説明

新規7β−ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼおよびその使用

本発明は、Collinsella属のバクテリア、特にCollinsella aerofaciens株から得られる新規な7β−ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼと、前記酵素をコードする配列と、前記酵素を製造する方法と、コール酸化合物の酵素変換、特にウルソデオキシコール酸(UDCA)の製造におけるそれらの使用に関する。本発明は新規なUDCAの合成方法にも関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、Collinsella属のバクテリア、特にCollinsella aerofaciens株から得ることができる新規7β−ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼ、これらの酵素をコードする配列、該酵素の生産、およびコール酸化合物の酵素変換における該酵素の使用、特にウルソデオキシコール酸(UDCA)の製造における該酵素の使用に関し、また本発明の主題はUDCAの合成のための新規な方法である。
【背景技術】
【0002】
活性物質ウルソデオキシコール酸(UDCA)および対応するジアステレオマーであるケノデオキシコール酸(CDCA)は、胆石問題の薬剤処置のために長年使用されて来た。この二つの化合物は、7位の炭素原子上のヒドロキシ基の配位のみにおいて異なる(UDCA:β配位、CDCA:α配位)。UDCAの生産のため先行技術には種々の方法が記載されており、これらは純粋に化学的に実施されるか、または化学的および酵素的プロセスステップの組合わせよりなる。どの場合でも出発点はコール酸(CA)かまたはコール酸から製造されたCDCAである。
【0003】
このようにUDCA製造のための古典的化学的方法は以下のように概略的に表すことができる。
CA→CAメチルエステル→3,7−ジアセチル−CAメチルエステル→12−ケト−3,7−ジアセチル−CAメチルエステル→CDCA→7−ケト−LCA→UDCA
重大な欠点は、化学的酸化は選択的でないため、カルボキシ基と、3αおよび7α−ヒドロキシ基をエステル化によって保護しなければならないことである。
【0004】
酵素12α−ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼ(12α−HSDH)の使用に基づく代替的化学的/酵素的方法は次のように表わすことができ、そして例えば出願人のPCT/EP2009/002190に記載されている。
CA→12−ケトCDCA→CDCA→7−ケト−LCA→UDCA
ここで12α−HSDHはCAを12−ケトCDCAへ選択的に酸化する。古典的な化学的方法により必要な二つの保護ステップはこれによって不必要になる。
【0005】
さらにMonti,D.,et al.,(One−Pot Multienzymatic Synthesis of 12−Ketoursodeoxycholic Acid:Subtle Cofactor Specificities Rule the Reaction Equilibria of Five Biocatalysts Working in a Row; Advanced Synthesis & Catalysis,2009)は、代替的酵素−化学的方法を記載し、これは以下のように概略的に表すことができる。
CA→7,12−ジケトLCA→12−ケトUDCA→UDCA
【0006】
CAは、7,12−ジケトLCAへBacteroides fragilis ATCC25285からの7α−HSDH(Zhu,D.,et al.,Enzymatic enantioselective reduction of −ketoesters by a thermostable 7−hydroxysteroid dehydrogenase from Bacteroides fragilis; Tetrahedron,2006,62(18):p.4535−4539)と、12α−HSDHによって最初に酸化される。これら二つの酵素は各自NADH依存性である。Clostridium absonum ATCC 27555(DSM599)からの7β−HSDH(NADPH依存性)(MacDonald,I.A.and P.D.Roach,Bile induction of 7−alpha−and 7−beta−hydroxysteroid dehydrogenases in Clostridium absonum;Biochim Biophys Acta, 1981,665(2):p.262−9)による還元後に12−ケトUDCAが生成する。最終生成物はWolff−Kishner還元によって得られる。この方法の欠点は、触媒反応の平衡位置のため完全変換が不可能なこと、および変換の最初のステップのため二つの異なる酵素を使用しなければならず、これは操作コストを増加させることである。助因子再生のため、ラクテートデヒドロゲナーゼ(NADの再生のためのLDH)およびグルコースデヒドロゲナーゼ(NADPHの再生のためのGlcDH)が使用される。ここで使用される助因子再生における欠点は、生成した同時生産物を反応混合物から除去するのが非常に困難で、そのため反応平衡を有利に影響させることができず、原料の不完全変換となる。
【0007】
Collinsella aerofaciens ATCC25986(DSM3979;以前Eubacterium aerofaciens)株からの7β−HSDHがHiranoおよびMasudaによって1982年に記載された(Hirano,S.and N.Masuda,Characterization of NADP−dependent 7−beta−hydroxysteroid dehydrogenases from Peptostereptococcus products and Eubacterium aerofaciens, Appl Environ Microbiol,1982,45(5):p.1057−63)。この酵素の配列情報は開示されていない。ゲル濾過によって決定された分子量は45,000Daであった(Hirano,1059頁左欄を見よ)。さらにこの酵素では7−オキソ基の7β−ヒドロキシ基への還元は観察されなかった(Hirano,1061頁議論第1パラグラフを見よ)。同様に、Hirano et al.はNADPについてのみKおよびVmax値を記載し(それぞれ0.4および0.2)、しかしNADPHについては記載していない。このため当業者は、Hirano et al.によって記載された酵素は7位においてDHCAの3,12−ジケト−7β−CAへの還元の触媒には不適当であることを認識する。
【0008】
Collinsella aerofaciens ATCC25986のゲノムは2007年にすでに配列決定されていたが、その中の解析された配列モチーフのどれも、酵素ファミリーHSDH酵素群が属する可能性ある短鎖デヒドロゲナーゼへ帰属させることはできなかった。
【0009】
Biotechnology Letters 1992,14,12,1131−1135において、Carrea et al.は富化した7β−HSDHおよび3α−HSDHを使ってCAからのUDCAの製造方法を記載する。しかしながらこの方法の欠点は、病原性微生物Clostridium absonumからの7β−HSDHの使用と、そして望まない7α−HSDH活性を余分に有するバクテリア抽出物からの酵素を調製的に精製する必要性である。
【0010】
このため本発明の目的は、前述の欠点を回避するUDCAの新規な製造方法の提供である。特に、3,12−ジケト−7β−CAへ7位においてDHCAの立体特異性還元触媒を提供する新規な酵素を提供しなければならない。
【0011】
さらなる目的は、例えばUDCAの製造に使用することができ、特に7位におけるコール酸誘導体の立体およびエナンチオ選択的酸化/還元を触媒する新規な7β−HSDHの提供にある。
【発明の概要】
【0012】
驚くべきことに、これらの課題はCollinsella属の好気性バクテリア、特にColinsella aerofaciens株からの新規な位置および立体特異性7β−HSDHの単離およびキャラクタリゼーションと、そしてコール酸化合物の変換、特にUDCAの製造におけるその使用を通じて解決することができた。
【0013】
本発明によれば、UDCA製造のための新規な方法が特に提供され、該方法は概略的に以下のように表すことができる。
CA→DHCA→12−ケトUDCA→UDCA
ここでCAの酸化は古典的な化学的方法で簡単に実施される。DHCAは7β−HSDHおよび3α−HSDHにより個々にまたは順次または同時に12−ケトUDCAへ還元される。Wolff−Kishner還元と組合わせて、UDCAはこのようにCAからたった3工程で合成することができる。
【0014】
ここでの利益は、この酵素反応は高い転換を可能にし、高い選択性を示し、そして副生物を生成しないことである。組換え生産された酵素7β−HSDHおよび3α−HSDHは、驚くほど有利にUDCAの大規模生産を可能にする。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】図1aはCollinsella aerofaciensからの7β−HSDHのアミノ酸配列を示し、図1bは、図1aのアミノ酸配列をコードする核酸配列を示す。図1cはComanomonas testosteroniからの3α−HSDHのアミノ酸配列を示し、図1dは図1bのアミノ酸配列をコードする核酸配列を示す。図1eはRuttus norvegicusからの3α−HSDHのアミノ酸配列を示し、図1fは図1eのアミノ酸配列をコードする核酸配列を示す。
【図2】図2は本発明に従って調製した精製7β−HSDHのSDSゲルを示し、トラック1は精製細胞抽出物、トラック2は精製したタンパク質、トラックMはPage RoulerTM、 分子量マーカー(Fermentas,ドイツ)である。
【図3】図3は、Collinsella aerofaciens DSM3979から本発明に従って調製された7β−HSDHと、選択されたHSDHタンパク質の配列アラインメントを示す。配列中の保存された残基を目立たせてある。以下の配列寄託番号が適用される。Homosapiensからの11β−HSDH:ジーンバンクNP−005516;Musmusculusからの11β−HSDH:ジーンバンクNP−001038216;Cavia porcellusからの11β−HSDH:ジーンバンクAAS47491;Brucellamelitensisからの7α−HSDH:ジーンバンクNP−698608;Escherichia coliからの7α−HSDH:ジーンバンクNP−288055;Clostridium sordelliからの7α−HSDH:ジーンバンクP50200;Streptomyces exfolitesからの3α/20β−HSDS:スイスポートP19992;Comamonas testoseroniからの3β/11β−HSDH:ジーンバンクAAA25742;Pseudomonas sp.からの3α−HSDH:ジーンバンクBAA08861;Comamonas testosteroniからの3α−HSDH:ジーンバンクYP−003277364;Homo sapiensからの17β−HSDH:ジーンバンクNP−000404;Sus scrofaからの20β−HSDH:ジーンバンクNP−999238。Homo sapiensからの17β−HSDHの最後の17アミノ酸およびSus scorfaからの20β−HSDHの最後のアミノ酸は、それらから追加のアライメント情報が誘導されないのでアライメント中に示さない。
【図4】図4は、HSDHタンパク質配列のアライメントをベースにした樹状図を示し、選んだHSDHタンパク質間の類縁関係を示す。
【図5】図5は、本発明に従った7β−HSDHの活性に対するpHの影響を示す。以下のテスト条件が使用された。50mMリン酸カリウム中pH4ないし7;50mM Tris−HCl中pH7ないし9、および50mMグリシン−NaOH中pH9ないし11;すべて23℃。50mMグリシン−NaOH中pH9ないし11におけるDHCAおよび7−ケト−LCAの活性値は重複する。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の特定具体例
1.好気性バクテリア、特にCollinsella aerofaciens DSM3979(ATCC25986)株のようなCollinsella属から得ることができる7β−ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼ(7β−HSDH)およびそれから誘導される機能性均等物:
本発明に従ってCollinsella aerofaciens DSM3979から得ることができる7β−HSDHは、特に以下の性質の少なくとも一つ、例えば2,3,4,5,6または7、またはこれら性質のすべてによって特徴化される。
a)分子量(SDSゲル電気泳動)約28−32kDa、特に約29〜31kDaまたは約30kDa。
b)分子量(特にSDSなしのような非変性条件下でのゲル濾過)約53ないし60kDa,特に約55ないし57kDa,例えば約56.1kDa:これによって本発明に従った酵素は、Hirano et al.(前出)によって記載されたC.aerofaciens ATCC25986からの45kDaの7β−HSDHと明らかに異なる。これはCollinsella aerofaciens DSM3979からの7β−HSDHのダイマー性格(4重構造)を確認する。
c)7−ケトLCAの7−カルボニル基の7β−ヒドロキシ基への立体選択的還元:
d)pH8.5ないし10.5、特に9ないし10の範囲のUDCAの酸化のためのpH最適条件。
e)pH3.5ないし6.5、特にpH4ないし6の範囲のDHCAおよび7−ケトLCAの還元のためのpH最適条件、これによりpHの選択により酸化プロセス(特徴d)の)および還元プロセスに影響を与える驚くべき可能性がある。
f)下表に特定的に示したそれぞれの値を中心にして±20%、特に±10%、±5%、±3%、±2%または±1%の範囲内の下表に示した物質/助因子の少なくとも一つに対する下表からの少なくとも一つの動力学的パラメータ。
【0017】
【表1】

