説明

昇降式収容棚

【課題】簡単な構成で収容棚が上昇中に前板との間で手挟みが生じた際に前板と収容棚との間の隙間を広げて逃がすようにした昇降式収容棚を提供する。
【解決手段】前面14dが開口した収容棚14と、収容棚を所定の上限位置と下限位置との間で昇降させる昇降機構31と、収容棚とは独立して支持され、収容棚の上限位置で当該収容棚の前面14dを覆う前板12とを有し、前板には収容棚の下方からの上昇に際して当該収容棚の前面との間で手挟みが生じたときに当該収容棚の前面との間の隙間を広げる方向に前板12を逃がす逃し手段55が設けられている構成とし、収容棚の下限位置からの下方からの上昇に際して収容棚に片方の手を掛けたまま誤って他方の手で上昇スイッチ49を押して片方の手が前板と収容棚との間に挟まれたとき、逃し手段により前板を収容棚の前面との間の隙間を広げる方向に逃がす。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トイレや台所、玄関等に設置されて収納物を収容する昇降式収容棚に関する。
【背景技術】
【0002】
システムキッチン等に適用されている電動式の収容棚として、室内の壁の上部に取付た外箱に電動式昇降機構により上下動する収容棚を設け、外箱に収容棚の昇降に伴い開閉する目隠し用の前板を設けた構造のものが従来から知られている。また、昇降式の収容棚として、室内の壁の上部に取付られた外箱に電動式昇降機構によって上下動するキャビネットを設け、外箱にキャビネットの上下動に伴って開閉する扉を設け、扉は上方部をヒンジにより外箱に枢支されると共に移動規制部材によってキャビネットの最大上昇時に略全閉とする設定とされ、電動式昇降機構の電源断の状態でも扉を手動により僅少幅で開くことが可能であり、かつ扉を開いた状態における開口部の隙間から取り外し可能として、停電等によりキャビネットが下降できないような非常時においても、扉を開いて食器等を取り出すことができるようにした扉付き昇降キャビネットが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2005−21297号公報(図1、3頁―5頁)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、従来の電動式の収容棚は、収容棚が上昇する際に収納物を前板と収容棚との間に挟んだときに収納物を破損したり、駆動用のモータに負担をかけるおそれがある。特に上昇時は一度操作スイッチを押すと自動的に収容棚が上昇する仕組みになっているため、収容棚に片方の手を掛けたまま誤って他方の手で上昇スイッチを押して片方の手が前板と収容棚との間に挟まれるいわゆる手挟みが生じるおそれがある。また、収容棚の上昇中に棚から目を離す可能性が高く、前板と収容棚との間に収納物を挟むおそれが高い。
【0004】
特にトイレ等の狭い場所に電動式の収容棚を設置する場合、多くの場合、便器後方の壁に設置されるために便器の手前から身を乗り出すような姿勢で収容棚にトイレットペーパ等を収容するようになる。このため、収容棚に手を掛けた状態で収納を行う場合が多く、前板と収容棚との間に手や指を挟み易い状況にある。
【0005】
ここで、前板と収容棚との間に収納物や手等が挟まれた際にこれを電気的に検知するような構成にすると、部品点数が増加してコストの上昇を招くこととなる。また、特許文献1に開示されている扉付き昇降キャビネットのようにキャビネットの昇降動作に連動して扉が開閉する構造にした場合も部品点数が増加してコスト高となる。
【0006】
本発明の目的は、簡単な構成で収容棚が上昇中に前板との間で手挟みが生じた際に前板と収容棚との間の隙間を広げて逃がすようにした昇降式収容棚を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決するために、本発明に係る昇降式収容棚は、
前面が開口した収容棚と、
