説明

映像信号処理装置および映像信号処理方法

【課題】前後の画素の平均した値で4:4:4方式の色差信号を4:2:2方式の色差信号に変換する従来の映像信号処理装置では、前後の画素の平均した値が出力されるため、色の境界部分で色がにじんでしまうという問題があった。
【解決手段】入力同期信号から色差選択信号を生成し、色差選択信号を1水平同期周期毎、1垂直同期周期毎に反転させて出力する色差選択信号生成手段102と、色差選択信号に基づき第一の入力色差信号と第二の入力色信号とを時分割多重した多重色差信号を生成する色差信号選択手段103と、色差選択信号に基づき多重色差信号から第一の中間色差信号と第二の中間色差信号とを生成する色差信号分離手段104と、色差選択信号に基づき第一の中間色差信号を補間し第一の出力色差信号を生成し、また第二の中間色差信号を補間し第二の出力色差信号を生成する補間手段105・106と、を備える映像信号処理装置110。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はデジタル映像信号処理を行うテレビやプロジェクタ、ビデオ、デジタルカメラなどの映像機器に使用される色差信号のフォーマット変換に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、テレビなどの映像機器において、映像信号をデジタルで扱うことは一般的になってきた。そのようなデジタル映像信号は輝度(Y)、色差(Cb,CrまたはPb,Prと表記されることもあるが、ここではU、Vと記載する。厳密にはマトリクス係数が異なるが本発明の趣旨とは無関係の為、同等のものとして表記する。)の3つのコンポーネントから構成される。なお、回路上でこのほかにクロック、同期信号(H,V)が必要となるが周知のことであり詳細は記さない。
【0003】
一方、人間の視覚特性上色成分は輝度成分に対して解像度が低くても目立たないとされ、色差信号の帯域が減らされて扱われることが多い。このことを用いて色差信号のクロックレートを落とし回路規模の削減や消費電力の削減につなげることができる。
【0004】
例えば、一般に当該分野の技術者の間で4:4:4と表記される場合は輝度信号(Y)と色差信号(U、V)が同一の頻度でサンプリングされるが、4:2:2と表記される場合は、色差信号(U、V)が輝度信号(Y)に対し半分の頻度でサンプリングされる(1/2のサンプリングレート)ことを意味している。また、4:1:1は色差信号が輝度信号の1/4のサンプリングレートとなる。4:2:0では4:2:2の後、垂直方向へも1/2へ間引かれたものである。
【0005】
図5に4:4:4の時の信号フォーマットと、4:2:2の時の信号フォーマットを示す。このように4:2:2の時の信号フォーマットでは色差信号を2本から1本に減らすことが可能である。
【0006】
図6は4:2:2から4:4:4へ変換(デコード)する際のブロック図の例を示す。
【0007】
図6においてFF1はフリップ・フロップであり、図示していないがクロック信号分入力信号を遅らせる働きをする。またLH2はロード・ホールドであり、UV選択信号がH期間のみ、FF1同様図示していないクロック信号分入力信号を遅らせる。LH3も同様である。UV選択信号がL期間では出力は変化させない。FFもLHもデジタル回路の基本要素でありデジタル技術者の間では周知のものである。
【0008】
前記したように多重化された色差信号をFF(フリップ・フロップ)で遅延させ、LH(ロード・ホールド)で取り出すことで4:4:4へのデコードが可能となる。
【0009】
図7に図6で示したブロック図の入出力信号のタイミング図を示す。信号は回路内のFFやLHの遅延回路によって遅れたものが出力されるが、通常この遅れにあわせて他の信号、たとえば同期信号や輝度信号も遅らせて遅延調整を行っている。なお、このような遅延調整は周知のことであるため図中では省略している。
【0010】
ところで、図7に示したように、このままでは色信号が偶数番目と奇数番目で2画素ずつ同一の値が続いてしまう。たとえば、LH2の出力はU0、U0、U2、U2という具合である。図5に示したような4:4:4フォーマットの場合V0、V1、V2,U3と信号が出力する場合、U1,U3といった奇数番目の信号が入力時点で削られているためである。その結果、前記したデコード後の信号を画像としてみると色の変わり目等ががたがたとした不自然な画像となる。
