説明

既設建物補強構造

【課題】集合住宅の周囲を占拠せずかつ住宅の美観を損なわずに振動に対する住宅の補強を行うことができる既設建物補強構造を提供する。
【解決手段】補強部材を利用して集合住宅10に生じた振動を抑制する既設建物補強構造が、住宅10の空室18に構築され、補強部材が住宅10の空室18内部の所定の箇所に設置された室内設置制震補強ブレース20A,20Bであり、それら室内設置制震補強ブレース20A,20Bが空室18内部の床スラブと両側壁とを利用して構築された増設架構19A,19Bに設置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種の補強部材を利用して既設建物に生じた振動を抑制する既設建物補強構造に関する。
【背景技術】
【0002】
既設建物と隣接して構築され、縦横方向へ層状に並ぶ耐震架構を備えた新設フレームと、新設フレームと既設建物との間に設置されてそれらを連結するコンクリートスラブと、耐震架構の内側に設置され、コンクリートスラブを介して既存建物から新設フレームに伝達された振動を減衰させる振動減衰装置とから構成された耐震補強構造がある(特許文献1参照)。振動減衰装置は、基端部が耐震架構の上構材に回転可能に取り付けられた第1アームと、基端部が架構の下構材に回転可能に取り付けられた第2アームと、基端部が架構に回転可能に取り付けられた油圧ダンパーと、第1および第2アームの反対端部とダンパーの反対端部とを回転可能に連結する回転ヒンジとから形成されている。油圧ダンパーは、回転ヒンジの回転エネルギーを吸収する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−145162号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記特許文献1に開示の耐震補強構造では、地震等によって建物に生じた振動がコンクリートスラブを介して新設フレームに伝達される。この耐震補強構造は、既設建物の振動をコンクリートスラブや耐震架構、振動減衰装置によって抑制することができ、地震等による建物の損壊や崩壊、倒壊を防ぐことができる。この耐震補強構造では、既設建物の外側に建物とは別に多数の耐震架構を備えた新設フレームが設置され、建物と新設フレームとがコンクリートスラブを介して連結されるから、建物の周囲にフレームやスラブを設置するための設置スペースを必要とし、建物の周囲がフレームやスラブによって占拠され、建物の周囲の使用ができなくなるという問題がある。また、既設建物の外側に新設フレームやコンクリートスラブを設置すると、その建物の外観がそれらによって遮られ、建物の美観が損なわれるという問題もある。
【0005】
なお、集合住宅では、住戸の廊下側の柱と梁とを利用した既設架構に耐震補強部材を取り付け、住宅の耐震補強を行う場合、住戸のバルコニー側の柱と梁とを利用した既設架構に耐震補強部材を取り付け、住宅の耐震補強を行う場合がある。柱と梁とを利用した既設架構に耐震補強部材を取り付けた住戸は実質的にその使用ができない用途廃止住戸扱いとなる。耐震の必要上、多数の耐震補強部材を取り付ける場合、耐震補強部材と同数の住戸が用途廃止となり、一つの集合住宅に多数の用途廃止住戸が発生し、その集合住宅の用途廃止住戸率が大きく上昇してしまう。
【0006】
本発明の目的は、既設建物の周囲を占拠せずかつ建物の美観を損なわずに振動に対する建物の補強を行うことができる既設建物補強構造を提供することにある。本発明の他の目的は、集合住宅の用途廃止住戸率の上昇を防ぎつつ振動に対する住宅の補強を行うことができる既設建物補強構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するための本発明の前提は、各種の補強部材を利用して既設建物に生じた振動を抑制する既設建物補強構造である。
【0008】
前記前提における本発明の特徴は、既設建物補強構造が既設建物の空室に構築され、補強部材が空室内部の所定の箇所に設置された少なくとも1つの室内設置補強部材であることにある。
【0009】
本発明の一例としては、室内設置補強部材が振動減衰ダンパーを備えた室内設置制震補強ブレースであり、室内設置制震補強ブレースが空室内部の床と壁とを利用して構築された増設架構に設置されている。
【0010】
本発明の他の一例としては、室内設置制震補強ブレースが、増設架構の下方に回転可能に取り付けられた第1基端部と第1基端部の上方に位置する第1反対端部とを有して一方向へ延びる第1アームと、増設架構の上方に回転可能に取り付けられた第2基端部と第2基端部の下方に位置する第2反対端部とを有して一方向へ延びる第2アームと、第1および第2アームの基端部の間に位置する増設架構に回転可能に取り付けられた第3基端部と第3基端部の反対側に位置する第3反対端部とを有して一方向と交差する方向へ延びる振動減衰ダンパーと、第1および第2アームの反対端部と振動減衰ダンパーの反対端部とを回転可能に連結する連結部材とから形成されている。
【0011】
本発明の他の一例として、既設建物補強構造では、空室内部に複数の増設架構が構築され、互いに対向する増設架構では、室内設置制震補強ブレースが対称形に設置されている。
【0012】
本発明の他の一例として、増設架構では、一対の室内設置制震補強ブレースが対称形に設置されている。
【0013】
本発明の他の一例としては、室内設置補強部材が室内設置耐震補強ブレースであり、室内設置耐震補強ブレースが空室内部の床と壁とを利用して構築された増設架構に設置されている。
【0014】
本発明の他の一例としては、補強部材が空室の柱と梁とを利用した既設架構に設置された少なくとも1つの既設架構設置補強部材を含む。
【0015】
本発明の他の一例としては、既設架構設置補強部材が振動減衰ダンパーを備えた既設架構設置制震補強ブレースである。
【0016】
本発明の他の一例としては、既設架構設置制震補強ブレースが、既設架構の下方に回転可能に取り付けられた第1基端部と第1基端部の上方に位置する第1反対端部とを有して一方向へ延びる第1アームと、既設架構の上方に回転可能に取り付けられた第2基端部と第2基端部の下方に位置する第2反対端部とを有して一方向へ延びる第2アームと、第1および第2アームの基端部の間に位置する既設架構に回転可能に取り付けられた第3基端部と第3基端部の反対側に位置する第3反対端部とを有して一方向と交差する方向へ延びる振動減衰ダンパーと、第1および第2アームの反対端部と振動減衰ダンパーの反対端部とを回転可能に連結する連結部材とから形成されている。
【0017】
本発明の他の一例としては、既設架構設置補強部材が既設架構に取り付けられた既設架構設置耐震補強ブレースである。
【0018】
本発明の他の一例として、既設建物補強構造が構築された空室とその空室に隣接する他室との間には、その他室から空室に出入可能な第1出入口が作られている。
【0019】
本発明の他の一例として、既設建物補強構造が構築された空室とその空室の上下に位置する他室との間には、その他室から空室に出入可能な第2出入口が作られている。
【0020】
本発明の他の一例として、既設建物補強構造が構築された空室には、その外部からその空室に出入可能な第3出入口が作られている。
【発明の効果】
【0021】
本発明にかかる既設建物補強構造によれば、室内設置補強部材を既設建物の空室内部の所定の箇所に設置するから、補強部材を建物の周囲に設置する必要はなく、既設建物の周囲を占拠せずかつ建物の美観を損なわずに振動に対する建物の補強を行うことができる。既設建物が集合住宅である場合は、住宅の空室内部の所定の箇所に室内設置補強部材を設置するから、住宅の空室を振動に対する補強に利用することができ、多数の住戸を用途廃止のそれにすることなく振動に対する住宅の補強を行うことができる。この既設建物補強構造は、集合住宅の用途廃止住戸率の上昇を防ぎつつ振動に対する住宅の補強を行うことができる。
【0022】
室内設置補強部材が振動減衰ダンパーを備えた室内設置制震補強ブレースであり、その制震補強ブレースが空室内部の床と壁とを利用して構築された増設架構に設置された既設建物補強構造は、地震等によって増設架構に伝わった振動が振動減衰ダンパーによって減衰され、それにともなって既設建物の振動が低減されるから、地震等による建物の損壊や崩壊、倒壊を防ぐことができる。既設建物補強構造は、増設架構や室内設置制震補強ブレースを既設建物の空室内部の所定の箇所に設置するから、増設架構や室内設置制震補強ブレースを建物の周囲に設置する必要はなく、既設建物の周囲を占拠せずかつ建物の美観を損なわずに建物の制震補強を行うことができる。この既設建物補強構造は、既設建物が集合住宅である場合、住宅の空室内部の所定の箇所に増設架構や室内設置制震補強ブレースを設置するから、住宅の空室を制震補強に利用することができ、集合住宅の用途廃止住戸率の上昇を防ぎつつ住宅の制震補強を行うことができる。
【0023】
室内設置制震補強ブレースが第1および第2アームと振動減衰ダンパーとそれらアームおよび振動減衰ダンパーを回転可能に連結する連結部材とから形成された既設建物補強構造は、第1および第2アームと振動減衰ダンパーとがトグル機構を構成し、地震等によって増設架構に伝わった振動がトグル機構によって減衰され、それにともなって既設建物に発生した振動が低減されるから、地震等による建物の損壊や崩壊、倒壊を防ぐことができる。既設建物補強構造は、増設架構やトグル機構を既設建物の空室内部の所定の箇所に設置するから、増設架構やトグル機構を建物の周囲に設置する必要はなく、既設建物の周囲を占拠せずかつ建物の美観を損なわずに建物の制震補強を行うことができる。この既設建物補強構造は、既設建物が集合住宅である場合、住宅の空室内部の所定の箇所に増設架構やトグル機構を設置するから、住宅の空室を制震補強に利用することができ、集合住宅の用途廃止住戸率の上昇を防ぎつつ住宅の制震補強を行うことができる。
【0024】
空室内部に複数の増設架構が構築され、互いに対向する増設架構において室内設置制震補強ブレースが対称形に設置された既設建物補強構造は、対称形に設置されたそれら室内設置制震補強ブレースのうち、一方のブレースが既設建物の一方向の振動を減衰し、他方のブレースが建物の一方向と交差する方向の振動を減衰するから、それら室内設置制震補強ブレースによって建物に発生した振動が効果的に低減され、地震等による建物の損壊や崩壊、倒壊を確実に防ぐことができる。
【0025】
増設架構において一対の室内設置制震補強ブレースが対称形に設置された既設建物補強構造は、対称形に設置されたそれら室内設置制震補強ブレースのうち、一方のブレースが既設建物の一方向の振動を減衰し、他方のブレースが建物の一方向と交差する方向の振動を減衰するから、それら室内設置制震補強ブレースによって建物に発生した振動が効果的に低減され、地震等による建物の損壊や崩壊、倒壊を確実に防ぐことができる。
【0026】
室内設置補強部材が室内設置耐震補強ブレースであり、そのブレースが空室内部の床と壁とを利用して構築された増設架構に設置された既設建物補強構造は、地震等によって増設架構に伝わった振動に耐震補強ブレースが抵抗し、それにともなって既設建物の振動が抑制されるから、地震等による建物の損壊や崩壊、倒壊を防ぐことができる。既設建物補強構造は、増設架構や耐震補強ブレースを既設建物の空室内部の所定の箇所に設置するから、増設架構やブレースを建物の周囲に設置する必要はなく、既設建物の周囲を占拠せずかつ建物の美観を損なわずに建物の耐震補強を行うことができる。この既設建物補強構造は、既設建物が集合住宅である場合、住宅の空室内部の所定の箇所に増設架構や耐震補強ブレースを設置するから、住宅の空室を耐震補強に利用することができ、集合住宅の用途廃止住戸率の上昇を防ぎつつ住宅の耐震補強を行うことができる。
【0027】