前記収容棚を所定の上限位置と下限位置との間で昇降させる昇降機構と、
前記収容棚とは独立して支持され、前記収容棚の上限位置で当該収容棚の前面を覆う前板とを有し、
前記前板には、前記収容棚の下方からの上昇に際して当該収容棚の前面との間で手挟みが生じたときに当該収容棚の前面との間の隙間を広げる方向に前記前板を逃がす逃し手段が設けられていることを特徴としている。
【0008】
通常の状態において収容棚は昇降機構により上限位置に上昇されており、開口部が前板により覆われて目隠しされている。そして、収容棚内に収容されている必要な物を取り出す場合或いは収容する場合、使用者が昇降機構の下降スイッチを操作すると、収容棚が下限位置まで下降して停止する。収容棚は、この下限位置において開口部の上端が前板の下端近傍に位置して開口する。そして、使用者が収容棚から必要な物を取り出し、或いは収容する。
【0009】
使用者が収容棚を元の位置に戻すべく昇降機構の上昇スイッチを操作すると収容棚が上昇する。昇降機構は、上昇スイッチを押すと自動的に収容棚が上昇する仕組みになっているため、収容棚の下方からの上昇に際して収容棚に片方の手を掛けたまま誤って他方の手で上昇スイッチを押して片方の手が前板と収容棚との間に挟まれたとき、逃し手段により前板を収容棚の前面との間の隙間を広げる方向に逃がす。これにより、使用者は、挟まれた手や指先等を容易に引き抜くことができる。収容棚が途中まで下がった状態から上昇して手挟みが生じた場合についても同様である。
【0010】
特にトイレ等の狭い場所においては多くの場合、便器後方の壁に設置されるために便器の手前から身を乗り出すような姿勢で収容棚にトイレットペーパ等を収容するようになり、収容棚に手を掛けた状態で収納を行う場合があり、前板と収容棚との間に手や指を挟み易い状況にある。従って、このような環境においては極めて有効である。
【0011】
また、本発明の請求項2に記載の昇降式収容棚は、請求項1に記載の昇降式収容棚において、
前記逃し手段はヒンジであって、前記前板の上部裏面と前記収容棚の背面の壁から突出し前記前板を支持する支持体とを連結していることを特徴としている。
【0012】
前板の逃し手段としてヒンジを使用することによって極めて簡単な構成で前板と収容棚との間の手挟みを有効に防止することが可能となる。
【0013】
また、本発明の請求項3に記載の昇降式収容棚は、請求項2に記載の昇降式収容棚において、
前記ヒンジの回転中心が前記収容棚の前面よりも後方に位置して配置されていることを特徴としている。
【0014】
ヒンジの回転中心を収容棚の前面よりも後方に位置して配置することにより、前板の下端と収容棚との間に手挟みが生じたときに前板が手前側に逃げやすくなり、使用者が容易に手や指先を引き抜くことが可能となる。
【0015】
また、本発明の請求項4に記載の昇降式収容棚は、請求項1又は請求項2に記載の昇降式収容棚において、
前記前板と前記支持体との間には前記手挟みが生じたときに前記逃し手段によって前記収容棚と前記前板との間を広げることが可能な程度の保持力で前記前板を閉じる前板閉じ手段が備わっていることを特徴としている。
【0016】
前板は、前板閉じ手段により揺動が抑えられて常時収容棚を覆う位置に保持されている。この保持力は、前板と収容棚との間で手挟みが生じたときに収容棚と前板との間を広げることが可能な程度とされている。これにより、手挟みが生じたときに前板を手前側に逃げさせて収容棚と前板との間を広げ、使用者が容易に手挟みを解消することが可能となる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によると、収容棚が上昇する際に前板との間に手挟みが生じた場合或いは収容物等が挟まれたときに前板が手前方向に開いて逃げることにより、使用者が手挟みを生じたときに手を容易に抜くことができると共に、収容物を破損することを防止することが可能となる。
