説明

既設支承装置の更新工法および更新構造

【課題】既設支承装置の更新工法および更新構造を提供すること。
【解決手段】下部構造物4上の既設支承装置を撤去して、新たな支承装置を設置する既設支承装置の更新工法において、既設コンクリート製桁1の側面12または下面13に、既設コンクリート製桁1の内部鉄筋14をはつらない状態の溝15を設け、前記溝15に嵌合する突起22を備えた係合金具24における前記突起22を、前記溝15に嵌合させるように前記係合金具24を既設コンクリート製桁1に設け、前記係合金具24を介して既設コンクリート製桁1を新設支承装置21に支持させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高架道路橋あるいは橋梁等における既設支承装置を撤去して、新設の支承装置を設置する支承の更新工法において、コンクリート製桁内部の鉄筋をはつらない状態でコンクリート製桁と新設の支承装置に支持させる既設支承装置の更新工法および更新構造に関し、特に既設コンクリート製桁の側面に内部鉄筋をはつらない状態の浅い溝を設けて、この溝に嵌合する突起を備えた係合金具を介在させて新設の支承装置を設置する既設支承装置の更新工法および更新構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、支承装置を交換する場合、例えば、ベースプレートをアンカーボルトによって下部構造物に固定する震度法による鋼製あるいは弾性支承装置を、タイプBの鋼製または弾性支承装置などの支承装置(特許文献1または非特許文献1参照)に置き換えることが知られている。
【特許文献1】特開2004−300897号公報
【非特許文献1】道路橋示方書(V耐震設計編) 社団法人日本道路協会発行、2002年14月10日、P.245
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
保有耐力法により耐震性能が高められている新たな支承装置を設置して、既設コンクリート製桁を支承する場合、既設コンクリート製桁と既設のソールプレートとの連結構造に設計される以上の水平力または上揚力が作用することを前提にして設計された新設支承装置が設置されるようになるため、既設コンクリート製桁と新設の支承装置との連結を、より確実にして、既設コンクリート製桁と新設の支承装置とを、水平力または上揚力に対して、単独でまたは他の装置と共同して、より高い荷重を伝達できる構造で連結させる必要がある。
前記のように既設桁が鋼製である場合には、ソールプレートを固定する場合の溶接部等の肉盛り等により補強が容易であるが、既設桁がコンクリート桁の場合には、ソールプレートと既設コンクリート製桁とのアンカーボルト等による係合部の強度を容易に高めることが困難である。
本発明は、既設コンクリート製桁と新設の支承装置との係合部を簡単な手段により、より確実な係合部とすることが可能な既設支承装置の更新工法および更新構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
前記課題を解決するために、第1発明の既設支承装置の更新工法においては、下部構造物上の既設支承装置を撤去して、新たな支承装置を設置する既設支承装置の更新工法において、既設コンクリート製桁の側面または下面に、既設コンクリート製桁の内部鉄筋をはつらない状態の溝を設け、前記溝に嵌合する突起を備えた係合金具における前記突起を、前記溝に嵌合させるように前記係合金具を既設コンクリート製桁に設け、前記係合金具を介して既設コンクリート製桁を新設支承装置に支持させることを特徴とする。
また、第2発明の既設支承装置の更新工法においては、下部構造物上の既設支承装置を撤去して、新たな支承装置を設置する既設支承装置の更新工法において、既設コンクリート製桁の側面または下面に、既設コンクリート製桁の内部鉄筋をはつらない状態の溝を設け、前記溝に嵌合する複数の突起からなる突起群を備えた係合金具における前記突起群を、前記溝に嵌合させるように前記係合金具を既設コンクリート製桁に設け、既設コンクリート製桁と係合金具とは、少なくとも前記溝と突起群とが、接着剤または無収縮モルタル等の硬化性充填材により固着され、前記係合金具を介して既設コンクリート製桁を新設支承装置に支持させることを特徴とする。
また、第3発明では、第1発明の既設支承装置の更新工法において、既設コンクリート製桁と係合金具とは、少なくとも前記溝と突起とが、接着剤または無収縮モルタル等の硬化性充填材により固着されていることを特徴とする。
また、第4発明では、第1または第3発明の既設支承装置の更新工法において、前記溝は、横方向または上下方向に傾斜する溝であり、これに対応して、前記突起は、横方向または上下方向に傾斜する突起であることを特徴とする。
第5発明では、第1発明〜第4発明のいずれかの既設支承装置の更新工法において、前記溝は、かぶりコンクリートの厚さ範囲あるいは、かぶりコンクリートの厚さを越える深さの溝であり、これに対応して、前記突起は、かぶりコンクリートの厚さ範囲あるいは、かぶりコンクリートの厚さを越える突出長さの突起であることを特徴とする。
また、第6発明の既設支承装置の更新構造においては、下部構造物上の既設支承装置を撤去して、新たな支承装置を設置する既設支承装置の更新工法において、既設コンクリート製桁の側面または下面に、既設コンクリート製桁の内部鉄筋をはつらない状態の溝を設け、前記溝に嵌合する突起を備えた係合金具における前記突起を、前記溝に嵌合させるように係合金具を既設コンクリート製桁に設け、前記係合金具を介して既設コンクリート製桁が新設支承装置に支持されていることを特徴とする。
また、第7発明の既設支承装置の更新構造においては、下部構造物上の既設支承装置を撤去して、新たな支承装置を設置する既設支承装置の更新工法において、既設コンクリート製桁の側面または下面に、既設コンクリート製桁の内部鉄筋をはつらない状態の溝を設け、前記溝に嵌合する複数の突起からなる突起群を備えた係合金具における前記突起群を、前記溝に嵌合させるように係合金具を既設コンクリート製桁に設け、既設コンクリート製桁と係合金具とは、少なくとも前記溝と突起群とが、接着剤または無収縮モルタル等の硬化性充填材により固着され、前記係合金具を介して既設コンクリート製桁が新設支承装置に支持されていることを特徴とする。
