説明

昆虫寄生菌の子実体の生産方法

【課題】昆虫寄生菌を昆虫に感染させ、増殖させた昆虫体から子実体を生産するに当たり、腐敗を抑制し、良好な子実体の形成率を高め、安定した状態で子実体を形成することができる昆虫寄生菌の子実体の生産方法を提供する。
【解決手段】昆虫寄生菌の子実体の生産方法は、多孔質物質よりなり、全孔隙率が70〜90%で細菌密度が0〜0.5×10cfu/gの培地11を容器内に収容し、該培地の液相率を35〜65%に調整して保湿状態とする。そこへ、昆虫に昆虫寄生菌が接種され硬化されて子実体原基が形成された昆虫体12を入れ、昆虫寄生菌の子実体を発生させる。この場合、容器内の温度を露点以下まで下げて多孔質物質及び昆虫体12の表面に結露を生じさせることが好ましい。また、昆虫体を培地中に埋没させることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、健康食品、医薬品、化粧品等として利用される冬虫夏草菌類等の昆虫寄生菌の子実体(キノコ)を、昆虫寄生菌を感染させた昆虫体から収率良く、安定した状態で生産することができる昆虫寄生菌の子実体の生産方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
昆虫寄生菌の子実体は、例えば冬虫夏草菌類等のように漢方薬の原材料や高級食材として利用されている。通常、冬虫夏草菌類のような子実体は天然に生息しているものを採取するためその数が少なく、また大きさが揃わず、品質も一定していないことが多い。さらに、昆虫寄生菌は例えばサナギタケのような同一の属種であっても、生育速度、菌糸の生育、病原性等に差が現れる場合が多かった。このため、優良な昆虫寄生菌の探索や人工培養法が検討されてきた。
【0003】
例えば、冬虫夏草菌を寄主昆虫に人工接種し、寄主昆虫が発育しない程度の低温で温度管理しつつ飼育し、子実体を得る方法が知られている(例えば、特許文献1を参照)。この方法では、冬虫夏草菌の子嚢胞子の懸濁液に寄主昆虫の蛹を浸漬する方法により接種が行われている。しかし、常温でこの方法を行うと殆どの蛹が羽化してしまうか、又は細菌の発生が著しく、求める子実体が得られる確率が著しく低い場合が多い。懸濁液による接種感染方法は感染個体にむらを生じ、感染までの時間が著しく長い。一方、低温で管理すると、子嚢胞子に由来する子実体を形成するまでに著しく長い時間を要していた。
【0004】
また、蚕の蛹の抽出液を使用して培地を作製し、この培地を用いて冬虫夏草菌の子実体を形成させ、その子嚢胞子を利用する方法も提案されている(例えば、特許文献2を参照)。この場合、子嚢胞子懸濁液に蛹を浸漬したり、菌糸を蛹に触れさせて接種したりする他、子嚢胞子懸濁液を蛹に直接接種する方法も行われている。これらの方法に加え、冬虫夏草菌などの昆虫寄生菌のハイファルボディを含む接種剤を作製して、これを昆虫体内に注射接種して導入し、この昆虫を昆虫菌床として子実体を形成させる方法も知られている。
【0005】
本発明者らは既に、昆虫寄生菌の子実体を形成させる方法として、寄主昆虫の表皮に傷を付けて昆虫寄生菌を感染させる方法を提案した(特許文献3を参照)。この方法によれば、昆虫寄生菌の感染が早く、昆虫体内に菌糸が蔓延しやすく、子実体の揃いが良く、安定した子実体を確保することができる。
【特許文献1】特開平8−75号公報(第2頁及び第3頁)
【特許文献2】特開平10−42691号公報(第2頁、第4頁及び第5頁)
【特許文献3】特許第3902216号公報(第1頁、第2頁及び第8頁)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のように、特許文献1又は2に記載されているように、子嚢胞子などの胞子又は菌糸を用いて冬虫夏草菌を人工的に培養し、冬虫夏草菌の感染昆虫体を得たとしても、その後子実体を安定して形成させることは難しかった。すなわち、冬虫夏草菌などの昆虫寄生菌類は元来子実体の発生が少なく、乾燥年には野外でも殆ど子実体の発生が認められないことから、安定した生産は困難であった。昆虫体内にはもともと腸内細菌などが生存しており、もとより無菌的培養が難しい。冬虫夏草菌のような昆虫寄生菌をこれらの昆虫に接種する場合でも、全ての工程を無菌的に実施することは困難であった。特に、昆虫寄生菌分離時に発生する細菌は親和性が高く、共生関係にある場合が多く、細菌を除去することは難しかった。このため、有菌的状況下にあったとしても子実体を形成させる手法の開発が必要であった。
【0007】
冬虫夏草菌が昆虫に感染した後、子実体の形成までの期間は著しく長く、感染後の鱗翅目昆虫蛹、例えばハスモンヨトウ蛹を用いた場合には蛹を羽化させないように10℃程度の低温で管理するため、冬虫夏草菌を感染させ蛹内に冬虫夏草菌が蔓延するまでに2〜3ヶ月の期間を有していた。常温でも羽化時期に到達する前に冬虫夏草菌を蔓延させて死亡させ、子実体を形成させることが必要であった。
