説明

既設雨どいの改修方法及び改修構造

【課題】
樹脂を含浸させた布で雨どいを改修し、雨どいの取り換えを不要にし、しかも改修された雨どいの内面の摩擦を大きくして滑りにくくする。
【解決手段】
雨どいRの内面を清掃して下地樹脂1を塗布し、下層布2に防水性で液体の下層樹脂3を含浸させて敷き、上層布4に防水性で液体の上層樹脂5を含浸させて下層布2の上に敷き、この上層布4の表面に表層樹脂6を塗布する。下層布2は、下層樹脂3が含浸されることによって強い強度が達成され雨どいRへの密着性が高くなる。上層布4は、上層樹脂5が含浸されることによって表面の摩擦が大きくなる。下層布2と上層布4とでは、互いに性質が異なるにもかかわらず、上層樹脂5と下層樹脂3とが近似または同じであれば、上層布4と下層布2との密着性が向上し、改修された雨どいRの強度及び封じ込め性が向上する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、既設雨どいの改修方法及び改修構造に関し、特に既に建造されて年月が経過して劣化した石綿(アスベスト、スレート)または金属などの雨どいの改修方法及び改修構造に関し、さらに石綿(アスベスト、スレート)または金属を封じ込めることも可能なものに関する。
【背景技術】
【0002】
建造物を取り壊して、新たに建造物を新築すると、膨大な建築廃材が出る。近年、このような建築廃材を出さないようにすることが、環境対策上強く求められている。また、雨どいだけを新たに建造しなおしても、やはり膨大な建築廃材が出る。また、新たな建造中は、当然のことながら当該建造物を使用することができず不便であった。
【0003】
【特許文献1】特開平5−176844公報
【特許文献2】実用新案登録2581123号公報
【特許文献3】実開平4−25628公報
【特許文献4】特開平6−49391公報
【特許文献5】特開2004−251102号公報
【特許文献6】特開2005−194162号公報
【特許文献7】特開2006−9381号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、このような建築廃材が出ず、改修中も当該建造物を使用することができるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、本発明は、水平面に対して凹んだ既設の雨どいの上に繊維製の下層布を敷くとともに、 この敷かれる下層布に、防水性で液体の下層樹脂を含浸させ、 この下層布に当該下層樹脂を当該下層布の下面の上記雨どいの表面に達するまで含浸させ、かつ、 上記下層布の上に繊維製の上層布を積層するとともに、 この積層された上層布に、防水性で液体の上層樹脂を含浸させ、 この上層布に当該上層樹脂を当該上層布の下面の上記下層布の表面に達するまで含浸させ、 上記下層樹脂を乾燥させ、上記下層布を硬化させて上記雨どいの強度が向上されるとともに、下層樹脂が含浸した下層布を上記雨どい内面に隙間なく接着させて雨どい表面を封じ込め、 さらに、上記上層樹脂の含浸によって上層布の表面を摩擦の大きい状態にさせ、この上層樹脂を乾燥させて、この摩擦の大きい状態を固定化し、しかも上記上層布を硬化させ強度が向上されるとともに、上層樹脂が含浸した上層布を上記下層布に一体化させる。
【発明の効果】
【0006】
これにより、既設の雨どいをそのまま使って、当該雨どいの防水性及び強度を向上させることができ、建築廃材も出ず、既設の雨どいを除去しないから、雨どい改修中も当該建造物を使用することができるし、石綿(アスベスト、スレート)を封じ込めることもできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
上層樹脂5または下層樹脂3をできるだけ少なくするため、これらの上層樹脂5または下層樹脂3の含浸量の少ない下層布2及び上層布4を用いた。この下層布2または上層布4は、内部に独立気泡14を有していて、これらの上層樹脂5または下層樹脂3の含浸量が少なくなる。下層布2または上層布4は、発泡ウレタンのようにクッション性を有するものではない。発泡ウレタン内の気泡は独立性のものではないため、上層樹脂5または下層樹脂3が簡単に浸透する。
【0008】
(1)雨どいRの構造
図1は雨どいR、屋根L、壁Wを示す。改修される雨どいRとしては、材質はスレート、石綿(アスベスト)、石綿スレート、トタン板、ブリキ板、重金属、金属、瓦、焼き物、塩化ビニル、プラスチック、セラミックなどである。
【0009】
雨どいRは水平面に対して傾斜しており、形状は断面が「U字状」「V字状」「W字状」「L字状」「N字状」「M字状」「横E字状」「横C字状」「横Z字状」「横コ字状」「横半円状」「横半楕円状」など、種々のものがある。本発明は金属またはスレート雨どいRの改修に最適である。
【0010】
上記雨どいRは工場の断面「N字状」の屋根L、壁Wの間に設けられている。屋根Lは、雨どいRの長手方向に沿った上記端縁と反対側の端縁から斜めに上昇し、この屋根LWの下縁は、雨どいRの長手方向に沿った端縁から、雨どいRの内側にややはみだしている。
【0011】
また、壁Wは雨どいRの長手方向に沿った端縁からほぼ垂直に起立し、この壁Wの下縁は、雨どいRの長手方向に沿った端縁から、雨どいRの内側にややはみだしている。この壁Wには場合によって採光用の窓が設けられている。雨どいRの幅は、10cm〜300cm、例えば50cm〜200cm、望ましくは80cm〜100cmほどである。
【0012】
図1の例では、雨どいRは、トタン板などの金属、重金属、塩化ビニルまたは石綿(アスベスト、スレート)からなっており、断面はほぼ「U字状」となっており、ほぼ水平方向に配置され、水流方向に沿ってやや傾斜している。しかし、雨どいRは、斜め、垂直に配置されても良いし、断面が円形環状、楕円環状、角筒状、多角形筒状、半角筒状、半多角形状などでもい。
【0013】
上記雨どいRの内面は、水平底面R1と斜め傾斜面R2と垂直傾斜面R3とからなっている。水平底面R1は雨どいRの中央のほぼ水平の底面であり、斜め傾斜面R2は、この水平底面R1の両側のほぼ45度に傾斜している傾斜面であり、垂直傾斜面R3は、この斜め傾斜面R2のさらに外側のほぼ垂直の傾斜面である。
【0014】
(2)雨どいRの改修方法
【0015】
雨どいを改修する方法は以下の工程からなる。
(工程A)屋根Lまたは壁W若しくは鉄骨等で支えられた雨どいRの表面を清掃する。場合によって屋根Lまたは壁Wの表面も清掃する。
(工程B)この清掃された雨どいR、場合によって屋根L及び壁Wの表面の上に、下層布2及び上層布5に含浸可能な防水性で液体の下地樹脂1(プライマー)を塗布する。
【0016】
(工程C)この下地樹脂1が塗布された雨どいRの表面に下層布2を敷く。
(工程D)この下層布2の上に、下層布2及び上層布4に含浸可能な防水性で液体の下層樹脂3を塗布して含浸させる。
【0017】
(工程E)この下層樹脂3が塗布含浸された下層布2の上に上層布4を敷く。
(工程F)この上層布4の上に、下層布2及び上層布4に含浸可能な防水性で液体の上層樹脂5を塗布して含浸させる。
(工程G)この上層樹脂5が含浸された上層布4の表面に耐候性の表層樹脂6(トップコート)を塗布する。
【0018】
なお、上記(工程A)の雨どいRの表面の清掃は省略可能である。また、下層布2は下層樹脂3が貯められたタンク内に浸されながら引き出され、下層樹脂3が含浸された下層布2が雨どいR、屋根L、壁Wなどに敷かれて、下層布2の敷設と下層布2への下層樹脂3の含浸が同時に並行して行われても良い。
【0019】
さらに、上層布4は上層樹脂5が貯められたタンク内に浸されながら引き出され、上層樹脂5が含浸された上層布4が雨どいR、屋根L、壁Wなどに敷かれて、上層布4の敷設と上層布4への上層樹脂5の含浸が同時に並行して行われても良い。また、下地樹脂1及び表層樹脂6並びにその含浸・塗布は省略されてもよい。
【0020】
上記(工程A)における雨どいRを支えるものは、屋根L、壁W、鉄骨のほか、鉄筋コンクリート、建築用ブロックなどでもよく、構造は対か耐火構造または準耐火構造でもよい。雨どいRの清掃は、箒掃き、水洗い、洗剤を使った洗浄、ジェット水流、洗浄機、たわしまたは電動ブラシなどを使った洗浄、ドライアイスの粒子を雨どいRの表面にぶつけて、雨どい表面の汚れを剥がすドライアイスブラストの洗浄などのいずれでも良いし、これらの組み合わせでもよい。
