説明

時間変化を示す検知結果の取得

【課題】相対運動を行う対象物に応じて、時間変化する波形を示す検知結果を取得する。
【解決手段】検知要素を含む符号器/センサを用いる方法は、1つ以上の検知要素を含む符号器/センサを作動させることで、符号器/センサに相対する符号化/検知領域内で相対運動を行う対象物から検知結果を取得する行為を含み、検知要素は、光検知およびインピーダンスに基づく検知のうち少なくとも1つを実施し、検知結果は、対象物の相対運動に応じた1つ以上の時間変化波形を示す。符号器/センサを作動させる行為は、(1)非周期的な時間変化波形を示す検知結果を取得するステップと、(2)重畳時間変化波形を示す検知結果を取得するステップと、(3)セルグループ検知パターンに基づく1つ以上の時間変化波形を示す検知結果を取得するステップのうちの少なくとも1つを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、たとえば検知コンポーネントおよび/または符号化コンポーネントに対して相対運動を行う対象物に応じた検知結果などの、時間変化を示す検知結果の取得に関する。検知結果は、非周期的な時間変化波形を示す場合もあり、また、検知パターンに基づいた時間変化を有する場合もある。
【背景技術】
【0002】
移動する対象物を検知する技術としては、様々なものが提案されている。たとえば米国特許第7,358,476号には、流路を有する流体構造体が記載されており、その流路に沿って、検知コンポーネントが対象物に関する情報を取得する。
【0003】
時間変化する検知結果を得るためのより良い技術があると有利である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第7,358,476号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、相対運動を行う対象物に応じて、時間変化する波形を示す検知結果を取得するための機器、方法、システム、および装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る方法は、検知要素を含む符号器/センサを用いる方法であって、1つ以上の検知要素を含む符号器/センサを作動させることで、前記符号器/センサに相対する符号化/検知領域内で相対運動を行う対象物から検知結果を取得する行為を含み、前記検知要素は、光検知およびインピーダンスに基づく検知のうちの少なくとも1つを実施し、前記検知結果は、前記対象物の相対運動に応じた1つ以上の時間変化波形を示し、前記符号器/センサを作動させる行為は、非周期的な時間変化波形を示す検知結果を取得するステップであって、前記非周期的な時間変化波形は、複数の検知要素の非周期的な配列からの検知結果が示すであろう時間変化波形に少なくとも近似する、ステップと、重畳時間変化波形を示す検知結果を取得するステップであって、前記重畳時間変化波形は、複数の検知要素の長手方向列からの検知結果が示すであろう時間変化波形に少なくとも近似し、前記長手方向列は、2つ以上のシンプルな検知パターンのセットを重畳またはスケーリングして重畳したものにほぼ等しい複合検知パターンを有し、前記セット内の全てのシンプルな検知パターンに応じた時間変化を含む波形を示す検知結果を提供するように構成される、ステップと、前記符号器/センサ内で複数の光検知セルを含む1つ以上のアレイであって各々が別個のIC上にあるアレイを用いて、1つ以上のセルグループ検知パターンに基づくグループ単位で前記複数の光検知セルのセットから光検知された値を読み出して、読み出した前記光検知値を合成することで、前記セルグループ検知パターンに基づく1つ以上の時間変化波形を示す検知結果を取得するステップとのうちの少なくとも1つを含む。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】時間変化する波形を示す検知結果を、相対運動を行う対象物に応じて得る技術を示す図である。
【図2】システムのコンポーネントを示す図である。
【図3】検知要素機構を示す図である。
【図4】変位制御機構を示す図である。
【図5】システムを示す図である。
【図6】読み出しおよび合成ルーチンを示す図である。
【図7】分析器を示す図である。
【図8】機器を示す図である。
【図9】機器を示す図である。
【図10】別の機器とグラフとを示す図である。
【図11】検知機構をどのように構成できるかを示す図である。
【図12】検知機構を示す図である。
【図13】検知機構とグラフとを示す図である。
【図14】検知機構を示す図である。
【図15】符号化/検知コンポーネントを備える流体流路を示す図である。
【図16】図15のコンポーネントを示す図である。
【図17】図15の別のコンポーネントを示す図である。
【図18】ラインベースの検知パターンでの動作を示す図である。
【図19】グラフを示す図である。
【図20】グラフを示す図である。
【図21】変位制御機構とグラフとを示す図である。
【図22】変位制御機構とグラフとを示す図である。
【図23】変位制御機構とグラフとを示す図である。
【図24】検知コンポーネントとグラフとを示す図である。
【図25】読み出し動作を示す図である。
【図26】符号化機構を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本明細書では、用語「検知」は、物理的な刺激から情報を得るという最も包括的な意味合いで使用される。したがって「検知」には、検出や測定などの行為が含まれる。「センサ」は、検知を行う機器である。
【0009】
「光検知」は、光を検知することである。したがって「光センサ」は、光検知を行う電子機器である。
【0010】
検知には、光検知が含まれ、さらに「インピーダンスに基づく検知」も含まれる。「インピーダンスに基づく検知」は、抵抗性(または導電性)、キャパシタンス、インダクタンス、または他の電気的インピーダンス(たとえば、対象物や対象物の環境の、電気特性または磁気特性)の変化から情報を得ることによる検知を意味する。たとえば、ホール効果センサおよび類似のセンサを用いた検知も含まれる。
【0011】
光センサ、インピーダンス系(インピーダンスに基づく)センサ、および他のタイプのセンサを、様々な態様で組み合わせて構成することが可能であり、1つ以上のセンサのそのような組み合わせおよび構成の全てが、本明細書では、包括的な用語「検知機構」に含まれる。検知機構には、たとえば、1つ以上の「検知要素」が含まれる。「IC化(ICによって実現された)検知要素」または「IC化検知機構」は、検知を行う回路を有する1つ以上の集積回路(IC)を含む検知要素または機構を意味し、それはたとえば、光検知セルのアレイを含むICである。
【0012】
別途指定されるか文脈中で他であることが必要とされる場合を除いて、センサは検知結果を電気信号として供給する。「電気信号」は、電気的、電子的、電磁的、または磁気的な形態で1つの位置から他の位置に情報を伝達する全ての信号を含む。
【0013】
符号化および/または検知が実施されるシステムにおいて、対象物が、システムの領域、コンポーネント、または特徴部に対して時間範囲にわたって一連の位置を有する場合に、対象物がその領域、コンポーネント、または特徴部に対して移動する、すなわち「相対運動を行う」と言える。
【0014】
「領域」は、空間内の連続した点または位置のセットを表す。符号化/検知領域は、コンポーネントまたはデバイスに「相対する(対して相対的である)」領域であって、コンポーネントまたはデバイスに対する空間的関係がほぼ一定であり、したがって、コンポーネントまたはデバイスと共に移動するということである。すなわち、符号化/検知領域とは、符号器/センサに相対する領域であって、その領域内では、対象物が符号器/センサと相互作用することによって、ある用途において適切な精度で情報が符号化および検知することができる。
【0015】
本発明の実施形態は、フローサイトメトリなどの用途において、たとえば生物細胞、分子、分子下錯体などの相対運動を行う対象物に応じて、時間変化を示す検知結果を取得する際の問題点に取り組むものである。
【0016】
臨床診断学や微生物学などにおいて、サイトメータは、その価格とサイズに起因して、現場での診療、水質監視、農学的/獣医学的診断、および急速に広がる生物学的脅威の検出などでの使用が妨げられている。
【0017】
入手可能なフローサイトメータは、複数の励起源を備える場合があり、その各励起源は別々の箇所または領域にフォーカスする。各領域からの光は、ビームスプリッタ、フィルタ、および光電子増倍管(PMT)を用いて分析でき、それによって、異なる染色または複数の染料が施された細胞を検出および区別する。細胞は、挿入される前に染色され、測定は、毎秒数メートルまでの速度で細胞が通過する検知領域を含む流体流路内で実施される。細胞が横切る集束レーザ光は、細胞上の染料を励起する。蛍光は、顕微鏡レンズで集められ、帯域通過フィルタで分類され、PMTまたはアバランシェフォトダイオードで検出される。フィルタや検出器のセットは高額であり、それらによって装置全体が、繊細な光学的アライメントを要するかさばる装置になってしまう。対象物は小さな領域を速い速度で通過するため、深刻な信号対雑音比(S/N)の問題が発生する。その問題は、たとえば計数によって対象物の特徴付けおよび区別を実施する場合に、より深刻である。
【0018】
臨床診断学において試薬のコストは高く、分析物の必要分量を削減することや、分析物の体積当たりの消耗品の分量を削減することが考えられる。しかし、それによって蛍光の強さが減少してしまう。
【0019】
従来における、空間変調を用いる単色励起の技術では、白黒アプローチであるか単色干渉パターンを用いるものであるかに関わらず、波長感度および染料の漂白化に関する問題に直面する。波長感度が低いため、フィルタとPMTとの組み合わせを用いるフローサイトメータの多くは、実質的に異なる蛍光波長を有する複数の染料を使用している。
【0020】
下記の実施形態では、検知結果を、たとえば以下の3つの方法のうちの1つ以上の方法で取得する。第1の方法では、非周期的な時間変化波形を示す検知結果を取得する。第2の方法では、重畳された複数の時間変化波形を示す検知結果を取得する。第3の方法では、光検知セルで光検知された量的値を、セルグループ検知パターンに基づくグループ単位で読み出して合成することで、検知パターンに基づいた時間変化波形を示す検知結果を取得する。
【0021】
検知または符号化コンポーネントは、「符号化/検知コンポーネント」とも呼ばれ、「符号化/検知機構」または単に「符号器/検知器」と呼ばれる場合もある。すなわち、そのコンポーネント、機構、または符号器/検知器とは、情報の符号化と検知の両方を実施し、符号化情報を表す検知結果を供給するものである。
【0022】
図1において、対象物10は、コンポーネント20に対して相対運動を行う一連12の対象物14〜16のうちの1つである。コンポーネント20はたとえば、検知コンポーネント、符号化コンポーネント、または符号化/検知コンポーネントである。
【0023】
