説明

既存ボイラの稼働率低減システム

【課題】 既設ボイラの稼働率を低減させることができるシステムを提供する。
【解決手段】 このシステムは、既存ボイラ1の給水ライン2と湯を送出する給湯ライン3とに接続され、給水ライン2を通して水を受け入れ、給湯ライン3を通して湯を供給することが可能な貯湯槽10と、施設から排出された温排水の熱を回収する熱回収ユニット20と、熱回収ユニット20により回収された熱を吸収し熱媒体に与える吸熱手段と、熱媒体を圧縮する圧縮手段と、圧縮された熱媒体により貯湯槽10が受け入れた水を加熱し、湯を生成して貯湯槽10へ戻す加熱手段と、圧縮された熱媒体を膨張させ、吸熱手段へ供給する膨張手段とを含むヒートポンプユニット30とを含む。貯湯槽10に生成された湯を、給水ライン2を通して既設ボイラ1へ給湯し、既設ボイラ1で所定の温度まで加熱する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒートポンプユニットを利用して既存ボイラの稼働率を低減させるシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
病院、保養所、ホテル、レジャー施設等では、給湯装置として、ボイラが使用されている。このボイラは、重油、軽油、LPG、都市ガス等の燃料を燃焼し、それによって発生する熱を水に与えて水を加熱する装置である。
【0003】
しかしながら、ボイラは、燃料の燃焼により二酸化炭素を発生させ、それを大気中へ排出するため、大気汚染や地球温暖化の要因となっている。このため、消費燃料量および排出される二酸化炭素の量を低減させることが求められている。
【0004】
そこで、温水施設から排出される温排水を温排水槽に貯留させ、温排水から熱交換器で熱回収した熱によりボイラ給水を加温する技術が提案されている(特許文献1、2参照)。この技術によれば、ボイラ給水を加温した後にボイラへ供給することができるため、ボイラで加熱するのに必要とされる熱量が少なくて済み、燃料消費量および二酸化炭素の排出量を低減させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−85067号公報
【特許文献2】特開平7−55250号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ボイラが既に設置されている施設においては、老朽化等による問題がない限り、そのボイラを給湯装置として利用する。しかしながら、ボイラは、上記のような大気汚染や温暖化の問題があることから、出来るだけボイラの稼働率を低減させることが望ましい。
【0007】
その観点から、従来において上述した技術が提案されているが、これらの技術では、温排水をボイラ給水の補助エネルギーとして利用するのみで、ボイラの稼働率を十分に低減することはできない。
【0008】
そこで、施設等で使用する湯量を十分に確保しつつ、既存ボイラの稼働率を十分に低減させることができるシステムの提供が望まれていた。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の発明者は、鋭意検討の結果、ヒートポンプユニットを利用して所定の温度の湯を生成するとともに、施設等から排出される温排水の熱をそのヒートポンプユニットに与えて温排水の熱を有効利用することにより、ヒートポンプユニットの消費電力を抑制するとともに、既存のボイラの稼働率を大幅に低減させることができ、その結果、既存ボイラのランニングコストおよび温暖化ガスである二酸化炭素の排出量も大幅に低減できることを見出した。
【0010】
本発明は、これらのことを見出すことによりなされたものであり、上記課題は、本発明の既存ボイラの稼働率低減システムを提供することにより解決することができる。
【0011】
このシステムは、既存ボイラの給水ラインと加熱することにより生成された湯を送出する給湯ラインとに接続され、前記給水ラインを通して水を受け入れ、前記給湯ラインを通して湯を供給することが可能な貯湯槽と、施設から排出された温排水の熱を回収する熱回収ユニットと、前記熱回収ユニットにより回収された前記熱を吸収し熱媒体に与える吸熱手段と、前記熱媒体を圧縮する圧縮手段と、圧縮された前記熱媒体により前記貯湯槽が受け入れた水を加熱し、湯を生成して前記貯湯槽へ戻す加熱手段と、圧縮された前記熱媒体を膨張させ、前記吸熱手段へ供給する膨張手段とを含むヒートポンプユニットとを含む。
【0012】
