説明

易開封性包装体

【課題】包装体の所望の引裂部分で引き裂いて、包装体を容易に開封することができ、さらに開封時の引裂方向が所望の方向に安定しており、きれいな開口を得ることができる易開封性包装体を提供する。
【解決手段】包装体1の引裂部分が、少なくとも、一軸または二軸延伸フィルムからなる外層9に、接着剤層10を介してシーラント層11が積層された積層体12からなり、前記積層体12の前記外層9と前記接着剤層10との間には、少なくとも、引裂部分の引裂方向に並行した両側の領域に、顔料を含有するインキ層13を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品、医薬品、洗剤、その他等の充填包装に適する易開封性包装体に関し、より詳しくは、所望の引裂部分において良好な引裂性を有し、容易に包装体を開封することができる易開封性包装体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、食品、医薬品、洗剤、その他等の物品の充填包装に適する包装体としては、例えば、外層として、剛性等を有する強度に優れた樹脂フィルム層を使用し、内層として、ヒートシール性を有する樹脂フィルム層を使用し、少なくとも上記の二層からなる積層体を使用して、その積層体のヒートシール性を有する樹脂のフィルム層面を対向させて重ね合わせ、その周辺端部をヒートシールしてなる包装体が使用されている。
【0003】
上述のような包装体は、引裂強度が高く、外力を加えても破れ難いことから、固体または液体状態の各種食品、洗剤等の包装体として、広く用いられている。しかし、引裂強度が高いために、何ら対処を施さない場合には、使用に際して包装体を開封することも難しくなってしまう。そこで、この開封作業を容易にするために、包装体の周辺端部にノッチを設けたり、外層にミシン目を設けたりしておいて、このノッチやミシン目の部分から引き裂くことで、包装体を開封する手法が一般に用いられている。
【0004】
しかしながら、上述のようなノッチやミシン目では、開封時の引裂き方向が不安定であり、所望の引裂部分で開封することが困難であるという問題や、開封時に強い力を必要とし、過剰な力をかけることにより内容物が散乱してしまう等の問題がある。
【0005】
上述の問題に対し、二軸延伸ナイロンフィルムからなる外層と線状低密度ポリエチレン系のシーラントフィルムからなる内層の間に、非相溶系ポリマーブレンドを主材とする無延伸易引裂き性フィルムからなる中間層を設けた積層体を使用して形成した包装体や(特許文献1)、外層と内層の間に設けられる印刷インキ層において、開封予定位置の印刷パターンを水玉模様や縞模様、または網点にすることで疎密領域を設けて、易開封性とした包装袋が、提案されている(特許文献2、3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−000000号公報
【特許文献2】特開2002−59943号公報
【特許文献3】特開2003−137310号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、非相溶系ポリマーブレンドを主材とする無延伸易引裂き性フィルムのような、特殊な材料からなる中間層を設けることは、包装体のコストアップを引き起こしてしまうという問題が生じ、さらに、耐内容物性や充填性を評価し直す必要も生じてしまうことになる。
【0008】
また、印刷パターンの疎密を用いる方法では、開封性を微調整したい場合には、より高精細な印刷能力を必要とし、高価な印刷装置を用いることとなるため、やはり経済的に問題となる。そして、例え、より高精細な印刷能力有する印刷装置を用いても、網点による濃淡制御の方式では、その高精細化に限界があり、階調表現にも限界が出てくる。また、使用するインキを変えると、開封性との因果関係や、基本物性等を評価し直す必要が生じてしまうことになる。
【0009】
本発明は、これら従来技術の問題点を解消し、包装体の所望の引裂部分で引き裂いて、包装体を容易に開封することができ、さらに開封時の引裂方向が所望の方向に安定しており、きれいな開口を得ることができる易開封性包装体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意研究した結果、少なくとも、一軸または二軸延伸フィルムからなる外層の片面に、顔料を含有するインキ層を設け、接着剤層を介してシーラント層を積層した積層体から形成された包装体であれば、顔料を含有するインキ層の濃度、および厚みを調整することで、前記包装体の開封性を制御可能なことを見出して、本発明を完成した。