a)非常に低い活性のため測定できなかった。
b)1U=1μmol/min
c)これにより本発明に従った酵素は、明らかに低いKおよびVmax値(それぞれ0.4および0.2)が記載され、そしてNADPHに対する活性が測定されなかったHirano et al.によるC.aerofaciens ATCC25986からの7β−HSDH酵素(前出)とは明らかに異なる。
g)Cavia porcellus,Homo sapiensおよびMus musulusを含む動物11β−HSDHに対するCollinsella aerofaciens DSM3979からの原核性7β−HSDHの系統学的類縁性。
本発明に従った7β−HSDHは、例えば以下の性質または性質の組合わせを示す。
a);b);a)とb);a)および/またはb)およびc);a)および/またはb)およびc)およびd);a)および/またはb)およびc)およびd)およびe);a)および/またはb)およびc)およびd)およびe)およびf)。
【0018】
2.Hirano et al.によって記載されたC.aerofaciens ATCC25986からの7β−HSDH(前出)と異なって、
a)7−ケトステロイドを対応する7β−ヒドロキシステロイドへの立体特異的還元(水素化)、および/または
b)7位にケト基と、そしてステロイド骨格上に少なくとも一つのさらなるケト基を含んでいるケトステロイドの対応する7β−ヒドロキシステロイドへの位置特異性水素化(還元)、特にデヒドロコール酸(DHCA)において例えばNADPH依存性である7位のケト基の対応する3,12−ジケト−7β−コラン酸への位置特異性還元を触媒する、具体例1で述べた7β−HSDHまたはその機能的均等物。
【0019】
3.配列同定No.2(アクセッションNo.2P01773061)に従ったアミノ酸配列を有する7β−HSDH、またはこの配列に対し少なくとも60%、例えば少なくとも65,70,75,80,85または90%、例えば少なくとも91,92,93,94,95,96,97,98,99または99.5%の同一度を有し、任意に上の定義に従った性質または性質の組合わせa);b);a)とb);a)および/またはb)およびc);a)および/またはb)およびc)およびd);a)および/またはb)およびc)およびd)およびe);a)および/またはb)およびc)およびd)およびe)およびf)によって付加的に特徴化される、それらから誘導される配列。
【0020】
4.例えば配列同定No.1(アクセッションNo.N2 AAVN02000010、領域52005..52796)のような前の具体例の一つで述べた定義に従った7β−HSDHをコードする核酸配列。
【0021】
5.少なくとも一つの制御核酸配列の遺伝子コントロールのもとにある、具体例4で述べた核酸配列を含む発現カセット。
【0022】
6.具体例5で述べた少なくとも一つの発現カセットを含むベクター。
【0023】
7.具体例4で述べた少なくとも一つの核酸配列、または具体例5で述べた少なくとも一つの発現カセットを有し、または具体例6で述べた少なくとも一つのベクターで形質転換された微生物。
【0024】
8.具体例7で述べた微生物を培養し、発現された7β−HSDHが培養物から単離される、具体例1ないし3の少なくとも一つに述べた7β−HSDHの生産方法。
【0025】
9.具体例1ないし4の一つの定義に従った7β−HSDHの存在下、対応する7−ケトステロイドが変換され、そして生成した少なくとも一つの還元生成物が任意に反応システムから単離される、7β−ヒドロキシステロイドの酵素合成方法。
【0026】
10.還元されるケトステロイドが、
デヒドロコール酸(DHCA),
7−ケト−リトコール酸(7−ケトLCA).
7,12−ジケトリトコール酸(7,12−ジケトLCA)、および特に酸の塩、アミドまたはアルキルエステルのようなそれらの誘導体から選ばれる、具体例9に述べた方法。
【0027】
11.DHCAまたはその誘導体が3,12−ジケト−7β−コラン酸または対応する誘導体へ変換される、または
7−ケトLCAまたはその誘導体がウルソデオキシコール酸または対応する誘導体へ変換される、または
7,12−ジケトLCAまたはその誘導体が12−ケト−ウルソデオキシコール酸(12−ケトUDCA)へ変換される、具体例10に述べた方法。
【0028】
12.還元はNAD(P)Hの存在下(かつ消費を伴って)生起する、具体例9ないし11の一つに述べた方法。
【0029】
13.具体例1ないし3の一つの定義に従った7β−ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼの存在下、ヒドロキシステロイドが反応させられ、そして生成した酸化生成物が任意に反応システムから単離される、7β−ヒドロキシステロイドの酵素酸化方法。
【0030】
14.7β−ヒドロキシステロイドが、3,12−ジケト−7β−CAまたは特に塩、アミドまたはアルキルエステルのようなその誘導体である、具体例13に述べた方法。
【0031】
15.酸化はNAD(P)の存在下(かつ消費を伴って)生起する、具体例13および14の一つに述べた方法。
【0032】
16.消費したレドックス均等物が特にその場で電気化学的にまたは酵素的に再生される、具体例12および15の一つで述べた方法。
【0033】
17.消費したNAD(P)HがNAD(P)Hデヒドロゲナーゼから選ばれたNAD(P)H−再生酵素、特にアルコールデヒドロゲナーゼ(ADH)との組合わせにより、特にその場で再生される、具体例16で述べた方法。
【0034】
18.NAD(P)H再生酵素が天然または組換えた単離されたまたは富化された、
a)アルコールデヒドロゲナーゼ(ADH;EC1.1.1.2)および
b)その機能的均等物(特に機能性ドメイン)から選ばれる、具体例17で述べた方法。
【0035】
19.式(1)
【化1】

(ここでRはアルキル、NR,H,アルカリ金属イオンまたはN(Rであり、残基Rは同一または異なってHまたはアルキルを意味する。)のウルソデオキシコール酸(UDCA)の製造方法であって;
a)任意に式(2)のコール酸を、
【化2】

(ここでRは前記の意味を有する。)を式(3)のデヒドロコール酸(DHCA)
【化3】

(ここでRは前記の意味を有する。)へ化学的に酸化し;
b)具体例1ないし3の一つの定義に従った7β−HSDHの少なくとも一つの存在下、DHCAを式(4)の3,12−ジケト−7β−コラン酸(3,12−ジケト−7β−CA)
【化4】

へNADPH依存的に還元し;
c)3α−ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼ(3α−HSDH)の存在下、3,12−ジケト−7β−CAを式(5)の対応する12−ケト−ウルソデオキシコール酸(12−ケト−UDCA)
【化5】

(ここでRは前記の意味を有する。)へNADPH依存的にまたはNADH依存的に(使用した3α−HSDHのタイプに依存して)還元し;そして次に
d)式(5)の12−ケト−UDCAをUDCAへ化学的に還元し;そして次に
e)反応生成物を任意にさらに精製する;
方法。
【0036】
20.ステップb)および/またはステップc)が還元均等物(NADPHおよび/またはNADH)の存在下に実施される、具体例19で述べた方法。
【0037】
21.ステップb)および/またはステップc)が(特に酵素的な)助因子再生ステップと組合わされる、具体例19および20で述べた方法。
【0038】
22.ステップb)が助因子再生ステップと特にその場で組合わされ、その中でNADPHが犠牲的なアルコール(特にイソプロパノールとアセトンの生成)の消費を伴ってアルコールデヒドロゲナーゼ(ADH)によって再生され、そして任意に反応平衡からアセトンの除去が促進される(例えば昇温により)、具体例21で述べた方法。
【0039】
23.ステップc)が助因子再生ステップと特にその場で組合わされ、その中で使用した3α−HSDHのタイプに応じ、ホルメートの消費(およびCOガスの生成)を伴ってホルメートデヒドロゲナーゼ(FDH)によって再生され、またはNADPHが犠牲的なアルコール(特にイソプロパノールとアセトンの生成)の消費を伴ってアルコールデヒドロゲナーゼ(ADH)によって再生され、そして任意に反応平衡からアセトンの除去が促進される(例えば昇温により)、具体例21または22で述べた方法。
【0040】
24.反応が固定化された形の関与する酵素の少なくとも一つで実施される、具体例8ないし23の一つで述べた方法。
【0041】
25.固定化された形の具体例1ないし3の一つで述べた7β−ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼを含んでいるバイオリアクター。
本発明のさらなる具体例
1.一般的定義および使用した略号
下表に、表の形で構造式、その化学名および使用した略号を要約する。
【表2】



【0042】
他に記述しない限り、用語“7β−HSDH”は、特にNADPHの化学量論的消費を伴ってDHCAの3,12−ケト−7βCAへの立体特異性および位置特異性還元と、任意に対応する逆反応を少なくとも触媒するデヒドゲナーゼ酵素を指す。この酵素は天然のまたは組換え生産された酵素であることができる。原則としてこの酵素は、例えばタンパク質不純物のような細胞不純物と混合して存在するが、しかし好ましくは純粋形である。好適な検出方法は、例えば後記実験の部に記載されており、または文献(例えばCharacterization of NADP−Dependent 7β−hydroxygenases from Peptostreptococcus productus and Eubacterium aerofaciens;S.Hirano and N.Masuda,Appl.Environ Microbiol.1982;しかしながら、7−ケト基の還元を触媒するEubacterium aerofaciensからの7β−HSDHは検出できなかった。)から公知である。この活性を有する酵素はECNo.1.1.1.201として分類されている。
【0043】
他に記述しない限り、用語“3α−HSDH”は、特にNADHおよび/またはNADPHの化学量論的消費を伴って3,12−ジケト−7βCAの12−ケト−UDCAへの立体特異性および位置特異性還元と、任意に対応する逆反応を少なくとも触媒するデヒドロゲナーゼ酵素を指す。好適な検出方法は、例えば後記実験の部に記載されており、または文献から公知である。好適な酵素は、例えばComanonas testosteroni(例えばATCC11996)から得ることができる。例えばNADPH依存性3α−HSDHはネズミから得られ、使用し得る(Cloning and sequencing of the cDNA for rat liver 3−alpha−hydroxysteroid/dihydrodiol dehydrogenase,J.E.Pawlowski,M.Huizinga and T.M.Penning, May 15,1991,The Journal of Biological Chemistry,266,8820−8825)。この活性を有する酵素はECNo.1.1.1.50のもとに分類されている。
【0044】
本発明に従えば、“純粋形”または“純粋”または“本質的に純粋”な酵素とは、例えばビウレット法またはLowreyらの方法に従ったタンパク検出方法(R.K.Scopes,Protein Purification,Spring Verlag,New York,Heiderberg,Berlin(1982)を見よ)のような通常のタンパク検出方法によって決定し、全タンパク質の80%以上、好ましくは90%以上、特に95%以上、そして99%以上の純度を有する酵素を意味するものと理解すべきである。
【0045】
“レドックス均等物”とは、例えばNADおよびNADHのようなニコチンアミド誘導体、またはその還元形であるNADHおよびNADPHのような電子供与体または電子受容体として使用し得る小分子有機化合物を意味するものと理解すべきである。
【0046】
本発明に従えば、“コール酸化合物”とは、コール酸の基本炭素骨格、特にステロイド構造を有し、環位置7および任意に環位置3および/または12にケトおよび/またはヒドロキシもしくはアシルオキシ基が存在する化合物を意味するものと理解すべきである。
【0047】
例えば“コール酸化合物”または“ウルソデオキシコール酸”のような特定タイプの化合物は、出発化合物(例えばコール酸またはウルソデオキシコール酸のような)の誘導体をも意味するものと理解すべきである。
【0048】
そのような誘導体は、例えば化合物のリチウム、ナトリウムおよびカリウム塩のようなアルカリ金属塩、およびアンモニウム塩のような“塩”を含む。ここでアンモニウム塩はNH塩、および少なくとも1個の水素原子をC−Cアルキル基で置換したアンモニウム塩を含む。典型的なアルキル基は、メチル、エチル、n−またはi−プロピル、n−,sec−またはtert−ブチル、n−ペンチル、n−ヘキシルおよび1回または複数回分岐したそれらの類縁体である。
【0049】
本発明に従った“アルキルエステル”化合物は、例えばC−Cアルキルエステルのような低級アルキルエステルである。非限定的な例として、メチル、エチル、n−またはi−プロピル、n−,sec−またはtert−ブチルエステル、または例えばn−ペンチルおよびn−ヘキシルエステルおよびその1回または多数回分岐類縁体を挙げることができる。
【0050】
“アミド”は、アンモニアまたは1級もしくは2級アミンによる、本発明に従った酸の変換生成物である。そのようなアミンは、例えばモノ−またはジ−C−Cアルキルアミンであり、アルキル基は相互に独立し例えばカルボキシ、ヒドロキシ、ハロゲン(F,Cl,BrまたはIのような)、ニトロおよびスルホネート基で任意にさらに置換されることができる。
【0051】
本発明に従った“アシル基”は、例えばアセチル、プロピオニルおよびブチリルのような炭素原子2ないし4個を有する非芳香基、および任意に置換された単環芳香環を有する芳香族基であり、ここで好適な置換基は、例えば、ヒドロキシ、ハロゲン(F,Cl,BrまたはIのような)、ニトロ、例えばC−Cアルキル基であり、例えばベンゾイルまたはトルオイル基である。
【0052】
例えばコール酸、ウルソデオキシコール酸、12−ケト−ケノデオキシコール酸、ケノデオキシコール酸および7−ケト−リトコール酸のような本発明に従って使用され、または生産されるヒドロキシステロイド化合物は、立体異性的に純粋な形か、または他のまたはそれから得ることができる他の立体異性体との混合物の形で本発明方法に使用することができる。しかしながら好ましくは、使用または製造される化合物は、本質的に立体異性的に純粋な形で使用または単離される。
【0053】
本発明に従えば、“固定化”とは、例えば7β−HSDHのような本発明に従った生触媒を固体、例えば周囲の液体媒体に本質的に不溶な支持体へ共有または非共役的に結合することを意味するものと理解される。
【0054】
2.タンパク質
本発明は、7β−HSDH活性または3α−HSDH活性を有する特定的に記載したタンパク質または酵素に制限されず、むしろその機能的均等物にも及ぶ。
【0055】
本発明の文脈において、特定的に記載された酵素の“機能的均等物”または類縁体は、それとは異なり、さらに例えば7β−HSDH活性を有するポリペプチドである。
【0056】
このため例えば“機能的均等物”とは、使用した17β−HSDH試験において、ここに規定したアミノ酸配列を含む酵素の活性よりも少なくとも1%、例えば少なくとも10%または20%、例えば少なくとも50%または70%または90%高いまたは低い活性を持つことを意味する。これとは別に、機能的均等物は、好ましくは、pH4と11の間で安定であり、そして有利にはpH4ないし6またはpH6ないし10、例えば、8.5ないし9.5の範囲に最適pHを有し、そして15℃ないし80℃、または15℃ないし40℃、20℃ないし30℃、または例えば約45℃ないし60℃または約50℃ないし55℃のような20℃ないし70℃に最適温度を有する。
【0057】
7β−HSDH活性は、種々の既知のテストによって検出することができる。限定するものではないが、例えばCAまたはDHCAのような参照物質を使用し、実験の部に規定した標準化条件下でのテストを挙げることができる。
【0058】
本発明に従い、“機能的均等物”とは、前述のアミノ酸配列の少なくとも一つの配列位置において特定的に名を挙げた以外のアミノ酸を有し、しかしながら前述した生物学的活性の一つを有する“突然変異体”をも含む。このように“機能的均等物”は、一以上、例えば、1,2,3,4,5,6,7,8,9,10,11,12,13,14または15のアミノ酸の付加、置換、欠失および/または逆位によって得ることができる突然変異体を含み、そのような変化はそれらが本発明に従った性質プロフィルを有する突然変異体へ導く限り、どの配列位置でも起こることができる。特に突然変異体と未変化ポリペプチドの間の反応パターンが定性的に一致する時、すなわち例えば同じ基質が異なる速度で変換される時にも機能的均等物が存在する。好適なアミノ酸置換の例は以下の表に要約されている。
【0059】
【表3】

