説明

映像信号への信号重畳装置および信号重畳方法

【課題】特別な装置を使用することなく、映像信号に他の多数の信号を重畳させることができ、既存の設備をそのまま使用でき、かつ送信されたデータの信頼性が高い映像信号への信号重畳装置および信号重畳方法を提供する。
【解決手段】画像撮影手段10によって撮影された映像の情報を含む映像信号に、映像信号以外の信号からなる非映像信号を重畳させて送信する信号重畳装置20であって、画像撮影手段10と、画像撮影手段10が発信する映像信号を外部に送信する送信部11との間に設けられ、映像信号と非映像信号の両方が入力され、入力された映像信号と非映像信号のうちいずれか一方の信号を送信部11に発信する切換部21を備えており、切換部21は、映像信号のうち輝度情報に該当する部分を非映像信号に置換するものである。輝度情報の部分を非映像信号によって置換するから、データを特別に圧縮等しなくても、大量の非映像信号を送信することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、映像信号への信号重畳装置および信号重畳方法に関する。さらに詳しくは、発電プラントや化学・石油プラント等において、画像と同時に測定された、温度や圧力等の測定データを、画像情報と同時に送信するための映像信号への信号重畳装置および信号重畳方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、映像信号に他の信号、例えば音声信号や種々の情報等の非映像信号を重畳させて送信することが行われているが、画像情報が少なくなることを防ぐために、非映像信号を、映像信号のうち画面に映らない信号が含まれている期間、すなわち垂直帰線期間に重畳させることが行われている(従来例1〜3、特許文献1〜3)。このようにすれば、画像情報と他の信号を同時に送信することができ、しかも、画像情報が欠けたり少なくなったりすることを防ぐことができるというメリットがあった。
【0003】
しかし、垂直帰線期間は非常に短いため、この期間に重畳させることができる測定データの種類は容量の小さいデータに限定されてしまう。このため、発電プラント等において、画像と同時に測定された温度や圧力等の測定データを送信する場合、時間連続的なデータや、複数箇所において複数回測定されたデータのように、容量の大きい測定データを送信することは不可能であった。
【0004】
上記問題を解決する方法として、垂直帰線期間を短縮し、その結果生成された期間に圧縮したデータを重畳させる技術が開示されている(従来例4:特許文献4)。この従来例4の技術によれば、圧縮率を高くすれば大容量の測定データであっても映像信号に重畳させることができるので、画像データとともに送信する測定データの種類等が制限されない。
【0005】
しかるに、従来例4の技術では、映像信号を送信する側には、測定データを映像信号に重畳させる装置に加えて、測定データ等を圧縮させるための装置が必要であり、また、映像信号を受信する側にも、映像信号における画像情報から圧縮された測定データを分離する装置に加えて、圧縮されているデータを復元するための装置が必要であるから、全体のシステムが複雑化する。しかも、映像信号を画面上または時間軸上で圧縮する方式(例えばM-JPEG,MPEG等)を用いた場合、時間軸上あるいは画面上で近傍にある信号を一まとめにして圧縮するため、細かい信号(高周波成分の多い信号)の場合、圧縮された信号を完全に復元することができないので、圧縮・伸長時に重畳した測定データが映像信号または測定データ同士によって消されてしまう可能性が高く、復元された映像や測定データの信頼性が低くなる。
また、データを圧縮する装置には、コンピュータ等の精密な機器が必要であるが、発電プラント等に採用した場合には、送信側、つまり、画像の撮影や種々の状態の測定を行っている場所の環境が劣悪な場合が多く、精密なデータ圧縮装置等をかかる環境で使用した場合、故障が発生する可能性が高い。すると、安定した運転のためにはデータ圧縮装置等を頻繁にメンテナンスする必要があるため、装置維持のための作業工数が増加し、メンテナンスのための費用がかかる。測定を行っている場所では作業性や作業環境が悪い場合が多く、場所によってはプラント等の操業を停止しなければメンテナンスをできない場合もある。すると、メンテナンス作業を行うことによりプラント等の操業効率の低下が発生するおそれがある。
さらに、重畳された測定データは、通常、受信されたときに画像情報から分離され、画像情報とは別に保存されるため、画像情報と測定データの両方を利用して現象を解析するには、画像情報と測定データ等の時間を一致させる必要がある。しかし、画像情報と測定データの時間を同期させるのが困難であるし、また、画像情報と測定データが別々に保存されているため、画像情報と測定データの管理に手間がかかる。
