキシアル薄膜を生長させるのに用いることができる蒸発法である。この方法では、別々のKnudsen噴散源セル(炉内の冷却シュラウド付深いるつぼ)から化学反応、過剰反応物のエピタキシーおよび再蒸発に適する温度に保たれた基質にフィルムの元素または分子成分を徐々に蒸発させることによって単結晶基質上にフィルムを形成させる。このKnudsen噴散源セルは通常ケイ素またはひ化ガリウムである加熱基質に指向される直径の比較的小さな原子または分子ビームを生成する。源セルと基質との間に迅速シャッターが介在する。このシャッターを調節することによって、正確に制御された均一性、格子マッチ、組成、ドーパント濃度、厚さおよび原子層のレベル以下の界面を有する超格子構造を生長させることができる。
【0063】
蒸発法に加えて、物理的マスキング法とともにグロー放電法を用いて、種々の反応物の薄膜を基質に付着させることができる。該方法中もっとも基本的で周知の方法はスパッタリング、すなわち表面原子にイオンの衝撃を与える運動量の移行によって電極表面からの表面原子の放出である。スパッタリングまたはスパッター付着は、当業者によって種々の方法を包含するために用いられる用語であって、これらすべては本発明の方法に用いることができる。該方法の1つはRF/DCグロー放電プラズマスパッタリングである。この方法では、カソードとアノードの間に高いRFまたはDC電圧をかけて加電圧イオンのプラズマをつくり出す。プラズマからの加電圧イオンはターゲットおよび放出イオンに衝撃を与え、放出イオンはさらに基質に付着する。イオンビームスパッタリングは基質に種々の反応物成分の薄膜を付着させるために用いることができるスパッタリング法の別の例である。イオンビームスパッタリングは、プラズマではなくイオンによってイオンが供給される点を除けばさきの方法と同じである。基質に薄膜を付着させるために、本発明の方法に他のスパッタリング法(たとえば、ダイオードスパッタリング、反応性スパッタリング等)および他のグロー放電法を用い得ることは当業者には明らかであろう。並列合成のための基質上に反応物のアレイを生成させるため、スパッタリングやその他のグロー放電法を用いて異なる物理的マスクによって逐次連続付着法を用いることができる。
【0064】
蒸発法およびスパッタリング法のほかに、物理的マスキング法とともに化学蒸着(CVD)法を用いて基質に種々の反応物の薄膜を付着させることができる。CVDは、熱、プラズマ、紫外線または他のエネルギー源、もしくはエネルギー源の組合わせを用いるガス状薬品の分解による安定な固体の形成を含む。電磁波、通常は短波長の紫外線による気相または蒸気相中での反応物の活性化に基づく光強化CVDおよびプラズマを用いて気相または蒸気相中における反応物の活性化によるプラズマ支援CVDは並列合成のための2つのとくに有効な化学蒸着法である。
【0065】
蒸発法、スパッタリングおよびCVDのほかに、物理的マスキング法とともに多くの異なる機械的方法を用いて基質に種々の反応物の薄膜を付着させることができる。このような機械的方法には、たとえば、スプレー法、スピニング法、ディッピング法、ドレイニング法、フローコート法、ロールコート法、圧力カーテン法、刷毛塗り法等がある。これらの中スプレー塗装および回転塗装がとくに有用である。薄膜を付着させるのに用いることができるスプレーヤーにはたとえば超音波ノズルスプレーヤー、空気噴霧ノズルスプレーヤーおよび噴霧スプレーヤーがある。超音波スプレーヤーでは円板状のセラミック振動子が電気エネルギーを機械エネルギーに変える。この変換器は、振動子/増幅器の結合体として働く電源から高周波信号の形の電気入力を受け取る。空気噴霧スプレーヤーでは、ノズルが空気と液体流とを混合して、完全に霧化したスプレーをつくり出す。噴霧スプレーヤーでは、ノズルが加圧液体からのエネルギーを用いて、該液体を霧化させ、次いで、スプレーをつくり出す。スプレーのような機械的方法を用いて、異なる物理的マスクより逐次連続付着法を用いて、平行合成のための基質に反応物のアレイをつくることができる。
【0066】
前記の方法に加えて、半導体業界では公知のような写真平版法を用いることができる。このような技術を通覧するために、たとえばSzeのVLSI Technology、McGraw・Hill(1983)およびMeadらのIntroduction to VLSI System、Addison・Wesley(1980)を参照されたい。いずれもすべての目的で、参考資料として本明細書に収録する。当業者には公知の多数の種々の写真平版法を用いることができる。1つの態様では、たとえば、光レジストを基質表面に付着させ、該光レジストを選択的に露光し、すなわち光分解し、光分解すなわち露光した光レジストを除去し、基質上露光領域に反応物を付着させ、さらに残留する未光分解の光レジストを除去する。あるいはまた、ネガティブ光レジストを用いる場合には、光レジストを基質表面に付着させ、該光レジストを選択的に露光し、すなわち光分解し、未分解の光レジストを除去し、反応物を基質上の露光領域に付着させ、さらに残留光レジストを除去する。別の態様では、たとえばスピンオンすなわちスピンコーティング法を用いて基質に反応物を付着させ、反応物の上に光レジストを付着させ、光レジストを選択的に露光し、すなわち光分解し、光レジストを露光領域から除去し、露光領域をエッチングして、その領域から反応物を除去し、さらに残留する未光分解の光レジストを除去する。さきの態様と同様に、ポジティブ光レジストの代わりにネガティブ光レジストを用いることができる。このような写真平版法を繰返して、並列合成のための基質上の反応物のアレイをつくることができる。
【0067】
前記付着法が、反応物を薄膜の形で基質に付着させることができる方法を説明するためのものであって限定するためのものではないことは当業者には容易に明らかであろう。当業者にとって公知でありかつ使用している他の付着法も用いることができる。
【0068】
図1、図2および図3は、前記薄膜付着法とともに用いることができる物理的マスキング法の使用を説明する。より詳細には、図1は本明細書に開示する本発明の1つの態様を示し、図の中で基質2は断面で示される。マスク8は、たとえばポリマー、プラスチック、樹脂、ケイ素、金属、無機ガラス等を含む種々のいろいろな物質であることができる。他の適切なマスク材料は当業者には容易に明らかであろう。マスクは、図1に示すように基質表面に、描いてあるように極めて接近しているか、または基質表面に直接接触している。マスク中の「開口部」は反応物を供給することを望む基質上の領域に相当する。マスク中の開口部は種々の異なるサイズおよび形状であることができる。一般に開口部は円形、矩形または正方形である。しかし、あるいはまた開口部は、成分を基質の一端から他端へ線状で供給するように線状であることができる。この「線状」配置は、ある場合に、たとえば熱電気物質が発見されて最適化されているような場合に選別または検知を容易にする。マスクの半分を一定時間暴露する通常の二元マスキング法はあとで述べる。しかし、通常の二元マスキング法以外のマスキング法を本発明の方法で使用し得ることは当業者には容易に明らかであろう。
【0069】
図2(a)に示すように、基質2は領域22、24、26、28、30、32、34、36、38、40、42、44、46、48、50及び52を有している。図2(b)に示すように領域38、40、42、44、46、48、50および52がマスクされ、成分Aが、たとえばスブレーまたはスパッタリング法を用いて薄膜の形で暴露領域に供給され、得られた構造物を図2(c)に示す。その後、図2(d)に示すように領域26、28、34、36、42、44、50および52をマスクするようにマスクの位置を変えて、成分Bを薄膜状に暴露領域に供給し、得られた構造物を図2(e)に示す。
【0070】
第一のマスクの位置を変える代案として、第二のマスクを使用することができ、また、実際に、反応物の所望のアレイをつくるには、多数のマスクを必要とすることが多い。多重マスキング工程を用いる場合には、マスクの位置合わせは、以前のパターン化工程に逐次マスクを正確に合わせるために位置合わせマーク(図示せず)を使用する従来の位置合わせ方法を用いて行うか、またはさらに高度の方法を用いることができる。さらに、位置合わせの許容差を考慮するために暴露区域を隔離し、またクロス汚染を防ぐように確実に反応部位を分離させることが望ましいであろう。さらに、種々の反応物を問題の領域に供給するのに用いられる供給法を反応物ごとに変えることができることは当業者には理解されようが、大ていの場合には、各反応物に対して同一付着法を用いるのがもっとも実際的である。
【0071】
図2(f)に示すように値成分Bを基質に供給した後で、成分AおよびBの供給に用いたものと異なるマスクを用いて領域30、32、34、36、46、48、50および52をマスクする。成分Cを薄膜の形で暴露領域に供給し、得られた構造物を図3(a)に示す。その後図3(b)に示すように、領域24、28、32、36、40、44、48および52をマスクして、成分Dを薄膜の形で暴露領域に供給し、得られた構造物を図3(c)に示す。一旦問題成分を基質上の適当な予め決めた領域に供給すると、該成分は多数の異なる合成経路の中の任意の経路を用いて同時に反応して、少なくとも2つの物質のアレイをつくる。
【0072】
既に述べたように、本発明の方法中に、前記薄膜付着法とともに従来の二元マスキング法を用いることができる。たとえば、図4及び図5は、4種類の成分の基礎群からつくったそれぞれが3種類の組合わせより成る物質のアレイをつくるために用いることができるマスキング法を示す。非二元法では、それぞれ異なる成分に対して別個のマスクを使用する。したがって、この例では、4種類のマスクを使用する。図4(a)に示すように、基質2は領域54、56、58および60を有する。図4(b)に示すように、領域56をマスクして、成分Aを、たとえばスプレーかスパッタリング法を用いて、暴露領域に薄膜状に供給し、得られた構造物を図4(c)に示す。その後、図4(d)に示すように第2のマスクを用いて領域54をマスクし、成分Bを薄膜状に暴露領域に供給し、得られた構造物を図4(e)に示す。その後図4(f)に示すように第3のマスクを用いて領域58をマスクし、成分Cを薄膜状に暴露領域に供給し、得られた構造物を図5(a)に示す。最後に、図5(b)に示すように、第4のマスクを用いて領域60をマスクし、成分Dを薄膜状に暴露領域に供給し、得られた構造物を図5(c)に示す。一旦問題の成分を基質上の適当な予め定めた領域に供給すると、該成分は多数の異なる合成経路中任意の経路を用いて同時に反応して4種類の物質のアレイをつくる。
【0073】
図6〜図8は6種類の成分の基礎群からつくられるそれぞれ3種類の成分の組合わせより成る物質のアレイをつくるために用いることができる別のマスキング法を示す。図6(a)に示すように、基質2には領域62、64、66、68、70、72、74、76、78、80、84、86、88、90、92、94、96、98および100がある。図6(b)に示すように、領域64、68、72、76、80、84、88、92、96および100はマスクされて、成分Aが、たとえばスプレーまたはスパッタリング法を用いて薄膜として暴露領域に供給され、得られた構造物は図6(c)に示す通りである。その後、第2のマスクを使用して、図6(d)に示すように、領域62、66、72、74、80、82、88、90、96および98をマスクし、成分Bを薄膜状に暴露領域に供給し、得られた構造物は図7(a)に示す通りである。その後図7(b)に示すように第3のマスクを使用して、領域64、66、70、74、78、82、86、92、96および100をマスクして、成分Cを薄膜状に暴露領域に供給し、得られた構造物は図7(c)に示す通りである。その後図7(d)に示すように、第4のマスクを使用して領域64、66、70、76、78、84、88、90、94および98をマスクして、成分Dを薄膜状に暴露領域に供給し、得られた構造物は図7(e)に示す通りである。その後、図7(f)に示すように、第5のマスクで領域62、68、70、74、80、84、86、90、94および100をマスクして、成分Eを薄膜状に暴露領域に供給し、得られた構造物は図8(a)に示す通りである。最後に、図8(b)に示すように、第6のマスクを用いて、領域62、68、72、76、78、82、86、92、94および98をマスクして、成分Fを薄膜状に暴露領域に供給し、得られた構造物は図8(c)に示す通りである。一旦問題の成分を基質上の適当な予め定めた領域に供給すると、該成分は多くの異なる合成経路中任意の経路を用いて同時に反応して20種類の物質のアレイをつくる。
【0074】
前記成分を反応させる前に、化学量論の傾度に従って補足的反応物成分を基質上の予め定められた領域に供給し得ることは当業者には容易に明らかであろう。たとえば、一旦6種類の成分を基質上の適当な予め定めた領域に供給すると、第7の成分を基質全体にわたり、または基質の一部にわたり傾度のあるように供給することができる。この第7の成分を、たとえば適当なマスクを通して左から右に厚さが約100Åから1,000Åにわたる傾斜層として付着させることができる。その後、反応物成分を多くの異なる合成経路中任意の経路を用いて同時に反させて異なる物質のアレイをつくることができる。
【0075】
さらに、当業者にとっては、4種以上の成分の基礎群からつくられるそれぞれ3種以上の成分の組合わせより成る物質のアレイをつくるのに別々のマスキング法を用い得ることは容易に明らかであろう。実際に、本発明は、反応成分の異なる群において、各群の成員は相互に反応することを望まないと思われるように関連づけられる群の使用を含む実験の用の組合わせマスキングパターンをつくるのに用いることができる一般的な方法を提供する。この方法では、ベクトルを用いて成分の各サブグループを示す。たとえばランタニドのような成分のサブグループはベクトルAm=[A1、A2、A3、・・・Am]=[La、Y、Ce、・・・Lu](式中、nは1からpにわたり、pはサブグループ内の成員の総数である)で示される。成分は任意の順に置くことができることに注意すべきである。さらに、サブグループ中の特定成分が異なる化学量論で存在する場合には、それぞれの異なる化学量論はベクトル(たとえばA1.2はA1.1とは異なる化学量論に相当するであろう)で表されよう。
【0076】
一旦成分の各サブグループをベクトルで表すと、ベクトルのダイアドが形成される。たとえば、成分の2つのサブグループ、たとえばサブグループAとサブグループBがあるとすると、成分のサブグループAを表すベクトルはAm=[A1、A2、A3、・・・Am]と記されサブグループBを表すベクトルはBn=[B1、B2、B3、・・・Bm]と記されよう。これに2つのベクトルのダイアドはAmnと記されるであろう。このダイアドは下記の1次テンソルに等しい。
【0077】
【数1】

【0078】
ベクトルAmとBnのダイアドは、サブグループA中の成分とサブグループB中の成分とのすべての組合わせの生成をもたらす。前記ダイアドをベクトルの形で書くと、すなわちAmn=[A11、A12、・・・A1n、A21、A22、・・・A2n、・・・Am1、Am2、・・・Amn]およびこのベクトルとサブグループCを表すベクトルCk=[C1、C2、・・・Ck]との間に別のダイアドが形成されるので、サブグループA、BおよびCの間に各三次の組合わせを含む次のマトリックスが形成される。
【0079】
【数2】

【0080】
一定のサブグループAm、Bn、Ck、Dj、・・・それ自体で、各グループから1成分を用いるすべての組合せは次の方法を用いてアレイフォーマットにつくることができる。
【0081】
A.アレイにおいて各サブグループはアレイの行または列のいずれかに沿って付着させる。したがって、行に対応するサブグループと列に対応するサブグループを選ばなければならない。サブグループの選択はアレイ中の部位の数を変えるものではないが、アレイの形状に影響する。たとえば、アレイ中の部位の総数を変えずに4×4のアレイまたは16×1のアレイをつくることができる。一般に、幾何学的配列の選択はライブラリーに利用し得る形状による。
【0082】
B.残りの方法は、サブグループA、BおよびCについてさきに示した行クラスターと列クラスターとの中のダイアドの形成を含む。アレイ形状の各ダイアドは次のダイアドの形成に進む前にベクトル形に変えることに注意する必要がある。各クラスターにはただ1つのベクトルしか存在しないという特徴がある。これらベクトルはそれぞれ行および列ベクトルト呼ぶことができる。行ベクトルと列ベクトルの間にダイアドが形成されると、得られたアレイが組合せライブラリーの最終のフォーマットである。
