説明

昇華型熱転写シート

【課題】耐光性等の諸堅牢性に優れ、キャタリティックフェイディングが生じにくい印画物が形成可能な昇華型熱転写シートを提供する。
【解決手段】基材シート上に、染料とバインダー樹脂からなる染料層として少なくともマゼンタ染料層及びシアン染料層が形成された熱転写シートであって、上記マゼンタ染料層がアゾ系化合物を含み、上記シアン染料層が、インドアニリン化合物を含む昇華型熱転写シート。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、昇華型熱転写シートに関する。
【背景技術】
【0002】
熱転写を利用した画像形成方法における熱転写シートとして、基材フィルムの一方の面上に、色材層として、昇華性染料とバインダーからなる昇華転写型インク層を設けた昇華型熱転写シートや、該昇華転写型インク層の代わりに顔料とワックスからなる熱溶融転写型インク層を設けた熱溶融型の熱転写シートが知られている。
昇華型熱転写方式は、一般的に三原色(イエロー、マゼンタ、シアンの3色。必要に応じてブラックを加えてもよい。)を順次重ねて階調印画することにより、フルカラー表現を行っている。
【0003】
このような感熱昇華転写方式において得られる画像は、銀塩写真と同様に高画質なものが形成可能となっており、それにつれて、画像の光・熱・湿度等の因子による画質劣化防止への要求が極めて高くなってきている。
従来より、新規な染料の開発が行われているが、コスト、保存性、印画濃度、色相を充分に満足できるものはない。更には、単一染料を用いて画像を形成した際には、耐光性が充分であっても、印画物上で他の染料と組み合わされた際の耐光性が劣る現象(キャタリティックフェイディング)が問題となっている。例えば、マゼンタ、シアン、ブルー(マゼンタとシアンの混合からなる)の耐光性能を比較すると、マゼンタやシアンの耐光性レベルよりも、ブルー中のマゼンタ成分やシアン成分の方が顕著に悪化する場合がある。
【0004】
特許文献1では、基材シートの一方の面にイエロー、マゼンタ及びシアンの少なくとも3色の染料層を面順次に設けてなる熱転写シートにおいて、それぞれ特定の化学構造を有するイエロー染料、マゼンタ染料、シアン染料を使用することを特徴とする熱転写シートが開示されている。しかし、この熱転写シートは、印画濃度は充分であるものの耐光性との両立が充分に果たせなかった。
【0005】
特許文献2では、基材の片面に、少なくともシアン、マゼンタ、イエローの3種のインク層、又はこれらの色相にブラックを加えた4種のインク層が順次に塗工された昇華型カラー熱転写用シートであって、上記シアンのインク層を構成する染料の分子基本骨格がアンスラキノン系であり、マゼンタのインク層を構成する昇華性塗料の分子基本骨格がアンスラキノン系であると共に、イエローのインク層を構成する昇華性塗料の分子基本骨格が、アンスラキノン系、キノフタロン系、アクリド系、ニトロ系、ピリドン系、ピラゾロン系である熱転写用シートが開示されている。しかし、この熱転写シートでは、耐光性は充分であるものの、印画濃度が不充分であった。
【0006】
特許文献3では、イエロー染料層が特定の染料を含み、マゼンタ染料層が特定の染料を含む熱転写シートが開示されている。この熱転写シートにおける組み合わせも耐光性、印画濃度のどちらか一方が不充分となっていた。
【0007】
このように従来の熱転写シートにおいては優れた耐光性と好適な印画濃度を両立することは困難であった。
【特許文献1】特開平5−262056号公報
【特許文献2】特開平6−92039号公報
【特許文献3】特開平7−232481号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記現状を鑑みて、耐光性等の諸堅牢性に優れ、キャタリティックフェイディングが生じにくい印画物が形成可能な昇華型熱転写シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、基材シート上に、染料とバインダー樹脂からなる染料層として少なくともマゼンタ染料層及びシアン染料層が形成された熱転写シートであって、
上記マゼンタ染料層が、下記一般式(A)
【0010】
【化1】

【0011】
(式中、R及びRはそれぞれ独立して炭素数2以上のアルキル基を表し、Rはアルキル基を表し、Xはハロゲン原子を表す。)
で表わされるアゾ系化合物からなるマゼンタ染料を含み、
上記シアン染料層が、下記一般式(B)
【0012】
【化2】

【0013】
(式中、Rは炭素数1〜6のアルキル基、炭素数6のアリール基又は炭素数1〜4のアルコキシ基を表し、Yは水素原子又はハロゲン原子を表す。)
で表わされる化合物からなるシアン染料を含むことを特徴とする昇華型熱転写シートである。
【0014】
上記マゼンタ染料は、下記式(M−1)
【0015】
【化3】