対象物10がコンポーネント20に対して移動するにつれて、対象物10は、矢印22で示すように、コンポーネント20内の1つ以上の検知要素と相互作用する。たとえば、発光、散乱、または透過などによって、光が対象物10から放射され、コンポーネント20内の光センサがそれを受ける。一般に、放射される光には、その用途における光子エネルギの範囲内の光が含まれる。すなわち、図1に示すような技術は、たとえばフローサイトメトリ、バイオチップの読み取り、または他の適切な種類の分析物検出などの任意の用途に、良好に使用できる。ただし、放射される光には、その用途の範囲外の光子エネルギが含まれる場合もあり、そのような光子エネルギは、コンポーネント20内の光センサとの相互作用を、用途の範囲内の光と同様にはしないこともある。また、対象物10は、コンポーネント20内のインピーダンス系検知要素に対して、電気的または磁気的に相互作用することも可能である。
【0024】
用語「対象物」は、区別可能な物体であって、それについての情報がセンサで取得でき且つ検知結果に含まれる、いずれの物体をも意味する。対象物の例としては、液滴、小体積の流体、単一分子、凝集分子、分子クラスタ、細胞、ウイルス、バクテリア、長いポリマ、分子下錯体、微粒子、ナノ粒子、特定の化学物質または他の分析物を結着して運ぶことが可能なビーズまたは他の小粒子、乳濁液、アレイ状に配置された対象物、および、表面上の区別可能な領域(たとえば、着色したスポット)が挙げられる。
【0025】
「時間変化波形」とは、時間次元において変化する波形である。「検知した時間変化波形」は、時間範囲にわたって得られた検知結果が示すものである。
【0026】
検知結果が、対象物または対象物の相対運動などの刺激「から」、またはその刺激「に応じて」得られるということは、検知結果が、刺激によって生じ、その刺激に関する情報を含むということである。
【0027】
センサ構成において、検知要素の「長手方向列」とは、長手方向に延伸する要素の配列のことである。
【0028】
検知機構および/または検知パターンの種類には、周期的および非周期的検知パターン、チャープパターン、およびランダムパターンなどが含まれる。「ランダム」パターンは、検知要素の長手方向列の全長にわたって非周期的なパターンを指す。「周期的」検知機構では、少なくとも1つのパターンが、機構の長手方向に沿って繰り返される。「チャープ」パターンは、ランダムであるが、直線変化するタイムスケーリング(時間換算)を施せば周期的になりうるものであって、すなわち、直線的に変化する周波数または波長のシーケンスである。「セルグループ検知パターン」は、1つ以上のアレイに配列された光検知セルから、パターンに基づくグループ単位で読み出すことによって得られるものであり、非周期的機構、長手方向列、周期的パターン、非周期的パターン、チャープパターン、およびランダムパターンなどであることが可能である。「空間変調された」放射光または他の相互作用とは、係る対象物の位置に依存して、その相互作用が時間的に変化することを意味する。
【0029】
1つ以上の次元での検知において色が変化する検知パターンは、「スペクトル依存検知パターン」と呼ばれる。1つ以上の次元において光強度に対する感度が変化する検知パターンは、「強度依存検知パターン」と呼ばれる。1つの検知パターンが、それらの両方である場合もある。スペクトル依存検知パターンにおいて、放射光の範囲内で各光検知要素が光検知するサブ範囲は「異なる」場合がある。すなわち、検知帯域が同じではないなどの理由で、各光検知要素のスペクトルが異なることがある。強度依存検知パターンにおいて、光検知要素は、光検知する量的値と放射光強度との比率である「検知強度比」を有する。
【0030】
コンポーネント20は、3つの組み合わせまたは構成のうちの1つ以上を含む。コンポーネント30は機構32を含み、機構32は、非周期的機構を含むか、あるいはそれを近似する検知結果を取得するものである。コンポーネント40は機構42を含み、機構42は、2つ以上のシンプルな検知パターンを重畳またはスケーリング(縮尺調整)して重畳したものにほぼ等しい複合検知パターンを有する長手方向列を含むか、あるいはそれを近似する検知結果を取得するものである。コンポーネント70は1つ以上のIC化検知要素を含み、各IC化検知要素は、複数の光検知セルと、1つ以上のセルグループ検知パターンに基づくグループ単位のセルのセットから光検知された量的値を読み出して合成する読み出し/合成回路とを有する。検知結果は1つ以上の時間変化波形を示し、それはたとえば、非周期的時間変化波形、重畳時間変化波形、および/または、セルグループ検知パターンに基づく時間変化を有する1つ以上の時間変化波形である。その結果、情報は、相互作用の時間変化の中に符号化可能である。
【0031】
複数の検知要素同士、および、それらを含むかそれらから読み出すことで近似する検知パターン同士は、異なる場合がある。検知要素同士、または、検知パターンの部分同士は、「範囲」が異なってもよい。すなわち、要素またはパターン部分が、たとえば長手方向に沿って、異なる範囲に延伸することがある。複数の光検知要素は、互いに「色」が異なる場合がある。すなわち、光検知要素の構造、あるいは、それらに設けられたコーティングまたは他のフィルタに起因して、異なる検知帯域または検知スペクトルを有することがある。係る範囲において同じかほぼ同じ形状を有する光検知スペクトルは、互いに「強度」が異なる場合があり、すなわち、異なる検知強度比を有することがある。シンプルな検知パターンを重畳することで得られた複合検知パターンは、たとえば異なる検知スペクトルを有する場合がある。
【0032】
用語「光フィルタ」または「フィルタ」は、ある基準に従って光を透過および/または反射する、光透過性または光反射性の部材またはコンポーネントを意味する。ある用途における光子エネルギの範囲に対する「帯域通過フィルタ」は、サブ範囲内の光を選択的に透過および/または反射する。「遮蔽フィルタ」は、用途における範囲の光を透過も反射もしない。「透明フィルタ」は、用途における範囲の光の全てを、透過および/または反射する。
【0033】
それに対し、用語「検知機構」および「検知パターン」はより包括的であって、機構およびパターン内の複数の光センサの色および/または強度を異ならせるように構成および/または配置されたフィルタを含んだ光センサ機構およびパターンを指すことができる。
【0034】
異なる検知要素および検知パターンを、組み合わせて使用することが可能である。光検知要素の長手方向列において、複数の検知スペクトルを1つの列内で組み合わせて使用することができる。また、複数の検知パターンを「重畳」することができ、その場合は、それら両方または全ての検知パターンが並行的に検知結果に影響する。複合検知パターンに比べて、単なる検知パターンは通常は「シンプル」であるが、複合検知パターンおよび重畳された全ての検知パターンが同じスペクトル形状を有する場合と、重畳された検知パターン同士が関連した形状を有していたために特定の位相関係で重畳された際に詳細が均一に損失された場合は、その限りでない。複数のシンプルな検知パターンを重畳して、複合検知パターンを構成することができる。その場合たとえば、重畳する前に、それらのシンプルな検知パターンが変化する方向をほぼ平行に整列させてから、重畳する。
【0035】
対象物10が、たとえばセグメント50および52を通過する相対運動を行うにつれて、矢印54および56で示すように、機構32内の検知要素との相互作用が生じる。非周期的機構であるために、その相互作用は、検知結果の時間変化に含まれる情報を符号化して非周期的な時間変化波形を生成する。
【0036】
対象物10が、たとえばセグメント60および62を通過する相対運動を行うにつれて、矢印64および66で示すように、機構42内の検知要素との相互作用が生じる。重畳または重畳にほぼ等しいものによる複合検知パターンを有する長手方向列であるために、その相互作用は、セット内の全てのシンプルな検知パターンに基づく検知結果の時間変化に含まれる情報を符号化する。
【0037】
アレイ84に相対する符号化検知領域71内では、対象物10が、たとえばセグメント72および74を通過する相対運動を行うにつれて、矢印76および78で図示するように放射光を通じて、1つ以上の検知要素との相互作用が生じる。要素80は、複数の光検知セルを含む1つ以上のアレイを有し、各アレイは、それぞれのIC上に設けられている(たとえば、アレイ84を備えるIC82)。読み出し/合成回路86は、要素80内のセルで光検知された量的値を、1つ以上のセルグループ検知パターンに基づくグループ単位で読み出す。さらに回路86は、読み出した光検知値を合成して、セルグループ検知パターンに基づく時間変化を有する1つ以上の時間変化波形を示す検知結果を生成する。
【0038】
図中、コンポーネント30,40,および70の間に記した「および/または」の記載に従って、それらの3つのコンポーネントは、適切な2つまたは3つの組み合わせで設けられることが可能である。
【0039】
アナログまたはデジタル電気信号の形態である検知結果は、保存、送信、および処理などのために、たとえば光信号または他の電磁信号などの他の形態に変換できる。ボックス90では、検知結果を用いて、符号化情報を示すデータを取得する。すなわち、「復号化」を実施する。ボックス90では、たとえば、検知した時間変化波形同士の比較や検知した時間変化波形と基準波形波形との比較などの波形比較、および/または、変換、または、その他の方法で周波数または波長などの周期性の値を得ることなどを通じて、対象物10についての情報を得ることができる。
【0040】
復号化した情報は、たとえば対象物に関する情報であって、たとえば、対象物を区別するために使用できる。対象物が、文書または他のイメージ内の位置決めマークである場合は、その情報に従って動作を制御することができる。情報が、たとえば照射特性や流体担体特性などの、励起または環境に関する1つ以上の特徴に関する情報である場合は、それを用いて、流体の組成や、環境刺激などの他の特性を、監視することができる。
【0041】
図2のシステム100において、移動する対象物からの放射光は、対象物についての情報を含むことができる。符号化/検知コンポーネント102は検知要素機構120を含み、検知要素機構120は、符号化/検知領域122内の対象物に応じて検知結果を供給する。符号化/検知コンポーネント102からの出力信号は、処理コンポーネント106に伝達され、たとえば、1つ以上の物体特性、励起特性、または環境特性などに関する情報を示す特性データを取得および/または供給するための出力信号として使用可能である。
【0042】
対象物110は、矢印112で示す方向に沿って複数の位置を取ることによって、符号化/検知領域122に対する相対運動を行う。位置によっては、対象物110は、矢印114で示すように励起を受け、矢印116で示すように光を放射して応答することがある。その光放射は、たとえば、内在する細胞物質の紫外線または他による励起などに起因する、染料または他の付着された「タグ」の蛍光性や、対象物自体の蛍光性または自己蛍光性から生じる場合もある。また、化学的蛍光性、生物学的蛍光性、吸収、散乱、または、並行的な励起を必要としない他の現象を用いることもできる。本明細書に記載された検知パターンによる符号化の他にも、励起および/またはフィルタ機構を用いることによって、1つ以上の物体特性の情報などの様々な種類の情報を放射光の中に符号化することができる。
