説明

易染性メタ型芳香族ポリアミド繊維およびその製造法

【課題】カチオン染料又は分散染料に対し染色性が良好で、機械的強度および高温下での熱的寸法安定性に優れたメタ型全芳香族ポリアミド繊維を提供する。
【解決手段】メタ型全芳香族ポリアミド100重量部とパラ型全芳香族ポリアミド0.1〜20重量部と層状粘土好物0.05〜20重量部とからなる組成物を湿式紡糸し、延伸、弛緩処理、熱処理等を経て得られる繊維であって、該繊維は切断強度が3.0〜5.0cN/dtexであり、最大収縮温度が300℃〜360℃の範囲にあり、しかもその収縮率が0〜10%であり、易染性かつ熱的寸法安定性に優れている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カチオン染料や分散染料等の染料に対する染色性が良好であり、しかも繊維としての機械的強度および熱的寸法安定性にも優れた易染性メタ型芳香族ポリアミド繊維およびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ポリメタフェニレンテレフタルアミド繊維などのメタ型芳香族ポリアミド繊維は、分子骨格がほとんど芳香族環から構成されているため、優れた耐熱性と寸法安定性を有する。
これらの特性を生かし、メタ型芳香族ポリアミド繊維は、産業用途や耐熱性、防炎性、耐炎性が重視される用途に好適に使用されている。特に、その耐炎性と防炎性を生かした寝具、衣料、インテリア分野への用途が急速に拡がりつつある。これら分野では、審美性や視覚性の観点から着色した繊維が求められるが、それと同時に優れた繊維の機械的強度や熱収縮安定性も求められる。すなわち、良好な染色性を有し、しかも繊維の機械的強度や熱収縮安定性は非着色と同等の性能を備えた繊維およびそれら繊維を不利なく合理的に製造する製造法が求められる。しかしながら、メタ型全芳香族ポリアミド繊維は優れた物性を有する反面、ポリマー分子鎖が剛直なために通常の方法ではその染色が困難であるという問題がある。
【0003】
このような問題を解消するため、特開昭50−59522号公報(特許文献1)には、特定の顔料をメタ型全芳香族ポリアミド繊維に含有させた着色繊維が提案されている。しかし、繊維の製造工程で顔料を含有させることから、製造時のロスが多くなり、そのため小ロット対応の生産が困難となり、要求される各種の色相の繊維を得るのが煩雑で高コストとなるなどの問題がある。
【0004】
また、特開昭55−21406号公報(特許文献2)には、キシリレンジアミンを共重合させたポリアミドを混合して染色性を向上させる方法が提案されている。しかしながら、このように第3成分を共重合させたポリアミドの製造には、重合装置の稼働率が低下するなどの問題がある。
【0005】
染色性を向上させる別の手段として、特開平8−81827号公報(特許文献3)には、アルキルベンゼンスルホン酸オニウム塩を添加してカチオン染料易染性とする方法が提案されている。この方法によればカチオン染料に対しては確かに良好な染色性が得られるものの、このオニウム塩の添加によりコストが高くなるだけでなく、製糸時にオニウム塩が繊維から脱落しないように製糸時や後加工時の条件設定を厳しくしなければならないという問題がある。
このように、重合時又は紡糸時に添加剤等を加えて染色性を改善する方法では、たとえ優れた染色性、機械的強度、熱収縮安定性を兼備した繊維を得ることができたとしても、コストアップや工程増加、工程管理などの煩雑さが増す。
【0006】
他方、添加剤等を加えることなく良好な染色性と熱収縮安定性を備える方法として、特公昭50−13846号公報(特許文献4)には、アミド溶媒溶液を湿式紡糸した凝固糸を、溶媒および可溶化塩を含有する水性浴中で熱延伸し、次いで水性浴中で延伸糸中に残存する溶剤および可溶化塩をすべて抽出洗浄し、さらに実質的に張力をかけていない状態で蒸気処理した後に、実質的に張力を加えない状態下において110〜150℃で乾燥する方法が提案されている。確かに、この方法によれば、良好な染色性および良好な熱的寸法安定性を有するメタ型全芳香族ポリアミド繊維が得られるものの、この繊維は直径0.1μm程度のミクロボイドが多数形成された多孔性繊維となるために切断強度がやや低いという新たな問題が生じる。
【0007】
また、特開2004−277937号公報(特許文献5)には、湿式紡糸した凝固糸を温水浴中で延伸し、水洗した後、飽和水蒸気中で再度延伸する方法が開示されており、さらに特開2005−42262号公報(特許文献6)には、湿式紡糸した凝固糸を温水浴中で延伸し、水洗した後、飽和水蒸気中で弛緩熱処理した後、飽和水蒸気中で再延伸する方法が提案されている。もっとも、これらの方法は良好な染色性と機械的強度の性能が両立でき、低温条件下では低収縮化を達成するものの、高温条件下では収縮率が高いという問題がある。
このように、良好な染色性を有するうえに、優れた機械的強度および熱的寸法安定性を兼ね備えたメタ型全芳香族ポリアミド繊維は未だ開発されていないのが実情である。
【0008】
【特許文献1】特開昭50−59522号公報
【特許文献2】特開昭55−21406号公報
【特許文献3】特開平8−81827号公報
【特許文献4】特公昭50−13846号公報
【特許文献5】特開2004−277937号公報
