説明

昇降床付き貨物自動車の昇降床駆動装置

【課題】 昇降床付き貨物自動車において、昇降床昇降用の油圧アクチュエータ(例えば油圧シリンダ)を昇降床側に設置したものでは、昇降床の昇降に伴って油圧供給経路の一部が上下動するが、そのホース可動部分を小スペース内で移動させるようにする。
【解決手段】 昇降床付き貨物自動車において、昇降床昇降用の油圧アクチュエータ30を昇降床2に設け、油圧アクチュエータ30への油圧供給源4を車体側に設け、油圧供給源4と油圧アクチュエータ30とを繋ぐ油圧供給経路5の中間部に可撓性のあるホース53を使用し、該ホース53を昇降床2の昇降方向に沿って垂下させ且つその垂下させたホースの下部側をU形に屈曲させて昇降床2の昇降に伴ってホース53の屈曲される部分53cが順次変化するように設置していることにより、昇降床2の昇降に伴ってホース53が狭い範囲のみで移動するようにしている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、貨物自動車の荷台上にもう一つの荷物載置用の床を昇降自在に設置した昇降床付き貨物自動車に関し、さらに詳しくはそのような昇降床付き貨物自動車における昇降床駆動装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の昇降床付き貨物自動車は、荷物を荷台上と昇降床上の上下2段に積載できるので、積荷スペースを有効利用できるとともに輸送効率を向上させることができるものである。
【0003】
この種の昇降床付き貨物自動車の一例として、特開2000−219077号公報(特許文献1)に示されるものがある。
【0004】
この特許文献1の昇降床付き貨物自動車は、荷台上の4隅にそれぞれ支柱を立設し、該4本の支柱内にそれぞれ油圧シリンダ(4本)を上下向き姿勢で設置して、昇降床の4隅をそれぞれ各油圧シリンダで支持している。そして、この特許文献1の昇降床付き貨物自動車では、4本の油圧シリンダを同期伸縮させることにより昇降床を水平姿勢で昇降させ得るようになっている。
【0005】
ところで、上記特許文献1の昇降床付き貨物自動車では、昇降床を昇降させる4本の油圧シリンダををそれぞれ支柱内に設置しているが、このように各油圧シリンダを各支柱内に設置したものでは、各支柱の太さが太くなり、その分、荷台上の有効スペースが狭くなる。又、昇降床昇降用に4本の油圧シリンダを使用したものでは、該油圧シリンダの合計重量が重くなって、その分、荷台上に積載される荷物重量が制限されるとともに、各油圧シリンダの伸縮動作(伸縮時期及び伸縮スピード)を4本とも正確に同期させる必要があり、そのために精密な連動同期システムが必要となる。
【0006】
そこで、本件出願人は、特許文献1の上記各種問題点を解消又は軽減するために、昇降床昇降用の油圧アクチュエータ(油圧シリンダ)を昇降床側に設置したものを既に提案している(特許文献2の特願2007−154676号)。
【0007】
この特許文献2の昇降床付き貨物自動車では、昇降床昇降用の油圧シリンダ(1本又は2本)を昇降床の下面に前後横向き姿勢で設置する一方、昇降床の4隅をそれぞれワイヤーロープで吊持し、油圧シリンダで各ワイヤーロープを引き込み・繰り出し操作することで昇降床を昇降させ得るようになっている。
【0008】
【特許文献1】特開2000−219077号公報
【特許文献2】特願2007−154676号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、上記特許文献2のように、昇降床昇降用の油圧シリンダを昇降床側に設置したものでは、油圧シリンダが昇降床とともに上下動するので、車体側に設けた油圧供給源(作動油タンクや油圧ポンプ等)と昇降床側の油圧シリンダとを繋ぐ油圧供給経路の一部のホースに弛み部分を設けて、該弛み部分のホースを昇降床の昇降に伴って上下に追従させる必要がある。尚、この種の昇降床付き貨物自動車では、昇降床の最大昇降ストロークが170cm程度あり、昇降床に追従させる可動部分のホースがかなりの長さ必要である。
【0010】
