説明

施解錠カード及びそれを用いたカードロックシステム

【課題】施解錠カードを紛失した場合であっても他人による不正使用を防止することができる。
【解決手段】正しい鍵か否かを照合するためのキー情報が記憶された施解錠カード10に利用者の生体情報を取得する生体情報取得部12を備え、初回の解錠操作時に生体情報取得部12で取得した利用者の生体情報を認証用生体情報としてカード式電気錠20が記憶する。また、2回目以降の施解錠時は、施解錠カード10から取得したキー情報と生体情報とを照合し、キー情報と生体情報が共に正常であると認証されると、現在の錠前の状態と扉の開閉状態に応じて錠前を解錠又は施錠制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、錠前の施解錠に必要なキー情報が記憶された施解錠カードを用いて錠前を施解錠する際に、施解錠カード内のキー情報の正当性を判別して正常に認証したときのみ錠前を電気的に施解錠制御するカードロックシステムに係り、特にキー情報を記憶した施解錠カードを紛失した場合であっても他人による不正使用を防止することができる施解錠カード及びそれを用いたカードロックシステムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、ホテルやオフィスビル等の商業施設や公共施設の入出口、集合住宅や一般住宅のエントランスや玄関等にはカード式電気錠を用いたカードロックシステムが広く普及している。このカードロックシステムは、各所の電気錠毎に予め割り当てられた特定の暗号や施解錠情報等の各種カード情報が記憶されたカード状記憶媒体を施解錠カードとして用い、この施解錠カードに記憶された各種データ(例えば特定の暗号による施解錠データ)を読み取り、読み取った各種カード情報を予め登録された情報と照合して正当性を判別し、正常に認証した場合のみ、そのときの錠前の状態(扉の開閉状態、錠前の施解錠状態)に応じて錠前を電気的に施解錠制御するものである。
【0003】
また、このようなカードロックシステムは、ピッキング等の不正な施解錠行為を防止し、且つ、鍵の複製が非常に困難なため、セキュリティー面において信頼されている。さらに、各施解錠カード毎の各種データをホストコンピューターで管理しているため、データ破損等の心配がなく、施解錠カードを紛失した場合においても施解錠カードを再発行することが可能である。そして、このようなカード式電気錠を用いたカードロックシステムとしては、例えば下記特許文献1に開示されるものが公知である。
【0004】
図2(a),(b)は下記特許文献1に開示されるカードロックシステムの概略斜視図である。図2(a),(b)に示すように、例えばホテルなどの各部屋のドア毎に錠装置101が設けられる。錠装置101は、螺子などの固定手段によってドア200の所定箇所に配設され、ドア200を閉めた際に解錠用ソレノイドに通電して自動的に本締めボルト102の進退を行うものである。この錠装置101には、手動式カードリーダ105と、解錠表示をする表示灯106と、鍵穴107及びサムターン108が設けられている。手動式カードリーダ105は、カード通過溝103が形成され、カード104を手動で通過溝103内を走査する形式のものである。
【特許文献1】特公昭58−51593号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、例えばホテルに採用されるカードロックシステムでは、フロント等に設置された例えばパソコン等の管理用端末の操作により、正しい鍵か否かを照合するための施解錠情報として例えばホテル情報、チェックイン・チェックアウトの日付、宿泊者名、部屋番号、シーケンス番号等のキーデータを磁気カードやICカード等に記憶させ、このキーデータが記憶された施解錠カードをチェックイン時に宿泊者に発行している。そして、宿泊者が宿泊部屋に入室する場合には、チェックイン時に発行された施解錠カードのキーデータを宿泊部屋のカード式電気錠のカードリーダに読み込ませる。カード式電気錠では、施解錠カードから読み込んだキーデータと、予め登録された認証用キーデータとを照合して正当性を判別し、正常に認証したときのみ錠前を電気的に解錠制御する。これにより、その宿泊部屋への入室が行えるようになっている。なお、閉扉時には錠前が自動的に施錠制御されるようになっている。
