説明

昆虫細胞において産生される組換えE−セレクチン

本発明の特徴は、組換え哺乳動物E−セレクチンペプチド、前記ペプチドをコードする核酸、これらの核酸を有するベクターおよび細胞、ならびにそのペプチドの産生方法を含む。さらに、本発明の特徴は、E−セレクチンに対する粘膜寛容を誘導する組換え哺乳動物E−セレクチンペプチドを用いて炎症に関連する疾患および状態を治療する方法を含む。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
関連出願
本願は、2005年3月10日に出願された米国仮出願第60/660,258号の利益を主張するものである。上記出願の教示全体が、本明細書中で参照により援用される。
【0002】
発明の背景
E−セレクチンは、サイトカイン誘導性であり、内皮細胞のみに見られる細胞表面糖タンパク質細胞接着分子である。E−セレクチンは、活性化された内皮に対する、好中球、単球、好酸球、ナチュラルキラー(NK)細胞およびT細胞の一部を含む、様々な白血球の接着を媒介する。E−セレクチンの発現は、IL−1およびTNFαといった炎症関連サイトカインならびにリポ多糖(lippopolysacharide;LPS)に応答して、転写のアップレギュレーションを介して、ヒト内皮細胞において誘導される。
【0003】
従来の抗炎症性の治療法としては、白血球の循環性貯留の除去、白血球機能の阻害ならびにシクロスポリンAおよびFK506などの免疫抑制性薬物の使用が挙げられる。しかしながら、ほとんどの利用可能な免疫抑制剤は、長期間にわたる使用を制限する全身性副作用を有する。
【0004】
自己抗原の粘膜投与によって、脳卒中および動脈硬化症のモデルならびに自己免疫のいくつかのモデル(例えば、糖尿病、関節炎および実験上のアレルギー性脳脊髄炎)における炎症活性および疾患活性が抑制されることが示されている。経鼻/経口投与した低用量のE−セレクチンの複数回投与によって、E−セレクチンに対する粘膜寛容が誘導された。粘膜寛容は、確立されたモデルであり、それによって免疫寛容が、特定の抗原の経鼻点滴または摂食を通じてその抗原に対して誘導される。経鼻投与された抗原は、宿主を病原体の侵入から守るように進化し、吸入された非病原性のタンパク質に対しては宿主が反応するのを防ぐという固有の特性を発達させてきた鼻部関連リンパ系組織と接触する。低用量抗原の反復投与後に、制御性T細胞の産生による活発な寛容が起きる。
【0005】
Eセレクチン発現は、恒常的ではなく、本質的に、IL−1、TNF−αまたはLPSなどの炎症性刺激に応答して活性化されるようになる内皮に限定される。E−セレクチンは、in vivoにおいて局所的な炎症部位に長期に亘って発現されることがあり、E−セレクチンは、E−セレクチンに対して寛容化された制御性T細胞を、活性化した内皮の局所的な部位に導く適切な寛容化分子として作用する。低用量レジメンで寛容化されたこれらの制御性T細胞は、抗原再刺激の際、TH1免疫応答を抑制するIL−10およびトランスフォーミング成長因子(TGF)b1などのサイトカインを分泌する。これらのT細胞の活性化は、(このE−セレクチンの場合)寛容抗原に特異的であるにもかかわらず、活性化に応答して分泌される免疫調節性サイトカインは、非特異的な効果を有する。従って、どこに寛容抗原が存在しても、局所的な免疫抑制が生じることになる。
【0006】
寛容化剤としてE−セレクチンを使用することにより、活性化された血管セグメントに対して免疫抑制を標的化することができる。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0007】
発明の要旨
本発明の特徴としては、組換え哺乳動物E−セレクチンペプチド、これらのペプチドをコードする核酸、これらの核酸を有するベクターおよび細胞、ならびにそのペプチドの産生方法が挙げられる。さらに、本発明の特徴としては、組換え哺乳動物E−セレクチンペプチドを使用してE−セレクチンに対する粘膜寛容を誘導する炎症性疾患の治療方法が挙げられる。
【0008】
本発明は、一連の哺乳動物E−セレクチンペプチドを提供する。あるE−セレクチンペプチドは、野生型ヒトEセレクチン(配列番号1)の残基#20〜303から本質的になる。このペプチドは、該ペプチドに結合された、カルボキシ末端のジペプチドRSを含む1個以上のC末端タグを有してもよい。さらに本発明は、N末端の分泌シグナルペプチドが結合された当該ペプチドを含む。ヒト組換えペプチドが好ましい一方で、好ましくは200〜400アミノ酸の、配列番号1と少なくとも60%の同一性を有する、他の哺乳動物のペプチドを使用してもよい。哺乳動物E−セレクチンペプチドの混合物および組み合わせもまた、企図される。
【0009】
本発明のペプチドのC末端タグは、c−mycタグおよびヒスチジンタグなどの精製タグおよび安定タグを含む。N末端の分泌シグナルペプチドは、哺乳動物細胞および昆虫細胞の両方に由来するペプチドを含む。N末端の分泌シグナルペプチドは、AcMNPV gp64 env分泌配列MGWSWIFLFLLSGTASVHS(配列番号3)、シグナルペプチド配列MGWSWIFLFLLSGTAS(配列番号4)ならびに野生型ヒトシグナル配列ペプチドのMIASQFLSALTLVLLIKESGA(配列番号2)を含む。本発明のペプチドは、昆虫細胞、哺乳動物細胞、細菌細胞および酵母を含む様々な細胞株において産生することができる。
【0010】
本発明はまた、一連の哺乳動物E−セレクチンペプチドをコードする核酸分子を特徴とする。この核酸分子は、本質的に、野生型ヒトE−セレクチン(配列番号1)の残基#20〜303からなるE−セレクチンペプチドをコードする。この核酸分子は、該ぺプチドに結合された、カルボキシ末端のジペプチドRSを含む1個以上のC末端タグを有し得るE−セレクチンペプチドもコードする。さらに本発明は、この基本的なE−セレクチンペプチドにN末端の分泌シグナルペプチドが結合したものをコードする核酸分子を含む。ヒト組換えペプチドをコードする核酸分子が好ましい一方で、好ましくは200〜400アミノ酸の、配列番号1と少なくとも60%の同一性を有する他の哺乳動物のペプチドをコードするものを使用してもよい。哺乳動物E−セレクチンペプチドの混合物および組み合わせもまた、企図される。
【0011】
本発明はまた、c−mycタグおよびヒスチジンタグなどの精製タグおよび安定タグをコードする核酸分子を特徴とする。これらの核酸分子は、哺乳動物細胞および昆虫細胞の両方に由来するペプチドを含むN末端の分泌シグナルペプチドをコードすることができる。これらの核酸分子は、N末端の分泌シグナルペプチドをコードすることができる。そのペプチドとしては、AcMNPV gp64 env分泌配列MGWSWIFLFLLSGTASVHS(配列番号3)、シグナルペプチド配列MGWSWIFLFLLSGTAS(配列番号4)ならびに野生型ヒトシグナル配列ペプチドのMIASQFLSALTLVLLIKESGA(配列番号2)、を含むN末端の分泌シグナルペプチドをコードすることができる。それらの核酸分子は、昆虫細胞、哺乳動物細胞、細菌細胞および酵母を含む様々な細胞株において本発明のペプチドを産生するために使用することができる。
【0012】
本発明はまた、E−セレクチンペプチドをコードするヌクレオチド配列、E−セレクチンペプチドをコードするヌクレオチド配列を有するベクター、またはE−セレクチンペプチドをコードする核酸に連結されたバキュロウイルスシグナルペプチドをコードするDNAセグメントを含む組換えバキュロウイルストランスファーベクター、を有するバキュロウイルスを特徴とする。そのDNA配列は、コードされるE−セレクチンペプチドが、コードされるシグナルペプチドとインフレームで翻訳されるように位置している。この組換えバキュロウイルストランスファーベクターは、宿主細胞においてE−セレクチンペプチドをコードする核酸を発現させるために、好ましくはバキュロウイルスプロモーターに作動可能に連結される。宿主細胞は、昆虫細胞、細菌細胞および哺乳動物細胞を含む。好ましくは、組換えバキュロウイルストランスファーベクターは、前記昆虫宿主細胞用の培地に本発明のE−セレクチンペプチドを分泌させるための配列を含む。
