説明

映像信号処理装置、集積回路および撮像装置

【課題】映像信号の無効フレーム期間だけでなく、有効フレーム期間内のブランキング期間においてもアナログ信号処理部での消費電力を削減し、これによって更なる低消費電力化を図ることを可能にした低消費電力な映像信号処理装置を提供する。
【解決手段】外部から入力されるアナログ映像信号に対して信号処理を施す映像信号処理装置であって、アナログ映像信号に対してサンプリングと増幅を行うCDS/AGC部101と、CDS/AGC部101から出力されるアナログ映像信号をデジタル映像信号に変換するADC部102とを有するアナログ信号処理部104と、アナログ信号処理部104を動作させるかスタンバイ状態にさせるかを切り替える制御を行うタイミング制御部105とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アナログ映像信号に対して信号処理を施す映像信号処理装置に関し、特に、デジタルスチルカメラ、ビデオカメラ等の撮像装置における映像信号処理に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、デジタルスチルカメラ、ビデオカメラといった撮像装置において、撮像素子から映像信号が出力される有効フレーム期間には後段のアナログ信号処理部を動作させ、映像信号が出力されない無効フレーム期間にはアナログ信号処理部を停止させることで低消費電力化を図る技術がある(特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1の撮像装置におけるアナログ信号処理部404について、図8を用いて説明する。アナログ信号処理部404は、CDS(相関二重サンプリング)/AGC(アナログ利得制御)部401、ADC部402、アナログクランプ部403を備え、タイミング制御部405から入力される制御信号による制御を受ける。タイミング制御部405は、OB(OpticalBlack;黒基準)期間を示すOBクランプ信号S404とパワー制御信号S406を出力する。撮像素子(図示しない)から出力されたアナログ映像信号S401がCDS/AGC部401に入力されると、アナログクランプ部403は、OBクランプ信号S404が示す期間でのアナログ映像信号のOB値(黒基準レベル)が目標値に合うようにCDS/AGC部401でのアナログ映像信号のレベル制御を行うためのクランプ電圧S405をCDS/AGC部401に出力する。このようにしてOB補正が施されたアナログ映像信号S402は、ADC部402に入力され、デジタル映像信号S403としてアナログ信号処理部404の外部に出力される。タイミング制御部405から出力されるパワー制御信号S406は、有効フレーム期間においてはアナログ信号処理部404の電源をON、無効フレーム期間においてはOFFさせる。このように、アナログ信号処理部404への電源供給を制御することにより低消費電力化を行う。
【特許文献1】特開2001−145029号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の撮像装置では無効フレーム期間にアナログ信号処理部404を停止することにより低消費電力化が行える。しかしながら、アナログ信号処理部404の間欠制御はフレーム単位で行われており、有効フレームにおけるアナログ信号処理が不要な期間、例えばブランキング期間(垂直消去期間および水平消去期間)における機能停止/動作の制御は行われていないために、低消費電力化の点で十分ではない。
【0005】
ここで、ブランキング期間においてもアナログ信号処理部404への電源供給をOFFすることで、さらなる低消費電力化を図ろうとすることも考え得る。ところが、特許文献1の技術では、アナログ信号処理部404への電源をOFFからONに切り替える際、アナログ信号処理部404が安定して動作させられる電位に回復するまでの予備動作時間が必要である。そのため、ブランキング期間の開始時にアナログ信号処理部404への電源供給を停止すると、アナログ信号処理部404が正常動作を再開させる前にブランキング期間が終了してしまい、次の有効期間が始まってしまうという問題がある。つまり、特許文献1のような電源のON/OFF制御による省電力化では、ブランキング期間における消費電力の削減は困難であり、これ以上の低消費電力化を図ることができないという問題がある。
【0006】
