説明

新規酵母プロモーター

【課題】誘導活性が強く、最大誘導活性までに要する時間が短く、広範な化合物により誘導され、かつグルコースにより誘導が抑制されにくい酵母プロモーターを提供する。
【解決手段】Candida boidiniiの一菌株のゲノムDNAから、特定の塩基配列またはその相同配列を有するプロモーターを取得した。本プロモーターは広範な炭素源及び窒素源により誘導され、下流に外来遺伝子を含むベクターによって形質転換された酵母を用いることにより、培地の選択範囲が広いことから、効率のよい目的物質の大量生産が可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規プロモーター、詳細には、誘導活性が強く、広範な化合物(C1化合物を包含)に応答する酵母プロモーター、該プロモーターの下流に外来遺伝子を含むベクター、該ベクターにより形質転換された宿主細胞、それらを用いる有用物質の製造方法およびキットに関する。
【背景技術】
【0002】
生物、特に微生物を用いて目的とする物質を大量生産するための種々の技術が開発されている。特に、遺伝子操作技術を用いた微生物による有用物質の大量生産について広く研究され、実施されている。なかでも酵母を用いた物質生産は、発酵食品、例えば、酒類、味噌、醤油、パン等の製造において重要である。それゆえ、種々の酵母プロモーターが開発され、報告されている。
【0003】
例えば、Pichia pastorisのプロモーター(非特許文献1参照)、あるいは本発明とは異なるCandida boidiniiのプロモーター(非特許文献2および3参照)等が報告されているが、いずれも誘導活性が弱く、最大誘導活性までに要する時間が長い、誘導物質(特にC1化合物)の種類が少ない、あるいはグルコースにより誘導が抑制される等の欠点があり、酵母を用いた有用物質の大量生産には不向きであった。
【非特許文献1】Shen et al., Gene 216:93-102 (1998)
【非特許文献2】Yurimoto et al., Biochim Biophys Acta 1493:56-63 (2000)
【非特許文献3】Komeda et al., Mol. Gen. Genet. 270:273-280 (2003)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記事情に鑑みると、本発明の解決課題は、上述のような従来の酵母プロモーターの欠点が解消された新規酵母プロモーターを開発することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは鋭意研究を重ね、酵母カンジダ・ボイジニイ(Candida boidinii)の一菌株から上述のような欠点が解消された新規酵母プロモーターを取得し、本発明を完成するに至った。
【0006】
すなわち、本発明は、
(1)配列番号:1に示す塩基配列またはその相同配列を有するプロモーター;
(2)(1)記載のプロモーターの下流に外来遺伝子を含むベクター;
(3)(2)記載のベクターにより形質転換された宿主細胞;
(4)酵母である(3)記載の宿主細胞;
(5)(3)記載の細胞を培養し、培養物から外来遺伝子によりコードされた有用物質を得ることを特徴とする、有用物質の製造方法;ならびに
(6)(1)記載のプロモーター、(2)記載のベクター、または(3)もしくは(4)記載の宿主細胞を必須成分として含む、外来遺伝子によりコードされた有用物質を製造するためのキット
を提供するものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、誘導活性が強く、最大誘導活性までに要する時間が短く、広範な化合物(C1化合物を包含)により誘導され、かつグルコースにより誘導が抑制されにくい新規酵母プロモーター、該プロモーターの下流に外来遺伝子を含むベクター、該ベクターにより形質転換された宿主細胞、それらを用いる有用物質の製造方法およびキットが提供され、酵母において効率のよい有用物質、例えば蛋白の大量生産が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下に、本発明につきさらに詳細に説明するが、特に断らない限り、本明細書で使用する用語は当該分野にて通常に理解されている意味を有するものとする。
【0009】
