映像記録装置と映像記録制御方法
【課題】映像を複数の装置で記録する際に、同期して映像を記録できるようにする。
【解決手段】ビデオカメラ20は、ビデオテープ80に対する映像の記録開始前に、映像の記録開始タイミング情報、例えば映像記録開始までのフレーム数を示す情報を、例えばHD−SDI信号のブランキング期間に多重されるタイムコード情報のユーザビット領域を利用して多重してレコーダ30に出力する。レコーダ30は、多重されている記録開始タイミング情報に基づき記録準備を行う。その後、レコーダ30は、ビデオカメラ20でビデオテープ80に対する映像の記録開始に同期させてメモリカード85に対する映像の記録を開始させて、ビデオテープ80に記録された映像と等しい映像をメモリカード85に記録させる。
【解決手段】ビデオカメラ20は、ビデオテープ80に対する映像の記録開始前に、映像の記録開始タイミング情報、例えば映像記録開始までのフレーム数を示す情報を、例えばHD−SDI信号のブランキング期間に多重されるタイムコード情報のユーザビット領域を利用して多重してレコーダ30に出力する。レコーダ30は、多重されている記録開始タイミング情報に基づき記録準備を行う。その後、レコーダ30は、ビデオカメラ20でビデオテープ80に対する映像の記録開始に同期させてメモリカード85に対する映像の記録を開始させて、ビデオテープ80に記録された映像と等しい映像をメモリカード85に記録させる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この技術は、映像記録装置と映像記録制御方法に関する。詳しくは、撮像装置等で映像を記録する際に、該映像を他の映像記録装置で同期して記録できるようにする。
【背景技術】
【0002】
従来、ビデオカメラ(カムコーダ)で映像を記録する際に、ビデオカメラで記録される映像を他の映像記録装置でも記録することが可能とされている。例えば特許文献1では、代表取材を行う放送局のビデオカメラから記録/記録停止のコマンドを映像に多重して出力することが行われている。このため、他の放送局のビデオテープレコーダでは、映像に多重されているコマンドに基づき動作制御を行うことで、ビデオカメラの記録動作と連動して映像を記録することが可能とされている。なお、代表取材とは、複数の放送局から1つの放送局を幹事局と決め、幹事局のカメラマンがビデオカメラを取材現場に持ち込む。また、他の放送局はビデオテープレコーダを用意しておき、幹事局のカメラマンがビデオカメラで撮影・録画する映像を、他の各放送局のビデオテープレコーダにも分配して記録させる取材方法である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−262194号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、映像に多重されている記録/記録停止のコマンドに基づいて動作制御を行う場合、他の映像記録装置で記録された映像は、ビデオカメラで記録された映像とタイミングが異なる映像となってしまう場合がある。例えばビデオカメラから出力された映像を記録する映像記録装置は、記録開始コマンドの受信に応じて記録動作制御を開始する。したがって、記録開始コマンドの受信から記録媒体に対して映像が実際に記録されるまでに時間を要すると、他の映像記録装置で記録された映像は、ビデオカメラで記録された映像よりも記録開始タイミングが遅れた映像となってしまう。
【0005】
そこで、この技術では、映像を複数の装置で記録する際に、同期して映像を記録できる映像記録装置と映像記録制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この技術の第1の側面は、映像を記録媒体に記録する記録処理部と、前記映像の出力を行う出力処理部と、前記記録処理部での前記記録媒体に対する映像の記録開始前に、該映像の記録開始タイミング情報を前記出力処理部から出力する前記映像に多重する制御部とを備える映像記録装置にある。
【0007】
この技術においては、記録処理部で記録媒体に対する映像の記録開始前に、映像の記録開始タイミング情報、例えば映像の記録開始までの期間を示す情報や時間の経過とともに更新される記録開始までのフレーム数が、シリアルディジタルインタフェース規格の映像信号に多重される。また、記録開始タイミング情報には、映像の記録を行うための準備状態であること示す情報が含められる。記録開始タイミング情報は、映像信号のブランキング期間、例えばブランキング期間に多重されるタイムコード情報のユーザビット領域を利用して多重される。また、記録媒体に対する映像記録終了時には、映像の記録終了を示す情報が多重される。さらに、映像を記録する記録媒体から、この記録媒体に設定されている固有の識別情報が読み出されて、この識別情報から生成した時分割情報が映像に多重される。
【0008】
この技術の第2の側面は、映像を記録媒体に記録する工程と、前記映像の出力を行う工程と、前記記録媒体に対する映像の記録開始前に、該映像の記録開始タイミング情報を出力する前記映像に多重する工程とを含む映像記録制御方法にある。
【0009】
この技術の第3の側面は、入力された映像に多重されている該映像を出力した装置における該映像の記録開始タイミング情報を抽出する入力処理部と、前記入力された映像を記録媒体に記録する記録処理部と、前記入力処理部で抽出された記録開始タイミング情報に基づき前記記録処理部の動作を制御して、前記映像を出力した装置における映像の記録動作と同期させて、前記入力された映像の前記記録媒体への記録を行わせる制御部とを備える映像記録装置にある。
【0010】
この技術の第4の側面は、入力された映像に多重されている該映像を出力した装置における該映像の記録開始タイミング情報を抽出する工程と、前記入力された映像を記録媒体に記録する工程と、前記抽出された記録開始タイミング情報に基づき、前記映像を出力した装置における映像の記録動作と同期させて、前記入力された映像の前記記録媒体への記録を行わせる工程とを備える映像記録制御方法にある。
【発明の効果】
【0011】
この技術によれば、記録媒体への映像の記録と映像の出力を行う映像記録装置では、記録媒体に対する映像の記録開始前に、映像の記録開始タイミング情報が映像に多重して出力される。また、記録開始タイミング情報が多重された映像が入力される映像記録装置では、多重されている記録開始タイミング情報に基づき、映像を出力した装置における映像の記録動作と同期させて、入力された映像の記録媒体への記録が開始される。このため、映像を複数の装置で記録する際に、同期して映像を記録できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】映像記録システムの構成を示す図である。
【図2】ビデオカメラの構成を示す図である。
【図3】レコーダの構成を示す図である。
【図4】ビデオテープとメモリカードに同期させて映像を記録する場合のビデオカメラの動作を示すフローチャートである。
【図5】ビデオテープとメモリカードに同期させて映像を記録する場合のレコーダの動作を示すフローチャートである。
【図6】HD−SDI信号の1ラインのブランキング期間を示す図である。
【図7】時間情報パケットの構造を示す図である。
【図8】VITCの構成を示す図である。
【図9】記録開始から記録終了までの「DATA2」を例示した図である。
【図10】ビデオテープの識別情報をHD−SDI信号に多重する場合のビデオカメラの動作を示すフローチャートである。
【図11】識別情報が多重されているHD−SDI信号を受信して映像の記録を行うレコーダの動作を示すフローチャートである。
【図12】識別情報を多重する場合の「DATA0」「DATA1」の具体例を示した図である。
【図13】映像の記録から終了までの動作シーケンスを例示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本技術を実施するための形態について説明する。なお、説明は以下の順序で行う。
1.映像記録システムの構成
2.ビデオカメラの構成
3.レコーダの構成
4.映像データの記録動作
5.映像の他の記録動作
6.映像の記録から終了までの動作シーケンス例
【0014】
<1.映像記録システムの構成>
図1は、本技術の映像記録装置を用いた映像記録システムの構成を例示している。映像記録システム10は、ビデオカメラ(カムコーダ)20とレコーダ30を有している。ビデオカメラ20は、装着されている記録媒体例えばビデオテープ80に映像を記録すると共に記録する映像の出力を行う映像記録装置である。レコーダ30は、装着されている記録媒体例えばメモリカード85に、ビデオカメラ20から出力された映像を記録する映像記録装置である。
【0015】
また、映像記録システム10で編集作業を行う場合、例えばビデオテープレコーダ40と編集装置50,60が設けられる。
【0016】
ビデオテープレコーダ40は、ネットワーク70を介して編集装置60と接続されている。ビデオテープレコーダ40は、ビデオテープ80に記録された映像を再生して、ネットワーク70を介して編集装置60に供給する。
【0017】
編集装置50は、メモリカード85に記録されている映像を利用して編集処理を行い、映像の選択や合成を行うためのリストデータを生成する。例えばメモリカード85に記録されている映像を再生してIN点やOUT点等を決定して、これらの位置等を示すリストデータ、例えばEDL(Edit Decision List),ALE(AVID Log Exchange)を生成する。また、Final Cut Pro(商標)によってXMLファイルを生成する。
【0018】
編集装置60は、ビデオテープレコーダ40で再生された映像を用いて、画質補正や色調補正等を行う。さらに、編集装置60は、編集装置50で生成されたリストデータに基づき、映像の選択や合成を行い、編集処理後の映像データを生成する。
【0019】
このように、ビデオカメラ20は、装着されているビデオテープ80に映像を記録すると共に記録する映像の出力を行い、レコーダ30は、ビデオカメラ20から出力された映像を装着されているメモリカード85に記録する。このようにすれば、メモリカード85に記録されている映像を利用したリストデータの生成と、ビデオテープ80に記録されている映像の補正処理等を並行して行うことが可能となり、編集作業を効率良く行うことができる。
【0020】
ビデオカメラ20は、装着されているビデオテープ80に記録された映像とレコーダ30に装着されているメモリカード85に記録される映像を同期させるため、ビデオテープ80に対する映像の記録開始前に、この映像記録に関する情報を映像に多重して出力する。
【0021】
レコーダ30は、映像に多重されている情報に基づきビデオカメラ20での映像の記録動作と同期させて、入力された映像の記録媒体への記録を開始して、ビデオカメラ20とレコーダ30で同期して映像の記録を行う。
【0022】
<2.ビデオカメラの構成>
図2は、ビデオカメラ20の構成を示している。ビデオカメラ20は、カメラ部21、記録再生処理部22、出力処理部23、テープ駆動部24、識別情報読出部25、制御部26、操作部27を有している。
【0023】
カメラ部21は、撮像光学系や撮像素子、カメラ信号処理部等で構成されている。カメラ部の撮像光学系は、撮像素子の撮像面上に所望の明るさの光学像を結像させる。撮像素子は光電変換を行い、撮像面上に結像された光学像に応じた撮像信号を生成する。カメラ信号処理部は、撮像信号のノイズ除去やA/D変換、ニー補正やガンマ補正、ホワイトバランス調整等の種々のカメラ信号処理を行い、映像データを生成する。
【0024】
記録再生処理部22は、カメラ部21で生成された映像データ等をビデオテープ80に記録する記録処理を行う。また、記録再生処理部22は、ビデオテープ80に記録されている映像データ等を再生する処理を行う。
【0025】