【0083】
C.各ベクトルまたはアレイ中の成分の順序は、結果に影響を及ぼさないが、同じ結果を生じるのに必要なマスキングパターンを変更させる。サブグループA、BおよびCを用いて、さきの例で示したように組合せの最終アレイを決めると、組合せライブラリーをつくるには行または列に沿ってバーを有する唯一のマスクが必要である。
【0084】
非機械的な用語では、サブグループを選ぶには、サブグループ中のすべての要素をライブラリーの行か列に沿って並べて付着させることが必要である。4要素のアレイの場合には、たとえばアレイを行または列に沿って四分円に分割してから、各成分を四分円の1つに付着させる。行または列がすでに一例を挙げれば3番目のものに分割されていれば、その3番目のもののそれぞれを四分円に分解して、4つの成分すべてを3つの大きなサブディビションのそれぞれに平均に付着させる。
【0085】
当業者には、一組の予め定めた成分を与える実験に対して組合せマスキングパターンをつくるのに前記の方法を用い得ることは容易に明らかであろう。
【0086】
(B.ディスペンサーを用いる供給)
前記の供給法に加えて、単一基質に小滴または粉末状の反応物成分の異種の組合せをつくるのにディスペンサーを用いることができる。さきに述べたように、毛細管から5ナノリットル以下の小滴容量を分取するのに市販のミクロピペット装置を用いることができる。このような小滴は非湿潤性マスクを用いる場合には直径300μm以下の反応領域に適合させることができる。若干の態様では、反応物溶液を付着させる前に後述のようにミクロピペットを反応領域の上に正確かつ精密に位置決めする。
【0087】
別の好ましい態様では、本発明は、インキジェット印刷分野で、通常用いられる装置に類似する溶液付着装置を使用する。このようなインキジェットディスペンサーにはたとえばパルス圧力型、気泡ジェット型およびスリットジェット型がある。パルス圧力型のインキジェットディスペンサーでは圧電装置により加えられる圧力の変化によってノズルから印刷インキを噴射させる。気泡ジェット型インキジェットディスペンサーの場合には、ノズルに内埋される抵抗装置により発生した熱で気泡を生じさせ、気泡の膨脹による力を用いて印刷インキを噴射させる。スリットジェット型インキジェットディスペンサーの場合には、記録電極がピクセルと連結して配列されるスリット状オリフィスの中に印刷インキを満たして、記録電極と記録紙の背後に置いた対極との間にDC電圧のパルスをかける。このシステムでは、記録電極頂部周囲の印刷インキに帯電させて、静電気力で記録紙に向ってインキを噴射して紙上にドットを記録させる。
【0088】
このようなインキジェット印刷機は単にインキの代りに反応物含有溶液または反応物含有粉末を用いるだけの僅かな修正で使用することができる。たとえば、あらゆる目的で参考資料として本明細書に収録してあるWongらの欧州特許出願第260965号は固体マトリックスに抗体を適用するためのパルス圧力型インキジェット印刷機の使用を述べている。この方法では、抗体を含有する溶液を不連続の小液滴に分裂させるように、該溶液を振動しつつある小口径ノズルから押出す。小液滴は次に電界を通って帯電しさらに屈折してマトリックス物質に達する。
【0089】
具体的に説明すると、通常のパルス圧力型のインキ滴印刷機にはインキを加圧下で保持する受器がある。このインキ受器はノズルに接続する管がついている。ある適切に高い振動数でノズルを振動させるのに電気機械式変換器を使用する。ノズルの実際の構造には、外部の変換器によって振動する絞りガラス管や外部変換器(たとえば圧電結晶)によって振動する金属管や静磁気的に振動する磁気ひずみ金属管のような多くの種々の構造物がある。したがって、インキは細流状でノズルから噴射されその後直ちに個々の液滴に分裂する。電極はノズル近傍にあって液滴に帯電させることができる。
【0090】
本発明に使用することができるパルス圧力型インキ滴ディスペンサー(あらゆる目的で参考資料として本明細書に収録してある米国特許第3,281,860号および同第4,121,222号に記載されているようなもの)の略図を図9に示す。この装置は加圧下の溶液を入れる受器210を含む。管212は受器210に接続されて金属ノズル242で終る。ノズル242は圧電結晶240内に設けられた穴の中に配設されている。金属管と圧電結晶の端部は一致している。管と圧電結晶は相互に半田付けされて永久的な防水アタッチメントを形成する。圧電結晶と管の一致した端部はオリフィスワッシャーと呼ぶワッシャー244で覆われている。このワッシャーは開口部246がドリルであけてあり、そこから溶液を加圧して排出させる。発振源218は金属管242の出口および圧電結晶240の出口と接続している。その構造は気密封止を用いて成分を電気化学的および大気侵食から保護することができるような構造である。
【0091】
圧電結晶240は実質的に発振源の振動数で振動を生じ、管およびノズルを振動させ、これによって溶液流を小液滴246に分裂させる。発振源と同調する信号源224はノズルおよび帯電円筒226と接続されている。この結果、実質的に同じ質量でなければならない各液滴は電荷を受け、その振幅は源224および帯電円筒226から与えられる信号の振幅によって決定される。
帯電した液滴は、帯電円筒を通過後、電界ポテンシャル源234に接続されるそれぞれ230および232の2枚のプレート間にできる電界に入る。電界と各液滴の電荷との作用の結果として、液滴が有する電荷によってプレート間の中心線経路から液滴は偏向する。したがって、液滴が、任意に動いている記録媒体236上に落ちると、情報を信号として表わす付着パターンが記録媒体上に生じる。
【0092】
説明のために、パルス圧力型インキジェット印刷機について詳細に述べたけれども、気泡ジェット型およびスリットジェット型のインキジェット印刷機も僅かな修正を行えば基質上の予め定められた領域に反応物成分を供給するために使用できることも当業者には容易に明らかであろう。さらに、前記の説明では単一ノズルに関するものであるが、好ましい態様では、多数のノズルを有するインキジェット印刷機を用いて多くの反応物成分を、基質上の単一の予め定められた領域、もしくは基質上の複数の予め定められた領域に供給する。さらに、インキジェット印刷機の分野で改良が行われているので、そのような改良を本発明の方法に用いることができる。
【0093】
他の態様では、電気泳動ポンプによって受器から基質に反応物溶液を供給することができる。このような装置では、細い毛細管が反応物の受器とディスペンサーのノズルとを接続する。毛細管の両端には、電位差を与えるための電極が存在する。当該技術分野では公知のように、化学種が電気泳動媒体の電位勾配の中を移動する速度は搬送される化学種の電荷密度、大きさおよび形状のみならず搬送媒体自体の物理的および化学的性質によっても支配される。電位勾配、毛細管寸法、および搬送媒体のレオロジーの適切な条件の下では、毛細管内に流体力学的流動が生じる。したがって、問題の反応物を含む多量の流体を受器から基質にポンプ輸送することができる。電気泳動ポンプノズルに対して基質の適切な位置を調節することによって、反応物溶液を基質上の予め定めた領域に正確に供給することができる。
【0094】
前記のディスペンサーシステムを用いると、反応物を基質上の予め定めた領域に逐次または同時に供給することができる。本発明の好ましい態様では、反応物を、基質上の単一の予め定めた領域に同時に供給するか、または基質上の複数の予め定めた領域に逐次供給することができる。たとえば、2個のノズルを有するインキジェットディスペンサーを用いて2種類の反応物を同時に、基質上の単一の予め定められた領域に同時に供給することができる。もしくは、この同じインキジェットディスペンサーを用いて、基質上の2つの異なる予め定めた領域に反応物を同時に供給することができる。この場合には、同じ反応物もしくは2種類の反応物を供給することができる。二つの予め定めた領域に同じ反応物を供給する場合には、同じ量かまたは異なる量を供給することができる。同様に、8個のノズルを有するインキジェットディスペンサーを用いると、たとえば、基質上の単一の予め定められた領域に8種類の反応物を同時に供給することができるか、もしくは基質上の8つの異なる予め定めた領域に8つの反応物(同一かまたは異なる)を同時に供給することができる。
【0095】
(V.多ターゲット薄膜付着システム)
さきに述べた薄膜付着法を行うのに用いた反応システムは、広範囲に異なることができ、かつ大半は薄膜付着技術が用いられているシステムによる。本発明は、本発明の方法を実施する上で用いることができる多数の種々の多ターゲット薄膜付着システムを提供する。本明細書に開示されるシステムの多くの態様や変形はこの開示を検討すれば当業者には明らかになろう。
【0096】
(A.カルーセル付きスパッタリングシステム)
本発明の方法に用いることができる8個のRFマグネトロンスパッタリングガンシステムの例を図10に示す。このシステムは8個のRFマグネトロンスパッタリングガン110を含み、各ガンは問題の反応物成分を含有している。8個のRFマグネトロンスパッタリングガンはディスク112の約2ないし5インチ上方に配設され、該ディスク112はその上に8個のマスキングパターン114のみならず8個のフィルム厚さモニター116を載せている。このシステムでは8個のRFマグネトロンスパッタリングガンのみならずディスクも固定されている。しかし、基質118は基質マニピュレータ120と結合され、該基質マニピュレータ120は直線および回転運動を行うことができ、かつ、スパッタリングが始まるときに基質をマスクと接触させるように基質を問題の特定マスクと係合させている。それぞれのマスクを通して各成分を逐次付着させることによって8成分の組合せが基質上に生成する。このシステム全体の真空中で用いられる。
【0097】
8個のマスキングパターン114を載せたディスク112に回転運動を与え、それによって任意の8個の反応物成分を任意の8個のマスキングパターン114に合わせるのに必要な融通性をもたせている。この融通性によって、反応物成分が多重マスキングパターンを通して付着できるように、ディスク112の能力を9個以上のマスキングパターン114に向上させることは有利と思われる。これは、一定反応物成分の異なるフィルム厚さがライブラリー内の異なる部位で必要となる場合にとくに有用である。さらに、このシステムは極座標系からX−Y座標系に変えることができ、その場合にはスパッタリングガン、マスクおよび基質は角形の形状になる。
【0098】
(B.カセット付きスパッタリングシステム)
組合せスパッタリングシステムの別の設計を図11に示す。このシステムは8個のRFメガトロンスパッタリングガン110を含み、各ガンは、完全な円形の反応チャンバー側面から挿入される問題の反応物成分を含有する。基質は直線および回転運動をするシャフト130に付着している。付着の間に基質自体は8個のRFマグネトロンスパッタリングガン110の任意の1つに面するように移動および回転することができる。基質は基質ホルダー132内に置かれ、基質ホルダーは基質を保持する以外に、基質118の上に1個の2次マスキングパターン134をしっかりと固着させる(1次マスクは基質上の反応部位の形と密度を限定して、全実施中固定されるグリッドである)。反応物成分の付着後、マニピュレータ138を用いて2次マスクを取り外し、それをカセット140内に入れ、次に必要な2次マスクを取り出して、このマスクを基質ホルダー132の上に置く。基質ホルダーの固定機構はマスクの整合を好ましくは25μm以内に保証する。(基質とマスクと25μmよりもよい精度で整合させる固定機構については多くの考案や設計があることは当業者には容易に明らかであろう。)図11に示す構造において、マニピュレータ138は垂直方向に直線運動をし、カセット140は水平方向に直線運動をする。このフォーマットにおいて、マニピュレータ138はカセット140内の任意の2次マスクを移動させるのに用いることができる。この設計は、好ましくは2個のマスクの使用、より好ましくは8個のマスクの使用、さらにより好ましくは20個のマスクの使用、なおさらにより好ましくは20個以上のマスクの使用にあてはまる。このシステムを用いると、問題の反応物成分のすべてを異なるマスキングパターンを通して付着させ、それによって積層薄膜前駆物質の組合せライブラリーをつくることができる。
【0099】
C.カセット付きパルスレーザー付着システム
前記の1つに関連する1つのシステムはカセット交換機構を有するパルスレーザー付着システムである。この設計は図12に示す。反応物成分はカルーセルホィール内に置き、該ホィールは少なくとも4個の反応物成分、より好ましくは少なくとも8個の反応物成分を保持することができる。別の方法は多角形142(図12参照)の異なる面に各反応物成分を置くことである。たとえば、多角形が十角形であれば、10個の反応物成分をそれに載せることができる。いずれの設計にせよ、目的は、特定時間の間に反応物成分をレーザービーム144の前に迅速に動かし、次にほとんど瞬間的に反応物成分を取換えることができることにある。カルーセル態様では、反応物成分は急速に回転してレーザービーム144と交わることができる。多角形態様では、レーザービーム144を固定する前面に所望の多角形の面を回転することによって反応物成分を交換することができる。
【0100】
スパッタリング薄膜付着法と比べると、パルスレーザー薄膜付着法は反応物成分を交換するという点で大きな融通性と速度をもたらすが、1cm2よりも大きい面積では均一性が減じる。しかし、最大100cm2の均一な表面が得られるレーザーについて現在幾つかの方法が用いられている。そのような技術の第1でかつもっとも一般的なものは反応物成分の付着中に基質を遊星状の動きで動かすことである。遊星状の動きは、反応物成分から噴射される物質のプルームを基質全面に確実に平均に広げる。付着の間基質を動かすコストは、実際上、多くの1cm2の付着が、たとえば直径5cmの円を平均に被覆するのに必要であるのでスピードの減少である。
【0101】
薄膜の付着の間に大面積に均一性を得る別の方法は、ラスタレーザービームを用いる方法である。図12に示すこの設計ではプログラマブルミラー146はアブレーションターゲット、すなわち反応物成分の直径全体にわたりレーザービームをラスタさせる。位置の関数としてラスタリングレーザービームの速度を変えることによって基質の外縁近傍に長時間アブレーションプルームを発生させることによって均一フィルムを得ることができる。この方法は、また時間の関数として常に一貫したプルームを生じるという利点もある。
【0102】
図12に示したシステムの場合には、基質は回転ならびに垂直方向に移動させることができるシャフトに取り付けてある。さらに、ラスタリングレーザービームを用いる以外に、各アブレーションターゲットすなわち反応物成分はレーザービームにターゲットの全表面を曝露するように回転する。これにより1平方インチ以上の面積について付着の均一性が向上する。図11に示したシステムについてさきに述べたように、基質はサンプルホルダー132の中に入れて2次マスク134を基質の上方の基質ホルダー132に付着させる。2次マスク134は固定機構を用いることによって基質と正確に整合する。固定機構の精度は好ましくは25μmよりもよい必要がある。付着段階の間に、真空を中断せずにマスクを交換し、他の2次マスクの1つを反応チャンバー内のカセットに収容する。マスクを交換するのに用いる一般的な方法はさきに述べた。
【0103】
(D.スライディング及びシャッター遮蔽システムを備えたパルス式レーザーめっきシステム)
1,000個以上の物質を含むライブラリーを三成分、四成分及び五成分物質だけを含むように構築する場合、例えば含まれる種々の遮蔽工程の数はたやすく30に達する。さらに、各ライブラリーは幾つかの独自の遮蔽パターンを使用する必要があるらしい。そこで、それぞれ数秒以内で支持体の前に数百の異なる遮蔽パターンのうちの一つを作り出すことができるシステムを持つならば有利と言える。そのようなシステムを図13に例示する。
【0104】
このデザインでは、反応体成分ターゲット及びレーザーは図13に例示するように配置することができる。支持体ホルダー132内の支持体はシャフト130に取り付けられていて、シャフト130は回転能と共にX、Y及びZ方向への移動能を持つ。上記支持体は窓のある固定プレート150の下に置かれ、このプレートは好ましくは1cm2以上、より好ましくは6cm2以上、最も好ましくは50cm2以上となる。窓付きプレート150の上には、その上に複数の遮蔽体を含む平らなシート152がある。このシート152は、いずれの遮蔽体も窓付きプレート150上に直接移動させることができるようなマニプレーター又はシャフト130に取り付けてある。典型的には、窓付きプレート150とシート152の間にはごく僅かな空間しかないか又は全く空間がない。