【0021】
この清掃では乾燥工程も含まれ、この乾燥は、自然乾燥、天日、ヒ−ター、扇風機、送風機などのいずれでもよいし、これらの組み合わせでもよい。なお、水を使わない清掃では、この乾燥工程は不要であって、上記たわしまたは電動ブラシで水を使わない場合、箒掃き、ドライアイスブラストでは乾燥工程は不要である。
【0022】
上記清掃は、省略可能である。この場合、雨どいRの表面のごみや雨どいRの素材の剥離物は除去されず、下地樹脂1、下層樹脂3または上層樹脂5で封じ込められる。これにより、雨どいRの表面のごみや雨どいRの素材の剥離物の飛散を防止できる。
【0023】
この雨どいRの素材が石綿、石綿スレート、重金属、塩化ビニル系樹脂など、場合によって有害な素材からなるときは、このような剥離物の飛散を防止できて、人間の健康及び環境に悪影響を与えることがない。
【0024】
実験によれば、このような清掃を行わない場合、清掃を行った場合に比べて、上記工程によって改修された既設雨どいの強度の低下は無いまたは数%の低下にとどまり、強度上問題はなかった。このように清掃を行わなければ、上記工程によって有害な石綿の封じ込めが可能となり、本件発明を石綿封じ込め方法及び当該石綿封じ込め方法によって封じ込められた封じ込め構造としてとらえることもできる。
【0025】
上記(工程C)の下層布2は、上記(工程B)の下地樹脂1が乾燥する前に敷かれ、この下層布2に下地樹脂1も含浸する。なお、下層布2は下地樹脂1が乾燥してから敷かれても良い。
【0026】
この下地樹脂1は上記下層樹脂3または/及び上層樹脂5と同じであるが、異なっていてもよい。この下地樹脂1と下層樹脂3または/及び上層樹脂5は相互に浸透して混合する。例えば両者がともに水性または油性といった同じ性質であれば混合する。
【0027】
なお、下地樹脂1と下層樹脂3と上層樹脂5とは、後述する上層樹脂5と表層樹脂6とのように、場合によって相互に浸透せず混合しなくてもよい。さらに、下層樹脂3または上層樹脂5のいずれか一方は塗布しないことも可能である。また、上層布4は下層樹脂3が乾燥する前に敷かれるが、乾燥してから敷かれてもよい。この場合の乾燥時間は数時間であって、完全に乾燥される。
【0028】
上記(工程B)及び(工程D)の上層樹脂5の塗布量または/及び下層樹脂3の塗布量は、上層布4または下層布2の厚みと同じ、またはこの厚み未満もしくはこの厚みの数分の1となる量、またはこの厚みを越えるもしくはこの厚みの数倍となる量だけ塗布される。
【0029】
下層布2または/及び上層布4に十分にまたはある程度染み渡って十分にまたはある程度含浸される量だけ、上層樹脂5または下層樹脂3及び上層樹脂5が塗布される。上層樹脂5または下層樹脂3及び上層樹脂5の塗布体積は、後述するように下層布2または/及び上層布4の体積に対して、同じ乃至同じ未満になる。
【0030】
上記(工程D)の上層樹脂5は、上層布4及び下層布2の下面の上記雨どいRの表面に達するまで含浸される。この上層樹脂5が乾燥すると、上記下層布2及び上層布4が硬化されて改修雨どいRの強度が向上される。さらに、下層樹脂3及び上層樹脂5によって上層布4が下層布2に接着され、さらに下層布2が上記雨どいRに接着され、これによりさらに改修雨どいRの強度が向上する。
【0031】
上記表層樹脂6は、上記上層樹脂5または下層樹脂3とは混合しない。これは表層樹脂6が上層樹脂5または下層樹脂3とは材質が異なることによる。例えば一方が水性、他方が油性である。このほか、上層樹脂5と表層樹脂6とが同じ油性または同じ水性といった同じ性質または同じ材質であっても、上層樹脂5が乾燥した後に、表層樹脂6が塗布されれば両者は混合しない。なお表層樹脂6は塗布しないことも可能である。
【0032】
(3)雨どいRの改修構造
図2は、上述の雨どいRの改修方法によって改修された雨どいRの改修構造も示す。この改修構造体10は、上述の下地樹脂1、下層樹脂3を含浸した下層布2、上層樹脂5を含浸した上層布4、表層樹脂6が一体不可分に積層された積層体である。
【0033】
雨どいRは上述のように、工場の断面「N字状」の屋根L、壁Wの間に設けられている。上記屋根LWの下縁は、雨どいRの長手方向に沿った端縁から、雨どいRの内側にややはみだしている。また壁Wの下縁は、雨どいRの長手方向に沿った端縁から、雨どいRの内側にややはみだしている。
【0034】
この雨どいR内には、この雨どいRの寸法に合わせて切断された上記下層布2及び上層布4が上記改修方法によって収納される。この場合、雨どいRに応じた型などを使って、雨どいRの形に予め切断された下層布2及び上層布4が収納される。
【0035】
この収納された下層布2及び上層布4の両端縁は、上記傾斜した屋根板Lまたは壁Wの端縁/末端/終端よりさらに奥の、屋根板Lまたは壁Wの裏面/下面に、接着されて固定される。この場合、下層布2及び上層布4と雨どいRとの隙間は、ぴったりと隙間が無くなるように調整されてもよい。しかし、場合によって隙間があってもよい。
【0036】
なお、図2では、屋根L及び壁Wの表面にも下層布2が、上記改修方法によって接着固定されている。この屋根L及び壁Wにつき、上層樹脂5が含浸された上層布4も積層されてもよいし、下地樹脂1及び表層樹脂6並びにその含浸・塗布は省略されてもよいし、下層樹脂3が含浸した下層布2が設けられてなくてもよい。この接着(一体化)は、下地樹脂1、下層樹脂3、上層樹脂5または表層樹脂6によって達成される。
【0037】
このような屋根L及び壁Wに接着固定された下層布2及び上層布4の端縁/末端/終端は折り曲げられて折り曲げ部8が形成され、さらに屋根L及び壁Wの下で蛇腹状に断面ジグザグ状にされて凹凸部7が形成されている。これにより、屋根L、壁W、雨どいRの膨張または収縮を吸収して、下層布2及び上層布4と屋根L、壁W、雨どいRとの間に隙間ができないようにできる。
【0038】
また、屋根L及び壁Wの端縁/末端/終端が折り曲げられているので、屋根L及び壁Wの端縁等において、屋根L及び壁Wと下層布2及び上層布4との間が剥がれて、隙間からゴミ、雨水等の異物が入らず、この剥がれによって、屋根L及び壁Wの端縁等から金属、重金属、塩化ビニルまたは石綿(アスベスト、スレート)が飛散するのが防止される。
【0039】
これら屋根L及び壁Wの端縁と雨どいRの両端縁との間は、もともと離間され隙間ができている。これは、屋根L、壁W、雨どいRが熱によって膨張/収縮するため、これら屋根L、壁W、雨どいRが変形しないようにするためである。上記凹凸部7によって、このような隙間から、屋根L、壁W、雨どいRの金属、重金属、塩化ビニルまたは石綿(アスベスト、スレート)が飛散するのが防止される。
【0040】
(4)下地樹脂1、下層樹脂3及び上層樹脂5の材質
上記下地樹脂1(プライマー)、下層樹脂3及び上層樹脂5(下地樹脂1も含む。以下同じ)の材質は、熱硬化性若しくは熱可塑性であり、または無発泡性または発泡性であり、防水性である。例えば、不飽和ポリエステル樹脂、飽和ポリエステル樹脂、スチレン系樹脂、非スチレンケイ樹脂、不飽和/飽和アクリル樹脂、アルキド樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、ポリウレタンなどのほか、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリプロピレン、メタクリル樹脂、ポリカーボネード、ポリアミド、ポリアセタール、フッ素樹脂、これらの混合物などであるが、ナイロン樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂が望ましく、不飽和ポリエステル樹脂がより望ましい。
【0041】
これらの下地樹脂1、下層樹脂3及び上層樹脂5は、常温で液体、ゾル状またはゲル状であり、下層布2及び上層布4に十分に含浸できるものが選ばれる。下層布2及び上層布4に対する上層樹脂5(または/及び下層樹脂3)の含浸量/塗布量は下層布2及び上層布4の体積の15%〜500%、望ましく25%〜250%、より望ましくは35%〜100%(同じ体積)、さらに望ましくは45%〜75%、またさらに望ましくは50%〜60%、例えば55%であり、下層布2及び上層布4の体積より少ないまたは越える量の下地樹脂1、上層樹脂5または/及び下層樹脂3が塗布されて含浸される。
