説明

映像表示装置

【課題】調光に起因する映像の色合いの変化を効果的に抑制することができ、かつ、構成の簡略化を図ることが可能な映像表示装置を提供する。
【解決手段】映像表示装置であるプロジェクタ1は、光を出射する映像表示用の光源11と、光源11に供給する電力を制御する光源電圧制御部24と、色信号に対してガンマ補正処理を施すガンマ補正部22とを備え、光源電圧制御部24で光源11に供給する電力を変動させることにより光源11から出射される光量を調整する調光機能を有している。調光機能により光量が変化する前の映像のホワイトバランスを調光前ホワイトバランスとし、調光機能により光量が変化した後の映像のホワイトバランスを調光後ホワイトバランスとしたとき、ガンマ補正部22が、ガンマ補正処理の処理態様を変更することによって、調光前ホワイトバランスに近づけるように調光後ホワイトバランスを調整する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力の供給を受けて光を出射する映像表示用の光源と、光源に供給する電力を制御する光源電圧制御部と、映像信号を構成する色信号の各々に対してガンマ補正処理を施すことによりガンマ補正を行うガンマ補正部とを備え、光源電圧制御部で光源に供給する電力を変動させることにより光源から出射される光量を調整する調光機能を有する映像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
上記映像表示装置としては、映像を投写して表示する液晶プロジェクタが知られている。また、調光機能を有する液晶プロジェクタとして、調光前後において映像の色合いが変化することを抑制する機能を有したものが知られている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1には、表示装置が、画像の明るさ補正(輝度伸張)を行うとともに、RGBの色のバランスを調整するために、さらに、画像信号値を補正することが記載されている。これにより、調光前後で画像の色が変化しないため、表示装置はより高画質の画像を表示することができると記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−224099号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記特許文献1においては、調光に起因する映像の色合いの変化を十分に抑制することができないおそれがある。すなわち、特許文献1に記載される色補正部は、調光制御部が調光部を制御するための制御値に応じて映像信号に対して色補正を行うものの、その後に映像信号に対してはガンマ補正部で所望のガンマ補正処理が行われる。これにより、所定の明度においては赤、青、緑の輝度の比率を変化させずに映像の色合いの変化が抑制されるのに対して、他の明度においては上記比率が変化して映像の色合いの変化を抑制できないおそれがある。すなわち、例えば、映像信号を構成する色信号が、明度が100であって無彩色を示す色信号であるときに、調光前後において無彩色の映像が表示されるのに対して、映像信号を構成する色信号が、明度が20であって無彩色を示す色信号であるときには、調光前は無彩色の映像が表示され調光後には緑がかった映像が表示されるおそれがある。
【0006】
また、上記特許文献1では、調光に起因する映像の色合いの変化を抑制するための専用の信号処理部として色補正部が設けられるため、映像表示装置の構成が複雑化するという問題がある。
【0007】
本発明は上記問題を解決するためになされたものであり、その目的は、調光に起因する映像の色合いの変化を効果的に抑制することができ、かつ、構成の簡略化を図ることが可能な映像表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
以下、上記目的を達成するための手段及びその作用効果について記載する。
請求項1に記載の発明は、電力の供給を受けて光を出射する映像表示用の光源と、この光源に供給する電力を制御する光源電圧制御部と、映像信号を構成する色信号の各々に対してガンマ補正処理を施すことによりガンマ補正を行うガンマ補正部とを備え、前記光源電圧制御部で前記光源に供給する電力を変動させることにより前記光源から出射される光量を調整する調光機能を有する映像表示装置であって、前記調光機能により光量が変化する前の映像のホワイトバランスを調光前ホワイトバランスとし、前記調光機能により光量が変化した後の映像のホワイトバランスを調光後ホワイトバランスとしたとき、前記ガンマ補正部が、ガンマ補正処理の処理態様を変更することによって、調光前ホワイトバランスに近づけるように調光後ホワイトバランスを調整することを特徴とする。
【0009】