【0018】
また、極めて簡単な構成で収容棚が上昇中に前板との間で手挟みが生じた際に前板と収容棚との間の隙間を広げて逃がすことが可能となり、部品点数が少なく、安価に提供することができる。
【0019】
具体的には、通常の状態において収容棚は昇降機構により上限位置に上昇されており、開口部が前板により覆われて目隠しされている。そして、収容棚内に収容されている必要な物を取り出す場合或いは収容する場合、使用者が昇降機構の下降スイッチを操作すると、収容棚が下限位置まで下降して停止する。収容棚は、この下限位置において開口部の上端が前板の下端近傍に位置して開口する。そして、使用者が収容棚から必要な物を取り出し、或いは収容する。
【0020】
使用者が収容棚を元の位置に戻すべく昇降機構の上昇スイッチを操作すると収容棚が上昇する。昇降機構は、上昇スイッチを押すと自動的に収容棚が上昇する仕組みになっているため、収容棚の下方からの上昇に際して収容棚に片方の手を掛けたまま誤って他方の手で上昇スイッチを押して片方の手が前板と収容棚との間に挟まれたとき、逃し手段により前板を収容棚の前面との間の隙間を広げる方向に逃がす。これにより、使用者は、挟まれた手や指先等を容易に引き抜くことができる。
【0021】
特にトイレ等の狭い場所においては多くの場合、便器後方の壁に設置されるために便器の手前から身を乗り出すような姿勢で収容棚にトイレットペーパ等を収容するようになり、収容棚に手を掛けた状態で収納を行う場合があり、前板と収容棚との間に手や指を挟み易い状況にある。従って、このような環境においては極めて有効である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明の一実施形態に係る昇降式収容棚について図面に基づいて説明する。図1及び図2に示すようにトイレ1の後壁2側の中央位置に便器5が設置されており、一側の側壁3に照明灯6、局所洗浄便座の操作部7、トイレットペーパ8、手洗い器9等が配置されている。尚、トイレ1は、使用者が便器5に着座した状態で背中側の壁を後壁2とし、前側の壁を前壁4と称することとする。後壁2の上部位置には昇降式収容棚11が設置されている。この収容棚11の前板12は、後壁2から前方に突出して設けられた左右両側の支持体13により支持されている。収容棚14は、左右の支持体13の間に昇降可能に配置されており、図示の上限位置において前面14dに開口する開口部が前板12により覆われて目隠しされている。
【0023】
支持体13は、図3及び図4に示すように上梁15、下梁16及び側板17、前板18からなる。これらの上梁15、下梁16は、角パイプ状をなし上下に所定間隔を存して平行にかつ後壁2と直角をなして前方に張り出し、各後端部がそれぞれ裏板19と共に後壁2の上部に固定されている。そして、上梁15、下梁16の両側部に側板17が固定され、前端部に前板18が固定されている。即ち、支持体13は、盤体をなす片持梁状をなしている。尚、図3は、分かり易くするために前板12及び収容棚14を透視して描いてある。
【0024】
裏板19には上端部及び略中央位置に横方向にフレーム21,22が平行に固定されており、これらのフレーム21,22の所定位置にスライドレール23、ガイド25,25,支持フレーム26が上下方向に垂直に配置されて固定されている。収容棚14の上板14aの上面中央位置に支持部材27の下端部が固定されており、この支持部材27はスライダ24に固定されている。スライダ24は、スライドレール23に沿って上下方向に垂直に移動可能とされている。また、収容棚14の裏板14cの裏面中央位置にガイド板28が固定されており、両側部がガイド25,25により上下方向に摺動可能にガイドされている。これにより、収容棚14は、スライドレール23及びガイド25に沿って左右に揺れることなく昇降可能とされている。
【0025】
