説明

映像処理装置

【課題】映像信号中に劣化したテロップ文字が含まれる場合でも、良好にアンチエイリアス処理を行いテロップ文字のジャギーを低減すること。
【解決手段】テロップ抽出部2は、映像信号101からテロップ文字を抽出し、テロップの領域を表す2値化したマスク信号102を生成する。テロップ修復部3は、映像信号101を用いてテロップ領域の欠損した画素を復元することでテロップ信号を修復する。平滑化処理部4は、修復されたテロップ信号103に対しテロップの輪郭部のジャギーを低減し、平滑化済みテロップ信号104を生成する。テロップ合成部5は、テロップ信号104と映像信号101とを合成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、テレビジョン信号などの映像信号を入力し、特に解説や字幕等の文字やロゴを含む映像信号より文字やロゴを抽出し、その輪郭を補正する映像処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
テレビジョン番組で、解説や字幕を挿入するために、文字やロゴ等を映像信号と合成(以降、テロップと呼ぶ)して表示することが多い。該テロップの文字やロゴ(以降、テロップ文字と呼ぶ)の輪郭部分で、曲線や斜線箇所が階段状(以降、ジャギーと呼ぶ)となることがある。該ジャギーは、二値階調のテロップ文字を用いた際や、テロップ文字と映像信号との合成時に最隣接法等の拡大処理を行った際や、インタレース信号をプログレッシブ信号に変換(IP変換)する際に発生しやすい。
【0003】
ジャギー発生の原因は、映像の最小単位である画素幅より細かな線を表現ができないことによるもので、これを抑制する方法としてアンチエイリアス処理がある。OSD(On-Screen Display)のように、出力映像作成の段階でテロップ文字を挿入する場合のアンチエイリアス処理では、テロップ合成時に文字輪郭を背景の映像信号と融合するように色を滑らかに変化させることで、ジャギーを目立たなくすることができる。
【0004】
これに対し入力される映像信号に既にテロップ文字が含まれる場合、上記方法はそのまま適用できないため、まず映像信号からテロップ文字を分離してアンチエイリアス処理を行う必要がある。この手法として、レーザープリンタの分野では、検出したエッジと所定のエッジパターンとのマッチングを取り、前記エッジパターンに対応するアンチエイリアス処理の施されたパターンへ置換する方法がある。
【0005】
テロップ文字を含む映像に対してアンチエイリアス処理を行うための従来技術としては、例えば次のものが知られている。特許文献1には、文字画像に対して、斜めエッジを検出して斜めエッジの強調を抑制しながら、注目画素の輝度信号と前記注目画素の近傍の8画素の輝度信号の平均値との差分信号を前記注目画素の輝度信号に加算して輪郭強調することが記載されている。また特許文献2には、レーザープリンタなどにおいて入力する多値画像データを文字部とそれ以外の部分に分離し、分離された文字データに対して斜線や曲線部に発生するジャギーを低減する画像処理を施すことが記載される。
【0006】
【特許文献1】特開2001−292341号公報
【特許文献2】特開平8−023446号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
図8は、従来のアンチエイリアス処理を説明する図である。
(a)は、テロップ文字の斜線箇所に起こるジャギーを示し、白い背景に黒い文字を合成した文字映像を拡大した図である。符号801は、文字映像を構成する画素を表し、白色画素は背景部分、黒色画素は文字部分に対応する。また、符号802は文字の輪郭線を表し、輪郭線が通る画素が文字の輪郭を構成する画素(輪郭構成画素)である。テレビジョンに表示される文字の輪郭は、輪郭線802のように滑らかな直線にはならず、符号803のような階段状の折れ線すなわちジャギーとなる。これは、輪郭線802が、映像の最小単位である画素幅よりも細かな線であるためである。
【0008】
