説明

新規組成物

【課題】新規ワクチン製剤の提供。
【解決手段】本発明は、アルミニウム・アジュバントとともに、全地域的発生に関連するか又は全地域的発生に関連する潜在能力を有するインフルエンザ・ウイルス株からの卵由来インフルエンザ・ウイルス抗原の低投与量を含む1価インフルエンザ・ワクチンを提供する。本発明は、非経口と粘膜のインフルエンザ・ワクチンの併合物を含むワクチン・キットであって、この抗原の併合投与量が慣用の抗原投与量以下であるものをも提供する。上記ワクチンの製造方法をも提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規ワクチン製剤、その製造方法、及び予防又は治療におけるそれらの使用に関する。特に本発明は、全地域的流行の間の投与のためのワクチンに関する。
【背景技術】
【0002】
インフルエンザ・ウイルスは、世界に存在する最も遍在的なウイルスの中の1つであり、規則的な一時的流行及び不規則的な全地域的流行の未だ予想できないパターンに従って、ヒトや家畜に感染する。
【0003】
それはしばしばたいしたことのない病気であると考えられているけれども、インフルエンザは破滅的な影響をもつことができる。発生は歴史を通じて記録されてきた。30を超える一時的流行又は全地域的流行が1580年以来発生したことが知られており、その中の4件は、今世紀におけるものである。
【0004】
インフルエンザの通常の兆候は、咳、熱、頭痛、及び筋肉痛を含む。多くの罹患者は、合併症又は二次的な細菌感染に発展し、これはひじょうに重く、そしてさらに致死的でありうる。
【0005】
全地域的流行期間の間においては、前の一時的流行からのウイルスに関連するインフルエンザ・ウイルスが流行する。上記ウイルスは、生涯の早い時機における感染からの免疫性のレベルのバラツキをもって、人々の間に拡がる。このような流行は、通常2〜3年の期間にわたり、一般集団の中で一時的流行を再び生じさせるために十分に変更されている新規株の選択を促し;このプロセスは、“抗原ドリフト(antigenic drift)”といわれる。“ドリフト変異体(Drift variant)”は、いずれか1年に異なるコミュニティー、地域、国又は大陸内で異なる影響をもつことができる。但し、数年間にわたり、それらの全体的な影響は、しばしば類似のものとなる。
【0006】
典型的なインフルエンザの一時的流行は、入院又は死亡率の上昇率により立証されるように、肺炎及び低呼吸性疾患の発症率における増加を引き起こす。老齢者や慣性疾患をかかえている者は、このような合併症を最も経験し易いが、若い小児も重篤な疾患にかかり易い。
【0007】
予想できない間隔をもって、新規のインフルエンザ・ウイルスが、前のシーズンに流行した株との全く異なるサブタイプの主要表面抗原、血球凝集素をもって、出現する。この現象が“抗原シフト(antigenic shift)”といわれる。少なくとも過去において、異なる種からのインフルエンザ・ウイルス、例えば、トリ又はブタ・インフルエンザ・ウイルスがその種のバリアを超えたときに、全地域的流行が生じたと考えられている。このようなウイルスがヒトからヒトに拡がる能力を有する場合、それらは、数ヶ月〜1年以内に全世界に拡がって、全地域的流行をもたらすことができる。
【0008】
全地域的発生を引き起こす能力をそれに与えるインフルエンザ・ウイルスの特徴は:それが現在流行している株における血球凝集素に比較して新規の血球凝集素を含み;そしてそれがヒトにとって病原性であるということである。新規な血球凝集素は、長い時間期間、たぶん何十年(a number of decades)にわたり、ヒト集団において明らかではなかったもの、例えば、H2であることができる。又はそれは、トリにおいて発見された以前ヒト集団において流行していない血球凝集素、例えば、H5、H9又はH6であることができる。いずれの場合においても、ほとんどの、又は少なくとも高い割合の、又はさらに全集団は、上記抗原には先に遭遇しておらず、そしてそれに対して免疫学的に未経験である。
【0009】
H2N2インフルエンザ・ウイルスは、それらがH3N2サブタイプにより置き代えられたときである1957〜1968年の間に流行し、これは、前世紀の最後の全地域的流行を引き起こした。今日、H2N2に先に晒された人々は30歳を超えているようである。H2含有ウイルスは新たな全地域的流行を引き起こすかもしれない。なぜなら、1968年以降に生まれた世界人口の割合の増加が、免疫学的に未経験であると予想されるはずであるからである。H2免疫性に関する上記集団の上記の理論的二分は真実であるかどうかを調べるために、400人の個体において血清−免学的試験が行われ、そしてH2に対する抗体が計測された。
【0010】
上記試験はドイツにおいて行われ、そして上記抗体テストは、H2抗原に特異的なHaemagglutination Inhibition Test(HIT)を用いて、Saechsische Serumwerk(Dresden,Germany)において行われた。上記力価は、血球凝集を阻害する最高血清希釈の逆数である。上記結果は、30歳未満の者の免疫学的に未経験な(naive)状態を確認した。なぜなら、200個体中のたった7人が、10〜20の低い範囲内の計測可能な抗体力価をもっていたからである。
【0011】
このデータは、30歳を超える者のかなりの割合が、未だ、感染後30年以上たっても、H2について血清保護性であるということをさらに示している。血清保護の数(HIT≧10)は90%である。上記血清サンプルのいくつかの中では、抗−H2力価(HIT)は、640と高く、そして30歳を超える全血清保護試験参加者についての幾何平均力価(GMT)は、65であった。HIT≧40であることを、血清保護性であると考える。
【0012】
上記の観察は、H2ウイルスが30歳未満の集団内に拡がることができるという可能性を確認する。最近の人口統計、及び30歳より若い人々が全世界集団の大きな部分を占めているという事実を考慮すれば、H2ウイルスが再び全地域的流行を引き起こすことができるということがいえる。全世界の集団における上記二分性は、年を経るにつれてさらに発展して、影響を受け易い人々のプールは増加するであろう。
