説明

既設マンホールのインバート撤去方法

【課題】既設マンホールの底に築造されているコンクリート製のインバートを、安全に早く、低コストで撤去することができる既設マンホールのインバート撤去方法の提供。
【解決手段】
切削ビット6を取り付けたロッド5を開口16から降ろしてインバート15の上面に臨ませ、ボーリングマシン4のアーム41を回転させながら降下させて切削ビット6でインバート15を切削し、ロッド5を上げ、ボーリングマシン4を移動して切削ビット6の切削位置を変えて複数箇所で切削を行い、ロッド5をマンホール内から抜いた後、マンホール底のインバート小塊を開口16から搬出することにより、既設マンホールAのインバート15を撤去する。既設マンホールAの底に築造されているコンクリート製のインバート15を、安全に早く、低コストで撤去することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、既設マンホールの底に築造されているコンクリート製のインバートを撤去する既設マンホールのインバート撤去方法に関する。
【背景技術】
【0002】
流入管路と流出管路との高低差および角度に対応するため、通常、マンホール底にコンクリート製のインバートを築造している(特許文献1参照)。
【0003】
しかし、各管路とマンホールとを軟接続する耐震化工事を行う際には、インバートをマンホール底から撤去する必要がある。
この作業は、通常、下記の方法で行っている。
作業員がマンホール内へ入り、電動工具(ブレーカー、ハンマードリル)や、コンプレッサーを使用してインバートに衝撃を与え、少しずつ壊して破片を撤去する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8−86009号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記人力作業は、以下に示す不具合が発生する。
作業時間が長くかかり、コスト増を招く。
振動や騒音が大きく、付近の住民に迷惑がかかる。
埃や粉塵が発生し、作業員が健康を損なう。
飛び散った破片が管路内へ入り、下流へ流出したり、管路閉塞を招く。
【0006】
本発明の目的は、既設マンホールの底に築造されているコンクリート製のインバートを、安全に早く、低コストで撤去することができる既設マンホールのインバート撤去方法の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(請求項1について)
以下の工程を経て、既設マンホールの底に築造されているコンクリート製のインバートを撤去する。
【0008】
地中に埋設された既設マンホールの蓋をマンホール開口から外し、アームを有するボーリングマシンを移動可能に開口近傍の地表へ据え付ける(ボーリングマシン据付工程)。
【0009】
マンホール開口近傍の地表で、ロッドの先端に切削ビットを取り付ける(ビット取付工程)。
切削ビットを取り付けたロッドをマンホール開口からマンホール内へ降ろし、マンホール底に敷設されたコンクリート製のインバートの上面に切削ビットを臨ませる(ロッド降し工程)。
ロッドの基端をボーリングマシンのチャックに固定する(ロッド固定工程)。
【0010】
ボーリングマシンを稼働させ、ロッドを回転させながら降下させ、切削ビットでインバートを切削する。この切削が完了すると、切削ビットを取り付けたロッドをインバートの上面より上へ上げ、その後、ボーリングマシンを移動して切削ビットで切削する位置を変更する。つぎに、切削ビットを取り付けたロッドを回転させながら降下させ、変更した位置でインバートを切削する(インバート切削工程)。
【0011】
切削ビットを取り付けたロッドをマンホール内から抜いた後、マンホール底のインバート小塊をマンホール開口から搬出する(小塊搬出工程)。
【0012】
作業員は、マンホール底のインバート小塊をマンホール開口から搬出する時以外は、マンホール内へ入る必要がないので、安全であるとともに、健康を損なうこともない。
【0013】