(b)は、アンチエイリアス処理による斜線箇所のジャギー低減例を示す。輪郭構成画素として符号804で示す画素に注目する。該画素804を、輪郭線802によって符号805のように2つの領域に分割する。背景側の白色面積比率を画素面積の67%、文字側の黒色面積比率を画素面積の33%とすると、画素804を占める色は面積比率に等しいため、白色67%と黒色33%を合わせた色となる。例えば、白色の輝度値を255、黒色の輝度値を0とした場合、画素804の輝度値は加重平均された171(=255×0.67+0×0.33)となり、符号806のように灰色輝度の画素とする。
【0009】
同様にして、他の輪郭構成画素に対しても加重平均を適用していくと、(b)のように、輪郭線に沿って段階的な滑らかな輝度、即ちグラデーションとなった画素で輪郭が縁取られる。結果として、グラデーションにより輪郭が暈され、ジャギーを低減することができる。OSDのように入力映像作成の段階でテロップを挿入する場合で、輪郭線情報を持つアウトライン形式等のテロップ文字で合成される場合には、上記アンチエイリアス処理が有効である。しかし、入力される映像信号に既にテロップ文字が含まれる場合、輪郭線情報を持たないため上記方法はそのまま適用できない。
【0010】
一方、テレビジョン放送信号のようなテロップ文字を含む映像信号は、ノイズや符号化処理等で、テロップ文字の画質が劣化している場合が多い。また、IP変換した映像中のテロップ文字は、輪郭が櫛状に劣化している場合が多い。このような劣化したテロップ文字に対するアンチエイリアス処理は、文字自体の画素欠損による劣化だけでなく、テロップ検出精度も下がるため、更に輪郭は劣化しジャギー低減効果が十分得られない。
【0011】
上記特許文献1及び2では、テロップ文字自身の形状は正常であることを前提とし、テロップ文字の劣化については特に考慮されていない。よって各文献記載のアンチエイリアス処理を行っても、テロップ文字のジャギーを良好に補正することは困難である。
【0012】
本発明の目的は、映像信号中に劣化したテロップ文字が含まれる場合でも良好にアンチエイリアス処理を行い、テロップ文字のジャギーを低減する映像処理装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、映像信号に含まれるテロップ文字の輪郭を補正する映像処理装置において、上記映像信号からテロップ文字を抽出し、該テロップ文字の領域か該テロップ文字以外の背景領域かを表す2値化したマスク信号を生成するテロップ抽出部と、該テロップ抽出部により生成されたマスク信号に対し、上記映像信号を用いてテロップ領域の欠損した画素を復元することでテロップ信号を修復するテロップ修復部と、該テロップ修復部により修復されたテロップ信号に対して、上記テロップ文字の輪郭部を平滑化処理しジャギーを低減する平滑化処理部と、該平滑化処理部により平滑化処理されたテロップ信号と上記映像信号とを合成するテロップ合成部とを備える。
【0014】
本発明は、映像信号に含まれるテロップ文字の輪郭を補正する映像処理装置において、上記映像信号からテロップ文字を抽出し、該テロップ文字の領域か該テロップ文字以外の背景領域かを表す2値化したマスク信号を生成するテロップ抽出部と、該テロップ抽出部により生成されたマスク信号に対し、上記映像信号を用いてテロップ領域の欠損した画素を復元することでテロップ信号を修復するテロップ修復部と、該テロップ修復部により修復されたテロップ信号からテロップ文字の輪郭を抽出し、テロップ輪郭信号を生成する輪郭抽出部と、該輪郭抽出部により生成されたテロップ輪郭信号に対して、上記テロップ文字の輪郭部を平滑化処理しジャギーを低減する平滑化処理部と、該平滑化処理部により平滑化処理されたテロップ輪郭信号と上記映像信号とを合成するテロップ合成部とを備える。
【0015】
ここに前記テロップ抽出部は、隣接画素間の輝度差を求め輝度差が所定の閾値より大きい場合にエッジと判定し、該エッジを隣接画素との輝度差が所定の閾値より小さい区間だけ拡張することでテロップ文字の領域を決定する。
【0016】