補強部材が空室の柱と梁とを利用した既設架構に設置された既設架構設置補強部材を含む既設建物補強構造は、空室に室内設置補強部材のみならず既設架構設置補強部材が設置されるから、地震等によって既設建物に伝わった振動が室内設置補強部材や既設架構設置補強部材によって抑制され、地震等による建物の損壊や崩壊、倒壊を防ぐことができる。既設建物補強構造は、既設架構設置補強部材を既設建物の空室の柱と梁とを利用した既設架構に設置するから、既設架構設置補強部材を建物の周囲に設置する必要はなく、既設建物の周囲を占拠せずかつ建物の美観を損なわずに振動に対する建物の補強を行うことができる。この既設建物補強構造は、既設建物が集合住宅である場合、住宅の空室の柱と梁とから形成された既設架構に既設架構設置補強部材を設置するから、住宅の空室を振動に対する補強に利用することができ、集合住宅の用途廃止住戸率の上昇を防ぎつつ振動に対する住宅の補強を行うことができる。
【0028】
既設架構設置補強部材が振動減衰ダンパーを備えた既設架構設置制震補強ブレースである既設建物補強構造は、空室に室内設置補強部材のみならず振動減衰ダンパーを備えた既設架構設置制震補強ブレースが設置され、地震等によって既設建物に伝わった振動が室内設置補強部材によって減衰されるとともに、振動が制震補強ブレースによって減衰され、それにともなって既設建物の振動が低減されるから、地震等による建物の損壊や崩壊、倒壊を防ぐことができる。既設建物補強構造は、既設架構設置制震補強ブレースを既設建物の空室の柱と梁とから形成された既設架構に設置するから、制震補強ブレースを建物の周囲に設置する必要はなく、既設建物の周囲を占拠せずかつ建物の美観を損なわずに建物の制震補強を行うことができる。この既設建物補強構造は、既設建物が集合住宅である場合、住宅の空室の柱と梁とから形成された既設架構に既設架構設置制震補強ブレースを設置するから、住宅の空室を制震補強に利用することができ、集合住宅の用途廃止住戸率の上昇を防ぎつつ住宅の制震補強を行うことができる。
【0029】
既設架構設置制震補強ブレースが第1および第2アームと振動減衰ダンパーと第1および第2アームの反対端部と振動減衰ダンパーの反対端部とを回転可能に連結する連結部材とから形成された既設建物補強構造は、第1および第2アームと振動減衰ダンパーとがトグル機構を構成し、地震等によって既設建物に発生した振動がトグル機構によって減衰され、それにともなって既設建物の振動が低減されるから、地震等による建物の損壊や崩壊、倒壊を防ぐことができる。既設建物補強構造は、トグル機構を既設建物の空室の柱と梁とから形成された既設架構に設置するから、トグル機構を建物の周囲に設置する必要はなく、既設建物の周囲を占拠せずかつ建物の美観を損なわずに建物の制震補強を行うことができる。この既設建物補強構造は、既設建物が集合住宅である場合、住宅の空室の柱と梁とから形成された既設架構にトグル機構を設置するから、住宅の空室を制震補強に利用することができ、集合住宅の用途廃止住戸率の上昇を防ぎつつ住宅の制震補強を行うことができる。
【0030】
既設架構設置補強部材が既設架構に取り付けられた既設架構設置耐震補強ブレースである既設建物補強構造は、地震等によって既設建物に発生した振動に耐震補強ブレースが抵抗し、それにともなって既設建物の振動が抑制されるから、地震等による建物の損壊や崩壊、倒壊を防ぐことができる。既設建物補強構造は、既設架構設置耐震補強ブレースを既設建物の空室の柱と梁とから形成された既設架構に設置するから、耐震補強ブレースを建物の周囲に設置する必要はなく、既設建物の周囲を占拠せずかつ建物の美観を損なわずに建物の耐震補強を行うことができる。この既設建物補強構造は、既設建物が集合住宅である場合、住宅の空室の柱と梁とから形成された既設架構に既設架構設置耐震補強ブレースを設置するから、住宅の空室を耐震補強に利用することができ、集合住宅の用途廃止住戸率の上昇を防ぎつつ住宅の耐震補強を行うことができる。
【0031】
既設建物補強構造が構築された空室とその空室に隣接する他室との間に他室から空室に出入可能な第1出入口が作られている既設建物補強構造は、互いに隣接する他室と空室との間を第1出入口を介して出入可能にすることにより、他室の居住者がその空室を任意の目的で使用することができ、空室の有効利用を図ることができるとともに、空室からの家賃収入を得ることによって収益の増加を図ることができる。この既設建物補強構造は、それを構築した空室の耐震性が他室のそれよりも高いから、その空室が地震発生時の避難場所となり、地震発生時に他室の居住者がその空室に移動することで、居住者の安全を図ることができる。
【0032】
既設建物補強構造が構築された空室とその空室の上下に位置する他室との間に他室から空室に出入可能な第2出入口が作られている既設建物補強構造は、上下に並ぶ他室と空室との間を第2出入口を介して出入可能にすることにより、他室の居住者がその空室を任意の目的で使用することができ、空室の有効利用を図ることができるとともに、空室からの家賃収入を得ることによって収益の増加を図ることができる。この既設建物補強構造は、それを構築した空室の耐震性が他室のそれよりも高いから、その空室が地震発生時の避難場所となり、地震発生時に他室の居住者がその空室に移動することで、居住者の安全を図ることができる。
【0033】
既設建物補強構造が構築された空室にその外部から空室に出入可能な第3出入口が作られている既設建物補強構造は、外部と空室との間を第3出入口を介して出入可能にすることにより、他室の居住者がその空室を任意の目的で使用することができ、空室の有効利用を図ることができるとともに、空室からの家賃収入を得ることによって収益の増加を図ることができる。この既設建物補強構造は、それを構築した空室の耐震性が他室のそれよりも高いから、その空室が地震発生時の避難場所となり、地震発生時に他室の居住者がその空室に移動することで、居住者の安全を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】一例として示す集合住宅(既設建物)の正面図。
【図2】図1のA−A線矢視断面図。
【図3】図1のB−B線端面図。
【図4】図2のうちの空室を拡大して示す部分拡大平面図。
【図5】増設架構の側面図。
【図6】増設架構および室内設置制震補強ブレースの正面図。
【図7】増設架構および室内設置制震補強ブレースの正面図。
【図8】室内設置制震補強ブレースによる振動減衰機能の説明図。
【図9】室内設置制震補強ブレースによる振動減衰機能の説明図。
【図10】増設架構および室内設置制震補強ブレースの正面図。
【図11】増設架構および室内設置制震補強ブレースの正面図。
【図12】増設架構および室内設置制震補強ブレースの正面図。
【図13】室内設置制震補強ブレースによる振動減衰機能の説明図。
【図14】室内設置制震補強ブレースによる振動減衰機能の説明図。
【図15】他の一例として示す集合住宅(既設建物)の正面図。
【図16】図15のC−C線矢視断面図。
【図17】図15のD−D線端面図。
【図18】図15のうちの空室を拡大して示す部分拡大平面図。
【図19】他の一例として示す集合住宅(既設建物)の正面図。
【図20】図19のE−E線矢視断面図。
【図21】図19のF−F線端面図。
【図22】図20のうちの空室を拡大して示す部分拡大平面図。
【図23】既設架構の側面図。
【図24】既設架構に取り付けられた制震補強ブレースの正面図。
【図25】既設架構に取り付けられた制震補強ブレースの正面図。
【図26】他の一例として示す制震補強ブレースの正面図。
【図27】他の一例として示す制震補強ブレースの正面図。
【図28】他の一例として示す制震補強ブレースの正面図。
【図29】他の一例として示す集合住宅(既設建物)の正面図。
【図30】図29のG−G線矢視断面図。
【図31】図29のH−H線端面図。
【図32】図29のうちの空室を拡大して示す部分拡大平面図。
【図33】既設架構設置耐震補強ブレースの正面図。
【図34】室内設置耐震補強ブレースの正面図。
【図35】他の一例として示す耐震補強ブレースの正面図。
【図36】他の一例として示す耐震補強ブレースの正面図。
【発明を実施するための形態】
【0035】
集合住宅10(既設建物)の正面図である図1や図1のA−A線矢視断面図である図2、図1のB−B線端面図である図3、図2のうちの空室18を拡大して示す部分拡大平面図である図4を参照し、本発明に係る既設建物補強構造の詳細を説明すると、以下のとおりである。なお、図1〜3では、横方向を矢印X(図1,2のみ)、縦方向を矢印Y(図1,3のみ)で示し、前後方向を矢印Z(図2,3のみ)で示す。
【0036】
集合住宅10は、11階建てRC構造物であって横方向8スパンのコンクリート系ラーメン構造の中層の建物である。住宅10の側面には、階段11(図2参照)を設置した立体架構12が作られている。なお、既設建物として住宅10を例示しているが、既設建物を住宅10に限定するものではなく、商業ビルやオフィスビル、ホテル、庁舎、官舎、校舎、駅舎等のあらゆる既設建物が既設建物補強構造構築の対象となる。
【0037】
また、既設建物の階層や横方向スパンにも特に限定はなく、中層のみならず、低層や高層、超高層であってもよい。さらに、コンクリート系ラーメン構造のみならず、平板構造や補強コンクリートブロック構造、鉄筋コンクリート組積造、鉄筋系ラーメン構造、鉄筋系複合構造、コア構造、外殻構造、メガストラクチャア、トラス構造等に既設建物補強構造を適用することができる
【0038】
集合住宅10の背面壁13の側には、背面壁13に連接されて住宅10から前後方向外方へ延出する共同廊下14が設置されている。廊下14は、各階に設置されて横方向へ延びている。廊下14の延出端部には、それに連接されて廊下14から縦方向上方へ延びる欄干15が設置されている。住宅10の正面壁16の側には、正面壁16に連接されて住宅10から前後方向外方へ延出するバルコニー17が設置されている。バルコニー17は、各階に設置されて横方向へ延びている。
【0039】
集合住宅10は、通常すべての住戸が使用されていることはなく、常時所定数の空室18が存在する。空室18は、(空室÷全住戸)×100で算出される空室率(%)として把握することができる。空室率は、住宅10における収益率に影響し、採算ラインとして5〜15%の範囲、好ましくは7〜12%の範囲、より好ましくは9〜10%の範囲である。ここで、空室18とは、人が居住していない室のみならず、居住以外の目的において未使用の室も含む。
【0040】
集合住宅10における空室18には、増設架構19A,19B(耐震架構)と後記する室内設置制震補強ブレース20A,20B(室内設置補強部材)とを利用して住宅10に生じた振動を抑制する既設建物補強構造が構築されている。空室18には、1個の増設架構19A,19Bがその内部の略中央部に設置されている。増設架構19Aの内側には、1個の室内設置制震補強ブレース20Aが取り付けられ、増設架構19Bの内側には、1個の室内設置制震補強ブレース20Bが取り付けられている。
【0041】
増設架構19A,19Bと室内設置制震補強ブレース20A,20Bとは、空室18の廊下14側に施工された柱21および梁22(住宅10の柱21および梁22)から形成される第1既設架構23と空室18のバルコニー17側に施工された柱24および梁25(住宅10の柱24および梁25)から形成される第2既設架構26との間に配置されている。換言すれば、それら既設架構23,26の施工箇所を除く空室18の内部に配置されている。
【0042】
室内設置制震補強ブレース20A,20Bは、図1に示すように、斜め横方向に隣接する空室18において対称形(互い違い)に設置されている。具体的には、2階の左から4スパン目の空室18の制震補強ブレース20Aや4階の左から6スパン目の空室18の制震補強ブレース20A、6階の左から8スパン目の空室18の制震補強ブレース20Aは、架構19Aに対するそれらの取り付け位置が同一であり、それらが同一の方向を向いて架構19Aに設置されている。これに対し、3階の左から5スパン目の空室18の制震補強ブレース20Bや5階の左から7スパン目の空室18の制震補強ブレース20Bは、それら制震補強ブレース20Aとは逆の方向を向くように架構19Bに設置されている。なお、室内設置制震補強ブレース20A,20Bが隣接する空室18において対称形に設置されている必要はなく、縦横方向へ離間した15%以下であるが、好ましくは5〜15の範囲、より好ましくは7〜12%の範囲、一層好ましくは9〜10%である。15%以下であるが、好ましくは5〜15の範囲、より好ましくは7〜12%の範囲、一層好ましくは9〜10%である。空室18において制震補強ブレース20A,20Bが対称形に設置されていてもよい。