【0011】
すなわち、本発明の請求項1に係る発明は、少なくとも、一軸または二軸延伸フィルムからなる外層に、接着剤層を介してシーラント層が積層された積層体からなり、前記積層体の前記外層と前記接着剤層との間には、少なくとも、引裂部分の引裂方向に並行した両側の領域に、顔料を含有するインキ層が設けられていることを特徴とする、易開封性包装体である。
【0012】
また、本発明の請求項2に係る発明は、前記顔料を含有するインキ層の厚みが、部分的に異なることを特徴とする、請求項1に記載の易開封性包装体である。
【0013】
また、本発明の請求項3に係る発明は、前記顔料を含有するインキ層の厚みが、前記引裂部分から離れるにつれて厚くなるように設けられていることを特徴とする、請求項1〜2のいずれかに記載の易開封性包装体である。
【0014】
また、本発明の請求項4に係る発明は、前記顔料を含有するインキ層の濃度が、部分的に異なることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の易開封性包装体である。
【0015】
また、本発明の請求項5に係る発明は、前記顔料を含有するインキ層の濃度が、前記引裂部分から離れるにつれて高くなるように設けられていることを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の易開封性包装体である。
【0016】
また、本発明の請求項6に係る発明は、前記顔料を含有するインキ層の顔料が、酸化チタンからなる白色顔料であることを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載の易開封性包装体である。
【0017】
また、本発明の請求項7に係る発明は、前記一軸またはニ軸延伸フィルムの延伸方向が、前記引裂部分の引裂方向と一致していることを特徴とする、請求項1〜6のいずれかにに記載の易開封性包装体である。
【0018】
また、本発明の請求項8に係る発明は、前記一軸または二軸延伸フィルムが、ナイロンフィルムであることを特徴とする、請求項1〜7のいずれかに記載の易開封性包装体である。
【0019】
また、本発明の請求項9に係る発明は、前記シーラント層が、ポリエチレンフィルムであることを特徴とする、請求項1〜8のいずれかに記載の易開封性包装体である。
【0020】
また、本発明の請求項10に係る発明は、前記包装体の形状が、パウチ形状であることを特徴とする、請求項1〜9のいずれかに記載の易開封性包装体である。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、品質的に安定した材料のみを用いて、所望の引裂部分で容易に引き裂いて、開封することができ、さらに開封時の引裂方向が所望の方向に安定し、きれいな開口が得られる、易開封性包装体を、経済的に有利に、提供することができる。
また、所定の箇所に設けるインキ層の厚みや濃度を調整することにより、階調的に開封性を制御できる易開封性包装体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明に係る易開封性包装体の一例を示す正面図である。
【図2】本発明に係る易開封性包装体の一例を示す斜視図である。
【図3】本発明に係る易開封性包装体の他の例を示す正面図である。
【図4】本発明に係る易開封性包装体の一例の引裂部分を示す拡大図である。
【図5】図5におけるA−A断面の一構成例を示す模式的断面図である。
【図6】図5におけるA−A断面の他の構成例を示す模式的断面図である。
【図7】図5におけるA−A断面の他の構成例を示す模式的断面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、図面を参照しながら本発明について、説明する。
[易開封性包装体]
本発明に係る易開封性包装体の一例を図1および図2に示す。図1、2に示すように、易開封性包装体1は、周縁にシール部分2を有した略袋状の外観をしており、包装体を開封するために、手で引き裂かれて開口部を形成することになる引裂部分3の両端に、略U字型や略V字型の形状の引裂開始部4を有している。また、易開封性包装体1がスタンディングパウチ(自立性包装体)として機能する場合には、公知の方法を用いて底部5に加工を施し、易開封性包装体1が自立できるようにした形状であっても良い。さらに、引裂部分3の表面側には、レーザー加工や刃物による機械加工等の方法により、ミシン目が設けられていても良い。
