説明

映像伝送システムの中継装置

【課題】複数種類の映像受信装置に映像データを伝送する場合の伝送効率を向上する。
【解決手段】中継装置4の制御部41は受信した映像データのIフレームとPフレームの少なくとも何れか一方を間引いて映像伸長処理部42に伸長させた映像データを記憶部43に記憶させる。そして、受信能力や処理能力の高い映像受信装置(例えば、インターホン副親機2B)に対しては、インターホン親機1から受信した映像データをそのまま中継し、受信能力や処理能力の低い映像受信装置(例えば、無線インターホン副親機2C)に対しては、当該映像受信装置からの要求に応じて記憶部43から読み出した映像データを圧縮して送信する。故に、それぞれの映像受信装置(インターホン副親機2B,2C)の受信能力や処理能力などに応じた適切なデータ量の映像データを送信することができ、映像データのデータ量を固定した場合と比較して伝送効率を向上することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、動画像の映像データを伝送路を介して送信する1乃至複数の映像送信装置と、前記伝送路を介して伝送される映像データを受信する複数の映像受信装置とを有する映像伝送システムに用いられ、前記伝送路の途中に設けられて映像送信装置から送信された映像データを1乃至複数の映像受信装置に中継する中継装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の映像伝送システムとして、ドアホン子器、インターホン親機、インターホン副親機などで構成されたインターホンシステムが提供されている(例えば、特許文献1参照)。このようなインターホンシステムでは、映像送信装置たるインターホン親機が、宅外に設置されているドアホン子器から受け取った映像信号を自身の表示デバイス(液晶ディスプレイなど)に表示すると同時に伝送路を介して接続され、且つ宅内に設置されている映像受信装置たるインターホン副親機等に映像信号を送信する機能を有している。
【特許文献1】特開2004−295408号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、上述のような映像伝送システムに複数種類の映像受信装置が存在する場合、各種類毎に映像データを受信する受信速度(受信能力)や受信した映像データを処理する処理速度(処理能力)などが異なっていることがある。従って、全ての種類の映像受信装置において確実に映像を受信して表示するため、従来では、受信能力や処理能力が最も低い映像受信装置に合わせた低フレームレートの映像しか伝送することができず、前記能力が相対的に高い映像受信装置においても低画質の映像しか再生できないことになって伝送効率が著しく低下するという問題があった。
【0004】
本発明は上記事情に鑑みて為されたものであり、その目的は、複数種類の映像受信装置に映像データを伝送する場合の伝送効率を向上することができる映像伝送システムの中継装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1の発明は、上記目的を達成するために、動画像の映像データを伝送路を介して送信する1乃至複数の映像送信装置と、前記伝送路を介して伝送される映像データを受信する複数の映像受信装置とを有する映像伝送システムに用いられ、前記伝送路の途中に設けられて映像送信装置から送信された映像データを1乃至複数の映像受信装置に中継する中継装置であって、映像送信装置から伝送路を介して送信される映像データを受信する受信手段と、受信した映像データを伸長する映像伸長手段と、映像伸長手段で伸長された映像データを記憶する記憶手段と、記憶手段に記憶した映像データを圧縮する映像圧縮手段と、映像データを映像受信装置に接続された1乃至複数の伝送路に送出する送信手段と、送信手段から各伝送路への映像データの送出手順を制御する制御手段とを備え、制御手段は、受信手段で受信した映像データをそのまま送信手段に送信させるとともに、受信した映像データを構成する、単独で伸長可能な基準映像フレーム並びに基準映像フレームからの差分を補償する補償映像フレームの少なくとも何れか一方を間引いて映像伸長手段に伸長させ、さらに、映像受信装置からの要求に応じて、記憶手段に記憶している映像データを映像圧縮手段に圧縮させた後に送信手段から当該要求元の映像受信装置へ送信させることを特徴とする。
【0006】
