説明

日射遮蔽装置

【課題】従来の緑化された日射遮蔽装置に比べて、つる植物の緑量を増大させることを可能とする。
【解決手段】日射遮蔽装置10を、つる植物16の吸着根が吸着する被吸着部材が充填されて孔部から露出する複数のルーバー構成材28と、複数のルーバー構成材28を、互いに離間させ、それぞれルーバー構成材28の板面28Aが建物壁面14Aと交差するように立設させて保持する保持部材24と、複数のルーバー構成材28と建物壁面14Aの間に、つる植物16が植栽されるプランター20と、で構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、日射遮蔽装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、建物の壁面付近には、日射による眩しさを防止するため、或いは日射熱の室内への侵入を軽減するため、ルーバー等の日射遮蔽装置を設けている。このルーバーを、植物で緑化することにより、建物全体の意匠性を向上させ、かつ、植物から蒸散する水分が建物壁面を冷却することが知られている。
【0003】
下記特許文献1には、羽根板を横に組んで支柱に取り付け、蘇苔類植物を羽根板の上面に設置された植栽マットに生育させる緑化用植栽ルーバーが開示されている。
【0004】
下記特許文献2には、建物の壁面に対して一定角度で傾斜するとともに、上下に所定間隔離間して配置された複数のルーバー構成材を有した外構用ルーバーが開示されている。このルーバー構成材は、横方向に長尺な本体板部と、この本体板部の両面に蘇苔類植物が植栽される多孔質状の植栽部を備えている。
【0005】
下記特許文献3には、つる植物が植栽される植栽容器と、当該植栽容器上に設けられた網部と、当該網部の適宜部位に複数配置され、つる植物が接触して根付くスポット培地と、を備えたつる植物支持装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−222031号公報
【特許文献2】特開2008−208537号公報
【特許文献3】特開平9−252654号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1では、所謂横型ルーバー上に植物を植栽する構成であることから、板材の強度を考慮した設計が必要となり、コストがかかり、施工効率も低下する。
【0008】
また、蘇苔類植物を羽根板の上面に設置された植栽マットに生育させる構成であることから、羽根板の下面には植物を植栽することができないため、ルーバー全体としてつる植物の総量(以下、緑量という)は低いものとなる。この結果、植物からの蒸散量は少なく、この蒸散機能による建物壁面の冷却効果は小さい。
【0009】
さらに、仮に植物の植栽部分を横型ルーバーとは別個に設け、かつ、当該植栽部分につる植物を植栽する場合であっても、複数の横型ルーバー構成材が上下に所定間隔離間して配置されていると、つる植物が各ルーバー構成材を登攀し難い。
【0010】
特許文献2でも、横型ルーバー上に植物を植栽する構成であることから、特許文献1と同様の問題点が生じる。
【0011】
また、多孔質状の植栽部は、蘇苔類植物を植栽するものであって、つる植物の登攀用に設けられたものではない。
【0012】
次に、特許文献3では、つる植物の吸着根が吸着する部位がスポット培地のみであるため、つる植物が安定して登攀することができない。また、スポット培地が建物壁面と対面しているため、視界の確保が困難となる。さらに、スポット培地の裏面には日光が当らず、つる植物の生育が妨げられて、当該つる植物の緑量(総量)は低いものとなる。
【0013】
本発明は、上記事実を考慮し、従来の緑化された日射遮蔽装置に比べて、つる植物の緑量を増大させることが可能な日射遮蔽装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
