説明

映像出力装置、及び映像出力方法

【課題】映像出力装置において、フレーム周波数が相違する複数の映像を同時出力する場合に、使用者にとってより良好な表示映像の出力を可能とする。
【解決手段】第1及び第2の入力タイミング制御ブロック11,12により、異なる映像ソースのフレーム画像を各々のフレームレートに従いフレームイメージメモリ13に順に格納し、それらを出力タイミング制御ブロック14により所定のフレームレートで取り出した後、スケーリングブロック15で親画面領域及び子画面領域に配置して合成する。出力タイミング制御ブロック14がフレーム画像を取り出すときのフレームレートを、いずれかの映像ソースのフレームレートに同期させる。同期対象の映像ソースを、所定の選択規則に従い制御レジスタ14aの設定値を書き換えることにより変更可能とする。テアリングが発生する領域を、所定の選択規則に従い親画面領域または子画面領域に変更することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばピクチャーインピクチャー機能を有する映像機器に用いて好適な映像出力装置、及び映像出力方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
現在、プロジェクターや液晶プラズマテレビ等の映像を出力する多数の映像機器が一般に普及している。映像機器は日を追う毎に様々な方式の映像ソース(パソコン、DVDプレーヤー・ハイビジョンテレビ)に対応することが可能となってきている。また、映像機器においては大画面化に伴い、親画面映像の一部に子画面映像を同時に出力するピクチャーインピクチャー機能が必須であるといっても過言ではなくなってきている。
【0003】
これに関連して、例えば下記特許文献1には、ピクチャーインピクチャー処理された信号を走査変換する場合における副映像信号(子画面映像)の劣化防止を目的として、走査変換の走査線に対応した複数フレーム分のフレームメモリを設け、そのフレームメモリに副映像信号を直接書き込む技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−51687号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、ピクチャーインピクチャー機能によって親画面映像の一部に子画面映像を同時に出力するとき、子画面映像の映像方式が親画面映像と異なり、両者間のフレーム周波数が相違する場合にあっては、出力映像(表示映像)のフレームタイミングが親画面映像のフレームタイミングと同期しており、子画面映像のフレームタイミングに同期ずれが不可避的に生ずる(図7参照)。したがって、上記場合にあっては、出力映像の子画面部分にテアリング、すなわち前後する一方のフレームの上部が他方のフレームの下部と同時に表示され、上下で画像がずれてしまう現象が生ずることとなるが、係るテアリングについては、前述した技術によっても解消することができない。また、上記テアリングは、出力映像のフレームタイミングを子画面映像のフレーム周波数に合わせれば解消できるが、その場合は、逆に親画面映像にテアリングが生じてしまうという問題があった。
【0006】
本発明は、かかる従来の課題に鑑みてなされたものであり、フレーム周波数が相違する複数の映像を同時出力する場合に、使用者にとってより良好な表示映像を出力することが可能となる映像出力装置、及び映像出力方法と、それらの実現に使用されるプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するため請求項1の発明にあっては、複数の入力映像から入力映像毎の表示領域が確保された単一の表示映像を生成し、生成した表示映像を出力する映像出力装置において、前記表示映像のフレーム周波数を前記複数の入力映像のいずれかのフレーム周波数に同期させる同期手段と、前記複数の入力映像のうちから、前記同期手段により表示映像のフレーム周波数が同期される同期対象を所定の選択規則に従い設定する設定手段とを備えたものとした。
【0008】
かかる構成においては、複数の入力映像におけるフレーム周波数が異なる場合にテアリングが発生する表示映像の表示領域を、所定の選択規則に従い変更することができる。
【0009】
また、請求項2の発明にあっては、前記表示映像における前記入力映像毎の表示領域は、ピクチャーインピクチャー機能により確保される親画面領域と子画面領域とであるものとした。
【0010】