出力処理部23は、カメラ部21で生成された映像データを、所定フォーマットで出力する。出力処理部23は、例えばシリアルディジタルインタフェース規格に準拠したHD−SDI(Serial Digital Interface)信号として、レコーダ30に出力する。また、出力処理部23は、後述する制御部26から供給された情報をHD−SDI信号に多重して出力する。
【0026】
テープ駆動部24は、制御部26から供給された制御信号に基づき、ビデオテープ80の駆動を行う。また、テープ駆動部24は、テープ駆動状態を監視して、ビデオテープ80が所定のテープ走行速度で駆動されている状態となったときロック通知を制御部26に出力する。さらに、テープ駆動部24は、ビデオテープ80が装着されているか否かを検出して検出情報を制御部26に出力する。
【0027】
識別情報読出部25は、ビデオテープ80に設定されているテープ固有の識別情報を読み出して制御部26に出力する。例えばビデオテープ80に、近距離無線通信を行うための非接触ICタグが設けられている場合、識別情報読出部25は、非接触ICタグと無線通信を行い、ビデオテープ80に設定されているテープ固有の識別情報を読み出して制御部26に出力する。なお、ビデオテープ固有の識別情報は、近距離無線通信に限らず他の方法で取得できる構成であってもよい。例えば識別情報をバーコード等で表示して、光学的に情報を読み取るようにしてもよい。さらに、情報の読み出しは非接触型に限らす接触型であってもよい。
【0028】
制御部26には操作部27が接続されている。操作部27には、電源スイッチや記録開始終了スイッチ、ビデオカメラ20の動作設定等を行うための各操作スイッチが設けられている。操作部27は、ユーザのスイッチ操作に応じた操作信号を生成して制御部26に出力する。
【0029】
制御部26は、マイクロコンピュータ等を用いて構成されている。制御部26は、ビデオカメラ20の動作がユーザ操作に応じた動作となるように、操作部27から供給された操作信号に基づき制御信号を生成して各部に供給する。また、制御部26は、映像をビデオテープ80に記録する場合、映像の記録開始前に、映像記録に関する情報を生成して出力処理部23に供給してHD−SDI信号に多重させることで、多重された情報に基づきレコーダ30で同期して映像を記録できるようにする。制御部26は、映像記録に関する情報として映像の記録開始タイミング情報、例えば映像の記録開始までの期間を示す情報を多重する。また、制御部26は、映像が記録される記録媒体に設定されている記録媒体固有の識別情報、例えば識別情報読出部25で読み出されたテープ固有の識別情報を多重する。
【0030】
<3.レコーダの構成>
図3はレコーダ30の構成を示している。レコーダ30は、入力処理部31、記録処理部32、制御部33を有している。
【0031】
入力処理部31は、ビデオカメラ20から出力されたHD−SDI信号に多重されている情報を抽出して制御部33に出力する。また、HD−SDI信号から映像のデータを抽出して記録処理部32に出力する。
【0032】
記録処理部32は、制御部33から供給された制御信号に基づき、入力処理部31から供給された映像をメモリカード85に記録する処理を行う。
【0033】
制御部33は、入力処理部31で抽出された情報に基づいて生成した制御信号を記録処理部32に供給することで、メモリカード85に対する映像の記録を制御する。例えば、制御部33は、入力処理部31で抽出された情報に基づきメモリカード85に映像を記録する準備を行い、その後ビデオカメラ20におけるビデオテープ80への映像の記録に同期させて、メモリカード85に映像を記録させる。また、制御部33は、抽出した情報に含まれているテープ固有の識別情報を、入力された映像に関連付けてメモリカード85に記録させる。
【0034】
<4.映像データの記録動作>
図4は、ビデオテープ80とメモリカード85に同期させて映像を記録する場合のビデオカメラ20の動作、図5は、ビデオテープ80とメモリカード85に同期させて映像を記録する場合のレコーダ30の動作を示すフローチャートである。なお、以下の説明では、ビデオカメラ20からレコーダ30に出力される信号をHD−SDI信号とする。
【0035】
ビデオカメラ20における操作部27の記録スイッチが操作されると、ステップST1で制御部26はRECコマンドを発行する。制御部26は操作部27からの操作信号に基づき記録開始操作が行われたことを検出したとき、テープ駆動部24に対してRECコマンドを発行してステップST2に進む。
【0036】
ステップST2でテープ駆動部24は、テープ駆動動作を開始する。テープ駆動部24は、RECコマンドが発行されたことに応じて、ビデオテープ80の駆動動作を開始する。また、テープ駆動部24は、ビデオテープ80が所定のテープ走行速度で駆動されているロック状態となったとき、ロック状態であることを示すロック通知を制御部26に出力してステップST3に進む。
【0037】
ステップST3で制御部26は、記録開始タイミング情報を生成する。制御部26は、ロック通知がテープ駆動部24から供給されたことに応じて記録開始タイミング情報を生成する。制御部26は、ビデオテープ80が所定のテープ走行速度で駆動されているロック状態となったことから、ビデオテープ80に対して映像の記録が可能であると判別して、記録開始タイミング情報を生成する。制御部26は、記録開始タイミング情報として例えば何フレーム後に映像の記録を開始するかを示すカウントダウン初期値を生成する。
【0038】
ステップST4で制御部26は、記録開始動作制御を行う。制御部26は、記録再生処理部22の動作制御を行い、記録開始タイミング情報に基づくタイミングでビデオテープ80に対する映像の記録を開始させる。また、制御部26は、ビデオテープ80に記録される映像と同期した映像をレコーダ30でメモリカード85に記録させるため、記録開始タイミング情報を出力処理部23に供給して、出力処理部23から出力するHD−SDI信号に多重させる。
【0039】
制御部26は、記録開始タイミング情報として上述のように何フレーム後に映像の記録を開始するかを示すカウントダウン値を生成する。この場合、制御部26は、カウントダウン初期値からフレーム単位でカウントダウンを行い、カウントダウン値が「0」となるフレームから映像をビデオテープ80に記録させる。また、出力処理部23は、カウントダウン値をHD−SDI信号に多重させる。このように、HD−SDI信号に映像記録開始までのフレーム数を示すカウントダウン値を多重すると、レコーダ30では、カウントダウン値で示されたフレーム後に、映像がビデオテープ80に記録されることを判別できる。したがって、レコーダ30は、ビデオテープ80に記録される映像と同期した映像をメモリカード85に記録できるように記録準備を行うことができる。
【0040】
ステップST5で制御部26は、記録終了であるか判別する。制御部26は、操作部27からの操作信号に基づき記録終了操作が行われたことを検出した場合にステップST6に進み、記録終了操作が行われたことを検出していない場合にステップST5に戻る。
【0041】
ステップST6で制御部26は、STOPコマンドを発行する。制御部26は、記録再生処理部22や出力処理部23およびテープ駆動部24に対してSTOPコマンドを発行する。記録再生処理部22は、STOPコマンドが発行されたことに応じてビデオテープ80に対する映像の記録を停止する。例えば、STOPコマンドが発行された場合、次のフレームから映像の記録を停止する。テープ駆動部24は、ビデオテープ80に対する映像の記録の停止後に例えばテープ駆動を停止する。出力処理部23は、STOPコマンドが発行されたことに応じて、メモリカード85への映像の記録を終了させる記録終了情報をHD−SDI信号に多重させる。例えば、STOPコマンドが発行された場合、次のフレームの先頭に記録終了情報を多重させる。
【0042】
図5のステップST11で制御部33は、多重されている情報を取得する。制御部33は、入力処理部31によってHD−SDI信号から抽出された情報を取得してステップST12に進む。
【0043】
ステップST12で制御部33は、抽出された情報に基づき記録準備を行う。制御部33は、抽出された記録開始タイミング情報例えばカウントダウン初期値やカウントダウン値に基づき映像の記録準備を行いステップST13に進む。
【0044】
ステップST13で制御部33は記録動作を開始する。制御部33は、記録開始タイミング情報に基づき記録処理部32を制御して、ビデオカメラ20におけるビデオテープ80への映像の記録と同期させて、メモリカード85に映像を記録する。例えば、制御部33は、カウントダウン値が「0」となったフレームからメモリカード85への映像の記録を開始してステップST14に進む。
【0045】
ステップST14で制御部33は記録終了であるか判別する。制御部33は、抽出された情報が記録終了情報である場合にステップST15に進み、記録終了情報でない場合はステップST14に戻る。
【0046】
ステップST15で制御部33は記録動作を終了する。制御部33は記録処理部32を制御してメモリカード85への映像の記録を終了させる。
【0047】
このように、ビデオカメラ20においてビデオテープ80に対する映像の記録開始前に、映像の記録開始タイミング情報が、HD−SDI信号に多重されてレコーダ30に供給される。したがって、レコーダ30は、ビデオカメラ20における映像の記録開始タイミングに合わせて記録の準備を行うことができる。さらに、レコーダ30は、ビデオテープ80に対する映像の記録が開始された場合、記録開始タイミング情報に基づき同期した映像をメモリカード85に記録を行うことができる。また、ビデオテープ80に対する映像の記録を終了する場合、レコーダ30に対して記録終了情報が通知されるので、ビデオテープ80に対する映像の記録の終了に同期させてメモリカード85に対する映像の記録を終了させることができる。
【0048】
次に、情報の伝送について説明する。なお、以下の説明は、HD−SDI信号に多重される時間情報、例えばVITC(Vertical Interval Time Code)のユーザビット領域を使用して情報を伝送する場合である。
【0049】
図6は、HD−SDI信号の1ラインのブランキング期間を示している。図6の(A)は輝度信号データ系列(Yデータ系列)におけるブランキング期間、図6の(B)は、色差信号データ系列(PB/PRデータ系列)におけるブランキング期間を示している。なお、Yデータ系列およびPB/PRデータ系列の夫々を形成するワードデータは、例えば10ビット構成とされている。
【0050】
ブランキング期間では、4ワードからなるタイミング基準コードデータEAV(End of Active Video)、2ワードからなるライン番号データ、2ワードからなる誤り検出符号データ、268ワード分の補助データ/未定義領域、4ワードからなるタイミング基準コードデータSAV(SAV:Start of Active Video)が設けられている。また、輝度信号データ系列の補助データ/未定義領域に、時間情報のパケット(以下「時間情報パケット」という)が設けられる。
【0051】
時間情報パケットの構造は、例えば図7に示す構造とされている。「ADF(ancillary data flag word)」は、補助データフラグであり補助データパケットの開始を示している。「DID(data identification word)」と「SDID(secondary data identification word)」は、データ識別フラグである。このDIDあるいはDIDとSDIDによって、補助データがどのような種類のデータであるかが示される。「DC(data count)」は、「UDW(user data words)」のワード数を示すものである。「UDW」は、伝送する情報を示すものであり、「UDW」にVITCが含められる。
【0052】