【0006】
しかしながら、現行のホテルに採用されているカードロックシステムでは、フロントに設置される管理装置と各客室のカードリーダーとがオフライン状態で使用されており、カードに記憶されたカードデータの正当性のみを判別して錠の解錠を行っている。このため、利用者がカードを紛失した場合、そのカードを拾得した第3者によって不正に使用される虞があり、セキュリティ性に問題があった。
【0007】
そこで、本発明は上記問題点に鑑みてなされたものであり、カードを紛失した場合であっても不正利用されることなくセキュリティ性が確保できる施解錠カード及びそれを利用したカードロックシステムを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記した目的を達成するために、請求項1記載のカードは、キー情報の正当性を判別して正常に認証したときのみ錠前を電気的に施解錠制御するカードロックシステムに用いられ、前記キー情報が予め記憶された施解錠カードにおいて、
利用者の生体情報を取得する生体情報取得部を備えたことを特徴とする。
【0009】
請求項2記載のカードロックシステムは、請求項1記載の施解錠カード内のキー情報の正当性を判別して正常に認証したときのみ錠前を電気的に施解錠制御するカード式電気錠を備えたカードロックシステムであって、
前記カード式電気錠は、施解錠時に前記施解錠カードで取得した前記生体情報の正当性を認証し、前記キー情報と前記生体情報とが正常に認証されたときに現在の錠の状態に応じて前記錠前を施解錠制御することを特徴とする。
【0010】
請求項3記載のカードロックシステムは、請求項2記載のカードロックシステムにおいて、
前記カード式電気錠は、前記施解錠カードから取得した前記生体情報が新規の情報であり、且つ前記キー情報を正常に認識したときのみ当該取得した生体情報を認証用生体情報として記憶することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、利用者が施解錠カードを紛失した場合であっても、キー情報に加えて利用者の生体情報を利用して施解錠制御を行っているため、不正にカードが使用されることを防止し、且つ管理装置との間がオフライン状態であってもセキュリティ性を確保することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明を実施するための最良の形態について、添付した図面を参照しながら詳細に説明する。図1は本発明に係るカードロックシステムの構成を説明するための概略ブロック図である。
【0013】
本例のカードロックシステムは、例えばホテル客室、住宅玄関扉、事務出入り口等に採用される。ここでは、ホテル客室に採用した場合のカードロックシステムを例にとって説明するが、これに限定されることはなく、例えば公共施設やオフィスビル、マンションなどの集合住宅などにも採用することができる。
【0014】
以下、本例のカードロックシステムの構成について説明する。図1に示すように、カードロックシステム1は、フロントで発行され客室の入室時に使用する施解錠カード10と、客室毎に設置されたカード式電気錠20とを備えて概略構成される。
【0015】
施解錠カード10は、例えばICチップなどの記憶領域を有する集積回路部11を搭載し、接触若しくは非接触通信によって各種情報のリード/ライトが可能なカード状記憶媒体で構成される。集積回路部11には、例えばホテル情報、チェックイン・チェックアウトの日付、宿泊者名、部屋番号、カードの有効・無効を示すシーケンス情報等のキー情報(正しい鍵か否かを照合するための各種情報)が記憶されている。
【0016】
また、施解錠カード10は、例えば指紋、指先の静脈パターン、虹彩、声紋、顔認証などの人間の身体的特徴(生体器官)や行動的特徴(癖)の情報を利用するバイオメトリクス認証(生体認証)を行うべく、利用者の生体情報を取得する生体情報取得部12を備えている。この生体情報取得部12は、フロントで発行された施解錠カード10で客室の施解錠を行なう際に宿泊者の所定操作に基づき利用者の生体情報を取得し、この取得した生体情報のソフトウェア解析を行い、この解析した生体情報を集積回路部11に出力している。
【0017】