本発明は、第1の態様において、配列番号:1(および図1)に示す塩基配列またはその相同配列を有するプロモーターを提供するものである。本発明のプロモーターの塩基配列は、カンジダ・ボイジニイS2株ゲノムDNA中のFLD1蛋白の構造遺伝子の上流に存在するものである。配列番号:1の塩基配列は1465個の塩基からなる。上述のごとく、本発明のプロモーターは配列番号:1に示す塩基配列を有するものであってもよく、その相同配列を有するものであってもよい。ここで、相同配列とは、配列番号:1の塩基配列において1個ないし数個の塩基が欠失、置換、付加、あるいはこれらの組み合わせにより変化している塩基配列をいい、数個とは10個未満、好ましくは5個未満である。さらに、本発明においては、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下において配列番号:1の塩基配列とハイブリダイゼーションしうる塩基配列も相同配列に含まれる。ここで、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件の一例を示す:ハイブリダイゼーションの温度42℃、ハイブリダイゼーションバッファー中のホルムアミド濃度50%以上、洗浄の温度70℃以上、洗浄液の塩濃度0.3X SSC以下。本発明において、配列番号:1の相同配列を有するプロモーターは、配列番号:1の塩基配列を有するプロモーターと同等の活性を保持するものである。
【0010】
本発明のプロモーターは、実施例1に記載のごとく、カンジダ・ボイジニイS2株のゲノムDNAから取得することもできるが、公知の化学合成法により全合成することもできる。
【0011】
本発明のプロモーターの下流に所望の外来遺伝子を連結して、外来遺伝子によりコードされる有用物質、例えば蛋白を高発現させることができる。ここで、「外来遺伝子」とは、本発明のプロモーターが本来制御すべきカンジダ・ボイジニイS2株のFLD1蛋白の遺伝子以外の遺伝子をいう。外来遺伝子はいずれの生物に由来するものであってもよく、1種類であってもよく、2種類以上であってもよい。「有用物質」とは、該所望の外来遺伝子がコードしている蛋白、および該蛋白の作用により生成される種々の物質、例えば香味物質や生理活性物質等であって、製造を目的とされる物質をいう。有用物質の典型例は蛋白である。また、「高発現」とは、その外来遺伝子が本来存在する細胞内で発現されるよりも多く発現されることをいう。公知の方法を用いて、外来遺伝子を本発明のプロモーターの下流に連結することができる。外来遺伝子の高発現のためには、本発明のプロモーターの下流に外来遺伝子を連結した構築物を、遺伝子銃やエレクトロポレーション、あるいは酢酸リチウム法などの公知の方法により宿主細胞に直接導入して発現させてもよいが、一般的には、本発明のプロモーターの下流に外来遺伝子を組み込んだ構築物をベクターに組み込んで、これを宿主細胞に導入して発現させる。
【0012】
したがって、本発明は、第2の態様において、本発明のプロモーターの下流に発現させるべき外来遺伝子を含むベクターを提供するものである。外来遺伝子はいずれのものであってもよく、目的に応じて選択することができる。具体的には、本発明のプロモーター配列は、異種蛋白質の構造遺伝子、および/またはターミネーター配列、選択マーカー遺伝子等とともに適当なベクターの中に挿入され、異種遺伝子発現ベクターとして使用される。使用されるベクターとしては、通常公知のベクターとして知られるpBR系統、pUC系統、pBluescript系統等の大腸菌プラスミドベクターが例示されるが、これらに限定されない。ターミネーター配列、選択マーカー配列は宿主内で機能するものであれば、当業者が容易に決めることができる。
【0013】
さらに、本発明のベクター中にマーカー遺伝子、ターミネーター、エンハンサー、本発明のプロモーター以外のプロモーター等を導入してもよい。これらのものは、宿主や発現させる有用物質の種類、宿主の培養条件等に応じて適宜選択することができ、ベクター中への導入も公知の方法にて行うことができる。
【0014】
本発明のベクターを、種々の方法により宿主細胞に導入して、形質転換することができる。本発明のベクターによる宿主細胞の形質転換法としては、プロトプラスト法、リチウム法、エレクトロポレーション法、カルシウム法等が挙げられる。したがって、本発明は、第3の態様において、本発明のベクターにより形質転換された宿主細胞を提供する。本発明の形質転換宿主細胞は、所望の有用物質、例えば、所望の蛋白を高発現するものであればいずれの細胞であってもよい。宿主細胞としては酵母細胞が好ましく用いられ、特に好ましい酵母宿主細胞としては、カンジダ(Candida)属、ピヒア(Pichia)属の酵母でメタノールに生育するものであり、最も好ましい宿主細胞としてはカンジダ・ボイジニイ(Candida boidinii)S2株(Tani, Y., Y. Sakai, and H. Yamada. 1985. Agric. Biol. Chem. 49:2699-2706)由来の宿主細胞等が挙げられる。