図8は、SMPTE−12M規格に準拠したVITCの構成を示している。VITCの第0ビット、第1ビット、第10ビット、第11ビットは第20ビット、第21ビット、第30ビット、第31ビット、第40ビット、第41ビット、第50ビット、第51ビット、第60ビット、第61ビット、第70ビット、第71ビット、第80ビット、第81ビットは同期ビットである。
【0053】
第2〜第5ビットは、フレーム情報エリアでありフレームの「1」の位を示す。第12,第13ビットは、フレーム情報エリアでありフレームの「10」の位を示す。第22〜第25ビットは、秒情報エリアであり秒の「1」の位を示す。第32〜第34ビットは、秒情報エリアであり秒の「10」の位を示す。第42〜第45ビットは、分情報エリアであり分の「1」の位を示す。第52〜第54ビットは、分情報エリアであり分の「10」の位を示す。第62〜第65ビットは、時間情報エリアであり時間の「1」の位を示す。第72,第73ビットは、時間情報エリアであり時間の「10」の位を示す。また、第6〜第9ビット、第16〜第19ビット、第26〜第29ビット、第36〜第39ビット、第46〜第49ビット、第56〜第59ビット、第66〜第69ビット、第76〜第79ビットはユーザビット領域である。なお、第35,第55ビットは、フラグの領域である。
【0054】
ビデオカメラ20の出力処理部23は、時間情報パケットのユーザビット領域に情報を多重する。多重する情報は、例えば「DATA0」〜「DATA4」とする。「DATA0」の下位4ビットのデータは、第6〜第9ビットの領域、「DATA0」の上位4ビットのデータは、第16〜第19ビットのユーザビット領域に多重される。「DATA1」の下位4ビットのデータは、第26〜第29ビットのユーザビット領域、「DATA1」の上位4ビットのデータは、第36〜第39ビットのユーザビット領域に多重される。「DATA2」の下位4ビットのデータは、第46〜第49ビットのユーザビット領域、「DATA2」の上位4ビットのデータは、第56〜第59ビットのユーザビット領域に多重される。「DATA3」の下位4ビットのデータは、第66〜第69ビットのユーザビット領域、「DATA3」の上位4ビットのデータは、第76〜第79ビットのユーザビット領域に多重される。
【0055】
表1は、多重する情報の「DATA0」〜「DATA4」の構造を示している。「DATA0」は情報データである。情報データでは、送信するデータの全長、コマンド、コマンドに対応するデータ、チェックサム等の情報が示される。「DATA1」は、送信するデータの全長において、何番目のデータであるかが示される。「DATA2」は、ビデオカメラ20の動作および記録開始タイミング情報等が示される。なお「DATA3」はリザーブ領域である。
【表1】
【0056】
表2は、「DATA2」のビットアロケーションを例示している。「DATA2」は、ビット5とビット4の2ビット分で動作状態を示している。ビデオカメラ20で映像の記録が停止されている状態(IDLE)である場合、例えばビット5とビット4の2ビットは「11(0x3)」とする。ビデオカメラ20が映像の記録状態(REC)である場合、例えばビット5とビット4の2ビットは「00(0x0)」とする。また、映像の記録開始操作が行われてビデオカメラ20が映像の記録を行うための準備状態(以下「記録シーケンス開始状態(SRS:Start Rec Sequence)」という)である場合、例えばビット5とビット4の2ビットは「01(0x1)」とする。さらに、ビット5とビット4の2ビットが「01(0x1)」である場合、ビット2〜ビット0の3ビットで示される値は、カウントダウン値であり、この値が示すフレーム後に映像の記録が開始されることを示している。
【表2】
【0057】
図9は、記録開始から記録終了までの「DATA2」を例示している。制御部26は、ビデオカメラ20で映像の記録が停止されている状態である場合、「DATA2」のビット5とビット4の2ビットを「11(0x3)」とする。また、制御部26は、ビット2〜ビット0でカウントダウン初期値を示すものとする。例えばカウントダウン初期値を「7」とする場合、ビット2〜ビット0を「111(0x7)」とする。
【0058】
制御部26は、映像の記録開始操作が行われて記録シーケンス開始状態である場合、「DATA2」のビット5とビット4の2ビットは「01(0x1)」とする。また、テープ駆動等が同期した状態となるまでは映像の記録が開始されないことから、ビット2〜ビット0をカウントダウン初期値の状態とする。
【0059】
その後、制御部26は、テープ駆動が同期状態となり映像の記録が可能となった場合、カウントダウン値のカウントダウンを行う。また、制御部26は、カウントダウン値が「0」となるフレームで「DATA2」のビット5とビット4の2ビットを「00(0x0)」として、ビデオテープ80に対する映像の記録を開始させる。
【0060】
また、制御部26は、映像の記録終了操作が行われた場合、記録終了情報として「DATA2」のビット5とビット4の2ビットを「11(0x3)」とする。
【0061】
このように「DATA2」を生成してHD−SDI信号に多重すれば、レコーダ30は、「DATA2」のビット2〜ビット0で示されるカウントダウン値によって、ビデオカメラ20における映像の記録開始タイミングを把握できる。したがって、レコーダ30は、ビデオカメラ20における映像の記録開始タイミングに合わせて映像の記録準備を行うことができる。さらに、レコーダ30は、カウントダウン値が「0」となるフレームで映像の記録を開始することにより、ビデオカメラ20とレコーダ30で同期して映像の記録を開始できる。
【0062】
また、ビデオカメラ20は、記録シーケンス開始状態である場合、「DATA2」のビット5とビット4の2ビットを「01(0x1)」とする。レコーダ30は、「DATA2」のビット5とビット4の2ビットが「11(0x3)」から「01(0x1)」に変化したことにより、ビデオカメラ20が記録シーケンス開始状態であることを判別できる。したがって、ビット2〜ビット0の情報だけでなく、「DATA2」のビット5とビット4の情報によっても、ビデオカメラ20で記録準備が行われていることを判別することができる。このため、レコーダ30は、ビット2〜ビット0で示される期間よりも記録準備に長い期間を要する場合でも、「DATA2」のビット5とビット4の情報によって記録準備を行い、ビデオカメラ20での映像記録開始前に記録準備を終了できる。また、レコーダ30は、「DATA2」のビット5とビット4の情報とビット2〜ビット0の情報を用いることで、より確実にビデオカメラ20に同期させて映像の記録を開始できる。
【0063】
さらに、レコーダ30は、「DATA2」のビット5とビット4の2ビットが「00(0x0)」から「11(0x3)」に変化したことにより、ビデオカメラ20で映像の記録が終了されたことを判別できる。したがって、レコーダ30は、ビデオカメラ20における映像の記録終了に同期して、映像の記録を終了できる。
【0064】
<5.映像の他の記録動作>
ところで、ビデオカメラ20で用いられるビデオテープは着脱可能である。このため、ビデオテープ80とメモリカード85を関連付けて管理しないと、メモリカード85に記録されている映像に基づいた編集リストに対応する映像素材がいずれのビデオテープに記録されているか容易に判別することができなくなってしまう。
【0065】
そこで、映像の他の記録動作では、ビデオテープ80に割り当てられているテープ固有の識別情報をHD−SDI信号に多重する場合について説明する。
【0066】
図10は、ビデオテープ80の識別情報をHD−SDI信号に多重する場合のビデオカメラ20の動作、図11は、識別情報が多重されているHD−SDI信号を受信して映像の記録を行うレコーダ30の動作を示すフローチャートである。
【0067】
テープ駆動部24によってビデオテープ80がビデオカメラ20に装着されたことが検出されると、ステップST21で制御部26は識別情報読み出し要求を行う。制御部26はテープ駆動部24からビデオテープ装着検出信号が供給されたとき、識別情報読出部25に対して識別情報読み出し要求を行ってステップST22に進む。識別情報読出部25は、識別情報読み出し要求が供給されたことに応じて、ビデオテープ80に設定されているテープ固有の識別情報の読み出しを行い、読み出した識別情報を制御部26に出力する。
【0068】
ステップST22で制御部26は、識別情報から時分割情報を生成する。制御部26は、識別情報をHD−SDI信号に多重して伝送するため、識別情報から時分割情報を生成する。制御部26は、例えば「DATA0」によって識別情報を伝送できるように、識別情報から時分割情報を生成してステップST23に進む。
【0069】
ステップST23で制御部26は、生成した時分割情報を出力処理部に供給する。出力処理部23は、制御部26から供給された時分割情報を「DATA0」のデータとして時間情報パケットのユーザビット領域に順に多重する。
【0070】
図11のステップST31で制御部33は、多重されている時分割情報を取得する。HD−SDI信号に多重されている時分割情報は、入力処理部31によって抽出される。制御部33は、入力処理部31によって抽出された時分割情報を取得してステップST32に進む。
【0071】
ステップST32で制御部33は、識別情報を映像と関連付けて記録する。制御部33は、入力処理部31で抽出された時分割情報から識別情報を復元する。さらに、制御部33は、復元した識別情報を映像データと関連つけて記録することで、メモリカード85に記録された映像が、いずれのビデオテープ80に記録されているか判別できるようにする。
【0072】
表3は、「DATA0」「DATA1」の構成を例示している。時分割情報を「DATA0」のデータとする場合、「DATA0」では、データ長、時分割情報がどのような情報であるか判別可能とする情報、時分割伝送情報、誤り検出符号等が示される。また、「DATA1」では、「DATA0」のデータが何番目のデータであるかが示される。
【表3】
【0073】
図12は、識別情報を多重する場合の「DATA0」「DATA1」の具体例を示している。なお、図12では、ビデオテープ80にTELE−FILE(商標)のラベルが設けられており、非接触通信で読み出した識別情報が「5230001874」の場合である。制御部26は、識別情報に基づき時分割情報を生成する。例えば、図12に示すデータ長からチェックサムまでの情報を時分割情報として生成して出力処理部23に出力する。
【0074】
制御部26は、識別情報を多重していない状態では、「DATA0」「DATA1」をそれぞれ「0xFF」とする。
【0075】
時分割情報の多重において、制御部26は、最初に「DATA0」を、データ長を示す情報(CMD LEN)とする。例えば時分割情報のデータ長が11バイトである場合、CMD LEN=「0x0B」とする。また、最初のデータでは「DATA1」を「0x00」とする。したがって、「DATA1」が「0x00」から「0x0A」までの範囲で時分割情報が示されることになる。
【0076】
制御部26は、データ長の次のデータによって、時分割情報がいずれの情報であるか示す。例えばTELE−FILEの識別情報を伝送する場合、「DATA0」はSET CMD1=「0x22」、SET CMD2=「0x88」とする。
【0077】
制御部26は、時分割情報がいずれの情報であるかを示すデータの次のデータで、識別情報の開始を示す開始データと識別情報をビデオテープから読み出すことができたことを示すフラグを示す。制御部26は、例えば「DATA0」をSET CMD DATA0=「0x03」、Success to read TELE-FILE ID=「0x00」とする。
【0078】