ここに前記テロップ修復部は、前記マスク信号におけるテロップ領域をそれに隣接する背景領域の画素まで拡大し、さらに拡大したテロップ領域のうち背景領域に隣接する画素分だけ縮小して新たなテロップ領域を生成する。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、映像信号中に劣化したテロップ文字が含まれる場合でも、テロップ文字のジャギーを十分に低減し、見やすく良好な映像を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、各図において同一の符号が付された要素は同一の構成、機能を持つものとし、重複した説明は省略する。
【実施例1】
【0019】
図1は、本発明に係る映像処理装置の第1の実施例(実施例1)を示す構成図である。
映像信号処理部1は、例えば受信した符号化デジタルテレビジョン放送信号100を入力し、これを復号及び復調してデジタル形式の映像信号101を出力する。また、該放送信号100がインタレース信号の場合にはIP変換(インタレース→プログレッシブ変換)し、ディスプレイの画面サイズに応じた映像の拡大もしくは縮小処理した後に、映像信号101を出力する。
【0020】
テロップ抽出部2は映像信号101を入力し、テロップ文字を背景映像から分離して抽出する。そして、テロップ文字に対応する画素については「1」(すなわち有効)とし、テロップ文字以外に対応する画素については「0」(すなわち無効)とするマスク信号102を生成する。テロップ文字の検出処理については後述する。
【0021】
テロップ修復部3はマスク信号102と前記映像信号101とを入力し、ノイズやIP変換等による画質劣化のために抽出精度が低下して生じたテロップ文字中の欠損した画素を補填して、テロップ文字のみの映像信号(テロップ映像信号)を生成する。さらにテロップ映像信号にマスク信号102をマスクビットとして追加し、修復済みテロップ信号103を出力する。テロップ文字の修復処理については後述する。
【0022】
平滑化処理部4は修復済みテロップ信号103を入力し、アンチエイリアス処理を施し、テロップ輪郭部を平滑化しジャギーを低減する。その際アンチエイリアス処理として、信号103のマスクビットが「1」の時にのみ、信号103のテロップ映像信号に対して平均値フィルタを用いて平均化することで、平滑化済みテロップ信号104を生成する。アンチエイリアス処理については後述する。
【0023】
テロップ合成部5は、平滑化済みテロップ信号104と前記映像信号101を入力し、信号104のマスクビットが「1」の時にのみ、映像信号101と、平滑化済みテロップ信号104の映像とを合成する。これにより、劣化したテロップ文字が補正された補正映像信号105が得られる。この補正映像信号105は、表示制御部6を通して映像表示部7にて表示される。映像表示部7には、例えば、液晶ディスプレイパネルやプラズマディスプレイパネルが用いられる。
【0024】
このように本実施例の映像処理装置では、テロップ修復部3と平滑化処理部4を備えることで、映像信号中に劣化したテロップ文字が含まれる場合でも、テロップ文字を修復するとともにジャギーを低減し、見やすく良好な映像に補正することができる。以下、各部の動作について説明する。
【0025】
図2は、テロップ抽出部2の処理動作を模式的に示す図である。
(a)は入力映像(原画像)200を示し、画像中に含まれる「A」という文字テロップを抽出する例である。このテロップ文字は劣化しており、テロップ文字の輪郭や内部にいくつかの画素欠損部を有している。また、テロップ文字の斜線部分には階段状のジャギーを有している。
【0026】