【0042】
この含浸によって下層布2及び上層布4を内蔵した上層樹脂5(または/及び下層樹脂3、下地樹脂1)が強固になり雨どいRの強度を高めることができる。上層布4または/及び場合によって下層布2には後述する独立気泡14があるので、上層樹脂5(または/及び下層樹脂3、下地樹脂1)の含浸量/塗布量が少なくて済む。
【0043】
上層樹脂5(または/及び下層樹脂3、下地樹脂1)の含浸量/塗布量が下層布2及び上層布4の体積より少なくても、上層布4または/及び場合によって下層布2の独立気泡14によって、上層樹脂5(または/及び下層樹脂3、下地樹脂1)を下層布2及び上層布4の体積と同等または同等以上ぐらいに含浸させたのと同じ状態にすることができ、上層樹脂5(または/及び下層樹脂3、下地樹脂1)の塗布体積は下層布2及び上層布4の体積より少なくて済む。むろん、上層樹脂5(または/及び下層樹脂3、下地樹脂1)の塗布体積は下層布2及び上層布4の体積より多くてもよい。
【0044】
この下地樹脂1、下層樹脂3及び上層樹脂5の塗布及び含浸量は、密度(=比重)1.00〜1.20g/mlにおいて、下層布2及び上層布4の厚さ1mm(ミリメートル)当たり、及び1m2(平方メートル)当たり、0.3〜4.0kg(キログラム)、望ましくは1.0〜3.0kg、より望ましくは1.15〜2.3kg、さらに望ましくは1.5〜2.0kgである。この含浸によって下層布2及び上層布4を内蔵した上層樹脂5(または/及び下層樹脂3、下地樹脂1)が強固になり雨どいRの強度を高めることができる。
【0045】
下地樹脂1、下層樹脂3及び上層樹脂5は油性または水性であるが、油性の方が防水性がよい。また、たとえ、水性であっても、上記表層樹脂6が油性で有れば改修雨どいの防水性は達成される。この下地樹脂1、下層樹脂3及び上層樹脂5には場合によって硬化剤、着色料が添加される。
【0046】
下層樹脂3及び上層樹脂5の具体的製品としては、いずれもユピカ4300PT(ラース1000)、ユピカ8680APT(ラース2000)(日本ユピカ株式会社製品)がよく同じものがよい。しかし、同じものでなくても、上記粘度、密度、ゲルタイムなどの性質において、近似しているものでもよい。しかし、場合によって、下層樹脂3と上層樹脂5とは、全く性質が異なるものでもよい。下地樹脂1の具体的商品としては、ネオポール8355(日本ユピカ株式会社製品)がよい。下地樹脂1も下層樹脂3及び上層樹脂5に近似しているが、同じものでもよいし、全く性質が異なるものでもよい。
【0047】
また、下地樹脂1、下層樹脂3及び上層樹脂5の密度(=比重)は1.00〜1.20g/ml、望ましくは1.08〜1.14g/ml、より望ましくは1.10〜1.12であり、粘度は1.0〜9.0dPa・S、望ましくは1.5〜6.0dPa・S、より望ましくは2.0〜4.5dPa・Sであり、揺変度は1.0〜4.0、望ましくは1.5〜3.0であり、酸価は10〜25mgKOH/g、望ましくは12〜20mgKOH/gであり、固まるまでの時間であるゲルタイムは5〜75分、望ましくは9〜50分、より望ましくは15〜30分である。
【0048】
エアーガンを用いて塗布する場合の下地樹脂1、下層樹脂3及び上層樹脂5の粘度は6〜27ポイズ、望ましくは9〜18ポイズ、より望ましくは12〜15ポイズであり、揺変度は3.0〜9.0であり、望ましくは4.0〜7.5であり、より望ましくは4.5〜6.0であり、固まるまでの時間であるゲルタイムは7.5〜45分、望ましくは10〜30分、より望ましくは15〜25分である。
【0049】
刷毛塗りまたはローラ塗りによって塗布する場合の下地樹脂1、下層樹脂3及び上層樹脂5の粘度は12〜36ポイズ、望ましくは18〜27ポイズ、より望ましくは21〜24ポイズであり、揺変度は3.5〜7.5であり、望ましくは4.5〜6.5であり、より望ましくは5.0〜6.0であり、固まるまでの時間であるゲルタイムは7.5〜45分、望ましくは10〜30分、より望ましくは15〜25分である。
【0050】
下地樹脂1、下層樹脂3及び上層樹脂5の発泡性または無発泡性の樹脂組成液を、下層布2及び上層布4に塗布して含浸させるには、刷毛またはによる塗布、スプレーによる吹き付けのほか、通常公知のサチュレータ、コータなどの方法が適用される。下層樹脂3の塗布・含浸によって、雨どいR表面への下層布2及び上層布4の接着性/付着性/密封性を向上させ、雨どいRの封じ込め性を向上させることができる。
【0051】
上層樹脂5の塗布には上記ローラ塗りがよい。なぜなら、ローラが上層樹脂5の表面を転動するとき、上層樹脂5の粘着性によって、上層布4の表面の繊維をローラが引き上げて、毛羽立ちが行われ、上層布4の表面を滑りにくくできるからである。
【0052】
下地樹脂1、上層樹脂5または/及び下層樹脂3は同じ成分同じ材質であるので、下地樹脂1、上層樹脂5または/及び下層樹脂3の相互浸透性/相互親和性が向上し、下地樹脂1、上層樹脂5または/及び下層樹脂3の間に不整合面が生じず、下地樹脂1、上層樹脂5または/及び下層樹脂3の強度を向上させることができ、雨どいR表面への下層布2及び上層布4の接着性/付着性/密封性を向上させ、雨どいRの封じ込め性を向上させることができる。
【0053】
このような下地樹脂1、下層樹脂3及び上層樹脂5は、凹んだ雨どいRの内面の傾斜に対して流動しない密度または粘度に選択される。上記の密度または粘度であれば、この流動しない状況は達成される。
【0054】
また下層樹脂3及び上層樹脂5は、雨どいR内の傾斜面で流動する前に硬化する。または当該傾斜面部分で硬化までに流動による下層樹脂3及び上層樹脂5の減少が10%乃至30%以内で済む。例えば、傾斜角度が45度で当該流動は1〜10%、より望ましくは5%減で済み、傾斜角度が90度で当該流動は10〜30%、より望ましくは20%減で済む。この程度であれば、雨どいRの改修に影響が無い程度の流動で済む。上記ゲルタイムであれば、この硬化または少ない流動は達成される。
【0055】
このような下層樹脂3または上層樹脂5は、上記凹んだ雨どいRのうち傾斜の大きい部分には、上記エアーガン、刷毛、ローラなどで補充される。これにより、上記傾斜に沿った流動による下層樹脂3及び上層樹脂5の減少を補うことができる。
【0056】
以上のようにすれば、雨どいRの内面の傾斜が種々変化する場合でも、上層布4または下層布2に含浸され塗布される上層樹脂5または下層樹脂3の厚さを雨どいRの種々の傾斜にわたってほぼ均一にでき、改修された雨どいRの強度・密封性・封じ込め性を、傾斜が変化する雨どいR全体にわたってほぼ均一にできる。
【0057】
なお、上記雨どいRのうち、底面の水平な部分には、下層布2及び上層布4を敷設するが、90度の傾斜部分は、上層布4を省略または下層布2及び上層布4を省略してもよいし、45度の傾斜部分は、上層布4を省略または下層布2及び上層布4を省略してもよい。
【0058】
これにより、雨どいRの傾斜部分への下層樹脂3及び上層樹脂5の補充は不要となり、また下層樹脂3及び上層樹脂5の密度・粘度を低くでき、ゲルタイムも長くできる。
【0059】
(5)表層樹脂6の材質
上記表層樹脂6の材質は、熱硬化性若しくは熱可塑性であり、または無発泡性または発泡性であり、防水性である。例えば、不飽和ポリエステル樹脂、飽和ポリエステル樹脂、不飽和/飽和アクリル樹脂、アルキド樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、ポリウレタンなどのほか、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリプロピレン、メタクリル樹脂、ポリカーボネード、ポリアミド、ポリアセタール、フッ素樹脂、これらの混合物などであるが、ナイロン樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂が望ましく、不飽和ポリエステル樹脂がより望ましい。また、オルソ系、イソフタル酸系、ビスフェノール系いずれでもよい。