【0011】
そこで従来の色トランジェント補正装置では奇数番目の画素において前後の画素から補間するという方法がとられていた(例えば、特許文献1参照)。補間に用いる代表的なものとしては下記数1の線形補間がある。
【0012】
【数1】

【0013】
ここで、nはn=0,1,2,3,…である。このように前後の画素を足して2で割ることで不自然ながたがたとした画像となることを改善していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開2003‐8865号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
しかしながら従来の映像信号処理装置では、色の帯域が制限されたままであり、色にじみが生じてしまうという問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
前記従来の課題を解決するために、本発明の映像信号処理装置は、入力同期信号から色差選択信号を生成し、前記色差選択信号を1水平同期周期毎および1垂直同期周期毎に反転させて出力する色差選択信号生成手段と、前記色差選択信号に基づき、第一の入力色差信号と第二の入力色信号とを時分割多重した多重色差信号を生成する色差信号選択手段と、前記色差選択信号に基づき、前記多重色差信号から第一の中間色差信号と第二の中間色差信号とを生成する色差信号分離手段と、前記色差選択信号に基づき、前記第一の中間色差信号を補間し第一の出力色差信号を生成し、また、前記第二の中間色差信号を補間し第二の出力色差信号を生成する補間手段と、を備える。
【0017】
また、本発明の映像信号処理方法は、入力同期信号から色差選択信号を生成し、前記色差選択信号を1水平同期周期毎および1垂直同期周期毎に反転させて出力するステップと、前記色差選択信号に基づき、第一の入力色差信号と第二の入力色信号とを時分割多重した多重色差信号を生成するステップと、前記色差選択信号に基づき、前記多重色差信号から第一の中間色差信号と第二の中間色差信号とを生成するステップと、前記色差選択信号に基づき、前記第一の中間色差信号を補間し第一の出力色差信号を生成し、また、前記第二の中間色差信号を補間し第二の出力色差信号を生成するステップと、を備える。
【0018】
本発明の映像信号処理装置、映像信号処理方法によれば、色差信号のフォーマット変換においてサンプリングする画素と間引く画素を水平同期周期と垂直同期周期で反転させるため、回路規模が比較的小さく簡易な構成で、色差信号のフォーマット変換を行うことによって生じる色にじみを抑制した映像信号処理装置を提供することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明の映像信号処理装置、映像信号処理方法によれば、色差信号のフォーマット変換においてサンプリングする画素と間引く画素を水平同期周期と垂直同期周期で反転させるため、回路規模が比較的小さく簡易な構成で、色差信号のフォーマット変換を行うことによって生じる色にじみを抑制した映像信号処理装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施例1における映像信号処理装置の構成を示すブロック図
【図2】本発明の実施例1における映像信号処理装置の各手段に入出力される信号のタイミング図
【図3】本発明の実施例1における色差信号選択手段の動作を示す図
【図4】本発明の実施例1におけるUV選択信号反転手段の一例を示す回路図
【図5】4:4:4と4:2:2のフォーマットを示す図
【図6】色差信号分離手段の一例を示す回路図
【図7】色差信号分離手段に入出力される信号のタイミング図
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下本発明を実施するための形態について、図面を参照しながら説明する。
【実施例1】
【0022】
図1は、本発明の実施例1に係わる映像信号処理装置110の構成の一例を示すブロック図である。
【0023】