【0008】
特許文献3に記載の方法によれば、冬虫夏草菌の子実体をある程度の形成率をもって形成することはできるが、その際用いられる培地はバーミキュライト、ピートモス等である。これらの培地は、細菌密度が1.5×10〜3.0×10cfu/gという高い値を示すものである。そのため、前記昆虫体から子実体を形成する際に、細菌の繁殖によって腐敗が発生しやすく、子実体の形成率が低下するという問題があった。さらに、子実体を形成する環境の温度が16〜25℃で湿度は90%以上であることが良好な条件であるとされているが、温度、湿度等の環境条件を整えるだけでは良好な子実体を安定して生産することができないという問題があった。
【0009】
そこで、本発明の目的とするところは、昆虫寄生菌を昆虫に感染させ、増殖させた昆虫体から子実体を生産するに当たり、腐敗を抑制し、良好な子実体の形成率を高め、安定した状態で子実体を形成することができる昆虫寄生菌の子実体の生産方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するために、請求項1に係る昆虫寄生菌の子実体の生産方法は、多孔質物質よりなり、全孔隙率が70〜90%で細菌密度が0〜0.5×10cfu/gの培地を容器内に収容し、該培地の液相率を35〜65%に調整して保湿状態とし、そこへ昆虫に昆虫寄生菌が接種され硬化されて子実体原基が形成された昆虫体を入れ、昆虫寄生菌の子実体を発生させることを特徴とする。
【0011】
請求項2の昆虫寄生菌の子実体の生産方法は、請求項1に係る発明において、前記容器内の温度を露点以下まで下げて多孔質物質及び昆虫体の表面に結露を生じさせることを特徴とする。
【0012】
請求項3の昆虫寄生菌の子実体の生産方法は、請求項2に係る発明において、前記多孔質物質及び昆虫体の表面に結露を生じさせる操作を複数回繰り返すことを特徴とする。
請求項4の昆虫寄生菌の子実体の生産方法は、請求項1から請求項3のいずれかに係る発明において、前記昆虫体を培地中に埋没させることを特徴とする。
【0013】
請求項5の昆虫寄生菌の子実体の生産方法は、請求項1から請求項4のいずれかに係る発明において、前記多孔質物質よりなる培地は鹿沼土であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、次のような効果を発揮することができる。
請求項1に係る発明の昆虫寄生菌の子実体の生産方法では、多孔質物質よりなり、全孔隙率が70〜90%で細菌密度が0〜0.5×10cfu/gの培地を容器内に収容し、該培地の液相率を35〜65%に調整して保湿状態とする。そこへ昆虫に昆虫寄生菌が接種され硬化されて子実体原基が形成された昆虫体を入れ、昆虫寄生菌の子実体を発生させる。多孔質物質よりなる培地は細菌密度が非常に低いため、子実体の発生に際して細菌の繁殖に基づく腐敗の発生が抑えられる。
【0015】
また、培地は全孔隙率が70〜90%であり、液相率を35〜65%に調整して保湿した状態で子実体の形成が行われるため、培地内に水分及び酸素が十分に保持されると共に、多孔質物質表面における水分量を適正範囲に維持することができる。従って、昆虫体には子実体の形成に必要な水分が補給される。よって、昆虫寄生菌を昆虫に感染させ、増殖させた昆虫体から子実体を生産するに当たり、腐敗を抑制し、良好な子実体の形成率を高め、安定した状態で子実体を形成することができる。
【0016】
請求項2に係る発明では、容器内の温度を露点以下まで下げて多孔質物質及び昆虫体の表面に結露を生じさせる。このため、請求項1に係る発明の効果に加えて、容器内の温度低下によって多孔質物質及び昆虫体の表面に水滴が生成され、昆虫体に直接又は多孔質物質の表面から水分が補給されることにより子実体の形成率を高めることができる。
【0017】
請求項3に係る発明では、多孔質物質及び昆虫体の表面に結露を生じさせる操作を複数回繰り返すものである。このため、請求項2に係る発明の効果に加えて、多孔質物質及び昆虫体の表面に繰り返し凝縮して生成された水分が昆虫体に繰り返して補給されることにより子実体の形成を促すことができる。
【0018】
請求項4に係る発明では、昆虫体を培地中に埋没させるものである。従って、請求項1から請求項3のいずれかに係る発明の効果に加えて、昆虫体は多孔質物質に取り囲まれ、周囲から効果的に水分が補給されるため子実体の形成率を向上させることができる。
【0019】