【0013】
本発明はまた、1個以上のE−セレクチンペプチドまたはヌクレオチドおよびキャリア、好ましくは薬学的に許容可能なキャリアを含む組成物を特徴とする。E−セレクチンペプチドまたはE−セレクチンペプチドをコードするヌクレオチドを含む単離された細胞および細胞の組成物もまた、本発明の一部である。有用な細胞としては、哺乳動物細胞、細菌細胞および昆虫細胞を含み、好ましくは、昆虫細胞である。
【0014】
本発明は、さらに、本発明のE−セレクチンペプチドの産生方法を特徴とする。この方法は、E−セレクチンペプチドをコードする核酸に連結されたバキュロウイルスシグナルペプチドをコードするDNAセグメントを含む組換えトランスファーベクターを構築する工程によって開始し、そのシグナル配列およびE−セレクチンペプチドをコードする核酸は、インフレームで翻訳される。バキュロウイルスシグナルペプチドをコードするDNAセグメントは、昆虫細胞においてE−セレクチンペプチドを発現し分泌するために、バキュロウイルスプロモーターに作動可能に連結される。第1の昆虫細胞に、組換えトランスファーベクターおよびバキュロウイルスDNAをコトランスフェクションさせ、組換えバキュロウイルスを産生する。その組換えバキュロウイルスを回収する。第2の昆虫細胞に、この回収された組換えバキュロウイルスを感染させる。感染した昆虫細胞は、培地中で培養され、E−セレクチンペプチドを発現し、分泌する。その培地を回収し、精製することにより、E−セレクチンペプチドを回収する。
【0015】
本発明はまた、可溶性E−セレクチンペプチドに対する粘膜寛容を誘導することによって個体における炎症を介した疾患または状態を治療する方法を含む。これは、低用量のE−セレクチンを個体に経鼻または経口により複数回投与することによって達成される。
【0016】
本発明の目的および特徴は、以下の詳細な説明および図面を参照することにより、さらによく理解することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
発明の詳細な説明
本発明は、組換えE−セレクチンペプチド、E−セレクチンペプチドをコードするDNAならびにそのペプチドの産生方法および使用方法を提供する。以下の定義を、本明細書全体にわたって使用する。
【0018】
定義:
本発明の実施は、他に示されない限り、当該分野の技術の範囲内である、分子生物学、微生物学および組換えDNA技術の従来技術を使用する。このような技術は、文献において十分に説明されている。例えば、サムブルック(Sambrook)、フリッチュ(Fritsch)およびマニアティス(Maniatis)、1989年、「Molecular Cloning:A Laboratory Manual」、第2版;「Oligonucleotide Synthesis」(M.J.ゲイト(M.J.Gait)編、1984年);「Nucleic Acid Hybridization」(B.D.ハーネス(B.D.Harnes)およびS.J.ヒギンズ(S.J.Higgins)編、1984年);「A Practical Guide to Molecular Cloning」(B.パーバル(B.Perbal)、1984年);および「Methods in Enzymology」シリーズ(Academic Press,Inc.);「Short Protocols In Molecular Biology」(アウスベル(Ausubel)ら編、1995年)を参照のこと。本明細書中に記載される、前出および後出両方のすべての特許、特許出願および出版物は、それらの全体が、本明細書中で参照により援用される。
【0019】
本明細書中で使用する、ペプチドの「N末端」領域とは、遺伝子の内部またはその5’末端に位置するポリヌクレオチド配列(二本鎖または一本鎖)によってコードされるペプチド配列のことをいい、遺伝子の5’タンパク質コード領域が挙げられるが、これに限定されない。本明細書中で使用する「アミノ末端」領域とは、あるペプチドの初めのアミノ酸から開始して、最初の300アミノ酸までか、または当該ペプチドの1/3のアミノ末端のことをいう。ペプチドの「アミノ末端」領域は、3アミノ酸以上、かつ350アミノ酸以下の長さである。ペプチドの「アミノ末端」領域の他の可能性のある長さとしては、5、10、20、25、50、100および200アミノ酸が挙げられるが、これらに限定されない。
【0020】
本明細書中で使用する、ペプチドの「カルボキシ末端」領域または「C末端」領域とは、遺伝子の内部またはその3’末端に位置するポリヌクレオチド配列(二本鎖または一本鎖)によってコードされるポリペプチド配列のことをいい、遺伝子の3’タンパク質コード領域が挙げられるが、これに限定されない。本明細書中で使用する「カルボキシ末端」領域とは、ペプチドの最後のアミノ酸から、300アミノ酸まで、または当該ぺプチドの1/3のカルボキシ末端のことをいう。「3’末端」とは、ポリAテールが存在する場合、ポリAテールを含まない。ポリペプチドの「カルボキシ末端」領域は、3アミノ酸以上、かつ350アミノ酸以下の長さである。ペプチドの「カルボキシ末端」領域の他の可能性のある長さとしては、5、10、20、25、50、100および200アミノ酸が挙げられるが、これらに限定されない。
【0021】
第2のE−セレクチンペプチドに類似したアミノ酸配列を有するE−セレクチンペプチドとは、以下の少なくとも1つを満たすものである:(a)第2のE−セレクチンペプチドのアミノ酸配列と、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%または少なくとも99%同一であるアミノ酸配列を有するE−セレクチンペプチド;(b)少なくとも25個の連続したアミノ酸残基、少なくとも40個の連続したアミノ酸残基、少なくとも50個の連続したアミノ酸残基、少なくとも60個連続したアミノ残基、少なくとも70個の連続したアミノ酸残基、少なくとも80個の連続したアミノ酸残基、少なくとも90個の連続したアミノ酸残基、少なくとも100個の連続したアミノ酸残基、少なくとも125個の連続したアミノ酸残基または少なくとも150個の連続したアミノ酸残基の第2のタンパク質性物質をコードするヌクレオチド配列にストリンジェントな条件下でハイブリダイズするヌクレオチド配列によってコードされるE−セレクチンペプチド;および(c)第2のE−セレクチンペプチドをコードするヌクレオチド配列と、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%または少なくとも99%同一であるヌクレオチド配列によってコードされるE−セレクチンペプチド。
【0022】
第2のE−セレクチンペプチドと類似の構造を有する第1のE−セレクチンペプチドとは、第2のE−セレクチンペプチドと同様の2次構造、3次構造または4次構造を有するE−セレクチンペプチドのことをいう。E−セレクチンペプチドの構造は、当業者に公知の方法によって決定することができる。それらの方法としては、ペプチド配列決定、X線結晶構造解析、核磁気共鳴、円偏光二色性および結晶学的電子顕微鏡観察が挙げられるが、これらに限定されない。
【0023】
2つのアミノ酸配列または2つの核酸配列の同一性(%)(% identity)を決定するために、それらの配列を最適な比較目的のためにアライメントを行う(例えば、第2のアミノ酸配列または核酸配列と最適なアライメントを行うために、第1のアミノ酸配列または核酸配列の配列内にギャップを導入することができる)。そして、対応するアミノ酸の位置またはヌクレオチドの位置でアミノ酸残基またはヌクレオチドが比較される。第1の配列における位置が、第2の配列において対応する位置と同じアミノ酸残基またはヌクレオチドで占められているとき、その分子は、その位置において同一である。2つの配列間の同一性(%)は、それらの配列によって共有される同一の位置の数の関数(すなわち、同一性(%)=同一で重なる位置の数/位置の総数×100%)である。これら2つの配列は、同じ長さであり得る。
【0024】