上記発明によれば、ガンマ補正処理の処理態様が変更されることによって、調光前ホワイトバランスに近づけるように調光後ホワイトバランスがガンマ補正部で調整される。このため、調光に伴って光源が出射する光のスペクトラム分布が変化しても、調光機能により光量が変化した後の映像のホワイトバランスが、調光機能により光量が変化する前の映像のホワイトバランスに近づくことによって、調光に起因する映像の色合いの変化を抑制することができる。また、調光に起因する映像の色合いの変化を抑制するための処理が施された映像信号に対してガンマ補正処理が行われる場合には、所望のガンマ補正処理が行われることにより映像の色合いが変化するおそれがある。上記発明によれば、ガンマ補正部によって調光に起因する映像の色合いの変化を抑制する構成となるため、調光に起因する映像の色合いの変化を抑制するための信号処理が施された映像信号に対してガンマ補正処理が行われる構成に比べて、効果的に映像の色合いの変化を抑制することができる。また、ガンマ補正部によって調光に起因する映像の色合いの変化を抑制する構成となるため、調光に起因する映像の色合いの変化を抑制するための専用の信号処理部を設ける場合に比べて、映像表示装置の構成の簡略化を図ることが可能である。よって、上記発明によれば、調光に起因する映像の色合いの変化を効果的に抑制することができ、かつ、映像表示装置の構成の簡略化を図ることが可能となる。
【0010】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の映像表示装置であって、前記ガンマ補正部は、前記光源が出射する光のスペクトラム分布に応じてガンマ補正処理の処理態様を変更することにより、映像のホワイトバランスを調整することを特徴とする。
【0011】
上記発明によれば、光源が出射する光のスペクトラム分布に応じて、ガンマ補正部によるガンマ補正処理の態様が変更される。このため、調光後における光源が出射する光のスペクトラム分布に応じて、ホワイトバランスを調整するためのガンマ補正処理の処理態様が決定される。
【0012】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の映像表示装置であって、前記光源が出射する光のスペクトラム分布に基づいたガンマ補正情報を記憶する記憶部を備え、前記ガンマ補正部は、前記光源に供給する電力に基づいて前記記憶部から選択されるガンマ補正情報に応じて、ガンマ補正処理の処理態様を変更することを特徴とする。
【0013】
上記発明によれば、光源に供給する電力に基づいて記憶部から選択されるガンマ補正情報に応じて、ガンマ補正部によるガンマ補正処理の処理態様が変更される。このため、光源から出射された光量を波長毎に検出せずとも、光源が出射する光のスペクトラム分布に応じたガンマ補正処理の処理態様の変更が可能となる。
【0014】
請求項4に記載の発明は、請求項2に記載の映像表示装置であって、前記光源から出射された光量を波長毎に検出する光量検出部を備え、前記ガンマ補正部は、前記光量検出部を用いて取得されるスペクトラム分布情報に応じて、ガンマ補正処理の処理態様を変更することを特徴とする。
【0015】
上記発明によれば、光量検出部を用いて取得されるスペクトラム分布情報に応じて、ガンマ補正部によるガンマ補正処理の処理態様が変更される。このため、光源が交換可能な構成において、種々の光源が出射する光のスペクトラム分布に応じてガンマ補正処理の処理態様を変更することが容易に可能となる。
【0016】
請求項5に記載の発明は、請求項1〜4のいずれか一項に記載の映像表示装置であって、映像信号は、赤色に対応する赤の色信号と、緑色に対応する緑の色信号と、青色に対応する青の色信号とを含み、前記ガンマ補正部は、赤の色信号に対するガンマ補正処理の調光前後における処理変化量を、緑の色信号に対するガンマ補正処理の調光前後における処理変化量に比べて変化させることにより、調光前ホワイトバランスに近づけるように調光後ホワイトバランスを調整することを特徴とする。
【0017】
緑色は赤色及び青色に比べて輝度への影響が大きい。このため、調光前後において映像の輝度の変化を小さくするためには、緑の色信号に対する調光前後におけるガンマ補正処理の処理変化量(すなわち、調光前のガンマ補正曲線と調光後のガンマ補正曲線との乖離)は小さいことが好ましい。
【0018】
上記発明によれば、赤の色信号に対するガンマ補正処理の調光前後における処理変化量を、緑の色信号に対するガンマ補正処理の調光前後における処理変化量に比べて変化させることにより、調光前ホワイトバランスに近づけるように調光後ホワイトバランスが調整される。従って、赤の色信号または緑の色信号に対するガンマ補正処理の処理態様を変更することにより調光後ホワイトバランスを調光前ホワイトバランスに近づけることができる場合に、ガンマ補正処理に起因する輝度の変化を抑制しながらも、調光前後における映像の色合いの変化を抑制することができる。
【0019】