【特許文献6】特開2005−42262号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上述の従来技術を背景になされたもので、その目的は、特定染料に対する染色性が優れ、しかも繊維としての機械的強度および熱的寸法安定性を兼備した易染性メタ型芳香族ポリアミド繊維およびその製造方法を開発し、これを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らの研究によれば、本発明の第1の目的は、メタ型芳香族ポリアミド100重量部とパラ型芳香族ポリアミド0.1〜20重量部と層状粘土鉱物0.05〜20重量部との組成物から構成されることを特徴とする易染性メタ型芳香族ポリアミド繊維により達成できることが見いだされた。
【0011】
また、本発明の第2の目的は、この易染性メタ型芳香族ポリアミド繊維を製造するに際し、メタ型芳香族ポリアミド100重量部と、パラ型芳香族ポリアミド0.1〜20重量部と、層状粘土鉱物0.05〜20重量部とを含有する組成物からなるメタ型芳香族ポリアミドを、アミド系極性溶媒に溶解して溶液を得、この高分子組成物溶液をアミド系極性溶媒と無機塩と水とからなる凝固浴中に吐出して凝固せしめ、この凝固糸をアミド系極性溶媒と水、または、アミド系極性溶媒と無機塩と水とからなる浴中で水洗し、該水洗糸をアミド系極性溶媒と水からなる湿式延伸浴中で2.0〜10倍に延伸し、さらにアミド系極性溶媒と水からなる浴中で0.4〜0.9倍に弛緩し、ついで水洗した後、これを温度100〜250℃で熱処理した後、さらにメタ型芳香族ポリアミドのガラス転移温度の温度よりも少なくとも70℃高く、しかもパラ型芳香族ポリアミドのガラス転移温度以下の温度において0.5〜1.0倍の長さを保つように弛緩熱処理することを含む製造法により、染色性が優れ、しかも繊維としての機械的強度および熱的寸法安定性を兼備した易染性メタ型芳香族ポリアミド繊維を得ることができる。
【0012】
本発明をさらに補説すると、メタ型全芳香族ポリアミドにパラ型芳香族ポリアミドを加えた組成物を繊維とするものである。
まず、請求項1の発明は、メタ型全芳香族ポリアミド100重量とパラ型芳香族ポリアミド0.1〜20重量部と、層状粘土鉱物0.05〜20重量部との組成物から構成されるメタ型芳香族ポリアミド繊維である。この繊維は染色により好ましい着色が可能となる。
【0013】
次に、請求項2に関わる発明は、請求項1記載の易染性メタ型全芳香族ポリアミド繊維において、切断強度が3.0〜5.0cN/dtex、最大熱収縮温度が300℃〜360℃であり、その最大熱収縮率が0〜10%であることを特徴とする。
【0014】
さらに、請求項3の発明は、請求項1の発明に関する全芳香族ポリアミド組成物繊維の製造方法であって、易染性メタ型芳香族ポリアミドを主成分とする繊維を製造するに際し、(1)メタ型芳香族ポリアミド100重量部とパラ型芳香族ポリアミド0.1〜20重量部と層状粘土鉱物0.05〜20重両部との組成物をメタ型芳香族ポリアミドのアミド系極性溶媒に溶解して溶液を得、(2)アミド系極性溶媒と無機塩と水とからなる凝固浴中に、該溶液を紡糸口金を介して吐出して凝固せしめて、凝固糸となし、(3)「該凝固糸を、アミド系極性溶媒と水、又はアミド系極性溶媒と無機塩と水、とからなる洗浄浴中で洗浄して、水洗糸を得、(4)該水洗糸をアミド系極性溶媒と水とからなる湿式延伸浴中において、2.0〜10倍に延伸し、延伸糸を得、(5)アミド系極性溶媒と水とからなる弛緩浴中で、該延伸糸を0.4〜0.9倍に弛緩し、弛緩処理糸となし、ついで、(6)該弛緩処理糸を水洗し、水洗弛緩処理糸となし、しかる後、(7)該水洗弛緩処理糸を温度100〜250℃で熱処理し、さらに(8)メタ型芳香族ポリアミドのガラス転移温度の温度よりも70℃以上高温であり、しかもパラ型芳香族ポリアミドのガラス転移温度以下である範囲の温度において、0.5〜1.0倍に弛緩熱処理すること、の工程を含む。
【0015】
この請求項3の製造方法の特徴は、従来技術とその構成を比較すると、延伸後に弛緩処理を施し、水洗工程を経て、熱処理を行い、さらに弛緩熱処理を実施する点にあり、この結果、染色性、機械的強度および熱収縮安定性において、それらの品質がバランスよく改善されたメタ型芳香族ポリアミド繊維が得られるという新たな技術が開発されている。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、特定の染料に対する染色性が良好であり、また優れた機械的強度を備え、特定の層状粘土鉱物の存在によって熱寸法安定性をも兼ね備えたメタ型芳香族ポリアミド繊維を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
本発明において使用されるメタ型芳香族ポリアミドは、メタ型芳香族ジアミン成分とメタ型芳香族ジカルボン酸成分とから構成されるもので、その製造方法は特に限定されず、例えば、メタ型芳香族ジアミンとメタ型芳香族ジカルボン酸クロライドとを原料とした溶液重合や界面重合等により製造することができる。
【0018】