【0043】
既設建物補強構造が構築された住戸は、実質的にその使用ができない用途廃止住戸扱いとなる。全住戸に対する既設建物補強構造の構築率は、15%以下であるが、好ましくは5〜15%の範囲、より好ましくは7〜12%の範囲、一層好ましくは9〜10%である。既設建物補強構造の構築率が全住戸の5%未満では、住宅10に生じた振動を補強構造を介して抑制することが難しい。既設建物補強構造の構築率が全住戸の15%を超過すると、住宅10における用途廃止住戸の割合が増加し、住宅10の収益率が低下して採算割れを起こしてしまう場合がある。既設建物補強構造は、その構築率が前記範囲にあるから、住宅10の収益率の低下を防ぎつつ、通常発生し得る住宅10の空室率に対応させて振動に対する住宅10の補強を行うことができ、住宅10に十分な耐震補強を施すことができる。
【0044】
空室18とその空室18の横方向に隣接する他室27との間には、図4に示すように、それら他室27から空室18に出入可能な出入口28(第1出入口)が作られている。出入口28は、その空室18とそれに隣接する他室27とを仕切る両側壁29に施設されている。出入口28には、開閉可能なドア30が設置されている。空室18の廊下14側の背面壁13には、空室18に出入りするための出入口31(第3出入口)が作られている。出入口31には、開閉可能なドア32が設置されている。ドア30を開けることで、他室27から空室18に出入りすることができる他、廊下14側のドア32を開けることで、廊下14(外部)から空室18に出入りすることができる。なお、空室18に出入口28,31(第1および第3出入口)が作られていなくてもよい。
【0045】
図5は、増設架構19A,19Bの側面図であり、図6は、一例として示す増設架構19Aおよび室内設置制震補強ブレース20Aの正面図である。図7は、一例として示す増設架構19Bおよび室内設置制震補強ブレース20Bの正面図である。それら増設架構19A,19Bは、空室18の両側壁29に取り付けられて縦方向へ延びる増設補強第1柱33および増設補強第2柱34と、空室18の床スラブ35(天井)に取り付けられて横方向へ延びる増設補強第1梁36および増設補強第2梁37とから作られ、その正面形状が四角形のフレーム状に組み立てられている。柱33,34と梁36,37とは、それらの交差部位において所定の連結手段(図示せず)を介して互いに連結されている。
【0046】
第1および第2柱33,34には、縦方向へ延びるH綱(図示せず)と、縦横方向へ延びる複数の鉄筋(図示せず)と、それら鉄筋に繋がって横方向へ延びる複数のアンカー38と、H綱やそれら鉄筋、それらアンカー38を包被するコンクリート(図示せず)とから作られた鉄筋コンクリート(RC)が使用されている。それら柱33,34の外側に露出するアンカー38の露出端部は、側壁29に形成されたアンカーホール(図示せず)に打ち込まれている。側壁29と第1および第2柱33,34とは、それらアンカー38によって互いに連結されている。側壁29と第1および第2柱33,34との連結には、アンカー38とともに接着剤を使用することもでき、接着剤のみを使用することもできる。
【0047】
第1および第2梁36,37には、横方向へ延びるH綱(図示せず)と、縦横方向へ延びる複数の鉄筋(図示せず)と、それら鉄筋に繋がって縦方向へ延びる複数のアンカー39と、H綱やそれら鉄筋、それらアンカー39を包被するコンクリート(図示せず)とから作られた鉄筋コンクリート(RC)が使用されている。それら梁36,37の外側に露出するアンカー39の露出端部は、床スラブ35(天井)に形成されたアンカーホール(図示せず)に打ち込まれている。床スラブ35と第1および第2梁36,37とは、それらアンカー39によって互いに連結されている。床スラブ35と第1および第2梁36,37との連結には、アンカー39とともに接着剤を使用することもでき、接着剤のみを使用することもできる。なお、柱33,34や梁36,37には、鉄筋コンクリート(RC)の他に、鉄筋鉄骨コンクリート(SRC)、コンクリート充填鋼管(CFT)、鉄骨(S)等を使用することもできる。
【0048】
増設架構19Aに設置された室内設置制震補強ブレース20Aは、図6に示すように、第2柱34と第1梁36との交差部または交差部の近傍(第2柱34と第1梁36とのいずれか、または、交差部を含む第2柱34または第1梁36)から斜め上方へ延びる第1アーム40Aと、第1柱33と第2梁37との交差部または交差部の近傍(第1柱33と第2梁37とのいずれか、または、交差部を含む第1柱33または第2梁37)から斜め下方に延びる第2アーム41Aと、第2柱34と第2梁37との交差部または交差部の近傍(第2柱34と第2梁37とのいずれか、または、交差部を含む第2柱34または第2梁37)から斜め下方へ延びる油圧ダンパー42A(振動減衰ダンパー)とから形成されている。
【0049】
第1アーム40Aと第2アーム41Aとは、それらの長さ寸法が同一であってもよく、それらの長さ寸法が異なっていてもよい。第1アーム40Aは、回転支承43に固定された固定端部44(第1基端部)と、回転ヒンジ45(連結部材)に回転可能に連結された自由端部46(第1反対端部)と、それら端部44,46の間に延びる円柱状の中間部47とを有する。回転支承43は、第2柱34と第1梁36との交差部または交差部の近傍(第2柱34と第1梁36とのいずれか、または、交差部を含む第2柱34または第1梁36)に固定されたガセットプレート48に回転可能に取り付けられている。プレート48は、第2柱34や第1梁36を形成するH綱に溶接されている。
【0050】
第2アーム41Aは、回転支承49に固定された固定端部50(第2基端部)と、回転ヒンジ45に回転可能に連結された自由端部51(第2反対端部)と、それら端部50,51の間に延びる円柱状の中間部52とを有する。回転支承49は、第1柱33と第2梁37との交差部または交差部の近傍(第1柱33と第2梁37とのいずれか、または、交差部を含む第1柱33または第2梁37)に固定されたガセットプレート53に回転可能に取り付けられている。プレート53は、第1柱33や第2梁37を形成するH綱に溶接されている。第1アーム40Aと第2アーム41Aとは、所定の角度で連結されてトグル機構を構成している。
【0051】
油圧ダンパー42Aは、シリンダ54およびロッド55から形成されている。ダンパー42Aのロッド55は、その先端部56(第3反対端部)が回転ヒンジ45に回転可能に連結されている。ダンパー42Aのシリンダ54は、その基端部57(第3基端部)が回転支承58に固定されている。回転支承58は、第2柱34と第2梁37との交差部または交差部の近傍(第2柱34と第2梁37とのいずれか、または、交差部を含む第2柱34または第2梁37)に固定されたガセットプレート59に回転可能に取り付けられている。プレート59は、第2柱34や第2梁37を形成するH綱に溶接されている。油圧ダンパー42Aは、回転ヒンジ45の動作に追従しつつ、ロッド55の伸縮によって第1および第2アーム40A,41Aの変形(回転ヒンジ45の回転変位量)を吸収し、増設架構19Aの振動を減衰する。
【0052】
増設架構19Bに設置された室内設置制震補強ブレース20Bは、図7に示すように、第1柱33と第1梁36との交差部または交差部の近傍(第1柱33と第1梁36とのいずれか、または、交差部を含む第1柱33または第1梁36)から斜め上方へ延びる第1アーム40Bと、第2柱34と第2梁37との交差部または交差部の近傍(第2柱34と第2梁37とのいずれか、または、交差部を含む第2柱34と第2梁37)から斜め下方に延びる第2アーム41Bと、第1柱33と第2梁37との交差部または交差部の近傍(第1柱33と第2梁37とのいずれか、または、交差部を含む第1柱33または第2梁37)から斜め下方へ延びる油圧ダンパー42B(振動減衰ダンパー)とから形成されている。
【0053】
第1アーム40Bと第2アーム41Bとは、それらの長さ寸法が同一であってもよく、それらの長さ寸法が異なっていてもよい。第1アーム40Bは、回転支承43に固定された固定端部44(第1基端部)と、回転ヒンジ45(連結部材)に回転可能に連結された自由端部46(第1反対端部)と、それら端部44,46の間に延びる円柱状の中間部47とを有する。回転支承43は、第1柱33と第1梁36との交差部または交差部の近傍(第1柱33と第1梁36とのいずれか、または、交差部を含む第1柱33または第1梁36)に固定されたガセットプレート48に回転可能に取り付けられている。プレート48は、第1柱33や第1梁36を形成するH綱に溶接されている。
【0054】
第2アーム41Bは、回転支承49に固定された固定端部50(第2基端部)と、回転ヒンジ45に回転可能に連結された自由端部51(第2反対端部)と、それら端部50,51の間に延びる円柱状の中間部52とを有する。回転支承49は、第2柱34と第2梁37との交差部または交差部の近傍(第2柱34と第2梁37とのいずれか、または、交差部を含む第2柱34または第2梁37)に固定されたガセットプレート53に回転可能に取り付けられている。プレート53は、第2柱34や第2梁37を形成するH綱に溶接されている。第1アーム40Bと第2アーム41Bとは、所定の角度で連結されてトグル機構を構成している。
【0055】
油圧ダンパー42Bは、シリンダ54およびロッド55から形成されている。ダンパー42Bのロッド55は、その先端部56(第3反対端部)が回転ヒンジ45に回転可能に連結されている。ダンパー42Bのシリンダ54は、その基端部57(第3基端部)が回転支承58に固定されている。回転支承58は、第1柱33と第2梁37との交差部または交差部の近傍(第1柱33と第2梁37とのいずれか、または、交差部を含む第1柱33または第2梁37)に固定されたガセットプレート59に回転可能に取り付けられている。プレート59は、第1柱33や第2梁37を形成するH綱に溶接されている。油圧ダンパー42Bは、回転ヒンジ45の動作に追従しつつ、ロッド55の伸縮によって第1および第2アーム40B,41Bの変形(回転ヒンジ45の回転変位量)を吸収し、増設架構19Bの振動を減衰する。
【0056】
図8は、室内設置制震補強ブレース20Aによる振動減衰機能の説明図であり、図9は、室内設置制震補強ブレース20Bによる振動減衰機能の説明図である。図8,9では、側壁29や床スラブ35の図示を省略し、増設架構19A,19Bのみを拡大して示す。図8,9に基づいて、室内設置制震補強ブレース20A,20Bによる振動減衰の原理を説明すると、以下のとおりである。
【0057】
地震等によって集合住宅10に振動が生じ、その振動が住宅10から増設架構19Aに伝わる。住宅10が左方向(横方向左方)へ水平変形したとすると、図8に矢印X1で示すように、増設架構10Aも左方向へ水平変形する。ただし、第1および第2柱33,34の伸縮を無視して第1および第2梁36,37が水平変形したものとする。
【0058】
増設架構19Aが左方向へ水平変形すると、架構19Aの内側に設置された室内設置制震補強ブレース20Aの第1アーム40Aおよび第2アーム41Aが回転支承43,49を中心として回転運動を行う。それらアーム40A,41Aが回転運動すると、回転支承43,49の水平変位量によって回転ヒンジ45の回転変位量が増幅されて大きくなる。このように、回転支承43,49の小さな変位量が回転ヒンジ45の大きな回転変位量に変換され、小さい変位量×大きな力=大きな変位量×小さな力という関係が成立する。すなわち、油圧ダンパー42Aのロッド55が大きく伸長して増設架構19Aの振動が熱に変換され、それによって架構19Aの振動が減衰されるとともに、それと同時に架構19Aを介して住宅10の振動が抑制される。