この施解錠カード10は、フロントでチェックイン時に発行され、チェックイン時や客室に入室する際に、利用者の所定操作に基づき利用者の生体情報を取得し、この取得した生体情報とカード発行時に予め記憶された各部屋ごとのキー情報とが接触若しくは非接触通信によりカード式電気錠20に取得される。
【0018】
カード式電気錠20は、各客室の扉や扉付近に設置され、情報取得部21、記憶部22、電気錠制御部23、駆動機構24、電源部25を備えて構成される。なお、本例のカード式電気錠20は、施解錠カード10によって錠が解錠された後、扉が閉扉状態となって所定時間経過すると電気錠制御部23の制御により自動的に錠を施錠する構成や施錠時にも施解錠カード10を用いた施錠操作により錠を施錠する構成とすることができる。
【0019】
情報取得部21は、例えばスワイプ式、挿入式、非接触式などのカードリーダで構成され、施解錠カード10から各種情報を取得している。情報取得部21は、フロントにて発行され宿泊者に手渡される施解錠カード10のキー情報や生体情報を接触若しくは非接触通信によって取得し、この取得したキー情報と生体情報を記憶部22と電気錠制御部23のそれぞれに出力している。
【0020】
記憶部22は、例えば磁気的、光学的記憶媒体若しくはROM、RAM等の半導体メモリで構成され、情報取得部21が取得したキー情報が正当な情報であるか否かを判別するための認証用キー情報、モニタ情報としての状態信号(扉の開閉状態信号や錠前の施解錠状態信号)等のカード式電気錠20の施解錠制御に必要な各種データを記憶している。また、記憶部22は、情報取得部21が取得した宿泊者の生体情報を認証用生体情報として一時的に記憶している。
【0021】
なお、記憶部22が一時的に記憶する宿泊者の生体情報は、宿泊者が最初に入室する際に取得した生体情報を、次回施解錠カード10から取得した生体情報の正当性の判別するための認証用生体情報として記憶している。この生体情報の記憶は、情報取得部21が施解錠カード10から取得したキー情報が正常に認証されたときに行われ、利用者のキー情報に基づき利用者がチェックアウトする日時になると自動的に抹消される。
【0022】
電気錠制御部23は、例えばCPU、ROM、RAM等を含むマイクロコンピュータで構成される。電気錠制御部23は、情報取得部21からのキー情報と記憶部22に予め記憶された認証用キー情報とを照合して正当性を判別するとともに、記憶部22に記憶される認証用生体情報と施解錠操作時に施解錠カード10から取得した生体情報とを照合して正当性を判別し、キー情報及び生体情報の両方が正常であると認証された場合にのみ、現在の錠前の施解錠状態、扉の開閉状態に応じて錠前を電気的に施解錠制御している。
なお、記憶部22に対する認証用生体情報の記憶は、チェックイン時にフロントにて発行された施解錠カード10を用いて利用者が最初に入室する際に、情報取得部21から取得したキー情報が正常に認証されたときに行っている。
【0023】
また、電気錠制御部23は、錠前の施解錠制御時に、駆動機構24を駆動させるための駆動制御信号の出力、電源部25から駆動機構24を含む各部への電源供給の制御、錠前からモニタ情報として入力される状態信号(例えば扉の開閉状態信号、錠前の施解錠状態信号)の判別処理等を行っている。なお、電気錠制御部23は、上述したキー情報及び生体情報の照合による正当性を判別を行い、キー情報と生体情報の何れか一方の情報が正常に認証されなけれないときに、異常の旨を知らせる表示や警報を行うようにすることもできる。
【0024】
駆動機構24は、例えばモータやソレノイド等の駆動装置と錠前で構成され、電気錠制御部23から入力される駆動制御信号により錠前を施錠または解錠するべく駆動し、扉枠の係止穴に対してデッドボルトを突出(施錠時)又は引き込む(解錠時)ことにより錠前が施解錠される。
【0025】
電源部25は、例えば商用電源(AC100V)である外部電源で構成され、通電金具を介してカード式電気錠20を構成する各部に電源を供給する。また、電源部25は、錠前やエスカチオン(化粧板)の内部に着脱可能に設けられる電池で構成し、この電池からカード式電気錠20を構成する各部に電源を供給することもできる。
【0026】
そして、上記構成によるカードロックシステム1では、ホテル従業員がフロントでの利用者のチェックイン時に、キー情報を作成して記憶させた施解錠カード10を発行する。その後、この施解錠カード10の生体情報取得部12に利用者の生体情報を取得させる。