貯湯槽を既存ボイラの給水ラインと給湯ラインに接続し、施設の温排水ラインに熱回収ユニットを接続し、それらの間にヒートポンプユニットを設置するだけで簡単に設置することができる。また、温排水から熱を回収して、その熱をヒートポンプユニットに与えることでヒートポンプユニットの消費電力を抑制することができ、エネルギー消費効率の目安として使用される成績係数(COP)を向上させることができ、かつ湯を生成することができ、かつ生成した湯を既存ボイラの昇温回路へ供給し、既存ボイラの稼働率を低減させることができる。
【0013】
また、既存ボイラの稼働率の低減は、ボイラのランニングコストを低減させ、温暖化ガスである二酸化炭素の排出量を低減させることも可能にする。温排水は、熱交換ユニットで熱回収が行われた後、融雪に使用することができ、その後、浄化槽で浄化した後、公共下水道へ送ることができる。
【0014】
前記熱回収ユニットは、前記温排水の熱を循環水に与える熱交換ユニットを含む。また、前記熱回収ユニットは、さらに、温水を貯留する蓄熱ユニットをさらに含み、前記熱交換ユニットで加温された前記循環水の熱を前記蓄熱ユニット内の前記温水に与え、前記蓄熱ユニット内の前記温水を前記ヒートポンプユニットへ送り、前記温水の熱を前記熱媒体に与える。前記循環水は、前記熱交換ユニットと前記蓄熱ユニットとの間を、循環手段により循環する。
【0015】
また、上記のシステムは、前記施設から排出された前記温排水を受け入れ、貯留する温排水槽と、貯留された前記温排水を前記熱回収ユニットへ供給する排水手段とをさらに備えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】既設ボイラの稼働率低減システムの1つの構成例を示した図。
【図2】図1に示すシステムが備える熱回収ユニットの1つの構成例を示した図。
【図3】図1に示すシステムが備えるヒートポンプユニットの構成例を示した図。
【図4】既設ボイラの稼働率低減システムの別の構成例を示した図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の既設ボイラの稼働率低減システムは、既設ボイラを使用しつつも、その稼働率を低減させ、ボイラのランニングコストおよびボイラから排出される地球温暖化の原因となっている二酸化炭素の排出量を低減させることができる装置である。
【0018】
図1は、既設ボイラの稼働率低減システムの1つの構成例を示した図である。このシステムは、既設ボイラ1へ水を供給するための給水ライン2と、既設ボイラ1により生成した湯を供給するための給湯ライン3とに接続される貯湯槽10を備える。
【0019】
貯湯槽10は、新規に設置される槽で、給水ライン2および給湯ライン3のそれぞれの途中に分岐管を設けることにより、給水ライン2および給湯ライン3のそれぞれに接続することができる。
【0020】
貯湯槽10は、所定量の湯を貯留することができる容器とされ、給水ライン2に接続される給水用のノズル、給湯ライン3に接続される給湯用のノズル、後述するヒートポンプユニット30へ、受け入れた水や内部に貯留される湯を供給するためのノズル、ヒートポンプユニット30により加熱されて戻される湯を受け入れるノズルといった4つのノズルを有している。また、貯湯槽10は、屋外に設置される場合、貯留する湯が放熱により冷めないように、外表面に保温材等が巻かれ、保温される。
【0021】
貯湯槽10は、内部の湯の温度を測定できるように、温度計を備えることができ、また、残湯量を測定できるように、液面計(レベルゲージ)を備えることができる。
【0022】
また、このシステムは、既設ボイラ1を使用する施設から排出された温排水の熱を回収する熱回収ユニット20を備える。既設ボイラ1を使用する施設は、病院、保養所、ホテル、レジャー施設等があり、これらの施設では、浴槽、シャワー、プール、暖房等に湯が使用され、排水口等から排出された湯は、温排水となる。この温排水は、約30℃の温度で排出され、常温の水より温度が高いことから、熱回収ユニット20により熱回収される。
【0023】
温排水は、ヘアキャッチャー等により比較的大きな浮遊物を除去した後に排出されるが、微細な浮遊物等が存在しているため、そのままヒートポンプユニット30へ供給すると、ヒートポンプユニット30が備える多数のフィンの間にその浮遊物が付着し、ヒートポンプユニット30の熱吸収効率を大幅に低下させてしまう。このため、熱回収ユニット20を設け、熱回収ユニット20で回収した熱をヒートポンプユニット30に与えるように構成する。
【0024】
熱回収ユニット20は、例えば、図2に示すように、ヒートポンプユニット30との間で循環水を循環し、温排水の熱が循環水へ与えられるように熱交換ユニット21を含む構成とすることができる。熱交換ユニット21は、これまでに知られたコイル形熱交換器、二重管式熱交換器、多管式熱交換器等を採用することができる。
