説明

映像処理装置及び映像処理方法

【課題】複数の映像ソースの提供映像を処理して被写体を追尾する際、映像ソースの切り替え頻度を最小限に抑えてユーザの利便性を向上させること。
【解決手段】映像表示装置100は、多視点映像を選択して受信するIPインターフェース部101と、撮影範囲の異なる複数の映像ソースから1つを選択するためにIPインターフェース部101に指示を送る多視点映像選択指示部104を備える。被写体抽出部109は映像データから、指定された被写体を検出して被写体の画像データを抽出する。画面切り出し範囲決定部110は、被写体像を含むように画面切り出し範囲を決定する。制御部107は映像データに基づいて、移動する被写体像を画面に表示可能な時間を算出して当該時間が最長となるように映像データの選択制御を行い、被写体を追尾して表示部113に表示させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多視点映像情報を処理する映像処理装置及び映像処理方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
本格的なデジタル放送時代を迎え、様々な次世代放送システムの研究開発が行われている。その中の1つに、多数のカメラを配置して撮影した映像のデータを配信し、視聴者が映像ソース(カメラ映像)から所望の映像を自由に選択できる「多視点映像システム」が挙げられる。特許文献1に開示された技術では、多視点映像が放送ストリームに多重化されて送信され、受信装置で任意の視点映像を取り出して映像表示する。
【0003】
また、個々のカメラからの映像については高画角、高解像度の映像データがそれぞれ提供され、映像処理装置で自由に範囲を切り出して映像表示部に表示することが想定される。図10(A)は、被写体A乃至C(符号1304乃至1306参照)を撮影するため、その周囲に多視点用カメラを配置した例を示す。複数台のカメラのうち、カメラA乃至Cに符号1301乃至1303を付して示す。図10(B)には、カメラB1302の視野に対応する撮影範囲1402及びカメラA1301の視野に対応する撮影範囲1403を示す。撮影範囲1402内には被写体A乃至Cが存在し、撮影範囲1403内には被写体A及びBが存在する。
【0004】
映像処理装置は画面切り出し範囲1401にて被写体を含む画面の切り出しを行って当該範囲の映像を表示する。例えば、カメラB1302で撮影した映像において被写体B1305を含むように画面の切り出しが行われる場合、その被写体像が画面中央に表示される。一方、カメラA1301で撮影した場合、被写体A1304及びB1305は撮影範囲1403内に収まっているので、画面の切り出しにより各被写体像を画面中央に表示可能である。しかし、被写体C1306は撮影範囲1403内に収まっていない。このため被写体C1306の映像を画面中央に表示する場合、カメラBやCから提供される映像を使用する必要がある。このように多視点映像システムにおいては視聴者が視聴を望む範囲に応じて使用する映像ソース及び画面切り出し範囲の選択が必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平5−130528号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前述の映像を処理する映像処理装置において、映像選択方法としては、視聴者の操作指示によって映像ソース及び表示範囲を選択することが考えられる。例えばスポーツ番組等のように、場所が頻繁に変わる番組を視聴者が視聴する場合、操作を頻繁に行う必要があるため操作上の負担が大きい。
そこで装置側で自動的に表示範囲を選択するために、視聴者が指定した特定の被写体を追尾して常に画面中央に表示する機能をもつ映像処理装置が考えられる。該装置が被写体を検出して、その被写体像を画面中央に捉えるように映像ソースを選択し、表示範囲を選択すれば、視聴者は操作なしに所望の映像を視聴できる。今後、次世代のデジタル放送サービスとして多視点映像サービスがさらに普及し、上記機能を備えた装置の台頭が予想される。
【0007】
映像処理装置が映像ソースを選択し直すことで、所望の被写体像を画面中央に表示し続けることが可能となる。その際に映像ソースの選択方法によっては、被写体の動きに合わせて頻繁に映像ソースが切り替わってしまうという事態が起こり得る。頻繁に映像ソースが切り替わると視聴者にとっては非常に見難い映像が表示されてしまう虞がある。