【0043】
機構120は、矢印116で示すように放射光の一部を受け、それに応答して、検知パターンに基づいて符号化された検知結果を生成する。検知結果に基づいて、コンポーネント102は、矢印130で示すように、検知結果から符号化された情報を含む電気出力信号を供給する。その信号はたとえば、検知結果と同じものであってもよく、または、その検知結果からコンポーネント102内の回路が得たものでもよい。コンポーネント106は、データまたは他の信号を取得および/または供給することができ、たとえば矢印132で示すように信号を出力する。その出力信号は、物体特性に関する情報を示す特性データや、励起または環境特性を示すデータを含むことが可能である。
【0044】
図3では、検知要素機構200は、符号化/検知コンポーネントにおいて検知要素機構に相対する符号化/検知領域内で相対運動を行う対象物202の経路に沿って設けられている。図中の「xまたはt」の記載に従って、経路は、たとえばx方向に沿って空間内に延伸し、さらに/または、時間tにわたって存在する。速度は変動することがあるものの、速度または他の変位レートに関する情報、トリガー検出からの情報、またはトリガー信号を用いて、x方向の位置と時間tとのあいだのおよそのマッピングをすることができる。
【0045】
図3は、M個の機構204〜206から成る長手方向列内の各検知要素の、xまたはt軸に平行な断面を示す。機構204に「0」を付し、機構206に「(M−1)」を付す。検知要素機構は、図示のとおり経路の片側のみに設けることもでき、または、経路の周囲に配置することもできる。機構204から経路の反対側に位置し「0’」が付された機構を表す破線ボックス208によって示唆するように、2つ以上の検知要素機構を並行的に、同じ位置かxまたはt軸に沿って重なる位置範囲に、回転方向にずらした状態で設けることもできる。
【0046】
「m1」を付した機構210は、複数のシンプルな検知パターン一式を重畳またはスケーリングして重畳したものにほぼ等しい複合検知パターンを有する、検知要素の長手方向列である。対象物202が、機構210に相対する符号化/検知領域内で相対運動を行うにつれて、矢印212で示すように相互作用が生じる。機構210はたとえば、光検知またはインピーダンスに基づく検知を実施し、パターン216および218などを含む全てのシンプルな検知パターンに基づく時間変化を有する重畳時間変化波形を示す検知結果を取得する。
【0047】
機構204〜206は全体で、別の長手方向列を表す。「m2」を付した非周期的機構220もまた、矢印222で示すように対象物202が相互作用できる検知要素の長手方向列であることが可能である。機構220はたとえば、光検知またはインピーダンスに基づく検知を実施し、非周期的機構220に基づく非周期的時間変化波形を示す検知結果を取得する。機構220は、非周期的検知パターン226を含むことができ、それに従って非周期的時間変化波形を生成する。
【0048】
機構210および220および他の機構は、光検知および信号処理によって符号化される情報の採取を可能にするよう、xまたはt方向に長さを有する。その長さは、xまたはt方向に沿った対象物202の見かけ範囲より小さいものも含まれる。機構210および220は、xまたはt方向に沿った対象物202の見かけ範囲と同じかそれ以上の長さを有することができる一方、機構200に相対する符号化/検知領域内で対象物202が相対運動を行っている間に検知結果が示す対象物202の特性が変化しないほど、長さが十分に短いことも可能である。検知要素は、経路を横切る方向に延伸する平行側面を有することが可能であり、そのような要素から成る機構は「ストライプ状センサ」と呼ばれる。
【0049】
各機構204〜206は、ライン230を通じて、読み出し回路から制御信号を受信し、光検知した量的値を示す信号を読み出し回路に供給することができる。機構200がトリガー検出回路を有する場合は、読み出し回路は、それに応答して制御信号を供給することで、読み出しを実施させることができる。
【0050】
図3に示すような検知要素機構は、流体装置に適用でき、また、イメージが形成された紙または他の媒体のシートをスキャンする際などのスキャン動作を行うために他のコンポーネントに対して移動するアレイ内の対象物に適用できる。対象物202は、シート上の着色スポットであることが可能で、検知要素機構は、対象物202から放射される色における微細な差異に関する情報を取得するものである場合がある。イメージ検知や印刷などにおいて、対象物202が、位置決めマーク特有の色を有するマークである場合は、その色を他の色から区別し、位置を取得することで、シートの位置決めが可能になる。
【0051】
図4では、変位制御機構250が、符号化/検知コンポーネントにおいて検知要素機構に相対する符号化/検知領域内で相対運動を行う対象物252の経路に沿って設けられている。変位制御機構250は、1つ以上の変位制御コンポーネントの組み合わせを含む。その各コンポーネントは、図において経路のセグメントを囲んでいるが、囲まない状態で経路に沿って変位制御コンポーネントを実現することも可能である。
【0052】
図4は、制御コンポーネント254〜256を示す。コンポーネント254を「0」とし、コンポーネント256を「(N−1)」としている。
【0053】
制御コンポーネント260は、図中「(n1)」であり、経路を部分的または全体的に囲んで延伸する、成形区域262を有する。区域262は、対象物252の変位(たとえば、速度または他の変位レート)に影響または制御を及ぼす形状を有する。
【0054】
制御コンポーネント270は、図中「(n2)」であり、双方向矢印274で示すように経路のセグメントにおいて境界を横方向に移動させる移動デバイス272を含む。デバイス272は、ライン276を通じて制御信号を受信できる。変位制御回路は、トリガー検出回路に応答して、デバイス272を一定状態または時間変化状態のどちらかで動作させることが可能である。
【0055】
図5は、中央処理装置(CPU)402がバス404または他の回路を通じてコンポーネントに接続されているシステム400を示す。
【0056】
システム400は、外部入力/出力(I/O)コンポーネント406と、メモリ408とを含む。その両方とも、バス404で接続されている。外部I/O406は、システム400の外部のデバイスとの通信を可能にする。
【0057】
ICI/O410は、ICとの通信を可能にする。ICとはたとえば、IC(0)412からIC(P−1)414までのP個の一連のICである。IC412〜414には、アレイ418を有するIC(p)416が含まれる。デバイスI/O420は、たとえば、デバイス(0)422からデバイス(Q−1)424までのQ個の検知および制御デバイスとの通信を可能にする。デバイス422〜424には、励起コンポーネントおよび変位制御コンポーネントが含まれる場合があり、さらに、たとえばポンプ、計量用電極、スマートゲート、ゲート制御および分岐制御用のデバイス、弁、フローまたは圧力センサなどの、流体デバイスも含まれる場合がある。
【0058】
メモリ408は、プログラムメモリ430を含むが、命令は、ソフトウェアまたはハードウェアによる他の形態で供給されることが可能である。プログラムメモリ430は、読み出しおよび合成ルーチン442と、対象物区別ルーチン444とを記憶し、さらに、検知パターン以外による技術を用いて符号化するための追加のルーチンを記憶する場合もある。
【0059】
ルーチン442では、検知前の読み出しを実施し、対象物の情報および検知期間を取得し、検知期間およびアナログ調整を用いて読み出しを実施し、検知結果をデジタル調整し、対象物に関する量的値を記憶し、対象物に関する量的値を合成して特性データを生成することができる。
【0060】
読み出しおよび合成ルーチン442は、図6に示すような作業を含むことが可能である。
【0061】
ボックス450では、読み出しおよび合成作業を実施する要求を、たとえば他のルーチン、および/または、ボックス450に示すようにトリガー検出器回路から受信したトリガー信号を通じて受け取る。ボックス450内の要求は、たとえば他のイベントの発生、または、周期的な読み出しおよび合成作業の間の間隔などの時間経過に依存する場合もあり、その場合はトリガー検出は不要である。
【0062】
ボックス452では、読み出しのための準備を実施する。たとえば、データ構造を初期化し、読み出しの際に使用する値を得る。この作業には、検知前の読み出し動作が含まれる場合があり、それによって、たとえば対象物の位置や速度やサイズ、流体速度、検知期間などの読み出し制御パラメータが取得される。
【0063】
ボックス454で符号器/センサ内の検知要素のタイプによって分岐し、そのタイプに適合した作業を実施することができる。検知要素が1つのタイプのみである場合は、ボックス454での分岐および下記の他の分岐を別個の作業とする必要はない。図6において、図示するタイプに加えて、たとえば複数の検知要素タイプを含むものなど他のタイプの符号器/センサを扱うことも可能である。
【0064】
検知要素がディスクリート(離散的)である場合は、ボックス460で、光検知要素とインピーダンス系検知要素とに分岐できる。
【0065】
たとえば電極、ホール効果センサ、インダクタなどのインピーダンス系検知要素については、ボックス462で、検知値を読み出して合成する。たとえば、対象物が符号化/検知領域内で相対運動を行うにつれて、リード線から適切な回路を通じて検知値を読み出す。合成されたアナログ信号を、検知結果として直接供給してもよいし、デジタル化した後に供給してもよい。共通のリード線を用いることで、全ての検知要素からのアナログ値を加算または乗算することができる。ある時点において各検知要素から得られたアナログ値は、その時点で対象物が当該検知要素に及ぼした影響を示すものである。検知機構の検知パターンの最小特徴サイズに対して対象物が十分に小さく、且つ、符号化/検知領域内での対象物の相対運動が最大速度を超えない場合は、合成アナログ信号は、対象物に関する時間変化波形を示す。インピーダンス系センサから、並列的に読み出すことも可能である。
【0066】
ディスクリートな光センサについては、検知値を、ボックス464で読み出して、ボックス466で合成した後、ボックス468で供給する。ボックス464では、各光センサの検知期間を決定する制御信号を供給し、各検知期間後に、その期間に光検知した量的値を示すアナログ値を読み出すことができる。またはたとえば、光センサから、ある時点でその時点以前の期間に光検知した量的値を示すアナログ出力を連続的に入手可能である場合は、適切な間隔でサンプリングによってアナログ出力を読み出して、一連のアナログ値を得ることができる。いくつかのディスクリートな光センサからボックス464で得られたアナログ値を合成するには、ボックス466で、値をデジタル化した後、そのデジタル光検知値を、光センサの位置および範囲(および、適切であれば、対象物の相対位置および相対速度)に基づくシーケンスに並べて、1つ以上の時間変化波形を示すデジタル値シーケンスを得る。ボックス468で、このシーケンスを検知結果として供給する。
【0067】