【0105】
シート152上の遮蔽体の1つは9個の正方形から成る最も一般的な形態を取り、その9個の正方形はそれぞれが窓付きプレート150の窓とほぼ同じ寸法である。中央の正方形だけが空いている。この遮蔽体を図14(a)に示す。XおよびY方向に移動できる平らなシートに取り付けると、この遮蔽体は有効なX/Yシャッター遮蔽体になる。それ自体、異なるサイズの正方形、長方形、'L'字形及びX又はYのいずれかの方向のバーを作り出すこともできる。支持体もXおよびY方向に移動できる場合には、2個のシャッターメカニズムがこの配置中に作られる。ここに述べるもののような機能を持つ2シャッターシステムを作り出せる(正方形遮蔽体の代わりの'L'字形遮蔽体のような)他の配列もあることが当業者には容易にわかるであろう。
【0106】
X/Yシャッター遮蔽体及び支持体の組み合わせを用いて、数百もの異なる遮蔽配置をそれぞれ数秒以内で作ることができる。例えば、図14(b)に示す5個の遮蔽パターンは支持体に沿って5個の異なる反応体成分による5個の別個のカラムを作りだす。これと同じデザインはX/Yシャッター遮蔽体で、最初にこの遮蔽体を右にスライドさせて(図14(b)中の最初の遮蔽体に示すように)窓付きプレートの右サイドと支持体の1/5のサイズの開口部を形成させて、次いでこの支持体を各めっき後に左に移動させることにより達成することができる。従って、同じ数、すなわち5回のめっき工程で、遮蔽体を交換する必要なしに同等のパターンが作りだされる。さらに、ライブラリー全域で1つの成分の厚みの勾配をつける必要がある場合、上記X/Yシャッターを例えば一定の速度で図14(c)に示すように右から左に移動させることもできる。
【0107】
上述のX/Yシャッターシステムはより伝統的な二元遮蔽法と組み合わせてうまく用いることもできる。例えば、図14(d)に示す遮蔽体を支持体を横切って移動させると、5個の異なる成分が支持体の各半分にめっきされる。しかしながら、上記X/Yシャッターシステムでは工程数の二倍行う必要がある。そこで、窓付きプレート150の上に直接置かれた平らなシート152上のX/Yシャッターに加えて二元遮蔽体を組み込むと都合がよいことが多い。そのようなシート配置の例を図15に例示する。支持体を90°回転させることによってXおよびY方向の両方に遮蔽パターンを適用することができ、必要な遮蔽体の数が半分まで減らせることに注意されたい。上記シートが一次元的に(例えば、X方向に)固定されていると、支持体を90°回転させられるような回転自由度を支持体に持たせなければならない。
【0108】
伝統的な二元遮蔽法と組み合わせて使用する以外に、他の遮蔽法と組み合わせて上記X/Yシャッターシステムをうまく使用することもできる。特に、別個のグループの反応成分の使用が含まれる実験用に遮蔽戦略を立てるために先に述べた方法で上記X/Yシャッターシステムを使用することもでき、この場合各グループのメンバーは互いに相互作用することが望ましくないという点で関連付けられる。これをどのようにして行うことができるかという例を以下に示す。
【0109】
この例では、3グループの反応体成分、すなわち、グループ8、グループ5及びグループ3があり、これらはそれぞれ8、5、及び3個の要素を含む。さらに、グループ8は要素毎に5種類のセッティングを持ち、グループ5は要素毎に3種類のセッティング、さらにグループ3は要素毎に1種類のセッティングを有する。それ自体で、アレイ上の反応部位の数は1800又は(8x5)x(5x3)x(3x1)だけあることになる。1800反応部位を持つアレイを調製するには、支持体の幅に40の横列が並び、支持体の長さに45の縦列が上から下に並ぶ長方形の支持体を使用することもできる。8個の要素と各要素毎に5セッティングを有するグループ8は横列に沿ってめっきされるが、5個の要素と各要素毎に3セッティングを有するグループ5及び3個の要素と各要素毎に1セッティングを有するグループ3は縦列に沿ってめっきされる。図13に述べるレーザーシステムを用いてめっき時間を1"x1"領域に対して約5Å/s、各層のめっきの厚みを2Åとするならば、必要な遮蔽工程の数は23分の全めっき時間において34となる。この値は34個の遮蔽体を交換するのに必要な移送時間を考慮に入れていない。上記のX/Yシャッターシステムを用いると、1時間の全めっき時間に対して90工程が必要となる。しかしながら、X/Yシャッターシステムと組み合わせて2個の遮蔽体を使用すると、必要な遮蔽工程の数は50に減り、めっき時間は33分に減ることになる。
【0110】
上記は本発明の方法を実施する場合に使用できる多くの異なるマルチ−ターゲット薄膜めっきシステムの一例である。このようなシステムにより積層された薄膜部材の組み合わせライブラリーを作るために使用されるシステムについての一般的戦略及びデザインが提供される。種々の薄膜めっき法のいずれかに上記のシステムを用いるにはわずかな処置で修正及び最適化することができることは当業者には容易に明らかとなるであろう。
【0111】
(VI.支持体に対するディスペンサーの移動)
ディスペンサーを用いて正確に特定された領域に一貫して反応体飛沫をめっきさせるには、放出器械及び支持体に共通の基準枠が必要である。言い換えれば、その器械の基準座標を支持体の基準座標上に正確に位置づけなければならない。典型的には、反応領域のアレイを完全に位置づけるには支持体上のただ2点の基準点が必要なだけである。ディスペンサー器械はこれらの基準点の位置を突きとめた後にその内部基準座標を調整して必要な配位をとらせる。この後、ディスペンサーを特定の方向に特定の距離だけ移動させて既知の領域の上に直接位置させることができる。もちろん、このディスペンサー器械は正確に反復可能な移動を行わなければならない。さらに、アレイの個々の領域は基準マークが形成された後には支持体上の基準マークに対して位置を変えてはならない。あいにく、支持体の組み立て及び使用の間に一般に受ける圧力又は他の機械的作用がこの支持体を曲がらせて基準マークと反応領域の間の一致を変化させてしまうこともある。
【0112】
この可能性を考慮して、「全体的」且つ「局所的」の両方の基準マークを備えた支持体を好ましくは使用する。好ましい態様においては、2個の全体的基準マークだけを支持体上にうまく配置させて初期の基準枠を規定する。これらの点が配置されると、ディスペンサー器械にとって支持体及びその中の予め規定された領域のおよその位置づけがなされる。これらの領域が正確な位置に配置されるのを助けるために、支持体をさらに局所基準枠に再分割する。こうして、初期の「コース」調整で、ディスペンサーは局所基準枠の一つの中に配置される。局所領域中に置かれると、その分配器械が局所基準マークを探してさらに局所基準枠を規定する。これらから、上記ディスペンサーは反応体がめっきされるべき反応領域に正確に移動する。この方法で、ねじれ又は他の変形作用を最少にすることができる。局所基準マークの数は支持体中に予想される変形の量により決定される。支持体が十分に固くて変形が起きないか起きてもごくわずかと考えられる場合には、非常に少ない局所基準マークが必要なだけである。実質的な変形が予想される場合は、しかしながら、より多くの局所基準マークが必要である。
【0113】
一つの基準点から始めて、マイクロピペット又は他のディスペンサーを支持体上の一つの反応領域から他の反応領域に正確な方向に正確な距離で移動させる(これが「推測(dead reckoning)」操縦法である)。このように、上記ディスペンサーは領域から領域に移動して正確に計量された量の反応体を分配することができる。基準点を最初に配置してディスペンサーをその上に直接に位置調整するために、目視又は非目視システムを使用することができる。目視システムでは、カメラをディスペンサー・ノズルにしっかりと取り付ける。カメラが基準点の位置を捉えると、ディスペンサーが基準点から固定された距離及び方向にあることがわかり基準枠が確定される。非目視システムでは例えば電気容量的、抵抗的、又は光学的方法によって基準点の位置が捉えられる。光学的方法の一例では、レーザービームが支持体を透過するか又は支持体から反射する。このビームが基準マークに当たると、光強度の変化がセンサーによって検出される。容量的及び抵抗的方法も同様に用いられる。基準点に当たるとセンサーが電気容量又は抵抗率の変化を記録する。
【0114】
本発明の目的から、個々の領域間の間隔設定は使用する領域のサイズによって変化することになる。例えば、1mm2領域を用いる場合には個々の領域間の間隔設定は好ましくは1mm以下のオーダーとなる。例えば、10μm2領域を用いる場合には個々の領域間の間隔設定は好ましくは10μm以下のオーダーとなる。さらに、セル間の角度関係は好ましくは一貫して0.1度以内である。もちろん、セルの配置を規定するために用いる写真平板処理又は他の処理が角度及び間隔を正確に規定することになる。しかしながら、その後の処理(例えば、加圧処理)において角度が歪められることがある。そこで、態様によってはアレイ全体を通して「局所」基準点を用いることが必要なこともある。
【0115】
必要な正確さを持って移動させることができる移動メカニズムには、半導体装置の製造及び試験用装置に使用されるタイプのポジション・フィードバック・メカニズム(すなわち、エンコーダー)を好ましくは取り付ける。このようなメカニズムは好ましくはバックラッシュ及びヒステリシスがほとんどない閉鎖ループシステムである。好ましい態様においては、移動メカニズムは高解像度、すなわちエンコーダー・カウント当たり5より大きなモーター・チックを有するものである。さらに、電気機械式メカニズムは領域直径の移動距離に関して高い反復性(好ましくは、±1-5μm)を好ましくは有する。
【0116】
支持体上に正確に反応体溶液の一滴をめっきさせるためには、上記ディスペンサーのノズルを表面上の正しい距離に設置しなければならない。ディスペンサー・チップは好ましくは滴が放出される時に支持体表面の約.1cmないし約6cm上方に位置するべきである。このような正確さを達成するのに必要な調節度は上述のタイプの反復性高解像度移動メカニズムによって得られる。ある態様では、支持体上での高さはディスペンサー・チップが支持体に触れるまでディスペンサーを少しずつ移動距離を増加させて支持体の方向へ移動させることによって決定される。この時点において、ディスペンサーは表面から一定数の増加分だけ表面から離れていて、その一定数が特定の距離に対応する。そこから、滴が下のセルへ放出される。好ましくは、上記ディスペンサーが移動する増加分は使用する領域のサイズによって変化する。
【0117】
代わりの態様では、ディスペンサー・ノズルをディスペンサー・チップの上方に一定の距離で堅く張りめぐらされた覆いで囲む。好ましくはこの距離は選択された反応領域に溶液滴が放出される時に落下する距離に対応する。従って、覆いが支持体表面に接触すると、ディスペンサーの移動が停止して滴が放出される。この態様では接触が起きた後にディスペンサーを支持体から離れさせるように後方に移動させる必要はない。この態様では、先の態様と同様に、表面との接触点はディスペンサーのチップ(又は、覆い)と下の支持体との間の電気容量又は抵抗率をモニターすることによるような種々の方法によって決定することができる。これらの性質の急速な変化が表面との接触によって観察される。
【0118】
ここまではディスペンサー放出システムを平行移動についてのみ述べてきた。しかしながら、他のシステムも用いることができる。ある態様では、ディスペンサーを磁気及び光学的貯蔵媒体分野で使用されるものに類似したシステムによって関係領域に対して配置させる。例えば、反応体をめっきすべき領域をディスク支持体上のトラック及びセクター位置決定により同定する。そしてディスク支持体を回転させてディスペンサーを適当なトラックに移動させる。適当なセルが(トラック上の適当なセクターにより指示されるように)ディスペンサーの下に位置した時に、一滴の反応体溶液が放出される。
【0119】
一滴のサイズの調節は当業者に公知の種々の方法によって行うことができる。例えば、ある態様では、従来のマイクロピペット装置をキャピラリーから5ナノリットル以下の小滴を分配するように適合させる。このような小滴は湿っていない遮蔽体が使用される場合には直径300μm以下の領域中にうまく当たる。
【0120】
上記の態様は液体の小滴を使用するシステムに関するものであったが、各試験物質の極めて少量のアリコートを反応領域に粉末又は微細ペレットとして放出することもできる。ペレットは、例えば、関係する化合物又は成分及び1種類以上の不活性結合物質から作ることができる。そのような結合剤の組成及びそのような「ペレット」の製造方法は当業者には明らかであろう。このような「ミニ−ペレット」は幅広い種類の試験物質と適合性があり、長期間安定であり、貯蔵容器からの容易な取り出し及び分配に適したものとなる。
【0121】
(VII.成分アレイを反応させるための合成経路)
成分アレイが支持体上の予め規定された領域に放出されると、幾つかの異なる合成経路を用いて成分を同時に反応させることができる。成分を、例えば合成技術、光化学技術、重合技術、鋳型特定合成技術、エピタキシャル成長技術に基づく溶液を用いて;又はゾル・ゲル処理;熱、赤外線若しくは電磁波加熱;焼成、焼結若しくは焼鈍;熱水作用法;融剤法;溶媒気化による結晶化等によって反応させることができる。他の有用な合成方法は当業者には本開示を見れば明らかとなろう。さらに、最も適当な合成経路は合成すべき物質の分類に依存し、与えられたケースにおける選択は当業者には容易に明らかとなるであろう。また、必要に応じて反応体成分を反応に先立って例えば超音波法、機械的方法等を用いて混合してもよいことは当業者には容易に明らかとなるであろう。このような技法は支持体上の所定の予め規定された領域に直接用いてもよく、或いは、支持体上の予め規定された領域全てに同時に用いてもよい(例えば、成分が有効に混合されるような方法で支持体を機械的に移動させてもよい)。
【0122】
固相合成への伝統的な経路には固体反応体の焼結が含まれる。超伝導体の合成に用いられる標準的方法は、例えば、幾つかの金属酸化物粉末を合わせて磨砕し、混合物を圧縮した後、800℃ないし約1000℃の範囲の温度で焼くものである。粉末混合物中の要素が焼結し、すなわち、それらが化学的に反応して新しい化合物を形成し、液相又は気相を経ることなく固体に融合する。酸素のような気体要素は焼結期間中、或いはその後の工程で回収することができ、システムの圧力は合成処理期間中に変化させることができる。あいにく、伝統的な焼結法を用いると、固体反応体、中間体及び生成物を通じての原子又はイオンの拡散が遅いことによって反応速度が制限される。さらに、拡散を加速させて安定な相の形成を熱力学的に押し進めるには高温が必要とされることが多い。
【0123】
このような伝統的な経路とは対照的に、本発明では、固体合成への新しい経路が低温による化合物合成を焦点として行われる。反応体の拡散に必要な距離を徹底的に短くし表面積対容量比を高めることによって低温でも反応速度を上げられることが見いだされた。これは反応体を支持体上に非常に薄いフィルムの形態でめっきするか、或いは反応体が支持体に溶液の形態で放出される合成技術に基づく溶液を用いることによって達成することができる。さらに、この合成反応を約200℃ないし約600℃の範囲の温度で行う場合には、反応体成分を溶解するために融解した塩を使用することができる。この技法が一般に融剤法と呼ばれる。同様に、熱水作用法では、可溶性の無機塩を含む水又は他の極性溶媒を反応体成分を溶解するために使用する。熱水作用法は通常、加圧下で約100℃ないし約400℃の範囲の温度で行われる。さらに、本発明の種々の合成経路を用いて、反応体成分アレイを不活性環境下、酸素下又は他のガス環境下で加圧又は減圧することができる。また、本発明の合成経路では、支持体上の多様な領域に、例えば予め決められた期間及び強度のエネルギー照射を支持体上の標的領域に行うレーザー熱分解を用いて、種々の熱履歴にさらすこともできる。
【0124】
