説明

昇降式移動足場

【課題】建築物や構造物などの構築時の高所作業に利用することができ、揺れが少なく高所作業をきわめて安全に行なうことができる昇降式移動足場を提供する。
【解決手段】上段および中段の作業用ステージ2,9と、作業用ステージ2,9を昇降させる昇降装置3と、作業用ステージ2,9を設定位置に保持する複数の支柱4と、これらを搭載した走行台車5とから構成する。作業用ステージ2,9を設定位置に保持する支柱4は、走行台車5に直結された下柱4aと下柱4a内を摺動する中柱4bと中柱4b内を摺動する上柱4aとから伸縮自在な多段式に構成する。中柱4bは下柱4aに、上柱4cは下柱4bにそれぞれクランプによって任意の位置で固定できるように構成する。昇降装置3はパンタグラフ構造によるテーブルリフト式の昇降装置とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は高所作業に利用される昇降式移動足場に関し、主として建築物や構造物などの構築時の高所作業に利用され、揺れが少なく高所作業をきわめて安全に行なうことができる。
【背景技術】
【0002】
建築物や構造物などの構築に際し、高所作業用として利用される作業足場として、作業用ステージを昇降させる昇降装置がパンタグラフ構造によるテーブルリフト式の作業足場(図11(a)〜(c))、多段構造の単柱またはタワー等による多段式の作業足場が一般に知られている(図12(a),(b)参照)。
【0003】
なお、これらの図において、符号24は作業用ステージ、25はパンタグラフ構造の昇降装置、符号26は多段構造の単柱、そして符号27は走行台車である。
【0004】
これらは、いずれも作業用ステージがパンタタグラフや支柱などの昇降装置の一部に直結され、昇降装置のみで高さと位置が保持されているため、作業用ステージの安全性は昇降装置の信頼によるものであった。また、作業用ステージの固定は、昇降装置との直結あるいは支柱などのガイドを介した昇降装置との直結により保たれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−027740号公報
【特許文献2】特開2008−174903号公報
【特許文献3】特開平10−219993号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、テーブルリフト式は、作業用ステージがシザーズのみで保持され、他に支持部がないため、作業ステージステージの揺れが大きく、作業者に不安を与えてしまうという課題があった。
【0007】
また、作業用ステージの固定および位置保持もシザーズのみで行うため、位置固定のための安全確保がシザーズの動作機構に限られるものが多く、なかにはパンタグラフ式で定位置を支持棒などで支えるものもあるが、パンタグラフの一ピッチが一段のため、数段の高さ調整しかできないという課題があった。
【0008】
一方、多段式の場合は単体支柱が主体で、支柱はガイドと支柱を兼ねており、作業用ステージの昇降は電動あるいは油圧式によるもので支柱の固定はないため、作業用ステージの揺れは防げないし、位置決めは昇降装置内での停止のみである等の課題があった。
【0009】
本発明は、以上の課題を解決するためになされたもので、強度的に安定し、作業用ステージの揺れが少なく、高所作業をきわめて安全に行なうことができる昇降式移動足場を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1記載の昇降式移動足場は、作業用ステージと、当該作業用ステージを昇降させる昇降装置と、前記作業用ステージを設定位置に保持する支柱と、これらを搭載した走行台車とから構成されてなることを特徴とするものである。
【0011】
本発明は、特に作業用ステージを昇降させる昇降装置とは別に、作業用ステージを設定位置(高さ)に保持する支柱を備えていることにより、作業中の作業用ステージの揺れを防止して高所作業を安全に行えるようにしたものである。特に、作業用ステージを支柱によって設定高さに保持することにより、昇降装置自体の剛性不足による作業用ステージの揺れを激減させることができる。
【0012】