請求項1の発明によれば、受信能力や処理能力の高い映像受信装置に対しては、映像送信装置から受信した映像データをそのまま中継し、受信能力や処理能力の低い映像受信装置に対しては、当該映像受信装置からの要求に応じて記憶手段から読み出した映像データを圧縮して送信することにより、それぞれの映像受信装置の受信能力や処理能力に応じたデータ量の映像データを映像送信装置から各映像受信装置へ送信することができ、その結果、複数種類の映像受信装置に映像データを伝送する場合の伝送効率を向上することができる。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、複数種類の映像受信装置に映像データを伝送する場合の伝送効率を向上することができるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明の技術思想を戸建て住戸用のインターホンシステムに用いられる中継装置に適用した実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。但し、本発明の技術思想が適用可能な映像伝送システム並びに中継装置はインターホンシステム及びその中継装置に限定されるものではない。
【0009】
まず、本実施形態におけるインターホンシステム(映像伝送システム)について説明する。このインターホンシステムは、図2に示すように住戸Hの外玄関に設置されたドアホン子器100と、住戸Hの屋内に設置されたインターホン親機(映像送信装置)1と、伝送路(LANケーブル)Lsを介してインターホン親機1と接続されたルータ3と、宅内に設置されるとともに伝送路Lsを介してルータ3と接続されたインターホン副親機2Aと、宅内に設置されるとともに伝送路Lsを介してルータ3と接続された中継装置4と、宅内に設置されるとともに伝送路Lsを介して中継装置4に接続されたインターホン副親機2B並びに無線アダプタ5と、宅内に設置されて無線アダプタ5と通信する無線インターホン副親機2Cと、伝送路Lsを介してルータ3と接続されルータ3を含む宅内ネットワークを広域ネットワーク(インターネット)に接続するためのインターネット接続装置6とで構成される。但し、本発明は映像データの伝送に係るものであるから、本実施形態では音声伝送に関する構成についての図示並びに説明を省略する。
【0010】
ルータ3は、イーサネット(登録商標)と呼ばれるLAN規格(IEEE 802.3)に準拠した従来周知のものであって、通信速度が最大10Mbpsの10BASE-Tと通信速度が最大100Mbpsの100BASE-TXの両方式に対応している。ルータ3には複数のポート(図示せず)が設けられており、それぞれのポートにLANケーブル(伝送路Ls)が接続されている。インターネット接続装置6は、DSLモデム若しくはケーブルモデム、ONU(Optical Network Unit)からなり、ルータ3を介してインターホン親機1やインターホン副親機2A,2B,2Cをインターネットに接続する機能を有している。但し、この種のルータ3やインターネット接続装置6については従来周知であるから詳細な説明を省略する。
【0011】
ドアホン子器100は、通話用のマイクロホン及びスピーカ、来訪者を撮像するCCDカメラのような撮像装置、来訪者に操作される呼出釦、呼出釦が操作された時に信号線Ldを介して呼出信号を送出する呼出信号送出回路などを具備した従来周知のものであって、撮像装置で撮像した映像(アナログの映像信号)を信号線Ldを介してインターホン親機1に送信するとともに、インターホン親機1との間で信号線Ldを介してアナログの音声信号を双方向で送受信する。
【0012】
映像送信装置たるインターホン親機1は、図示は省略するが、ドアホン子器100から信号線Ldを介して伝送されるアナログの映像信号を取り込み、取り込んだアナログの映像信号をディジタルの映像信号に変換し且つ圧縮して伝送路Lsに送出するとともに、通話用のマイクロホン及びスピーカ、映像を表示するための表示デバイス(例えば、液晶ディスプレイ)、呼出音に応答する際に操作される応答釦、応答釦が操作された時にドアホン子器100との間に形成される通話路を介して音声信号を授受する通話回路なども備えている。
【0013】
映像受信装置たるインターホン副親機2A,2Bは、映像信号のディジタル変換及び圧縮処理のための構成を除く基本的な構成がインターホン親機1と共通であって、インターホン親機1との間でディジタルの音声データ並びに映像データをパケットにより送受信することでドアホン子器100と通話するとともにドアホン子器100の撮像装置で撮像された映像(動画像)を表示デバイスに表示することができる。
【0014】
同じく映像受信装置たる無線インターホン副親機2Cは、映像信号のディジタル変換及び圧縮処理のための構成を除く基本的な構成がインターホン親機1と共通であって、無線アダプタ5との間でディジタルの音声データ並びに映像データを無線信号により送受信することでドアホン子器100と通話するとともにドアホン子器100の撮像装置で撮像された映像(動画像)を表示デバイスに表示することができる。尚、無線アダプタ5は無線LANの規格(IEEE 802.11a/b/g等)に対応した従来周知のものであるから詳細な説明は省略する。