【0013】
2年前、トリ・インフルエンザ・ウイルスであるH5を有するインフルエンザ(H5N1)が、ホンコンにおいてヒトから単離された。しかしながら、このウイルスは、ヒトからヒトへ伝達せず、そしてそれ故、全地域的流行を引き起こす能力をもっていなかった。
【0014】
一般に、特定のパーティーが、全地域的流行状況においてインフルエンザに感染するようになる高いリスクにある。老齢、慢性疾患、及び小さな子供が、特に受け易いが、多くの若く、かつ、見かけ上健康な人々も危険である。H2インフルエンザに関しては、1968年以降に生まれた集団の部分が高く危険である。上記グループは、できるだけ有効に、かつ、簡単な方法で保護されることが重要である。
【0015】
高く危険である人々の他のグループは旅行者である。今日人々は以前よりもより多く旅し、そして最も新しいウイルスが出現する地域、中国及び東南アジアが近年における人気のある旅行目的地となっている。旅行パターンにおける上記の変化は、新規ウイルスが、月又は年よりも週単位で全世界に行き渡ることを可能にする。
【0016】
従って、上記の人々のグループのために、全地域的流行状況又は潜在的な全地域的流行状況におけるインフルエンザに対して保護するためのワクチン接種の特別な必要性が在る。
【0017】
かなりの努力が払われ、全地域的流行状況に反応するための有効な国際的戦略を形成しつつあり、そして世界保健機構はこの機関である。主要な手段は、全地域的流行ワクチン戦略の開発であり、そして今までのところこれは、インフルエンザの全地域的流行に届けるために要求される規模では達成されていない。
【0018】
今般、驚ろくべきことに、全地域的流行において有用であるであろうワクチンが迅速かつ特別なやり方で配合されることができるということが発見された。特に、伝統的な担体でアジュバント化され、そして/又は古典的な方法で配合された精製ウイルスを含有する低投与量インフルエンザ・ウイルス・ワクチンであって、大規模での集団のワクチン接種を可能にするために十分に迅速かつ経済的に製造されることができるものが、ヒトにおいて有効であることが発見された。
【0019】
過去においては、アルミニウム塩でアジュバント化された卵由来の、全失活インフルエンザ・ワクチンが、商業的に使用されてきた。しかしながら、この製品は、あまり精製されてなく、そしてむしろ反応原性であり、そしてこのアプローチは、1970年代後半に捨て去られた。
【0020】
最近、より高く精製され、よりよく特徴付けされたスプリット・インフルエンザ・ワクチンが、成人及び年老いた人々における免疫原性を改良する企てにおいてアジュバントと併合されてきた。マウスにおける有意に増加した免疫応答にも拘らず、新世代アジュバントを用いた多くのアプローチが、ヒトにおいて確認されることができていない。上記試験の全てにおいて、標準的な15μg含量の血球凝集素抗原が、上記配合ワクチンを製造するために使用されてきた。
【0021】
最近のレポート(kistner et al (1999)in Inactivated Influenza Vaccines Prepared in Cell Culture,Der Biol Stand Basel,Karger.Vol 98 pp101−110)は、霊長類における試験について記載しており、そこでは、Al(OH)3 と混合された3つのインフルエンザ株を含有する細胞培養由来ワクチンがチンパンジーに与えられた。これは、株当り標準的な15μgの血球凝集素におけるものと同様に良好に、株当り1.5μgの血球凝集素の投与量において全身応答を引き起こした。この試験は、ヨーロッパ薬局方、WHO、その他の、インフルエンザ・ウイルス・ワクチンのための規制機関の従来の要求を全て満たすVero細胞由来インフルエンザ全ウイルス・ワクチンの開発のゴールに向けられていた。
【0022】
日常的に使用される標準的なワクチンに関してはアジュバントとしてのアルミニウム塩の使用に関連した困難性が在る。インフルエンザ・ワクチンは、毎年使用されることを意図され、そしてAl3+の繰り返しの注射は望ましくない。1世紀の間にたった数回起こるかもしれない全地域的流行状況がなければ、Al3+の使用は除外されてない。
【発明の概要】
【0023】
それ故、本発明は、1の態様において、好適なアジュバントとともに、全地域的発生に関連した又は全地域的発生に関連する潜在能力を有する単一のインフルエンザ・ウイルス株からのインフルエンザ・ウイルス抗原の低投与量を含むワクチン製剤を提供する。
【0024】
本発明のワクチンは、インフルエンザ感染を予防し、又はインフルエンザに対する保護を提供し、特にインフルエンザの罹患率又は死亡率に対する保護を提供するために有効な量で、提供される。
【0025】
本発明のワクチン配合品は、好ましくは、上記抗原の免疫保護量を含有するであろう。本発明のワクチン配合物は、慣用技術により製造されることができる。
【0026】
本発明のワクチン製剤は、単一投与量において投与されることができる。
【0027】
低投与量の抗原の使用、及び単一インフルエンザ株の使用(すなわち、1価ワクチン)は、全地域的流行状況に対して反応するために要求されるスピードに寄与する。
【0028】
本発明に係る製剤中のインフルエンザ・ウイルス抗原の低投与量は、ヨーロッパにおいてEMEAにより発行された規則の如き規則に従って、株当り10〜15μg通常15μgの、血球凝集素抗原であるヒト・インフルエンザ・ワクチンのための最近認められたワクチン投与量である抗原量である。
【0029】
あるいは、本発明に係るワクチン製剤は、2以上の投薬において、好ましくは2の投薬において、そして好ましくは、異なる経路により同時に(同じ機会に)投与される2つの投薬において投与される。従って、本発明は、全身的と局所的(粘膜)の両者のワクチンの、好ましくは同時(1回の通院の間の)投与を含む2投薬養生法を提供する。粘膜ワクチンと非経口ワクチンの投与は、免疫応答、特にIgA抗体応答を強化し、これは、インフルエンザ感染からの保護に貢献する。
【0030】
