説明

時間的尺度を使用した脳パターンの解析

脳磁図の使用によるような、脳のニューロン信号を検出するべく配置された空間的に分配された複数のセンサにより得られた神経生理学的活動の時系列を表す脳データの集合が得られる。同脳データの集合は、同脳データの集合内の異なる時系列のグルーピングの間での偏相互相関のような統計的に独立な時間的尺度の集合に基づいて動的脳モデルを得るために処理される。動的脳モデルは、例えばゼロラグのような接近した時間にて起こる脳のニューロン集団の間での相互作用を表す。動的脳モデルは、脳の神経生理学的評価を得るために解析される。データ処理技術は、構造的又は神経化学的な脳の病状を評価するために使用され得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は神経生理学的解析に関し、より詳細には、それらに限定されるものではないが、時系列表現を使用した脳パターンの解析に関する。
【背景技術】
【0002】
身体の他の任意の器官と同様に、脳の機能は、健康な状態及び疾病の状態を診断するために評価される必要がある。しかしながら、身体の他の任意の器官とは異なり、脳の機能に関して利用できる良好な試験法が存在していない。典型的な行動検査法は、標準神経学的検査、精神医学的面談、又は神経心理学検査が含まれる。脳波図(EEG)は、てんかんの大発作又は昏睡状態のように脳の機能が非常に大きな障害を受ける場合を除き、ほとんど情報を与えることはない。能の構造を評価するための方法(例えば、磁気共鳴画像化法、MRI)、化学的方法(磁気スペクトロスコピー、MRS)、フルオロデオキシグルコースによるポジトロン放出断層撮影法(PET)又は薬理学的方法(リガンドによるPET)は、脳の機能を評価するための代替的手段ではなく、代替的手段とはなり得ない。最後に、「機能」MRI(fMRI)及びO15によるPETは、特殊な課題により活性化された脳の領域に関するものであり、脳の機能それ自体に関するものではない。
【0003】
例えば認識機能障害を含む神経学的疾患は非常に大きな現在増大しつつある問題である。例えば、アルツハイマー病(AD)として周知の認識機能障害の場合、効果的な診療は、早期に認識することである。軽度認知障害(MCI)の健忘症は、多くの場合ADへと進行する高齢者における早発性痴呆症候群である。AD及び軽度認知障害の臨床的な特徴は通常正確であるが、誤診が起こることがあり、研究及び治療努力を複雑にしている。
【0004】
AD、認識障害又はその他の神経学的状態に対する具体的な検査法が望ましいのではあるが、今日までに提唱されている多くの手法には重大な欠点があり、繊細かつ再現性のある診断又は評価のツールとして考えた場合、その応用の可能性を制限することになる。
【0005】
例えば、特許文献1に例示されているような一つの手法は、誘発状態電位(ERP)の試験時の脳波図(EEG)測定を使用することである。EGGセンサにより得られたデータが統合され、ERP試験に対する被検者の全ての応答を示す単一のベクトルが生成される。次にこのベクトルを既知の健康な被検者のもの、並びにAD、うつ病又は精神分裂症のような神経性疾患と診断された被検者のもの、と比較する。ERPを使用した測定の一つの欠点は刺激に対する誘発応答にある。すなわち、刺激が脳のある領域を非常に活性化させる一方で、脳のその他の領域は比較的不活性なままとなる。その結果、統合されたEEG測定値は主として活性化された脳の領域を示す。この手法を使用すると、脳全体の活動を示す測定は、より活性の少ない領域の活動を考慮した場合、不可能となる。この問題は、従来からのEEG計測装置を使用した場合には更に深刻となる。なぜならば、この従来からのEEG計測装置は脳の外表面付近の電気的活動を主として検出する傾向にあり、脳のより深い領域での感受性は実質的には低減されるからである。
【0006】
特許文献2は、種々の治療法に対して陽性反応を示した症候性患者のデータベースとの比較に基づいて診断された患者に対して治療を選択するための手法を開示している。EEG/QEEG/MEGにより得られたような定量的な神経生理学的情報が参照される個人のデータベース内の記録と比較され、EEG/QEEG/MEG活動の類似したヒトに対してどの治療方法が最適に効果をあげるかを予測するものである。しかしながら、開示された測定法及びデータの解析の手法は主としてスペクトル解析を含むものであり、収集された測定値の全ての中から特定の疾病又は状態の微妙かつ特徴的なインジケータを認識することは不可能である。代わりに、EEG/QEEG/MEGデータは全体としては、治療成果に従ってクラスタリングされる。
【0007】
Leutholdらの非特許文献1において、同文献の著者らは、被検者に種々の運動課題を実行させ、視覚視線固定課題時に変化する画像を視覚することを含む種々の視覚刺激を経験させた場合のMEGデータを得る実験を記載している。時間ドメインARIMAボックスジェンキンスモデルを使用して−25から+25msまでの短期間の相互作用にわたるMEGデータを解析している。データはプリホワイトニング(prewhiten)され、MEGから得られる一連のデータの間での対ごとの相互作用が、相互相関関数(CCF)、自己相関関数(ACF)及び偏自己相関関数(PACF)を使用して解析された。手の動きと眼の動きとを綿密に監視し、かつそれを使用して、MEGの結果と起こっている被検者の活動とを関係づけた。サンプリング期間は、1kHzの僅かに上である。
【0008】
この研究は、複数のセンサ対における時系列間の相互作用を評価したものである。相互相関の正及び負のパターンが、被検者により課題が実行されている間に、選択された個々のセンサ対の結果に対して観察された。この研究は、MEG読み取りを採用する測定技術に幾らかの興味深い見識(1KHzサンプリングを使用する、データを予め処理してプリホワイトニングする、等)を与えたものの、個々のセンサ信号の相互作用のみを検討したものであり、非常に多数のセンサ群を研究する必要のある脳全体のモデルは考慮していなかった。実際、以下の開示から明らかとなる理由から、Leutholdらの開示は、被検者の脳の状態を特徴化する、又は脳の状態を診断する目的のために脳の活動を解析することは不可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許第6463321号明細書
【特許文献2】米国特許第7177675号明細書
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】Leuthold他、「Time Series Analysis of Magnetoencephalographic Data」、Exp.Brain Res.、2005年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
これらを考慮して、そして周知の技術のその他の欠点を考慮して、種々の異なる被検者に対して、関心のある状態に特徴的な重要なニューロンパターンを信頼できる程度にて検出及び識別可能である、脳の活動を自動的に解析するための実用的な解決手段が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の一態様は、例えば調査又は研究用のヒト被検者若しくは精神病患者のような被検者の神経生理学的活動を解析及び分類することに関する。開眼アイドル状態時に被検者のニューロン信号を検出すべく配置された空間的に分配された複数のセンサによって得られる神経生理学的活動の時系列を表す被検者データの集合が入力として受信される。被検者データは、時系列情報及び十分な測定感度を提供する脳波測定又はその他の適切な測定方法により得られる。
【0013】
種々の脳の状態に従って分類された複数のテンプレートは例えばデータベースのようなデータ記憶部に記憶される。各テンプレートは、所与の脳状態を表すことが知られている少なくとも一人のその他の被検者から測定されたニューロン集団の間での統計的に独立な時間的尺度の選択された部分集合を表す。統計的に独立な時間的尺度は、例えば、被検者の脳におけるニューロン集団の間でほぼ同期である相互作用を表す被検者データの集合内の異なる時系列群中の偏相互相関の集合を含む。
【0014】
被検者データの集合は処理され、被検者のニューロン集団の間での時間的尺度を表す動的モデルが得られる。動的モデルは、それが時間の関数として時間的尺度を表すという意味で動的である。一つの例示的な実施形態において、動的モデルは、被検者データから取得される時系列の複数の対の偏相互相関を含む。動的モデルは時系列の全ての対、又は時系列対の全ての幾らかの部分集合を含み得る。
【0015】
動的モデルの少なくとも一部を複数のテンプレートと比較して、動的モデルが同複数のテンプレートの少なくとも一つと一致した場合に被検者の神経生理学的活動の分類が生成される。
【0016】
本発明の別の態様において、被検者の神経生理学的活動が、データ入力部とプロセッサを含むシステムによって解析される。データ入力部は、例えばコンピュータネットワークインターフェースのような通信用インターフェースを含み得る。データ入力部は、患者のニューロン信号を検出すべく配置された空間的に分配された複数のセンサの各々により得られた神経生理学的活動の時系列を表す被検者データの集合を受信する。プロセッサはデータ入力部に通信可能に接続されており、被検者の脳におけるニューロン集団の間で統計的に独立な時間的尺度を表す動的脳モデルを得るために、同被検者データの集合を処理するようにプログラム化される。次に、同システムは動的脳モデルを解析して、被検者の神経生理学的状態を推定する。
【0017】
本発明の別の態様は、第一の被検者の神経生理学的活動を解析するためのシステムに関する。同システムは、視覚視線固定課題時のような開眼アイドル状態に対応する脳活動データの集合を受信するデータ入力部であって、各集合が対応する被検者のニューロン信号を検出するために配置された空間的に分配された複数のセンサによって得られた神経生理学的活動の時系列を表す、データ入力部と、同データ入力部に通信可能に接続されるプロセッサとを含む。
【0018】
プロセッサは、第一の被検者のニューロン集団の間での時間依存的な結合を表すニューロン活動の対応する動的モデルを生成するために、各集合の脳活動データを処理するべくプログラム化されており、平均値、分散及び自己相関の定常性の特性を有するプリホワイトニングされた時系列を生成するために脳活動データを処理することと、ニューロン集団の対ごとの相互作用を表す複数のセンサの複数の対の間における信号の強度及び符号の推定を生成するためにプリホワイトニングされた時系列の対ごとの偏相互相関を計算することと、複数の異なる神経生理学的状態に対応するバリデーションされた参照データに対して脳活動データの相関関係の尺度を生成するために偏相互相関の分類を実行することと、を含む。
【0019】
本発明の実施形態は、臨床的な設定に使用するための診断ツール、又は研究の設定において被検者を評価するためのツールを含む。より一般的には、本発明の態様はデータ処理システムを使用して、構造的若しくは神経化学的な脳の病状の神経生理学的な評価を自動的に得るためのツールを提供する。本発明の種々の態様に従うシステム及び方法は、例えば、疾病の進行のような、被検者の考えられる変化しつつある神経生理学的な状態を監視するのに有用である。更に、本発明の態様は、患者の治療効果を監視するための解決手段を提供する。
【0020】
加えて、本発明の態様は、既知の、又は未知の、多用な状態の集合の中から被検者の脳の状態に関して自動化された神経生理学的分類を提供するのに有用である。例えば、本発明の実施形態は、以下の症状:正常状態、アルツハイマー病、早発性痴呆症候群、軽度認知障害、精神分裂症、シェーグレン症候群、アルコール依存症、アルコール障害、胎児性アルコール症候群、多発性硬化症、パーキンソン病、双極性障害、外傷性脳損傷、うつ病、自己免疫異常、神経変性疾患、疼痛、中枢神経系に影響を及ぼす疾患、又はそれらの組み合わせ、の一つ以上の中から正確かつ異なる分類を提供するために使用され得る。
【発明の効果】
【0021】
好都合なことに、本発明の実施形態は、僅か数分以下の時間である一回の試験時間、又は測定期間から脳を特徴化すること、診断すること及びその他の結果を得ることが可能である。これは、被検者からのデータを収集する測定装置の使用において、比較的低コストと高スループットとを提供する。被検者にとっては、MEG機器を使用するような、短く、かつ非侵襲的なデータの収集期間であるという快適さは、診療所まで長い道のりがかかる、又は非常に長い検査時間を有するといったことに対して、大きな利点である。本発明の実施形態は、複数の脳の状態に対して、定量的かつ統計的に相関のある尺度を提供することによって、観察及びその他の臨床データに基づく現行の間接的な診断技術を用いる今日の一般的な脳疾患の定性的かつ主観的な評価の欠点を解決するものであり得る。本発明の態様によって提供される別の利点は、入力された予め処理されていないデータを受け入れることができる点にある。従って、照準的な測定装置の出力を、特に装置をアップグレードする必要もなく使用することができ、しかも、被検者は事前に予測すること、或いはある種の仮定された、又は推測された状態をスクリーニングするための準備、を必要とせずして、種々の状態を完全に評価することが可能である。
【0022】
本発明は、以下の開示から明らかであるように、種々のその他の利点を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】例示的なMEG機器を示す。
【図2A】視覚表示として、被検者からの同期性動的ネットワークを示す。
【図2B】視覚表示として、被検者からの同期性動的ネットワークを示す。
【図3】標準弁別関数を使用して生成された例示的な分類プロットを示す。
【図4A】三つの別体のセンサの空間パターンを示す。
【図4B】三つの別体のセンサの空間パターンを示す。
【図4C】三つの別体のセンサの空間パターンを示す。
【図5A】三つの更なるセンサの空間パターンを示す。
【図5B】三つの更なるセンサの空間パターンを示す。
【図5C】三つの更なるセンサの空間パターンを示す。
【図6】大規模に相互接続されたネットワークの種々の実施例を示す。
【図7】大規模に相互接続されたネットワークの種々の実施例を示す。
【図8A】大規模に相互接続されたネットワークの種々の実施例を示す。
【図8B】大規模に相互接続されたネットワークの種々の実施例を示す。
【図9A】大規模に相互接続されたネットワークの種々の実施例を示す。
【図9B】大規模に相互接続されたネットワークの種々の実施例を示す。
【図10】標準弁別関数を使用して生成された別の例示的な分類プロットを示す。
【図11】本発明の主題のネットワーク実施例を示す。
【図12A】本発明の種々の態様に従って被検者を解析する実施例に対応する方法を示す。
【図12B】本発明の種々の態様に従って被検者を解析する実施例に対応する方法を示す。
【図13】本発明の一態様に従って被検者を解析する方法の概要を示すダイアグラムである。
【図14】本発明の一態様に従うシステムの情報の交換を例示する情報フローダイアグラムである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
必ずしも寸法化されていない図面において、同様の符号は、複数の図面において実質的に同じ要素を記載する。異なる文字の添え字が付された同様の符号は、実質的に同じ要素の異なる例を表す。図面は概して、本明細書に記載された種々の実施形態を例示のみの目的にて示すものであり、限定するものではない。
【0025】
本発明は種々の変形例及び代替型を受け入れることができ、その特定の例を図面において実施例によって示してきたが、以下に詳細に記載する。しかしながら、本発明は記載された特定の実施形態に制限されるものではないことは理解されるべきである。むしろ、添付された特許請求の範囲及びその等価物により定義される本発明の精神及び特許請求の範囲内にある全ての変形物、等価物及び代替物も含むことが意図されている。
【0026】
以下の詳細な説明は、詳細な説明の一部を形成する添付図面に対する参照を含む。図面は、本主題が実施されてもよい特定の実施形態を例証によって示す。本明細書において「実施例(examples)」とも呼ばれるこれらの実施形態は、当業者が本主題を実施することを可能にするために十分に詳細に述べられる。本主題の範囲から逸脱することなく、複数の実施形態が組合されてもよく、他の実施形態が利用されてもよく、または、構造的、論理的、および電気的変更が行われてもよい。従って、以下の詳細な説明は、制限的な意味で考えられるべきではなく、また、本主題の範囲は、添付された特許請求の範囲およびそれらの等価物によって規定される。
【0027】
本明細書において、「ある(a)」または「ある(an)」という用語は、特許文書で一般的であるように、1つまたは2つ以上を含むために使用される。本明細書において、「または(or)」という用語は、非排他的、または、特に指示がなければ、を指すために使用される。さらに、本明細書において参照される、全ての出版物、特許、および特許文書は、参照により個々に組み込まれるがごとくに、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。本明細書と、参照によって組み込まれる文書との間の整合性のない使用がある場合、組み込まれた参考文献における使用は、本明細書の使用に対して補助的なものであると考えられるべきである。両立しない不整合がある場合、本明細書における使用が優先される。
【0028】
脳磁図の応用
バイオマグネティズム(Biomagnetism)は、体内の信号源からの磁場の測定を指す。これらの磁場は、磁気材料または生物学的活動に伴うイオン電流によって生成される。生理的記録の1つの例は、ヒトの心臓および誘導コイルまたは検出器としての他の機器を含む。バイオマグネティズムの他の例は、磁気粒子の運動を追跡することによる、消化器系の調査、および、金属加工作業者の肺内の磁気汚染物質の測定を含む。一部の応用は、ヒトの脳活動の測定を含む。磁場の検出器の例は、SQUID(超伝導量子干渉計(Superconducting Quantum Interference Device))と呼ばれる超伝導デバイスを含む。SQUIDは、その関連するフィードバック電子回路と共に、ブラックボックスとして扱われ、その検出コイルに印加された磁束に比例する出力電圧を提供する。磁気信号は、軟部組織および骨を通過することによってそれほど影響を受けず、一方、電気信号は、軟部組織によって伝導され、骨によって絶縁される。