請求項1の発明は、つる植物の吸着根が吸着する被吸着部が設けられた複数の板材と、前記複数の板材を、互いに離間させ、それぞれ前記板材の板面が建物壁面と交差するように立設させて保持する保持部材と、前記板材とは別個に配置され、前記つる植物が植栽される植栽手段と、を有する日射遮蔽装置である。
【0015】
請求項1に記載の発明によれば、複数の板材が互いに離間しているので、建物内側から日射遮蔽装置を通して視界が確保され、かつ、通風も維持される。
【0016】
また、請求項1の発明では、複数の板材を立設させている。すなわち、建物壁面の下方向から上方向にわたって連続して板材があり、植栽手段に植栽されたつる植物の吸着根が板材の被吸着部に吸着して登攀し易くなり、日射遮蔽装置へのつる植物の緑量を増大させることができる。この結果、日射遮蔽装置から発生するつる植物の蒸散量も多くなり、つる植物の蒸散機能による建物壁面の冷却効果を向上することができる。
【0017】
さらに、板材の板面を建物壁面と交差させ、立設させる構成なので、板材の両面につる植物の吸着根が吸着して取り付き、特許文献1のように板材の上面にのみ蘇苔類植物が植栽されている構成に比べて、日射遮蔽装置へのつる植物の緑量を増大させることができる。
【0018】
さらにまた、つる植物が植栽される植栽手段が板材とは別個に配置されているため、特許文献1及び2のように植栽部分がルーバーにある構成に比べて、植栽部分の荷重が板材にかからないため、板材の強度を考慮しなくて良く、コストの低減や施工効率の向上を図ることができる。
【0019】
また、つる植物が吸着して登攀する板材の板面が建物壁面と交差するように立設している。従って、特許文献3のように網部が建物壁面と対面している構成と比べ、空気が日射遮蔽装置を通って建物壁面に到達するまでに、つる植物を通過する距離を長くすることができる。このように、つる植物を通過する距離が長くなれば、当該空気はつる植物から蒸散した水分とより多く接触することとなり、つる植物の蒸散によって熱を奪われ、建物壁面の冷却効果を向上することができる。
【0020】
請求項2の発明は、前記植栽手段は、前記複数の板材と前記建物壁面の間に配置された植栽容器である請求項1に記載の日射遮蔽装置である。
【0021】
請求項2に記載の発明によれば、植栽容器は板材によって隠れるため、建物の外観からは植栽容器が視認されない。このため、植栽容器が視認されることによって建物の意匠性が損なわれることがない。
【0022】
請求項3の発明は、前記板材は、中空部と、前記板面と前記中空部を貫通する孔部と、を有し、前記被吸着部は、前記中空部に充填され、前記板材に比べて表面が粗い被吸着部材を含む請求項1又は請求項2に記載の日射遮蔽装置である。
【0023】
請求項3に記載の発明によれば、前記板材に比べてより表面が粗い被吸着部材が板材の中空部に充填され、孔部から被吸着部材につる植物の吸着根が吸着するので、つる植物の日射遮蔽装置への吸着力も高めることができ、つる植物を安定的に登攀させることができる。また、板材全体の表面を粗くする場合に比べて、意匠性を損なうこともない。
【0024】
請求項4の発明は、液体が貯留される貯留容器と、前記貯留容器から前記液体を前記植栽容器に供給する供給手段と、を有する潅注装置を備えた請求項2又は請求項3に記載の日射遮蔽装置である。
【0025】
請求項4に記載の発明によれば、植栽容器に植栽されたつる植物に、貯留容器と供給手段とを有する潅注装置によって例えば水等の液体を供給することができるため、つる植物に当該液体を手動で供給する必要がない。
【0026】
請求項5の発明は、前記保持部材が取り付けられる建物壁面には、前記複数の板材よりも建物外側方向に突出したメンテナンスデッキを有する請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の日射遮蔽装置である。
【0027】