【0016】
で表わされるアゾ系化合物であることが好ましい。
上記シアン染料は、下記式(C−1)
【0017】
【化4】

【0018】
及び/又は、下記式(C−2)
【0019】
【化5】

【0020】
で表わされるインドアニリン系化合物であることが好ましい。
上記マゼンタ染料層は、更に、下記式(M−2)
【0021】
【化6】

【0022】
及び/又は、下記式(M−3)
【0023】
【化7】

【0024】
で表わされるアントラキノン系化合物を含むものであることが好ましい。
上記シアン染料層は、更に、下記式(C−3)
【0025】
【化8】

【0026】
で表わされるアントラキノン系化合物を含むものであることが好ましい。
以下、本発明を詳細に説明する。
【0027】
まず、本発明の昇華型熱転写シートを構成する各層毎に詳述する。
(基材シート)
本発明における基材シートとしては、従来公知のある程度の耐熱性と強度を有するものであれば何れのものでもよく、例えば、ポリエチレンテレフタレートフィルム、1,4−ポリシクロヘキシレンジメチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリフェニレンサルフィドフィルム、ポリスチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリサルホンフィルム、アラミドフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリビニルアルコールフィルム、セロハン、酢酸セルロース等のセルロース誘導体、ポリエチレンフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、ナイロンフィルム、ポリイミドフィルム、アイオノマーフィルム等の樹脂フィルム;コンデンサー紙、パラフィン紙、合成紙等の紙類;不織布;紙や不織布と樹脂との複合体;等が挙げられる。
上記基材シートは、厚さが一般に約0.5〜50μmであり、好ましくは約3〜10μmである。
上記基材シートは、必要に応じ、その一方の面又は両面に接着処理を施していてもよい。
上記基材シート上に染料層を形成するための染料インキを塗布して形成する場合、染料インキの濡れ性、接着性等が不足しやすいので、接着処理を施すことが好ましい。
上記接着処理としては、コロナ放電処理、火炎処理、オゾン処理、紫外線処理、放射線処理、粗面化処理、化学薬品処理、プラズマ処理、低温プラズマ処理、プライマー処理、グラフト化処理等、公知の樹脂表面改質技術をそのまま適用することができる。また、それらの処理を二種以上併用することもできる。
【0028】
更に、上記基材の接着処理として、基材シート上に接着層を塗工して形成することも可能である。
上記接着層は、例えば、以下の有機材料及び無機材料から形成することができる。上記有機材料としては、ポリエステル系樹脂、ポリアクリル酸エステル系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、スチレンアクリレート系樹脂、ポリアクリルアミド系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエーテル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂やポリビニルアルコール樹脂、ポリビニルピロリドン及びその変性体等のビニル系樹脂、ポリビニルアセトアセタールやポリビニルブチラール等のポリビニルアセタール系樹脂等が挙げられる。
上記無機材料としては、シリカ(コロイダルシリカ)、アルミナあるいはアルミナ水和物(アルミナゾル、コロイダルアルミナ、カチオン性アルミニウム酸化物又はその水和物、疑ベークマイト等)、珪酸アルミニウム、珪酸マグネシウム、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、酸化チタン等のコロイド状無機顔料超微粒子等が挙げられる。
上記プライマー処理は、プラスチックフィルムを延伸処理して製造する場合、未延伸フィルムにプライマー液を塗布し、その後に延伸処理して行うこともできる。
【0029】
(染料層)
本発明の昇華型熱転写シートは、染料層として、少なくともマゼンタ染料層とシアン染料層とを形成したものである。
上記昇華型熱転写シートは、更に従来公知のイエロー染料層を形成しイエロー、マゼンタ、シアン染料層を面順次に繰り返し設けたもの、更にブラックインキ層を形成しイエロー、マゼンタ、シアン、ブラック等複数の染料層を面順次に繰り返し設けたものであってよい。
又は、上記複数の染料層に加え転写性保護層を面順次に設けたもの等であってもよい。なお、ブラックは熱溶融性インキ層であっても染料層であってもよく、また染料層および熱溶融性インキ層を面順次に設けたものであっても良い。
【0030】
上記マゼンタ染料層は、下記一般式(A)
【0031】
【化9】