なお、作業用ステージを昇降させる昇降装置には、電動アクチュエーター、電動チェーン、または油圧シリンダー等を利用することができるが、複数の支柱をシンクロナイズさせる簡易な装置としてパンタグラフ構造によるテーブルリフト式の昇降装置なども利用することができる。
【0013】
請求項2記載の昇降式移動足場は、請求項1記載の昇降式移動足場において、作業用ステージを設定位置に保持する支柱は、走行台車に直結された下柱と下柱内を摺動する中柱と中柱内を摺動する上柱とから伸縮自在な多段式に構成され、かつ中柱は下柱に、上柱は下柱にそれぞれ任意の位置で固定できるように構成されてなることを特徴とするものである。
【0014】
中柱を下柱に、上柱を下柱にそれぞれ段階的に任意の位置で固定する装置としては、例えば図6に図示するように、柱内に自動収納できるように構成されたクランプ装置、またはきわめて単純明快な構造として、各柱間の結合部において上柱と中柱、中柱と上柱に設けられたピン孔をそれぞれ真横に貫通する結合ピン等を利用することができる。
【0015】
特に、図6に図示するようなクランプ装置は、中柱と上柱が上下方向のどちらに摺動しても、クランプフックは柱内に収納するように構成されていることにより、上柱を中柱内に、中柱を下柱内にそれぞれ収納することができ、これにより上柱と中柱を摺動させて支柱を自由に伸縮させることができ、また、中柱を下柱に、上柱を下柱にそれぞれ段階的に任意の位置で固定することができる。
【0016】
また、クランプによってクランプフックを強く締め付けることにより、下柱に中柱を、中柱に上柱をそれぞれ強固に結合して作業用ステージの位置決めと安全を確保することにより、高所作業者に不安を感じさせる作業用ステージの揺れを激減させることができる。
【0017】
請求項3記載の昇降式移動足場は、請求項1または2記載の昇降式移動足場において、昇降装置はパンタグラフ構造によるテーブルリフト式の昇降装置であることを特徴とするものである。
【0018】
パンタグラフ構造によるテーブルリフト式の昇降装置は簡易な昇降装置であり、製作コストの削減等を図ることができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明は、高所作業用のステージを昇降させるための昇降装置とは別に、高所作業用のステージを設定位置(高さ)に保持するための支柱が備えていることで、作業用ステージの揺れを激減できて高所作業をきわめて安全に行うことができる。
【0020】
特に、作業用ステージを支柱によって設定高さに保持することにより、昇降装置自体の剛性不足による作業用ステージの揺れを防止することができる。また、作業用ステージを昇降させる昇降装置として、パンタグラフ構造によるテーブルリフト式の昇降装置を利用することにより、製作コストの削減等を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】昇降式移動足場の一実施形態を示し、作業用ステージが上昇した状態を示す斜視図である。
【図2】昇降式移動足場の一実施形態を示し、作業用ステージが収納された状態を示す斜視図である。
【図3】昇降式移動足場の平面図である。
【図4】中柱と上柱にフックベースと共に内臓されたクランプフック、フックガイドおよびスプリングを示し、(a)はその一組を示す斜視図、(b)はフックベースに組み込まれた状態を示す斜視図である。
【図5】上段ステージと中段作業用ステージとを直結する支柱に取り付けられた足掛かりステップを示す斜視図である。
【図6】作業ステージを設定高さに保持する支柱の下柱と中柱との結合部を示し、(a)は下柱と中柱が結合される前の状態を示す斜視図、(b)は下柱と中柱が結合された後の状態を示す斜視図である。
【図7】作業用ステージを設定高さに保持する支柱を示し、中柱に上柱が収納され、かつ下柱に中柱と上柱が収納された状態を示す横断面図である。
【図8】作業ステージを設定高さに保持する支柱の動作を示し、(a)は中柱が下柱内を上下方向に摺動する状態を、(b)は上柱が中柱内を上下方向に摺動する状態をそれぞれ示す横断面図である。
【図9】作業用ステージを設定高さに保持する支柱の動作を示し、(a)は中柱が下柱に結合された状態を、(b)は上柱が中柱に結合された状態をそれぞれ示す横断面図である。