【0027】
利用者が宿泊部屋に最初に入室する場合は、まず発行された施解錠カード10を持って宿泊部屋に出向き、カード式電気錠20の情報取得部21に施解錠カード10に記憶されるキー情報と生体情報を取得させる。
【0028】
カード式電気錠20は、施解錠カード10に記憶されたキー情報と予め記憶した認証用キー情報とを照合して正当性を判別する。そして、キー情報が正常に認証されると、施解錠カード10から取得した生体情報を認証用生体情報として記憶した後、現在の錠前が施錠状態で閉扉状態であれば錠前を解錠制御する。これにより、その宿泊部屋への入室が可能となる。
【0029】
また、利用者が2回目以降に宿泊部屋に入室する場合は、施解錠カード10に利用者の生体情報を取得させ、カード式電気錠20の情報取得部21に施解錠カード10に記憶されるキー情報と生体情報を取得させる。カード式電気錠20は、施解錠カード10に記憶されたキー情報と生体情報の正当性を判別する。そして、キー情報と生体情報が共に正常と認証されると、現在の錠前が施錠状態で閉扉状態であれば錠前を解錠制御する。これに対し、キー情報及び生体情報の少なくとも一方が異常と判別されると、錠前は解錠制御されず、錠前及び扉は現在の状態(施錠状態、閉扉状態)を維持する。
【0030】
このように、上述したカードロックシステム1では、正しい鍵か否かを照合するためのキー情報が記憶された施解錠カード10に利用者の生体情報を取得する生体情報取得部12を備え、初回の解錠操作時に生体情報取得部12で取得した利用者の生体情報を認証用生体情報としてカード式電気錠20が記憶する。また、2回目以降の施解錠時は、施解錠カード10から取得したキー情報と生体情報とを照合し、キー情報と生体情報が共に正常であると認証されると、現在の錠前の状態と扉の開閉状態に基づき錠前を制御する。
これにより、利用者が施解錠カード10を紛失した場合であっても、不正に使用されることなく、セキュリティ性の向上を図ることができる。また、キー情報に加えて利用者の生体情報を利用して施解錠制御を行っているため、管理装置との間がオフライン状態であってもセキュリティ性を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明に係るカードロックシステムの構成を説明するための概略ブロック図である。
【図2】(a),(b) 特許文献1に開示される従来のカードロックシステムの概略斜視図である
【符号の説明】
【0032】
1 カードロックシステム
10 施解錠カード
11 集積回路部
12 生体情報取得部
20 カード式電気錠
21 情報取得部
22 記憶部
23 電気錠制御部
24 駆動機構
25 電源部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
キー情報の正当性を判別して正常に認証したときのみ錠前を電気的に施解錠制御するカードロックシステムに用いられ、前記キー情報が予め記憶された施解錠カードにおいて、
利用者の生体情報を取得する生体情報取得部を備えたことを特徴とする施解錠カード。
【請求項2】
請求項1記載の施解錠カード内のキー情報の正当性を判別して正常に認証したときのみ錠前を電気的に施解錠制御するカード式電気錠を備えたカードロックシステムであって、
前記カード式電気錠は、施解錠時に前記施解錠カードで取得した前記生体情報の正当性を認証し、前記キー情報と前記生体情報とが正常に認証されたときに現在の錠の状態に応じて前記錠前を施解錠制御することを特徴とするカードロックシステム。
【請求項3】
前記カード式電気錠は、前記施解錠カードから取得した前記生体情報が新規の情報であり、且つ前記キー情報を正常に認識したときのみ当該取得した生体情報を認証用生体情報として記憶することを特徴とする請求項2記載のカードロックシステム。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−203630(P2009−203630A)
【公開日】平成21年9月10日(2009.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−44720(P2008−44720)
【出願日】平成20年2月26日(2008.2.26)
【出願人】(390037028)美和ロック株式会社 (868)
【Fターム(参考)】