1の好ましい態様においては、ワクチン製剤は、非経口的に、例えば、筋中に、そして粘膜経路を介して、特に鼻内での両者を介して投与される。この態様においては、2つの異なる配合物、すなわち、非経口的デリバリーのための配合物と粘膜デリバリーのための配合物が、通常要求されるであろう。上記配合物は、例えば、異なるアジュバント、及び/又は異なる量の抗原を含むことができる。又はそれらは、単に、異なる容量の液体を含むことができる。
【0031】
従って、本発明は、少なくとも以下の2つの成分:
(i)非経口投与のために好適なアジュバントと配合されたインフルエンザ・ウイルス抗原の低投与量;及び
(ii)鼻内スプレー・デバイスの如き粘膜デリバリー・デバイス内の、粘膜投与のためのインフルエンザ・ウイルス抗原の低投与量;
を含むキットをも提供する。
【0032】
鼻内スプレー・デリバリー・デバイス、例えば、Pfeiffer GmbHの2投薬デリバリー・デバイスが、商業的に入手可能である。
【0033】
このような2経路の投与スキームは、全身的免疫応答と局所的免疫応答の両者を提供するであろうし、後者は、好ましくは、感染の間のウイルスの正常な侵入部位(すなわち、鼻粘膜)におけるものである。
【0034】
好ましくは、本発明の上記態様における上記2成分の併合抗原投与量は、株当り慣用の10〜15μg未満の血球凝集素抗原である。
【0035】
従って、本発明に係る低投与量又は併合低投与量は、一般に、ワクチン投薬当り、10μg未満の血球凝集素、好ましくは8μg未満の血球凝集素、より好ましくは0.1〜7.5μgの間の血球凝集素、最も好ましくは1〜5μgの間の血球凝集素である。好ましくは、上記投与量は、最近の投与量レベルにおける最近のインフルエンザ・ワクチンを用いて可能であろうものよりもかなり多量の、全地域的流行状況のためのインフルエンザ・ワクチンの製造を可能にするために、慣用のインフルエンザ・ワクチンよりも有意に少量である。等しく、抗原投与量は、十分な保護を提供するために十分に高いものである必要がある。
【0036】
一般に、非経口経路を介して、例えば、筋中に投与される本発明に係るワクチンの容量は、約0.5mlであろうし、そして粘膜経路、例えば、鼻内投与されるワクチンの容量はより少量、好ましくは約0.2ml、例えば、鼻孔を介しては0.1mlであろう。
【0037】
本発明に係るワクチン製剤中のインフルエンザ・ウイルス抗原は、全地域的流行ワクチンの要求に合致する迅速かつ効率的な方法により得られうる必要がある。最近、この好ましい方法は、卵内でインフルエンザ・ウイルスを増殖させ、そして収穫された尿膜液(allantoic fluid)を精製することによる。卵は、通知からの短時間に多数集められることができる。細胞培養方法、例えば、イヌ腎臓細胞系、例えば、MDCK又はMDCK一様細胞系上、又はVero細胞系上での上記ウイルスの増殖も好適であるが、本発明の文脈においては好ましくない。
【0038】
上記ワクチン製剤中のインフルエンザ・ウイルスは、好ましくは全ウイルス粒子の形態であるが、あるいは、慣用の方法により調製されたスプリット・ウイルスであることもできる。
【0039】
スプリット・ウイルス・ワクチンは、本分野において知られた方法、例えば、本明細書中に援用する特許第DD300833号、及びDD211444号中に記載する方法により、製造されることができる。伝統的には、スプリット・インフルエンザ(split flu)は、溶媒/洗剤処理、例えば、(“Tween−ether”スプリッティングとして知られる)Tween(商標)と併合されたトリーローブチル・ホスフュート、又はジエチルエーテルを用いて製造され、そしてこの方法は、未だ、いくつかの製造施設において使用されている。現在使用されている他のスプリッティング剤は、洗剤又は保護酵素又は胆汁酸塩、例えば、本明細書中に援用する特許第DD155875号中に記載されたようなナトリウム・デオキシコレートを含む。スプリッティング剤として使用されることができる洗剤は、カチオン洗剤、例えば、セチル・トリメチル・アンモニウム・ブロミド(CTAB)、他のイオン洗剤、例えば、ラウリルスルフェート、タウロデオキシコレート、又は非イオン洗剤、例えば、トリトンX−100(例えば、Lina et al,2000,Biologicals 28,95−103中に記載された方法中のもの)、及びトリトンN−101、又は2以上の洗剤の組合せ物を含む。
【0040】
しかしながら、全地域的流行状況のためのスプリット・ウイルス・ワクチンを上廻る全ウイルス・ワクチンの利点は、それが、スプリット・ウイルス・ワクチンがインフルエンザ・ウイルスの新株のために首尾よく製造されることができるかについての不確実性を回避するということである。いくつかの株に関しては、上記スプリット・ウイルスを製造するために使用される慣用の洗剤は、上記ウイルスに傷を与え、そしてそれを使用不可にすることができる。スプリット・ワクチンを製造するために異なる洗剤を使用し、そして/又は異なる方法を開発する可能性が常にあるが、これは時間がかかり、それは全地域的流行状況において利用されることができない。
【0041】
全ウイルス・アプローチによるより高い確実性に加えて、スプリット・ウイルスに関してよりもより高いワクチン製造能力も存在する。なぜなら、抗原のかなりの量が、好適なスプリット・ワクチンを製造するために必要な追加の精製ステップの間に、失われるからである。
【0042】
しかしながら、ワクチンが鼻内及び非経口的の両者を介して投与されるところの併合アプローチに関しては、スプリット・ワクチンは、鼻内配合品のために好ましいものであることができ、一方、失活された全ウイルス・ワクチンは、非経口配合品のために好ましいものであることができる。
【0043】
鼻内配合品のために特に好ましいものは、失活され又はスプリットされており、そして好ましくは、非イオン界面活性剤、例えば、オクチル−又はノニルフェノキシ・ポリオキシエタノール(例えば、商業的に入手可能なトリトン(商標)シリーズ)、及びポリオキシエチレン・ソルビタン・エステル(トウィーン(商標)シリーズ)、特にトリトンX−100又はトウィーン80又は両者の組合せ物から選ばれる洗剤であるワクチンである。
【0044】