昇降機構31は、フレーム21の一側端部に固定された駆動用のギヤードモータ32と、支持フレーム26の上下両端部に回転軸が水平にかつ回転自在に軸支された歯付プーリ33,34及びこれらの歯付プーリ33,34に掛けられた歯付ベルト(タイミングベルト)35等により構成されている。ギヤードモータ32の出力軸は、上側の歯付プーリ33の回転軸に連結されている。また、図3に示す収容棚14の上板14aの後端部が歯付ベルト35に固定されている。そして、ギヤードモータ32の回転に伴い上側の歯付プーリ33が回転し、これに伴い歯付ベルト35が上下方向に移動して収容棚14が昇降する。
【0026】
裏板19の上端部中央位置と収容棚14の上板14aとの間には定荷重ばね機構41が設けられている。定荷重ばね機構41は、裏板19の上端中央位置に設けられたブラケット42に回転軸が水平にかつ回転自在に軸支されたドラム43と、一端がドラム43に固定されて当該ドラム43に巻回され、他端が収容棚14の上板14aの上面中央後端部に固定された定荷重ばね、例えばコンストンバネ44とにより構成されている。この定荷重ばね機構41は、元に戻るトルク(ドラム43に巻き戻るトルク)が一定で、ストロークによって変化しない特徴を有するスプリングで、収容棚14の昇降のフリーストップを可能としている。これにより、ギヤードモータ32の出力を小さくすることが可能となり、小型・軽量化が図られる。
【0027】
スライダ24の側部上端にはドグ45が取り付けられており、支持フレーム26の上下両端所定位置にドグ45と接触可能に位置検出器、例えばリミットスイッチ46,47が取り付けられている。リミットスイッチ46は、収容棚14の上限位置を検出し、リミットスイッチ47は、収容棚14の下限位置を検出する。また、ガイド板28の下端部28aは、収容棚14の下板14bの下面14eから下方に延出しており、操作部48が取り付けられている。この操作部48には収容棚14を昇降させるための上昇スイッチ49、下降させるための下降スイッチ50、及び電源スイッチ51等が設けられている。これらの上昇スイッチ49、下降スイッチ50及び電源スイッチ51等は前方に向けて、即ち使用者と向かい合うように配置されている。
【0028】
また、裏板19の上部所定位置にコントローラ53が配設されている。コントローラ53は、リミットスイッチ46,47及び操作部48の上昇スイッチ49、下降スイッチ50、電源スイッチ51からの信号を入力してギヤードモータ32を制御する。
【0029】
一方、前板12の裏面の左右両側と左右の支持体13の上部との間には、図3及び図4に示すように、逃し手段55が設けられている。逃し手段55は、収容棚14の下方からの上昇に際してこの収容棚14の前面14dとの間で手挟みが生じたときにこの収容棚14の前面14dとの間の隙間を広げる方向に前板12を逃がすためのもので、例えばヒンジ56で構成されている。ヒンジ56は、支持体13の上梁15の上部にその回転軸(回転中心)56aが前板18の前面、即ち収容棚14の前面14dから所定距離dだけ後方に位置しかつ回転軸56aが上梁15の上面から僅かに上方に位置して配置されている。
【0030】
ヒンジ56の一側の取付部56bは、ブラケット57により上梁15に対して垂直をなして固定されており、他側の取付部56cは、前側に水平に延出してブラケット58により前板12の裏面に固定されている。そして、前板12は、支持体13の前板18と僅かな隙間を存して平行に自重により垂下している。ヒンジ56は、回転軸56a即ち回転中心が収容棚14の前面14dよりも後方に位置して配置されていることにより、収容棚14の下方からの上昇に際してこの収容棚14の前面14dとの間で手挟みが生じたときにこの収容棚14の前面14dとの間の隙間を広げる方向に前板12を逃がすことが可能となる。
【0031】