第8発明では、第6発明の既設支承装置の更新構造において、既設コンクリート製桁と係合金具とは、少なくとも前記溝と突起とが、接着剤または無収縮モルタル等の硬化性充填材により固着されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0005】
第1および第6発明によると、既設コンクリート製桁に溝を設け、既設コンクリート製桁と支承装置との間に、突起を備えた係合金具を介在させるだけで、容易に既設コンクリート製桁と係合金具の係合を高めることができ、また、係合金具と支承装置の係合を高めることができ、ひいては、既設コンクリート製桁と支承装置の係合を高めることができる。
特に、本発明では、既設コンクリート製桁内の内部鉄筋を切削しないので、既設コンクリート製桁の現場加工が格段に容易にすることができ、また、既設コンクリート製桁と係合金具との連結構造も簡単で確実である。
第2および第7発明によると、既設コンクリート製桁に溝を設け、既設コンクリート製桁と支承装置との間に、複数の突起からなる突起群を備えた係合金具を介在させ、既設コンクリート製桁と係合金具とは、少なくとも前記溝と突起群とが、接着剤または無収縮モルタル等の硬化性充填材により固着するだけで、容易に既設コンクリート製桁と係合金具との一体化することができ、特に、溝に突起群を遊嵌状態で嵌合させて、接着剤または無収縮モルタル等の硬化性充填材により一体化を図るので、溝の形態も連続した溝に単純化することができ、突起群全体を溝に配置すればよいので、現場施工が単純で容易に短工期で施工が可能になる。
特に、本発明では、既設コンクリート製桁内の内部鉄筋を切削しないので、既設コンクリート製桁の現場加工が格段に容易にすることができ、また、既設コンクリート製桁と係合金具との連結構造も簡単で確実である。
また、第3発明または第8発明によると、既設コンクリート製桁と係合金具とは、少なくとも前記溝と突起とが、接着剤または無収縮モルタル等の硬化性充填材により固着されているので、既設コンクリート製桁側の溝と係合金具側の突起との間に接着剤または無収縮モルタル等の硬化性充填材を充填するだけで、既設コンクリート製桁と係合金具との一体化を、耐震性能を高めた状態で連結することができる。また、溝と突起との間に接着剤または無収縮モルタル等の硬化性充填材を充填して一体化する構造であるので、構造が簡単であると共に、確実に連結することができる。
また、第4発明によると、溝と突起とが、横方向に傾斜している場合には、橋軸方向および橋軸直角方向の両方向の係合一体化を図ることができる。
また、溝と突起とが、上下方向に傾斜している場合には、上下方向の上揚力および橋軸方向の水平力に抵抗可能な係合構造とすることができる。
また、溝と突起とが、横方向に傾斜している場合と、縦方向に傾斜している場合との、両方を備えている場合には、上下方向の上揚力および横方向の水平力の両方に抵抗可能な連結構造とすることができる。
また、第5発明によると、かぶり厚内の深さ寸法の溝、あるいはこれよりも例えば鉄筋径より深い寸法の溝を形成して、溝とするので、既設コンクリート製桁に大きな加工をしないでよく、既設コンクリート製桁側の、加工が容易に、かつ安価に施工することができる。また、スターラップ筋あるいは主筋の配置位置程度内側に向かって深い寸法の溝とし、スターラップ筋あるいは主筋の橋軸方向あるいは上下方向の投影面内に、突起先端部が位置すると、突起先端部をかぶりコンクリート内のみに位置させる場合よりも、横方向あるいは上下方向の溝付き桁1Aと係合金具24との一体化をより確実にすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
次に、本発明を図示の実施形態を参照しながら詳細に説明する。
【0007】
先ず、図15を参照して、上部構造物としての既設コンクリート製桁1が支承されている状態の一形態を説明すると、図15では、既設コンクリート製桁1は、その下部にソールプレート2をアンカーボルト3により固定され、コンクリート製の下部構造物4上にアンカーボルト5により固定された既設支承装置6にソールプレート2が載置され、前記ソールプレート2に一辺が係合する断面L形の上揚力止め金具7の他辺を、下部ベースプレート8から立設された縦部分9にボルト等により固定することで、既設コンクリート製桁1が支承されている。また、図19(a)に示すように、既設コンクリート製桁1が支承されている状態は、既設コンクリート製桁1と下部構造物4との間に弾性支承体10が介在設置されている状態である。
【0008】
図15の状態から、既設コンクリート製桁1に固定のソールプレート2を利用する場合には、図16(a)に示すように、ソールプレート2を残した状態で、既設支承装置6と上部構造物としての桁1あるいは下部構造物4とのナットあるいはボルト等による連結を解除した状態で、適宜、既設コンクリート製桁1をジャッキアップし、既設支承装置6を撤去するか、図16(b)に示すように、既設コンクリート製桁1側のアンカーボルト3とソールプレート2との連結を溶断等により解除して、ソールプレート2まで撤去し、次いで、下部構造物4上部をはつり、凹部11を設ける。また、図19(a)の状態から、図19(b)に示すように、既設支承装置6を撤去し、下部構造物4上部をはつり、凹部11を設ける。
【0009】
また、既設コンクリート製桁1の橋軸方向の端部における橋軸直角方向の両側面12または下面13に、あるいは既設コンクリート製桁1の側面12および下面13の両面に、既設コンクリート製桁1に埋め込み固定されている主筋あるいはスターラップ筋などの鉄筋14を切断しないように、適宜鉄筋探査して、かぶりコンクリートの厚さ範囲あるいは、かぶりコンクリートの厚さを鉄筋(スターラップ筋または主筋)径程度超えて鉄筋間のコンクリートをはつって、図4(a)〜(g)に示すような形態の溝15(15A〜15C)を設ける。
本発明では、前記のように、既設コンクリート製桁1内の鉄筋を切断しないように溝15を設けることにより、既設コンクリート製桁1側の加工が、コンクリートのはつり作業だけであるので現場加工が容易にできるようにしている。はつり装置としては、電動式カッター等によりはつって溝15を設けてもよく、公知のはつり装置などにより桁をはつって、溝を設けるようにしてもよい。
【0010】