上記洗剤は、スプリッティング又は精製方法から残存する残存試薬であることができ、そして/又は、それらは、失活/スプリット・ウイルス配合品に添加され、又はそれらの濃度が調整される。
【0045】
同様に、スプリッティング剤、例えば、コール酸誘導体、及び特にナトリウム・デオキシコレート(NaDOC)は、一般に微量で、本発明に係るワクチン製剤中で存在することができる。
【0046】
本発明に係るワクチン製剤中でのアジュバントの使用は、慣用のワクチン中でよりもより低投与量のウイルス抗原の使用を許容する。
【0047】
好ましくは、本発明に係る上記製剤中のアジュバントは、多量に容易に入手できるアジュバントである。本発明に係る非経口的に投与されるワクチンのために特に好ましいアジュバントは、少なくとも1のアルミニウム塩、最も好ましくは、水酸化アルミニウムとリン酸アルミニウムの併合物を含む。好ましくは、上記リン酸アルミニウムは、上記水酸化アルミニウムよりもワクチン投薬当り高い濃度において存在する。
【0048】
0.5又は1mlのワクチン投薬当りのアルミニウム塩の合計量は、通常0.1〜2.0の範囲、好ましくは0.4〜1.0mgの範囲内にある。好ましいものは、リン酸アルミニウムと水酸化アルミニウムを含むアジュバント組成物であって水酸化アルミニウムの量に対するリン酸アルミニウムの量が重量で少なくとも2:1、より好ましくは5:1、そして最も好ましくは少なくとも8:1又は9:1であるものである。
【0049】
粘膜投与されるワクチンのためには、そのウイルス抗原のサイズが、粘膜透過に適したものであることを保証することが重要である。これは、その配合品中に既に存在する洗剤又はスプリッティング剤より考慮されることができる。あるいは、又はさらに、本分野において知られた好適な粘膜アジュバント、例えば、以下の一般式:
(I)HO(CH2 CH2 O)n−A−R
{式中、nが1〜50であり、Aが結合又は−C(O)−であり、RがC1-50アルキル又はフェニルC1-50アルキルである。}により表されるポリオキシエチレン・エーテル又はエステルの如き吸収強化剤が、使用されうる。
【0050】
式(I)に包含される好ましい界面活性剤は、式中、nが4〜24より好ましくは6〜12、そして最も好ましくは、9であり;R成分がC1-50、好ましくはC4 〜C20アルキル、そして最も好ましくはC12アルキルであるところの分子である。特に好ましい例は、Merck index(12thed:entry 7717,Merck & Co.Inc.,Whitehouse Station,N.J.,USA;ISBN 0911910−12−3)中に記載されているポリオキシエチレン−9−ラウリル・エーテル(ラウレス9(laureth9))である。ラウレス9は、酸化エチレンをドデシル・アルコールと反応させることにより形成され、そして平均9の酸化エチレン単位をもつ。
【0051】
さらなる局面においては、本発明は、初回免疫化されていない個体又は集団におけるインフルエンザ・ウイルスに対してプライミング免疫応答を提供する方法であって、上記個体又は集団に、本明細書中に記載する低血球凝集素ワクチン又は併合ワクチンを投与することを含む前記方法を提供する。
【0052】
他の局面においては、本発明は、全地域的流行状況のためのインフルエンザ・ワクチンの製造方法であって、全地域的発生に関連するか又は全地域的発生に関連する潜在能力を有する単一インフルエンザ・ウイルス株からのインフルエンザ・ウイルス抗原を、好適なアジュバントと混合し、そして投薬当り10μg未満のインフルエンザ血球凝集素抗原、又は併合投薬当り10μg未満のものを含有するワクチン・ロットを提供することを含む前記方法を提供する。
【0053】
さらに他の局面においては、本発明は、ワクチン中で使用されるインフルエンザ・ウイルス抗原の精製方法でって、上記インフルエンザ・ウイルス抗原を含有する混合物をプロテアーゼで処理して、非インフルエンザ・ウイルス・タンパク質を消化するステップを含む前記方法を提供する。
【0054】
上記精製は、培養物から収穫されたインフルエンザ・ウイルスの調製物について行われる。驚くべきことに、上記インフルエンザ・ウイルス粒子は、上記プロテアーゼ消化ステップに対して抵抗性である。上記方法において使用される好ましいプロテアーゼは、トリプシンであり、これは好ましくは、0.1〜10μg/ml純トリプシンの濃度で使用される。使用されうる他のプロテアーゼ酵素は、プラスミンとキモトリプシンを含む。
【0055】
通常、上記プロテアーゼ消化ステップは、上記インフルエンザ・ウイルス抗原が1以上の物理的分離ステップ、例えば、遠心分離及び濾過により部分的に精製された後に、行われる。望ましい製品が全ウイルス・ワクチンである場合、上記のプロテアーゼ消化ステップは、ウイルス失活ステップの前に行われる。
【0056】
本発明に係る精製方法は、ワクチン中での使用のために好適である、汚染性宿主細胞タンパク質を実質的に含有しないスプリット又は全ウイルスの形態における精製されたインフルエンザ・ウイルス抗原を提供するために首尾よく使用されることができる。
【0057】
用語“汚染性宿主細胞タンパク質を実質的に含有しない”とは、全タンパク質の10%未満、好ましくは8%未満、そしてより好ましくは5%未満が、クーマシー染色ポリアクリルアミド・ゲルのスキャニングにより検出されるとき、宿主細胞タンパク質であるということを意味する。卵内で培養されるインフルエンザの場合、優勢な宿主タンパク質はオボアルブミンであって、これは、尿膜液の全タンパク質質量の約60〜70%を構成する。好ましくは、オボアルブミンは、染色されたゲルのスキャニングにより評価されるとき、全タンパク質の、1%未満、より好ましくは0.1%未満、そして最も好ましくはほんの約0.05%の濃度で、精製されたインフルエンザ・ウイルス調製物中に存在する。
【0058】
さらなる局面においては、本発明は、インフルエンザの予防のためのワクチンの製造における、全地域的発生に関連した又は全地域的発生に関連する潜在能力を有するインフルエンザの単一株からのインフルエンザ・ウイルス血球凝集素抗原の10μg未満、又は8μg未満、又は1〜7.5μgの、又は1〜5μgの投与量又は併合投与量の使用を提供する。