(b)では、テロップ文字のエッジ抽出処理を行う。テロップ抽出は水平走査線方向で順次行うものとする。符号201は抽出したエッジを表す。エッジ抽出処理では、映像信号101の水平に隣接する2つの画素間の輝度差を求め、該輝度差の絶対値が所定閾値より大きい場合にエッジと判定する。通常のテロップ文字は白色や黒色の高輝度または低輝度色で表示されるので、背景映像との輝度差が大きく、これからエッジを判別できる。エッジと判定された領域(符号201の黒色の文字輪郭部分)は、エッジ信号を例えば「1」とする。エッジでないと判定された領域(符号201の白色の背景部分)は、エッジ信号を「0」とする。なお、符号201xの部分は文字輪郭部分の劣化による画素の欠損であり、エッジ信号にも反映されている。また、エッジと判定された画素は、文字周囲の背景画素も含む。
【0027】
(c)では、符号202で示すようにエッジ信号「1」の拡張を行い、テロップ文字の内部領域を決定する。エッジ拡張の方法は、エッジ信号が「1」の画素より始まる矢印方向へ、隣接画素との輝度差の絶対値が所定閾値より小さい区間、テロップ文字内の領域として信号「1」の拡張を行うものである。閾値を適宜設定することで、テロップ文字が単色だけでなく、グラデーションもしくは階調差の緩やかな模様で塗られた場合でも、有効に拡張できる。もしテロップ内部に画素の欠損部があれば、拡張はそこで分断されることになる。
【0028】
(d)では、エッジ拡張により得られたマスク信号(マスク映像)を符号203で示す。黒色部分はテロップ文字領域でマスク信号=「1」、白色部分はテロップ文字以外の領域でマスク信号=「0」に対応する。図では、テロップ文字の輪郭と内部にいくつかの画素の欠損部が存在し、その部分ではマスク信号が欠落し、「1」ではなく「0」のままとなっている。また、絵柄のあるテロップ文字など、前記輝度差の絶対値が閾値より大きい場合はエッジ拡張が行われず、マスク信号は(b)のエッジ部分201のみとなる。なお、テロップ抽出法は上記方法に限るものではない。
【0029】
図3は、テロップ修復部3、平滑化処理部4、及びテロップ合成部5の処理動作を模式的に示す図である。ここでは、抽出したテロップの欠損部を修復し、さらにアンチエイリアス処理によりジャギーを低減する。
(a)は、補正前の映像信号(以降、原画像とも呼ぶ)200と、前記テロップ抽出部2により抽出したマスク映像203を示す。
【0030】
(b)は、マスク映像203を用いて、映像信号(原画像)200より抽出したテロップ映像を符号301で示す。抽出方法として、次の2通り可能である。第1の方法は、マスク映像203より得られるテロップ文字の画素位置に対応した画素を、原画像200から抜き出すことでテロップ映像301を取得するものである。第2の方法は、マスク映像203より得られるテロップ文字の画素位置に対応する画素の輝度と、所定の単色(例えば白色)との輝度差が、所定閾値以内である場合、すべて所定の単色(例えば白色)にて置換する方法である。第2の方法によれば、単色(例えば白色)のテロップ文字に特化したことで、テロップ文字内のノイズ低減効果がある。
【0031】
(c)は、テロップ修復部3により、前記抽出したテロップ映像301の画素の欠損を補填し、符号302に示す修復済みのテロップ文字を得る。すなわち欠損部のマスク信号を「0」から「1」に書き換える。欠損部を復元するために、テロップ領域の拡大処理と縮小処理を行う。拡大処理ではマスク信号が「1」であるテロップ領域をそれに隣接する背景領域の画素まで拡大する。縮小処理では、拡大したテロップ領域のうち背景領域に隣接する画素分だけ縮小する。このようにして新たなテロップ領域を生成する。テロップ映像の修復処理方法は後述する。
【0032】
(d)は、平滑化処理部4により、前記修復済みのテロップ映像302に対して平均値フィルタを用いたアンチエイリアス処理を施すことで、テロップ文字輪郭の平滑化を行う。その結果、符号303で示されるようにジャギー低減され輪郭が平滑化されたテロップ映像を得る。なお、平均値フィルタは、テロップ文字全体に渡って処理されるが、テロップ文字内は、単色やグラデーション、もしくは階調差の緩やかな模様のため、平均化による暈し効果が強調されることはなく、エッジ部分のアンチエイリアス処理効果のみとなる。また、前記テロップ文字以外の模様を持つ場合、例えば絵柄の描かれたテロップ文字等が該当するが、マスク映像は201のエッジ部分のみとなる、すなわち、テロップ文字内の絵柄部分にはエッジ拡張されないため、平滑化処理の対象外となる。故に、平均値フィルタ処理による絵柄の暈し効果を防ぐことができる。