【0059】
次に、住宅10が右方向(横方向右方)へ水平変形したとすると、図9に矢印X2で示すように、増設架構19Bも右方向へ水平変形する。ただし、第1および第2柱33,34の伸縮を無視して第1および第2梁36,37が水平変形したものとする。架構19Bが右方向へ水平変形すると、架構19Bの内側に設置された室内設置制震補強ブレース20Bの第1アーム40Bおよび第2アーム41Bが回転支承43,49を中心として回転運動を行う。それらアーム40B,41Bが回転運動すると、回転支承43,49の水平変位量によって回転ヒンジ45の回転変位量が増幅されて大きくなり、油圧ダンパー42Bのロッド55が大きく伸長して架構19Bの振動が熱に変換され、それによって架構19Bの振動が減衰されるとともに、それと同時に架構19Bを介して住宅10の振動が抑制される。
【0060】
このように、それら室内設置制震補強ブレース20A,20Bのうち、一方のブレース20Aが住宅10の左方向の振動を減衰し、他方のブレース20Bが住宅10の右方向の振動を減衰するから、それら室内設置制震補強ブレース20A,20Bによって住宅10に発生した振動が効果的に低減される。
【0061】
図10は、増設架構19Aおよび他の一例として示す室内設置制震補強ブレース20Cの正面図である。増設架構19Aは図6に示すそれと同一であるから、その説明は省略する。室内設置制震補強ブレース20Cは、第2柱34と第1梁36との交差部60から斜め上方へ延びる第1アーム40Cと、第1柱33と第2梁37との交差部61から斜め下方に延びる第2アーム41Cと、第2柱34と第2梁37との交差部62から斜め下方へ延びる油圧ダンパー42C(振動減衰ダンパー)とから形成されている。第1アーム40Cと第2アーム41Cとは、それらの長さ寸法が同一であってもよく、それらの長さ寸法が異なっていてもよい。
第1アーム40Cは、回転支承43に固定された固定端部44と、回転ヒンジ45(連結部材)に回転可能に連結された自由端部46と、それら端部44,46の間に延びる円柱状の中間部47とを有する。回転支承43は、交差部60に回転可能に取り付けられている。第2アーム41Cは、回転支承49に固定された固定端部50と、回転ヒンジ45に回転可能に連結された自由端部51と、それら端部50,51の間に延びる円柱状の中間部52とを有する。回転支承49は、交差部61に回転可能に取り付けられている。第1アーム40Cと第2アーム41Cとは、所定の角度で連結されてトグル機構を構成している。
【0062】
油圧ダンパー42Cは、シリンダ54およびロッド55から形成されている。ダンパー42Cのロッド55は、その先端部56が回転ヒンジ45に回転可能に連結されている。ダンパー42Cのシリンダ54は、その基端部57が回転支承58に固定されている。回転支承58は、交差部62に回転可能に取り付けられている。油圧ダンパー42Cは、回転ヒンジ45の動作に追従しつつ、ロッド55の伸縮によって第1および第2アーム40C,41Cの変形(回転ヒンジ45の回転変位量)を吸収し、増設架構19Aの振動を減衰する。なお、この室内設置制震補強ブレース20Cの振動減衰機能は図8に説明したそれと同一であるから、その説明は省略する。
【0063】
図11は、増設架構19Bおよび他の一例として示す室内設置制震補強ブレース20Dの正面図である。増設架構19Bは図7に示すそれと同一であるから、その説明は省略する。室内設置制震補強ブレース20Dは、第1柱33と第1梁36との交差部63から斜め上方へ延びる第1アーム40Dと、第2柱34と第2梁37との交差部62から斜め下方に延びる第2アーム41Dと、第1柱33と第2梁37との交差部61から斜め下方へ延びる油圧ダンパー42D(振動減衰ダンパー)とから形成されている。第1アーム40Dと第2アーム41Dとは、それらの長さ寸法が同一であってもよく、それらの長さ寸法が異なっていてもよい。
【0064】
第1アーム40Dは、回転支承43に固定された固定端部44(第1基端部)と、回転ヒンジ45(連結部材)に回転可能に連結された自由端部46(第1反対端部)と、それら端部44,46の間に延びる円柱状の中間部47とを有する。回転支承43は、交差部63に回転可能に取り付けられている。第2アーム41Dは、回転支承49に固定された固定端部50(第2基端部)と、回転ヒンジ45に回転可能に連結された自由端部51(第2反対端部)と、それら端部50,51の間に延びる円柱状の中間部52とを有する。回転支承49は、交差部62に回転可能に取り付けられている。第1アーム40Dと第2アーム41Dとは、所定の角度で連結されてトグル機構を構成している。
【0065】
油圧ダンパー42Dは、シリンダ54およびロッド55から形成されている。ダンパー42Dのロッド55は、その先端部56(第3反対端部)が回転ヒンジ45に回転可能に連結されている。ダンパー42Dのシリンダ54は、その基端部57(第3基端部)が回転支承58に固定されている。回転支承58は、交差部61に回転可能に取り付けられている。油圧ダンパー42Dは、回転ヒンジ45の動作に追従しつつ、ロッド55の伸縮によって第1および第2アーム40D,41Dの変形(回転ヒンジ45の回転変位量)を吸収し、増設架構19Bの振動を減衰する。なお、この室内設置制震補強ブレース20Dの振動減衰機能は図9に説明したそれと同一であるから、その説明は省略する。
【0066】
図12は、増設架構19A,19Bおよび他の一例として示す室内設置制震補強ブレース20E,20Fの正面図である。図13,14は、室内設置制震補強ブレース20E,20Fによる振動減衰機能の説明図である。図13,14では、側壁29や床スラブ35の図示を省略し、増設架構19A,19Bのみを拡大して示す。増設架構19A,19Bは図6,7に示すそれと同一であるから、その説明は省略する。増設架構19A,19Bの内側には、横方向へ並ぶ一対の室内設置制震補強ブレース20E,20Fが対称形に配置されている。
【0067】
制震補強ブレース20Eは、第2柱34と第1梁36との交差部または交差部の近傍(第2柱34と第1梁36とのいずれか、または、交差部を含む第2柱34または第1梁36)から斜め上方へ延びる第1アーム40Eと、第2梁37から斜め下方に延びる第2アーム41Eと、第2柱34と第2梁37との交差部または交差部の近傍(第2柱34と第2梁37とのいずれか、または、交差部を含む第2柱34または第2梁37)から斜め下方へ延びる油圧ダンパー42E(振動減衰ダンパー)とから形成されている。
【0068】
第1アーム40Eは、回転支承43に固定された固定端部44(第1基端部)と、回転ヒンジ45(連結部材)に回転可能に連結された自由端部46(第1反対端部)と、それら端部44,46の間に延びる円柱状の中間部47とを有する。回転支承43は、第2柱34と第1梁36との交差部または交差部の近傍(第2柱34と第1梁36とのいずれか、または、交差部を含む第2柱34または第1梁36)に固定されたガセットプレート48に回転可能に取り付けられている。
【0069】
第2アーム41Eは、回転支承49に固定された固定端部50(第2基端部)と、回転ヒンジ45に回転可能に連結された自由端部51(第2反対端部)と、それら端部50,51の間に延びる円柱状の中間部52とを有する。回転支承49は、第2梁37に固定されたガセットプレート53に回転可能に取り付けられている。第1アーム40Eと第2アーム41Eとは、それらの長さ寸法が同一であってもよく、それらの長さ寸法が異なっていてもよい。第1アーム40Eと第2アーム41Eとは、所定の角度で連結されてトグル機構を構成している。
【0070】
油圧ダンパー42Eは、シリンダ54およびロッド55から形成されている。ダンパー42Eのロッド55は、その先端部56(第3反対端部)が回転ヒンジ45に回転可能に連結されている。ダンパー42Eのシリンダ54は、その基端部57(第3基端部)が回転支承58に固定されている。回転支承58は、第2柱34と第2梁37との交差部または交差部の近傍(第2柱34と第2梁37とのいずれか、または、交差部を含む第2柱34または第2梁37)に固定されたガセットプレート59に回転可能に取り付けられている。油圧ダンパー42Eは、回転ヒンジ45の動作に追従しつつ、ロッド55の伸縮によって第1および第2アーム40E,41Eの変形(回転ヒンジ45の回転変位量)を吸収し、増設架構19A,19Bの振動を減衰する。
【0071】
制震補強ブレース20Fは、第1柱33と第1梁36との交差部または交差部の近傍(第1柱33と第1梁36とのいずれか、または、交差部を含む第1柱33または第1梁36)から斜め上方へ延びる第1アーム40Fと、第2梁37から斜め下方に延びる第2アーム41Fと、第1柱33と第2梁37との交差部または交差部の近傍(第1柱33と第2梁37とのいずれか、または、交差部を含む第1柱33または第2梁37)から斜め下方へ延びる油圧ダンパー42F(振動減衰ダンパー)とから形成されている。
【0072】
第1アーム40Fは、回転支承43に固定された固定端部44(第1基端部)と、回転ヒンジ45(連結部材)に回転可能に連結された自由端部46(第1反対端部)と、それら端部44,46の間に延びる円柱状の中間部47とを有する。回転支承43は、第1柱33と第1梁36との交差部または交差部の近傍(第1柱33と第1梁36とのいずれか、または、交差部を含む第1柱33または第1梁36)に固定されたガセットプレート48に回転可能に取り付けられている。
【0073】
第2アーム41Fは、回転支承49に固定された固定端部50(第2基端部)と、回転ヒンジ45に回転可能に連結された自由端部51(第2反対端部)と、それら端部50,51の間に延びる円柱状の中間部52とを有する。回転支承49は、第2梁37に固定されたガセットプレート53に回転可能に取り付けられている。第1アーム40Fと第2アーム41Fとは、それらの長さ寸法が同一であってもよく、それらの長さ寸法が異なっていてもよい。第1アーム40Fと第2アーム41Fとは、所定の角度で連結されてトグル機構を構成している。
【0074】
油圧ダンパー42Fは、シリンダ54およびロッド55から形成されている。ダンパー42Fのロッド55は、その先端部56(第3反対端部)が回転ヒンジ45に回転可能に連結されている。ダンパー42Fのシリンダ54は、その基端部57(第3基端部)が回転支承58に固定されている。回転支承58は、第1柱33と第2梁37との交差部または交差部の近傍(第1柱33と第2梁37とのいずれか、または、交差部を含む第1柱33と第2梁37)に固定されたガセットプレート59に回転可能に取り付けられている。油圧ダンパー42Fは、回転ヒンジ45の動作に追従しつつ、ロッド55の伸縮によって第1および第2アーム40F,41Fの変形(回転ヒンジ45の回転変位量)を吸収し、増設架構19A,19Bの振動を減衰する。
【0075】
図13,14に基づいて、室内設置制震補強ブレース20E,20Fによる振動減衰の原理を説明すると、以下のとおりである。地震等によって集合住宅10に振動が生じ、その振動が住宅10から増設架構19A,19Bに伝わる。住宅10が左方向(横方向左方)へ水平変形したとすると、図13に矢印X1で示すように、増設架構19A,19Bも左方向へ水平形する。ただし、第1および第2柱33,34の伸縮を無視して第1および第2梁36,37が水平変形したものとする。
【0076】
耐震架構19A,19Bが左方向へ水平変形すると、架構19A,19B内の右側に設置された室内設置制震補強ブレース20Eの第1アーム40Eおよび第2アーム41Eが回転支承43,49を中心として回転運動を行う。それらアーム40E,41Eが回転運動すると、回転支承43,49の水平変位量によって回転ヒンジ45の回転変位量が増幅されて大きくなり、油圧ダンパー42Eのロッド55が大きく伸長して架構19A,19Bの振動が熱に変換され、それによって架構19A,19Bの振動が減衰されるとともに、それと同時に架構19A,19Bを介して住宅10の振動が抑制される。
【0077】