2つの配列間の同一性(%)の決定は、数学的アルゴリズムを使用して達成することもできる。2つの配列の比較に使用される数学的アルゴリズムの好ましい非限定的な例は、カーリン(Karlin)およびアルチュル(Altschul)、1990年、Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.87:2264〜2268頁のアルゴリズム、カーリン(Karlin)およびアルチュル(Altschul)、1993年、Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.90:5873〜5877頁において改変されたアルゴリズムである。このようなアルゴリズムは、アルチュル(Altschul)ら、1990年、J.Mol.Biol.215:403頁のNBLASTプログラムおよびXBLASTプログラムに組み込まれている。BLASTヌクレオチド検索は、本発明の核酸分子と相同性のヌクレオチド配列を得るために、NBLASTヌクレオチドプログラムパラメータセット、例えば、スコア=100、ワード長=12で実施することができる。BLASTタンパク質検索は、本発明のタンパク質分子と一致するアミノ酸配列を得るために、XBLASTプログラムパラメータセット、例えば、スコア−50、ワード長=3で実施することができる。比較目的でギャップを含んだアライメントを得るために、アルチュル(Altschul)ら、1997年、Nucleic Acids Res.25:3389〜3402頁に記載されているようなGapped BLASTを使用することができる。あるいは、分子間の遠縁関係を検出する反復検索を実施するために、PSI−BLASTを使用することができる(同書)。BLASTプログラム、Gapped BLASTプログラムおよびPSI−Blastプログラムを使用するとき、(例えば、XBLASTおよびNBLASTの)それぞれのプログラムのデフォルトパラメータを使用することができる(例えば、NCBIウェブサイトを参照のこと)。配列の比較に使用される数学的アルゴリズムの別の好ましい非限定的な例は、マイヤーズ(Myers)およびミラー(Miller)、1988年、CABIOS 4:11〜17頁のアルゴリズムである。このようなアルゴリズムは、GCG配列アライメントソフトウェアパッケージの一部であるALIGNプログラム(バージョン2.0)に組み込まれている。アミノ酸配列を比較するためにALIGNプログラムを使用するとき、PAM120残基重みづけ表(weight residue table)、ギャップ長ペナルティー=12およびギャップペナルティー=4を使用することができる。
【0025】
2つの配列間の同一性(%)は、ギャップの有無により、先に記載したものと同様の技術を用いて決定することができる。同一性(%)を算出する際、代表的には、正確な一致のみを計算する。
【0026】
本明細書中で使用する、E−セレクチンペプチドアナログに関した用語「アナログ」とは、E−セレクチンペプチドと類似かまたは同一の機能を有し、そしてE−セレクチンペプチドと構造的に類似の第2の有機分子または無機分子のことをいう。用語「アナログ」は、そのコア構造がE−セレクチンペプチドのコア構造と同一か、またはよく似ている分子を含むが、その分子は、化学修飾または物理的修飾されている。用語「アナログ」は、他の原子または分子に結合することができるE−セレクチンペプチドの共重合体を含む。「生物学的に活性なアナログ」および「アナログ」は、本明細書中で交換可能に使用され、E−セレクチンペプチドの本質的に同じアゴニスト作用またはアンタゴニスト作用を示す有機分子または無機分子を網羅する。
【0027】
本明細書中で使用する、E−セレクチンペプチドの「ヌクレオチドアナログ」とは、五炭糖および/または1個以上のリン酸エステルが、そのそれぞれのアナログで置換されているヌクレオチドのことをいう。例示的なリン酸エステルアナログとしては、アルキルホスホナート、メチルホスホナート、ホスホルアミダート、ホスホトリエステル、ホスホロチオアート、ホスホロジチオアート、ホスホロセレノアート、ホスホロジセレノアート、ホスホロアニロチオアート、ホスホロアニリダート、ホスホロアミダート、ボロノホスファートなどが挙げられるが、これらに限定されず、対イオンが存在する場合はそれらに関連した任意の対イオンを含む。DNA/RNAリン酸エステル骨格および/または糖リン酸エステル骨格が、異なる型の結合で置換されているポリヌクレオチドアナログに重合され得る核酸塩基モノマーはまた、「ヌクレオチドアナログ」の定義内に含まれる。核酸塩基部分が、非従来型ヌクレオチド、すなわち、G、A、T、UまたはCの1つと異なるヌクレオチドが、さらに「ヌクレオチドアナログ」内に含まれる。一般に非従来型核酸塩基は、隣接する反対方向のポリヌクレオチド鎖上に存在する少なくとも1つの核酸塩基部分と水素結合を形成するか、または相互作用せず、干渉しない塩基を提供する能力を有する。
【0028】
本明細書中で使用する、用語「有効量」とは、炎症または1以上の症状の進行、重症度および/または持続期間を低減または回復させるか、炎症または1以上の症状の発症を予防するか、炎症または1以上の症状の悪化を予防するか、または別の治療法の予防的もしくは治療的な効果を向上または改善するのに十分なE−セレクチンペプチドまたはE−セレクチン核酸の量のことをいう。
【0029】
本明細書中で使用する、用語「有効量」とは、経鼻投与を介してE−セレクチンに対する寛容を誘導するのに十分なE−セレクチンペプチドの量のことをいう。
【0030】
本明細書中で使用する、E−セレクチンタンパク質に関連した文脈における用語「フラグメント」とは、哺乳動物E−セレクチンのアミノ酸配列の、少なくとも25個の連続したアミノ酸残基、少なくとも40個の連続したアミノ酸残基、少なくとも50個の連続したアミノ酸残基、少なくとも60個の連続したアミノ残基、少なくとも70個の連続したアミノ酸残基、少なくとも連続した80個のアミノ酸残基、少なくとも連続した90個のアミノ酸残基、少なくとも連続した100個のアミノ酸残基、少なくとも連続した125個のアミノ酸残基、少なくとも150個の連続したアミノ酸残基、少なくとも連続した175個のアミノ酸残基、少なくとも連続した200個のアミノ酸残基または少なくとも連続した250個のアミノ酸残基のアミノ酸配列を含むペプチドまたはポリペプチドのことをいう。本発明において有用なタンパク質またはポリペプチドのフラグメントは、哺乳動物のE−セレクチンの少なくとも1つの機能を保持する。タンパク質またはポリペプチドのフラグメントは、哺乳動物のE−セレクチンの2個、3個、4個またはそれ以上の機能を保持してもよい。
【0031】
本明細書中で使用する、用語「組み合わせて」とは、治療的な処置のことをいう場合、2種以上の治療法(例えば、2つ以上の予防薬および/または治療薬)の使用のことをいう。用語「組み合わせて」の使用は、治療法(例えば、予防薬および/または治療薬)を、被験体に施す順序を限定しない。第1の治療法(例えば、第1の予防薬または治療薬)は、被験体に第2の治療法(例えば、第2の予防薬または治療薬)の実施の前(例えば、5分前、15分前、30分前、45分前、1時間前、2時間前、4時間前、6時間前、12時間前、24時間前、48時間前、72時間前、96時間前、1週間前、2週間前、3週間前、4週間前、5週間前、6週間前、8週間前または12週間前)、第2の治療法と同時、または第2の治療法の後(例えば、5分後、15分後、30分後、45分後、1時間後、2時間後、4時間後、6時間後、12時間後、24時間後、48時間後、72時間後、96時間後、1週間後、2週間後、3週間後、4週間後、5週間後、6週間後、8週間後または12週間後)に実施することができる。
【0032】
本明細書中で使用する、「単離された」または「精製された」とは、ペプチドまたは核酸に関して使用される場合、天然に存在する配列が、その通常の細胞内(例えば、染色体の)環境から取り出されているか、または非天然環境で合成されている(例えば、人工的に合成されている)ことを意味する。従って、「単離された」または「精製された」配列は、無細胞溶液中に存在してもよく、異なる細胞内環境におかれていてもよい。用語「精製された」は、その配列がヌクレオチドまたはペプチドのみで存在するということを示しているのではなく、その配列に天然に関連した、非ヌクレオチド物質または非ペプチド物質を本質的に含まず(約90〜95%の純度)、従って、単離された染色体と区別されることを示す。