【0060】
上の意味で“機能的均等物”は記載したポリペプチドおよび機能的均等物の“前駆体”および該ポリペプチドの“塩”でもある。
【0061】
ここで“前駆体”は、所望の生物学的活性有り無しのポリペプチドの天然または合成前駆体である。
【0062】
表現“塩”は、本発明に従ったタンパク分子のカルボキシル基の塩およびアミノ基の酸付加塩の両方を意味する。カルボキシル基の塩は公知の態様で調製することができ、そして例えば、ナトリウム、カルシウム、アンモニウム、鉄および亜鉛塩のような無機塩、および例えばトリエタノールアミン、アルギニン、リジン、ピペリジン等のような有機塩基との塩を含む。同様に本発明は、塩酸または硫酸のような鉱酸との塩、および酢酸およびシュウ酸のような有機酸との塩のような酸付加塩にも関する。
【0063】
本発明に従ったポリペプチドの“機能性誘導体”は、公知の技術によって機能性アミノ酸側鎖上またはそれらのN−またはC−末端に生成させることができる。そのような誘導体は、例えば、カルボキシル基の脂肪族エステル;アンモニアまたは1級または2級アミンとの反応によって得られるカルボキシル基のアミド;アシル基との反応によって調製される遊離アミノ基のN−アシル誘導体、またはアシル基との反応によって調製された遊離ヒドロキシ基のO−アシル誘導体を含む。
【0064】
“機能的均等物”は、勿論他の生物からアクセスし得るポリペプチドと、天然に存在する変種をも含む。例えば、相同性配列領域の範囲は配列比較によって確立することができ、均等酵素は本発明の詳細な説明によって決定することができる。
【0065】
同様に“機能的均等物”は、例えば所望の生物学的機能を有する、本発明に従ったポリペプチドのフラグメント、好ましくは個々のドメインまたは配列モチーフを含む。
【0066】
“機能的均等物”はさらに、前述したポリペプチド配列の一つまたはそれからの機能的均等物と、機能的N−またはC−末端結合において機能的に異なる少なくとも一つのさらなる非相同性配列を含む融合タンパク(すなわち融合タンパク部分の相互に有意な損傷なしの)である。そのような非相同配列の非限定例は、シグナルペプチド、ヒスチジンアンカーまたは酵素である。
【0067】
本発明に従って付加的に含まれた“機能的均等物”は、実際に開示されたタンパクの相同体である。これらは、実際に開示されたアミノ酸配列の一つに対して、Pearson and Lipman,Proc.Natl.Acad.Sci.(USA),1988,2444−2448のアルゴリズムに従って計算し、少なくとも60%、好ましくは少なくとも75%、特に90,91,92,93,94,95,96,97,98または99%の相同性(同一性)を持っている。本発明に従った相同ペプチドの相同性または同一性は、特にここに実際に記載されたアミノ酸配列の一つの全長に対する、同一アミノ酸残基のパーセンテージを意味する。
【0068】
パーセンテージ同定値は、BLASTアライメント、アルゴリズムblastp(タンパク−タンパクBLAST)により、または後で示すClustalアジャストメントの使用によって決定とすることができる。
【0069】
可能性あるタンパクグリコシル化の場合、本発明に従った“機能的均等物”は、脱グリコシル化したまたはグリコシル化した形およびグリコシル化パターンの変化によって得られる修飾形において上で指定したタイプのタンパクを含む。
【0070】
本発明に従ったタンパクまたはポリペプチドの相同体は、突然変異生成により、例えば点突然変異、タンパクの伸長またはトランケーションによって生成させることができる。
【0071】
本発明に従ったタンパクの相同体は、例えばトランケーション突然変異体のようなコンビナトリアルバンクのスクリーニングによって同定することができる。例えば、タンパク変種の斑入りバンクは、例えば合成オリゴヌクレオチドの混合物の酵素的リゲーションにより、核酸レベルにおけるコンビナトリアル突然変異生成によって生成させることができる。退化オリゴヌクレオチド配列から可能性ある相同体のバンクの生成のために使用できる多数のプロセスが存在する。退化遺伝子配列の化学合成はDNAシンセサイザー中で実施することができ、そして次に合成遺伝子は好適な発現ベクター中へリゲートすることができる。遺伝子の退化セットの使用は、可能性あるタンパク配列の所望のセットをコードする混合物中にすべての配列の生成を可能にする。退化オリゴヌクレオチドの合成方法は当業者に知られている(例えば、Narang,S.A.(1983)Tetrahedron 39:3;Itakura et al.(1984)Annu.Rev.Biochem.53:323;Itakura et al.(1984)Science 198:1056;Ike et al.(1983)Nucleic Acids Res.11:477)。
【0072】
点突然変異またはトランケーションによって生成させたコンビナトリアルバンクの遺伝子生産物のスクリーニングのための、および選択された性質を有する遺伝子生産物のcDNAバンクのスクリーニングのためのいくつかの技術が先行技術において知られている。これらの技術は、本発明に従った相同体のコンビナトリアル突然変異生成によって生産された遺伝子バンクの急速スクリーニングに適応化させることができる。高いスループットで分析が行われる大きな遺伝子バンクのスクリーニングのために最も頻繁に使用される技術は、複製可能な発現ベクター中への遺伝子バンクのクローニング、生成したベクターバンクでの適当な細胞の形質転換、および所望の活性の検出がその生産物が検出された遺伝子をコードするベクターの単離を容易化する条件下でコンビナトリアル遺伝子の発現を含む。バンク中の機能的突然変異体の頻度を増大させる技術である、Recursive emsemble mutagenis(REM)をスクリーニングテストと組み合わせて相同体を同定するために使用することができる(Arkin and Yourvan(1992)PNAS 89:7811−7815;Delgrave et al.(1993)Protein Engineering 6(3):327−331)。
【0073】
3.核酸および構造体
3.1 核酸
本発明はまた、7β−HSDHまたは3α−HSDH活性を有する酵素をコードする核酸配列に関する。
【0074】
本発明はまた、ここに記載した実際の配列に対し一定の程度の同一性を有する核酸に関する。
【0075】
二つの核酸間の“同一性”は、各場合核酸全長にわたってヌクレオチドの同一性を意味し、特に以下のパラメータで調節した、Clustal Methodを使用するInformax社(USA)のVector NTI Suite 7.1ソフトウエア(Higgins DG,Sharp PM.Fast and sensitive multiple sequence alignments on a microcomputer.Compt.Appl.Biosci.1989 Apr;5(2):151−1)の助けによる比較によって計算した同一性を意味する。
【0076】
マルチプルアライメントパラメータ:
ギャップオープニングペナルティ 10
ギャップエキステンションペナルティ 10
ギャップセパレーションペナルティ範囲 8
ギャップセパレーションペナルティ オフ
アライメント遅延のための%アイデンティティ 40
残基特異性ギャップ オフ
親水性残基ギャップ オフ
トランジション計量 0
対アライメントパラメータ:
FAST アルゴリズム オン
K−tuple サイズ 1
ギャップペナルティ 3
ウインドウサイズ 5
ベストダイアゴナルの数 5
【0077】
これに代って、同一性は以下のパラメータをもって、Chenna,Ramu,Sugawara Hideaki,Koike Tadashi,Lopez,Rodorigo,Gibson,Toby J,Higgins,Desmond G,Thompson,Julie D.Multiple Sequence alignment with Clustal series of progams(2003)Nucleic Acids Res 31(13):3497−500;インターネットアドレス:http://www.ebi.ac.uk/Tools/clustalw/index.html#に従って決定することができる。
【0078】
DNAギャップオープンペナルティ 15.0
DNAギャップエキステンションペナルティ 6.66
DNAマトリックス アイデンティティ
タンパクギャップオープンペナルティ 10.0
タンパクギャップエキステンションペナルティ 0.2
タンパクマトリックス Gonnet
タンパク/DNA ENDGAP −1
タンパク/DNA GAPDIST 4
【0079】
ここで述べたすべての核酸配列(例えばcDNAおよびmRNAのような1本鎖または2本鎖DNAおよびRNA)は、例えば二重らせんの個々の重複する相補的核酸構造単位のフラグメント縮合によるような、ヌクレオチド構造単位からの化学合成によってそれ自体公知の態様で生産することができる。オリゴヌクレオチドの化学合成は、例えば、ホスホアミダイト法(Voet,Voet,2nd edition,Wiley Press,New York,pp.896−897)に従って公知の態様で実施することができる。合成オリゴヌクレオチドの付加と、DNAポリメラーゼおよびリゲーション反応のKlenowフラグメントによるギャップの充填、および一般クローニング方法は、Sambrook et al.(1989),Molecular Cloning:A laboratory manual,Cold Spring Harbor Laboratory Pressに記載されている。
【0080】
本発明は、上記ポリペプチドの一つ、および例えば合成ヌクレオチドアナログを用いてアクセス可能なそれらの機能的均等物をコードする核酸配列(例えばcDNAおよびmRNAのような1本鎖および2本鎖DNAおよびRNA)に関する。
【0081】
本発明は、本発明に従ったポリペプチドおよびタンパクまたは生物学的に活性なそれらのセクションをコードする単離された核酸分子と、例えば本発明に従ったコードする核酸の同定または増幅のためのハイブリダイゼーションプローブまたはプライマーとして使用することができる核酸フラグメントの両方に関する。
【0082】
本発明に従った核酸分子は、さらに暗号遺伝子領域の3’−および/または5’−端に翻訳されない配列を含むことができる。
【0083】
さらに本発明は、実際に記載された核酸配列に対し相補的な核酸分子またはその部分を含む。
【0084】
本発明に従ったヌクレオチド配列は、他の細胞タイプおよび生物中の相同性配列の同定および/またはクローニングに使用することができるプローブおよびプライマーの生産を可能にする。そのようなプローブまたはプライマーは、通常“厳格”な条件下、本発明に従った核酸配列のセンスストランドの、または対応するアンチセンスストランドの少なくとも約12,好ましくは約25,例えば40,50または75の連続するヌクレオチドにハイブリダイズするヌクレオチド配列領域を含んでいる。
【0085】
“単離”された核酸分子が核酸の天然源中に存在する他の核酸分子から分離され、そしてもしそれが組換え技術によって生産されるならば他の細胞物質または培地が実質上皆無にされるか、またはもしそれが化学的に合成されるならば化学的前駆体または他の化学品が実質上皆無にされることでできる。
【0086】
本発明に従った核酸分子は、分子生物学的に標準技術によって単離されることができ、そして配列情報が本発明によって提供される。例えば、cDNAは、ハイブリダイゼーションプローブとして実際に開示した完成した配列の一つまたはその部分と、そして標準ハイブリダイゼーション技術(例えば、Sambrook,J.,Fristsch,E.F.and Maniatis,T.Molecular Cloning:A Laboratory Mannual.2nd ed.,Cold Spring Harbor Laboratory,Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor,NY.1989に記載されいるような)を使用することによって適当なcDNAバンクから単離することができる。さらに、開示した配列の一つまたはその部分を含んでいる核酸分子は、ポリメラーゼ連鎖反応によって単離することができ、この配列に基づいて調製されたオリゴヌクレオチドプライマーが使用される。このようにして増幅された核酸は適当なベクターにクローンされ、そしてDNA配列分析によって特徴化される。本発明に従ったオリゴヌクレオチドは、例えば自動DNAシンセサイザーを使用して標準合成プロセスによって生産されることができる。
【0087】
本発明に従った核酸配列またはその誘導体、これらの配列の相同体およびその部分は、他の細菌から、例えばゲノムまたはcDNAバンクを用い、慣用のハイブリダイゼーションプロセスまたはPCR技術を使用して単離することができる。
【0088】
“ハイブリダイズ”とは、ポリマーまたはオリゴヌクレオチドが、標準条件下で大部分相補的な配列へ結合する能力を意味し、非相補的パートナー間の非特異性結合はこれら条件下では抑制される。このため、配列は90〜100%相補的であることができる。相互に特異的に結合し得る相補配列の性質は、例えばノーザンまたはサウザンブロット技術またはPCRまたはRT−PCRにおいてプライマー結合において使用される。
【0089】