なお、架構19A,19Bの左側に設置された室内設置制震補強ブレース20Fは、図13に示すように、その変形の増幅倍率が室内設置制震補強ブレース20Eのそれと比較して小さい(ロッド55の伸長寸法が小さい)が、それら各室内設置制震補強ブレース20E,20Fが互いに協働して平均的な増幅倍率を発生させるようにダンパー42E,42Fの伸長倍率を設定する(略線形的に増幅するように設定する)ことで、振動方向に関係なく、住宅10の振動を効果的に抑制することができる。
【0078】
次に、住宅10が右方向(横方向右方)へ水平変形したとすると、図14に矢印X2で示すように、増設架構19A,19Bも右方向へ水平変形する。架構19A,19Bが右方向へ水平変形すると、架構19A,19B内の左側に設置された室内設置制震補強ブレース20Fの第1アーム40Fおよび第2アーム41Fが回転支承43,49を中心として回転運動を行う。それらアーム40F,41Fが回転運動すると、回転支承43,49の水平変位量によって回転ヒンジ45の回転変位量が増幅されて大きくなり、油圧ダンパー42Fのロッド55が大きく伸長して架構19A,19Bの振動が熱に変換され、それによって架構19A,19Bの振動が減衰されるとともに、それと同時に架構19A,19Bを介して住宅10の振動が抑制される。
【0079】
このように、増設架構19A,19Bにおいて一対の室内設置制震補強ブレース20E,20Fが対称形に設置された場合、対称形に設置されたそれら室内設置制震補強ブレース20E,20Fのうち、一方のブレース20Eが住宅10の左方向の振動を減衰し、他方のブレース20Fが住宅10の右方向の振動を減衰するから、それら室内設置制震補強ブレース20E,20Fによって住宅10に発生した振動が効果的に低減される。
【0080】
増設架構19Aには、室内設置制震補強ブレース20Aに代えて、図10に示す室内設置制震補強ブレース20Cが取り付けられていてもよく、図12に示す室内設置制震補強ブレース20E,20Fが取り付けられていてもよい。また、増設架構19Bには、室内設置制震補強ブレース20Bに代えて、図11に示す室内設置制震補強ブレース20Dが取り付けられていてもよく、図12に示す室内設置制震補強ブレース20E,20Fが取り付けられていてもよい。
【0081】
既設建物補強構造は、室内設置制震補強ブレース20A,20Bを集合住宅10(既設建物)の空室18内部の所定の箇所に設置するから、制震補強ブレース20A,20Bを住宅10の周囲に設置する必要はなく、住宅10の周囲を占拠せずかつ住宅10の美観を損なわずに振動に対する住宅10の補強を行うことができる。既設建物補強構造は、第1および第2アーム40A,40B,41A,41Bと振動減衰ダンパー42A,42Bとがトグル機構を構成し、地震等によって増設架構19A,19Bに伝わった振動がトグル機構によって減衰され、それにともなって集合住宅10に発生した振動が低減されるから、地震等による住宅10の損壊や崩壊、倒壊を防ぐことができる。
【0082】
既設建物補強構造は、住宅10の空室18を振動に対する補強に利用することができ、多数の住戸を用途廃止のそれにすることなく、住宅10の用途廃止住戸率の上昇を防ぎつつ振動に対する住宅10の補強を行うことができる。既設建物補強構造は、それが住宅の全戸数のうちの15%以下、好ましくは5〜15%、より好ましくは7〜12%、一層好ましくは9〜10%に構築されるから、通常発生し得る住宅10の空室率に対応させて振動に対する住宅10の補強を行うことができ、用途廃止住戸率の上昇による家賃収入等の減少を防ぐことができる。
【0083】
既設建物補強構造は、それが構築された空室18とその空室18に隣接する他室27との間に他室27から空室18に出入可能な出入口28(第1出入口)が作られ、それが構築された空室18にその廊下14(外部)から空室18に出入可能な出入口31(第3出入口)が作られているから、空室18と他室27との間が出入可能になるとともに、廊下14と空室18との間が出入可能になり、他室27の居住者がその空室18を任意の目的で使用することができ、既設建物補強構造を構築した空室18の有効利用を図ることができる。既設建物補強構造は、それを構築した空室18の耐震性が他室27のそれよりも高いから、その空室18が地震発生時の避難場所となり、地震発生時に他室27の居住者がその空室18に移動することで、居住者の安全を図ることができる。
【0084】
図15は、他の一例として示す集合住宅10(既設建物)の正面図であり、図16は、図15のC−C線矢視断面図である。図17は、図15のD−D線端面図であり、図18は、図15のうちの空室18を拡大して示す部分拡大平面図である。図15〜17では、横方向を矢印X(図15,16のみ)、縦方向を矢印Y(図15,17のみ)で示し、前後方向を矢印Z(図16,17のみ)で示す。
【0085】
空室18の内部には、図16,17に示すように、前後方向へ等間隔で並ぶ3個の第1〜第3増設架構19A1〜19A3,19B1〜19B3が設置されている。それら増設架構19A1〜19A3,19B1〜19B3は、空室18の廊下14側の第1既設架構23と空室18のバルコニー17側の第2既設架構26との間に配置されている。増設架構19A1には、図6に示す1個の室内設置制震補強ブレース20Aが取り付けられている。増設架構19A2および増設架構19A3には、図7に示す1個の室内設置制震補強ブレース20Bが取り付けられている。
【0086】
第1増設架構19A1とそれに対向する第2増設架構19A2とでは、それら架構19A1,19A2に取り付けられた室内設置制震補強ブレース20Aと室内設置制震補強ブレース20Bとが前後方向に対称形(互い違い)に設置されている。また、第1増設架構19A1とそれに対向する第3増設架構19A3とでは、それら架構19A1,19A3に取り付けられた室内設置制震補強ブレース20Aと室内設置制震補強ブレース20Bとが前後方向に対称形(互い違い)に設置されている。
【0087】
さらに、それら室内設置制震補強ブレース20A,20Bは、斜め横方向に隣接する空室18において対称形(互い違い)に設置されている。2階の左から4スパン目の空室18と3階の左から5スパン目の空室18とを例として具体的に説明すると、以下のとおりである。2階の左から4スパン目の空室18では、増設架構19A1に室内設置制震補強ブレース20Aが取り付けられ、増設架構19A2および増設架構19A3に室内設置制震補強ブレース20Bが取り付けられている。これに対し、3階の左から5スパン目の空室18では、増設架構19A1に室内設置制震補強ブレース20Bが取り付けられ、増設架構19A2および増設架構19A3に室内設置制震補強ブレース20Aが取り付けられている。
【0088】
換言すれば、2階の左から4スパン目の空室18の架構19A1に取り付けられたブレース20Aと3階の左から5スパン目の空室18の架構19A1に取り付けられたブレース20Bとが対称形(互い違い)に設置され、2階の左から4スパン目の空室18の架構19A2,19A3に取り付けられたブレース20Bと3階の左から5スパン目の空室18の架構19A2,19A3に取り付けられたブレース20Aとが対称形(互い違い)に設置されている。なお、室内設置制震補強ブレース20A,20Bが隣接する空室18において対称形に設置されている必要はなく、縦横方向へ離間した空室18において制震補強ブレース20A,20Bが対称形に設置されていてもよい。
【0089】
全住戸に対する既設建物補強構造の構築率は、15%以下、好ましくは5〜15%の範囲、より好ましくは7〜12%の範囲、一層好ましくは9〜10%の範囲である。増設架構19A1には、図6に示すブレース20Aに代えて、図11に示す室内設置制震補強ブレース20Cが取り付けられていてもよく、図12に示す室内設置制震補強ブレース20E,20Fが取り付けられていてもよい。また、増設架構19A2,19A3には、図7に示すブレース20Bに代えて、図12に示す室内設置制震補強ブレース20Dが取り付けられていてもよく、図12に示す室内設置制震補強ブレース20E,20Fが取り付けられていてもよい。
【0090】
空室18とその空室18の上階に位置する他室27との間には、図17に示すように、他室27から空室18に出入可能な出入口64A(第2出入口)が作られている。出入口64Aは、その空室18とそれの上階に位置する他室27とを仕切る床スラブ35(天井)に施設されている。出入口64Aには、開閉可能なドア(図示せず)と他室27から空室18に下りる階段65とが設置されている。出入口64Aを通って上階に位置する他室27から空室18に出入りすることができる。
【0091】
空室18とその空室18の下階に位置する他室27との間には、他室27から空室18に出入可能な出入口64B(第2出入口)が作られている。出入口64Bは、その空室18とそれの下階に位置する他室27とを仕切る床スラブ35に施設されている。出入口64Bには、開閉可能なドア(図示せず)と他室27から空室18に上がる階段65とが設置されている。出入口64Bを通って下階に位置する他室27から空室18に出入りすることができる。なお、空室に出入口(第2出入口)のみならず、図4に示す出入口28(第1出入口)が作られていてもよい。
【0092】
既設建物補強構造は、互いに対向する増設架構19A1〜19A3,19B1〜19B3において室内設置制震補強ブレース20A,20B(トグル機構)が対称形に設置され、対称形に設置されたそれら室内設置制震補強ブレース20A,20Bのうち、一方のそれが住宅10の一方向の振動を減衰し、他方のそれが住宅10の一方向と交差する方向の振動を減衰するから、それら室内設置制震補強ブレース20A,20Bによって住宅10に発生した振動が効果的に低減され、地震等による住宅10の損壊や崩壊、倒壊を確実に防ぐことができる。既設建物補強構造は、室内設置制震補強ブレース20A,20Bを集合住宅10の空室18内部の所定の箇所に設置するから、制震補強ブレース20A,20Bを住宅10の周囲に設置する必要はなく、住宅10の周囲を占拠せずかつ住宅10の美観を損なわずに振動に対する住宅10の補強を行うことができる。
【0093】
既設建物補強構造は、住宅10の空室18を振動に対する補強に利用することができ、多数の住戸を用途廃止のそれにすることなく、住宅10の用途廃止住戸率の上昇を防ぎつつ振動に対する住宅10の補強を行うことができる。既設建物補強構造は、それが住宅の全戸数のうちの15%以下、好ましくは5〜15%、より好ましくは7〜12%、一層好ましくは9〜10%に構築されるから、通常発生し得る住宅10の空室率に対応させて振動に対する住宅10の補強を行うことができ、用途廃止住戸率の上昇による家賃収入等の減少を防ぐことができる。
【0094】
既設建物補強構造は、それが構築された空室18とその空室18の上下に位置する他室27との間に他室27から空室18に出入可能な出入口64A,64B(第2出入口)が作られているから、空室18と他室27との間が出入可能になり、他室27の居住者がその空室18を任意の目的で使用することができ、既設建物補強構造を構築した空室18の有効利用を図ることができる。既設建物補強構造は、それを構築した空室18の耐震性が他室27のそれよりも高いから、その空室18が地震発生時の避難場所となり、地震発生時に他室27の居住者がその空室18に移動することで、居住者の安全を図ることができる。
【0095】
なお、空室18のすべてに増設架構19A,19B,19A1〜19A3,19B1〜19B3や室内設置制震補強ブレース20A,20Bを設置する必要はなく、既設建物補強構造の前記構築率の範囲において、集合住宅10に生じた振動を最も効果的かつ効率よく抑制するために必要な個数が設置されていればよい。図2,3に示す空室18には1個の増設架構19A,19Bと1個の室内設置制震補強ブレース20A,20Bとが設置され、図15,16に示す空室18には3個の増設架構19A1〜19A3,19B1〜19B3と3個の室内設置制震補強ブレース20A,20Bとが設置されているが、空室18内部に設置する増設架構や制震補強ブレースの個数に特に限定はなく、住宅10に生じた振動を最も効果的かつ効率よく抑制するために必要な個数が設置されていればよい。さらに、増設架構19A,19B,19A1〜19A3,19B1〜19B3の空室18内部における設置箇所に特に限定はなく、住宅10に生じた振動を最も効果的かつ効率よく抑制するために必要な箇所に設置されていればよい。