既設マンホールのインバート撤去方法は、ボーリングマシンを使い、切削ビットを取り付けたロッドでインバートを切削してインバート小塊にする工法であるので、人力作業に比べ作業時間を短縮できるとともに、コストを抑えることができる。また、インバートが粉砕されず、小塊に小割りされるので、インバートの破片の飛び散りを防止できる。
【0014】
既設マンホールのインバート撤去方法は、電動工具やコンプレッサーを使用する工法に比べ、振動や騒音の発生が少ない。
【0015】
(請求項2について)
ロッドの先端に取り付けられる切削ビットは、円筒状であるとともに、先端に切削刃が形成されている。そして、切削部位が重なる様に切削位置を変えて、切削ビットがインバートの複数箇所を切削する。
【0016】
インバートが、切削ビットの円筒面の大きさの小塊に小割りされるので、切削ビットを取り付けたロッドをマンホール内から抜いた後に、マンホール底のインバート小塊をマンホール開口から容易に搬出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】既設マンホールの開口から金属蓋を外すところを示す説明図である。
【図2】切削ビットを取り付けたロッドを開口マンホール内へ降ろすところを示す説明図である。
【図3】ロッドを回転させながら降下させ、切削ビットでインバートを切削するところを示す説明図である。
【図4】切削部位が重なる様に切削位置を変えて、切削ビットがインバートの複数箇所を切削するところを示す説明図である。
【図5】インバートの複数箇所の切削により、インバート小塊が小塊に小割りされた状態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
地中に埋設された既設マンホールの金属蓋をマンホール開口から外し、アームを有するボーリングマシンを開口近傍の地面に据え付け(ボーリングマシン据付工程)、ロッドの先端に円筒状の切削ビットを取り付け(ビット取付工程)、マンホール開口からロッドを降ろし、マンホール底に築造されたコンクリート製のインバートの上面に切削ビットを臨ませ(ロッド降し工程)、ロッドの基端をボーリングマシンのチャックに固定し(ロッド固定工程)、ボーリングマシンを稼働させ、ロッドを回転させながら降下させ切削ビットでインバートを円柱状に切削し、切削が完了するとロッドを上げ、ボーリングマシンを移動させることにより切削ビットの切削位置を変えて複数箇所で切削を行い(インバート切削工程)、切削ビットを取り付けたロッドをマンホール内から抜いた後、マンホール底のインバート小塊をマンホール開口から搬出する(小塊搬出工程)ことにより、既設マンホールのインバートを撤去する。
【0019】
作業員は、マンホール底のインバート小塊をマンホール開口から搬出する時以外は、マンホール内へ入る必要がないので、安全であるとともに、健康を損なうこともない。
【0020】
既設マンホールのインバート撤去方法は、ボーリングマシンを使い、切削ビットを取り付けたロッドでインバートを切削し、インバート小塊にして搬出する工法であるので、従来工法に比べ作業時間を大幅に短縮できるとともに、コストを抑えることができる。また、インバートが小塊に小割りされ、粉砕されないので、インバートの破片の飛び散りを防止できる。
【0021】
既設マンホールのインバート撤去方法は、電動工具やコンプレッサーを使用して行う従来の工法に比べ、振動や騒音の発生が格段に少ない。
【実施例1】
【0022】
本発明の実施例1(請求項1、2に対応)を図1〜図5に基づいて説明する。
図1に示す既設マンホールAは、底板11上に円筒体12、13、14(コンクリート製)を積み上げ、内底にインバート15(コンクリート製)を築造し、円筒体12の壁を貫いて一体的に接合した上流側の下水本管2および下流側の下水本管3(ヒューム管)と、円筒体12の開口16を塞ぐ金属蓋17とを備え、地中に埋設されている。
【0023】
下水本管2の上流側で、マンホール内への汚水の流入を止めた後、既設マンホールAのインバート撤去を以下の手順で行う。
(1)既設マンホールAの金属蓋17を開口16から外し、アーム41を有するボーリングマシン4を、移動可能に開口近傍の地表10へ据え付ける(ボーリングマシン据付工程)。なお、アーム41が変位可能なボーリングマシンを用いても良い。