ハイブリダイゼーションのため、保存された領域の短いオリゴヌクレオチドが有利に使用される。しかしながら、ハイブリダイゼーションのため、本発明に従った核酸のもっと長いフラグメントまたは完全な配列を使用することも可能である。これらの標準的条件は使用する核酸に従って(オリゴヌクレオチド、長いフラグメント、または完全な配列)変動し、またはどのタイプの核酸、DNAかRNAが使用されるかによって変動する。このため、例えばDNA/DNAハイブリッドのための溶融温度は、同じ長さのDNA/RNAハイブリッドのそれよりも約10℃低い。
【0090】
標準的条件は、例えば、核酸に従い、0.1ないし5×SSC(1×SSC=0.15M NaCl,15mMクエン酸ナトリウム、pH7.2)の濃度を有する水性緩衝溶液中42ないし58℃の温度、または付加的に50%ホルムアミドの存在下、例えば5×SSC、50%ホルムアミド中42℃の温度を意味する。有利には、DNA/DNAハイブリッドのためのハイブリダイゼーション条件は、0.1×SSCと約30℃ないし45℃の温度である。DNA/RNAハイブリッドについては、ハイブリダイゼーション条件は、有利には0.1×SSCと約30℃ないし55℃、好ましくは45℃ないし55℃の温度である。ハイブリダイゼーションのためのこれらの規定した温度は、例示であって、約100ヌクレオチドの長さと、G+C含量50%の核酸のためのホルムアミド不存在下の計算された溶融温度である。DNAハイブリダイゼーションのための実験条件は、例えばSambrook et al.,“Molecular Cloning”,Cold Spring Harbor Laboratory,1989のような遺伝子学の教科書に記載されており、そして例えば核酸の長さ、ハイブリッドの性格またはG+C含量に応じて当業者に知られた式に従って計算することができる。当業者はさらにハイブリダイゼーションについての情報を以下の教科書から推論することができる。
【0091】
Ausubel et al.(eds),1985,Current Protocols in Molecular Biology,John Wiley & Sons,New York;Hames and Higgins(eds),1985,Nucleic Acids Hybridization:A Practical Approach,IRL Press at Oxford University Press,Oxford;Brown(ed),1991,Essential Molecular Biology:A Practical Approach,IRL Press at Oxford University Press,Oxford
【0092】
“ハイブリダイゼーション”は特に、厳格な条件下で実施することができる。そのようなハイブリダイゼーション条件は、例えばSambrook,J.,Fritsch,E.F.,Maniatis,T:Molecular Cloning(A Laboratory Manual),2nd edition,Cold Spring Harbor Laboratory Press,1989,9.31−9.5またはCurrent Protocols in Molecular Bioloy,John Wiley & Sons,N.Y.(1989),6.3.1−6.3.6に記載されている。
【0093】
“厳格な”ハイブリダイゼーション条件は、50%ホルムアミド、5×SSC(750mM NaCl,75mMクエン酸三ナトリウム)、50mMリン酸ナトリウム(pH7.6)、5×Denhardt溶液、10%デキストランサルフェートおよび変性したサケ精子DNA20g/ml中42℃でのインキュベーションと、65℃において、0.1×SSCを使用し、フィルター上の洗浄ステップを意味すると理解すべきである。
【0094】
本発明はまた、実際に開示された、または誘導し得る核酸配列の誘導体に関する。
【0095】
このように本発明に従った核酸配列のさらなる配列は、例えば配列同定No.1から、一以上のヌクレオチドの付加、置換、挿入または欠失により、しかし所望の性質を有するポリペプチドをコードするように誘導することができる。
【0096】
本発明にはさらに、実際に述べた配列に比較して、“ブラント”突然変異を含む、または特別の起源または宿主生物のコドン利用に対応するように修飾された核酸配列と、例えばスプライス変種または対立変種のような天然に存在する変種が含まれる。
【0097】
同様に本発明は、保守的ヌクレオチド置換(すなわち関心あるアミノ酸の同じ電荷、サイズ、極性および/または溶解度のアミノ酸による置換)によって得ることができる配列に関する。
【0098】
本発明はまた、実際に開示された核酸の配列多形によって誘導される分子に関する。これらの遺伝子多形は自然の変動のため集団中の個々の間に存在し得る。これらの自然の変動は遺伝子のヌクレオチド配列中通常1ないし5%の変動を生じさせる。
【0099】
配列同定No.1について本発明に従った核酸配列の誘導体とは、例えば、誘導されたアミノ酸レベルにおいて少なくとも60%相同性、好ましくは少なくとも80%相同性、非常に好ましくは少なくとも90%相同性を全配列範囲に亘って有する変種を意味するものとして理解すべきである(アミノ酸レベルにおける相同性に関しては、ポリペプチドのための上述の説明を参照)。配列の部分的領域に亘っては、相同性は有利にはより高くなることができる。
【0100】
さらに誘導体は、特に配列同定No.1の本発明に従った核酸配列の相同体、例えばカビまたは細菌相同体、切端配列、コード化および非コード化DNA配列の1本鎖DNAまたはRNAを意味するものと理解すべきである。このように、例えばDNAレベルにおいて配列同定No.1の相同体は、配列同定No.1に示した全DNA範囲にわたって少なくとも40%、好ましくは少なくとも60%、特に好ましくは少なくとも70%、非常に好ましくは少なくとも80%の相同性を有する。
【0101】
さらに誘導体は、例えばプロモーターとの融合を意味するものと理解すべきである。示したヌクレオチド配列の前へ付加されるプロモーターは、プロモーターの機能性または活性が悪影響されることなく、少なくとも1個のヌクレオチド交換、少なくとも1個の挿入、逆位および/または失欠によって修飾することができる。加えて、プロモーターはそれらの活性を、外来生物のもっと活性なプロモーターによってそれらの配列を修飾または完全に置換することによって増強することができる。
【0102】
機能的突然変異体の生産方法は当業者には知られている。
【0103】
使用した技術に従って、当業者は遺伝子へ、または代って非コード化核酸配列領域(例えば発現の調節のために重要な領域)へ完全にランダムなまたはもっと特異的な突然変異体を導入し、その後遺伝子バンクを調製することができる。このために必要な分子生物学的方法は当業者には既知であり、そして例えばSambrook and Russel,Molecular Cloning,3rd Edition,Cold Spring Harbor Laboratory Press 2001に記載されている。
【0104】
遺伝子の修飾およびそれによってコード化されるタンパクの修飾方法は、例えば以下のとおり長年にわたって当業者には既知である。
【0105】
−遺伝子の単一または多数ヌクレオチドが特異的に置換される部位特異性突然変異生成(Trower MK(editor)1996:In vitro Mutagenesis Protocols,Humana Press,New Jersey);
−どんな所望アミノ酸のためのコドンも遺伝子のどんな部位に置換または付加されることができる飽和突然変異生成(Kelgler−Edo DM Docktor CM,Dimaio D(1994)Nucleic Acids Res 22:1593;Barettino D,Feigenbutz M.Valcarel R,Stunnenberg HG(1994)Nucleic Acids Res 22:541;Barik S(1995)Mol Biotechnol 3:1);
−ヌクレオシド配列が誤作動DNAポリメラーゼによって突然変異されるエラー発生ポリメラーゼ連鎖反応(エラー発生PCR)(Eckert KA,Kunkel TA(1990)Nucleic Acids Res 18:3739);
−例えば、ヌクレオチド配列の増加した突然変異率が欠陥DNA修復メカニズムのために発生する突然変異化株への遺伝子の通過(Greener A,Callahan M.Jerpseth B(1996)An efficient random mutagenesis Technique using an E.coli mutator strain.In:Trower MK(editor)In vitro mutagenis protocols.Humana Press,New Jersey);または
−密接に関連した遺伝子のプールが生成され、そして消化され、そしてフラグメントがポリメラーゼ連鎖反応において鋳型として使用され、その中で全長さのモザイク遺伝子が繰り返した鎖分離および再接近によって最終的に調製されるDNAシャッフリング(Stemmer WPC(1994)Nature370:389;Stemmer WPC(1994)Proc Natl Acad Sci USA 91:10747)
【0106】
“指向された進化”を使用して(特にReetz MT and Jaeger K−E(1999),Topics Curr Chem 200:31;Zhao H,Moor JC,Volkov AA,Arnold FH(1999),Methods for optimizing industrial enzymes by directed evolution,in:Demain AL,Davies JE(eds.)Mannual of industrial microbiology and biotechnology,American Socieyt of Microbiologyに記載されている)、当業者は選択した態様でそして大規模に機能的突然変異体を製造することができる。ここでは、最初のステップにおいてそれぞれのタンパクの遺伝子バンクが生産され、これには上で示した方法を使用することができる。遺伝子バンクは適当な態様で、例えばバクテリアよりまたはファージディスプレーシステムによって発現される。
【0107】
望む性質に大部分一致する性質を有する機能的突然変異体を発現する宿主生物の関心ある遺伝子は突然変異のさらなるラウンドへ服されることができる。突然変異および選択またはスクリーニングのステップは、現在の突然変異体が適切な測定において望む性質を持つまで繰り返されることができる。この反復操作の結果として突然変異の限られた数、例えば1ないし5の突然変異が段階的に実施され、関心ある酵素性質に対するそれらの影響を評価し、選択することができる。次に選択された突然変異体は同じやり方でさらなる突然変異ステップへ服させることができる。これによって検討すべき個々の突然変異体の数を有意に減らすことができる。
【0108】
本発明に従った結果は、所望の修飾した性質を有するさらなる酵素を発生させるために必要な、関心ある酵素の構造および配列に関する重要な情報を取得する。特に、“ホットスポット”、すなわち特異的突然変異の導入によって酵素性質の修飾のために潜在的に適した配列部分を規定することができる。
【0109】
3.2. 構造体
本発明はさらに、調節核酸配列の遺伝子コントロールのもとに本発明に従ったポリペプチドをコードする核酸配列を含む発現構造体、および少なくとも一つのこれらの発現構造体を含むベクターに関する。
【0110】
“発現ユニット”とは、本発明に従って、ここで規定し、そして発現すべき核酸または遺伝子へ機能的に連結された後、発現を調節する、すなわちこの核酸またはこの遺伝子の転写および翻訳を調節するプロモーターを含んでいる、発現活性を有している核酸を意味するものと理解すべきである。それ故これを“調節核酸配列”ということもできる。プロモーターに加え、例えばエンハンサーのようなさらなる調節エレメントが存在することができる。
【0111】
本発明に従えば、“発現カセット”または“発現構造体”とは、発現すべき核酸または発現すべき遺伝子へ機能的に連結された発現ユニットを意味するものと理解すべきである。発現ユニットと対照的に、発現カセットはこのため、転写および翻訳を調節する核酸配列のみならず、転写および翻訳の結果タンパクとして発現される核酸配列をも含む。
【0112】
本発明の文脈において、術語“発現”または“過発現”は、対応するDNAによってコード化される微生物中の一以上の酵素の細胞内活性の生産および増加を記載する。この目的で、例えば遺伝子を生物へ導入することができ、存在する遺伝子を他の遺伝子で置換することができ、遺伝子のコピー数を増加することができ、強力なプロモーターを使用することができ、または高い活性を有する対応する酵素をコードする遺伝子を使用することができ、そしてこれらの方策は任意に組み合わせることができる。
【0113】
好ましくは、本発明に従ったそのような構造体は、それぞれのコード化配列の5’−上流のプロモーターと、3’−下流のターミネーター配列と、そして任意に慣用の調節エレメント、すなわち各場合コード化配列へ作用的に連結された調節エレメントを含む。
【0114】
本発明に従えば、“プロモーター”、“プロモーター活性を有する核酸”、または“プロモーター配列”は、転写すべき核酸との機能的連鎖において核酸の転写を調節する核酸の意味であると理解すべきである。
【0115】