請求項6に記載の発明は、請求項1〜5のいずれか一項に記載の映像表示装置であって、映像信号は、赤色に対応する赤の色信号と、緑色に対応する緑の色信号と、青色に対応する青の色信号とを含み、前記ガンマ補正部は、青の色信号に対するガンマ補正処理の調光前後における処理変化量を、緑の色信号に対するガンマ補正処理の調光前後における処理変化量に比べて変化させることにより、調光前ホワイトバランスに近づけるように調光後ホワイトバランスを調整することを特徴とする。
【0020】
上記発明によれば、青の色信号に対するガンマ補正処理の調光前後における処理変化量を、緑の色信号に対するガンマ補正処理の調光前後における処理変化量に比べて変化させることにより、調光前ホワイトバランスに近づけるように調光後ホワイトバランスが調整される。従って、青の色信号または緑の色信号に対するガンマ補正処理の処理態様を変更することにより調光後ホワイトバランスを調光前ホワイトバランスに近づけることができる場合に、ガンマ補正処理に起因する輝度の変化を抑制しながらも、調光前後における映像の色合いの変化を抑制することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、調光に起因する映像の色合いの変化を効果的に抑制することができ、かつ、構成の簡略化を図ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の一実施形態に係る映像表示装置である投写型映像表示装置の構成を示すブロック図。
【図2】同実施形態の映像表示装置が備える光源について、同光源が発する光のスペクトラム分布を示すグラフ。
【図3】(a)〜(c)同実施形態の映像表示装置について、ガンマ補正におけるガンマ補正前の信号レベルとガンマ補正後の信号レベルの関係を示すグラフ。
【図4】(a)〜(c)同実施形態の映像表示装置について、ガンマ補正におけるガンマ補正前の信号レベルとガンマ補正後の信号レベルの関係を示すグラフ。
【図5】同実施形態の映像表示装置が実行する「ガンマ補正制御処理」の流れを示すフローチャート。
【図6】本発明の変形例に係る投写型映像表示装置の構成を示すブロック図。
【図7】同変形例に係る映像表示装置が実行する「ガンマ補正制御処理」の流れを示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の一実施形態について図面を参照しながら説明する。
図1に示すように、本実施形態に係る映像表示装置は、映像信号に基づいて映像を表示するビデオプロジェクタ1(以下、「プロジェクタ1」)である。プロジェクタ1は、スクリーンや壁等の平面に映像を表示可能な投写型映像表示装置であって、3枚の液晶パネル13R,13G,13B(以下、「液晶パネル13R〜B」)を用いて映像を生成する3板式液晶プロジェクタである。
【0024】
プロジェクタ1は、光を発する光源11と、光源11が発した白色光から三原色の光を分離する光分離部12と、三原色に対応する液晶パネル13R〜Bと、液晶パネル13R〜Bを透過した光を合成する光合成部14と、映像の光を投射する投射レンズ15とを備えている。
【0025】
光源11は、超高圧水銀ランプやメタルハライドランプ等の放電ランプにより構成されている。光源11は、電力の供給を受けて白色光を発する。光源11に供給される電力に応じて、光源11から出射される光量(光の出射量)は変化する。光源11が発する光は、合成されて光分離部12に入射する。
【0026】
光分離部12は、光源11が発した白色光から赤色の波長の光(以下、「赤色光」)と、緑色の波長の光(以下、「緑色光」)と、青色の波長の光(以下、「青色光」)とに分離する光学部品である。光分離部12は、例えば第1及び第2のダイクロイックミラーにより構成される。赤色光が第1のダイクロイックミラーを透過して、緑色光及び青色光が第1のダイクロイックミラーで反射することにより、白色光から赤色光が分離する。また、青色光が第2のダイクロイックミラーを透過して、緑色光が第2のダイクロイックミラーで反射することにより、青色光及び緑色光が分離する。このようにして白色光から分離した赤色光は赤色用の液晶パネル13Rに入射する。また、緑色光は緑色用の液晶パネル13Gに入射する。また、青色光は青色用の液晶パネル13Bに入射する。
【0027】
液晶パネル13R〜Bは、それぞれ、光源11から出射された光を用いて映像を生成するドットマトリクス型の液晶ライトバルブを構成している。液晶パネル13Rは、液晶ドライバ23Rにより印加される電流に基づいて駆動する。また、液晶パネル13Gは、液晶ドライバ23Gにより印加される電流に基づいて駆動する。また、液晶パネル13Bは、液晶ドライバ23Bにより印加される電流に基づいて駆動する。液晶パネル13Rに入射した赤色光が、液晶パネル13Rを含む液晶ライトバルブを透過することにより赤色の映像が生成される。また、液晶パネル13Gに入射した緑色光が、液晶パネル13Gを含む液晶ライトバルブを透過することにより緑色の映像が生成される。また、液晶パネル13Bに入射した青色光が、液晶パネル13Bを含む液晶ライトバルブを透過することにより青色の映像が生成される。液晶パネル13R〜Bにより構成される液晶ライトバルブを透過した光は、光合成部14に入射する。