また、請求項3の発明にあっては、前記複数の入力映像のいずれかを使用者に選択させる選択制御手段を備え、前記設定手段は、前記選択制御手段が使用者に選択させた入力映像を前記同期対象として設定するものとした。
【0011】
また、請求項4の発明にあっては、前記複数の入力映像のうちで前記表示映像における表示領域の有効面積が最も大きな入力映像を確認する確認手段を備え、前記設定手段は、前記確認手段により確認された有効面積が最も大きな入力映像を前記同期対象として設定するものとした。
【0012】
また、請求項5の発明にあっては、前記表示映像における前記入力映像毎の表示領域は、ピクチャーインピクチャー機能により確保される親画面領域と子画面領域とであるとともに、前記表示映像に確保される子画面領域の大きさを使用者に設定させる設定制御手段と、この前記設定制御手段が使用者に大きさを設定させた子画面領域と前記親画面領域とのうちのいずれの有効面積が大きいかを確認する確認手段とをさらに備え、前記設定手段は、前記確認手段により有効面積が大きいと確認された側の領域を前記表示領域として前記表示映像に確保される入力映像を前記同期対象として設定するものとした。
【0013】
また、請求項6の発明にあっては、前記複数の入力映像のうちでフレーム間の内容の変化が最も大きな入力映像を判断する判断手段を備え、前記設定手段は、前記判断手段により前記変化が最も大きいと判断された入力映像を前記同期対象として設定するものとした。
【0014】
また、請求項7の発明にあっては、前記複数の入力映像の各々について、相前後するフレーム間における所定の参照画素の輝度値の差分の絶対値である輝度絶対差分を演算する演算手段を備え、前記判断手段は、前記演算手段により演算された前記複数の入力映像の各々の輝度絶対差分に基づき、前記複数の入力映像のうちでフレーム間の内容の変化が最も大きな入力映像を判断するものとした。
【0015】
また、請求項8の発明にあっては、複数の入力映像から入力映像毎の表示領域が確保された単一の表示映像を生成し、生成した表示映像を出力する映像出力方法において、前記表示映像におけるフレーム周波数の同期対象を、所定の選択規則に従い前記複数の入力映像のいずれかに設定する工程と、設定した入力映像のフレーム周波数に同期させて前記表示映像を生成する工程と、を含む方法とした。
【0016】
かかる方法によれば、複数の入力映像におけるフレーム周波数が異なる場合にテアリングが発生する表示映像の表示領域を、所定の選択規則に従い変化させることができる。
【0017】
また、請求項9の発明にあっては、複数の入力映像から入力映像毎の表示領域が確保された単一の表示映像を生成し、生成した表示映像を出力する映像出力装置が有するコンピュータに、前記表示映像のフレーム周波数の同期対象を、所定の選択規則に従い前記複数の入力映像のいずれかに設定する処理と、設定した入力映像のフレーム周波数に同期させて前記表示映像を生成させる処理と、を実行させるプログラムとした。
【発明の効果】
【0018】
以上のように本発明においては、複数の入力映像におけるフレーム周波数が異なる場合にテアリングが発生する表示映像の表示領域を、所定の選択規則に従い変更することができるようにした。よって、フレーム周波数が異なる複数の映像を同時出力する場合に、使用者にとってより良好な表示映像を出力することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】各実施の形態に共通するプロジェクターのブロック図である。
【図2】第1の実施の形態におけるイメージプロセッサの詳細を示すブロック図である。
【図3】CPUの処理内容を示すフローチャートである。
【図4】フレームロック処理を示すフローチャートである。
【図5】ピクチャーインピクチャー機能の設定メニューを示した図である。
【図6】出力フレームと、親フレーム及び子フレームとにおけるフレームタイミングの関係を示す図である。
【図7】子画面に生ずるテアリングの例を示す図である。
【図8】子画面の大きさと、テアリングが生ずる画面領域、及びフレーム境界の位置との関係を示す図である。
【図9】第2の実施の形態におけるイメージプロセッサの詳細を示すブロック図である。
【図10】第1及び第2の動画検出ブロックの動作内容を示す概念図であって、入力映像が静止画像等である場合を例示した図である。
【図11】第1及び第2の動画検出ブロックの動作内容を示す概念図であって、入力映像が動画像である場合を例示した図である。
【図12】ピクチャーインピクチャー機能の設定メニューを示した図である。