【0032】
(式中、R及びRはそれぞれ独立して炭素数2以上のアルキル基を表し、Rはアルキル基を表し、Xはハロゲン原子を表す。)で表されるアゾ系化合物からなるマゼンタ染料を含むものである。
上記一般式(A)において、R及びRは、それぞれ独立して炭素数2以上のアルキル基である。
上記炭素数2以上のアルキル基の例としては、エチル基、n−プロビル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−へキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基等の直鎖アルキル基;iso−プロピル基、iso−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、3−メチルブチル基、2−メチルブチル基、1−メチルブチル基、2,2−ジメチルプロピル基、1,2−ジメチルプロピル基、1,1−ジメチルプロピル基、4−メチルペンチル基、3−メチルペンチル基、2−メチルペンチル基、1−メチルペンチル基、3,3−ジメチルブチル基、3,2−ジメチルブチル基、3,1−ジメチルブチル基、2,2−ジメチルブチル基、2,1−ジメチルブチル基、1,1−ジメチルブチル基、2,2,1−トリメチルプロピル基、2,1,1−トリメチルプロピル基等の分岐アルキル基;等が挙げられる。
【0033】
上記R及びRとしては、それぞれ炭素数2〜8の直鎖又は分岐アルキル基が好ましく、炭素数3〜5の直鎖又は分岐アルキル基、とりわけ炭素数3〜5の分岐アルキル基が特に好ましい。
【0034】
上記一般式(A)において、Rはアルキル基を表す。
上記Rのアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−へキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基等の直鎖アルキル基、iso−プロピル基、iso−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、3−メチルブチル基、2−メチルブチル基、1−メチルブチル基、2,2−ジメチルプロピル基、1,2−ジメチルプロピル基、1,1−ジメチルプロピル基、4−メチルペンチル基、3−メチルペンチル基、2−メチルペンチル基、1−メチルペンチル基、3,3−ジメチルブチル基、3,2−ジメチルブチル基、3,1−ジメチルブチル基、2,2−ジメチルブチル基、2,1−ジメチルブチル基、1,1−ジメチルブチル基、2,2,1−トリメチルプロピル基、2,1,1−トリメチルプロピル基等の分岐アルキル基が挙げられる。
上記Rとしては、炭素数1〜5の直鎖又は分岐アルキル基が好ましく、炭素数1〜3の直鎖又は分岐アルキル基が特に好ましい。
【0035】
上記一般式(A)において、Xはハロゲン原子を表す。
上記Xのハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。
上記Xとしては、塩素原子又は臭素原子が好ましく、塩素原子が特に好ましい。
【0036】
本発明の昇華型熱転写シートにおいて、上記一般式(A)で表されるアゾ系化合物は、R及びRが炭素数2〜8のアルキル基であり、Rが炭素数1〜5のアルキル基であり、Xが塩素原子又は臭素原子であることがより好ましい。
【0037】
上記一般式(A)で表されるアゾ系化合物の製造方法の例を下記に説明する。
はじめに、下記一般式(a):
【0038】
【化10】

【0039】
(式中、Xは、上記定義に同じ。)
で示されるアニリン類を酸溶媒に溶解した後、ニトロシル硫酸を滴下し、ジアゾ化を行い、ジアゾ液を得る。
上記酸溶媒としては、硫酸、リン酸、塩酸、酢酸、プロピオン酸又はこれらの酸の混合物等を使用することができる。
上記酸溶媒の使用量は、上記アニリン類の重量に対し同量〜10倍重量、好ましくは同量〜5倍重量である。
【0040】
上記ニトロシル硫酸の使用量は、上記一般式(a)で示されるアニリン類のモル量に対し0.8〜1.2倍モル、好ましくは0.95〜1.1倍モルである。
上記アニリン類のジアゾ化において、滴下温度及び反応温度は、一般に−10〜30℃、好ましくは−5〜10℃であり、反応時間は、一般に0.5〜10時間、好ましくは1〜5時間である。
【0041】
次に、得られたジアゾ液を下記一般式(b)
【0042】
【化11】

【0043】
(式中、R、R及びRは、上記定義に同じ。)
で示される化合物とカップリング反応させる。
【0044】
上記カップリング反応は通常、酸性条件下、水性溶媒中で行われる。
上記カップリング反応は、例えば、硫酸、リン酸、塩酸、酢酸、プロピオン酸又はこれらの酸の混合物等を含有する水性溶媒中、上記一般式(b)で示される化合物を溶解又は分散し、上記ジアゾ液を混合することにより実施される。
上記一般式(b)で示される化合物の使用量は、上記一般式(a)で示されるアニリン類のモル量に対し一般に0.9〜1.3倍モル、好ましくは1.0〜1.2倍モルである。
【0045】
上記カップリング反応において、上記ジアゾ液の滴下温度及び反応温度は、一般に−10〜30℃、好ましくは−5〜10℃であり、反応時間は0.5〜10時間、好ましくは1〜5時間である。
【0046】
更に、得られたカップリング反応液にアルカリ水溶液、例えば、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の水溶液を加え、析出物を濾取、水洗、乾燥し、下記一般式(c)
【0047】
【化12】