【0028】
光合成部14は、互いに異なる方向から入射する光を合成して、同じ方向に出射する光学部品である。光合成部14は、例えばクロスダイクロイックプリズムにより構成されている。光合成部14により合成された光は投射レンズ15に入射する。
【0029】
投射レンズ15は、光合成部14により合成された映像の光を投射するレンズ群により構成されている。映像の光が投射レンズ15からプロジェクタ1の外部に向けて投射されることにより、スクリーンや壁等の平面に映像が表示される。
【0030】
また、プロジェクタ1は、プロジェクタ1の外部から入力される映像信号に対して信号処理を施す信号処理部21と、映像信号に対してガンマ補正を行うガンマ補正部22と、液晶ドライバ23R,23G,23B(以下、「液晶ドライバ23R〜B」)とを備えている。液晶ドライバ23R〜Bは、それぞれ、液晶パネル13R〜Bに対応している。
【0031】
信号処理部21は、ガンマ補正処理以外の信号処理を行う回路により構成されている。例えば、信号処理部21は、A(Analog)/D(Digital)変換回路、I(Interlace)/P(Progressive)変換回路、スケーリング回路、またはこれらの回路を組み合わせた集積回路により構成されている。信号処理部21で信号処理が施された映像信号は、ガンマ補正部22に入力される。
【0032】
ガンマ補正部22は、ガンマ補正処理を行う回路により構成されている。ガンマ補正部22は、映像信号に含まれる信号である、液晶パネル13Rを駆動するための映像信号R、液晶パネル13Gを駆動するための映像信号G、及び液晶パネル13Bを駆動するための映像信号Bに対してガンマ補正を行う。ガンマ補正部22は、主制御部25からの制御信号に基づいて、ガンマ補正の補正態様を変更する。従って、主制御部25はガンマ補正部22を介してガンマ補正を制御する。ガンマ補正処理が施された映像信号R,G,B、すなわちガンマ補正後の映像信号は、液晶ドライバ23R〜Bに入力される。
【0033】
液晶ドライバ23R〜Bは、それぞれ、映像信号に応じた電流を液晶パネル13R〜Bに印加する集積回路により構成されている。液晶ドライバ23Rは、映像信号Rに応じて液晶パネル13Rを駆動するための電流を液晶パネル13Rに印加する。また、液晶ドライバ23Gは、映像信号Gに応じて液晶パネル13Gを駆動するための電流を液晶パネル13Gに印加する。また、液晶ドライバ23Bは、映像信号Bに応じて液晶パネル13Bを駆動するための電流を液晶パネル13Bに印加する。
【0034】
また、プロジェクタ1は、光源11に供給される電圧を制御する光源電圧制御部24と、プロジェクタ1の各部を制御する主制御部25と、主制御部25が実行するプログラム等の情報及びデータが記憶される記憶部26と、プロジェクタ1のユーザにより操作可能な操作部27とを備えている。
【0035】
光源電圧制御部24は、光源11に電力を供給する回路により構成されている。光源電圧制御部24は、主制御部25からの制御信号に基づいて、光源11に供給する電力を変更する。従って、主制御部25は光源電圧制御部24を介して光源11に供給される電力を制御する。
【0036】
主制御部25は、調光処理のプログラム、ガンマ補正制御処理のプログラム等を実行する集積回路により構成されている。主制御部25は、調光処理において光源11に供給される電力を制御する。また、主制御部25は、ガンマ補正制御処理においてガンマ補正部22によるガンマ補正の補正態様を制御する。
【0037】
記憶部26は、例えばEEPROMまたはフラッシュメモリ等の不揮発性メモリにより構成されている。記憶部26には、調光処理のプログラム、ガンマ補正制御処理のプログラム、ガンマ補正制御処理に用いるガンマ補正情報等が記憶されている。ガンマ補正情報は、ガンマ補正部22に入力された映像信号のレベルである入力信号レベルと、ガンマ補正部22から出力される映像信号のレベルである出力信号レベルとの対応を表すデータである。記憶部26に記憶される情報及びデータは読み書き可能であって、記憶部26に記憶されている情報及びデータを書き換えることもできる。
【0038】
操作部27は、押しボタンまたはタッチパネル等のマンマシンインタフェースにより構成されている。ユーザによる操作部27の操作内容に基づいて、映像表示時の表示モードとして、後述するブライトモード及びノーマルモードのうちいずれかが選択される。すなわち、操作部27の操作に基づいて、表示モードが変更され、操作部27は、光源11から出射される光量、すなわち光源11に供給される電力を指示するために操作される。