【図13】CPUの処理内容を示すフローチャートである。
【図14】入力映像の違いと、テアリングが生ずる画面領域、及びフレーム境界の位置との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の一実施の形態を図にしたがって説明する。
【0021】
(実施形態1)
図1は、本発明に係るプロジェクターの概略構成を示した、各実施の形態に共通するブロック図である。このプロジェクターは、方式の異なる2種類のアナログ映像信号に対応可能であるとともにピクチャーインピクチャー機能を有するものであって、以下の構成を備えている。
【0022】
すなわちプロジェクターは2チャンネルの入力系統を有しており、各チャンネルに入力した第1及び第2のアナログ映像信号(入力映像)をそれぞれデジタル変換する第1及び第2のA/Dコンバータ1,2を備えている。
【0023】
第1及び第2のA/Dコンバータ1,2でデジタル変換された第1及び第2のデジタル映像信号はイメージプロセッサ3へ送られる。
【0024】
イメージプロセッサ3は、ピクチャーインピクチャー機能の使用時における入力した第1及び第2のデジタル映像信号の合成処理、合成後の映像データに対する拡大・縮小・台形歪み補正等の変形処理、設定メニュー画面等のオーバーレイを行うための構成を備えており(詳細は後述する。)、処理後の映像信号(デジタル変形映像信号)を投影処理LSI4へ出力する。
【0025】
投影処理LSI4は、入力したデジタル変形映像信号に含まれる画素毎の階調情報に基づき投影デバイス5を駆動する。本実施の形態の投影デバイス5はマイクロミラーアレイを備えた画像変換素子であり、投影処理LSI4は画素毎の階調情報をミラー制御信号に変換し、そのミラー制御信号によって投影デバイス5を駆動する。なお、投影デバイス5は透過型液晶シャッター等の他の画像変換素子に代えることができる。
【0026】
投影デバイス5は上記ミラー制御信号により駆動され、ランプユニット6からの一定光量のビーム光源の反射角度をミラー(画素)毎に変えて各画素の映像光量を制御し、映像光を生成する。そして、投影デバイス5により生成された映像光が、光学レンズ7より拡散されることにより、入力映像または合成後の映像が投影映像(表示映像)として任意のスクリーンに投影される。
【0027】
前記イメージプロセッサ3の基本動作はCPU8により制御されている。CPU8は、プログラムメモリ9に記憶されている制御プログラムに従いプロジェクター全体を制御する。上記制御プログラムにはCPU8を本発明の同期手段、設定手段、選択制御手段、確認手段、設定制御手段として機能させるプログラムが含まれている。
【0028】
プログラムメモリ9は記憶データの書き換えが可能なフラッシュメモリ等であり、前記制御プログラム以外にも、ユーザーが適宜変更可能なプロジェクターにおけるピクチャーインピクチャー機能に関する動作を含む各種の動作内容に関する設定データ等が記憶されている。
【0029】
また、CPU8にはキーブロック(KEY)10が接続されている。キーブロック(KEY)10は、ユーザーによるプロジェクターの操作、及び基本動作の設定操作に際して使用される複数の操作キー、すなわち電源キー、ズームキー、上下左右キー、AFK(自動合焦及び自動台形補正)キー、入力切換キー、メニューキー、決定キー等からなり、CPU8により定常的にキーの操作状態がスキャンされる。
【0030】
図2は、前述したイメージプロセッサ3の詳細を示したブロック図である。図示したようにイメージプロセッサ3は、主として入力チャンネルに応じた第1及び第2の入力タイミング制御ブロック11,12と、フレームイメージメモリ13、出力入力タイミング制御ブロック14、スケーリングブロック15、OSD(On Screen Display)ブロック16から構成されている。
【0031】
第1及び第2の入力タイミング制御ブロック11,12は、各入力チャンネルにおけるデジタル映像信号のフレーム開始タイミングを判断し、ブロック内の制御レジスタ11a,12aの設定内容(レジスタの値)に従い、デジタル映像信号における所定の範囲(投映範囲)の映像データをフレームイメージメモリ13内の所定のアドレスに格納する。また、その際には前記フレーム開始タイミングを示すタイミング信号を出力入力タイミング制御ブロック14へ出力する。
【0032】