【0060】
これらの表層樹脂6は、常温で液体、ゾル状またはゲル状であり、油性または水性であるが、水性より油性の方が防水性に優れ、上記上層樹脂5(または/及び下層樹脂3)とは混合しない樹脂が選択される。表層樹脂6は、耐候性に優れ、長期にわたる直射日光、長期にわたる降雨/降雪/酸性雨、長期にわたる強風などに対する耐久性がよい。
【0061】
表層樹脂6は耐候性がよいため、変色/防水性の低下/変質といった劣化が生じにくく、クラック/傷/汚れといった破損が生じにくく、上記上層樹脂5及び/または下層樹脂3が含浸した下層布2及び上層布4を長期にわたって保護し、上層樹脂5及び/または下層樹脂3が含浸した下層布2及び上層布4が劣化したり破損したりするのを防ぐ。
【0062】
エアーガンを用いて塗布する場合の表層樹脂6の粘度は6〜27ポイズ、望ましくは9〜18ポイズ、より望ましくは12〜15ポイズであり、揺変度は3.0〜9.0であり、望ましくは4.0〜7.5であり、より望ましくは4.5〜6.0であり、固まるまでの時間であるゲルタイムは7.5〜45分、望ましくは10〜30分、より望ましくは15〜25分である。この表層樹脂6は場合によって塗布しなくてもよい。
【0063】
刷毛塗りまたはローラ塗りによって塗布する場合の表層樹脂6の粘度は12〜36ポイズ、望ましくは18〜27ポイズ、より望ましくは21〜24ポイズであり、揺変度は3.5〜7.5であり、望ましくは4.5〜6.5であり、より望ましくは5.0〜6.0であり、固まるまでの時間であるゲルタイムは7.5〜45分、望ましくは10〜30分、より望ましくは15〜25分である。この表層樹脂6は場合によって塗布しなくてもよい。
【0064】
下層布2及び上層布4に塗布/含浸させた上層樹脂5の表面に、表層樹脂6の発泡性または無発泡性の樹脂組成液を塗布及び含浸するには、刷毛またはローラによる塗布、スプレーによる吹き付けなどが行われる。この表層樹脂6には場合によって硬化剤、着色料が添加される。具体的製品としてはユピカUG−510シリーズ、ユピカ4183、600またはトップ800(日本ユピカ株式会社製品)、ゲルコート(公進ケミカル株式会社製品)がよく、厚さは例えば0.1mm〜3.0mmである。
【0065】
上記上層樹脂5、下層樹脂3及び/または表層樹脂6の材質は、燃えにくい難燃性または不燃性である。特に表層樹脂6をこれら難燃性などにすると、上層樹脂5及び下層樹脂3を火災、その他の劣化または破損から守ることができる。
【0066】
上記上層樹脂5及び下層樹脂3は例えば水性で、上記表層樹脂6は例えば油性でもよい。これにより、雨どいRの表面を水洗いしたのち、乾燥を待たずに、又は乾燥工程を省略して、直ちに上層樹脂5または下層樹脂3を塗布できる。なお、上層樹脂5及び下層樹脂3は油性で、上記表層樹脂6は水性でもよい。
【0067】
(6)上層布4の材質
上記上層布4は、織布または不織布の布またはマットであり、クッション性はない。この上層布4は、ポリエチレンテレフタレート製またはナイロン製などの合成樹脂製、玄武岩繊維、ガラス繊維、ホウ素繊維、炭化ケイ素繊維、アルミナ繊維、炭素繊維、アラミド繊維、鋼繊維などであり、上記不織布のフィラメント糸がポリエチレンテレフタレートまたはナイロンの合成樹脂で成形されたものである。
【0068】
発泡スポンジ状のものは、上層樹脂5及び下層樹脂3を含浸させても、強度が弱いため避けられるが、場合によって使用可能である。このような上層布4の中に上層樹脂5(または/及び下層樹脂3)が十分に入り込み、上層布4を内蔵した上層樹脂5(または/及び下層樹脂3)が強固になり雨どいRの強度を高めることができる。
【0069】
フィラメント糸から成形された不織布のフィラメント糸およびその交絡部が上記不織布の内部空隙15の一部を埋める熱可塑性樹脂または熱硬化性樹脂によって被覆され、上記内部空隙15の残りが上記上層樹脂5または/及び下層樹脂3の含浸を可能にする樹脂含浸許容空隙15を形成し、上記熱硬化性樹脂発泡体または上記熱可塑性樹脂発泡体の内包する気泡が熱可塑性樹脂皮膜または熱硬化性樹脂被膜で包まれた独立気泡であり、上記樹脂含浸許容隙が上層布4の体積全体の20〜40容量%を占め、かさ密度が0.03〜0.06g/cm3である。
【0070】
図3において、11は合成繊維のフィラメント糸、12は上記フィラメント糸11の交絡部、13は上記フィラメント糸1およびその交絡部12を被覆している熱可塑性樹脂発泡体または熱硬化性樹脂発泡体であり、該発泡体13内には熱可塑性樹脂皮膜または熱硬化性樹脂被膜で包まれた多数の独立気泡14を内包している。15は上記発泡体13の間に形成される空隙15であり、この空隙15内に二次加工時の熱硬化性樹脂溶液が含浸される。
【0071】
この発明の不織布を構成するフィラメント糸としては、通常の合成繊維、例えばポリエステル系、ポリアミド系、ポリアクリル系、ポリ塩化ビニル系、ポリオレフイン系などの熱可塑性合成樹脂から成形されたフィラメント糸、ポリフェノール系フィラメント糸、および金属、カーボン、チタン、ガラス、玄武岩などから成形された無機質フィラメント糸であるが、特に好ましいのはポリエチレンテレフタレートおよびナイロンから成型されたフィラメント糸である。上記フィラメント糸の単繊維の太さは0.5〜15デニール、好ましくは1〜5デニールである。
【0072】
不織布はフィラメント糸をランダムに配列、重ね合わせ、必要に応じてニードルパチング、樹脂加工されたスパンボンド織物といわれるものである。不織布の厚みおよび目付重量は特に限定されないが、この発明を好適に達成するには厚み1〜6mm、目付重量50〜170g/m2が好ましい。
【0073】
不織布のフィラメント糸に被覆される熱硬化性樹脂または熱可塑性樹脂としては、ポリ酢酸ビニル・エチレン共重合体、ポリ酢酸ビニル・エチレン・アクリル三元共重合体、ポリアクリル酸エステル、ポリウレタン、メトキシ化ポリアミド、ポリエポキシド、不飽和ポリエステルなど、およびこれら樹脂の混合物が例示されるが、特にポリ酢酸ビニル・エチレン共重合体およびボリ酢酸ビニル・エチレン・アクリル三元共重合体は、二次加工時の樹脂含浸剤溶媒に対する浸透性および得られた下層布2及び上層布4の柔軟性が良いので好ましいものである。
【0074】
上記ポリ酢酸ビニル・エチレン共重合体の共重合比は、酢酸ビニル/エチレン=60/40〜85/15(モル比)で、分子量が比較的低いものが好ましく、共重合体から成形された単独被膜の物埋的性質が引張強度10kg/cm3、伸度2200%、ガラス転移点が零下15℃程度のものが好適である。
【0075】
上記熱可塑性樹脂発泡体または熱硬化性樹脂発泡体中に内包されている独立気泡14は、後記する発泡性熱可塑性樹脂粒子の膨張により形成されるものであって、その平均直径は45〜135マイクロが好ましく、平均直径が45マイクロ未満であると上層布4の厚みが小さく、比重が大きくなり、かつ樹脂含浸許容隙率が低下し、軽量にして高剛性の強化プラスチックが得られず、これに反し平均直径が135マイクロを越えると独立気泡の破泡現象が生じ易く、圧縮弾性回復性が低下して好ましくない。
【0076】
上記の独立気泡14が増大して上層布4の比重が0.03未満になると後記する樹脂含浸許容空隙15が不足し、反対に独立気泡が減少して上層布4の比重が立0.06を超えると上記の樹脂含浸許容空隙15が過大になり、いずれもこの発明の目的に使用できない。
【0077】
このような独立気泡14の存在によって、上記上層樹脂5または下層樹脂3を節約できて、改修後の雨どいRの重量を軽くすることができる。しかもこのように軽くしても上層樹脂5または下層樹脂3は、上層布4または下層布2の隙間の後述する空隙15に浸透して、編目状になるので、強度はほとんど低下しない。
【0078】
上記熱可塑性樹脂発泡体または熱硬化性樹脂発泡体には無機質中空球体を混在させることができる。この無機質中空球体としては、シラスパルーン、ガラスパルーン、ムライトとガラスの複合物などが例示され、そのうちシラスパルーンは二次加工時の寸法安定牲、強化プラスチックのねじ切り適性が良いので特に好適である。上記無機質中空球体の平均粒径は60〜80マイクロ、粒径範囲は10〜200マイクロが好ましい。