前板12は、上端部12aが略ギヤードモータ32の取付高さに位置し、下端部12bが収容棚14を上限位置まで上昇させたときに当該収容棚14の下面よりも僅かに下方に位置する程度とされている。これにより、前板12は、収容棚を目隠しすると共に図4に2点鎖線で示すように図中反時計方向、即ち使用者の手前側に略水平位置まで回動可能とされている。
【0032】
前板12の下端部12bは、図4に示すように角型形状をなしていても良く、或いは図5(a)〜図5(d)に示すように下端部12bの裏面12c側の縁部を12d〜12gのように面取りしても良い。これにより、手挟みしたときに使用者の手を有効に保護することが可能となる。この場合、ヒンジ56の回転軸56aが収容棚14の前面14dよりも後方に位置していなくても前板12が多少逃げ易くなり、手挟みをある程度防止する効果がある。
【0033】
また、前板12の裏面左右両側と左右の支持体13の前板18の下部との間に前板閉じ手段61が設けられている。前板閉じ手段61は、例えば図4に示すようにマグネット62とマグネットキャッチ63とにより構成されている。マグネットキャッチ63は、支持体13の前板18の下梁16の開口位置に設けられており、マグネット62は、前板12の裏面12cにマグネットキャッチと対向して固定されている。そして、前板12は、マグネット62とマグネットキャッチ63との吸着力(保持力)により保持されて揺動することが防止されている。
【0034】
前板閉じ手段61は、通常ではマグネット62がマグネットキャッチ63に吸着して前板12を閉じた状態に保持しており、収容棚14を上昇させる際に前板12と収容棚14との間に手挟みが生じたときに逃し手段55によって収容棚14と前板12との間を広げることが可能な程度の保持力(磁気力)で前板12を閉じるように設定されている。
【0035】
以下に作用を説明する。図1及び図2に示すように昇降式収容棚11は、収容棚14が上限位置にあるときには前板12により収容棚14の前面14dが覆われて目隠しされている。前板12の下端部は収容棚14の下面14eよりも僅かに下方に位置していることで、収容棚14が完全に目隠しされており、見栄えの向上が図られている。この状態において定荷重ばね機構41のコンストンバネ44がドラム43に巻き戻された状態になっている。収容棚14内に例えばトイレットペーパ等のトイレット用品を収納する場合、使用者が下降スイッチ50を押すとギヤードモータ32が回転して収納棚14を下降させる。
【0036】
そして、収容棚14の下降に伴い定荷重ばね機構41のコンストンバネ44がばね力(トルク)に抗してドラム43から引き出される。コンストンバネ44は、ドラム43から引き出されるときに収容棚14の下降を抑制する制動力として作用し、当該収容棚14が急激に下降することを防止すると共に、ギヤードモータ32が故障したような場合に収容棚14が急下降することを防止することができる。
【0037】
収容棚14が下限位置まで下降すると、ドグ45がリミットスイッチ47に接触して当該リミットスイッチ47が作動する。これにより、ギヤードモータ32が停止し、収容棚14が図6及び図7に示す下限位置に停止する。収容棚14は、図7に示すように複数の棚が設けられており、トイレットペーパや清掃用品等のトイレ用品を収容可能とされている。
【0038】
使用者が収容棚14に例えばトイレットペーパ等を収納した後上昇スイッチ49を押すとギヤードモータ32が回転して当該収容棚14が上昇を始める。昇降機構31は、一度上昇スイッチ49を押すと自動的に収容棚14が上昇する構成とされているため、収容棚14に片方の手を掛けたまま誤って他方の手で上昇スイッチ49を押して片方の手が前板12と収容棚14との間に挟まれる所謂手挟みが生じるおそれがある。また、収容棚14の上昇中に目を離す可能性が高く、前板12と収容棚14との間に収容物を挟むおそれが高い。
【0039】