本発明では、映像信号の無効フレーム期間だけでなく、有効フレーム期間内のブランキング期間においてもアナログ信号処理部での消費電力を削減し、これによって更なる低消費電力化を図ることを可能にした低消費電力な映像信号処理装置および撮像装置等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の映像信号処理装置および撮像装置では、アナログ信号処理部の機能停止をパワーダウンではなくスタンバイ状態への切り替えによって実現する。すなわち、アナログ信号処理部に供給される電源電圧やアナログ信号処理部の内部電圧は保持したまま、機能(アナログ信号処理という動作)を停止させることによりアナログ信号処理部で消費する電力を低減させる。これにより、スタンバイ状態/動作状態の遷移は電源ON/OFFの切り替えに比べて高速に行えるため、無効フレーム期間だけでなく、有効フレームのブランキング期間においても遅延を発生させることなくアナログ信号処理部の機能停止/動作の切り替えが可能になり、更なる低消費電力化が図られる。
【0008】
つまり、本発明に係る映像信号処理装置は、外部から入力されるアナログ映像信号に対して信号処理を施す映像信号処理装置であって、前記アナログ映像信号に対してサンプリングと増幅を行うCDS/AGC部と、前記CDS/AGC部から出力されるアナログ映像信号をデジタル映像信号に変換するAD変換部とを有するアナログ信号処理部と、前記アナログ信号処理部を動作させるかスタンバイ状態にさせるかを切り替える制御を行うタイミング制御部とを備えることを特徴とする。これにより、アナログ信号処理が不要な場合に、アナログ信号処理部への電源をOFFするのではなく、スタンバイ状態にするので、極めて短い時間であるブランキング期間においても電力消費を削減できる。
【0009】
ここで、前記アナログ信号処理部はさらに、前記アナログ映像信号の黒基準レベルを一定にするためのクランプ電圧を出力するアナログクランプ部を有し、前記CDS/AGC部は、前記クランプ電圧に基づいて、前記アナログ映像信号に対してサンプリングと増幅を行う構成としてもよいし、前記アナログ信号処理部はさらに、前記AD変換部から出力されるデジタル映像信号に対して黒基準期間での値をサンプリングすることにより、前記黒基準レベルを一定にするためのデジタル黒基準補正値を求める黒基準補正部を備え、前記アナログ信号処理部はさらに、前記黒基準補正部で求められたデジタル黒基準補正値をアナログ黒基準補正値に変換するDA変換部を有し、前記アナログクランプ部は、前記DA変換部から出力されるデジタル黒基準補正値に基づいて、前記クランプ電圧を出力する構成としてもよい。アナログ信号処理部の構成要素が追加された場合であっても、スタンバイ状態による低消費電力化は可能だからである。
【0010】
より詳しくは、前記アナログ信号処理部は、前記スタンバイ状態においては、内部信号を保持したまま、アナログ信号処理を停止する。そのために、例えば、前記アナログ信号処理部は、前記スタンバイ状態における内部信号の保持として、当該アナログ信号処理部に供給される電源電圧、前記アナログクランプ部から出力されるクランプ電圧、前記AD変換部の内部で発生する参照電圧、および、前記DA変換部の内部で発生する参照電圧の少なくとも一つを保持する。あるいは、前記アナログ信号処理部は、前記スタンバイ状態においては、CDS/AGC部、AD変換部、アナログクランプ部およびDA変換部への電源の供給を切断することなくクロックの供給を切断する。
【0011】
これにより、前記タイミング制御部は、前記アナログ映像信号の1フレーム期間で複数回、前記アナログ信号処理部がスタンバイ状態となるように、前記制御を行うことができる。また、前記タイミング制御部は、前記アナログ映像信号の無効フレーム期間と、前記アナログ映像信号の有効フレーム期間におけるブランキング期間とにおいて、前記アナログ信号処理部がスタンバイ状態となるように、前記制御を行うこともできる。
【0012】
なお、本発明は、以上のような映像信号処理装置として実現できるだけでなく、以上のような構成を備える映像信号処理装置を搭載したLSI等の半導体集積回路として実現したり、レンズと、前記レンズを透過した光をアナログ映像信号に変換する撮像素子と、前記撮像素子から出力されるアナログ映像信号に対して信号処理を施す上記のような映像信号処理装置とを備えるデジタルカメラ等の撮像装置として実現することもできる。
【発明の効果】
【0013】
フレーム単位でのアナログ信号処理部の動作/停止にとどまらず、1フレームよりも短い期間、例えば有効フレームのブランキング期間にもアナログ信号処理部を停止させることにより、さらなる低消費電力を実現した映像信号処理装置を提供できる。また、そのような映像信号処理装置を搭載した低消費電力なLSI、および撮像装置を提供できる。
