説明

旋動式破砕機

【課題】旋動式破砕機の回転軸と回転軸にかかる軸方向の荷重を支持する軸受との間で片当たりが生じても、片当たりによる軸受の割れを防止するとともに、軸受の摩耗を低減する。
【解決手段】筒状のフレーム2と、主軸4と、主軸4が嵌め込まれ、主軸4を旋動回転させる回転軸3とを有し、回転軸3の軸方向にかかる荷重が回転軸3の大径部3aと小径部3bとの段差部3cに装着されたスラスト滑り軸受13で支持される旋動式破砕機1である。軸受13は、上面と下面に環状の滑り面30,31が形成された摺動部材32と、回転軸3に固定され、摺動部材32の上面の滑り面30と滑り接触する環状の滑り面33が下面に形成されたベアリング押え34と、フレーム2の内面下部に固定され、摺動部材32の下面の滑り面31と滑り接触する環状の滑り面35が上面に形成されたベアリング座36とを有し、摺動部材32をナイロン樹脂で形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、回転軸の回転によりマントルを旋動回転させて被破砕物を破砕する旋動式破砕機、詳しくは、その旋動式破砕機の回転軸を支持するスラスト滑り軸受に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的な構造の旋動式破砕機101は、図6に示すように、筒状のフレーム102内に設置されるバウルライナー103と、マントル104が設置されるマントルコア105を装着した主軸106と、その主軸106が嵌め込まれ、主軸106を旋動回転させる回転軸107とを有し、その回転軸107の回転により、主軸106とともにマントル104を旋動回転させて、そのマントル104とバウルライナー103との間で被破砕物を破砕するものである。
【0003】
この旋動式破砕機101の回転軸107は、径の大きい大径部107aと、大径部107aよりも径の小さい小径部107bとからなり、フレーム102の中央に形成された小径の筒部108に鉛直軸回りに回転可能に挿入されるとともに、その軸方向にかかる荷重が大径部107aと小径部107bとの段差部107cに装着された軸受109で支持されている。
【0004】
ここで、回転軸107を支持する軸受109として、図7に示すように、スラスト玉軸受109が用いられている。このスラスト玉軸受109は、軸方向に対向配置される円環状の一対の軌道輪110,111と、その軌道輪110,111の間に介在する玉112とを有する。
【0005】
一方の軌道輪110は、その上面がスペーサ113を介して回転軸107の段差部107cに接触した状態で、回転軸107の小径部107bの外周面に外嵌固定されている。他方の軌道輪111は、その下面がフレーム102の筒部108の下端に固定された筒状のボトムカバー114の内面114aに形成された小径の段部115に接触した状態で、ボトムカバー114の内面114aに内嵌固定されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上記旋動式破砕機101は、旋動回転するマントル104とバウルライナー103との間で被破砕物を破砕する時に金属片等の異物が混入すると、回転軸107に軸方向の過大な偏荷重が作用して回転軸107が傾き、その回転軸107とスラスト玉軸受109とがスペーサ113を介して片当たりすることがある。一般に玉軸受などの転がり軸受は、軌道輪110,111と玉112とが転がり接触するので、荷重を支える面積が小さい。そのため、回転軸107とスラスト玉軸受109との間で片当たりすると、軌道輪110,111と玉112との間に大きな荷重がかかりやすく、スラスト玉軸受109が割れてしまうことがあった。
【0007】
また、片当たりすると、軌道輪110,111と玉112との間で生じる摩擦が大きくなり、軌道輪110,111と玉112が早期に摩耗してしまう。そのため、スラスト玉軸受109の摩耗片や割れ片によって、他の部品が損傷してしまうこともあった。
【0008】