次に、既設コンクリート製桁1の側面または下面に設ける溝の代表的な形態について説明する。
【0011】
図4(a)に示す形態では、桁1側の縦リブ16位置を中心にして、既設コンクリート製桁1の側面の下部に、桁下面に開口すると共に、桁側面に開口する上下方向の縦溝15aを間隔をおいて平行に複数設けた形態であり、図4(b)の形態では、桁端から離れた位置から橋軸方向に延長する横溝15bを、上下方向に間隔をおいて複数設けた形態であり、図4(c)では、縦溝15aと横溝15bとを格子状に設けた形態であり、図4(d)では、桁1の縦リブ16位置の中心軸線を中心にして、下部に向かって互いに接近するように傾斜する平行な複数の第1縦傾斜溝15cと、これに対称に傾斜する第2縦傾斜溝15dとを、間隔をおいて複数設けた形態である。図4(e)では、桁1の縦リブ16位置の中心軸線を中心にして、下部に向かって離反するように傾斜する平行な複数の第1縦傾斜溝15cと、これに対称に傾斜する第2縦傾斜溝15dとを、間隔をおいて複数並行に設けた形態である。
また、図4(f)では、桁1の側面下部に、上下方向に間隔をおいた一つまたは複数の円形溝15eを、桁長手方向に間隔をおいて多数列設けた形態で、図4(g)では、円形溝15eを千鳥状に設けた形態である。
【0012】
また、既設コンクリート製桁1の下面側のソールプレート2を撤去し、既設コンクリート製桁1に埋め込み固定のアンカーボルト3の下部を必要に応じ除去する場合には、図9(a)(c),図10(e),図11(g)(h),図12(k)(m)に代表的な形態を示すように、既設コンクリート製桁1の下面に溝を設けることも可能になる。
図9(a)では、既設コンクリート製桁1の橋軸方向の端部下面に橋軸方向に延長すると共に橋軸直角方向に間隔をおいて複数の縦長溝15fを設けた形態であり、図9(c)では、橋軸直角方向に延長する横長溝15gを橋軸方向に間隔をおいて複数設けた形態である。図10(e)では、前記縦長溝15fと横長溝15gを交差するように設けた形態であり、図11(g)では、橋軸方向に延長する中心軸線に対して傾斜するように、かつ橋軸方向に延長する中心軸線に向かって隣り合う溝が漸次離反するように傾斜した縦傾斜溝15hを設けた形態であり、図11(i)では、橋軸方向に延長する中心軸線に向かって隣り合う溝が漸次接近するように傾斜した縦傾斜溝15hを設けた形態である。例えば、前記のようにあるいは後記のように、既設コンクリート製桁1を、溝付き桁1Aに加工する。
【0013】
次に、図1〜図5を参照して、本発明の第1実施形態を説明する。
【0014】
図1に示すように、下部構造物4に、凹部11および新設のアンカーボルト孔17を設けて、新設のベースプレート18をレベル調整した状態で、無収縮モルタル19を充填して、アンカーボルトにより固定する。新設のベースプレート18には、貫通したアンカーボルト頭部収容孔を設けて、既設アンカーボルト5頭部または新設アンカーボルト20頭部を、収容し、溶接等により、既設アンカーボルト5あるいは新設アンカーボルト20頭部と、新設のベースプレート18との一体化を図る。
このように固定された新設のベースプレート18に、せん断拘束壁等を有する新設支承装置21を設置し、溶接またはボルト等により新設のベースプレート18に固定する。
【0015】
次に、前記の図4(a)と図16(b)に示すように、既設コンクリート製桁1の端部側面12に、縦溝15aを設けた場合には、図5および図6(b)に示すように、前記縦溝15aに対応する位置に、橋軸直角方向に張り出す縦鋼板からなる突起22aを橋軸方向に間隔をおいて溶接または図示省略のボルトにより固定した断面L形の側部係合部材本体23を、係合金具24を溝付き桁1Aに取付施工時に、係合金具24における鋼製基板25に、溶接により固定して係合金具24を構成する。前記の側部係合部材本体23の橋軸直角方向の外側には補強用縦リブ26が設けられて、補強されている。
【0016】
前記の係合金具24は、その基板25を含めた下側を、下部構造物4に設置した新設支承装置21の上部に載置した状態で、溝付き桁1Aを基板25上に載置し、側部係合部材本体23における突起22aが、溝15aに十分入り込んで係合する位置まで、側部係合部材本体23の橋軸直角方向の位置調整を行って、基板25に溶接(図示の場合)またはボルトにより固定する。なお、後記するように、ジャッキアップされた状態の溝付き桁1Aの溝15に、係合金具24の突起を嵌合させるようにしても、新設支承装置21上に係合金具24を載置し、その上に溝付き桁1Aを降下させるようにして、溝と突起を嵌合させるようにしてもよい。
前記の側部係合部材本体23の突起22aと、溝付き桁1Aにおける溝15aとの間には、必要に応じ、下地処理して接着剤を充填したり、突起22aを含む側部係合部材本体23における桁側面と、溝付き桁1Aにおける側部係合部材本体23が当接する面全体を、適宜、下地処理して、接着剤を塗布して一体に係合するようにしてもよい。あるいは、これらに代えて無収縮モルタル等の硬化性充填材を充填して一体に係合するようにしてもよい。
【0017】
前記の基板25と新設支承装置21との上下方向の一体化を図る必要のない場合には、図1に示すように、滑り支承からなる新設支承装置21上に、基板25を載置し、基板25の橋軸直角方向の両側に、橋軸直角方向に移動を拘束する拘束壁27を設けるようにしてもよい。
図1に示す形態は、弾性層36の上下の鋼板を一体に固着した弾性体40が下部支持部材41におけるせん断拘束壁42内に配置され、下部支持部材40は複数のボルト43により、ベースプレート18に固定されている。
また、前記の基板25と新設支承装置21との上下方向の一体化を図る場合には、図18(a)に示すように、基板25と、新設支承装置21の上部とを溶接により固定するようにしてもよく、図18(b)に示すように、新設支承装置21が上下に取り付け用鋼板を有する弾性支承装置である場合には、基板25と新設支承装置21の上部取付用鋼板28とをボルト28aにより固定するようにしてもよい。下部取付用鋼板29は新設のベースプレート18に対して溶接またはボルトにより固定するようにすればよい。
【0018】