【0048】
(式中、R、R、R及びXは、上記定義に同じ。)
で示されるアゾ系化合物を得る。
【0049】
最後に、上記一般式(c)のアゾ系化合物の臭素原子をシアノ化することにより、目的とする一般式(A)のアゾ系化合物を得ることができる。
上記シアノ化反応は、極性溶媒中、シアン化銅(I)を反応させて行う。
上記極性溶媒としては、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、スルホラン等が使用できる。
上記シアン化銅(I)の使用量は、一般に、上記一般式(c)で示されるアゾ系化合物のモル量に対し2.0〜2.5倍モルである。
上記シアノ化反応において、反応温度は一般に50〜150℃、好ましくは70〜90℃であり、反応時間は、一般に1〜5時間である。
【0050】
更に、上記シアノ化反応液を水中に排出し、析出物を濾取、水洗した後、トルエン等の有機溶媒で抽出後、抽出液を濾過することにより金属分を除き、有機層を濃縮し、n−へプタン等の脂肪族炭化水素類で分散処理することにより、目的の上記一般式(A)で表されるアゾ系化合物を精製、回収することができる。
【0051】
上記一般式(A)で表されるアゾ系化合物の具体例を表1及び表2に示す。これらの具体例は本願の範囲を限定するものではない。
【0052】
【表1】

【0053】
【表2】

【0054】
なかでも、上記アゾ系化合物としては、下記式(M−1)
【0055】
【化13】

【0056】
で表される化合物であることが好ましい。
【0057】
上記マゼンタ染料層は、上記一般式(A)で表されるアゾ系化合物を含有するが、上記アゾ系化合物を1種のみ含むものであってもよいし、2種以上含むものであってもよい。上記アゾ系化合物に加え、上記一般式(A)以外の構造を有する染料化合物を含むものであってもよい。
【0058】
上記一般式(A)以外の構造を有する染料化合物は、従来公知の昇華型熱転写シートに使用可能な染料であって、熱により昇華移行するものであれば、特に限定されず、色相、印画感度、耐光性、保存性、バインダーへの溶解性等を考慮して適宜選択することができる。
【0059】
上記一般式(A)以外の構造を有する染料としては、例えば、ジアリールメタン系色素;トリアリールメタン系色素;チアゾール系色素;メロシアニン系色素;ピラゾロンメチン等のメチン系色素;インドアニリン系色素;アセトフェノンアゾメチン、ピラゾロアゾメチン、イミダゾルアゾメチン、イミダゾアゾメチン、ピリドンアゾメチンに代表されるアゾメチン系色素;キサンテン系色素;オキサジン系色素;ジシアノスチレン、トリシアノスチレンに代表されるシアノスチレン系色素;チアジン系色素;アジン系色素;アクリジン系色素;ベンゼンアゾ系色素;ピリドンアゾ、チオフェンアゾ、イソチアゾールアゾ、ピロールアゾ、ピラールアゾ、イミダゾールアゾ、チアジアゾールアゾ、トリアゾールアゾ、ジズアゾ等の上記一般式(A)以外のアゾ系色素;スピロピラン系色素;インドリノスピロピラン系色素;フルオラン系色素;ローダミンラクタム系色素;ナフトキノン系色素;アントラキノン系色素;キノフタロン系色素;等が挙げられる。
【0060】
上記マゼンタ染料層は、上述した一般式(A)により表される化合物と共に、下記式(M−2)及び/又は下記式(M−3)で表されるアントラキノン系化合物を更に含有するものであることが好ましい。
【0061】
【化14】

【0062】
【化15】

【0063】
上記式(M−2)で表される化合物としては、Disperse Red60(例:商品名 Plast Red 8375(有本化学工業社製)等)等のアントラキノン系染料が挙げられ、上記式(M−3)で表される化合物としては、Disperse Violet26(例:商品名 Sandoplast Red Violet R(クラリアントジャパン社製))等のアントラキノン系染料が挙げられる。
【0064】
上記マゼンタ染料は、発色性の点で、トルエン中の吸光係数が10000〜100000ml/g・cmであることが好ましい。
本明細書において、上記吸光係数は、0.0002質量%の染料を含有するトルエン溶液を調製し、島津製作所社製UV−3100PCにて最大吸収波長λmax時の吸光係数を測定した値である。
【0065】
本発明におけるマゼンタ染料の含有量は、基材、プライマーとの組み合わせにもよるが、画像として充分な濃度(マゼンタ反射濃度1.8以上:ISOステータスA濃度測定時)が得られるような染料含有量が好ましい。上記含有量範囲については、後述する。
【0066】
本発明の昇華型熱転写シートは、シアン染料層を有するものである。
上記シアン染料層は、下記一般式(B)
【0067】
【化16】

【0068】
(式中、Rは炭素数1〜6のアルキル基、炭素数6のアリール基、又は、炭素数1〜4のアルコキシ基を表し、Yは水素原子又はハロゲン原子を表す。)
で表されるインドアニリン系化合物からなるシアン染料を含むものである。
【0069】
上記一般式(B)で表されるインドアニリン系化合物としては、下記式(C−1)及び/又は(C−2)
【0070】
【化17】