【0039】
以上のように構成されたプロジェクタ1は、光源11から出射される光量を光源電圧制御部24及び主制御部25により制御可能である。すなわち、光源電圧制御部24と主制御部25とにより構成される調光部1Aを備えるプロジェクタ1は、調光機能を有している。調光部1Aが調光処理を実行することにより、光源11から出射される光量を変化させる調光機能が機能する。
【0040】
調光処理における調光部1Aの動作についてより詳しく説明する。
調光部1Aは、光源11に供給される電力を変更することにより、点灯状態の光源から出射される光量を変更して表示モードを変更することができる。光源11に供給される電力を大きくすれば、光源11から出射される光の強度は大きくなる。本実施形態のプロジェクタ1は、表示モードとして、ノーマルモード及びブライトモードを有する。ブライトモードは、ノーマルモードに比べて映像を明るく表示することができる表示モードであって、調光処理が実行されることによって表示モードが切り替わる。表示モードの各モードは次のように定義される状態である。
「ノーマルモード」:光源11に供給される電力が所定量である状態
「ブライトモード」:ノーマルモードに比べて光源11に供給される電力が大きい状態
表示モードの切り替えはプロジェクタ1のユーザにより可能である。すなわち、映像表示時の表示モードの選択が可能である。調光部1Aは、選択されている表示モードとなるように、光源11を制御する。
【0041】
図2を参照して、光源11が出射する光のスペクトラム分布の一例を説明する。
図2のグラフにおいて、実線L1は、ブライトモードにおいて光源11が出射する光のスペクトラム分布を示すとともに、二点鎖線L2は、ノーマルモードにおいて光源11が出射する光のスペクトラム分布を示している。また、図2のグラフにおいては、ブライトモードにおける最大強度を100%の相対強度としている。
【0042】
ノーマルモードにおいては、ブライトモードに比べて光源11から出射される光の強度が全体的に小さい。そして、図2においては、緑色光に対応する550nmを含む波長帯域において、ノーマルモードにおける強度と、ブライトモードにおける強度との差異が比較的小さい。すなわち、赤色光に対応する630nmを含む波長帯域においては、ノーマルモードにおける強度と、ブライトモードにおける強度との差異が比較的大きい。また、青色光に対応する450nmを含む波長帯域においても、ノーマルモードにおける強度と、ブライトモードにおける強度との差異が比較的大きい。この波長帯域における強度の差異を補正するため、本実施形態では、ノーマルモードにおけるガンマ補正処理の処理内容と、ブライトモードにおけるガンマ補正処理の処理内容とを異ならせて、ガンマ補正処理の処理態様を変更する構成となっている。
【0043】
図3及び図4を参照して、ガンマ補正処理に用いるために記憶部26に記憶されているガンマ補正情報を説明する。記憶部26には、ガンマ補正処理に用いるガンマ補正曲線がガンマ補正情報として記憶されている。図3には、ブライトモードにおいてガンマ補正処理に用いられるガンマ補正曲線が図示され、図4には、ノーマルモードにおいてガンマ補正処理に用いられるガンマ補正曲線が図示されている。
【0044】
図3(a)及び図4(a)は、ガンマ補正前の映像信号Rの入力信号レベルと、ガンマ補正後の映像信号Rの出力信号レベルとの対応を示している。また、図3(b)及び図4(b)は、ガンマ補正前の映像信号Gの入力信号レベルと、ガンマ補正後の映像信号Gの出力信号レベルとの対応を示している。また、図3(c)及び図4(c)は、ガンマ補正前の映像信号Bの入力信号レベルと、ガンマ補正後の映像信号Bの出力信号レベルとの対応を示している。
【0045】
図3(a)に示すガンマ補正曲線は、液晶パネル13Rのガンマ特性に基づいて設定される。また、図3(b)に示すガンマ補正曲線は、液晶パネル13Gのガンマ特性に基づいて設定される。また、図3(c)に示すガンマ補正曲線は、液晶パネル13Bのガンマ特性に基づいて設定される。ガンマ補正部22は、映像信号R,G,Bの各々に応じてガンマ補正処理に用いるガンマ補正曲線を使い分けることにより、ホワイトバランスを調整することができる。ガンマ補正処理を行うことにより、例えば、色信号である映像信号Rの入力信号レベルに比例して、液晶パネル13Rを含む液晶ライトバルブにおける赤色光の透過率を変化させることができる。
【0046】