特にトイレ等の狭い場所に設置されている場合、図1及び図2に示すように昇降式収容棚11が便器5の後方の後壁2に設置されているために便器5の手前から身を乗り出すような姿勢で収容棚14にトイレットペーパ等を収納するようになる。このため、収容棚14に手を掛けた状態で収納を行う場合が多く、前板12と収容棚14との間に手や指を挟み易い状況にある。
【0040】
そして、使用者が、例えば収容棚14に片方の手を掛けたまま誤って他方の手で上昇スイッチ49を押して図8に示すように片方の手が前板12と収容棚14との間に挟まれる所謂手挟みが生じた場合、逃し手段55が前板12と収容棚14の前面14dとの間の隙間を広げる方向(手前側)に矢印で示すように前板12を逃がす。これにより、使用者は、挟まれた手や指先等を容易に引き出すことができる。使用者が手挟みに気が付いたときに電源スイッチ51を押すとギヤードモータ32が停止し、収容棚14が当該位置に停止する。尚、この場合必ずしも電源スイッチ51を押して収容棚14を停止させる必要はない。
【0041】
また、収容棚14の上昇中に図9に示すように収容棚14に収納した例えばトイレットペーパ収納袋70が倒れて前板12と収容棚14との間に挟まれた場合、逃し手段55が前板12と収容棚14の前面14dとの間の隙間を広げる方向に前板12を逃がす。これにより、トイレットペーパの潰れや変形等が防止される。そして、使用者が、トイレットペーパ収納袋70が挟まれたことに気が付いて電源スイッチ51を押すとギヤードモータ32が停止し、収容棚14が当該位置に停止する。これにより、ギヤードモータ32の過負荷が防止される。トイレットペーパ収納袋70等が挟まれて収容棚14を停止させた場合、使用者が前板12を手前側に開けて収容棚14内に押し込んで納めることができる。また、この停止位置では巧く収容棚14内に納めることができない場合には、下降スイッチ50を押して収容棚14を下限位置まで下降させて収納し直した後再び上昇スイッチ49を押せば良い。
【0042】
収容棚14が上限位置まで上昇してドグ45がリミットスイッチ46を作動させると、ギヤードモータ32が停止し、収容棚14が当該上限位置に停止保持される。定荷重ばね機構41のコンストンバネ44は、収容棚14の上昇に伴いドラム43に巻き戻り、このときのばね力(トルク)が収容棚14を引き上げる作用をする。即ちコンストンバネ44は、収容棚14の上昇時の荷重を軽減し、これにより、ギヤードモータ32の負荷が軽減される。
【0043】
図10乃至図12は、前板12の支持構造の変形例を示す。図10は、支持体13の前面13aを上端13bから下端13cに向かって前方に僅かに突き出すテーパ状に形成したもので、前板12をこのテーパ状の前面13aに当接させるようにして図示しないヒンジで支持するようにしたものである。
【0044】
また、図11は、ヒンジ56の取付部56cを前板12の裏面に固定するL形ブラケット64の取付部64aをヒンジ56の取付部56cに固定し、前板12側の取付部64bを折曲部から下方にかつ前側に向かってテーパ状に傾斜する略楔状に形成して、前板12を支持体13の垂直な前面13a’に対して上端から下端に向かって前方に僅かに突き出すように支持するようにしたものである。
【0045】
また、図12は、前板閉じ手段6のマグネット62を、上端から下端に向かってテーパ状に前方に僅かに突き出す楔状の取付部材65を介して前板12の裏面に固定して、前板12を支持体13の前面13a’に対して上端から下端に向かって前方に僅かに突き出すように支持するようにしたものである。
【0046】
図10乃至図12に示すように前板12を支持体13の前面13a,13a’に対して上端から下端に向かって前方に僅かに突き出すように支持することにより、前板12の下端部12bを、図4及び図12に示すヒンジ56の回転軸56aよりもテーパ角分だけ更に前方に位置するように構成することができ、収容棚14の下方からの上昇に際してこの収容棚14の前面14dとの間で手挟みが生じたときにこの収容棚14の前面14dとの間の隙間を広げる方向に前板12をより逃がし易くする。