【0071】
【化18】

【0072】
で表されるインドアニリン系化合物であることが好ましい。上記インドアニリン系化合物の市販品として、例えば、式(C−1)で表される化合物としては、特許2572025号公報のインドアニリン系化合物を挙げることができ、式(C−2)で表される化合物としては、特許5045436号公報のインドアニリン系化合物を挙げることができる。
【0073】
上記インドアニリン系化合物は、上述した化合物のいずれか一方がシアン染料層に含まれていてもよいし、双方が含まれていてもよい。
上記シアン染料層は、更に下記式(C−3)
【0074】
【化19】

【0075】
で表されるアントラキノン系化合物を含有するものであってもよい。
シアン染料として、上記一般式(B)で表されるインドアニリン系化合物に加え、上記アントラキノン系化合物を含有することにより、耐光性を同等に保ったまま色相を調節することができる。
上記式(C−3)で表される化合物の市販品としてSolvent Blue63(例:商品名 Plast Blue 8540(有本化学工業社製)等)を挙げることができる。
【0076】
上記シアン染料は、発色性の点で、トルエン中の吸光係数が10000〜100000ml/g・cmであることが好ましい。上記吸光係数は、上述したマゼンタ染料と同様の方法にて測定した値である。
【0077】
上記各染料層は、それぞれ上記特定の染料に加え、バインダー樹脂をも含有するものである。
上記バインダー樹脂としては、特に限定されず、従来公知のものを使用することができ、例えば、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、酢酸セルロース、酪酸セルロース等のセルロース系樹脂;ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルブチラール、ポリビニルアセタール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリルアミド等のビニル系樹脂;ポリエステル系樹脂;フェノキシ樹脂;等が挙げられる。
【0078】
上記バインダー樹脂としては、更に、離型性グラフトコポリマーも挙げられる。上記離型性グラフトコポリマーは、離型剤として配合することもできる。
上記離型性グラフトコポリマーは、ポリシロキサンセグメント、フッ化炭素セグメント、フッ化炭化水素セグメント及び長鎖アルキルセグメントから選択された少なくとも1種の離型性セグメントを、上述のバインダー樹脂を構成するポリマー主鎖にグラフト重合させてなるものである。
上記離型性グラフトコポリマーとしては、なかでも、ポリビニルアセタールからなる主鎖にポリシロキサンセグメントをグラフトさせて得られるグラフトコポリマーが好ましい。
【0079】
上記染料層は、所望により、離型剤、無機微粒子、有機微粒子等の添加剤を使用してもよい。
上記離型剤としては、上述の離型性グラフトコポリマー、シリコーンオイル、リン酸エステル等が挙げられる。
上記無機微粒子としては、カーボンブラック、アルミニウム、二硫化モリブデン等が挙げられる。
上記有機微粒子としては、ポリエチレンワックス等が挙げられる。
【0080】
上述の各染料層は、それぞれ各特定の染料、バインダー樹脂及び所望により添加する添加剤と、溶剤とを含有する染料インキから形成されるものである。
上記溶剤としては、染料インキの材料として従来公知のものであれば特に限定されず、例えば、アセトン、メタノール、水、メチルエチルケトン、トルエン、エタノール、イソプロピルアルコール、シクロヘキサノン、ジメチルホルムアミド〔DMF〕、酢酸エチル、これらの溶剤の混合溶剤等が使用でき、なかでも、メチルエチルケトンとトルエンとの混合溶剤が好ましい。
【0081】
上記マゼンタ染料を含有する染料インキにおいて、マゼンタ染料の含有量は、バインダー樹脂固形分100質量部に対して、50〜300質量部であることが好ましく、85〜250質量部であることがより好ましい。なお、上記マゼンタ染料が2種以上の染料化合物を含有するものである場合、上記マゼンタ染料の含有量及び固形分量は、何れも各染料化合物の合計に関する範囲を表す。
【0082】
上記マゼンタ染料は、上記一般式(A)で表されるアゾ系化合物及び上記式(M−2)及び/又は上記式(M−3)で表されるアントラキノン系化合物の両化合物を含有する場合、上記アゾ系化合物:上記アントラキノン系化合物=1:4よりもアゾ系化合物の割合が高いことが好ましく、2:5よりもアゾ系化合物の割合が高いことがより好ましい。これ以下であると、印画時に充分な濃度を得ることができないおそれがある。
【0083】
上記マゼンタ染料インキは、上記式(A)及び上記式(M−2)及び/又は式(M−3)で表される各化合物を、好ましくは、合計量で該マゼンタ染料インキの0.5質量%以上、より好ましくは該マゼンタ染料インキの2〜8質量%の範囲で含有している。