量的値をシーケンスに並べる際に、ボックス466では「時間順序づけ」を実施する。その作業は、ある期間に得られたデジタル値一式またはデジタル値のサブシーケンス一式をもって開始し、最終的に、当該期間に生じた光検知値または他の検知値の実際のシーケンスに近似するデジタル値シーケンスを生成する、いずれの作業をも指す。時間順序づけには、単なる連結や、デジタル値の平滑化、内挿、サブシーケンスの重畳を伴う合成、その他の調整などを通じて最終的シーケンスを得るための様々な作業が含まれる。そのシーケンスはたとえば、実際または仮想のメモリロケーションのシーケンス内に記憶されたデジタル値や、デジタル値がシーケンス状になっているデータ構造などであることが可能であり、たとえば圧縮された形態を有し、さらにたとえば、各デジタル値のシーケンス内位置および/または継続時間を示すデータと共に記憶される。
【0068】
IC化検知要素が使用されている場合は、ボックス470での分岐は読み出しのタイプに依存し、それに続いて、たとえばCCDタイプおよびCMOSタイプなどの特定の読み出しタイプに適合した動作が行われる。IC化検知要素から成る機構は、ディスクリートな検知要素で実現される様々な検知パターンを、フレキシブルに近似できる。
【0069】
アレイ状の「CCD」(電荷結合素子)セル、すなわち「CCDアレイ」では通常、光検知した量的値を複数セルのライン(並び)に沿って転送することによって読み出す。「CCDタイプの読み出し」には、セルがCCDであるかないかに関わらず、光検知値をセルのラインに沿ってライン終端に向けて読み出し回路まで転送する全ての読み出し技術が含まれる。
【0070】
したがってボックス472では、各一連の1つ以上の検知期間の後に、アレイ状のセルのラインに沿って光検知値を転送して読み出す。ボックス474では、アレイから転送され出力された光検知値をデジタル化し、その光検知値を、1つ以上の検知パターンに基づくラインのグループ単位で「ビニング」によって合成する。すなわち、1つの検知期間後に1つ以上のラインから転送され出力された値の和または積などの合成値を得る。ボックス474で各パターンに基づいてビニングしたものについて、ボックス476では、ライングループ単位でビニングされた値を、時間順序づけによってシーケンスとして合成し、パターンに基づいて符号化された1つ以上の時間変化波形を示すシーケンスを得る。たとえば、ビニングされた値を、パターン内での当該グループの位置および長手方向の寸法(幅)、および/または、符号化/検知領域に対する対象物の位置および速度に基づいて、シーケンスに並べることができ、それによって、パターンに基づいて符号化された時間変化波形を示すデジタル値シーケンスが得られる。ボックス478で、このシーケンスを検知結果として供給する。
【0071】
アレイ状の「CMOS」(相補形金属酸化膜半導体)セル、すなわち「CMOSアレイ」では通常、アレイ内のセルのラインのいずれか1つを選択する信号に応答して、それらのセルを並列的に読み出す。「CMOSタイプの読み出し」には、セルがCMOSデバイスであるかないかに関わらず、アレイ内のセルのラインの1つを選択しそれらのセルを並列的に読み出すことが可能な全ての読み出し技術が含まれる。
【0072】
したがってボックス480では、アレイ内のセルのラインを選択して、たとえば長手方向列などの、1つ以上の検知パターンに基づくグループ単位で読み出す。読み出しを検知パターン「に基づくグループ単位」で行うということは、複数のセルを、検知パターンがグループ化するのと実質的に同じようにグループ化して読み出すことである。たとえば、各検知期間後に、パターン内の各グループに属するラインを次々と続けて読み出すことができるシーケンスで、ラインを読み出すことが可能である。それによって、異なるグループに属するラインが混ざり合った場合に比べて合成が容易になる。光検知値を読み出すにつれて、ボックス482でそれらをデジタル化し加算することで、ある検知期間における各グループについての光検知値の和を得る。代替のアプローチでは、全てのラインを読み出してそれらの光検知値を記憶し、その後に、各パターン内のグループに属するラインの値を合成できる。ボックス484では、ライングループについての光検知値の和を、時間順序づけすることによってシーケンスとして合成することができ、それにより、パターンに基づいて符号化された1つ以上の時間変化波形を示す一連の和を得る。たとえば、光検知値の和は、当該グループの位置および長手方向の寸法(幅)、および/または、符号化/検知領域に対する対象物の位置および速度に基づいて並べることができ、それによって、パターンに基づいて符号化された時間変化波形を示すデジタル値シーケンスが得られる。ボックス486で、このシーケンスを検知結果として供給する。
【0073】
ボックス478および486からの検知結果は、ボックス462および468の両方におけるものと実質的に同じ形態を有することができる。また、異なるタイプの検知要素からの検知結果が示す時間変化波形が、互いまたは基準波形に対して比較可能な大きさおよび位相を有するように、スケーリング、シフティング、正規化などを実施することが可能である。
【0074】
符号器/センサが他のタイプの検知要素を含む場合は、ボックス490で適切な作業を実施できる。ボックス490では、検知値を適切な方法で読み出して合成することで検知結果を得て、その検知結果を供給する。
【0075】
図7では、支持構造体502に分析器500が設けられている。構造体502には、蛇行する流路504が含まれ、その流路内で、たとえば流体によって対象物506が運ばれる。
【0076】
対象物506は、推進コンポーネントによって流路504を通って運ばれ、キャリヤ流体と共にいくつかの出口から、たとえばトグル弁によって、パージまたは他の方法で排出されることができる。対象物506は、一連の対象物相互作用コンポーネントに相対する相互作用領域内で、相対運動を行うことができる。
【0077】
コールターカウンタ510およびミー散乱センサ512は、粒径検出器である。たとえばチャープフィルタパターン、小さい特徴サイズを有するランダムフィルタパターン、階段状周期的フィルタパターンなどを使用する他の技術によっても、粒径情報を取得することができ、その場合は専用のコンポーネントは不要である。粒径がパターンの特徴に比べてはるかに小さい場合は、時間変化波形においてパターンの特徴の全てを反映できる。しかし、粒径がパターンのいくつかの特徴より大きい場合は、時間変化波形においてそれらの特徴は弱くなり、または損失してしまう場合すらある。たとえばチャープパターンでは、比較的大きな粒子がそれよりも大きなパターン特徴を通過する相対運動を行うにつれて時間変化が発生するが、粒子が通過するパターン特徴が段々と小さくなると、時間変化は弱くなり発生しなくなる。大きな特徴および小さな特徴の両方を含むランダムパターンでは、微小な点状の粒子がパターンを通過する相対運動を行うにつれて、パターン全体にわたって時間変化が発生するが、比較的大きな粒子の場合は、まるで高周波成分がフィルタ除去されるかのように、大きなパターン特徴の部分でしか時間変化が発生しない。粒径情報は、時間変化信号中に符号化される。
【0078】
対象物相互作用コンポーネント520は通常、励起/変位コンポーネント522と、フィルタコンポーネント524と、センサ526を含む検知コンポーネント526とを備える。
【0079】
コンポーネント530,532,534は、第1および第2の蛍光検知コンポーネントと、ラマン散乱検知コンポーネントとを含む。対象物のタイプの区別、あるいは、対象物と環境または背景との区別に基づいて、弁540を両所定位置のどちらかにトグル切り替えすることができ、その一方の位置では対象物506が矢印542に従って排出され、他方の位置では矢印544に従って排出される。
【0080】
図8において、機器600は、2つの光透過コンポーネントを有する。それらの光透過コンポーネントの間の内側領域には、流体を収容する流路部分602と、部分602の周囲の非流路部分604との、2つの主要な部分が含まれる。ポート608によって、流体の流路部分602への流入およびそこからの流出が可能になっている。
【0081】
破線で輪郭を示した検知要素機構610は、たとえばディスクリートな検知要素から成る機構による検知パターン、または、検知パターンに基づいて読み出されるIC化検知要素の動作による検知パターンを有する。機構610は、検知要素612,614,616,618,および620から成る長手方向列を含む。要素612,616,および620は、互いに同じかほぼ同じ検知スペクトル、検知強度比、範囲、および/または他の検知特性を有するので、同様の斜めハッチングが施されている。また、要素614および618は、要素612,616,620とは異なるが、互いに同じかほぼ同じ検知スペクトル、検知強度比、範囲、または他の検知特性を有するので、同様の斜めハッチングが施されている。機構610は、各要素612〜620がそれぞれの検知特性およびx方向の距離によって特定されるストライプ状検知パターンを有する。
【0082】
遮蔽材料622が、機構610を囲んで開口を形成するように構成および配置されている。遮蔽材料622は、光透過がほぼゼロで光の散乱および反射を防止する材料であって、蛍光を発する対象物から入射される光も防止する。遮蔽材料622は、検知要素612〜620の製造工程中に製造されることができる。
【0083】
図9では、コンポーネント630と632とが、部分604内の材料によって分離されている。コンポーネント630および632は、それぞれ約0.3mmと約1.0mmの厚さを有する石英、ガラス、またはアクリル樹脂から成ることができ、互いの間の距離は約50μmであることが可能である。部分604は、たとえばSU−8などのフォトレジスト材料で構成できる。または、部分602を壁で囲んで部分604にエポキシを充填することもできる。
【0084】
対象物640から光が上方に、図中の発光コーン(錐体)で示すように放射される。単一のコーンとして図示されているが、実際の発光コーンは、光が通過する面における全反射角に依存する。図9に、フィルタアセンブリの位置の3つの選択肢を示す。その3つとは、流路602に面してコンポーネント630の下面に設けられるフィルタアセンブリ642と、流路の外でコンポーネント630の上面に設けられるフィルタアセンブリ644と、コンポーネント630の上面から離間して光検知機構648に隣接して設けられるフィルタアセンブリ646とである。光検知機構648はたとえば、ディスクリートな大面積光センサ(フォトダイオード、アバランシェフォトダイオード(APD)、または光電子増倍管(PMT))であるか、または、検知値を読み出して合成することで1つ以上の検知パターンに基づく検知結果が得られる光検知セルのアレイを含むICである。対象物からの発光コーンは、アセンブリ646を通過して、たとえばレンズやレンズ系などの光学コンポーネント652によって、結像面650上に結像される。
【0085】
図10では、コンポーネント630は、コンポーネント630および632に対して約45℃の斜面660を備える。矢印662で示すように面660にほぼ直交する入射励起光は、矢印664で示すように流路部分602を通じて光と結合することができる。励起光は、たとえば266nmである。