【0029】
一実施例では、検出器は、「全頭型(whole head)」解析用に構成されたヘルメットデザインを含み、100を越えるSQUIDチャネルを含み得る。一実施例では、248チャネルが使用される。しかしながら、種々の実施形態によれば、より多いかまたはより少ない数のチャネルもまた考えられる。一群のニューロン(例えば、10,000以上)が同時に活性化されると、正味の電流によって生成される磁場は、これらのコイルによって検出される可能性がある。ニューロン活動の分布に関する仮定と共にこれらの測定を使用すると、活動のロケーションが計算され得る。一実施例では、脳磁図は、現在のところ、主に術前マッピングのために臨床的に使用されている。
【0030】
脳磁図は、機能イメージングツールであり、また、MRIまたはCTによる解剖学的オーバレイを使用して、脳皮質表面上での測定された活動のロケーションを可視化することができる。脳磁図は、3cmを越えない深さの信号源について、ミリ秒範囲の時間分解能および数ミリメートルの空間精度を有する。脳記録について今日使用されている2つのタイプのMEG検出コイルが存在する。磁力計(magnetometer)と軸型磁束計(axial gradiometer)である。磁力計は、所与の空間ロケーションについて、いつでも、磁場の瞬時レベルを記録する。磁束計は、所与の時点について、局所磁場の磁束勾配すなわち空間微分を測定する。磁束計は、より深い視床信号源に対して感度が高い傾向があり、一方、磁力計は、脳皮質信号源を取り込む。
【0031】
MEG信号の従来の解析は、(実際の記録で観測される分散の十分なパーセンテージを説明する単一または複数仮想双極子を、脳内で識別し、特定するための)磁場源位置特定を主対象としてきた。MEG信号の他の解析は、特定の脳の関心領域内の電流密度推定を導出するための分布信号源モデリングを対象とする。図1は、従来の脳磁図(MEG)機器を示す。
【0032】
本発明の一実施形態によれば、MEGを使用して、高齢の正常被検者、MCI被検者、およびAD被検者において、45秒視覚視線固定課題中に248の軸型磁束計によって記録されたヒトの脳皮質からのプリホワイトニングされた信号間の動的な短期間(−25〜+25ms)相互作用が調査される。正の相関の場合に認められるように、年齢と共に負の相関の強度の有意の増加が存在することがわかっており、それは、MCIで、また、やはりADにおいて目立った。さらに、MCI、特にADは、正常被検者では見られない新しい負の相関を伴う。負の相関は、通常、ニューロンプールにリンクする介在ニューロンを通したフィードバックを示唆する。現在の調査では、負の相関は、多様でかつ広く分離した脳領域間においてミリ秒間隔で見られ、これらの相関は、年齢と共に強まり、また、MCIおよびADにおいて拡大する。短い間隔は、介在ニューロンの活性に適合せず、また、同じ刺激に対して逆の反応が同時に起こる可能性もない。これらの負の相関が、ニューロンシステムの背景同期性の通常の部分であり、また、負の相関の増加が、ニューロン処理に必要な、非同期活動または自由度を犠牲にしたニューロン同期性の増加を反映すると思われる。
【実施例1】
【0033】
脳磁図(MEG)は、高齢の被検者ならびにMCIおよびADの被検者において使用され得る。
一実施例では、視線固定課題およびMEGを使用して、高齢の被検者(77.1±1.5y,mean±SEM,N=11)、すなわち、正常被検者(N=4,76.5±2.1y)、MCIの被検者(N=4,75.7±3.7y)、およびADの被検者(N=3,79.7±0.3y)の3つの群において脳の動的状態または動的機能が評価される。被検者が、45秒間、あるスポットに視線固定している間に、248の軸型磁束計(Magnes 3600WH、4−D Neuroimaging社)からデータが採取され、心臓アーチファクト又は目の瞬きによるアーチファクトを除去するために前処理された。
【0034】
自己回帰統合移動平均(AutoRegressive Integrative Moving Average)(ARIMA)モデルを当てはめ、残渣を取得することによって時系列をプリホワイトニングした後、全ての対の、ゼロラグの偏相互相関(partial cross correlation)が計算され、ニューロン集団の間での直接同期結合の強度と符号(正、負)の推定が1ms時間分解能で提供される。
【0035】
正の偏相関が従属変数であり、群とセンサが固定因子であり、また、年齢とセンサ間距離が共変量(covariate)である、共分散(covariance)解析が実施される。群の統計的に非常に有意な効果(p<10−12、F検定)が明らかにされる。ボンフェロニ補正(Bonferroni correction)を使用した対ごとの比較が示すところによれば、正常群とMCI群は、互いに有意に異ならない(p=0.23)が、AD群は、正常群(p<10−7)またはMCI群(p<10−11)よりもかなり低い正の平均偏相関を有する。ADにおける同期性の正のニューロン相互作用は、強度が減少しているように見える。
【0036】
一実施例では、負の偏相関が従属変数であり、群とセンサが固定因子であり、また、年齢とセンサ間距離が共変量である、共分散解析が実施される。群の統計的に非常に有意な効果(p<10−6、F検定)が明らかにされる。ボンフェロニ補正を使用した対ごとの比較が示すところによれば、正常群とMCI群は、互いに有意に異ならない(p=0.23)が、AD群は、正常群(p<10−4)またはMCI群(p<10−6)よりもかなり低い負の平均偏相関を有する。変化は、正の相互作用の場合に見出されるように同じ方向(すなわち、低い相関)である。ADにおける同期性の負のニューロン相互作用は、強度が減少しているように見える。
【0037】
ニューロン集団の間での相互作用は、睡眠および覚醒から高度の認知プロセスまでの全ての脳機能の基礎になる。本発明の一態様は、これらの相互作用の強度および空間パターンを評価することが、脳機能および挙動に対する脳機能の関係の理解に実質的に寄与する可能性があることを認識する。
【0038】
本発明の一態様は、同期性ニューロン相互作用(synchronous neural interaction)(SNI)を対象とし、同期性ニューロン相互作用によって、脳磁図(MEG)を使用して高い空間分解能で動的脳機能を評価する。一実施形態による技法は、脳機能に相当するニューロン集団の間での動的な同期性相互作用の測定を含む。本発明の実施形態は、以下の状態、すなわち、正常状態、アルツハイマー病、早発性痴呆症候群、軽度認知障害、精神分裂症、シェーグレン症候群、アルコール依存症、アルコール障害、胎児性アルコール症候群、多発性硬化症、パーキンソン病、双極性障害、外傷性脳損傷、うつ病、自己免疫異常、神経変成疾患、疼痛、中枢神経系に影響を及ぼす疾患、または、その任意の組合せのうちの1つまたは複数の中から、正確な鑑別分類を提供するために使用され得る。
【0039】
1つの方法は、健康な被検者についての範囲の境界規定、疾病群のための分類、被検者において一定の状態が現れる重篤度または程度の測定を容易にし、疾病進行または治療介入(therapy intervention)と同時に起こる脳機能の変化の監視を可能にする。一実施例では、方法は、動的な脳機能を評価するためにルーチンで使用され得、また、鑑別診断(differential diagnosis)および介入の効果の監視に役立つ。1つの例示的な実施形態では、分類スコアおよび事後確率(posterior probability)が得られ、それにより、脳機能不全の重篤度が定量化され、その経過および処置の効果が監視される。
【0040】
方法は、ニューロン集団の間での動的な同期性相互作用によるMEGデータの解析を含む。方法を使用して、限定はしないが、AD、慢性アルコール依存症、MCI、多発性硬化症、精神分裂症、およびシェーグレン症候群を有する被検者を含む、種々の脳障害を弁別することができる。本主題は、動的脳機能を評価し、鑑別診断の補助の役をするための試験として使用され得る。
【0041】
本発明の1つの例示的な実施形態では、時系列解析法がMEG信号に適用されて、ニューロン集団の間での動的な瞬間ごとの相互作用が推定され、それにより、運動行動を予測し、課題に関わる同期性ニューロンネットワークを導出し、ADおよび慢性アルコール依存症におけるニューロンネットワークの変化(alteration)を評価する。この時系列解析手法は非常に有用であり、脳機能の状態を評価するのに有望であることがわかった。
【0042】
本発明の1つの例示的な実施形態では、時系列解析法を使用して、相互相関関数(CCF)を使用して、眼球視線固定課題中に、1ms時間分解能で248のMEGセンサから同時に記録された、平均無しで平滑無しの、単一トライアルから、同期性の動的ネットワークが導出される。この解析は、健康な被検者にわたって非常に類似し、かつ、頑健性がある、同期性のある動的脳ネットワークの可視化をもたらす。高密度空間サンプリング、発見されたネットワークの動的特質、および頑健性は、安静時の動的脳機能を評価するための試験としての有用性を示す。
【0043】
健康な被検者と、ADまたはMCIを有する被検者との間で、ならびに、解毒中の慢性アルコール依存症患者で、これらのネットワークにおいて、統計的に有意の差が認められる。さらに、領域的接続性(regional connectivity)のCCF推定は、個々の被検者を特定の群(例えば、健康、AD、MCI)に分類するのに十分な弁別力を示す。さらに、遺伝的探索アルゴリズムは、精神分裂症および慢性アルコール依存症を含むさらなる群へのこの分類システムの拡張を可能にする。
【0044】
遺伝的探索アルゴリズムまたは遺伝的アルゴリズム(GA)は、染色体の大規模な配列内で遺伝子を発見するために開発された。遺伝的アルゴリズムは、本発明の一部の実施形態で使用されて、同期性相互作用の大きな集合(例えば、248センサを使用して30,628)が探索され、それにより、脳疾患および症状の分類を予測することができる、これらの同期性相互作用の部分集合が発見される。
【実施例2】
【0045】
方法
被検者は、ベッド上に仰臥位で寝て、1分間、被検者の前のスポットを見るように指示される。被検者は、目がそのスポットに視線固定されるよう維持し、瞬きをしないように求められる。その後、被検者は、目をさらに3分間閉じ、これが、試験の終了である。視線固定期間からのMEGデータは、全ての解析に使用される。一実施形態では、目を閉じた状態の間に採取されたデータは、心臓アーチファクトなどの信号アーチファクトを識別し、除去するのに有用である。
【0046】
MEG機器
データは、MEG機器によって採取される。被検者は、磁気シールドルーム内でベッド上に寝て、MEG信号が、実験の全継続期間(約4分)の間、248の軸型磁束計(0.1〜400Hz、サンプリング@1017Hz、Magnes 3600WH、4−D Neuroimaging社、カルフォルニア州サンディエゴ(San Diego, CA))によって採取される。
【0047】
データ解析
データ前処理。心臓アーチファクトは、事象同期減算法を使用して除去されてもよい。眼球視線固定期間の継続期間が非常に短い(1分)ため、目の瞬きによるアーチファクトは予想されないが、存在する場合、検出され、データから除去される、またはブランキングされ得る。
【0048】
MEGデータの時系列モデリング。心臓および/または目の瞬きのアーチファクトの除去に続く、単一トライアルの平均無しのデータの解析は、MEG信号に固有の高い時間分解能と動的変動から利益を受け、それにより、プリホワイトニングする、すなわち、MEG時系列を定常な白色雑音系列に変換した後、248のセンサの全ての対間の全ての相互相関関数を計算することによって、所与の課題における大きなニューロン集団の間での機能的相互作用が評価される。これは、自己回帰統合移動平均(ARIMA)解析を使用して未処理系列をモデリングし、残渣を取得することによって達成される。CCFは、その後、これらの「プリホワイトニングされた(prewhitened)」系列の考えられる全ての対について計算される。これらのCCFは、248のセンサがノードの役をする、大規模に相互接続されたニューロンネットワークにおいて、接続性重みと見なされ得る。同期性がある動的ネットワークは、ゼロラグCCFから導出される偏相関を使用して構築される。正および負の相互作用の実施例は、図2に示される。
【0049】
図2Aおよび2Bでは、ラインは、閾値処理された偏相関(フィッシャのz変換が行われた)を示す。図2Aは、正の偏相関を示し、一方、図2Bは、負の偏相関を示す。30,628のライン(すなわち、248のセンサの考えられる全ての対)が描かれているが、以下の閾値を越えるラインだけが示される。統計的に有意な閾値は、ボンフェロニの不等式による30628の複数比較を反映するように調整された。すなわち、公称の有意閾値は、p<0.001/30628(=p<0.00000003)の、使用される実際の閾値に相当する、p<0.001である。解析は、平均または平滑無しの、45sの長い期間に基づいた。
【0050】
弁別分類解析
解析は、選択された測定に関して被検者のいくつかの群について弁別分類関数を導出し、その後、弁別分類関数を新しいケースに適用して、新しいケースを、元の群のうちの1つに分類する。この解析は、各群に対する分類についての事後確率、ならびに、分類群のそれぞれからの特定のケースの距離である、特定の尺度(マハラノビス距離の2乗)をもたらす。この尺度は、脳機能の考えられる変化を監視して、異なる群の脳機能を近似するのに役立つ可能性がある。
【0051】
例えば、ADを考える。疾病を有すると診断された被検者(AD群)、および、健康な対照に適合する被検者(C)からのデータを使用して、SNIデータから2つの線形弁別分類関数(一方はAD用、他方はC用)が導出される。軽度認知障害(MCI)という初期診断を受ける可能性がある新しい被検者は、SNI試験を受ける。AD分類関数およびC分類関数を適用することによって、新しい被検者が、どの程度健康であるか、または、どの程度ADであるかについて推定が行われる。この評価は二者択一的ではなく、むしろ、標準弁別関数プロットにおいてADおよびC群の中心に対してマハラノビス距離の2乗によって測定されるように、連続的である。これらの相対距離は、疾病の進行(被検者が、より「ADのように」なる)、後退(より「Cのように」なる)、または、介入の効果(薬物処置後に、より「Cのように」なる)のモニタの役をする可能性がある。近接性は、相対的な距離を指し、意味を持たせるために、グラフィック形態で表示される必要はない。線形弁別分類解析は、限定はしないが、例えば、AD、C、およびMCIのデータを含む種々の状態または疾病、ならびに、シェーグレン症候群の被検者に関して使用され得る。傾向は、ある期間にわたって監視することによって検出され得る。
【0052】
ヒト被検者
一実施例では、被検者は、13〜90歳の年齢範囲の種々の医療履歴を有する被検者を含み、男性と女性の両方、全ての人種および民族を含む。本主題は、健康な被検者、ならびに、多発性硬化症(MS)、シェーグレン症候群(SS)、または、潜在的な中枢神経系の関与を伴う他の自己免疫異常を含む神経系に影響を及ぼす疾病、MCI、AD、精神分裂症、および慢性アルコール依存症を有する被検者に関して使用され得る。本発明の実施形態は、種々の脳状態を有する被検者に関して使用され得る。例えば、アルコールまたは薬物の影響下にあるヒト。
【0053】
データ採取
一実施例では、MEGデータは、248チャネル軸型磁束計システム(Magnes 3600WH、4D Neuroimaging社、カルフォルニア州サンディエゴ)を使用して採取される。MEGの低温ヘルメット形状デュアは、雑音を除去するために、電磁シールドルーム内に配置される。データ(0.1〜400Hz)は、1017.25Hzで収集される。被検者の動きに対して保証するために、5つの信号コイルが、MEG採取の前にデジタル化され、データ採取の前後に連続して起動され、それにより、センサを基準として頭が位置特定される。MEGデータは、被検者とセンサ当たり、約60,000の値からなる時系列を含む。目に関連するアーチファクトは、データ収集を繰り返すことによって排除され得る。
【0054】
データ解析
データ前処理は、同期事象減算法を使用した心臓アーチファクトの除去を含む。心臓アーチファクトの除去後に、時系列は、「プリホワイトニングされる」ため、時系列間の相互作用は、系列自体における自己相関に由来するバイアスが無い状態で推定され得る。プリホワイトニングすることは、ボックスジェンキンス(Box−Jenkins)ARIMAモデリングを使用して実施されて、±25msに相当する、25ラグを使用してデータ時系列の時間的構造が識別される。この解析は、約60,000時点に関して行われる。ARIMAモデリング、ならびに、残渣の自己相関関数(ACF)および偏ACF(PACF)の計算および評価を含む診断チェック後に、25のAR次数、1次差分、および1次MAのARIMAモデルが適用されて、平均値(mean)、分散、および自己相関構造に関して定常な残渣がもたらされる。残渣は、SPSS統計パッケージ(Windows用SPSS、イリノイ州シカゴ(Chicago,IL,)、2000)を使用して推定される。定常な残渣の対間のゼロラグ相互相関は、IMSL統計ライブラリ(Compaq Visual Fortran Professional edition version 6.6B)のDCCFルーチンを使用して計算される。これらから、iのセンサとjのセンサとの間の偏ゼロラグ相互相関およびその統計的有意性が、全てのセンサ対について計算される。線形弁別解析を実施するために、この相互相関は、z変換されて、その分布が正規化される。すなわち、z=0.5[ln(1+r)−ln(1−r)]である。
【0055】
線形弁別分類解析は、IMSL Visual FortranのDDSCRMサブルーチンを使用して実施される。解析は、1個抜きクロスバリデーション法(cross−validated,leave−one−out method)を使用して行われ、各群についての分類関数は、再分類法を使用して得られる。個々のケースの分類について、弁別スコア、事後確率、および各群の重心からのマハラノビス距離の2乗が計算される。