上記合計量が0.5質量%未満であると、感度不足となり所望の濃度が得られないことがあり、また、該合計量が8質量%を超えると、熱転写シートとしたときに染料が析出してくるおそれがある。
本明細書において、マゼンタ染料インキが2種以上の染料化合物を含有するものである場合、上記シアン染料の含有量a及び固形分量は、何れも各染料化合物の合計に関する範囲を表す。
【0084】
上記一般式(A)のアゾ系化合物は、トルエン、メチルエチルケトン、乳酸メチル等、染料インキに汎用される有機溶剤の種類を問わず溶解性が高いので、熱転写シートの染料として使用する場合、高い染料/樹脂比の染料層にすることができる。この点、本発明の昇華型熱転写シートは、上記一般式(A)のアゾ系化合物を染料として用いることにより、染料/樹脂比が高い染料層を有するので、転写時の感度が良く、発色濃度にも優れている。
【0085】
上記シアン染料を含有する染料インキにおいて、上記シアン染料の含有量は、バインダー樹脂100質量部に対し、好ましくは50〜300質量部、より好ましくは85〜250質量部である。
上記シアン染料を含有する染料インキにおいて、式(C−1)又は式(C−2)で表されるインドアニリン系化合物は、両者の合計を100部とした場合(質量比)で(C−1)/(C−2)=0/100〜100/0であることが好ましく、30/70〜70/30であることがより好ましい。
上記シアン染料は、上記一般式(B)で表されるインドアニリン系化合物及び上記式(C−3)で表されるアントラキノン系化合物の両化合物の合計を100部とした場合(質量比)、上記インドアニリン系化合物/上記アントラキノン系化合物=100/0〜20/80であることが好ましく、上記インドアニリン系化合物/アントラキノン系化合物=100/0〜35/75(質量比)であることがより好ましい。
上記シアン染料インキは、上記シアン染料とバインダー樹脂との合計量、すなわち固形分が質量基準で2〜30質量%程度であることが好ましく、5〜15質量%であることがより好ましい。
【0086】
上記シアン染料インキは、上記式(B)及び上記式(C−3)で表される各化合物を、好ましくは、合計量で該シアン染料インキの0.5質量%以上、より好ましくは該シアン染料インキの2〜8質量%の範囲で含有している。
上記合計量が0.5質量%未満であると、感度不足となり所望の濃度が得られないことがあり、また、該合計量が8質量%を超えると、熱転写シートとしたときに染料が析出してくるおそれがある。
本明細書において、シアン染料インキが2種以上の染料化合物を含有するものである場合、上記シアン染料の含有量a及び固形分量は、何れも各染料化合物の合計に関する範囲を表す。
【0087】
上記各染料インキは、例えば、ペイントシェーカー、プロペラ型攪拌機、ディゾルバー、ホモミキサー、ボールミル、ビーズミル、サンドミル、2本ロールミル、3本ロールミル、超音波分散機、ニーダー、ラインミキサー、2軸押出機等の従来公知の製造方法を用いて調製することができる。
【0088】
上記各染料層は、例えば、ワイヤーバーコーティング、グラビア印刷法、グラビア版を用いたリバースロールコーティング法等の従来公知の方法で上述の各染料インキを塗工することにより形成することができる。
上記塗工方法としては、グラビアコーティングが好ましい。
上記塗工において、特に限定されないが、60〜120℃の温度にて1秒〜5分程度乾燥することが好ましい。
上記各染料インキの乾燥が不充分であると、地汚れや巻取りにした際に染料インキが裏移りし、更にその裏移りした染料インキが巻き返した際に異なる色相である染料層に再移転する、いわゆるキックバックが生じることがある。
上記各染料インキは、乾燥塗布量が好ましくは0.2〜3.0g/m程度、より好ましくは0.4〜1.0g/m程度となるよう塗布すればよい。
【0089】
本発明の昇華型熱転写シートは、染料として、上述の特定のマゼンタ染料を含有するマゼンタ染料層と、上述の特定のシアン染料を含有するシアン染料層とを有するものであるため、両者を併せて印画を行っても、耐光性に優れ、キャタリティックフェイディングが少ない印画物を得ることができる。
【0090】
(その他の層)
1.耐熱滑性層
本発明の熱転写シートは、更に、上述の染料層を形成する面と反対側の基材シート面上に、耐熱滑性層を設けてなるものであってもよい。
上記耐熱滑性層は、ステッキングや印画しわ等、熱転写時にサーマルヘッドの熱が原因で生じる問題を防止するために設けるものである。
【0091】
上記耐熱滑性層は、主に耐熱性樹脂からなるものである。