【0086】
部分602は、右側において開放されてポート666が形成されていることが可能であり、また、端面668で終端せずに面668から対称的に延伸することも可能である。
【0087】
機構610内のディスクリートな各光検知デバイスの断面を、異なる検知スペクトルを表す異なるハッチングパターンで示す。流路部分602の長手方向に沿って、光子エネルギの2つの異なるサブ範囲「帯域A」と「帯域B」とに応答性を有する各検知スペクトルが交互に並ぶように、複数の検知要素が交互に設けられている。それらの検知要素は、側面の全部または一部が、遮蔽材料622によって囲まれている。隣接する検知要素の間の間隙のサイズは(間隙を設ける場合は)、たとえば、機構610内で検知要素を配置および/または固定するのに使用される技術の分解能に依存する。吸収スペクトルが異なる2つの別の光吸収材料を交互に別個の光検知エリアに(たとえば、シャドー材料または透過性材料の層で囲まれた状態で)印刷することによって、2つの異なる検知スペクトルを有する各検知要素を製造する場合には、フィルタ間の位置決めおよび間隙は印刷の分解能に依存する。フィルタおよびディスクリートな光検知要素の高精度な位置決めは、不要かもしれない。フィルタまたは光検知要素の間の小さな間隙は、そのようなフィルタまたは光検知要素を通過する相対運動を行い光を放射する対象物からの時間変化信号に、重大な影響は与えないと考えられる。
【0088】
2つのグラフは、2つのタイプの対象物に応じて機構610が検出した強度を示す。2つのタイプの一方は「帯域A」で、他方は「帯域B」で放射する対象物である。要素612,616,および620は、「帯域A」に高い応答性を示すが「帯域B」には示さない。また、検知要素614および618は、「帯域B」に高い応答性を示すが「帯域A」には示さない。
【0089】
曲線672は、対象物640が「帯域A」で、すなわち、要素612,616,および620の検知スペクトルに適合した光子エネルギ分布で放射する場合に、機構610からの検知結果が示す強度を表す。曲線672は、それらの要素に沿って高い値を示すが、要素614および618に沿って低い値を示す。曲線672の高い値は、「I帯域A」と呼ぶ。
【0090】
曲線674は、対象物640が「帯域B」で、すなわち、要素614および618の検知スペクトルに適合した光子エネルギ分布で放射する場合に、機構610からの検知結果が示す強度を表す。曲線674は、それらの要素に沿って高い値を示すが、要素612,616,および620に沿って低い値を示す。曲線674の高い値は、「I帯域B」と呼ぶ。
【0091】
曲線672および674は、ほぼ相補的な信号を供給する2つの異なるタイプの対象物を表すが、遮蔽材料622に沿った最左部分だけは、両曲線ともほぼゼロである。要素612,616,および620が赤の帯域通過フィルタで覆われ、要素614および618が緑の帯域通過フィルタで覆われ、各対象物が、赤の蛍光を発する(すなわち「帯域A」の)粒子またはタグか、緑の蛍光を発する(すなわち「帯域B」の)粒子またはタグのどちらかであることが可能である。曲線672および674は、対象物640のx方向の位置または検知結果中のt位置に基づいてプロットできる。それらの位置は、全ての検知要素からの時間変化するアナログ光検知値を合成することを通じて連続的に供給されることも可能であり、または、たとえば適切な頻度で読み出しおよび合成作業を周期的に行うことによるサンプリングによって連続的に供給されることも可能である。
【0092】
機構610からの出力信号は、たとえば「帯域A」で放射する対象物を「帯域B」で放射する対象物から区別する場合などの、対象物のタイプの区別に使用できる。
【0093】
図11では、たとえば光センサが直接形成された基板、または、光センサを別途形成後に取り付けた構造体などの支持構造体680の表面上に、機構610が設けられている。光センサの形成時には、たとえば、要素612,614,616,618,および620の回路ならびに遮蔽材料を(フィルタと共に、またはフィルタ無しで)印刷または他の方法で被覆してパターニングし、検知要素の長手方向列を製造する。図中左側において、支持構造体680は、流路部分602の1つの側面として機能し、流路の一部に沿ってコンポーネント630を置換する。すなわち、機構610は、流路の内部表面上に設けられている。図中右側において、支持構造体680およびその上に設けられた検知要素は、流路部分602の外側で、コンポーネント630の外面から高さgを有する小さな間隙によって離間された位置に設けられる。この間隙は、スペーサまたは他の支持部材によって維持される。そのスペーサまたは他の支持部材は、検知要素および支持構造体680が流路部分602内の反共振導波路と干渉しないよう、十分に大きいものである。
【0094】
光検知要素に適切な検知スペクトルを与える吸収フィルタは、3つ以上の各色を有する3つ以上のタイプのものを用いることができ、反射フィルタと組み合わせることも可能である。
【0095】
図12のフィルタアセンブリ700では、各ストライプがフィルタ条件を有する。ストライプ702は、赤を通過させる。ストライプ704は、遮蔽して全く透過させない。ストライプ706は、オープンであり全て透過させる。ストライプ708は、グレーであり、中間強度の範囲にわたる全ての光子エネルギを通過させる。ストライプ710は、緑を通過させる。ストライプ712は、青と緑の共通部分を通過させる。ストライプ714は、青を通過させる。ストライプの幅はランダムである。ストライプ状フィルタのランダムな幅および境界線を、その下方に配置されるストライプ状のディスクリートな光センサの境界線と整列させることは可能だが、それは技術的に難しい。
【0096】
図13は、光検知セルのアレイを含むICを用いてアセンブリ700を実現する2つの代替の方法を示す。アセンブリ700には、パターニングされた光吸収材料層が設けられ、異なるタイプの複数のフィルタがICの感光性表面に、直接または適切な分離層と共に形成される。
【0097】
アセンブリ700は、赤部分720と、部分720に重なる黒部分722と、グレー部分724と、緑部分726と、部分726に重なる青部分728とを含む。重なった部分では、2つのフィルタが交差する。部分720と722との交差部は遮蔽するが、部分726と728との交差部は、緑と青の共通部分を通過させる。
【0098】
アセンブリ700の左側部分の下に、アレイ部分730が位置している。アレイ部分730内の光検知セルは十分に小さく、アセンブリ700のいずれの特徴(すなわち、ストライプ)の下にも、少なくとも1つの光検知セル全体または光検知セルのライン全体が収まっている。したがって各光検知セルは、アセンブリ700の他の特徴を通過した放射光は、限られた量でしか受けない。この構成によって、整列に関わる難点を回避できる。
【0099】
アセンブリ700の右側部分の下に、アレイ部分732が位置している。アレイ部分732内のセルは十分に大きく、各光検知セルが、アセンブリ700の複数の特徴を通じて光を受けるようになっている。たとえばセル734は、一連のストライプ708,710,および712を通じて光を受け、アレイ732に相対する符号化/検知領域内で光放射性の対象物が相対運動を行うにつれて、時間変化を伴う光検知値を供給する。図中、境界線がほぼ整列されているが、整列は必要ない場合もある。ストライプの境界線同士の間にセルの境界線があると、有益なことに、時間順序づけ、連結、または、隣接するセルからの光検知値をシーケンスに合成するための他の処理が、容易になることもある。
【0100】
曲線740は、赤の蛍光を発する粒子またはタグの曲線であり、赤ストライプ702を通過した際の光検知値は強度ImaskRである。曲線742は、緑の蛍光を発する粒子またはタグの曲線であり、緑ストライプ710を通過した際の光検知値は強度ImaskGである。曲線744は、赤の蛍光を発する粒子と緑の蛍光を発する粒子の両方でタグ付けされた対象物640の曲線であり、したがって曲線744は、曲線740および742のスケーリングされた和である。これらによって、赤、緑、および青の粒子やタグを区別できるだけでなく、赤と緑、緑と青、赤と青、および、赤と緑と青などの組み合わせでタグ付けされた対象物を区別することが可能である。各組み合わせから区別可能な時間変化信号が生じ、それを分析して放射色(単数または複数)についての情報を得ることができる。
【0101】
強度信号は、ディスクリートな光センサから成る機構を用いてではなく、光検知セルのアレイを含むICを用いて得ることが可能である。アレイ内の複数の光検知セルを、フィルタアセンブリ中の異なる特徴または異なるフィルタアセンブリで覆った場合、セルから読み出した光検知値に基づいて、多くの異なるタイプの粒子を並行的に区別できることがある。区別づけのための測定可能な各特徴は、主要成分分析において1つの軸を提供でき、その各軸に沿って複数の粒子が区別可能であるから、区別できる粒子タイプの数は、アレイ内の光検知セルの数よりはるかに多い場合がある。対象物は、環境、背景、または他のタイプの対象物から区別されうる。
【0102】
図14において、光検知セルのアレイ761上に設けられたフィルタコンポーネント760は、透過性材料またはファブリペローフィルタから成るくさび形の層と、その上面に形成されたフィルタアセンブリ746,766,768とを備える。この構成によって、コンポーネント760の全長にわたって連続的に変化する厚さが設けられ、それにより、各フィルタアセンブリの時間変化効果に加えて、追加のスペクトル情報が放射光の中に符号化される。その追加スペクトル情報は、アレイ761内のセルからの検知結果を適切に処理することで得ることができ、それらのセルは、各アセンブリ746,766,768に沿って数多くのサンプリングを実施できるほど十分に小さい。
【0103】
図15〜図17では、検知要素機構が流路780の対向する両側面に設けられている。図中、機構782は流路780の手前側に、機構784は向こう側に配置されている。図16および図17では、機構782は、流路780を横切る方向であるy方向に沿って周期性を有する周期的検知パターンを備える。また、機構784は、x方向の長手方向列に沿って、2つの異なるタイプの検知スペクトルを有する検知要素から成るランダム検知パターンを備える。機構782からの検知結果は、y方向に変調された信号を含み、機構784からの検知結果は、x方向に変調された信号を含む。
【0104】
機構782は、支持構造体786を含み、その上に、y方向に周期性を有する複数の検知要素が設けられている。各要素787は、赤の帯域に高い応答性を示す検知スペクトルを有するが、その代わりに他の色に高い応答性を示してもよいし、また他の方法で実現されてもよい。検知器784は、支持構造体788を含み、その上に、機構610が周期的フィルタアセンブリと共に設けられている。たとえば、機構610に緑フィルタを重ねてもよい。または、検知スペクトルを有する検知要素から成る周期的機構を、機構610の代わりに設けてもよい。
【0105】
機構782からの周期的信号を常時分析することで流路780内での対象物の変位を得て、その変位を用いて、機構784からの信号との相関のためのタイムスケール(時間換算)を決定することが可能である。また、流路の一方の側で蛍光による放射光を光検知し、他方の側で散乱による放射光を光検知することもできる。流路の対向する両側面に位置する光検知要素機構からの時間変化波形は、たとえば相関などによって比較することができる。