実際に、本発明の別の態様では、薄膜抵抗体を用いて予め規定された領域を独立に加熱することによって支持体上の予め規定された領域を異なる反応温度に当てることができる。この態様では、タングステンのような抵抗体を先に述べられている薄膜めっき法のいずれかを用いて汚れのない支持体上にめっきする。抵抗体は、例えば、予め規定された領域の横列又は縦列に沿って細長い帯状にめっきされる。各帯は電力供給原に繋げられた電気リード線に接続している。予め規定された領域の温度は所定の帯への電力供給を変えることによって調節できる。一般に、その反応が行われる温度よりも高い融点を持つ導体はどれも抵抗体として使用できる。適当な材料としては、それに限定されるものではないが、金属、合金、及びセラミックが挙げられる。そのような材料の例としては、それに限定されるものではないが、インジウム・ドープ処理酸化スズ(ITO)、タングステン、モリブデン、タンタル、プラチナ、銅・ニッケル合金、プラチナ及びロジウム合金、アルミニウム−ニッケル合金等が挙げられる。
【0125】
場合によっては、抵抗体と成分アレイ間の内部拡散を防ぐために保護コーティングで抵抗体をコーティングする必要がある。保護コーティングは先に述べられている薄膜めっき法を用いて薄膜部材の形態で塗布される。この保護コーティングは熱を有効に伝導し反応が行われる温度で不活性の材料からできている。適当な材料の例としては、それに限定されるものではないが、MgO、SrTiO3、BaTiO3、Al2O3並びに良好な伝導体であり不活性な他の半導体及びセラミック部材が挙げられる。
【0126】
抵抗体がめっきされると、成分アレイが遮蔽法と組み合わせた薄膜めっき法を用いて作られる。このアプローチの例を図16に例示する。この例では、薄膜抵抗性帯のめっきに続いて化合物のライブラリーが作られた。図16に示すように、抵抗体が支持体上の予め規定された全カラムを占めている。しかしながら、低抗体はどのようなパターンにもめっきすることができ、従って、めっき戦略は抵抗体が支持体上の予め規定された種々の領域をカバーするようにデザインすることができることは当業者には容易に明らかとなるであろう。
【0127】
さらに、本発明の合成経路を用いて、成分アレイを多様な放出工程の間に処理することができる。例えば、成分Aを支持体上の第一の領域に放出し、その後例えば高温で酸素にさらすこともできる。次に、成分Bを上記支持体上の第一の領域に放出し、その後、成分A及びBを一セットの反応条件下で反応させてもよい。多様な放出工程の間に行うことができる他の操作及び加工工程は本開示を読めば当業者には明らかとなるであろう。
【0128】
このように、本発明の方法を用いて、以下の部材を製造することができる:共有結合網状結合固体、イオン性固体及び分子固体。より詳しく言えば、本発明の方法は、例えば、無機部材、金属間部材、金属合金、セラミック部材、有機部材、有機金属部材、非生物有機ポリマー、複合部材(例えば、無機複合部材、有機複合部材、又はその組み合わせ)などの製造に用いることできる。セラミックは、例えば溶液ベースの放出法を用いて支持体上の予め規定された領域に反応体成分を放出することによって例えば製造することができる。関係する反応体成分が支持体に放出されると、支持体を溶媒の沸点まで加熱して溶媒を蒸発させる。或いは、反応体成分を加熱した支持体に放出することによって溶媒を除去することもできる。その後、支持体を酸化して不要の成分(例えば、炭素、窒素等)をアレイから除去する。次いで、支持体を約800℃から約875℃の温度で約2分間、短時間加熱する。その後、反応を急停止させて、上記アレイを蛍光、超伝導、絶縁耐力等のような特定の性質をもつ物質についてスキャンする。磁気部材も同様の処理を用いて製造できるが、磁気部材の場合は成分を支持体に放出し、その上の磁場の存在下で同時に反応させることが異なる。
【0129】
さらにゼオライト、すなわち、アルミニウムとナトリウムかカルシウムのいずれか、又は両方との珪酸塩水和物を本発明の方法を用いて製造することができる。そのような物質のアレイを調製するには、反応体成分をスラリーの形態で支持体上の予め規定された領域に放出する。低温(例えば、60℃ないし約70℃)熱水作用法を用いて、例えば、ゼオライトが溶液から結晶化される。また、支持体上の予め規定された領域に関係するモノマー(類)を通常は溶液の形態で放出することによって有機ポリマーを製造することができる。関係するモノマーが放出されると、支持体上の各領域に開始剤を加える。重合化反応は開始剤が使い尽くされるか、又は反応を他の方法で停止させるまで進行させられる。重合化反応が完了したら、溶媒を例えば減圧留去によって除去することができる。
【0130】
上記の合成経路は反応体を同時に反応させて一つの支持体上で少なくとも2個の物質を形成させる方法を説明しようとするものであるが、それに限定されるものではないことは、当業者に容易に明らかとなるであろう。当業者に公知で使用されている他の合成経路及び他の変更も用いることができる。
【0131】
(VIII.物質アレイをスクリーニングする方法)
製造すると、有用な性質を持つ物質に対して物質アレイをスクリーニングすることができる。アレイ全体、或いはその一部(例えば、予め規定された領域の横列)のいずれかを平行に有用な性質を持つ物質に対してスクリーニングすることができる。物質アレイをスクリーニングするためにスキャニング検出システムを好ましくは利用するが、単位面積当たりの領域密度は.04領域/cm2よりも大きく、より好ましくは0.1領域/cm2よりも大きく、さらにより好ましくは1領域/cm2よりも大きく、さらにより好ましくは10領域/cm2よりも大きく、なおいっそう好ましくは100領域/cm2よりも大きくなる。最も好ましい態様においては、物質アレイをスクリーニングするためにスキャニング検出システムを好ましくは利用するが、単位面積当たりの領域密度は1,000領域/cm2よりも大きく、より好ましくは10,000領域/cm2よりも大きく、さらにより好ましくは100,000領域/cm2よりも大きく、なおいっそう好ましくは10,000,000領域/cm2よりも大きくなる。
【0132】
従って、好ましい態様において、物質アレイは単一の支持体上で合成される。単一の支持体上で物質アレイを合成することにより、有用な性質を持つ物質に対するアレイのスクリーニングがより容易に行われる。スクリーニングすることができる性質としては、例えば、電気的、熱的、機械的、形態学的、光学的、磁気的、化学的性質等が挙げられる。より詳しく言えば、スクリーニングすることができる有用な性質を以下の表Iに示す。有用な性質を持つことが見いだされたいずれの物質もその後、大規模に製造することができる。
【0133】
表Iに列挙した特性を当業者に公知で且つ使用されている慣用的な方法および装置を使用することについてふるいにかけることができる。表Iに記載されている特性についてふるいにかけるのに使用できる走査システムには次のものがあるがこれらに限定されない。すなわち、走査ラマン分光法、走査NMR分光法、走査プローブ分光法[例えば、表面電位計(surface potentialometry)、トンネル電流、原子間力、超音波顕微鏡検査法、剪断応力顕微鏡検査法、超高速光励起、静電力顕微鏡、トンネル誘導光電子放射顕微鏡、磁力顕微鏡、マイクロ波場誘導表面調和発生顕微鏡(microwave field-induced surface harmonic generation microscope)、非線形交流トンネル顕微鏡検査法、近接場走査顕微鏡検査法、非弾性電子トンネル分光計等を含む]、異なる波長の光学顕微鏡検査法、走査光学楕円偏光解析法(比誘電率および多層フイルムの厚さを測定するため)、走査渦電流顕微鏡、電子(回析)顕微鏡等である。
【0134】
さらに詳細には、伝導性および/または超伝導性についてふるいをかけるために、次の装置のうちの一つを使用できる。すなわち、Scanning RF Susceptibility Probe、Scanning RF/Microwave Split-Ring Reasonater DetectorまたはScanning Superconductors Quantum Interference Device(SQUID) Detection Systemである。硬度についてふるいをかけるために、例えば、ナノインイデンター(nanoindentor)(ダイアモンドチップ)を使用できる。磁気抵抗についてふるいをかけるために、Scanning RF/Microwave Split-Ring Reasonater DetectorまたはSQUID Detection Systemを使用できる。結晶化度についてふるいをかけるために、赤外またはラマン分光法を使用できる。磁気強度および保磁度についてふるいをかけるために、Scanning RF Susceptibilty Probe、Scanning RF/Microwave Split-Ring Reasonater Detector、SQUID Detection SystemまたはHall probeを使用できる。蛍光についてふるいをかけるために、光検出器または電荷結合デバイスカメラを使用できる。当業者に公知の他の走査方法も使用できる。
【0135】
【表1】


【表2】

【0136】
本発明のアレイを逐次的にまたは交互にふるいかけができ、これらのアレイは走査方法を使用して平行してふるいかけができる。例えば、アレイの材料群を、例えば、磁気装飾(Bitter pattern)および電子ホログラフイーを使用して超伝導性について逐次的にふるいかけができる。あるいは、アレイの材料群を、例えば、Hall-probe、磁気力顕微鏡検査法、SQUID顕微鏡検査法、AC感受性顕微鏡検査法、マイクロ波吸収顕微鏡、渦電流顕微鏡等を使用して超伝導性について走査できる。
【0137】
現在の好適な実施態様では、走査検出方法を使用する。一実施態様では、その上にアレイの材料群を有する基体を固定し、検出器はX−Y運動をする。この実施態様では、基体を検出器に接近させて密閉した室内に入れる。検出器(例えば、RF Resonator、SQUID検出器等)は、室温においてX−Y位置決めテーブルに結合した低熱伝導率の剛性棒に固定されており、その走査範囲は1インチまでであり、空間分解能が2μmである。検出器の位置は、コンピユーターで制御したポジシヨナーに連結したステッパー電動機(またはサーボモーター)を使用して制御する。検出器と基体の温度を室の周囲に配置されている液体ヘリウム貯蔵室よりヘリウム交換ガスにより低くすることができる。この走査システムは、600°Kから4.2°K(液体ヘリウムに浸漬したとき)までの範囲の温度で操作できる。
【0138】
別の実施態様では、検出器を固定し、その上にアレイの材料群を有する基体はR−θ運動をする。この実施態様では、基体は、ミクロメーターおよびステッパー電動機に結合されているギアラックにより駆動される回転ステージ(例えば、平歯車)上に配置される。この回転ステージは、別のミクロメーターおよびステッパー電動機システムにより駆動される低温スライデイングテーブル上に配置される。このシステムは1インチ半径の領域を走査でき、1μmの空間分解能である。走査およびプローブはコンピユーターの使用により制御される。その他の実施態様では、検出器と基体の温度を室の周囲に配置される液体ヘリウム貯蔵室を使用してヘリウム交換ガスにより低下できる。この走査システムは600°Kから4.2°K(液体ヘリウムに浸漬したとき)までの範囲の温度で操作できる。
【0139】
前述の実施態様のいずれかを使用する場合、例えば、大アレイの材料群の超伝導性を検出するのに、Scanning RF Susceptibility Detection Systemを使用できる(例えば、図17参照)。写真平板法を使用する場合、微小(約1×1mm2)スパイラルコイルを、このコイルに隣接した試料の伝導率をプローブするよう造ることができる。相−感受性検出電子回路により信号を得ることができる。その後、コンピユーターによりデータを分析し、与えられた試料の特性と化学量論との間の相関関係を得る。所望の場合、分析結果を送出システムにフイードバックすることができ、その結果、システムは次の合成サイクルの最も期待できる化学量論に「ズームイン」できる。
【0140】
更に、平行LC共鳴回路の超伝導性微小回路インプレメンテーションを、超伝導性であるものについてのアレイの材料群を走査するのに使用できる。平行LC共鳴回路は、コンデンサーと平行状態にある誘導子である。双方の回路要素の電気的特性は、入力電位の最大量を出力へ伝える共鳴振動数を回路に与える。ピークの鋭さ(一般にそのQ値により測定される)は、回路に使用される材料により決定されるが、共鳴の振動数はキャパシタンスおよびインダクタンスにより定められる。ニオブのような超伝導性材料から回路を製造することにより非常に高いQ値(すなわち、10,000またはそれ以上のオーダーQ値)を与えることが認められている。これは、一般に100のオーダーのQ値を与える商業上入手できる非超伝導性コンデンサーおよび誘導子と対照的である。ニオブ回路の急勾配のピークは高感度の検出をもたらす。
【0141】
このシステムでは、実際の検出は誘導コイルによりなされる。誘導子のインダクタンスはそのコイルを通る磁場ジオメトリーの関数である。近くの超伝導性試料の存在下、誘導子による磁場は、材料による場の排除(すなわち、Meissner効果)によりひずむ。これは、順に、インダクタンスを変え、共鳴をシフトさせる。共鳴を追跡することにより、材料が超伝導性であるとき容易に決定できる。
【0142】
この走査装置では、全回路はおよそ5mm×2.5mmであり、そのおよそ1/4に等しい活性領域を有する。コイルは側面の長さが約1.5mmのスパイラルコイルであり、コンデンサーはSiO2誘電(すなわち、絶縁)層を有する二平板ニオブコンデンサーである。SQUID磁気計は10μmの空間共鳴を達成したが、それらの感度はジヨセフソン接合に存在するノイズにより制限される。しかし、本発明の走査装置では、その装置はジヨセフソン接合からのノイズにより妨害されず、したがって、1μmまたはそれ以下の試料の感度を達成できる。この実施態様では、空間共鳴よりも感度がより臨界的な基準である。
【0143】
前述の検出システムは、アレイの材料を有用な特性を有するそれらの材料についてふるいをかけることができる方法の例証を目的としており、それを制限することを目的としているのではないことは当業者に自明である。当業者に公知で且つ使用されているその他の検出システムを同様に使用できる。
【0144】
(IX.代替の態様)
本発明の他の態様において、少なくとも2種の、異なったアレイの物質群が、実質的に同じ濃度の実質的に同じ反応成分を、第1及び第2基体の両方の上の前以て定義された領域に送り、その後、広いアレイの組成で、第1基体上の成分を1組みの第1反応条件にかけ、そして第2の基体上の成分を1組みの第2反応条件にかけることによって製造される。もし、例えば第1基体が該基体上の第1領域上に成分A及びB、さらに該基体上の第2領域上に成分X及びYを有すると、第2基体はその上の前以て決定された領域内に実質的に同じ成分を有するように製造される。すなわち、第2基体は、その上に含まれる成分において第1基体と実質的に同じである。そういうものとして本例において、第2基体も該基体上の第1領域上に成分A及びB、さらに該基体上の第2領域上に成分X及びYを有する。
【0145】
成分が基体上の適切な前以て決定されたその領域に一旦送られると、第1基体上の成分は一組の第1反応条件を使用して反応し、一方第2基体上の成分は一組の第2反応条件を使用して反応する。第1基体上の成分が一組の第1反応条件下で、第2基体上の成分が一組の第2反応条件下で反応するのと同時に反応できること、または代わりに第1基体上の成分が一組の第1反応条件下で、第2基体上の成分が一組の第2反応条件下で反応した後または反応する前のいずれかで反応できることは本技術の当業者によって理解される。
【0146】
本態様においては、種々の反応パラメーターの影響を検討し、次に最適化することができる。変更できる反応パラメーターは、例えば反応体量、反応体溶媒、反応温度、反応時間、反応が行われる圧力、反応が行われる雰囲気、反応が制止(quench)される速度等を含む。変更できる他の反応パラメーターは本技術における当業者に明らかである。代わりに、一組の第1反応条件は一組の第2反応条件と同じであることができるが、この態様においては、第1及び第2基体上の成分が反応した後の加工工程は第1基体と第2基体とでは異なる。例えば、第1基体は高温で酸素に暴露され得るが、第2基体は全く加工されない。
【0147】
代わりに、本態様の他の面において、その第1領域上に成分A及びその第2領域上に成分Xを有する第1基体が特定の一組の反応条件に暴露(例えば高温で酸素に暴露)され、一方その第1領域上に成分A及びその第2領域に成分Xを有する第2基体はそのような反応条件に暴露されない。その後、成分Bが第1及び第2基体両方の上の第1領域に供給され、そして成分Yが第1及び第2基体両方の上の第2領域に供給される。一旦望まれる成分が第1及び第2基体上の第1及び第2領域上に供給されると、成分は実質的に同じ反応条件下で同時に反応する。この特定の態様によって、特別のアレイの物質群への、中間加工工程が有する影響を決定することができる。上に説明したように、多くの異なる反応パラメーターのいずれでも変えることができる。