上記耐熱性樹脂としては、特に限定されず、例えば、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルアセトアセタール樹脂、ポリエステル樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリブタジエン樹脂、スチレン−ブタジエン共重合体樹脂、アクリルポリオール、ポリウレタンアクリレート、ポリエステルアクリレート、ポリエーテルアクリレート、エポキシアクリレート、ウレタン又はエポキシのプレポリマー、ニトロセルロース樹脂、セルロースナイトレート樹脂、セルロースアセテートプロピオネート樹脂、セルロースアセテートブチレート樹脂、セルロースアセテート−ヒドロジエンフタレート樹脂、酢酸セルロース樹脂、芳香族ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、塩素化ポリオレフィン樹脂等が挙げられる。
【0092】
上記耐熱滑性層は、耐熱性樹脂に加え、滑り性付与剤、架橋剤、離型剤、有機粉末、無機粉末等の添加剤を配合してなるものであってもよい。
【0093】
上記耐熱滑性層は、一般に、上述の耐熱性樹脂、並びに、所望により添加する上記滑り性付与剤及び添加剤を溶剤中に加えて、各成分を溶解又は分散させて耐熱滑性層塗工液を調製した後、該耐熱滑性層塗工液を基材の上に塗工し、乾燥させて形成することができる。
上記耐熱滑性層塗工液における溶剤としては、上述の染料インキにおける溶剤と同様のものを使用することができる。
上記耐熱滑性層塗工液の塗工法としては、例えば、ワイヤーバーコーティング、グラビア印刷法、スクリーン印刷法、グラビア版を用いたリバースロールコーティング法等が挙げられるが、なかでもグラビアコーティングが好ましい。
上記耐熱滑性層塗工液は、乾燥塗布量が好ましくは0.1〜3g/m、より好ましくは1.5g/m以下となるよう塗布すればよい。
【0094】
2.下引き層等
本発明の昇華型熱転写シートは、基材シート上に上述の染料層を有するものであれば、上記基材シートと染料層との間に下引き層等を設けてなるものであってもよい。
本発明において、下引き層は、特に限定されず、基材と染料層との接着性を向上させる組成を適宜選択して設けることができる。
【0095】
本発明の昇華型熱転写シートは、画像形成後に画像面を保護する保護層を転写できるよう、更に、上述の染料層と面順次に転写保護層を形成したものであってもよい。
上記転写保護層の構成及び調製は、特に限定されず、使用する基材シート、染料層等の特徴に応じて、従来公知の技術より選択することができる。
上記転写保護層は、基材フィルムが離型性でない場合、基材フィルムと転写保護層との間に剥離層を設けて、転写保護層の転写性を向上させることが好ましい。
【0096】
本発明の昇華型熱転写シートは、上述の基材フィルムの染料層と反対側にサーマルヘッド等により所定箇所を加熱・加圧し、染料層のうち印字部に相当する箇所の染料を被転写材に転写させて印画することができる。
上記被転写材として熱転写受像シート等を使用することができる。
上記熱転写受像シートとしては、記録面が染料受容性を有するものであれば特に限定されず、例えば、紙、金属、ガラス、合成樹脂等の基材の少なくとも一方の面に染料受容層を形成したものを挙げることができる。
上記熱転写を行う際に使用するプリンターとしては、特に限定されず、公知の熱転写プリンターを使用することができる。
【発明の効果】
【0097】
本発明の昇華型熱転写シートは、上述した構成よりなるので、優れた耐光性とキャタリティックフェイディングが少ない印画物を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0098】
以下に本発明について実施例を掲げて更に詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。また実施例中、「部」、「%」は特に断りのない限り「質量部」、「質量%」を意味する。
【0099】
(実施例)
厚さ4.5μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(PET)に、下記組成からなる耐熱滑性層塗工液1.0g/m(乾燥塗布量)を塗布し乾燥させて耐熱滑性層を形成し、上記PET上に形成した耐熱滑性層と反対側の面に、表3に示される下記組成からなる染料インキをグラビアコーティングにより、乾燥塗布量が0.6g/mになるように塗布し、80℃で2分間乾燥して染料層を形成した。
【0100】
<耐熱滑性層塗工液>
ポリビニルブチラール樹脂(エスレックBX−1、積水化学工業社製) 13.6部
ポリイソシアネート硬化剤(タケネートD218、武田薬品工業社製) 0.6部
リン酸エステル(プライサーフA208S、第一工業製薬社製) 0.8部
メチルエチルケトン(MEK) 42.5部
トルエン 42.5部
【0101】
<染料インキ組成>
表に示される数値の単位は質量部である。
【0102】
【表3】