“機能的”または“作用的”連鎖は、例えば核酸の転写を保証する核酸配列と、そして例えばターミネーターのように、プロモーター活性を有する核酸の一つと、転写すべき核酸配列と、そして任意の調節エレメントの配列とが、調節エレメントの各自が核酸配列の転写においてその機能を充足するように配置された配列を意味するものと理解すべきである。この目的のため、化学的意味での直接連結は絶対的に必要ではない。例えばエンハンサー配列のような遺伝子制御配列は、標的配列においてさらに除去された位置において、または他のDNA分子からそれらの機能を発揮することができる。転写される核酸配列がプロモーター配列の後に(すなわち3’−末端側に)配置され、そのため両方の配列が共有結合で連結されることが好ましい。ここでは、プロモーター配列と、発現すべき核酸配列の間の距離は、200塩基対未満、または100塩基対以下、または50塩基対以下であることができる。
【0116】
プロモーターおよびターミネーターに加え、挙げることができるさらなる調節エレメントの例は、標的化配列、エンハンサー、ポリアデニル化信号、選択できるマーカー、増幅信号、複製起源等を含む。好適な調節配列は、例えばGoeddel,Gene Expression Technology:Methods in Enzymology 185,Academic Press,San Diego,CA(1990)に記載されている。
【0117】
特に本発明に従った核酸構造体は、配列同定No.1、またはその誘導体および相同体と、そして有利には遺伝子発現の制御、例えば増大のための一以上の調節信号と作用的または機能的に連結されたそれから誘導し得る核酸配列を含む。
【0118】
これらの調節配列に加え、これら配列の天然の調節が実際の構造遺伝子以前に存在することができ、そして天然調節がスイッチオフされ、遺伝子発現が増大されるように任意に遺伝子的に修飾されることができる。しかしながら核酸構造体は、もっと簡単に、すなわち追加の調節信号がコード化配列の前に挿入されず、そしてその調節を有する天然プロモーターが除去されずに構築することができる。これに代って、天然調節配列は、もはや調節が行われず、そして遺伝子発現が増大されるように突然変異される。
【0119】
好ましい核酸構造体は、有利には、核酸配列の増大した発現を可能にするプロモーターへ機能的に連結された既に述べた“エンハンサー”の一つ以上を含んでいる。さらなる調節エレメントまたはターミネーターのような、追加的有益配列をDNA配列の3'−末端へ挿入することもできる。本発明に従った核酸は、構造体中に1以上のコピーで存在することができる。構造体の任意の選択のため、抗生物質耐性または栄養補給性を補足する遺伝子のようなさらなるマーカーが構造体中に存在することができる。
【0120】
cos,tac,trp,tet,trp−tet,lpp,lac,lpp−lac,laclq,T7,T5,T3,gal,trc,ara,rhaP,(rhaPBAD)SP6,ラムダ−PRのようなプロモーター中に、またはラムダーPプロモーター中に好適な調節配列の例が存在する。これらはグラム陰性細菌に有利に使用される。さらなる有利な調節配列は、イーストまたはカビプロモーターADC1,MFアルファ,AC,P−60,CYC1,GAPDH,TEF,rp28およびADH中のグラム陽性プロモーター中に存在する。人工プロモーターも調節のために使用し得る。
【0121】
宿主生物中に発現のため、核酸構造体は、有利には、例えば宿主中で遺伝子の最適で発現を可能にするプラスミドまたはファージのようなベクター中に挿入される。プラスミドおよびファージのほかに、ベクターは、当業者に知られたすべての他のベクター、例えばSV40,CMV,バキュロウイルスおよびアデノウイルスのようなウイルス、トランスポソン、ISエレメント、ファスミド、コスミド、および鎖状またはサークル状DNAを意味するものと理解すべきである。これらのベクターは宿主生物中で自発的に複製または染色体的に複製されることができる。これらのベクターは本発明のさらなる具体例を代表する。
【0122】
好適なプラスミドは、例えば、E.coli中のpET28a(+),pLG338,pACYC184,pBR322,pUC18,pUC19,pKC30,pRep4,pHS1,pKK223−3,pDHE19.2,pHS2,pPLc236,pMBL24,pLG200,pUR290,pIN−III113−B1,λgt11;ストレプトミセス中のpIJ101,pIJ364,pIJ702またはpIJ361;バチルス中のpUB110,pC194またはpBD214;コリネバクテリウム中のpSA77またはpAJ667;カビ中のpALS1,pIL2またはpBB116;イースト中の2αM,pAG−1,YEp6,YEp13またはpEMBLYe23;または植物中のpLGV23,pGHIac,pBIN19,pAK2004またはpDH51である。言及したプラスミドは可能性あるプラスミドの小さな選択である。さらなるプラスミドは当業者には既知であり、そして例えば専門書Cloning Vectors(Eds.Pouwels P.H.et al.Elsevier,Amsterdam−New York−Oxford,1985,ISBN0444904018)から推論することができる。
【0123】
ベクターのさらなる具体例において、本発明に従った核酸構造体、または本発明に従った核酸は、直鎖状DNAの形で微生物に有利に導入され、そして同種または異種組み換えによって宿主生物中に集積されることができる。この直鎖状DNAはプラスミドのような直鎖状ベクターから、または単に本発明に従った核酸構造体または核酸のみから構成されることができる。
【0124】
生物中の異種遺伝子の最適発現のため、生物に使用される特異的"コドン利用"に対応して核酸を修飾するのが有利である。“コドン利用”は、関連する生物の既知の遺伝子のコンピューター分析によって容易に決定することができる。
【0125】
本発明に従った発現カセットの生産は、適当なコード化ヌクレオチド配列と、ターミネーターまたはポリアデニル化信号との適切なプロモーターの融合によって実施される。この目的のため、例えば、T.Maniatis,E.F.Fritsch and J.Sambrook,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory,Cold Spring Harbor,NY(1989)、およびT.J.Silhavy,M.L.Berman and L.W.Enquist,Experiments with Gene Fusions,Cold Spring Harbor Laboratory,Cold Spring Harbor,NY(1984)、およびAusubel,F.M.et al.,Current Protocols in Molecular Biology,Greene Publishing Assoc.and Wiley Interscience(1987)に記載されているような慣用の組み換えおよびクローニング技術が使用される。
【0126】
好適な宿主生物中の発現のため、組換え核酸構造体または遺伝子構造体が、宿主中に遺伝子の最適発現を可能にする宿主特異性ベクター中に有利に挿入されるベクターは当業者には良く知られ、そして例えば“Cloning Vectors”(Pouwels P.H.et al.,editor,Elsevier,Amsterdam−New York−Oxford(1985)から推論することができる。
【0127】
4. 微生物
文脈に応じて、用語“微生物”は出発微生物(野生タイプ)、または遺伝子的に修飾された組換え微生物、または両者を意味するとして理解できる。
【0128】
本発明に従ったベクターの助けにより、本発明に従った少なくとも一つのベクターで形質転換された組換え微生物が調製され、本発明に従ったポリペプチドの生産のために使用することができる。有利には、上に記載した本発明に従った組換え構造物が宿主システムに導入され、発現される。ここでは、例えば共沈澱、プロトプラスト融合、エレクトロポレーション、レトロウイルストランスフェクション等のような、当業者が熟知しているクローニングおよびトランスフェクション方法が前述した核酸をそれぞれの発現システム中に発現させるために好ましく使用される。好ましいシステムは、例えばCurrent Protocols in Molecular Biology,F.Ausubel et al.,editor,Wiley Interscience,New York 1997またはSambrook et al.Molecular Cloning:A Laboratory Manual,2nd ed.,Cold Spring Harbor Laboratory,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,NY,1989に記載されている。
【0129】
本発明に従った核酸または核酸構造体のための細換え宿主生物は原則として原核または真核生物である。有利には宿主生物としてバクテリア、カビまた酵母のような微生物が使用される。有利には、グラム陽性またはグラム陰性バクテリア、好ましくはEnterobacteriaceae,Pseudomonadaceae,Rhizobiaceae,StreptomycetaceaeまたはNocardiaceae科のバクテリア、特に好ましくはEscherichia,Pseudomonas,Streptomyces,Norcardia,Burkholderia,Salmonella,Agrobacterium,ClostridiumまたはRhodococcus属のバクテリアが使用される。特に好ましくは、Escherichia coliである。さらなる有利なバクテリアはアルファプロトバクテリア、ベータプロトバクテリアまたはガンマプロトバクテリアのグループ中に見出される。
本発明に従った宿主生物は、好ましくは上の定義に従った7β−HSDH活性を有する酵素をコードする本発明の核酸配列、核酸構造体またはベクターの少なくとも一つを含んでいる。
【0130】
本発明に従った方法に使用される生物は、宿主生物に応じて当業者に知られた態様で増殖または培養される。原則として微生物は通常糖の形の炭素源と、通常イースト抽出物のような有機窒素源または硫酸アンモニウムのような塩の形の窒素源と、鉄、マグネシウムおよびマンガン塩のような微量元素と、そして任意にビタミンを含む液体培地中で0℃および100℃の間の、好ましくは10℃および60℃の間の温度において酸素通気下に培養される。この間栄養液のpHを固定値に保つことができる。すなわち培養の間調節し、または調節しないことができる。培養はバッチ式、半バッチ式または連続式に実施することができる。栄養分は発酵開始時に提供するか、または後で半連続的または連続的に供給することができる。
【0131】
5.UDCAの生産
第1工程:CAのDHCAへの化学変換
CAのヒドロキシ基がそれ自体公知の態様で古典的化学ルートによりクロム酸または酸性溶液(例えばHSO)中のクロム酸塩でカルボニル基へ酸化される。
【0132】
第2工程:DHCAの12−ケト−UDCAへの酵素変換
水溶液中、DHCAがそれぞれNADPHまたはNADHの存在下、3α−HSDHおよび7β−HSDHによって12−ケト−UDACへ特異的に還元される。助因子NADPHまたはNADHは、ADHまたはFDHによってそれぞれイソプロパノールまたはギ酸ナトリウムから再生することができる。反応は緩和な条件のもとで進行する。例えば、反応はpH=4ないし9,6ないし9,または7ないし9,特にpH=8において、そして約10ないし30℃、15ないし25℃、または約23℃において実施することができる。
【0133】
第3工程:12−ケト−UDCAのUDCAへの化学変換
12−ケト−UDCAの12−カルボニル基がそれ自体公知の態様においてWolff−Kishner還元によって除去され、そしてそれによって12−ケト−UDCAからUDCAが生成する。この反応において、カルボニル基は最初ヒドラジンによってヒドラゾンへ変換される。次にヒドラゾンは塩基(例えばKOH)の存在下200℃へ加熱され、それによって窒素が分解除去され、UDCAが生成する。
【0134】
6.HSDHの組換え生産
さらに本発明は、ポリペプチド生産微生物が、培養され、ポリペプチドの発現が任意に誘発され、そして培養物からそれらが単離される、本発明に従ったポリペプチド、または機能的な、生物学的に活性なそのフラグメントの組換え生産方法に関する。このようにポリペプチドは、もし望むならば、工業的スケールで生産することもできる。
【0135】
本発明に従って調製される微生物はバッチプロセスで(バッチ式培養)において、または流加培養プロセスまたは反復流加培養プロセスにおいて連続的にまたは非連続的に培養することができる。公知の培養方法の要約はChmielの教科書(Bioprocess Technology 1.Introduction to bioprocess technology(Gustav Fischer Verlag,Stuttgart,1991))またはStorhasの教科書(Bioreactors and peripheral devices (Vieweg Verlag,Braunschweig/Wiesbaden,1994))に見られる。
【0136】
使用すべき培養培地はそれぞれの株の要求を好適に満たさなければならない。種々の微生物の培地は、ハンドブック“Manual of Methods for General Bacteriology”,Amerian Society for Bacteriology(Washington D.C.,USA,1981)に含まれている。