【0014】
特に、撮像装置を備える電池駆動の携帯型機器が普及してきた今日において、本発明は、携帯型機器の消費電力をさらに低減することができ、その実用的価値は極めて高い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について図面に基づいて説明する。
【0016】
(第1の実施の形態)
まず、本発明の第1の実施の形態における映像信号処理装置について説明する。
【0017】
図1は、本実施の形態における映像信号処理装置の構成を表わす図である。この映像信号装置は、外部(撮像素子)から入力されるアナログ映像信号に対してノイズ除去、増幅およびA/D変換等の信号処理を施すLSI等の半導体集積回路であり、アナログ信号処理部404とタイミング制御部405とを備える。
【0018】
アナログ信号処理部104は、CCDやMOSセンサに代表される撮像素子から出力されるアナログ映像信号S101に対して各種信号処理を施してデジタル映像信号S103を出力する回路であり、CDS/AGC部101、ADC部102、アナログクランプ部103を備えている。
【0019】
CDS/AGC部101は、アナログ映像信号S101に対してサンプリングと増幅を行うための2つの回路、つまり、CDSとAGCからなる。CDSは、入力されたアナログ映像信号S101が示す撮像素子のリセットレベルと画素レベルの差のサンプリングを行うことでリセットノイズの影響を抑える相関二重サンプリング回路である。AGCは、CDSからの出力信号に対して、その大きさに応じた増幅を行う可変ゲインアンプとして機能するアナログゲイン制御回路である。
【0020】
タイミング制御部105は、OB期間を示すOBクランプ信号S104と、アナログ信号処理部104を動作させるかスタンバイ状態にさせるかを切り替えるための制御信号である(つまり、スタンバイ期間を示す)スタンバイ信号S106を生成し、各々の信号をアナログ信号処理部104に出力する。なお、スタンバイ期間とは、アナログ信号処理が不要な期間であり、本実施の形態では、撮像素子からアナログ映像信号が出力されないフレーム期間である無効フレーム期間と、撮像素子からアナログ映像信号が出力されているフレーム期間である有効フレーム期間におけるブランキング期間である。無効フレーム期間は、低速フレームレートの映像信号を生成するためにフレームを一定間隔で間引いたり、断続的な撮影をしたり、ユーザに指示されたときにだけ撮影したりするために発生するフレーム期間である。ブランキング期間には、図2に示されるように、垂直ブランキング期間と水平ブランキング期間とが含まれる。また、OB期間は、図2に示されるように、撮像素子から黒基準の信号が出力される期間であり、垂直OB期間と水平OB期間とが含まれる。
【0021】
アナログクランプ部103は、CDS/AGC部101から出力されるアナログ映像信号S102の黒基準レベルを一定にするためのクランプ電圧を出力する回路であり、具体的には、OBクランプ信号S104が示す期間でのOB値が目標値に合うように、CDS/AGC部101でのアナログ映像信号のレベル制御を行うためのクランプ電圧S105をCDS/AGC部101に出力する。これにより、OB補正が施されたアナログ映像信号S102は、ADC部102に入力される。
【0022】
ADC部102は、入力されたアナログ映像信号S102をデジタル映像信号S103に変換し、アナログ信号処理部104の外部に出力する。
【0023】
上記構成の映像信号処理装置において、アナログ信号処理部104の機能停止は次の様に実現される。撮像素子からアナログ映像信号S101が出力されない無効期間、すなわちアナログ信号処理が不要な期間(本実施の形態では、無効フレーム期間と、有効フレーム期間におけるブランキング期間)が開始するタイミングで、スタンバイ信号S106がタイミング制御部105からアナログ信号処理部104に出力される。スタンバイ信号S106を受けて、アナログ信号処理部104の各ブロック、CDS/AGC部101、ADC部102、アナログクランプ部103は、即座に機能(アナログ信号処理という動作)を停止し、スタンバイ状態に切り替わる。
【0024】