新設のベースプレート18を新設アンカーボルト20に固定する場合には、新設アンカーボルト20の上部に、回動工具係合部付き頭部フランジ31を有すると共に下部に雌ねじを有するボルト32を、新設のボルト軸部挿通孔に挿通することで、新設のベースプレート18を新設アンカーボルト20に固定することができる。
【0019】
次に、溝付き桁1Aに設ける溝の他の形態の場合について説明する。
【0020】
図4(b)に示すように、既設コンクリート製桁1の端部側面に、上下方向に間隔をおいて平行に橋軸方向に延長する複数の横溝15bを設ける場合には、図6(d)に示すように、上下方向に間隔をおいて平行に橋軸方向に延長する複数の横向き鋼板からなる突起22bを有する側部係合部材本体23を基板25に、溶接またはボルトにより固定して、図6(c)に示すように係合部材24を設置すればよい。
【0021】
また、図4(c)に示すように、既設コンクリート製桁1の端部側面に、上下方向に間隔をおいて平行に橋軸方向に延長する複数の横溝15bと、橋軸方向に間隔をおいて平行に上下方向に延長する複数の縦溝15aとを格子状に設ける場合には、図7(f)に示すように、上下方向に間隔をおいて平行に橋軸方向に延長する複数の突起22bと、橋軸方向に間隔をおいて平行に上下方向に延長する突起22aを有する側部係合部材本体23を基板25に、溶接またはボルトにより固定して、図7(e)に示すように、溝付き桁1A下部に係合部材24を設置すればよい。
【0022】
また、図4(d)(e)に示すように、下部に向かって互いに離反または接近するように傾斜する複数の第1縦傾斜溝15cと、第2縦傾斜溝15dとからなる係合溝である場合には、図7(h)(j)に示すように、下部に向かって互いに離反または接近するように傾斜する複数の第1傾斜突起22cと、第2傾斜突起22dとを備えた側部係合部材本体23を基板25に、溶接またはボルトにより固定して、図7(g)(i)に示すように、溝付き桁1A下部に係合部材24を設置すればよい。図14(a)には、基板25上に第1傾斜突起22cと第2傾斜突起22dとを備えた側部係合部材本体23を基板25に配置した状態が示されている。
【0023】
また、図4(f)(g)に示すように、桁1の側面下部に、上下方向に間隔をおいた複数(図示の場合は2つ)の円形溝15eを、桁長手方向に間隔をおいて多数列平行に、あるいは千鳥状に設けた形態の係合溝である場合には、図8(l)(n)に示すように、側部係合部材本体23における縦部分23aに、上下方向に間隔をおいた断面円形等の棒状突起22fを、桁長手方向に間隔をおいて多数列平行に、あるいは千鳥状に備えた側部係合部材本体23を、基板25に溶接またはボルトにより固定して、図8(k)(m)に示すように、溝付き桁1A下部に係合部材24を設置すればよい。図14(b)には、基板25上に、多数の円形突起22fを備えた側部係合部材本体23を配置した状態が示されている。
【0024】
次に、既設コンクリート製桁1の下面に、水平な溝を設けて溝付き桁1Aとし、その溝に嵌合される突起を備えた係合部材とを組み合わせる場合について、図9〜図12を参照しながら説明する。
【0025】
図9(a)は溝付き桁1Aの底面を示したもので、既設コンクリート製桁1の端部下面に、橋軸方向に延長すると共に、橋軸直角に間隔をおいて平行に延長する複数の溝15fを設けた形態で、図9(b)は、前記溝15fに嵌合可能な突起22iで、橋軸方向に延長すると共に、橋軸直角に間隔をおいて平行に延長する複数の係合用の突起22iを基板25に、溶接等により固定した係合部材24の形態である。
【0026】
図9(c)は溝付き桁1Aの底面を示したもので、既設コンクリート製桁1の端部下面に、橋軸直角方向に延長すると共に、橋軸方向に間隔をおいて平行に複数の溝15gを桁端で解放するように設けた形態で、図9(d)は、前記溝15gに嵌合可能な突起22jで、橋軸方向に延長すると共に、橋軸直角に間隔をおいて平行に延長する複数の係合用の突起22jを基板25に、溶接等により固定した係合部材24の形態である。
【0027】
図10は溝付き桁1Aの底面を示したもので、既設コンクリート製桁1の端部下面に、橋軸方向に延長すると共に、橋軸直角方向に間隔をおいて平行な複数の溝15fと、これに交差し、橋軸直角方向に延長すると共に、橋軸方向に間隔をおいて平行な複数の溝15gを桁両側部で解放するように設けた形態で、図10(f)は、前記溝15fに嵌合可能で、橋軸方向に間隔をおいて延長すると共に、橋軸直角方向に間隔をおいて平行な複数の突起22iと、前記突起22iに交差するように配置され前記溝15gに嵌合可能で、橋軸直角方向に延長すると共に、橋軸方向に間隔をおいて平行な複数の係合用の突起22iを基板25に、溶接等により固定して係合金具24とした形態である。
【0028】
図11(g)(h)は、既設コンクリート製桁1の橋軸方向の端部下面に、橋軸方向中心軸線に向かって互いに接近するように傾斜する横傾斜溝15kを、周方向に等角度間隔(図示の場合は、90度の等角度間隔)をおいて、複数設けた形態で、図11(g)では矩形状配置に、図11(i)では、×状(放射状)配置に設けた形態である。図11(h)(j)は、前記の溝15kに嵌合可能な傾斜突起22kで、水平回りに等角度間隔(図示の場合は90度間隔)をおいて複数(図示の場合は4つ)矩形状配置としたり、×状配置にした複数の係合用の突起22kを基板25に、溶接等により固定して係合金具24とした形態である。
【0029】
図12(k)(m)は、既設コンクリート製桁1の橋軸方向の端部下面に、橋軸方向および橋軸直角方向に間隔をおいて多数の円形溝15eを整列配置(図12(k)の場合)または千鳥状配置(図12(m)の場合)に設けた形態である。図12(l)(n)は、前記の円形溝15eに嵌合可能な円柱状突起22eで、整列配置(図12(k)の場合)または千鳥状配置(図12(m)の場合)にした多数の係合用の円柱状突起22eを基板25に、溶接等により固定して係合金具24とした形態である。
【0030】
