説明

方法の改良

高度に選択的にE異性体であるブロモプロピリデン生成物を得るためのシクロプロピルカルビノールの選択的開環反応用試薬としてPBr3が使用される、有用な生物活性を有する化合物の中間体の改良された化学的合成法が開示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有用な生物活性を有する化合物を製造するための合成方法の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明は、1−{5−[3−ブロモプロピ−(E)−リデン]−5,11−ジヒドロ−10−オキサ−1−アザジベンゾ[a,d]シクロヘプテン−7−イル}エタノンの合成製法における改良であり、それは生物活性化合物、例えば、特許文献1で開示されたもの合成のために使用される中間体である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許第6329385号
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0004】
有用な生物活性を有する化合物の合成における中間体の改良された合成法が開示され、それは、高度に選択的にE異性体であるブロモプロピリデン生成物(スキーム1)を得るため、PBr3をシクロプロピルカルビノールの選択的開環反応用の試薬として用いるものである。ブロモプロピリデンは、当業者に採用される標準的な技法を用いて単離することができる。より好ましくは、この技術の適用において中間体は単離されない。その代わりに、それは、Friedel-Crafts条件下(AcCl、AlCl3、DCM、又は他のFriedel-Crafts系)、同一反応ポット内で、上記名称の生成物に転換し、クエンチング、抽出後処理、および濃縮後に、上記名称の生成物を、E/Z異性体の混合比が、>18:1として、85%収率で得られる。DCM(ジクロロメタン、また、塩化メチレンとして知られている)は、これらの変換反応に対して好ましい溶媒ではあるが、PBr3、AcCl及びFriedel-Crafts試薬と相溶性のあるその他の溶媒も、また、使用できる。
【化1】