【0137】
本発明に従って使用し得るこれらの培地は、通常一以上の炭素源、窒素源、無機塩、ビタミンおよび/または微量元素を含んでいる。
【0138】
好ましい炭素源は、単糖類、二糖類または多糖類である。非常に良い炭素源は、例えばグルコース、フラクトース、マンノース、ガラクトース、リボース、ソルボース、リブロース、ラクトース、マルトース、スクロース、ラフィノース、デンプンまたはセルロースである。糖は、糖蜜または製糖の他の副産物のような複合化合物として培地へ添加することもできる。種々の炭素源の混合物を添加することも有利である。他の可能性ある炭素源は、例えば大豆油、ヒマワリ油、ピーナッツ油およびココナッツ油のような油脂、例えばパルミチン酸、ステアリン酸またはリノレイン酸のような脂肪酸、例えばグリセロール、メタノールまたはエタノールのようなアルコールおよび例えば酢酸または乳酸のような有機酸である。
【0139】
窒素源は、通常有機または無機窒素化合物か、またはこれら化合物を含んでいる材料である。例示的窒素源は、アンモニアガスまたは硫酸アンモニウム、塩化アンモニウム、リン酸アンモニウム、炭酸アンモニウムまたは硝酸アンモニウムのようなアンモニウム塩、硝酸塩、尿素、アミノ酸、またはコーンスティープリカー、大豆粉、大豆タンパク、イーストエキス、ミートエキス等の複合窒素源を含む。窒素源は個別にまたは混合物として使用することができる。
【0140】
培地中に存在することができる無機塩は、塩化物、またはカルシウム、マグネシウム、ナトリウム、コバルト、モリブデン、カリウム、マンガン、亜鉛、銅および鉄のリン酸または硫酸塩である。
【0141】
イオウ源として、例えば硫酸塩、亜硫酸塩、ジチオナイト、テトラチオネート、チオ硫酸塩、硫化物のような無機イオウ含有化合物を使用することができるが、メルカプタンおよびチオールのような有機イオウ化合物を使用することもできる。
【0142】
リン源としては、リン酸、リン酸二水素カリウム、またはリン酸水素二カリウムまたは対応するナトリウム含有塩を使用することができる。
【0143】
金属イオンを溶液中に保持するためキレート剤を媒地へ添加することができる。特に好適なキレート剤は、カテコールまたはプロトカテキュエートのようなジヒドロキシフェノール、クエン酸のような有機酸を含む。
【0144】
本発明に従って使用し得る発酵培地は、ビタミンのような他の発育因子または発育プロモーターを慣用的に含み、これらは、例えばビオチン、リボフラビン、チアミン、葉酸、ニコチン酸、パントテン酸塩およびピリドキシンを含む。発育因子および塩は、イーストエキス、糖蜜、コーンスチープリカー等のような複合培地成分からしばしば誘導される。さらに培地へ好適な前駆体を添加することもできる。培地配合物の正確な組成は、詳細な実験に強く依存し、そしてそれぞれの特定のケースのために個別的に決定される。培地最適化のための情報は教科書“Applied Microbiol.Physiology,A Practical Approach”(Ed.P.M.Rhodes,P.F.Stanbury,IRL Press(1997)pp.53−73,ISBN 0 19 963577 3)から得られる。発育培地は、スタンダード1(Merck)またはBHI(Brain heart infusion,DIFCO)等のような商業的サプライヤーからも得ることができる。
【0145】
すべての培地成分は熱(1.5バールおよび121℃において20分)または無菌濾過によって滅菌される。成分は一所に、またはもし必要ならば別々に滅菌することができる。すべての培地成分は発育のスタートから存在することができ、または場合によって連続的またはバッチ式に添加することができる。
【0146】
培養物の温度は通常15℃ないし45℃、好ましくは25℃ないし40℃の間であり、そして実験の間コンスタントに保つか、または変えることができる。培地のpHは5ないし8.5の範囲内でなければならず、好ましくは7付近である。伝播のためのpHは、伝播の間、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニアまたはアンモニア水のような塩基性化合物の添加、またはリン酸または硫酸のような酸性化合物の添加によってコントロールすることができる。泡発生の制御のため、例えば脂肪酸ポリグリコールエステルのような消泡剤を使用することができる。プラスミドの安定性の維持のため、例えば抗生物質のような好適な選択的に作用する物質を培地へ加えることができる。好気的条件を維持するため、酸素または環境空気のような酸素含有ガス混合物が培養物中に導入される。培養物の温度は通常20℃ないし45℃である。培養は所望の生成物が最大に生産されるまで継続される。この目的は通常10時間ないし160時間で達成される。
【0147】
発酵ブロスはその後さらに処理される。要請に応じ、バイオマスは、例えば遠心、濾過、デカンテーションまたはこれらの組合せのような分離方法によって、または完全に放置することによって完全にまたは部分的に発酵ブロスから除去することができる。
【0148】
もしポリペプチドが培養培地中に分泌されないならば、細胞を破壊し、そして既知タンパク単離方法に従って溶解物から回収することもできる。代って細胞は、高周波数超音波により、例えばフレンチ圧力セル中のような高圧力により、オスモリシスにより、界面活性剤、分解酵素または有機溶媒の作用により、または言及したプロセスのいくつかの組合せによって破壊することができる。
【0149】
ポリペプチドの精製は、Q−セファロースクロマトグラフィーのような分子ふるいクロマトグラフィー(ゲル濾過)、イオン交換クロマトグラフィー、および疎水性クロマトグラフィーのような既知のクロマトグラフィープロセスを使用し、および限外濾過、結晶化、塩析、透析および天然ゲル電気泳動のような他の慣用のプロセスを使用して達成することができる。好適プロセスは、例えば、Cooper,F.G.,Biochemical Working Methods Verlag Walter de Gruyter,Berlin,New YorkまたはScopes,R.,Protein Purification,Springer Verlag,New York,Heidelberg,Berlinに記載されている。
【0150】
組換えタンパク単離のため、特異性ヌクレオチド配列を伸長し、そしてそのため例えばより簡単な精製のために役立つ修飾したポリペプチドまたは融合タンパクをコードするベクターシステムまたはオリゴヌクレオチドを使用することが組換えタンパクの単離のために有利であり得る。このタイプの好適な修飾は、例えば、ヘキサヒスチジンアンカーとして知られた修飾、または抗体によって抗原として認識されることができるエピトープのような(例えばHarlow,E.and Lane,D.,1988,Antibodies:A laboratory Manual.Cold Spring Harbor(N.Y.)Pressに記載されているような)アンカーとして機能する"タグ"である。これらのアンカーは、例えばクロマトグラフィーカラムへ充填することができる、またはマイクロタイタープレート上または他のキャリア上に使用されるポリマーマトリックスのような固体担体へのタンパクの付着のために役立つことができる。
【0151】
同時に、これらアンカーはタンパクの認識のためにも使用することができる。タンパクの認識のため蛍光染料のような慣用なマーカー、基質との反応後検出可能な反応生成物を形成する酵素マーカー、または放射性マーカーが単独で、またはタンパクの誘導体化のアンカーと組合せて使用されることができる。
【0152】
7. 酵素固定化
本発明に従った酵素は、ここに記載したプロセスにおいて遊離または固定形で使用することができる。固定化酵素とは、不活性担体へ固定される酵素の意味であると理解される。好適な担体材料およびその上に固定化された酵素は、EP−A−1149849,EP−A−1069183およびDE−OS−100193773およびそれらに引用された参照から知られている。この点に関し、これら明細書の開示全体が参照される。好適な担体材料は、例えばカオリナイト、ケイ藻土、パーライトのような粘土、粘土鉱物、シリカ、アルミナ、炭酸ナトリウム、炭酸カルシウム、セルロース粉、アニオン交換材料、ポリスチレン、アクリル樹脂、フェノールホルムアルデヒド樹脂、ポリウレタンおよびポリエチレンおよびポリプロピレンのような合成高分子を含む。担体材料は慣例的に固定された酵素のために微粉砕された粒子の形で使用され、多孔質形が好ましい。担体材料の粒子寸法は5mm以下、特に2mm以下(分布カーブ)である。同様に、全細胞触媒としてデヒドロゲナーゼの使用において、遊離または固定化形を選ぶことができる。担体材料は、例えばアルギン酸カルシウムおよびカラギーナンである。酵素それに細胞は、グルタルアルデヒドを用いて直接架橋する(CLEAへの架橋)ことができる。対応してそしてさらなる固定化プロセスは、例えば、J.Lalonde and A.Margolin“Immobilization of Enzymes”in K.Drauz and H.Waldmann,Enzyme Catalysis in Organic Synthesis 2002,vol.III,991−1032,Wiley−VCH,Weinheimに記載されている。
【0153】
実験の部
他の情報が与えられなければ、例えば制限切断、アガロースゲル電気泳動、DNAフラグメントの精製、ニトロセルロースおよびナイロンメンブレンへのDNAの移動、DNAフラグメントの連結、微生物の形質転換、微生物の伝播、ファージの複製、および組換えDNAの配列分析のような、本発明の文脈において実施されるクローニングステップは、Sambrook et al.(1988)前出に記載されているように実施することができる。
【0154】
1.一般的情報
材料
Collinsella aerofaciens DSM3979(ATCC25986,以前の名称Eubacterium aerofaciens)からのゲノムDNAは、German Collection for Microorganisms and Cell Culture(DSMZ)から得た。UDCAおよび7−ケト−LCAはそれ自体既知の出発化合物であり、文献に記載されている。すべての他の薬品はSigma−AldrichおよびFluka(ドイツ)から得た。すべての制限エンドヌクレアーゼ、T4DNAリガーゼ、TaqDNAポリメラーゼおよびイソプロピル−β−D−1−チオガラクトピラノシド(IPTG)はqermentas(ドイツ)から得た。
培地
培地リットル当りトリプトン10g、イースト抽出物5gおよびNaCl 5gを含有するLB培地
発現ベクター
pET22b(+)およびpET28a(+)(Novagen,Madison,Wisconsin,USA)
微生物
Escherichia coli株DH5a(Novagen,Madison,Wisconsin,USA)を37℃において適当な抗生物質を含んでいるLB培地中で増殖させた。
Escherichia coli株BL21(DE3)(Novagen,Madison,Wisconsin,USA)を37℃において適当な抗生物質を含んでいるLB培地中で増殖させ、インキュベーション後0.5mM IPTGでOD600=0.8を25℃および140RPMにおいて維持した。
【0155】
分析方法
1.7β−HSDH活性決定のための標準条件
反応混合物は全容積1ml中以下を含む。
50mMリン酸カリウム緩衝液、pH8.0 880μl
10mM UDCA(水に溶解、pH8) 10μl
酵素溶液(上の緩衝液中1ないし10U/mlの範囲) 10μl
1mM NADP(上の緩衝液中) 100μl
340nmにおける吸光の増加が測定され、そして活性は6.22mM−1×cm−1のモル吸光係数を用いて酵素単位(U,すなわちμmol/min)として計算される。
2.BCAアッセイによるタンパク質測定
サンプルはBCA試薬(Interchimから)と混合され、そして37℃において45分間インキュベートされた。タンパク質含量は使用したアッセイの濃度範囲において較正曲線(BSA)に対して562nmにおいて決定された。
3.薄層クロマトグラフィー
サンプル5ないし10μgをTLCフィルムKieselgel60(Merck)へ適用した。参照として基準サンプルも適用された。TLCフィルムの一端を移動相がトップに到達するまで溶出液中に浸漬した。TLCフィルムを乾燥し、リンモリブデン酸で発色させた。
【0156】
2.実施例
製造実施例1:7β−HSDH活性の同定
Collinsella aerofaciens ATCC 25986のゲノムDNA配列は、Washington University Genome Sequence Centerにより、ヒト消化管マイクロバイオーム計画のために2007年ジーンバンクにおいて発表された。HSDHは短鎖デヒドロゲナーゼに入る。Collinsella aerofaciensからの短鎖デヒドロゲナーゼの生化学的機能はジーンバンクに注釈されていなかったので、9つの候補がベクターpET22b+中にクローンされ、そしてE.coliBL21(DE3)中に発現された。
【0157】
このため7β−HSDHをコードする配列がPCRで増幅された。PCR生成物は鋳型としてCollinsella aerofaciens ATCC25986(DSM3979)のゲノムDNAを使用し、プライマーとして
【化6】