【0024】
なお、本発明に係る易開封性包装体は、少なくとも、シール部分と引裂部分とを有する包装体であれば良く、その形態は、特に限定はされず、例えば、図3に示すように、引裂部分6が包装体の胴体部8よりも小さい形態であっても良い。
【0025】
[引裂部分]
本発明に係る易開封性包装体の引裂部分の周辺を拡大した例を図4に、その断面構成の例を図5〜7に示す。
本発明に係る易開封性包装体は、図5に示すように、少なくとも、一軸または二軸延伸フィルムからなる外層9に、接着剤層10を介してシーラント層11が積層された積層体12からなり、外層9と接着剤層10との間には、少なくとも、引裂部分3の引裂方向に並行した両側の領域に、顔料を含有するインキ層13が設けられていることを特徴とするものであり、積層体12を、シーラント層11が向かい合うように重ねて周縁をシールすることにより、包装体としての形状が与えられているものである。
【0026】
本発明者は、延伸フィルムからなる外層、顔料を含有するインキ層、接着剤層、シーラント層が順次積層された積層体は、顔料からなるインキ層が設けられていない積層体に比べ、引裂強度が強くなることを見出した。さらに、その引裂強度は、顔料からなるインキ層の厚み、および/または濃度で制御できることを見出した。そして、この積層体の性質を、包装体の引裂部分に応用することにより、包装体を易開封性とすることができることを見出し、本発明を完成した。
【0027】
すなわち、本発明に係る易開封性包装体は、包装体の所望の引裂部分以外の箇所に、顔料を含有するインキ層を配設し、所望の引裂部分には、顔料を含有するインキ層を配設しないか、若しくは、インキ層の厚みを薄くする、あるいは、インキ層の濃度を低くすることで、引裂部分とそれ以外の部分との引裂強度に差を設けて、所望の引裂部分のみが、容易に引き裂かれるようにしたものである。
【0028】
包装体の引裂部分は、一般に、一定の幅を有した直線状の形状をしている。それゆえ、例えば、図5に示すように、引裂部分3に相当する一定の幅を除くようにして、引裂部分3の引裂方向に並行した両側の領域に、顔料を含有するインキ層13を設ければ、インキ層が存在する領域では引裂強度が大きくなり、所望の引裂部分では引裂強度が小さくなるため、包装体は所望の引裂部分に沿って、容易に引裂かれるようになる。
また、インキ層13を設けたことによって形成された、より強い引裂の力を必要とする領域が、引裂部分3の全長に渡って、その両脇に、あたかも堤防のように存在するため、引き裂き過程の途中で、引裂方向が、所望の引裂部分3の線上方向から異なる方向へ向かうことは無く、引き裂きの方向性も安定することになる。
【0029】
また、前記顔料を含有するインキ層の厚み、および/または濃度を、部分的に異なるように配設することにより、包装体の開封性を、より細かく制御することもできる。例えば、図6に示す構成においては、顔料を含有するインキ層14の厚みが、引裂部分3の線上で最も薄くなり、引裂部分3から離れるにつれて階調的に厚くなるように調整されている。
また、例えば、図7に示す構成においては、顔料を含有するインキ層15のインキ濃度が、引裂部分3の線上で最も低くなり、引裂部分3から離れるにつれて高くなるように調整されている。
【0030】
このような構成とすることにより、所望の引裂部分3の線上において、最も引裂強度が小さくなり、引裂部分3から離れるにつれて階調的に引裂強度が大きくなるため、引裂開始部から包装体を引き裂く場合、包装体は所望の引裂部分に沿って、より容易に引裂かれるようになる。
また、インキ層の厚みや濃度を階調的に変えることによって形成された、階調的に引裂強度が強くなっていく領域が、引裂部分3の全長に渡って、その両脇に存在するため、引き裂き過程の途中で、引裂きの方向が、所望の引裂部分の線上方向から異なる方向へ向かうことは無く、引き裂きの方向性も安定することになる。
【0031】
なお、顔料を含有するインキ層は、必要な箇所にのみ設けられれば良い。例えば、包装体に引裂開始部として略U字型や略V字型のノッチを設けるのであれば、顔料を含有するインキ層は、引裂部分の引裂方向に並行した両側に、数mm幅程度、若しくは、厚みや濃度で制御する場合は、引裂部分を含めて数mm幅程度設けさえすれば、引裂の方向性は安定し、易開封の効果を発揮できる。それゆえ、包装体の他の箇所には、自由に、印刷絵柄等を設けることができる。