【0148】
また本発明の他の態様において、化学的組成及び成分の化学量論によってお互いから変化する、あるアレイの物質群を製造する方法が提供される。本方法において、一の反応体成分は一定の勾配の化学量論において、特定の前以て決定された領域(単数または複数)に供給され得る。さらに、複数の反応体成分が一定の勾配の化学量論において、特別の前以て決定された領域(単数または複数)に供給され得る。さらに、多反応体成分を、一定の勾配の化学量論において前以て決定された領域(単数または複数)に供給することができる。例えば、第1物質の第1成分及び第2物質の第1成分を各々第1及び第2反応領域上におく。その後、第1物質の第2成分及び第2物質の第2成分を各々、第1及び第2反応領域上の頂部から底部へ(または左から右へ)、一定の勾配の化学量論でおく。一旦成分を基体に供給すると、成分は同時に反応して化学的組成及び化学量論においてお互いに変化する物質を形成する。
【0149】
本発明のさらに他の態様において、有用な性質を有する物質が提供される。この物質は、次の工程
(a)単一の基体上に、一定アレイの異なる物質群を形成すること;(b)有用な性質を有する物質のためのアレイをスクリーニングすること;並びに(c)追加量の、有用な性質を有する物質をつくることを含む方法によって製造される。このような物質は、例えば金属間物質、金属アロイ、セラミック物質、有機金属物質、有機ポリマー、複合材料(例えば無機複合材料、有機複合材料またはこれらの組み合わせ)等を含む。さらに、有用な性質は例えば電気的、熱的、機械的、形態学的、光学的、磁気的、化学的なもの等を含む。
【0150】
前述の方法を使用して、巨大な磁気抵抗性(GMR)コバルト酸化物の新しいファミリーが発見された。異なる組成及び化学量論のLnxyCoOσ(Lnは例えばY及びLaであり、そしてMは例えばPb、Ca、Sr及びBaである)を含む複数アレイの物質群は、マスキング技術と組み合わせた薄いフィルム付着技術(コバルト酸化物の薄いフィルム物質のアレイを生み出すのに使用されたプロトコルについて下の実施例Dを参照)を使用して形成された。一旦形成されると、この複数アレイの物質群は、それらの物質の中で有用な性質を有するものについてスクリーニングされた。さらに詳細には、この複数アレイの物質群は巨大な磁気抵抗性(magnetoresistive:GMR)特性を有する特定の物質のために他のものからスクリーニングされた。そのようにする際に、大きな磁気抵抗効果(MR)を有する物質が発見された。一旦有用な性質を有する物質が同定されると、さらに分析するために追加量のそのような物質が製造された。
【0151】
このGMRコバルト酸化物の新しいファミリー中の化合物は次の一般式:Ay.(1-x)y.xCoOz[Aは、ランタン(La)、イットリウム(Y)、セリウム(Ce)、プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)、プロメチウム(Pm)、サマリウム(Sm)、ユーロピウム(Eu)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、ホルミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)、イッテルビウム(Yp)及びルテチウム(Lu)より成る群から選択される金属であり;Mは、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、バリウム(Ba)、鉛(Pb)、タリウム(Tl)及びビスマス(Bi)より成る群から選択される金属であり;yは約1〜約2の範囲の値を有し;xは約0.1〜約0.9の範囲の値を有し;そしてzは約2〜約4の範囲の値を有する]を有する。このGMRコバルト酸化物の新しいファミリー内の化合物は一般に、層になったペロブスキー石関連構造、すなわちいくらかの僅かな歪みを有する立方ペロブスキー石型構造を有する。
【0152】
目下の好ましい態様において、このGMRコバルト酸化物の新しいファミリー中の化合物は次の一般式:A1-xxCoOz[Aは、ランタン(La)、イットリウム(Y)、セリウム(Ce)、プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)、プロメチウム(Pm)、サマリウム(Sm)、ユーロピウム(Eu)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、ホルミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)、イッテルビウム(Yp)及びルテチウム(Lu)より成る群から選択される金属であり;Mは、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、バリウム(Ba)、鉛(Pb)及びカドミウム(Cd)より成る群から選択される金属であり;xは約0.1〜約0.9の範囲の値を有し;そしてzは約2〜約4の範囲の値を有する]を有する。この式の範囲内で、ある特定の態様が好ましい。すなわち、xが約0.2〜約0.7の範囲の値を有するもの、さらに好ましくはXが0.3〜約0.5の範囲の値を有するものである。
【0153】
さらに好ましい態様において、このGMRコバルト酸化物の新しいファミリー中の化合物は次の一般式:La1-xxCoOz[Mは、バリウム、カルシウム及びストロンチウムより成る群から選択される金属であり;xは約0.1〜約0.9の範囲の値を有し;そしてzは約2〜約4の範囲の値を有する]を有する。この式の範囲内で、ある特定の態様が好ましい。すなわち、xが約0.2〜約0.7の範囲の値を有するもの、さらに好ましくはxが0.3〜約0.5の範囲の値を有するものである。上述したように、このGMRコバルト酸化物の新しいファミリー内の化合物は一般に、層になったペロブスキー石関連構造を有する。
【0154】
本発明の別の態様において、薄膜コンデンサ(copacitor)又は薄膜エレクトロルミネセントモジュール(electroluminescent module)のようなミクロデバイスのライブラリ(library)は物質のアレイ(array)を発生するために以前に記載した方法を使用して発生できる。例えば、薄膜コンデンサは絶縁又は誘電体物質によって分離された2つの電極物質からなる。薄膜コンデンサのアレイはその基板上に予め定められた地域の各々上に電極物質を第1に析出させることによって形成できる。誘電体物質のアレイは上記に記載した方法を使用してその電極の上部の上にその上発生できる。この層の上部の上に別の電極層は析出でき、その結果各コンデンサが異なった誘電体物質を含んでいる複数の薄膜コンデンサのアレイを生ずる結果となる。その基板上の予め定められた地域の各々でキャパシタンスを測定することによって薄膜コンデンサのための各種の誘電体物質の性能はテストされそして最適化できる。このアプローチが薄膜エレクトロルミネセントディスプレーのような他の薄膜デバイスに完全に適用できることは当業者にとって容易に明白である。加えて、薄膜デバイス中の各種の層の任意の一つは同じ又は異なった化学量論での異なった物質のアレイであることができ、又は異なった化学量論での同じ物質のアレイであることができる。さらに、各種の層の順序は、変えることができる。例えばその薄膜コンデンサ中のその電極物質は他の層の頂部又は底部のどちらかの上に析出できる。すなわち本発明の方法を使用して、与えられた薄膜デバイス中の層の各々は最適化できる。
【0155】
各種のデリバリー技術、合成ルート、スクリーニング(screening)方法等に関する上述の議論は本発明の上述の態様に完全に適用できる。
【0156】
(X.実施例)
下記の実施例は本明細書において本発明の効果を説明するために提供される。
【0157】
(A.16酸化銅薄膜物質のアレイの合成)
この実施例は酸化銅薄膜物質のアレイの合成及びスクリーニングを明らかにする。そのリアクタント(reactant)は、(100)光沢化された表面を持った1.25cm×1.25cmMgOに伝達(deliver)された。その上の16の予め定められた地域を持つ基板は、真空中において反応室内に含まれた。そのリアクタントは、2元のマスキング技術と組合せたスパッタリング(sputtering)システムを使用して薄膜の形でその基板に伝達された。その二元マスクはステンレス鋼から作られた。RF磁電管ガン(gun)スパッタリングシステムはその基板上に予め定められた地域にリアクタント成分を伝達するために使用された。使用されたそのRF磁電管スパッタリングガン(US,インク,Campbell,CA)によって製造されたMini・マック(mak)は直径約1.3インチであった。50〜約200WのRFインプットパワー(マッチングネットワーク(matchingnetwork)でのPlasmthern−2000によって供給された)では、析出(deposit)速度は5つの異なったリアクタント成分のために約0.3Å/s〜約2Å/sの範囲であった。そのRFスプレーヤ(sprayer)は基板の上方約3〜4インチのところに位置し、そして析出されたフィルムの均一性は1〜2インチ直径区域上約5%であった。そのスパッタリングガス流れ(Ar又はArとO2)は計量バルブ及び手動ゲートバルブを通して異ったポンプ輸送によって管理された。高い析出速度を達成するために最良のガス圧範囲は、約5〜15mTorrであった。そのチャンバーにおける各ガス成分の部分圧は残留ガス分析器(Ferran Scientitic,カリフォルニア州サンジエゴによるMicropole Sensor)を使用し異なるポンプ輸送なしに15mTorrまで直接モニターされた。
【0158】
酸化銅物質のアレイを発生させるために使用されたリアクタント成分はCuO,Bi23,CaO,PbO及びSrCO3であった。CuOは新規な酸化銅を発見するための努力においてベース成分として使用された。すなわちこの成分は、その基板上に16の予め定められた地域の各々に伝達された。その基板上にその予め定められた区域に問題の成分を伝達する前に、その反応チャンバーのベース空気圧は10〜15分以内に250l/sターボポンプ(turbo pump)により約10-5〜10-6Torrまで低下された。そしてもし必要ならば、その反応チャンバーを約100℃〜約150℃まで加熱しながら、延長ポンプ輸送時間を使用して10-8〜10-6Torrまでさらに低下された。単一のRF磁電管ガンスパッタリングシステムのみが使用されたので、真空は破れそしてその成分が変化するごとに再確立された。そのフィルム析出厚さは、結晶ミクロ・バランス(micro・balance)(Sycon Instruments,Syracuse,NYによるSTM−100)を使用してモニターされた。結晶ミクロ−バランスの位置は、その基板と同じ位置に正確に位置しないので、プロフィロメーターを持った各成分用のその厚さモニター読みを調整することが必要であった。
【0159】
そのリアクタント成分は下記の順序、Bi23,PbO,CuO,CaO及びSrCO3でMgO基板に伝達された。その5つの成分の各々が等しくモル量、すなわち析出されたフィルムとして1Bi:1Pb:1Cu:1Sr:1Caで存在するように化学量論は設計された。そのフィルムの総厚さは5つの層をなした部位では約0.5μmであった。個々のフィルムの各々の厚さは勿論その成分の各々が析出されるスパッタリング速度は表IIに示される。
【0160】
【表3】

【0161】
図18で示されたように問題の成分が図18において示されたように基板上に16の予め定められた区域に伝達された時、その基板は炉に置かれそしてその成分はその後反応された。図19は1.25cm×1.25cmMgO基板上の16の異った成分のアレイの写真である。各部位の色は、白色源から直角での反射光の天然光である。その成分は下記の加熱及び冷却手順;50〜725℃2時間、725〜820℃1時間、820〜840℃0.5時間及び840〜750℃0.5時間を使用して同時に反応された。その基板が約750℃の温度まで冷却された時、そのパワーは切れた。その加熱及び冷却手順は、大気圧で行われた。明らかな蒸発又は溶融は観察されなかった。
【0162】
反応された時、16の予め定められた反応区域の各々は、抵抗用にスクリーニングされた、そのようにする場合において、予め定められた区域の2つは導電する物質を含んでいることが発見された。抵触はインライン4−プローブ(probe)配列においてこれらの2つの部位に置かれ、そしてその接触抵抗は100オームΩ未満であることが発見された。その後、そのサンプルは、温度の関数としての抵抗率を測定するために液体ヘリウム低温槽中において4.2°Kまで冷却された。工場で調整されたCernox(登録商標)抵抗温度センサー(Lakeshore)は温度を測定するために使用された。図20(a)及び20(b)は温度の関数としての2つの導電(conducting)物質の抵抗を示す。そのBiPbCuSrCa物質は室温から約100°Kまで金属伝導性(温度と共に抵抗は減少する)を有し、一方BiCuSrCa物質はやや平らなそしてやや上昇する温度依存抵抗性を有する。2つのサンプルのための超伝導臨界温度(Tc)は約100°Kである。その抵抗率測定において、2つの超伝導層の証拠は観察されなかった。
【0163】
(B.128酸化銅薄膜フィルム物質のアレイの合成)
この実施例は異った組合せ、化学量論及びBi,Ca,Cu,Pb及びSrの析出シークエンス(sequence)からなる128メンバーライブラリの合成及びスクリーニングを説明する。そのライブラリは、RF磁電管スパッタリングガンを使用して物理的マスクを通してターゲット(tarhet)物質をスパッタリングして発生された。スパッタリングは、スパッタリングガスとして空気で10-3〜10-6Torrで実施され、析出速度は0.1〜1Å/秒であった。フィルム析出厚さは、結晶ミクロバランスでモニターされ、そしてプロフィロメーターで独立に調整された。その析出されたフィルムの均一性は2−インチ直径区域にわたって約5%変化した。(100)光沢化された表面を持ったMgO単一結晶は基体として使用され、そしてCuO,Bi23,CaO,PbO及びSrCO3はスパッタリングターゲットとして使用された。そのライブラリは128(1×2mm)の穴を含む第一元物理的マスクを一連の第二元マスク(図21)に重ね合わせることにより二元マスキングストラーテッジ(strategy)を使って発生された(Fodor,S.P.A.etal.,Science251,767(1991)参照)。前駆物質は一歩ずつ(stepwise)のやり方で適当な二元マスクを通してスパッタ(sputter)された。6つの同等の128メンバーまで、ライブラリは同時に合成できそして異った条件で処理できた。二元合成において、2m化合物は与えられた数のステップ(m)のマスキングのために形成された。そのアレイは、全体の析出/マスキングシークエンスから1つ又はそれ以上の工程を削除することによって形成できるすべての組合せを含む。追加のマスキングスキーム(scheme)は、他のライブラリ、例えば10個の前駆体から誘導されたすべての第四級化合物からなるライブラリを発生させるために使用されることができる。
【0164】
上述のごとく、128−メンバーライブラリはそのBiSrCaCuOフィルムの性質に関し化学量論及び析出シークエンスの効果を検出するために発生された。そのライブラリは以下のように発生された。1,Bi,M0;2,Bi,M1;3,Cu,M0;4,Cu,M2;5,Cu,M3;6,Sr,M0;7,Sr,M5;8,Ca,M6;9,Cu,M4;10,Ca,M7,その場合第1のエントリーはその析出工程を示し、第二はその要素を示しそして第三はそのマスク(図22)を示す。各層のためのモル化学量論は、(300Å層として析出された)Biに対1:1であり、Cu:Bi比が0.5:1である工程3及び5は例外である。そのライブラリはそれから空気中で840℃で焼成された。その加熱及び冷却方法は50℃〜725℃2時間、725〜820℃1時間、820〜840℃0.5時間、840〜750℃0.5時間であった。その全体の加熱手順は、空気で実施された。蒸発又は溶融は観察されなかった。各部位の抵抗は4−ポイント接触プローブを使用して測定された。
【0165】