【0079】
上層布4には、二次加工時に熱硬化性樹脂溶液または熱硬化性樹脂溶液が含浸される空隙15を有しており、この空隙15を樹脂含浸許容空隙と称す。この樹脂含浸許容空隙は、上記の熱硬化性樹脂発泡体の独立気泡14、もしくは独立気泡14が破泡して部分的に連通したものではなく、樹脂発泡体の間に三次元的に、かつ不織布表面に通ずるように形成された連通構造である。上層布4の全体積に対する樹脂含浸許容空隙の体積の百分比が樹脂含浸許容空隙率(以下空隙率と略称する)であり、下記の方法で測定算出される。
【0080】
幅0.7cm、長さ40cmの試料を、基準線(40cc)まで水を入れたビユーレツトに、試料が水中に没するまで浸漬したときの基準線からの水面の増加量(ncc)を読み取り、10秒間放置して試料内に水が含浸された状態で試料を取り出したときの基準線からの水面の減少量(mcc)を読み取り、次式空隙率(%)={m/(m+n)}×100にて算出される。
【0081】
上層布4の空隙率は20〜40%であり、空隙率が20%未満であると、上層布4の風合いが硬くなり二次加工樹脂含浸量が低くなりすぎて、硬質発泡ポリウレタン、硬質ポリ塩化ビニル板などの非含浸タイプの挙動に近似し、強化ブラスチツクの曲げ弾性、曲げ強度、耐衝撃強度が低下して好ましくない。また空隙率が40%を越えると、上層布4の圧縮弾性回復性が低下し、保管中に体積を減少し、また二次加工時の樹脂含浸量が多くなって重くなり不経済となる。
【0082】
上記上層布4の空隙15としては、パンチ加工によって、所定の大きさの穴を所定の面積比率で形成してもよい。例えば、直径0.5〜2mmほどの穴を0.25〜4cm2あたり1個ずつ、望ましくは直径0.75〜1.5mmほどの穴を0.5〜2cm2あたり1個ずつ、より望ましくは直径1mmほどの穴を1cm2あたり1個ずつ形成してもよい。このような穴によって、上記下層樹脂3または/及び上層樹脂5が非常に浸透し易くなる。
【0083】
この上層布4の製造法は以下の通りである。上記不織布に、上記熱硬化性街脂を含有した発泡性樹脂組成液を含浸した後、乾操して発泡と樹脂の架橋硬化とを同時に行なう。発泡性樹脂組成液は、上記の熱硬化性樹脂発泡性熱可塑性樹脂粒子、熱硬化性樹脂発泡性熱可塑性樹脂粒子、熱可塑性樹脂発泡性熱硬化性樹脂粒子または熱硬化性樹脂発泡性熱硬化性樹脂粒子、増粘剤およびPH調節剤(例えばアンモニア水)からなるエマルジョンである。
【0084】
上記発泡性熱可塑性樹脂粒子等は、たとえばポリ塩化ビニリデン・アリロニトリル共重合体などの外皮物質にブタン、インプタンなどのガスを内包した粒状物質(例えば、松本油脂製薬株式会社製、商品名「ミクロパール」)であり、その他通常使用されている公知の発泡性粒状物質である。発泡性熱可塑性樹脂粒子の配合量は、例えばポリ酢酸ビニル・エチレン共重合体25〜35重量部に対して75〜65重量部が好ましい。
【0085】
上記発泡性熱可塑性樹脂粒子等の配合量が75重量部を越えると樹脂の脱落が起こり、成型作業適性が悪くなり、また65重量部末満では空隙率が低下して好ましくない。なお発泡性樹脂組成液に前記の無機質中粒体を配合する場合は、その配合量は、ポリ酢酸ビニル・エチレン共重合体と発泡性熱可塑性樹脂粒子等との混合物100重量部に対して2〜15重量部が適当である。上記増粘剤はアクリル系その他公知のものが適当量配合される。
【0086】
上記上層樹脂5または下層樹脂3の発泡性または無発泡性の樹脂組成液を下層布2及び上層布4に塗布して含浸させるには、刷毛またはローラによる塗布、スプレーによる吹き付けのほか、通常公知のサチュレータ、コータなどの方法が適用される。
【0087】
上記組成液の含浸量は、下層布2及び上層布4の100重量部に対して50〜110重量部が適当であり、50重量部未満であると目的とする厚みを維持することができず、かつ所定の空隙率の下層布2及び上層布4が得られず、また110重量部を越えると下層布2及び上層布4の風合いが硬くなり、二次加工時の熱硬化性樹脂液の含浸量が低下し、剛性が低下し、さらに経済的ではない。この空隙15または穿孔された穴に上層樹脂5が十分に入り込み、下層布2及び上層布4を内蔵した上層樹脂5が強固になり雨どいRの強度を高めることができる。
【0088】
含浸量の調節は、発泡化性または無発泡性の樹脂組成液の樹脂濃度、粘度、ドグタリアランス、ロールコータ回転比、マングル絞り率などで行なわれる。所定の含浸量の下層布2及び上層布4を加熱するには、通常の大型送風機、温風送風機、蒸気乾燥機、赤外線ヒーター、その他公知の乾燥機を使用することができる。
【0089】
上記の構造を有する下層布2及び上層布4は、通常その厚みが0.1〜20mm、望ましくは0.2〜10mm、より望ましくは0.5〜5mm、さらに望ましくは1〜3mm、目付重量が5〜900g/m2、望ましくは10〜450g/m2、より望ましくは25〜270g/m2、さらに望ましくは50〜170g/m2であるが、上記の範囲のものに限定されるものではない。この下層布2及び上層布4には、パンチ加工などによって穿孔加工を施してもよい。
【0090】
この発明の下層布2及び上層布4は、軽量にして圧縮弾性回復性が良好であり、従来の二次加工法、例えばハンドレイアツプ法、スプレイアツプ法、インジエクシヨンモ一ルデイング法、インジエクシヨンバキユームモールデイング法、引抜成型法が容易に適用できる。
【0091】
上記上層布4は、織布でもよく、織り方は平織り、綾織り、シュス織り、どのような織り方でもよい。しかし、上記上層樹脂5が含浸し易い材質でなくてはならない。十分に含浸しないと、上層樹脂5が含浸した上層布4に十分に強度が発揮されないからである。
【0092】
上層布4の具体的製品としてはユピカマットの1000〜5000、Tシリーズ、MCタイプ(日本ユピカ株式会社製品)がよく、厚さは例えば0.1mm〜10.00mmである。
【0093】
この上層布4が不織布であれば、この不織布の裏面側を上面にしたほうがよい。なぜなら、不織布は表面より裏面の方が毛羽立って、滑りにくいからである。むろん、不織布の表面を上面にしてもよく、表面でも毛羽立っている。
【0094】
(7)下層布2の材質
上記下層布2の材質は他に、合成樹脂製、アラミド繊維、炭素繊維、玄武岩繊維またはガラス繊維であり、クッション性はない。不織布または織布いずれでもよく、織り方は平織り、綾織り、シュス織り、どのような織り方でもよい。この下層布2としてはガラス繊維の布(ガラスマット)が望ましく、厚さは0.1mm〜20.00mmほどである。
【0095】
この下層樹脂3が含浸した下層布2に上から圧力がかかると、この下層布2に引っ張り応力が働くが、下層樹脂3が含浸した下層布2は引っ張り応力に強いため、改修雨どいの強度が向上する。この引っ張り応力に強い素材としては、玄武岩繊維またはガラス繊維が適しており、織り方は平織りが適している。
【0096】
この下層布2は、下層樹脂3が含浸する空隙15または穿孔された穴を有しており、この空隙15または穴は当該布の体積の20〜40%を占めている。厚みは0.25〜20mm、望ましくは0.5〜10mm、より望ましくは0.75〜6mm、さらに望ましくは1〜3mm、目付重量が10〜900g/m2、望ましくは20〜450g/m2、より望ましくは30〜270g/m2、さらに望ましくは40〜170g/m2である。他の構造は上記下層布2及び上層布4と同じである。
【0097】
この下層布2の引っ張り強さは、平織りのアラミド繊維及び炭素繊維で1500〜1700N(ニュートン)、平織りの玄武岩繊維で1400〜1540N(ニュートン)、平織りのガラス繊維で730〜1300N(ニュートン)であり、このときの伸び率はアラミド繊維及び炭素繊維で2.7〜3.0%、玄武岩繊維で2.2〜2.3%、ガラス繊維で1.3〜1.8%である。
【0098】
下層樹脂3が含浸して下層樹脂3が乾燥硬化した下層布2は、雨どいRの強度を向上させ、しかも上記雨どいR内面の全面に隙間なく接着されて、雨どいRの表面が封じ込められる。上記下層布2の具体的商品としては、ガラスクロス#450(ガラスマット)がよい。厚さは例えば、0.1mm〜20.00mmである。この下層布2は、上記上層布4と同じものであってもよい。