請求項5に記載の発明によれば、前記保持部材が取り付けられる建物壁面には、前記複数の板材よりも建物外側方向に突出したメンテナンスデッキを有するので、当該メンテナンスデッキに人間が立って、日射遮蔽装置(板材)の前面(建物外側方向の面)に登攀しているつる植物の刈り込み等の手入れや日射遮蔽装置の管理を容易かつ効率的に行うことができる。すなわち、この構成では、従来、室内側から行っていたつる植物の手入れや高所作業車やゴンドラによって行ってきた管理を、建物外側から効率的に行える仕組みである。
【0028】
請求項6の発明は、前記板材の表面は、溶融亜鉛、又は前記溶融亜鉛とアルミニウムとマグネシウムでメッキされており、前記被吸着部材の素材は、繊維材又はヤシ殻である請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の日射遮蔽装置である。
【0029】
請求項6に記載の発明によれば、本構成を有しない場合と比べて、板材や被吸着部材により多くのつる植物の吸着根が吸着し、つる植物を安定的に登攀させることができる。
【0030】
請求項7の発明は、前記つる植物は、落葉性のものである請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載の日射遮蔽装置である。
【0031】
請求項7に記載の発明によれば、落葉性つる植物を板材に登攀させるため、日射遮蔽装置に移動機構や開閉機構を設けることなく、季節毎に日射調整をすることができる。具体的には、夏季は、緑陰によって日射遮蔽装置の日射遮蔽機能を向上させ、冬季は、落葉によって夏季と比べより多くの日射の取り込みが可能となる。
【発明の効果】
【0032】
本発明によれば、従来の緑化された日射遮蔽装置に比べて、つる植物の緑量を増大させることが可能な日射遮蔽装置を提供することができた。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の第1実施形態に係る日射遮蔽装置を示す図である。
【図2】図1に示す日射遮蔽装置の拡大図である。
【図3】(A)は、図2に示す日射遮蔽装置の平面図である。(B)は、図2に示す日射遮蔽装置の立面図である。
【図4】(A)は、図2に示すルーバー構成材の詳細説明図である。(B)は、図4(A)に示す孔部及び被吸着部材の部分拡大図である。
【図5】本発明の第2実施形態に係る日射遮蔽装置を示す図である。(A)は、日射遮蔽装置の正面立面図であって、(B)は、日射遮蔽装置の側面立面図であり、(C)は、日射遮蔽装置の平面図である。
【図6】本発明の第3実施形態に係る日射遮蔽装置を示す図である。
【図7】図4(B)に示す吸着根の変形例を示す図である。
【図8】(A)及び(B)は、図2に示すルーバー構成材の変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、本発明の実施の形態の一例を図面を参照して説明する。なお、実質的に同様の機能を有するものには、全図面通して同じ符号を付して説明し、場合によってはその説明を省略することがある。
【0035】
<第1実施形態>
図1は、本発明の第1実施形態に係る日射遮蔽装置を示す図である。
【0036】
本発明の第1実施形態に係る日射遮蔽装置10は、例えば図1に示すように建物12の各階の外壁14に取り付けられている。当該日射遮蔽装置10には、つる植物16が繁茂しており、建物12の外壁14が緑化されている。この結果、建物12全体の意匠性を向上させている。
【0037】
日射遮蔽装置10を繁茂しているつる植物16は、つる16Aと葉体16Cと吸着根16B(付着根とも言う)とを含み(図4(B)参照)、常緑性のつる植物と落葉性のつる植物に区分け可能であるが、中でも落葉性のつる植物が好ましい。
【0038】
落葉性のつる植物が好ましい理由としては、日射遮蔽装置10に移動機構や開閉機構を設けることなく、季節毎の日射調整をすることができるからである。具体的には、夏季は、つる植物16に葉体16Cが茂り、この葉体16Cによる緑陰によって日射遮蔽装置10の日射遮蔽機能を向上させ、冬季は、つる植物16から葉体16Cが落葉することによって夏季と比べより多くの日射の取り込みが可能となる。