この発明が解決しようとする課題は、旋動式破砕機の回転軸とその回転軸にかかる軸方向の荷重を支持する軸受との間で片当たりが生じても、片当たりによる軸受の割れを防止するとともに、軸受の摩耗を低減することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、この発明は、筒状のフレーム内に設置されるバウルライナーと、マントルが設置されるマントルコアを装着した主軸と、その主軸が嵌め込まれ、前記主軸を旋動回転させる回転軸とを有し、その回転軸の軸方向にかかる荷重が前記回転軸の大径部と小径部との段差部に装着された軸受で支持され、前記回転軸の回転により、前記主軸とともにマントルを旋動回転させて、そのマントルと前記バウルライナーとの間で被破砕物を破砕する旋動式破砕機において、前記軸受は、上面と下面に環状の滑り面が形成された摺動部材と、前記回転軸に固定され、前記摺動部材の上面の滑り面と滑り接触する環状の滑り面が下面に形成されたベアリング押えと、前記フレームの内面下部に固定され、前記摺動部材の下面の滑り面と滑り接触する環状の滑り面が上面に形成されたベアリング座とを有するスラスト滑り軸受とし、前記摺動部材をナイロン樹脂で形成したのである。
【0010】
このように、回転軸の軸方向にかかる荷重を支える軸受として、スラスト滑り軸受を用いると、従来のスラスト玉軸受と比べて荷重を支える面積が大きくなるので、軸受の片当たりによる割れが生じにくくなる。さらに、ベアリング押えとベアリング座に上下に挟まれて滑り接触する摺動部材を、摩擦係数が小さく、しかも強靭性、耐摩耗性に優れたナイロン樹脂で形成しているので、回転軸と軸受との間で片当たりが生じても、片当たりによる軸受の割れが防止されるとともに、軸受の摩耗が低減される。
【0011】
前記ベアリング押えの滑り面または前記摺動部材の上面の滑り面に、その滑り面内周から滑り面外周まで伸びる複数の油溝を形成し、その油溝を他の前記油溝と交差させ、前記滑り面内周から前記油溝内に潤滑剤を流すことにより、前記滑り面間に潤滑剤を供給するようにすると好ましい。
【0012】
このようにすると、油溝の交差する交差点で潤滑剤が合流するので、その交差点において潤滑剤の滑り面に対する接触圧が高まる。そのため、潤滑剤が油溝の交差点から滑り面間へ押圧される力が大きくなり、滑り面間への油膜の形成が促進される。
【0013】
前記ベアリング座の滑り面または前記摺動部材の下面の滑り面に、その滑り面内周から滑り面外周まで伸びる複数の油溝を形成し、その油溝を他の前記油溝と交差させ、前記滑り面内周から前記油溝内に潤滑剤を流すことにより、前記滑り面間に潤滑剤を供給するようにしてもよい。
【発明の効果】
【0014】
この発明の旋動式破砕機は、回転軸にかかる軸方向の荷重がベアリング押えとベアリング座に上下に挟まれて滑り接触する摺動部材をナイロン樹脂で形成したスラスト滑り軸受で支持されるので、回転軸とスラスト滑り軸受との間で片当たりが生じても、そのスラスト滑り軸受の割れが防止されるとともに、スラスト滑り軸受の摩耗が低減される。また、割れ片や摩耗片によって、他の部品が損傷することがない。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】この発明の実施形態の旋動式破砕機を示す縦断面図
【図2】図1の旋動式破砕機の回転軸を支持するスラスト滑り軸受近傍の拡大断面図
【図3】図2のスラスト滑り軸受の分解斜視図
【図4】(a)は図3のベアリング押えを下方から見た一部切欠底面図、(b)は(a)のA−A線に沿った拡大断面図
【図5】(a)は図3のベアリング座を上方から見た一部切欠平面図、(b)は(a)のB−B線に沿った拡大断面図、(c)は(a)のC−C線に沿った拡大断面図
【図6】従来の旋動式破砕機を示す縦断面図
【図7】図6の旋動式破砕機の回転軸を支持するスラスト玉軸受近傍の拡大断面図
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、この発明の実施の形態を図面を参照しながら説明する。図1は、この発明の実施の形態の旋動式破砕機を示す縦断面図である。図1に示すように、旋動式破砕機1は、縦置きされた筒状のフレーム2と、鉛直軸回りに回転駆動される回転軸3と、回転軸3に嵌め込まれる主軸4と、バウルライナー5と、回転軸3を駆動するモータ6とを有する。
【0017】