溝15と突起22との組み合わせ形態としては、図9〜図12に示すような溝付き桁1Aと、係合金具24との組み合わせでもよく、溝付き桁1Aにおける溝または溝を含む当接部(係合部材24に対する当接部で、桁側面12または下面13を含む部分)と、突起22または突起を含む当接部(桁に対する当接部で、対向する縦部分23aの内側面を含む部分)とを、前記と同様に、適宜下地処理して接着剤を塗布して一体化してもよく、無収縮モルタル等の硬化性充填材を当接部間に充填して一体化してもよい。このように一体化された溝付き桁と係合金具24間では、水平力あるいは上揚力の伝達が可能になる。なお、ジャッキアップされた状態の溝付き桁1Aの溝15に、係合金具24の突起を嵌合させるようにしても、新設支承装置21上に係合金具24を載置し、その上に溝付き桁1Aを降下させるようにして、溝と突起を嵌合させるようにしてもよく、図1〜図5に示す形態もこれらと同様に実施してもよい。
【0031】
図6〜図8に示すような形態と図9〜図12に示すような形態との組み合わせ形態の溝付き桁1Aとしたり、係合金具24とすることが可能であるので、図13(a)(b)に示す代表形態を参照して説明する。
【0032】
図13(a)および(b)は、側部係合部材本体23を備えていると共に、基板25上面に突起22i、22jを備えている形態の係合金具24の代表形態を示すものであって、図13(a)では、図5に示す形態に、さらに、基板25上面に、橋軸方向に延長すると共に橋軸直角方向に間隔をおいて複数の突起22iを設けた形態であり、このような形態では、既設コンクリート製桁1の下面に図9(a)に示すような溝と、桁側面に図4(a)に示すような溝を設けた形態の溝付き桁1Aとすればよい。
図13(b)は、側部係合部材本体23を図6(b)に示す形態を対称に配置し、さらに、基板25上面に、橋軸直角方向に延長すると共に橋軸方向に間隔をおいて平行に複数の突起22jを設けた形態である。
前記以外にも、図4のいずれかに示すような桁側面に溝と、図9〜図12のいずれかに示すような桁底面に溝とを組み合わせた溝付き桁1Aとし、これに合わせて、図6〜図8に示すような側部係合部材本体23と、図9〜図12に示す形態のいずれかの基板上面側の突起との組み合わせ形態の係合金具24としてもよい。
【0033】
前記の各形態で、桁1の側面に設ける溝15が、鉛直方向である場合には、これに嵌合する突起22も鉛直方向となり、橋軸方向の荷重伝達は可能であるが、上揚力に対する荷重伝達ができないので、接着剤または無収縮モルタル等の硬化性充填材により桁1Aと係合金具24を一体化して上揚力に抵抗可能にするか、上揚力に抵抗する別個の装置(図示を省略した)を溝付き桁1Aと下部構造物4との間に設けるようにしてもよい。
【0034】
また、同様に、桁1の下面に設ける溝15が、橋軸方向(橋軸直角方向)である場合には、これに嵌合する突起22も橋軸方向(橋軸直角方向)となり、橋軸直角方向(橋軸方向)の荷重伝達は可能であるが、橋軸方向(橋軸直角方向)に対する荷重伝達が十分できないので、接着剤または無収縮モルタル等の硬化性充填材により桁1Aと係合金具24を一体化して、橋軸方向(橋軸直角方向)に抵抗可能になる。接着剤または無収縮モルタル等の硬化性充填材にせん断力を作用させるようにして、溝付き桁1Aと係合金具24間の応力伝達を図る形態よりも、接着剤または無収縮モルタル等の硬化性充填材に押圧力を作用させるようにして、溝付き桁1Aと係合金具24間の応力伝達を図るようにした形態の方が、大きな荷重伝達が可能になるので望ましい。
【0035】
次に、図16(a)の状態から、新設の支承装置を設置して図17(a)または図17(b)に示す状態に施工するまでの工程、あるいは図16(b)の状態から、新設の支承装置を設置して図18(a)または図18(b)に示す状態に施工するまでの工程について説明する。
【0036】
図17(a)に示す施工形態では、図20に示すように、基板25の中央部にソールプレート2を配置させる貫通孔30を有する係合金具24を使用し、前記基板25をソールプレート2の下側に嵌合して、ソールプレート2と基板25内周面とを溶接により一体化し、新設支承装置21の上部と基板25とを溶接により固定した形態である。図17(b)では、新設支承装置21の上部取付用鋼板28を基板25に、ボルトにより着脱可能に固定するようにした形態である。
なお、図示を省略するが、図20における貫通孔30に代えて、基板25の中央部にソールプレート2を配置させる凹溝を有する係合金具24を使用し、前記基板25をソールプレート2の下側に配置して前記凹溝に嵌合して、ソールプレート2と基板25とをボルト等により一体化し、新設支承装置21の上部と基板25とを溶接またはボルトにより固定するようにしてもよい。前記のような凹溝を基板25に設ける場合には、基板25をその下面側からボルトを挿通してソールプレート2に固定する場合には、基板25に段付き透孔を設け、ソールプレート2に雌ねじ孔を設けてボルト頭部を基板25の段付き透孔に収容するようにすると、基板25の下面と新設支承装置21の上面とを確実に広い面積で面タッチさせた状態で、ボルトあるいは溶接等により接合することができる。
【0037】
図16(b)の状態からさらに施工する場合は、図18(a)に示すように、前記と同様に、新設支承装置21の上部を上部構造物1に、溶接Wにより固定するようにした形態である。図18(b)では、図16(b)の状態から新設支承装置21の上部取付用鋼板28を、基板25にボルト28aにより固定するようにした形態である。
【0038】
次に、図19(b)に示す状態では、図16(b)に示す形態と同様に、図18(a)(b)に示すように、新設のアンカーボルト孔17を設けて、新設支承装置21を、下部構造物4側に設置した後、係合金具24の基板25を、新設支承装置21の上部に溶接あるいはボルトにより固定するようにして、溝付き桁1Aを基板25上に設置し、係合部材本体23を取り付けるようにすればよい。
【0039】
前記のように、本発明の既設支承装置の更新工法では、下部構造物4上の既設支承装置6を撤去して、新たな新設支承装置21を設置する既設支承装置の更新工法において、既設コンクリート製桁1の側面12または下面13に、既設コンクリート製桁1の内部鉄筋をはつらない状態の溝15を設け、前記溝15に嵌合する突起22を備えた係合金具24における前記突起22を、前記溝15に係合させるように前記係合金具24を既設コンクリート製桁1に設け、前記係合金具24を介して既設コンクリート製桁を新設支承装置21に支持させるようにしている。
【0040】
本発明では、既設コンクリート製桁1内の鉄筋14を切断したり、はつらない(はつり取らない)で、かぶり厚内の深さ寸法の溝、あるいはこれよりも鉄筋径ほど深い寸法の溝を形成して、溝とするので、既設コンクリート製桁1に大きな加工をしないでよく、既設コンクリート製桁1がわの、加工が容易に、かつ安価に施工することができる。