図4(a)及び(c)における破線は、ブライトモードにおけるガンマ補正曲線を示している。図4(a)に示すガンマ補正曲線は、補正後の映像信号Rのレベルが、ブライトモードにおけるガンマ補正曲線よりも高くなるように設定されている。また、図4(c)に示すガンマ補正曲線も、補正後の映像信号Bのレベルが、ブライトモードにおけるガンマ補正曲線よりも高くなるように設定されている。一方、図4(b)に示すガンマ補正曲線は、図3(b)に示すガンマ補正曲線と同じである。従って、調光前後において映像信号Gに対するガンマ補正処理の処理変化量、すなわち緑の色信号に対する調光前のガンマ補正曲線と調光後のガンマ補正曲線との乖離はゼロである。よって、調光前後において映像信号Rに対するガンマ補正処理の処理変化量D1、及び調光前後において映像信号Bに対するガンマ補正処理の処理変化量D2は、調光前後において映像信号Gに対するガンマ補正処理の処理変化量よりも大きい。
【0047】
図5を参照して、ガンマ補正制御処理の流れについて説明する。
まず、主制御部25が、選択されている表示モードを判定する(ステップS1)。すなわち、主制御部25は、映像表示時の表示モードとしてノーマルモード及びブライトモードのいずれが選択されているかを判定することにより、ステップS1においては光源11に供給される電力が判定される。
【0048】
次いで、主制御部25が、ステップS1において選択されている判定した表示モードに基づいて、ガンマ補正情報を記憶部26から選択する(ステップS2)。すなわち、ステップS2においては、映像表示時の表示モードとしてブライトモードが選択されているときには、図3で示したガンマ補正曲線の情報を記憶部26から取得する。また、映像表示時の表示モードとしてノーマルモードが選択されているときには、図4で示したガンマ補正曲線の情報を記憶部26から取得する。ステップS2において取得したガンマ補正曲線の情報は、主制御部25からガンマ補正部22に制御信号として入力される。
【0049】
そして、ガンマ補正部22が、主制御部25から入力されたガンマ補正曲線の情報を含む制御信号に基づいて、映像信号を構成する色信号に対してガンマ補正処理を実行する(ステップS3)。このようにして、映像表示時の表示モードとしてブライトモードが選択されているときには、図3で示したガンマ補正曲線に基づいてガンマ補正処理が実行される。また、映像表示時の表示モードとしてノーマルモードが選択されているときには、図4で示したガンマ補正曲線に基づいてガンマ補正処理が実行される。
【0050】
本発明の作用について説明する。
ガンマ補正部22は、ノーマルモードとブライトモードとにおいてガンマ補正処理の処理態様を変更することによって、ノーマルモードとブライトモードとにおける光源11が出射する光のスペクトラム分布の差異を解消するようにホワイトバランスを調整する。すなわち、ガンマ補正部22において、調光前のホワイトバランスと調光後のホワイトバランストとが同じになるようにガンマ補正処理が実行される。具体的には、ノーマルモードにおいては、ブライトモードに比べて、ガンマ補正前に対するガンマ補正後の赤の色信号(映像信号R)及び青の色信号(映像信号B)の変化量を大きくして、緑がかった映像の表示を抑制している。よって、例えば、ガンマ補正部22に入力される映像信号に含まれる色信号が無彩色を示す色信号であるとき、明度に関わらず調光前後において無彩色の映像が適切に表示される。
【0051】
本実施形態のプロジェクタ1によれば、以下の作用効果を得ることができる。
(1)調光機能により光量が変化する前の映像のホワイトバランスを調光前ホワイトバランスとし、調光機能により光量が変化した後の映像のホワイトバランスを調光後ホワイトバランスとしたとき、ガンマ補正部22が、ガンマ補正処理の処理態様を変更することによって、調光前ホワイトバランスに近づけるように調光後ホワイトバランスを調整する。このため、調光に伴って光源11が出射する光のスペクトラム分布が変化しても、調光機能により光量が変化した後の映像のホワイトバランスが、調光機能により光量が変化する前の映像のホワイトバランスに近づくことによって、調光に起因する映像の色合いの変化を抑制することができる。また、調光に起因する映像の色合いの変化を抑制するための処理が施された映像信号に対してガンマ補正処理が行われる場合には、所望のガンマ補正処理が行われることにより映像の色合いが変化するおそれがある。本実施形態によれば、ガンマ補正部22によって調光に起因する映像の色合いの変化を抑制する構成となるため、調光に起因する映像の色合いの変化を抑制するための信号処理が施された映像信号に対してガンマ補正処理が行われる構成に比べて、効果的に映像の色合いの変化を抑制することができる。また、ガンマ補正部22によって調光に起因する映像の色合いの変化を抑制する構成となるため、調光に起因する映像の色合いの変化を抑制するための専用の信号処理部(不図示)を設ける場合に比べて、プロジェクタ1の構成の簡略化を図ることが可能である。よって、本実施形態によれば、調光に起因する映像の色合いの変化を効果的に抑制することができ、かつ、プロジェクタ1の構成の簡略化を図ることが可能となる。
【0052】