【化7】

を使用して得られた。プライマー配列中のNdeIおよびHindIII開裂部位はアンダーラインされている。PCR生成物はPCR精製キット(Qiagen)で精製され、そして酵素NdeIおよびHindIIIで開裂された。適切なベクターもNdeIおよびHindIIIで開裂された。生成物はアガロースゲル上に適用され、分離され、そしてこれから切り取られ、精製された。開裂したPCR生成物および開裂したベクターはT4リガーゼでリゲートされた。リゲートされた生成物はE.ColiDH5a中に形質転換された。得られたベクター(7β−HSDHの遺伝子を含んでいる)は配列決定によって確認され、E.ColiBL21(DE3)中に形質転換され、そしてIPTGで誘発され、発現された。
【0158】
発現はLB培地50ml中で実施された。前培養物の調製のため、LBアガープレート上の1コロニーを取り、LB培地(適切な抗生物質を含む)5ml中37℃および160RPMで1夜インキュベートされた。LB培地(適切な抗生物質を含む)50mlが前培養物500μlで接種された。培養物は37℃および160RPMでインキュベートされた。OD600約0.8まで0.5mM IPTGの添加によって発現が誘発された。6時間または一夜後、細胞が遠心沈下された。ペレットをリン酸カリウム緩衝液(50mM、pH8、0.1mM PMSF含有)6ml中に懸濁され、超音波粉砕された。細胞断片は遠心により除去された。
【0159】
7β−HSDH活性の同定のため、光度計法によって活性がテストされた。このため酵素と、リン酸カリウム緩衝液(50mM、pH8)中のテスト物質が1mlクベット中で混合された。NADPH(NADH)またはNADP(NAD)を添加した後、NAD(P)Hの分解または生成を測定した。9候補からの1酵素がNADPの存在下UDCAに対して活性(60U/ml)を示したが、CAに対しては活性を示さなかった。
【0160】
この光度計テストにおいて、7β−HSDHは、NADPまたはNADPHの存在下、UDCAに対して60U/mlの活性を、7−ケト−LCAに対して35U/mlの活性を、そしてDHCAに対して119U/mlの活性を示した。CAに対する活性は検出できなかった。
【0161】
急速精製を可能とするため、7β−HSDHをコードする遺伝子がHis−TagでpET28+中に再クローンされた。His−Tagを有する7β−HSDHは、上に記載したようにE.coliBL21(DE3)中に活動的に発現された。精製はTalonカラムで実施された。カラムは最初リン酸カリウム緩衝液(50mM,pH8,300mM NaCl添加)で平衡化された。細胞溶解物を負荷した後、カラムをリン酸カリウム緩衝液(50mM,pH8,300mM NaCl添加)で洗浄した。7β−HSDHはリン酸仮無緩衝液(50mM、pH8,30mM NaClと200mMイミダゾール添加)で溶出された。溶出液中のイミダゾールは透析によって除去された。精製収率は76%であり、純度は約90%であった。
【0162】
変換実施例1:7β−HSDHによる7−ケト−LCAの酵素変換
7β−HSDHの生化学的機能を調べるため、7β−HSDHによる7−ケト−LCAの変換を実施した。20mlの変換混合物は、7−ケト−LCA50mM(約0.4g)と、7β−HSDH 5U/mlと、そしてNADP0.05mMを含有する。NADPHの再生のため、ADH
4U/mlと、イソプロパノール1%を使用した(スキーム1を見よ)。反応はフューム戸棚中攪拌下pH8および24℃において実施された。アセトンはイソプロパノールより速く蒸発するので、反応はUDCAの生成へ向ってシフトする。1%イソプロパノールが24時間後、48時間後および72時間後に再び添加された。生成物は、TLCによって分析された(Kieselgel60,Merck,移動相石油エーテル:酢酸エチル=1:10 vol:vol)。TLC上で生成物は真正参照7−ケト−LCA,UDCAおよびCDCAと比較された。TLC分析はUDCAが7β−HSDHによって7−ケト−LCAから生成したことを示した。エナンチオマーUDCAはTLC上で検出できなかった。
【0163】
スキーム1:7β−HSDHによる7−ケト−LCAの還元の概略的表現。ADHが助因子NADPHを再生する。
【化8】

【0164】
変換実施例2:7β−HSDHによるDHCAからの12−ケト−UDCAの酵素生産
DHCAから12−ケト−UDCAの生産のため7β−HSDHの使用可能性をテストするため、7β−HSDHによるDHCAの変換を実施した。変換混合物50mlは、50mM DHCA(1g)、5U/ml 7β−HSDHおよび0.05mM NADPを含有する。NADPHの再生のため、4U/ml ADHと1%イソプロパノールが使用された(スキーム2を見よ)。反応はフューム戸棚中攪拌下pH8および24℃において実施された。アセトンはイソプロパノールより速く蒸発するので、反応は12−ケト−7β−CAの生成へ向ってシフトする。1%イソプロパノールが24時間後、48時間後および72時間後に再び添加された。中間体3,12−ジケト−7β−CAはTLCによって分析された。DHCAはもはやTLC上で検出できなかった(Kieselgel 60,Merck,移動相クロロホルム:メタノール:酢酸=10:1:0.08容積比)
スキーム2:7β−HSDHによるDHCAの還元の概略的表現。ADHが助因子NADPHを再生する。
【化9】

【0165】
変換実施例3:12−ケト−UDCAへの3,12−ジケト−7β−CAの酵素変換
中間体3,12−ジケト−7β−CA(変換実施例2に従って製造された)がさらに12−ケト−UDCAへComamonas testosteroniからの3α−HSDH(配列同定No.5および6)(Mobus,E and E.Maser,Molecular cloning,overexpression,and characterization of steroid−inducible 3alpha−hydroxysteroid dehydrogenase/carbonyl reductase from Comamonas testosteroni;A novel member of the short−chain dehydrogenase/reductase superfamily,J.Biol Chem,1998,273(47):p.30888−96)によって変換された。この3α−HSDHは助因子NADHを必要とし、これはFDHによって再生される(図3を見よ)。3α−HSDH 4U/mlと、FDH(NADH依存性、Codexis)1U/mlと、ギ酸ナトリウム200mMと、そしてNAD0.05mMとが反応へ加えられた。40時間後、生成物は2M HClでpH2へ酸性化され、酢酸エチル10mlで6回抽出された。蒸発後、生成物1.07gが得られた。生成物12−ケト−UDCAが分析され、TLCおよびNMRによって確認された。3α−HSDHは7β−HSDHの生産と同様に生産されたが、しかしプラスミドpET22bが使用され、それ以上精製することなく使用された。
【0166】
スキーム3:3α−HSDHによる3,12−ジケト−7β−CAの還元の概略的表現。FDHが助因子NADHを再生する。
【化10】