【0106】
検知要素機構では、たとえば周期的検知パターンおよび1つ以上の非周期的検知パターンなどの、2つ以上の並行的な検知パターンに従って、光検知値を合成することが可能である。それによって得られた時間変化信号には、2つ以上の異なる空間変化パターンが符号化されている。
【0107】
スペクトルに依存しない光検知パターン(たとえば、二値パターンまたは強度依存パターン)の重ね合わせ(またはスケーリングして重畳したもの)は、IC化単色検知要素を用いて、光検知値を読み出して合成することで得られる。スペクトル依存の光検知パターンの重畳は、IC化多色検知要素(たとえば、赤−緑−青を光検知するセル)を用いて得ることができる。
【0108】
図18では、ボックス790で、読み出しおよび合成作業を実施する要求を受け取る。その要求は、使用すべき検知パターンに関する指示を含む。またその要求は、たとえばトリガー信号から生じてもよく、または、定期的に供給されてもよい。検知パターンは「ラインベース」である。すなわち、光検知セルのアレイのラインを読み出すことによって、検知パターンに基づく読み出しが実施できる。検知パターンは、一連のラインに関する検知特性を指定することによって指定できる。その検知特性とは、たとえば、周期的パターンであれば繰り返すサブシーケンス、非周期的パターンであれば単一の繰り返さないシーケンス、他のタイプのシーケンスやサブシーケンス、または、たとえば演算でシーケンスを生成するための値などである。ラインベースの検知パターンでは、主に長手方向に変化する他のタイプの検知パターンを近似することができる。その検知パターンはたとえば、各ストライプが検知特性と長手方向に沿った幅とを有する平行ストライプ状検知パターンである。複雑なパターンについては、長手方向以外の変化を無視し、長手方向における各位置に関するデジタル値を得ることで、所望の分解能にて長手方向の変化を近似できる。検知パターンは、「単純」パターンであることが可能である。すなわち、シンプルなパターンを重ね合わせたものではなく、たとえば、単純な周期的または非周期的パターンである。また、検知パターンは、シンプルなパターンを重畳またはスケーリングして重畳したものである場合もある。たとえば、複数のシンプルなパターンが「平行」である場合は、全てのラインベースのパターンにおけるラインが十分に平行であって、パターンの適切なスケーリング後に、1つのラインベースのパターンに併合できるということである。特定のアレイに関連した一連のデジタル値として得られたラインベースの検知パターンは、当該パターンの各デジタル値に含まれたアレイのラインの数によって指定することもできる。それにより、同じではないが関連するセルサイズを有するアレイを用いて、同じ実際の比率にて、ある検知パターンを実現することが可能である。
【0109】
ボックス791では、読み出しのための準備を実施し、対象物のサイズ、初期位置、および、たとえば相対速度などの変位を取得することが可能である。これらの値を用いることで、対象物からの放射光を受ける光検知アレイのラインを特定できる。ボックス791では、ICI/O410を通じてIC412〜414への信号およびそれらからの信号を伝達でき、また、デバイスI/O420を通じて他のデバイスへの信号およびそれらからの信号を伝達できる。
【0110】
ボックス792において、一連の反復処理ステップを開始し、対象物が符号化/検知領域を通過したかどうかを、たとえば対象物の現在位置に基づいて検出する。通過した場合以外は、次のステップにおいて、たとえばCCDタイプやCMOSタイプなどのアレイの読み出しタイプに適した方法で、複合光検知値を取得する。
【0111】
ボックス794のステップの実施時には、対象物から放射光を受ける光検知セルのラインから読み出した光検知値を取得する。ボックス794ではたとえば、アレイの全てのラインを読み出した後、対象物から放射光を現時点に受けているラインからの読み出し光検知値のみを選択できる。もしくはボックス794では、放射光を現時点に受けているラインを特定し、特定されたラインのみを選択して読み出すこともできる。ボックス794では、対象物のサイズ、位置、変位などに基づいて、放射光を受けているラインを特定することが可能である。読み出した光検知値は、メモリ408に記憶することができる。
【0112】
ボックス796では、読み出した光検知値をデジタル化し、検知パターンに基づいて合成した後、得られた合成値をメモリ408に保存するなどする。CCDタイプの読み出しでは、量的値をアレイから転送し出力するにつれてデジタル化し、各ラインのデジタル化値を加算して当該ラインの和を得ることが可能である。放射光を受けているラインが特定される場合は、それらのラインの和を、たとえばビニングおよび/または他の作業を通じて、検知パターンに基づいて合成することができる。CMOSタイプの読み出しでは、放射光を受けているラインを特定し、それらのラインを並列的に続けてサンプルアンドホールド回路で読み出すことが可能である。その場合、各ラインからの読み出し光検知値をデジタル化して加算し、当該ラインの和を得る。それらの和を、たとえば加算および/または他の作業を通じて、検知パターンに基づいて合成することができる。
【0113】
ボックス796では、検知パターンの特徴を考慮に入れることができる。検知パターン内のストライプの間の境界線の両側部分については、検知結果を破棄することができる。もしくは、境界線の各側のラインを、別個にビニングまたは加算して、その後の作業のために保存することができる。検知パターンが強度依存である場合は、光検知値を、当該パターンの各ストライプの強度に従ってスケーリングすることが可能である。それはたとえば、読み出し時にアナログ演算で行うことも、デジタル化後、ライン毎またはライングループ毎の合成後にデジタル的に行うこともできる。検知パターンがスペクトル依存であって、光検知値にRGBなどのスペクトル情報が含まれる場合は、読み出した光検知値を、各ストライプの特定のスペクトル毎にビニングまたは加算することが可能である。
【0114】
ボックス797では、オプションで、対象物の位置および変位に関する情報を更新する。それにより、反復処理の次回の実行時に対象物からの放射光を受けるラインを特定することが可能になる。
【0115】
対象物がアレイを通過した後には、ボックス798で、合成値を時間順序づけし、時間順序づけされた合成値を、1つ以上の時間変化波形を示す検知結果として、たとえば、外部I/O406を通じて外部回路に供給するか、メモリ408に記憶するか、デバイスI/O420への信号を用いてデバイス422〜424のいずれか一つに記憶するなどする。ボックス798での時間順序づけでは、ボックス796のステップから得られる合成値を使用し、その合成値には、各ストライプについての複数の値であって、当該ストライプに関して各フレーム(期間)について1つの値を算出可能にする複数の値が含まれることが可能である。各反復処理を一定の期間で実施する場合は、各フレームは、各反復処理の長さに対して同じ比率関係を有することができる。時間順序づけされた合成値は、対象物からの放射光を時間の関数として正確に表すように、タイムスケーリングまたは他の調整が施されることが可能である。
【0116】
検知パターンが単に二値的である場合はそれを、ボックス796で処理される2つの相補的なパターンとして扱うことができる。検知パターン内でオン状態のライングループをまとめて第1ビニング処理でビニングし、その際にオフ状態のライングループは除外する。第2ビニング処理では、オフ状態のライングループをまとめてビニングし、その際にオン状態のライングループは除外する。それにより、全ての光検知値が、この2つの処理のどちらか一方でビニングされる。ボックス798では、これらの相補的パターンについて、2つの相補的な値のシーケンスを生成できる。それらの相補的なシーケンスを合成して合成シーケンスとすることが可能であり、それによってたとえば信号対雑音比を改善する。
【0117】
選択したラインからの光検知値に対するビニングまたは他の処理は、マスキングの代わりを果たすことができる。各ラインそれぞれの合成値を、ボックス796で保存した後、ボックス798で、時間順序づけの前に、いくつかの検知パターンに従って合成することが可能である。まず、ラインからの値を、周期的パターン(たとえば、n番目のライン毎)と、ランダム、チャープ、または他の非周期的パターンとの両方に従って、ビニングあるいは選択および/または合成する。周期的な検知結果は、速度または他の変位を取得するために使用できる。非周期的な検知結果(ビニングによるもの、または、非周期的フィルタによるもの)は、変位に基づいてタイムスケーリングされた比較において使用でき、それによって対象物の位置またはタイプを取得する。ライングループからの合成値は、取得および保存後に、異なる対象物サイズまたは他の特性に従って合成できる。ライン群の合成値に対して、たとえばチャープパターン、小さな特徴サイズを有するランダムパターン、または階段状周期的パターンに基づくビニングなどによる事前分析作業を実施することによって、対象物に関する情報を抽出可能である。事前分析後、抽出情報に基づいて処理を分岐させ、事前分析から得られた対象物サイズに適したビニングなどを行うことができる。
【0118】
フィルタで、光検知機構を覆うことが可能である。そのフィルタはたとえば、光検知要素機構にフィルタパターンを実際に重ねるフィルタ機構であることが可能である。そのようなフィルタ機構は、フィルタの径方向列または「スタック(積み重ね)」、あるいは「スタック相当」フィルタを用いて実現できる。1つの層が、テンプレート信号を生成するパターンを有するテンプレート層であって、別の層が、周期的信号を生成するパターンを有する周期的層であることが可能である。各層は、不透明度がゼロの矩形または他の閉多角形と、それを囲む不透明度0.5の領域とを備えることができる。
【0119】
図19および図20では、反射性のグレースケールスタック相当フィルタ(フィルタの径方向列またはスタックに相当)が、光検知要素機構を覆っている。複数のフィルタ層の厚さ定義をソフトウェア上で重ねて加算することができ、その結果、図の例では厚さ0、0.5、および1が得られる。各層における変化は、互いに同じ方向の場合もあり、または、互いに直交するなど異なる方向の場合もある。フィルタに関する複数の光学的特徴の定義を重ねることで、所望の相当物についての光学的特徴の定義を得て、それを、各領域が光学厚さまたは他の特性を有するレイアウトタイプの記述に変換することも可能である。
【0120】
フィルタの重ね合わせ順序が交換可能である場合は、複数フィルタの重ね合わせに相当するフィルタを用いて、シンプルな検知パターンを重畳またはスケーリングして重畳したものの相当物を実現することができる。シンプルな検知パターンの各々を用いて各フィルタパターン相当物を得て、それらのフィルタパターンを重畳またはスケーリングして重畳することで結合し、それによって、複合検知パターンにほぼ相当する複合フィルタパターンを得ることができる。
【0121】