【0006】
【特許文献1】特開昭60−46682号
【特許文献2】特開昭60−87591号
【特許文献3】特開2002−34005号
【特許文献4】特開2002−271754号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上記事情に鑑み、特別な装置を使用することなく、映像信号に他の多数の信号を重畳させることができ、既存の設備をそのまま使用でき、かつ送信されたデータの信頼性が高い映像信号への信号重畳装置および信号重畳方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1発明の映像信号への信号重畳装置は、画像撮影手段によって撮影された映像の情報を含む映像信号に、該映像信号以外の信号からなる非映像信号を重畳させて送信する信号重畳装置であって、前記画像撮影手段と、該画像撮影手段が発信する映像信号を外部に送信する送信部との間に設けられ、前記映像信号と前記非映像信号の両方が入力され、入力された前記映像信号と前記非映像信号のうちいずれか一方の信号を前記送信部に発信する切換部を備えており、該切換部は、前記映像信号のうち、輝度情報に該当する部分を前記非映像信号に置換するものであることを特徴とする。
第2発明の映像信号への信号重畳装置は、第1発明において、前記映像信号が、複数本の映像信号列から構成されたものであり、前記切換部が、前記映像信号における複数本の映像信号列のうち、いくつかの映像信号列を前記非映像信号を含む非映像信号列に置換するものであることを特徴とする。
第3発明の映像信号への信号重畳方法は、画像撮影手段によって撮影された映像の情報を含む映像信号に、該映像信号以外の信号からなる非映像信号を重畳させて送信する信号伝達方法であって、前記映像信号のうち、輝度情報に該当する部分を前記非映像信号に置換することを特徴とする。
第4発明の映像信号への信号重畳装置は、第3発明において、前記映像信号が、複数本の映像信号列から構成されたものであり、前記映像信号における複数本の映像信号列のうち、いくつかの映像信号列を前記非映像信号を含む非映像信号列に置換するものであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
第1発明によれば、以下の(1)〜(4)の作用効果を奏する。
(1)垂直帰線期間に比べて大量の情報が含まれている輝度情報の部分を非映像信号によって置換するから、データを特別に圧縮等しなくても、大量の非映像信号を送信することができる。
(2)また、映像信号のうち、輝度情報の部分を非映像信号に置換するだけであるから、装置の構成を簡単にできる。よって、劣悪な環境で使用しても、装置の故障の発生等を抑えることができる。
(3)輝度情報の部分を非映像信号に置換するだけであるから、信号送信に既存の通信システムをそのまま利用できるので、信号送信の安全性を確実に確保することができ、しかも、特別な施工や特別な検証を行う必要がないので、短期間かつ低コストで設置することができる。
(4)映像信号を録画等により保存すれば、非映像信号も同時に保存することができる。つまり、映像信号と非映像信号を同期させたまま保存できるから、データの保存・整理・分析が容易になる。
第2発明によれば、映像信号列全体を全て非映像信号列に置換するので、受信部において映像信号から非映像信号を分離する処理が容易になる。すると、受信部で受信された信号列の分離等が容易になるから、分離された非映像信号の信頼性も高めることができる。
第3発明によれば、以下の(1)〜(4)の作用効果を奏する。
(1)垂直帰線期間に比べて大量の情報が含まれている輝度情報の部分を非映像信号によって置換するから、データを特別に圧縮等しなくても、大量の非映像信号を送信することができる。
(2)また、映像情報のうち、輝度信号の部分を非映像信号に置換するだけであるから、装置の構成を簡単にできる。よって、劣悪な環境で使用しても、装置の故障の発生等を抑えることができる。
(3)輝度情報の部分を非映像信号に置換するだけであるから、信号送信に既存の通信システムをそのまま利用できるので、信号送信の安全性を確実に確保することができる。
(4)映像信号を録画等により保存すれば、非映像信号も同時に保存することができる。つまり、映像信号と非映像信号を同期させたまま保存できるから、データの保存・整理・分析が容易になる。