【0025】
図2に示す熱回収ユニット20の一例では、熱交換ユニット21が上記のような熱交換器ではなく、1つの浴槽21aと、浴槽21a内に貯留された循環水22に浸漬され、内部に温排水が流れるチューブ21bとから構成されている。チューブ21bは、2つの曲部を有し、温排水が水面付近に設置されるチューブ内へ入り、1つの曲部、中間深さのチューブ内、もう1つの曲部、水底付近に設置されるチューブ内を通して排出されるような構造および配置とされている。
【0026】
また、循環水は、浴槽21aの下部へ供給され、浴槽21aの上部から循環ポンプにより取り出される。浴槽21a内の循環水22は、対流がほとんど起こらない状態では密度との関係で水面付近の温度が高く、水底付近の温度が低くなる。この状態を作り出し、温度の高い水面付近の循環水をヒートポンプユニット30へ供給できれば、ヒートポンプユニット30の消費電力を抑制することができ、効率的に熱回収を行うことができる。したがって、図2では、上記のように、温度が最も高い状態の温排水を、水面付近に流して水面付近の温度を上げ、その水面付近の循環水をヒートポンプユニット30へ供給するようにし、また、温排水を水面から水底へ向けて流し、水底付近へ温度が低下した循環水を戻すことにより、その循環水が水面へ押し上げられるとともに温排水から熱を与えられて徐々に昇温させ、対流がほとんど起こらない状態を作り出している。
【0027】
温排水の熱を出来るだけ回収するためには、チューブ21bの長さを長くする等して十分な伝熱面積とし、循環水の入口ノズルと温排水の出口ノズルとが近隣し、循環水の出口ノズルと温排水の入口ノズルとが近隣して配置される構造が好ましい。このような構造にすることで、約30℃の温排水から熱回収を行い、循環水を約28℃にしてヒートポンプユニット30へ供給し、その熱を与えることができる。
【0028】
この熱交換ユニット21のチューブ21bに使用される材質は、温排水の温度が約30℃といった比較的低い温度であるため、ポリ塩化ビニル等のプラスチック樹脂や炭素鋼等を使用することができ、浴槽21aの材質も、FRP等のプラスチック樹脂や炭素鋼等を使用することができる。しかしながら、温排水中には、石けんや洗剤、その他の浮遊物等を含むことから、チューブ21bの材質は、腐食しにくいプラスチック樹脂が好ましい。
【0029】
また、図2に示す例では、曲部が2つとされているが、3つ以上であってもよく、また、複数のチューブから構成されていてもよい。さらに、チューブの外表面に多数のフィンが設けられていてもよい。
【0030】
再び図1を参照して、このシステムは、さらにヒートポンプユニット30を備える。ヒートポンプユニット30は、熱回収ユニット20により温排水から回収した熱を受け取り、内部を循環する熱媒体へ与え、その熱媒体を圧縮することにより高温にし、その高温になった熱媒体が有する熱を貯湯槽10の水へ与えることにより加熱し、湯を生成させる装置である。
【0031】
具体的には、図3を参照して、ヒートポンプユニット30は、温排水の熱を回収した熱回収ユニット20から熱を得て熱媒体に与える吸熱手段31と、給電されることにより駆動し、熱媒体を圧縮する圧縮手段32と、圧縮された熱媒体により貯湯槽10が受け入れた水を加熱し、湯を生成させて貯湯槽10へ戻す加熱手段33と、圧縮された熱媒体を膨張させ、吸熱手段31へ供給する膨張手段34とを含んで構成される。このヒートポンプユニット30は、加熱して生成された湯が冷めないように、貯湯槽10に近隣して設置することが好ましい。
【0032】
吸熱手段31は、図2に示す熱回収ユニット20から送出された循環水を受け入れ、受け入れた循環水の熱を熱媒体へ伝えて、熱媒体を温める。そのため、吸熱手段31は、循環水と熱媒体との間で熱交換する熱交換器を含み、管内に熱媒体を流し、循環水をその管に接触させて循環水の熱を管内の熱媒体へ与える。熱交換器において熱伝導効率を向上させるために、伝熱面積を大きくすることができ、例えば、熱媒体が流れる管をコイル状としたり、その管の表面にフィンを設けることができる。熱媒体としては、圧縮比を大きくとることができ、その圧縮により大きく温度上昇するガスが好ましく、空気や二酸化炭素等を挙げることができる。
【0033】