【0056】
一態様はこれらのセンサ対を識別することであり、複数のケースをそれぞれの群に、ゼロ不確定性で、すなわち、正しい群の場合1.0、また、他の群の場合0.0の事後確率で正しく分類することになる。利用可能な相互相関の総集合は、N=30,628(=248のセンサ間で考えられる全ての対)である。例えば、k=7の予測子集合サイズが与えられると、N=30,628からk=7を取り出す場合の、考えられる全ての順列の数
【0057】
【数1】

はけたはずれに大きい。そのため、この広大な空間を効率的に探索し、被検者を特定の群に分類するためのプロパティを有するk=7の集合を識別するためのある特別なアルゴリズムの必要性が存在する。一実施例では、遺伝的アルゴリズムが使用される。
【0058】
図3に示すプロットは、ゼロラグ偏相互相関の線形弁別分類解析の結果を示す。図3は、遺伝的探索アルゴリズムを使用して選択された40の相互相関を使用した、50についての分類プロットを示す。群の重心は、密な集合体および明確な分離によって識別される。
【実施例3】
【0059】
同期性のある動的脳ネットワークは、プリホワイトニングした(定常な)脳磁図信号を使用することによって可視化される。一実施例では、データは、248の軸型磁束計から採取される。自己回帰統合移動平均モデルを当てはめ、残渣をとった後、iのセンサとjのセンサとの間で、全ての対ごとのゼロラグ偏相互相関PCCIJが計算され、ニューロン集団の間での直接同期結合の強度と符号(正と負)の推定が、1ms時間分解能で提供される。一実施例では、PCCIJの51.4%が正であり、48.6%が負であった。正のPCCIJは、短いセンサ間距離で頻繁に起こり、負のPCCIJより平均で72%強かった。推定されたPCCIJに基づいて、動的ニューロンネットワークが(1被検者について1つ)構築され、いくつかの局所相互作用を含む独自の特徴を示す。これらの特徴は、複数の被検者にわたって頑健であり、動的脳機能を評価するための青写真として役立ち得る。
【0060】
全頭脳磁図(MEG)の1つの使用は、ニューロン活動源を位置特定することであった。この問題は一意の解を持たないため、こうした解析の結果は、仮定(単一信号源対複数信号源)、現実的な測定(頭蓋の形状、「順方向モデリング(forward modeling)」)、特定の解析法、および主観的な判断に応じて変動する。さらに、データは、通常、フィルタリングされて、約45Hz以下に落ち、解析は、多くのトライアルの平均値に基づいて実施される。MEGを使用することによる活動の位置特定は有用であり得るが、他の機能的ニューロイメージング法は、多義性情報(すなわち、仮定などに依存しない情報)を提供することが少ない。これらの方法は、fMRIおよびPETを含む。脳活動における時間分解能と変化の時間経過に関して、MEGとEEGは利点がある。こうした調査では、単一センサからのデータが処理され、通常、特定の関心事象に関して、多くのトライアルが平均され、整列され、時間経過の形状が調べられる。結果得られるMEGトレース(または、EEG調査における事象関連電位)は、挙動に伴う脳事象のタイミングに関する価値ある情報を提供する。fMRIにおける類似の手法、事象関連デザインは、有用であるが、MEGおよびEEG信号の時間的精度に欠ける。
【0061】
本発明の実施形態によれば、全頭の高密度MEGデータを使用して、ニューロン集団の間での相互作用が調査される。ニューロン相互作用は、睡眠および覚醒から高度の認知プロセスまでの全ての脳機能の基礎になる。これらの相互作用の強度および空間パターンを評価することが、脳機能および挙動に対する脳機能の関係の理解に実質的に寄与する可能性がある。
【0062】
方法
10人の右ききのヒト被検者(女性5と男性5)が、1つの実験に参加した(年齢範囲、25〜45歳;mean±SEM、33±2歳)。
【0063】
刺激が、コンピュータによって生成され、液晶ディスプレイ投影機を使用して被検者に提示される。被検者は、45秒間、ブラックスクリーンの中心の青い光スポットに視線固定する。視線固定点は、被検者の目の前の約62cmのスクリーン上に画像を設置する潜望鏡ミラーシステムを使用することによって提示される。MEGデータは、248チャネル軸型磁束計システム(Magnes 3600WH、4D Neuroimaging社、サンディエゴ)によって収集された。MEGの低温ヘルメット形状デュアは、雑音を低減するために、電磁シールドルーム内に配置される。データ(0.1〜400Hz)は、1017.25Hzで収集される。被検者の動きに対して保証するために、5つの信号コイルが、MEG採取の前にデジタル化され、データ採取の前後に連続して起動され、それにより、センサを基準として頭が位置特定される。センサ間の対ごとの距離は、MEGヘルメットの表面上の測地線として計算される。眼球運動は、眼電計を使用することによって記録される。その目的のために、3つの電極が、各被検者の右目の周りのロケーションに設置される。眼電計信号は、1017.25Hzでサンプリングされる。採取されたMEGデータは、被検者とセンサ当たり、約45,000の値の時系列を含んだ。
【0064】
一実施例では、センサの対における時系列間の相互作用が解析される。その目的のために、個々の系列は、定常性がある、すなわち、「プリホワイトニングされる」必要があり、そうでなければ、系列自体の非定常性が、誤った関連付けをもたらす可能性がある。従って、解析は、時系列をモデリングすること、および、定常な(または、擬似定常な)残渣を導出することであって、残渣から、相互相関などの対ごとの関連付け尺度を計算する、導出することを含んだ。以下に述べる解析は、単一トライアルの、平滑無しで平均無しのデータに関して実施される。ボックスジェンキンス自己回帰統合移動平均ARIMAモデリング解析が実施されて、±25msに相当する、25ラグを使用することによってデータ時系列の時間的構造が識別される。この解析は、約45,676時点に関して実行される。拡張ARIMAモデリング、ならびに、残渣の自己相関関数および偏自己相関関数の計算および評価を含む診断チェック後に、25の自己回帰次数(±25msラグに等しい)、1次差分、および1次移動平均のARIMAモデルが、平均値、分散、および自己相関構造に関してほとんど定常である残渣をもたらすのに適切であると判断された。残渣は、Windows用SPSSバージョン10.1.0統計パッケージ(SPSS社、シカゴ)を使用することによって推定された。定常な残渣の対間のゼロラグ相互相関は、国際数学および統計ライブラリ(COMPAQ VISUAL FORTRAN PROFESSIONAL EDITION Version 6.6B、Compaq社、ヒューストン(Houston))のDCCFルーチンを使用することによって計算された。これらのデータから、iのセンサとjのセンサとの間の偏ゼロラグ相互相関PCCIJおよびその統計的有意性が、全てのセンサ対について計算された。記述統計量および他の統計量を計算するために、PCCIJは、フィッシャのz変換を使用することによってZIJに変換されて、その分布が正規化される。すなわち:
【0065】
IJ=0.5[ln(1+PCCIJ)ln(1−PCCIJ)]
である。
例示的な結果は以下の通りである。248のセンサが与えられると、全部で248!/2!246!=30,628のPCCIJが1被検者について可能であり、さらに全部で30,628×10被検者=306,280のPCCIJとなる。これらの相関の中で、目の瞬きのアーチファクトを有する記録を排除した後に、285,502(93.2%)が解析され、その相関の81,835/285,502(28.7%)が統計的に有意であった(P<0.05)。全ての有効なPCCIJの中で、146,741(51.4%)が正であり、138,761(48.6%)が負であった。平均(±SEM)の正のZIJは、0.0112±0.00004(最大ZIJ=0.38;PCCIJ=0.36)であり、平均の負のZIJは、−0.0065±0.00002(最小ZIJ=PCCIJ=−0.19)であった。これらの平均値の絶対値は、かなり異なり(P<10−20;スチューデントt検定)、平均|+ZIJ|は、平均|−ZIJ|より72%高い。あるセンサと全ての他のセンサとの間の同期性結合の分布の空間パターンの例は、図4A〜ACおよび5A〜5Cに示される。統計的に有意なPCCijだけがプロットされている。統計的に有意な閾値は、ボンフェロニの不等式によって、プロット当たり247の複数比較を反映するように調整された。すなわち、公称の有意閾値は、p<0.05/247(すなわち、p<0.0002)の、使用される実際の閾値に相当する、p<0.05である。正と負のPCCijが示される。小さなドットは、平面上に投影された248のセンサのロケーションを表す。データは、1人の被検者からのものである。
【0066】
PCCijとセンサ間距離との間の関係
全体として、PCCIJは、センサiとjとの間で、距離
【0067】
【数2】

と共に変動した。一般に、互いに近くにあるセンサは、正のPCCIJを有する傾向がある。負のzijについての平均センサ間距離
【0068】
【数3】

は、正のzijについてよりも24%長かった。特に
【0069】
【数4】

は、198.92±0.21mm(n=138,700)であり
【0070】
【数5】

は、160.12±0.24mm(n=146,675)であった。全体として、zijと、log変換したdij、log(dij)との間に、強く、かつ、有意性が高い負の関連付けが存在した。符号付きzijとlog(dij)との間のピアソン相関係数は、−0.519(P<10−20)であった。この関係は、同期性結合の強度が、センサ間距離と共に急激に落ちる傾向があったことを示す。
【0071】
同期性のある動的ニューロンネットワーク
PCCijは、ニューロン集団の間での同期性結合の推定であり、絶対値とPCCIJとは、それぞれ、結合の強度と種類を示す。248のセンサによってサンプリングされたニューロンアンサンブルが、図6〜7で可視化された大規模に接続されたニューロンネットワークマップなどの、大規模に相互接続されたニューロンネットワーク内のノードと考えられる場合、PCCIJは、これらのノード間の動的な同期性相互作用の推定として役立つことができる。こうした大規模に相互接続されたネットワークは、248のノードをラインで連結し、各ラインが、正の結合を表すか、負の結合を表すかを指示することによって可視化され得る。図6および7は、10人の被検者にわたって平均された、このネットワークの、閾値処理され、かつ、スケーリングされた図を示し、相互作用の領域的な変動は、複数の被検者にわたって存在し、また、整合性があった。
【0072】
このネットワークで認められる特徴は、(i)すぐ隣の相互作用のほとんどが正であること、(ii)負の相互作用のほとんどが長い距離で起こること、(iii)中心に位置するセンサに関する相互作用が比較的疎であること、および、(iv)半球内部の相互作用が、おそらく長い距離が関わるため稀であること、を含む。さらに、相互作用の局所密度の系統的な変動が、以下のように、定性的に識別され得る(反時計方向に)。正の相互作用の9つの領域が存在し(図6)、9つの領域は、以下の脳領域、すなわち、左前前頭部(anterior−frontal)(1P)、左後頭−前頭部(dorsal−frontal)(2P)、左外側前頭−側頭部(lateral−frontal−temporal)(3P)、左頭頂部(parietal)(4P)、左頭頂−後頭部(parietal−occipital)(5P)、右後頭部(occipital)(6P)、右頭頂−側頭部(parietal−temporal)(7P)、右側頭部(temporal)(8P)、および右前頭部(frontal)(9P)を覆うセンサからなる。負の相互作用(図7)の場合、7つの領域が識別され得、7つの領域は、以下の脳領域、すなわち、左前前頭部皮質(1N)、左後頭−前頭部(2N)、左外側前頭−側頭部(3N)、左頭頂部(4N)、後頭部(5N)、右頭頂部(6N)、および右前頭部(7N)を覆うセンサからなる。正の相互作用及び負の相互作用の幾らかは空間的に重なっていた。
【0073】
被検者にわたるネットワークの頑健性
注目すべきことには、上記のように構築されたニューロンネットワークは、複数の被検者(図8Aおよび8Bならびに9Aおよび9B)にわたって非常に類似していた。総合的なネットワーク類似度は、ネットワークの全てのzij(すなわち、全てのiのセンサとjのセンサ)にわたってピアソン相関係数を計算することによって、全ての被検者対間で定量化され、評価され得る。得られた相関係数は大きく、かつ有意性が高い(メジアン=0.742;範囲、0.663〜0.839;全ての相関についてP<10〜20;>20,000自由度)。これらの調査結果は、一般的なネットワーク基礎を示唆する。
【0074】
この例示的な実施形態は、ARIMAモデリングを使用することによって定常にされた、単一トライアルMEG時系列間の、同期性のある動的結合を評価する。得られる結果は、未処理MEGデータに通常存在する非定常性によって汚染されない、この結合の推定である。ゼロラグ相互相関を使用して、2つの時系列間の同期性結合が推定される。これらの相関から偏相関が計算され、それにより、他のセンサによって間接的に媒介される可能性のある作用が除去されるため、2つのセンサ系列間の直接結合の符号と強度の推定が可能になる。さらに、PCCIJは、同期性のある動的ネットワークの構築を可能にし、PCCIJの符号と強度は、ニューロン集団の直接結合の符号と強度の推定として役立つ。一般に、PCCIJは、センサアンサンブル内の考えられる全ての他の246の関連付けが反映されるため、未処理相互相関より小さい。しかしながら、振幅が小さい相互作用は、大規模に相互接続されたネットワークの安定性についてのルールである。例えば、こうしたネットワークの従来の調査において、正規化された接続強度は、訓練の開始時に、−0.5〜0.5の範囲にあったが、訓練を受けた安定したネットワークでは−0.2〜0.2の範囲にあった。比較できるほどに、本主題を使用すると、PCCIJの範囲は、同様に(−0.19〜0.36)である。PCCIJは、特定のセンサ対およびセンサ対の距離に応じて、正または負であり、また、種々の強度であるため、PCCIJは、短い距離で高い傾向がある。この傾向は、複数の検出器が同じニューロン源を観測するためであり得る。この成分の定量的尺度は存在しないが、結果は、この成分が、観察される相関パターンを支配しないことを保証する。特に、磁束計コイルの作用と共に、距離に伴う磁場強度の急激な低下は、この成分の寄与による、非常に密な信号の相関パターンをもたらすことになり、遠く離れた相互作用は、同じスケール上で全く見られない。しかしながら、解析は、単一振幅スケール上で見ることができる、脳皮質全体にわたる相互作用の複雑なパターンを明らかにする。示される相関は、近いセンサについて強いが、ニューロン活動は、一般に、局所的に相関が高い。偏相関の計算は、おそらくは偽りの作用をなくすのに役立つ。
【0075】
以前の調査では、(EEG、MEG、または局所フィールド電位として記録された)ニューロンアンサンブル間の関連付けは、全データ集合に対して、または、特定のスペクトル周波数帯内で適用された周波数領域解析または時間領域解析を使用することによって、調査された。こうした解析では、関連付け尺度は、一般に、データの定常性があるかを試験することなく、データから計算される。定常性(または、擬似定常性)は、時間領域(相互相関を計算することによる)と周波数領域(コヒーレンシの2乗を計算することによる)の両方において、(共有された傾向および/またはサイクルと対照的に)時系列間の瞬間ごとの相互作用の正確な測定を提供する。未処理非定常データに基づく相互相関またはコヒーレンシの推定は、誤った推定および偽りの関連付けをもたらす。
【0076】
相互相関の符号は、基礎になる興奮性または抑制性シナプスメカニズムに関する情報を提供するのではなく、系列の平均値に関する同時共変性(covariation)を指示するだけである。すなわち、正の相関は同じ方向の共変性(増加/増加、減少/減少)を指示し、一方、負の相関は、反対方向の共変性(増加/減少、減少/増加)を指示する。一般に、PCCIJは、センサ空間内で規則的に変動する傾向があるため、近傍センサ間で正になり、遠く離れたセンサ間で負になる傾向がある。この傾向が認められたが、近傍センサ間における負のPCCIJおよび遠く離れたセンサ間における正のPCCIJを含む、明確でかつ独自の例外が存在する。さらに、空間的なPCCIJパターンは、参照センサのロケーションに応じて異なった。調査結果は、独自の局所特異性を有するが、頑健で、かつ、関係が規則的な相関構造を示唆する。実際、これらの特性は、結果得られる大規模に相互接続されたネットワークに、図6〜9Bに示す特有の構造を付与する基本属性である。
【0077】
この構造の1つの特徴は、正または負の相互作用の強度で、全体のネットワークを領域変動に分割することであった。これらの混合された相互作用の描写は、例えば、電流密度技法またはビーム形成技法を使用することによって、脳空間内で相互作用を位置特定しようとする試みと共に、本手法の別のステップである。
【0078】
心臓アーチファクト除去アルゴリズム
心臓アーチファクトは、例えば、以下のものを含む種々の手順を使用して除去され得る。
【0079】
開始テンプレートとして使用するために、代表的な心拍動が選択される。一実施例では、異なる被検者からの予め確保されたテンプレートが使用される。代表的なテンプレートは、その後、テンプレートの相関と、各ステップにて計算されたオーバラップするデータセグメントと、一度に一点、結合される(或いは、データを解してスライドされる)。得られた相関の時間経過を使用して、心拍動のロケーションが決定される。相関が閾値を超えると、心拍動が、相関時間経過の極大値において記録される。
【0080】
雑音による偽検出の可能性を低減するために、最低心拍数と最高心拍数が選択されて、各拍動がその中で予想される時間窓が、先行する拍動を基準にして作成される。窓の開始前の相関のピークは無視され、閾値を満たす最初の拍動ではなく、窓中の、相関の最高ピークにおいて拍動が取得される。窓内のピークが全く閾値を満たさない場合、拍動が抜けていると考えられ、窓は、閾値を満たすピークを含むまで拡張される。時間窓と相関閾値は共に、真の検出を最大にし、かつ、偽検出を最小にするために、各被検者について調整される。