そこで本発明は、映像ソースの切り替えを最小限に抑えてユーザの利便性を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために本発明に係る装置は、撮影範囲の異なる複数の映像データを処理して、指定された被写体を追尾する映像処理装置であって、前記映像データから前記指定された被写体の画像データを抽出する抽出手段と、前記指定された被写体の移動を検出して動き予測処理を行い、前記複数の映像データのそれぞれの撮影範囲内に当該移動する被写体が含まれる時間を算出し、算出した時間に基づいて当該被写体を画面に表示すべく前記複数の映像データから1つの映像データを選択する制御を行う制御手段と、を備える。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、指定された被写体の追尾処理において、画面の切り替わり頻度を低減することで、視聴者が見易い映像を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図2乃至6と併せて本発明の第1実施形態を説明するために、装置の構成例を示すブロック図である。
【図2】多視点映像に関するカメラ配置例を示す概略図である。
【図3】処理例を示すフローチャートである。
【図4】カメラAの撮影範囲と画面切り出し範囲の説明図である。
【図5】カメラA乃至Cの各撮影範囲と画面切り出し範囲の説明図である。
【図6】被写体の動きベクトルの説明図である。
【図7】本発明の第2実施形態に係るカメラ配置と被写体の移動を示す説明図である。
【図8】図9と併せて本発明の第3実施形態を説明するために、サーバの処理例を示すフローチャートである。
【図9】映像表示装置の処理例を示すフローチャートである。
【図10】多視点映像システムの説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[第1実施形態]
図1は本発明の第1実施形態に係るシステムの構成例を示すブロック図である。本例では、デジタル放送局の配信装置としてのIP(Internet Protocol)放送サーバ(以下、単にサーバという)と、映像処理装置としての映像表示装置を示す。
まず多視点映像データをサーバ200から取得するブロックについて説明する。映像表示装置100は、そのIPインターフェース部101がデジタル放送局の多視点映像データを提供するサーバ200に対し、TCP/IPプロトコルを使ってインターネット経由で接続される。図1にはサーバ200が配信する多視点映像データのうち、3つの視点映像データを代表して示す。IPインターフェース部101はサーバ200からデータを受信して復号化し、IP・TS(トランスポートストリーム)処理部102に出力する。またIPインターフェース部101はサーバ200への要求を出力する。
【0012】
IP・TS処理部102は暗号化されたTS信号を取り出し、暗号化を解除した信号をIP・MPEGデコード部103に出力する。MPEGは"Moving Picture Experts Group"の略号である。IP・MPEGデコード部103は圧縮された映像データを伸長し、これを被写体選択用の映像データとして被写体抽出部109に出力する。IP・MPEGデコード部103は出力映像生成部111にも伸長後の映像データを出力する。
【0013】
次に、被写体の選択及び追尾のために画面切り出し範囲を決定するブロックについて説明する。リモートコンローラ(以下、リモコンという)105はユーザが映像表示装置100への操作指示を送信する際に使用する。ユーザがリモコン105を使用して被写体を選択する際、リモコン105からの信号をリモコン信号受信部106が受信して操作指示信号を制御部107に出力する。制御部107は、ユーザの操作指示を受けて被写体を決定し、被写体選択部108は、複数の被写体から選択された被写体の情報(被写体情報)を保持する。被写体情報は画面切り出し範囲決定部(以下、範囲決定部という)110に送られ、範囲決定部110は被写体情報に基づいて画面切り出し範囲を決定する。画面切り出し範囲の情報は出力映像生成部111に送信される。ここではIP・MPEGデコード部103から送られてきた映像データの一部を、切り出し範囲情報に基づいて抽出する処理が行われ、処理後の映像信号が出力処理部112に送出される。出力処理部112の出力する映像信号は表示部113に送られて映像が表示される。
【0014】