第4発明によれば、映像信号列全体を全て非映像信号列に置換するので、映像信号から非映像信号を分離する処理が容易になりかつ、分離された非映像信号の信頼性も高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
つぎに、本発明の実施形態を図面に基づき説明する。
本発明の信号重畳装置は、ITVやハンディカメラ等の画像撮影手段から発信される映像信号に、温度センサや圧力センサ,流量センサ,レベルセンサ等の各種センサから送信される映像信号以外の信号(以下、単に非映像信号という)を重畳させる装置であって、映像信号において、モニタやディスプレイ等の画面に画像として表示される輝度信号を非映像信号に置換することに特徴を有するものである。
【0011】
まず、本発明の信号重畳装置を説明する前に、非映像信号が重畳される映像信号を簡単に説明する。
図2(B)には、映像信号の一形式であるNTSC信号方式の例を示している。NTSC信号方式の映像信号は、輝度情報や色情報が含まれていない垂直帰線期間Aと輝度情報や色情報が含まれている輝度信号部分Bとからなる映像信号列によって形成されており、映像信号列が525本連続して1つの映像信号が形成されている。この映像信号を構成する525本の映像信号列は、画面表示されるときには、垂直帰線期間Aを除く輝度信号部分Bだけが1画面において上から下に順番に表示され、1つの画面を形成するのである(図3参照)。
なお、非映像信号を重畳させる映像信号はNTSC信号方式のものに限られず、映像信号は、PAL信号方式やSECAM信号方式でもよく、とくに限定されないが、以下では、映像信号がNTSC信号方式である場合を代表として説明する。
さらになお、映像信号がPAL信号方式やSECAM信号方式の場合にも、NTSC信号における垂直帰線期間および輝度信号部分は、各信号方式の垂直帰線期間および輝度信号部分がそれぞれ該当する。
【0012】
つぎに、本発明の信号重畳装置を説明する。
図1は本実施形態の信号重畳装置1の概略ブロック図である。図1において符号10は、ITVやハンディカメラ等の画像撮影手段を示している。この画像撮影手段10は、設置されている場所の画像を撮影するものであり、配線等によって送信部11に接続されている。この送信部11と画像撮影手段10との間の配線には、信号重畳装置20が配設されているが、その理由は後述する。
送信部11は、配線P又は無線によって受信部16と接続されており、この受信部16は、モニタ等の画像再生手段15およびビデオ等の画像録画手段17に接続されている。
このため、画像撮影手段10によって撮影された映像の情報を含む映像信号が送信部11に入力されると、この映像信号は、送信部11から受信部16に送信され、受信部16から画像再生手段15および画像録画手段17に送信される。よって、画像撮影手段10から離間した場所において、画像撮影手段10が設置されている場所の映像を映像画像再生手段15によって確認できるし、画像録画手段17によって録画して保存しておくことができるのである。
【0013】
つぎに、本発明の信号重畳装置20を説明する。
図1に示すように、信号重畳装置20は、切替部21と、切替部21の作動を制御する制御部22を備えている。
切替部21は、例えば、半導体式アナログスイッチ等の公知の信号切換回路であり、画像撮影手段10と、非映像信号を発信する非映像信号供給部40の両方に接続されている。そして、切替部21は、通常は、送信部11と画像撮影手段10とが電気的に接続された状態となり、後述する制御部22からの信号に応じて、送信部11と画像撮影手段10との間を電気的に切断し、送信部11と非映像信号供給部40との間を電気的に接続するように構成されている。以下では、制御部22から送信される信号、つまり、切替部21において、送信部11と画像撮影手段10との間を電気的に切断し、送信部11と非映像信号供給部40との間を電気的に接続させる信号を、単に切替信号という。
このため、通常は、画像撮影手段10から発信される映像信号が切替部21を通って送信部11に送られており、制御部22から切替部21に切替信号が入力されると、非映像信号が切替部21を通って送信部11に送られるのである。つまり、送信部11には、常に、映像信号と非映像信号のうち、いずれか一方の信号のみが供給されるのである。
【0014】
図1に示すように、前記切替部21の作動を制御する制御部22は、画像撮影手段10と切替部21との間の配線に接続されており、画像撮影手段10から発信される映像信号が入力されるように構成されている。この制御部22は、映像信号において、所定の映像信号列における輝度信号が切替部21に入力されるタイミングにおいて、前記切替信号を切替部21に入力するように構成されている。