映像信号処理装置110は、UV選択信号生成手段101、UV選択信号反転手段102、色差信号選択手段103、色差信号分離手段104、補間手段105・106から構成される。
【0024】
また、図2は映像信号処理装置110の各手段に入出力される信号のタイミング図である。パターンAとパターンBでは、映像信号処理装置110の各手段の入出力信号が異なるが、同期反転UV選択信号が互いに反転していることに起因するものであり、映像信号処理装置110の各手段はいずれのパターンであっても同じ動作を行うので、特に断らない限り、パターンAについて以降説明を行うようにする。
【0025】
図1において、入力信号は4:4:4フォーマットの信号であり、その信号およびタイミングは図2に示した入力色差信号U、入力色差信号V、入力水平同期信号HSのようになっている。
【0026】
UV選択信号生成手段103は、後述するUV選択信号反転手段102からの同期反転UV選択信号に従い、入力色差信号U、入力色差信号Vの一方を選択して、図2の多重色差信号Cを出力する回路である。
【0027】
色差信号分離手段104は、UV選択信号反転手段102からの同期反転UV選択信号に従い、多重色差信号CからU、Vの信号を抜き取り、図2の中間色差信号U、中間色差信号Vを出力する回路である。
【0028】
補間手段105・106は、UV選択信号反転手段102からの同期反転UV選択信号に従い、中間色差信号U、中間色差信号Vから出力色差信号U、出力色差信号Vのように出力する回路である。出力色差信号U、出力色差信号Vにおける(U1)、(U3)、・・・、(V1)、(V3)、・・・については後述する。
【0029】
UV選択信号生成手段101は、入力水平同期信号HSおよび入力垂直同期信号VSを受け取りUV選択信号を出力するものである。
【0030】
具体的回路例は、当該分野のデジタル技術者には周知のものであるため回路図を用いた詳細な説明は省くが、映像信号に対応したクロック信号(ブロック図中では省略)をクロック入力とする1ビットのFFと、そのFFの出力に1を加算し、その結果を同期信号でリセットがかかるようにセレクタを通した後、前記したFFに入力するように構成すれば基本的回路を作ることが可能である。ただし実際の回路の遅延にあわせた遅延調整は必要である。また、ソフトウエアで作成する場合では色差信号は通常、配列で表現されるため、配列の添え字を参照し偶数か奇数かで判断することで可能となる。
【0031】
UV選択信号反転手段102は、入力水平同期信号HSおよび入力垂直同期信号VSに基づき、前記UV選択信号を反転し同期反転UV選択信号を出力する手段である。
【0032】
図4はUV選択信号反転手段102の具体的回路例である。水平同期信号とその1クロック遅延信号の反転の論理和をとり、水平同期立ち上がり信号を生成し、映像信号に対応したクロック信号(ブロック図中では省略)をクロック入力とする1ビットのFFと、そのFFの出力と水平同期立ち上がり信号の排他的論理和を前記FFに入力することで、水平同期信号の周期で1、0を繰り返す水平同期トグル信号を生成する。水平同期トグル信号と同様な構成で生成する垂直同期信号の周期で1、0を繰り返す垂直同期トグル信号を生成する。UV信号と前記水平同期トグル信号との排他的論理和を求め、その値と垂直同期トグル信号の排他的論理和を求めることで、同期反転UV選択信号を生成する。
【0033】
色差信号選択手段103は、入力色差信号Uと入力色差信号Vとを前記同期反転UV選択信号に基づき時分割多重した色差信号(多重色差信号C)として出力する。
【0034】
具体例としては、前記同期反転UV選択信号を選択信号として、前記入力色差信号Uと前記入力色差信号Vを1クロック遅延させた信号とを切り替えるセレクタで実現できる。
【0035】
図3は色差信号選択手段103の動作と従来技術の比較を表した図である。
【0036】
本実施例によるとサンプリングする画素、間引く画素が千鳥状に配列され、それが垂直同期周期で反転する。一方、従来技術では水平方向にサンプリングする画素と間引き画素が交互に配列されており、常に同一の画素が選択、間引きされる。
【0037】
色差信号分離手段104は前記多重色差信号Cを前記同期反転UV選択信号に基づいて、中間色差信号Uと中間色差信号Vとに分離する手段である。これは前述したように図6に示す回路で実現できる。