上記メタ型芳香族ジアミンとしては、下記の一般式で表わされるメタ型芳香族ジアミン、例えば、メタフェニレンジアミン、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルスルホン等、ならびにこれらの芳香環にハロゲン、炭素数1〜3のアルキル基等の置換基を有する誘導体、例えば2,4−トルイレンジアミン、2,6−トルイレンジアミン、2,4−ジアミノクロロベンゼン、2,6−ジアミノクロロベンゼン等を例示することができる。なかでも、メタフェニレンジアミン又はメタフェニレンジアミンを85モル%以上、好ましくは90モル%以上、特に好ましくは95モル%以上含有する上記の混合ジアミンが適用できる。
【0019】
【化1】

【0020】
また、メタ型芳香族ジカルボン酸ハライドとしては、イソフタル酸クロライド、イソフタル酸ブロマイド等のイソフタル酸ハライド、ならびに、これらの芳香環にハロゲン、炭素数1〜3のアルコキシ基等の置換基を有する誘導体、例えば3−クロロイソフタル酸クロライドを例示することができる。なかでも、イソフタル酸クロライド又はイソフタル酸クロライドを85モル%以上、好ましくは90モル%、特に好ましくは95モル%以上含有する上記の混合カルボン酸ハライドが適用できる。
【0021】
上記ジアミンとカルボン酸ハライド以外で使用し得る共重合成分としては、芳香族ジアミンとしてパラフェニレンジアミン、2,5−ジアミノクロロベンゼン、2,5−ジアミノブロモベンゼン、アミノアニシジン等のベンゼン誘導体、1,5−ナフチレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルケトン、4,4’−ジアミノジフェニルアミン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン等を例示することができる。また、芳香族ジカルボン酸ハライドとしては、テレフタル酸クロライド、1,4−ナフタレンジカルボン酸クロライド、2,6−ナフタレンジカルボン酸クロライド、4,4’−ビフェニルジカルボン酸クロライド、4,4’−ジフェニルエーテルカルボン酸クロライド等を例示することができる。これらの共重合成分の共重合量は、あまりに多くなりすぎるとメタ型芳香族ポリアミドの特性が低下しやすいので、全芳香族ポリアミドの全酸成分を基準として15モル%以下、好ましくは10モル%以下、特に好ましくは5モル%以下とする。
【0022】
特に好ましく使用されるメタ型芳香族ポリアミドは、全繰返し単位の85モル%以上、好ましくは90モル%以上、特に好ましくは95モル%以上、さらに好ましくは100モル%がメタフェニレンイソフタルアミド単位から構成されるメタ型全芳香族ポリアミドである。
【0023】
これらメタ型全芳香族ポリアミドの重合度は、N−メチル−2−ピロリドン(以下、NMPと略記する)を溶媒として、30℃で測定した固有粘度(IV)が0.8〜3.0、特に1.0〜2.0の範囲にあるものが好ましい。
【0024】
本発明において使用されるパラ型芳香族ポリアミドは、パラ型芳香族ジアミン成分とパラ型芳香族ジカルボン酸成分とから構成されるもので、その製造方法は特に限定されず、例えば、パラ型芳香族ジアミンとパラ型芳香族ジカルボン酸クロライドとを原料とした溶液重合や界面重合等により製造することができる。
【0025】
上記パラ型芳香族ジアミンとしては、パラフェニレンジアミン、2−クロルp−フェニレンジアミン、2,5−ジクロルp−フェニレンジアミン、2,6−ジクロルp−フェニレンジアミン等を例示することができる。なかでも、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、パラフェニレンジアミン又はパラフェニレンジアミンを85モル%以上、好ましくは90モル%以上、特に好ましくは95モル%以上含有する上記の混合ジアミンが適する。
【0026】
また、パラ型芳香族ジカルボン酸ハライドとしては、テレフタル酸クロライド、テレフタル酸ブロマイド等のテレフタル酸ハライド、およびこれらの芳香環にハロゲン、炭素数1〜3のアルコキシ基等の置換基を有する誘導体、例えば2−クロルテレフタル酸クロライド、を例示することができる。なかでも、テレフタル酸クロライド又はテレフタル酸クロライドを85モル%以上、好ましくは90モル%、特に好ましくは95モル%以上含有する上記の混合カルボン酸ハライドが用いられる。
【0027】
パラ型芳香族ポリアミドはメタ型芳香族ポリアミド重合体溶液と同じ溶剤で溶解することが好ましく、例としてポリパラフェニレンテレフタラミドやコポリパラフェニレン・3、4’オキシジフェニレン・テレフタラミドが挙げられる。
【0028】
本発明で使用される層状粘土鉱物は、陽イオン交換能を有し、さらに層間に水を取り込んで膨潤する性質を示す層状粘土鉱物であり、好ましくはスメクタイト型粘土や膨潤性雲母が挙げられる。具体的には例えば、スメクタイト型粘土としてヘクトライト、サポナイト、スチブンサイト、バイデライト、モンモリロナイト又はこれらの天然または化学的に合成したもの又はこれらの置換体、誘導体、あるいは混合物が挙げることができる。また、膨潤性雲母としては、化学的に合成した層間にLi、Naイオンを持った合成膨潤性雲母又はこれらの置換体、誘導体あるいは混合物を挙げることができる。
【0029】
本発明では、上記層状粘土鉱物を表面処理剤として、有機オニウムイオンによって処理したものを用いるのが良い。有機オニウムイオンによって処理することにより、全芳香族ポリアミドへの分散性が向上し、成形性および靭性が向上する。