【0015】
中継装置4は、図1に示すように複数のポートを有し各ポートを介してパケットを送受信するネットワークインタフェース部40と、マイコンを主構成要素とする制御部41と、パケットにより受信した映像データを伸長する映像伸長処理部42と、映像伸長処理部42で伸長された映像データを記憶する記憶部43と、記憶部43に記憶されている映像データに対して後述する圧縮処理を行う映像圧縮処理部44とを備えている。図2に示したシステム構成例では、ネットワークインタフェース部40の複数のポートにはLANケーブルからなる伝送路Lsを介して各々ルータ3、映像受信装置たるインターホン副親機2B並びに無線アダプタ5が接続されている。ここで、宅内ネットワーク(インターホンシステム)を構成する全ての機器、すなわち、インターホン親機1、インターホン副親機2A,2B,2C、ルータ3、中継装置4、無線アダプタ5には固有のアドレス(プライベートIPアドレス)が割り当てられ、各機器同士は当該アドレスによって互いを識別してパケットを送受信することができる。
【0016】
而して、来訪者がドアホン子器100の呼出釦を操作すると信号線Ldを介してドアホン子器100からインターホン親機1へ呼出信号が送信されるとともに、ドアホン子器100では撮像装置が起動して来訪者を撮像した映像信号が信号線Ldを介してインターホン親機1へ送信される。インターホン親機1では、呼出信号を受信するとスピーカから呼出音を鳴動させるとともにドアホン子器100から受け取ったアナログの映像信号によって表示デバイスに来訪者の映像を表示させる。そして、住戸Hの住人がインターホン親機1の応答釦を操作すれば、ドアホン子器100との間に通話路を形成するとともに通話回路を起動することにより、インターホン親機1とドアホン子器100との間で通話が可能となる。また、インターホン親機1では、呼出信号を受け取ると呼出音鳴動のコマンドを含むパケットを全ての映像受信装置(インターホン副親機2A,2B,2C)に向けて送信(マルチキャスト)するとともに、ドアホン子器100から受け取ったアナログの映像信号をディジタル変換し且つ圧縮して生成した映像データを含むパケットを各インターホン副親機2A,2B,2Cに個別に送信(ユニキャスト)する。インターホン副親機2A,2B,2Cでは、呼出信号のパケットを受信するとスピーカから呼出音を鳴動させ、さらに映像データのパケットを受信すると当該映像データを伸長して表示デバイスに来訪者の映像を表示させる。そして、住戸Hの住人が何れかのインターホン副親機2A,2B,2Cの応答釦を操作すれば、当該インターホン副親機2A,2B,2Cとインターホン親機1との間で音声データを含むパケットが送受信され、インターホン親機1を介して何れかのインターホン副親機2A,2B,2Cとドアホン子器100との間で通話が可能となる。
【0017】
ところで、映像受信装置たるインターホン副親機2A,2B,2Cのうち、インターホン副親機2Aのみが100BASE-TXに対応し、インターホン副親機2Bは10BASE-Tにしか対応していないため、これら2つのインターホン副親機2A,2Bではパケットを受信する際の受信速度(受信能力)が互いに異なっている。また、無線インターホン副親機2Cについても、無線アダプタ5との間の通信速度がIEEE 802.11b規格における最大速度(約11Mbps)以下に制限されるために他の2つのインターホン副親機2A,2Bと比べてパケットを受信する受信速度(受信能力)が互いに異なっている。さらに、受信した映像データを伸張処理する処理速度(処理能力)についても映像伸長処理部22を実現するハードウェア構成の違いによって互いに異なることがある。
【0018】
このように映像受信装置たる各インターホン副親機2A,2B,2Cにおける映像データの受信能力や処理能力が互いに異なっている場合、映像データのデータ量を固定してしまうと受信能力や処理能力が最も低い映像受信装置がボトルネックとなって伝送効率が低下してしまうことになる。具体的には、受信能力や処理能力の高い映像受信装置に合わせて映像データのデータ量を多くすると受信能力や処理能力の低い映像受信装置では映像を再生することができず、反対に、受信能力や処理能力低い映像受信装置に合わせて映像データのデータ量を少なくすると受信能力や処理能力の高い映像受信装置では本来再生可能な画質よりも低い画質で映像を再生しなければならず、その結果、映像データの伝送効率が低下してしまうことになる。
【0019】
そのために本実施形態では、以下で説明するように、中継装置4が受信能力や処理能力の低い映像受信装置へ中継する映像データのデータ量を減少させることによって伝送効率の向上を図っている。
【0020】