本実施の形態におけるスタンバイ状態とは、アナログ信号処理部104が内部信号を保持したまま、アナログ信号処理を停止することである。ここで、アナログ信号処理部104は、スタンバイ状態における内部信号の保持として、アナログ信号処理部104に供給される電源電圧、アナログクランプ部103から出力されるクランプ電圧、ADC部102の内部で発生する参照電圧の少なくとも一つを保持する。本実施の形態では、アナログ信号処理部104は、アナログ信号処理部104への電源電圧、電源電圧から作られる上記参照電圧、およびクランプ電圧S105を保持させる。
【0025】
図3は、スタンバイ状態の実現手法の一例を示す図である。ここでは、スタンバイ状態においてアナログ信号処理部104が各ブロック101〜103への電源の供給を切断することなくクロックの供給を切断することが示されている。つまり、アナログ信号処理部104は、スタンバイ信号S106がスタンバイ期間を示す期間においては、電源120から各ブロック101〜103への電源電圧VDDの供給を切断することなく、クロック発振部121と各ブロック101〜103との間に接続されたゲート回路等のスイッチ122を切断することで、各ブロック101〜103へのクロック信号の供給を切断する。
【0026】
図4は、スタンバイ状態の実現手法の他の一例を示す図である。ここでは、スタンバイ状態においてCDS/AGC部101のAGCが機能(ここでは、増幅)を停止することが示されている。つまり、CDS/AGC部101のAGCは、負荷抵抗130aおよびb、ソースが結合された1対のMOSトランジスタ131aおよびb、定電流源132およびスイッチ133からなる差動増幅回路を有する。スイッチ133は、MOSトランジスタ等であり、スタンバイ信号S106がスタンバイ期間を示す期間において、OFFとなる。このようにして、CDS/AGC部101は、内部回路への電源供給を断つことなく、動作を停止する。
【0027】
その後、無効期間が終了する直前にスタンバイ信号S106が解除され、アナログ信号処理部104は即座にスタンバイ状態から動作状態へと切り替わる。このスタンバイ状態/動作状態の切り替えは高速に行われるため、映像信号が有効期間に切り替わるタイミングでアナログ信号処理部104の動作を遅延無く再開することができる。有効フレームにおいてブランキングが断続的に複数回発生した場合には、その都度スタンバイ状態/動作状態の切り替えを行う。
【0028】
図5(a)は、本実施の形態における映像信号処理装置のスタンバイ動作を示すタイミングチャートであり、図5(b)は、従来の装置のスタンバイ動作を示すタイミングチャートである。
【0029】
図5(a)に示されるように、タイミング制御部105から出力されるスタンバイ信号S106は、スタンバイ期間として、無効フレーム期間と、有効フレーム期間のブランキング期間とにおいて、Lowとなる。アナログ信号処理部104は、スタンバイ信号の状態(High/Low)に拘わらず、アナログ信号処理部104への電源電圧、電源電圧から作られる参照電圧、およびクランプ電圧S105を保持させるとともに、スタンバイ信号がLowのときだけ、各ブロック101〜103に供給されるクロック信号を切断したり、アンプ回路における定電流源を切断したりすることで、各ブロック101〜103の動作(アナログ信号処理)を停止させる。
【0030】
一方、従来の装置によれば、図5(b)に示されるように、スタンバイ信号は、スタンバイ期間として、無効フレーム期間だけにおいてだけLowとなり、その期間だけ、アナログ信号処理部への電源供給が停止される。
【0031】
以上より、本実施の形態における映像信号処理装置によれば、無効フレームのみならず有効フレームのブランキング期間もアナログ信号処理部104を機能停止させることができ、さらなる低消費電力化が可能になる。
【0032】
なお、本実施の形態では、アナログ信号処理部104はアナログクランプ部103を備えたが、本発明に係るアナログ信号処理部は、必ずしも、アナログクランプ部を備えていなくてもよい。アナログクランプ部103の存否に拘わらず、無効フレーム期間だけでなく、有効フレーム期間のブランキング期間においてもアナログ信号処理部をスタンバイ状態にすることで低消費電力化を達成することができるからである。
【0033】
(第2の実施の形態)
次に、本発明の第2の実施の形態における映像信号処理装置について説明する。
【0034】
図6は、本実施の形態における映像信号処理装置の構成を表わす図である。この映像信号装置は、外部(撮像素子)から入力されるアナログ映像信号に対してノイズ除去、増幅およびA/D変換等の信号処理を施すLSI等の半導体集積回路であり、アナログ信号処理部204とタイミング制御部205とOB補正部206とを備える。図6に示すような構成の本実施の形態における映像信号処理装置においても、第1の実施の形態と同様の低消費電力化が可能である。