複合検知パターンについてのフィルタ厚さ定義が、色変化または他のスペクトル依存性を有しない単なる透過/反射フィルタを生成するものである場合であって、且つ、部分エッチングが実施可能である場合は、フィルタ定義を近似するフィルタ相当物を以下の方法で作成することができる。まず、たとえばクロムなどの反射性の高い材料をフィルタアセンブリ上に被覆する。続いて、厚さ0または0.5の領域において、その反射性材料を部分エッチングして一部透過性を有する薄い層を残す。その後、厚さ0の領域において、残った反射性材料をエッチングして取り除く。代替案としては、厚さ0.5の第1パターン化層を被覆した後、たとえば剥離や、エッチングを必要としない他の技術などを用いて、エッチングは実施せずに、厚さ0.5の第2パターン化層を被覆することが挙げられる。様々な透過性/反射性、および/または、様々な光学厚さのキャビティを有するDBRを備える積層フィルタ構造体は、同様の方法で製造できる。キャビティ厚さの変化は、厚さの変化および屈折率の変化に起因しうる。
【0122】
図19のフィルタアセンブリ800は、ランダムフィルタと周期的フィルタとを重ねた組み合わせに相当し、アレイ801である検知要素機構を覆うように配置されている。曲線802は、ランダムフィルタの形状を示し、曲線804は、周期的フィルタの形状を示す。両フィルタとも、0か0.5の、2つ厚さレベルしか有しない。しかし、フィルタアセンブリ800は、0、0.5、および1に相当する3つのレベルを有する。曲線806は、透過関数を示す。アセンブリ800を通過する放射光は、対象物に関する変位および位置の情報を含んでおり、アレイ801内のセルがフィルタ800の最小特徴サイズに対して十分に小さい場合は、タイムスケーリングによってその情報を抽出できる。
【0123】
破線810は、厚さレベルの振幅をスケーリング(縮尺調整)することで光出力全体を、たとえば0、0.2、および0.4へ変更できることを示唆している。それによって、光透過性を増大することができる。
【0124】
図20のアレイ831上のフィルタアセンブリ830は、曲線832で示すチャープフィルタと、曲線834で示す周期的フィルタとの組み合わせに相当する。このフィルタアセンブリは、速度が異なる場合であっても、変位および位置情報をより効率的に抽出可能にする。曲線836は、情報抽出を可能にする透過関数を示す。
【0125】
図21は、壁状部材870および872を示し、それらの間の距離が直線的に減少する様子を表す。検知要素機構610(周期的な検知要素612,614,616,618,620を含む)に沿って対象物640が通過するにつれて、曲線874で示すように、位置または時間の関数として対象物の速度が直線的に増大する。その結果得られる時間変化信号は、チャープ型であり、すなわち、速度の変化に従って周期が直線的に減少する。その速度変化は、流路の寸法の変化によって流体のフロー速度が変化することに起因する。曲線876が、機構610から光検知値を読み出して合成することで得られたチャープ信号を表す。その信号は、要素612,616,および620の位置で強度I(A)を示し、要素614および618の位置で強度I(B)を示す。後続の各検知要素の位置における信号期間は、先行の要素の位置での期間に比べて短くなっており、それによってチャープパターンが生じている。
【0126】
より複雑な技術においては、対象物640のフローが、たとえば周期的、チャープ、またはランダムな態様で、異なるスペクトル依存性などを有する検知要素の列を通過するように、流路の形状寸法を用いて進路調節する。粒子のフローを進路調節することで放射光の所望の時間変化を生成するほうが、検知パターンを作成することで同じ時間変化を生成することよりも簡単かもしれない。流路内での対象物のフローは、他の技術によってその進路を調節することも可能である。たとえば、帯電粒子は、電界の変化によって進路調節できる。典型的なマイクロ流体およびナノ流体においては、レイノルズ数が非常に小さく、層流の条件が実際的には常に存在しているほどである。
【0127】
図22では、壁状部材880および882は、互いに平行だが正弦波のような形状を有し、それによって、それらの間に正弦曲線フローパターンが設けられている。検知要素884および886は、同質だが検知スペクトルが異なり、それぞれ異なる帯域「A」および「B」に対して高い応答性を有する。対象物640は、正弦曲線経路888に沿って進み、要素884と886との間を往復して、各周期内にそれらの間の細い間隙を2度通過する。その結果、要素884および886からの光検知値を読み出して合成すると、対象物から曲線890および892が得られる。曲線890は、帯域Aに類似するが帯域Bとは異なるスペクトルを有する対象物についての曲線であり、曲線892は、帯域Bに類似するが帯域Aとは異なるスペクトルを有する対象物についての曲線である。これらの曲線はいくぶんか相補的であるが、遮蔽材料から成るストライプ894を経路888が横切る間は、これらの各曲線はほぼゼロになる。遮蔽材料のストライプは894、要素884および886の外側に設けられることも可能である。
【0128】
図23の壁状部材900および902は、まっすぐで平行であり、検知要素904および906がそれらの間に設けられている。たとえばソレノイドまたはモータ駆動のピストンなどの運動デバイス908が、双方向矢印910で示すように、対象物640と、ストライプ状要素904および906とのあいだの横方向の相対運動を生じさせる。制御回路912は、運動デバイス908を制御する信号をいずれかの適切なパターンにて供給し、それによって、対象物のタイプ別に任意の時間変化信号が得られる。代替案では、要素904および906を動かしてもよい。一方が壁900および902で他方が要素904および906である両者のあいだの相対運動を、いずれかの組み合わせで用いて、双方向矢印910で示すような移動を生じさせることが可能である。流路内の流体フローによって、対象物640の速度および他の変位を、他の移動に対して相対的な時間の関数として変化させることもできる。運動デバイス908は、入来する対象物を示すトリガー信号に応答することが可能である。
【0129】
曲線914は、「帯域A」で応答性の高い要素904と、「帯域B」で応答性の高い要素906との間での、y方向に沿った対象物640の移動を示す。対象物640は、各検知要素の位置にて異なる長さの時間を費やす。たとえば、ランダムな励起パターンを用いた場合は、ランダムな時間量が生じる。要素904および906からの光検知値を読み出して合成すると、曲線916および918が得られる。帯域Aに類似するスペクトルを有する対象物が曲線916で示され、帯域Bに類似するスペクトルを有する対象物が曲線918で示される。遮蔽材料から成るストライプ919を各対象物が横切り、それによって放射光が短時間遮られ、各曲線は一時的にゼロになる。曲線916では、要素904に沿った位置での強度はI(A1)であり、要素906の位置での強度は、より低い値であるI(B1)である。曲線918では、要素906に沿った位置での強度はI(B2)であってより高く、要素904の位置での強度はI(A2)であってより低い。これらの2つの曲線は、ストライプ919を通過する時点を除いて、全体的に相補的である。対象物640は、帯域Aと帯域Bとの間を瞬間的に移動されることが可能であり、ストライプ919を非常に迅速に横切り、ストライプ919での通過時間は極めて短い。
【0130】
図24において、対象物640は、壁状部材930および932の間の流路を通じて、符号化/検知領域940に向かって層流によって運ばれ、トリガー検出器942を通過する。それに応じて検出器942は、トリガー信号を制御回路944に供給して、対象物640の位置を正確に示す。制御回路944は、対象物640の位置に基づいて、たとえば検知パターンに基づく読み出しを取得するためなどの制御信号を、検知要素機構946に供給する。
【0131】
曲線950は、機構946のスペクトル依存性によって、どのように検知結果が時間的に変化するかを示す。機構946では、帯域「A」に対して応答性の高い検知要素と、帯域「B」に対して応答性の高い他の検知要素とが、ランダムな検知パターンにて交互に配列されている。代わりに、周期的またはチャープパターンを用いることも可能である。機構946がICによって実現されている場合、読み出しはいずれのパターンでも実施できる。帯域AおよびBは、非二値的なスペクトル帯域や、白黒(すなわち、一方が広帯域(白)で、他方がオフ(黒))であることが可能である。異なるスペクトル帯域を、2つより多く備えることも可能である。
【0132】
曲線952では、異なる検知強度レベルを有する複数の検知要素を備える機構946の強度依存性によって、検知結果が時間的に変化する。光検知値は、例として0.3および0.6で表した大きさレベルを有する。それらはすなわち、最小検知強度であるゼロ(すなわち黒またはオフ)と、最大検知強度である1.0(すなわち白またはオン)との間のレベルである。検知要素は、他の中間的な検知強度レベルを有することも可能である。
【0133】
図24の技術は、精度に関して、たとえばコールターカウンタあるいは後方または前方散乱信号などからの、位置を正確に示すトリガー信号に依存しており、読み出し時に時間変化が対象物の位置と関連づけられている。精度はまた、いずれの時点でも符号化/検知領域940内に対象物が1つしか存在しないことにも依存する。検出器942からのトリガー信号は、たとえば粒径などの追加情報を、制御回路944での使用のために供給する。それによってたとえば、検知パターンを選択し、符号化を最適化する。制御回路944は、ビニングまたは他の方法で合成された検知パターンのストライプの長手方向の幅を、対象物640の寸法に基づいてスケーリング(縮尺調整)することができる。
【0134】
別個のトリガー検出器回路を設けることなく、IC化検知要素機構においてトリガー誘発検知を行うために、CPU402が、制御回路として機能する場合がある。IC上の光検知セルのアレイは、トリガー検出器として機能する部分と、符号器/検知器として機能する他の部分とを備える。
【0135】
アレイの一部である「トリガー部分」を読み出して、アレイの他の一部である「パターン部分」の読み出しの制御に使用される信号をトリガーする。CPU402によって、追加のトリガー誘発検知ルーチンを実施することが可能であり、その際、読み出しおよび合成作業を行うルーチン442を呼び出す。このような動作は、CPUを備えるものや備えないものを含む様々なタイプの回路で実現でき、アレイと同じIC上に集積化された回路も含まれる。
【0136】
ボックス953で、CPU402は、アレイ部分によるトリガー誘発検知の実施の要求を受け取る。その要求にて、アレイのどの部分がトリガー部分およびパターン部分として機能するかを指定または指示することができ、さらに、各パターン部分に関してそれぞれ、たとえば所定の周期で周期的なパターン、ランダム、チャープ、または他の非周期的パターンなどの検知パターンを指定または指示することができる。ボックス953では、初期化を実施し、アレイ上の第1のトリガー部分およびパターン部分を示す値を設定することが可能である。
【0137】