【図10】作業用ステージを設定高さに保持する支柱の動作を示し、(a)は中柱が下柱内を、上柱が中柱内をそれぞれ上下方向に摺動する状態を示す縦断面図、 (b)は中柱が下柱に、上柱が中柱にそれぞれ結合された状態を示す縦断面図である。
【図11】(a),(b),(c)は、パンタグラフ構造のテーブルリフト式の昇降式移動足場の従来例を示す正面図である。
【図12】多段構造の単柱による多段式の昇降式移動足場の従来例を示し、(a)は正面図、(b)は側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図1〜図10は、本発明の一実施形態を示し、図において、昇降式移動足場1は、上段の作業用ステージ2、作業用ステージ2を昇降させる昇降装置3、作業用ステージ2を設定高さに保持する支柱4およびこれらを搭載した走行台車5を備えて構成されている。
【0023】
作業用ステージ2は、四隅が支柱4によって走行台車5の上に支持され、また作業用ステージ2の周囲と床には手摺り6とハッチ7がそれぞれ設けられている。
【0024】
昇降装置3はパンタグラフ構造によるテーブルリフト式で、手動式の油圧ジャッキ(図省略)によって上下方向に伸縮するシザーズ8とシザーズ8の上端部に設置された中段の作業用ステージ9とを備え、作業用ステージ9には、上段の作業用ステージ2とシザーズ8とを直結し、かつ中段の作業用ステージ9と上段の作業用ステージ2との間を行き来するための内梯子10と昇降用支柱11を備え、昇降用支柱11には足掛りステップ11aが取り付けられている。
【0025】
支柱4は、作業用ステージ2の四隅を支持する位置にそれぞれ建て付けられ、走行台車5の上に直結された下柱4aと下柱4a内を上下方向に摺動する中柱4bと中柱4b内を上下方向に摺動する上柱4cとから上下方向に伸縮自在な多段式に構成されている。
【0026】
各中柱4bと各上柱4c内には、それぞれクランプフック12とフックガイド13とスプリング14およびスプリング15がそれぞれ内臓されている。また、これらが内臓された中柱4bおよび上柱4cの側部にフック窓4dがそれぞれ設けられている。
【0027】
クランプフック12、フックガイド13、スプリング14およびスプリング15は、それぞれ1個ずつ備えて一組のフックユニット16を構成し(図4(b)参照)、フックユニット16はフックベース17にその長手方向(中柱4bおよび上柱4cの長手方向)に一定間隔おきに複数組に組み込まれ(図4(a)参照)、かつフックベース17と共に各中柱4bと上柱4cにそれぞれ内臓されている。
【0028】
クランプフック12は、スプリング14によって中柱4bと上柱4cの側部にそれぞれ設けられたフック窓4dから飛び出すように、取付けピン12aを軸に矢印イ方向に回転する回転力が付与されている。
【0029】
また、フックガイド13は、スプリング15によって中柱4aと上柱4cの側部に設けられたフック窓4dから飛び出さないように、取付けピン13aを軸に矢印ロ方向に回転する回転力が付与されている。
【0030】
さらに、フックガイド13は、フックガイド13とクランプフック12にそれぞれ突設された突片13bと12bを介して、フッククランプ12を矢印イ方向とは反対方向に回転するように回転力を付与している。
【0031】
但し、スプリング14によるフッククランプ12の矢印イ方向への回転力が、フックガイド13の矢印ロ方向への回転力よりも大きいことにより、フック窓4cに位置するフックガイド12とフックガイド13は共にフック窓4cから突出している。
【0032】
また、下柱4aおよび中柱4bの上端部にクランプフック12とフックガイド13が飛び出すクランプ窓18とクランプ窓18から飛び出したクランプフック12を締め付けるクランプ19がそれぞれ取り付けられている。
【0033】
このような構成において、昇降装置3の油圧ジャッキを操作してシザーズ8を上下方向に伸縮させると、内梯子10と昇降用支柱11を介してシザーズ8に直結された上段の作業用ステージ2と中段の作業用ステージ9が昇降する。
【0034】
同時に、支柱4の下柱4a内を中柱4bが、中柱4b内を上柱4cがそれぞれ摺動することにより支柱4が伸縮する。その際、中柱4bと上柱4cに内臓されたクランプフック12とフックガイド13は、それぞれ下柱4aと中柱4bの内壁に押え付けられ、中柱4bと上柱4cに内臓されたまま昇降する。
【0035】