フレーム2は、上部フレーム7と下部フレーム8とからなり、上部フレーム7の下端に形成されたフランジ部7aと下部フレーム8の上端に形成されたフランジ部8aとを向かい合わせてボルト9で連結している。下部フレーム8は、その中央に小径の筒部10を有し、その筒部10がその外周に形成された保持部11で保持されている。
【0018】
回転軸3は、径の大きい大径部3aと、大径部3aよりも径の小さい小径部3bとからなる。この回転軸3は、その大径部3aの外周面に嵌められたアウターブッシュ12を介してフレーム2の筒部10に鉛直軸回りに回転可能に挿入されるとともに、図2に示すように、その軸方向にかかる荷重が大径部3aと小径部3bとの段差部3cに装着された軸受13で支持されている。また、回転軸3は、図1に示すように、その下端部に従動プーリ14がキー15とキー溝16で固定され、そのキー15が回転軸3の下端面に固定されたエンドプレート17で抜け止めされている。
【0019】
回転軸3の上面には、偏心した傾斜孔18が形成されており、その傾斜孔18には主軸4の下半部がインナーブッシュ19を介して嵌め込まれている。これにより、回転軸3の回転によって主軸4が旋動回転するようになっている。主軸4は、その上半部に略円錐台状のマントルコア20が装着され、そのマントルコア20の上面にマントル21が載置固定されている。
【0020】
マントルコア20は、その底面20aが凸状の球面となっており、下部フレーム8の筒部10の上面に固定された球面支持体22により回転自在に支持されている。
【0021】
バウルライナー5は、上部フレーム7の内面に昇降筒23を介してマントル21と対向するように設置されている。昇降筒23は、図示しない油圧機構で昇降可能となっている。そのため、マントル21とバウルライナー5の摩耗による間隙の拡がりを調節することができ、破砕条件の悪化を防止することができる。昇降筒23の上部には、被破砕物をフレーム2内に投入するホッパー24が設けられている。
【0022】
モータ6は、そのモータ軸が鉛直下向きとなるように垂直板25に設置されている。垂直板25は、下部フレーム8の下端にボルト26で固定された水平板27に取り付けられている。モータ軸の下端部には駆動プーリ28が固定されており、その駆動プーリ28と従動プーリ14との間でベルト29が掛け渡されている。
【0023】
スラスト滑り軸受13は、図2、図3に示すように、上面と下面が円環状の滑り面30,31となっている円環状の摺動部材32と、その摺動部材32の上面の滑り面30と滑り接触する円環状の滑り面33が下面に形成された円環状のベアリング押え34と、摺動部材32の下面の滑り面31と滑り接触する円環状の滑り面35が上面に形成された円環状のベアリング座36とを有する。
【0024】
摺動部材32は、ナイロン樹脂で形成されている。この摺動部材32の素材としてのナイロン樹脂は、摩擦係数が小さく、しかも強靭性と耐摩耗性に優れているので、スラスト滑り軸受13の耐久性を向上させることができる。
【0025】
ベアリング押え34は、金属で形成されており、キー38とキー溝39で回転軸3の段差部3cに固定されて回転軸3と一体に回転するようになっている。ベアリング押え34の下面には、図3、図4に示すように、滑り面33の内周33aに沿って断面U字状の円周溝40が形成されており、その円周溝40の外径側溝壁40aから半径方向に伸びる貫通孔41が円周方向に一定の間隔をおいて複数形成されている。外径側溝壁40aには、貫通孔41に潤滑剤を供給する内周溝42が貫通孔41の内径側端部を横切るように円周方向全周に亘って形成されている。
【0026】
ベアリング押え34の滑り面33には、滑り面33に潤滑剤を供給する半円周状の油溝43が円周方向に複数形成されている。この油溝43は、滑り面内周33aから滑り面外周33bの近傍まで円弧状に伸びる円弧状溝43aと、その滑り面外周33bの近傍から滑り面内周33aまでさらに連続して円弧状に伸びる円弧状溝43bと、その円弧状溝43a,43bの最も滑り面外周33b側に位置する部分から滑り面外周33bまで伸びて滑り面外周33bに開口する開口溝43cとを有し、各円弧状溝43a,43bの内周側端部が滑り面内周33aに開口している。