このように、昇降床の昇降に伴ってホースの一部を追従させ得るようにしたものでは、その追従部分のホースの動き範囲がかなり大きくなり、該ホースの動き範囲の近傍には障害となる構成物や荷物が置けない。つまり、昇降床の昇降に伴って追従するホース部分の占有スペースが広くなり、その分、荷台上の有効スペースが制限されるという問題があった。尚、上記追従部分のホースが構成物や荷物等に引っ掛かると、ホース(その接続部を含む)が損傷したり、あるいは構成物や荷物等が損傷する虞れがある。
【0011】
そこで、本願発明は、昇降床昇降用の油圧アクチュエータを昇降床側に設置したものにおいて、昇降床の昇降時に追従するホース部分の動きを小スペースの範囲内で行わせ得るようにした昇降床駆動装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本願発明は、上記課題を解決するための手段として次の構成を有している。尚、本願発明は、昇降床付き貨物自動車の昇降床駆動装置を対象にしている。
【0013】
[本願請求項1の発明]
本願請求項1の発明の昇降床駆動装置は、貨物自動車の荷台上に昇降床を昇降自在に設置した昇降床付き貨物自動車に適用されるものである。この種の昇降床付き貨物自動車では、一般に荷台の4隅にそれぞれ支柱を立設し、該4本の支柱で昇降床の4隅をガイドして荷台上に昇降床を昇降自在に設置しているが、本願でもこのような構成の昇降床付き貨物自動車を採用できる。
【0014】
本願請求項1の昇降床駆動装置では、上記昇降床付き貨物自動車において、昇降床昇降用の油圧アクチュエータを昇降床に設ける一方、油圧アクチュエータへの油圧供給源を車体側に設けている。
【0015】
昇降床昇降用の油圧アクチュエータとしては、油圧シリンダが一般的であるが、油圧シリンダを使用した場合には該油圧アクチュエータを昇降床の下面において前後横向き姿勢で設置するとよい。この場合は、昇降床の4隅をそれぞれワイヤーロープで各支柱の上部から吊持し、該各ワイヤーロープを油圧アクチュエータ(油圧シリンダ)で引き込み・繰り出し操作することで、昇降床を各支柱に沿って昇降させることができる。尚、昇降床昇降用の駆動装置としてネジ棒に移動体を螺合させたネジ棒回転式のものを使用する場合には、油圧アクチュエータとして油圧モータも使用できる。
【0016】
このように、昇降床昇降用の油圧アクチュエータを昇降床側に設けると、荷台上(例えば4隅の各支柱内)に油圧アクチュエータ(例えば油圧シリンダ)を設けたもののように荷台上の有効スペースが狭くなるという問題が解消される。
【0017】
油圧アクチュエータへの油圧供給源には、車輛のエンジンを動力源とした油圧ポンプが使用される関係で、該油圧供給源は車体側に設置されている。そして、車体側の油圧供給源と昇降床側の油圧アクチュエータとは、一連の油圧供給経路で繋がれるが、油圧アクチュエータが昇降床とともに上下動する関係で油圧供給経路の中間部に弛み部分を設ける必要がある。
【0018】
そこで、本願発明の昇降床駆動装置では、油圧供給源と油圧アクチュエータとを繋ぐ油圧供給経路の中間部に可撓性のあるホースを使用し、該ホースを、昇降床の昇降方向に沿って垂下させ且つその垂下させたホースの下部側をU形に屈曲させて昇降床の昇降に伴ってホースの屈曲される部分(U形屈曲部)が順次変化するように設置している。
【0019】
尚、油圧供給経路の中間部に使用される前記ホースは可撓性を有していることから、以下の説明では該ホースを可撓ホースということがある。
【0020】
そして、本願発明の昇降床駆動装置では、可撓ホースを上下向き姿勢で下部側をU形に折り返した状態で設置しており、昇降床の昇降時に可撓ホースの下部側が順次U形屈曲姿勢を維持したまま上下変位するようになっている。尚、この可撓ホースは、昇降床の前縁部分の近傍位置に設置するとよい。
【0021】
このように、可撓ホースをU形に折り返して設置すると、可撓ホースの水平面内での占有面積が小さくてよい。又、昇降床昇降時に可撓ホースが実質的に動く部分は、該ホースにおける昇降床側接続部から最上動したときのU形屈曲部までの範囲だけであり(可撓ホースの車体側接続部から最上動したときのU形屈曲部までの範囲は不動のままである)、しかも昇降床昇降時における可撓ホースの動きは鉛直方向に変化するだけなので、該可撓ホースの水平方向のはみ出しが起こらない。このことは、可撓ホースが昇降床の昇降に伴って動くものであっても、該可撓ホースの水平方向の占有スペースが増減しないことを意味する。
【0022】