【0099】
(8)下層布2と上層布4と下層樹脂3と上層樹脂5の相関関係
下層樹脂3が含浸した下層布2を上記雨どいR内面に隙間なく接着させて封じ込めるには、下層樹脂3の密度・粘度・ゲルタイムは上述のようにしなくはならず、これにより、下層樹脂3が含浸した下層布2の表面は比較的摩擦が少なくなる。これだと、改修後の雨どい・屋根の上滑りやすくなる。
【0100】
摩擦を大きくするように、下層樹脂3の密度・粘度・ゲルタイムを変えると、雨どいRの内面への接着力・封じ込め力が低下してしまう。このため、上層樹脂5が含浸した上層布4の表面は、摩擦の大きい状態にしなくてはならない。
【0101】
このため、上記下層布2とは異なる上述の上層布4が選定されることが望ましい。上述の独立気泡14を有する合成繊維のフィラメント糸11からなる布を下層布2に用いると、下層樹脂3が含浸した下層布2の表面は毛羽立ちが多くみられ、摩擦が大きくなる。
【0102】
また、上層布4に含浸する上層樹脂5の密度・粘度・ゲルタイムを変えて、上層樹脂5の密度・粘度・ゲルタイムを下層樹脂3の密度・粘度・ゲルタイムより大きくすると、下層樹脂3が含浸した下層布2の表面には細かい凹凸が形成され、摩擦が大きくなる。
【0103】
または下層樹脂3が含浸した下層布2の表面は毛羽立ちが多くみられ、摩擦が大きくなる。この上層樹脂5が乾燥されると、上層樹脂5の表面は摩擦の大きい状態のままで固定される。これにより、改修後の雨どいの表面が滑りにくくなる。
【0104】
また、上記上層樹脂5が乾燥すると、上記上層布4が硬化され強度が向上され、しかも上層樹脂が含浸した上層布4が上記下層布2に一体化されて、さらに強度が向上する。
【0105】
上記下層布2は、雨どいRの内面の中の水平底面R1、斜め傾斜面R2及び垂直傾斜面R3の全てに敷設され、上層布4も水平底面R1、斜め傾斜面R2及び垂直傾斜面R3の全てに敷設される。
【0106】
しかし、上層布4は垂直傾斜面R3に敷設されなくてもよいし、斜め傾斜面R2及び垂直傾斜面R3に敷設されなくてもよい。このように、上層布4が凹んだ雨どいRのうち傾斜の大きい部分には接着されないことも可能であり、これでも、改修された雨どいR内面が滑りにくくなる。
【0107】
このように、上記下層布2は、下層樹脂3が含浸されることによって強い強度が達成され雨どいRへの密着性が高くなる。一方、上記上層布4は、上層樹脂5が含浸されることによって表面の摩擦が大きくなる。下層布2と上層布4とでは、互いに性質が異なる。それにもかかわらず、上層樹脂5と下層樹脂3とが上述のように近似または同じであれば、上層樹脂5と下層樹脂3との親和性が向上し、相互浸透が促進され、上層布4と下層布2との密着性・密封性・接着性が向上し、改修された雨どいRの強度及び封じ込め性が向上する。
【0108】
(9)第二実施形態
図4は第二実施形態(第二実施例)を示す。改修構造体10は、上述の下地樹脂1、下層樹脂3を含浸した下層布2、上層樹脂5を含浸した上層布4、表層樹脂6が一体不可分に積層された積層体である。
【0109】
上記壁Wの下の雨どいRの斜め傾斜面R2は省略され、水平底面R1は直接垂直傾斜面R3に繋がっている。壁Wの下縁は雨どいR側に突出して、窓枠水切りWdが形成されている。この窓枠水切りWdは、断面「L字状」になっていて、雨水・ゴミ等の侵入を防いでいる。
【0110】
上記垂直傾斜面R3の上端内面には断面「L字状」の長尺状の水切り板(金属系)Wcが固定されており、やはり雨水・ゴミ等の侵入を防いでいる。上記改修構造体10の端縁つまり上縁は、この水切り板(金属系)Wcの下縁に接合または接着されている。
【0111】
この接着または接合は、下地樹脂1、下層樹脂3、上層樹脂5または表層樹脂6によって達成される。これにより、雨どいRの内面が完全に密封され封じ込められる。上記水切り板(金属系)Wcと窓枠水切りWdとの間は隙間があり離間されている。これにより、壁W、雨どいRが熱膨張・熱収縮で変化しても変形しない。
【0112】
上記屋根Lの下には、防水シートのルーフィングLaが積層され、さらにその下には木毛板Lbがさらに積層され、防水及び防塵がされている。この木毛板Lbの先端下面には、断面「ほぼL字状」の長尺状の水切り板(金属系)Lcが固定されており、雨水・ゴミ等の侵入を防いでいる。
【0113】
上記改修構造体10のもう一つの端縁つまり上縁は、この水切り板(金属系)Lcと隙間を保っている。これにより、屋根L、雨どいRが熱膨張・熱収縮で変化しても変形しない。
【0114】
また、改修構造体10の両側の端縁の内、片方は水切り板(金属系)Wcに接合・接着されているが、片方は水切り板(金属系)Lcに接合・接着されていない。このように、上記下層樹脂及び上層樹脂が含浸された下層布及び上層布の雨どいに沿った長手方向の両側の端縁の一方は雨どいに連結され、他方は雨どいの上の屋根または壁に連結されている。
【0115】
これにより、熱膨張・熱収縮において雨どいRと改修構造体10との膨張率が異なっても、この差を吸収して、雨どいRと改修構造体10との変形が防止される。なお、改修構造体10の両側の端縁の内、片方は水切り板(金属系)Wcに接合・接着されず、片方は水切り板(金属系)Lcに接合・接着されていてもよい。
【0116】
上述の各実施形態(実施例)において、当該実施形態(実施例)で記載されていないことは、他の実施形態(実施例)の記載されている内容が参照及び引用される。本願明細書及び特許請求の範囲においては、上記複数の実施形態(実施例)にわたって、各部または一部を入れ替えた実施形態(実施例)も、上記各実施形態(実施例)として記載されているものである。
【0117】
(10)本発明の改修雨どいの試験結果
本発明の雨どいの改修方法及び改修構造によって、改修された雨どいの強度は以下の様に強化された。この強度向上試験では、金属・スレートの雨どい材を用い、既設の雨どい材を幅方向に横断する方向にわたって圧力を加えて破壊までの加圧力を計測した。
【0118】
改修前のスレート雨どい材の破壊強度は4.6KN(キロニュートン)、469.3kgfであったものが、本発明の改修を施すことによって、8.6KN(キロニュートン)、877.5kgf(キログラムフォース)と、2倍近い強度向上を達成でき、上層布5を省略しても、7.8KN(キロニュートン)、795.9kgf(キログラムフォース)と、かなり高い強度向上を達成できた。
【0119】
また、上層樹脂5及び/または下層樹脂3が含浸した下層布2及び上層布4の、平坦な面に対する接着強度は、試験により以下の試験データが得られた。平面スレート雨どい材に対して、上層樹脂5及び/または下層樹脂3が含浸した下層布2及び上層布4を、本発明の既設雨どいの改修方法によって改修を行い、これを引き剥がすには、15.3kgf/cm2の力が必要であった。
【0120】
これは上層樹脂5及び/または下層樹脂3が含浸した下層布2及び上層布4がスレート雨どい面から剥がれたのではく、上層樹脂5及び/または下層樹脂3が含浸した下層布2及び上層布4にスレート雨どいが接着したままスレート雨どい材を破壊してまで、剥離が行われたのである。すなわち、上層樹脂5及び/または下層樹脂3が含浸した下層布2及び上層布4のスレート雨どい材に対する接着強度は、スレート雨どい材そのものの強度を大きく超えるほどのものであった。
【0121】
また、平面コンクリート材に対して、上層樹脂5及び/または下層樹脂3が含浸した下層布2及び上層布4を、本発明の雨どいの改修方法によって改修を行い、これを引き剥がすには、32.0kgf/cm2の力が必要であった。
【0122】
これも上層樹脂5及び/または下層樹脂3が含浸した下層布2及び上層布4がコンクリート平面から剥がれたのではなく、上層樹脂5及び/または下層樹脂3が含浸した下層布2及び上層布4にコンクリート平面が接着したままコンクリート材を破壊してまで、剥離が行われたのである。すなわち、上層樹脂5及び/または下層樹脂3が含浸した下層布2及び上層布4のコンクリート平面に対する接着強度は、コンクリート材そのものの強度を大きく超えるほどのものであった。
【0123】