【0047】
また、支持体13を前方(使用者の方向)へ延ばして前板12と収容棚14の前面14dとの間の隙間を広くするようにしても良く、或いは収容棚14の一部、例えば使用者が手を掛け易い下板14bの中央部等に切欠を設けて前板12と収容棚14の前面14dとの間の隙間を広くするようにしても良い。
【0048】
また、前板12と支持体13との間に前板12の開きを抑制する前板開き抑制機構を設けても良い。この前板開き抑制機構として、例えば図14に示すような構成の前板開き抑制機構66が考えられる。図13(a)は、前板12の裏面と支持体13の上部との間に鎖67を取り付けて前板12が開き過ぎることを防止するようにしたものである。図13(b)は、前板12の裏面と支持体13の上部との間にコイルスプリング68を取り付けて前板12を閉じる方向に付勢して開き過ぎることを防止するようにしたものである。また、図13(c)は、前板12の裏面と支持体13の上部との間にリンク69を取り付けたものである。
【0049】
前面が開口した収容棚を、昇降機構により所定の上限位置と下限位置との間で昇降させ、収容棚とは独立して支持され前記収容棚の上限位置で当該収容棚の前面を覆う前板を逃し手段により収容棚の下方からの上昇に際して当該収容棚の前面との間で手挟みが生じたときに当該収容棚の前面との間の隙間を広げる方向に前記前板を逃がす。
【0050】
これにより、収容棚の下方からの上昇に際して収容棚に片方の手を掛けたまま誤って他方の手で上昇スイッチを押して前記片方の手が前板と収容棚との間に挟まれたとき、逃し手段により前板を収容棚の前面との間の隙間を広げる方向に逃がすことができ、使用者は、挟まれた手や指先等を容易に引き抜くことができる。
【0051】
特にトイレ等の狭い場所においては多くの場合、昇降式収容棚は、便器後方の壁に設置されるために便器の手前から身を乗り出すような姿勢で収容棚にトイレットペーパ等を収容するようになり、収容棚に手を掛けた状態で収納を行う場合が多く、前板と収容棚との間に手や指を挟み易い状況にある。従って、このような環境に置いては極めて有効である。
【0052】
また、逃し手段をヒンジとし、前板の上部裏面と収容棚の背面の壁から突出し前板を支持する片持梁状の支持体の上端とを連結し、かつヒンジの回転中心を収容棚の前面よりも後方に位置して配置する。これにより、前板の下端と収容棚との間に手挟みが生じたときに前板が手前側に逃げやすくなり、使用者が容易に手や指先を引き出すことが可能となる。
【0053】
また、前板と支持体との間には手挟みが生じたときに逃し手段によって収容棚と前板との間を広げることが可能な程度の保持力で前記前板を閉じる前板閉じ手段を備えている。前板は、前板閉じ手段により揺動が抑えられて常時収容棚を覆う位置に保持されている。そして、この保持力は、前板と収容棚との間で手挟みが生じたときに収容棚と前板との間を広げることが可能な程度とされている。これにより、手挟みが生じたときに前板を手前側に逃げさせて収容棚と前板との間を広げ、使用者が容易に手挟みを解消することが可能となる。
【0054】
尚、上記実施形態においては昇降式収容棚をトイレに設置してトイレットペーパ等のトイレ用品を収納する場合について記述したが、これに限るものではなく他の、例えば台所に設置して食器等を収納するようにしても良く、或いは書斎や居間等に設置して、例えば書籍やビデオテープ、ビデオディスク等を収容するようにしても良い。また、玄関に設置して季節に応じて冬用の靴と夏用の靴を交互に保管するのに用いても良い。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明の一実施形態に係る昇降式収容棚をトイレの後壁に設置した場合の正面図である。
【図2】図1に示したトイレの側面図である。
【図3】図1に示した昇降式収容棚の前板及び収容棚を透視的に描いて収容棚の後方に配置されている各機構を示した説明図である。