このため、制御部22によって切替部21を作動させれば、所定の映像信号列における輝度信号部分が非映像信号に置換されるのであるが、映像信号全体において、輝度信号部分には大量の情報が含まれているから、大量の非映像信号を輝度信号部分に置換することができる。つまり、映像信号に大量の非映像信号を含ませることができるのである。よって、本発明の信号重畳装置20によれば、非映像信号データを特別に圧縮等しなくても、非映像信号を垂直帰線期間に重畳させる場合に比べて、大量の非映像信号を送信することができるのである。
【0015】
そして、非映像信号を、映像信号における全ての映像信号列の輝度信号部分と置換せず、一部の映像信号列における一部または全部の輝度信号部分と置換すれば、映像信号と、この映像信号が撮影された時間と同じ時間に計測された非映像信号データを同時に送信できる。すると、画像撮影手段10が設置されている場所の温度や圧力等を検出するセンサなどの出力信号を非映像信号とすれば、画像撮影手段10が設置されている場所の映像と、画像撮影手段10が設置されている場所の温度や圧力等を同時に確認できる。すると、画像撮影手段10が設置されている場所の状況や、その場所で生じている現象を、映像だけで判断するよりも、より詳細に把握することができる。
さらになお、映像信号が不要な場合や、画像撮影手段10の故障などにより映像信号が利用できないような状況の場合には、映像信号における全ての輝度信号部分を非映像信号に置換してもよい。
【0016】
また、輝度情報部分を非映像信号に置換するときには、送信部11に接続する機器を画像撮影手段10から非映像信号供給部40に切り換えるだけでよく、信号重畳装置20として、切替部21とその制御を行う制御部22を設けるだけでよい。そして、切替部21として、上記のごとき公知の信号切換回路を使用すればよいから、信号重畳装置20の構成を簡単にできるし、劣悪な環境で使用しても、故障の発生等を抑えることができる。
【0017】
さらに、輝度情報部分を非映像信号に置換するだけであり、輝度情報部分と非映像信号はいずれも同じ電圧範囲、周波数帯域の電気信号であるから、輝度情報部分と非映像信号を置換しても、映像信号だけを送信しているシステムによって、確実に非映像信号を送信できる。つまり、既存の通信システムをそのまま利用できるので、信号送信の安全性を確実に確保することができ、しかも、特別な施工や特別な検証を行う必要がないので、短期間かつ低コストで設置することができる。
【0018】
さらに、輝度情報部分が非映像信号に置換されているだけであるから、送信部11から受信部16に送信された映像信号を画像録画手段17によってビデオテープ等のメディアに録画すれば、映像信号ともに、非映像信号もメディアに同時に保存することができる。つまり、映像信号と非映像信号を同期させたまま保存できるから、データの保存・整理・分析が容易になる。
【0019】
ここで、映像信号において、ある映像信号列の輝度信号全てを非映像信号に置換した場合、この映像信号をそのまま画像再生手段15によって再生すると、非映像信号に置換する前の画像が図3(A)のごとき画像であっても、図3(B)に示すような画像となり、非映像信号に置換されている部分がバーコード状になり、画像が見にくくなる。そこで、図1に示すように映像信号を画像調整手段30を通してから画像再生手段に供給するようにし、画像調整手段30によって非映像信号の部分を、黒レベル等の一様な信号とすれば、画像を見やすくすることができる(図3(C))。かかる画像調整手段30には、非映像信号の部分を黒レベル等の一様な信号に置換する置換部32と、この置換部32の作動を制御する制御部31を設けておけばよい。
【0020】
また、非映像信号供給部40は以下のような構成としてもよい。
図1において、符号41は複数のセンサを示している。このセンサ41は、温度を測定する熱電対や、圧力を測定する圧力ピックアップ、タンクの水位を測定する水位発電器等であるが、特に限定されない。
また、符号42は、変調回路43に接続する複数のセンサ41を切り換える機能を有する信号切換回路を示している。この信号切換回路42は制御部22によって制御されており、この制御部22からの制御信号に基づいて変調回路43に接続するセンサ41が切り換えられている。このため、制御部22からの制御信号によって信号切換回路42が作動すれば、所定のセンサ41の信号が、所定の順番に所定の時間だけ変調回路43に供給されるのである。