【0059】
本発明に係るワクチン製剤における使用のために好適な他のアジュバントは、ウイルス抗原に対する免疫応答を強化することができる一定範囲のアジュバントを含む。
【0060】
3脱−O−アシル化モノホスホリル・リピドA(3D-MPL)は、1のこのようなアジュバントである。これは、例えば、GB2220211(Ribi)中に記載されている。化学的には、それは、3−脱−O−アシル化モノホスホリル・リピドAと、4,5又は6アシル化鎖の混合物であり、そしてRibi Immunochem Montanaにより製造されている。3脱−O−アシル化モノホスホリル・リピドAの好ましい形態は、EP0689454中に開示されている。3D-MPLの好ましい形態は、(EP0689454中に記載されているように)直径、120nm以下の、通常60〜120nmの、好ましくはおおよそ又は100nm未満の粒子である。
【0061】
3D-MPLは、通常、投薬当り、10μg〜100μg、好ましくは25〜50μgの範囲内で存在するであろうし、ここでは、その抗原は、典型的には、投薬当り2〜50μgの範囲内で存在するであろう。
【0062】
他の好適なアジュバントは、QS21であり、これは、南米の樹であるQuillaja Saponaria Molinaの樹皮からのサポニンのHPLC精製された、非毒性画分である。場合により、これは、場合により担体とともに、3D-MPLと混合されることができる。
【0063】
QS21の製造方法は、US5,057,540中に記載されている。
【0064】
QS21を含有する非反応原性アジュバント配合物も、本発明に係るワクチン製剤中での使用に好適であり、そして例えば、WO96/33739中に記載されている。QS21とコレステロールを含有するこのような配合物は、抗原と配合されるとき、首尾よいアジュバントであることが示されている。
【0065】
異なるアジュバント、例えば、上述のものの組合せ物も、本発明における使用のために好適であるアジュバントを提供するものであることが企図されている。例えば、QS21は、3D-MPLと配合されることができる。QS21:3D-MPLの比は、典型的には、1:10〜10:1の;好ましくは1:5〜5:1の、そしてしばしば実質的に1:1のオーダーであるであろう。最適シナジーのために好ましい範囲は、2.5:1〜1:1の3D-MPL:QS21である。
【0066】
有利には、本発明に係るワクチン製剤は、通常、上記の他のアジュバントの中の1とともに、担体と配合されることができる。上記担体は、例えば、油/水エマルジョン、又はアルミニウム塩であることができる。
【0067】
好ましい油/水エマルジョンは、代謝性油、例えば、スクアレン、アルファ・トコフェロール、及びトウィーン80(商標)を含む。さらに、上記油/水エマルジョンは、スパン85(商標)、及び/又はレシチンを含むこともできる。
【0068】
好ましい局面においては、水酸化アルミニウム、及び/又はリン酸アルミニウムは、免疫原性を強化するために、本発明の製剤に添加されるであろう。
【0069】
典型的には、ヒト投与のためには、QS21と3D-MPLは、投薬当り、1μg〜200μgの、例えば、10〜100μgの、好ましくは10μg〜50μgの範囲内でワクチン中に存在するであろう。典型的には、上記油/水エマルジョンは、2〜10%のスクアレン、2〜10%のアルファ・トコフェロール、及び0.3〜3%のトウィーン80(商標)を含むであろう。好ましくは、スクアレン対アルファ・トコフェロールの比は、これがより安定なエマルジョンを提供するので、1に等しいか又は1未満である。スパン85(商標)も1%のレベルで存在することができる。いくつかの場合、本発明のワクチンがさらに安定剤を含むであろうということも有利でありうる。
【0070】
非毒性の油/水エマルジョンは、好ましくは、水性担体中に、非毒性の油、例えば、スクアラン又はスクアレン、乳化剤、例えば、トウィーン80(商標)を含む。水性担体は、例えば、リン酸塩緩衝液化生理食塩水であることができる。
【0071】
油/水エマルジョン中、QS21、3D-MPL、及びトコフェロールを含む特に強力な他のアジュバント配合品は、WO95/17210中に記載されている。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1A】ワクチン・バルクの調製フロー・シート。
【図1B】任意的トリプシン・インキュベーション・ステップを含む精製プロセスのための一般化されたフロー・シート。
【0073】
本発明を、以下の実施例においてさらに説明する。
【実施例】
【0074】
実施例
実施例1− 全インフルエンザ・ワクチンのための1価バルクの調製
ワクチン・バルクを、図1A中に示すフロー・シートに従って調製した。図1Bは、任意的トリプシン・インキュベーション・ステップを含む、精製プロセスのための一般化されたフロー・シートを示す。
【0075】
粗1価全ウイルスの調製
ウイルス接種物の調製
胚をもった卵の接種の日に、作業種母ロットを、0.5mg/mlで硫酸ゲンタマイシンと25μg/mlでヒドロコルチゾンを含有するホスフェート・バッファーと混合することにより調製する(ウイルス株依存性)。
【0076】
このウイルス接種物を2〜8℃で保つ。
【0077】
胚をもつ卵の接種
9〜11日齢の胚をもった卵を、ウイルス複製のために使用する。この卵を、製造プラントに到着する前農場においてインキュベートし、そしてその殻を殺菌した後に製造室に移す。卵を、自動卵接種装置上で、0.2mlのウイルス接種物で接種する。
【0078】
接種された卵を、48〜96時間、適当な温度でインキュベートする(ウイルス株依存性)。このインキュベーション期間の終りに、その胚を、その卵を冷却することにより殺し、そして2〜8℃で12〜60時間保存する。
【0079】
収穫
冷却された胚をもつ卵からの尿膜液を、適当な卵収穫機械により収穫する。通常、8〜10mlの粗尿膜液を、卵ごとに集めることができる。この粗1価ウイルス・バルクに、0.100mg/mlのチオメルサールを添加する(別法においては、チオメルサールを添加しない)。
