説明

昇温脱離ガス分析器

【課題】高精度な測定は望まず、その代わり装置価格を画期的に抑え、操作も簡単に出来る機器構成とし、利用者が容易に購入使用できることを主目的とした昇温脱離ガス分析器を提供する。
【解決手段】加熱炉温度を任意の時間割合で上昇させる過程で試料から発生したガスを昇温脱離ガス分析器内部の空気と共に真空ポンプで吸引し分析室に送った後分析室内部のガス濃度を高精度ガスセンサーで検出しコントローラーに記録する。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】

【技術分野】
【0001】
本発明は試料を加熱した際にガスとして放出される特定の成分量を測定することで試料に対する該放出成分の構成比率を求める昇温脱離ガス分析器に関するものである。
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】
【0002】
試料を真空中または特定雰囲気中で加熱して発生するガスの種類や発生量を4重極質量分析計やガスクロマトグラフィーあるいはフーリエ変換赤外分光法などで分析するものが多い。その中で制御された条件下で試料を加熱し試料から発生するガスを分析する方法を昇温脱離法という。また熱重量天秤と組み合わせることで試料の重量増減も同時に計測できるものもある。試料の加熱方法も電気炉中で行うものあるいは透明耐熱容器中の試料に焦点を当てたハロゲンランプで行うものなどがある。従来の方法は高精度であるが装置もそれなりに高価で高度な操作も要求されていた。
【0003】
本発明は高精度な測定は望まずその代わり装置価格を画期的に抑え操作も簡単に出来る機器構成とし利用者が容易に購入使用できることを主目的とした昇温脱離ガス分析器を明らかにするものである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の昇温脱離ガス分析器は試料容器(1)中の試料を加熱するための加熱炉(2)、加熱された試料から発生したガスを吸引し分析室(3)に送り込むための真空ポンプ(4)と分析室(3)中のガス濃度を計測するためのガス濃度計(5)、分析室(3)の内部圧力を調節するための排気弁(6)、加熱炉(2)の温度制御とガス濃度計(5)の電気信号出力を記録するコントローラー(7)及び流量調節弁(8)から構成され、流量調節弁(8)は試料容器(1)と分析室(3)を結ぶ配管C(14)の途中に設けられている。
【作用及び効果】
【0005】
最初に試料容器(1)中に適量の試料(10)を入れた状態で流量調節弁(8)を少しだけ開いて運転を始めると試料容器(1)内部の空気は真空ポンプ(4)により分析室(3)に送られ開いている排気弁(6)から外部に放出される。試料容器(1)中の圧力が低下し一定圧力になった時点で排気弁(6)は閉じられる。この後一定の割合で試料(10)の温度を上げていくと中に含まれていた物質がガス化し放出される。この発生ガスは配管A(11)真空ポンプ(4)配管B(13)を経由して分析室(3)に送り込まれ分析室(3)内部のガス量に対応した出力信号がガス濃度計(5)からコントローラー(7)に送られ記録される。分析室(3)内部の空気とガスは再び配管C(14)と流量調節弁(8)を経由して少しずつ試料容器(1)に戻される。試料(10)から発生するガスは微量なので分析室(3)内部の圧力上昇は極僅かである。発生したガスは全て昇温脱離ガス分析器内部に留まりガス濃度計(5)でその時々のガス濃度に対応した出力がコントローラー(7)に記録される。
【0006】
発生ガスは測定中昇温脱離ガス分析器外部には放出されないので発生ガスは殆どが分析室(3)内部に集まりガス濃度計(5)により効果的に検出される。ガス濃度計(5)は比較的安価ながらPPMオーダーのガス濃度に対応した高精度なものを利用できる。特定のガスのみに感度を有する様々なガス濃度計(5)を用意することで多種類のガス濃度測定に対応できる。既知量のガスで校正しておくことで正確な定量測定も可能である。このように簡単な構成で汎用性があり定量測定可能、安価な昇温脱離ガス分析器が提供できる。
【発明の実施の態様】
【0007】
本発明の昇温脱離ガス分析器は図1に示すように試料容器(1)中の試料(10)および熱電対(16)の感温部がほぼ加熱炉(2)の最高温度域で且つ均一温度帯に位置するように試料容器(1)が配置されている。
流量調節弁(8)は分析室(3)と試料容器(1)内部に圧力差をつけるためのものである。真空ポンプ(4)は試料容器(1)内部で試料(10)からガスが発生し易いように試料容器(1)内部を低圧に保つとともに試料容器(1)内の空気と発生したガスを分析室(3)に送り込む役目を果たしている。分析室(3)では送り込まれたガスをガス濃度計(5)で検出後一部の空気とガスを再び配管C(14)及び流量調節弁(8)を経由して試料容器(1)に戻している。