【0041】
本発明を実施する場合、桁1に設ける溝が、横方向に隣り合う少なくとも1組の傾斜した溝は、一端側が互いに接近すると共に、他端側が互いに離反する方向に傾斜する溝とし、これに対応して、横方向に隣り合う少なくとも1組の傾斜した突起は、一端側が互いに接近すると共に、他端側が互いに離反する方向に傾斜する突起としてもよい。
【0042】
溝の断面形状としては、図示の凹部以外にも、図示を省略するが、蟻溝、外側に向かって拡開するような台形溝でもよい。
【0043】
本発明を実施する場合、既設コンクリート製桁1桁としては、I形桁以外に、版桁あるいはボックス断面の箱桁に適用するようにしてもよい。
【0044】
なお、上部構造物と下部構造物とが、弾性緩衝支承装置により連結されている場合は、地震時等に上部構造物の水平移動および上揚動を緩衝しながら支承することが可能である。
【0045】
図21〜図24(a)および図25は本発明の他の実施形態の代表形態を示すものであって、この形態では、既設コンクリート製桁1に溝を設けて溝付き桁1Aとする場合に、主筋14a間あるいはスターラップ筋14b間において、コンクリートのかぶり厚に相当する溝深さを形成した基端側縦溝15aと、その溝15aに接続すると共に主筋14aまたはスターラップ筋14bが配置されている位置の深さ程度の深溝15nとを設け、これらの基端側縦溝15aおよび深溝15nに嵌合する基端側突起22nとその基端側突起よりも突出寸法の大きい先端側突起22mとを縦部分に備えた係合金具24とした形態である。また、側部係合部材本体23の長手方向に間隔をおいて、板状突起と棒状突起22を橋軸方向に交互に設けた形態の係合金具24である。
【0046】
このように、桁側のスターラップ筋14bあるいは主筋14aの桁幅方向の内側の位置付近までの深溝15nを設けて、スターラップ筋14bあるいは主筋14aの橋軸方向あるいは上下方向の投影面内に、突起先端部が位置すると、突起先端部をかぶりコンクリート内のみに位置させる場合よりも、横方向あるいは上下方向の溝付き桁1Aと係合金具24との一体化をより確実にすることができる。また、図24(a)に示すように、溝付き桁1A側の溝15に突起22を単に接触するように嵌合させる形態でもよいが、図24(b)に示すように、溝15と突起22との間に常温硬化型等の硬化型の接着剤または無収縮モルタル等の硬化性充填材34を介在させて一体化する形態でもよく、さらに、図24(c)に示すように、溝付き桁1A側面12と係合金具24の縦部分との間に接着剤または無収縮モルタル等の硬化性充填材34を介在させて、溝付き桁1Aと係合金具24とを一体化するようにしてもよい。前記の(a)(b)(c)の順に、接合強度は高まる。
溝付き桁1Aの溝15と基板25の突起22との関係あるいは、桁外面と基板25との関係も前記の形態と同様に適用することができる。
【0047】
また、図21に示す形態では、新設の支承装置21として、新設のベースプレート18と上部鋼板35との間に弾性層36が介在されていると共に、前記弾性層36を貫通するようにせん断変形拘束用の中央部支柱37を新設のベースプレート18にねじ接合により固定し、上部鋼板35とソールプレート2とに渡って微小間隙を介して中央部支柱37を嵌合配置し、上部鋼板35とソールプレート2とを、中央部支柱37およびその上端部にねじ込まれるナット38により一体にし、ソールプレート2を係合金具24にける基板25に溶接(図示の形態)またはボルト(図示を省略)により固定し、また、基板25中央部に、前記ナット38収納用凹部または貫通孔33を設けた形態である。
【0048】
また、図21において、既設アンカーボルト5は、その上部が凹部11内において適時切断され、新設のベースプレート18を固定する新設アンカーボルト20は、短尺の新設アンカーボルト20とされ、必要に応じ下部構造物4内に埋め込み固定の上部横主筋14aに溶接等により連結されている。
【0049】
本発明を実施する場合、基板25上または側部係合部材本体23の縦部分に設ける突起22としては、板状の突起22あるいは棒状の突起22あるいは図示省略のブロック状の突起のいずれの形態でもよく、あるいはこれらのいずれか2つ以上の組み合わせ形態でもよい。また、溝付き桁1Aの側面側に配置される突起22では、その板厚が厚い場合あるいは外径が大きい場合には、その橋軸方向あるいは上下方向の投影面が大きくなるので、端部板厚面あるいは外径面を利用して、地震時における溝付き桁1Aと係合金具24間における横方向あるいは上下方向の荷重を伝達することができる。
【0050】
前記の実施形態においては、新設の支承装置として、主に弾性支承装置の形態を示したが、本発明を実施する場合、図示を省略したが、鋼製支承装置としてもよい。また、コンクリート製桁としては、T桁、版桁、ホロー桁、箱桁等であってもよい。また、コンクリート製桁の側面が傾斜縦面とされている場合には、係合金具24における側部係合部材本体23を傾斜配置させるようにすればよい。
なお、本発明を実施する場合、図示を省略するが、既設コンクリート製桁の橋軸方向端部等の側面または下面のかぶりコンクリートをはつった後、その部分の鉄筋をはつりとらないようにして、既設コンクリート製桁の側面または下面に溝を設けるようにしてもよい。この場合には、前記溝に突起を嵌合させた状態で、既設コンクリート桁と係合金具との間に、無収縮モルタルあるいはレジンコンクリート等の充填材を充填して、既設コンクリート製桁と係合金具を一体化させるように係合金具を設け、前記係合金具を介して既設コンクリート製桁を新設支承装置に支持させるようにすればよい。
【0051】
前記実施形態では、コンクリート製桁にスリット状あるいは柱状の凹溝に突起を配置する形態を主に説明したが、前記各実施形態を含めて、本発明を実施する場合、橋軸方向あるいは橋軸直角方向に連続する溝に、複数の突起からなる突起群全体を嵌合配置して、接着材または無収縮モルタル等の硬化性充填材により一体化を図るようにしてもよいので、このような形態の代表形態として、図21〜図23に示す形態の変形形態でもある図26〜図28に示す形態を参照しながら相違する部分を主に説明する。
【0052】