図23(a)で示されたそのBiCuSrCaOのような低抵抗率を持ったフィルムは、80°K及び90°Kのオンセント(onset)Tcで金層の挙動を示した。これは16メンバーライブラリにおいて発見されたBiCuCaSrOの挙動と対比する。他のフィルムは又独特な抵抗率対温度プロフィール、例えばBiCuSrCaCuCaO及びBiCuCuSrCaCaO(図23(b))を持った同等の化学量論及び異った析出シークエンスを持つ128メンバーライブラリにおいて発見された。これは異った相がその析出シークエンスをコントロールすることによって得やすいかも知れないことを示唆する。過剰のCa及びCu、例えば2,2,4,4及び2,2,4,5のBiSrCaCuO比を持ったフィルムは110°K相を示し、Bi2Sr2Ca2Cu310の形成と一致する。
【0166】
(C.BiSrCaCuOとYBaCuOを含む128個の酸化銅薄層材料のアレイの合成)
本実施例は、Ba,T,Bi,Ca,Sr,Cuの異なる組み合わせ、当量関係、蒸着手順からなる128のライブラリの合成とスクリーニングを説明する。RFマグネトロンスパッタリング銃を用いて蒸着材料を物理的にマスクしてスパッタリングすることにより生成される。スパッタリングは10-5から10-6Torrの真空下で、アルゴンをスパッタリングガスとして行われる;蒸着速度は0.1から1s-1であった。薄層の厚みは結晶ミクロ天秤(STM-100,サイコン・インスツルメンツ社ニューヨーク州シラキュース、米国)で測定し、プロファイロメーターで独立に較正した。蒸着した薄層の均一度は、1インチから2インチ経の範囲で約5%であった。酸化マグネシウムの研磨した011面を基質として用い、BaCO3,Y2O3,Bi2O3,CaO,SrCO3,CuOをスパッタリング物として用いた。ライブラリは下記に示す非バイナリマスク法によって生成した。
【0167】
128個のからなるライブラリは、当量関係、蒸着手順のBiSrCaCuOとYBaCuOの性質に及ぼす影響を調べるために生成された。このライブラリは次の順に生成した。即ち、1,Bi,M1;2,Cu,M2;3,La,M3;4,Y,M4;5,Ba,M5;6,Sr,M6;7,Ca,M7の順である。ここで各々、初めの数字は蒸着手順を示し、次の文字列は元素を示し、3番目は使用されたマスクを示す(図24参照)。各々の薄層における厚みは次のようであった。即ちBi2O3,1000;CuO,716;La2O3,956;Y2O3,432;BaCO3,1702;SrCO3,1524;CaO635である。低温での拡散(〜200-300℃)の後、ライブラリは大気雰囲気中840℃で焼結した。加熱・冷却の手順は次のように行なった。200℃から300℃まで12時間、300℃から700℃まで1時間、700℃から750℃まで2時間、750℃から840℃まで0.4時間、840℃から840℃まで1時間、840℃から560℃まで1時間、560℃から250℃まで6時間である。250℃で6時間保った後電源を切った。全ての加熱工程は空気中でおこなった。蒸発または溶融は見かけ上観察されなかった。
【0168】
反応後、128の領域はそれぞれ抵抗値の検定にかけられた。各領域の抵抗値は四点固定プローブを用いて測定した。図25に示したBiCuSrCaOフィルムやYBaCuOフィルム等の抵抗値の低い薄層は、金属的な挙動を示しオンセット臨界温度がそれぞれ80Kと60Kであった(図25参照)。
【0169】
(D.酸化コバルトの薄層材料アレイの合成)
本実施例は、酸化コバルト薄層材料アレイの合成とスクリーニングを説明する。2.5cmx2.5cmのLaAlO3基板の研磨した100面へ反応物を添加した。128の予め画定された領域をその上に有する基板を真空中で反応器へ入れた。反応物は非二進法マスキング法との組み合わせたスパッタリング法により基板上へ薄層として形成された。使用されたマスクはステンレス製である。反応物の組成体を基板上の予め画定された領域へ送出するのにはRFマグネトロンスパッタリング銃を用いた。RFマグネトロンスパッタリング銃(Mini-mak、USインコーポレーション社製、キャンベル、カリフォルニア州、米国)は約1.3インチの内径を有する。RF入力(Plasmtherm-2000から同期ネットワークにより供給される)50から200Wで、蒸着速度は種々の反応組成物に応じて0.3/sから約0.2/sの範囲であった。RFマグネトロン噴霧器は基板から3から4インチ上に設置され、蒸着フィルムの均一度は、1インチから2インチ径の範囲で約5%であった。スパッタリングガス流量(アルゴンまたはアルゴンと酸素)は計量バルブと示差式ポンプにより手動ゲートバルブを通して制御した。速い蒸着速度を実現するために最も好ましい圧力は5から15mTorrであった。反応器内のそれぞれの組成ガスの分圧は微量ガス分析計(Micropole Sensor,フェラン・サイエンティフィック社、サンディエゴ、カリフォルニア、米国)により、示差式ポンプなしで15mTorrまでは直接測定した。
【0170】
酸化コバルト材料アレイを生成するのに用いた反応組成物は次の通りである。即ち、Y2O3,La2O3,Co,BaCO3,SrCO3,CaO,PbO,Co,Co.La2O3,La2O3,Y2O3,Y2O3である。ライブラリは次のように生成する。即ち、1,Y,M1;2,La,M2;3,Co,M3;4,Ba,M4;5,Sr,M5;6,Ca,M6;7,Pb,M7;8,Co,M8;9,Co,M9;10,La,M10;11,La,M11;12,Y,M12;13,Y,M13の順である。ここで、初めの数字は蒸着手順を示し、次の文字列は元素を示し、3番目は使用されたマスクを示す(図26参照)。コバルトは、極めて大きい磁気抵抗を有する新規な薄層材料を発見するために酸化コバルト基板として用いられ、それゆえ、この組成物は基板上の128の予め画定された各領域に送出したのである。興味のある組成物を基板上の各領域に送出する前に、反応器内の気圧は250 l/sターボポンプを用いて10−15分かけて10-5から10-6Torrまで減圧した。そののちさらに減圧し続け、反応器を100℃から150℃に加熱することによって10-8Torrまで減圧した。RFマグネトロンスパッタリングシステムを一つしか用いなかったので、組成物を変える毎に真空を解除し、また減圧した。蒸着フィルムの厚みは結晶ミクロ天秤(STM-100,サイコン・インスツルメンツ社ニューヨーク州シラキュース、米国)で測定した。
【0171】
反応組成物をLaAlO3基板上へ次の順で送出した。即ち、Y2O3,La2O3,Co,BaCO3,SrCO3,CaO,PbO,Co,Co.La2O3,La2O3,Y2O3,Y2O3である。薄層の厚さの総計は5層部分で約0.4mmであった。各々のフィルムの厚みは表3の4段目に記載した(下記)。
【0172】
【表4】

【0173】
興味の対象となる組成物が基板上の128の予め画定された領域へ送出されたのちは、基板を別々に加熱炉へ入れ、それらの組成物をつづいて反応させた。ライブラリ2(L2)は同時に次の加熱・冷却手順により反応させた。即ち、200℃から300℃まで12時間、300℃から650℃まで1時間、650℃から850℃まで3時間、850℃から900℃まで3時間、900℃から400℃まで2時間である。基板が400℃に達したのち加熱を停止した。加熱・冷却は大気雰囲気下で行なった。見かけ上、蒸発、溶融は観察されなかった。
【0174】
ライブラリ3(L3)は同時に次の加熱・冷却手順により反応させた。即ち、室温から200℃まで1時間、200℃から350℃まで15時間、350℃から室温(加熱系を停止し、基板を室温まで冷却した)、室温から650℃まで2時間、650℃から740℃まで13時間、740℃から850℃まで1時間、850℃から900℃まで3時間、900℃から650℃まで0.5時間、650℃から250℃まで2時間である。基板が400℃に達したのち加熱を停止した。加熱・冷却は大気雰囲気下で行なった。見かけ上、蒸発、溶融は観察されなかった。
【0175】
反応後、L2とL3中の128の予め画定された各領域は、強磁気抵抗(GMR)材料としてのスクリーニングにかけた。各サンプルの抵抗値は磁場の関数であり、測定磁場に垂直におかれ、温度を四点固定プローブを用いてコンピュータ制御の多チャンネルシステムにより測定した。超伝導12テスラの磁石を有する液体ヘリウム低温システム(ジャニス・リサーチ社・ウィリングトン、マサチューセッツ州、米国)を用いて可変温度設定と磁場測定を行なった。図27にはライブラリのマップと各サンプルの当量関係が示してある。さらに、図27中の黒丸は評価すべきGMR(>5%)効果を示したサンプルを表す。
【0176】
図27からは酸化コバルトを基にする新たなGMR材料が発見されたのがわかる。これらのGMR酸化コバルトの新しい系の化合物は次のような一般構造式を有する:即ちAy・(1-x)My・xCoOzである。ここでAはランタン(La)、イットリウム(Y)、セリウム(Ce)、プラセオジミウム(Pr)、ネオジミウム(Nd)、プロメシウム(Pm)、サマリウム(Sm)、ユーロピウム(Eu)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、ホルミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)、イッテルビウム(Yb)、ルテチウム(Lu)から選ばれた金属であり、Mはカルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、バリウム(Ba)、鉛(Pb)、タリウム(Tl)、ビスマス(Bi)から選ばれた金属であり、yは1から2の間の数値であり、xは0.1から0.9の間の数値であり、zは2から4の間の数値である。これらのGMR酸化コバルトの新しい系の化合物は一般に多層のペロブスカイト様構造を有している。
【0177】
具体的に好ましい態様としては、これらのGMR酸化コバルトの新しい系の化合物は次のような一般構造式を有する:即ちA(1-x)MxCoOzである。ここでAはランタン(La)、イットリウム(Y)、セリウム(Ce)、プラセオジミウム(Pr)、ネオジミウム(Nd)、プロメシウム(Pm)、サマリウム(Sm)、ユーロピウム(Eu)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、ホルミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)、イッテルビウム(Yb)、ルテチウム(Lu)から選ばれた金属であり、Mはカルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、バリウム(Ba)、鉛(Pb)、カドミウム(Cd)から選ばれた金属であり、xは0.1から0.9の間の数値であり、より好ましくは0.2から0.7の間の数値であり、さらに好ましくは0.3から0.5の間の数値であり、zは2からおよそ4の間の数値である。
【0178】
さらに、図27から、これらの酸化コバルト化合物のうちのいくつかは次の組成式で表されることがわかる。即ち、La1-xMxCoOzである。ここで、MはCa,Sr,Baの中から選ばれ、xは0.1から0.9の間の数値であり、zは2から4の間の数値である。特にこれらの酸化コバルト化合物について、より好ましいモル比が決定された。即ち、xはおよそ0.2から0.7の間であり、さらに好ましくは0.3から0.5の間である。60Kの温度における代表的なサンプルの規格化された磁気抵抗は磁場の関数として図28(a)および28(b)に示した。代表的なサンプルL3(13,2)の異なる磁場中における磁気抵抗と規格化されたMRの温度依存性は図29(a)と29(b)に示した。酸化マンガン磁気抵抗(MR)材料(Jin,S.et al.Appl.Phys.Lett.66:382(1995))の挙動とは対照的に、アルカリ土類金属のサイズが大きくなるに従ってMR効果は大きくなった(図28(a)、28(b)参照)。
【0179】
L2のサンプルのMR効果はL3のそれより大きく、おそらくは加熱処理のわずかな違いによる酸化反応の違いに起因する。このライブラリ中、もっと大きい実測のMR比は72%であり、T=7K、H=10Tの条件でサンプルL2(15,2)から得られたこの値は同様の方法で得られたマンガンのライブラリから生成したフィルムの測定値に匹敵する。マンガン含有材料におけると同様に、組成、当量関係、基板と合成条件の最適化によってMR比を向上することが可能であろう。しかしながら、同様のY(Ba,Sr,Ca)Co化合物は、非常に小さいMR効果(<5%)を示したに過ぎなかった。
【0180】
La0.67(Ba,Sr,Ca)0.33CoOzの当量関係を有する3つの塊状のサンプルを合成し(大気中1400℃で焼結)、さらに詳しく構造を調べた。ここでzは2から4の間の数値である。X線回折パターン(図30(a)−(c))から、結晶構造は基本的には立方晶系のペロブスカイトであり、格子定数aはBa,Sr,Caについてそれぞれ3.846,3.836,3.810であった。反射ピークのわずかなスプリッティングは完全な立方晶系ペロブスカイト構造からのロンボヘドラルなゆがみによるものである。(F.Askhamら,J.Amer.Chem.Soc.72:3799(1950))。
【0181】
さらに、La0.58Sr0.41CoOzの当量関係を有する3つの塊状のサンプルを合成し、その磁化率をSQUID磁束計(クアンタム・デザイン)を用いて測定した。さらに詳しく構造を調べた。ここでZは2から4の間の数値である。サンプルの磁場の変化に伴うMRと、温度変化に伴う1Tの磁場中での磁化率を測定した結果を図31に示す。緩やかなフェロマグネティック遷移が200Kから始まり50K以下で飽和した。この塊状サンプルのMR比は60%であり、相当する薄層サンプルL2の30%より明らかに高かった。このサンプルのX線分析により立方晶系のペロブスカイト構造を確認し、格子定数aは3.82であった。
【0182】
(E.16の異なる有機高分子のアレイの合成)
本実施例はスチレンとアクリロニトリルの重合により形成される16の異なる有機高分子のアレイを合成できる方法を説明する。16の予め画定された領域をその上に有する3cm x 3cmのパイレックス(登録商標)ガラス製の基板を本実施例では用いた。それぞれの画定された領域は3mm x 3mm x 5mmであり、それゆえ各領域の体積は約45mLである。規定の領域の反応物が隣接する領域へはみ出さないことを確かにするためには、35mLの領域を用いるとよい。
【0183】
スチレンモノマーの2Mトルエン溶液とアクリロニトリルの2Mトルエン溶液を用いる。重合反応を開始する開始剤は過酸化ベンゾイルである。過酸化ベンゾイルの70mMトルエン溶液を用いた。開始剤はそれぞれの反応において10mMの濃度になる。スチレン、アクリロニトリル、過酸化ベンゾイルの溶液は基板上の16個の予め画定された領域へ3つのノズルを持つインクジェット排出器を用いて送出した。一つ目のノズルはスチレンの2Mトルエン溶液の入ったタンクにつなぎ、二つ目のノズルはアクリロニトリルの2Mトルエン溶液の入ったタンクにつなぎ、三つ目のノズルは過酸化ベンゾイルの70mMトルエン溶液の入ったタンクにつないだ。開始剤は16の各領域へモノマーを送出した後で送出した。
【0184】
16の異なるスチレンとアクリロニトリルの重合体を生成するために、表IVに示した反応物の量のセットを16の予め画定された基板上の領域へ送出した。モノマーが基板上の16の予め画定された領域へ送出された後、70mMの開始剤溶液を5mL加えた。重合反応は約60℃と室温で行なった。反応は停止剤を加えるまで行なった。重合反応が完了したのち、有機溶媒を減圧留去(100Torr)した。生成した重合体は例えばナノインデンター(鋭い先端)等を用いて硬度を検査することができる。
【0185】
【表5】

【0186】
(F.ゼオライトアレイの合成)
この例は異なったアレイを持つゼオライトの可能な合成方法を示している。反応体は16個の前もって定められた区域をもつ9cm×9cmのテフロン(登録商標)基質の所へ運ばれる。その基質を約100℃の密閉容器のなかに置く。基質上の16個の前もって定められた区域の各々は、すべて1cm×1cm×2cmである。反応体は自動ピペットで基質の所へ運ばれる。
【0187】
ゼオライトアレイを発生させるのに用いられる5個の成分は次のようなもので、Na2O・Al23・5H2O、KOH、Na2O・2SiO2・5H2O、NaOH、H2Oである。はじめの4成分は水に溶かし、順に2.22M、2.22M、8.88M、11.1Mの濃度にする。基質上の前もって定められた区域にそれらの成分を運ぶ際、Na2O・2SiO2・5H2Oの溶液を最後に加えることが重要である。5個の反応体成分は、以下に出てくる表5に並べた量だけ基質上の前もって定められた区域に運ばれる。