制御部26は、開始データやフラグを示すデータの次データで、識別情報を示す時分割情報を示す。制御部26は、例えば識別情報が「5230001874」の場合、「DATA0」をTelefile data 0=「0x52」、Telefile data 1=「0x30」、Telefile data 2=「0x00」、Telefile data 3=「0x18」、Telefile data 4=「0x74」とする。
【0079】
また、制御部26は、最後のデータでチェックサムを示す。なお、チェックサムは、例えば時分割情報の先頭であるデータ長を示す情報から最後のチェックサムまでの「DATA0」の値の総和が「0」となる値とする。したがって、図12に示すデータの場合、「DATA0」は、checksum=「0x3A」となる。
【0080】
このように、ビデオカメラ20においてビデオテープ80に映像を記録する場合、レコーダ30に対してテープ固有の識別情報が通知されるので、レコーダ30で記録した映像が、いずれのビデオテープに記録されているか判別できるようになる。
【0081】
<6.映像の記録から終了までの動作シーケンス例>
図13は、映像の記録から終了までの動作シーケンスを例示している。時点t1でビデオテープ80がビデオカメラ20に挿入される前は、記録動作が行われておらず、識別情報も取得されていない。したがって、制御部26は、記録が停止されている状態であることを示す情報を出力処理部23でHD−SDI信号に多重させる。すなわち制御部26は、「DATA2」のビット5とビット4の2ビットを「0x03」としてHD−SDI信号に多重させる。
【0082】
時点t1でビデオテープ80がビデオカメラ20に挿入されたことをテープ駆動部24で検出した場合、テープ駆動部24は、制御部26に対して検出信号を出力する。
【0083】
制御部26は、検出信号が供給されたことによりビデオテープ80の挿入を検出した場合、識別情報読出部25に対して、挿入されたビデオテープ80に設定されているテープ固有の識別情報の読み出し要求を行う。識別情報読出部25は、ビデオテープ80からテープ固有の識別情報を読み出して、読み出した識別情報を制御部26に出力する。
【0084】
制御部26は、識別情報読出部25から供給された識別情報に基づき、時分割情報を生成して、出力処理部23に出力する。したがって、HD−SDI信号には、図12に示すように識別情報が多重される。なお、ビデオテープ80が排出されるまで繰り返し識別情報を多重すれば、メモリカード85に記録された映像の再生位置に係らず、速やかに識別情報を読み出すことが可能となる。また、制御部26は、時分割情報を生成して出力処理部23に供給する場合に、カウントダウン初期値(図では「CNT=7」)を設定して、映像の記録が停止されている状態(IDLE)であることを示す情報を出力処理部23でHD−SDI信号に多重してもよい。
【0085】
時点t2でREC操作が行われたことを制御部26で検出した場合、制御部26はRECコマンドをテープ駆動部24に出力する。また、制御部26は、記録シーケンス開始状態(SRS)であることを示す情報を出力処理部23でHD−SDI信号に多重させる。すなわち制御部26は、「DATA2」におけるビット5とビット4の2ビットを「01(0x1)」としてHD−SDI信号に多重させる。テープ駆動部24は、RECコマンドが供給されたことに応じてテープ駆動動作を行う。また、テープ駆動部24は、テープ速度が所定速度でロック状態となったとき、制御部26に対してロック通知を出力する。
【0086】
時点t3で映像の記録が可能となってロック通知が出力された場合、制御部26は、カウントダウン初期値からカウントダウン動作を開始する。なお、カウントダウン初期値は、カウントダウン動作を開始する際に設定してもよい。
【0087】
時点t4で制御部26は、カウントダウン動作を行い、カウントダウン値を「CNT=7」から「CNT=6」に変更して、出力処理部23でHD−SDI信号に多重させる。すなわち制御部26は、「DATA2」におけるビット2〜ビット0の3ビットを「110(0x6)」としてHD−SDI信号に多重させる。
【0088】
次のフレームである時点t5で制御部26は、カウントダウン動作を行い、カウントダウン値を「CNT=6」から「CNT=5」に変更して、出力処理部23でHD−SDI信号に多重させる。すなわち制御部26は、「DATA2」におけるビット2〜ビット0の3ビットを「101(0x5)」としてHD−SDI信号に多重させる。
【0089】
制御部26は、以下同様にカウントダウンを行い、カウントダウン値が「CNT=0」となる時点t6のフレームで、「DATA2」のビット5とビット4の2ビットを記録(REC)状態であることを示す「00(0x0)」として、HD−SDI信号に多重させる。また、制御部26は、ビデオテープ80に対する映像の記録を開始させる。
【0090】
レコーダ30は、HD−SDI信号に多重されている情報によって、ビデオカメラ20で映像の記録を行う準備が行われていることや、ビデオカメラ20における映像の記録開始タイミングを判別できる。したがって、レコーダ30は、ビデオカメラ20における映像の記録開始前に、映像の記録準備を行うことができる。また、レコーダ30は、「DATA2」のビット5とビット4の2ビットが記録状態であることを示す「00(0x0)」で、カウントダウン値が「CNT=0」となったとき映像の記録を開始する。したがって、レコーダ30は、メモリカード85にビデオテープ80と等しいフレーム位置から映像を記録できる。
【0091】
その後、時点t7でSTOP操作が行われたことを制御部26で検出した場合、制御部26は、記録再生処理部22等の動作を制御して、次のフレームの開始である時点t8以降の映像のビデオテープ80への記録を停止させる。さらに、制御部26は、記録が停止されている状態であることを示す情報とカウントダウン初期値をHD−SDI信号に多重させる。すなわち、制御部26は、「DATA2」のビット5とビット4の2ビットを「11(0x3)」、ビット2〜ビット0を「111(0x7)」としてHD−SDI信号に多重させる。
【0092】
レコーダ30は、HD−SDI信号に多重されている情報が記録状態であることを示す情報から記録が停止されている状態であることを示す情報に変更されたことを検出したとき映像の記録を停止する。したがって、ビデオテープ80とメモリカード85に対して、等しいフレーム位置で映像の記録を停止できる。
【0093】
さらに、HD−SDI信号には、ビデオテープ80の識別情報が多重されているので、この情報を映像と関係付けて記録することで、メモリカード85に記録された映像と等しい映像が、いずれのビデオテープ80に記録されているか容易に判別できるようになる。したがって、編集装置60は、編集装置50で生成されたリストデータに基づき映像の選択や合成を行う場合、リストデータがいずれのビデオテープに記録された映像に対応しているか容易に判別することが可能となる。このため、編集装置50と編集装置60で並列に編集処理を行うようにしても、編集結果が正しく反映された映像データを生成できる。
【0094】
以上、特定の実施例を参照しながら、本技術について詳解してきた。しかし、本技術の要旨を逸脱しない範囲で当業者が該実施例の修正や代用を成し得ることは自明である。例えば、上述の実施の形態では、ビデオテープとメモリカードに映像を記録する場合について説明したが、記録媒体は上述の記録媒体に限らず、ディスク状記録媒体等に映像を記録する場合であってもよい。また、ビデオカメラ20から出力する信号はHD−SDI信号に限らず、他のフォーマットの信号例えばSDI信号等であってもよい。さらに、記録開始タイミング情報等の多重は、上述の実施の形態と異なる位置に多重してもよい。また、映像を記録する装置は、ビデオカメラとレコーダに限られるものでもない。上述の実施の形態は、例示の形態で本技術を開示しており、限定的に解釈されるべきではない。本技術の要旨を判断するためには、特許請求の範囲を参酌すべきである。
【産業上の利用可能性】
【0095】
この技術を用いた映像記録装置と映像記録制御方法では、記録媒体への映像の記録と映像の出力を行う映像記録装置では、記録媒体に対する映像の記録開始前に、映像の記録開始タイミング情報が映像に多重して出力される。また、記録開始タイミング情報が多重された映像が入力される映像記録装置では、多重されている記録開始タイミング情報に基づき、映像を出力した装置における映像の記録動作と同期させて、入力された映像の記録媒体への記録が開始される。このため、映像を複数の装置で記録する際に、同期して映像を記録できるようになる。したがって、記録した映像の編集処理を並行して行う映像記録システム等で用いられる映像記録装置に適している。
【符号の説明】
【0096】
10・・・映像記録システム、20・・・ビデオカメラ、21・・・カメラ部、22・・・ 記録再生処理部、23・・・出力処理部、24・・・テープ駆動部、25・・・識別情報読出部、26・・・制御部、27・・・操作部、30・・・レコーダ、31・・・入力処理部、32・・・記録処理部、33・・・制御部、40・・・ビデオテープレコーダ、50,60・・・編集装置、70・・・ネットワーク、80・・・ビデオテープ、85・・・メモリカード
【技術分野】
【0001】
この技術は、映像記録装置と映像記録制御方法に関する。詳しくは、撮像装置等で映像を記録する際に、該映像を他の映像記録装置で同期して記録できるようにする。
【背景技術】
【0002】
従来、ビデオカメラ(カムコーダ)で映像を記録する際に、ビデオカメラで記録される映像を他の映像記録装置でも記録することが可能とされている。例えば特許文献1では、代表取材を行う放送局のビデオカメラから記録/記録停止のコマンドを映像に多重して出力することが行われている。このため、他の放送局のビデオテープレコーダでは、映像に多重されているコマンドに基づき動作制御を行うことで、ビデオカメラの記録動作と連動して映像を記録することが可能とされている。なお、代表取材とは、複数の放送局から1つの放送局を幹事局と決め、幹事局のカメラマンがビデオカメラを取材現場に持ち込む。また、他の放送局はビデオテープレコーダを用意しておき、幹事局のカメラマンがビデオカメラで撮影・録画する映像を、他の各放送局のビデオテープレコーダにも分配して記録させる取材方法である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−262194号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、映像に多重されている記録/記録停止のコマンドに基づいて動作制御を行う場合、他の映像記録装置で記録された映像は、ビデオカメラで記録された映像とタイミングが異なる映像となってしまう場合がある。例えばビデオカメラから出力された映像を記録する映像記録装置は、記録開始コマンドの受信に応じて記録動作制御を開始する。したがって、記録開始コマンドの受信から記録媒体に対して映像が実際に記録されるまでに時間を要すると、他の映像記録装置で記録された映像は、ビデオカメラで記録された映像よりも記録開始タイミングが遅れた映像となってしまう。
【0005】
そこで、この技術では、映像を複数の装置で記録する際に、同期して映像を記録できる映像記録装置と映像記録制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この技術の第1の側面は、映像を記録媒体に記録する記録処理部と、前記映像の出力を行う出力処理部と、前記記録処理部での前記記録媒体に対する映像の記録開始前に、該映像の記録開始タイミング情報を前記出力処理部から出力する前記映像に多重する制御部とを備える映像記録装置にある。
【0007】