【0103】
上記表中の染料M−1、C−1及びC−2の化学式は以下の通りである。
【0104】
【化20】

【0105】
(比較例)
各染料インキにおける染料を下記表4のものに代える以外は、実施例と同様にして熱転写シートを作製した。染料は、特開平7−232481号公報に記載される染料M−10及びM−11の他、昇華転写用染料として通常使用されるDisperse Red 343(マゼンタ、Resolin Red F3BS(商品名)、ランクセス社製)、Disperse Blue 354(シアン、Foron Brilliant Blue S−R(商品名)、クラリアントジャパン社製)を使用した。
【0106】
【表4】

【0107】
上記表中の染料M−10、M−11、Disperse Red 343及びDisperseBlue 354の化学式は以下の通りである。
【0108】
【化21】

【0109】
【化22】

【0110】
【化23】

【0111】
(試験例)
各実施例及び各比較例に使用した染料並びに各実施例及び各比較例から得られた熱転写シートについて、以下の試験を行った。結果を表5に示す。
熱転写記録テスト(発色濃度)
被転写体としてオリンパス(株)製、デジタルカラープリンタ P−400専用A4サイズスタンダードペーパーを用い、転写性保護層としてオリンパス(株)製、デジタルカラープリンタ P−400専用インクリボンパックの転写製保護層を用いて、各熱転写シートの染料層と染料受容面とを対向させて重ね合せ熱転写シートの裏面からヘッド引加エネルギー0〜0.15mJ/dotの条件にてサーマルヘッドで熱転写を行い、各種濃度の印画物を作成し、発色濃度(ISOステータスA濃度)を測定した。
(評価基準)
0.15mJ/dotの条件(印加エネルギー)にて
○:マゼンタ及びシアンの発色濃度が共に1.8以上
×:マゼンタ又はシアンの発色濃度が1.8以下
【0112】
耐光性テスト
上記熱転写記録テストで得られた画像をキセノンウェザオメター(アトラス社製、Ci4000:ブラックパネル温度45℃、フィルターCIRA,ソーダライム)にて90時間照射を行い、照射前の濃度が1である印画物の照射後の濃度残存率を算出し、下記の基準にて照射前後の濃度変化を評価した。
(評価基準)
○:マゼンタ及びシアンの濃度残存率が共に80%以上
×:マゼンタ又はシアンの濃度残存率が80%以下
【0113】
キャタリティックフェイディング
マゼンタ及びシアンのそれぞれについて、単色の濃度残存率と、ブルー画像中のマゼンタ成分及びシアン成分の濃度残存率との差を比較して、下記の基準にて評価した。
○:マゼンタ及びシアンの濃度残存率の差が共に7%以下
×:マゼンタ及びシアンの少なくとも一方の濃度残存率の差が7%以上
【0114】
濃度色相の測定
グレタグマクベス社製分光測定器SpectroLinoを用いて、濃度を測定した(測定条件、濃度:ISOステータスA濃度(ANSI Status A))。
【0115】
【表5】

【0116】
表5より、本発明の熱転写シートは濃度と耐光性が共に優れる。比較例は、耐光性に優れる染料は濃度に劣り、濃度に優れるものは耐光性が劣る。濃度、単色の耐光性に優れるものも、キャタリティックフェイディングによりマゼンタ、シアンを重ねた場合の耐光性に劣る。
【産業上の利用可能性】
【0117】
本発明の昇華型熱転写シートは、上述の構成よりなるものであるので、耐光性等の諸堅牢性に優れ、キャタリティックフェイディングが少ない印画物を得ることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材シート上に、染料とバインダー樹脂からなる染料層として少なくともマゼンタ染料層及びシアン染料層が形成された熱転写シートであって、
前記マゼンタ染料層が、下記一般式(A)
【化1】

(式中、R及びRはそれぞれ独立して炭素数2以上のアルキル基を表し、Rはアルキル基を表し、Xはハロゲン原子を表す。)
で表わされるアゾ系化合物からなるマゼンタ染料を含み、
前記シアン染料層が、下記一般式(B)
【化2】

(式中、Rは炭素数1〜6のアルキル基、炭素数6のアリール基又は炭素数1〜4のアルコキシ基を表し、Yは水素原子又はハロゲン原子を表す。)
で表わされる化合物からなるシアン染料を含む
ことを特徴とする昇華型熱転写シート。
【請求項2】
マゼンタ染料は、下記式(M−1)
【化3】

で表わされるアゾ系化合物である請求項1記載の昇華型熱転写シート。
【請求項3】
シアン染料は、下記式(C−1)
【化4】

及び/又は下記式(C−2)
【化5】

で表わされるインドアニリン系化合物である請求項1又は2記載の昇華型熱転写シート。
【請求項4】
マゼンタ染料層は、更に、下記式(M−2)
【化6】

及び/又は、下記式(M−3)
【化7】

で表わされるアントラキノン系化合物を含有する請求項1、2又は3記載の昇華型熱転写シート。
【請求項5】
シアン染料層は、更に、下記式(C−3)
【化8】

で表わされるアントラキノン系化合物を含有する請求項1、2、3又は4記載の昇華型熱転写シート。

【公開番号】特開2008−87306(P2008−87306A)
【公開日】平成20年4月17日(2008.4.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−269961(P2006−269961)
【出願日】平成18年9月29日(2006.9.29)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】