【0081】
検出が不完全である場合、実際に検出された拍動を平均することによって、改善されたテンプレートが作成され、改善されたテンプレートに関して、2回目の相関計算が行われる。検出は、一般に、第2のパスで十分完璧であるため、さらなるパスは、テンプレートを改善するのに効果がない。第2のパスの後に、ある範囲の相関閾値を有する心拍数トレースが観測され、偽検出の数がそれほど多くない状態で、完全な(または、ほぼ完全な)検出を達成する1つの最高閾値が保持される。その後、これらの検出を使用して、最終的な平均心臓波形が作成される。心拍動の全体を含むために、検出中にデータの2分の1のセグメントが取得される。雑音の大きな拍動は平均には含まれず、波形は長い心拍動の前後にゼロ平均値になるようにDCシフトされる。こうして、各チャネルについての平均波形が、そのチャネルからの信号だけを使用して作成される。その後、平均波形は心拍動の発生の検出ごとにチャネルから減算される。心拍数が高い場合、次の拍動の開始の直前に対して、波形の尾部が切断される。その結果、チャネル間の偽相関を導入しない心臓アーチファクト除去がもたらされる。
【0082】
単一データファイルが数分未満である場合、同じ記録セッションからの複数の平均波形の重み付き平均をとることによって、減算に使用される平均波形がより明瞭にされる。
MEG時系列のプリホワイトニング
時系列間の関係は、系列が本質的に定常である、すなわち平均値および分散が、系列の異なる時点について異ならず、また、自己相関関数(ACF)および偏自己相関関数(PACF)がフラットである場合、評価され得る。これらの条件が満たされない場合、前の値Xの、時刻tにおける所与の値Xに対する影響、考えられる複数の傾向の存在、および前の値から現在の値への雑音の引継ぎに起因する、誤った結果が得られる。
【0083】
本主題の一実施例では、データは、プリホワイトニングによって処理される。プリホワイトニングは、上述したように、こうした依存性の除去を指す。プリホワイトニングは、限定はしないが、これらの依存性が効率的に除去されていることを保証することを伴う可能性もある。
【0084】
一実施例では、プリホワイトニングは、自己回帰統合および移動平均成分を使用して時系列をモデリングすること、および、残渣を取得することを含む。
実際には、全ての時系列が一意であるため、時系列のモデリングは、(a)モデルの重要な成分を識別すること、(b)モデリング係数および係数の安定性を推定すること、(c)残渣を取得すること、および(d)残渣の定常性を評価すること、を含む、面倒で、複雑で、反復的なプロセスである可能性がある。
【0085】
時系列モデルの識別は、ACFおよびPACFの形状を検査することによって行われる。モデリング係数の推定は、異なる方法で、特に、移動平均成分を含む方法で行われ得る。残渣の推定はACFおよびPACFを使用した残渣の評価がそうであるように、簡単である。残渣が適切に定常でない場合、定常性が達成されるまでモデルパラメータを変更すること等によってプロセスが繰り返される。
【0086】
このモデリングは、(a)因子(自己回帰、差分、移動平均)の組合せ、および、(b)各因子内のいくつかの考えられるレベル(例えば、自己回帰次数、差分の数、および移動平均の次数の数)を含むため、また、本明細書で考える長さ(約60,000時点)の個々の時系列が本質的に一意であるため、定常性の目的を達成するための単一のルールは存在しない。
【0087】
その目的のために、いくつかの異なる計算を使用して、定常性要件を満たす組合せが見出され得る。心臓アーチファクトの除去の場合と同様に、判断の要素が得られる結果を同時に評価するときに必要とされる。初歩的な演算(例えば、差分など)の数学的記述は簡単であるが、適した組合せを決定することは面倒である。
【0088】
FORTRAN、MATLAB、SPSS統計パッケージ、およびBMDP統計パッケージを含む、いくつかのプラットフォームが、このプロセスで使用されてもよい。特定のプラットフォームの実際の採用は、特定の系列に依存する。選択された特定の組合せによらず、目的は、適切な定常性を達成することである。
【実施例4】
【0089】
この実施例は被検者を弁別し、被検者を神経生理学的状態の6つの異なる群に正確に分類する、ゼロラグニューロン偏相関の部分集合の検出力を実証する。
方法
52のヒト被検者が雇われたボランティアとして調査に参加した。健康な対照、ならびに、アルツハイマー病、精神分裂症、多発性硬化症、シェーグレン症候群、および慢性アルコール依存症を有する被検者を含む6群が存在した。各群の構成は以下の通りであった。アルツハイマー(N=6男性、年齢76.8±1.8y、mean±SEM);精神分裂症(N=9[7男性、2女性]、年齢48.2±2.9y);多発性硬化症(N=4[男性2、女性2]、年齢42.5±6.4y);シェーグレン症候群(N=4女性、年齢56.3±5.2y);慢性アルコール依存症(N=3男性、年齢57±0.9y);健康(対照)(N=25[17男性、8女性]、年齢47.0±3.6y、範囲:23〜82y)。
【0090】
被検者群に属する被検者は機能性脳疾患を有し、その診断はそれぞれの医療分野の専門家によって行われた。慢性アルコール依存症を有する被検者は、調査の前の24時間の間アルコールを摂取せず、呼吸分析器を使用してアルコールの無いことを確認した。対照群は、被検者群に対して年齢がマッチした被検者ならびに他の健康な被検者を構成する。対照群に属する被検者を除く全ての被検者は、脳の病気に関連する投薬を受けた。これらの投薬の一部は精神作用性があった。
【0091】
データ採取
被検者は、(異なる被検者において)45〜60秒の間、MEG機器内で仰臥位で寝て、被検者の前の約62cmにあるスポットに目を視線固定し、一方、MEGデータは、248の軸型磁束計(0.1〜400Hz、サンプリング@1017Hz、Magnes 3600WH、4−D Neuroimaging社、カルフォルニア州サンディエゴ)によって採取された。これは、各被検者について、45000〜60000の時点を有する248の時系列からなるデータ集合をもたらした。心臓アーチファクトは、上述したように、事象同期減算を使用して、各系列から除去された。
【0092】
データ解析
以下に述べる全ての解析は、単一トライアルの、平滑無しで平均無しのデータに関して実施された。ボックスジェンキンスARIMAモデリングを使用した時系列の「プリホワイトニング」に続いて、iのセンサとjのセンサ(N=248センサ)との間のゼロラグ偏相互相関PCCijが、全てのセンサ対(N=30628)について計算された。PCCijは、フィッシャのz変換を使用してzijに変換されて、その分布が正規化される。すなわち:
【0093】
ij=0.5[ln(1+PCCij)−ln(1−PCCij)]
である。
次に、被検者をそれぞれの群に正確に分類することになるzijの部分集合が存在するかどうかについての判定が行われた。その目的のために、zijの所与の部分集合を十分な分類子として受容するために、全ての被検者の、その対応する群への100%の分類を要求する、頑健な1個抜き法を使用して線形弁別解析が実施された。
【0094】
全てのこうした部分集合を識別するときのブルートフォース手法が可能であり、計算的にやっかいになるであろう。例えば、5つの予測子の部分集合の場合、考えられる組合せの総数は
【0095】
【数6】

となり得る。
こうした理由で、計算時間を低減し、かつ、探索を最適化するために、遺伝的アルゴリズムが使用された。遺伝的アルゴリズムを使用して、ある数のzij予測子の初期部分集合が(利用可能な30628の中から)ランダムに選択され、集団サイズ=5でクロスオーバが一様のマイクロGAが24時間実行された。探索中に、適合度関数解が、2×10の生成について一定であった場合、新しいランダム部分集合が選択され、演算が繰り返された。
【0096】
結果
遺伝的探索アルゴリズムを使用すると、各被検者を100%正確にそれぞれの群に分類したzijの部分集合が容易に見出された。分類の例示的な(2次元空間にマピングされた)図が、図10に示される。全ての群は、最初の2つの標準弁別関数(canonical discriminant function)(CDF)のCDF空間において、オーバラップ無しで明確に識別された。
【0097】
CDFは、予測子変数の重み付き線形和であり、統計解析によって導出される。L(Lは、部分集合内の予測子の数kより小さいと仮定する)の群について、j=L−1の弁別関数、CDFが存在し、ここで、i=1,2,…,jである。これらのデータで6つの群が与えられると、k>Lについて、5つのCDFが常に存在する。予測子の所与の部分集合について、i=1〜5、2〜5、3〜5などのCDFの統計的有意性が、ウィルクのΛ検定統計量(Wilk’s Λ test statics)によって評価される。ウィルクのΛは、i=1〜5(P<10−22)、2〜5(P<10−6)、および3〜5(P=0.004)のCDFについて優位性が高かった。ウィルクのΛは、4〜5のCDF(P=0.16)および5のCDF(P=0.71)について優位性がなかった。被検者は、それぞれの群に100%正確に分類された。最後に、元の未処理データの20次元zij予測子空間内での6つの群の重心の等式のヌル仮説が、分散の多変量解析を使用して試験され、高いレベルの有意性(P<10−31、ホテリングのトレース検定(Hotteling’s Trace test))で排除された。
【0098】
偶然性に対する試験
偶然性によって予想される定性化部分集合の数は、部分集合内の実際の予測子の数k、考えられる全ての予測子zijのアンサンブルサイズ、群の数、および、分類される被検者の数に依存する。Lの群に属するMの被検者、および、考えられるN(=30628)からの、同じサイズのkの予測子の部分集合が与えられると、偶然性によって、各被検者の、その群への100%正確な分類を与えることになる部分集合の予想される数sは
【0099】
【数7】

となる。
この式は、サイズkの考えられる全ての部分集合Qを試験することを仮定し、試験することは、大きな数のN(=30628)が与えられると、kの小さな値であっても、ほとんど不可能な課題である。それでも、この問題は、以下の扱い易い方法で調査された。最初の解析は、小さなk、L、およびMについて、網羅的探索が実行可能であることを利用した。こうした探索は、k=2、N=30628、L=3、およびM=17(6アルツハイマー病の被検者、3慢性アルコール依存症の被検者、および8マッチした対照)について実行された。この網羅的評価は、偶然性によって予想された約4(s=3.63)の集合と比較して、各被検者の100%正確な分類によって560の部分集合をもたらした。(Q=469021878の考えられる全部の部分集合に対する)これらの比率は、著しく異なり(2項定理、正規偏差z=23.4、P<10−50)、適切な集合の(偶然性を上回る)過剰さを指示する。最後に、網羅的探索が実行可能でない大きな集合について、以下の解析が実施された。k=10、N=30628、L=6、およびM=52被検者の場合、100%正確な分類をもたらす部分集合の予想される数は、本質的にゼロである(s=0.0069)。しかしながら、遺伝的アルゴリズムを使用する弁別分類プログラムは、数時間の間実行された後、100%正確な分類によって79の集合をもたらした。(網羅的探索が実行可能でないため)データにおける適切な集合の厳密な比率が計算され得ないが、この比率は、偶然性予測値(z=8.7、P<10−50)を既に越えている。多くの場合、有効な部分集合は、100%正確な分類だけでなく、各被検者の、その群への正確な分類についての高い(例えば、>0.98)事後確率もまたもたらした。
【0100】
結論
この実施例で得られた有効な分類の基礎にある本発明の一態様は、MEG時系列の対ごとのゼロラグ偏相互相関である。248のMEGセンサについての信号間のこうした全ての相関の集合は、大規模なニューロンネットワーク内の動的同期性を特徴付ける。結果は、これらの同期性が調節され得ることを示唆する。その理由は小さな部分集合内においてさえも同期性の変化が脳疾病状態の強力な弁別子であるという点からである。この考えは、偏相関の脳パターンが、健康な被検者の間で非常に類似するという観測結果、および、高次脳機能についての基盤としての同期性の幅広い概念に従う。
【0101】
定量的なEEGを使用した初期の先駆的作業は、健康と疾病における電気生理的脳パターンの弁別および分類の応用についての基礎を築くのに長い道のりを歩んできた。概念的に、本発明の一部の実施形態の手法は、初期に先導した手法に従うが、実際には、かなり異なる。それは、(i)本手法が、より正確な測定技術(EEGに対してMEG)を利用すること、(ii)本手法が、(平均化トライアルに対して)単一トライアルに基づくこと、(iii)本手法の基本ツールが、個々のセンサ内の未処理尺度(例えば、信号振幅)または導出された尺度(例えば、特定の周波数帯のスペクトル検出力)の代わりにセンサ信号間の関係尺度(相互相関)であること、および、(iv)この相互相関が、(未処理ニューロン信号のプリホワイトニング後の)定常性がある時系列から計算されるため、真の瞬間ごとのニューロン相互作用を反映することによる。さらに、(v)同期性の強度が、約1msの高い時間分解能で測定されること、および、(vi)所与の対の相互作用が、ニューロンネットワークの残りに関してパーシャル化除去される(partialed−out)ため、結果得られるゼロラグ偏相互相関が、共線性によって汚染されないことにもよる。
【実施例5】
【0102】
この実施例では、ニューロン集団の相互作用は脳状態の分類子として試験され、バイオマーカとしてのその可能性が、全部で142の被検者のいくつかの脳疾病について評価された。その目的のために、最初に、弁別分類関数を導出するために、52の被検者が調査された。その後、これらの関数は、外部相互バリデーション法において、46の被検者の新しい群に適用された。最後に、44のさらなる被検者が、直近に組み込まれて、142の被検者の完全なサンプルになった。同期性ニューロン相互作用は、脳状態を首尾よく分類し、優れた外部バリデーション結果を示した。
【0103】
材料および方法
全部で142の被検者が、雇われたボランティアとして調査に参加した。健康な対照(HC)、アルツハイマー病(AD)、精神分裂症(SZ)、慢性アルコール依存症(CA)、シェーグレン症候群(SS)、多発性硬化症(MS)、および顔面疼痛(FP)を有する患者を含む7群が存在した。各群の構成は以下の通りであった。HC(N=89[48男性、41女性]、年齢[mean±SEM]43.7±1.7y、範囲:10〜82y);AD(N=9男性、年齢74.0±2.1y、平均ミニメンタルステート検査(mini−mental state examination)[MMSE]スコア21.13±1.5);SZ(N=16[13男性、3女性]、年齢45.8±2.5y);CA(N=3男性、年齢57.3±0.9y);SS(N=10[1男性、9女性]、年齢54.8±3.2y);MS(N=12[4男性、8女性]、年齢40.7±3.3y、2次進行型形態(secondary progressive form)または再発軽減形態(relapsing remitting form));FP(N=3女性、年齢47.3±6.5y、アルスロマイアルジア(arthromyalgia))。患者群に属する被検者は機能性脳疾患を有し、その診断はそれぞれの医療分野の専門家によって以下のように行われた。AD患者は、学際コンセンサス診断会議(interdisciplinary consensus diagnosis conference)に基づいて診断され、また、(i)DSM−IV[7]による痴呆の診断および(ii)NINCDS−ARDA基準による、そうかもしれない(possible)か、または、可能性が高い(probable)ADについての基準を満たすと判定された。SZ患者は、DSM−IV基準に基づいて診断され、電気痙攣治療の履歴も、頭部外傷(一晩の入院または5分を越える無意識)も、過去の物質依存(substance dependence)も、現在の物質/アルコール依存または乱用も、中枢神経系に影響を及ぼす医療状態(例えば、癲癇)も持たなかった。CA患者は、調査の前の24時間の間、アルコールを摂取せず、呼吸分析器を使用してアルコールの無いことを確認した。SS患者は、シェーグレン症候群についての米国−欧州コンセンサス群による分類基準に基づいて診断された。彼らは、自分たちの医師によって、また、神経生理学的測定によって臨床的に検証された認知障害を訴えた。MS患者は、修正マクドナルド基準[10]を満たし、10以上のT2大脳病巣を有し、少なくとも30日のポスト再発またはステロイドバーストであり、明確なMSサブタイプを有していた。FP患者は、側頭下顎関節痛(temporomandibular joint arthralgia)およびそしゃく筋の筋膜痛(アルスロマイアルジア)があると診断された。最後に、対照群は、患者群に対して年齢がマッチした被検者ならびにさらなる健康な被検者を含んだ。対照群に属する被検者を除く、全ての被検者は、脳の病気に関連する投薬を受けた。これらの投薬の一部は、精神作用性があった。
【0104】
外部クロスバリデーションのために、被検者の2つの連続するサブサンプルが、データ解析に関連しない任意時点に基づいて解析された。第1のサンプルは、52の被検者(6群)を含み、以下の群、すなわち、HC(N=25[17男性、8女性]、年齢47.0±3.6y、範囲:23〜82y);AD(N=6男性、年齢76.8±1.8y);SZ(N=10[7男性、3女性]、年齢48.2±2.9y);CA(N=3男性、年齢57.3±0.9y);SS(N=4女性、年齢56.3±5.2y);MS(N=4[2男性、2女性]、年齢42.5±6.4y)からなった。第2のサンプルは、46の被検者(5群)を含み、そのデータは、第1のサンプルに続いて処理された。このサンプルは、以下の群、すなわち、HC(N=33[15男性、18女性]、年齢36.8±2.8y、範囲:11〜67y);AD(N=2男性、年齢76.0±3.0y[73,79]);SZ(N=2男性、年齢30.0±2.0y[27,33]);SS(N=5[1男性、4女性]、年齢51.4±4.5y);MS(N=4[2男性、2女性]、年齢36.8±5.2y)からなった。
【0105】
課題−データ採取