この技術においては、記録処理部で記録媒体に対する映像の記録開始前に、映像の記録開始タイミング情報、例えば映像の記録開始までの期間を示す情報や時間の経過とともに更新される記録開始までのフレーム数が、シリアルディジタルインタフェース規格の映像信号に多重される。また、記録開始タイミング情報には、映像の記録を行うための準備状態であること示す情報が含められる。記録開始タイミング情報は、映像信号のブランキング期間、例えばブランキング期間に多重されるタイムコード情報のユーザビット領域を利用して多重される。また、記録媒体に対する映像記録終了時には、映像の記録終了を示す情報が多重される。さらに、映像を記録する記録媒体から、この記録媒体に設定されている固有の識別情報が読み出されて、この識別情報から生成した時分割情報が映像に多重される。
【0008】
この技術の第2の側面は、映像を記録媒体に記録する工程と、前記映像の出力を行う工程と、前記記録媒体に対する映像の記録開始前に、該映像の記録開始タイミング情報を出力する前記映像に多重する工程とを含む映像記録制御方法にある。
【0009】
この技術の第3の側面は、入力された映像に多重されている該映像を出力した装置における該映像の記録開始タイミング情報を抽出する入力処理部と、前記入力された映像を記録媒体に記録する記録処理部と、前記入力処理部で抽出された記録開始タイミング情報に基づき前記記録処理部の動作を制御して、前記映像を出力した装置における映像の記録動作と同期させて、前記入力された映像の前記記録媒体への記録を行わせる制御部とを備える映像記録装置にある。
【0010】
この技術の第4の側面は、入力された映像に多重されている該映像を出力した装置における該映像の記録開始タイミング情報を抽出する工程と、前記入力された映像を記録媒体に記録する工程と、前記抽出された記録開始タイミング情報に基づき、前記映像を出力した装置における映像の記録動作と同期させて、前記入力された映像の前記記録媒体への記録を行わせる工程とを備える映像記録制御方法にある。
【発明の効果】
【0011】
この技術によれば、記録媒体への映像の記録と映像の出力を行う映像記録装置では、記録媒体に対する映像の記録開始前に、映像の記録開始タイミング情報が映像に多重して出力される。また、記録開始タイミング情報が多重された映像が入力される映像記録装置では、多重されている記録開始タイミング情報に基づき、映像を出力した装置における映像の記録動作と同期させて、入力された映像の記録媒体への記録が開始される。このため、映像を複数の装置で記録する際に、同期して映像を記録できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】映像記録システムの構成を示す図である。
【図2】ビデオカメラの構成を示す図である。
【図3】レコーダの構成を示す図である。
【図4】ビデオテープとメモリカードに同期させて映像を記録する場合のビデオカメラの動作を示すフローチャートである。
【図5】ビデオテープとメモリカードに同期させて映像を記録する場合のレコーダの動作を示すフローチャートである。
【図6】HD−SDI信号の1ラインのブランキング期間を示す図である。
【図7】時間情報パケットの構造を示す図である。
【図8】VITCの構成を示す図である。
【図9】記録開始から記録終了までの「DATA2」を例示した図である。
【図10】ビデオテープの識別情報をHD−SDI信号に多重する場合のビデオカメラの動作を示すフローチャートである。
【図11】識別情報が多重されているHD−SDI信号を受信して映像の記録を行うレコーダの動作を示すフローチャートである。
【図12】識別情報を多重する場合の「DATA0」「DATA1」の具体例を示した図である。
【図13】映像の記録から終了までの動作シーケンスを例示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本技術を実施するための形態について説明する。なお、説明は以下の順序で行う。
1.映像記録システムの構成
2.ビデオカメラの構成
3.レコーダの構成
4.映像データの記録動作
5.映像の他の記録動作
6.映像の記録から終了までの動作シーケンス例
【0014】
<1.映像記録システムの構成>
図1は、本技術の映像記録装置を用いた映像記録システムの構成を例示している。映像記録システム10は、ビデオカメラ(カムコーダ)20とレコーダ30を有している。ビデオカメラ20は、装着されている記録媒体例えばビデオテープ80に映像を記録すると共に記録する映像の出力を行う映像記録装置である。レコーダ30は、装着されている記録媒体例えばメモリカード85に、ビデオカメラ20から出力された映像を記録する映像記録装置である。
【0015】
また、映像記録システム10で編集作業を行う場合、例えばビデオテープレコーダ40と編集装置50,60が設けられる。
【0016】
ビデオテープレコーダ40は、ネットワーク70を介して編集装置60と接続されている。ビデオテープレコーダ40は、ビデオテープ80に記録された映像を再生して、ネットワーク70を介して編集装置60に供給する。
【0017】
編集装置50は、メモリカード85に記録されている映像を利用して編集処理を行い、映像の選択や合成を行うためのリストデータを生成する。例えばメモリカード85に記録されている映像を再生してIN点やOUT点等を決定して、これらの位置等を示すリストデータ、例えばEDL(Edit Decision List),ALE(AVID Log Exchange)を生成する。また、Final Cut Pro(商標)によってXMLファイルを生成する。
【0018】
編集装置60は、ビデオテープレコーダ40で再生された映像を用いて、画質補正や色調補正等を行う。さらに、編集装置60は、編集装置50で生成されたリストデータに基づき、映像の選択や合成を行い、編集処理後の映像データを生成する。
【0019】
このように、ビデオカメラ20は、装着されているビデオテープ80に映像を記録すると共に記録する映像の出力を行い、レコーダ30は、ビデオカメラ20から出力された映像を装着されているメモリカード85に記録する。このようにすれば、メモリカード85に記録されている映像を利用したリストデータの生成と、ビデオテープ80に記録されている映像の補正処理等を並行して行うことが可能となり、編集作業を効率良く行うことができる。
【0020】
ビデオカメラ20は、装着されているビデオテープ80に記録された映像とレコーダ30に装着されているメモリカード85に記録される映像を同期させるため、ビデオテープ80に対する映像の記録開始前に、この映像記録に関する情報を映像に多重して出力する。
【0021】
レコーダ30は、映像に多重されている情報に基づきビデオカメラ20での映像の記録動作と同期させて、入力された映像の記録媒体への記録を開始して、ビデオカメラ20とレコーダ30で同期して映像の記録を行う。
【0022】
<2.ビデオカメラの構成>
図2は、ビデオカメラ20の構成を示している。ビデオカメラ20は、カメラ部21、記録再生処理部22、出力処理部23、テープ駆動部24、識別情報読出部25、制御部26、操作部27を有している。
【0023】
カメラ部21は、撮像光学系や撮像素子、カメラ信号処理部等で構成されている。カメラ部の撮像光学系は、撮像素子の撮像面上に所望の明るさの光学像を結像させる。撮像素子は光電変換を行い、撮像面上に結像された光学像に応じた撮像信号を生成する。カメラ信号処理部は、撮像信号のノイズ除去やA/D変換、ニー補正やガンマ補正、ホワイトバランス調整等の種々のカメラ信号処理を行い、映像データを生成する。
【0024】
記録再生処理部22は、カメラ部21で生成された映像データ等をビデオテープ80に記録する記録処理を行う。また、記録再生処理部22は、ビデオテープ80に記録されている映像データ等を再生する処理を行う。
【0025】
出力処理部23は、カメラ部21で生成された映像データを、所定フォーマットで出力する。出力処理部23は、例えばシリアルディジタルインタフェース規格に準拠したHD−SDI(Serial Digital Interface)信号として、レコーダ30に出力する。また、出力処理部23は、後述する制御部26から供給された情報をHD−SDI信号に多重して出力する。
【0026】
テープ駆動部24は、制御部26から供給された制御信号に基づき、ビデオテープ80の駆動を行う。また、テープ駆動部24は、テープ駆動状態を監視して、ビデオテープ80が所定のテープ走行速度で駆動されている状態となったときロック通知を制御部26に出力する。さらに、テープ駆動部24は、ビデオテープ80が装着されているか否かを検出して検出情報を制御部26に出力する。
【0027】
識別情報読出部25は、ビデオテープ80に設定されているテープ固有の識別情報を読み出して制御部26に出力する。例えばビデオテープ80に、近距離無線通信を行うための非接触ICタグが設けられている場合、識別情報読出部25は、非接触ICタグと無線通信を行い、ビデオテープ80に設定されているテープ固有の識別情報を読み出して制御部26に出力する。なお、ビデオテープ固有の識別情報は、近距離無線通信に限らず他の方法で取得できる構成であってもよい。例えば識別情報をバーコード等で表示して、光学的に情報を読み取るようにしてもよい。さらに、情報の読み出しは非接触型に限らす接触型であってもよい。
【0028】
制御部26には操作部27が接続されている。操作部27には、電源スイッチや記録開始終了スイッチ、ビデオカメラ20の動作設定等を行うための各操作スイッチが設けられている。操作部27は、ユーザのスイッチ操作に応じた操作信号を生成して制御部26に出力する。
【0029】
制御部26は、マイクロコンピュータ等を用いて構成されている。制御部26は、ビデオカメラ20の動作がユーザ操作に応じた動作となるように、操作部27から供給された操作信号に基づき制御信号を生成して各部に供給する。また、制御部26は、映像をビデオテープ80に記録する場合、映像の記録開始前に、映像記録に関する情報を生成して出力処理部23に供給してHD−SDI信号に多重させることで、多重された情報に基づきレコーダ30で同期して映像を記録できるようにする。制御部26は、映像記録に関する情報として映像の記録開始タイミング情報、例えば映像の記録開始までの期間を示す情報を多重する。また、制御部26は、映像が記録される記録媒体に設定されている記録媒体固有の識別情報、例えば識別情報読出部25で読み出されたテープ固有の識別情報を多重する。
【0030】
<3.レコーダの構成>
図3はレコーダ30の構成を示している。レコーダ30は、入力処理部31、記録処理部32、制御部33を有している。
【0031】
入力処理部31は、ビデオカメラ20から出力されたHD−SDI信号に多重されている情報を抽出して制御部33に出力する。また、HD−SDI信号から映像のデータを抽出して記録処理部32に出力する。
【0032】
記録処理部32は、制御部33から供給された制御信号に基づき、入力処理部31から供給された映像をメモリカード85に記録する処理を行う。
【0033】
制御部33は、入力処理部31で抽出された情報に基づいて生成した制御信号を記録処理部32に供給することで、メモリカード85に対する映像の記録を制御する。例えば、制御部33は、入力処理部31で抽出された情報に基づきメモリカード85に映像を記録する準備を行い、その後ビデオカメラ20におけるビデオテープ80への映像の記録に同期させて、メモリカード85に映像を記録させる。また、制御部33は、抽出した情報に含まれているテープ固有の識別情報を、入力された映像に関連付けてメモリカード85に記録させる。
【0034】
<4.映像データの記録動作>
図4は、ビデオテープ80とメモリカード85に同期させて映像を記録する場合のビデオカメラ20の動作、図5は、ビデオテープ80とメモリカード85に同期させて映像を記録する場合のレコーダ30の動作を示すフローチャートである。なお、以下の説明では、ビデオカメラ20からレコーダ30に出力される信号をHD−SDI信号とする。
【0035】
ビデオカメラ20における操作部27の記録スイッチが操作されると、ステップST1で制御部26はRECコマンドを発行する。制御部26は操作部27からの操作信号に基づき記録開始操作が行われたことを検出したとき、テープ駆動部24に対してRECコマンドを発行してステップST2に進む。