従って、この請求項1の昇降床駆動装置では、昇降床昇降時において可撓ホースは比較的狭い範囲(具体的には、昇降床が最下動したときの可撓ホースのU形屈曲部から、昇降床が最上動したときの可撓ホースのU形屈曲部までの範囲)でのみ動くようになり、可撓ホースが動くための占有スペースが狭いものでよい。
【0023】
[本願請求項2の発明]
本願請求項2の発明は、上記請求項1の昇降床駆動装置において、油圧アクチュエータに接続された昇降床側油圧供給経路の一端を昇降床の一辺部分に設けたジョイント部に固定し、該昇降床側ジョイント部が昇降する位置の近傍における車体側の所定高位置にジョイント部を設けて該車体側ジョイント部に油圧供給源に接続された車体側油圧供給経路の一端を固定しているとともに、昇降床側ジョイント部と車体側ジョイント部とをホース(前記可撓ホース)で接続していることを特徴としている。
【0024】
この請求項2の昇降床駆動装置では、可撓ホースの両端部を、所定高位置に設けた車体側ジョイント部と昇降床の一辺部分に設けた昇降床側ジョイント部にそれぞれ固定できるので、該可撓ホースの設置姿勢が安定する。
【0025】
[本願請求項3の発明]
本願請求項3の発明は、上記請求項2の昇降床駆動装置において、昇降床側ジョイント部を昇降床の床面より所定高さだけ上方に突出させた突出体の上部に固定していることを特徴としている。
【0026】
この請求項3の昇降床駆動装置では、可撓ホースの一端部が接続される昇降床側ジョイント部が突出体の上部に固定されているので、昇降床が最下動した状態でも、可撓ホースの下部側にU形屈曲部を形成するための高さを確保できる。
【0027】
[本願請求項4の発明]
本願請求項4の発明は、上記請求項1から3のいずれか1項の昇降床駆動装置において、可撓ホースをカバー体で囲っていることを特徴としている。
【0028】
このカバー体には、可撓ホースにおける昇降床側の端部が上下動できるようにするための上下向き切欠溝が形成される。
【0029】
この請求項4の昇降床駆動装置では、可撓ホースをカバー体で囲っているので、昇降床昇降時に可撓ホースがその近傍にある構造物や荷物等に接触する(引っ掛かる)のを未然に防止できる。
【発明の効果】
【0030】
[本願請求項1の発明の効果]
本願請求項1の発明の昇降床駆動装置は、次のような効果がある。
【0031】
まず、昇降床昇降用の油圧アクチュエータを昇降床に設けていることにより、荷台上のスペースが昇降床昇降用の油圧アクチュエータで狭くなることがなく、該荷台上の有効スペースを広くできるという効果がある。
【0032】
又、昇降床昇降用の油圧アクチュエータを昇降床に設けたものでは、一連の油圧供給経路の中間部に昇降床に昇降に伴う弛み部分が必要であるが、この請求項1の昇降床駆動装置では、該弛み部分に可撓ホースを使用し、該可撓ホースを、昇降床の昇降方向に沿って垂下させ且つその垂下させたホースの下部側をU形に屈曲させて昇降床の昇降に伴って可撓ホースの屈曲される部分(U形屈曲部)が順次変化するように設置している。
【0033】
このようにすると、昇降床昇降時において可撓ホースは比較的狭い範囲(具体的には、昇降床が最下動したときの可撓ホースのU形屈曲部から、昇降床が最上動したときの可撓ホースのU形屈曲部までの範囲)でのみ動くようになり、可撓ホースが動くための占有スペースが狭いものでよい。従って、この請求項1の昇降床駆動装置では、可撓ホースの設置部分のかなり近傍まで構造物を設置したり荷物を積載したりすることができ、油圧供給経路の一部(可撓ホース)が昇降床の昇降に伴って動くものであっても、荷台上の有効スペースを広くできるという効果がある。
【0034】
[本願請求項2の発明の効果]
本願請求項2の発明は、上記請求項1の昇降床駆動装置において、油圧アクチュエータに接続された昇降床側油圧供給経路の一端を昇降床の一辺部分に設けたジョイント部に固定し、該昇降床側ジョイント部が昇降する位置の近傍における車体側の所定高位置にジョイント部を設けて該車体側ジョイント部に油圧供給源に接続された車体側油圧供給経路の一端を固定しているとともに、昇降床側ジョイント部と車体側ジョイント部とを可撓ホースで接続している。
【0035】
従って、この請求項2の昇降床駆動装置では、可撓ホースの両端部を、所定高位置に設けた車体側ジョイント部と昇降床の一辺部分に設けた昇降床側ジョイント部にそれぞれ固定できるので、上記請求項1の効果に加えて可撓ホースの設置姿勢が安定するという効果がある。