【0080】
尿膜液からの全ウイルスの濃縮及び精製
1.清澄化
上記の収穫された尿膜液を、中程度の速度の遠心分離(レンジ:4000〜14000g)により、清澄化する。
【0081】
2.吸着ステップ
上記清澄化されたウイルス・プール中にCaHPO4 を得るために、0.5mol/LのNa2 HPO4 と0.5mol/LのCaCl2 溶液を添加して、ウイルス株に依存して、1.5g〜3.5g CaHPO4 /力価のCaHPO4 の最終濃度にする。
【0082】
少なくとも8時間、沈降させた後、上清を除去し、そして上記インフルエンザ・ウイルスを含有する沈殿物を、使用するCaHPO4 の量に依存して、0.26mol/L EDTA−Na2 溶液の添加により再溶解させる。
【0083】
3.濾過
再懸濁された沈殿物を、6μmフィルター膜上で濾過する。
【0084】
4.スクロース勾配遠心分離
上記インフルエンザ・ウイルスを、線形スクロース勾配(0.55%)におけるアイソピクニック(iso pycnic)遠心分離により濃縮する。流速は8〜15リッター/時である。
【0085】
遠心分離の終りに、ローターの内容物を3つの異なる画分に回収する(スクロースは屈折計内で計測される)。
【0086】
−画分(fraction)1 55〜約52%スクロース
−画分2 約52〜26%スクロース
−画分3 26〜20%スクロース
ウイルス株依存性
画分2をホスフェート・バッファーで希釈する。
【0087】
このステップにおいて、生成物を、“1価全ウイルス濃縮物”という。
【0088】
滅菌濾過
上記全ウイルス材料を、0.2μm膜で終わる複数のフィルター膜上で濾過する。この濾過の終りに、上記フィルターを、ホスフェート・バッファーで洗浄する。結果として、濾過された画分2の最終容量は、元の画分容量の5倍となる。
【0089】
失活
上記の濾過された1価材料を、ホスフェート・バッファーで希釈して、その全タンパク質含量を最大250μg/mlまで低下させる。ホルムアルデヒドを添加して、250μg/mlの最終容量とし、そして失活を、少なくとも72時間20±2℃で行う。
【0090】
最終滅菌濾過
上記失活材料のタンパク質濃度を、約500μg/mlタンパク質に調整し、0.8μmで終わる複数の膜上で事前に濾過し、そして最後に、0.2μmで終わる複数の膜上で濾過する。
【0091】
そのウイルス株に依存して、最後の濾過膜は0.8μmであることができる。このステージにおいて、その生成物を“1価最終バルク”という。
【0092】
保存
上記1価最終バルクを、最大18ヶ月間、2〜8℃で保存する。
【0093】
純度
純度を、クーマシー染色ポリアクリルアミド・ゲルのO.D.スキャニングにより測定したピークを手動で測定した。結果を以下の表中に与える:
【0094】
【表1】

【0095】
トリプシン・ステップを含む別法
トリプシン消化
滅菌濾過ステップ後、滅菌材料を、トリプシン処理ステップにかける。純粋なトリプシン、例えば、10,000〜15,000ユニット/mgの比活性を有する商業的に入手可能なブタ・トリプシンを、0.1〜10μg/mlの最終濃度で添加する。上記混合物を、緩やかに撹拌しながら、37℃で2時間、インキュベートする。次に上記材料を、さらなる処理のために冷却する。
【0096】
限外濾過
トリプシン消化の後、上記材料を、(先に記載したように)失活の前又は後のいずれかに限外濾過にかけることができる。このウイルス材料を、20,000〜50,000Dの平均排除限界をもつ膜上で限外濾過する。限外濾過の間、ホルムアルデヒドとスクロースの含量は、かなり低下する。
【0097】
最初の4倍の容量低下の後、その容量は、
ホスフェート・バッファーとリン酸塩緩衝液化生理食塩水の添加により、限外濾過(ダイアフィルトレーション)の間、一定のままである。
【0098】
結果
上記トリプシン方法に従って調製されたインフルエンザ全ウイルス・ワクチンを、クーマシー染色されたポリアクリルアミド・ゲル上で分析した。上記ウイルス・タンパク質は、トリプシン消化ステップを経験しなかったウイルス・タンパク質と同じ位置まで移動した。これは、そのウイルス・タンパク質がプロテアーゼ消化されていなかったことを示すものである。
【0099】
実施例2− バルク・ワクチンからのワクチン投与量の調製
最終ワクチンを、実施例中に記載したようにして調製された最終バルク・ワクチンを、目的の抗原含量が得られかつ投薬当り0.5mgのAl塩の濃度が達成されるような方法で、アジュバント・ミックスと最終バッファーと、混合することにより調製する。
【0100】
使用されたバッファーは、以下に列記するいくつかの塩を含有する。上記アジュバントは、AlPO4 とAl(OH)3のミックスであり、そして4mg/mlの保存溶液当り、3.6mgのAlPO4 と0.4mgのAl(OH)3の割合で使用される。
【0101】
バッファー組成;
蒸留水 0.800l
NaCl 7.699g
KCL 0.200g
MgCl2・6H2 O 0.100g
Na2 HPO4・12H2 O 2.600g
KH2 PO4 0.373g
蒸留水で1リッターの最終容量に調製する。
【0102】
その手順を以下に示す:
1.10〜15℃でアジュバント・ミックスを使用する。
【0103】
2.15〜20℃で最終ワクチン・バッファーを添加し、そしてマグネチッグ・スターラーで緩やかに混合する。
【0104】
3.5〜10℃で適当なバルク・ワクチンを、混合しながら添加する。
【0105】
4.室温で10〜30分間、混合を続ける。
【0106】
5.吸着されたワクチンを室温まで冷却させて、充填を待つ。
【0107】
6.最終ワクチン容量は、投薬当り0.5mlである。
【0108】
実施例3− 臨床データ−アルミニウム塩でアジュバント化された低投与量スプリット・インフルエンザ・ワクチン
以下のデータは、臨床試験からのものであり、ここで、3価インフルエンザ・ワクチンは、商業的に入手可能なFluarix(商標)ワクチン(スプリット・フル・ワクチンである)のための一般製造概要に従って製造された。実際には、最終の3価バルク材料を、実施例2に記載されたようなアルミニウム・アジュンバントと混合した。いくつかの異なるHA投与量を調製した。