請求項5に係る発明では、多孔質物質よりなる培地が鹿沼土であることから、全孔隙率が高く、細菌密度が低く、請求項1から請求項4のいずれかに係る発明の効果を最も有効に発揮させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の最良と思われる実施形態について詳細に説明する。
本実施形態における昆虫寄生菌の子実体の生産方法では、多孔質物質よりなり、全孔隙率が70〜90%で細菌密度が0〜0.5×10cfu/gの培地を容器内に収容し、該培地の液相率を35〜65%に調整して保湿状態とする。ここで、培地の全孔隙率は、多孔質物質内の孔隙率と多孔質物質間の孔隙率の合計量を意味するが、通常これらの孔隙率を区別することなく、培地全体の孔隙率が用いられる。そこへ、昆虫に昆虫寄生菌が接種され硬化されて子実体原基が形成された昆虫体を入れ、子実体を発生させるものである。この生産方法により、昆虫体の腐敗を抑えつつ、子実体の形成を安定した状態で進行させることができる。
【0021】
前記昆虫寄生菌としては、アカントケミス属、ギベルラ属、コルディセプス属、スティルペラ属、ティラクリディウム属、トリポクラディウム属、トルビエラ属、ノムラエア属、パライサリア属、ヒメノスティルベ属、ヒルステラ属、ペキロマイセス属、エントモプトラ属、ボーベリア属及びメタリジウム属等の菌類が挙げられる。ここで、冬虫夏草菌類は、子嚢菌門、麦角(バッカク)菌目、麦角(バッカク)菌科の一属(冬虫夏草属)に該当する菌類である。冬虫夏草菌類として具体的には、麦角菌科のコルディセプス属、ギルベラ属、トルビエラ属及びヒルステラ属に属する菌類である。また、冬虫夏草菌類のうち、例えばコルディセプス属のサナギタケ(Cordyceps militaris)、ウスキサナギタケ等が挙げられる。
【0022】
前記昆虫は特に制限されないが、鱗翅目の昆虫、甲虫目の昆虫等が用いられる。鱗翅目の昆虫としては、ハスモンヨトウ、タバコガ、カイコガ、コナガ、ネキリムシ、コウモリガ等が挙げられる。甲虫目の昆虫としては、コガネムシ、カミキリムシ、コメツキムシ等が挙げられる。ここで、昆虫とは幼虫、蛹、成虫等の成長過程におけるいずれの形態(生態)をも含む概念であるが、取り扱いのよさから蛹の形態が好ましい。
【0023】
前記昆虫に昆虫寄生菌を接種する方法は特に制限されないが、容易かつ有効に行うために、昆虫の表皮に傷を付ける方法が好ましい。その方法としては、針、金属片、ガラス、セラミック等の硬い鋭利な刃物又はレーザー光を利用して行うことができる。昆虫の傷付けられた部分(以下、付傷部という)に昆虫寄生菌が接種されることで、昆虫寄生菌の感染が促進され、昆虫の体内で寄生菌の増殖が容易に行われ、昆虫が硬化し、又は子実体原基が形成される。ここで、子実体原基とは子実体の元になる粒状の部分(芽)を指す。付傷させた昆虫の付傷部に昆虫寄生菌を接種すると、昆虫の体内で繁殖し昆虫は菌糸体となり、昆虫の表皮に子実体原基が形成される。
【0024】
例えば、昆虫寄生菌のサナギタケを用い、22℃の条件で寒天培地としてのPDA培地(Potato Dextrose Agar、ジャガイモ・ブドウ糖寒天培地)上でサナギタケを純粋培養してその菌糸を蔓延させる。一方、非休眠のハスモンヨトウ蛹に先端が鋭利なピンセットで傷を付け、PDA培地上に置いてサナギタケを接種し、数日間保存して感染させる。その後、蛹を硬化させることができる。通常、昆虫の皮膚には、寄生菌に対する防御機構があるため寄生菌が感染しにくいが、昆虫の表皮に軽度の付傷部を形成し、そこに昆虫寄生菌を接種すると感染速度が高まり、昆虫の体内で寄生菌の増殖を速やかに行うことができる。培地としては、籾米、小麦、大麦等を使用した穀物培地等を用いることもできる。
【0025】
このように、培地上に昆虫寄生菌の菌糸(菌叢)が形成された状態、特に菌糸が蔓延した状態で昆虫を置いて接種することにより、昆虫が本来保持している細菌等の影響を排除し、昆虫寄生菌の速やかな感染を得ることが可能である。この結果、昆虫寄生菌の感染確率も高く、歩留まりの向上が可能である。
【0026】
次に、多孔質物質よりなる培地について説明する。
培地の全孔隙率(全空隙率)は、培地中に水分及び酸素を保持させるために高いことが必要で、70〜90%に設定され、70〜85%であることが好ましい。この全孔隙率が70%を下回る場合には、培地に水分を十分に与えたとき昆虫体に対する酸素の供給が不足し、昆虫寄生菌の子実体の形成が悪くなる。一方、90%を上回る場合には、培地に水分を十分に与えたとき昆虫体に対する水分量が過剰になって、昆虫体が腐敗する結果を招く。
【0027】