そして、クランプ窓18の位置に到達したクランプフック12とフックガイド13は、それぞれスプリング14によって付与された回転力によって取付けピン12aと13aを軸に回転してクランプ窓18の外に飛び出す。
【0036】
昇降装置3を作動させてシザーズ8を上下方向にさらに伸縮させると、下柱4aと中柱4bのクランプ窓18の外にそれぞれ飛び出したクランプフック12は、再び中柱4bと上柱4c内に収納される。
【0037】
この場合、シザーズ8を上方向に伸ばすと、下柱4aと中柱4bのクランプ窓18の外にそれぞれ飛び出したクランプフック12は、クランプ12とともにクランプ窓18の外に飛び出したフックガイド13がクランプ窓18の上端部18aに当り、さらにスプリング15によって矢印ロ方向に回転してクランブフック12を矢印イ方向と反対方向に回転させることにより、クランプフック12は中柱4bと上柱4c内にそれぞれ収納される。
【0038】
一方、シザーズ8を下方向に縮めると、クランプフック12は、フックガイド13がスプリング15によって矢印ロ方向に回転してクランブフック12を矢印イ方向と反対方向に回転させることにより、クランプフック12は中柱4bと上柱4c内にそれぞれ収納される。
【0039】
また、クランプ窓18の外に飛び出したクランプフック12の先端にクランプ19のクランプリング19aを引っ掛け、かつクランプレバー19bを締め付けると、下柱4aと中柱4b、中柱4bと上柱4cをそれぞれ結合することができる。これにより、作業用ステージ2を設定高さに固定して保持することができる。
【0040】
なお、符号20はシザーズ8を伸縮させて上段の作業用ステージを昇降させるための油圧ジャッキ操作用レバー、21はシザーズ8の上端部に設置された中段ステージに昇り降りするための外梯子である。
【0041】
また、符号22はキャスター、そして符号23はアウトリガーであり、アウトリガー23は図2に図示するように収納自在に取付けられている。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明は作業用ステージの揺れがきわめて少なく、高所作業をきわめて安全に行うことができる。
【符号の説明】
【0043】
1 昇降式移動足場
2 上段の作業用ステージ
3 昇降装置
4 支柱
4a 下柱
4b 中柱
4c 上柱
4d フック窓
5 台車
6 手摺り
7 ハッチ
8 シザーズ
9 中断の作業用ステージ
10 内梯子
11 昇降用支柱
11a 足掛りステップ
12 クランプフック
12a 取付けピン
12b 突片
13 フックガイド
13a 取付けピン
13b 突片
14 スプリング
15 スプリング
16 フックユニット
17 フックベース
18 開口部
19 クランプ
19a クランプリング
19b クランプレバー
20 油圧ジャッキ操作レバー
21 外梯子
22 キャスター
23 アウトリガー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業用ステージと、当該作業用ステージを昇降させる昇降装置と、前記作業用ステージを設定位置に保持する支柱と、これらを搭載した走行台車とから構成されてなることを特徴とする昇降式移動足場。
【請求項2】
請求項1記載の昇降式移動足場において、作業用ステージを設定位置に保持する支柱は、走行台車に直結された下柱と下柱内を摺動する中柱と中柱内を摺動する上柱とから伸縮自在な多段式に構成され、かつ中柱は下柱に、上柱は下柱にそれぞれ任意の位置で固定できるように構成されてなることを特徴とする昇降式移動足場。
【請求項3】
請求項1または2記載の昇降式移動足場において、昇降装置はパンタグラフ構造によるテーブルリフト式の昇降装置であることを特徴とする昇降式移動足場。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2011−137321(P2011−137321A)
【公開日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−297306(P2009−297306)
【出願日】平成21年12月28日(2009.12.28)
【出願人】(594084756)朝日リーラック株式会社 (7)
【Fターム(参考)】