【0188】
一度前述の成分が適当な基質上の前もって定められた区域に運ばれると反応しはじめ、ラマン光散乱法によりアレイが微構造として探査されるようになる。アレイの探査は、成分が基質上の前もって定められた区域に運ばれてから2〜3時間経って可能となり、5〜10日間は続けることができる。この例では、ゼオライトAは初め反応区域1で形成する。しかしながら時間が経つにつれゼオライトAはゼオライトPに変わる。ゼオライトXは反応区域3で形成する。方ソーダ石は反応区域6で形成する。ゼオライトLは反応区域12で形成する。さらに、他のゼオライトは基質上の別の反応区域で形成するかもしれない。
【0189】
【表6】

【0190】
(G.噴霧沈積法を用いた酸化銅化合物のアレイの合成)
この例は噴霧沈積法を用いる酸化銅のアレイの合成法を示している。反応体は16個の前もって定められた区域をもつ1.25cm×1.25cmのMgO基質の所へ運ばれる。反応体は物理的遮蔽技術と噴霧器との組み合わせを用いて薄いフィルムの形で運ばれる。この例で用いた噴霧器はSinitek8700−120MS超音波噴霧器である。水の流れる速さは0.26GPM、周波数は120KHzで、この噴霧器は2インチの錐状噴霧と直径18ミクロンの小滴を発生することができる。
【0191】
この例において無機材料のアレイを発生させるのに用いられる4個の成分は、Bi(NO33、Cu(NO33、Ca(NO33、Si(NO33である。これらの成分は水に溶かし、順に0.8M、2M、2M、2Mの濃度にした。Bi(NO33溶液のpHは約0.9であった。基質上の前もって定められた区域に反応体を運ぶ際、基質の温度だけでなく噴霧器の流量速度を調整することも重要となる。その理由は反応体の小滴が基質表面に触れるとすぐに乾くようにするためである。流量速度は約0.26GPMを保ち、基質の温度は約210℃を維持した。さらに噴霧時間を調整することも重要である。その理由は各々の反応体の量、例えば物質量、が概ね等しいからである。噴霧時間は基質の表面に沈積した各々の薄層フィルムが約1〜4ミクロンの厚さになるようにした。
【0192】
2成分系の遮蔽方法を用いた場合Ca(NO33、Bi(NO33、Cu−(NO33、Si(NO33の水溶液をこの順に以下のような方法で基質に運んだ。前述したようにMgO基質は16個の前もって定められた区域1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16を持っていた。1番目の遮蔽段階において区域9、10、11、12、13、1415、16は遮蔽され、露光し薄層フィルムが形成された区域にCa(NO33水溶液が運ばれた。その後2番目の遮蔽段階で区域3、4、7、8、11、12、15、16が遮蔽されるように遮蔽の位置変え、露光し薄層フィルムが形成された区域にBi(NO33水溶液が運ばれた。3番目の遮蔽段階で区域5、6、7、8、13、14、15、16は遮蔽され、露光し薄層フィルムが形成された区域にCu(NO33水溶液が運ばれた。最後に、4番目の遮蔽段階では区域2、4、6、8、10、12、14、16が遮蔽され、露光し薄層フィルムが形成された区域にSi(NO水溶液が運ばれた。
【0193】
いったん興味となる成分が適当な基質上の前もって定められた区域に運ばれると反応体のアレイを持った基質はそこで300℃で酸化され、アレイから窒素が除かれた。その後、基質は約2分間、880℃に加熱されぴかっと光り、すぐに銅片上で冷やされた。材料のアレイは超伝導材料に遮蔽された。
【0194】
(H.16個の異なった亜鉛珪酸塩リン光体のアレイの合成)
この例は16個の異なった亜鉛珪酸塩リン光体のアレイの可能な合成例を示している。この例では16個の前もって定められた区域をもつ1mm×1mmのパイレックス(登録商標)基質を用いた。各々の前もって定められた区域は100μm×100μm×500μmで、このように各々の前もって定められた区域は約5000ピコリットルとなる。与えられた区域の反応体が隣接の区域に動かないことを保証するために、3000ピコリットルの反応体積が用いられる。
【0195】
反応体は基質上の各々の区域に3つのノズルをもつインクジェットデイスペンサーを用いて同時に運ばれる。最初のノズルは1MのZnO水溶液を含んだインクだめにつながっている。16個の異なったリン光体のアレイを発生させるには反応体の量は以下に示す表6に並べた量だけ基質上の16個の前もって定められた区域に運ばれる。合成反応は窒素雰囲気下1400℃で2時間のもとで行われる。一度形成すると、16個の前もって定められた区域はエレクトロルミネセンス材料もしくは、ある特定の励起波長を試料に放射したり、Perkin−ElmerLS50蛍光測定装置で放射スペクトルを記録したリン光体として遮蔽される。
【0196】
【表7】

【0197】
(I.スパッター法とフォトリソグラフィー遮蔽法の組み合わせを用いた酸化銅の薄いフィルム材料のアレイの合成)
この例は酸化銅材料のアレイの可能な合成法と遮蔽を示している。反応体は256個の前もって定められた区域をもつ1.25cm×1.25cmのMgO基質の所へ運ばれる。MgO基質の1つの側面を粗い面とし、他の側面をきれいに磨いた(1ミクロンのダイヤモンドガラスで)面とする。スパッターした金属酸化物層が良く粘着するためには、表面を極度にクリーンかつなめらかにする必要がある。反応体はスカッター法とフォトリソグラフィー技術の組み合わせを用いて薄いフィルムの形で基質へ運ばれる。フォトレジストは物理的遮蔽として働く。フォトレジストの型はスパッターした材料がどこに沈積し、どこに離昇したかによって決まる。
【0198】
クリーンかつ、きれいに磨いた基質ではじめると、初めの段階はフォトレジスト上でスピンが起こる。Shipley1400ー31がフォトレジストとして用いられる。その理由はそれが良い熱耐久性(約100℃で露光されてさえ可溶)を備えているからである。フォトレジストは全体で3ミクロンの厚さの2つの層に置かれる。フォトレジストは滴瓶容器から基質へ応用され、基質は30秒、600rpmでスピンする。いったん最初のフォトレジスト層が沈積したら90度で15分間軽く焼く。その後その基質を冷やし、2番目のフォトレジスト層が沈積したら90℃で5分間軽く焼く。その基質を冷やし10分間クロロベンゼンに浸す。クロロベンゼンは防染剤の表面を修飾し、低分子量の樹脂を除去する。そのようにしてクロロベンゼンで処理した後、フォトレジストの表面は底の樹脂よりも現像剤により低い溶解性を持つ。これによりフォトレジスト層に不連続部分ができ、薄い金属層によってフォトレジストが包まれるのが防がれる。
【0199】
いったんフォトレジストが沈積すると、基質は簡単に露光する。遮蔽は最初の層の望まれる場所を基に選ばれる。フォトレジストはCanon Fine Pattern projection Mask Aligner(FPA−141)によって露光される。256のライブラリーの最初の層は128の場所を含み、各々の場所は100ミクロン×100ミクロンを持ち、その間には50ミクロンの距離がある。露光後フォトレジストは微細現像剤で45秒間現像し、水で1分間すすぐ。
【0200】
基質を最初の層の沈積のために用意する。300ÅのBiO3を基質上へスパッターする。普通スパッターする温度は、フォトレジストの限界を超えることが可能である。しかし、低馬力のスパッター(150ワット)ガンを用い、標的となる基質までの距離が10cmでは、8時間もの間沈積が続いた場合でさえ、基質の加熱は問題にならないことが明らかとなった。冷えた片は基質温度が100℃を超えた時、入手できる。
【0201】
離昇過程はアセトンの超音波バスに基質を置くことで達成される。フォトレジストは前回の露光と現像の結果除かれ、そこに金属がくっつく。ところがスパッター後残っている防染剤のところで金属は離昇される。アセトンは容易にフォトレジストを溶かし、これにより金属が離れる。その結果、次の層が最初の層に向かったり、金属が沈積する場所が変わる場合を除いて、残った成分の層は同じように基質上に沈積する。この例では次の層はCuOそしてSrCO3そしてCaOである。
【0202】
いったん興味となる成分が基質上の256個の前もって定められた区域に運ばれると、基質は炉のなかに置かれ成分はその結果反応する。反応すれば各々256個の前もって定められた区域は、例えば4−ポイントのコンタクトプローブで遮蔽される。
【0203】
(XI.結論)
本発明は単一の支持体上に材料のアレイを並列に堆積し、合成し、スクリーニングする方法及び装置を大きく改良するものである。上記の記載は例示的なものであり、それに限定するものではない。発明の多くの実施態様及び変更はこの開示を見れば当業者にとって明らかである。単なる例として、一定の工程の異なる順序の利用と同様に、さまざまな反応時間、反応温度及び他の反応条件、を利用できる。従って、本発明の範囲は上記の記載から決定されるべきでなく、添付した特許請求の範囲から決定されるべきであり、その請求の範囲に与えられる権利と均等な範囲も含むものである。
【図面の簡単な説明】
【0204】
【図1】図1は、基体の、第一の場所でのマスキングを説明している図であって、基体は断面として示されている。
【図2】図2(a)〜2(f)は、単一の基体上に一群の反応体アレイを生成させための、二元系マスキング技術の使用を説明している図である。
【図3】図3(a)〜3(c)は、単一の基体上に一群の反応体アレイを生成させための、二元系マスキング技術の使用を説明している図である。
【図4】図4(a)〜4(f)は、単一の基体上に一群の反応体アレイを生成させるための、物理的マスキング技術の使用を説明している図である。
【図5】図5(a)〜5(c)は、単一の基体上に一群の反応体アレイを生成させるための、物理的マスキング技術の使用を説明している図である。
【図6】図6(a)〜6(d)は、単一の基体上に一群の反応体アレイを生成させるための、物理的マスキング技術の使用を説明している図である。
【図7】図7(a)〜7(f)は、単一の基体上に一群の反応体アレイを生成させるための、物理的マスキング技術の使用を説明している図である。
【図8】図8(a)〜8(c)は、単一の基体上に一群の反応体アレイを生成させるための、物理的マスキング技術の使用を説明している図である。
【図9】図9は、本発明の反応体溶液(1つまたは複数)を送り出すために使用することができる典型的な誘導液滴ディスペンサーの構成要素を示している図である。
【図10】図10は、8RFのマグネトロン・スパッタリングガンと円形コンベヤーを使用している反応系の1例を説明している図である。
【図11】図11は、8RFのマグネトロン・スパッタリングガンとカセットを使用している反応系の1例を説明している図である。
【図12】図12は、パルス状レーザーとカセットを使用している反応系の1例を説明している図である。
【図13】図13は、パルス状レーザーとスライディングシャッター・マスキング系を使用している反応系の1例を説明している図である。
【図14】図14(a)〜14(d)は、本発明の方法を実施する際に使用できる色々なマスクを説明している図である。図14(a)は、X/Yシャッターマスクの1例を説明し、図14(b)は、基体に沿って異なる5種の反応成分用の5本の分離したカラムを作るのに使用である5種のマスキングパターンを説明し、図14(c)は、X/Yシャッターマスクを使用して1つの成分を厚さに勾配をつけて基体を横断して作ることができる方法の1例を説明し、そして図14(d)は、5種の異なる成分が基体を横断して移される時に、それら成分が基体の各半分に付着されるマスクを説明するものである。
【図15】図15は、平らなシートの上に二元系マスクとX/Yシャッターの両者を含むそのような平らなシートを説明している図である。
【図16】図16は、抵抗加熱によるライブラリの温度制御の1例を説明している図である。
【図17】図17は、一群の材料アレイの超伝導性を検出するのに使用できる走査型RF感受性検出系(Scanning RF Susceptibility Detection System)の1例を説明している図である。
【図18】図18は、MgO基体上の16個の前以て定められた領域に送り出された反応体成分の地図である。
【図19】図19は、1.25cm×1.25cmのMgO基体上の16種の一群の成分アレイを示している写真である。
【図20】図20(a)、20(b)は、2種の伝導性材料の抵抗を温度の関数として説明している図である。
【図21】図21は、材料のライブラリを生成させるために使用された二元系マスクを説明している図である。左下と右上の数値がライブラリ中の各員子の位置を示すようになっており、M0は二次マスクがないことに対応する。
【図22】図22は、員子数128の二元系ライブラリの焼結前の写真であって、各部位の色は白色光源からの反射光の自然光である。
【図23】図23(a)、23(b)は、抵抗対温度のプロットを説明している図であって、(a)●:BiCuSrCaOであり、そして(b)●:BiCuSrCaCuCaO、○:BiCuCuSrCaCaOである。
【図24】図24は、YBCO−BSCCOライブラリを生成させるのに使用されたマスクを説明している図である。
【図25】図25は、BiCuSrCaO、YBaCaO、YBa2Cu3xの抵抗対温度のプロットを説明している図である。
【図26】図26は、酸化コバルト(CaO)薄膜材料のライブラリを生成させるのに使用されたマスクを説明している図である。
【図27】図27は、ライブラリL2及びL3の薄膜試料の組成と化学量論関係(LnxyCoO3-δ、但し、Ln=La及びY、M=Ba、Sr、Ca及びPb)の地図を説明している図である。試料にはそのテキストと数値説明文中でインデックス(横列の数、縦列の数)で標識が付けられている。各箱の中の1番目の数はxを示し、2番目の数はyを示す。黒塗りの円は有意のMR効果(>5%)を示す試料を表している。
【図28】図28(a)及び28(b)は、L2とL3中の代表的試料の、磁場の関数としてのMR比を説明している図である。
【図29】図29(a)及び29(b)は、0Tと10Tでの試料L3(13,2)の抵抗と、温度の関数としてのMR比(H=10T)、及び異なる磁場について試料の、温度の関数としてのMR比を説明している図である。実線は目でたどるための案内線である。
【図30】図30(a)、30(b)及び30(c)は、Ba、Sr及びCaをドープしたバルク試料のX線回折図(立方晶系ペロブスキー石型構造についてインデックスが付される)をそれぞれ説明している図であって、それらのX線回折図はこの新規なコバルト酸化物群の構造がわずかな歪みを有する立方晶系ペロブスキー石であることを示している。
【図31】図31は、バルク試料La0.58Sr0.41CoOδの1T場における、温度の関数としての磁化を説明している図である。実線は目でたどるための案内線である。図26への挿入は試料の、色々な温度における、磁場の関数としてのMR比を説明するものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式、Ay(1-x)yxCoOz〔式中、Aは、ランタン(La)、イットリウム(Y)、セリウム(Ce)、プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)、プロメチウム(Pm)、サマリウム(Sm)、ユーロピウム(Eu)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、ホルミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)、イッテルビウム(Yb)及びルテチウム(Lu)からなる群から選択される金属であり;Mは、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、バリウム(Ba)、鉛(Pb)及びカドミウム(Cd)からなる群から選択される金属であり;yは約1〜約2の範囲の値を有し、xは約0.1〜約0.9の範囲の値を有し、zは約2〜約4の範囲の値を有する。〕を有する巨大磁気抵抗性(GMR)酸化コバルト化合物。
【請求項2】
xが約0.2〜約0.7の範囲の値を有する請求項1記載の巨大磁気抵抗性(GMR)酸化コバルト化合物。
【請求項3】
xが約0.3〜約0.5の範囲の値を有する請求項1記載の巨大磁気抵抗性(GMR)酸化コバルト化合物。
【請求項4】
前記化合物が層状のペロブスカイト関連型構造を有する請求項1記載の巨大磁気抵抗性(GMR)酸化コバルト化合物。
【請求項5】