【0036】
[本願請求項3の発明の効果]
本願請求項3の発明は、上記請求項2の昇降床駆動装置において、昇降床側ジョイント部を昇降床の床面より所定高さだけ上方に突出させた突出体の上部に固定している。
【0037】
従って、この請求項3の昇降床駆動装置では、上記請求項2の効果に加えて、昇降床が最下動した状態でも可撓ホースの下部側にU形屈曲部を形成するための高さを確保できるという効果がある。
【0038】
[本願請求項4の発明の効果]
本願請求項4の発明は、上記請求項1から3のいずれか1項の昇降床駆動装置において、可撓ホースをカバー体で囲っている。
【0039】
従って、この請求項4の昇降床駆動装置では、請求項1〜3の効果に加えて、昇降床昇降時に可撓ホースがその近傍にある構造物や荷物等に接触する(引っ掛かる)のを未然に防止でき、安全性が確保できるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0040】
添付の図面を参照して本願の実施形態を説明すると、図1〜図7には本願実施形態の昇降床駆動装置を備えた昇降床付き貨物自動車が示されている。
【0041】
この実施形態に採用されている昇降床付き貨物自動車は、図1〜図4に示すように、貨物自動車の荷台1の上にもう一つの荷物載置用の床(昇降床)2を昇降自在に設置して、上下2段に荷物10,10・・を積み込み得るようにしたものである。
【0042】
荷台1の4隅には、それぞれ所定高さの支柱11,11・・を立設している。該4本の支柱11,11・・の上部は、四角形状の連結フレーム12で連結している。尚、荷台1の上部(各支柱11,11・・の外側)は、側板や天板等で囲ってもよい。
【0043】
4本の支柱11,11・・の内側には、荷台1とほぼ同面積の昇降床2が配置されている。この昇降床2は、その4隅がそれぞれ各支柱(4本)11,11・・にガイドされていて、該昇降床2が水平姿勢で昇降し得るようになっている。
【0044】
昇降床2は、フレーム材を組立てた枠体の上面に床板を設置したものが採用されている。この昇降床2は、積載荷物によって撓まないようにするために、枠体として適度の厚さ(例えば150mm程度の厚さ)のフレーム材を使用している。そして、該枠体の上面に床板を設置した状態では、床板下面の枠体で囲われた部分に所定高さ(150mm程度)の空間部が形成されている。床板下面の空間部は、後述する昇降床昇降用の駆動装置3の一部となる油圧アクチュエータ30を設置するためのスペースとして利用されている。
【0045】
この実施形態では、昇降床2を昇降させるための駆動装置3として、図1〜図4に示すように昇降床2の4隅をそれぞれ吊持する4本の上動用ワイヤーロープ32,32・・と、該各上動用ワイヤーロープ32,32・・をそれぞれ巻掛ける各シーブ33,33・・と、各上動用ワイヤーロープ32,32・・を引き込み・繰り出し操作する油圧アクチュエータ30とを有している。又、この実施形態の昇降床駆動装置3には、油圧アクチュエータ30が昇降床下降側に作動したときに昇降床2を強制的に下動させる4本の下動用ワイヤーロープ34,34・・と、該各下動用ワイヤーロープ34,34・・それぞれ巻掛ける各シーブ35,35・・とを有している。尚、この実施形態では、昇降床昇降用の油圧アクチュエータ30に油圧シリンダを使用しており、以下の説明では該油圧アクチュエータを油圧シリンダと称する。
【0046】
この実施形態の昇降床駆動装置3では、後述するように昇降床昇降用の油圧シリンダ30が昇降床2に設けられている一方、該油圧シリンダ30に作動油を供給する油圧供給源4が車体側に設けられており、該油圧供給源4から一連の油圧供給経路5を介して油圧シリンダ30に作動油を供給し得るようになっている。尚、油圧供給源4は、タンク41内の作動油を油圧ポンプ42で汲み上げて油圧供給経路5を通して油圧シリンダ30に供給し得るものである。油圧供給経路5の途中には切換弁43が設けられており、該切換弁43によって油圧供給経路(2つの経路がある)5を作動油供給側と作動油還流側に切換え得るようになっている。
【0047】