【0039】
常緑性のつる植物としては、ヘデラ、オオイタビ、ツルマサキ、テイカカズラ、キヅタ(フユヅタ)等が挙げられる。落葉性のつる植物としては、ノウゼンカズラ、ビグノニア、ナツヅタ等が挙げられる。
【0040】
図2は、図1に示す日射遮蔽装置10の拡大図である。図3(A)は、図2に示す日射遮蔽装置10の平面図である。図3(B)は、図2に示す日射遮蔽装置10の立面図である。
【0041】
日射遮蔽装置10は、潅水装置18と、プランター20と、縦型ルーバー22と、保持部材24と、を備えている。
【0042】
潅水装置18は、建物12のデッキ26上に配置されており、貯水タンク18Aと、当該貯水タンク18Aに連結された電磁弁18Bと、当該電磁弁18Bに連結され、かつ、プランター20に連結された潅水チューブ18Cとを備えている。この潅水装置18は、電磁弁18Bを利用して貯水タンク18Aから潅水チューブ18Cを介し、プランター20に水を自動的に供給することが可能となっている。なお、プランター20に供給された水の余剰水は、プランター20の下部にある不図示の水受け部を通って、デッキ26上にある不図示の排水溝又は廃水管へと廃水される。
【0043】
潅水装置18から水が供給されるプランター20は、外壁14と縦型ルーバー22との間のデッキ26上に配置されており、建物12の外観からはプランター20が視認されないようになっている。このため、プランター20が視認されることによって建物12の意匠性が損なわれることがない。また、特許文献1及び2のように植栽部分がルーバーにある構成に比べて、植栽部分の荷重が縦型ルーバー22にかからないため、縦型ルーバー22の積載荷重の制限を緩和し、より多くのつる植物16を縦型ルーバー22に登攀させることができる。
【0044】
このプランター20には、土や肥料が投入されており、上述したつる植物16が植栽されている。つる植物16は、プランター20に隣接して配置されている縦型ルーバー22を登攀している。
【0045】
縦型ルーバー22は、板状の複数のルーバー構成材28から構成される。各ルーバー構成材28は、不図示の地面に対して垂直方向に立設しており、地面に対して水平方向に互いに離間して配置されている。この結果、建物内側から日射遮蔽装置を通して視界が確保され、かつ、通風も維持される。
【0046】
また、各ルーバー構成材28は、その上端部及び下端部が保持部材24によって外壁14に取り付けられており、ルーバー構成材28の板面28Aが外壁14の壁面14Aと直交するように保持されている。従って、特許文献3のように網部が建物壁面と対面している構成と比べ、空気が縦型ルーバー22を通って外壁14の壁面14Aに到達するまでに、つる植物16を通過する距離S(図3(A)参照)を長くすることができる。このように、つる植物16を通過する距離Sが長くなれば、当該空気はつる植物16から蒸散した水分とより多く接触することとなり、つる植物16の蒸散によって熱を奪われ、壁面14Aの冷却効果を向上することができる。また、つる植物16を通過して冷却された風を建物12内に取り込むことも可能である。
【0047】
ルーバー構成材28を外壁14に取り付ける保持部材24は、例えば、止め金具24Aとボルト24Bとナット24Cとワッシャー(不図示)と取付部材24Dからなり、図1に示すように、止め金具24Aとボルト24Bとナット24Cとワッシャーによって地面に対して垂直方向にある複数のルーバー構成材28同士を連結している。このように、複数のルーバー構成材28が垂直方向に連結されていると、つる植物16がより高く登攀可能となる。
【0048】
図4(A)は、図2に示すルーバー構成材28の詳細説明図である。
【0049】
ルーバー構成材28の大きさは、建物12の大きさ等によって適宜変更可能であり、特に限定されないが、例えば高さLは400cm、縦幅Mは5cm、横幅Nは20cmである。
【0050】