【0032】
[積層体]
次に、本発明に係る易開封性包装体を構成する積層体の各材料、製造方法について説明する。
(層構成)
本発明に係る易開封性包装体は、図5〜7に示すように、少なくとも、一軸または二軸延伸フィルムからなる外層9に、接着剤層10を介してシーラント層11が積層された積層体12からなり、外層9と接着剤層10との間には、所定の箇所に顔料を含有するインキ層13、14、15が設けられている。また、必要に応じて、所望の箇所に、外層9の内側に絵柄印刷層を設けても良い。さらに、シーラント層11の上(外層側)に、アルミ等の金属や、無機酸化物からなるバリア層を設けても良い。なお、絵柄印刷層を設ける場合は、顔料を含有するインキ層が設けられている箇所とは異なる箇所に設けることが望ましいが、易開封性を損なわない限り、特に制限はされない。
【0033】
(外層)
外層を構成するフィルムとしては、機械的、物理的、化学的に優れた性質を有する各種樹脂フィルムを使用することができ、例えば、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリアラミド系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアセタール系樹脂、フッ素系樹脂、その他等の強靱な樹脂のフィルムを使用することが可能である。
【0034】
ここで、上記の樹脂のフィルムには、未延伸フィルム、あるいは一軸方向または二軸方向に延伸した延伸フィルム等のいずれも使用することが可能であるが、外層としての剛性、耐突き刺し性、耐磨耗性、耐薬品性、印刷適性等の諸物性や、引裂方向等に影響する配向性を考慮するならば、延伸フィルム、中でも、二軸延伸ポリアミドフィルムを使用することが、最も好ましい。
上記の二軸延伸ポリアミドフィルムは、その配向がフィルムの流れ方向に近く、重ね合わせたときも引き裂きずれが非常に小さくなるという利点を有する。
【0035】
二軸延伸ポリアミドフィルムとしては、具体的には、ナイロン−6、ナイロン−66 、ナイロン−11、ナイロン−12、ナイロン−6、10等のナイロンフィルムを使用することができる。
【0036】
フィルムの厚さとしては、強度、剛性等について必要最低限に保持され得る厚さであればよく、9μm〜50μm位、好ましくは、12μm〜30μm位が望ましい。50μmより厚いと、引裂性が必ずしも容易とはならず、9μmより薄いと、強度、剛性等が保持されないからである。
【0037】
(シーラント層)
シーラント層としては、例えば、熱によって溶融し、相互に融着し得るヒートシール性有するものを使用することができ、例えば、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、直鎖状(線状)低密度ポリエチレン等のポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン− 酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸エチル共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体、エチレン−プロピレン共重合体、メチルペンテンポリマー 、酸変性ポリオレフィン系樹脂、その他等の樹脂の一種ないしそれ以上からなる樹脂のフィルムを使用することができる。
【0038】
本発明においては、上記のような樹脂フィルムの中でも、ポリエチレンを使用することが好ましい。ポリエチレンフィルムは、粘着性を有することから破断の伝搬が少なく耐衝撃性を向上させるという利点があるものであり、また、内層は常時内容物に接触していることから、耐環境ストレスクラッキング性の劣化を防止するためにも有効なものである。
【0039】
フィルムの厚さとしては、10μm以上あればヒートシール性を発揮できるが、好ましくは、20μm〜200μm位が、内容物保護の点から望ましい。
また、上記のような厚さのフィルムを使用することによって、フィルムの剛性、強度等を増し、外層としての強度に優れた樹脂フィルム層が有する物性等と相まって、包装体を構成したときにスタンディングパウチとしての姿勢維持性が良好となり、消費者の詰め替え作業等が容易となり、更に流通過程で店頭での取り扱い等が便利になるという利点を有することになる。
【0040】
(インキ層)
次に、本発明に係るインキ層について説明する。