また、培地の細菌密度は、細菌による昆虫体の腐敗を抑えるため0〜0.5×10cfu/gに設定され、0〜1.0×10cfu/gであることが好ましい。なお、cfuは、colony forming unitの略称であり、コロニー(菌集落)を作る単位である。この細菌密度が0.5×10cfu/gを超える場合、昆虫体から子実体を形成する際に細菌が増殖し、昆虫体が腐敗して所望とする子実体の形成率を得ることができなくなる。
【0028】
多孔質物質よりなる培地として具体的には、鹿沼土、軽石、赤玉土等が挙げられる。鹿沼土は、栃木県鹿沼市付近の地下80〜100cm当たりの土層から産出される比較的砂分を多く含む土で、型崩れしない硬質土であり、鉱物として角閃石、斜方輝石、磁鉄鉱、斜長石等を含むものである。軽石は、火山砕屑物の一種で、塊状かつ多孔質のもののうち、淡色のものをいう。赤玉土は、関東ローム層として広く分布され、粘土質が多い赤土を高温で焼いて粒状にし、通気性、保水性が良く、細菌の少ないものである。これらのうち、全孔隙率が高く、細菌密度が低い点から、鹿沼土が最も好ましい。
【0029】
培地の水分量を保持し、昆虫体から昆虫寄生菌の子実体の発生を促すために、培地を水で湿らせることが好ましい。この場合、水を培地に定期的に供給し、培地を保湿させることが好ましい。用いる水としては、細菌類や糸状菌類の発生を抑えるため、殺菌水を使用することが望ましい。殺菌水としては、高温、高圧で殺菌処理して冷却した水などが用いられる。
【0030】
また、培地は、細菌の発生を抑え、昆虫体の腐敗を抑制するために、pH(水素イオン濃度)を3.8〜5.5の酸性状態に保持することが望ましい。このような酸性状態にするためには、クエン酸水溶液などを用いて培地を処理することが好ましい。pHが3.8よりも低くなると、培地が強酸性となって昆虫寄生菌の子実体の成長が妨げられ、好ましくない。一方、pHが5.5より高くなると、培地が中性に近くなって細菌の発生を十分に抑えることができなくなる。なお、酸性水作製装置(日本インテック(株)製、J.A.W035など)で作製した酸性水を使用することも有効である。
【0031】
続いて、容器は気密性の良い密閉容器であり、ガラス製容器、プラスチック製容器等が用いられる。容器が透明であれば、光を採り入れることができるため、子実体の色や光沢などを良好にし、品質の良い子実体を得ることができる。容器内の湿度を80%以上、好ましくは90%以上に保つことにより、昆虫体から子実体の発生を良好にすることができる。この容器には多孔質物質よりなる培地及び昆虫体が収容されるが、その容器内の温度及び湿度を一定に保持するために該容器を別の容器(大容器)内に収納することもできる。大容器内には水、好ましくは殺菌水を収容し、高湿度に保持して、培地が収容された容器内の湿度が低下しないようにすることが望ましい。
【0032】
大容器内を高湿度にし、その中に昆虫寄生菌の子実体を生産するための小容器を入れ、小容器にわずかに隙間を開け、水蒸気を多く含んだ空気を取り入れ、隙間を閉じて露点まで温度を下げることによって小容器内の培地と昆虫体が同時に保湿され、さらに生産を阻害する雑菌の侵入も少なくなる。また、小容器が複数個あった場合には、各々の容器内の湿度が一斉に揃うため子実体の形成も一斉に揃えることができる。
【0033】
大容器内の湿度を高めるためには、保湿紙(保水紙)、例えば市販のティッシュペーパーに殺菌水を含ませたものを容器の底面に敷いたり、殺菌水を入れたボトルを容器の角に配置したりする方法が適している。ちなみに、昆虫寄生菌の大量培養を安定化させるため、大容器の側面に両面テープなどを貼って粘着性を持たせることで、保管時に侵入するナメクジやコナダニなど食菌性動物から、昆虫体を保護することが可能となる。
【0034】
係る容器内に収容される培地の液相率は35〜65%、好ましくは35〜60%に調整され、培地が保湿状態に設定される。ここで、液相率は、培地中に含まれる水分含有率(%)を表す。この液相率は、各培地の液相率(水分保持率100%)に対する水分保持率を定めることによって算出することができる。培地の液相率は、鹿沼土では63.5%、軽石では52.2%及び赤玉土では59.9%である。この培地を完全に乾燥させ、水分保持率を0%としたときが液相率0%である。
【0035】
子実体の生産に当たり、容器内の温度を露点以下まで下げて多孔質物質及び昆虫体の表面に結露を生じさせることが好ましい。結露を生じさせることにより、多孔質物質及び昆虫体の表面に凝縮して水分が生成され、培地の液相率を速やかに高めることができると共に、昆虫体には直接又は多孔質物質の表面から水分が補給されることにより子実体の形成率を高めることができる。さらに、結露を生じさせる操作を複数回、好ましくは5〜10回繰り返すことにより、繰り返し凝縮して生成された水分が昆虫体に繰り返して補給され、上記の効果を一層高めることができる。
【0036】