【0036】
ステップST2でテープ駆動部24は、テープ駆動動作を開始する。テープ駆動部24は、RECコマンドが発行されたことに応じて、ビデオテープ80の駆動動作を開始する。また、テープ駆動部24は、ビデオテープ80が所定のテープ走行速度で駆動されているロック状態となったとき、ロック状態であることを示すロック通知を制御部26に出力してステップST3に進む。
【0037】
ステップST3で制御部26は、記録開始タイミング情報を生成する。制御部26は、ロック通知がテープ駆動部24から供給されたことに応じて記録開始タイミング情報を生成する。制御部26は、ビデオテープ80が所定のテープ走行速度で駆動されているロック状態となったことから、ビデオテープ80に対して映像の記録が可能であると判別して、記録開始タイミング情報を生成する。制御部26は、記録開始タイミング情報として例えば何フレーム後に映像の記録を開始するかを示すカウントダウン初期値を生成する。
【0038】
ステップST4で制御部26は、記録開始動作制御を行う。制御部26は、記録再生処理部22の動作制御を行い、記録開始タイミング情報に基づくタイミングでビデオテープ80に対する映像の記録を開始させる。また、制御部26は、ビデオテープ80に記録される映像と同期した映像をレコーダ30でメモリカード85に記録させるため、記録開始タイミング情報を出力処理部23に供給して、出力処理部23から出力するHD−SDI信号に多重させる。
【0039】
制御部26は、記録開始タイミング情報として上述のように何フレーム後に映像の記録を開始するかを示すカウントダウン値を生成する。この場合、制御部26は、カウントダウン初期値からフレーム単位でカウントダウンを行い、カウントダウン値が「0」となるフレームから映像をビデオテープ80に記録させる。また、出力処理部23は、カウントダウン値をHD−SDI信号に多重させる。このように、HD−SDI信号に映像記録開始までのフレーム数を示すカウントダウン値を多重すると、レコーダ30では、カウントダウン値で示されたフレーム後に、映像がビデオテープ80に記録されることを判別できる。したがって、レコーダ30は、ビデオテープ80に記録される映像と同期した映像をメモリカード85に記録できるように記録準備を行うことができる。
【0040】
ステップST5で制御部26は、記録終了であるか判別する。制御部26は、操作部27からの操作信号に基づき記録終了操作が行われたことを検出した場合にステップST6に進み、記録終了操作が行われたことを検出していない場合にステップST5に戻る。
【0041】
ステップST6で制御部26は、STOPコマンドを発行する。制御部26は、記録再生処理部22や出力処理部23およびテープ駆動部24に対してSTOPコマンドを発行する。記録再生処理部22は、STOPコマンドが発行されたことに応じてビデオテープ80に対する映像の記録を停止する。例えば、STOPコマンドが発行された場合、次のフレームから映像の記録を停止する。テープ駆動部24は、ビデオテープ80に対する映像の記録の停止後に例えばテープ駆動を停止する。出力処理部23は、STOPコマンドが発行されたことに応じて、メモリカード85への映像の記録を終了させる記録終了情報をHD−SDI信号に多重させる。例えば、STOPコマンドが発行された場合、次のフレームの先頭に記録終了情報を多重させる。
【0042】
図5のステップST11で制御部33は、多重されている情報を取得する。制御部33は、入力処理部31によってHD−SDI信号から抽出された情報を取得してステップST12に進む。
【0043】
ステップST12で制御部33は、抽出された情報に基づき記録準備を行う。制御部33は、抽出された記録開始タイミング情報例えばカウントダウン初期値やカウントダウン値に基づき映像の記録準備を行いステップST13に進む。
【0044】
ステップST13で制御部33は記録動作を開始する。制御部33は、記録開始タイミング情報に基づき記録処理部32を制御して、ビデオカメラ20におけるビデオテープ80への映像の記録と同期させて、メモリカード85に映像を記録する。例えば、制御部33は、カウントダウン値が「0」となったフレームからメモリカード85への映像の記録を開始してステップST14に進む。
【0045】
ステップST14で制御部33は記録終了であるか判別する。制御部33は、抽出された情報が記録終了情報である場合にステップST15に進み、記録終了情報でない場合はステップST14に戻る。
【0046】
ステップST15で制御部33は記録動作を終了する。制御部33は記録処理部32を制御してメモリカード85への映像の記録を終了させる。
【0047】
このように、ビデオカメラ20においてビデオテープ80に対する映像の記録開始前に、映像の記録開始タイミング情報が、HD−SDI信号に多重されてレコーダ30に供給される。したがって、レコーダ30は、ビデオカメラ20における映像の記録開始タイミングに合わせて記録の準備を行うことができる。さらに、レコーダ30は、ビデオテープ80に対する映像の記録が開始された場合、記録開始タイミング情報に基づき同期した映像をメモリカード85に記録を行うことができる。また、ビデオテープ80に対する映像の記録を終了する場合、レコーダ30に対して記録終了情報が通知されるので、ビデオテープ80に対する映像の記録の終了に同期させてメモリカード85に対する映像の記録を終了させることができる。
【0048】
次に、情報の伝送について説明する。なお、以下の説明は、HD−SDI信号に多重される時間情報、例えばVITC(Vertical Interval Time Code)のユーザビット領域を使用して情報を伝送する場合である。
【0049】
図6は、HD−SDI信号の1ラインのブランキング期間を示している。図6の(A)は輝度信号データ系列(Yデータ系列)におけるブランキング期間、図6の(B)は、色差信号データ系列(PB/PRデータ系列)におけるブランキング期間を示している。なお、Yデータ系列およびPB/PRデータ系列の夫々を形成するワードデータは、例えば10ビット構成とされている。
【0050】
ブランキング期間では、4ワードからなるタイミング基準コードデータEAV(End of Active Video)、2ワードからなるライン番号データ、2ワードからなる誤り検出符号データ、268ワード分の補助データ/未定義領域、4ワードからなるタイミング基準コードデータSAV(SAV:Start of Active Video)が設けられている。また、輝度信号データ系列の補助データ/未定義領域に、時間情報のパケット(以下「時間情報パケット」という)が設けられる。
【0051】
時間情報パケットの構造は、例えば図7に示す構造とされている。「ADF(ancillary data flag word)」は、補助データフラグであり補助データパケットの開始を示している。「DID(data identification word)」と「SDID(secondary data identification word)」は、データ識別フラグである。このDIDあるいはDIDとSDIDによって、補助データがどのような種類のデータであるかが示される。「DC(data count)」は、「UDW(user data words)」のワード数を示すものである。「UDW」は、伝送する情報を示すものであり、「UDW」にVITCが含められる。
【0052】
図8は、SMPTE−12M規格に準拠したVITCの構成を示している。VITCの第0ビット、第1ビット、第10ビット、第11ビットは第20ビット、第21ビット、第30ビット、第31ビット、第40ビット、第41ビット、第50ビット、第51ビット、第60ビット、第61ビット、第70ビット、第71ビット、第80ビット、第81ビットは同期ビットである。
【0053】
第2〜第5ビットは、フレーム情報エリアでありフレームの「1」の位を示す。第12,第13ビットは、フレーム情報エリアでありフレームの「10」の位を示す。第22〜第25ビットは、秒情報エリアであり秒の「1」の位を示す。第32〜第34ビットは、秒情報エリアであり秒の「10」の位を示す。第42〜第45ビットは、分情報エリアであり分の「1」の位を示す。第52〜第54ビットは、分情報エリアであり分の「10」の位を示す。第62〜第65ビットは、時間情報エリアであり時間の「1」の位を示す。第72,第73ビットは、時間情報エリアであり時間の「10」の位を示す。また、第6〜第9ビット、第16〜第19ビット、第26〜第29ビット、第36〜第39ビット、第46〜第49ビット、第56〜第59ビット、第66〜第69ビット、第76〜第79ビットはユーザビット領域である。なお、第35,第55ビットは、フラグの領域である。
【0054】
ビデオカメラ20の出力処理部23は、時間情報パケットのユーザビット領域に情報を多重する。多重する情報は、例えば「DATA0」〜「DATA4」とする。「DATA0」の下位4ビットのデータは、第6〜第9ビットの領域、「DATA0」の上位4ビットのデータは、第16〜第19ビットのユーザビット領域に多重される。「DATA1」の下位4ビットのデータは、第26〜第29ビットのユーザビット領域、「DATA1」の上位4ビットのデータは、第36〜第39ビットのユーザビット領域に多重される。「DATA2」の下位4ビットのデータは、第46〜第49ビットのユーザビット領域、「DATA2」の上位4ビットのデータは、第56〜第59ビットのユーザビット領域に多重される。「DATA3」の下位4ビットのデータは、第66〜第69ビットのユーザビット領域、「DATA3」の上位4ビットのデータは、第76〜第79ビットのユーザビット領域に多重される。
【0055】
表1は、多重する情報の「DATA0」〜「DATA4」の構造を示している。「DATA0」は情報データである。情報データでは、送信するデータの全長、コマンド、コマンドに対応するデータ、チェックサム等の情報が示される。「DATA1」は、送信するデータの全長において、何番目のデータであるかが示される。「DATA2」は、ビデオカメラ20の動作および記録開始タイミング情報等が示される。なお「DATA3」はリザーブ領域である。
【表1】
【0056】
表2は、「DATA2」のビットアロケーションを例示している。「DATA2」は、ビット5とビット4の2ビット分で動作状態を示している。ビデオカメラ20で映像の記録が停止されている状態(IDLE)である場合、例えばビット5とビット4の2ビットは「11(0x3)」とする。ビデオカメラ20が映像の記録状態(REC)である場合、例えばビット5とビット4の2ビットは「00(0x0)」とする。また、映像の記録開始操作が行われてビデオカメラ20が映像の記録を行うための準備状態(以下「記録シーケンス開始状態(SRS:Start Rec Sequence)」という)である場合、例えばビット5とビット4の2ビットは「01(0x1)」とする。さらに、ビット5とビット4の2ビットが「01(0x1)」である場合、ビット2〜ビット0の3ビットで示される値は、カウントダウン値であり、この値が示すフレーム後に映像の記録が開始されることを示している。
【表2】
【0057】
図9は、記録開始から記録終了までの「DATA2」を例示している。制御部26は、ビデオカメラ20で映像の記録が停止されている状態である場合、「DATA2」のビット5とビット4の2ビットを「11(0x3)」とする。また、制御部26は、ビット2〜ビット0でカウントダウン初期値を示すものとする。例えばカウントダウン初期値を「7」とする場合、ビット2〜ビット0を「111(0x7)」とする。
【0058】
制御部26は、映像の記録開始操作が行われて記録シーケンス開始状態である場合、「DATA2」のビット5とビット4の2ビットは「01(0x1)」とする。また、テープ駆動等が同期した状態となるまでは映像の記録が開始されないことから、ビット2〜ビット0をカウントダウン初期値の状態とする。