ここでの目的は、任意特定の課題に関わることなく、脳を安定状態に保つことであった。その目的のために、被検者は、(異なる被検者において)45〜60秒の間、MEG機器内で仰臥位で寝て、被検者の前の約62cmにあるスポットに目を視線固定し、一方、MEGデータは、248の軸型磁束計(サンプリング@1017Hz、フィルタリング0.1〜400Hz、Magnes 3600WH、4−D Neuroimaging社、カルフォルニア州サンディエゴ)によって採取された。これは、各被検者について、45000〜60000時点を有する248の時系列からなるデータ集合をもたらした。心臓アーチファクトは、事象同期減算を使用して、各系列から除去された。
【0106】
一般的なデータ解析
以下に述べる全ての解析は、単一トライアルの、平滑無しで平均無しのデータに関して実施された。MEGセンサ時系列間のゼロラグ相互相関を計算するために、個々の系列は、「プリホワイトニング」によって定常性にされた。それは、系列の非定常性が、誤った関連付けをもたらす可能性があるためである。従って、解析の最初のステップは、時系列をモデリングし、定常な(または、擬似定常な)残渣を導出し、その残渣から、相互相関などの、対ごとの関連付け尺度を計算することであった。これまでの研究が示したところによれば、25のAR次数、1次差分、および1次MAのARIMAモデルは、平均値、分散、および自己相関構造に関してほとんど定常であった残渣をもたらすのに適切であった。残渣は、SPSS統計パッケージ(Windows用SPSS、バージョン15、SPSS Inc.、イリノイ州シカゴ、2006)を使用して推定された。定常な残渣の対間のゼロラグ相互相関は、IMSL統計ライブラリ(Compaq Visual Fortran Professional edition version 6.6B)のDCCFルーチンを使用して計算された。これらから、iのセンサとjのセンサとの間の偏ゼロラグ相互相関PCCijおよびその統計的有意性が、全てのセンサ対について計算された。記述統計量および他の統計量を計算するために、PCCijは、フィッシャのz変換を使用してzijに変換されて、その分布が正規化された。すなわち:
【0107】
ij=0.5[ln(1+PCCij)−ln(1−PCCij)]
である。
共分散の単変量解析(ANCOVA)は、各サンプルについて、それぞれの個々のセンサ対のデータに関して実施された。ここで、zijは従属変数であり、性(二者択一変数)および年齢は共変量であった。第1および第2のサンプルにおける、センサ対の間の群作用の分布の合同を評価するために、所与のセンサ対についての有意の作用の有るまたは無しが、それぞれ1および0としてコード化され、χ検定統計量が計算された。
【0108】
線形弁別分類解析
この解析を使用して、被検者をそれぞれの群に正確に分類することになるzijの部分集合が存在するかどうかが判定された。この解析において、フィッシャの群弁別および被検者分類が、標準弁別関数(CDF)空間において行われる。CDFは、予測子変数の重み付き線形和であり、統計解析によって導出される。L(Lは、部分集合内の予測子の数kより小さいと仮定する)の群について、j=L−1の弁別関数、CDFが存在し、ここで、i=1,2,…,jである。群弁別(および、個々の被検者分類)は、この多次元CDF空間内で実施される。この解析は、群分類関数および特定の群への各被検者の分類の事後確率をもたらす。さらに、順方向ステップごと線形弁別解析(forward stepwise linear discriminant analysis)(BMDP Dynamicのプログラム7M、バージョン7、統計パッケージ、カルフォルニア州ロサンゼルス、1992)が、142の被検者の全サンプルに関して使用されて、予測子の単一部分集合が導出された。プログラムのデフォルトのF値が使用された(F−to−add−a−predictor=4.0、F−to−remove−a−predictor=3.996)。その解析についての入力予測子は、271のセンサ対からのzij値であり、その値は、ANOVAにおいて有意性の高い(P<0.001、F検定)群作用を示した。これは、30,628の値からなる大きな予測子空間を低減しようとして行われた。
【0109】
遺伝的アルゴリズム(GA)
この例の主要な目的は、非常に大きな空間から有効な予測子部分集合を識別することであった。全てのこうした部分集合を識別するときのブルートフォース手法は、大きなサイズの予測子集合(N=30,628)が与えられると、数個以上の予測子についてさえも計算的に躊躇させることになる。こうした理由で、以下のように、計算時間を低減し、かつ、本発明者等の探索を最適化するために、GAが使用された。(利用可能な30,628からの)ある数のzij予測子の初期部分集合がランダムに選択され、集団サイズ=5でクロスオーバが一様のマイクロGAが、24時間実行された。探索中に、適合度関数解が、2×10の生成について一定であった場合、新しいランダム部分集合が選択され、演算が繰り返された。実際には、GAは、「適者生存(survival of the fittest)」の自然な選択法則を守る。こうして、評価関数(この場合、分類)を改善する特性が維持され、一方、改善しない特性が廃棄される。
【0110】
第1のサンプルの統計解析
これらの解析は、2つの目的、すなわち、(i)適切な予測子の部分集合の数が、偶然性によって予想される数を超えるという仮説を試験すること、および、(ii)第2のサンプルに関するクロスバリデーションのために分類関数を生成することを有する。
【0111】
偶然性の結果に関して、Lの群に属するMの被検者および考えられるN(=30,628)からの同じサイズのkの予測子の部分集合が与えられると、偶然性によって、各被検者の、その群に対する100%正確な分類を与えることになる部分集合の予想される数sは
【0112】
【数8】

となる。
網羅的探索を使用した解析の場合、頑健な1個抜き法を使用して線形弁別解析を実施するために、k=2、L=3、M=17(6:AD患者、3:CA患者、および8:マッチしたHC)が選択された。全ての被検者の、その対応する群に対する100%正確な分類が、特定の部分集合を保持するために必要とされた。
【0113】
線形弁別分類解析:外部クロスバリデーション
線形弁別解析は、各群について分類関数をもたらし、分類関数は、その後、個々の被検者をある群に分類するのに使用される。外部クロスバリデーションの場合、第1のサンプルから導出された分類関数を使用して、第2のサンプルからの被検者が分類された。その目的のために、第1のサンプルについて100%正確な分類を与えた分類関数が使用され、その後、第2のサンプルに適用された。
【0114】
結果
第1のサンプル(52被検者、6群):初期解析
最初に、zijに対する統計的に有意な群作用(P<0.05、F検定、ANCOVA)が、センサ対の18%において見出された。次に、(GAを使用した)線形弁別分類解析が、zijの部分集合に関して実行されて、個々の被検者が、それぞれの群に首尾よく分類され得るかどうかが見出された。実際には、52の被検者の各々を100%正確に分類したzij予測子の(数千の中の)多くのこうした部分集合が見出された。(全てのこうした部分集合の厳密な数は、実際には、求めるのが不可能である。)一例が図10に示される。多くの場合、有効な部分集合は、100%正確な分類だけでなく、各被検者の、その群への正確な分類の高い事後確率(例えば、>0.98)もまたもたらした。
【0115】
多くのzijの部分集合が可能であるため、有効な部分集合の数が、偶然性によって予想される数を超えるかどうかを知ることが有用である。この数は通常、非常に大きく、部分集合内の実際の予測子の数k、考えられる全ての予測子zijのアンサンブルサイズ(N=30,628)、群の数、および、分類される被検者の数に依存する。本発明者等は、この問題を2つの扱い易い方法で調査した。第1の解析では、本発明者等は、わずか2つの予測子を使用して、データのより小さなサブサンプルに関して網羅的探索を実施した(複数の方法を参照されたい)。この網羅的評価は、偶然性によって予想された約4(厳密には3.63)の集合と比較して、(頑健な1個抜き法を使用する)100%正確な分類によって560の部分集合をもたらした。これらの比率は、著しく異なり(2項定理、正規偏差z=23.4、P<10−50)、適切な集合の(偶然性を上回る)過剰さを指示する。第2の解析では、本発明者等は、網羅的探索が、それについて実行不可能であることになる、10の予測子を使用した第1のサンプル全体の52の被検者を使用した。偶然性によって100%正確な分類をもたらす部分集合の予想される数は、本質的にゼロである(厳密には、0.0069)。しかしながら、本発明者等の弁別分類プログラムは、一定期間の間実行された後、100%正確な分類によって79の集合をもたらした。本発明者等は、(網羅的探索が実行可能でないため)データにおいて適切な集合の厳密な比率を計算することができないが、この比率は、既に、偶然性の予想値(z=8.78、P<10−50)をかなり超えている。
【0116】
第2の連続サンプル(46被検者、5群):外部クロスバリデーション
この解析の頑健さおよび有用な臨床試験法としての可能性を評価するために、46の被検者からのデータが、第1のサンプルに続く後続の期間の間に処理された。特に、(a)センサ対(N=30,628)の個々のzijに関してANCOVAによって評価された群作用の分布、および、(b)第1のサンプルから導出された分類関数に基づく第2のサンプルの分類結果(外部クロスバリデーション)に関して、第2のサンプルの解析結果が、第1のサンプルの解析結果に一致したかどうかについての回答が求められた。前者に関して、zijに関する統計的に有意な群作用(P<0.05、F検定、ANCOVA)は、第1のサンプルにおける18%に比較して、センサ対の11%で見出された。センサ対の間のこの作用の分布は、2つのサンプルにおいて非常に一致していた(P<10−11、χ検定)。そして、後者に関して、第1のサンプルにおいて100%分類を示したzijの部分集合の多くもまた、第1のサンプルから計算された分類関数が第2のサンプルに適用されると、優れた分類スコアを示した(数千の中で、>90%)。これらの結果は、2つのサンプルの類似性を強調し、優れた外部クロスバリデーション結果の発生を立証する。
【0117】
3.3:現在の総サンプル(Total Current Sample)(142被検者、7群)
44のさらなる被検者からのデータが、142の被検者(7群)の現在の総サンプルについて解析された。全ての被検者の、それぞれの群への100%正確な分類をもたらす多くのzij予測子の部分集合が識別された。こうした部分集合の数は、(20の予測子について)数千の単位であり、16程度の少ないzij予測子でさえも、100%正確な分類結果を示すであろう。被検者分類の事後確率が、ほとんどの場合、>0.95であったことも注目すべきであり、この手法の検出力を強調している。最後に、ステップごとの弁別解析(複数の方法を参照されたい)は、142の被検者の86.6%を、それぞれの群に正確に分類した12のzij予測子の部分集合をもたらした。2つのクロスバリデーション結果もまた、この集合に関して得られた。最初に、1個抜き法によって得られたジャクナイフ式分類は、78.9%の正確な分類を示した。第2に、分類関数を計算し、それにより、被検者の残りの20%の群割当てを予測するためのプログラムが、(ランダムに選択された)データの80%を使用して10回実行された。平均の正確な分類は、86.4%(範囲:79.3〜93.8%)であり、平均の正確なジャックナイフ式分類は、77%(範囲:72.1〜83.6%)であった。これらの調査結果は、正確な分類の高いパーセンテージが、頑健に得られることを示す。
【0118】
結論
弱い局所的な脳皮質同期についてのメカニズムは、錐体路細胞(pyramidal tract cell)と特異的なパルブアルブミン免疫反応視床皮質ニューロン(parvalbumin−immunoreactive thalamocortical neuron)の反回側副枝(recurrent collateral) によってもよく、一方、カルビンジン免疫反応視床皮質ニューロン(calbindin−immunoreactive thalamocortical neuron)は、大規模多焦点皮質同期の一因となる可能性がある。調査結果が示唆するところによれば、微細粒同期性(fine−grain synchronicity)は、異なる疾病プロセスによって特質的に乱される可能性がある皮質機能の基本態様であり得、疾病固有のシグネチャをもたらす。
【0119】
異なる問題は、高い分類レートをもたらすゼロラグ偏相関の特定の部分集合に関する。これらの部分集合は、利用可能な30,628の値の大きな空間および部分集合問題の組合せ的特質(combinatorial nature)が与えられると、網羅的探索によって見出されることができない。代わりに、こうした「適切な(good)」部分集合を識別し、評価しようとして、2、3の異なる手法が採用された。最初に、本発明者等は、単一の予測子の部分集合を識別するためにステップごとの線形弁別解析を適用するときに、古典的な統計量を使用した。全体の集合が非常に大きいため、最初に、固定因子としての疾病(「群(Group)」)に関して分散の解析を実行し、その後、著しく有意性がある群作用を示した(30,628から)271の予測子に関してステップごと線形弁別解析を実施することによって、本発明者等は、集合を低減した。この解析は、標準的な再分類解析ならびにジャックナイフ式1個抜き分類および80/20%ランダムスプリットにおいて、高い分類レートを有する12の予測子からなる集合をもたらした。しかしながら、任意のステップごとの手順と同様に、ステップごと線形弁別解析は、各ステップにおいて式に予測子を入力する、かつ/または、式から除去するための特定の基準に依存し、これらの基準は、ステップ動作の方向(順方向か、または、逆方向)以外に、結果に大きな影響を及ぼす可能性がある。この解析は有用であるが、本発明者等の特定の応用に対して最適状態に合わせられない可能性がある。その目的のために、ブルートフォースによって、すなわち、組合せ的予測子部分集合空間全体の中を探索することによって、理想的な(100%分類)予測子部分集合を識別する最初の試みが行われた。本発明者等は、過剰適合を回避するために、小さな部分集合のサイズ(<20)に重点を置いた。ランダム探索を使用した本発明者等の初期解析は、数日間プログラムを実行した後に、興味深い結果を全く生じなかった。従って、理想的な集合を迅速に配置するために、遺伝的探索アルゴリズムが実施された。実際には、このアルゴリズムは、1日で、適切な数のこうした部分集合をもたらした。この数は、偶然性によって予想される数を超えた。それは、以下のことが、(a)少数の疾病および少数の予測子によるデータの網羅的探索において、また、(b)大きなサンプルにおいて発見されたからである。以下のこととは、理想的な予測子部分集合の厳密な数は求められないが、理想的な予測子部分集合の数が偶然性についての数を越えたということである。次のステップは、外部クロスバリデーションスキーム内で新しい被検者を分類するための、こうした理想的な予測子部分集合の検出力を評価することであった。遺伝的アルゴリズムをその問題に集中させることによって、数千の部分集合が識別され、優れたクロスバリデーションレートをもたらした(>90%;数百は>95%であった)。探索空間が大きいため、こうした部分集合の厳密な数はわからない。
【0120】
要約すると、これらの結果は、(a)脳疾病状態を区別するための適切な情報がゼロラグ偏相関内に存在すること、(b)この情報が、線形弁別解析を使用して首尾よく取り出され得ること、(c)その結果が、偶然性だけによって予想される結果を超えること、および、(d)その結果が、頑健であり、かつ、十分な程度にクロスバリデーションされること、を実証する。こうした調査は、どの段階であれ、常に進化していることが明確にされるべきである。それは、新しい調査の被検者および新しい疾病群の追加は、予測子部分集合および関連する分類関数の更新を必然的に必要とすることになるからである。さらに、分類結果を改善するために、(例えば、サポートベクトルマシン(support vector machine)に基づく)他の分類法が試行され、かつ/または、開発され得る。最後に、上述した解析は、7つの群に適用されたが、例えば、スクリーニング試験(健康な対照対全ての患者)として、または、特定の脳疾患間(例えば、MS対MS擬(mimetic)疾患など)の鑑別診断におけるより特殊な補助として役立つために、一般に、群の任意の対にも適用され得ることが述べられるべきである。
【0121】
さらなる実施例
脳内のニューロン活動は、磁気信号と電気信号の両方を生成する。脳に相当する磁気信号は、脳磁図(MEG)センサを使用して検出され得、電気信号は、脳波計(EEG)センサを使用して検出され得る。本明細書で使用されるように、電気信号または磁気信号を検出するために、電磁センサが使用され得る。
【0122】
MEGおよびEEGセンサ以外に、他のモダリティを使用して、脳からの時間データが収集され得る。例えば、機能的磁気共鳴イメージング(fMRI)は、特定の活動の間に、体内の電子スピンの挙動に相当するデータを提供するモダリティである。ポジトロンエミッショントモグラフィ(PET)は、体内に導入された放射性物質から放出されるガンマ線放射を検出する別のモダリティである。コンピュータ断層撮影装置(CT)は、走査されたX線に基づくデータを生成する別のモダリティである。こうしたモダリティからのデータを使用して、本明細書で述べる主題によって生成される推定が改善され得る。
【0123】
一実施例では、本主題は、動的機能についてのデータを生成するシステムおよびビジネス方法を含む。図11は、中央サーバ1100および通信ネットワーク1200を含むシステム1000を示す。中央サーバ1100は、データベース1105と端末1120に接続されたサーバ1110を含む。中央サーバ1100は、メモリまたはデータベース1105などの他の記憶機構内に記憶された命令に基づいてアルゴリズムを実行する。データベース1105は、磁気、光、または他のデータ記憶デバイスを含むことができる。端末1120は、システム1000の動作および制御を可能にするために、入力デバイスならびに出力デバイスを提供する。
【0124】