以上のことから、本発明の雨どいの改修方法及び改修構造により、以下の顕著な効果を達成できる。下層布2及び上層布4の厚さが薄く、含浸させる上層樹脂5及び/または下層樹脂3の比重も水に近くて軽いため、さらには樹脂3、5だけでなく、この樹脂の中に軽い繊維製の下層布2及び上層布4を内蔵させているので、改修構造全体の重量は1.0〜1.6kg/m2、平均で1.3kg/m2という軽さであって、雨どいへの荷重負担が小さい。
【0124】
また、上層樹脂5及び/または下層樹脂3は早く硬化するので、改修工事を短期間で行うことができる。上述のように雨どいの強度向上及び雨どいへの接着強度が大きいため、耐久性にすぐれ、20年以上、場合によって25〜30年以上の耐久性が得られ、改修の回数が少なくて済む。
【0125】
さらに、上層樹脂5及び/または下層樹脂3または表層樹脂6は、スレート雨どいなどの雨どいそのものの表面より滑りにくいため、工事中または点検中でも滑りにくく、作業中の滑り落ち防止の効果が高い。また、上層樹脂5及び/または下層樹脂3または表層樹脂6は、防水性であることと上記強度向上及び高い接着強度のため、水が浸入しにくく、雨漏りの改善にも効果が大きく、改修後も雨漏りが非常に発生しにくい。
【0126】
さらに、本発明の雨どいRの改修構造は、下層布2及び上層布4の下面と上面とに上層樹脂5及び/または下層樹脂3、下地樹脂1または表層樹脂6という同じ樹脂素材が形成されている。
【0127】
したがって、本発明の雨どいRの改修方法によって改修した後、何年か経過後、この改修雨どいRの上にさらに同じ方法で雨どいRを改修する場合にも、樹脂同志が混合接合され、接合面における親和性がよく、やはり強固に改修雨どいRを上乗せすることができる。この場合、改修雨どいRを上乗せする前に、改修雨どいRの表面を清掃/洗浄するだけでよい。
【0128】
(11)その他の実施の形態
本発明は、上記実施例に限定されず、種々変更可能である。例えば、雨どいRは、屋根Lと壁Wとの間に設けられるほか、屋根Lまたは壁Wの端縁に設けられても良い。雨どいRは直線状のほか湾曲していてもよいし、水平方向のほか、傾斜方向、垂直方向に延びていてもよいし、らせん状、ジグザグ状でもよいし、単数のほか複数でもよい。
【0129】
上記屋根Lの下縁または/及び上記壁Wの下縁は、雨どいRの長手方向に沿った端縁から、雨どいRの内側にややはみだしていなくてもよく、雨どいRの長手方向に沿った端縁の真上に屋根Lの下縁または/及び上記壁Wの下縁が位置しても良い。
【0130】
本発明の雨どいの改修方法は、工場の雨どいRのほか、アーケード、競技施設、スポーツ施設、ホール、公共施設といった建築物/施設の雨どいRにも適用可能であるし、雨どい以外に屋根L、壁Wにも施すことが可能であり、アーケードの屋根・壁、ビルディングの屋上の床面、ドーム型屋根・壁・雨どい、プレハブ工法による住宅の屋根・壁・雨どい、木造家屋の屋根・壁・雨どい、鉄筋コンクリート建造物の屋根・壁・雨どい/屋上床面などといった建築物/施設の屋根・壁・雨どいのほか、建築物/施設の屋上床面、建築物/施設の天井/床の上面/下面/傾斜面、建築物/施設の垂直面/傾斜面の壁面、水平/垂直/傾斜の地中埋設/地上の土管/管/電柱/鉄柱/柱/塔/門/橋/道路/トンネルといった構造物の外表面/内表面などにも適用可能である。
【0131】
上記下層布2及び上層布4は予め二層に織られまたは積層されていてもよい。この場合でも、この積層布に下層樹脂3または上層樹脂5を含浸させて、雨どいRを封じ込めて雨どいRの強度を向上させ、上層布4の表面を摩擦の大きい状態にできる。これにより、雨どいRの改修工程を短くできる。
【0132】
上記上層樹脂5が含浸された上層布4の表面には、下面がざらざらの粗面のシートが貼られ、上層樹脂5が乾燥した後、このシートが剥がされ、上層布4の表面が摩擦の大きい状態にされてもよい。
【0133】
壁Wなどの垂直面に下地樹脂1、下層樹脂3、上層樹脂5または表層樹脂6を塗布するときは、上から下に掛けて塗布していけばよく、下層布2及び上層布4を敷くとき下層布2及び上層布4を壁面に仮留めまたはピン留めすればよい。また水平面の下面に下地樹脂1、下層樹脂3、上層樹脂5または表層樹脂4を塗布するときは、スプレーガンなどで吹き付け、下層布2及び上層布4を敷くとき、薄い下層布2及び上層布4を選択し、下層樹脂3の接着性によって、下層布2及び上層布4を下面に付着させることができる。
【0134】
上記下層布2、上層布4の一部または全部は省略可能である。下地樹脂1、下層樹脂3、上層樹脂5、表層樹脂6の一部または全部は省略可能である。凹凸部7、折り曲げ部8の一部または全部は省略可能である。上記下層布2、上層布4は穴のあいた網でもよいし、帯状または糸状の繊維が絡み合ったものでもよい。
【0135】
下地樹脂1、下層樹脂3、上層樹脂5、表層樹脂6の中の二つ以上の含浸・塗布は、個別に行われず、まとめて実行されてもよい。折り曲げ部8、凹凸部7は省略されてもよい。雨どいR内面から壁W外面及び屋根L上面にわたって、下層樹脂3が含浸された下層布2が連続して敷き詰められていたが、連続せず分割され、凹凸部7で各分割された下層布2が接着剤などで接合されても良い。
【0136】
(12)他の発明の効果
[1]水平面に対して凹んだ既設の雨どいの上に繊維製の下層布を敷くとともに、 この敷かれる下層布に、防水性で液体の下層樹脂を含浸させ、 この下層布に当該下層樹脂を当該下層布の下面の上記雨どいの表面に達するまで含浸させ、かつ、 上記下層布の上に繊維製の上層布を積層するとともに、 この積層された上層布に、防水性で液体の上層樹脂を含浸させ、 この上層布に当該上層樹脂を当該上層布の下面の上記下層布の表面に達するまで含浸させ、 上記下層樹脂を乾燥させ、上記下層布を硬化させて上記雨どいの強度が向上されるとともに、下層樹脂が含浸した下層布を上記雨どい内面に隙間なく接着させて雨どい表面を封じ込め、 さらに、上記上層樹脂の含浸によって上層布の表面を摩擦の大きい状態にさせ、この上層樹脂を乾燥させて、この摩擦の大きい状態を固定化し、しかも上記上層布を硬化させ強度が向上されるとともに、上層樹脂が含浸した上層布を上記下層布に一体化させることを特徴とする既設雨どいの改修方法。これにより、雨どいの防水性及び強度を向上させることができ、建築廃材も出ず、既設の雨どいを除去しないから、雨どい改修中も当該建造物を使用することができる。
【0137】
[2]上記上層樹脂または下層樹脂は、凹んだ雨どいの傾斜に対して流動する前に硬化する、または当該傾斜部分で硬化までに流動による上層樹脂または下層樹脂の減少が10%乃至30%以内で済む、または上記凹んだ雨どいのうち傾斜の大きい部分には上層樹脂または下層樹脂が補充されることを特徴とする請求項2記載の既設雨どいの改修方法。これにより、雨どいの内面の傾斜が種々変化する場合でも、上層樹脂または下層樹脂をほぼ均一に塗布できて、改修された雨どいの強度・密封性・封じ込め性を、傾斜が変化する雨どい全体にわたってほぼ均一にできる。
【0138】
[3]上記下層布は、下層樹脂が含浸されることによって強い強度が達成され雨どいへの密着性が高くなるものであり、 上記上層布は、上層樹脂が含浸されることによって表面の摩擦が大きくなるものであり、 上層樹脂及び下層樹脂は近似したものまたは同じものであることを特徴とする請求項2記載の既設雨どいの改修方法。これにより、下層布2と上層布4とでは、互いに性質が異なるにもかかわらず、上層樹脂と下層樹脂との親和性が向上し、相互浸透が促進され、上層布と下層布との密着性・密封性・接着性が向上し、改修された雨どいの強度及び封じ込め性が向上する。
【0139】
[4]上記雨どいの長手方向に沿った両側には屋根または壁の端縁がはみ出していることを特徴とする請求項3記載の既設雨どいの改修方法。このような構造の雨どいは雨どい自体の交換が非常に難しいが、雨どいを交換しないで、雨どいの防水性及び強度を向上させることができ、建築廃材も出ず、既設の雨どいを除去しないから、雨どい改修中も当該建造物を使用することができる。
【0140】
[5]上記上層布は凹んだ雨どいのうち傾斜の大きい部分には接着されないことを特徴とする請求項4記載の既設雨どいの改修方法。これにより、人や物が乗る可能性の低い傾斜の大きい個所の摩擦を大きくする必要がなくなり、上層布を節約できる。