【0033】
本明細書中で使用する、タンパク質性物質(例えば、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質または抗体)に関して、用語「単離された」および「精製された」とは、本質的に細胞物質を含まないタンパク質性物質のことをいい、いくつかの実施形態においては、由来する細胞源または組織源からの異種性タンパク質性物質(すなわち、混入タンパク質)を本質的に含まないか、または化学的に合成されるとき、化学前駆体または他の化学物質を本質的に含まないタンパク質性物質のことをいう。「本質的に細胞物質を含まない」との語法は、タンパク質性物質が、単離されるか、または組換えで産生される細胞の細胞成分から分離されているタンパク質性物質の調製物を含む。従って、本質的に細胞物質を含まないタンパク質性物質は、約30%、約20%、約10%または約5%未満(乾燥重量)の異種性タンパク質性物質(例えば、タンパク質、ポリペプチド、ペプチドまたは抗体;「混入タンパク質」ともよばれる)を有するタンパク質性物質の調製物を含む。タンパク質性物質は、組換えで産生されるとき、好ましくは培地を本質的に含まないこと、すなわち、培地が、タンパク質調製物の容量の約20%、約10%または約5%未満であることを意味する。タンパク質性物質は、化学合成によって生成されるとき、好ましくは化学前駆体または他の化学物質を本質的に含まず、すなわち、タンパク質性物質の合成に関連する化学前駆体または他の化学物質から分離されている。従って、タンパク質性物質のこのような調製物は、約30%、約20%、約10%、約5%(乾燥重量)未満の目的のタンパク質性物質以外の化学前駆体または化合物を有する。好ましくは、本明細書中で開示されるタンパク質性物質は、単離されている。
【0034】
本明細書中で使用する、「核酸」は、用語「ポリヌクレオチド」と交換可能であり、一般に、任意のポリリボヌクレオチドまたはポリデオキシリボヌクレオチドのことをいい、それらは、無修飾RNAもしくは無修飾DNAまたは修飾RNAもしくは修飾DNAあるいはそれらの任意の組み合わせであり得る。「核酸」としては、一本鎖核酸および二本鎖核酸が挙げられるが、これらに限定されない。本明細書中で使用する、用語「核酸」はまた、1個以上の修飾塩基を含む、上記のようなDNAまたはRNAを含む。従って、安定性または他の理由で修飾された骨格を有するDNAまたはRNAは、「核酸」である。本明細書中で使用する、用語「核酸」は、このような化学的、酵素的または代謝的に修飾された形態の核酸だけでなく、ウイルスならびに例えば単純細胞および複雑型細胞を含む細胞の特徴である化学形態のDNAおよびRNAを包含する。「核酸」または「核酸配列」はまた、一本鎖または二本鎖のRNAもしくはDNAの領域またはそれらの任意の組み合わせを含んでもよい。
【0035】
本明細書中で使用する、「核酸」は、9ヌクレオチド長以上の、二本鎖DNA、一本鎖DNAおよび二本鎖RNAまたは一本鎖RNAを包含する。用語「ポリヌクレオチド」は、任意の長さのヌクレオチドの多量体型、プリン塩基およびピリミジン塩基を含むリボヌクレオチドまたはデオキシリボヌクレオチドのいずれか、あるいは他の天然のヌクレオチド塩基、化学的または生化学的に修飾された、天然でないか、もしくは誘導体化されたヌクレオチド塩基を含む。ポリヌクレオチドの骨格は、RNAまたはDNAに典型的に見られるような糖およびリン酸基または修飾された糖もしくは置換された糖または修飾されたリン酸基もしくは置換されたリン酸基を含むことができる。ポリヌクレオチドは、メチル化されたヌクレオチドおよびヌクレオチドアナログなどの修飾ヌクレオチドを含んでもよい。ヌクレオチドの配列は、非ヌクレオチド成分によって中断され得る。
【0036】
本明細書中で使用する、「患者」または「個体」とは、E−セレクチンペプチドを投与される、哺乳動物、好ましくは、ヒトのことをいう。
【0037】
本明細書中で使用する、句「薬学的に許容可能なキャリア」としては、本発明の方法を使用して同定される化合物に存在し得る、酸性基または塩基性基の塩を含む水性組成物または非水生組成物が挙げられるが、これらに限定されない。本来は塩基性である化合物は、様々な無機酸および有機酸と多岐にわたる塩を形成することができる。このような塩基性化合物の薬学的に許容可能な酸付加塩を調製するために使用することができる酸は、無毒性の酸付加塩、すなわち、薬理学的に許容可能な陰イオンを含む塩を形成する酸である。それらの塩としては、硫酸塩、クエン酸塩、マレイン酸塩、酢酸塩、シュウ酸塩、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、硝酸塩、硫酸塩、重硫酸塩、リン酸塩、酸性リン酸塩、イソニコチン酸塩、酢酸塩、乳酸塩、サリチル酸塩、クエン酸塩、酸性クエン酸塩、酒石酸塩、オレイン酸塩、タンニン酸塩、パントテン酸塩、酒石酸水素塩、アスコルビン酸塩、コハク酸塩、マレイン酸塩、ゲンシチン酸塩(gentisinate)、フマル酸塩、グルコン酸塩、グルカロン酸塩(glucaronate)、糖酸塩、ギ酸塩、安息香酸塩、グルタミン酸塩、メタンスルホン酸塩、エタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、p−トルエンスルホン酸塩およびパモ酸塩(すなわち、1,1’−メチレン−ビス−(2−ヒドロキシ−3−ナフトエ酸塩))が挙げられるが、これらに限定されない。アミノ部分を含む化合物は、上記の酸に加えて様々なアミノ酸と薬学的に許容可能な塩を形成しうる。本来酸性である化合物は、様々な薬理学的に許容可能な陽イオンと塩基性塩を形成することができる。このような塩の例としては、アルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩および特にカルシウム塩、マグネシウム塩、ナトリウム塩、リチウム塩、亜鉛塩、カリウム塩および鉄塩が挙げられる。
【0038】
本明細書中で使用する、「によってコードされるポリペプチド配列」とは、本明細書中で定義されるような遺伝子のタンパク質コード領域の翻訳後に得られるアミノ酸配列のことをいう。
【0039】
本明細書中で使用する、用語「タンパク質」および「ペプチド」および「ポリペプチド」は、交換可能に使用され、ペプチド結合によって共に連結されたアミノ酸の鎖のことをいう。特定の実施形態において、タンパク質は、ペプチド結合により共に連結された、200未満、175未満、150未満、125未満、100未満、50未満、45未満、40未満、35未満、30未満、25未満、20未満、15未満、10未満または5未満のアミノ酸から構成される。タンパク質は、ペプチド結合により共に連結された、少なくとも200、少なくとも250、少なくとも300、少なくとも350、少なくとも400、少なくとも450、少なくとも500以上のアミノ酸から構成される。
【0040】
「タンパク質コード領域」とは、ポリペプチドをコードするmRNAの部分のことをいう。
【0041】
本発明は、E−セレクチンの細胞外ドメインの一定の部分またはドメインが、有益な効果を有し得るという認識に一部基づく。組換えペプチド、好ましくはヒトE−セレクチンペプチドの20〜303フラグメント、ならびにこれらのペプチドをコードするかまたは産生するDNAおよび細胞は、本発明において有用である。
【実施例】
【0042】
実施例
寛容を誘導するように設計された可溶性E−セレクチンペプチドを含む組成物の実施例
E−セレクチンペプチドは、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)溶液中で提供される透明な可溶性液状タンパク質溶液である。この医薬品成分は、アミノ末端におけるgp64分泌シグナルに融合したレクチン結合上皮成長因子(EDF)ドメインと、カルボキシ末端におけるc−mycタグおよびポリヒスチジンペプチドタグとを有するヒトE−セレクチンタンパク質の細胞外部分をコードする組換えAcMNPVバキュロウイルスベクター(バキュロウイルス科のAutographica californiica多角体病ウイルス)が感染したSf−9S昆虫細胞(鱗翅目のツマジロクサヨトウ(Spodoptera frugzperda))由来である(図1)。
