説明

映像伝送処理装置

【課題】煩雑なシステム構成や認証システムなどを必要とせず、装置の入れ替え作業を迅速かつ容易に行うことのできる映像伝送処理装置を提供する。
【解決手段】映像伝送処理装置10は、監視カメラ20を接続するカメラコネクタP1,Pm、およびLAN接続用の通信コネクタC1を有した筐体10Aと、筐体10A内の所定部位に設けられた親基板11と、筐体10A内の親基板11が設けられた部位と別の部位に設けられ、親基板11に回路接続する内部コネクタ13を有して、筐体10Aから取り外し可能に設けられた子基板12と、親基板10Aに実装され、カメラコネクタP1,Pmに入力された映像信号を所定の伝送フォーマットに従い信号処理して通信コネクタC1に出力する映像処理部と、子基板12に実装され、映像処理部が通信コネクタC1を介して回線接続先に送付するMACアドレスを記憶した固定記憶部121とを具備して構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば複数チャネルのカメラ映像を扱う映像監視システムに適用して好適な映像伝送処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
複数チャネルのカメラ映像を扱う映像監視システムにおいては、監視用の撮像カメラで撮影した画像の映像信号を通信回線を介してホスト側の機器に伝送する映像伝送処理装置が適用される。具体例を挙げると、IPエンコーダと称される映像伝送処理装置は、複数のカメラで撮影した画像の映像信号を入力しパケット処理してLAN等の通信回線を介し、映像伝送処理装置等の端末装置を遠隔監視する監視サーバへ映像・制御信号を伝送する。
【0003】
この種の映像監視システムにおいては、継続的なシステム運用を確保しなければならないことから、システムを構成する機器の故障や保守点検に対して迅速な交換作業や保守点検作業が要求される。
【0004】
システムを構成する映像伝送処理装置においては、ホスト側の機器となる監視サーバとの間で通信を確立するための通信プロトコルを必要とし、MAC(media access control)アドレスを用いて監視サーバとの間の通信が確立される。このMACアドレスは周知の通り、映像伝送処理装置に固有の機器(ハードウェア)アドレスであり、固定値で設定される。なお、ネットワーク上のデータ転送には予め定義されたIP(internet protocol)アドレスが用いられる。
【0005】
従って、システムを構成する映像伝送処理装置の交換等による入れ替え作業においては、MACアドレスの変更が伴い、このMACアドレスの変更作業に多くの時間と労力が費やされ、その間、システム運用を中断(停止)しなければならないという問題があった。
【0006】
このMACアドレスを対象とした機器制御技術として、従来ではMACアドレスを有する着脱型デバイスを用いたライセンス認証システム(特許文献1参照)や、LAN接続インターフェイスユニット(特許文献2参照)などが存在した。しかしながら、これらの技術は、本来のシステム構成要素の他に、MACアドレスの承継を対象とした特殊なシステム構成や、認証システムなどが必要とされ、装置全体の構成が煩雑になるとともに、経済性の面でも問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006−215714号公報
【特許文献2】特開2003−087252号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述したように、従来では、映像伝送処理装置の交換等による入れ替え作業においてMACアドレスの変更作業に多くの時間と労力が費やされ、その間、システム運用を中断しなければならないという問題があった。
【0009】
本発明は上記実情に鑑みなされたもので、煩雑なシステム構成や認証システムなどを必要とせず、装置の入れ替え作業を迅速かつ容易に行うことのできる映像伝送処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、カメラを接続するカメラコネクタおよび伝送線路を接続する通信コネクタを有した筐体と、前記筐体内の所定部位に設けられた親基板と、前記筐体内の前記親基板が設けられた部位と別の部位に設けられ、前記親基板に回路接続する内部コネクタを有して、前記筐体から取り外し可能に設けられた子基板と、前記親基板に実装され、前記カメラコネクタに入力された映像信号を所定の伝送フォーマットに従い信号処理して前記通信コネクタに出力する映像処理部と、前記子基板に実装され、前記映像処理部が前記通信コネクタを介して回線接続先に送付するMACアドレスを記憶した固定記憶部とを具備した映像伝送処理装置を特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、煩雑なシステム構成や認証システムなどを必要とせず、装置の入れ替え作業を迅速かつ容易に行うことのできる映像伝送処理装置が提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施形態に係る映像伝送処理装置の概要を説明するための図。
【図2】上記実施形態に係る映像伝送処理装置の構成を示すブロック図。
【図3】上記実施形態に係る映像伝送処理装置の子基板取付構造を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下図面を参照して本発明の実施形態を説明する。