油圧シリンダ30は、昇降床2の左右中央部の後部寄り位置における床板下面の空間部においてロッドが前側に向く水平姿勢で設置している。又、該油圧シリンダ30は、昇降床2の厚さ範囲に収まるように設置されていて、昇降床2の下面が荷台1の上面に近接(又は接触)するまで該昇降床2を下動させ得るようになっている。このように、昇降床昇降用の油圧シリンダ30を昇降床2の下面に水平姿勢で設置していると、荷台1上のスペースが該油圧シリンダ30で狭くなることがなく、該荷台1上の有効スペースを広くできる。
【0048】
油圧シリンダ30のロッド先端部には、昇降床2の幅方向に向く姿勢で角棒状の移動体31が取付けられている。この移動体31は、油圧シリンダ30の伸縮に伴って前後動して、各上動用ワイヤーロープ32,32・・及び各下動用ワイヤーロープ34,34・・をそれぞれ引き込み・繰り出し操作するものである。
【0049】
そして、この昇降床駆動装置3は、油圧シリンダ30が最縮小している状態(図2の点線図示状態及び図3の状態)では、移動体31が車輌後方側にあって4本の上動用ワイヤーロープ32,32・・がそれぞれ繰り出されている(昇降床2部分での長さが短くなる)一方、4本の下動用ワイヤーロープ34,34・・がそれぞれ引き込まれて(昇降床2部分での長さが長くなる)、昇降床2が荷台1上に近接(又は接触)する位置まで下降している。他方、油圧シリンダ30が最縮小状態から伸長すると、図4に示すように移動体31が車輌前方側に移動し、4本の上動用ワイヤーロープ32,32・・がそれぞれ引き込まれる(昇降床2部分での長さが長くなる)一方、4本の下動用ワイヤーロープ34,34・・がそれぞれ繰り出されて(昇降床2部分での長さが短くなる)、昇降床2が各支柱11,11・・にガイドされながら水平姿勢を維持したまま所望高さまで上動させることができる。又、昇降床2の上動状態から油圧シリンダ30が縮小すると、各上動用ワイヤーロープ32,32・・が緩む(繰り出される)一方で、各下動用ワイヤーロープ34,34・・が緊張する(引き込まれる)ので、昇降床2を水平姿勢を維持したまま確実に下降させることができる。尚、昇降床2の昇降ストロークは最大で170cm程度であるが、油圧シリンダ30の伸縮量を調整することで、昇降床2の上動高さを無段階に調整できる。
【0050】
そして、この実施形態の昇降床付き貨物自動車では、昇降床2を図1に実線図示するように最下動させた状態で該昇降床2上に荷物10,10・・を積み込んだ後、その荷物とともに昇降床2を所定高さまで上動させ(図1に符号2′で示す鎖線図示状態)、該昇降床2′の下方のスペース(荷台1上)に別の荷物10,10・・を積み込むことができるようになっている。
【0051】
ところで、この実施形態の昇降床付き貨物自動車のように、昇降床昇降用の駆動装置3となる油圧シリンダ30を昇降床2側に設けたものでは、油圧シリンダ30が昇降床2とともに上下動するので、一連の油圧供給経路5の中間部に弛み部を設ける必要があるが、この弛み部には、繰り返し撓曲し得るホース53(以下の説明では、このホースを可撓ホースという)が使用されている。
【0052】
一連の油圧供給経路5は、油圧供給源4に接続された車体側油圧供給経路51と、昇降床2側の油圧シリンダ30に接続された昇降床側油圧供給経路52と、上記可撓ホース53とで構成されている。尚、以下の説明では、上記車体側油圧供給経路51を車体側ホースといい、上記昇降床側油圧供給経路52を昇降床側ホースということがあるが、該車体側ホース51及び昇降床側ホース52は可撓性のない剛性管(例えば金属管)を使用してもよい。尚、この一連の油圧供給経路5を構成する各ホース51,52,53及び後述の各ジョイント部12,22は、それぞれ2本1組である。
【0053】
図5〜図7に示すように、車体側ホース51の一端と可撓ホース53の一端53aとはジョイント部12で接続されており、可撓ホース53の他端53bと昇降床側ホース52の一端とはジョイント部22で接続されているが、その接続にあたって次の支持構造を採用している。尚、この各ジョイント部12,22は、図6及び図7に示すように、短小ホースの両端にそれぞれ接続口を設けたものである。
【0054】
まず、荷台1の前縁部には、前側の各支柱11,11の前面に沿って薄型箱状の壁体6が取付けられている。尚、この壁体6は、前側の両支柱11,11間の空所前面を塞ぐ面積を有している。壁体6の後面61の所定高さ位置((例えば荷台1上面から170cm程度の高さ位置)には、後述のカバー体7内の空所に向けて開口する切欠窓62(図6、図7)が形成されている。