圧縮手段32は、吸熱手段31で温められた熱媒体を圧縮する。この圧縮手段32で行われる圧縮は、断熱圧縮に近いポリトロープ圧縮であるため、その吐出温度は圧縮比に依存して上昇する。例えば、熱媒体として空気を使用し、約0.1MPa、約20℃の空気を約0.7MPaまで圧縮すると、外部との熱の授受がない場合、その圧縮のために加えられたエネルギーは全て温度上昇となり、理論上約260℃となるが、現実には熱損失があり、約170〜200℃となる。熱損失があるとはいえ、100℃を超える温度であるため、十分に水を加熱することができる。この圧縮手段32としては、容積圧縮機が好ましく、例えば、往復圧縮機、ダイアフラム式圧縮機等を挙げることができる。
【0034】
このように圧縮され高温とされた熱媒体は、加熱手段33へ送られ、貯湯槽10が受け入れた水へその熱を与える。加熱手段33は、熱交換器とすることができ、伝熱面積を大きくするために、コイル状としたり、フィンを設けることができる。
【0035】
加熱手段33において水へ熱を与えて温度が降下された熱媒体は、圧縮された状態で維持され、その温度も、貯湯槽10内に貯留される湯の温度以下には下がらない。これでは、吸熱手段31において循環水の熱を吸収することができない。そこで、膨張手段34により膨張させ、温度を降下させる。膨張手段34としては、膨張弁を用いることができる。この膨張手段34では、圧縮手段32で約0.1MPaから約0.7MPaへ昇圧する場合、約0.7MPaから約0.1MPaへ降圧することができる。
【0036】
再び図1を参照して、ヒートポンプユニット30は、貯湯槽10内に約40℃〜約50℃の湯を生成させる。この湯は、浴室等へ直接送ることもできるが、既設ボイラ1へ給水ポンプ4により給水ライン2を介して送り、さらに加熱した後に、給湯ライン3を通して送ることも可能である。このため、給水ライン2には、給水源からの給水を停止するための弁を設け、給湯ライン3には、既設ボイラ1から出た湯が貯湯槽10へ戻らないようにするための弁を設けることができる。
【0037】
約30℃の温排水でボイラ給水を直接加温した場合、約25℃までしか温めることができないため、既設ボイラ1で相当加熱する必要があるが、本発明の如く、貯湯槽10と、熱回収ユニット20と、ヒートポンプユニット30とを備える構成を採用することで、約40〜約50℃へ加温することができ、そのまま給湯できる場合には既設ボイラ1による加熱が不要となり、また、例えば90℃に加熱するにしても、既設ボイラ1の稼働率を大幅に低減させることができる。
【0038】
既設ボイラ1の稼働率の低減は、燃料の消費量を低減させることができ、排出される燃焼排ガス量も低減させることができ、その結果、温暖化ガスである二酸化炭素の排出量を低減することができる。また、既設ボイラ1のランニングコストも低減させることが可能となる。
【0039】
図4は、既設ボイラの稼働率低減システムの別の構成例を示した図である。このシステムも、貯湯槽10、熱回収ユニット20、ヒートポンプユニット30を備えるが、熱回収ユニット20の構成が、図2に示す構成とは相違し、また、温排水槽40、温排水ポンプ41を備えている。そして、熱回収された後の温排水が、融雪に使用され、その後、浄化槽50で浄化され、公共下水道へ送られる構成とされている。
【0040】
図1に示す実施形態では、施設から排出される温排水は、熱回収ユニット20へ送られたが、この図4に示す実施形態では、一度、温排水槽40へ集められ、その温排水槽40から温排水ポンプ41により熱回収ユニット20へ送られる。温排水槽40は、温排水に含まれる浮遊物等を沈殿させ、浮遊物等が除去された温水を熱回収ユニット20へ送ることを可能にする。また、雑排水、プール、風呂といった異なる場所で使用された異なる温度の温排水を混合し、ほぼ一定の温度にして供給することを可能にする。これは、ヒートポンプユニット30へ与える熱の変動を小さくし、ヒートポンプユニット30における負荷変動を小さくし、効率的で安定した運転を可能にする。
【0041】
熱回収ユニット20は、図2に示す熱交換ユニット21と、温水を貯留する蓄熱ユニット23とから構成され、熱交換ユニット21で加温された循環水の熱を蓄熱ユニット23内の温水に与え、蓄熱ユニット23内の温水をヒートポンプユニット30へ送り、温水の熱を熱媒体に与える。したがって、循環水は、熱交換ユニット21と蓄熱ユニット23との間を、循環手段である循環ポンプ24により循環され、温水は、蓄熱ユニット23とヒートポンプユニット30との間を、循環手段である循環ポンプ25により循環される。
【0042】
この蓄熱ユニット23は、図2に示す熱交換ユニット21と同様の構成とすることができ、蓄熱ユニット23内に入れられた原水を温めて温水にし、その温水を貯留し、そのつど熱が与えられてほぼ一定温度の蓄熱源として機能する。蓄熱ユニット23は、循環ポンプ25により内部の温水をヒートポンプユニット30へ送り、ヒートポンプユニット30に一定の熱を与える。
【0043】