【0059】
その後、制御部26は、テープ駆動が同期状態となり映像の記録が可能となった場合、カウントダウン値のカウントダウンを行う。また、制御部26は、カウントダウン値が「0」となるフレームで「DATA2」のビット5とビット4の2ビットを「00(0x0)」として、ビデオテープ80に対する映像の記録を開始させる。
【0060】
また、制御部26は、映像の記録終了操作が行われた場合、記録終了情報として「DATA2」のビット5とビット4の2ビットを「11(0x3)」とする。
【0061】
このように「DATA2」を生成してHD−SDI信号に多重すれば、レコーダ30は、「DATA2」のビット2〜ビット0で示されるカウントダウン値によって、ビデオカメラ20における映像の記録開始タイミングを把握できる。したがって、レコーダ30は、ビデオカメラ20における映像の記録開始タイミングに合わせて映像の記録準備を行うことができる。さらに、レコーダ30は、カウントダウン値が「0」となるフレームで映像の記録を開始することにより、ビデオカメラ20とレコーダ30で同期して映像の記録を開始できる。
【0062】
また、ビデオカメラ20は、記録シーケンス開始状態である場合、「DATA2」のビット5とビット4の2ビットを「01(0x1)」とする。レコーダ30は、「DATA2」のビット5とビット4の2ビットが「11(0x3)」から「01(0x1)」に変化したことにより、ビデオカメラ20が記録シーケンス開始状態であることを判別できる。したがって、ビット2〜ビット0の情報だけでなく、「DATA2」のビット5とビット4の情報によっても、ビデオカメラ20で記録準備が行われていることを判別することができる。このため、レコーダ30は、ビット2〜ビット0で示される期間よりも記録準備に長い期間を要する場合でも、「DATA2」のビット5とビット4の情報によって記録準備を行い、ビデオカメラ20での映像記録開始前に記録準備を終了できる。また、レコーダ30は、「DATA2」のビット5とビット4の情報とビット2〜ビット0の情報を用いることで、より確実にビデオカメラ20に同期させて映像の記録を開始できる。
【0063】
さらに、レコーダ30は、「DATA2」のビット5とビット4の2ビットが「00(0x0)」から「11(0x3)」に変化したことにより、ビデオカメラ20で映像の記録が終了されたことを判別できる。したがって、レコーダ30は、ビデオカメラ20における映像の記録終了に同期して、映像の記録を終了できる。
【0064】
<5.映像の他の記録動作>
ところで、ビデオカメラ20で用いられるビデオテープは着脱可能である。このため、ビデオテープ80とメモリカード85を関連付けて管理しないと、メモリカード85に記録されている映像に基づいた編集リストに対応する映像素材がいずれのビデオテープに記録されているか容易に判別することができなくなってしまう。
【0065】
そこで、映像の他の記録動作では、ビデオテープ80に割り当てられているテープ固有の識別情報をHD−SDI信号に多重する場合について説明する。
【0066】
図10は、ビデオテープ80の識別情報をHD−SDI信号に多重する場合のビデオカメラ20の動作、図11は、識別情報が多重されているHD−SDI信号を受信して映像の記録を行うレコーダ30の動作を示すフローチャートである。
【0067】
テープ駆動部24によってビデオテープ80がビデオカメラ20に装着されたことが検出されると、ステップST21で制御部26は識別情報読み出し要求を行う。制御部26はテープ駆動部24からビデオテープ装着検出信号が供給されたとき、識別情報読出部25に対して識別情報読み出し要求を行ってステップST22に進む。識別情報読出部25は、識別情報読み出し要求が供給されたことに応じて、ビデオテープ80に設定されているテープ固有の識別情報の読み出しを行い、読み出した識別情報を制御部26に出力する。
【0068】
ステップST22で制御部26は、識別情報から時分割情報を生成する。制御部26は、識別情報をHD−SDI信号に多重して伝送するため、識別情報から時分割情報を生成する。制御部26は、例えば「DATA0」によって識別情報を伝送できるように、識別情報から時分割情報を生成してステップST23に進む。
【0069】
ステップST23で制御部26は、生成した時分割情報を出力処理部に供給する。出力処理部23は、制御部26から供給された時分割情報を「DATA0」のデータとして時間情報パケットのユーザビット領域に順に多重する。
【0070】
図11のステップST31で制御部33は、多重されている時分割情報を取得する。HD−SDI信号に多重されている時分割情報は、入力処理部31によって抽出される。制御部33は、入力処理部31によって抽出された時分割情報を取得してステップST32に進む。
【0071】
ステップST32で制御部33は、識別情報を映像と関連付けて記録する。制御部33は、入力処理部31で抽出された時分割情報から識別情報を復元する。さらに、制御部33は、復元した識別情報を映像データと関連つけて記録することで、メモリカード85に記録された映像が、いずれのビデオテープ80に記録されているか判別できるようにする。
【0072】
表3は、「DATA0」「DATA1」の構成を例示している。時分割情報を「DATA0」のデータとする場合、「DATA0」では、データ長、時分割情報がどのような情報であるか判別可能とする情報、時分割伝送情報、誤り検出符号等が示される。また、「DATA1」では、「DATA0」のデータが何番目のデータであるかが示される。
【表3】
【0073】
図12は、識別情報を多重する場合の「DATA0」「DATA1」の具体例を示している。なお、図12では、ビデオテープ80にTELE−FILE(商標)のラベルが設けられており、非接触通信で読み出した識別情報が「5230001874」の場合である。制御部26は、識別情報に基づき時分割情報を生成する。例えば、図12に示すデータ長からチェックサムまでの情報を時分割情報として生成して出力処理部23に出力する。
【0074】
制御部26は、識別情報を多重していない状態では、「DATA0」「DATA1」をそれぞれ「0xFF」とする。
【0075】
時分割情報の多重において、制御部26は、最初に「DATA0」を、データ長を示す情報(CMD LEN)とする。例えば時分割情報のデータ長が11バイトである場合、CMD LEN=「0x0B」とする。また、最初のデータでは「DATA1」を「0x00」とする。したがって、「DATA1」が「0x00」から「0x0A」までの範囲で時分割情報が示されることになる。
【0076】
制御部26は、データ長の次のデータによって、時分割情報がいずれの情報であるか示す。例えばTELE−FILEの識別情報を伝送する場合、「DATA0」はSET CMD1=「0x22」、SET CMD2=「0x88」とする。
【0077】
制御部26は、時分割情報がいずれの情報であるかを示すデータの次のデータで、識別情報の開始を示す開始データと識別情報をビデオテープから読み出すことができたことを示すフラグを示す。制御部26は、例えば「DATA0」をSET CMD DATA0=「0x03」、Success to read TELE-FILE ID=「0x00」とする。
【0078】
制御部26は、開始データやフラグを示すデータの次データで、識別情報を示す時分割情報を示す。制御部26は、例えば識別情報が「5230001874」の場合、「DATA0」をTelefile data 0=「0x52」、Telefile data 1=「0x30」、Telefile data 2=「0x00」、Telefile data 3=「0x18」、Telefile data 4=「0x74」とする。
【0079】
また、制御部26は、最後のデータでチェックサムを示す。なお、チェックサムは、例えば時分割情報の先頭であるデータ長を示す情報から最後のチェックサムまでの「DATA0」の値の総和が「0」となる値とする。したがって、図12に示すデータの場合、「DATA0」は、checksum=「0x3A」となる。
【0080】
このように、ビデオカメラ20においてビデオテープ80に映像を記録する場合、レコーダ30に対してテープ固有の識別情報が通知されるので、レコーダ30で記録した映像が、いずれのビデオテープに記録されているか判別できるようになる。
【0081】
<6.映像の記録から終了までの動作シーケンス例>
図13は、映像の記録から終了までの動作シーケンスを例示している。時点t1でビデオテープ80がビデオカメラ20に挿入される前は、記録動作が行われておらず、識別情報も取得されていない。したがって、制御部26は、記録が停止されている状態であることを示す情報を出力処理部23でHD−SDI信号に多重させる。すなわち制御部26は、「DATA2」のビット5とビット4の2ビットを「0x03」としてHD−SDI信号に多重させる。
【0082】
時点t1でビデオテープ80がビデオカメラ20に挿入されたことをテープ駆動部24で検出した場合、テープ駆動部24は、制御部26に対して検出信号を出力する。
【0083】
制御部26は、検出信号が供給されたことによりビデオテープ80の挿入を検出した場合、識別情報読出部25に対して、挿入されたビデオテープ80に設定されているテープ固有の識別情報の読み出し要求を行う。識別情報読出部25は、ビデオテープ80からテープ固有の識別情報を読み出して、読み出した識別情報を制御部26に出力する。
【0084】
制御部26は、識別情報読出部25から供給された識別情報に基づき、時分割情報を生成して、出力処理部23に出力する。したがって、HD−SDI信号には、図12に示すように識別情報が多重される。なお、ビデオテープ80が排出されるまで繰り返し識別情報を多重すれば、メモリカード85に記録された映像の再生位置に係らず、速やかに識別情報を読み出すことが可能となる。また、制御部26は、時分割情報を生成して出力処理部23に供給する場合に、カウントダウン初期値(図では「CNT=7」)を設定して、映像の記録が停止されている状態(IDLE)であることを示す情報を出力処理部23でHD−SDI信号に多重してもよい。
【0085】
時点t2でREC操作が行われたことを制御部26で検出した場合、制御部26はRECコマンドをテープ駆動部24に出力する。また、制御部26は、記録シーケンス開始状態(SRS)であることを示す情報を出力処理部23でHD−SDI信号に多重させる。すなわち制御部26は、「DATA2」におけるビット5とビット4の2ビットを「01(0x1)」としてHD−SDI信号に多重させる。テープ駆動部24は、RECコマンドが供給されたことに応じてテープ駆動動作を行う。また、テープ駆動部24は、テープ速度が所定速度でロック状態となったとき、制御部26に対してロック通知を出力する。
【0086】
時点t3で映像の記録が可能となってロック通知が出力された場合、制御部26は、カウントダウン初期値からカウントダウン動作を開始する。なお、カウントダウン初期値は、カウントダウン動作を開始する際に設定してもよい。
【0087】
時点t4で制御部26は、カウントダウン動作を行い、カウントダウン値を「CNT=7」から「CNT=6」に変更して、出力処理部23でHD−SDI信号に多重させる。すなわち制御部26は、「DATA2」におけるビット2〜ビット0の3ビットを「110(0x6)」としてHD−SDI信号に多重させる。
【0088】
次のフレームである時点t5で制御部26は、カウントダウン動作を行い、カウントダウン値を「CNT=6」から「CNT=5」に変更して、出力処理部23でHD−SDI信号に多重させる。すなわち制御部26は、「DATA2」におけるビット2〜ビット0の3ビットを「101(0x5)」としてHD−SDI信号に多重させる。
【0089】