出力入力タイミング制御ブロック14は、第1及び第2の入力タイミング制御ブロック11,12から送られたいずれか一方のタイミング信号に基づき、いずれか一方の入力チャンネルのデジタル映像信号と同期し一定間隔でフレームイメージメモリ13に格納された映像データ(フレーム画像)を順次取り出しスケーリングブロック15へ出力する。その際、同期対象となるデジタル映像信号はブロック内の制御レジスタ14aの設定内容(レジスタの値)によって決定される。
【0033】
スケーリングブロック15は、ブロック内の制御レジスタ15aの設定内容(レジスタの値)に従い、入力した映像データを配置するとともに、拡大・縮小・台形歪み補正等の変形処理を行い表示映像のデータを生成し、生成した映像データをOSDブロック16へ出力する。
【0034】
OSDブロック16は、入力した変形処理後の映像データに、CPU8の指令に従い必要に応じて設定メニューや、そのサブメニュー、文字等を適宜オーバーレイした後、前記投映処理LSI4へ出力する。
【0035】
図3及び図4は、CPU8の本発明に係る動作内容を示すフローチャートである。このフローチャートは、ユーザーが前述したメニューキーの操作により投映画面上にOSD表示させた設定メニューから後述のピクチャーインピクチャー(P−IN−P)設定メニュー(図5参照)を表示させることにより、ピクチャーインピクチャー機能に関する設定を行う場合の動作である。
【0036】
CPU8は、ユーザーによる所定のキー操作に応じて前記OSDブロック16を制御し、図5に示したP−IN−P設定メニュー101を投映画面上にOSD表示させる(ステップSA1)。
【0037】
図示したようにP−IN−P設定メニュー101は、「子画面入力ソース」、「子画面サイズ」、「子画面位置」、「フレームロック優先」の4種類の設定項目について、各々の設定内容を選択する選択肢型のサブメニューである。「子画面入力ソース」は子画面表示する映像の入力チャンネルに関するものであり、選択肢は「入力1」又は「入力2」である。「子画面サイズ」は子画面の表示サイズに関するものであり、選択肢は「極小」から「極大」までの5段階である。「子画面位置」は子画面を表示させる位置であり任意である。「フレームロック優先」は出力映像におけるフレームレートの同期対象等であり、選択肢は「親画面」、「子画面」、「面積」の3種類である。
【0038】
そして、CPU8はユーザーのキー操作に応じて上記設定内容の選択状態を適宜変更するとともに(ステップSA2)、メニューキーの再操作等により設定操作が終了したら(ステップSA3でYES)、P−IN−P設定メニュー101の表示を終了し(ステップSA4)、新たな設定内容をプログラムメモリ9に保存する。すなわち既存の設定データを更新する(ステップSA5)。しかる後、新たな設定内容に基づき図4に示したフレームロック処理を実行する(ステップSA6)。なお、実際にはフレームロック処理以外の処理も実行するが、便宜上ここでは説明を省略する。
【0039】
フレームロック処理においてCPU8は、まず「フレームロック優先」に関する設定内容を確認する(ステップSA101)。ここで、設定内容が「親画面」であった場合には、フレームロック画面(同期対象等)を親画面と決定し(ステップSA102)、設定内容が「子画面」であった場合には、フレームロック画面を子画面と決定する(ステップSA103)。
【0040】
また、設定内容が「面積」であった場合には、前述した「子画面サイズ」の設定内容に基づいて、投映画面における親画面と子画面との有効面積(実質的な表示領域の面積)の大小関係を確認する(ステップSA104)。そして、親画面の有効面積が子画面よりも大きければ、フレームロック画面を親画面と決定し(ステップSA105)、逆に子画面の有効面積が親画面以上であれば、フレームロック画面を子画面と決定する(ステップSA106)。なお、本実施の形態では「子画面サイズ」の設定内容が「大」又は「極大」のとき子画面の有効面積が親画面以上となる。
【0041】
引き続き、以上のように決定したフレームロック画面の決定内容と、「子画面入力ソース」の設定内容とに基づき、前述したイメージプロセッサ3における出力入力タイミング制御ブロック14の制御レジスタ14a(図2参照)に、同期(フレームロック)すべき入力チャンネルを以下のように設定する。
【0042】
すなわちフレームロック画面が親画面であるときには(ステップSA107が「親画面」)、「子画面入力ソース」として「入力1」が設定されていれば(ステップSA108で「入力1」)、前記制御レジスタ14aに「入力2」を設定し(ステップSA109)、「子画面入力ソース」として「入力2」が設定されていれば(ステップSA108で「入力2」)、前記制御レジスタ14aに「入力1」を設定する(ステップSA110)。