図26〜図28は、本発明のさらに他の実施形態の代表形態を示すものであって、この形態では、既設コンクリート製桁1の橋軸直角方向の両側面に、上下方向および橋軸方向に連続した溝15を設けて溝付き桁1Aとして、このような溝付き桁1Aの溝15に、これに複数または多数の突起22からなる突起群44を遊嵌状態で嵌合させるようにした縦部分23aを備えた係合金具24を組み合わせた形態である。
【0053】
このように、連続した溝15に複数または多数の突起22からなる突起群44を嵌合させて、接着材または無収縮モルタル等の硬化性充填材34により一体化すると、溝付き桁1A側の現場はつり加工が単純化することができ、溝15に突起群44を遊嵌状態で嵌合して、接着材または無収縮モルタル等の硬化性充填材34を充填して溝付き桁1Aと係合金具24との一体化を図ればよいため、現場施工が容易に短工期で施工することができる。なお、溝付き桁1Aの下面側の溝15と基板25の突起22との関係あるいは、桁外面と基板25との関係も、橋軸直角方向および橋軸方向に連続する溝とし、これに突起群を遊嵌状態で嵌合する形態も前記と同様に適用することができる。なお、突起群44に代えて、突起群44に渡る長さおよび幅並びに突出寸法を有するブロック状の突起を縦部分23aに設ける形態とし、ブロック状の突起を溝に嵌合して、接着材または無収縮モルタル等の硬化性充填材34を充填して、溝付き桁1Aと係合金具24との一体化を図るようにしてもよい。
【0054】
なお、この形態では、溝付き桁1Aと係合金具24とは、少なくとも前記溝15と突起群44とが、接着剤または無収縮モルタル等の硬化性充填材34により固着されていればよく、溝付き桁1Aに係合金具24における縦部分23aまで固着するようにしてもよい。
【0055】
なお、本発明を実施する場合、係合金具24における突起22(22a〜22m)と既設コンクリート製桁との接着材または無収縮モルタル等の硬化性充填材を介した一体化を高めるために、前記突起22(22a〜22m)に凹部あるいは貫通孔を設けてずれ止めを図るようにしてもよい。前記突起22(22a〜22m)に貫通孔を設ける場合には、一つの貫通孔に鉄筋を挿通配置してずれ止め効果を高めたり、複数の突起22(22a〜22m)の貫通孔に渡って鉄筋を挿通配置してずれ止め効果を高めようにしてもよく、この場合には、突起22(22a〜22m)の貫通孔に挿通配置する鉄筋の位置を見込で、鉄筋収納部を備えた溝を設けるようにするとよい。もっとも、図26〜図28に示す実施形態では、既設コンクリート製桁1に設ける溝は、橋軸方向または橋軸直角方向あるいは上下方向に連続した溝15になるため、鉄筋収納部は当然備えていることになり、個々の突起に対応した鉄筋収納部を設けたことになる。ブロック状の突起に凹部または貫通孔を設けてずれ止めを図る場合も前記と同様にすればよい。
【0056】
本発明を実施する場合、係合金具24の外表面に、亜鉛メッキあるいはゴム被覆を施して、防錆効果を高めるようにするとよい。最も、現場において、側部係合部材本体23を基板25に溶接により固定して係合金具24を構成する場合には、溶接する部分を除いて亜鉛メッキあるいはゴム被覆を施しておく。また、側部係合部材本体23を基板25に溶接後またはボルト固定後、防錆被覆されていない部分に防錆塗料をはけ塗りあるいは吹付け等により塗装して、係合金具24の防錆を図るようにしてもよく、係合金具24にカバーゴムを被せて防錆を図るようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明を実施して既設弾性支承装置を更新した状態を示す縦断正面図である。
【図2】図1のA−A線断面図である。
【図3】図1のB−B線断面図である。
【図4】既設コンクリート製桁の側面に設ける溝のパターンを示す側面図である。
【図5】既設コンクリート製桁に設ける係合金具を取り出して示す斜視図である。
【図6】(a)(c)は桁に係合金具を設けた状態を示す側面図、(b)(d)は係合金具側の突起を備えた側部構成部材を示す斜視図である。
【図7】(e)(g)(i)は桁に係合金具を設けた状態を示す側面図、(f)(h)(j)は係合金具側の突起を備えた側部構成部材を示す斜視図である。
【図8】(k)(m)は桁に係合金具を設けた状態を示す側面図、(l)(n)は係合金具側の突起を備えた側部構成部材を示す斜視図である。
【図9】(a)(c)は既設コンクリート製桁の底面に設ける溝のパターンを示す底面図、(b)(c)は、それぞれ(a)(c)に対応した突起を備えた係合金具を示す斜視図である。
【図10】(e)は既設コンクリート製桁の底面に設ける溝のパターンを示す底面図、(f)は、それぞれ(a)(c)に対応した突起を備えた係合金具を示す斜視図である。
【図11】(g)(i)は既設コンクリート製桁の底面に設ける溝のパターンを示す底面図、(h)(j)は、それぞれ(g)(i)に対応した突起を備えた係合金具を示す斜視図である。
【図12】(k)(m)は既設コンクリート製桁の底面に設ける溝のパターンを示す底面図、(l)(n)は、それぞれ(k)(m)に対応した突起を備えた係合金具を示す斜視図である。
【図13】(a)(b)は係合金具の他の形態を示す斜視図である。
【図14】(a)(b)は係合金具のさらに他の形態を示す斜視図である。
【図15】既設支承装置の一形態を示す縦断正面図である。
【図16】(a)は図15の状態からソールプレートを残した状態で既設支承装置を撤去した状態を示す縦断正面図、(b)はソールプレートを含めて既設支承装置を撤去した状態を示す縦断正面図である。
【図17】(a)は、図16(a)の状態から、係合金具および新設支承装置を設置した状態を示す縦断正面図である。(b)は、図16(a)の状態から、係合金具および新設支承装置を設置した状態を示す縦断正面図である。
【図18】(a)は、図16(b)の状態から、係合金具および新設支承装置を設置した状態を示す縦断正面図である。(b)は、図16(b)の状態から、係合金具および新設支承装置を設置した状態を示す縦断正面図である。
【図19】(a)は、既設支承装置の他の形態を示す縦断正面図、(b)は既設支承装置を撤去した状態を示す縦断正面図である。
【図20】図17(a)(b)において使用される係合金具の形態を示す斜視図である。