制御部26は、以下同様にカウントダウンを行い、カウントダウン値が「CNT=0」となる時点t6のフレームで、「DATA2」のビット5とビット4の2ビットを記録(REC)状態であることを示す「00(0x0)」として、HD−SDI信号に多重させる。また、制御部26は、ビデオテープ80に対する映像の記録を開始させる。
【0090】
レコーダ30は、HD−SDI信号に多重されている情報によって、ビデオカメラ20で映像の記録を行う準備が行われていることや、ビデオカメラ20における映像の記録開始タイミングを判別できる。したがって、レコーダ30は、ビデオカメラ20における映像の記録開始前に、映像の記録準備を行うことができる。また、レコーダ30は、「DATA2」のビット5とビット4の2ビットが記録状態であることを示す「00(0x0)」で、カウントダウン値が「CNT=0」となったとき映像の記録を開始する。したがって、レコーダ30は、メモリカード85にビデオテープ80と等しいフレーム位置から映像を記録できる。
【0091】
その後、時点t7でSTOP操作が行われたことを制御部26で検出した場合、制御部26は、記録再生処理部22等の動作を制御して、次のフレームの開始である時点t8以降の映像のビデオテープ80への記録を停止させる。さらに、制御部26は、記録が停止されている状態であることを示す情報とカウントダウン初期値をHD−SDI信号に多重させる。すなわち、制御部26は、「DATA2」のビット5とビット4の2ビットを「11(0x3)」、ビット2〜ビット0を「111(0x7)」としてHD−SDI信号に多重させる。
【0092】
レコーダ30は、HD−SDI信号に多重されている情報が記録状態であることを示す情報から記録が停止されている状態であることを示す情報に変更されたことを検出したとき映像の記録を停止する。したがって、ビデオテープ80とメモリカード85に対して、等しいフレーム位置で映像の記録を停止できる。
【0093】
さらに、HD−SDI信号には、ビデオテープ80の識別情報が多重されているので、この情報を映像と関係付けて記録することで、メモリカード85に記録された映像と等しい映像が、いずれのビデオテープ80に記録されているか容易に判別できるようになる。したがって、編集装置60は、編集装置50で生成されたリストデータに基づき映像の選択や合成を行う場合、リストデータがいずれのビデオテープに記録された映像に対応しているか容易に判別することが可能となる。このため、編集装置50と編集装置60で並列に編集処理を行うようにしても、編集結果が正しく反映された映像データを生成できる。
【0094】
以上、特定の実施例を参照しながら、本技術について詳解してきた。しかし、本技術の要旨を逸脱しない範囲で当業者が該実施例の修正や代用を成し得ることは自明である。例えば、上述の実施の形態では、ビデオテープとメモリカードに映像を記録する場合について説明したが、記録媒体は上述の記録媒体に限らず、ディスク状記録媒体等に映像を記録する場合であってもよい。また、ビデオカメラ20から出力する信号はHD−SDI信号に限らず、他のフォーマットの信号例えばSDI信号等であってもよい。さらに、記録開始タイミング情報等の多重は、上述の実施の形態と異なる位置に多重してもよい。また、映像を記録する装置は、ビデオカメラとレコーダに限られるものでもない。上述の実施の形態は、例示の形態で本技術を開示しており、限定的に解釈されるべきではない。本技術の要旨を判断するためには、特許請求の範囲を参酌すべきである。
【産業上の利用可能性】
【0095】
この技術を用いた映像記録装置と映像記録制御方法では、記録媒体への映像の記録と映像の出力を行う映像記録装置では、記録媒体に対する映像の記録開始前に、映像の記録開始タイミング情報が映像に多重して出力される。また、記録開始タイミング情報が多重された映像が入力される映像記録装置では、多重されている記録開始タイミング情報に基づき、映像を出力した装置における映像の記録動作と同期させて、入力された映像の記録媒体への記録が開始される。このため、映像を複数の装置で記録する際に、同期して映像を記録できるようになる。したがって、記録した映像の編集処理を並行して行う映像記録システム等で用いられる映像記録装置に適している。
【符号の説明】
【0096】
10・・・映像記録システム、20・・・ビデオカメラ、21・・・カメラ部、22・・・ 記録再生処理部、23・・・出力処理部、24・・・テープ駆動部、25・・・識別情報読出部、26・・・制御部、27・・・操作部、30・・・レコーダ、31・・・入力処理部、32・・・記録処理部、33・・・制御部、40・・・ビデオテープレコーダ、50,60・・・編集装置、70・・・ネットワーク、80・・・ビデオテープ、85・・・メモリカード
【特許請求の範囲】
【請求項1】
映像を記録媒体に記録する記録処理部と、
前記映像の出力を行う出力処理部と、
前記記録処理部での前記記録媒体に対する映像の記録開始前に、該映像の記録開始タイミング情報を前記出力処理部から出力する前記映像に多重する制御部と
を備える映像記録装置。
【請求項2】
前記記録開始タイミング情報は、前記映像の記録開始までの期間を示す情報である請求項1記載の映像記録装置。
【請求項3】
前記記録開始タイミング情報は、時間の経過とともに更新される映像記録開始までのフレーム数を示す情報である請求項2記載の映像記録装置。
【請求項4】
前記記録開始タイミング情報は、映像の記録を行うための準備状態であること示す情報を含む請求項1記載の映像記録装置。
【請求項5】
前記出力処理部は、前記映像の出力において、シリアルディジタルインタフェース規格の映像信号を出力する請求項1記載の映像記録装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記記録開始タイミング情報を前記映像信号のブランキング期間に多重する請求項5記載の映像記録装置。
【請求項7】
前記制御部は、前記ブランキング期間に多重されるタイムコード情報のユーザビット領域を利用して前記記録開始タイミング情報を多重する請求項6記載の映像記録装置。
【請求項8】
前記制御部は、前記記録媒体に対する映像記録終了時に、該映像の記録終了を示す情報を前記出力処理部から出力する前記映像に多重する請求項1記載の映像記録装置。
【請求項9】
前記映像を記録する記録媒体から、該記録媒体に設定されている固有の識別情報を読み出す識別情報読出部をさらに備え、
前記制御部は、前記読み出された識別情報を前記出力処理部から出力する前記映像に多重する請求項1記載の映像記録装置。
【請求項10】
前記制御部は、前記読み出された識別情報から時分割情報を生成して、該時分割情報を前記出力処理部から出力する前記映像に多重する請求項9記載の映像記録装置。
【請求項11】
映像を記録媒体に記録する工程と、
前記映像の出力を行う工程と、
前記記録媒体に対する映像の記録開始前に、該映像の記録開始タイミング情報を出力する前記映像に多重する工程と
を含む映像記録制御方法。
【請求項12】
入力された映像に多重されている該映像を出力した装置における該映像の記録開始タイミング情報を抽出する入力処理部と、
前記入力された映像を記録媒体に記録する記録処理部と、
前記入力処理部で抽出された記録開始タイミング情報に基づき前記記録処理部の動作を制御して、前記映像を出力した装置における映像の記録動作と同期させて、前記入力された映像の前記記録媒体への記録を行わせる制御部と
を備える映像記録装置。
【請求項13】
入力された映像に多重されている該映像を出力した装置における該映像の記録開始タイミング情報を抽出する工程と、
前記入力された映像を記録媒体に記録する工程と、
前記抽出された記録開始タイミング情報に基づき、前記映像を出力した装置における映像の記録動作と同期させて、前記入力された映像の前記記録媒体への記録を行わせる工程と
を備える映像記録制御方法。
【請求項1】
映像を記録媒体に記録する記録処理部と、
前記映像の出力を行う出力処理部と、
前記記録処理部での前記記録媒体に対する映像の記録開始前に、該映像の記録開始タイミング情報を前記出力処理部から出力する前記映像に多重する制御部と
を備える映像記録装置。
【請求項2】
前記記録開始タイミング情報は、前記映像の記録開始までの期間を示す情報である請求項1記載の映像記録装置。
【請求項3】
前記記録開始タイミング情報は、時間の経過とともに更新される映像記録開始までのフレーム数を示す情報である請求項2記載の映像記録装置。
【請求項4】
前記記録開始タイミング情報は、映像の記録を行うための準備状態であること示す情報を含む請求項1記載の映像記録装置。
【請求項5】
前記出力処理部は、前記映像の出力において、シリアルディジタルインタフェース規格の映像信号を出力する請求項1記載の映像記録装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記記録開始タイミング情報を前記映像信号のブランキング期間に多重する請求項5記載の映像記録装置。
【請求項7】
前記制御部は、前記ブランキング期間に多重されるタイムコード情報のユーザビット領域を利用して前記記録開始タイミング情報を多重する請求項6記載の映像記録装置。
【請求項8】
前記制御部は、前記記録媒体に対する映像記録終了時に、該映像の記録終了を示す情報を前記出力処理部から出力する前記映像に多重する請求項1記載の映像記録装置。
【請求項9】
前記映像を記録する記録媒体から、該記録媒体に設定されている固有の識別情報を読み出す識別情報読出部をさらに備え、
前記制御部は、前記読み出された識別情報を前記出力処理部から出力する前記映像に多重する請求項1記載の映像記録装置。
【請求項10】
前記制御部は、前記読み出された識別情報から時分割情報を生成して、該時分割情報を前記出力処理部から出力する前記映像に多重する請求項9記載の映像記録装置。
【請求項11】
映像を記録媒体に記録する工程と、
前記映像の出力を行う工程と、
前記記録媒体に対する映像の記録開始前に、該映像の記録開始タイミング情報を出力する前記映像に多重する工程と
を含む映像記録制御方法。
【請求項12】
入力された映像に多重されている該映像を出力した装置における該映像の記録開始タイミング情報を抽出する入力処理部と、
前記入力された映像を記録媒体に記録する記録処理部と、
前記入力処理部で抽出された記録開始タイミング情報に基づき前記記録処理部の動作を制御して、前記映像を出力した装置における映像の記録動作と同期させて、前記入力された映像の前記記録媒体への記録を行わせる制御部と
を備える映像記録装置。
【請求項13】
入力された映像に多重されている該映像を出力した装置における該映像の記録開始タイミング情報を抽出する工程と、
前記入力された映像を記録媒体に記録する工程と、
前記抽出された記録開始タイミング情報に基づき、前記映像を出力した装置における映像の記録動作と同期させて、前記入力された映像の前記記録媒体への記録を行わせる工程と
を備える映像記録制御方法。
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図1】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図1】
【公開番号】特開2012−151795(P2012−151795A)
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−10782(P2011−10782)
【出願日】平成23年1月21日(2011.1.21)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年1月21日(2011.1.21)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】
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