【0033】
(e)は、テロップ合成部5にて、平滑化されたテロップ映像303と原画像200とを合成することで補正画像304を生成する。これより、原画像内の欠損のあるテロップ文字を修復するとともに、テロップ文字の斜線部のジャギーを低減して見やすく良好な補正映像信号105が得られる。
【0034】
図4は、テロップ修復部3のテロップ文字の修復処理を詳細に説明する図である。
(a)は欠損した画素のあるマスク信号を示す図で、図中の碁盤上に仕切られた升目(セル)はマスク信号の画素を表す。黒色セルはテロップ文字画素で「1」信号、また白色セルは背景映像画素で「0」信号を表す。太い線で囲まれた白色セル(符号401で示す)は、画質劣化により欠損した画素を表す。
【0035】
(b)はテロップ領域(マスク領域)の拡大処理を示し、テロップ文字すなわち黒色セルに対し拡張処理を行った様子を示す。ここでは、「黒色セルに隣接する白色セルを黒色セルに置換する」という拡大ルールに従う。なお、隣接するのは縦、横方向だけでなく斜め方向も含めるので、黒色セルに隣接する周囲8個のセルは全て黒色セルになる。拡大処理により、欠損した画素を示す白色セルは、テロップ文字を示す黒色セルへと置換される。図中の斜線が引かれた黒色セル(符号402で示す)は、白色セルより黒色セルに置換されたセルである。
【0036】
(c)は、拡大されたテロップ領域(マスク領域)に対しテロップ領域の縮小処理を示し、黒色セルの縮小(すなわち白色セルの拡大)を行った様子を示す。ここでは、「白色セルに隣接する黒色セルを白色セルに置換する」という縮小ルールに従う。ここでも隣接するのは縦、横方向だけでなく斜め方向も含めるので、白色セルに隣接する周囲8個のセルは全て白色セルになる。縮小処理により、前記(b)の拡大処理により引き伸ばされたテロップ領域を元へ戻す。斜線が引かれた白色セル(符号403で示す)は、黒色セルより白色セルに置換されたセルである。
【0037】
(d)は、以上の処理により得られるテロップ領域(マスク領域)を示す。新たなテロップ領域では、前記(a)において欠損した画素401は、(d)において太い線で囲まれた黒色セルの画素404に修復され、テロップ文字内の画素として復元される。なお、テロップ領域のうち欠損のない画素には何ら変更がなく、上記拡大縮小処理によりテロップ形状が劣化することはない。この時、修復処理により復元された画素は(a)のマスク信号と(d)の修復済みマスク信号の排他的論理和により求まる。
【0038】
次に、以上のマスク信号処理を数式にて表現する。
今、画素位置(i,j)におけるマスク信号をai,j,bi,j,ci,j,di,j∈{0,1}とし、論理和を(+)、二値の級数の論理和をΣ’とする。例えば、e=1、iの値域を[0,3]とすると、この級数の論理和は、
Σ’i=0=e(+)e(+)e(+)e=1(+)1(+)1(+)1=1
となる。
【0039】
黒色セルの拡張処理は、ai,jを元のマスク信号、bi,jを変換後のマスク信号とし、拡張範囲を(Δi,Δj)、ただしΔiの値域を[−K,K]、Δjの値域を[−L,L]とすると、
i,j=Σ’Δi=-K Σ’Δj=-Li+Δi,j+Δj
黒色セルの縮小処理は、ci,jを変換後の修復済みマスク信号として、
i,j=1−Σ’Δi=-K Σ’Δj=-L(1−bi+Δi,j+Δj
が求まる。ここで、ci,jは修復済みテロップ信号103のマスクビットである。
また、復元した画素を示すマスク信号は、ai,jとci,jとの排他的論理和により、
i,j={(1−ai,j)ci,j}(+){ai,j(1−ci,j)}
となる。ここで、di,jは「1」の時に修復、「0」の時は元のマスク信号であることを示す。なお、図4で示した拡大および縮小処理は、一例としてK=1、L=1として説明したものである。
【0040】