【0015】
本発明は、さらなる態様において、本発明のベクターにより形質転換された宿主細胞を培養し、培養物から外来遺伝子によりコードされた有用物質を得ることを特徴とする、有用物質、例えば、蛋白の製造方法を提供する。宿主細胞の培養条件、例えば、培地の組成、培養温度、培養時間等は、宿主細胞の種類、産生される物質、例えば蛋白の種類や性質その他の因子により、適宜選択することができる。本発明のプロモーターは、幅広い炭素源(C1化合物を包含)により活性が誘導され、しかもグルコースにより誘導が抑制されにくいという特徴を有するので、培地の選択範囲が広く、グルコース添加培地にて菌体を迅速かつ大量に増殖させて目的物質を大量に産生させることができる。得られた培養物をそのまま用いてもよいが、通常には、目的とする有用物質を培養物から単離・精製する。そのための方法も公知である。
【0016】
本発明は、もう1つの態様において、本発明のプロモーター、本発明のベクター、または本発明の宿主細胞を必須成分として含む、外来遺伝子によりコードされた目的物質、例えば蛋白を製造するためのキットを提供する。本発明のキットは、上記必須成分に加えて培養のための装置や器具類、培地の調製のための粉末培地や試薬類、目的物質の単離・精製のための装置や器具類、その他の成分を含んでいてもよい。また、キットには取扱説明書を添付するのが一般的である。
【0017】
以下に実施例を示して本発明をさらに詳細かつ具体的に説明するが、実施例は本発明を限定するものではない。
【実施例1】
【0018】
実施例1−本発明のプロモーターの取得
カンジダ・ボイジニイS2株(Tani, Y., Y. Sakai, and H. Yamada. 1985. Agric. Biol. Chem. 49:2699-2706)のゲノムDNAをEcoRIにて消化し、得られたフラグメントを自己連結させた。
LATaqTMDNAポリメラーゼ(Takara Bio Inc., Kyoto, Japan)、ならびにプライマーPFLD1−1−Fw(CATACTGATGCTTACACATTATCCGGTG;配列番号:2)およびPFLD1−1−Rv(CAATGCTTAAATCTTCACCGGGCTTCC;配列番号:3)を用い、EcoRI消化ゲノムDNAを鋳型として用いて、インバースPCRを行った。インバースPCRの条件は下記のとおりであった:95℃1分変性、50℃30秒アニーリング、72℃5分伸長からなるサイクルを25サイクル。
増幅された2.7kbのフラグメントをpGEM−T Easyベクター(Promega)中にサブクローンし、E. coli DH5α株中に形質転換した。得られた組み換えプラスミドからの1.4kbのSacI消化フラグメントまたは1.8kbのHindIII−SalI消化フラグメントを、pBluescript II KS+(Stratagene)のSacI部位またはHindIII−SalI部位中に連結し、各形質転換体をE. coli DH5α株中に形質転換して組み換えプラスミドを得て、それぞれ、pPFLD1SacおよびpPFLD1HSalと命名した。
BigDye(登録商標)Terminator v3.1 Cycle Sequencing kitおよびABI PRISMTM377 DNAシーケンサー(Applied Biosystems, Foster, CA, USA)を用いるジデオキシサイクル配列決定法により、これらのDNAフラグメントを配列決定した。
【0019】
ExTaqTMDNAポリメラーゼ(Takara Shuzo Co., Ltd., Kyoto, Japan)、ならびにプライマーPFLD1Not−Fw(GCGGCCGCTCTAAGTTTTAATCTTACAAACAAACGAC;配列番号:4)およびPFLD1Bgl−Rv(AGATCTTTTTGTGGAATAAAAAATAGATAAATATGATTTAGTG;配列番号:5)を用い、プラスミドpPFLD1HSalを鋳型として用いてPCRを行って、PFLD1(FLD1プロモーターを含む)をコードするDNAフラグメントを得た。用いたフォワードプライマーは5’末端にさらなるNotI部位を有しており、リバースプライマーは3’部位にBglII部位を有し、ベクターのNotIおよびBamHI消化部位と連結するようになっていた。PCR反応を下記条件下で行った:95℃1分変性、54℃30秒アニーリング、72℃で1.5分伸長からなるサイクルを25サイクル。