図11では、クライアントサイト1310、1320、および1330は、本主題に従ってデータを生成する診療所または健康管理施設を表す。3つのこうしたクライアントサイトが示されている。しかしながら、もっと多いか、または、少ないクライアントサイトも考えられる。データは、例えば、ローカルプロセッサ1312の制御下でセンサ1314によってクライアントサイト1310で生成される。データは、脳活動に相当する時系列を含む。時系列は、超伝導量子干渉計(SQUID)のアレイを含むことができるセンサ1314と通信するローカルプロセッサ1312を使用して取り込まれる。ローカルプロセッサ1312で記憶された時系列データは、通信ネットワーク1200を使用して中央サーバ1100に伝達される。通信ネットワーク1200は、有線または無線ネットワークを含み、その例は、イーサネットネットワーク、ローカルエリアネットワーク(LAN)、インターネットなどのワイドエリアネットワーク(WAN)、および公衆交換電話網(PSTN)を含むことができる。
【0125】
中央サーバは、メモリに接続され、かつ本明細書に述べるアルゴリズムを実行するために同メモリに記憶された命令を有する、プロセッサを含むことができる。中央サーバは、複数のロケーションにわたって配置され得る2つ以上のプロセッサを含むことができる。中央サーバのプロセッサは、制限はしないが、例えば、RISCまたはCISCマイクロプロセッサ、マイクロコントローラ、マイクロコンピュータ、FPGA、ASIC、アナログプロセッサ回路、量子コンピュータ、または生物学的プロセッサを含む任意の適したプロセッサによって具現化され得、かつ単一または複数の処理ユニットを含み得ることを当業者は容易に理解するであろう。プロセッサはまた、バッチモードまたはリアルタイムモードで動作するタイプであり得る。
【0126】
一実施例では、クライアントサイトは、申し込みベースで認可されるか、または、登録される。料金について、中央サーバは時系列に基づいて動的脳活動の推定を生成するアルゴリズムを実行する。一実施例では、中央サーバは、推定を含むレポートを提供する。推定は、英数字またはグラフィック形式で表現され得る。
【0127】
図12Aは、本主題の一実施例によって実施される方法2000を示す。2010にて、時系列データが受信される。時系列データは、ターゲットに視覚的に視線固定することなど、標準刺激と運動活動だけを伴う開眼課題を被検者が実施している間に生成される。このタイプの開眼課題は、被検者の脳が、ほぼアイドル状態のままであるようにさせる。
【0128】
時系列データは、センサまたはセンサアレイによって生成された後しばらくして、プロセッサによって受信され、かつ記憶され得る。2020にて、データ内のアーチファクトが除去される。アーチファクトは、呼吸によって生成されるアーチファクト、心臓アーチファクト、身体的運動または他のアーチファクトを含むことができる。2030にて、データは、例えば、MEG時系列を、定常な白色雑音系列に変換することによってプリホワイトニングされる。2040にて、同期性結合の推定が、偏相互相関を計算することによって生成される。2050にて、推定は、その後、テンプレートと比較される。
【0129】
一実施例では、テンプレートは、観察中の特定の被検者についての記憶されたデータに基づいて生成される。一実施例では、テンプレートは、複数の異なる被検者から導出された、記憶されたデータに基づいて生成される。解析は、被検者データをテンプレートと比較することによって実施され得、一実施例では、テンプレートは、その特定の被検者についての結果によって修正される。別の実施例では、テンプレートは、ある期間にわたって何人かの被検者をコンパイルした後バッチモードで修正される。
【0130】
図12Bは、図11に示すようなネットワークを使用した実施態様に適した方法2500を示す。2510にて、被検者データはインターネット接続を通じて受信される。一実施例では、被検者データはMEG時系列データを含む。2520にて、解析は、例えばサーバ1100を使用して実施される。2530にて、データベース1105は特定の被検者に相当する情報によって更新される。2540にて、データの解析を含むことができる結果はネットワークを使用してクライアントサイトに報告される。
【0131】
一実施例では、中央サーバは、正常性の指示を提供するスクリーニングレポートを提供する。こうした(正常か、または、正常からの逸脱を示す)二者択一性レポートは、脳状態に関するクライアントサイトによる閾値判定として使用され得る。
【0132】
一実施例では、中央サーバは、データベースとの比較に基づく分類を含む診断を提供し得る。データベースは、以前に解析された幾らかの時系列に相当する記憶データを含む。さらに、データベースは、クライアント時系列データが受信されると、新しいデータによって更新され得る。一実施例では、クライアントサイトは、特定の脳についての先の時系列データと後の時系列データとの比較を含む傾向データを要求し、かつ受信し得る。診断を行うときに、本主題は、複数の疾病状態を区別する。
【0133】
データベースは、特定の被検者の解析についてテンプレートまたはモデルを生成するためのデータを提供することができる。テンプレートは、例えば、特定の疾病または他のニューロン状態あるいは正常な脳に相当し得る。
【0134】
一実施例では、中央サーバは、被検者の進行の監視を可能にするフィードバックを提供する。特に、疾病進行および治療進行は、ある期間にわたって複数の推定を生成することによって監視され得る。さらに、ニューロン同期性の推定は、薬物トライアル中に生成され得る。治療レジメンの安全性と効率は、本主題を使用して、薬物トライアルを監視することによって評価され得る。
【0135】
コンピュータ実装されたアルゴリズム(computer implemented algorithm)は、メモリに記憶されたソフトウェア命令で実装され得る。ソフトウェアの所与の部分は、クライアントサイトおよび中央サーバで実行され得る。
【0136】
一実施例では、推定は、ある程度、被検者の年齢に応じて決定される。年齢調整されたデータは、データベースに記憶され得る。他のデータもまたデータベースに記憶され、例えば、既知の医療状態または治療レジメンを含む、弁別に使用され得る。
【0137】
データベースが進化するにつれて、特定の変数が、特定の疾病状態に強く相関することになるであろうと予想される。従って、これらの特定の変数は、異なる状態をより迅速にかつ正確に区別するために、異なって重み付けされ得る。一実施例では、被検者は、計算された相関の部分集合を予測子として使用して分類され得る。例えば、「1個抜き」法を使用した線形弁別分類解析が使用され得る。一実施例では、1.0の事後確率によって被検者を正確に分類する(100%正確な分類)ために、6つの相関が適切である。
【0138】
さらに、本発明の実施形態は、被検者の真実性を見分けるための有用性を有し得ると思われる。嘘発見器の形態で、試験される主張に一致するデータが被検者から収集される。さらに、本発明の他の実施形態は、知性を解析するか、または、試験するための有用性を有し得ると思われる。従って、特定の知性等級に一致する特定のマーカが識別されてもよい。
【0139】
本発明のいくつかの実施形態は、診断精度を高め、AD(および他の状態)の認識を症候性前の段階に早め、治療のためのモニタの役をするための客観的試験を提供することができる。
【0140】
時系列を取り込むのに使用されるセンサの数は、任意の値に調整されることができ、一実施例では、その数は、関心の結論に達するのに十分な値に低減される。例えば、一実施例は、低減された(すなわち、6つ以下の)センサの集合を使用して、特定の神経学的状態に関する結論に達するのに十分な、意味のある時系列が生成される。
【0141】
本主題は、種々の脳状態を有する被検者に関して使用され得る。本主題によって識別され、診断され、または、監視され得る脳状態または疾病の一部の例は、アルコールまたは薬物の影響下にある人、神経学的疾病または状態、多発性硬化症、双極性障害、外傷性脳損傷、パーキンソン病、うつ病、自己免疫異常、神経変成疾患または疾病、疼痛、および中枢神経系(CNS)に影響を及ぼす疾患を含む。アルコールまたは他の薬物の作用を識別すること以外に、本主題を使用して、慢性アルコール依存症または胎児性アルコール症候群を診断することができる。例えば、本発明の実施形態を使用して、被検者がアルコールを消費するか、または、薬物を使用している間に、脳状態の毎日の変化を監視することができる。
【0142】
一般に、本発明の実施形態を使用して、記憶されたテンプレートを使用して、状態または疾病を診断し、いくつかの異なる状態または疾病を区別し、ある期間にわたって被検者を監視することができる。
【0143】
一実施例では、本主題は、脳磁図(MEG)データの階層的クラスタリングを含む。10人の健康な被検者が、45秒の間、あるスポットに視点固定している間に、データが、248の軸型磁束計から採取され得る。データは、心臓アーチファクトまたは目の瞬きによるアーチファクトを除去するために前処置される。
【0144】
心臓アーチファクトまたは目の瞬きによるアーチファクトが無い、定常なMEGデータを使用した同期性のある動的な脳ネットワークの階層的クラスタリングは、可視化され得る。10人の健康な被検者が、45秒の間、光のスポットに視点固定している間に、データが、248の軸型磁束計(0.1〜400Hz、サンプリング@1017Hz、Magnes 3600WH、4−D Neuroimaging社、カルフォルニア州サンディエゴ)から収集される。自己回帰統合移動平均(ARIMA)モデルを当てはめ、残渣を取得することによって時系列をプリホワイトニングした後、全ての対ごとのゼロラグ偏相互相関(N=30,628)が計算され、そのため、ニューロン集団の間での直接同期結合の強度と符号(正、負)の推定が1ms時間分解能で提供される。階層的相加樹(hierarchical additive tree)クラスタリング解析が使用され、距離が各センサ対についての平均値偏相関から導出される。樹を分割することは、被検者にわたる頑健なクラスタリングパターンを実証する。クラスタ間の相互作用は、クラスタのそれぞれの対ごとの組合せのセンサ間の平均値偏相関を使用して推定される。クラスタのプロットは、構成と相互作用において非常に複雑であることを明らかにし得る。本主題は、種々の疾病群または状態を評価することができる、相互作用するニューロン集団の機能的グルーピングのために使用され得る。本発明の一部の実施形態は、脳磁図(MEG)によって評価された同期性ニューロン相互作用の線形弁別分類解析を含み得る。
【0145】
ADは考慮するべく代表的な例である。MEGを使用して、3つの群の高齢の被検者、すなわち、正常(N=6、72.3+/−2.4y、mean+/−SEM)、軽度認知障害の被検者(N=6、76.9+/−2.5y)、およびADの被検者(N=6、76.8+/−1.6y)において、脳の動的状態を評価することができる。被検者が、45秒の間、あるスポットに視点固定している間に、データが、248の軸型磁束計(0.1〜400Hz、サンプリング@1017Hz、Magnes 3600WH、4−D Neuroimaging社、カルフォルニア州サンディエゴ)から収集され得る。データは、心臓アーチファクトまたは目の瞬きによるアーチファクトを除去するために前処置される。自己回帰統合移動平均(ARIMA)モデルを当てはめ、残渣を取得することによって時系列をプリホワイトニングした後、全ての対ごとのゼロラグ偏相互相関(N=30,628)が計算され、そのため、ニューロン集団の間での直接同期結合の強度と符号(正、負)の推定が1ms時間分解能で提供される。被検者は、これらの相関の小さな部分集合を予測子として使用して3つの群に分類され得る。例えば、頑健な1個抜き法を使用した線形弁別分類解析が使用され得る。1.0の事後確率によって全ての被検者をそれぞれの群に正確に分類する(100%正確な分類)ときに、例えば、6つの相関を有する予測子部分集合が適切である。本主題は、脳機能についての動的試験として提供され得る。
【0146】
図13は、一実施形態によるプロセスの概要を示す。2610にて、MEGなどの電磁測定装置は被検者の無侵襲試験を行う。上述したように、一実施形態では、被検者は、被検者の脳を開眼アイドル状態に置くために、開眼固定視覚刺激課題を実施するように指示される。2620にて、電磁測定装置は、患者の脳の時系列データを収集する。一実施形態では、データは、1ms以下の時間分解能に相当する1kHzの最低サンプリング周波数でサンプリングされる。この比較的速いサンプリング速度および時間分解能は、一般に、ニューロン活動が被検者の脳内で起こる速度に相当する。データは、被検者の脳の周りに空間的に分配された複数のセンサによって収集される。
【0147】
2630にて、それぞれが、対応するセンサによって収集された時系列の集合は、データ処理機構と、選択的にデータ記憶機構と、を有するデータセンタに送信される、または、その他の方法で送出される。2640にて、データは、データセンタにおいて受信される。2650で行われる処理は、被検者のニューロン集団の間で統計的に独立な時間的尺度を表す動的モデルを生成する。時間的尺度は、例えば、種々のセンサによって検出された時間ごとの関連する検知信号であり得る。これらの信号は、ラグ無しの(すなわち、同時の、または、検出可能な量未満だけ非同期の)一致を有するように、サンプリング間隔に基づいて一致してもよい。あるいは、時間的尺度は、ある時間窓(例えば、50ms窓)内で相互作用する信号などの、非同期であるが、それでも時間的に関連する信号に基づくことができる。
【0148】
ニューロン集団の間での時間的尺度は、センサの対、または、互いに対する時間的な相互作用を実証する3つ以上のセンサの群などの他のグルーピングに関連し得る。
時間的尺度の統計的独立性は、他の変数を考慮するセンサのペアリング間または他のグルーピング間の明らかな相互作用に関連する。統計的に独立な時間的尺度を達成することができる1つのタイプの計算は、上記例で述べた偏相互相関である。しかしながら、ある応用では、本発明の範囲および精神内で他の手法が適用可能であってよい。例えば、残渣の使用は、時間的尺度のグルーピングの統計的独立性を生成してもよい。
【0149】
先に説明したように、モデルの動的性質は、時間的尺度のモデルが、各サンプリング期間について異なることができるように、時間の関数として表されることを意味する。とりわけ、時間的尺度の動的モデルは、単に、構造的な構成だけにおいてノードを有するネットワークではなく、ある意味で、相互作用する空間的ノードのネットワークと見なされ得る。上記した実施例は、「脳マップ(brain map)」の空間表現を提供するが、データは、本発明の精神および範囲内で、任意の適した形態で表され得る。
【0150】
上述したように、未処理測定データを処理して、アーチファクトを除去し、かつ/または、時系列のそれぞれをプリホワイトニングし、それにより、平均値、分散、および自己相関の定常性の特性を有する信号を生成するときに、いくつかの利点が実現されてもよい。このプリホワイトニングステップは、さらに、計算される時間的尺度の統計的な独立性に寄与する。
【0151】
動的モデルが計算されると、同モデルは、簡略化するか、または、フィルタリングするためにさらに処理され得る。1つのタイプのフィルタリングは、比較的弱いマグニチュードを有する時間的尺度を除去し、被検者の脳を解析するために利用する強い時間的尺度だけを残す閾値関数の使用である。
【0152】
一実施形態では、時間的尺度は、例えば、年齢、人種、または神経生理学的能力などの、被検者の1つまたは複数の外部プロパティに関する共分散について解析される。
2650にて、データセンタは、時間的尺度の動的モデルを、種々の脳状態に従って分類された1つまたは複数のテンプレートと比較する。テンプレートはある意味で神経生理学的状態のバリデーションされたモデルである。1つのタイプの実施形態では、テンプレートはそれぞれ、疾病または障害などの一般的な神経生理学的特性を共有する、以前に評価された被検者の群に基づく。この実施形態では、テンプレートは同テンプレートがそれに基づく被検者の群ついての状態に相当するインジケータ間に、強い統計的な相関が存在する点でバリデーションされている。
【0153】
各テンプレートは、それ自体、時間的尺度の動的モデルまたはこうした動的モデルの部分集合であり得る。テンプレートは、データレコードとして記憶され得、または、被検者の動的モデルと「比較される(compared)」と、比較結果を達成するために、動的モデルを修正するアルゴリズムまたは関数として表され得る。ある意味で、テンプレートは分類関数である。1つの例示的な実施形態では、テンプレートは、重み付きタップを有するデータマスクの形態である。
【0154】
上記した実施例の場合と同様に、テンプレートは、時間的尺度のグルーピング(例えば、ペアリング)の選択された部分集合だけに制限され得、残りの時間的尺度は、そのテンプレートが対応する状態に無関係であるものとして省略される。このレジメンでは、異なるテンプレートは、対応する状態または疾病に対して、関連する時間的尺度の異なるグルーピングを有してもよい。
【0155】
患者データの動的モデル(または、動的モデルの部分集合)が、1つまたは複数のテンプレートと比較されると、動的モデルの異なる部分集合が、それぞれ異なる各テンプレートと比較されてもよい。こうして、(その空間位置に基づいて識別された)相関性があるセンサデータの対A、B、およびEを表すテンプレートの場合、被検者から取得された時間的尺度の動的モデルの対A、B、およびEだけが、比較される必要がある。対C、D、およびEが関連する異なるテンプレートの場合、動的モデルから取得されたこれらの対だけが使用され得る。結果として得られる比較は、スコアリングされるか、または、その他の方法で、相関の程度を表すことができる。あるいは、比較は、二者択一(イエス/ノー)の結果を生成し得る。
【0156】
本発明の一態様では、被検者の時間的尺度の動的モデルは記憶され、後で、同じ被検者のより最近の測定結果と比較するのに使用される。この手法は、疾病の進行を追跡するか、または、特定の治療の効果を評価するのに有用であり得る。関連する実施形態では、テンプレートは同じ被検者からのデータの複数の異なる集合に基づいて作られ、また、テンプレートは、所定期間にわたって患者の状態を追跡するのに使用される。
【0157】