【0027】
油溝43は、その円弧状溝43a,43bを略均等に3分割する2点のうち滑り面外周33bに近い方の点44で隣の油溝43と交差し、さらに隣の油溝43と滑り面内周33aに近い方の点45で交差している。油溝43の断面形状は、底部から溝壁にかけてU字状となっており、そのU字状の開口側端部が溝幅の広がる方向に傾斜する傾斜平面46となっている。
【0028】
ベアリング座36は金属で形成されており、図2に示すように、下部フレーム8の筒部10の下端にボルト47で固定された筒状のボトムカバー48の内面下部に形成された小径の段部49に固定されている。これにより、ベアリング座36は、下部フレーム8の内面下部にボトムカバー48と筒部10を介して固定される。
【0029】
ベアリング座36の上面には、図3、図5に示すように、滑り面35の内周35aに沿って断面U字状の円周溝50が形成されており、この円周溝50の外径側溝壁50aから半径方向に伸びる貫通孔51が円周方向に一定の間隔をおいて複数形成されている。ベアリング座36の外周面52には、貫通孔51に潤滑剤を供給する外周溝53が貫通孔51の外径側端部を横切るように円周方向全周に亘って形成されている。
【0030】
ベアリング座36の内周側縁部には、上方に伸びる筒状の柱部37が形成されており、図2に示すように、ベアリング押え34の円周溝40の貫通孔41の位置よりも上方に柱部37の先端部が全周に亘って近接することにより、柱部37の先端部と円周溝40の間に微少間隙を有している。これにより、摺動部材32とベアリング押え34とベアリング座36とで囲まれる筒状の第1の空間54が形成される。
【0031】
ベアリング座36の滑り面35には、図5に示すように、滑り面35に潤滑剤を供給するX字状の第1の油溝55が円周方向に一定の間隔をおいて複数形成されている。この第1の油溝55は、半径方向に対して傾斜して滑り面内周35aから滑り面外周35bまで伸びる小溝55aと、半径方向に対して小溝55aと反対方向に傾斜して滑り面内周35aから滑り面外周35bまで伸びる大溝55bとが、その各溝55a,55bを2等分する位置よりも僅かに滑り面内周35a側に寄った点56で交差している。この両溝55a,55bは、その内周側端部と外周側端部が滑り面内周35aと滑り面外周35bにそれぞれ開口している。
【0032】
小溝55aと大溝55bの断面形状は、図5(b),(c)に示すように、底部57から溝壁58にかけてU字状となっており、そのU字状の開口側端部が溝幅の広がる方向に傾斜する傾斜平面59となっている。
【0033】
大溝55bは、その溝幅と溝深さが小溝55aよりも大きく、この実施例では、大溝55bの溝幅と溝深さを小溝55aの溝幅と溝深さの2倍とした。また、大溝55bは、その外周側端部近傍から滑り面外周35bまで溝幅と溝深さが小さくなっている。
【0034】
隣り合う第1の油溝55の間には、半径方向に対して傾斜して直線状に伸びる第2の油溝60がそれぞれ形成されている。この第2の油溝60は、第1の油溝55の小溝55aの内周側端部近傍の滑り面内周35aに開口して、その隣りの第1の油溝55の小溝55aの外周側端部近傍に連通している。この第2の油溝60の断面形状は、図5(c)に示す第1の油溝55の大溝55bと同様の形状となっている。
【0035】
ボトムカバー48の内面は、図2に示すように、ベアリング座36の外周面52の下端から滑り面外周35bと貫通孔51の間まで円筒面61となってベアリング座36の外周面52に接触しており、その円筒面61にベアリング座36の外周溝53と対向する給油溝62が形成されている。
【0036】
また、ボトムカバー48の内面は、円筒面61の上端から上方に向かって徐々に径が拡がる円錐面63となっている。これにより、スラスト滑り軸受13と下部フレーム8の筒部10の間には、ボトムカバー48によって閉じられた第2の空間64が形成される。この第2の空間64と第1の空間54は各貫通孔41と各油溝43,55,60を介して連通している。
【0037】
ボトムカバー48の円錐面63の中程には、円周方向全周に亘って内径側に突出する凸部65が摺動部材32に微小隙間を介して近接するように設けられている。これにより、摺動部材32の半径方向のずれを防止している。凸部65には、軸方向に貫通する貫通孔66が円周方向に間隔をおいて形成されている。