通常、インキの材料としては、樹脂と溶媒からインキビヒクルの1種ないし2種以上を調製し、これに、必要ならば、可塑剤、安定剤、酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、硬化剤、架橋剤、滑剤、帯電防止剤、充填剤、その他等の助剤の1種ないし2種以上を任意に添加し、更に、染料・顔料等の着色剤を添加し、溶媒、希釈剤等で充分に混練してインキ組成物を調整して得られたインキ組成物が使用される。
【0041】
インキビヒクルとしては、公知のもの、例えば、あまに油、きり油、大豆油、炭化水素油、ロジン、ロジンエステル、ロジン変性樹脂、シェラック、アルキッド樹脂、フェノール系樹脂、マレイン酸樹脂、天然樹脂、炭化水素樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ酢酸系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、アクリルまたはメタクリル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、アミノアルキッド系樹脂、ニトロセルロース、エチルセルロース、塩化ゴム、環化ゴム、その他などの1種または2種以上を併用することができる。インクビヒクルは、版から被印刷物に着色剤を運び、被膜として固着させる働きをする。
溶剤としては、トルエン、MEK、酢酸エチル、IPAなどが一般的である。
【0042】
着色剤には、溶剤に溶ける染料と、溶剤には溶けない顔料とがある。顔料は無機顔料と有機顔料に分けられ、無機顔料としては酸化チタン(白色)、カーボンブラック(黒色)、アルミ粉末(金銀色)などがあり、有機顔料としてはアゾ系のものがある。
【0043】
本発明に係るインキ層の材料は、顔料、特に、酸化チタンからなる白色顔料を含有することを特徴とする。このインキ層に含まれる顔料の量の違い、具体的には、インキ濃度やインキ層の厚みの違いによって、本発明に係る積層体の引裂性が変化する。
【0044】
この理由は、インキ層に含まれる顔料が、接着剤層に含まれる硬化剤を吸収することにより、外層とシーラント層の接着強度が低下するためと考えられる。
すなわち、前記接着強度が弱くなると、外層とシーラント層との一体性も損なわれて行き、外層が樹脂の配向に沿って引裂かれても、シーラント層は引裂かれずに伸びてしまい、きれいな開口を得られず、全体として積層体の引裂性は悪化し、逆に、外層とシーラント層の接着強度が強い場合には、外層とシーラント層との一体性が増し、引裂き過程におけるシーラント層の伸びが抑えられ、外層の樹脂配向に沿って、積層体全体が引裂き易くなるものと考えられる。
【0045】
なお、本発明に係るインキ層の形成は、通常の印刷方法を用いることにより形成することができる。用いられる印刷方法に限定はなく、例えば、グラビア印刷、凸版印刷、スクリーン印刷、転写印刷、フレキソ印刷、その他等の印刷方式であってもよいが、中でも、グラビア印刷が、インキの盛り量による階調性制御に適している点で、好ましい。
グラビア印刷を用いて、インキの盛り量、すなわちインキ層の厚みを階調的に制御することで、例えば、オフセット印刷の網点方式よりも微細な濃淡を表現できる。
インキ層の厚みは、例えば、1度刷り印刷で、0.3〜1.8μm程度の範囲とすることができ、多数刷りとすることで、さらに厚くすることができる。
【0046】
(接着剤層)
接着剤層の材料としては、外層とシーラント層をドライラミネートによって接着させることができるものであれば良く、特に限定されるものではない。
例えば、アクリル系、エポキシ系、酢酸ビニル系、塩化ビニル系、イソシアネート系、シリコーン系、スチレン−ブタジエン系、塩化ビニル−酢酸ビニル系、エチレン−酢酸ビニル系、ポリエステル系、塩化ゴム系、塩素化ポリプロピレン系、ウレタン系などの樹脂を単独で使用、またはこれらの混合物を主成分とするエマルジョン系樹脂や有機溶剤型樹脂、水溶性樹脂などが挙げられる。
本発明においては、ウレタン系樹脂を主成分とする樹脂を用いた。
【0047】
接着剤層の形成方法としては、上記の樹脂を水や有機溶剤で希釈させた塗布用液体を、グラビア印刷、オフセット印刷、若しくはスクリーン印刷などの印刷方法、又は、ロールコート、バーコート、コンマコート、スプレーコート、若しくは押出しコートなどのコート法で塗布し、その後、乾燥又は冷却して形成する方法を用いることができる。
接着剤層の厚みは、例えば、乾燥状態で0.1〜10g/m2である。