【0055】
壁体6の後面61の幅方向中央部には、図5〜図7に詳細表示するように、可撓ホース53を囲う縦長のカバー体7が取付けられている。このカバー体7は、後面板71と左右の各側面板72,72と上面板73とを有している。尚、このカバー体7の大きさは、特に限定するものではないが、左右幅が40〜50cm、前後厚さが10〜15cm、高さが220〜230cm程度である。そして、該カバー体7の前面側を壁体後面61に接合させていることにより、該カバー体7内に所定容積の空所が設けられている。カバー体7の後面板71には、縦長の切欠溝74が形成されている。この切欠溝74は、後述の昇降床側ジョイント部22を上下に移動させる通路となるものである。
【0056】
昇降床2の前側辺部には、その中央寄り位置に昇降床2の床面より所定高さ(例えば30〜40cm程度の高さ)だけ上方に突出する突出体21が取付けられている。この突出体21には、前方側が開放された縦長の箱体が使用されている。
【0057】
カバー体7内の空所における上記壁体後面61の切欠窓62が対面する高さ位置には、車体側ホース51の端部と可撓ホース53の一端53aとを接続するジョイント部12(一対ある)が取付けられている。尚、車体側ホース51の端部が接続されるジョイント部12を車体側ジョイント部という。他方、上記突出体21の上部寄り位置には、昇降床側ホース52の端部と可撓ホース53の他端53bとを接続するジョイント部(一対ある)22が取付けられている。尚、昇降床側ホース52の端部が接続されるジョイント部22を昇降床側ジョイント部という。
【0058】
車体側ジョイント部12は、壁体後面61の切欠窓62を通して壁体6内の空所とカバー体7内の空所に跨がっている。昇降床側ジョイント部22は、カバー体7の切欠溝74を通してカバー体7内の空所と突出体21内の空所に跨がっている。尚、昇降床側ジョイント部22は、カバー体7の切欠溝74部分を上下に移動できる。
【0059】
そして、車体側ジョイント部12には、車体側ホース51の先端と可撓ホース53の一端53aがそれぞれ接続されている一方、昇降床側ジョイント部22には、可撓ホース53の他端53bと昇降床側ホース52の一端とがそれぞれ接続されて、一連の油圧供給経路5を形成している。
【0060】
一連の油圧供給経路5のうちの可撓ホース53は、図5〜図7に示すように、カバー体7内の空所において車体側ジョイント部12から昇降床2の昇降方向に沿って垂下させるとともに、その垂下させたホース下部側53cをU形に屈曲させた状態で設置している。そして、この可撓ホース53は、昇降床2の昇降に伴ってホース下部側の屈曲される部分(U形屈曲部53c)が順次変化するようになっている。即ち、可撓ホース53は上下向き姿勢で下部側53cをU形に折り返した状態で設置しており、昇降床2の昇降時に可撓ホース53の下部側53cが順次U形屈曲姿勢を維持したまま上下変位するようになっている。
【0061】
このように、可撓ホース53を昇降床2の昇降方向(鉛直方向)に沿ってU形に折り返して設置すると、可撓ホース53の水平面内での占有面積が小さくてよい。又、昇降床昇降時に可撓ホース53が実質的に動く部分は、昇降床2が最下動したときの可撓ホース53のU形屈曲部53cから、昇降床2が最上動したときの可撓ホース53のU形屈曲部(図5、図7の符号53c′)までの範囲だけであり、しかも昇降床昇降時における可撓ホース53の動きは鉛直方向に変化するだけなので、該可撓ホース53の水平方向のはみ出しが起こらない。このことは、可撓ホース53が昇降床2の昇降に伴って動くものであっても、該可撓ホース53の水平方向の占有スペースが増減しないことを意味する。
【0062】
従って、この実施形態の昇降床駆動装置では、昇降床昇降時において可撓ホース53は比較的狭い範囲でのみ動くようになり、可撓ホース53が動くための占有スペースが狭いものでよい。このような構成のものでは、可撓ホース53の設置部分のかなり近傍まで構造物を設置したり荷物を積載したりすることができ、油圧供給経路5の一部(可撓ホース53)が昇降床2の昇降に伴って動くものであっても、荷台1上の有効スペースを広くできる。
【0063】