【0043】
また、フレームロック画面が子画面であるときには(ステップSA107が「子画面」)、「子画面入力ソース」として「入力1」が設定されていれば(ステップSA111で「入力1」)、前記制御レジスタ14aに「入力1」を設定し(ステップSA112)、「子画面入力ソース」として「入力2」が設定されていれば(ステップSA1111で「入力2」)、前記制御レジスタ14aに「入力2」を設定する(ステップSA113)。
【0044】
以上のように前記プロジェクターにおいては、ピクチャーインピクチャー機能の使用に際して、プロジェクターに入力する2系統の映像のフレームレートが異なる場合、ユーザーは必要に応じて、P−IN−P設定メニュー101で「フレームロック優先」として「親画面」または「子画面」を選択することにより、投影映像のフレームレートを、親画面または子画面のうちで所望する側の映像のフレームレートに選択的に同期させる(フレームロックする)ことができる。
【0045】
すなわち図6は、投影映像のフレーム(出力フレーム)のフレームタイミングと、親画面の入力映像のフレーム(親フレーム)、及び子画面の入力映像のフレーム(子フレーム)のフレームタイミングとの関係を示す図である。
【0046】
同図(a)に示したようにフレームロック対象を親画面とすれば、出力フレームを親フレームと同期させることができる。但し、その場合は、子フレームに不可避的に同期ずれが生じるため、例えば図中に[1]〜[3]で示した出力フレームで子画面にテアリングが発生する。図7(a)〜(c)は、上記出力フレーム[1]〜[3]に対応する投影映像201の子画面映像の例を示した図である。また、同図(b)に示したようにフレームロック対象を子画面とすれば、出力フレームを子フレームと同期させることができる。但し、その場合は、親フレームに不可避的に同期ずれが生じるため、例えば図中に[4]〜[7]で示した出力フレームで親画面にテアリングが発生する。
【0047】
したがって、ユーザーは必要に応じてフレームロック対象を親画面または子画面とすることにより、親画面と子画面とのうちで、より重要性の高い側の画面映像におけるテアリングの発生を防止することができる。その結果、テアリングが余り気にならない良好な投影映像を得ることができる。
【0048】
また、上記に加え、P−IN−P設定メニュー101で「フレームロック優先」として「面積」を選択することにより、投影映像のフレームレートを、親画面または子画面のうちで有効面積が大きい側の映像のフレームレートに自動的に同期させる(フレームロックする)ことができる。
【0049】
すなわち図8は、前述した「子画面サイズ」の設定の違いと、投影映像201でテアリングが生ずる画面領域(親画面、又は子画面)、及びテアリングが生ずるフレームでのフレーム境界の位置との関係を示す図であって、同図(a)は「子画面サイズ」が「小」の場合、同図(b)は「子画面サイズ」が「中」の場合、同図(c)は「子画面サイズ」が「大」の場合をそれぞれ例示した図である。
【0050】
この図から明らかなようにユーザーは「フレームロック優先」として「面積」を選択しておけば、「子画面サイズ」の設定内容が「極小」、「小」、「中」であるときには、有効面積が子画面よりも大きな親画面におけるテアリングの発生を自動的に防止することができ、「子画面サイズ」の設定内容が「大」、「極大」であるときには、有効面積が親画面よりも大きな子画面におけるテアリングの発生を防止することができる。
【0051】
つまり、親画面と子画面とのうちで有効面積が大きい側の画面映像におけるテアリングの発生を自動的に防止することができる。その結果、テアリング発生面積を可能な限り小さくすることができ、テアリングが目立ちにくい良好な投影映像を得ることができる。
【0052】
なお、本実施の形態では、設定可能な子画面のサイズが予め用意されている5段階のサイズのいずれかに限定されている場合について説明したが、子画面サイズとして任意のサイズ(親画面とアスペクト比が異なるサイズも含む)が設定可能な構成としても構わない。その場合、前述したフレームロック処理では、ステップSA104の直前において、任意に設定された子画面サイズの有効面積を算出し、次にその算出結果を投影映像の全面積から減算することにより親画面の有効面積を算出すればよい。
【0053】