【0030】
使用される有機オニウムイオンは、下記式(1)
【化2】

(R、R、RおよびRは、それぞれ独立に、炭素数1〜30のアルキル基または−(CHCHO)Hであらわされるヒドロキシポリオキシエチレン基である。)
の構造である第4級アンモニウムイオンが好ましい。ここで、炭素数1〜30のアルキル基としては、炭素数1〜18のアルキル基が好ましい。
【0031】
本発明で使用される第4級アンモニウムイオンの具体例としては、ドデシルトリメチルアンモニウムクロライド、テトラデシルトリメチルアンモニウムクロライド、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムクロライド、オクタデシルトリメチルアンモニウムクロライド、オレイルトリメチルアンモニウムクロライド、ジドデシルジメチルアンモニウムクロライド、ジテトラデシルジメチルアンモニウムクロライド、ジヘキサデシルジメチルアンモニウムクロライド、ジオクタデシルジメチルアンモニウムクロライド、ジオレイルジメチルアンモニウムクロライド、ドデシルジエチルベンジルアンモニウムクロライド、テトラデシルジメチルベンジルアンモニウムクロライド、ヘキサデシルジメチルベンジルアンモニウムクロライド、オクタデシルジメチルベンジルアンモニウムクロライド、オレイルジメチルベンジルクロライド、トリオクチルメチルアンモニウムクロライド、ポリオキシプロピレンメチルジエチルアンモニウム、ヒドロキシポリオキシエチレンドデシルジメチルアンモニウムクロライド、ヒドロキシポリオキシエチレンテトラデシルジメチルアンモニウムクロライド、ヒドロキシポリオキシエチレンヘキサデシルジメチルアンモニウムクロライド、ヒドロキシポリオキシエチレンオクタデシルジメチルアンモニウムクロライド、ヒドロキシポリオキシエチレンオレイルジメチルアンモニウムクロライド、ジヒドロキシポリオキシエチレンドデシルメチルアンモニウムクロライド、ジヒドロキシポリオキシエチレンテトラデシルメチルアンモニウムクロライド、ジヒドロキシポリオキシエチレンヘキサデシルメチルアンモニウムクロライド、ジヒドロキシポリオキシエチレンオクタデシルメチルアンモニウムクロライド、およびジヒドロキシポリオキシエチレンオレイルメチルアンモニウムクロライド等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0032】
層状粘土鉱物の有機オニウムイオンでの処理方法としては、通常、層状粘土鉱物1重量部、有機オニウムイオン1〜10重量部とを水中で混合した後、乾燥する方法が例示できる。水の量は、層状粘土鉱物の1〜100倍である。また、混合するときの温度は、30℃〜70℃であり、混合時間は0.5から2時間が好ましい。乾燥条件としては、70℃〜100℃で3日間常圧乾燥するか、または2日間真空乾燥することが好ましい。
【0033】
本発明のメタ型芳香族ポリアミド繊維について説明すると、メタ型芳香族ポリアミド100重量部に対し、パラ型芳香族ポリアミドが0.1〜20重量部の範囲で含まれる。好ましい態様は、パラ型芳香族ポリアミドの量は0.2〜10重量部である。メタ型芳香族ポリアミド100重量部に対するパラ型芳香族ポリアミドの重量部が0.1重量部未満であると易染性の向上が見られず、他方、メタ型芳香族ポリアミド100重量部に対するパラ型芳香族ポリアミドの重量部が20重量部を超えると紡糸工程の安定性が低下するため好ましくない。
【0034】
また、全芳香族ポリアミド100重量部に対し、層状粘土鉱物が0.1〜20重量部の範囲で含まれることが要件となる。層状粘土鉱物の好適な含有量は0.2〜10重量部である。全芳香族ポリアミド100重量部に対する層状粘土鉱物の重量部が0.1重量部未満であると低収縮化の効果が見られず、一方、全芳香族ポリアミド100重量部に対する層状粘土鉱物の重量部が20重量部を超えると紡糸工程の安定性が低下するため好ましくない。
【0035】
本発明のメタ型芳香族ポリアミド繊維は、その切断強度が3.0〜5.0cN/dtex、好ましくは3.5〜5.0cN/dtexの範囲である。切断強度が3.0cN/dtex未満の場合には、寝具、衣料、インテリアなどの分野に用途展開するには機械的強度が不充分で本発明の目的を達成することができない。一方、5.0cN/dtexを超えるような繊維は、後述する易染性の低下や収縮率が高くなるため好ましくない。
【0036】
なお、本発明でいう易染性とは、実施例に記載された染色方法で染色した際、マクベス(株)製のカラー測色装置「マクベスカラーアイ」で測定した染色トウの明度指数L*値が30以下を示すことを云う。
【0037】
次に、本発明のメタ型芳香族ポリアミド繊維は、最大収縮率を呈する温度(最大収縮温度と称することがある)が300℃〜360℃の範囲にあり、その収縮率は0〜10%であり、好ましくは0〜8%である。この乾熱収縮率が10%を超える場合には、消防服などの炎下又は高温雰囲気下に曝される衣料用途では、熱による収縮応力によって衣服に穴があき、身体が高温に曝され危険性が生じるので好ましくない。
【0038】