このルーバー構成材28は、中空部28Bと、板面28Aと中空部28Bを貫通する複数の孔部28Cとを有している。この孔部28Cは、図4(A)では、水平方向に隙間をあけて5つルーバー構成材28に設けられており、これら5つの孔部28Cが垂直方向に隙間をあけて複数行にわたってルーバー構成材28に設けられている。
【0051】
また、ルーバー構成材28の中空部28Bには、ルーバー構成材28に比べて表面が粗い被吸着部材30が充填されている。
【0052】
ルーバー構成材28の素材としては、特に限定はされないが、つる植物16の吸着根16Bが吸着し易いように表面が粗いものが好ましい。例えば合成樹脂、白アルミ、黒アルミ、ZAM鋼板、耐候性鋼板、鋼板や銅板等の金属板に溶融亜鉛でメッキしたもの等が挙げられる。なお、ZAM鋼板は、亜鉛―アルミニウム(6%)+マグネシウム(3%)系の溶融メッキ鋼板であり、「ZAM」は日新製鋼株式会社の登録商標である。
【0053】
一方、被吸着部材30の素材としては、ルーバー構成材28に比べて表面が粗いものであれば如何なるものであっても良いが、例えば繊維状のもの或いは多孔質のもので、不織布、陶器タイル、ヤシ殻、火山岩等が挙げられる。
【0054】
図4(B)は、図4(A)に示す孔部28C及び被吸着部材30の部分拡大図である。
【0055】
つる植物16は、その吸着根16Bをルーバー構成材28に吸着させながらプランター20からルーバー構成材28を登攀していく。ここで、ルーバー構成材28の孔部28Cからは、ルーバー構成材28に比べて表面が粗い被吸着部材30が露出しているため、被吸着部材30につる植物16の吸着根16Bが吸着し易く、つる植物16の縦型ルーバー22への吸着力も高めることができ、つる植物16を安定的に登攀させることができる。また、つる植物16の緑量を増大させることもできる。さらに、ルーバー構成材28全体の表面を粗くする場合に比べて、意匠性を損なうこともない。
【0056】
<第2実施形態>
次に、本発明の第2実施形態に係る日射遮蔽装置10Aについて説明する。図5は、本発明の第2実施形態に係る日射遮蔽装置10Aを示す図である。図5(A)は、日射遮蔽装置10Aの正面立面図であって、図5(B)は、日射遮蔽装置10Aの側面立面図であり、図5(C)は、日射遮蔽装置10Aの平面図である。
【0057】
第2実施形態に係る日射遮蔽装置10Aは、例えばデッキ26等を含む保持部材が取り付けられる建物壁面14Aにメンテナンスデッキ26Aを有する点で第1実施形態の日射遮蔽装置10と異なる。なお、他の構成については、第1実施形態と同様である。
【0058】
図5に示すように、メンテナンスデッキ26Aが、デッキ26に連結されており、前記複数の板材よりも建物12外側方向に突出している。
【0059】
このため、当該メンテナンスデッキ26Aに人間が立って、縦型ルーバー22の前面(建物12外側方向の面)に登攀しているつる植物16の刈り込み等の手入れや日射遮蔽装置10Aの管理を容易かつ効率的に行うことができる。すなわち、この構成では、従来、建物12室内側から手入れや高所作業車やゴンドラによって行ってきた管理を、建物12外側から効率的に行える仕組みである。
【0060】
また、メンテナンスデッキ26Aは、縦型ルーバー22の両端側にそれぞれ設けられている。
【0061】
このため、縦型ルーバー22の両端側から縦型ルーバー22の前面にある植物16の手入れや縦型ルーバー22の管理が行えるため、作業効率を向上させることができる。
【0062】
<第3実施形態>
次に、本発明の第3実施形態に係る日射遮蔽装置10Bについて説明する。図6は、本発明の第3実施形態に係る日射遮蔽装置10Bを示す図である。
【0063】
第3実施形態に係る日射遮蔽装置10Bは、潅水装置18やプランター20を有しない点で第1実施形態の日射遮蔽装置10と異なる。なお、他の構成については、第1実施形態と同様である。
【0064】
日射遮蔽装置10Bでは、縦型ルーバー22を地面31に立設させて、例えば地面31から建物12の3階や4階まで延出させた構成となっている。
【0065】