(2)ガンマ補正部22は、光源11が出射する光のスペクトラム分布に応じてガンマ補正処理の処理態様を変更することにより、映像のホワイトバランスを調整する。このため、調光後における光源11が出射する光のスペクトラム分布に応じて、ホワイトバランスを調整するためのガンマ補正処理の処理態様が決定される。
【0053】
(3)プロジェクタ1は、光源11が出射する光のスペクトラム分布に基づいたガンマ補正情報を記憶する記憶部26を備え、ガンマ補正部22は、光源11に供給する電力に基づいて記憶部26から選択されるガンマ補正情報に応じて、ガンマ補正処理の処理態様を変更する。このため、プロジェクタ1が光源11から出射された光量を波長毎に検出せずとも、光源11が出射する光のスペクトラム分布に応じたガンマ補正処理の処理態様の変更が可能である。
【0054】
(4)ガンマ補正部22は、赤の色信号に対するガンマ補正処理の調光前後における処理変化量D1を、緑の色信号に対するガンマ補正処理の調光前後における処理変化量に比べて大きく変化させることにより、調光前ホワイトバランスに近づけるように調光後ホワイトバランスを調整する。従って、赤の色信号または緑の色信号に対するガンマ補正処理の処理態様を変更することにより調光後ホワイトバランスを調光前ホワイトバランスに近づけることができる場合に、ガンマ補正処理に起因する輝度の変化を抑制しながらも、調光前後における映像の色合いの変化を抑制することができる。
【0055】
(5)ガンマ補正部22は、青の色信号に対するガンマ補正処理の調光前後における処理変化量D2を、緑の色信号に対するガンマ補正処理の調光前後における処理変化量に比べて大きく変化させることにより、調光前ホワイトバランスに近づけるように調光後ホワイトバランスを調整する。従って、青の色信号または緑の色信号に対するガンマ補正処理の処理態様を変更することにより調光後ホワイトバランスを調光前ホワイトバランスに近づけることができる場合に、ガンマ補正処理に起因する輝度の変化を抑制しながらも、調光前後における映像の色合いの変化を抑制することができる。
【0056】
なお、本発明は、上記実施形態に限られず、本発明の趣旨に基づいて種々の設計変更をすることが可能であって、それらを本発明の範囲から除外するものではない。例えば、上記実施形態を以下のように変更してもよく、以下の変更を組み合わせて実施してもよい。
【0057】
・上記実施形態では、記憶部26にガンマ補正情報が予め記憶されている構成であるが、光源11から出射される光のスペクトラム分布に応じたガンマ補正処理が実行できるのであれば、記憶部26にガンマ補正情報が予め記憶されていなくてもよい。
【0058】
図6に示すように、例えば、プロジェクタ1が、光源11から出射された光量を赤色光及び緑色光及び青色光の波長毎に検出する光量検出部28を備え、光量検出部28を用いて取得されるスペクトラム分布情報に応じてガンマ補正情報を作成する構成を採用することもできる。
【0059】
光量検出部28は、分光器及び検出器を備える分光測定器により構成されている。本変形例においては、光源11から出射される光は、光分離部12だけでなく光量検出部28にも入射するように構成されている。光量検出部28は、波長毎の光量の検出結果を主制御部25に出力する。
【0060】
本変形例の主制御部25は、波長毎の光量の検出結果に基づいてスペクトラム分布情報を取得するとともに、スペクトラム分布情報に基づいて調光前後における色合いの変化を抑制するガンマ補正情報を作成する。
【0061】
図7を参照して、本変形例に係るガンマ補正制御処理の流れについて説明する。
まず、光量検出部28が、波長毎の光量を検出する(ステップS11)。すなわち、ステップS11では、光源11により出射された光からスペクトラム分布情報を取得する。
【0062】
次いで、主制御部25が、スペクトラム分布情報を取得して、赤色光及び緑色光及び青色光の波長毎の光量に基づいて、ガンマ補正情報としてガンマ補正曲線を作成する(ステップS12)。ステップS12において作成したガンマ補正曲線の情報は、主制御部25からガンマ補正部22に制御信号として入力される。
【0063】
そして、ガンマ補正部22が、主制御部25から入力されたガンマ補正曲線の情報を含む制御信号に基づいて、映像信号を構成する色信号に対してガンマ補正処理を実行する(ステップS13)。このようにして、光源11が出射する光量に基づいて作成されたガンマ補正曲線に基づいてガンマ補正処理が実行される。
【0064】
以上のように、プロジェクタ1が、光源11から出射された光量を波長毎に検出する光量検出部28を備え、ガンマ補正部22は、光量検出部28を用いて取得されるスペクトラム分布情報に応じて、ガンマ補正処理の処理態様を変更することもできる。このような構成によれば、光源11が交換可能な構成において、種々の光源11が出射する光のスペクトラム分布に応じてガンマ補正処理の処理態様を変更することが容易に可能である。
【0065】