なお、ここでいう最大熱収縮率度は、以下の方法により測定されるものである。すなわち、総繊度を約200dtexとし、熱機械分析装置を用いて測定試料長10mm、負荷荷重0.5cN、昇温速度100℃/分で25℃から450℃まで昇温し、各温度での繊維試料初期長に対する収縮率を測定する。得られた温度/収縮率のグラフより収縮率が最大となる点を求め、これを最大熱収縮率とする。
【0039】
本発明の易染性メタ型芳香族ポリアミド繊維は、例えば以下の方法により製造することができる。すなわち、前述のメタ型芳香族ポリアミドをアミド系溶媒に溶解して、先ずメタ型芳香族ポリアミド重合体溶液を調製する。ここで使用されるアミド系溶媒としては、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド(DMAc)等を例示することができ、なかでもNMPやDMAcが好ましい。溶液濃度としては、次の凝固工程での凝固速度および重合体の溶解性の観点から適当な濃度を選択すればよく、ポリマーがポリメタフェニレンイソフタルアミドで溶媒がNMPやDMAcの場合には、通常は15〜25重量%の範囲が好ましい。
【0040】
次に、パラ型芳香族ポリアミド重合体溶液を調製する。使用される溶媒としてはメタ型芳香族ポリアミド同様にNMP、DMF、DMAc等を例示することができ、なかでもNMPやDMAcが好ましい。溶液濃度も、次の凝固工程での凝固速度および重合体の溶解性の観点から適当な濃度を選択すればよく、ポリマーがコポリパラフェニレン・3、4’オキシジフェニレン・テレフタラミドで溶媒がNMPの場合には、通常は1〜8重量%の範囲が好ましい。
【0041】
メタ型芳香族ポリアミド、パラ型芳香族ポリアミドおよび溶媒からなる紡糸原液の調製はメタ型芳香族ポリアミド重合体溶液とパラ型芳香族ポリアミド重合体溶液を混合することよって行われる。
【0042】
本発明において、重合体溶液を凝固浴中に吐出する場合、紡糸口金としては多ホールのものを用いることができる。実用上から口金孔(ホール)数の上限は約50000ホールであり、好ましくは300〜30000ホール、特に3000〜20000ホールの紡糸口金が使用される。
【0043】
本発明における凝固浴は、アミド系溶媒と無機塩と水からなる水溶液で構成される。この凝固浴組成において、アミド系溶媒としてはメタ型芳香族ポリアミドやパラ型芳香族ポリアミドを溶解し、水と良好に混和するものであれば好適に用いることができるが、特に、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、等を好適に用いることができる。溶媒の回収等を考慮すれば、紡糸原液中のアミド系溶媒と同じ種類のものを使用するのが好ましい。紡糸口金から紡出するメタ型全芳香族ポリアミド重合体溶液の温度は、50〜90℃の範囲が適当である。
【0044】
無機塩を含む水性凝固浴液も、従来公知の水性凝固浴液を使用することができる。具体的には、塩化カルシウム濃度が34〜42重量%、NMP濃度が3〜10重量%の水溶液が好ましいものとして例示される。かかる水性凝固浴液の温度は80〜95℃の範囲が適当である。なお、凝固浴中への繊維の浸漬時間は、1〜11秒の範囲が適当である。
【0045】
凝固浴中で凝固された繊維は、次に水性洗浄浴中にて水洗されるが、該水洗工程は、得られる繊維の品質面および繊維中のアミド系溶媒含有率を適正な範囲に調整する面から多段で行なうのが好ましい。すなわち、凝固液から引き出された繊維を水性洗浄浴中で水洗する際、該洗浄浴の温度およびアミド系溶媒濃度は、繊維中からのアミド系溶媒の抽出状態および洗浄浴からの水の繊維中への浸入状態に影響を与えるため、それらを最適な状態とするには、多段での温度条件および多段でのアミド系溶媒濃度として制御することが好ましい。例えば、最初の洗浄浴を60℃以上の高温とすると、水の繊維中への浸入がここで一気に起こり、繊維中に巨大なボイドが生成して繊維品質の劣化を招くため、最初の洗浄浴は30℃以下の低温とすることが好ましい。なお、該洗浄浴中への繊維の浸漬時間は、用いる洗浄浴の温度、アミド系溶媒濃度に応じて適宜選択すればよいが、通常1洗浄工程の浸漬時間は10秒〜180秒の範囲が適当である。
【0046】
このように調整された糸条は、アミド系溶媒の水性溶液中で湿式延伸する必要がある。ここで用いられるアミド系溶媒としては、メタ型全芳香族ポリアミドを膨潤させ、水と良好に混和するものであればよいが、特にN−メチル−2−ピロリドン、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド等は好適に用いることができる。またさらに、凝固浴や調整浴に用いたものと同じ溶媒を用いることが好ましい。凝固浴と同種の溶媒を用いれば、回収工程が簡略化され、経済的にも有益である。
【0047】
すなわち、重合体溶液、凝固浴、調整浴および可塑延伸浴中のアミド系溶媒はすべて同種のものを使用するのが好ましく、かような溶媒として、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルアセトアミドを単独で使用するかまたは2種以上を併用することが好都合である。
【0048】