次いで、保湿状態に置かれた容器内の培地上に、前述の子実体原基が形成された昆虫体を入れて子実体を発生させる。昆虫体を培地中に埋没させることにより、昆虫体は多孔質物質に取り囲まれ、周囲から水分が効果的に補給されるため子実体の形成率を向上させることができる。
【0037】
図1は、昆虫寄生菌の子実体を生産する装置を模式的に示す説明図である。この図1に示すように、多孔質物質よりなる培地11と複数の昆虫体12とを収容した容器としての蓋13付き底浅のガラス瓶14が、大容器15内に3個一列に配置されている。ガラス瓶14内の湿度を高く保つ必要性からガラス瓶14は蓋13付きとされ、必要に応じて蓋13を取って給水可能になっている。給水の方法としては、蓋13を開けて水をスプレーする方法が好ましい。大容器15は透明でなくてもよいが、大容器15の一部に図示しない採光用窓を備え、大容器15内に光を取り入れるようにすることが好ましい。全くの暗闇では、子実体が発生してもその形状及び色ともに良品とはならない。
【0038】
加えて、ガラス瓶14の蓋13を閉めて大容器15内に氷などを入れて大容器15内を冷却するか、或いは空調機器によって大容器15内の温度を18℃以下に設定することにより、ガラス瓶14内で結露させ、多孔質物質又は昆虫体12の表面に微細な水滴を生成させる。この状態においてガラス瓶14内は高湿度に保たれるので、子実体の発生は容易に行われる。大容器15内の湿度を高く維持するため、保湿紙16を大容器15の内底面に敷くことが望ましい。或いは、大容器15の片隅に図示しないカップに入れた保湿紙を置いておくこともできる。
【0039】
以上詳述した実施形態によれば、次のような作用及び効果が発揮される。
・ 本実施形態では、多孔質物質よりなり、全孔隙率が70〜90%で細菌密度が0〜0.5×10cfu/gの培地を容器内に収容し、該培地の液相率を35〜65%に調整して保湿状態とする。そこへ、昆虫に昆虫寄生菌が接種され硬化されて子実体原基が形成された昆虫体を入れ、昆虫寄生菌の子実体を発生させる。多孔質物質よりなる培地は細菌密度が非常に低いため、子実体の発生に際して細菌の増殖に基づく腐敗の発生が抑えられ、良好な子実体の発生が見られる。
【0040】
しかも、培地は全孔隙率が70〜90%と高く、液相率が35〜65%に調整されて保湿された状態で子実体の形成が行われる。そのため、培地内に水分及び酸素が十分に保持されると共に、多孔質物質表面に十分な水分を存在させることができる。このため、昆虫体には子実体の形成に必要な水分が多孔質物質から補給される。その結果、前記昆虫体から子実体を生産するに当たり、腐敗を抑制し、良好な子実体の形成率を高め、安定した状態で子実体を形成することができる。
【0041】
・ 前記容器内の温度を露点以下まで下げて多孔質物質及び昆虫体の表面に結露を生じさせることにより、多孔質物質及び昆虫体の表面に清潔な水滴が生成され、昆虫体に直接又は多孔質物質の表面から水分が補給され、昆虫体表面を十分に濡らすことができる。そのため、子実体の発生を促すことができ、子実体の形成率を高めることができる。
【0042】
・ 多孔質物質及び昆虫体の表面に結露を生じさせる操作を複数回繰り返すことにより、多孔質物質及び昆虫体の表面に繰り返して清潔な水分を生成させることができ、その水分が昆虫体に繰り返して補給される。そのため、子実体の形成を促進させることができる。
【0043】
・ 昆虫体を培地中に埋没させることにより、昆虫体が多孔質物質に取り囲まれ、昆虫体には周囲の多孔質物質から水分が補給される。従って、子実体の発生を促進させることができ、子実体の形成率を向上させることができる。
【0044】
・ 多孔質物質よりなる培地が鹿沼土であることにより、全孔隙率が高く、細菌密度が低いことから、培地としての作用及び効果を最も有効に発揮させることができる。
【実施例】
【0045】
以下、参考例、実施例及び比較例を挙げて前記実施形態をさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例の範囲に限定されるものではない。
(参考例1、培地の細菌密度)
培地として使用した市販の鹿沼土の粒子径を1cmに揃えたものについて細菌密度を調べた。調査は100gの鹿沼土を1リットルの殺菌水に入れてよく攪拌し、これをさらに殺菌水で10、100及び1000倍に希釈し、PDA平板培地上に1mlを流し込み、表面を風乾した後に25℃の恒温室において発生する細菌密度を調べた。なお、殺菌水は、温度120℃、圧力150kPaの条件で殺菌処理した水である。
【0046】
その結果、細菌密度は0〜0.5×10/乾土1g以下であり、著しく低い値であった。また、発生した細菌のコロニーをダイコンの根部に接種して観察したが腐敗は認められなかった。