また、本実施の形態とは異なり、例えば映像の入力チャンネルが3系統以上存在する構成であるとともに、ピクチャーインピクチャー機能に表示可能な子画面の数が2以上である場合には、前述したステップSA104における比較を、全ての子画面の有効面積の総和を子画面の有効面積として行うようにすればよい。
【0054】
(実施形態2)
次に、本発明の第2の実施の形態について説明する。本実施の形態は、図1に示した構成において、前述したイメージプロセッサ3が図9に示した構成を有するものである。
【0055】
すなわち本実施の形態においては、第1及び第2の入力タイミング制御ブロック11,12の後段に第1及び第2の動画検出ブロック21,23が設けられており、第1及び第2の動画検出ブロック21,23には第1及び第2の前フレームメモリ22,24が付加されている。
【0056】
第1及び第2の前フレームメモリ22,24は、常に前回のフレームタイミングで第1及び第2の動画検出ブロック21,23に入力した映像データ(フレームデータ)が保持されるメモリである。
【0057】
第1及び第2の動画検出ブロック21,23は本発明の演算手段であって、それぞれ第1及び第2の入力タイミング制御ブロック11,12から入力した映像データを前記フレームイメージメモリ13内の所定のアドレスに格納するとともに、以下のように動作する。
【0058】
すなわち第1の動画検出ブロック21は、現フレームタイミングで入力した映像データと、第1の前フレームメモリ22に保持されている前回の映像データについて、それぞれ所定の参照画素の輝度値の差分の絶対値である輝度絶対差分を演算し、その累積結果をCPU8へ出力する。本実施の形態において、上記参照画素は各々の映像データにおける予め決められた特定ラインL(図10、図11参照)に並ぶ画素である。また、第1の動画検出ブロック21は、前記演算後に現フレームタイミングで入力した映像データを第1の前フレームメモリ22に記憶させる。なお、第2の動画検出ブロック23も第1の動画検出ブロック21と同様に動作する。
【0059】
図10及び図11は、第1及び第2の動画検出ブロック21,23における上記動作内容を示す概念図であって、両図の(a)は、前フレームの映像データ301と、その特定ラインL上の画素の輝度分布、両図の(b)は、現フレームの映像データ302と、その特定ラインL上の画素の輝度分布をそれぞれ示した図、両図の(c)は、前フレームの輝度分布と現フレームとの間の輝度絶対差分を示した図である。
【0060】
また、図10は、入力した映像データが静止画像(又はほぼ静止している状態の動画像)の映像データである場合、図11は、入力した映像データが動画像である場合の例である。図示したように、輝度絶対差分は入力した映像データが静止画像等の場合には極めて小さく、かつ動画像である場合には大きくなる。また、動画像の場合、フレーム間の変化が大きいほど輝度絶対差分も大きくなる。
【0061】
そして、前記プログラムメモリ9には、ユーザーによるピクチャーインピクチャー機能に関する設定に際して、CPU8に、第1の実施の形態で図5に示した設定メニュー101に代えて、図12に示したように「フレームロック優先」の選択肢に「動画」が追加された設定メニュー102を投映画面上にOSD表示させるとともに、図13に示したフレームロック処理を行わせることにより、CPU8を本発明の判断手段として機能させるプログラムが記憶されている。それ以外の構成については第1の実施の形態と同様である。
【0062】
図13は、ユーザーにより前記設定メニュー102からピクチャーインピクチャー機能に関する設定が行われたとき、「フレームロック優先」に関する設定内容が「動画」であった場合において、CPU8が、図3で説明したステップSA1〜ステップSA5に続いて実行するフレームロック処理を示したフローチャートである。
【0063】
フレームロック処理においてCPU8は、前記第1及び第2の動画検出ブロック21,23からそれぞれ送られた前述した輝度絶対差分の累積結果を確認する(ステップSB101)。
【0064】
ここで、第1の動画検出ブロック21から送られた累積結果が、第2の動画検出ブロック23から送られた累積結果よりも大きいときには、前記出力入力タイミング制御ブロック14の制御レジスタ14a(図9参照)に、同期(フレームロック)すべき入力チャンネルとして「入力1」(第1の入力タイミングブロックミングブロック11側)を設定する(ステップSB102)。
【0065】
また、第1の動画検出ブロック21から送られた累積結果が、第2の動画検出ブロック23から送られた累積結果以下であったときには、前記出力入力タイミング制御ブロック14の制御レジスタ14aに、同期(フレームロック)すべき入力チャンネルとして「入力2」(第2の入力タイミング制御ブロック12側)を設定する(ステップSB103)。