制御部107は範囲決定部110からの情報に基づき、多視点映像の選択指示部104を制御する。つまり、映像ソースの切り替えが必要な場合、制御部107は多視点映像の選択指示部104を介してIPインターフェース部101に映像ソースの切り替えを指示する。この指示に従ってIPインターフェース部101は、指示された映像データに変更するために、サーバ200に対して多視点映像の切り替えを要求する。これにより制御部107が選択した映像ソースが提供するデータへの変更制御が行われる。なお各映像ソースは、撮影範囲の異なるカメラでの撮影により提供される映像データを含む。
【0015】
図2は映像ソースを提供するカメラの配置例を示す。例えば競技場の周囲に、撮影範囲が異なる複数台のカメラが配置されていて、各カメラで撮影した映像が多視点映像として放送局から供給されるものとする。カメラA乃至C(符号201乃至203参照)は、黒点で示す被写体204を撮影すべく、矩形状をした競技場の周囲にて一方の長辺方向に沿って互いに隣接して配置されている。また後述の第2実施形態にて説明するカメラD(符号205参照)は、競技場を挟んでカメラA乃至Cとは反対側でカメラBと対向する場所に配置されている。
【0016】
映像表示装置100がIPインターフェース部101からサーバ200に対してカメラAの視点映像(A視点映像)の映像データを要求した場合(図1参照)、サーバ200からカメラA201により撮影された映像データが供給される。同様に、サーバ200に対してカメラB202の視点映像(B視点映像)や、カメラC203の視点映像(C視点映像)を映像表示装置100がサーバ200に要求すれば、各視点映像のデータが供給される。これらの映像を表示部113が表示することで多視点映像システムを実現でき、視聴者に所望の視点映像を提供できる。
【0017】
次に図3のフローチャートを用いて、映像表示装置100の動作を説明する。なお、以下の処理は該フローチャートに従って作成されたプログラムを制御部107が解釈して実行することで実現される。まず制御部107は、表示映像に関する映像ソースの選択をユーザに促すために選択画面を表示部113に表示させる(S301)。この場合、表示画面上に選択肢を提示してユーザに選択させるか、あるいは、予め定められた映像ソースを表示してもよいし、放送局側で初めに表示する映像ソースを指定してもよい。次に制御部107はユーザに対し、所望の被写体を選択させる処理を実行する(S302)。ユーザが被写体を選択する方法として、例えば制御部107は、ユーザ操作によって画面の一部を範囲指定させるように制御し、指定された範囲の画像認識によって被写体を特定して該被写体のデータを登録する。あるいはメタデータによって与えられている情報(選手情報等)に基づいて、制御部107は、ユーザに対して所望の被写体を選択させるように制御してもよい。
【0018】
被写体の選択後、被写体抽出部109は選択された被写体の画像データを抽出する。範囲決定部110は、現時点で選択されている映像ソースから提供される映像の一部を切り出して、被写体像が画面中央に表示されるように画面切り出し範囲を設定し(S303)、表示部113に映像を表示する。次の処理で制御部107は被写体が動いたか否かを判定する(S304)。その結果、被写体が動いたと判定された場合、S305に進むが、被写体に動きがないと判定された場合にはS304の判定処理が繰り返される。
【0019】
次に制御部107は現時点の映像ソースにて被写体像を画面中央で表示可能か否かを判定する(S305)。被写体像を画面中央で表示可能であると判定された場合(YESに分岐)、S303に戻り、範囲決定部110は、画面切り出し範囲を変更する。図4は、カメラA201を用いて被写体204を撮影した映像ソースの映像を使用する場合にカメラ位置と画面切り出し範囲401、撮影範囲402を示す。なお撮影範囲402は映像ソースの提供する映像データに基づいて算出及び判定可能であり、または当該範囲を示す情報をサーバ200から取得可能である。各カメラの撮影範囲は、例えば、カメラの座標位置と、カメラの撮影方向と、カメラの画角(撮影範囲の角度)によって定められる。表示部113の表示範囲に対応する画面切り出し範囲401は被写体204を画面中央に含むように設定される。被写体204の移動により被写体の位置がカメラA201の撮影範囲402を超えてしまい、画面中央に被写体像を表示できなくなった場合、被写体像を画面中央に表示できるように映像ソースの切り替えが必要である。この時の映像ソースの選択処理を以下に説明する。
【0020】
例えば、選択していたカメラA201による映像ソースでは、被写体像を画面中央に表示し得なくなった場合(S305にてNOに分岐)、制御部107は別の映像ソースを検索する処理を行う。つまり被写体像を画面中央で表示可能な映像ソースが検索される。変更前と同じ範囲で画面切り出しが可能な映像ソースの検索方法としては、映像から画像認識で行う方法や、画面切り出し時の座標データに基づいて同じ範囲で画面切り出しが可能な映像ソースを検索する方法がある。また各映像ソースのカメラ位置情報と画角情報を取得し、両情報に基づいて画面切り出しが可能な範囲を計算で求める方法でもよい。