(参考例2、培地の使用前後における細菌密度)
参考例1と同様の方法で、冬虫夏草菌を生産(栽培)する前及び生産した後(21日後)における培地の細菌密度を調べた。調査は3反復で行い平均した。それらの結果を表1に示した。
【0047】
【表1】

表1に示したように、使用前における培地の細菌密度は軽石、鹿沼土、パーライト、赤玉土について0〜0.5×10cfu/gの範囲内であり、低い値であった。その他の培地では、細菌密度が0.5×10cfu/gを超え、高い値であった。冬虫夏草菌の子実体を生産した後には、バーミキュライト、ピートモス、ミズゴケでは細菌密度が著しく高く、パーライト、赤玉土がこれに次いだ。鹿沼土及び軽石では、細菌密度は低いことが明らかになった。このような結果から、元々の培地には細菌が少なくても、生産過程で高湿度になるため細菌数が増加するものと考えられる。
(実施例1〜6及び比較例1〜11、培地の種類による子実体の発生程度及び評価)
ハスモンヨトウに寄生菌サナギタケ(Cordyceps militalis)を保菌させた昆虫体を100個体用意し、培地として鹿沼土、軽石、赤玉土、パーライト、バーミキュライト、ピートモス及びミズゴケを用いた。各培地の全孔隙率(%)、固相率(%)、液相率(%)及び気相率(%)を表2にまとめて示した。これらの数値は、温度25℃、湿度50%の大気圧下での値である。なお、全孔隙率と固相率の合計量が100%であり、固相率、液相率及び気相率の合計量が100%である。
【0048】
【表2】

表2に示したように、各培地の全孔隙率は鹿沼土が83.2%、軽石が72.5%、赤玉土が74.9%であり、本発明でいう全孔隙率が70〜90%の培地に該当するものである。パーライト、バーミキュライト、ピートモス及びミズゴケは、全孔隙率が90%を越え、不適当であった。
【0049】
次に、容器としてのガラス瓶(250ml)内に前記殺菌水で湿らせた各々の培地150mlを収容し、この中に前記昆虫体を入れ、該ガラス瓶を窓付きの大型のプラスチック容器内に入れ、25℃で管理した。そして、20日後に子実体の形成率、腐敗個体数、子実体の長さを調べ、それらの評価を下記の判断基準で行った。
【0050】
◎:子実体形成率が95%以上、腐敗個体数が0個及び子実体の長さが2cm以上の場合、○:子実体形成率が90%以上、腐敗個体数が0個及び子実体の長さが2cm以上の場合、×:子実体形成率が90%未満、腐敗個体数が1個以上又は子実体の長さが2cm未満の場合。
【0051】
表3における培地の水分保持率(%)は、培地を完全に乾燥させて水分保持率を0%にした状態で、水分を付与して各水分保持率となるようにした。また、液相率(%)は、表2に示した各培地の液相率(水分保持率100%)に前記水分保持率を掛け合せて算出した。
【0052】
それらの結果を表3に示した。また、20℃でも同様の試験を行い、25℃との違いを観察した。
【0053】
【表3】

表3に示したように、実施例1〜6の培地(鹿沼土、軽石及び赤玉土)及び液相率(36.5〜57.2%)では、いずれも子実体形成率が90%以上、腐敗個体数が0及び子実体の長さが2cm以上であり、子実体の生産について優れた結果が得られた。従って、培地としては、全孔隙率が高く、液相率が適切である鹿沼土、軽石及び赤玉土が適していることがわかった。その一方、比較例1〜11の培地(主にパーライト、バーミキュライト及びピートモス)及び液相率(主に18.5〜33.3%)では、いずれも子実体形成率が85%以下、腐敗個体数が18〜40及び子実体の長さが2cm未満であり、子実体の生産について不適当であった。
【0054】
また、20℃で管理した場合には、25℃の場合に比べて子実体の生育が5日程度遅くなった。さらに、腐敗の傾向は同じであったが、腐敗個体数はやや少なくなった。
(実施例7、子実体を培地(鹿沼土)内に埋没させた場合と、培地(鹿沼土)表面に配置した場合との子実体の発生程度の比較)
実施例5及び6と同じ方法で培地としての鹿沼土を収容した容器の中に50個体の昆虫体を入れた。昆虫体は同培地中に埋没させた区と、同培地上に配置した区を設置し、子実体の形成率を比較した。
【0055】
その結果、鹿沼土に埋没させた昆虫体の子実体形成率は98%であった。一方、鹿沼土上に配置した昆虫体の子実体形成率は82%であった。このような差が生じた原因は、培地上に配置した区では、昆虫体の一部に水分が十分に供給されず、乾燥したためと推測される。このことは、昆虫体の体表面の濡れが子実体の発生に大きく影響していることを示すものと考えられる。
(実施例8、光が子実体の形成に及ぼす影響)