【0038】
補間手段105は、前記中間色差信号Uと前記同期反転UV選択信号を入力し、前記同期反転UV選択信号に応じて、サンプリングする画素か間引く画素かを判断し、該当画素が間引く画素である場合には、図3の間引き画素の部分の信号を上下左右の画素データ(Uデータ)から補間して出力色差信号Uを出力する。出力色差信号U、出力色差信号Vにおける(U1)、(U3)、・・・、(V1)、(V3)、・・・は図3の間引き画素の部分の信号を上下左右の画素データ(Uデータ)から補間した信号である。補間式には一例として数2の線形補間がある。
【0039】
【数2】

【0040】
ただし、U(x、y)は水平同期信号からのx番目、垂直同期信号からy番目の画素ということをあらわしている。
【0041】
補間手段106も補間手段105同様であり、扱う信号がUからVに変わるだけである。
【0042】
以上、本発明の映像信号処理装置、映像信号処理方法によれば、色差信号のフォーマット変換においてサンプリングする画素と間引く画素を水平同期周期と垂直同期周期で反転させるため、回路規模が比較的小さく簡易な構成で、色差信号のフフォーマット変換を行うことによって生じる色にじみを抑制した映像信号処理装置を提供することができる。
【0043】
なお、本発明は、上述の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範囲を逸脱しない限り、種々の設計上の変更が可能であるのは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明にかかる映像信号処理装置は、色差信号のフォーマット変換を行うことによって起こる、色差信号の色にじみを抑止することができ、映像信号処理装置、映像信号処理方法において有用である。
【符号の説明】
【0045】
1 FF(フリップ・フロップ)
2、3 LH(ロード・ホールド)
101 UV選択信号生成手段
102 UV選択信号反転手段
103 色差信号選択手段
104 色差信号分離手段
105、106 補間手段
110 映像信号処理装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力同期信号から色差選択信号を生成し、前記色差選択信号を1水平同期周期毎および1垂直同期周期毎に反転させて出力する色差選択信号生成手段と、
前記色差選択信号に基づき、第一の入力色差信号と第二の入力色信号とを時分割多重した多重色差信号を生成する色差信号選択手段と、
前記色差選択信号に基づき、前記多重色差信号から第一の中間色差信号と第二の中間色差信号とを生成する色差信号分離手段と、
前記色差選択信号に基づき、前記第一の中間色差信号を補間し第一の出力色差信号を生成し、また、前記第二の中間色差信号を補間し第二の出力色差信号を生成する補間手段と、
を備える映像信号処理装置。
【請求項2】
前記補間手段は、
前記第一の中間色差信号を補間、また、前記第二の中間色差信号を補間するに際し、
前記補間する画素を上下左右の画素から補間する
ことを特徴とする請求項1記載の映像信号処理装置。
【請求項3】
入力同期信号から色差選択信号を生成し、前記色差選択信号を1水平同期周期毎および1垂直同期周期毎に反転させて出力するステップと、
前記色差選択信号に基づき、第一の入力色差信号と第二の入力色信号とを時分割多重した多重色差信号を生成するステップと、
前記色差選択信号に基づき、前記多重色差信号から第一の中間色差信号と第二の中間色差信号とを生成するステップと、
前記色差選択信号に基づき、前記第一の中間色差信号を補間し第一の出力色差信号を生成し、また、前記第二の中間色差信号を補間し第二の出力色差信号を生成するステップと、
を備える映像信号処理方法。
【請求項4】
前記前記第一の中間色差信号を補間し第一の出力色差信号を生成するステップ、また、前記第二の中間色差信号を補間し第二の出力色差信号を生成するステップは、
前記補間する画素を上下左右の画素から補間する
ことを特徴とする請求項3記載の映像信号処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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