【0109】
上記ワクチン・ロットを、株当り投薬当り1.8μg、及び株当り投薬当り3.75μgにおいて、2つの年齢集団、18〜60歳、及び>60歳においてテストした。50人のボランティアを、各群においてワクチン接種した。
【0110】
株当り1.8と3.75μgの投与量に対応するデータを、以下の表中に提示する。
【0111】
フル−特異的血清Absの血球凝集素阻害(HAI)活性
血清(50μl)を、37℃で16時間200μlのRDE(レセプター破壊性酵素)で処理する。この反応を、150μlの2.5%クエン酸Naで停止させ、そしてその血清を30分間56℃で失活させる。1:10希釈物を、100μlPBSの添加により調製する。次に、2倍の希釈シリーズを、25μl血清(1:10)を25μlPBSで希釈することにより、96ウェル・プレート(V底)内で調製する。25μlの参照抗原を、25μl当り4血球凝集素ユニットの濃度で各ウェルに添加する。抗源と抗血清希釈物を、マイクロタイター・プレート振とう機を用いて混合し、そして室温で60分間インキュベートする。次に、50μlのニワトリの赤血球細胞(RBC)(0.5%)を添加し、そしてこのRBCを室温で1時間沈降させる。HAI力価は、ウイルス誘導血球凝集を完全に阻害する最終血清希釈の逆数に一致する。
【0112】
【表2】

【0113】
【表3】

【0114】
18〜60歳群に関するEU基準は、以下の通りである:
−血清変換係数 >2.5
−血清変換率 >40%
−ワクチン接種後の保護率 >70%
上記表中のデータから、血清変換係数、血清変換率、及び保護率に関するEU基準は、インフルエンザのA株に対してテストされた2つの異なる投与量に関する上記2つの年齢集団において、凌駕されていると結論することができる。
【0115】
Bウイルスに対する保護率は、上記2つの試験群においてワクチン接種前、それぞれ、80%と90%を上廻るものであった。B株に対するこのワクチン接種前の血清陽性は、このワクチン応答に、ネガティブに影響を及ぼす。これにも拘らず、B株に対する抗体は、ワクチン接種後に2倍になり、100%に近い保護率をもたらした。
【0116】
従って、株当り4μg未満のHA及びアルミニウム・アジュバントと配合されたワクチンは、許容できる反応原性特性を有し(データを示さず)、そして上記2つの試験集団における3つのEU基準の全てに完全に適合する免疫応答を誘導することができる。上記試験において行われた観察に基づき、低投与量の吸着されたワクチンが、全地域的流行状況における使用のために好適であると結論することができる。
【0117】
実施例4− 精製され、そしてアルミニウム塩上に吸着された、低投与量1価全ウイルス・ワクチンの反応原性特性
全インフルエンザ1価バルクを、実施例、及び図1に従って調製し(非トリプシン法)、そして1価インフルエンザ・ワクチンを実施例2に従って配合した。
【0118】
上記全ウイルスを精製するための精製段階において、一般に通用されるスクロース勾配遠心分離に加えて、選択されたウイルスに富む画分をペレット化して、より効率的に卵由来汚染物を除去した。
【0119】
(ナトリウム・デオキシコレート(NaDOC)と50μg/mlにおけるホルムアルデヒドへの暴露との組合せにより達成されるスプリット・ワクチンのための失活方法に比較して)全ウイルスを、250μg/mlの濃度においてホルムアルデヒドで失活させた。
【0120】
一旦、精製され、かつ、失活されれば、抗原は、投薬当り、0.5mgと0.45mgの濃度で、それぞれ、水酸化アルミニウムとリン酸アルミニウムのミックスに吸着された。
【0121】
その純度は、プレイン尿膜又は希釈尿膜液が使用されていた過去の全ウイルス・アジュバント化ワクチンの純度よりもかなり優れたものであった。
【0122】
この全ウイルスの抗原含量は、7.5μg/投与量A/Sydney/5/97であった。この投与量は、反応原性の上限を調べるために、(全地域的流行1価ワクチンのために選択されるかもしれない最高の抗原投与量として)最悪ケースのシナリオとして選択された。
【0123】
実施例3における観察、及び全ウイルスがスプリットのワクチンと少なくとも同程度に免疫原性であるという事実に基づき、より低い抗原投与量が使用されるであろう。
【0124】
上記反応原性の統計学的比較、主にワクチン接種後に観察される局所的事件は、Fluarix、すなわちthe SmithKline Beecham Biologicalsのスプリット・インフルエンザ・ワクチンについてのデータを用いて行われた。
【0125】
局所的反応を上記比較のために選択した。なぜなら、それらは、正確に計測されることができ、そしてそれらは、アルミニウム・アジュバント含有ワクチン後の局所反応に関して最も指標になるからである。
【0126】
【表4】

【0127】
【表5】

【0128】
The Mann−Whitney Uテストは、2つの集団を比較するための統計的テストであり、そして2つの集団の結果が同一の分布をもつという帰無仮説をテストすることは、上記2つの分布関数が、それが存在する場合、位置(メジアン)に関してのみ粗違するという対立仮説に対立する。
【0129】
上記1価低投与量全ウイルス・アジュバント化ワクチンの反応原性と、1996年、1997年、及び1999年におけるFluarix(商標)についての臨床試験の結果との比較結果は、P0.05レベルにおいて有意差がないことを示す。
【0130】
この観察は、インフルエンザに対して高い保護率を誘導するために十分なものである投与量よりも高い抗原投与量においてさえ、全ウイルス・アジュバント化ワクチンの使用を支持する。
【0131】
実施例5− 非初回免疫化集団におけるアルミニウム塩でアジュバント化された低投与量1価全ウイルス・ワクチンの免疫原性
全インフルエンザ・ウイルス・ワクチンを、実施例1、及び図1(非トリプシン法)に従って調製し、そして異なる量のHAを含有する1価インフルエンザ・ワクチンを実施例2に記載したように配合した。
【0132】