湿式延伸浴のアミド系溶媒と水との最適な混合比は、凝固、水洗条件によっても若干変化するが、湿式延伸浴中のアミド系溶媒の濃度は10〜60重量%、特に20〜50重量%の範囲であることが好ましい。この範囲より低い領域では十分な延伸倍率をとることが困難であり強度が不充分となって本発明の目的を達成することができない。また、これを上回る範囲では繊維の表面が溶解して繊維同士が膠着しやすく良好な延伸を施すことが困難になる場合が多く、また、後述する洗浄工程でアミド系溶媒を除去することも困難になる。
【0049】
一方、湿式延伸浴の温度は凝固、水洗条件によっても若干変化するが、30〜70℃、特に40〜65℃の範囲が好ましい。該温度が30℃未満の場合には十分な延伸倍率をとることが困難で強度が低下し、70℃を超える場合には延伸性は向上するものの、最終的に得られる繊維の強度、弾性率等の力学的特性が充分なものを得ることが困難になる。
【0050】
湿式延伸浴の液も、アミド系溶媒と水とで構成されることが好ましいが、これ以外に塩類が少量含まれていても差し支えない。例えば液中の10重量%以下、特に5重量%以下の低濃度であれば塩類が含まれていても問題はない。したがって、塩類の好適濃度は0〜10重量%の範囲である。
【0051】
湿式延伸の倍率は、通常2.0〜10倍、好ましくは2.5〜9.0倍の範囲が好ましい。このように高倍率に延伸をかけることにより、メタ型芳香族ポリアミド繊維の強度、弾性率が向上し良好な物性を示すようになる。但し、極端に高倍率に延伸した場合には、工程の調子が悪化して良好な製糸が困難になる。
【0052】
上記湿式延伸浴の工程を経た浴上がりの繊維は、アミド系溶媒の水性溶液中で湿式弛緩する必要がある。ここで用いられるアミド系溶媒としては、湿式延伸と同様に水と良好に混和するものであればよいが、特にN−メチル−2−ピロリドン、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド等は好適に用いることができる。
【0053】
湿式弛緩浴のアミド系溶媒と水との最適な混合比は、凝固、水洗、延伸条件によっても若干変化するが、湿式弛緩浴中のアミド系溶媒の濃度は10〜60重量%、特に20〜50重量%の範囲であることが好ましい。この範囲より低い領域では弛緩させることが困難であり収縮率が高くなり本発明の目的を達成することができない。また、これを上回る範囲では繊維の表面が溶解して繊維同士が密着しやすく強度が低下し、また、後述する脱溶媒工程でアミド系溶媒を除去することも困難になる。
【0054】
一方、湿式弛緩浴の温度は凝固、水洗、延伸条件によっても若干変化するが、50〜100℃、特に60〜95℃の範囲が好ましい。浴温度が50℃未満の場合には充分に弛緩させることが困難で収縮率が高くなり、100℃を超える場合には繊維の表面が溶解して繊維同士が膠着しやすく機械的強度が低下する。
【0055】
湿式弛緩の倍率は、通常0.4〜0.9倍、好ましくは0.5〜0.8倍の範囲が好ましい。このように高倍率で弛緩させることにより、メタ型芳香族ポリアミド繊維の低収縮化が可能となり、0.9倍を超えた倍率では弛緩の効果が不十分となり目標の低収縮化が達成できない。一方、0.4倍未満で弛緩した場合には、繊維の配向の低下が大きくなり切断強度が低下してしまう。
上記可塑延伸浴の工程を経た浴上がりの糸条物は、水あるいはアミド系溶媒の水性溶液にて水洗し、繊維中のアミド系溶媒を除去する必要がある。
【0056】
水洗の方法としては、湿式弛緩後に10〜70℃の水浴あるいは10〜40℃のアミド系溶媒/水の混合浴等を通過させた後10〜70℃の水浴に浸漬させることにより容易に行なうことができる。
【0057】
このようにして、繊維中のアミド系溶媒を除去された糸条は、加熱ローラ、加熱板、熱風等によって一旦100〜250℃、好ましくは120〜200℃の温度範囲にて熱処理される。この熱処理温度が120℃未満であると、水やアミド系溶媒の蒸発が著しく遅くなるため、生産性が低下するので好ましくない。一方250℃を超えると、アミド系溶媒の分解が急激に起こって繊維の着色が生じるので好ましくない。
【0058】
続いて施される弛緩熱処理はメタ型芳香族ポリアミドのガラス転移温度の温度+70℃以上、パラ型芳香族ポリアミドのガラス転移温度以下、好ましくはメタ型芳香族ポリアミドのガラス転移温度+80℃以上、パラ型芳香族ポリアミド繊維の結晶化温度−10℃以下の温度で行われることが必要条件となる。ここでメタ型芳香族ポリアミドのガラス転移温度+70℃以上で弛緩熱処理することによりメタ型芳香族ポリアミドを結晶化させるとともに非晶部の配向を緩和させ、パラ型芳香族ポリアミドのガラス転移温度以下の温度で熱処理することによりパラ型芳香族ポリアミドは結晶化させず、染色され易くすることにより、切断強度と易染性を両立させることが可能となる。
【0059】
そのためメタ型芳香族ポリアミドのガラス転移温度+70℃未満ではメタ型芳香族ポリアミドが生産性を低下させることの無い条件では充分に結晶化および非晶部の配向緩和させることが困難となり、課題とする低収縮性と機械的強度との両立が達成できない。またパラ型芳香族ポリアミドのガラス転移温度以上の温度ではメタ型芳香族ポリアミドだけでなくパラ型芳香族ポリアミドも結晶化してしまうため易染性が達成できない。
【0060】
弛緩熱処理の倍率は0.5〜1.0倍、好ましくは0.6〜0.95倍で行われることが必要である。ここで弛緩させることによりメタ型芳香族ポリアミド繊維の低収縮化を達成することが可能となるため、1.0倍を超えた倍率では目標とする低収縮化が得られない。また、0.5倍未満で弛緩した場合には、繊維の配向の低下が大きくなり切断強度が低下してしまう。