【0096】
図19は、他の一例として示す集合住宅10(既設建物)の正面図であり、図20は、図19のE−E線矢視断面図である。図21は、図19のF−F線端面図であり、図22は、図20のうちの空室18を拡大して示す部分拡大平面図である。なお、図19〜21では、横方向を矢印X(図19,20のみ)、縦方向を矢印Y(図19,21のみ)で示し、前後方向を矢印Z(図20,21のみ)で示す。この既設建物補強構造が図15のそれと異なるところは、既設架構23,26に既設架構設置制震補強ブレース20G,20Hが取り付けられている点にある。
【0097】
空室18の内部には、図19,21に示すように、前後方向へ等間隔で並ぶ3個の第1〜第3増設架構19A1〜19A3,19B1〜19B3が設置されている。それら増設架構19A1〜19A3,19B1〜19B3は、空室18の廊下14側の第1既設架構23と空室18のバルコニー17側の第2既設架構26との間に配置されている。増設架構19A1には、図6に示す1個の室内設置制震補強ブレース20Aが取り付けられている。増設架構19A2および増設架構19A3には、図7に示す1個の室内設置制震補強ブレース20Bが取り付けられている。
【0098】
第1増設架構19A1とそれに対向する第2増設架構19A2とでは、それら架構19A1,19A2に取り付けられた室内設置制震補強ブレース20Aと室内設置制震補強ブレース20Bとが前後方向に対称形(互い違い)に設置されている。また、第1増設架構19A1とそれに対向する第3増設架構19A3とでは、それら架構19A1,19A3に取り付けられた室内設置制震補強ブレース20Aと室内設置制震補強ブレース20Bとが前後方向に対称形(互い違い)に設置されている。
【0099】
さらに、それら室内設置制震補強ブレース20A,20Bは、斜め横方向に隣接する空室18において対称形(互い違い)に設置されている。2階の左から4スパン目の空室18と3階の左から5スパン目の空室18とを例として具体的に説明すると、以下のとおりである。2階の左から4スパン目の空室18では、増設架構19A1に室内設置制震補強ブレース20Aが取り付けられ、増設架構19A2および増設架構19A3に室内設置制震補強ブレース20Bが取り付けられている。これに対し、3階の左から5スパン目の空室18では、増設架構19A1に室内設置制震補強ブレース20Bが取り付けられ、増設架構19A2および増設架構19A3に室内設置制震補強ブレース20Aが取り付けられている。
【0100】
図23は、既設架構23,26の側面図であり、図24は、既設架構23に取り付けられた既設架構設置制震補強ブレース20Gの正面図である。図25は、既設架構26に取り付けられた既設架構設置制震補強ブレース20Hの正面図である。既設架構23は、空室18の廊下14側に施工された柱21および梁22(住宅10の柱21および梁22)から形成されている。既設架構23には、1個の既設架構設置制震補強ブレース20Gが取り付けられている。既設架構26は、空室18のバルコニー17側に施工された柱24および梁25(住宅10の柱24および梁25)から形成されている。既設架構26には、1個の既設架構設置制震補強ブレース20Hが取り付けられている。
【0101】
既設架構設置制震補強ブレース20Gは、鋼材から作られた四角形の第1フレーム66(既設架構23への取り付け用フレーム)を介して既設架構23に取り付けられている。第1フレーム66には、複数のアンカー38,39が取り付けられている。フレーム66の外側に露出するアンカー38,39の露出端部は、柱21や梁22に形成されたアンカーホール(図示せず)に打ち込まれている。既設架構23と第1フレーム66とは、それらアンカー38,39によって互いに連結されている。
【0102】
既設架構設置制震補強ブレース20Hは、鋼材から作られた四角形の第2フレーム67(既設架構23への取り付け用フレーム)を介して既設架構26に取り付けられている。第2フレーム67には、複数のアンカー38,39が取り付けられている。フレーム67の外側に露出するアンカー38,39の露出端部は、柱24や梁25に形成されたアンカーホール(図示せず)に打ち込まれている。既設架構26と第2フレーム67とは、それらアンカー38,39によって互いに連結されている。
【0103】
既設架構23に設置された既設架構設置制震補強ブレース20Gは、図24に示すように、柱21と梁22(下側梁)との交差部または交差部の近傍(柱21と梁22とのいずれか、または、交差部を含む柱21または梁22)から斜め上方へ延びる第1アーム40Gと、柱21と梁22(上側梁)との交差部または交差部の近傍(柱21と梁22とのいずれか、または、交差部を含む柱21または梁22)から斜め下方に延びる第2アーム41Gと、柱21と梁22(上側梁)との交差部または交差部の近傍(柱21と梁22とのいずれか、または、交差部を含む柱21または梁22)から斜め下方へ延びる油圧ダンパー42G(振動減衰ダンパー)とから形成されている。
【0104】
第1アーム40Gと第2アーム41Gとは、それらの長さ寸法が同一であってもよく、それらの長さ寸法が異なっていてもよい。第1アーム40Gは、回転支承43に固定された固定端部44(第1基端部)と、回転ヒンジ45(連結部材)に回転可能に連結された自由端部46(第1反対端部)と、それら端部44,46の間に延びる円柱状の中間部47とを有する。回転支承43は、柱21と梁22(下側梁)との交差部または交差部の近傍(柱21と梁22とのいずれか、または、交差部を含む柱21または梁22)に固定されたガセットプレート48に回転可能に取り付けられている。プレート48は、フレーム66を形成する綱材に溶接されている。
【0105】
第2アーム41Gは、回転支承49に固定された固定端部50(21基端部)と、回転ヒンジ45に回転可能に連結された自由端部51(第2反対端部)と、それら端部50,51の間に延びる円柱状の中間部52とを有する。回転支承49は、柱21と梁22(上側梁)との交差部または交差部の近傍(柱21と梁22とのいずれか、または、交差部を含む柱21または梁22)に固定されたガセットプレート53に回転可能に取り付けられている。プレート53は、フレーム66を形成する綱材に溶接されている。第1アーム40Gと第2アーム41Gとは、所定の角度で連結されてトグル機構を構成している。
【0106】
油圧ダンパー42Gは、シリンダ54およびロッド55から形成されている。ダンパー42Gのロッド55は、その先端部56(第3反対端部)が回転ヒンジ45に回転可能に連結されている。ダンパー42Gのシリンダ54は、その基端部57(第3基端部)が回転支承58に固定されている。回転支承58は、柱21と梁22(上側梁)との交差部または交差部の近傍(柱21と梁22とのいずれか、または、交差部を含む柱21または梁22)に固定されたガセットプレート59に回転可能に取り付けられている。プレート59は、フレーム66を形成する綱材に溶接されている。油圧ダンパー42Gは、回転ヒンジ45の動作に追従しつつ、ロッド55の伸縮によって第1および第2アーム40G,41Gの変形(回転ヒンジ45の回転変位量)を吸収し、既設架構23の振動を減衰する。
【0107】
既設架構26に設置された既設架構設置制震補強ブレース20Hは、図25に示すように、柱24と梁25(下側梁)との交差部または交差部の近傍(柱24と梁25とのいずれか、または、交差部を含む柱24または梁25)から斜め上方へ延びる第1アーム40Hと、柱24と梁25(上側梁)との交差部または交差部の近傍(柱24と梁25とのいずれか、または、交差部を含む柱24または梁25から斜め下方に延びる第2アーム41Hと、柱24と梁25(上側梁)との交差部または交差部の近傍(柱24と梁25とのいずれか、または、交差部を含む柱24または梁25)から斜め下方へ延びる油圧ダンパー42B(振動減衰ダンパー)とから形成されている。
【0108】
第1アーム40Hと第2アーム41Hとは、それらの長さ寸法が同一であってもよく、それらの長さ寸法が異なっていてもよい。第1アーム40Hは、回転支承43に固定された固定端部44(第1基端部)と、回転ヒンジ45(連結部材)に回転可能に連結された自由端部46(第1反対端部)と、それら端部44,46の間に延びる円柱状の中間部47とを有する。回転支承43は、柱24と梁25(下側梁)との交差部または交差部の近傍(柱24と梁25とのいずれか、または、交差部を含む柱24または梁25)に固定されたガセットプレート48に回転可能に取り付けられている。プレート48は、フレーム67を形成する綱材に溶接されている。
【0109】
第2アーム41Hは、回転支承49に固定された固定端部50(第2基端部)と、回転ヒンジ45に回転可能に連結された自由端部51(第2反対端部)と、それら端部50,51の間に延びる円柱状の中間部52とを有する。回転支承49は、柱24と梁25(上側梁)との交差部または交差部の近傍(柱24と梁25とのいずれか、または、交差部を含む柱24または梁25)に固定されたガセットプレート53に回転可能に取り付けられている。プレート53は、フレーム67を形成する綱材に溶接されている。第1アーム40Hと第2アーム41Hとは、所定の角度で連結されてトグル機構を構成している。
【0110】
油圧ダンパー42Hは、シリンダ54およびロッド55から形成されている。ダンパー42Hのロッド55は、その先端部56(第3反対端部)が回転ヒンジ45に回転可能に連結されている。ダンパー42Hのシリンダ54は、その基端部57(第3基端部)が回転支承58に固定されている。回転支承58は、柱24と梁25(上側梁)との交差部または交差部の近傍(柱24と梁25とのいずれか、または、交差部を含む柱24または梁25)に固定されたガセットプレート59に回転可能に取り付けられている。プレート59は、フレーム67を形成する綱材に溶接されている。油圧ダンパー42Hは、回転ヒンジ45の動作に追従しつつ、ロッド55の伸縮によって第1および第2アーム40H,41Hの変形(回転ヒンジ45の回転変位量)を吸収し、既設架構26の振動を減衰する。なお、既設架構設置制震補強ブレース20G,20Hによる振動減衰の原理は、図8,9で説明したそれと同一である。
【0111】
全住戸に対する既設建物補強構造の構築率は、15%以下であるが、好ましくは5〜15%の範囲、より好ましくは7〜12%の範囲、一層好ましくは9〜10%の範囲である。既設架構23には、図24に示すブレース20Gに代えて、図11に示す制震補強ブレース20Cが取り付けられていてもよく、図12に示す制震補強ブレース20E,20Fが取り付けられていてもよい。また、既設架構26には、図25に示すブレース20Hに代えて、図12に示す制震補強ブレース20Dが取り付けられていてもよく、図12に示す制震補強ブレース20E,20Fが取り付けられていてもよい。
【0112】
既設建物補強構造は、空室18に室内設置制震補強ブレース20A,20Bのみならず既設架構設置制震補強ブレース20G,20Hが設置され、地震等によって集合住宅10に伝わった振動が室内設置制震補強ブレース20A,20Bによって減衰されるとともに、振動が既設架構設置制震補強ブレース20G,20Hによって減衰され、それにともなって住宅10の振動が低減されるから、地震等による住宅10の損壊や崩壊、倒壊を防ぐことができる。既設建物補強構造は、既設架構設置制震補強ブレース20G,20Hを住宅10の空室18の柱21と梁22とから形成された既設架構23,26に設置するから、制震補強ブレース20G,20Hを住宅10の周囲に設置する必要はなく、住宅10の周囲を占拠せずかつ住宅10の美観を損なわずに住宅10の制震補強を行うことができる。この既設建物補強構造は、住宅10の用途廃止住戸率の上昇を防ぎつつ住宅10の制震補強を行うことができる。