【0014】
本発明の実施形態に係る映像伝送処理装置を図1乃至図3に示している。図1は上記映像伝送処理装置の概要を説明するための図、図2は同装置の構成を示すブロック図、図3は同装置の子基板取付構造を示す斜視図である。
【0015】
図1に示す映像伝送処理装置10−1および10−2はそれぞれ一部構成要素(子基板12)の実装有無を除いて同一構成であり、映像伝送処理装置10−1は(故障若しくはシステム変更若しくは機能変更若しくは保守点検などにより)映像監視システムから切り離される映像伝送処理装置、映像伝送処理装置10−2は映像伝送処理装置10−1に代わって映像監視システムに組み入れられる(予備機から現用機になる)映像伝送処理装置である。ここでは映像伝送処理装置10−1を装置A、映像伝送処理装置10−2を装置Bと呼称する。予備機として予め用意された装置Bには子基板12が実装されておらず、装置Aから取り外した子基板(子基板A)12を装置Bに組み込むことにより、映像監視システム内において装置Aに代わって装置Bが動作可能となる。子基板(子基板A)12には、映像伝送処理装置10に固有のMACアドレス(ハードウェアアドレス)を予め記憶した固定記憶部121が実装され、この固定記憶部121に記憶されたMACアドレスを用いて映像伝送処理装置10(子基板Aを組み込んだ装置B)と映像監視システム内のデータ伝送先(通信相手先)の機器との間の回線接続が可能となる。
【0016】
映像伝送処理装置10は、図2および図3に示すように、カメラ(監視カメラ)20を接続するカメラコネクタP1,Pm、および伝送線路となるLANを接続する通信コネクタC1を有した筐体10Aと、筐体10A内の所定部位に設けられた親基板11と、筐体10A内の親基板11が設けられた部位と別の部位に設けられ、親基板11に回路接続する内部コネクタ13を有して、筐体10Aから取り外し可能に設けられた子基板12と、親基板10Aに実装され、カメラコネクタP1,Pmに入力された映像信号を所定の伝送フォーマットに従い信号処理して通信コネクタC1に出力する映像処理部と、子基板12に実装され、映像処理部が通信コネクタC1を介して回線接続先に送付するMACアドレスを記憶した固定記憶部121とを具備して構成される。子基板12は板面積を親基板11の1/10程度の小面積にして取り扱いを容易にした小型基板であり、筐体10A内の取り付け、取り外しが容易な部位に設けられている。ここでは、筐体10A内の一側面部に取付螺子16で螺子止めされている。
【0017】
この子基板12にはEEPROMを用いた固定記憶部121が実装され、内部コネクタケーブル14が内部コネクタ13にコネクタ接続されることにより、子基板12に実装されたEEPROMが親基板11に回路接続される。なお、内部コネクタケーブル14はEEPROMの接続配線を延長するフレキシブルケーブルにより構成されている。固定記憶部121には、上記したMACアドレスの他に、映像信号を符号化して伝送する時の転送レートなどを規定した機器設定情報が予め格納されている。
【0018】
親基板11は筐体10Aに設けられた基板取付用の支柱15に支持されて筐体10A内の予め定められた基板取付部位に螺子止め固定されている。この親基板11には、映像処理部を構成するデジタルシグナルプロセッサ(DSP)111、A/Dコンバータ112、内部記憶部(MM)113、通信インターフェイス部(PHY)114等の回路素子が実装されている。
【0019】
DSP111は、映像伝送処理装置10における装置全体の制御を司るもので、子基板12に実装された固定記憶部121からMACアドレスおよび機器設定情報を読み出し、読み出したMACアドレスおよび機器設定情報を予め付与されたIPアドレスとともに内部記憶部113に記憶し、A/Dコンバータ112でデジタル化された映像信号を機器設定情報の仕様に従いパケット処理して、MACアドレスおよびIPアドレスとともに通信インターフェイス部114に送出する処理機能を有する。
【0020】
A/Dコンバータ112はカメラコネクタP1,Pmに入力された監視カメラ20各々の映像信号をノイズ低減しアナログ/デジタル変換してDSP111に送出する処理機能を有する。内部記憶部(MM)113はDSP111が実行するプログラムや、データ伝送に供されるMACアドレス(MAC−A)、IPアドレス(IP−A)等の格納領域を有し、DSP111により読出/書込制御される。
【0021】
通信インターフェイス部(PHY)114は、DSP111の制御の下に、MACアドレスおよびIPアドレスを用いてパケット化された映像信号をLANを介して監視サーバに伝送する通信処理機能を有する。この通信処理において通信インターフェイス部114は、MACアドレスを含む機器設定情報やIPアドレスを用いたパケットデータ(パケット化された映像信号)が通信コネクタC1および通信線30を介してLANに接続された監視サーバ40に送信し、監視サーバ40から上記LAN経由でカメラおよびカメラ映像を遠隔操作するための各種の制御信号を受信する。
【0022】
ここで、上記した映像伝送処理装置10の交換作業について、その作業手順を上記図1乃至図3を参照して説明する。ここでは、図1に示す映像伝送処理装置10−1を故障若しくはその他の理由で映像監視システムから切り離し、この映像伝送処理装置10−1に代わって映像伝送処理装置10−2を映像監視システムに組み入れる装置の交換作業について説明する。予備機となる映像伝送処理装置10−2には子基板12が実装されていない。なお、ここでは筐体10Aを覆うカバーについて、その取り外し、取り付け作業を省略する。