変調回路43は、信号切換回路42から供給されるセンサ41の信号を含むNTSC信号を形成するものである。具体的には、垂直帰線信号と、センサ41の信号が連続的に並んだセンサ信号列とからなるNTSC信号(以下、非映像信号列N1という)を形成するものである。この変調回路43も信号重畳装置20の制御部22によって制御されており、制御部22から信号切換回路42に供給される制御信号と同等の変調制御信号が供給されている。つまり、信号切換回路42から変調回路43に対して、どのセンサ41の信号が何番目に何秒間供給されているか等の情報を含んだ変調制御信号が制御部22から変調回路43に供給されている。そして、この変調制御信号に基づいて、変調回路43が、垂直帰線信号に非映像信号列N1であることを示す識別信号と、変調制御信号の情報を含んだ非映像信号列N1が形成するのである。
なお、垂直帰線信号に含まれる情報は、識別信号や変調制御信号の情報以外の信号を含んでいてもよく、とくに限定されない。
【0021】
また、上記のごとき非映像信号供給部40を有する場合において、映像信号から非映像信号を分離して表示させる非映像信号分離部50を設けておけば、映像信号とともに非映像信号も同時に確認できるので好適である。
図1に示すように、符号53は、復調回路を示している。この復調回路は、映像信号から、非映像信号列N1だけを分離して、NTSC信号となっているセンサ信号を元の状態に戻すものである。この復調回路53は、前記画像調整手段30の制御部31によって制御されており、この制御部31からの分離信号が送られたときにのみ、映像信号の信号列を受信するように構成されている。なお、分離信号は、制御部31が非映像信号列N1の垂直帰線信号に含まれる前記識別信号を検出したときに、制御部31から復調回路53に送られるものである。
【0022】
また、復調回路53は、非映像信号列N1を変調制御信号を含む垂直帰線信号とセンサ信号列に分離し、センサ信号列を信号切換回路52に供給するように構成されている。つまり、この信号切換回路52は、センサ信号列に含まれている複数のセンサ41の信号を、各センサ41の信号を表示する表示器51に振り分けるものである。この信号切換回路52による信号の振り分けは、垂直帰線信号に含まれる変調制御信号に基づいて復調回路53が信号切換回路52の作動を制御することによって行われる。
【0023】
上記のごとき非映像信号供給部40および非映像信号分離部50を有する場合における信号の流れは以下のようになる。
図2(A)に示すように、センサ41から供給される信号は、信号切換回路42からセンサ信号列Cの状態で変調回路43に送られる。すると、変調回路43において、センサ信号列Cに垂直帰線信号が接続された非映像信号列N1が形成される。
この非映像信号列N1は、変調回路43から切替部21に入力され、切替部21によって、映像信号SAにおける映像信号列N2と置換され、映像信号列N2が非映像信号列N1に置換された映像信号SBが送信部11から送信される。
送信部11から送信され受信部16で受信された映像信号SBは、画像再生手段15および画像録画手段17、非映像信号分離部50にそれぞれ配信される。そして、画像再生手段15には、画像調整手段30の置換部32によって非映像信号の部分が黒レベル等の一様な信号となった状態でおくられるから、画像を見やすくすることができる(図3(C))。一方、非映像信号分離部50に送られた映像信号SBは、その非映像信号列N1だけが復調回路53に受信され、かつ、非映像信号列N1が垂直帰線信号とセンサ信号に分離される。そして、垂直帰線信号に含まれる変調制御信号に基づいて、複数のセンサ41の信号を、各センサ41の信号を表示する表示器51に振り分けるから、各センサ41が検出する情報を表示器51によって確認できるのである。
【0024】
なお、映像信号がNTSC信号方式の場合においては、インターレス方式を使用して映像信号を送信してもよい。インターレス方式は、525本のNTSC信号列を一度に全て送信せずに、ある時間には525本のNTSC信号列のうち奇数番のNTSC信号列(Aフィールド、図4(A)参照)を送信し、その次の時間には525本のNTSC信号列のうち偶数番のNTSC信号列(Bフィールド、図4(A)参照)を送信する方式である。この場合には、映像信号に含まれる非映像信号列を、直前に送信された映像信号におけるNTSC信号列のうち非映像信号列が重畳されている順番の前後いずれかのフィールドのNTSC信号列によって置換すれば、画像再生手段15に表示される画像の垂直方向の解像度低下するものの、画像の視覚的見苦しさを低減することができる(図4(B),(C))。例えば、ある時間の映像信号が525本のNTSC信号列のうちAフィールドのNTSC信号列を送信するときに、その11番目の信号列に非映像信号列が重畳されているのであれば、直前に送信されたBフィールドのNTSC信号列からなる映像信号における10番目または12番目のNTSC信号列を11番目の信号列と置換して画像再生手段15に表示すれば、画像の視覚的見苦しさを低減することができる(図4)。