【0035】
アナログ信号処理部204は、CCDやMOSセンサに代表される撮像素子から出力されるアナログ映像信号S201に対して各種信号処理を施してデジタル映像信号S203を出力する回路であり、CDS/AGC部201、ADC部202、アナログクランプ部203、DAC部207を備えている。
【0036】
CDS/AGC部201は、第1の実施の形態におけるCDS/AGC部101と同じ機能を有し、アナログ映像信号S201に対して相関二重サンプリングをした後に、増幅し、増幅後の信号をアナログ映像信号S202として出力する。
【0037】
ADC部202は、第1の実施の形態におけるADC部102と同じ機能を有し、CDS/AGC部201から出力されたアナログ映像信号S202をデジタル信号に変換し、デジタル映像信号S203としてOB補正部206に出力する。
【0038】
タイミング制御部205は、第1の実施の形態と同様に、OB期間を示すOBクランプ信号S204とスタンバイ期間を示すスタンバイ信号S206とを生成するが、本実施の形態では、OBクランプ信号S204をOB補正部206に、スタンバイ信号S206をアナログ信号処理部204に出力する。
【0039】
OB補正部206は、ADC部202からのデジタル映像信号S203が入力されると、OBクランプ信号S204が示す期間の映像信号が予め与えられたOBレベル目標値S210が示すOB値に合うようOB補正値を算出し、算出したOB補正値をデジタルOB補正値S208として出力する。
【0040】
DAC部207は、D/A変換器であり、OB補正部206から出力されたデジタルOB補正値S208をアナログOB補正値S209に変換し、アナログクランプ部203にフィードバックさせる。
【0041】
アナログクランプ部203は、基本的には第1の実施の形態におけるアナログクランプ部103と同じ機能を有するが、本実施の形態では、DAC部207から出力されたアナログOB補正値S209をもとに、OBクランプ信号S204が示す期間のOB値が目標値に合うようにCDS/AGC部201でのアナログ映像信号のレベル制御を行う。
【0042】
CDS/AGC部201から出力されたアナログ映像信号S202はADC部202でデジタル映像信号S203に変換され、出力される。ADC部202から出力されたデジタル映像信号S203は、OB補正部206介して、補正後のデジタル映像信号S207として出力される。
【0043】
上記構成では、OBレベルに対してアナログクランプ部203によるアナログ的調整と、OB補正部206によるデジタルなOBレベル微調整が可能なため、より高精度なOBレベル制御が可能になる。
【0044】
上記構成の映像信号処理装置において、アナログ信号処理部204の機能停止は次の様に実行される。撮像素子からアナログ映像信号S201が出力されない無効期間、すなわちアナログ信号処理が不要な期間(本実施の形態では、無効フレーム期間と、有効フレーム期間におけるブランキング期間)が開始するタイミングで、スタンバイ信号S206がタイミング制御部205からアナログ信号処理部204に出力される。スタンバイ信号S206を受けて、アナログ信号処理部204の各ブロック、CDS/AGC部201、ADC部202、アナログクランプ部203、DAC部207は、即座に機能(アナログ信号処理という動作)を停止し、スタンバイ状態に切り替わる。
【0045】
本実施の形態におけるスタンバイ状態とは、第1の実施の形態と同様に、アナログ信号処理部204が内部信号を保持したまま、アナログ信号処理を停止することである。ここで、アナログ信号処理部204は、スタンバイ状態における内部信号の保持として、アナログ信号処理部204に供給される電源電圧、アナログクランプ部203から出力されるクランプ電圧、ADC部202の内部で発生する参照電圧、DAC部207の内部で発生する参照電圧の少なくとも一つを保持する。本実施の形態では、アナログ信号処理部204は、アナログ信号処理部204への電源電圧、電源電圧から作られる上記参照電圧、およびクランプ電圧S205を保持させる。なお、スタンバイ状態の具体的な実現手法は、第1の実施の形態と同様である。
【0046】
その後、無効期間が終了する直前にスタンバイ信号S206が解除され、アナログ信号処理部204は即座にスタンバイ状態から動作状態へと切り替わる。このスタンバイ状態/動作状態の切り替えは高速に行われるため、映像信号が有効期間に切り替わるタイミングでアナログ信号処理部204の動作を遅延無く再開することができる。有効フレームにおいてブランキングが断続的に複数回発生した場合には、その都度スタンバイ状態/動作状態の切り替えを行う。