実施例1〜6と同じ方法で容器内に20個体の昆虫体を入れ、1つ目の容器は採光条件下〔12000ルクス(lux)〕に、2つ目の容器は暗闇条件下に、3つ目の容器は12D(12時間暗闇(DARK))12L(12時間採光(LIGHT))の暗闇条件及び採光条件下に置き、20日後に子実体の形成率を調べた。
【0056】
その結果、子実体の形成率は、12D12Lの条件下に置いた容器内の昆虫体では96%、採光条件下では88%、及び暗闇条件下では80%であった。暗闇条件下で発生した子実体の生育は最も悪く、全て着色せず、白色となった。
(実施例9、軽石の粒子径と子実体の発生との関係)
実施例1〜6と同じ方法で容器の中に粒子径3、7及び12mmの大きさの軽石を収容し、この中に50個体の昆虫体を入れ、23℃の恒温室内に静置した。20日後に子実体の形成率を調べた。
【0057】
その結果、3及び7mmの粒子径の軽石を使用した区の子実体形成率は98%であった。12mmの大きさの軽石を使用した区の子実体形成率は94%でやや低下したが大差はなかった。従って、12mm以下の粒子径では子実体の形成率に大きな差はないものと考えられる。
(実施例10、使用する水の種類による子実体の発生)
実施例1〜6と同じ方法で容器の中に平均粒子径7mmの軽石を入れ、この中に水道水、河川水、蒸留水、殺菌水を50mlずつ入れて培地を湿らせた。この中に50固体の昆虫体を埋没させ、23℃の恒温室で管理した。そして、20日後に子実体の形成率を調べた。
【0058】
その結果、子実体の形成率は、水道水の場合94%、河川水の場合82%、蒸留水の場合94%、及び殺菌水の場合94%であり、腐敗率は河川水のみ14%で他の区は腐敗率が2〜4%と少なかった。これらの結果から、使用する水は無菌水が望ましいと考えられる。
(実施例11〜13及び比較例12〜15)
実施例11〜13では、培地として赤玉土、軽石及び鹿沼土をそれぞれ500mlのガラス瓶内に80%程度充填した。比較例12〜15では、パーライト、バーミキュライト、ピートモス及びミズゴケをそれぞれ500mlのガラス瓶内に80%程度充填した。これらのガラス瓶中に、殺菌水を50ml入れた。その状態で密閉し、18℃の恒温室に3日間保管した。一方、エントモプトラ属菌の昆虫寄生菌ズープトラ ラディカンス(Zoophthora radicans)菌に感染したツマグロヨコバイの成虫50頭をシャーレ内に入れ、さらにこの中にツマグロヨコバイの成虫を1000頭入れて1日1回攪拌して感染させ、5日後に上記各ガラス瓶内に100頭ずつ入れた。そして、10日後に菌糸が密生した個体数を数え、菌糸発生率(%)を求めた。
【0059】
同様の方法でボーベリア菌としてボーベリア バッシアーナ(Beauveria bassiana)菌を用いて試験を行った。ボーベリア菌が感染したミナミキイロアザミウマを保湿した小瓶内に入れ、ティシュペーパーを濡らして同時に入れた。この中に、ミナミキイロアザミウマを1000頭入れて3日間置いて感染させ、これらの個体を上記の各ガラス瓶内に100頭ずつ入れ、菌糸発生率(%)を求めた。
【0060】
【表4】

表4に示した結果より、エントモプトラ菌及びボーベリア菌の2菌株ともに、実施例11〜13の赤玉土、軽石及び鹿沼土の場合には昆虫寄生菌が感染して菌糸発生率が高かった。一方、比較例12〜15の場合には、菌糸発生率が58%以下であり、昆虫寄生菌が感染しても菌糸の発生がしにくいものと推定される。比較例12〜15の培地では、昆虫体の体表面が乾燥し過ぎるか、或いは水中に埋没した状態となり、適度な湿度の条件が作りにくいものと推定される。これに対して、実施例11〜13の鹿沼土等で保湿した容器内では菌糸が発生しやすい状態が保持されるものと考えられる。
(実施例14、昆虫体の結露状況)
40リットルの2個の大容器内に、pH4.0の酸性水で湿らせた培地(軽石)と実施例1〜6の昆虫体100個体を入れた蓋付きの底が浅い容器(0.5リットルのガラス瓶)を配置し、25℃に20日間静置した。一方の大容器では、ガラス瓶内を25℃、湿度80%の条件下で20日間静置して子実体の形成率を調べた。なお、25℃、湿度80%における水蒸気圧での露点は21℃である。
【0061】
他方の大容器では、ガラス瓶内を25℃、湿度80%の条件下で初日と10日後に酸性水(pH4.0)を培地に噴霧後、15℃に冷却して5時間保持し、ガラス瓶内と大容器内ともに結露させた。その後25℃、20日間管理し、子実体の形成率を調べた。続いて、同様の方法で大容器2個とガラス瓶2個を用い、3日に1回温度を下げて結露させたときの結露と子実体の形成率を調べた。
【0062】
その結果、15℃に一度冷却してガラス瓶内の湿度を均一にし、昆虫体表面に微細な結露を生じさせると子実体の形成率は100%となり、対照区が96%だったのに対して著しく優れていることがわかった。また、3日に1回、計7回温度を下げたときの子実体の形成率は100%で、子実体の長さは18日程度で5cm程度まで長くなり、著しく生育がよかった。係る結果から、結露回数が多くなると子実体の生育が助長されることがわかった。