【0048】
(積層体の製造方法)
本発明に係る積層体の製造方法は、特に限定されないが、例えば、以下の方法により、製造することが出来る。
外層となる樹脂フィルムの片面に、顔料を含有するインキ層を、グラビア印刷により、所定の箇所に印刷して形成し、その印刷面側の全体に、インキ層を覆うように接着剤を塗工し、乾燥後、シーラント層を重ねてドライラミネートする。
グラビア印刷の際に、通常、インキの色を変えるところを、濃度の異なるインキにすることで、多色印刷と同様に、濃度の異なるインキ層を所望の位置に配設できる。
また、グラビア版面のパターンの深さを部分的に変える手法や、複数回同じ箇所に印刷する手法(多層印刷、多数刷り)により、インキ層の厚みを部分的に異なるようにすることができる。
【0049】
[易開封性包装体の製造方法]
本発明に係る易開封性包装体の製造方法は、特に限定されないが、例えば、上記の積層体を折り曲げるか、あるいは重ね合わせて、シーラント層の面を対向させて、その周縁部を、ヒートシールすることにより、スタンディングパウチ形状を含め、種々の形態の包装体を製造することができる。ヒートシールの方法としては、例えば、バーシール、回転ロールシール、ベルトシール、インパルスシール、高周波シール、超音波シール等の公知の方法で行うことができる。
また、包装体の周辺端部の所望の位置には、公知の方法により、引裂開始部となる略V字型、略U字型、略I字型のノッチを形成することができる。さらに、包装体の引裂部分の外層には、レーザー加工や刃物による機械加工等の方法により、ミシン目が設けられていても良い。
【実施例】
【0050】
次に実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、これらの実施例は何ら本発明を制限するものではない。
【0051】
[引裂性評価]
まず、以下に記す各種積層体を製造し、インキ層の濃度及び膜厚(重ね刷り回数)と、積層体の引裂性との関係について評価を行った。
(積層体1)
厚さ15μmの二軸延伸ナイロンフィルム(ユニチカ製ON−RT)の片面に、白色顔料を含有するインキ(東洋インキ製NEWLPスーパーR631)を使用して、グラビア印刷機(機械速度:170m/min)で印刷し、70℃で乾燥させた後、巻き取った。
なお、積層体1におけるインキの濃度は、メジウムで希釈して30重量%(インキ:メジウムの重量比が3:7)とした。また、印刷は1度刷り(インキ層の厚み1.0μm)とした。
【0052】
次に、上記の二軸延伸ナイロンフィルムの印刷面側に接着剤(ロックペイント製RU77T/H7)を3.5g/m2で塗工し、80℃で乾燥させた後、厚さ130μmのポリエチレンフィルム(DNPテクノフィルム製SP−404)とラミネートして巻き取った。ドライラミネート機の速度は120m/min、ラミネート時のニップロールの温度は60℃であった。
その後、巻き取った積層体を40〜45℃のオーブンで72時間保持し、積層体1を得た。
【0053】
(積層体2)
インキの濃度を70重量%(インキ:メジウムの重量比が7:3)とした以外は、積層体1の製造方法と同様にして、積層体2を製造した。
【0054】
(積層体3)
インキの濃度を100重量%(メジウムによる希釈無し)とした以外は、積層体1の製造方法と同様にして、積層体3を製造した。
【0055】
(積層体4)
インキの濃度を100重量%(メジウムによる希釈無し)とし、印刷を3度刷り(インキ層の厚み3.0μm)とした以外は、積層体1の製造方法と同様にして、積層体4を製造した。
【0056】
(積層体の引裂性評価)
上記のように製造した積層体1〜4を、幅15mmのサンプルに加工し、二軸延伸ナイロンフィルムの延伸方向に合わせて略V字型ノッチを設けてその両側を治具で固定し、引張り試験機を用いて、引裂速度500m/minの条件で、上下に引き裂く際の強度を測定した。測定結果を表1に示す。
【0057】
【表1】

【0058】
表1に示すように、白色顔料を含有するインキの濃度、または厚みを変えることにより、積層体の引裂強度は変化する。そして、インキの濃度が低いほど、また、インキの厚みが薄いほど、引裂強度は小さくなる、すなわち、小さい力で引き裂くことが出来るという結果となった。
これは、延伸フィルムからなる外層、顔料を含有するインキ層、接着剤層、シーラント層が順次積層された積層体は、顔料からなるインキ層が設けられていない積層体に比べ、引裂強度が強くなることを示すものであり、さらに、その引裂強度は、顔料からなるインキ層の厚み、および/または濃度で制御できることを示すものである。