【0043】
組換えヒトE−セレクチンタンパク質をコードするクローニングされた遺伝子は、19アミノ酸のAcIVfNPVバキュロウイルスgp64エンベロープタンパク質分泌シグナルペプチド、291アミノ酸のヒトE−セレクチンタンパク質(aa40〜aa120レクチン結合ドメインおよびaa200〜an275のEGFドメインを含むaa20〜aa310の細胞外部分)、9アミノ酸のc−mycタンパク質、6アミノ酸の中性スペーサーペプチド、および6アミノ酸のポリヒスチジンタグ(6×HIS)で構成される331アミノ酸ポリペプチドである。1つの代替型では、c−mycタグが省略され、そして別の代替型では、c−mycタグおよびHisタグの両方が省略される(図2)。AcMINPVバキュロウイルスgp64エンベロープタンパク質由来である分泌シグナルペプチドは、標的ペプチドの細胞内輸送、プロセシングおよび組換えヒトE−セレクチンタンパク質の分泌を促進する。この医薬品成分であるヒトE−セレクチン細胞外ポリペプチド部分は、卒中の病態において活性な炎症性および他の免疫応答の抑制を刺激する寛容原エフェクター分子として作用する。c−mycの非トランスフォーミングドメインに局在するモノクローナル抗体エピトープであるc−mycペプチドは、タンパク質精製の間、組換えヒトE−セレクチンタンパク質分子の識別タグとして作用する。ニッケル、コバルトその他の重金属に高い結合定数(K>10−9M)で結合する6×HISペプチドは、固定化金属アフィニティークロマトグラフィーによって組換えヒトE−セレクチンタンパク質を精製するために使用される。
【0044】
E−セレクチンペプチドをコードするウイルス原液
in vitroで合成されるDNAフラグメントの組換えDNAクローニングでは、バキュロウイルス発現ベクターシステム(BEVS)で発現させるために、GenBankアクセッション番号NM000655で入手可能なヌクレオチド配列に基づいて、カルボキシ末端のc−mycペプチドタグおよびポリヒスチジン(6×HIS)ペプチドタグと融合したヒトE−セレクチン(アミノ酸残基20〜310)の細胞外部分をコードするコドンが最適化された遺伝子を使用した。ヒトE−セレクチン遺伝子を含む999bpのEcoRI DNAフラグメントを、まず、サブクローニングベクターであるpCR−BluntII−TOPO(InVitrogen)のマルチクローニングサイトにクローニングし、続いてバクミドトランスファーベクターであるpFASTBACI(InVitrogen)の多角体遺伝子座内の多角体プロモーターの下流にクローニングした。Sf−9S昆虫細胞に、AcMNPVゲノム内にヒトE−セレクチン遺伝子を含む組換えバクミドDNAをトランスフェクトした。組換えバキュロウイルスを、トランスフェクトした細胞から単離し、そして高レベルに組換えヒトE−セレクチンタンパク質を発現しているウイルスのクローンをプラーク精製により選抜した。
【0045】
もとのマスターウイルス原液(9.6L)は、組換えヒトE−セレクチンタンパク質を高レベルに発現し、そして高力価のウイルスを産出した、組換えバキュロウイルス単離物(R612)を増幅して、プラーク精製し、0.1pfu/mlのMOIでSf−9S昆虫細胞(継代数60;WCB#38)に感染させることによって確立した。もとのウイルス原液は、遺伝子のインテグリティおよび組換えタンパク質産生で特徴づけた。微生物の無菌性アッセイ、マイコプラズマ検出アッセイ、スピロプラズマ検出アッセイ、LALエンドトキシン発色アッセイ、in vitroの外来性物質試験(adventitious agent testing)およびin vivoの外来性物質試験(AnMed/Taconic)を含む特徴づけを、もとのウイルス原液のサンプルに実施した。外来性物質試験は、昆虫細胞に感染し得るか、またはキャリアウイルスであり得るRNAウイルスの存在を検出することができた。
【0046】
c−mycタグおよびポリヒスチジンペプチドタグに融合した組換えヒトE−セレクチン遺伝子配列の同一性は、もとのウイルス原液中の、組換えバキュロウイルスから単離されたヒトE−セレクチン遺伝子をコードするバキュロウイルスゲノムDNAに由来する挿入ヌクレオチド配列およびフランキングヌクレオチド配列の両方のDNA鎖のヌクレオチド配列決定および解析によって行われた。ヌクレオチド配列解析により、もとのウイルス原液由来のゲノムDNAと、in vitroで合成され、そしてこの遺伝子のクローニングに使用されたバキュロウイルストランスファーベクターであるpFASTBAClとにおけるヒトE−セレクチン遺伝子配列が100%一致することが明らかになった。ゲノムDNAサンプル由来のヌクレオチド配列から予測されるアミノ酸配列は、ヒトE−セレクチンの予測されるアミノ酸配列と100%一致した。このもとのウイルス原液は、同一性試験に合格した。
【0047】
高力価でのウイルス複製を補助するもとのウイルス原液の能力を、細胞当たり0.1プラーク形成単位(pfu)の感染効率(MOI)で3日間に亘って感染させたSf−9S昆虫細胞由来の浄化された培養上清のバキュロウイルスプラークアッセイによって判定した。5×10pfu/mlのウイルス力価を、Sf9S昆虫細胞に接種されたもとのウイルス原液のサンプルを使用してSf−9S昆虫細胞におけるバキュロウイルスアガロースプラークアッセイによって測定した。もとのウイルス原液を、3〜5pfu/細胞のMOIでもとのウイルス原液で感染させたSf−9S昆虫細胞由来の第1日目から第3日目の細胞可溶化物および培養上清のSDS−PAGEおよびウエスタンブロット解析によって、組換えヒトE−セレクチンタンパク質産生についてさらに評価した。細胞可溶化物および細胞培養上清は、分子量が50kDaであり、ヒトE−セレクチンタンパク質に対するモノクローナル抗体(BBA2;R&D)に特異的に結合する組換えタンパク質を含んでいた。
【0048】
ウイルス原液の産生用として認められたもとのウイルス原液を、組換えヒトE−セレクチンタンパク質産生の製造のために使用されることになる実際に使用するウイルス原液の産生に使用した。実際に使用するウイルス原液(9.6L)を、もとのウイルス原液を接種材料として、0.1pfu/細胞のMOIでSf−9S昆虫細胞(継代数52;WCB#37)に感染させることにより、確立した。もとのウイルス原液および実際に使用するウイルス原液を、遮光包装のPETG瓶に入れて、遮光保冷容器(2〜8℃)内で短期間(3ヶ月未満)および70℃以下の超低温冷凍庫内で長期間保存した。
【0049】
細胞バンク
組換えヒトE−セレクチンタンパク質の発現が、Sf−9S昆虫細胞において最も良好に実現された。Sf−9S昆虫細胞のもとの細胞バンクを、Sf−9S細胞の単一のバイアルから確立し、細胞懸濁培養液である無血清培地に順応させ、ATCCから入手したSf−9親細胞由来のバキュロウイルスベクターから発現される組換えタンパク質の分泌について選抜した。Sf−9Sのもとの細胞バンクを、ツマジロクサヨトウ卵巣上皮細胞にもともと由来するSf−9細胞株を用いて確立したが、懸濁培養液として無血清培地を用いる大規模バイオリアクターにおいて組換えタンパク質発現を最大にするようないくつかの重要な調整を行った。
【0050】
Sf−9Sのもとの細胞バンクは、昆虫細胞冷凍培地(7.5%ジメチルスルホキシド、46%Sf−900II SFM、47%条件培地)中の細胞継代数48のツマジロクサヨトウ細胞の586×3.5mlクライオバイアルからなる。実際に使用する細胞バンクを、もとの細胞バンクからクライオバイアル(総計3.5×10細胞)を解凍することおよび振盪フラスコ(500ml)内の新鮮HyQ SFX無血清昆虫細胞培地(100ml;ロット番号ALF14050)に細胞を播種することによって確立した。細胞を、数日間馴化させ、そして懸濁培養液として、28℃および125rpmで生育した。細胞密度が、0.6×10細胞/mlに達したとき、その培養物を1:20の分割比で、さらなる振盪フラスコに2Lフラスコあたり800mlの最終容量で分割した。新しい培養物を数回の継代をして同様に継代培養し、細胞が最適に生育し、雑菌混入のないことを確認した。継代数49でのSf−9S細胞培養物が5.36×10細胞/mlの細胞密度および94%の生存率に達し、その細胞を、低速遠心分離(500×g)により単離し、そして以下で構成される昆虫細胞冷凍培地に再懸濁した:
46.5部 HyQ SFX無血清昆虫細胞培地(条件化)
46.5部 HyQ SFX無血清昆虫細胞培地(新鮮)
7.0部 ジメチルスルホキシド(Sigma ロット番号68H1092)
【0051】
その細胞(1×10細胞/ml)を49本のクライオバイアル(3.5ml/バイアル)および30本のクライオバイアル(1.0ml/バイアル)に無菌的に分配し、そして保存するために−70℃未満の超低温冷凍庫内で1℃/分でゆっくりと凍結した。
【0052】
コドンが最適化された組換えヒトE−セレクチンのヌクレオチド配列
以下の配列は、組換えヒトE−セレクチンタンパク質の産生のためのもとのウイルス原液中のバキュロウイルスゲノム由来のコドンが最適化された組換えヒトE−セレクチン遺伝子のヌクレオチド配列である。
【化1】

【0053】
細胞増幅
組換えヒトE−セレクチンを含む細胞の細胞増幅は、2.0L コーニング(Corning)プラスチック振盪フラスコ(フラスコ1本あたり800mlのHyQ SFX無血清培地を含む21本のフラスコ)中の16.8リットルで構成されていた。培養フラスコを、バネ仕掛けのフラスコ留め具を備えたプラットホーム振盪インキュベーター(フィッシャー(Fisher))でインキュベーションした。細胞を28±1℃、125±25rpmでインキュベーションした。
【0054】
ウイルス感染
Sf−9S細胞を最終細胞密度2.0×10細胞/miとなるように新鮮無血清培地で希釈し、21本のフラスコ(2L)に800mlのアリコートとして分配した。昆虫細胞に、3pfu/細胞のMOIでHuE−セレクチンペプチドを含むバキュロウイルスを感染させた。ウイルスを、ウイルス原液から回収し、クラス100バイオセイフティーフード内でフラスコに分配した。感染した細胞培養物を、28℃、125rpmに維持した。感染した細胞培養物を、ウイルスの細胞変性効果(CPE)、細胞密度および細胞生存率について定期的に監視した。ウイルス感染は、3日間行った。
【0055】
感染の3日後、ウイルスのCPEは、+3(すなわち、封入体形成および膜ラフリング)に達し、細胞密度は、1.1×10細胞/mlであり、細胞生存率は、50%に低下した。感染した細胞培養物を、以下に記載するように回収した。
【0056】
回収
感染した細胞懸濁液を、バイオセイフティーキャビネット内でフラスコから500ml遠心瓶に移した。感染した細胞懸濁液を、Sorval RC−5B遠心機において2300rpmおよび4℃で10分に亘って低速遠心分離に供することにより、感染した細胞を除去した。細胞外組換えヒトE−セレクチンを含む感染した細胞培養上清を、Sorval RC−5B遠心機における7500rpmおよび4℃で45分に亘って遠心分離により浄化した。浄化された上清をクラス100バイオセイフティーフード内で20リットルガラス製カーボイにデカントし、2〜8℃において保冷容器内で一晩保存し、続いて濃縮および膜分離を行った。
【0057】
限外濾過による濃縮および膜分離
さらなる精製に向けて管理しやすい容量を得るために、細胞外組換えヒトE−セレクチンペプチドを含む浄化された細胞培養上清(16.0L)を、A/G Technologies Flex Stand Benchtop Pilot限外濾過システムを使用して濃縮した。このシステムを用いて、浄化された細胞培養上清を、20Lガラス製カーボイから10kDaの分子量カットオフ(MWCO)を有するA/G Tech UFP−10−C−9A中空糸限外濾過カートリッジに、Masterfiex蠕動ポンプを備えた無菌化シリコーン管を通して230ml/mmの流速で移した。組換えヒトE−セレクチンペプチドを含む保持液を、濾過液から別個に回収し、そして渦巻き型限外濾過カートリッジにもかかわらず連続した通過により0.8Lに濃縮(20倍)した。濃縮後、濃縮された細胞培養上清を10LのQ緩衝液1で90分膜分離した。濃縮された膜分離物(0.8L)およびカートリッジの2つのすすぎ液(各0.7L)を無菌ナルゲン瓶(総計3.2L)に回収し、そして一晩、保冷容器内(2〜8℃)で保存し、続いてQ陰イオン交換クロマトグラフィーによるタンパク質精製を行った。
【0058】
Qセファロース陰イオン交換クロマトグラフィー
組換えヒトE−セレクチンペプチド医薬品成分の後処理プロセスにおける最初のタンパク質捕捉工程は、強力な陰イオン交換樹脂であるQセファロースFast Flowを使用した陰イオン交換クロマトグラフィー工程である。この工程は、エンドトキシン、プロセス賦形剤(process excipient)および宿主タンパク質混入物を組換えヒトE−セレクチンペプチドから除去することを意図した。Q陰イオン交換クロマトグラフィー工程は、Unicorn(登録商標)ソフトウェアによって制御される、検証されたPharmacia AKTA Explorer Biopilot FPLCシステムを使用して実施した。QセファロースFast Flow樹脂(400ml)を、Pharmacia XX50/30クロマトグラフィーカラムに充填した。Qカラムを10ml/分の流速で、Q再生緩衝液[0.5Nの水酸化ナトリウムおよび1.0Mの塩化ナトリウム]を用いて衛生的にし、そして再生し、10ml/分の流速でpH7.1まで5カラム容量(2000ml)のWFI水ですすぎ、そして10ml/mmの流速で5カラム容量(2000ml)のQ緩衝液1で平衡化した。
【0059】
濃縮された膜分離物(3.2L)を20ml/分の流速で装填した。(13.6mgのタンパク質/mlQ樹脂)。装填されたQカラムを20ml/分の流速で10カラム容量(4000ml)のQ緩衝液1で洗浄した。Qカラム通過(flow through)画分(FT;3200ml)および洗浄画分(1600ml)を回収し、そして残った非結合性組換えヒトE−セレクチンペプチドについての処理中試験(in−process testing)のために4℃で保存した。Qカラムに結合したタンパク質を20ml/分の流速で塩化ナトリウムの0〜1000mMの直線勾配を形成するQ緩衝液2を用いて溶出した。UV280吸収性Q溶出物の画分(200×10ml)を回収し、一時的に保冷容器内で4℃にて保存した。使用したQカラムをQ再生緩衝液で衛生的にした。
【0060】
サンプル(0.1ml)のQ溶出画分ならびに装填画分、通過画分および洗浄画分を、SDS−PAGEおよびヒトE−セレクチン血清を使用したウエスタンブロット解析を含む処理中試験に供した。組換えヒトE−セレクチンタンパク質を主成分として含むQ溶出画分を、SDS−PAGEおよびウエスタンブロット解析によって単一のピーク(画分80〜112)として同定し、そして貯蔵した(320ml)。かなりの量の組換えヒトE−セレクチンタンパク質が、Qカラムに結合していた;従って、FT画分の再処理は必要でなかった。
【0061】
Ni−NTAアガロースアフィニティークロマトグラフィー