次に、テロップ映像の修復処理方法の例を示す。テロップ映像の修復は、(d)の修復された画素位置のテロップ映像の輝度と、該修復された画素と隣接する(a)のマスク信号が「1」の画素位置のテロップ映像の輝度との加重平均にて行われる。ここで、欠損した画素の劣化が激しい場合には、周囲画素の平均輝度のみで置換を行うように、修復された画素の重み係数を0とすればよい。
【0041】
今、画素位置(i,j)において、Δiの値域を[−M,M]、Δjの値域を[−N,N]とした該画素周辺(Δi,Δj)に渡り、加重平均の重み係数wΔi,Δjにて加重平均を行うとする。このとき、画素位置(i,j)における修復前のテロップ映像の輝度をyi,jとし、修復された輝度をYi,jとすると、
i,j=ΣΔi=-M ΣΔj=-Ni,jΔi,Δj δΔi,Δj(i,j)/W,W≠0
i,j=yi,j,W=0
ただし、
W=ΣΔi=-M ΣΔj=-NΔi,Δj δΔi,Δj(i,j)
δΔi,Δj(i,j)=ci+Δi,j+Δji,j
となる。ここで、Yi,jは、修復済みのテロップ信号6のテロップ映像信号である。また、修復済みテロップ信号103は、テロップ映像信号がnビットのデータとした場合、Yi,j+2i,jとなる。
以上の処理により、テロップ修復部のマスク信号およびテロップ映像信号の修復が行われる。
【0042】
以上のように本実施例によれば、劣化したテロップ文字に対してもテロップ文字を修復し、テロップ文字のジャギーを良好に低減することが可能となる。特にテレビジョン放送信号で出現頻度の高い白色テロップに特化することで、テロップ文字上のノイズも低減することが可能となる。
【実施例2】
【0043】
図5は、本発明に係る映像処理装置の第2の実施例(実施例2)を示す構成図である。
本実施例の装置では、前記実施例1(図1)の構成において、テロップ修復部3と平滑化処理部4の間に、輪郭抽出部8を追加して設けたものである。そして、複数色やパターン模様からなるテロップの場合、テロップの輪郭部分だけを修復しテロップ中心部は入力映像をそのまま残すものである。以下、図1と重複する部分は省略、または簡単に説明する。
【0044】
映像信号処理部1には、例えば受信した符号化デジタルテレビジョン放送信号500を入力し、該放送信号を復号及び復調し、IP変換やディスプレイのサイズに応じた映像の拡大もしくは縮小処理した後に、映像信号501を出力する。
【0045】
テロップ抽出部2は映像信号501を入力し、テロップ文字を他の映像から分離して抽出し、テロップ文字に対応するマスク信号502を生成する。テロップ修復部3はマスク信号502と映像信号501を入力し、ノイズやIP変換等による画質劣化のためテロップ文字内の欠損した画素を補填し、マスク信号502をマスクビットとして追加した修復済みテロップ信号503を出力する。
【0046】
輪郭抽出部8は修復済みテロップ信号503を入力し、テロップ文字の輪郭の再抽出を行う。輪郭の抽出では、注目画素を中心に周囲画素との輝度差の絶対値が所定閾値以上の場合に、輪郭領域と判定する。そして、テロップの輪郭形状を表すテロップ輪郭信号504を生成する。テロップ輪郭信号504では、テロップの輪郭領域についてはマスクビット=「1」を、それ以外の領域についてはマスクビット=「0」を割り当てる。よって、テロップの中心部領域は背景領域と同様にマスクビット=「0」となる。テロップ文字の輪郭の再抽出については後述する。
【0047】
平滑化処理部4はテロップ輪郭信号504を入力し、アンチエイリアス処理を施し、テロップ輪郭部を平滑化しジャギーを低減する。その際、信号504のマスクビットが「1」の時にのみ、信号504のテロップ映像信号に対して平均値フィルタを用いて平均化することで、平滑化済みテロップ輪郭信号505を生成する。アンチエイリアス処理については後述する。
【0048】
テロップ合成部5は、平滑化済みテロップ輪郭信号505と前記映像信号501を入力し、輪郭信号505のマスクビットが「1」の時にのみ、映像信号501と、平滑化済みテロップ輪郭信号505の輪郭映像(テロップ輪郭映像)とを合成する。これにより、劣化したテロップ文字の輪郭が補正された補正映像信号506が得られる。この補正映像信号506は、表示制御部6を通して映像表示部7にて表示される。