そして、この積層体の性質を、包装体の引裂部分に応用することにより、包装体を易開封性とすることができることを示すものである。
【0059】
[包装体の製造]
次に、上記で得られた積層体の性質を、包装体の引裂部分に応用して、以下に記す包装体を製造した。
(実施例1)
厚さ15μmの二軸延伸ナイロンフィルム(ユニチカ製ON−RT)の片面に、白色顔料を含有するインキ(東洋インキ製NEWLPスーパーR631)を使用して、グラビア印刷機(機械速度:170m/min)により、前記二軸延伸ナイロンフィルムの延伸方向に合わせて設けられる所定の引裂部分(1mm幅)に相当する箇所の引裂方向に並行した両側の領域に、シール部分を除いて、幅2mm、厚さ1.0μmの印刷インキ層を形成し、70℃で乾燥させた後、巻き取った。
なお、インキの濃度は100重量%(メジウムによる希釈無し)とした。
【0060】
次に、上記の二軸延伸ナイロンフィルムの印刷面に接着剤(ロックペイント製RU77T/H7)を3.5g/m2で塗工し、80℃で乾燥させた後、厚さ130μmのポリエチレンフィルム(DNPテクノフィルム製SP−404)とラミネートして巻き取った。ドライラミネート機の速度は120m/min、ラミネート時のニップロールの温度は60℃であった。
その後、巻き取った積層体を40〜45℃のオーブンで72時間、保持した。
【0061】
次に、上記の積層体のポリエチレンフィルム層を重ね合わせ、周縁のシール部分をヒートシールし、所定の引裂開始部に略U字型のノッチを形成して、本発明に係る包装体を製造した。
【0062】
上記のように製造した本発明に係る包装体においては、引裂開始部から所望の引裂部分に沿って、手で容易に引き裂くことができ、引き裂き過程の途中で、引裂方向が所望の方向から異なる方向へ向かうことは無く、きれいな開口が得られるものであった。
【0063】
(実施例2)
厚さ15μmの二軸延伸ナイロンフィルム(ユニチカ製ON−RT)の片面に、白色顔料を含有するインキ(東洋インキ製NEWLPスーパーR631)を使用して、グラビア印刷機(機械速度:170m/min)により、前記二軸延伸ナイロンフィルムの延伸方向に合わせて設けられる所定の引裂部分(0.2mm幅)に相当する箇所のインキ厚さが0.5μmと最小になり、前記引裂部分から離れるにつれて次第に厚みが増すようにして、引裂部分の中央から0.5mm離れた箇所のインキ厚さが2μmとなるようにし、以降、その厚さで、さらに2mm離れるまでの領域にインキ層を形成し、70℃で乾燥させた後、巻き取った。
なお、インキの濃度は100重量%(メジウムによる希釈無し)とした。
【0064】
次に、上記の2軸延伸ナイロンフィルムの印刷面に接着剤(ロックペイント、RU77T/H7)を3.5g/m2で塗工し、80℃で乾燥させた後、厚さ130μmのポリエチレンフィルム(DNPテクノフィルム、SP−404)とラミネートして巻き取った。ドライラミネート機の速度は120m/min、ラミネート時のニップロールの温度は60℃であった。
その後、巻き取った積層体を40〜45℃のオーブンで72時間、保持した。
【0065】
次に、上記の積層体のポリエチレンフィルム層を重ね合わせ、周縁のシール部分をヒートシールし、所定の引裂開始部に略U字型のノッチを形成して、本発明に係る包装体を製造した。
【0066】
上記のように製造した本発明に係る包装体においては、引裂開始部から所望の引裂部分に沿って、手で容易に引き裂くことができ、引き裂き過程の途中で、引裂方向が所望の方向から異なる方向へ向かうことは無く、きれいな開口が得られるものであった。
【0067】
(実施例3)
厚さ15μmの二軸延伸ナイロンフィルム(ユニチカ製ON−RT)の片面に、白色顔料を含有するインキ(東洋インキ製NEWLPスーパーR631)を使用して、グラビア印刷機(機械速度:170m/min)により、濃度の異なるインキ層を下記の位置に配設した。なお、グラビア印刷において、通常、インキの色を変えるところを、濃度の異なるインキにすることで、多色印刷と同様に、濃度の異なるインキ層を所望の位置に配設できる。