2660にて、システムはレポートを生成し、レポートは、図3または10に示す出力に類似する、可視化のために2dまたは3d空間にマッピングされた、患者の動的モデルのグラフィック表現を含み得る。
【0158】
図14は、本発明の一態様による情報の流れ3000を示す図である。診療所3010は、被検者測定機器3012、および、医師または検査技師3014を含む。ネットワークノード3016は、遠隔ノードとの通信を容易にする。一実施形態では、ネットワークノード3016は、ネットワークインターフェースを有する、PCなどのコンピュータシステムを含む。ネットワークノード3016はまた、医師3014と機器3012との間の操作者インターフェースを容易にし得る。
【0159】
一実施形態では、測定は機器3012によって行われ、送信の前にネットワークノード3016上にローカルに記憶される。ネットワークノードは、その後、解析のために機器出力3018を外部システムに送信するよう指示される。システムは、患者IDに関連して、機器出力3018に相当する患者プロファイル3020を作成する。システムは、上述された、また、機器出力に基づく情報を診断モデル3022と比較することを含む解析技法のうちの任意の技法に従って、機器出力3018などの患者プロファイル3020からの情報を処理する。一実施形態では、診断モデル3022は、上述したテンプレートに類似する。
【0160】
比較の結果3024を使用して、ネットワークノード3016を介して診療所3010に送出するためにレポート3026を生成し得る。レポート3026は、自動的に生成される討論および結果3024を示すグラフィカルな出力と共に、比較の結果3024を含むことができる。さらに、結果3024は、同様に、ネットワークノード3016を介して診療所3010に送出するために、質問状3028に関連付けられ得る。質問状3028は、医師3014によって書き込まれて、患者、試験環境、治療、徒手的診断などに関するさらなる関心情報を提供することができる。書き込まれた質問状は、その後、患者ID、レポート3026、結果3024、および機器出力3018に関連して、データ記憶部3030に記憶されるフィードバック/フォローアップ3032として提供される。
【0161】
先の説明は、例証的であり、制限的でないことを意図されることが理解される。例えば、上述した実施形態(および/またはその態様)は、互いに組合せて使用されてもよい。多くの他の実施形態は、先の説明を再調査することによって当業者に明らかになるであろう。従って、本主題の範囲は、添付した特許請求項が権利を与えられる等価物の全範囲と共に、添付した特許請求項に関して、決定されるべきである。添付した特許請求項において、「含む(including)」および「その中で(in which)」という用語は、「備える(comprising)」および「その中で(wherein)」というそれぞれの用語の平易な英語の等価物として使用される。同様に、添付した特許請求項において、「含む(including)」および「備える(comprising)」という用語は、無制限である、すなわち、特許請求項においてこうした用語の後に挙げられる要素以外の要素を含むシステム、デバイス、製品、またはプロセスは、依然としてその特許請求項内に入ると考えられる。さらに、添付した特許請求項において、「第1の(first)」、「第2の(second)」、および「第3の(third)」などの用語は、単にラベルとして使用され、それらのオブジェクトに対して数値的な要件を課すことを意図されない。
【0162】
開示の要約は、技術的な開示の性質を読者が迅速に確認することを可能にする、要約についての国際的な要件に対応するために設けられている。開示の要約が、請求項の範囲および意味を解釈するか、または、制限するために使用されないという理解によって、開示の要約は提出される。さらに、先の詳細な説明において、開示を簡素化するために、種々の特徴が共に群化されてもよい。開示のこの方法は、請求される実施形態が、各特許請求項で明白に述べられるよりも多くの特徴を要求するという意図を反映するものとして解釈されるべきでない。むしろ、添付した特許請求項が示すように、本発明の主題は、単一の開示された実施形態の全ての特徴より少ない特徴にあってもよい。そのため、添付した特許請求項は、詳細な説明に組み込まれ、各特許請求項は、それ自身を別個の実施形態として主張する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検者の神経生理学的活動を解析するとともに分類するためのシステムであって、
開眼アイドル状態時に前記被検者のニューロン信号を検出すべく配置された空間的に分配された複数のセンサにより得られた神経生理学的活動の時系列を表す被検者データの集合を受信するデータ入力部と、
種々の脳の症状に従って分類される複数のテンプレートを記憶するデータ記憶部であって、前記テンプレートの各々が所与の脳の症状を示すことが知られている少なくとも一人のその他の被検者から測定されたニューロン集団の間での統計的に独立な時間的尺度の選択的な部分集合を表す、データ記憶部と、
前記データ入力部及び前記データ記憶部に通信可能に接続されるプロセッサと、を含み、前記プロセッサは:
前記被検者のニューロン集団の間での時間的尺度を表す動的モデルを得るために同被検者データの集合を処理し、かつ
前記動的モデルが前記複数のテンプレートの少なくとも一つと対応している場合に同被検者の神経生理学的活動の分類を生成するために、前記動的モデルの少なくとも一部を前記複数のテンプレートと比較するためにプログラム化されていることと、
からなるシステム。
【請求項2】
前記プロセッサは平均値、分散及び自己相関の定常性の特性を有するプリホワイトニングされた時系列を生成するために前記被検者データの集合を処理するようにプログラム化されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記プロセッサはプリホワイトニングされた時系列を生成するために自己回帰統合移動平均に基づくアルゴリズムを適用するようにプログラム化されている、請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
前記プロセッサはニューロン集団の相互作用を示す複数のセンサからなる複数の群の間の信号の強度及び符号の推定を生成するために、前記被検者データの集合の偏相互相関を計算するようにプログラム化されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記複数のセンサからなる複数の群は複数のセンサかならなる複数の対であり、前記偏相互相関は前記複数のセンサの複数の対の少なくとも部分集合の間の直接信号の強度及び符号の推定を生成するために計算される、請求項4に記載のシステム。
【請求項6】
前記偏相互相関は約50ミリ秒の時間窓内にておこる複数のセンサからなる複数の対の間の直接短期間信号の強度及び符号の推定を生成するために計算される、請求項4に記載のシステム。
【請求項7】
前記偏相互相関は複数のセンサからなる複数の対の間の直接かつほぼ同時である信号の強度及び符号の推定を生成するために計算される、請求項4に記載のシステム。
【請求項8】
前記プロセッサは、年齢、人種、神経生理学的能力又はそれらの任意の組み合わせからなる群より選択される少なくとも一つのパラメータに関して共分散に対する偏相互相関を解析するようにさらにプログラム化されている、請求項4に記載のシステム。
【請求項9】
前記偏相互相関は(a)正の偏相互相関及び(b)負の偏相互相関からなる群より選択される少なくとも一つのタイプを含む、請求項4に記載のシステム。
【請求項10】
前記プロセッサは、分類を生成するために使用される分類関数の集合を生成するために偏相互相関において線形弁別解析を実行するように更にプログラム化されている、請求項4に記載のシステム。
【請求項11】
前記プロセッサは、分類を実施するのに関連のある偏相互相関を構成する偏相互相関の関連部分集合を決定するためにプログラム化されている、請求項10に記載のシステム。
【請求項12】
前記プロセッサは1個抜きアルゴリズムを使用して線形弁別解析を実行するようにプログラム化されており、100%の分類は、関連があると判断される偏相互相関の任意の一つに必要とされる、請求項11に記載のシステム。
【請求項13】
前記プロセッサは、遺伝的アルゴリズムを使用して線形弁別解析を実行するようにプログラム化されている、請求項11に記載のシステム。
【請求項14】
前記プロセッサは、動的モデルを生成するために複数のセンサからなる複数の群の間での信号の強度及び符号の推定に対して閾値関数を適用するように更にプログラム化されている、請求項4に記載のシステム。
【請求項15】
前記被検者の神経生理学的活動の分類は、前記複数のテンプレートのうちの一つのテンプレートに対応する分類関数を、複数のセンサからなる複数の群の間での信号の強度及び符号の推定に適用することを含む、請求項14に記載のシステム。
【請求項16】
前記プロセッサは、被検者の治療投与履歴を表す少なくとも一つの記録に関連したデータ記憶部に動的モデルを記憶するようにプログラム化されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項17】
前記被検者の神経生理学的活動の分類は、複数のテンプレートの少なくとも一つへの一致の程度のインジケータを含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項18】
前記テンプレートの各々は、所与の脳の状態に関連するニューロン集団の間で統計的に有意な時間的尺度のみを表す、請求項1に記載のシステム。
【請求項19】
前記テンプレートの各々は、複数の異なる被検者のニューロン集団の間での時間的尺度の選択された部分集合の組み合わせを表す、請求項1に記載のシステム。
【請求項20】
前記被検者の神経生理学的活動の分類は、複数のテンプレートのうちの第一のテンプレートを備えた動的モデルの第一の一致と、前記複数のテンプレートのうちの、前記第一のテンプレートとは異なる第二のテンプレートを備えた動的モデルの第二の一致と、を表す、請求項1に記載のシステム。
【請求項21】
前記動的モデルは、前記複数のセンサによって検出された同期性ニューロン信号のグルーピングを表す動的ニューロンネットワークに基づいている、請求項1に記載のシステム。
【請求項22】
前記同時ニューロン信号のグルーピングは約1ms内に起こる異なる脳の位置でのシナプス活動により定義されたニューロン信号の対ごとのグルーピングを含む、請求項21に記載のシステム。
【請求項23】
前記プロセッサは、複数のテンプレートのうちの少なくとも一つのテンプレートを備えた動的モデルから選択された情報の部分集合を比較することにより分類を得るようにプログラム化されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項24】
前記プロセッサは分類に基づいた前記複数のテンプレートのうちの少なくとも一つを選択的に更新するようにプログラム化される、請求項1にシステム。
【請求項25】
前記複数のテンプレートは、以下の群:正常な状態、アルツハイマー病、早発性痴呆症候群、軽度認知障害、精神分裂症、シェーグレン症候群、アルコール依存症、アルコール障害、胎児アルコール症候群、多発性硬化症、パーキンソン病、双極性障害、外傷性脳損傷、うつ病、自己免疫異常、神経変性疾患、疼痛、中枢神経系に影響を与える疾病、又はそれらの任意の組み合わせ、からなる群より選択されるニューロン活動の少なくとも一つのタイプと各々が対応している、テンプレートを含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項26】
前記データ入力部は空間的に分配された複数のセンサを有する脳磁図(MEG)機器に通信可能に接続されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項27】
前記センサは、超伝導量子干渉素子(SQUID)センサを含む、請求項26に記載のシステム。
【請求項28】
前記被検者データの集合は約1msの時間分解能におけるデータを含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項29】
前記開眼アイドル状態は、視線固定課題を実施するために被検者への指示により行われる、請求項1に記載のシステム。
【請求項30】
前記被検者データの第一の集合は、約1分以下の開眼アイドル状態活動を含む、請求項29に記載のシステム。
【請求項31】
前記データ入力部はネットワーク通信装置を含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項32】
前記データ記憶部は、少なくとも一つのデータベースを含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項33】
前記プロセッサは、瞬きによるアーチファクト、心臓アーチファクト、骨格筋アーチファクト、又はそれらの任意の組み合わせからなる群より選択される少なくとも一つのアーチファクトを除去するために前記被検者データの集合を処理するようにプログラム化されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項34】
被検者の神経生理学的活動を解析するためのシステムであって、前記システムは、
被検者のニューロン信号を検出すべく配置された空間的に分配された複数のセンサにより得られた神経生理学的活動の時系列を表す被検者データの集合を受信するデータ入力部と、
前記データ入力部に通信可能に連結されるプロセッサと、を含み、前記プロセッサは:
前記被検者の脳のニューロン集団の間での統計的に独立な時間的尺度を表す動的モデルを得るために同被検者データの集合を処理し、かつ
前記被検者の神経生理学的症状を推定するために前記動的脳モデルを解析するべくプログラム化されている、システム。
【請求項35】
前記統計的に独立な時間的尺度は前記被検者の脳のニューロン集団の間でのほぼ同期性相互作用を表す同被検者データの集合内の異なる時系列のグルーピング中での偏相互相関の集合を含む、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記プロセッサは、前記動的脳モデルの少なくとも一部をニューロン活動の異なるモデルと比較するようにプログラム化されており、それにより、比較の結果が前記被検者の神経生理学的状態のインジケータとなる、請求項34に記載の方法。
【請求項37】
前記動的脳モデルは、第一回目に取得された被検者データの集合に基づく同被検者の第一の動的脳モデルであり、ニューロン活動の異なるモデルは第一回目とは異なる第二回目に取得された被検者データの異なる集合から得られた同被検者の第二の動的脳モデルに基づいており、かつ解析されるべくプロセッサがプログラム化された前記被検者の神経生理学的状態は、第一回目と第二回目との間における同被検者の神経生理学における考えられる変化を表す、請求項36に記載のシステム。
【請求項38】
前記比較の結果は、前記被検者の神経生理学における考えられる変化の程度のインジケータとなる、請求項37に記載のシステム。
【請求項39】
前記ニューロン活動の異なるモデルは、少なくとも一人の異なる被検者の動的脳モデルに対応し、かつ解析されるべくプロセッサがプログラム化された前記被検者の神経生理学的状態は、同被検者と前記少なくとも一人の異なる被検者との神経生理学における考えられる差異を表す、請求項36に記載のシステム。
【請求項40】
前記比較は、前記被検者と、同被検者とは異なる少なくとも一人の被検者との間の神経生理学における考えられる差異の程度のインジケータとなる、請求項39に記載のシステム。
【請求項41】
前記ニューロン活動の異なるモデルは、所与の脳状態が存在していることが知られている複数の被検者に対応する同複数の被検者データの集合の各々内において、異なる時系列のグルーピングの中での偏相互相関の複数の集合に基づく動的脳モデルの選択された部分集合を表す神経生理学的状態のテンプレートであり、かつ
解析されるべくプロセッサがプログラム化されている前記被検者の神経生理学的状態は、前記所与の脳状態を備えた被検者が表す程度を表す、請求項36に記載のシステム。
【請求項42】
前記ニューロン活動の異なるモデルは複数の異なるテンプレートを含み、同テンプレートは、
前記第一の脳状態が存在していることが知られている被検者の第一の集合に対応する同被検者データの複数の集合の各々において、異なる時系列のグルーピングの中での偏相互相関の複数の集合に基づく動的脳モデルの選択された部分集合を示す第一のテンプレートと、
前記第一の脳状態とは異なる第二の脳状態が存在していることが知られている被検者の第二の集合に対応する同被検者データの複数の集合の各々において、異なる時系列のグルーピングの中での偏相互相関の複数の集合に基づく動的脳モデルの選択された部分集合を示す第二のテンプレートと、を含み、
前記比較の結果は、前記第一の脳状態と前記第二の脳状態とを備えた被検者が表す程度のインジケータとなる、請求項36に記載のシステム。
【請求項43】
前記被検者の神経生理学的状態は、以下の群:正常な状態、アルツハイマー病、早発性痴呆症候群、軽度認知障害、精神分裂症、シェーグレン症候群、アルコール依存症、アルコール障害、胎児アルコール症候群、多発性硬化症、パーキンソン病、双極性障害、外傷性脳損傷、うつ病、自己免疫異常、神経変性疾患、疼痛、中枢神経系に影響を与える疾病、又はそれらの任意の組み合わせ、からなる群より選択される、請求項34に記載のシステム。
【請求項44】
異なる時系列のグルーピングはセンサの全ての対に対応する時系列の対ごとのグルーピングであり、それにより被検者の脳におけるニューロン集団の間での統計的に独立な時間的尺度は、前記ニューロン集団の対ごとの相互作用を示す複数のセンサの複数の対の間の信号の強度及び符号の推定である、請求項34に記載のシステム。
【請求項45】
請求項34に記載のシステムは、
前記プロセッサに演算可能に接続されるデータ記憶部を更に含み、前記プロセッサは前記被検者の少なくとも一つの治療の投与を示す少なくとも一つのデータ記憶入力と関係して、前記データ記憶部に動的脳モデルを記憶するようにプログラム化されている、システム。
【請求項46】
前記被検者データは、1msの時間分解能でのデータを含む、請求項34に記載のシステム。