さらに、このようにして製造された繊維は、必要に応じて捲縮加工が施され、適当な繊維長に切断され、紡績その他の次工程に提供される。
【0061】
以上のごとき本発明によるメタ型芳香族ポリアミド繊維は、その耐熱性、耐炎性、力学特性を生かした各種の用途に応用することができる。例えば、単独あるいは他の繊維と組み合わせ、織編物にして消防服、防護服等の耐熱耐炎衣料、耐炎性の寝具、インテリア材料として有効に使用することができる。
【実施例】
【0062】
以下、実施例をあげて本発明をさらに具体的に説明する。なお、実施例中における各物性値は下記の方法で測定した。
【0063】
<染色方法>
試料繊維をトウの状態で、Kayacryl Blue GSL−ED(B−54)(日本化薬(株)製カチオン染料)6%owf、酢酸0.3mL/L、硝酸ナトリウム20g/L、キャリア剤としてベンジルアルコール70g/L、分散剤としてディスパーTL(明成化学工業(株)製染色助剤)0.5g/Lの染色液を用い、繊維と染色液の浴比を1:40として120℃下60分間染色処理する。染色後、ハイドロサルファイト2.0g/L、アラミジンD(第一工業製薬(株)製)2.0g/L、水酸化ナトリウム1.0g/Lの割合で含有する処理液を用い、浴比1:20で80℃下20分間還元洗浄し、水洗後乾燥する。
【0064】
<染色トウのL*値>
マクベス(株)製のカラー測色装置「マクベスカラーアイ モデルCE−3100」を用い、10度視野、D65光源、波長360〜740nmの条件で測定して、明度指数L*を求メタ。なお、明度指数L*は、数値が小さいほど濃染化されていることを示す。
【0065】
<固有粘度IV>
ポリマーをNMPに0.5g/100mLの濃度で溶解し、オストワルド粘度計を用い、30℃で測定した。固有粘度は別に濃度を変化させて測定したデータ集から0g濃度の外挿値として推計できる。
【0066】
<繊度>
JIS−L−1015に準じて測定した。
【0067】
<機械的強度・切断伸度>
JIS−L−1015に準じ、試料長20mm、初荷重0.044cN(1/20g)/dtex、伸張速度20mm/分で測定した。
【0068】
<最大熱収縮率>
測定には(株)島津製作所製の熱機械分析装置TMA−50を用いた。繊維サンプルを200dtexに分繊し、これをチャックに挟み測定試料とした。この時の測定試料長は10mmとした。測定条件は25℃〜450℃までの昇温速度100℃/分の等温昇速とし、繊維の繊維試料に0.5cNの負荷荷重を与えた状態で各温度での試料繊維初期長に対する収縮率を測定した。得られた各温度の収縮率結果より、収縮率が最大となる温度での収縮率を求め、これを最大熱収縮率とした。
【0069】
<ガラス転移温度>
乾燥処理後(弛緩熱処理前)の工程糸をSII(株)製の熱機械分析装置TMA/SS6100を用いて、初荷重0.5cN、昇温速度毎分100℃の条件下で動的粘弾性測定を行い tanδのピーク温度をガラス転移温度とした。
【0070】
<繊維中の単糸切れ個数>
得られた繊維中の単糸切れ数(X)は、以下の方法により測定した。すなわち、得られたトウを特定ターン(T)の繊維束に揃え、繊維束の片端を固定し、この固定部から他端の長さが20cmとなるように他端を切断する。これにより口金のホール数(H)とターン数(T)との積の本数(H×T)からなるフィラメント長さ20cmの繊維束となる。この繊維束を水浴中で縦幅いっぱいに縦方向に10往復させ、繊維束を引き上げた後、浴槽に残った単糸をカウントする。この操作を5回繰り返し合計をカウントし、これをMとする。これを次の式により15000mあたりの単糸切れ数(X)と規定する。
【0071】
【数1】

なお、上記単糸切れ数測定は3回の測定の平均値により算出する。
【0072】
[実施例1]
特公昭47−10863号公報記載の方法に準じた界面重合法により製造した固有粘度が1.9のポリメタフェニレンイソフタルアミド粉末19.40重量部を、−10℃に冷却したN−メチル−2−ピロリドン(以下、NMPと略称する)68.08重量部中に懸濁させ、スラリー状にした後、60℃まで昇温して溶解させ、透明なポリマー溶液Aを得た。
【0073】
水分率が100ppm以下のNMP9.49重量部、パラフェニレンジアミン0.07重量部、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル0.07重量部を常温下で反応容器に入れ、窒素中で溶解した後、攪拌しながらテレフタル酸クロリド0.15重量部を添加した。最終的に85℃で60分間反応せしめ、透明で粘稠なポリマー溶液を得た。次いで22.5重量%の水酸化カルシウムを含有するNMPスラリー0.24重量部を添加し、中和反応を行い、コポリパラフェニレン・3、4’オキシジフェニレン・テレフタラミド0.20重量部、塩化カルシウム0.08重量部、NMP9.49重量部のポリマー溶液Bを得た。
【0074】