【0047】
以上より、本実施の形態における映像信号処理装置によれば、無効フレームのみならず、有効フレームのブランキング期間もアナログ信号処理部204を機能停止させることができ、さらなる低消費電力化が可能になる。
【0048】
なお、前述の実施の形態はあくまで本発明の一例であり、本発明は、第1および第2の実施の形態に限定されるものではない。上記実施の形態に対して各種変形を施して得られる形態や、上記実施の形態における構成要素を任意に組み合わせて実現される形態も、本発明に含まれる。
【0049】
たとえば、撮像素子の動作モードや種類毎にOBクランプ信号やOBレベル目標値を設定可能にする手段を設けてもよい。また、アナログ信号処理部をスタンバイ状態にする手段についてはどのように実現されてもよいものとする。
【0050】
以上示したように、本発明によれば、スタンバイ状態においてはアナログ信号処理部の内部の電圧を保持し、高速なスタンバイ状態/動作状態の切り替えを行うことにより、無効フレームのみならず、有効フレームのブランキング期間もアナログ信号処理部を機能停止することができ、従来よりも低消費電力化が図られる。
【0051】
なお、本発明は、上記実施の形態のような映像信号処理装置として実現されるだけでなく、デジタルカメラ等の撮像装置として実現することもできる。図7は、第1の実施の形態における映像信号処理装置を搭載し、低消費電力を実現する撮像装置300の構成を示す。この撮像装置300は、第1の実施の形態における映像信号処理装置に加えて、レンズ301、撮像素子302、メモリ303、デジタル信号処理部304および表示装置305を備える。
【0052】
レンズ301は、光を集光する光学素子である。撮像素子302は、レンズ301を透過した光をアナログ映像信号に変換するCCDやC−MOSセンサ等である。メモリ303は、画像を保存するDRAM等である。表示装置305は、画像を表示するLCD(液晶表示装置)等である。デジタル信号処理部304は、アナログ信号処理部104から出力されたデジタル映像信号S103に対して色調整や圧縮等の信号処理を施すことによって画像データを生成し、メモリ303に保存したり、表示装置305に出力したりするDSP(デジタルシグナルプロセッサ)304aと、各構成要素を制御するCPU304bとを有する。
【0053】
このような撮像装置300は、無効フレームのみならず、有効フレームのブランキング期間もアナログ信号処理部104を機能停止することができ、従来よりも電力消費が低い。
【0054】
なお、撮像装置に搭載される映像信号処理装置としては、第1の実施の形態における映像信号処理装置に限られず、第2の実施の形態における映像信号処理装置や、その変形例であってもよいのは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明は、アナログ映像信号に対して信号処理を施す映像信号処理装置やその映像信号処理装置を搭載する撮像装置として、例えば、デジタルスチルカメラ、ビデオカメラ、テレビ、医療用カメラ等の撮像装置全般に有用である。特に、断続的な撮影を行う医療用のカプセルカメラなど、映像信号の無効期間が長い装置における消費電力の低減に有効である。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】第1の実施の形態における映像信号処理装置の構成を示す図
【図2】ブランキング期間とOB期間を説明する図
【図3】スタンバイ状態の実現手法の一例を示す図
【図4】スタンバイ状態の実現手法の他の一例を示す図
【図5】(a)は第1の実施の形態における映像信号処理装置のスタンバイ動作を示すタイミングチャート、(b)は従来の装置のスタンバイ動作を示すタイミングチャート
【図6】第2の実施の形態における映像信号処理装置の構成を示す図
【図7】第2の実施の形態における撮像装置の構成を示す図
【図8】従来技術のアナログ信号処理部の構成を示す図
【符号の説明】
【0057】
101、201、401 CDS/AGC部
102、202、402 ADC部
103、203、403 アナログクランプ部
104、204、404 アナログ信号処理部
105、205、405 タイミング制御部
120 電源
121 クロック発振部
122、133 スイッチ
130a、130b 負荷抵抗
131a、131b MOSトランジスタ