【0021】
図5(A)は、被写体204を含む画面切り出し範囲501がカメラAの撮影範囲402の外に移動する時点で次に切り替えるべき映像ソースの選択処理を説明する図である。画面切り出し範囲501は、被写体204を画面中央に表示可能な範囲を示し、当該範囲の映像を提供可能な次の映像ソースは、カメラB202で撮影した映像ソースである。つまり画面切り出し範囲501はカメラB202の撮影範囲502内であって、カメラC203の撮影範囲503の外である。図3のS307にて制御部107は、被写体像を画面中央に表示可能な画面切り出し範囲を撮影範囲内に含む映像ソースの数を算出して、その数が2以上であるか否かを判定する。図5(A)にて被写体204がカメラA201の撮影範囲402の外に出た直後において、前記映像ソースの数は1であり、NOの方向へ進む。ここで当該映像ソース、つまりカメラB202で撮影した映像を供給する映像ソースが選択され(S310)、S311に進む。
【0022】
一方、S307にて、被写体像を画面中央に表示可能な画面切り出し範囲を撮影範囲内に含む映像ソースの数が2以上の場合、S308に進む。図5(B)は、被写体204を含む画面切り出し範囲601が、カメラB202の撮影範囲502内であって、かつカメラC203の撮影範囲503内である例を示す。被写体204を画面中央に含む映像については、カメラB、Cによる各映像ソースで表示可能である。この場合、制御部107は映像ソースの切り替え回数が極力少なくなるように映像ソースを選択する。具体的には図3のS308にて制御部107は被写体の動き予測処理を行い、動きベクトルを算出する。次に制御部107は、算出した動きベクトルの方向及び大きさに基づいて、表示可能時間が最も長い映像ソースを選択する(S309)。動きベクトルの算出処理については、被写体の移動軌跡をメモリに記憶しておき、このデータに基づいて算出するか、被写体の座標情報の他、移動方向や移動速度等の情報がメタデータとして与えられる場合に、当該データを用いて算出可能である。また「表示可能時間」は、画面切り出し範囲が各カメラの撮影範囲内に滞留可能な時間を、動きベクトルに基づいて予測することで算出可能である。
【0023】
図6は、動きベクトルに基づく映像ソースの判定処理例を説明する図である。図6(A)の例では、矢印で示すように動きベクトル701が図の右方を向いており、制御部107は、その方向に被写体204が動いた場合、先に画面切り出し処理が出来なくなる映像ソースを判断する。動きベクトル701の方向に被写体204が移動し続けたとすると、先に画面切り出し処理が不可能になるのは、カメラB202による映像ソースである。カメラC203による映像ソースを用いる方がより長い時間、被写体像を表示し続けることができる。そのため、映像ソースの切り替え頻度を低減し、より長く映像を映すことが可能なカメラC203で撮影した映像を供給する映像ソースが選択されることになる。
【0024】
図6(B)は、動きベクトル801が図の下方を向いている場合を例示する。被写体204を画像中央にて長時間に亘って表示し続けることが可能な映像ソースは、カメラC203ではなくカメラB202で撮影したものである。よって、この場合、カメラB202で撮影した映像を供給する映像ソースが選択される。
図3のS309又はS310の後、S311に進む。ここで制御部107は多視点映像の選択指示部104を介してIPインターフェース部101に対し、前記ステップS309又はS310で選択した映像ソースへの切り替えを指示する。IPインターフェース部101は当該映像ソースの映像に切り替える。
第1実施形態によれば、映像ソースの切り替え回数を最小限に抑えつつ、所望の被写体を追尾できる。
【0025】
[第2実施形態]
次に本発明の第2実施形態を説明する。なお第2実施形態に係る装置の構成は第1実施形態の場合と同様であるため、以下では相違点を主に説明する。
図7は、カメラA乃至Cとは反対側にカメラD(符号205参照)を配置した場合の映像ソース選択処理を説明する図である。図中の撮影範囲901はカメラD205が撮影する範囲を示す。
【0026】