【0113】
図26は、他の一例として示す制震補強ブレース20Iの正面図である。この制震補強ブレース20Iは、四角形の増設架構19A,19Bまたはフレーム66,67(既設架構23,26への取り付け用フレーム)の第1交差部68から斜め下方に延びる第1ブレース69と、増設架構19A,19Bまたはフレーム66,67の第2交差部70から斜め下方に延びる第2ブレース71と、増設架構19A,19Bまたはフレーム66,67の第3交差部72または第3交差部72近傍から水平方向へ延びる水平ダンパー73(振動減衰ダンパー)とから形成されている。第1および第2ブレース69,70の先端部74,75とダンパー73の先端部76とは、回転支承77を介して回転可能に連結されている。第1ブレース69の基端部78は、第1交差部68に連結され、第2ブレース71の基端部79は、第2交差部70に連結されている。ダンパー73の基端部80は、第3交差部72または第3交差部72近傍に固定されたガセットプレート81に回転可能に取り付けられている。
【0114】
この制震補強ブレース20Iは、増設架構19A,19Bやフレーム66,67が矢印X1で示す右方向へ水平変形すると、第1および第2ブレース69,71が回転支承77を中心として回転運動を行う。それらブレース69,71が回転運動すると、回転支承77の水平変位量によってダンパー73のロッド(図示せず)が水平方向へ伸長して増設架構19A,19Bやフレーム66,67の振動が熱に変換され、それによって増設架構19A,19Bやフレーム66,67の振動が減衰される。増設架構19A,19B,19A1〜19A3,19B1〜19B3や既設架構23,26には、図26に示す制震補強ブレース20Iが取り付けられていてもよい。
【0115】
この制震補強ブレース20Iを取り付けた場合、地震等によって集合住宅10に伝わった振動が制震補強ブレース20Iによって減衰され、それにともなって住宅10の振動が低減されるから、地震等による住宅10の損壊や崩壊、倒壊を防ぐことができる。また、制震補強ブレース20Iを住宅10の周囲に設置する必要はなく、住宅10の周囲を占拠せずかつ住宅10の美観を損なわずに住宅10の制震補強を行うことができる。
【0116】
図27は、他の一例として示す制震補強ブレース20Jの正面図である。この制震補強ブレース20Jは、四角形の増設架構19A,19Bやフレーム66,67(既設架構23,26への取り付け用フレーム)に斜めダンパー82(振動減衰ダンパー)が取り付けられている。ダンパー82は、増設架構19A,19Bやフレーム66,67の第1交差部68と第3交差部72との間に延びている。ダンパー82の上端部83は、第1交差部68または第1交差部68近傍に固定されたガセットプレート84に回転可能に取り付けられている。ダンパー82の下端部85は、第3交差部72または第3交差部72近傍に固定されたガセットプレート86に回転可能に取り付けられている。
【0117】
この制震補強ブレース20Jは、増設架構19A,19Bやフレーム66,67が矢印X1,X2で示す左右方向へ水平変形すると、増設架構19A,19Bやフレーム66,67の水平変位量に応じてダンパー82のロッド(図示せず)が伸長して増設架構19A,19Bやフレーム66,67の振動が熱に変換され、それによって増設架構19A,19Bやフレーム66,67の振動が減衰される。増設架構19A,19B,19A1〜19A3,19B1〜19B3や既設架構23,26には、図27に示す制震補強ブレース20Jが取り付けられていてもよい。
【0118】
この制震補強ブレース20Jを取り付けた場合、地震等によって集合住宅10に伝わった振動が制震補強ブレース20Jによって減衰され、それにともなって住宅10の振動が低減されるから、地震等による住宅10の損壊や崩壊、倒壊を防ぐことができる。また、制震補強ブレース20Jを住宅10の周囲に設置する必要はなく、住宅10の周囲を占拠せずかつ住宅10の美観を損なわずに住宅10の制震補強を行うことができる。
【0119】
図28は、他の一例として示す制震補強ブレース20Kの正面図である。この制震補強ブレース20Kは、四角形の増設架構19A,19Bやフレーム66,67(既設架構23,26への取り付け用フレーム)の第4交差部87から斜め上方に延びる第1ブレース88と、増設架構19A,19Bやフレーム66,67の第3交差部72から斜め上方に延びる第2ブレース89と、増設架構19A,19Bやフレーム66,67の上部に取り付けられた弾性変形可能な複数のハニカムダンパー90(振動減衰ダンパー)とから形成されている。第1ブレース88の下端部91は、第4交差部87に固定され、第2ブレース89の下端部は、第3交差部72に固定されている。第1ブレース88と第2ブレース89とは、それらの上端部93,94が互いに連結されている。それらハニカムダンパー90は、増設架構19A,19Bまたはフレーム66,67の上部とそれらブレース88,89の上端部93,94との間に配置され、上部と上端部93,94とを連結する。
【0120】
この制震補強ブレース20Kは、増設架構19A,19Bやフレーム66,67が矢印X1,X2で示す左右方向へ水平変形すると、増設架構19A,19Bやフレーム66,67の水平変位量に応じてハニカムダンパー90が弾性変形して増設架構19A,19Bやフレーム66,67の振動が熱に変換され、それによって増設架構19A,19Bやフレーム66,67の振動が減衰される。増設架構19A,19B,19A1〜19A3,19B1〜19B3や既設架構23,26には、図27に示す制震補強ブレース20Kが取り付けられていてもよい。
【0121】
この制震補強ブレース20Kを取り付けた場合、地震等によって集合住宅10に伝わった振動が制震補強ブレース20Kによって減衰され、それにともなって住宅10の振動が低減されるから、地震等による住宅10の損壊や崩壊、倒壊を防ぐことができる。また、制震補強ブレース20Kを住宅10の周囲に設置する必要はなく、住宅10の周囲を占拠せずかつ住宅10の美観を損なわずに住宅10の制震補強を行うことができる。
【0122】
図29は、他の一例として示す集合住宅10(既設建物)の正面図であり、図30は、図29のG−G線矢視断面図である。図31は、図29のH−H線端面図であり、図32は、図29のうちの空室18を拡大して示す部分拡大平面図である。なお、図29〜31では、横方向を矢印X(図29,30のみ)、縦方向を矢印Y(図29,31のみ)で示し、前後方向を矢印Z(図30,31のみ)で示す。
【0123】
集合住宅10における空室18には、空室18の廊下14側の既設架構23および空室18のバルコニー17側の既設架構26と後記する既設架構設置耐震ブレース95(既設架構設置補強部材)とを利用するとともに、増設架構19(耐震架構)と後記する室内設置耐震補強ブレース96(室内設置補強部材)とを利用して住宅10に生じた振動を抑制する既設建物補強構造が構築されている。全住戸に対する既設建物補強構造の構築率は、15%以下であるが、好ましくは5〜15%の範囲、より好ましくは7〜12%の範囲、一層好ましくは9〜10%の範囲である。空室18には、1個の増設架構19がその内部の略中央部に設置されている。既設架構23,26の内側には、1個の既設架構設置耐震補強ブレース95が取り付けられている。増設架構19の内側には、1個の室内設置耐震補強ブレース96が取り付けられている。
【0124】
空室18とその空室18の横方向に隣接する他室27との間には、図32に示すように、それら他室27から空室18に出入可能な出入口28(第1出入口)が作られている。出入口28は、その空室18とそれに隣接する他室27とを仕切る両側壁29に施設されている。出入口28には、開閉可能なドア30が設置されている。ドア30を開けることで、他室27から空室18に出入りすることができる。
【0125】
空室18とその空室18の上階に位置する他室27との間には、他室27から空室18に出入可能な出入口64A(第2出入口)が作られている。出入口64Aは、その空室18とそれの上階に位置する他室27とを仕切る床スラブ35(天井)に施設されている。出入口64Aには、開閉可能なドア(図示せず)と他室27から空室18に下りる階段65とが設置されている。出入口64Aを通って上階に位置する他室27から空室18に出入りすることができる。
【0126】
空室18とその空室18の下階に位置する他室27との間には、他室27から空室18に出入可能な出入口64B(第2出入口)が作られている。出入口64Bは、その空室18とそれの下階に位置する他室27とを仕切る床スラブ35に施設されている。出入口64Bには、開閉可能なドア(図示せず)と他室27から空室18に上がる階段65とが設置されている。出入口64Bを通って下階に位置する他室27から空室18に出入りすることができる。
【0127】
図33は、既設架構23,26に取り付けられた既設架構設置耐震補強ブレース95の正面図である。既設架構23は、空室18の廊下14側に施工された柱21および梁22(住宅10の柱21および梁22)から形成されている。既設架構26は、空室18のバルコニー17側に施工された柱24および梁25(住宅10の柱24および梁25)から形成されている。
【0128】
既設架構設置耐震補強ブレース95は、互いに交差して延びる一対の鉄骨ブレース97,98から形成されている。それら鉄骨ブレース97,98は、それらの交差部で互いに連結(溶接)されている。鉄骨ブレース97の上下端部99,100は、鋼材から作られた四角形のフレーム101(既設架構23,26への取り付け用フレーム)の第1交差部102と第3交差部104とに連結(溶接)されている。鉄骨ブレース98の上下端部106,107は、鋼材から作られた四角形のフレーム101(既設架構23,26への取り付け用フレーム)の第2交差部103と第4交差部105とに連結(溶接)されている。
【0129】
それら鉄骨ブレース97,98は、フレーム101を介して既設架構23,26に取り付けられている。フレーム101には、複数のアンカー38,39が取り付けられている。フレーム101の外側に露出するアンカー38,39の露出端部は、柱21,24や梁22,25に形成されたアンカーホール(図示せず)に打ち込まれている。既設架構23,26とフレーム101とは、それらアンカー38,39によって互いに連結されている(図23援用)。既設架構23,26とフレーム101との連結には、アンカー38,39とともに接着剤を使用することもでき、接着剤のみを使用することもできる。
【0130】
図34は、増設架構19に取り付けられた室内設置耐震補強ブレース108の正面図である。増設架構19と室内設置耐震補強ブレース108とは、第1既設架構23と第2既設架構26との間に配置されている。換言すれば、それら既設架構23,26の施工箇所を除く空室18の内部に配置されている。増設架構19の内側には、1個の室内設置耐震補強ブレース108が取り付けられている。増設架構19は、空室18の両側壁29に取り付けられて縦方向へ延びる増設補強第1柱33および増設補強第2柱34と、空室18の床スラブ35(天井)に取り付けられて横方向へ延びる増設補強第1梁36および増設補強第2梁37とから作られ、その正面形状が四角形のフレーム状に組み立てられている。柱33,34と梁36,37とは、それらの交差部位において所定の連結手段(図示せず)を介して互いに連結されている。
【0131】
第1および第2柱33,34や第1および第2梁36,37には、鉄筋コンクリート(RC)が使用されている。それら柱33,34の外側に露出するアンカー38の露出端部は、側壁29に形成されたアンカーホール(図示せず)に打ち込まれている。側壁29と第1および第2柱33,34とは、それらアンカー38によって互いに連結されている(図5援用)。それら梁36,37の外側に露出するアンカー39の露出端部は、床スラブ35(天井)に形成されたアンカーホール(図示せず)に打ち込まれている。床スラブ35と第1および第2梁36,37とは、それらアンカー39によって互いに連結されている(図5援用)。
【0132】