【0049】
このように本実施例の映像処理装置では、テロップ修復部3と輪郭抽出部8と平滑化処理4とを備えることで、映像信号中に劣化したテロップが含まれる場合でもテロップの輪郭を修復するとともにジャギーを低減し、見やすく良好な映像に補正することができる。以下、各部の動作について説明する。
【0050】
図6は、テロップ抽出部2からテロップ合成部5までの処理動作を模式的に示す図である。
(a)は入力映像(原画像)600を示し、画像中に含まれる「A」という文字テロップを抽出する例である。
(b)は前記実施例1(図2)と同様の方法で、テロップ映像601(図2のマスク映像203に相当)を抽出した状態である。
【0051】
(c)は前記実施例1(図3)と同様の方法で、原画像600を用いながらテロップ映像601の画素の欠損を補填し、修復済みのテロップ文字602(図3の文字302に相当)を得た状態である。
(d)では、輪郭抽出部8により、修復済みのテロップ文字602のマスクビットより輪郭マスクを生成し、輪郭マスクの画素位置に対応する原画像600を抜き出すことで、修復済みのテロップ輪郭映像603を抽出する。
【0052】
(e)では、平滑化処理部4により、該テロップ輪郭映像603に対して平均値フィルタを用いたアンチエイリアス処理を施すことで、平滑化処理を施したテロップ輪郭映像604を取得する。
(f)では、テロップ合成部5にて、テロップ輪郭映像604と(b)のテロップ映像601とを合成することで補正したテロップ文字605を生成する。さらに原画像600と合成することで補正映像信号506を生成する。
【0053】
本方式はテロップの輪郭に特化した補正のため、テロップ文字内の絵柄は元の映像のままとなるため、実施例1よりも平均値フィルタの暈し効果を強めに設定することができ、ジャギーの低減効果を上げることができる。
【0054】
次に図7は、平滑化処理部4のアンチエイリアス処理を詳細に説明する図である。
(a)は、白い背景に黒い文字を合成した文字映像の輪郭部を拡大した図である。符号701は文字映像を構成する画素を表し、白色画素は背景部分、黒色画素は文字部分に対応する。また符号702は輪郭構成画素を表す。輪郭は、例えば、注目画素を中心に周囲画素との輝度差の絶対値が所定閾値以上の場合に、輪郭と判定することで求める。なお、輪郭抽出部8はマスク信号で輪郭を判定するため、該輝度差は「0」もしくは「1」、所定閾値は「1」となる。
【0055】
(b)はアンチエイリアス処理を示す。テレビジョン放送信号中のテロップ文字等は、図8の従来処理で説明した輪郭線802を持たないため、画素の面積比率は求められない。そこで、(b)の符号803のように、注目する輪郭構成画素とこれに隣接する周囲画素とを1つのブロックとして扱う。この時の面積比率は、9画素のブロックを考えると、例えば符号804のように、背景側の白色面積比率を画素面積の44%(=白色4個/全体9個)、文字側の黒色面積比率を画素面積の56%(=白色5個/全体9個)として求めることができる。ここで、白色の輝度値を255、黒色の輝度値を0とした場合、該画素輝度値は加重平均された112(=255×0.44+0×0.56)となり、符号805のように灰色輝度の画素となる。結果として、図8の場合と同様に、輪郭がグラデーションで縁取られるため、ジャギーが低減される。これにより、テロップ文字輪郭のアンチエイリアス処理効果が得られ、平滑化処理が施される。
【0056】
本実施例によれば、劣化したテロップの輪郭を修復するとともに、アンチエイリアス処理を行うことでテロップ輪郭部のジャギーを低減することができる。本実施例は、特に複数色またはパターン模様のあるテロップに対して効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明に係る映像処理装置の第1の実施例を示す構成図(実施例1)。
【図2】テロップ抽出部2の処理動作を模式的に示す図。