図7(A)は最初にカメラA201から供給される映像を使用していた場合を例示する。ここで被写体204が動きベクトル801に示す方向(図の下方)に移動したため、カメラA201による映像ソースでは、画面切り出し範囲601の映像が供給できなくなった状況を想定する。この場合、第1実施形態と同様に映像ソースの切り替えを必要とするが、動きベクトル801の方向から分かるように、最長時間に亘って被写体204の映像を表示可能な映像ソースは、カメラB202とカメラD205によるものである。しかし、カメラA201の映像からカメラD205の映像に切り替わると、それまでの映像と比べて、被写体像の移動の向きが反対になってしまう。このような映像の切り替えが自動で行われると、視聴者には被写体像の移動方向が分かり難くなり、視聴の妨げとなる可能性がある。そこで制御部107は、被写体の移動の向きが変わってしまう映像ソースに対して選択時の優先度を下げる。図7(A)の例で優先順位を1乃至3で表すと、優先度1はカメラB202で撮影した映像であり、優先度2はカメラC203で撮影した映像、優先度3はカメラD205で撮影した映像となる。
【0027】
図7(B)は、カメラB202が存在しない場合を例示する。被写体204が、動きベクトル801を示す矢印の向きに移動した場合、カメラA201による映像ソースからカメラC203による映像ソースに切り替わる。すなわち被写体204の画像を画面中央にて、より長時間表示可能なカメラD205の映像は優先順位が低いために選択されず、画面上で被写体像の移動の向きが変わらないカメラC203で撮影した映像が優先的に選択されて表示される。
【0028】
第2実施形態によれば、変更前の映像ソースにおける被写体の移動方向と、変更後の映像ソースにおける被写体の移動方向が変化しないか、又は変化量が小さくなるように映像ソースの選択制御が行われる。これにより視聴者にとって違和感の少ない映像ソースの切り替えを実現できる。
【0029】
[第3実施形態]
次に本発明の第3実施形態を説明する。本実施形態では、映像データの供給元である送信装置から受信装置に対し、選択すべき映像ソースを指定する処理例を示す。なお第3実施形態に係る装置の構成は第1実施形態の場合と同様であるため、以下では相違点を主に説明する。本実施形態においても映像ソースの選択基準については前記実施形態の場合と同じであるが、判断主体が映像表示装置100の制御部107ではなく、配信装置の制御部である点で相違する。図1にて映像表示装置100はユーザ操作に従って選択された被写体の情報をサーバ200に通知する。サーバ200のシステム制御部210は、使用すべき映像ソースの映像データ及び表示範囲に対応する画面切り出し範囲の指示情報を映像表示装置100に送信する際の送信制御機能を有する。映像表示装置100はそれらの情報に基づいて映像ソースの切り替えと表示を行う。
【0030】
図8のフローチャートを用いて、サーバ200の処理例を説明する。なお、以下の処理はシステム制御部210によって解釈及び実行されるプログラムに従って実現される。S304、S305、S307乃至310の処理はシステム制御部210が行うことを除いて、図3に示す第1実施形態の場合と同様であり、以下では相違点であるS1101乃至S1103、S1110を説明する。
【0031】
サーバ200のシステム制御部210は、映像表示装置100に対して映像ソースを指示する(S1101)。システム制御部210は、映像表示装置100から被写体情報を受け取り(S1102)、指定された被写体が画面中央に表示されるように画面切り出し範囲を決定する。そしてシステム制御部210は、被写体像を画面中央に含む画面切り出し範囲を示す指示情報を、映像表示装置100に送信すべく制御する(S1103)。その後、S304の処理(被写体の移動検出)に進み、S305での判定結果がNOの場合、S307以降の処理が実行される。
【0032】
S309又はS310の後、システム制御部210は、選択した映像ソースへの切り替えを映像表示装置100に指示すべく送信制御を行う(S1110)。
次に図9のフローチャートを用いて映像表示装置100の処理例を説明する。なお、以下の処理は制御部107によって解釈及び実行されるプログラムに従って実現される。
前記S1101での映像表示装置100への指示に従い、制御部107は映像ソースの選択を制御する(S1201)。次にユーザの操作指示を受けて被写体の選択処理が行われる(S1202)。被写体の選択方法は第1実施形態の場合と同様である。制御部107は、選択された被写体を示す被写体情報をサーバ200に通知する制御を行う(S1203)。前記S1103での指示に従って、範囲決定部110は画面切り出し範囲を決定し、表示部113は当該範囲の映像を表示する(S1204)。
【0033】