【0167】
変換実施例4:CAのDHCAへの化学変換
氷酢酸1320Lを2000L攪拌容器に入れ、コール酸(CA)110kg(260モル)をその中に溶解した。次亜塩素酸ナトリウム溶液(2.3モル濃度)422Lを20ないし40℃においてこの溶液中へ計量し、反応溶液を反応完結まで少なくとも1時間さらに攪拌した。デヒドロコール酸(DHCA)を遠心によって100kg(90%)の収量で単離する。
【0168】
変換実施例5:12−ケト−UDCAのUDCAへの化学変換
12−ケト−UDCA105g(0.258モル)をトリエチレングリコール384mlに溶かし、水酸化ナトリウム52.2g(1.304モル)とヒドラジンヒドラート75.95ml(1.563モル)を加え、180℃へゆっくり加熱する。この時ヒドラゾンが生成するが、160℃を越えると窒素を放出してUDCAへ転位する。変換完了のため反応混合物を180℃に8時間維持する。反応混合物を100℃以下に冷却し、水1500mlで処理する。次に塩酸で酸性することによってUDCAを沈澱させる。生成物は、96.2gないし99.2g(95%から98%まで)の収量で得られる。
【0169】
製造実施例2:調製的スケールでCollinsella aerofaciens ATCC25986からの7β−HSDHのクローニング、発現および精製と、この酵素のさらなるキャラクタリゼーション
【0170】
a)クローニングおよび発現構造体の生産
7β−HSDHコーディング遺伝子をコードする遺伝子がPCRにより、そして製造実施例1において記載したプライマーを使用したゲノムDNAから再び増幅された。
PCR生成物が前に記載したように再び精製され、制限エンドヌクレアーゼHdeIとHindIIIで消化された。消化されたPCR生成物は再び精製され、発現ベクターを作製するためT4リガーゼを用いてpET−28a(+)ベクター中にクローンされた。得られた発現構造体は次にE.Coli DH5a細胞中に形質転換された。予期されるタンパク質は、信号ペプチドとN−末端6×His−Tagとトロンビン開裂部位を含んでいる20アミノ酸残基を持つに違いない。挿入したDNAの配列がシーケンシングによってチェックされた。
【0171】
b)7β−HSDHの過発現および精製
E.coli BL21(DE3)が発現構造体で形質転換された。このため発現構造体を含んでいるE.coli BL21(DE3)株がカナマイシン30μg/mlを含んでいるLB培地中で(2Lシェーカーボトル中2×400ml)増殖された。遠心(10,000×g、5分、4℃)によって細胞が収穫された。ペレットをリン酸緩衝液(50mM,pH8,PMSF0.1mMを含有)20ml中に再懸濁した。細胞はSonifier 250超音波デバイス(Branson,ドイツ)を使ってコンスタントな冷却のもと1分間の超音波処理(40Wパワー、40%間隔および1分休止)によって粉砕された。粉砕は3回繰り返された。細胞抽出物は遠心された(22,000×g、20分、4℃)。上清が負荷緩衝液(50mMリン酸カリウム、300mM NaCl、pH8)で平衡化したTalonカラム(Clontech、USA)に負荷された。このプロセスは24℃で実施された。非結合物質はカラムを負荷緩衝液(3カラム容積)で洗浄することによって洗い流した。弱く結合しているタンパク質は洗浄緩衝液(負荷緩衝液中20mMイミダゾール、3カラム容積)で洗うことによって除去された。His−Tag−7β−HSDHタンパク質は溶出緩衝液(負荷緩衝液中イミダゾール200mM)で溶出された。溶出液は分子排除限界5kDaの透析チューブ(Sigma,USA)中リン酸カリウム緩衝液(50mM,pH8)2L中で4℃で一夜透析された。最後にサンプルを新しいチューブへ移し、さらなる透析のため−20℃で貯蔵された。タンパク濃度は製造者の指示書に従ってBCAテストキット(Thermo,USA)を使用して決定された。加えて、サンプルは12.5%SDS−PAGEと、そしてCoomassieブリリアンドブルーによる染色によって分析された。たんぱく質の純度はScion Image Beta 4.0.2(Scion,USA)を使用してデンシトメトリーによって決定された。
【0172】
c)ゲル濾過
ゲル濾過は、7β−HSDHの分子量を決定するためにPharmacia AKTAタンパク質精製システム上で実施された。200mM塩化ナトリウムを含んでいる50mM Tris−HCl(pH8)であらかじめ平衡化したSephadex G−200カラム上に精製した酵素が適用された。タンパク質は1ml/minの流量で同じ緩衝液で溶出された。7β−HSDHの分子量は、タンパク質標準(血清アルブミン(66kDa)、Aspergillus oryzaeからのα−アミラーゼ(52kDa)、ブタ膵臓からのトリプシン(24kDa),およびニワトリ卵からのリゾチーム(14.4kDa))との溶出容積の比較によって決定された。
【0173】
d)酵素テストおよび動力学分析
酵素テストのための反応混合物は、全容積1ml中50μmolリン酸カリウム(pH8)、0.1μmol NAD(P)HまたはNAD(P)、基質およびタンパク質を含んでいた。この反応混合物を光路長1cmのクベットに入れた。7β−HSDH活性は分光光度計(Ultraspec 3000、Pharmacia Biotech,イギリス)を使用して340nmの吸光度におけるNAD(P)H濃度の変化を記録することによって決定された。酵素活性は25℃における6.22mM−1×cm−1のモル吸光係数を使用して酵素単位(U,すなわちμmol/min)として決定された。可変基質、補酵素、濃度、pH、緩衝液およびインキュベーション温度を使用していくつかの異なる測定が実施された。動力学的定数は標準方法を使用して決定された。
【0174】
e)7β−HSDHによる7−ケト−リトコール酸のバイオ転換
7β−HSDHの生化学的機能を検証するため、7β−HSDHによる7−ケト−LCAの変換を実施した。0.4gの7−ケト−LCAをリン酸カリウム緩衝液(50mM,pH8)の10ml中に懸濁し、2M水酸化ナトリウムの添加によってpH8へ調節した。イソプロパノール0.2ml、7β−HSDH100単位、およびThemoanaerobacter ethanolicusからのアルコールデビドロゲナーゼ(ADH−TE)80単位(Dr.K.Momoi、ITB大学、シュトゥットガルトからの寄贈)、およびNADP1μmolを加えた。20mlの全反応容積を得るため同じ緩衝液を加えた。反応混合物を24℃でインキュベートし、そして24時間攪拌した。この間NADPHはADHにより2−プロパノールの酸化を介して再生された。生成物を2M塩酸1mlで酸性化し、酢酸エチル5×5mlで抽出した。有機溶液は次に蒸留された。
【0175】
f)クロマトグラフ生成物決定
LC20AD HPLCシステム(島津、日本)上にLiChroCARTTMSTAR RP18タイプ(エンドキャップした、Merck、ドイツ)のプレカラムを備えたPurospherTMSTAR RP−18タイプのカラム(HitbarTMRT125−4 プレパックしたカラム、PurospherTMSTAR RP−18 エンドキャップした、Merck、ドイツ)上で1ml/minの流速においてHPLC分析が実施された。移動相は2種の溶出液からなっていた。溶出液Aはアセトニトリルを含有し、溶出液Bは蒸留水(pH2.6、オルトリン酸85%で調節)であった。以下の勾配が使用された:A35%(8分)−35%−43%(1%min−1)−43%−70%(1%min−1)−70%(5min)−70%−35%(17.5%min−1)−35%(5min);溶出液A65%(8min)−65%−57%(1%min−1)−57%−30%(1%min−1)−30%(5min)−30%−65%(17.5%min−1)−65%(5min)。サンプル20μl(1mg/ml)が分析された。標準として真正UDCA,7−ケト−LCAおよびCDCAが同じ濃度で使用された。記録は200nmにおけるUV検出によって実行された。
【0176】
g)配列アラインメントおよび分子進化分析
Clastal X ソフトウエア(Thompson et al.,1997,Nucleic Acid Research25:4876−82)を使用して多数配列アラインメントが創出され、Jalview ソフトウエア(Clamp et al.,2004,Bioinformatics 20:426−7)を用いて修飾された。分子進化系統樹はプログラムTreeView1.6.6(Roderic 2001,http://taxonomy.zoology.gla.ac.uk./rod.html)を使用してつくられた。
【0177】
h)テスト結果
1.調製用バイオ変換における7β−HSDH活性の同定
酵素の機能を確認するため、10mlスケールにおいて7−ケト−LCAのバイオ変換を実施した。ここでは既に記載したように、NADPHの再生のためADHと2−プロパノールを組合わせて単離した酵素が使用された。HPLC分析は、UDCAだけがこの酵素によって生産される反応生成物(90%変換)であることを示した。CDCA(保持時間19.4分)は反応混合物中に検出されなかった。この結果はNADPH依存性7β−HSDHであり、そして7−ケト−LCAの7−カルボニル基の7β−ヒドロキシル基への選択的還元ができることを示す。
UDCA保持時間 :15.5分
7−ケト−LCA保持時間 :18.3分
【0178】
2.精製およびゲル濾過
Collinsella aerofaciens DSM3979からの7β−HSDH遺伝子を発現ベクターpET28a(+)にクローニングし、その後の過発現の後、N−末端にHis−Tagを備えた融合タンパク質が培養物1hあたり332.5mg(5828U)の7β−HSDH収率で得られた。His−Tagを備えた7β−HSDHは固定化した金属イオンアフィニティクロマトグラフィーによる1工程で精製された(純度>90%、収率76%、図2を見よ)。トラック1および2の主要バンドは、この遺伝子のアミノ酸配列から誘導される予知された分子量に相当する、30kDaの期待した発現生成物を代表する。しかしながら、ゲル濾過によって7β−HSDHに対し56.1kDaの分子量が決定された。このことはCollinsella aerofaciens DSM3979からの7β−HSDHのダイマー性格を確認する。
【0179】
3.配列アラインメント
本発明に従った7β−HSDHのアミノ酸配列が既知のHSDS配列と比較された(図3を見よ)。観察された配列類似性は、本発明に従った酵素は短鎖デヒドロゲナーゼ(SDR)のファミリーに属することを指示する。SDRは非常に低い相同性および配列同一性を示すことが知られている(Jornval,H.,B.Persson,M.Krook,S.Atrian,R.Gonzalez−Duarte,J.Jeffrey,and D.Ghosh;Short−Chain dehydrogenases/reductases(SDR),Biochemistry 34:6003−13 and Persson,B.,M.Krook,and H.Jornvall,1991;Characeristics of Short−chain alcohol dehydrogenases and related enzymes, Eur.J.BioChem 200:537−43)。しかしながら、配列アラインメントはSDR一次構造中の保存されたドメインを明瞭に示している。N−末端モチーフGly−X−X−X−Gly−X―Gly(Gly−41,Gly−45およびGly−47に対応、アラインメントに対応するナンバリング)は、SDRスーパーファミリーの特徴的なジヌクレオチド結合モチーフに相当する。加えて、3つの強い保存された残基Ser−177,Tri−190およびLys−194(アラインメントに従ったナンバリング)を識別することができ、これはSDR酵素の触媒性の3組に相当する。
【0180】
4.分子進化系統分析
図3のアラインメントに基づいた進化樹が図4に示されている。Clostridium sordellii,Brucella melitensisおよびEscherichia coliからの7α−HSDHは同じグループに属する。3α−HSDHの両方は他のHSDHよりももっと目立った関係を示す。興味あることに、原核7β−HSDHは、Cavia porcellus,Homo sapiensおよびMus musulusを含む動物11β−HSDHサブグループに関係している。
【0181】
5.動力学定数
UDCA,7−ケト−LCA、DHCA,NADPおよびNADPHのためのLineweaver−Burkプロットを使ったVmaxおよびKの絶対値を決定するため、動力学的平衡分析が実施された。以下の表において、基質飽和曲線および逆数プロットから得た、テストした基質および補酵素のためのすべての動力学データが要約されている。すべての基質および補酵素のVmax,Kおよびkcat値は同じ範囲にあるが、しかしDHCAのK値は、多分低い水中溶解度のため他の基質よりも有意に高い。酵素はNADPH依存性であり、そしてNADおよびNADHの動力学定数は非常に低い活性のため決定できなかった。
【0182】
【表4】

a)非常に低い活性のため決定不能
b)1U=1μmol/min
【0183】
6.pH最適値
さらに、精製した酵素を用いて、pHの関数としての種々の基質に対する7β−HSDH活性が決定された(図5を見よ)。7β−HSDHによるUDCAの酸化については、最適活性はpH9ないし10の範囲にあり、酸性側で徐々に低下することが観察された。これと対照的に、7β−HSDHによるDHCAおよび7−ケト−LCAの還元に対しては、最適活性はpH4ないし6の範囲にあり、酸性側でシャープな下降およびアルカリ側で徐々に低下することが見られた。異なる緩衝液は、同じpHにおいて7β−HSDHの活性に少ししか影響しなかった。
【0184】
7.熱安定性
本発明に従ったNADP依存性7β−HSDHは以下の安定性挙動を示す。400分後30℃での活性は23℃より約30%低い。この酵素は30℃で1500分後完全に失活するが、しかし23℃で1500分後では残存活性は20%であった。リン酸カリウム緩衝液(50mM、pH8)中−20℃において多数回冷凍および解凍後数ヶ月にわたっての貯蔵中有意な活性損失は観察されなかった。
【0185】
【表5】

AA=アミノ酸配列
NA=核酸配列
【図1a】

【図1b】

【図1c】

【図1d】

【図1e】

【図1f】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゲル濾過によって決定して約53ないし60kDaの分子量を有し、バクテリア、特にCollinsella aerofaciens DSM3979(ATCC25986)のようなCollinsella属のバクテリアから得られる、7β−ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼ(7β−HSDH)およびこの7β−HSDHから誘導される機能的均等物。
【請求項2】
a)7−ケトステロイドの対応する7β−ヒドロキシステロイドへの立体特異性還元、および/または
b)7位にある7−ケトステロイドの対応する7β−ヒドロキシステロイドへの位置特異性水素化
を触媒する、請求項1の7β−HSDHまたはそれから誘導される機能的均等物。
【請求項3】
ゲル濾過によって決定して約53ないし60kDaの分子量を有し、そして特に少なくとも7−ケトステロイドの対応する7β−ヒドロキシステロイドへの立体特異性還元を触媒する、配列同定No.2に従ったアミノ酸配列、またはこの配列に対し少なくとも80%の同一度を有するそれから誘導された配列を含む、7β−HSDH。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれに従った7β−HSDHの存在下、対応する7−ケトステロイドが変換され、そして少なくとも一つの還元生成物が任意に反応系から単離される、7β−ヒドロキシステロイドの酵素合成方法。
【請求項5】
還元されるケトステロイドが、
デヒドロコール酸(DHCA),
7−ケト−リトコール酸(7−ケト−LCA),
7,12−ジケト−リトコール酸(7,12−ジケト−LCA)、および
特に前記酸の塩、アミドまたはアルキルエステルのようなその誘導体から選ばれる、請求項4の方法。
【請求項6】
還元はNAD(P)Hの存在下(そして消費を伴って)実施される請求項4または5の方法。
【請求項7】
請求項1ないし3のいずれかに従った7β−ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼの存在下、ヒドロキシステロイドが変換され、そして生成した酸化生成物が任意に反応系から単離される、7β−ヒドロキシステロイドの酵素酸化方法。
【請求項8】
7β−ヒドロキシステロイドは3,12―ジケト−7β−CAまたは塩、アミドまたはアルキルエステルのようなその誘導体である請求項7の方法。
【請求項9】
酸化はNAD(P)の存在下(そして消費を伴って)実施される請求項7または8の方法。
【請求項10】
消費されたレドックス均等物が電気化学的にまたは酵素的に再生される請求項6または9の方法。
【請求項11】
消費されたNAD(P)Hが、NAD(P)デヒドロゲナーゼおよび特にアルコールデヒドロゲナーゼ(ADH)から選ばれるNAD(D)H−再生酵素とカップリングすることによって再生される請求項10の方法。
【請求項12】
NAD(P)H−再生酵素は、単離または富化された、天然または組換えられた、
a)アルコールデヒドロゲナーゼ(EC1.1.1.2)および
b)それから誘導された機能的均等物
から選ばれる請求項11の方法。
【請求項13】
式(1)
【化11】

(式中、Rはアルキル、NR,H,アルカリ金属イオン、またはN(Rを意味し、ここでRは同一または異なってHまたアルキルを意味する。)
のウルソデオキシコール酸(UDCA)の製造方法であって;
a)式(2)
【化12】

(式中Rは前記の意味を有する。)のコール酸(CA)が任意に式(3)
【化13】

(式中Rは前記の意味を有する。)のデヒドロコール酸(DHCA)へ化学的に酸化され;
b)DHCAが請求項1ないし3のいずれかに従った少なくとも一つの7β−HSDHの存在下、式(4)

【化14】

の3,12−ジケト−7β−コール酸(3,12−ジケト−7β−CA)へ還元され;
c)3,12−ジケト−7β−CAが少なくとも一つの3α−ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼ(3α−HSDH)の存在下、式(5)
【化15】

(式中Rは前記の意味を有する。)の対応する12−ケト−ウルソデオキシコール酸(12−ケト−UDCA)へ還元され;
d)式(5)の12−ケト−UDCAがUDCAへ化学的に還元され;そして
e)反応生成物が任意にさらに精製される、ことを特徴とする方法。
【請求項14】
ステップb)および/またはステップc)は(特に酵素的)助因子再生ステップと組合わされる請求項13の方法。
【請求項15】
ステップb)はNADPHが犠牲的アルコール消費を伴うアルコールデヒドロゲナーゼ(ADH)により再生される助因子再生ステップと組合わされる請求項14の方法。
【請求項16】
ステップc)は、NADHがホルメートの消費を伴うホルメートデヒドロゲナーゼ(FDH)により再生される、またはNADPHが犠牲的にアルコール消費を伴うアルコールデヒドロゲナーゼ(ADH)により再生される、助因子再生ステップと組合わされる請求項14または15の方法。

【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2013−511973(P2013−511973A)
【公表日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−540462(P2012−540462)
【出願日】平成22年11月30日(2010.11.30)
【国際出願番号】PCT/EP2010/068576
【国際公開番号】WO2011/064404
【国際公開日】平成23年6月3日(2011.6.3)
【出願人】(510255107)ファルマツェル、ゲーエムベーハー (2)
【Fターム(参考)】