この試験において使用した抗原は、A/Singapore/1/57(H2N2)から調製した。このH2N2サブタイプは、1968年以降ヒトにおいて流行しておらず、≦30歳の試験参加者は、上記抗原に対し免疫学的にナイーブであった。その免疫状態と免疫応答を、血清サンプル中の血球凝集素阻害力価として計測した。
【0133】
10日目及び21日目における免疫応答は、真の初回免疫応答であると考えることができ、一方、他の値の全ては、追加免疫応答を表している。この結果は、対応の試験群の幾何平均力価(GMT)を示す。
【0134】
【表6】

【0135】
上記表中に提示する結果は、1.9μg/投薬と同程度に低いHA抗原含量をもつ1価全ウイルス・ワクチンが、非初回免疫化試験群(≦30歳、d=10,21)において、対照群(15μgHA/投薬、アルブミンなし)と等価な免疫応答を顕出することを証明するものである。
【0136】
上記HI力価は、1の免疫感作後の保護レベル未満であるけれども、保護力価(≧1:40)は、2回の免疫感作後に全ての群内で達成される。ブースター応答のために開発された基準が、初回免疫応答の評価において十分に適用できるかどうかは、確実に確立されてはいない。インフルエンザ・ウイルスによる感染の場合、“非保護的”力価の値は、評価されずに残った。
【0137】
以上の結果は、全地域的流行状況における非初回免疫化集団の最初の免疫化のための低投与量全ウイルス・アルミニウム吸着インフルエンザ・ワクチンの使用を支持するものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アジュバントとともに、全地域にわたる発生に関連するか又は全地域にわたる発生に関連する潜在能力を有するインフルエンザ・ウイルス株からのインフルエンザ・ウイルス抗原の投与量であるインフルエンザ・ウイルス成分を含む1価インフルエンザ・ワクチン製剤であって、当該投与量が、投薬当り15μg未満の血球凝集素又は併合したワクチン投薬当り15μg以下であり、かつ当該アジュバントが、スクアレン、アルファトコフェロール、及びTween 80TM(登録商標)を含む油/水エマルジョン担体である、前記ワクチン製剤。
【請求項2】
前記アジュバントが、スクアレン及び当該スクアレンと同じ又は1未満の比のアルファトコフェロールを含む油/水エマルジョン担体である、請求項1に記載のワクチン製剤。
【請求項3】
前記インフルエンザ・ウイルス抗原が、精製された全体の形態にあるか又はスプリット・インフルエンザ・ウイルスの形態にある、請求項1又は2に記載のワクチン製剤。
【請求項4】
前記油/水エマルジョンが、2〜10%のスクアレン、2〜10%のアルファトコフェロール、及び0.3〜3%のTween 80TM(登録商標)を含む、請求項1〜のいずれか1項に記載のワクチン製剤。
【請求項5】
前記投与量が、投薬当り又は併合したワクチンの投薬当り10μg未満の血球凝集素である、請求項1〜のいずれか1項に記載のワクチン製剤。
【請求項6】
前記投与量が、投薬当り又は併合したワクチンの投薬当り0.1〜7.5μgの間、又は1〜5μgの間の血球凝集素である、請求項に記載のワクチン製剤。
【請求項7】
卵由来又は細胞培養由来である、請求項1〜のいずれか1項に記載のワクチン製剤。
【請求項8】
前記インフルエンザ・ウイルス抗原が、宿主細胞汚染物を含まない、請求項1〜のいずれか1項に記載のワクチン製剤。
【請求項9】
前記インフルエンザ抗原が、H2N2を含むH2抗原及びH5N1を含むH5抗原から選ばれる、請求項1〜のいずれか1項に記載のワクチン製剤。
【請求項10】
世界的流行のためのインフルエンザ・ワクチンの製造方法であって、全地域にわたる発生に関連するか又は全地域にわたる発生に関連する潜在能力を有する単一のインフルエンザ・ウイルス株からのインフルエンザ・ウイルス抗原を、請求項1〜のいずれか1項に記載のアジュバントと混合し、そして投薬当り10μg未満のインフルエンザ血球凝集素抗原又は併合された投薬当り15μg以下の血球凝集素を含むワクチンのロット又はワクチンのキットを提供することを含む前記製造方法。
【請求項11】
前記インフルエンザ・ウイルス抗原が、全体の形態又はスプリット・インフルエンザ・ウイルス粒子の形態にある、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記インフルエンザ抗原が、H2N2を含むH2抗原及びH5N1を含むH5抗原から選ばれる、請求項10又は11に記載の方法。
【請求項13】
インフルエンザ・ウイルス感染に対する保護のためのワクチンのロット又はキットの製造における、請求項1〜のいずれか1項に記載のアジュバントと、全地域にわたる発生に関連する又は全地域にわたる発生に関連する潜在能力を有するインフルエンザの単一株からの、10μg未満、又は8μg未満、又は1〜7.5μg、又は1〜5μgの卵由来インフルエンザ・ウイルス血球凝集素抗原の使用。
【請求項14】
1回投与としての又は2回以上の投与のための、請求項13に記載の使用。

【図1A】
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【図1B】
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【公開番号】特開2012−21030(P2012−21030A)
【公開日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−225072(P2011−225072)
【出願日】平成23年10月12日(2011.10.12)
【分割の表示】特願2007−248790(P2007−248790)の分割
【原出願日】平成12年9月27日(2000.9.27)
【出願人】(305060279)グラクソスミスクライン バイオロジカルズ ソシエテ アノニム (169)
【出願人】(502111318)グラクソスミスクライン バイオロジカルズ ブランヒ オブ スミスクライン ビーチャム ファルマ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング ウント コンパニー コマンディトゲゼルシャフト (2)
【Fターム(参考)】