その後、サーバ200のシステム制御部210は、被写体の動き(移動速度)を検出し(図8のS304参照)、被写体が動いたか否かを判定する。図8のS305乃至310を経てS1110に到達すると、サーバ200のシステム制御部210は、選択した映像ソースを映像表示装置100に指示する。映像表示装置100の制御部107はこの指示を受けて、映像ソースの変更について判定する(S1205)。その結果、当該指示が映像ソースの変更指示と判定された場合(YESに分岐)、制御部107は多視点映像の選択指示部104を介してIPインターフェース部101に指示を送る。これにより、指示された映像ソースに変更され(S1206)、S1207に進む。またS1205にて映像ソースの変更指示でないと判定された場合(NOに分岐)、S1207に進む。ここで制御部107は画面切り出し範囲の変更指示があったか否かを判定し、当該範囲の変更指示があればS1208に進む。ここで範囲決定部110は画面切り出し範囲を変更し、表示部113は当該範囲の映像を表示する。そしてS1205に戻る。またS1207にて画面切り出し範囲の変更指示がないと判定された場合にはS1205に戻る。
第3実施形態では、配信装置にて被写体の追尾を行い、映像ソースの選択指示及び画面切り出し範囲の指示を映像表示装置に送る。これにより映像表示装置にて画面切り替えの頻度を最小限に抑えつつ、被写体像を常に画面中央に表示し続けることができる。
【0034】
[その他の実施形態]
また、本発明は、以下の処理を実行することによっても実現される。即ち、上述した実施形態の機能を実現するソフトウェア(プログラム)を、ネットワーク又は各種記憶媒体を介してシステム或いは装置に供給し、そのシステム或いは装置のコンピュータ(またはCPUやMPU等)がプログラムを読み出して実行する処理である。
【符号の説明】
【0035】
100:映像表示装置
101:IPインターフェース部
104:多視点映像の選択指示部
107:制御部
108:被写体選択部
109:被写体抽出部
111:出力映像生成部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮影範囲の異なる複数の映像データを処理して、指定された被写体を追尾する映像処理装置であって、
前記映像データから前記指定された被写体の画像データを抽出する抽出手段と、
前記指定された被写体の移動を検出して動き予測処理を行い、前記複数の映像データのそれぞれの撮影範囲内に当該移動する被写体が含まれる時間を算出し、算出した時間に基づいて当該被写体を画面に表示すべく前記複数の映像データから1つの映像データを選択する制御を行う制御手段と、を備えることを特徴とする映像処理装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記移動する被写体の座標情報及び動きベクトルに基づいて、前記複数の映像データのそれぞれの撮影範囲内に当該移動する被写体が含まれる時間を算出することを特徴とする、請求項1記載の映像処理装置。
【請求項3】
前記制御手段は、前記複数の映像データのうち、撮影範囲内に前記移動する被写体が含まれる時間が最も長い映像データを選択することを特徴とする、請求項1又は請求項2記載の映像処理装置。
【請求項4】
前記制御手段は、前記映像データの撮影範囲の外に前記指定された被写体が移動する場合、当該移動する被写体の画像の移動方向が変化しないように、前記複数の映像データから1つの映像データを選択することを特徴とする、請求項1から請求項3のいずれか1項記載の映像処理装置。
【請求項5】
撮影範囲の異なる複数の映像データを処理して、指定された被写体を追尾する映像処理方法であって、
前記映像データから前記指定された被写体の画像データを抽出する抽出ステップと、
前記指定された被写体の移動を検出して動き予測処理を行い、前記複数の映像データのそれぞれの撮影範囲内に当該移動する被写体が含まれる時間を算出する算出ステップと、
前記算出ステップで算出した時間に基づいて前記移動する被写体を画面に表示すべく前記複数の映像データから1つの映像データを選択する選択ステップとを有することを特徴とする映像処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−182160(P2011−182160A)
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−43967(P2010−43967)
【出願日】平成22年3月1日(2010.3.1)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】