説明

日中と夜間の可視性条件下で視認可能な発光性エンブレム

【課題】自動車部門において種々の情報部品(例えば、商業用のマーク、モデル、ロゴ及びその他の識別標識であって、容易に視認されて人目を引く種々の仕上げ剤中に表示される標識)を照明する特殊な用途を有する、日中又は夜間の可視性条件下で視認可能な発光性エンブレムを提供する。
【解決手段】該エンブレムは透明プラスチック材料製支持構造体5を具備し、該支持構造体の前方面上又は後方面上には起伏状表面又は不均一な表面が存在し、該表面上には、主として物理的手段(PVD)による金属化法によって種々の表面仕上げ剤又は着色剤がナノメーターオーダーの微細層4として沈着され、該微細層は、日光が入射するときには金属性仕上げ剤を提示し、天然光が存在しないときには、該支持構造体の後方面に位置して適当なハウジング体7の内部に配設された発光源6の色彩を反映し、また、発光性モチーフ2によって全面的には占有されない該表面は完全に不透明である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、日中と夜間の可視性条件下で視認可能な発光性エンブレム(emblem)に関する。該エンブレムは特に自動車の分野において有用であるが、その他の分野においても同等に適用することができる。該エンブレムの新規な特徴は、日中と夜間の両方において視認できることである。
【背景技術】
【0002】
自動車の分野においては、当該自動車の製造業者、モデル及びその他の特徴を表示する種々の情報部品が車体に組み込まれている。
【0003】
今日では、エンブレムによって伝達される情報は人目を引いて見やすい仕上げ剤(finishing)中において表示されている。従って、大部分の場合、自動車に装着されるエンブレムはめっき浴法による光り輝くクロムめっき仕上げ剤を発現する。また、場合によっては、該仕上げ剤はエンブレムを一層際だたせる着色剤と併用されている。
【0004】
工業分野において現在使用されているエンブレムは、日中の光の存在下では視認することができるが、天然光がほとんど存在しないか、又は全く存在しない夜間においては視認することができないために、該エンブレムの判読が妨げられる。また、エンブレムの仕上げ剤は完全に不透明であるために、該エンブレムの後方面に配設される光源によって該エンブレムを照明することは不可能である。
【0005】
本発明の目的である発光性エンブレムを得るためには、PVD技術(物理蒸着法)が使用される。この技術は、種々の工業分野(例えば、水栓技術分野等)において部品の仕上げ剤の供給のために利用されている物理的方法による金属化、又は、広範囲の商業分野(例えば、通常の使用に際して受ける摩擦によってもたらされる比較的大きな摩耗に曝される領域へ大きな硬度を付与する数層の被覆層の塗布によって部品を被覆する分野等)において利用されている物理的方法による金属化に基づくものである。
【0006】
1970年代に発生したPVDコーティングの開発の推進力となった目的は、非常に硬い層を蒸着させることによって耐摩耗性を強化することであった。この種の層はセラミック化合物から形成される。最も広範囲にわたって人気を博している化合物は TiN (窒化チタン)である。該化合物の黄金色は装飾的な用途において大きな期待がなされている。該化合物は、魅力的な色を発現するだけでなく、高い表面硬度を示す。このため、PVD層の蒸着法は、単独層又はめっき法、電解法若しくは化学的方法によって得られる層の補完層を形成させることから出発した。
【0007】
工業的に利用されている種々のPVD技術の中でも、装飾分野において最も注目すべき技術として利用されているものは、アークPVD及び陰極線噴霧化PVD(スパッタリンング)である。両方の技術を交互に実施できる反応器の製造も可能である。コーティング段階中の蒸発媒体は常に物理的であるために、この技術の一般的名称は物理蒸着法である。
【0008】
これらの技術の相違は、蒸着されるべき金属又は化合物を蒸発させるために使用されるシステムに基づく。蒸発システムが、金属(陰極)上を移動するアークの効果によって形成されるならば、この技術はアーク蒸発法と呼ばれる。蒸発が、金属又はセラミック材料(この場合、標的又は陰極は必ずしも金属製である必要はない)への気体イオンビームの衝撃によっておこなわれるときには、この技術はスパッタリングと呼ばれる。イオン化は、標的上へ印加される磁場(マグネトロン)によって最適化される。
【0009】
反応性イオンが発生すると、非常に低圧のガスが導入されて化合物が形成される。該化合物を部品へ集中させるためには、部品と反応室との間に連続的又は脈動的な電位差を印加する。
【0010】