増幅されたフラグメントをpGEM−T Easyベクターに挿入してpPFLD1を得て、塩基配列を決定した。配列番号:1および図1に示すように、本発明のFLD1プロモーターの1465bpからなる塩基配列が決定された。
【実施例2】
【0020】
実施例2−本発明のプロモーターの評価系の確立
pPFLD1をNotIおよびBglIIで消化し、FLD1プロモーターを含むフラグメントをアガロースゲルにて精製した。
pPAT(ScPHO5遺伝子の1.5kbのBamHI−SpeIフラグメントおよびAOD1ターミネーターの0.5kbのSpeI−HindIIIフラグメントをpBluescript II SK+中に含む)(Yurimoto et al., Biochim. Biophys. Acta. 1493:56-63 (2000))をXhoIで消化し、平滑末端化し、CbURA3遺伝子の1.9kbのBamHI−PstI平滑末端化フラグメント(Sakai et al., J. Bacteriol. 173:7458-7463 (1991))と連結して、pPATU1を得た。
pPATU1をNotIおよびBamHIで消化し、得られた6.8kbのフラグメントを精製した。FLD1プロモーターを含むNotI−BglI消化フラグメントを、NotI−BamHIで消化されたpPATU1と連結して、pFLPUを得た。
NcoIを用いてpFLPUを直鎖状にし、カンジダ・ボイジニイTK62株(ura3)およびaodIΔura3株の染色体DNAのura3遺伝子座中に移し、Ura+形質転換体を単離した。
形質転換体の試験は、カンジダ・ボイジニイURA3遺伝子をプローブとして用いて、HindIIIにより消化された染色体DNAに関してサザン分析を行った。
CbURA3の1.9kbのBamHI−PstIフラグメントをプローブとして用いたHindIIIにより消化された染色体DNAに関するサザン分析により、染色体DNAのura3遺伝子座にプラスミドがシングルコピーで組み込まれたことが示された形質転換体(FLP株)を単離した。
【0021】
上記のごとく得られたカンジダ・ボイジニイ形質転換体をYPD培地で8〜10時間前培養し、その後、氷冷した蒸留水で2回洗浄し、炭素源および窒素源、および/またはホルムアミド(誘導物質として)、および必要ならば0.5%酵母エキスを含有するBM培地にて、610nmにおける光学密度(OD610)が0.05または1.0から培養を開始した。
BM培地は2.81gのKHPO、0.59gのMgSO・7HO、55mgのCaCl・2HO、37.5mgのFeCl・6HO、0.45gのEDTA・2Na、10mlの金属溶液および1mlのビタミン溶液を、1000mlの蒸留水に溶解したものであった。金属溶液は0.85gのMnSO・3HO、1.1gのZnSO・7HO、0.2gのCuSO・5HO、0.14gのCoCl・2HO、0.2gのHBO、0.03gのKIを500mlの蒸留水に溶解したものであった。ビタミン溶液は5mgのビオチンおよび500mgのチアミンを100mlの蒸留水に溶解したものであった。
下記の化合物をBM培地中の窒素源および炭素源として、あるいはプロモーターの誘導物質として用いた:0.7%(v/v)メタノール、3%(v/v)グリセロール、2%(w/v)グルコース、0.76%(w/v)塩化アンモニウム、0.5%(w/v)塩酸メチルアミン、0.5%(w/v)塩化コリン、および/または1mM ホルムアミド。BM培地の初期pHを6.0に調節した。
細胞をBM培地で培養し、対数増殖期の中期(OD610が0.3ないし0.5)あるいは4時間または8時間培養後に細胞を収集し、50mMの酢酸バッファー(pH4.0)で洗浄し、次いで、適当量の50mM酢酸バッファー(pH4.0)に懸濁した。
以下の実験において、細胞の酸性ホスファターゼ活性を指標に、本発明のプロモーターの活性を調べた。酸性ホスファターゼ活性の測定は、Torrianiらの方法(Torriani et al., Biochim. Biophys. Acta. 38:460-479)によった。酸性ホスファターゼ活性1ユニット(U)は、1分間に1ナノモルのp−ニトロフェノールを遊離する酵素量とした。
【実施例3】
【0022】
実施例3−本発明のプロモーターの評価
(a)本発明のプロモーター活性の経時変化
炭素源として0.7%メタノールを添加したBM培地で培養した場合の酸性ホスファターゼ活性の経時変化を、本発明のFLD1プロモーターを有するFLP株、およびAOD1プロモーターを有するAP株(Yurimoto et al., Biochim Biophys Acta 1493:56-63 (2000))に関して調べ、比較した。結果を図2に示す。本発明のFLD1プロモーターはAOD1と比較して1.5〜2倍強力であり、最大活性に至るまでの時間も短く(FLD1の場合約10時間であるのに対し、AOD1の場合24時間またはそれ以上)、メタノール応答性に優れていることが示された。