又、この昇降床駆動装置では、可撓ホース53の各端部53a,53bをそれぞれ車体側ジョイント部12と昇降床側ジョイント部22に固定しているので、該可撓ホース53の設置姿勢が安定する。
【0064】
さらに、この昇降床駆動装置では、昇降床側ジョイント部22を昇降床2の床面より所定高さだけ上方に突出させた突出体21の上部に固定し、該昇降床側ジョイント部22に可撓ホース53の一端53bを固定しているので、昇降床2が最下動した状態でも、可撓ホース53の下部側にU形屈曲部53cを形成するための高さを確保できる。
【0065】
又、この昇降床駆動装置では、可撓ホース53はカバー体7で囲っているので、昇降床昇降時に可撓ホース53がその近傍にある構造物や荷物等に接触する(引っ掛かる)のを未然に防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】本願実施形態の昇降床駆動装置を備えた昇降床付き貨物自動車の側面図である。
【図2】図1平面視相当図である。
【図3】図1の昇降床付き貨物自動車における昇降機構の説明用斜視図(昇降床下動状態図)である。
【図4】図3からの状態変化図(昇降床上動状態図)である。
【図5】図1のV−V矢視拡大図である。
【図6】図5のVI−VI断面図である。
【図7】図5及び図6部分の斜視図である。
【符号の説明】
【0067】
1は荷台、2は昇降床、3は昇降床駆動装置、4は油圧供給源、5は油圧供給経路6は壁体、7はカバー体、11は支柱、12は車体側ジョイント部、21は突出体、22は昇降床側ジョイント部、30は油圧アクチュエータ(油圧シリンダ)、41は作動油タンク、42は油圧ポンプ、51は車体側ホース、52は昇降床側ホース、53は可撓ホース、53cはU形屈曲部である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
貨物自動車の荷台(1)上に昇降床(2)を昇降自在に設置した昇降床付き貨物自動車において、
昇降床昇降用の油圧アクチュエータ(30)を昇降床(2)に設ける一方、前記油圧アクチュエータ(30)への油圧供給源(4)を車体側に設けているとともに、
前記油圧供給源(4)と前記油圧アクチュエータ(30)とを繋ぐ油圧供給経路(5)の中間部に可撓性のあるホース(53)を使用し、
該ホース(53)を、前記昇降床(2)の昇降方向に沿って垂下させ且つその垂下させたホースの下部側をU形に屈曲させて昇降床(2)の昇降に伴ってホース(53)の屈曲される部分(53c)が順次変化するように設置している、
ことを特徴とする昇降床付き貨物自動車の昇降床駆動装置。
【請求項2】
請求項1において、
油圧アクチュエータ(30)に接続された昇降床側油圧供給経路(52)の一端を昇降床(2)の一辺部分に設けたジョイント部(22)に固定し、
該昇降床側ジョイント部(22)が昇降する位置の近傍における車体側の所定高位置にジョイント部(12)を設けて該車体側ジョイント部(12)に油圧供給源(4)に接続された車体側油圧供給経路(51)の一端を固定しているとともに、
前記昇降床側ジョイント部(22)と前記車体側ジョイント部(12)とをホース(53)で接続している、
ことを特徴とする昇降床付き貨物自動車の昇降床駆動装置。
【請求項3】
請求項2において、
昇降床側ジョイント部(22)を昇降床(2)の床面より所定高さだけ上方に突出させた突出体(21)の上部に固定している、
ことを特徴とする昇降床付き貨物自動車の昇降床駆動装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項において、
ホース(53)をカバー体(7)で囲っている、
ことを特徴とする昇降床付き貨物自動車の昇降床駆動装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−107356(P2009−107356A)
【公開日】平成21年5月21日(2009.5.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−278293(P2007−278293)
【出願日】平成19年10月26日(2007.10.26)
【出願人】(393008360)株式会社タダノエンジニアリング (15)
【出願人】(000148759)株式会社タダノ (419)