このように蓄熱ユニット23を備えることで、温度変動が非常に小さくなるものの、蓄熱ユニット23を介することで、ヒートポンプユニット30へ供給される温水の温度が、循環水を直接供給する場合に比較して、約1〜2℃下がる。しかしながら、温度変動が非常に小さくなることで、ヒートポンプユニット30へ与える熱の変動も大幅に小さくなり、ヒートポンプユニット30の運転をいっそう効率的で安定したものにさせることができる。
【0044】
温排水槽40および蓄熱ユニット23の浴槽は、熱交換ユニット21と同様、FRP等のプラスチック樹脂から作製することができ、蓄熱ユニット23にあっては、浴槽およびチューブのいずれもが炭素鋼から作製されていてもよい。温排水槽40は、温排水中に石けんや洗剤、その他の浮遊物等を含むことから、腐食しにくい上記のプラスチック樹脂が好ましい。
【0045】
温排水は、熱回収ユニット20において熱回収され、温度が低下して排出されると、融雪のために利用することができる。融雪に利用された排水は、側溝等を介して浄化槽50へ送られ、浄化された後、公共下水道へ送られる。
【0046】
浄化槽50は、例えば、固液分離装置と、ばっき槽、接触ばっき槽、沈殿槽を有する水処理装置とから構成されるものや、嫌気ろ床槽、沈殿分離槽を有する前処理装置と、接触ばっき槽、沈殿槽を有する水処理装置とから構成されるもの等を挙げることができる。
【0047】
これまで本発明の既設ボイラの稼働率低減システムについて図面に示した実施形態を参照しながら詳細に説明してきたが、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、他の実施形態や、追加、変更、削除など、当業者が想到することができる範囲内で変更することができ、いずれの態様においても本発明の作用・効果を奏する限り、本発明の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0048】
1…既設ボイラ、2…給水ライン、3…給湯ライン、4…給水ポンプ、10…貯湯槽、20…熱回収ユニット、21…熱交換ユニット、21a…浴槽、21b…チューブ、22…循環水、23…蓄熱ユニット、24、25…循環ポンプ、30…ヒートポンプユニット、31…吸熱手段、32…圧縮手段、33…加熱手段、34…膨張手段、40…温排水槽、41…温排水ポンプ、50…浄化槽

【特許請求の範囲】
【請求項1】
既設ボイラの稼働率を低減させるシステムであって、
前記既存ボイラの給水ラインと加熱することにより生成された湯を送出する給湯ラインとに接続され、前記給水ラインを通して水を受け入れ、前記給湯ラインを通して湯を供給することが可能な貯湯槽と、
施設から排出された温排水の熱を回収する熱回収ユニットと、
前記熱回収ユニットにより回収された前記熱を吸収し熱媒体に与える吸熱手段と、前記熱媒体を圧縮する圧縮手段と、圧縮された前記熱媒体により前記貯湯槽が受け入れた水を加熱し、湯を生成して前記貯湯槽へ戻す加熱手段と、圧縮された前記熱媒体を膨張させ、前記吸熱手段へ供給する膨張手段とを含むヒートポンプユニットとを含み、
前記貯湯槽から前記既設ボイラへ給湯し、所定の温度まで加熱する、既設ボイラの稼働率低減システム。
【請求項2】
前記熱回収ユニットは、前記温排水の熱を循環水に与える熱交換ユニットを含み、前記循環水を前記ヒートポンプユニットへ送り、前記吸熱手段において前記循環水の熱を前記熱媒体に与える、請求項1に記載の既設ボイラの稼働率低減システム。
【請求項3】
前記熱回収ユニットは、前記温排水の熱を循環水に与える熱交換ユニットと、温水を貯留する蓄熱ユニットとを含み、前記熱交換ユニットで加温された前記循環水の熱を前記蓄熱ユニット内の前記温水に与え、前記蓄熱ユニット内の前記温水を前記ヒートポンプユニットへ送り、前記吸熱手段において前記温水の熱を前記熱媒体に与える、請求項1に記載の既設ボイラの稼働率低減システム。
【請求項4】
前記施設から排出された前記温排水を受け入れ、貯留する温排水槽と、貯留された前記温排水を前記熱回収ユニットへ供給する排水手段とをさらに備える、請求項1〜3のいずれか1項に記載の既設ボイラの稼働率低減システム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2011−117647(P2011−117647A)
【公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−274425(P2009−274425)
【出願日】平成21年12月2日(2009.12.2)
【出願人】(000195971)西松建設株式会社 (329)
【Fターム(参考)】