【0066】
以後、上記ステップSB101〜SB103の処理を、「フレームロック優先」に関する設定内容が「動画」以外に変更されるまで繰り返し実行する。なお、それが「動画」以外に設定された場合には、第1の実施の形態で図4に示したフレームロック処理を実行する。
【0067】
これにより本実施の形態においては、「フレームロック優先」に関する設定内容が「動画」である場合、投影映像のフレームレートを、親画面に表示される入力映像と子画面入力映像とに関係なく常に、フレーム間の変化が大きい側の入力映像のフレームレートに同期させる(フレームロックする)ことができる。
【0068】
すなわち図14は、前述した「子画面サイズ」の設定内容が同一である場合における、入力映像の違いと、投影映像201でテアリングが生ずる画面領域(親画面、又は子画面)、及びテアリングが生ずるフレームでのフレーム境界の位置との関係を示す図であって、同図(a)は、「入力1」(第1の入力タイミング制御ブロック11側)の輝度絶対差分の累積結果の方が大きい場合、同図(b)は「入力2」(第2の入力タイミング制御ブロック12側)の輝度絶対差分の累積結果の方が大きい場合をそれぞれ例示した図である。なお、係る関係は、「子画面位置」の設定内容が同一である場合においても同様である。
【0069】
したがって、親画面と子画面とのうちで、フレーム間の変化が大きい側、つまりテアリングが目立ちやすい側の画面映像におけるテアリングの発生を自動的に防止することができる。その結果、テアリングが目立ちにくい良好な投影映像を得ることができる。
【0070】
なお、本実施の形態では、第1及び第2の動画検出ブロック21,23が、第1及び第2の前フレームメモリ22,24に、前回のフレームタイミングで入力した映像データを記憶させておき、前フレームの映像データと現フレームの映像データとに基づき入力映像毎に輝度絶対差分を演算するものとしたが、第1及び第2の前フレームメモリ22,24には前回のフレームタイミングで取得された特定ラインLに並ぶ画素の輝度情報のみを記憶させておくようにしてもよい。
【0071】
また、各入力映像における特定ライン上の画素を参照画素として、各入力映像の輝度絶対差分を演算したが、特定ライン上の画素以外の画素、例えば予め決められた複数の領域内の画素を参照画素としてもよい。さらに、入力映像毎のフレーム間の内容の変化度合を輝度絶対差分以外の画像情報に基づき確認してもよい。
【0072】
また、本実施の形態とは異なり、例えば映像の入力チャンネルが3系統以上存在する構成であるとともに、ピクチャーインピクチャー機能に表示可能な子画面の数が2以上である構成においては、第1及び第2の動画検出ブロック21,23と第1及び第2の前フレームメモリ22,24とを入力チャンネルの数に応じた数だけ設け、図13のフレームロック処理に代えて、以下のようなフレームロック処理を行わせればよい。すなわち、入力映像のうちで、輝度絶対差分の累積結果が最大の入力映像を確認し、その入力チャンネルを、前記出力入力タイミング制御ブロック14の制御レジスタ14aに、同期(フレームロック)すべき入力チャンネルとして設定させればよい。
【0073】
また、前述した第1及び第2の実施の形態においては、本発明をピクチャーインピクチャー機能を有するプロジェクターに適用した場合について説明したが、本発明は、複数の入力映像から入力映像毎の表示領域が確保された単一の表示映像を生成し、生成した表示映像を出力するものであれば、プロジェクター以外にも種々の映像機器に適用することができる。
【0074】
また、ピクチャーインピクチャー機能を有する映像機器以外にも、複数の入力映像を所定の分割領域に並べて同時に表示するマルチ画面表示機能を有する映像機器にも適用することができる。
【符号の説明】
【0075】
3 イメージプロセッサ
4 投影処理LSI
5 投影デバイス
8 CPU
9 プログラムメモリ
11 第1の入力タイミング制御ブロック
12 第2の入力タイミング制御ブロック
13 フレームイメージメモリ
14 出力タイミング制御ブロック
14a 制御レジスタ
15 スケーリングブロック
16 OSDブロック
21 第1の動画検出ブロック
23 第2の動画検出ブロック
101 設定メニュー
102 設定メニュー
201 投影映像
301 映像データ