第3実施形態では、つる植物16は地面31に植栽されており、地面31から直接縦型ルーバー22を登攀する。特に、ナツヅタは、10m以上の高さまで生育することが可能であるため、地面31から建物3階程度の高さまで十分に縦型ルーバー22へ登攀させることができる。
【0066】
<変形例>
なお、本発明は、上記の実施形態に限るものではなく、本発明の要旨を逸脱しない限りにおいて、種々の変形、変更、改良が成される。
【0067】
例えば、各ルーバー構成材28は、図2に示すように、ルーバー構成材28の板面28Aが外壁14の壁面14Aと直交するように保持されているが、少なくとも壁面14Aと交差するように保持されていれば良い。すなわち、壁面14Aに対して斜めに立設するようなルーバー構成材28であっても良い。
【0068】
また、保持部材24は、図2に示すように、ルーバー構成材28毎に設ける構成を説明したが、縦型ルーバー22中の一部のルーバー構成材28にのみ設けるような構成であっても良い。この場合、縦型ルーバー22に、ルーバー構成材28同士を連結する水平方向に延びた連結部材を設けるようにしても良い。
【0069】
さらに、保持部材24は、図3(B)に示すように、止め金具24Aを取付部材24Dに取り付ける構成を説明したが、取付部材24Dを用いず、止め金具24Aをデッキ26に直接取り付ける構成であっても良い。
【0070】
さらに、孔部28Cは、図4(A)に示すように、水平方向に隙間をあけて5つルーバー構成材28に設けられ、これら5つの孔部28Cが垂直方向に隙間をあけて複数行にわたってルーバー構成材28に設けられた場合を説明したが、孔部28Cの個数は特に限定されるものではなく、例えば水平方向に1個、2個、3個・・・99個、100個ある場合であっても良い。
【0071】
さらにまた、孔部28Cの設け方としては、孔部28Cの孔数が同じ配列を垂直方向に複数行設けた構成を説明したが、これに限定されず、例えば、孔部28Cが千鳥格子状やランダムに並べることも可能である。
【0072】
また、孔部28Cは、図4(A)に示すように、ルーバー構成材28の板面28Aに設けられる構成を説明したが、他の面に設けられる構成であっても良い。このような構成の一例として、図8(A)に、板面32Aと側面32Dに共に孔部32Cが設けられ、中空部32Bに被吸着部材30が充填されたルーバー構成材32の外観図を示す。
【0073】
さらに、ルーバー構成材28に中空部28Bを設けて、中にルーバー構成材28に比べて表面が粗い被吸着部材30を充填する構成を説明したが、ルーバー構成材28自体が、被吸着部材30と同等の表面粗さを有している構成であっても良い。この場合、中空部28Bに被吸着部材30を充填する必要もなく、また孔部28Cを設ける必要もない。このような構成の一例として、図8(B)に、板面34Aが網状に形成されたルーバー構成材34の外観図を示す。
【0074】
さらにまた、プランター20へ供給する液体は、水である場合を説明したが、つる植物16が育成する液体であれば、如何なる液体であっても良い。
【0075】
また、図4(B)に示した吸着根16Bは、特にナツヅタの吸着根を示しているが、その他のつる植物16、例えばヘデラのようなつる植物16の吸着根16Bは、図7に示すように、より根の形に近い吸着根となる。
【実施例】
【0076】
以下、本発明に係る実施例について説明する。
【0077】
本発明の実施例に係る日射遮蔽装置を、ルーバー構成材と被吸着部材の素材やルーバー構成材の孔数を種々変更して複数例作製した。表1に、実施例毎の日射遮蔽装置の変更事項を示す。なお、表1に示す実施例1〜14に係る日射遮蔽装置のその他の構成は、[発明を実施するための形態]の欄で説明した構成と同一である。なお、表1中の孔数とは、ルーバー構成材全体の孔数ではなく、ルーバー構成材を立設させた場合の水平方向に並んで配置されている孔数である。また、表1中の「フレクスター」は繊維材の一種であり、株式会社クラレの登録商標である。
【表1】

【0078】