132 定電流源
206 OB補正部
207 DAC部
300 撮像装置
301 レンズ
302 撮像素子
303 メモリ
304 デジタル信号処理部
304a DSP
304b CPU
305 表示装置
S101、S201、S401 アナログ映像信号
S102、S202、S402 アナログ映像信号(CDS/AGC電圧)
S103、S207、S403 デジタル映像信号
S104、S204、S404 OBクランプ信号
S105、S205、S405 クランプ電圧
S106、S206 スタンバイ信号
S203 デジタル映像信号
S208 デジタルOB補正値
S209 アナログOB補正値
S210 OBレベル目標値
S406 パワー制御信号

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部から入力されるアナログ映像信号に対して信号処理を施す映像信号処理装置であって、
前記アナログ映像信号に対してサンプリングと増幅を行うCDS/AGC部と、前記CDS/AGC部から出力されるアナログ映像信号をデジタル映像信号に変換するAD変換部とを有するアナログ信号処理部と、
前記アナログ信号処理部を動作させるかスタンバイ状態にさせるかを切り替える制御を行うタイミング制御部と
を備えることを特徴とする映像信号処理装置。
【請求項2】
前記アナログ信号処理部はさらに、前記アナログ映像信号の黒基準レベルを一定にするためのクランプ電圧を出力するアナログクランプ部を有し、
前記CDS/AGC部は、前記クランプ電圧に基づいて、前記アナログ映像信号に対してサンプリングと増幅を行う
ことを特徴とする請求項1記載の映像信号処理装置。
【請求項3】
前記映像信号処理装置はさらに、前記AD変換部から出力されるデジタル映像信号に対して黒基準期間での値をサンプリングすることにより、前記黒基準レベルを一定にするためのデジタル黒基準補正値を求める黒基準補正部を備え、
前記アナログ信号処理部はさらに、前記黒基準補正部で求められたデジタル黒基準補正値をアナログ黒基準補正値に変換するDA変換部を有し、
前記アナログクランプ部は、前記DA変換部から出力されるデジタル黒基準補正値に基づいて、前記クランプ電圧を出力する
ことを特徴とする請求項2記載の映像信号処理装置。
【請求項4】
前記アナログ信号処理部は、前記スタンバイ状態においては、内部信号を保持したまま、アナログ信号処理を停止する
ことを特徴とする請求項3記載の映像信号処理装置。
【請求項5】
前記アナログ信号処理部は、前記スタンバイ状態における内部信号の保持として、当該アナログ信号処理部に供給される電源電圧、前記アナログクランプ部から出力されるクランプ電圧、前記AD変換部の内部で発生する参照電圧、および、前記DA変換部の内部で発生する参照電圧の少なくとも一つを保持する
ことを特徴とする請求項4記載の映像信号処理装置。
【請求項6】
前記アナログ信号処理部は、前記スタンバイ状態においては、CDS/AGC部、AD変換部、アナログクランプ部およびDA変換部への電源の供給を切断することなくクロックの供給を切断する
ことを特徴とする請求項4記載の映像信号処理装置。
【請求項7】
前記タイミング制御部は、前記アナログ映像信号の1フレーム期間で複数回、前記アナログ信号処理部がスタンバイ状態となるように、前記制御を行う
ことを特徴とする請求項1記載の映像信号処理装置。
【請求項8】
前記タイミング制御部は、前記アナログ映像信号の無効フレーム期間と、前記アナログ映像信号の有効フレーム期間におけるブランキング期間とにおいて、前記アナログ信号処理部がスタンバイ状態となるように、前記制御を行う
ことを特徴とする請求項1記載の映像信号処理装置。
【請求項9】
請求項1記載の映像信号処理装置を搭載した半導体集積回路。
【請求項10】
レンズと、
前記レンズを透過した光をアナログ映像信号に変換する撮像素子と、
前記撮像素子から出力されるアナログ映像信号に対して信号処理を施す請求項1記載の映像信号処理装置と
を備えることを特徴とする撮像装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−289136(P2008−289136A)
【公開日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−101795(P2008−101795)
【出願日】平成20年4月9日(2008.4.9)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】