【図3】テロップ修復部3、平滑化処理部4、テロップ合成部5の処理動作を模式的に示す図。
【図4】テロップ修復部3のテロップ文字の修復処理を詳細に説明する図。
【図5】本発明に係る映像処理装置の第2の実施例(実施例2)を示す構成図。
【図6】テロップ抽出部2からテロップ合成部5までの処理動作を模式的に示す図。
【図7】平滑化処理部4のアンチエイリアス処理を詳細に説明する図。
【図8】従来のアンチエイリアス処理を説明する図。
【符号の説明】
【0058】
1…映像信号処理部、2…テロップ抽出部、3…テロップ修復部、4…平滑化処理部、5…テロップ合成部、6…表示制御部、7…映像表示部、8…輪郭抽出部、101…映像信号、102…マスク信号、103…修復済みテロップ信号、104…平滑化済みテロップ信号、105…補正映像信号。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
映像信号に含まれるテロップ文字の輪郭を補正する映像処理装置において、
上記映像信号からテロップ文字を抽出し、該テロップ文字の領域か該テロップ文字以外の背景領域かを表す2値化したマスク信号を生成するテロップ抽出部と、
該テロップ抽出部により生成されたマスク信号に対し、上記映像信号を用いてテロップ領域の欠損した画素を復元することでテロップ信号を修復するテロップ修復部と、
該テロップ修復部により修復されたテロップ信号に対して、上記テロップ文字の輪郭部を平滑化処理しジャギーを低減する平滑化処理部と、
該平滑化処理部により平滑化処理されたテロップ信号と上記映像信号とを合成するテロップ合成部と、
を備えることを特徴とする映像処理装置。
【請求項2】
映像信号に含まれるテロップ文字の輪郭を補正する映像処理装置において、
上記映像信号からテロップ文字を抽出し、該テロップ文字の領域か該テロップ文字以外の背景領域かを表す2値化したマスク信号を生成するテロップ抽出部と、
該テロップ抽出部により生成されたマスク信号に対し、上記映像信号を用いてテロップ領域の欠損した画素を復元することでテロップ信号を修復するテロップ修復部と、
該テロップ修復部により修復されたテロップ信号からテロップ文字の輪郭を抽出し、テロップ輪郭信号を生成する輪郭抽出部と、
該輪郭抽出部により生成されたテロップ輪郭信号に対して、上記テロップ文字の輪郭部を平滑化処理しジャギーを低減する平滑化処理部と、
該平滑化処理部により平滑化処理されたテロップ輪郭信号と上記映像信号とを合成するテロップ合成部と、
を備えることを特徴とする映像処理装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の映像処理装置において、
前記テロップ抽出部は、隣接画素間の輝度差を求め輝度差が所定の閾値より大きい場合にエッジと判定し、該エッジを隣接画素との輝度差が所定の閾値より小さい区間だけ拡張することでテロップ文字の領域を決定することを特徴とする映像処理装置。
【請求項4】
請求項1または2に記載の映像処理装置において、
前記テロップ修復部は、前記マスク信号におけるテロップ領域をそれに隣接する背景領域の画素まで拡大し、さらに拡大したテロップ領域のうち背景領域に隣接する画素分だけ縮小して新たなテロップ領域を生成することを特徴とする映像処理装置。
【請求項5】
請求項1または2に記載の映像処理装置において、
前記平滑化処理部は、前記修復されたテロップ信号またはテロップ輪郭信号に対して平均値フィルタを用いたアンチエイリアス処理を施すことで、テロップ文字輪郭の平滑化を行うことを特徴とする映像処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−154448(P2010−154448A)
【公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−332871(P2008−332871)
【出願日】平成20年12月26日(2008.12.26)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】