【0024】
(2)開口16近傍の地表10で、ロッド5(金属製)の先端51に、円筒状の切削ビット6を取り付ける(ビット取付工程)。
(3)図2に示す様に、切削ビット6を取り付けたロッド5を開口16からマンホール内へ降ろし、マンホール底に築造されたコンクリート製のインバート15の上面に切削ビット6を臨ませる(ロッド降し工程)。
【0025】
(3)ロッド5の基端52を、ボーリングマシン4のアーム41のチャック42に固定する(ロッド固定工程)。
【0026】
(4)図3に示す様に、ボーリングマシン4を稼働させ、アーム41を下げて、ロッド5を回転させながらロッド5を降下させ、切削ビット6でインバート15を切削する。この切削が完了すると、図4に示す様に、切削ビット6を取り付けたロッド5をインバート15の上面より上へ上げ、その後、ロッド5が破線の位置になる様にボーリングマシン4を移動して切削ビット6が切削する位置を変更する。つぎに、切削ビット6を取り付けたロッド5を回転させながら降下させ、変更した位置でインバート15を切削する(インバート切削工程)。なお、図5の(b)に示す様に、位置変更を複数回、行う。
【0027】
(5)切削ビット6を取り付けたロッド5をマンホール内から抜いた後、マンホール底のインバート小塊を開口16から搬出する(小塊搬出工程)。
【0028】
実施例1の既設マンホールのインバート撤去方法は、以下に示す利点を有する。
ボーリングマシン4を使い、切削ビット6を取り付けたロッドでインバート15を切削してインバート小塊にして搬出する工法であるので、人力作業に比べ作業時間を短縮できるとともに、コストを抑えることができる。また、インバートが粉砕されず、小塊に小割りされるので、インバート15の破片の飛び散りを防止できる。
【0029】
マンホール底のインバート小塊を開口16から搬出する時以外は、マンホール内へ作業員が入る必要がないので、作業員の安全性が図れるとともに、健康を損なうこともない。 電動工具やコンプレッサーを使用して行う従来の工法に比べ、振動や騒音の発生が格段に少ない。
インバートが、切削ビットの円筒面の大きさの小塊に小割りされるので、切削ビットを取り付けたロッドをマンホール内から抜いた後に、マンホール底のインバート小塊をマンホール開口から容易に搬出することができる。
【符号の説明】
【0030】
A 既設マンホール
4 ボーリングマシン
5 ロッド
6 切削ビット
15 インバート
16 開口(マンホール開口)
17 金属蓋(蓋)
41 アーム
42 チャック

【特許請求の範囲】
【請求項1】
地中に埋設された既設マンホールの蓋をマンホール開口から外し、アームを有するボーリングマシンを移動可能に開口近傍の地表へ据え付けるボーリングマシン据付工程と、 ロッドの先端に切削ビットを取り付けるビット取付工程と、
前記マンホール開口から前記ロッドを降ろし、マンホール底に敷設されたコンクリート製のインバートの上面に前記切削ビットを臨ませるロッド降し工程と、
前記ロッドの基端を前記ボーリングマシンのチャックに固定するロッド固定工程と、
前記ボーリングマシンを稼働させ、前記ロッドを回転させながら降下させ前記切削ビットで前記インバートを切削し、切削が完了すると前記ロッドを上げ、前記ボーリングマシンを移動させることにより前記切削ビットの切削位置を変えて複数箇所で切削を行うインバート切削工程と、
前記切削ビットを取り付けた前記ロッドをマンホール内から抜いた後、前記マンホール底のインバート小塊を前記マンホール開口から搬出する小塊搬出工程とからなる、既設マンホールのインバート撤去方法。
【請求項2】
前記ロッドの先端に取り付けられる切削ビットは、円筒状であるとともに、先端に切削刃が形成されており、
切削部位が重なる様に切削位置を変えて、前記切削ビットが前記インバートの複数箇所を切削することを特徴とする、既設マンホールのインバート撤去方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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