このため試料容器(1)内部で発生したガスがそのまま試料容器(1)内部に蓄積されることはない。またガスの発生があると分析室(3)内部の圧力は僅かずつ上昇していくがその程度は微量で測定に実害が生じることはない。
【0008】
最初に温度上昇パターンをコントローラー(7)にセットし適量の試料(10)を試料容器(1)内部にいれる。コントローラー(7)で測定を開始すると排気弁(6)が自動的に開き真空ポンプ(4)が作動して試料容器(1)中の空気は分析室(3)経由で開いた排気弁(6)から外部に排出される。試料容器(1)中の圧力が一定になったら排気弁(6)を自動的に閉じて測定を続ける。コントローラー(7)の温度設定パターンに対応した出力を受けて温度調節器(7)が加熱炉(2)の温度を制御し時間の経過とともに設定したパターンで加熱炉(2)内部の温度が上昇し試料(10)に特有な温度でガスが発生し始める。発生したガスは配管A(11)真空ポンプ(4)配管B(13)を経由して分析室(3)に入りガス濃度計(5)がガス濃度に対応した電圧信号をコントローラー(7)に送りコントローラー(7)で記録される。分析室(3)内部のガス混合空気の一部は再び配管C(14)と流量調節弁(8)を経由して試料容器(1)に戻される。
温度上昇とともに試料(10)からガスが発生するので発生したガスはつど真空ポンプ(4)を経由して分析室(3)に送り込まれガス濃度計(5)で測定される。
この時ガス濃度計(5)の出力は例えば図2のようになる。
流量調節弁(8)を完全に閉じると試料容器(1)内部の圧力は最も低くなり試料(10)からのガスの発生も容易になるが発生したガスは一部が試料容器(1)内部に残ることになる。流量調節弁(8)を完全に開放すると試料(10)から発生したガスは速やかに分析室(3)内のガス濃度計(5)に到達するが低圧でガスが発生し易い試料(10)の場合不利である。真空ポンプ(4)内部が腐食するようなガスを発生する試料(10)は本昇温脱離ガス分析器には不向きである。
図2に示されるガス濃度に対応した出力を時間微分することで任意の時刻における瞬時ガス発生量や発生率最大時の温度を知ることも可能である。
試料温度とガス発生率の関係を知るためには正確に試料(10)の温度を測定する必要がある。このため熱電対(16)は出来るだけ試料(10)と同じ場所に配置することが好ましい。
【0009】
本例では分析室(3)内部に1種類のガス濃度計(5)を配置したが他の種類のガス成分に反応するガス濃度計をさらに追加すると複数の種類の発生ガスを同時に測定できる。加熱炉(2)についても試料容器(1)を例えば石英管等透明な材質で構成し試料(10)に焦点を当てた熱線を外部から照射しても前記図1の昇温脱離ガス分析器と同様の効果を奏することができる。本発明は上記実施例の構成に限定されることはなく、特許請求の範囲で種々の変形が可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明にかかる昇温脱離ガス分析器の実施の形態を示す図
【図2】本発明にかかる昇温脱離ガス分析器の測定例
【符号の説明】
1 試料容器
2 加熱炉
3 分析室
4 真空ポンプ
5 ガス濃度計
6 排気弁
7 コントローラー
8 流量調節弁
10 試料
11 配管A
12 圧力計
13 配管B
14 配管C
15 温度調節器
16 熱電対

【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料容器(1)中の試料を加熱するための加熱炉(2)、加熱された試料から発生したガスを吸引し分析室(3)に送り込むための真空ポンプ(4)と分析室(3)中のガス濃度を計測するためのガス濃度計(5)、分析室(3)の内部圧力を調節するための排気弁(6)を設け加熱炉(2)の温度制御とガス濃度計(5)からの出力を記録するコントローラー(7)によって構成され分析室(3)と試料容器(1)を結ぶ配管途中に流量調節弁(8)を設けたことを特徴とする昇温脱離ガス分析器。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−276589(P2010−276589A)
【公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−144697(P2009−144697)
【出願日】平成21年5月26日(2009.5.26)
【出願人】(502129162)
【Fターム(参考)】