ボックス954でループを開始し、全てのトリガー部分が、それぞれ対応のトリガー検出領域に対象物が入ったことを示す光検知値を供給するまで、そのループを継続する。各ループはサブループを含み、そのサブループにおいてボックス955では、次のトリガー部分をテストして、その光検知値が対象物の検出を示すか否かを判断する。否である場合は、ボックス956で、適切な時間制限または他の条件を用いて、次のトリガー部分における検出が遅すぎるかどうかを判断する。遅すぎると判断した場合は、ボックス957でエラー回復を開始する。そうでない場合は、ボックス955を再度実施する。
【0138】
ボックス955で光検知値が検出を示すと判断した場合は、ボックス958で、CPU402が適切な要求を供給することで、たとえば読み出しおよび合成ルーチン442を呼び出して、次のパターン部分から対応の検知パターンに従って光検知値を読み出す。ボックス958では、その検知パターンのパラメータ(たとえばタイムスケール)を決定するために、前のパターン部分からの情報を用いることができる。
【0139】
全てのトリガー部分からトリガー信号が供給され、全てのパターン部分が読み出された後、ボックス959で、対象物の出力データを供給する。出力データは、特性に関する特性データ、タイプに関するタイプデータ、時間変化波形を示す検知結果データ、励起特性を示す励起データ、環境特性を示す環境データ、または、パターン部分から得られた他のデータを含むことができる。
【0140】
トリガーおよびゲートメカニズムが、対象物からの放射強度のうち閾値を超える部分を記録し、この有限の信号に窓関数を適用する。このようなメカニズムは、対象物同士が十分に離間していて、各対象物の時間変化信号が先行および後続の対象物の信号から分離できる場合に使用可能である。窓関数の適用後、フーリエ変換によって、タイムスケーリングされた比較を実施するためのスケーリング係数を得ることができる。
【0141】
トリガー検出領域に2つ以上の対象物が並行的に入る場合は、トリガー技術によっては、それらが1つの対象物であるかのような重なった検知結果をむやみに生成してしまう場合がある。これを解決するために、検知結果をフーリエ変換することによって、異なる速度を有する複数の対象物からの周期的信号に起因する可能性が高いサブピークを発見することができる。各サブピークのスケーリング係数を用いて、タイムスケーリングされた比較、相関、または他の比較が実施可能であり、各スケーリング係数によって各対象物についての相関結果が得られる。誤って偽のサブピークを特定してしまった場合でも、相関結果を分析して、対応の速度で移動する複数の対象物から放射された信号を検知したかどうかを判断できる。
【0142】
図26の符号化/検知コンポーネント960は、対象物640が(たとえば流体に運ばれて)相対運動を行う流路964の壁に沿って設けられた電極962のアレイを備える。電極962は、測定デバイス966に接続されており、時間依存信号を記録または供給することができる。その時間依存信号は、たとえばキャパシタンス、電流、あるいは、インピーダンス関連の他の電気または磁気特性であって、流路964の両側の電極の間で変化するものであり、または、流路964の片側または両側に設けられたインピーダンスに基づく他のタイプのセンサで検知されることも可能である。対象物640は、電極962の間で相対運動を行い、デバイス966は、対象物640の特性を示す検知された時間変化波形を取得する。
【0143】
様々な電気および/または磁気特性を測定可能であり、その特性はたとえば、生物細胞、細胞サイズ、細胞膜の容量、細胞質の導電性、細胞質の誘電率などについての情報を提供するものである。電極962の代わりに、ホール効果センサを同様の配置パターンで設けることで、インピーダンスに基づく磁気特性の検知を実施することが可能である。デバイス966は、電極962に電気的ウォブル周波数を供給することで、時間変化波形への符号化による特性の測定に使用する周波数を決定することができる。
【0144】
電極962は、ボックス968に示す二値信号に従ったパターンを形成している。信号「a)」は周期的、「b)」はランダム、「c)」は、a)とb)とをたとえば論理和演算することで得られる論理合成信号である。電極962は、c)のオン状態の部分に比例し、複数セグメント969および3つの上側の電極962で示すように、a)に従って周期的に符号化し、b)に従ってランダムに符号化する。
【0145】
ボックス968に示す重畳検知パターンは、ホール効果センサを、流路964の片側、両側、または周囲に設けて実施することができる。また、そのパターンに、ディスクリートな光検知要素などの光検知要素や、フィルタ機構を含むことができる。たとえば構造化またはパターン化されたホール効果センサなどの磁気センサを用いる場合、得られる時間依存性の検知結果は、符号化/検知領域内で相対運動を行う磁気ビーズなどの磁気粒子または対象物に応じた時間変化を示す(ビーズが通過するか、不動化されたビーズに対して機構が移動するかに関わらず)。
【0146】
本発明の技術は、全血内のCD4の計数において、良好に実施できた。単一タグの検知は、実行可能であった。
【0147】
本発明の実施形態は、環境特性(たとえば、水、血液、または他の流体中の物質)または励起に関する特性についての情報を取得するのに有用な場合がある。水の特性としては、放射光の散乱に基づいて測定可能な濁度や色が挙げられる。較正時には、まず、符号化/検知領域を通過するように、既知の特性を有するビーズ(粒状体)を既知の流体で運ぶ。続いて、同じビーズが符号化/検知領域を通過するように、分析対象である不明だが均質な流体で運ぶ。不明の流体の吸収または他の特性によって、ビーズの特性(たとえば、蛍光性または散乱スペクトル)の測定値が変わる可能性がある。不明の流体の速度に関する特徴に、情報が含まれる場合もある。ある構成成分(たとえばタンパク質)が存在し、ビーズがその構成成分と相互作用するよう機能化されている場合、その構成成分がビーズと相互作用することによって放射光特性に影響する可能性があり、たとえば、蛍光発光のオン/オフ切替え、強度の変化、または放射光の色の変化などが生じることがある。
【符号の説明】
【0148】
10 対象物、20 符号化/検知コンポーネント、32,42 検知要素機構、80 IC化検知要素、82 IC、84 アレイ、86 読み出し/合成回路、90 処理コンポーネント。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
検知要素を含む符号器/センサを用いる方法であって、
1つ以上の検知要素を含む符号器/センサを作動させることで、前記符号器/センサに相対する符号化/検知領域内で相対運動を行う対象物から検知結果を取得する行為を含み、前記検知要素は、光検知およびインピーダンスに基づく検知のうちの少なくとも1つを実施し、前記検知結果は、前記対象物の相対運動に応じた1つ以上の時間変化波形を示し、
前記符号器/センサを作動させる行為は、
非周期的な時間変化波形を示す検知結果を取得するステップであって、前記非周期的な時間変化波形は、複数の検知要素の非周期的な配列からの検知結果が示すであろう時間変化波形に少なくとも近似する、ステップと、
重畳時間変化波形を示す検知結果を取得するステップであって、前記重畳時間変化波形は、複数の検知要素の長手方向列からの検知結果が示すであろう時間変化波形に少なくとも近似し、前記長手方向列は、2つ以上のシンプルな検知パターンのセットを重畳またはスケーリングして重畳したものにほぼ等しい複合検知パターンを有し、前記セット内の全てのシンプルな検知パターンに応じた時間変化を含む波形を示す検知結果を提供するように構成される、ステップと、
前記符号器/センサ内で複数の光検知セルを含む1つ以上のアレイであって各々が別個のIC上にあるアレイを用いて、1つ以上のセルグループ検知パターンに基づくグループ単位で前記複数の光検知セルのセットから光検知された値を読み出して、読み出した前記光検知値を合成することで、前記セルグループ検知パターンに基づく1つ以上の時間変化波形を示す検知結果を取得するステップと
のうちの少なくとも1つを含む方法。
【請求項2】
符号器/センサに相対する符号化/検知領域内の対象物から検知結果を取得する符号器/センサであって、
複数の検知要素の長手方向列であって、前記長手方向列は、2つ以上のシンプルな検知パターンのセットを重畳またはスケーリングして重畳したものにほぼ等しい複合検知パターンを有し、光検知またはインピーダンスに基づく検知を実施し、前記符号化/検知領域内の対象物から、前記セット内の全てのシンプルな検知パターンに基づく検知結果を取得することができるように構成される、長手方向列、
を含む符号器/センサ。
【請求項3】
検知要素機構に相対する各検知領域内の対象物から検知結果を取得する検知要素機構であって、前記複数の対象物のうちのサブセット中の各対象物は、前記検知領域内で相対運動を行い、前記検知結果は、前記検知領域内での前記サブセット中の対象物の前記相対運動に応じて、1つ以上の検知された時間変化波形を示す、検知要素機構と、
前記検知結果を受け取り、それに応じて、前記サブセット中の少なくとも1つの対象物の前記相対運動から生じた情報を示すデータを提供する処理コンポーネントと、
を有するシステムであって、
前記検知要素機構は、
動作時に、光検知またはインピーダンスに基づく検知を実施して、検知された非周期的な時間変化波形を示す検知結果を取得する、検知要素の非周期的な配列と、
動作時に、光検知またはインピーダンスに基づく検知を実施する、複数の検知要素の長手方向列であって、前記長手方向列は、2つ以上のシンプルな検知パターンのセットを重畳またはスケーリングして重畳したものにほぼ等しい複合検知パターンを有し、その長手方向列内の検知要素が、動作時に、前記セット内の全てのシンプルな検知パターンに基づいた時間変化を含む検知波形を示す検知結果を取得するように構成される、長手方向列と、
ICによって実現された1つ以上の検知要素と
のうちの少なくとも1つを含み、
ICによって実現された前記各検知要素は、
各IC上に設けられ、各々が複数の光検知セルを含む、1つ以上のアレイと、
1つ以上のセルグループ検知パターンに基づくグループ単位で前記複数の光検知セルのセットから光検知された値を読み出して、読み出した前記光検知値を合成することで、前記セルグループ検知パターンに基づく時間変化を有する1つ以上の検知された時間変化波形を示す検知結果を取得する読み出し/合成回路と、
を有する、
システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【公開番号】特開2009−180724(P2009−180724A)
【公開日】平成21年8月13日(2009.8.13)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2009−18200(P2009−18200)
【出願日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【出願人】(502096543)パロ・アルト・リサーチ・センター・インコーポレーテッド (393)
【氏名又は名称原語表記】Palo Alto Research Center Incorporated
【Fターム(参考)】