これらの技術は、開放的設備内でおこなわれる薬浴処理、電解処理又はめっき処理によってときどき失敗をもたらすことがある。PVDが適用される設備は気密性であり、被覆は非常に低圧でおこなわれ、反応は反応性成分をプラズマ状態にイオン化することによって達成される。一部の例外的な設備を除き、これらのプロセスは不連続的におこなわれる。この方法に要求される作業条件が与えられるならば、該作業条件は清浄であって、環境に優しくなければならない。
【0011】
現在利用されているPVD設備を用いて真空中での金属化を達成することは可能であるが、特定の所望の化合物を得るための金属とガスとの反応性は、PVDコーティング過程と常に関係する。
【0012】
装飾分野におけるPVDコーティングの技術的開発は、種々のきめ(texture)と色彩を有する新規な被覆材(古金色の色調とコバルトゴールドは比較的よく知られている色合いである)及び新規な材料(ブロンズ、黄銅、ザマック、プラスチック)のコーティングを得るため、特に各々のプロセスにおける色彩、輝き、色調及び密着性の再現性を達成することに注目してなされてきた。
【0013】
硬度、低摩擦係数及び密着性が重要な特性となる機能的な部品(例えば、切削工具、モールド及びダイ等)のコーティングの場合とは異なり、装飾のためのPVDにおいては、美的な観点が重要な視点となる。いずれの場合にも、それぞれのPVDコーティング技術において用いられるパラメーターを厳密に制御することによって再現性が達成される。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、日中と夜間の可視性条件下で視認可能な新規な発光性エンブレムを提供するためになされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、所望の表面上に一体化されて天然光下と暗闇中において視認可能な仕上げ剤となる非常に薄い金属性の薄層(ナノメーターのオーダーの金属性の薄層)であって、該薄層の後方に配設される発光源からの投射光の通過を可能にする該薄層を具備する、日中と夜間の可視性条件下で視認可能な発光性エンブレムに関する。即ち本発明は、請求項1記載の発光性エンブレムに関する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
最終的な所望の効果に応じて選定されるいずれの色彩を呈する光源及びいずれの種類の金属、有機化合物若しくは無機化合物も使用することができる。
【0017】
上記のエンブレムを得るためには、該エンブレムの前方及び後方の表面材として使用される透明又は半透明プラスチック片を出発原料として用いる。
【0018】
日中又は夜間において同等に視認可能な金属性仕上げ剤又はその他の表面仕上げ剤、及びシルエット又はモチーフの視認を可能にする不透明な仕上げ剤は、前方の表面材上又は後方の表面材上へ沈着される。
【0019】
プラスチック片は、プラスチック製ハウジング体の正面部材であり、該ハウジング体は、その内部に配設される前記の光源を具有し、自動車のユーザーによって作動される。
【0020】
該透明プラスチック片の内部面又は外部面はPVDコーティング法によって金属性の薄層で被覆される。該薄層の薄さと多孔度に起因して、後方に配設される光源からの投射光は該金属性の薄層を通過する。しかしながら、一見したところでは、該薄層は、光の不存在下では該光源の色彩を受ける完全に不透明な金属化表面に類似する。
【0021】
金属性の薄層の沈着に用いる方法はPVDコーティング法である。この方法は、耐摩耗性[例えば、台所用品、建築物、模造装身具(時計仕掛け部品)、生体材料及び装飾品一般における耐摩耗性]を強化するための非常に硬い層の蒸着を可能にする技術である。この方法は低圧の反応器内でおこなわれる。該反応器内においては、被被覆片又は被被覆部品が加熱された後、脱気処理とイオン的ストリッピング処理をおこない、次いで不活性雰囲気下において、アーク又は陰極スパッタリングによって蒸着材料を該片又は該部品へ蒸着させ、最後に、蒸着片又は蒸着部品を冷却後に反応器から取り出す。蒸着材料は、所望のきめと色彩に応じて選定される。
【0022】
前述のように、この方法においては、蒸着中の蒸発媒体は常に物理的であるので、該方法は、一般的には「物理蒸着法」と呼ばれている。
【0023】
透明部材は、起伏状表面を有する該部材の内部面上又は外部面上に不透明な圧伸部を有する。この内部面と外部面はスパッタリングによって被覆され、金属性の薄層が形成される。該薄層は、日中の光が存在する条件下では不透明な金属表面を呈する光学的効果をもたらすが、日光が存在しない条件下では後方部材内に配設される光源からの光を通過させて該光源の色彩を呈するのに十分に薄い厚さと多孔度を有する。
【0024】
このような構成により、エンブレムへ入射する光の性質に左右されないエンブレムの光輝と視認が可能となる。また、光が存在しない条件下においても、内部に配設された発光源からの光が金属性の薄層を通過することに起因して、エンブレムの光輝と視認が可能となる。