【発明を実施するための形態】
【0005】
スキーム2において、上記で引用した特許で用いられる反応順序が見られる。
【化2】

【0006】
スキーム3において、本明細書で開示されるPBr3の使用により改良された反応工程が見られる。
【化3】

【実施例】
【0007】
〔実施例1〕
1−(5−(3−ブロモプロピ−(E)−リデン)−5,11−ジヒドロ−10−オキサ−1−アザジベンゾ[a,d]シクロヘプテン−7−イル)エタノンの合成(スキーム2、化合物III)
5−シクロプロピル−5,11−ジヒドロ−10−オキサ−1−アザジベンゾ[a,d]シクロヘプテン−5−オール(175g、0.691mol)を、窒素ブランケット、テフロンコートされた熱電対の温度センサー及び機械的撹拌機を備えた5Lの三口丸底フラスコ内で、塩化メチレン(1750mL)中に懸濁させ、−15℃に冷却した。三臭化リン(98.2g、0.363mol、0.53当量)を、−23〜−15℃の温度に維持しながら、注射器を用いて45分間かけて加えた。反応混合物を、全ての固体が溶解するまで、−30〜−15℃で30分間撹拌した。溶液を1時間かけて、5〜10℃に温めた。追加の、三臭化リン(5.5g、0.03当量)を加えた。黄色懸濁液を−5℃に冷却し、そして、AlCl3(230.3g、1.73mol、2.5当量)を2〜3分間かけて加えた。温度を1〜6℃に維持しながら、塩化アセチル(54.23g、0.69mol、1.00当量)を加えた。混合物に氷(1.6kg)及び水(2.6L)の混合物を加えて、反応をクエンチし、そして、相を分離させた。水相を塩化メチレン(0.5L)で抽出した。合わせた有機相をセライトを通して濾過し、NaHCO3(5%水溶液、0.65L)で洗浄し、Na2SO4(0.25kg)上で乾燥、濾過し、そして濃縮して、1−[5−(3−ブロモ−プロピリデン)−5,11−ジヒドロ−10−オキサ−1−アザジベンゾ[a,d]シクロヘプテン−7−イル]−エタノン(227.7g)を、濃厚な、薄オレンジ色の油として得た。210.2g(84.9%:2段階の連結シーケンスを通しての全収率)は、塩化メチレン(7.7質量%)(NMR)分を補正した値であり、HPLCによるアシル化E/Z異性体の比率は約17:1であった。
HPLC条件:カラム:4.6×150mm;Eclipse XDB-C8、5μ;流速:1.0mL/分;移動相:アセトニトリル/0.1%TFA(40:60)、カラム温度=35oC;250nmでのUV検出;5−シクロプロピル−5,11−ジヒドロ−10−オキサ−1−アザジベンゾ[a,d]シクロヘプテン−5−オール=2.2分;Z−アシル化中間体:1−[5−(3−ブロモ−プロピリデン)−5,11−ジヒドロ−10−オキサ−1−アザジベンゾ[a,d]シクロヘプテン−7−イル]−エタノン=5.9分;Z−非アシル化中間体:5−(3−ブロモ−プロピリデン)−5,11−ジヒドロ−10−オキサ−1−アザジベンゾ[a,d]シクロヘプテン=6.2分;E−アシル化1−[5−(3−ブロモ−プロピリデン)−5,11−ジヒドロ−10−オキサ−1−アザジベンゾ[a,d]シクロヘプテン−7−イル]−エタノン=7.2分;E−非アシル化中間体:5−(3−ブロモ−プロピリデン)−5,11−ジヒドロ−10−オキサ−1−アザジベンゾ[a,d]シクロヘプテン=9.0分。
1HNMR:(CDCl3)δ8.54(1H,d),7.95(1H,s),7.75(1H,d),7.57(1H,d),7.32(1H,m),6.86(1H,d),6.15(1H,t),5.7−5.3(2H,brm),3.47(2H,t),2.75(2H,m),2.55(3H,s)ppm。
13CNMR:(CDCl3)196.57,159.18,152.72,148.79,138.63,135.65,135.36,131.24,130.86,130.69,130.03,126.06,123.74,119.72,72.14,32.13,32.04,26.34ppm。
【0008】
〔実施例1a〕
1−(5−(3−ブロモプロピ−(E)−リデン)−5,11−ジヒドロ−10−オキサ−1−アザジベンゾ[a,d]シクロヘプテン−7−イル)エタノンの合成(スキーム2、化合物III)
5−シクロプロピル−5,11−ジヒドロ−10−オキサ−1−アザジベンゾ[a,d]シクロヘプテン−5−オール(225g、0.888mol、1当量)を、機械的撹拌機を備え、窒素でパージした8Lのジャケット付き乾燥ガラス反応器内で、塩化メチレン(2250mL)中に懸濁させ、そして−15℃に冷却した。三臭化リン(126g、44mL、0.46mol、0.523当量)を、−15℃で滴下漏斗(100mL)を用い、1.25時間かけて滴下しながら加えた。滴下漏斗をジクロロメタン(140mL)で洗い流し、反応器を−5℃に温め、そして、1.5時間撹拌した。三塩化アルミニウム(295g、2.212mol、2.5当量)を1時間かけて連続的に加え、その間、発熱が観察された。反応混合物を、更に15分間撹拌した。塩化アセチル(66g、66mL、0.84mol、0.946当量)を滴下漏斗(100mL)を用いて、−5℃、1時間かけて滴下しながら加えた。反応混合物を、更に、1.5時間撹拌した。水(4500mL)を、始めの200mLは非常ゆっくり投入した。残りの水はより早く投入した。温度は加水分解の終了までに20℃に上昇させた。反応器の内容物をセライト(170g)の床を通して濾過し、フィルターケーキを塩化メチレン(250mL)で洗浄した。合わせた濾液を静置し、層を分離させた後、下層の有機層を炭酸水素ナトリウム(2200mL、飽和水溶液)、その後、塩化ナトリウム(2200mL、10%水溶液)で洗浄した。溶媒(2250mL)を大気圧下で蒸留した。t−ブチルメチルエーテル(1400mL)を、10分間かけて加えた。濃縮物が700mL(約1200mL分を蒸留)になるまで、蒸留を継続した。反応器をゆっくり20℃に冷却し、そして約2時間撹拌しながら20℃に維持した。得られたスラリー液を濾過し、フィルターケーキをt−ブチルメチルエーテル(225mL)で洗浄した。湿ったフィルターケーキを真空オーブン(40℃)で乾燥し、1−[5−(3−ブロモプロピリデン)−5,11−ジヒドロ−10−オキサ−1−アザジベンゾ[a,d]シクロヘプテン−7−イル]−エタノン(261.7g,82.2%:収率)を得た。HPLC面積=98.4%。
【0009】
本発明はその精神又は本質的な属性から離れることなく、他の特定の形態においても実現し得る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シクロプロピルカルビノールをPBr3で処理することを含む、高度に選択的にE異性体であるブロモプロピリデン生成物を得るためのシクロプロピルカルビノールの改良された開環反応。
【請求項2】
5−シクロプロピル−5,11−ジヒドロ−10−オキサ−1−アザジベンゾ[a,d]シクロヘプテン−5−オールを相溶性溶媒中PBr3で処理することを含む、5−[3−ブロモプロピ−(E)−リデン]−5,11−ジヒドロ−10−オキサ−1−アザジベンゾ[a,d]シクロヘプテンの改良された合成法。
【請求項3】
溶媒がジクロロメタンである請求項2記載の合成法。
【請求項4】
次の反応:
【化1】

を実施することを含む、1−{5−[3−ブロモプロパ−(E)−イリデン]−5,11−ジヒドロ−10−オキサ−1−アザジベンゾ[a,d]シクロヘプテン−7−イル}エタノンの改良された合成法。
【請求項5】
溶媒としてジクロロメタンを用いて反応を実施する請求項に4記載の合成法。

【公表番号】特表2011−505365(P2011−505365A)
【公表日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−536113(P2010−536113)
【出願日】平成20年11月25日(2008.11.25)
【国際出願番号】PCT/US2008/084613
【国際公開番号】WO2009/070556
【国際公開日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【出願人】(500287639)ミレニアム・ファーマシューティカルズ・インコーポレイテッド (98)
【氏名又は名称原語表記】MILLENNIUM PHARMACEUTICALS, INC.
【Fターム(参考)】