中継装置4では、映像送信装置たるインターホン親機1から送信された映像データのパケットをネットワークインタフェース部40で受信すると、受信したパケットをそのままネットワークインタフェース部40から映像受信装置たるインターホン副親機2Bや無線インターホン副親機2Cへ中継すると同時に当該映像データを映像伸長処理部42に伸長させ、さらに、映像伸長処理部42で伸長された映像データを記憶部43に記憶させる。ここで、映像送信装置(インターホン親機1)から送信される映像データは、MPEG規格(例えば、MPEG−4)に準拠した圧縮方式で圧縮されており、通常I(Intra coded)フレームと呼ばれる単独で伸長可能なフレームと、通常P(Predictive coded)フレームと呼ばれ、Iフレームとペアでのみ伸長可能なフレームとで構成されている。そして、制御部41は受信した映像データからIフレームとPフレームの少なくとも何れか一方を間引いた映像データに対して映像伸長処理部42に伸張処理を行わせることにより、元の映像データからデータ量を減少させた映像データを記憶部43に記憶させる。
【0021】
而して、受信能力や処理能力が相対的に高い映像受信装置(例えば、インターホン副親機2B)では中継装置4からそのまま中継された映像データを受信し且つ伸長して正常に表示することができる。一方、受信能力や処理能力が相対的に低い映像受信装置(例えば、無線インターホン副親機2C)において、中継装置4からそのまま中継された映像データを受信し且つ伸長して正常に表示することができなければ、映像データの再送要求を含むパケットを中継装置4に送信する。そして、当該再送要求のパケットを受信した場合、中継装置4の制御部41は、記憶部43に記憶している映像データを読み出して映像圧縮処理部44に圧縮させた後、圧縮後の映像データを含むパケットを要求元の映像受信装置(無線インターホン副親機2C)に宛ててネットワークインタフェース部40より送信させれば、当該映像データのデータ量が中継装置4において減少させてあるため、受信能力や処理能力が相対的に低い映像受信装置(無線インターホン副親機2C)においても当該映像データを受信し且つ伸長して正常に表示することができる。
【0022】
このように本実施形態では、データ量を減少させた映像データが映像受信装置からの要求に応じて中継装置4で中継されるので、それぞれの映像受信装置(インターホン副親機2B,2C)の受信能力や処理能力などに応じた適切なデータ量の映像データを送信することができ、映像データのデータ量を固定した場合と比較して伝送効率を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明に係る中継装置の実施形態を示すブロック図である。
【図2】同上を用いた映像伝送システムであるインターホンシステムのシステム構成図である。
【符号の説明】
【0024】
4 中継装置
40 ネットワークインタフェース部
41 制御部
42 映像伸長処理部
43 記憶部
44 映像圧縮処理部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
動画像の映像データを伝送路を介して送信する1乃至複数の映像送信装置と、前記伝送路を介して伝送される映像データを受信する複数の映像受信装置とを有する映像伝送システムに用いられ、前記伝送路の途中に設けられて映像送信装置から送信された映像データを1乃至複数の映像受信装置に中継する中継装置であって、
映像送信装置から伝送路を介して送信される映像データを受信する受信手段と、受信した映像データを伸長する映像伸長手段と、映像伸長手段で伸長された映像データを記憶する記憶手段と、記憶手段に記憶した映像データを圧縮する映像圧縮手段と、映像データを映像受信装置に接続された1乃至複数の伝送路に送出する送信手段と、送信手段から各伝送路への映像データの送出手順を制御する制御手段とを備え、
制御手段は、受信手段で受信した映像データをそのまま送信手段に送信させるとともに、受信した映像データを構成する、単独で伸長可能な基準映像フレーム並びに基準映像フレームからの差分を補償する補償映像フレームの少なくとも何れか一方を間引いて映像伸長手段に伸長させ、さらに、映像受信装置からの要求に応じて、記憶手段に記憶している映像データを映像圧縮手段に圧縮させた後に送信手段から当該要求元の映像受信装置へ送信させることを特徴とする映像伝送システムの中継装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−55365(P2009−55365A)
【公開日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−220289(P2007−220289)
【出願日】平成19年8月27日(2007.8.27)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】