特公昭47−10863号公報記載の方法に準じた界面重合法により製造した固有粘度1.9のポリメタフェニレンイソフタルアミド粉末0.25重両部をマイナス(氷点下)1〇℃に冷却したN−メチル−2−ピロリドン(NMP)2.30重量部中堅に懸濁させ、スラリー状にした後、60℃まで昇温せしめて溶解させ、透明なポリマー溶液を得た。これに層状粘土鉱物として層状粘土鉱物としてコープケミカル(株)製「ルーセンタイトSPN」(登録商標)0.20重量部を添加し、攪拌してポリマー溶液Cを得た。
【0075】
得られたポリマー溶液Aとポリマー溶液Bとポリマー溶液Cを混合攪拌し、ポリメタフェニレンイソフタルアミド19.65重量部、コポリパラフェニレン・3、4’オキシジフェニレン・テレフタラミド0.20重量部、上記「ルーセンタイトSPN」0.20重量部、NMP79.87重量部、塩化カルシウム0.08重量部のポリマー溶液Dを得た。
【0076】
このポリマー溶液Dを85℃に加温して紡糸原液とし、孔径0.07mm、孔数3000の紡糸口金から85℃の凝固浴中に吐出して紡糸した。この凝固浴の組成は、塩化カルシウムが40重量%、NMPが5重量%、残りの水が55重量%であり、浸漬長(有効凝固浴長)100cmにて糸速9.5m/分で通過させた後、いったん空気中に引き出した。
【0077】
この凝固糸条を温度30℃の30%NMP水溶液の水性洗浄浴にて水洗し、この際の総浸漬時間は35秒とした。次に、この洗浄糸条を温度50℃の30%NMP水溶液の湿式延伸浴中にて4.0倍に延伸し、引続き温度90℃の30%NMP水溶液の湿式弛緩浴中にて0.65倍で弛緩した後、70℃の温水中に48秒浸漬した。次いで、表面温度150℃のローラ上で乾燥処理した後、表面温度320℃の熱板にて0.90倍に弛緩熱処理して、メタ型芳香族ポリアミド100重量部に対してパラ型芳香族ポリアミド1.0重量部、上記「ルーセンタイトSPN」1.0重量部を含んだメタ型芳香族ポリアミド繊維を得た。
【0078】
このとき、150℃で乾燥処理した後のメタ型芳香族ポリアミドのガラス転移温度は223℃、パラ型芳香族ポリアミドのガラス転移温度は384℃であった。
得られた繊維は、繊度2.2dtex、強度4.0cN/dtex、伸度54%であり、最大熱収縮率は334℃で6.8%、単糸切れ個数は22個/15000mであった。
このトウを染色したところ、L*値は28.6であり、良好な染色性を示した。
【0079】
[実施例2〜5、比較例1〜7]
メタ型芳香族ポリアミド100重量部に対するパラ型芳香族ポリアミド量、湿式延伸倍率、湿式弛緩倍率、熱板温度、熱板弛緩倍率を表1のように変更した以外は、実施例1と同様に行なった。
実施例1〜5、比較例1〜7で得られた繊維の物性をまとめて表1に示した。
【0080】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0081】
本発明によれば、染料に対する染色性が良好であり、しかも優れた繊維としての機械的強度、熱収縮安定性をも兼ね備えたメタ型芳香族ポリアミド繊維を製造することができる。このようなメタ型芳香族ポリアミド繊維は、耐熱性、難燃性等のメタ型芳香族ポリアミド繊維が本来もつ性質に加えて、熱安定性や力学特性を生かした各種の用途に応用することができ、特に着色が必要な寝具、衣料、インテリアの分野で有効に使用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
メタ型芳香族ポリアミド100重量部とパラ型芳香族ポリアミド0.1〜20重量部と層状粘土鉱物0.05〜20重量部との組成からなる易染性メタ型芳香族ポリアミド繊維。
【請求項2】
切断強度が3.0〜5.0cN/dtex、最大熱収縮温度が300℃〜360℃であり、その最大熱収縮率が0〜10%であることを特徴とする請求項1記載の易染性メタ型全芳香族ポリアミド繊維。
【請求項3】
易染性メタ型芳香族ポリアミドを主成分とする繊維を製造するに際し、
(1)メタ型芳香族ポリアミド100重量部とパラ型芳香族ポリアミド0.1〜20重量部と層状粘土鉱物0.05〜20重両部との組成物をメタ型芳香族ポリアミドのアミド系極性溶媒に溶解して溶液を得、
(2)アミド系極性溶媒と無機塩と水とからなる凝固浴中に、該溶液を紡糸口金を介して吐出して凝固せしめて、凝固糸となし、
(3)該凝固糸を、アミド系極性溶媒と水、又はアミド系極性溶媒と無機塩と水、とからなる洗浄浴中で洗浄して、水洗糸を得、
(4)該水洗糸をアミド系極性溶媒と水とからなる湿式延伸浴中において、2.0〜10倍に延伸し、延伸糸を得、
(5)アミド系極性溶媒と水とからなる弛緩浴中で、該延伸糸を0.4〜0.9倍に弛緩し、弛緩処理糸となし、ついで、
(6)該弛緩処理糸を水洗し、水洗弛緩処理糸となし、しかる後、
(7)該水洗弛緩処理糸を温度100〜250℃で熱処理し、さらに
(8)メタ型芳香族ポリアミドのガラス転移温度の温度よりも70℃以上高温であり、しかもパラ型芳香族ポリアミドのガラス転移温度以下である範囲の温度において、0.5〜1.0倍に弛緩熱処理すること
を含むメタ型全芳香族ポリアミド繊維の製造法。

【公開番号】特開2007−262589(P2007−262589A)
【公開日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−85070(P2006−85070)
【出願日】平成18年3月27日(2006.3.27)
【出願人】(303013268)帝人テクノプロダクツ株式会社 (504)
【Fターム(参考)】