【図4】図3に示した昇降式収容棚の矢線IV―IVに沿う断面図である。
【図5】図4に示した前板の下端部形状の一例を示す説明図である。
【図6】図2に示した昇降式収容棚の収容棚を下限位置まで下降させた状態の説明図である。
【図7】図6に示した収容棚の正面図である。
【図8】図7に示した収容棚を下方から上昇させる際に使用者が手挟みした状態の説明図である。
【図9】図7に示した収容棚を下方から上昇させる際に収容棚に収納した収納物が飛び出して前板との間に挟まれた状態の説明図である。
【図10】図4に示した前板を支持体に支持する支持部の変形例を示す要部説明図である。
【図11】図4に示した前板を支持体に支持する支持部の変形例を示す要部説明図である。
【図12】図4に示した前板を支持体に支持する支持部の変形例を示す要部説明図である。
【図13】図4に示した前板と支持体との間に前板の開きを抑制する前板開き抑制機構の一例を示す説明図である。
【符号の説明】
【0056】
1 トイレ
2 後壁
3 側壁
4 前壁
5 便器
6 照明灯
7 局所洗浄便座の操作部
8 トイレットペーパ
9 手洗い器
11 昇降式収容棚
12 前板
12a 上端部
12b 下端部
12c 裏面
12d,12e,12f,12g 下端部の面取部
13 支持体
13a,13a’ 前面
13b 上端部
13c 下端部
14 収容棚
14a 上板
14b 下板
14c 裏板
14d 前面
14e 下面
15 上梁
16 下梁
17 側板
18 前板
19 裏板
21,22 フレーム
23 スライドレール
24 スライダ
25 ガイド
26 支持フレーム
27 支持部材
28 ガイド板
28a 下端部
31 昇降機構
32 ギヤードモータ
33,34 歯付プーリ
35 歯付ベルト
41 定荷重ばね機構
42 ブラケット
43 ドラム
44 コンストンバネ
45 ドグ
46,47 リミットスイッチ(位置検出器)
48 操作部
49 上昇スイッチ
50 下降スイッチ
51 電源スイッチ
53 コントローラ
55 逃し手段
56 ヒンジ
56a 回転軸(回転中心)
56b,56c 取付部
57,58 ブラケット
61 前板閉じ手段
62 マグネット
63 マグネットキャッチ
64 L形ブラケット
64a,64b 取付部
65 取付部材
66 前板開き抑制機構
67 鎖
68 コイルスプリング
69 リンク
70 トイレットペーパ収納袋
d ヒンジの回転軸(回転中心)と収容棚の前面からの距離

【特許請求の範囲】
【請求項1】
前面が開口した収容棚と、
前記収容棚を所定の上限位置と下限位置との間で昇降させる昇降機構と、
前記収容棚とは独立して支持され、前記収容棚の上限位置で当該収容棚の前面を覆う前板とを有し、
前記前板には、前記収容棚の下方からの上昇に際して当該収容棚の前面との間で手挟みが生じたときに当該収容棚の前面との間の隙間を広げる方向に前記前板を逃がす逃し手段が設けられていることを特徴とする昇降式収容棚。
【請求項2】
前記逃し手段はヒンジであって、前記前板の上部裏面と前記収容棚の背面の壁から突出し前記前板を支持する支持体とを連結していることを特徴とする、請求項1に記載の昇降式収容棚。
【請求項3】
前記ヒンジの回転中心が前記収容棚の前面よりも後方に位置して配置されていることを特徴とする、請求項2に記載の昇降式収容棚。
【請求項4】
前記前板と前記支持体との間には前記手挟みが生じたときに前記逃し手段によって前記収容棚と前記前板との間を広げることが可能な程度の保持力で前記前板を閉じる前板閉じ手段が備わっていることを特徴とする、請求項1又は請求項2に記載の昇降式収容棚。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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