組換えヒトE−セレクチンタンパク質のカルボキシル末端にポリヒスチジン(6×HIS)タグペプチドが存在するので、Ni++ベースの樹脂を使用した固定化金属アフィニティークロマトグラフィーによって、貯蔵されたQ溶出画分中に残留する他のタンパク質からこれらの重金属結合タンパク質を精製することが可能であった。生成の後処理プロセスにおけるNi−NTAクロマトグラフィーの工程を、組換えヒトE−セレクチンタンパク質を精製し、そして残存する宿主タンパク質混入物およびバキュロウイルスを除去するために使用した。Ni−NTAアフィニティークロマトグラフィー工程を、Unicorn(登録商標)ソフトウェアによって制御される、検証されたPharmacia AKTA Explorer Biopilot FPLCシステムを使用して実施した。Ni−NTAアガロースSuperfiow樹脂(38ml)をPharmacia XK 26クロマトグラフィーカラムに充填した。Ni−NTAを硫酸ニッケル六水和物(0.1M)で荷電し、3ml/分の流速で0.5NのNaOHで衛生的にし、3ml/分の流速で5カラム容量のWFI水ですすぎ、そして3ml/分の流速で5カラム容量(190ml)のNi−NTA緩衝液1でpH8.5に平衡化した。Q貯蔵溶出画分を、3ml/分の流速で装填した。(19.8タンパク質/ml Ni−NTA樹脂)。装填されたNi−NTAカラムを3カラム容量(115ml)のNi−NTA緩衝液Iで、3ml/分の流速で洗浄した。Ni−NTAカラムFT画分(320ml)および洗浄画分(115ml)を回収し、残った非結合性の組換えヒトE−セレクチンタンパク質についての処理中試験のために4℃で保存した。Ni−NTAカラムに結合したタンパク質を3mi/mmの流速で、イミダゾールナトリウムの0〜300mMの線形勾配を形成するNi−NTA緩衝液2を用いて溶出した。DY280吸収性Ni−NTA溶出物の画分(43×3ml)を回収し、そして一時的に保冷容器内で4℃にて保存した。使用したNi−NTAカラムをEDTA再生緩衝液で衛生的にした。
【0062】
Ni−NTA溶出画分のサンプル(0.1ml)ならびに装填画分、通過画分および洗浄画分を、SDS−PAGEおよびヒトE−セレクチン血清を使用したウエスタンブロット解析を含む処理中試験に供した。組換えヒトE−セレクチンタンパク質を主成分として含むNi−NTA溶出画分を、SDS−PAGEおよびウエスタンブロット解析によって単一ピーク(画分12〜26)として同定し、そして貯蔵した(43ml)。かなりの量の組換えヒトE−セレクチンタンパク質が、NiNTAカラムに結合した;従って、FT画分の再処理は必要ではなかった。
【0063】
貯蔵されたNi−NTA溶出カラム画分のサンプル(2ml)を、SDS−PAGEおよびヒトE−セレクチン血清を使用したウエスタンブロット解析、BCAタンパク質アッセイならびにLALエンドトキシンアッセイを含む処理中試験に供した。さらに、精製プロセスのこの段階において存在するバキュロウイルスの量を数え上げるために、バキュロウイルスアガロースプラークアッセイをNi−NTA貯蔵溶出画分のアリコートにおいて実施した。ウイルス力価は、Qクロマトグラフィー工程およびNi−NTAクロマトグラフィー工程によって得られたウイルスにおいて3log10換算で合計2.76×10pfuに対して6.42×10pfu/mlであった。
【0064】
膜分離法
Ni−NTA貯蔵溶出画分からプロセス賦形剤であるイミダゾールを除去するためおよび適切な緩衝液であるPBS溶液中に医薬品成分を処方するために、Ni−NTA貯蔵溶出画分を低温室(2〜8℃)において膜分離に供した。貯蔵されたNi−NTA溶出画分を、2×90容量(4L)のPBS溶液に対してそれぞれ15時間および7時間、22℃で透析した。最終的な透析液の容量は、41mlであった。透析液のサンプル(1ml)を、SDSPAGE解析、ウエスタンブロット解析、BCAタンパク質アッセイおよびLALカイネティック比色アッセイを含む処理中試験のために取り出した。
【0065】
最終的な濾過
混入微生物を除去するために、透析液(41ml)をバイオセイフティーフード(クラス100)内で無菌的に、0.22〜i ミリポア社製(Millipore)Stericap濾過膜に通して無菌Nalgene瓶に入れた。使用した膜を、膜の完全性を判定するために泡立ち点アッセイに供した。その結果(50psi)は、32psiという完全な膜の規格を上回るものであり、また、医薬品成分において微生物が排除されていることが確かめられた。濾液の最終容量は、36.5mlであった。0.2μ濾液を、−70℃未満の超低温冷凍庫に保存した。0.2μ濾液を解凍し、前もって高くしておいたタンパク質濃度においてタンパク質凝集を防ぐために、最終容量が95mlとなるようPBS溶液で希釈し、そしてバイオセイフティーフード(クラス100)内で無菌的に第2の0.2μ膜に通して濾過した。使用した第2の0.2μ膜の泡立ち点試験の結果は、その膜には傷がないことを示唆した。
【0066】
第1の0.2μ濾液のサンプルをBCAタンパク質試験およびLAL処理中試験に供した。第1の0.2μ濾液についてのBCAタンパク質アッセイの結果は、総収量192.72mgに対して5.28mg/mlであった。第1の0.2μ濾液についてのLALエンドトキシンアッセイの結果は、総量67EUに対して1.84EU/mlであった。
【0067】
総容量95mlを第2の最終的な濾過によって実現した。医薬品成分中の残留バキュロウイルスを除去するために、Pall DV2O sub 0.1μ膜濾過カートリッジを薬物生成物の処方工程および濾過工程において使用した。最終的な大量生成物(医薬品成分)についての総エンドトキシン量は、45.6EUであった;確証されたBCSタンパク質アッセイによって測定されたように、最終的な大量生成物についての総タンパク質収量は、133mgであった。
【0068】
遅延型過敏アッセイ
遅延型過敏試験を、様々な用量の組換えヒトE−セレクチンで鼻腔内処置した後の高血圧性ラットにおいて実施した。医薬品成分サンプル(1.0ml)の遅延型過敏アッセイは、高血圧性動物において卒中を寛容化および予防するヒトE−セレクチンの能力と相関する、in vivoにおける生成物の効力を測定するために実施した。本研究におけるDTH抑制は、粘膜寛容の誘導に使用した様々な用量の組換えヒトE−セレクチンおよびプラセボの機能として、炎症によって引き起こされる動物の耳の厚さの測定と関連した。
【0069】
自然発症的に高血圧性脳卒中を起こしやすい(SRR−SP)ラット(n=20)を4群に分け、5回の処置を1日おきで鼻腔内に(20μl/鼻孔)接種した:
群1:PBSプラセボ、40μl処置で寛容化、n=5、
群2:組換えヒトE−セレクチン5Vμg/40μl処置、n=5
群3:組換えヒトE−セレクチンμl/40μl処置、n=5
群4:組換えヒトE−セレクチン0.1μg/40μl処置、n=5
【0070】
寛容化スケジュールが終了した2週間後に、それらの動物を、375μg/mlの最終抗原濃度でフロイント完全アジュバント(FCA)とともに処方された組換えヒトE−セレクチンのアリコート(200μl)で皮下に免疫(抗原感作)した。免疫の2週間後、処置動物の耳の厚さを標準的な皮下脂肪用ノギスを使用して測定した。その後、PBS中50μg/100μlの抗原濃度で組換えヒトE−セレクチンの耳垂注射(100p.1)を行った(抗原の再適用または抗原チャレンジ)。
【0071】
チャレンジの48時間後および72時間後に耳の厚さの測定を繰り返し行い、遅延型過敏を評価した。
【0072】
E−セレクチンに対するリンパ球の寛容化、特に、粘膜寛容は、以下を含む炎症性疾患の治療の有効な方法である:
【0073】
高レベルの炎症促進性サイトカインもまた、自己免疫疾患を含む、数多くの疾患および状態に関連する。炎症関連疾患としては、毒素性ショック症候群、関節リウマチ、変形性関節症、糖尿病および炎症性腸疾患、HIV感染関連認知症、緑内障、視神経症、視神経炎、網膜虚血、レーザー誘導性視覚障害、手術誘導性または外傷誘導性の増殖性硝子体網膜症、脳虚血、低酸素虚血、低血糖症、ドウモイ酸中毒、無酸素症、一酸化炭素中毒またはマンガン中毒またはシアン化物中毒、ハンチントン病、アルツハイマー病、パーキンソン病、髄膜炎、多発性硬化症および他の脱髄性疾患、筋萎縮性側索硬化症、頭部外傷および脊髄外傷、癲癇、痙攣、オリーブ橋小脳萎縮症、神経障害性疼痛症候群、糖尿病性ニューロパシー、HIV関連ニューロパシー、MERRF症候群およびMELAS症候群、レーバー病、ウェミッケ脳症(Wemicke’s encephalophathy)、レット症候群、ホモシステイン尿症(homocysteinuria)、高プロリン血症、高ホモシステイン血症、非ケトン性高グリシン血症、ヒドロキシ酪酸アミノ酸尿症(hydroxybutyric aminoaciduria)、亜硫酸酸化酵素欠損症、脊髄索状変性(combined systems disease)、鉛脳障害、トゥーレット症候群、肝性脳症、薬物嗜癖、薬剤耐性、薬物依存、うつ、不安および精神分裂病、外傷性関節炎、ギランバレー症候群、クローン病、潰瘍性大腸炎、乾癬、移植片対宿主病、全身性エリテマトーデス、糸球体腎炎、再灌流損傷、敗血症、骨粗鬆症を含む骨吸収疾患、慢性閉塞性肺疾患、うっ血性心不全、アテローム性動脈硬化症、毒素性ショック症候群、喘息、接触皮膚炎、経皮的経管的冠状動脈形成術(PTCA)およびインスリン依存性真性糖尿病が挙げられるが、これらに限定されない。