さらになお、別の方法として、直前に送信された同一のフィールドの映像信号におけるNTSC信号列のうち、非映像信号列が重畳されている順番の前後いずれかの順番のNTSC信号列によって非映像信号列を置換すれば、画像再生手段15に表示される画像の垂直方向の解像度は低下するものの、画像の視覚的見苦しさを低減することができる。とくに、映像信号において非映像信号列を重畳させる順番を毎回変更するようにしておけば、直前に送信された映像信号におけるNTSC信号列のうち、非映像信号列が重畳されている順番のNTSC信号列によって非映像信号列を置換することが可能となるから、画像の視覚的見苦しさをより一層低減することができる。
【産業上の利用可能性】
【0025】
映像信号への信号重畳装置および信号重畳方法は、発電プラントや化学・石油プラント等、すでに画像観測装置が設置されている施設において、画像情報以外の信号を送信する機器を新たに設置するような場合に、映像信号に他の多数の信号を重畳させる装置・方法として適している。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本実施形態の信号重畳装置1の概略ブロック図である。
【図2】(A)非映像信号供給部40および非映像信号分離部50を有する場合において、信号の流れを示した概略説明図であり、(B)はNTSC信号列の概略説明図である。
【図3】(A)非映像信号が重畳されていない映像信号をディスプレイに表示したときに得られる画像の例であり、(B)非映像信号が重畳されている映像信号をそのままディスプレイに表示したときに得られる画像の例であり、(C)非映像信号の部分を一様な信号に置換してディスプレイに表示したときに得られる画像の例である。
【図4】(A)奇数番のNTSC信号列のみからなる映像信号をディスプレイに表示したときに得られる画像の例であり、(B)偶数番のNTSC信号列のみからなる映像信号であって一部の信号列に非映像信号が重畳されている映像信号をそのままディスプレイに表示したときに得られる画像の例であり、(C)非映像信号が重畳されている信号列を奇数番のNTSC信号列に置換してディスプレイに表示したときに得られる画像の例である。
【符号の説明】
【0027】
10 画像撮影手段
11 受信部
20 信号重畳装置
21 切替部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像撮影手段によって撮影された映像の情報を含む映像信号に、該映像信号以外の信号からなる非映像信号を重畳させて送信する信号重畳装置であって、
前記画像撮影手段と、該画像撮影手段が発信する映像信号を外部に送信する送信部との間に設けられ、前記映像信号と前記非映像信号の両方が入力され、入力された前記映像信号と前記非映像信号のうちいずれか一方の信号を前記送信部に発信する切換部を備えており、
該切換部は、前記映像信号のうち、輝度情報に該当する部分を前記非映像信号に置換するものである
ことを特徴とする映像信号への信号重畳装置。
【請求項2】
前記映像信号が、複数本の映像信号列から構成されたものであり、
前記切換部が、
前記映像信号における複数本の映像信号列のうち、いくつかの映像信号列を前記非映像信号を含む非映像信号列に置換するものである
ことを特徴とする請求項1記載の映像信号への信号重畳装置。
【請求項3】
画像撮影手段によって撮影された映像の情報を含む映像信号に、該映像信号以外の信号からなる非映像信号を重畳させて送信する信号伝達方法であって、
前記映像信号のうち、輝度情報に該当する部分を前記非映像信号に置換する
ことを特徴とする映像信号への信号重畳方法。
【請求項4】
前記映像信号が、複数本の映像信号列から構成されたものであり、
前記映像信号における複数本の映像信号列のうち、いくつかの映像信号列を前記非映像信号を含む非映像信号列に置換するものである
ことを特徴とする請求項3記載の映像信号への信号重畳方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−53587(P2007−53587A)
【公開日】平成19年3月1日(2007.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−237262(P2005−237262)
【出願日】平成17年8月18日(2005.8.18)
【出願人】(000144991)株式会社四国総合研究所 (116)
【Fターム(参考)】