【図21】本発明の他の実施形態を示すものであって、本発明を実施して既設支承装置を更新した状態を示す縦断正面図である。
【図22】図21のC−C線断面図である。
【図23】図21における一方の係合金具と溝付き桁付近の横断平面図である
【図24】(a)(b)(c)は、桁側に設けられる溝とこれに嵌合される突起との関係および桁と係合金具との係合関係を示す一部の横断平面図である。
【図25】図21に示す係合金具を取り出して示す斜視図である。
【図26】本発明のさらに他の実施形態を示すものであって、本発明を実施して既設支承装置を更新した状態を示す縦断正面図である。
【図27】図26のD−D線断面図である。
【図28】図26における一方の係合金具と溝付き桁付近の横断平面図である
【符号の説明】
【0058】
1 既設コンクリート製桁
1A 溝付き桁
2 ソールプレート
3 アンカーボルト(既設コンクリート製桁側)
4 下部構造物
5 アンカーボルト(下部構造物側)
6 既設支承装置
7 上揚力止め金具
8 下部ベースプレート
9 縦部分(下部ベースプレート側)
10 弾性支承体
11 凹部
12 側面
13 下面
14 鉄筋
14a 主筋
14b スターラップ筋
15 溝
15a 縦溝,基端側縦溝
15b 横溝
15c 第1縦傾斜溝
15d 第2縦傾斜溝
15e 円形溝
15f 縦長溝(桁下面)
15g 横長溝
15h 縦傾斜溝
15k 横傾斜溝
15n 深溝
16 縦リブ
17 新設のアンカーボルト孔
18 新設のベースプレート
19 無収縮モルタル
20 新設アンカーボルト
21 新設支承装置
22 突起
22a 突起
22b 突起
22c 第1傾斜突起
22d 第2傾斜突起
22f 円形突起
22i 突起
22j 突起
22k 突起
22n 基端側突起
22m 先端側突起
23 側部係合部材本体
24 係合金具
25 基板
26 補強用縦リブ
27 拘束壁
28 上部取付用鋼板
29 下部取付用鋼板
30 貫通孔
31 頭部フランジ
32 ボルト
33 貫通孔
34 接着剤または無収縮モルタル等の硬化性充填材
35 上部鋼板
36 弾性層
37 中央部支柱
40 弾性体
41 下部支持部材
42 せん断拘束壁
43 ボルト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下部構造物上の既設支承装置を撤去して、新たな支承装置を設置する既設支承装置の更新工法において、既設コンクリート製桁の側面または下面に、既設コンクリート製桁の内部鉄筋をはつらない状態の溝を設け、前記溝に嵌合する突起を備えた係合金具における前記突起を、前記溝に嵌合させるように前記係合金具を既設コンクリート製桁に設け、前記係合金具を介して既設コンクリート製桁を新設支承装置に支持させることを特徴とする既設支承装置の更新工法。
【請求項2】
下部構造物上の既設支承装置を撤去して、新たな支承装置を設置する既設支承装置の更新工法において、既設コンクリート製桁の側面または下面に、既設コンクリート製桁の内部鉄筋をはつらない状態の溝を設け、前記溝に嵌合する複数の突起からなる突起群を備えた係合金具における前記突起群を、前記溝に嵌合させるように前記係合金具を既設コンクリート製桁に設け、既設コンクリート製桁と係合金具とは、少なくとも前記溝と突起群とが、接着剤または無収縮モルタル等の硬化性充填材により固着され、前記係合金具を介して既設コンクリート製桁を新設支承装置に支持させることを特徴とする既設支承装置の更新工法。
【請求項3】
既設コンクリート製桁と係合金具とは、少なくとも前記溝と突起とが、接着剤または無収縮モルタル等の硬化性充填材により固着されていることを特徴とする請求項1に記載の既設支承装置の更新工法。
【請求項4】
前記溝は、横方向または上下方向に傾斜する溝であり、これに対応して、前記突起は、横方向または上下方向に傾斜する突起であることを特徴とする請求項1または3に記載の既設支承装置の更新工法。
【請求項5】
前記溝は、かぶりコンクリートの厚さ範囲あるいは、かぶりコンクリートの厚さを越える深さの溝であり、これに対応して、前記突起は、かぶりコンクリートの厚さ範囲あるいは、かぶりコンクリートの厚さを越える突出長さの突起であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の既設支承装置の更新工法。
【請求項6】
下部構造物上の既設支承装置を撤去して、新たな支承装置を設置する既設支承装置の更新工法において、既設コンクリート製桁の側面または下面に、既設コンクリート製桁の内部鉄筋をはつらない状態の溝を設け、前記溝に嵌合する突起を備えた係合金具における前記突起を、前記溝に嵌合させるように係合金具を既設コンクリート製桁に設け、前記係合金具を介して既設コンクリート製桁が新設支承装置に支持されていることを特徴とする既設支承装置の更新構造。
【請求項7】
下部構造物上の既設支承装置を撤去して、新たな支承装置を設置する既設支承装置の更新工法において、既設コンクリート製桁の側面または下面に、既設コンクリート製桁の内部鉄筋をはつらない状態の溝を設け、前記溝に嵌合する複数の突起からなる突起群を備えた係合金具における前記突起群を、前記溝に嵌合させるように係合金具を既設コンクリート製桁に設け、既設コンクリート製桁と係合金具とは、少なくとも前記溝と突起群とが、接着剤または無収縮モルタル等の硬化性充填材により固着され、前記係合金具を介して既設コンクリート製桁が新設支承装置に支持されていることを特徴とする既設支承装置の更新構造。
【請求項8】
既設コンクリート製桁と係合金具とは、少なくとも前記溝と突起とが、接着剤または無収縮モルタル等の硬化性充填材により固着されていることを特徴とする請求項6に記載の既設支承装置の更新構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【公開番号】特開2009−19493(P2009−19493A)
【公開日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−154803(P2008−154803)
【出願日】平成20年6月13日(2008.6.13)
【出願人】(503121088)株式会社ビービーエム (18)
【出願人】(000112196)株式会社ピーエス三菱 (181)
【Fターム(参考)】