【0141】
[6]上記下層布または上層布の繊維は平均直径45〜135マイクロメートルの多数の独立気泡を有していて、布の比重が0.03乃至0.06であることを特徴とする請求項4または5記載の既設雨どいの改修方法。この上層樹脂又は下層樹脂の含浸によって、上層布または下層布を内蔵した上層樹脂または下層樹脂が強固になり雨どいの強度を高めることができる。また、下層布または上層布に独立気泡があると、上層樹脂または下層樹脂の含浸量が少なくて済み、上層樹脂または下層樹脂の塗布体積は布の体積より少なくて済み、上層樹脂または下層樹脂が含浸した上層布または下層布の重量を軽くでき、しかも軽くしても上層樹脂または下層樹脂は編目状になっていて強度はほとんど低下しない。
【0142】
[7]上記下層布が敷かれる前に、上記清掃された雨どいの表面に防水性の下地樹脂を塗布し、 この下地樹脂が乾燥する前に、この塗布された下地樹脂の上に上記下層布が敷かれることを特徴とする請求項6記載の既設雨どいの改修方法。この下地樹脂によって、雨どいR表面への下層布の付着性/密封性を向上させ、改修された雨どいの強度及び封じ込め性を向上させることができる。
【0143】
[8]上記上層樹脂が含浸された上層布の表面に、当該上層樹脂と混合しない耐候性の表層樹脂が塗布され、これにより上層樹脂及び/または下層樹脂が含浸した上層布及び/または下層布を保護して劣化または破損するのを防ぐことを特徴とする請求項7記載の既設雨どいの改修方法。この表層樹脂によって、下層樹脂、布及び上層樹脂を保護して、劣化を防ぐことができる。
【0144】
[9]上記下層樹脂及び上層樹脂が含浸された下層布及び上層布の雨どいに沿った長手方向の両側の端縁の一方は雨どいに連結され、他方は雨どいの上の屋根または壁に連結されていることを特徴とする請求項8記載の既設雨どいの改修方法。これにより、熱膨張・熱収縮において雨どいと下層樹脂及び上層樹脂が含浸された下層布及び上層布との膨張率が異なっても、この差を吸収して、雨どいと下層布及び上層布との変形が防止される。
【0145】
[10]上記請求項1、請求項2、請求項3、請求項4、請求項5、請求項6、請求項7、請求項8または請求項9の既設雨どいの改修方法によって改修された雨どいの改修構造。これにより、雨どいの防水性及び強度を向上させることができ、建築廃材も出ず、既設の雨どいを除去しないから、雨どい改修中も当該建造物を使用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0146】
樹脂を含浸させた布で雨どいを改修し、雨どいの取り換えを不要にし、しかも改修された雨どいの内面の摩擦を大きくして滑りにくくする。雨どいRの内面を清掃して下地樹脂1を塗布し、下層布2に防水性で液体の下層樹脂3を含浸させて敷き、上層布4に防水性で液体の上層樹脂5を含浸させて下層布2の上に敷き、この上層布4の表面に表層樹脂6を塗布する。
【0147】
下層布2は、下層樹脂3が含浸されることによって強い強度が達成され雨どいRへの密着性が高くなる。上層布4は、上層樹脂5が含浸されることによって表面の摩擦が大きくなる。下層布2と上層布4とでは、互いに性質が異なるにもかかわらず、上層樹脂5と下層樹脂3とが近似または同じであれば、上層布4と下層布2との密着性が向上し、改修された雨どいRの強度及び封じ込め性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0148】
【図1】雨どいR、屋根L、壁Wを示す。
【図2】雨どいRの改修方法及び改修構造を示す。
【図3】上層布4(または下層布2)の拡大断面構造を示す。
【図4】第二実施形態(第二実施例)を示す。
【符号の説明】
【0149】
1…下地樹脂、 2…下層布、
3…下層樹脂、 4…上層布、
5…上層樹脂、 6…表層樹脂、
7…凹凸部、 8…折り曲げ部、
10…改修構造体、 12…交絡部、
11…合成繊維のフィラメント糸、
14…独立気泡、 15…空隙、
13…熱可塑性樹脂発泡体または熱硬化性樹脂発泡体、
R…雨どい、R1…水平底面、
R2…斜め傾斜面、R3…垂直傾斜面、
L…屋根、La…ルーフィング(防水シート)、
Lb…木毛板、Lc…水切り板(金属系)、
W…壁、Wc…水切り板(金属系)、Wd…窓枠水切り。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水平面に対して凹んだ既設の雨どいの上に繊維製の下層布を敷くとともに、 この敷かれる下層布に、防水性で液体の下層樹脂を含浸させ、 この下層布に当該下層樹脂を当該下層布の下面の上記雨どいの表面に達するまで含浸させ、かつ、
上記下層布の上に繊維製の上層布を積層するとともに、 この積層された上層布に、防水性で液体の上層樹脂を含浸させ、 この上層布に当該上層樹脂を当該上層布の下面の上記下層布の表面に達するまで含浸させ、
上記下層樹脂を乾燥させ、上記下層布を硬化させて上記雨どいの強度が向上されるとともに、下層樹脂が含浸した下層布を上記雨どい内面に隙間なく接着させて雨どい表面を封じ込め、 さらに、上記上層樹脂の含浸によって上層布の表面を摩擦の大きい状態にさせ、この上層樹脂を乾燥させて、この摩擦の大きい状態を固定化し、しかも上記上層布を硬化させ強度が向上されるとともに、上層樹脂が含浸した上層布を上記下層布に一体化させることを特徴とする既設雨どいの改修方法。
【請求項2】
上記上層樹脂または下層樹脂は、凹んだ雨どいの傾斜に対して流動する前に硬化する、または当該傾斜部分で硬化までに流動による上層樹脂または下層樹脂の減少が10%乃至30%以内で済む、または上記凹んだ雨どいのうち傾斜の大きい部分には上層樹脂または下層樹脂が補充されることを特徴とする請求項1記載の既設雨どいの改修方法。
【請求項3】
上記下層布は、下層樹脂が含浸されることによって強い強度が達成され雨どいへの密着性が高くなるものであり、
上記上層布は、上層樹脂が含浸されることによって表面の摩擦が大きくなるものであり、
上層樹脂及び下層樹脂は近似したものまたは同じものであることを特徴とする請求項2記載の既設雨どいの改修方法。
【請求項4】
上記雨どいの長手方向に沿った両側には屋根または壁の端縁がはみ出していることを特徴とする請求項3記載の既設雨どいの改修方法。
【請求項5】
上記上層布は凹んだ雨どいのうち傾斜の大きい部分には接着されないことを特徴とする請求項4記載の既設雨どいの改修方法。
【請求項6】
上記下層布または上層布の繊維は平均直径45〜135マイクロメートルの多数の独立気泡を有していて、布の比重が0.03乃至0.06であることを特徴とする請求項4または5記載の既設雨どいの改修方法。
【請求項7】
上記下層布が敷かれる前に、上記清掃された雨どいの表面に防水性の下地樹脂を塗布し、 この下地樹脂が乾燥する前に、この塗布された下地樹脂の上に上記下層布が敷かれることを特徴とする請求項6記載の既設雨どいの改修方法。
【請求項8】
上記上層樹脂が含浸された上層布の表面に、当該上層樹脂と混合しない耐候性の表層樹脂が塗布され、これにより上層樹脂及び/または下層樹脂が含浸した上層布及び/または下層布を保護して劣化または破損するのを防ぐことを特徴とする請求項7記載の既設雨どいの改修方法。
【請求項9】
上記下層樹脂及び上層樹脂が含浸された下層布及び上層布の雨どいに沿った長手方向の両側の端縁の一方は雨どいに連結され、他方は雨どいの上の屋根または壁に連結されていることを特徴とする請求項8記載の既設雨どいの改修方法。
【請求項10】
上記請求項1、請求項2、請求項3、請求項4、請求項5、請求項6、請求項7、請求項8または請求項9の既設雨どいの改修方法によって改修された雨どいの改修構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−226092(P2011−226092A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−94893(P2010−94893)
【出願日】平成22年4月16日(2010.4.16)
【出願人】(398016212)オオブユニティ株式会社 (3)