既設架構設置耐震補強ブレース108は、互いに交差して延びる一対の鉄骨ブレース97,98から形成されている。それら鉄骨ブレース97,98は、それらの交差部で互いに連結(溶接)されている。鉄骨ブレース97の上下端部99,100は、増設架構19の第1交差部102と第3交差部104とに連結(溶接)されている。鉄骨ブレース98の上下端部106,107は、増設架構19の第2交差部103と第4交差部105とに連結(溶接)されている。
【0133】
既設建物補強構造は、空室18に既設架構設置耐震補強ブレース95と室内設置耐震補強ブレース108とが設置され、地震等によって集合住宅10に伝わった振動が既設架構設置耐震補強ブレース95によって減衰されるとともに、振動が室内設置耐震補強ブレース108によって減衰され、それにともなって住宅10の振動が低減されるから、地震等による住宅10の損壊や崩壊、倒壊を防ぐことができる。既設建物補強構造は、既設架構設置耐震補強ブレース95を住宅10の空室18の柱21,24と梁22,25とから形成された既設架構23,26に設置し、室内設置耐震補強ブレース108を住宅10の空室18内部の所定の箇所に設置するから、耐震補強ブレース95,108を住宅10の周囲に設置する必要はなく、住宅10の周囲を占拠せずかつ住宅10の美観を損なわずに住宅10の耐震補強を行うことができる。この既設建物補強構造は、住宅10の用途廃止住戸率の上昇を防ぎつつ住宅10の耐震補強を行うことができる。既設建物補強構造は、それが住宅の全戸数のうちの15%以下、好ましくは5〜15%、より好ましくは7〜12%、一層好ましくは9〜10%に構築されるから、通常発生し得る住宅10の空室率に対応させて振動に対する住宅10の補強を行うことができ、用途廃止住戸率の上昇による家賃収入等の減少を防ぐことができる。
【0134】
既設建物補強構造は、それが構築された空室18とその空室18に隣接する他室27との間に他室27から空室18に出入可能な出入口28(第1出入口)が作られているから、空室18と他室27との間が出入可能になる。また、既設建物補強構造が構築された空室18とその空室18の上下に位置する他室27との間に他室27から空室18に出入可能な出入口64A,64B(第2出入口)が作られているから、空室18と他室27との間が出入可能になる。既設建物補強構造は、他室27の居住者がその空室18を任意の目的で使用することができ、既設建物補強構造を構築した空室18の有効利用を図ることができる。既設建物補強構造は、それを構築した空室18の耐震性が他室27のそれよりも高いから、その空室18が地震発生時の避難場所となり、地震発生時に他室27の居住者がその空室18に移動することで、居住者の安全を図ることができる。
【0135】
図35は、他の一例として示す耐震補強ブレース109の正面図である。耐震補強ブレース109は、互いに対向して延びる一対の鉄骨ブレース110,111から形成されている。鉄骨ブレース110は、その下端部113が四角形の増設架構19またはフレーム101(既設架構23,26への取り付け用フレーム)の第4交差部105に連結(溶接)され、その上端部112が増設架構19またはフレーム101の上部に連結(溶接)されている。鉄骨ブレース111は、その下端部115が増設架構19またはフレーム101の第3交差部104に連結(溶接)され、その上端部114が増設架構19またはフレーム101の上部に連結(溶接)されている。増設架構19と側壁29や床スラブ35とは、アンカー38,39によって互いに連結され(図5援用)、既設架構23,26とフレーム101とは、アンカー38,39によって互いに連結される(図23援用)。
【0136】
この耐震補強ブレース109を取り付けた場合、地震等によって集合住宅10に伝わった振動が耐震補強ブレース109によって減衰され、それにともなって住宅10の振動が低減されるから、地震等による住宅10の損壊や崩壊、倒壊を防ぐことができる。また、耐震補強ブレース109を住宅10の周囲に設置する必要はなく、住宅10の周囲を占拠せずかつ住宅10の美観を損なわずに住宅10の耐震補強を行うことができる。
【0137】
図36は、他の一例として示す耐震補強ブレース116の正面図である。耐震補強ブレース116は、互いに対向して延びる一対の鉄骨ブレース117,118から形成されている。鉄骨ブレース117は、下端部119が四角形の増設架構19またはフレーム101(既設架構23,26への取り付け用フレーム)の第4交差部105に連結(溶接)されて斜め上方へ延びる第1ブレース120と、上端部121が増設架構19またはフレーム101の第1交差部102に連結(溶接)されて斜め下方へ延びる第2ブレース122と、上端部123が増設架構19またはフレーム101の上部に連結(溶接)されて斜め下方へ延びる第3ブレース124とから形成されている。第1〜第3ブレース120,122,124は、それらの自由端部125が重なり合った状態で連結(溶接)されている。
【0138】
鉄骨ブレース118は、下端部126が四角形の増設架構19またはフレーム101(既設架構23,26への取り付け用フレーム)の第3交差部104に連結(溶接)されて斜め上方へ延びる第1ブレース127と、上端部128が増設架構19またはフレーム101の第2交差部103に連結(溶接)されて斜め下方へ延びる第2ブレース129と、上端部130が増設架構19またはフレーム101の上部に連結(溶接)されて斜め下方へ延びる第3ブレース131とから形成されている。第1〜第3ブレース127,129,131は、それらの自由端部132が重なり合った状態で連結(溶接)されている。増設架構19と側壁29や床スラブ35とは、アンカー38,39によって互いに連結され(図5援用)、既設架構23,26とフレーム101とは、アンカー38,39によって互いに連結される(図23援用)。
【0139】
この耐震補強ブレース116を取り付けた場合、地震等によって集合住宅10に伝わった振動が耐震補強ブレース116によって減衰され、それにともなって住宅10の振動が低減されるから、地震等による住宅10の損壊や崩壊、倒壊を防ぐことができる。また、耐震補強ブレース116を住宅10の周囲に設置する必要はなく、住宅10の周囲を占拠せずかつ住宅10の美観を損なわずに住宅10の耐震補強を行うことができる。
【符号の説明】
【0140】
10 集合住宅(既設建物)
13 背面壁
14 廊下
16 正面壁
17 バルコニー
18 空室
19 増設架構
19A〜19B 増設架構
20A〜20K 制震補強ブレース
21 柱
22 梁
23 第1既設架構
24 柱
25 梁
26 第2既設架構
27 他室
28 出入口(第1出入口)
29 両側壁
31 出入口(第3出入口)
33 第1補強柱
34 第2補強柱
35 床スラブ(天井)
36 第1補強梁
37 第2補強梁
40A〜40F 第1アーム
41A〜41F 第2アーム
42A〜42F 油圧ダンパー(振動減衰ダンパー)
44 固定端部(第1基端部)
46 自由端部(第1反対端部)
47 中間部
50 固定端部(第2基端部)
51 自由端部(第2反対端部)
52 中間部
54 シリンダ
55 ロッド
56 先端部(第3反対端部)
57 基端部(第3基端部)
45 回転ヒンジ(連結部材)
64A〜64B 出入口(第2出入口)
73 水平ダンパー(振動減衰ダンパー)
82 斜めダンパー(振動減衰ダンパー)
90 ハニカムダンパー(振動減衰ダンパー)
95 設置耐震補強ブレース(室内設置耐震補強ブレース)
108 設置耐震補強ブレース(既設架構設置耐震補強ブレース)
109 耐震補強ブレース
116 耐震補強ブレース


【特許請求の範囲】
【請求項1】
各種の補強部材を利用して既設建物に生じた振動を抑制する既設建物補強構造において、
前記既設建物補強構造が、前記既設建物の空室に構築され、前記補強部材が、前記空室内部の所定の箇所に設置された少なくとも1つの室内設置補強部材であることを特徴とする既設建物補強構造。
【請求項2】
前記室内設置補強部材が、振動減衰ダンパーを備えた室内設置制震補強ブレースであり、前記室内設置制震補強ブレースが、前記空室内部の床と壁とを利用して構築された増設架構に設置されている請求項1記載の既設建物補強構造。
【請求項3】
前記室内設置制震補強ブレースが、前記増設架構の下方に回転可能に取り付けられた第1基端部と前記第1基端部の上方に位置する第1反対端部とを有して一方向へ延びる第1アームと、前記増設架構の上方に回転可能に取り付けられた第2基端部と前記第2基端部の下方に位置する第2反対端部とを有して前記一方向へ延びる第2アームと、前記第1および第2アームの基端部の間に位置する増設架構に回転可能に取り付けられた第3基端部と前記第3基端部の反対側に位置する第3反対端部とを有して前記一方向と交差する方向へ延びる前記振動減衰ダンパーと、前記第1および第2アームの反対端部と前記振動減衰ダンパーの反対端部とを回転可能に連結する連結部材とから形成されている請求項2記載の既設建物補強構造。
【請求項4】
前記既設建物補強構造では、前記空室内部に複数の増設架構が構築され、互いに対向する増設架構では、前記室内設置制震補強ブレースが対称形に設置されている請求項2または請求項3に記載の既設建物補強構造。
【請求項5】
前記増設架構では、一対の前記室内設置制震補強ブレースが対称形に設置されている請求項2または請求項3に記載の既設建物補強構造。
【請求項6】
前記室内設置補強部材が、室内設置耐震補強ブレースであり、前記室内設置耐震補強ブレースが、前記空室内部の床と壁とを利用して構築された増設架構に設置されている請求項1記載の既設建物補強構造。
【請求項7】
前記補強部材が、前記空室の柱と梁とを利用した既設架構に設置された少なくとも1つの既設架構設置補強部材を含む請求項1ないし請求項6いずれかに記載の既設建物補強構造。
【請求項8】
前記既設架構設置補強部材が、振動減衰ダンパーを備えた既設架構設置制震補強ブレースである請求項7記載の既設建物補強構造。
【請求項9】
前記既設架構設置制震補強ブレースが、前記既設架構の下方に回転可能に取り付けられた第1基端部と前記第1基端部の上方に位置する第1反対端部とを有して一方向へ延びる第1アームと、前記既設架構の上方に回転可能に取り付けられた第2基端部と前記第2基端部の下方に位置する第2反対端部とを有して前記一方向へ延びる第2アームと、前記第1および第2アームの基端部の間に位置する既設架構に回転可能に取り付けられた第3基端部と前記第3基端部の反対側に位置する第3反対端部とを有して前記一方向と交差する方向へ延びる前記振動減衰ダンパーと、前記第1および第2アームの反対端部と前記振動減衰ダンパーの反対端部とを回転可能に連結する連結部材とから形成されている請求項8記載の既設建物補強構造。
【請求項10】
前記既設架構設置補強部材が、前記既設架構に取り付けられた既設架構設置耐震補強ブレースである請求項7記載の既設建物補強構造。
【請求項11】
前記既設建物補強構造が構築された空室と該空室に隣接する他室との間には、その他室から前記空室に出入可能な第1出入口が作られている請求項1ないし請求項10いずれかに記載の既設建物補強構造。
【請求項12】
前記既設建物補強構造が構築された空室と該空室の上下に位置する他室との間には、その他室から前記空室に出入可能な第2出入口が作られている請求項1ないし請求項11いずれかに記載の既設建物補強構造。
【請求項13】
前記既設建物補強構造が構築された空室には、その外部から該空室に出入可能な第3出入口が作られている請求項1ないし請求項12いずれかに記載の既設建物補強構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【公開番号】特開2010−229800(P2010−229800A)
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−81619(P2009−81619)
【出願日】平成21年3月30日(2009.3.30)
【出願人】(000235543)飛島建設株式会社 (132)
【Fターム(参考)】