【0025】
本発明の特徴の理解を容易にするために、本発明を説明する図面を、本願明細書の一部として添付する。これらの図面は、以下のような特徴を有する本発明を例示的に図示するものであって、本発明はこれらの図面によって限定されるものではない。
【0026】
図1は、日中と夜間において視認できる本発明による発光性エンブレムの平面図である。
【0027】
図2は、図1に示す発光性エンブレムの断面図である。
【0028】
図3は、金属性の薄層が蒸着された透明なプラスチック製部材の詳細な断面図である(この場合、夜間の発光用光源の配設位置が模式的に示される)。
【0029】
図1は、日中と夜間の可視性条件下において視認可能な本発明による発光性エンブレムの一態様を示す模式的平面図である。この場合の装飾的モチーフは「Z」である。発光性エンブレムを規定する仕上げ処理に付された透明プスチック片は「1」で示し、照明される金属製モチーフは「2」で示す。透明プラスチック片1の円形表面の残りの領域を覆う不透明領域は「3」で示す。
【0030】
図3は、プラスチック製支持構造体5の後方面上に配設された金属材料製の薄層又は素子4の模式的な拡大断面図である。この場合、光源6を模式的に示す。
【0031】
図2は、発光性エンブレムのアセンブリー全体を示す断面図である。光源6はハウジング体7の内部に配設され、該ハウジング体の前面部材は透明なプラスチック片5であり、該プラスチック片は蒸着された金属性の薄層4及び不透明領域3を有する。
【0032】
夜間の可視性条件下において発光性エンブレム1を照明する光源6が電源に接続されると、該電源からの光は、図3において矢印で模式的に示すように、金属性の薄層4の細孔8を通過する。
【0033】
透明なプラスチック製支持構造体5の前方面又は後方面は起伏状表面又は不均一な表面を有していてもよく、このような起伏状表面又は不均一な表面は種々の仕上げ効果又は色彩を発現させるために利用することができる。他の仕上げ処理を除外するものではないが、最も重要な色彩は、現在使用されているがこの分野においては未だに利用されていない金属色である。
【0034】
図示するエンブレムへ自然光が入射すると、該エンブレムは金属仕上げ効果を発現するが、自然光が入射しない場合には、該エンブレムは光源6の色彩を発現し、該色彩は、完全に不透明な塗装領域3によって包囲される。
【0035】
夜間においては、該エンブエムは日中よりも見やすくなる。何故ならば、現行の法規制に従う金属性又はクロムめっき性の外観を失うことなく、所望の領域が照明されるからである。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】図1は、日中と夜間において視認できる本発明による発光性エンブレムの一態様を示す模式的平面図である。
【図2】図2は、図1に示す発光性エンブレムの模式的断面図である。
【図3】図3は、金属性の薄層が蒸着された透明なプラスチック製部材の詳細な模式的断面図である(この場合、夜間の発光用光源の配設位置が模式的に示される)。
【符号の説明】
【0037】
1 透明プラスチック片
2 金属製モチーフ
3 不透明領域
4 金属性の薄層
5 支持構造体
6 光源
7 ハウジング体
8 細孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
日中と夜間の可視性条件下で視認可能な発光性エンブレムであって、透明プラスチック材料製支持構造体5を具備し、該構造体が、種々の仕上げ剤又は着色剤が薄層4として沈着されたその前方面上又は後方面上において起伏状表面又は不均一表面を有し、該エンブレムが、日光が入射するときには金属性仕上げ剤を提示し、天然光の不存在下においては該構造体の後方面内に配設されてハウジング体7の内部に収容された光源6の色彩を反映し、該ハウジング体が、透明プラスチック材料製支持構造体5の完全に不透明な領域3の内部に配設されたことを特徴とする該エンブレム。
【請求項2】
透明プラスチック材料製支持構造体5の内層又は外層がPVD法によって金属性薄層4で被覆されると共に、該支持構造体の後方面に配設された光源6からの投射光の通過を可能にする多孔度を有する請求項1記載のエンブレム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−161233(P2007−161233A)
【公開日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2006−305005(P2006−305005)
【出願日】平成18年11月10日(2006.11.10)
【出願人】(304034738)サニーニ・オート・グルプ・ソシエダッド・アノニマ (2)
【Fターム(参考)】