式、A1-xxCoOz〔式中、Aは、ランタン(La)、イットリウム(Y)、セリウム(Ce)、プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)、プロメチウム(Pm)、サマリウム(Sm)、ユーロピウム(Eu)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、ホルミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)、イッテルビウム(Yb)及びルテチウム(Lu)からなる群から選択される金属であり;Mは、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、バリウム(Ba)、鉛(Pb)及びカドミウム(Cd)からなる群から選択される金属であり;xは約0.1〜約0.9の範囲の値を有し、zは約2〜約4の範囲の値を有する。〕を有する巨大磁気抵抗性(GMR)酸化コバルト化合物。
【請求項6】
xが約0.2〜約0.7の範囲の値を有する請求項5記載の巨大磁気抵抗性(GMR)酸化コバルト化合物。
【請求項7】
xが約0.3〜約0.5の範囲の値を有する請求項5記載の巨大磁気抵抗性(GMR)酸化コバルト化合物。
【請求項8】
前記化合物が層状のペロブスカイト関連型構造を有する請求項5記載の巨大磁気抵抗性(GMR)酸化コバルト化合物。
【請求項9】
前記化合物が式、La1-xxCoOz〔式中、Mはバリウム、カルシウム及びストロンチウムからなる群から選択される金属であり、xは約0.1〜約0.9の範囲の値を有し、zは約2〜約4の範囲の値を有する。〕を有する請求項5記載の巨大磁気抵抗性(GMR)酸化コバルト化合物。
【請求項10】
Mがバリウムである請求項9記載の巨大磁気抵抗性(GMR)酸化コバルト化合物。
【請求項11】
Mがカルシウムである請求項9記載の巨大磁気抵抗性(GMR)酸化コバルト化合物。
【請求項12】
Mがストロンチウムである請求項9記載の巨大磁気抵抗性(GMR)酸化コバルト化合物。
【請求項13】
(a)第一材料の第一成分及び第二材料の第一成分を支持体上の第一及び第二の領域に送り出し、(b)前記第一材料の第二成分及び前記第二材料の第二成分を前記支持体上の前記第一及び第二領域に送り出し、並びに(c)これらの成分を同時に反応させ少なくとも2つの材料を形成する、ことからなる材料のアレイの製造方法。
【請求項14】
前記材料が共有結合型網状構造固体である請求項13記載の製造方法。
【請求項15】
前記材料がイオン固体である請求項13記載の製造方法。
【請求項16】
前記材料が分子固体である請求項13記載の製造方法。
【請求項17】
前記材料が無機材料である請求項13記載の製造方法。
【請求項18】
前記無機材料が金属間材料である請求項17記載の製造方法。
【請求項19】
前記無機材料が金属合金である請求項記載の製造方法。
【請求項20】
前記無機材料がセラミック材料である請求項17記載の製造方法。
【請求項21】
前記無機材料が有機金属材料である請求項13記載の製造方法。
【請求項22】
前記材料が複合材料である請求項13記載の製造方法。
【請求項23】
前記材料が非生物有機ポリマーである請求項13記載の製造方法。
【請求項24】
前記第一材料の前記第一成分及び前記第一材料の前記第二成分が前記第一領域に同時に送り出される請求項13記載の製造方法。
【請求項25】
前記第一材料の前記第一成分及び前記第二材料の前記第一成分がそれぞれ前記第一及び第二領域に同時に送り出される請求項13記載の製造方法。
【請求項26】
前記第一材料の前記第一成分及び前記第二材料の前記第一成分が同一であるが、異なった量で与えられる請求項13記載の製造方法。
【請求項27】
前記第一材料の前記第二成分及び前記第二材料の前記第二成分が同一であるが、異なった量で与えられる請求項13記載の製造方法。
【請求項28】
前記第一材料の前記第一成分が前記第一領域に化学量論勾配で送り出される請求項13記載の製造方法。
【請求項29】
前記第一材料の前記第一成分及び前記第二材料の前記第一成分が同一であるが、前記支持体上の前記第一及び第二領域に化学量論勾配で与えられる請求項13記載の製造方法。
【請求項30】
前記材料の前記成分が前記支持体上の前記第一及び第二領域にピペットから送り出される請求項13記載の製造方法。
【請求項31】
前記材料の前記成分が前記支持体上の前記第一及び第二領域にインクジェットディスペンサーから送り出される請求項13記載の製造方法。
【請求項32】
前記インクジェットディスペンサーがパルス圧インクジェットディスペンサー、バブルジェットインクジェットディスペンサー及びスリットジェットインクジェットディスペンサーからなる群から選択される請求項31記載の製造方法。
【請求項33】
前記成分のそれぞれを送り出す工程が、(i)前記支持体上の参照ポイント同定し、(ii)前記成分のディスペンサーを前記支持体上の前記第一領域のほぼ上に位置させるように前記参照ポイントから固定した距離及び方向動かし、(iii)前記成分を前記第一領域へ送り出し、及び(iv)残っている各領域及び残っている各成分について工程(ii)及び(iii)を反復する、ことからなる請求項13記載の製造方法。
【請求項34】
前記第一材料の前記第一成分を前記支持体上の前記第一領域に送り出す工程が、(i)マスクを前記支持体に隣接して置き、前記マスクは前記第一材料の前記第一成分を前記支持体上の前記第一領域に送り出させるが、前記支持体上の前記第二領域には送り出させなく、(ii)前記第一材料の前記第一成分を前記支持体上の前記第一領域へ送り出し、及び(iii)前記マスクを除去する、ことからなる請求項13記載の製造方法。
【請求項35】
前記第一材料の前記第一成分を前記支持体上の前記第一領域に送り出す工程が、(i)マスクを前記支持体に隣接して置き、前記マスクは前記第一材料の前記第一成分を前記支持体上の前記第一領域に送り出させるが、前記支持体上の前記第二領域には送り出させなく、(ii)前記第一材料の前記第一成分の薄膜を前記支持体上の前記第一領域へ堆積させ、及び(iii)前記マスクを除去する、ことからなる請求項13記載の製造方法。
【請求項36】
前記第一材料の前記第一成分を前記支持体上の前記第一領域に送り出す工程が、(i)マスクを前記支持体に隣接して置き、前記マスクは前記第一材料の前記第一成分を前記支持体上の前記第一領域に送り出させるが、前記支持体上の前記第二領域には送り出させなく、(ii)前記第一材料の前記第一成分を前記支持体上の前記第一領域へ噴霧し、及び(iii)前記マスクを除去する、ことからなる請求項13記載の製造方法。
【請求項37】
前記第一材料の前記第一成分を前記支持体上の前記第一領域に送り出す工程が、(i)前記支持体上にフォトレジストを堆積し、(ii)前記支持体上に前記フォトレジストを選択的に露光し、(iii)前記支持体から前記フォトレジストを選択的に除去し、前記第一領域を露光させ、(iv)前記第一材料の前記第一成分を前記支持体上の前記第一領域へ送り出し、及び(v)前記支持体から残っているフォトレジストを除去する、ことからなる請求項13記載の製造方法。
【請求項38】
前記第一材料の前記第一成分を前記支持体上の前記第一領域に送り出す工程が、(i)前記第一材料の前記第一成分を前記支持体上の前記第一及び第二領域へ送り出し、(ii)前記支持体上にフォトレジストを堆積し、(iii)前記支持体上の前記フォトレジストを選択的に露光し、(iv)前記支持体上の前記第二領域から前記フォトレジストを選択的に除去し、それにより前記第一材料の前記第一成分を露光させ、(v)前記第一材料の前記露光した第一成分をエッチングして除き、及び(vi)前記支持体から残っているフォトレジストを除去する、ことからなる請求項13記載の製造方法。
【請求項39】
前記材料のそれぞれが25cm2未満の面積中で合成される請求項13記載の製造方法。
【請求項40】
前記材料のそれぞれが10cm2未満の面積中で合成される請求項13記載の製造方法。
【請求項41】
前記材料のそれぞれが5cm2未満の面積中で合成される請求項13記載の製造方法。
【請求項42】
前記材料のそれぞれが1cm2未満の面積中で合成される請求項13記載の製造方法。
【請求項43】
前記材料のそれぞれが1mm2未満の面積中で合成される請求項13記載の製造方法。
【請求項44】
前記材料のそれぞれが10,000μm2未満の面積中で合成される請求項13記載の製造方法。
【請求項45】
前記材料のそれぞれが1,000μm2未満の面積中で合成される請求項13記載の製造方法。
【請求項46】
前記材料のそれぞれが100μm2未満の面積中で合成される請求項13記載の製造方法。
【請求項47】
前記材料のそれぞれが1μm2未満の面積中で合成される請求項13記載の製造方法。
【請求項48】
少なくとも10の異なった材料が前記支持体上に合成される請求項13記載の製造方法。
【請求項49】
少なくとも100の異なった材料が前記支持体上に合成される請求項13記載の製造方法。
【請求項50】
少なくとも104の異なった材料が前記支持体上に合成される請求項13記載の製造方法。
【請求項51】
少なくとも106の異なった材料が前記支持体上に合成される請求項13記載の製造方法。
【請求項52】
少なくとも100の異なった材料が前記支持体上に合成され、それぞれの異なった材料は約1mm2以下の面積中に含まれる請求項13記載の製造方法。
【請求項53】
有用な性質のため前記材料のアレイをスクリーニングする工程を含む請求項13記載の製造方法。
【請求項54】
前記有用な性質が電気的性質である請求項53記載の製造方法。
【請求項55】
前記有用な性質が熱的性質である請求項53記載の製造方法。
【請求項56】
前記有用な性質が機械的性質である請求項53記載の製造方法。
【請求項57】
前記有用な性質が形態学的性質である請求項53記載の製造方法。
【請求項58】
前記有用な性質が光学的性質である請求項53記載の製造方法。
【請求項59】
前記有用な性質が磁気的性質である請求項53記載の製造方法。
【請求項60】
前記有用な性質が化学的性質である請求項53記載の製造方法。
【請求項61】
前記材料のアレイを並列でスクリーニングする請求項53記載の製造方法。
【請求項62】
前記材料のアレイを順次にスクリーニングする請求項53記載の製造方法。
【請求項63】
支持体上の既知の位置での10を越える異なった無機材料のアレイ。
【請求項64】
支持体上の既知の位置での100を越える異なった無機材料のアレイである請求項63記載のアレイ。
【請求項65】
支持体上の既知の位置での103を越える異なった無機材料のアレイである請求項63記載のアレイ。
【請求項66】
支持体上の既知の位置での106を越える異なった無機材料のアレイである請求項63記載のアレイ。
【請求項67】
前記無機材料が金属間材料である請求項63記載のアレイ。
【請求項68】
前記無機材料が金属合金である請求項63記載のアレイ。
【請求項69】
前記無機材料がセラミック材料である請求項63記載のアレイ。
【請求項70】
前記無機材料が無機−有機複合材料である請求項63記載のアレイ。
【請求項71】
(a)第一材料の第一成分を第一支持体上の第一領域に送り出し、前記第一材料の前記第一成分を第二支持体上の第一領域に送り出し、(b)第二材料の第一成分を前記第一支持体上の第二領域に送り出し、前記第二材料の前記第一成分を前記第二支持体上の第二領域に送り出し、(c)前記第一材料の第二成分を前記第一支持体上の前記第一領域に送り出し、前記第一材料の前記第二成分を前記第二支持体上の前記第一領域に送り出し、(d)前記第二材料の第二成分を前記第一支持体上の前記第二領域に送り出し、前記第二材料の前記第二成分を前記第二支持体上の前記第二領域に送り出し、及び(e)前記第一支持体上の前記成分を第一セットの反応条件下に反応させ、前記第二支持体上の前記成分を第二セットの反応条件下に反応させ、少なくとも二つの材料の少なくとも二つの異なったアレイを形成する、工程を含む少なくとも二つの異なった材料のアレイの製造方法。
【請求項72】
前記材料が共有結合型網状構造固体である請求項71記載の製造方法。
【請求項73】
前記材料がイオン固体である請求項71記載の製造方法。
【請求項74】
前記材料が分子固体である請求項71記載の製造方法。
【請求項75】
前記材料が無機材料である請求項71記載の製造方法。
【請求項76】
前記材料が金属間材料である請求項75記載の製造方法。
【請求項77】
前記無機材料が金属合金である請求項75記載の製造方法。
【請求項78】
前記無機材料がセラミック材料である請求項75記載の製造方法。
【請求項79】
前記材料が有機金属材料である請求項71記載の製造方法。
【請求項80】
前記材料が複合材料である請求項71記載の製造方法。
【請求項81】
前記材料が非生物有機ポリマーである請求項71記載の製造方法。
【請求項82】
前記第一セットの反応条件と前記第二セットの反応条件とは、反応が行われる温度が異なる請求項71記載の製造方法。
【請求項83】
前記第一セットの反応条件と前記第二セットの反応条件とは、反応が行われる圧力が異なる請求項71記載の製造方法。
【請求項84】
前記第一セットの反応条件と前記第二セットの反応条件とは、反応が行われる反応時間が異なる請求項71記載の製造方法。
【請求項85】
前記第一セットの反応条件と前記第二セットの反応条件とは、反応が行われる環境空気が異なる請求項71記載の製造方法。
【請求項86】
前記第一材料の前記第一成分と前記第二材料の前記第一成分とが同一であるが、異なった量を与えられる請求項71記載の製造方法。
【請求項87】
(a)単一の支持体上に異なった材料のアレイを形成し、(b)前記有用な性質を有する材料のため前記アレイをスクリーニングし、(c)追加量の前記有用な性質を有する前記材料をつくる、各工程を含む方法によって製造される有用な性質を有する材料。
【請求項88】
前記方法の工程(a)が、(i)第一材料の第一成分及び第二材料の第一成分を支持体上の第一及び第二領域に送り出し、(ii)前記第一材料の第二成分及び前記第二材料の第二成分を前記支持体上の第一及び第二領域に送り出し、及び(iii)前記成分を同時に反応させ、少なくとも二つの異なった材料のアレイを形成する、の各工程をさらに含む請求項87記載の材料。
【請求項89】
前記第一材料の第一成分及び前記第二材料の前記第一成分が同一であるが、異なった濃度で与えられる請求項88記載の材料。
【請求項90】
前記材料が共有結合型網状構造固体である請求項87記載の材料。
【請求項91】
前記材料がイオン固体である請求項87記載の材料。
【請求項92】
前記材料が分子固体である請求項87記載の材料。
【請求項93】
前記材料が無機材料である請求項87記載の材料。
【請求項94】
前記無機材料が金属間材料である請求項93記載の材料。
【請求項95】
前記無機材料が金属合金である請求項93記載の材料。
【請求項96】
前記無機材料がセラミック材料である請求項93記載の材料。
【請求項97】
前記材料が有機金属材料である請求項87記載の材料。
【請求項98】
前記材料が複合材料である請求項87記載の材料。
【請求項99】
前記材料が非生物有機ポリマーである請求項87記載の材料。
【請求項100】
前記材料が高温超伝導体である請求項87記載の材料。
【請求項101】
前記材料が磁気抵抗性材料である請求項87記載の材料。
【請求項102】
前記材料がゼオライトである請求項87記載の材料。
【請求項103】
前記材料が燐光物質である請求項87記載の材料。
【請求項104】
前記材料が導電ポリマーである請求項87記載の材料。
【請求項105】
前記材料が強誘電体材料である請求項87記載の材料。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【公開番号】特開2009−155633(P2009−155633A)
【公開日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2008−278792(P2008−278792)
【出願日】平成20年10月29日(2008.10.29)
【分割の表示】特願2003−349971(P2003−349971)の分割
【原出願日】平成7年10月18日(1995.10.18)
【出願人】(592130699)ザ リージェンツ オブ ザ ユニバーシティ オブ カリフォルニア (364)
【氏名又は名称原語表記】The Regents of The University of California
【出願人】(500371891)サイミックス テクノロジーズ、インク (2)
【Fターム(参考)】