・上記実施形態では、赤の色信号及び青の色信号に対するガンマ補正処理の調光前後における処理変化量を、緑の色信号に対するガンマ補正処理の調光前後における処理変化量に比べて大きく変化させているが、上記(1)の効果を得ることができれば、各色の色信号に対する調光前後の処理変化量は適宜変更してもよい。
【0066】
例えば、赤の色信号または青の色信号に対するガンマ補正処理の調光前後における処理変化量を変化させずに、他の2色の色信号に対するガンマ補正処理の調光前後における処理変化量を変化させてもよい。また、赤の色信号及び青の色信号に対するガンマ補正処理の調光前後における処理変化量を変化させずに、緑の色信号に対するガンマ補正処理の調光前後における処理変化量を変化させてもよい。すなわち、赤の色信号及び青の色信号に対するガンマ補正処理の調光前後における処理変化量を、緑の色信号に対するガンマ補正処理の調光前後における処理変化量に比べて小さくするようにしてもよい。
【0067】
・上記実施形態では、映像を投写して表示するプロジェクタ1を一例として本発明を説明しているが、プロジェクタ1以外の映像表示装置に本発明を適用することもできる。
【符号の説明】
【0068】
1…液晶プロジェクタ(映像表示装置)、1A…調光部、11…光源、12…光分離部、13R,13G,13B…液晶パネル、14…光合成部、15…投射レンズ、21…信号処理部、22…ガンマ補正部、23R,23G,23B…液晶ドライバ、24…光源電圧制御部、25…主制御部、26…記憶部、27…操作部、28…光量検出部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力の供給を受けて光を出射する映像表示用の光源と、この光源に供給する電力を制御する光源電圧制御部と、映像信号を構成する色信号の各々に対してガンマ補正処理を施すことによりガンマ補正を行うガンマ補正部とを備え、前記光源電圧制御部で前記光源に供給する電力を変動させることにより前記光源から出射される光量を調整する調光機能を有する映像表示装置であって、
前記調光機能により光量が変化する前の映像のホワイトバランスを調光前ホワイトバランスとし、前記調光機能により光量が変化した後の映像のホワイトバランスを調光後ホワイトバランスとしたとき、
前記ガンマ補正部が、ガンマ補正処理の処理態様を変更することによって、調光前ホワイトバランスに近づけるように調光後ホワイトバランスを調整する
ことを特徴とする映像表示装置。
【請求項2】
前記ガンマ補正部は、前記光源が出射する光のスペクトラム分布に応じてガンマ補正処理の処理態様を変更することにより、映像のホワイトバランスを調整する
ことを特徴とする請求項1に記載の映像表示装置。
【請求項3】
前記光源が出射する光のスペクトラム分布に基づいたガンマ補正情報を記憶する記憶部を備え、
前記ガンマ補正部は、前記光源に供給する電力に基づいて前記記憶部から選択されるガンマ補正情報に応じて、ガンマ補正処理の処理態様を変更する
ことを特徴とする請求項2に記載の映像表示装置。
【請求項4】
前記光源から出射された光量を波長毎に検出する光量検出部を備え、
前記ガンマ補正部は、前記光量検出部を用いて取得されるスペクトラム分布情報に応じて、ガンマ補正処理の処理態様を変更する
ことを特徴とする請求項2に記載の映像表示装置。
【請求項5】
映像信号は、赤色に対応する赤の色信号と、緑色に対応する緑の色信号と、青色に対応する青の色信号とを含み、
前記ガンマ補正部は、赤の色信号に対するガンマ補正処理の調光前後における処理変化量を、緑の色信号に対するガンマ補正処理の調光前後における処理変化量に比べて変化させることにより、調光前ホワイトバランスに近づけるように調光後ホワイトバランスを調整する
ことを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の映像表示装置。
【請求項6】
映像信号は、赤色に対応する赤の色信号と、緑色に対応する緑の色信号と、青色に対応する青の色信号とを含み、
前記ガンマ補正部は、青の色信号に対するガンマ補正処理の調光前後における処理変化量を、緑の色信号に対するガンマ補正処理の調光前後における処理変化量に比べて変化させることにより、調光前ホワイトバランスに近づけるように調光後ホワイトバランスを調整する
ことを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の映像表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−253678(P2012−253678A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−126561(P2011−126561)
【出願日】平成23年6月6日(2011.6.6)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【Fターム(参考)】