【0038】
このように構成された旋動式破砕機1は、モータ6を駆動すると、そのモータ軸の回転がベルト29を介して回転軸3に伝達される。回転軸3が回転すると、主軸4とともにマントル21が旋動回転して、ホッパー24から投入された被破砕物をマントル21とバウルライナー5との間で破砕するようになっている。
【0039】
このとき、回転軸3にかかる軸方向の荷重を支持するスラスト滑り軸受13は、ベアリング押え34が回転軸3と一体に回転し、そのベアリング押え34と摺動部材32とが滑り接触して相対回転すると共に、その摺動部材32とベアリング座36とが滑り接触して相対回転する。同時に、旋動式破砕機1の外部から図示しないポンプによりベアリング座36の外周溝53に潤滑剤が送り込まれ、この潤滑剤が貫通孔51を通って第1の空間54に供給される(図2参照)。
【0040】
第1の空間54に供給された潤滑剤は、ベアリング座36の油溝55,60、ベアリング押え34の油溝43および貫通孔41を通って第2の空間64に流出する。このとき、油溝43,55,60内を流れる潤滑剤が摺動部材32とベアリング押え34の滑り面30,33間および摺動部材32とベアリング座36の滑り面31,35間に供給されて油膜が形成され、この油膜によって滑り面30,31,33,35の滑り接触による摩耗が低減される。
【0041】
また、第1の空間54に供給された潤滑剤は、ベアリング座36の柱部37の先端部とベアリング押え34の円周溝40との間の微少間隙からオーバーフローすると、ボトムカバー48に取り付けてある図示しない戻油配管により外部タンクに戻される。
【0042】
ここで、ベアリング座36の油溝55,60を通る潤滑剤は、滑り面内周35aから各油溝55,60内に流入して滑り面外周35bから第2の空間64に流出する。このとき、第1の油溝55を流れる潤滑剤が小溝55aと大溝55bとが交差する交差点56で合流するので、その交差点56において潤滑剤の滑り面31,35に対する接触圧が高まる。そのため、潤滑剤が交差点56から滑り面31,35間へ押圧される力が大きくなり、滑り面31,35間への油膜の形成が促進される(図2、図5参照)。
【0043】
また、このとき、潤滑剤を滑り面31,35間に引き込む力が傾斜平面59によって大きくなり、滑り面31,35間への油膜の形成がさらに促進される。
【0044】
一方、第2の油溝60を流れる潤滑剤は、第1の油溝55の小溝55aに流入して滑り面外周35bから第2の空間64に流出する。
【0045】
ベアリング押え34の油溝43を通る潤滑剤は、滑り面内周33aから各円弧状溝43a,43bに流入し、開口溝43cを通って滑り面外周33bから第2の空間64に流出する。このとき、円弧状溝43a,43bを流れる潤滑剤がその円弧状溝43a,43bの2つの交差点44,45で合流するので、その交差点44,45において潤滑剤の滑り面30,33に対する接触圧が高まる。そのため、潤滑剤が交差点44,45から滑り面30,33間へ押圧される力が大きくなり、滑り面30,33間への油膜の形成が促進される(図2、図4参照)。
【0046】
また、このとき、潤滑剤を滑り面30,33間に引き込む力が傾斜平面46によって大きくなり、滑り面30,33間への油膜の形成がさらに促進される。
【0047】
第2の空間64に流出した潤滑剤は、図示しないポンプで旋動式破砕機1の外部に排出される。このようにして、摺動部材32とベアリング押え34の滑り面30,33間と、摺動部材32とベアリング座36の滑り面31,35間が強制的に潤滑剤で潤滑される。
【0048】
この旋動式破砕機1は、ベアリング押え34とベアリング座36に上下に挟まれて滑り接触する摺動部材32を、摩擦係数が小さく、しかも強靭性、耐摩耗性に優れたナイロン樹脂で形成しているので、回転軸3とスラスト滑り軸受13との間で片当たりが生じても、スラスト滑り軸受13の割れが防止されるとともに、スラスト滑り軸受13に摩耗が生じにくい。
【0049】