次に、作製した実施例1〜14に係る日射遮蔽装置において、各日射遮蔽装置のプランターにナツヅタを植栽し、当該ナツヅタの観察記録を作成した。表2に、各日射遮蔽装置におけるナツヅタの観察記録を示す。
【表2】









【0079】
以上、表2に示す観察記録から、実施例9の日射遮蔽装置(ルーバー構成材:ZAM鋼板、被吸着部材:フレクスタ−、孔数:5の組み合わせ)、実施例10の日射遮蔽装置(ルーバー構成材:ZAM鋼板、被吸着部材:ヤシ殻、孔数:2の組み合わせ)、実施例12の日射遮蔽装置(ルーバー構成材:溶融亜鉛メッキ、被吸着部材:ヤシ殻、孔数:5の組み合わせ)が、つるの長さが長く被吸着部材への吸着数等が多いことを確認した。この結果、実施例9、10、12の日射遮蔽装置が特にナツヅタの生育に有効であることを確認した。すなわち、ルーバー構成材や被吸着部材により多くのつる植物の吸着根が吸着し、つる植物を安定的に登攀させ、縦型ルーバーに対するつる植物の緑量を増大させることができた。
【0080】
なお、表1及び表2には掲載していないが、日射遮蔽装置の構成として、ルーバー構成材:溶融亜鉛メッキ、被吸着部材:フレクスタ−、孔数:5の組み合わせも、実施例9、10等と同様に有効であると考えられる。
【符号の説明】
【0081】
10、10A、10B 日射遮蔽装置
12 建物
14A 壁面
16B 吸着根
16 植物
18 潅水装置(潅流装置)
18A 貯水タンク(貯留容器)
18B 電磁弁(供給手段)
18C 潅水チューブ(供給手段)
20 プランター(植栽容器、植栽手段)
24 保持部材
26A メンテナンスデッキ
28、32、34 ルーバー構成材(板材)
28C 孔部
28B 中空部
28A 板面
30 被吸着部材
31 地面(植栽手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
つる植物の吸着根が吸着する被吸着部が設けられた複数の板材と、
前記複数の板材を、互いに離間させ、それぞれ前記板材の板面が建物壁面と交差するように立設させて保持する保持部材と、
前記板材とは別個に配置され、前記つる植物が植栽される植栽手段と、
を有する日射遮蔽装置。
【請求項2】
前記植栽手段は、前記複数の板材と前記建物壁面の間に配置された植栽容器である請求項1に記載の日射遮蔽装置。
【請求項3】
前記板材は、中空部と、前記板面と前記中空部を貫通する孔部と、を有し、
前記被吸着部は、前記中空部に充填され、前記板材に比べて表面が粗い被吸着部材を含む請求項1又は請求項2に記載の日射遮蔽装置。
【請求項4】
液体が貯留される貯留容器と、前記貯留容器から前記液体を前記植栽容器に供給する供給手段と、を有する潅注装置を備えた請求項2又は請求項3に記載の日射遮蔽装置。
【請求項5】
前記保持部材が取り付けられる建物壁面には、前記複数の板材よりも建物外側方向に突出したメンテナンスデッキを有する請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の日射遮蔽装置。
【請求項6】
前記板材の表面は、溶融亜鉛、又は前記溶融亜鉛とアルミニウムとマグネシウムでメッキされており、
前記被吸着部材の素材は、繊維材又はヤシ殻である請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の日射遮蔽装置。
【請求項7】
前記つる植物は、落葉性のものである請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載の日射遮蔽装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−273659(P2010−273659A)
【公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−132176(P2009−132176)
【出願日】平成21年6月1日(2009.6.1)
【出願人】(000003621)株式会社竹中工務店 (1,669)
【Fターム(参考)】