【0023】
(b)各種炭素源、窒素源の本発明のプロモーター活性に対する影響
上記の各種炭素源、窒素源をBM培地に添加して対数増殖期の中期(OD610が0.3ないし0.5)まで培養し、酸性ホスファターゼ活性を、本発明のFLD1プロモーターを有するFLP株、およびDAS1プロモーターを有するDP株(Yurimoto et al., Biochim Biophys Acta 1493:56-63 (2000))に関して調べ、比較することにより、プロモーター活性の強さを比較した。結果を図3に示す。本発明のFLD1プロモーターは、広範な炭素源(C1化合物を包含)および窒素源により誘導された。本発明のFLD1プロモーターは、炭素源としてメタノールを用いた場合に活性の上昇が顕著で、次いで、炭素源としてグリセロールを用いた場合に活性が高い傾向を示した。これに対し、DAS1プロモーターはメタノール/塩化アンモニウム、グリセロール/メチルアミンおよびグリセロール/コリンの3種を培地に添加した場合にのみ活性が見られた。しかも、グリセロール/メチルアミンおよびグリセロール/コリンを培地に添加した場合の活性は非常に低かった。さらに、本発明のFLD1プロモーターは、グルコースを培地に添加した場合にも活性が見られた(特にグルコース/コリンを添加した場合)。一方、DAS1プロモーターはグルコース添加系では活性が全く見られなかった。このことは、本発明のプロモーターはグルコースにより誘導が抑制されにくいという特徴を有するので、培地の選択範囲が広く、グルコース添加培地にて菌体を迅速かつ大量に増殖させて目的物質の大量生産が可能であることを示す。
【0024】
配列表フリーテキスト
配列番号:1は本発明のFLD1プロモーターの塩基配列を示す。
配列番号:2は本発明のFLD1プロモーターを得るためのインバースPCR用プライマーPFLD1−1−Fwの塩基配列を示す。
配列番号:3は本発明のFLD1プロモーターを得るためのインバースPCR用プライマーPFLD1−1−Rvの塩基配列を示す。
配列番号:4は本発明のFLD1プロモーターを得るためのPCR用プライマーPFLD1Not−Fwの塩基配列を示す。
配列番号:5は本発明のFLD1プロモーターを得るためのPCR用プライマーPFLD1Bgl−Rvの塩基配列を示す。
【産業上の利用可能性】
【0025】
本発明によれば、新規酵母プロモーターが提供され、酵母を用いて効率よく蛋白を大量生産することができるので、本発明は、食品や医薬品等の分野において利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】図1は本発明の新規酵母プロモーターの塩基配列を示す。
【図2】図2は本発明の新規酵母プロモーター活性の経時変化を示す図である。
【図3】図3は各種炭素源、窒素源の本発明の新規酵母プロモーター活性に対する影響を示す図である。MeOHはメタノール、Glucはグルコース、Glyはグリセロール、NHClは塩化アンモニウム、Cholはコリン、MAはメチルアミン、FAはホルムアミドを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号:1に示す塩基配列またはその相同配列を有するプロモーター。
【請求項2】
請求項1記載のプロモーターの下流に外来遺伝子を含むベクター。
【請求項3】
請求項2記載のベクターにより形質転換された宿主細胞。
【請求項4】
酵母である請求項3記載の宿主細胞。
【請求項5】
請求項3記載の細胞を培養し、培養物から外来遺伝子によりコードされた有用物質を得ることを特徴とする、有用物質の製造方法。
【請求項6】
請求項1記載のプロモーター、請求項2記載のベクター、または請求項3もしくは4記載の宿主細胞を必須成分として含む、外来遺伝子によりコードされた有用物質を製造するためのキット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−49963(P2007−49963A)
【公開日】平成19年3月1日(2007.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−238877(P2005−238877)
【出願日】平成17年8月19日(2005.8.19)
【出願人】(504132272)国立大学法人京都大学 (1,269)
【Fターム(参考)】