また、この旋動式破砕機1は、滑り面33に形成した油溝43が他の油溝43と交差点44,45で交差しているので、潤滑剤の滑り面30,33に対する接触圧が油溝43の交差点44,45で大きくなる。同様に、滑り面35に形成した油溝55の小溝55aと大溝55bとが交差しているので、潤滑剤の滑り面31,35に対する接触圧が油溝55の交差点56で大きくなる。そのため、ポンプの出力を大きくしなくても、油溝43,55の交点44,45,56から摺動部材32とベアリング押え34の滑り面30,33間および摺動部材32とベアリング座36の滑り面31,35間へ潤滑剤が押圧される力が大きくなり、滑り面30,33間と滑り面31,35間への油膜の形成が促進され、運転コストの抑制が可能である。
【0050】
上記実施形態では、ベアリング押え34の滑り面33に油溝43を形成したが、摺動部材32の上面の滑り面30に油溝43を形成してもよい。
【0051】
また、上記実施形態では、ベアリング座36の滑り面35に油溝55,60を形成したが、摺動部材32の下面の滑り面31に油溝55,60を形成してもよい。
【符号の説明】
【0052】
1 旋動式破砕機
2 フレーム
3 回転軸
3a 大径部
3b 小径部
3c 段差部
4 主軸
5 バウルライナー
13 スラスト滑り軸受
20 マントルコア
21 マントル
30,31,33,35 滑り面
32 摺動部材
33a,35a 滑り面内周
33b,35b 滑り面外周
34 ベアリング押え
36 ベアリング座
43,55 油溝

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状のフレーム(2)内に設置されるバウルライナー(5)と、マントル(21)が設置されるマントルコア(20)を装着した主軸(4)と、その主軸(4)が嵌め込まれ、前記主軸(4)を旋動回転させる回転軸(3)とを有し、その回転軸(3)の軸方向にかかる荷重が前記回転軸(3)の大径部(3a)と小径部(3b)との段差部(3c)に装着された軸受(13)で支持され、前記回転軸(3)の回転により、前記主軸(4)とともにマントル(21)を旋動回転させて、そのマントル(21)と前記バウルライナー(5)との間で被破砕物を破砕する旋動式破砕機(1)において、
前記軸受(13)は、上面と下面に環状の滑り面(30,31)が形成された摺動部材(32)と、前記回転軸(3)に固定され、前記摺動部材(32)の上面の滑り面(30)と滑り接触する環状の滑り面(31)が下面に形成されたベアリング押え(34)と、前記フレーム(2)の内面下部に固定され、前記摺動部材(32)の下面の滑り面(31)と滑り接触する環状の滑り面(35)が上面に形成されたベアリング座(36)とを有するスラスト滑り軸受(13)とし、前記摺動部材(32)をナイロン樹脂で形成したことを特徴とする旋動式破砕機。
【請求項2】
前記ベアリング押え(34)の滑り面(33)または前記摺動部材(32)の上面の滑り面(30)に、その滑り面内周(33a)から滑り面外周(33b)まで伸びる複数の油溝(43)を形成し、その油溝(43)を他の前記油溝(43)と交差させ、前記滑り面内周(33a)から前記油溝(43)内に潤滑剤を流すことにより、前記滑り面(30,33)間に潤滑剤を供給するようにした請求項1に記載の旋動式破砕機。
【請求項3】
前記ベアリング座(36)の滑り面(35)または前記摺動部材(32)の下面の滑り面(31)に、その滑り面内周(35a)から滑り面外周(35b)まで伸びる複数の油溝(55)を形成し、その油溝(55)を他の前記油溝(55)と交差させ、前記滑り面内周(35a)から前記油溝(55)内に潤滑剤を流すことにより、前記滑り面(31,35)間に潤滑剤を供給するようにした請求項1又は2に記載の旋動式破砕機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−11187(P2011−11187A)
【公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−159908(P2009−159908)
【出願日】平成21年7月6日(2009.7.6)
【出願人】(506059861)クリモトメック株式会社 (34)
【Fターム(参考)】