302 映像データ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の入力映像から入力映像毎の表示領域が確保された単一の表示映像を生成し、生成した表示映像を出力する映像出力装置において、
前記表示映像のフレーム周波数を前記複数の入力映像のいずれかのフレーム周波数に同期させる同期手段と、
前記複数の入力映像のうちから、前記同期手段により表示映像のフレーム周波数が同期される同期対象を所定の選択規則に従い設定する設定手段と
を備えたことを特徴とする映像出力装置。
【請求項2】
前記表示映像における前記入力映像毎の表示領域は、ピクチャーインピクチャー機能により確保される親画面領域と子画面領域とであることを特徴とする請求項1記載の映像出力装置。
【請求項3】
前記複数の入力映像のいずれかを使用者に選択させる選択制御手段を備え、
前記設定手段は、前記選択制御手段が使用者に選択させた入力映像を前記同期対象として設定する
ことを特徴とする請求項1又2記載の映像出力装置。
【請求項4】
前記複数の入力映像のうちで前記表示映像における表示領域の有効面積が最も大きな入力映像を確認する確認手段を備え、
前記設定手段は、前記確認手段により確認された有効面積が最も大きな入力映像を前記同期対象として設定する
ことを特徴とする請求項1又2記載の映像出力装置。
【請求項5】
前記表示映像における前記入力映像毎の表示領域は、ピクチャーインピクチャー機能により確保される親画面領域と子画面領域とであるとともに、
前記表示映像に確保される子画面領域の大きさを使用者に設定させる設定制御手段と、
この前記設定制御手段が使用者に大きさを設定させた子画面領域と前記親画面領域とのうちのいずれの有効面積が大きいかを確認する確認手段とをさらに備え、
前記設定手段は、前記確認手段により有効面積が大きいと確認された側の領域を前記表示領域として前記表示映像に確保される入力映像を前記同期対象として設定する
ことを特徴とする請求項1記載の映像出力装置。
【請求項6】
前記複数の入力映像のうちでフレーム間の内容の変化が最も大きな入力映像を判断する判断手段を備え、
前記設定手段は、前記判断手段により前記変化が最も大きいと判断された入力映像を前記同期対象として設定する
ことを特徴とする請求項1又2記載の映像出力装置。
【請求項7】
前記複数の入力映像の各々について、相前後するフレーム間における所定の参照画素の輝度値の差分の絶対値である輝度絶対差分を演算する演算手段を備え、
前記判断手段は、前記演算手段により演算された前記複数の入力映像の各々の輝度絶対差分に基づき、前記複数の入力映像のうちでフレーム間の内容の変化が最も大きな入力映像を判断する
ことを特徴とする請求項6記載の映像出力装置。
【請求項8】
複数の入力映像から入力映像毎の表示領域が確保された単一の表示映像を生成し、生成した表示映像を出力する映像出力方法において、
前記表示映像におけるフレーム周波数の同期対象を、所定の選択規則に従い前記複数の入力映像のいずれかに設定する工程と、
設定した入力映像のフレーム周波数に同期させて前記表示映像を生成する工程と、
を含むことを特徴とする映像出力方法。
【請求項9】
複数の入力映像から入力映像毎の表示領域が確保された単一の表示映像を生成し、生成した表示映像を出力する映像出力装置が有するコンピュータに、
前記表示映像のフレーム周波数の同期対象を、所定の選択規則に従い前記複数の入力映像のいずれかに設定する処理と、
設定した入力映像のフレーム周波数に同期させて前記表示映像を生成させる処理と、
を実行させるプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図8】
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【図9】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図7】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−118563(P2012−118563A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−21409(P2012−21409)
【出願日】平成24年2月3日(2012.2.3)
【分割の表示】特願2006−96513(P2006−96513)の分割
【原出願日】平成18年3月31日(2006.3.31)
【出願人】(000001443)カシオ計算機株式会社 (8,748)
【Fターム(参考)】