【0063】
なお、前記実施形態を次のように変更して具体化することも可能である。
・ 前記容器として、自動的に恒温、恒湿状態を確保できる装置を備えた容器を用い、容器内の温度及び湿度を自動的に調整するように構成することもできる。
【0064】
・ 複数の容器内に収容する昆虫体の個体数をそれぞれ均一とし、各容器内における昆虫寄生菌の子実体の発生を揃えるように構成することができる。
・ 容器内に収容する多孔質物質の粒子径を揃えて充填率を高めると共に、容器内における培地の保湿状態が均一になるように構成することもできる。
【0065】
・ 培地にミネラル類、ビタミン類、アミノ酸類等の栄養分を添加し、子実体の形成率及び子実体中の成分を高めるようにすることもできる。
次に、前記実施形態から把握できる技術的思想について以下に記載する。
【0066】
・ 前記昆虫寄生菌は冬虫夏草菌類であることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の昆虫寄生菌の子実体の生産方法。このように構成した場合、冬虫夏草菌類について請求項1から請求項5のいずれかに係る発明の効果を発揮することができ、その利用価値を高めることができる。
【0067】
・ 前記昆虫体を採光条件下及び暗闇条件下に交互に置いて子実体を発生させることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の昆虫寄生菌の子実体の生産方法。このように構成した場合、請求項1から請求項5のいずれかに係る発明の効果に加え、子実体の形成を促し、子実体の形成率を高めることができる。
【0068】
・ 前記培地を滅菌された水で湿らせた後、そこへ昆虫体を入れることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の昆虫寄生菌の子実体の生産方法。このように構成した場合、請求項1から請求項5のいずれかに係る発明の効果に加え、細菌の発生を抑えることができ、昆虫体の腐敗を抑制することができる。
【0069】
・ 前記培地を酸性水で湿らせた後、そこへ昆虫体を入れることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の昆虫寄生菌の子実体の生産方法。このように構成した場合、請求項1から請求項5のいずれかに係る発明の効果に加え、細菌の発生を抑え、昆虫体の腐敗を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】本発明の実施形態における昆虫寄生菌の子実体生産装置を模式的に示す説明図。
【符号の説明】
【0071】
11…多孔質物質よりなる培地、12…昆虫体、14…容器としてのガラス瓶。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多孔質物質よりなり、全孔隙率が70〜90%で細菌密度が0〜0.5×10cfu/gの培地を容器内に収容し、該培地の液相率を35〜65%に調整して保湿状態とし、そこへ昆虫に昆虫寄生菌が接種され硬化されて子実体原基が形成された昆虫体を入れ、昆虫寄生菌の子実体を発生させることを特徴とする昆虫寄生菌の子実体の生産方法。
【請求項2】
前記容器内の温度を露点以下まで下げて多孔質物質及び昆虫体の表面に結露を生じさせることを特徴とする請求項1に記載の昆虫寄生菌の子実体の生産方法。
【請求項3】
前記多孔質物質及び昆虫体の表面に結露を生じさせる操作を複数回繰り返すことを特徴とする請求項2に記載の昆虫寄生菌の子実体の生産方法。
【請求項4】
前記昆虫体を培地中に埋没させることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の昆虫寄生菌の子実体の生産方法。
【請求項5】
前記多孔質物質よりなる培地は鹿沼土であることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の昆虫寄生菌の子実体の生産方法。

【図1】
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【公開番号】特開2008−307023(P2008−307023A)
【公開日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−160331(P2007−160331)
【出願日】平成19年6月18日(2007.6.18)
【出願人】(505424457)
【Fターム(参考)】