【0023】
この装置交換は、まず映像伝送処理装置10−1の動作を停止して、映像伝送処理装置10−1の筐体10A内の一側面部に取り付けられている子基板12を筐体10から取り外す。この子基板12の取り外し作業は、子基板12を螺子止めしている取付螺子16の螺合を解除し、内部コネクタ13と内部コネクタケーブル(フレキシブルケーブル)14のコネクタ接続を解除することにより、固定記憶部121を実装した子基板12を筐体10から取り外すことができる。この際、子基板12は単にEEPROMを実装した小形で軽量の基板であり、取り扱いが容易で、かつ筐体10A内の取り付け、取り外しが容易な部位に螺子止めされていることから、子基板12を筐体10から容易かつ迅速に取り外すことができる。
【0024】
続いて、映像伝送処理装置10−1の筐体10から取り外した子基板12を映像伝送処理装置10−2に実装し、当該映像伝送処理装置10−2を現用機として起動する。この際の映像伝送処理装置10−2への子基板12の実装は、映像伝送処理装置10−1から子基板12を取り外した作業を遡る作業工程であり、子基板12が実装されていない映像伝送処理装置10−2への子基板12の取り付け作業を容易かつ迅速に行うことができる。
【0025】
このような子基板12の取り外し、取り付け作業により、映像伝送処理装置10の交換作業を迅速に実施でき、これによって映像監視システムの非稼働時間を大幅に短縮でき、信頼性の高い映像監視が可能となる。
【0026】
なお、上記した実施形態では、子基板12に設けた内部コネクタ13と、親基板11から延出して設けられた内部コネクタケーブル14とのコネクタ接続およびその接続解除により、子基板12の取り付け、取り外し作業を行ったが、親基板11側のコネクタ接続およびその接続解除により、子基板12の取り付け、取り外し作業を行うことも可能である。また、上記した実施形態では、子基板12を筐体10A内の一側面部に螺子止め固定した取付構造であったが、これに限らず、例えば筐体10Aの背面若しくは前面部に子基板12を収容する鍵付きポケットを設け、ポケット内に収容した子基板12を延長ケーブルを介して親基板11にコネクタ接続する構造、若しくは筐体10A内の取り付け、取り外しが容易な部位に螺子止め以外の基板固定具を用いて子基板12を取り付ける構造等、他の構成による子基板取付構造であってもよい。また、親基板11に実装された映像処理部の構成、筐体10A内における親基板11の取付部位等も上記実施形態に限定されるものではなく、要は本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変形、変更可能である。
【符号の説明】
【0027】
10…映像伝送処理装置、10A…筐体、11…親基板、12…子基板、13…内部コネクタ、14…内部コネクタケーブル、15…支柱、16…取付螺子、20…監視カメラ、111…デジタルシグナルプロセッサ(DSP)、112…A/Dコンバータ、113…内部記憶部(MM)、114…通信インターフェイス部(PHY)、C1…通信コネクタ、P1,Pm…カメラコネクタ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カメラを接続するカメラコネクタおよび伝送線路を接続する通信コネクタを有した筐体と、
前記筐体内の所定部位に設けられた親基板と、
前記筐体内の前記親基板が設けられた部位と別の部位に設けられ、前記親基板に回路接続する内部コネクタを有して、前記筐体から取り外し可能に設けられた子基板と、
前記親基板に実装され、前記カメラコネクタに入力された映像信号を所定の伝送フォーマットに従い信号処理して前記通信コネクタに出力する映像処理部と、
前記子基板に実装され、前記映像処理部が前記通信コネクタを介して回線接続先に送付するMACアドレスを記憶した固定記憶部と
を具備したことを特徴とする映像伝送処理装置。
【請求項2】
前記子基板は、前記筐体内の背面若しくは一側面に螺子止め固定され、前記内部コネクタと前記内部コネクタに接続されたフラットケーブルを介して前記親基板に回路接続されていることを特徴とする請求項1に記載の映像伝送処理装置。
【請求項3】
前記固定記憶部は、前記MACアドレスにより特定される装置に固有の機器設定情報を格納していることを特徴とする請求項1に記載の映像伝送処理装置。
【請求項4】
前記映像処理部は、前記カメラコネクタに入力された映像信号をデジタル信号化するADコンバータと、前記ADコンバータで処理された映像信号をパケット化するデジタルシグナルプロセッサと、前記MACアドレスを用いて映像伝送先の回線を確立し前記映像伝送先に前記パケット化された映像信号を伝送する通信機能部と
を具備したことを特徴とする請求項1に記載の映像伝送処理装置。
【請求項5】
現用機と予備機が用意され、前記子基板は、前記現用機に設けられ、前記予備機に設けられていない請求項1に記載の映像伝送処理装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2011−228953(P2011−228953A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−97243(P2010−97243)
【出願日】平成22年4月20日(2010.4.20)
【出願人】(000220620)東芝テリー株式会社 (116)
【Fターム(参考)】