【0074】
当業者は、本発明の精神および範囲から逸脱することなく、本明細書中に記載されたものの変形、改変および他の実施を思いつくだろう。以下に提供される参考文献は、それらの全体が本明細書中に参照により援用される。本明細書中で引用されたすべての特許、特許出願および公開された参考文献は、それらの全体が、本明細書中で参照により援用される。
【0075】
本発明を、それらの好ましい実施形態を参照して、特に示し、そして記載したが、添付の特許請求の範囲によって包含される本発明の範囲から逸脱することなく、その形態および詳細の様々な変更がなされうることを当業者は理解するだろう。当該分野で公知の他の実施形態および構造が、本発明の精神および範囲内であることを当業者は理解するだろう。
【図面の簡単な説明】
【0076】
図面の簡単な説明
【図1】図1(配列番号8)は、組換えヒトE−セレクチンペプチドの予測されるアミノ酸配列およびタンパク質構造機能を示したものである。
【図2】図2は、野生型ヒトE−セレクチンに対する組換えE−セレクチンペプチドのアライメントを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
野生型ヒトEセレクチン(配列番号1)の残基#20〜303から本質的になるペプチド、1個以上のC末端タグに結合している野生型ヒトEセレクチン(配列番号1)の残基#20〜303から本質的になるペプチド、カルボキシ末端でジペプチドRSに結合している野生型ヒトEセレクチン(配列番号1)の残基#20〜303から本質的になるペプチド、N末端で分泌シグナルペプチドに結合している野生型ヒトEセレクチン(配列番号1)の残基#20〜303から本質的になるペプチド、および配列番号1と少なくとも60%の同一性を有する200〜400アミノ酸のペプチド、ならびにこれらの混合物および組み合わせからなる群から選択される単離された哺乳動物ペプチド。
【請求項2】
前記1個以上のC末端タグが、精製タグおよび安定タグからなる群から選択される、請求項1に記載のペプチド。
【請求項3】
前記精製タグが、cmycタグおよびヒスチジンタグからなる群から選択される、請求項2に記載のペプチド。
【請求項4】
前記N末端の分泌シグナルペプチドが、(配列番号3)および(配列番号4)からなる群から選択される、請求項1に記載のペプチド。
【請求項5】
前記ペプチドが、昆虫細胞において産生される、請求項1に記載のペプチド。
【請求項6】
野生型ヒトEセレクチン(配列番号1)の残基#20〜303から本質的になるペプチド、1個以上のC末端タグに結合している野生型ヒトEセレクチン(配列番号1)の残基#20〜303から本質的になるペプチド、カルボキシ末端でジペプチドRSに結合している野生型ヒトEセレクチン(配列番号1)の残基#20〜303から本質的になるペプチド、N末端で分泌シグナルペプチドに結合している野生型ヒトEセレクチン(配列番号1)の残基#20〜303から本質的になるペプチド、および配列番号1と少なくとも60%の同一性を有する200〜400アミノ酸のペプチド、ならびにこれらの混合物および組み合わせからなる群から選択されるペプチドをコードする核酸。
【請求項7】
前記1個以上のC末端タグが、精製タグおよび安定タグからなる群から選択される、請求項6に記載の核酸。
【請求項8】
前記精製タグが、cmycタグおよびヒスチジンタグからなる群から選択される、請求項7に記載の核酸。
【請求項9】
前記N末端の分泌シグナルペプチドが、(配列番号3)および(配列番号4)からなる群から選択される、請求項6に記載の核酸。
【請求項10】
前記ペプチドが、精製タグおよび安定タグからなる群から選択される1個以上のC末端タグからなり、前記N末端タグが、(配列番号3)および(配列番号4)からなる群から選択される、請求項6に記載の核酸。
【請求項11】
前記精製タグが、cmycタグおよびヒスチジンタグからなる群から選択される、請求項10に記載の核酸。
【請求項12】
請求項1に記載のペプチドをコードするヌクレオチド配列を含むバキュロウイルス。
【請求項13】
請求項1に記載のペプチドをコードするヌクレオチド配列を含むベクター。
【請求項14】
請求項1に記載のペプチドをコードする核酸に連結されたバキュロウイルスシグナルペプチドをコードするDNAセグメントを含む組換えバキュロウイルストランスファーベクターであって、前記核酸が、前記シグナルペプチドをコードするDNAセグメントと翻訳においてインフレームである、組換えバキュロウイルストランスファーベクター。
【請求項15】
昆虫宿主細胞において、請求項1に記載のペプチドをコードする前記核酸を発現するための作動可能な連結を形成するようにバキュロウイルスプロモーターに作動可能に連結されている、請求項14に記載の組換えバキュロウイルストランスファーベクター。
【請求項16】
請求項1に記載のペプチドを前記昆虫宿主細胞のための培地に分泌させるための配列を含む、請求項15に記載の組換えバキュロウイルストランスファーベクター。
【請求項17】
請求項1に記載のペプチドを含む、単離された細胞。
【請求項18】
請求項10に記載の核酸を含む、単離された細胞。
【請求項19】
前記細胞が、哺乳動物細胞、細菌細胞および昆虫細胞からなる群から選択される、請求項18に記載の単離された細胞。
【請求項20】
前記細胞が、昆虫細胞である、請求項19に記載の単離された細胞。
【請求項21】
請求項1に記載のペプチドの産生方法であって、以下の工程:
a)請求項10に記載の核酸に連結されたバキュロウイルスシグナルペプチドをコードするDNAセグメントを含む組換えトランスファーベクターを構築する工程であって、前記核酸は、前記シグナルペプチドをコードするDNAセグメントと翻訳においてインフレームであり、昆虫細胞において、請求項1に記載のペプチドを発現し、該ペプチドを分泌させるためのバキュロウイルスプロモーターに作動可能に連結される工程と;
b)組換えバキュロウイルスを産生するために、第1の昆虫細胞に組換えトランスファーベクターおよびバキュロウイルスDNAをコトランスフェクションする工程;
c)組換えバキュロウイルスを回収する工程;
d)第2の昆虫細胞に、回収された前記組換えバキュロウイルスを感染させ、請求項1に記載のペプチドを発現、分泌するように、感染させた該昆虫細胞を培地中で培養する工程、および
e)培地を回収し、分泌された請求項1に記載のペプチドを精製する工程
を含む、方法。
【請求項22】
可溶性E−セレクチンペプチドに対する粘膜寛容を誘導することによって、炎症を介した疾患または状態を治療する必要がある個体を治療する方法であって、請求項1に記載のペプチドからなるE−セレクチンの低用量を複数回、経鼻投与によって前記個体に投与する工程を含む、方法。
【請求項23】
前記E−セレクチンが、本質的に、請求項1に記載のペプチドからなる、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
請求項1に記載のペプチドおよびキャリアを含む、組成物。
【請求項25】
請求項10に記載の核酸およびキャリアを含む、組成物。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2008−532518(P2008−532518A)
【公表日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−500897(P2008−500897)
【出願日】平成18年3月8日(2006.3.8)
【国際出願番号】PCT/US2006/008340
【国際公開番号】WO2006/099006
【国際公開日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【出願人】(507301246)ノババックス,インコーポレイテッド (6)
【Fターム(参考)】