濃度の異なるインキ層の配設箇所については、まず、前記二軸延伸ナイロンフィルムの延伸方向に合わせて設けられる所定の引裂部分(0.5mm幅)に相当する箇所ではインキ濃度が10重量%と最小になるようにインキ層を配設し、前記引裂部分から離れるにつれて次第に濃度が増すように、0.5mm幅毎にインキ濃度が30重量%、60重量%となるインキ層を配設して、引裂部分の中央から1.25mm離れた箇所のインキ濃度が100重量%となるようにし、以降、その濃度で、さらに2mm離れるまでの領域にインキ層を形成し、70℃で乾燥させた後、巻き取った。なお、インキ層の厚さは1.0μmとした。
【0068】
次に、上記の2軸延伸ナイロンフィルムの印刷面に接着剤(ロックペイント、RU77T/H7)を3.5g/m2で塗工し、80℃で乾燥させた後、厚さ130μmのポリエチレンフィルム(DNPテクノフィルム、SP−404)とラミネートして巻き取った。ドライラミネート機の速度は120m/min、ラミネート時のニップロールの温度は60℃であった。
その後、巻き取った積層体を40〜45℃のオーブンで72時間、保持した。
【0069】
次に、上記の積層体のポリエチレンフィルム層を重ね合わせ、周縁のシール部分をヒートシールし、所定の引裂開始部に略U字型のノッチを形成して、本発明に係る包装体を製造した。
【0070】
上記のように製造した本発明に係る包装体においては、引裂開始部から所望の引裂部分に沿って、手で容易に引き裂くことができ、引き裂き過程の途中で、引裂方向が所望の方向から異なる方向へ向かうことは無く、きれいな開口が得られるものであった。
【符号の説明】
【0071】
1・・・易開封性包装体
2・・・シール部分
3、6・・・引裂部分
4、7・・・引裂開始部
5・・・底部
8・・・胴体部
9・・・外層
10・・・接着剤層
11・・・シーラント層
12・・・積層体
13、14、15・・・インキ層



【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、一軸または二軸延伸フィルムからなる外層に、
接着剤層を介してシーラント層が積層された積層体からなり、
前記積層体の前記外層と前記接着剤層との間には、
少なくとも、引裂部分の引裂方向に並行した両側の領域に、
顔料を含有するインキ層が設けられていることを特徴とする易開封性包装体。
【請求項2】
前記顔料を含有するインキ層の厚みが、部分的に異なることを特徴とする請求項1に記載の易開封性包装体。
【請求項3】
前記顔料を含有するインキ層の厚みが、前記引裂部分から離れるにつれて厚くなるように設けられていることを特徴とする請求項1〜2のいずれかに記載の易開封性包装体。
【請求項4】
前記顔料を含有するインキ層の濃度が、部分的に異なることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の易開封性包装体。
【請求項5】
前記顔料を含有するインキ層の濃度が、前記引裂部分から離れるにつれて高くなるように設けられていることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の易開封性包装体。
【請求項6】
前記顔料を含有するインキ層の顔料が、酸化チタンからなる白色顔料であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の易開封性包装体。
【請求項7】
前記一軸またはニ軸延伸フィルムの延伸方向が、前記引裂部分の引裂方向と一致していることを特徴とする請求項1〜6のいずれかにに記載の易開封性包装体。
【請求項8】
前記一軸または二軸延伸フィルムが、ナイロンフィルムであることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の易開封性包装体。
【請求項9】
前記シーラント層が、ポリエチレンフィルムであることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の易開封性包装体。
【請求項10】
前記包装体の形状が、パウチ形状であることを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の易開封性包装体。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−274990(P2010−274990A)
【公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−131447(P2009−131447)
【出願日】平成21年5月29日(2009.5.29)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】