【請求項47】
前記被検者データは、開眼アイドル状態時に第一の被検者の神経生理学的活動を表すデータを含む、請求項34に記載のシステム。
【請求項48】
前記神経生理学的活動の時系列を表す前記被検者データは、約1分以下の視線固定活動を含む、請求項47に記載のシステム。
【請求項49】
前記データ入力部は、磁力計及び軸型磁束計からなる群より選択される空間的に分配された複数のセンサを有するMEG機器に通信可能に接続される、請求項34に記載のシステム。
【請求項50】
前記プロセッサは、平均値、分散及び自己相関の定常性の特性を有するプリホワイトニングされた時系列を生成するために被前記験者データを処理するようにプログラム化されている、請求項34に記載のシステム。
【請求項51】
前記プロセッサは、プリホワイトニングされた時系列を生成するために自己回帰統合移動平均に基づくアルゴリズムを適用するようにプログラム化されている、請求項50に記載のシステム。
【請求項52】
前記プロセッサは、統計的に独立な時間的尺度の集合について線形弁別解析を実行するためにプログラム化されている、請求項34に記載のシステム。
【請求項53】
第一の被検者の神経生理学的活動を解析するためのシステムであって、前記システムは:
視覚視線固定課題に対応する脳活動データの集合を受信するデータ入力部であって、各集合が対応する被検者のニューロン信号を検出するために配置された空間的に分配された複数のセンサによって得られた神経生理学的活動の時系列を表す、データ入力部と、
前記データ入力部に通信可能に接続されるプロセッサと、を含み;前記プロセッサは、
前期第一の被検者のニューロン集団の間での時間依存的な結合を表すニューロン活動の対応する動的モデルを生成するために脳活動データの各集合を処理するためにプログラム化されており:
平均、分散及び自己相関の定常性の特性を有するプリホワイトニングされた時系列を生成するために脳活動データを処理することと;
ニューロン集団の対ごとの相互作用を表す複数のセンサの複数の対の間における信号の強度及び符号の推定を生成するためにプリホワイトニングされた時系列の対ごとの偏相互相関を計算することと;
複数の異なる神経生理学的症状に対応するバリデーションされた参照データに対して脳活動データの相関関係の尺度を生成するために偏相互相関の分類を実行することと、を含むシステム。
【請求項54】
前記複数の異なる神経生理学的状態は、以下の群:正常な状態、アルツハイマー病、早発性痴呆症候群、軽度認知障害、精神分裂症、シェーグレン症候群、アルコール依存症、アルコール障害、胎児アルコール症候群、多発性硬化症、パーキンソン病、双極性障害、外傷性脳損傷、うつ病、自己免疫異常、神経変性疾患、疼痛、中枢神経系に影響を与える疾病、又はそれらの任意の組み合わせ、からなる群より選択される少なくとも二つの状態を含む、請求項53に記載のシステム。
【請求項55】
前記プロセッサは、プリホワイトニングされた時系列を生成するために自己回帰統合移動平均に基づくアルゴリズムを適用するようにプログラム化されている、請求項53に記載のシステム。
【請求項56】
前記偏相互相関は約50ミリ秒の時間窓内にておこる複数のセンサからなる複数の対の間の直接短期間信号の強度及び符号の推定を生成するために計算される、請求項53に記載のシステム。
【請求項57】
前記偏相互相関は複数のセンサからなる複数の対の間の直接かつほぼ同時である信号の強度及び符号の推定を生成するために計算される、請求項53に記載のシステム。
【請求項58】
前記プロセッサは、(a)前記プリホワイトニングされた時系列の偏相互相関の正の偏相互相関及び(b)前記プリホワイトニングされた時系列の偏相互相関の負の偏相互相関からなる群より選択される少なくとも一つのタイプの偏相互相関を、共分散について解析するために更にプログラム化されている、請求項53に記載のシステム。
【請求項59】
前記プロセッサは、前記ニューロン活動の第一の動的モデルを生成するために複数のセンサの複数の対の間の信号の強度及び符号の推定に対する閾値関数を適用するように更にプログラム化されている、請求項53に記載のシステム。
【請求項60】
前記プロセッサは分類を実行するのに関連のある偏相互相関を構成する偏相互相関の関連部分集合を決定するためにプログラム化されている、請求項53に記載のシステム。
【請求項61】
前記プロセッサは1個抜きアルゴリズムを使用して線形弁別解析を実行するようにプログラム化されており、100%の分類は、関連があると判断される偏相互相関の任意の一つに必要とされる、請求項60に記載のシステム。
【請求項62】
前記プロセッサは、遺伝的アルゴリズムを使用して線形弁別解析を実行するようにプログラム化されている、請求項60に記載のシステム。
【請求項63】
前記プロセッサは、分類に基づく神経生理学的テンプレートを開発するためにプログラム化されている、請求項53に記載のシステム。
【請求項64】
被検者の脳の神経生理学的活動を自動的に分類するための方法であって、前記方法は:
開眼アイドル状態時に被検者のニューロン信号を検出すべく配置された空間的に分配された複数のセンサにより得られた神経生理学的活動の時系列を表す被検者データの集合をデータ処理システムによって受信する工程と、
前記被検者のニューロン集団の中から統計的に独立な時間的尺度を表す動的モデルを得るために前記被検者データの集合を、データ処理システムによって処理する工程と、
種々の脳の症状に従って分類されたテンプレートの集合をデータ処理システムによって維持する工程であって、前記テンプレートの各々は所与の脳の症状を示すことが知られている少なくとも一人のその他の被検者から測定されたニューロン集団の間にて統計的に独立な時間的尺度の選択された部分集合を表す、工程と、
前記動的モデルが前記複数のテンプレートの少なくとも一つと対応する場合に、前記被検者の神経生理学的活動の分類を生成するために前記動的モデルの少なくとも一部を前記複数のテンプレートと、データ処理システムによって比較する工程と、
からなる方法。
【請求項65】
請求項64に記載の方法は、平均値、分散及び自己相関の定常性の特性を有するプリホワイトニングされた時系列を生成するために、被検者データの集合を処理する工程を更に含む、方法。
【請求項66】
前記プリホワイトニングされた時系列を生成するために前記被検者データの集合を処理する工程は、プリホワイトニングされた時系列を生成するために、自己回帰統合移動平均に基づくアルゴリズムを適用する工程を含む、請求項65に記載の方法。
【請求項67】
動的モデルを得るために前記被検者データの集合を処理する工程は、ニューロン集団の相互作用を表す複数のセンサの複数の群の間の信号の強度及び符号の推定を生成するために、同被検者データの集合の偏相互相関を計算する工程を含む、請求項64に記載の方法。
【請求項68】
前記被検者データの集合の偏相互相関を計算する工程は、複数のセンサからなる複数のセンサ対の間にて信号の強度及び符号の推定を生成する工程を含む、請求項67に記載の方法。
【請求項69】
前記被検者データの集合の偏相互相関を計算する工程は、約50ミリ秒の時間窓内にておこる複数のセンサの複数の対の間にて信号の強度及び符号の推定を生成する工程を含む、請求項67に記載の方法。
【請求項70】
前記被検者データの集合の偏相互相関を計算する工程は、複数のセンサからなる複数の対の間にて直接かつほぼ同時に起こる信号の強度及び符号の推定を生成する工程を含む、請求項67に記載の方法。
【請求項71】
請求項67に記載の方法は、年齢、人種、神経生理学的能力、又はそれらの任意の組み合わせからなる群より選択される少なくとも一つのパラメータに関する共分散に対して偏相互相関を解析する工程を更に含む、方法。
【請求項72】
前記被検者データの集合の偏相互相関を計算する工程は、(a)正の偏相互相関及び(b)負の偏相互相関からなる群より選択される少なくとも一つの偏相互相関のタイプを生成する、請求項67に記載の方法。
【請求項73】
請求項67に記載の方法は、分類関数の集合を生成するために偏相互相関における線形弁別解析を実行する工程と、分類を生成するために分類関数を利用する工程と、を更に含む、方法。
【請求項74】
請求項73に記載の方法は、分類を実行するのに関連のある所与の偏相互相関を構成する複数の偏相互相関の関連のある部分集合を決定する工程を更に含む、方法。
【請求項75】
前記線形弁別解析を実行する工程は1個抜きアルゴリズムを使用する工程を含み、100%の分類は、関連があるとみなされる偏相互相関の任意の一つに対して必要とされる、請求項74に記載の方法。
【請求項76】
前記線形弁別解析を実行する工程は、偏相互相関の部分集合を選択するために遺伝的アルゴリズムを使用する工程を含む、請求項74に記載の方法。
【請求項77】
請求項67に記載の方法は、動的モデルを生成するために、複数のセンサからなる複数の群の間にて信号の強度及び符号の推定を閾値関数に適用する工程を更に含む、方法。
【請求項78】
分類を生成するための比較は、複数のテンプレートのうちの一つのテンプレートに対応する分類関数を、複数のセンサからなる複数の群の間での信号の強度及び符号の推定に、適用する工程を含む、請求項67に記載の方法。
【請求項79】
請求項64に記載の方法は、データ処理システムにより、被検者の治療投与履歴を表す少なくとも一つの記録を、前記動的モデルと関連付ける工程を更に含む、方法。
【請求項80】
前記動的モデルの少なくとも一部を前記複数のテンプレートと比較する工程は、同複数のテンプレートの少なくとも一つへの一致の程度のインジケータを生成する、請求項64に記載の方法。
【請求項81】
前記テンプレートの各々は、所与の脳状態に関連するニューロン集団の間での統計的に有意な時間的尺度のみを表し、かつ
前記動的モデルの少なくとも一部を前記複数のテンプレートと比較する工程は、前記動的モデルの異なる部分集合を各テンプレートと比較する工程を含む、請求項64に記載の方法。
【請求項82】
請求項64に記載の方法は前記テンプレートの各々を作製する工程を更に含み、各テンプレートは複数の異なる被検者のニューロン集団の中から選択された時間的尺度の部分集合の組み合わせを表す、方法。
【請求項83】
前記動的モデルの少なくとも一部を前記複数のテンプレートと比較する工程は、前記被検者の神経生理学的活動の分類を生成し、それにより、前記複数のテンプレートのうちの第一のテンプレートを備えた前記動的モデルの第一の一致と、前記複数のテンプレートのうちの前記第一のテンプレートとは異なる第二のテンプレートを備えた前記動的モデルの第二の一致とを表す、請求項64に記載の方法。
【請求項84】
前記動的モデルを得るために前記被検者データの集合を処理する工程は、前記複数のセンサによって検出された同期ニューロン信号のグルーピングを表す動的ニューロンネットワークを生成することを含む、請求項64に記載の方法。
【請求項85】
前記動的ニューロンネットワークを生成する工程は、約1ms内にて起こる異なる脳の位置におけるシナプス活動により定義されるニューロン信号の対ごとのグルーピングを含む同時ニューロン信号のグルーピングを表すことを含む、請求項84に記載の方法。
【請求項86】
請求項64に記載の方法は、分類に基づいて前記複数のテンプレートの少なくとも一つを更新する工程を更に含む、方法。
【請求項87】
前記テンプレートの集合を維持する工程は、以下の群:正常な状態、アルツハイマー病、早発性痴呆症候群、軽度認知障害、精神分裂症、シェーグレン症候群、アルコール依存症、アルコール障害、胎児アルコール症候群、多発性硬化症、パーキンソン病、双極性障害、外傷性脳損傷、うつ病、自己免疫異常、神経変性疾患、疼痛、中枢神経系に影響を与える疾病、又はそれらの任意の組み合わせ、からなる群より選択される少なくとも一つのニューロン活動の型に各々が対応する複数のテンプレートを維持する工程を含む、請求項64に記載の方法。
【請求項88】
請求項64に記載の方法は、前記被検者データの集合を含む、脳磁図を得る工程を更に含む、方法。
【請求項89】
前記脳磁図を得る工程は、1msまでのサンプリング間隔を用いてデータをサンプリングする工程を含む、請求項88に記載の方法。
【請求項90】
データ処理システムを使用して、構造的若しくは神経化学的な脳の病状の神経生理学的評価を自動的に得るための方法であって、前記方法は、
被検者の脳のニューロン信号を検出するべく配置された空間的に分配された複数のセンサの各々によって得られた神経生理学的活動の時系列を表す脳データの集合を得る工程と、
前記被検者の脳におけるニューロン集団の間で統計的に独立な時間的尺度を表す動的脳モデルを得るために前記脳データの集合を処理する工程と、
前記脳の神経生理学的評価を得るために前記動的脳モデルを解析する工程と、
からなる方法。
【請求項91】
前記統計的に独立な時間的尺度を得るために前記脳データの集合を処理する工程は、同脳データの集合内の異なる時系列のグルーピング中の偏相互相関の集合を計算する工程を含み、それにより、前記動的脳モデルは、接近した時間にておこる脳のニューロン集団の間での相互作用を表す、請求項90に記載の方法。
【請求項92】
前記脳データの集合を処理する工程は、異なる時系列のグルーピングが全てのセンサ対に対応する時系列の対ごとのグルーピングである、偏相互相関の集合に基づく動的脳モデルを得る工程を含み、それにより、前記偏相互相関の集合は、ニューロン集団の間での対ごとの相互作用を表す複数のセンサからなる複数の対の間での信号の強度及び符号の推定である、請求項91に記載の方法。
【請求項93】
前記動的脳モデルを解析する工程は、前記動的脳モデルの少なくとも一部を少なくとも一つの異なるニューロン活動のモデルと比較する工程を含み、それにより比較の結果は、前記脳の神経生理学的状態のインジケータとなる、請求項90に記載の方法。
【請求項94】
前記脳データの集合は第一の時間に取得され、かつ前記方法は、
前記第一の時間とは異なる第二の時間に脳データの別の集合を得る工程と、
脳データのその他の集合の処理に基づいてニューロン活動の少なくとも一つの異なるモデルを得る工程であって、同脳データのその他の集合は同じ脳に対応する、工程と、を更に含み、
前記動的脳モデルを解析する工程は前記比較に基づいて、前記第一の時間と前記第二の時間との間の脳の神経生理学における考えられる変化を検出する、請求項93に記載の方法。
【請求項95】
前記動的脳モデルを解析する工程は、脳の神経生理学における考えられる変化の程度のインジケータとなる結果を生成する、請求項94に記載の方法。
【請求項96】
請求項93に記載の方法は、
少なくとも一つのその他の脳から脳データの別の集合を得る工程と、前記その他の脳データの集合の処理に基づいてニューロン活動の少なくとも一つの異なるモデルを得る工程と、を更に含み、かつ
前記動的脳モデルを解析する工程は、前記脳と前記少なくとも一つの別の脳との間の神経生理学における考えられる差異を検出する工程を含む、方法。
【請求項97】
前記動的脳モデルを解析する工程は、前記脳と前記少なくとも一つの別の脳との間の神経生理学における考えられる差異の程度のインジケータである結果を生成する工程を含む、請求項96に記載の方法。
【請求項98】
請求項93に記載の方法は更に、
ニューロン活動の少なくとも一つの異なるモデルに基づいて神経生理学的状態のテンプレートを作製する工程を含み、前記動的脳モデルの選択された部分集合は、所与の脳の状態に対応する複数の脳データの集合の各々内において異なる時系列の複数のグルーピング中の偏相互相関の集合に基づいて表され、かつ
前記動的脳モデルを解析する工程は、前記脳が前記所与の脳の状態に対応する程度を計算する工程を含む、方法。
【請求項99】
前記動的脳モデルの少なくとも一部を少なくとも一つの異なるモデルと比較する工程は、前記動的脳モデルを複数の異なるテンプレートと比較する工程を含み、前記異なるテンプレートは、
第一の脳の状態に対応する脳のデータの複数の集合の各々内の異なる時系列のグルーピングの間の偏相互相関の集合に基づく動的脳モデルの選択された部分集合を表す第一のテンプレートと、
前記第一の脳の状態とは異なる第二の脳の状態に対応する脳のデータの複数の集合の各々内の異なる時系列のグルーピングの間の偏相互相関の集合に基づく動的脳モデルの選択された部分集合を表す第二のテンプレートと、を含み、
前記比較の結果は、前記脳が第一の脳の状態及び前記第二の脳の状態に対応する程度のインジケータとなる、請求項93に記載の方法。
【請求項100】
前記脳の神経生理学的評価を得るために前記動的脳モデルを解析する工程は、以下の群:正常な状態、アルツハイマー病、早発性痴呆症候群、軽度認知障害、精神分裂症、シェーグレン症候群、アルコール依存症、アルコール障害、胎児アルコール症候群、多発性硬化症、パーキンソン病、双極性障害、外傷性脳損傷、うつ病、自己免疫異常、神経変性疾患、疼痛、中枢神経系に影響を与える疾病、又はそれらの任意の組み合わせ、からなる群より選択される評価を得る工程を含む、請求項90に記載の方法。
【請求項101】
請求項90に記載の方法は、前記脳が罹患する可能性のある少なくとも一つの療法の投与を表す少なくとも一つの記録を前記脳モデルと関係付ける工程を更に含む、方法。
【請求項102】
前記脳データを得る工程は、静止した視覚刺激を受けつつ脳がアイドル状態にある間に約1msの時間分解能にてサンプリングされたデータを得る工程を含む、請求項90に記載の方法。
【請求項103】
請求項90に記載の方法は、平均値、分散及び自己相関の定常性の特性を有するプリホワイトニングされた時系列を生成するために前記脳データを処理する工程を更に含む、方法。
【請求項104】
請求項103に記載の方法は、プリホワイトニングされた時系列を生成するために自己回帰統合移動平均に基づくアルゴリズムを適用する工程を更に含む、方法。
【請求項105】
請求項90に記載の方法は、前記被検者の脳におけるニューロン集団の間での統計的に独立な時間的尺度における線形弁別解析を実行する工程を更に含む、方法。
【請求項106】
データ処理システムを使用して、構造的若しくは神経化学的な脳の病状の神経生理学的な評価の自動的な取得を促進するための方法であって、前記方法は、
被検者の脳のニューロン信号を検出するべく配置された空間的に分配された複数のセンサの各々によって得られた神経生理学的活動の時系列を表す脳データの集合を得ることと、
前記データ処理システムへ前記脳データの集合を提供することと、
の指示を与える工程と、
前記被検者の脳の神経生理学的評価を受信する工程と、を含み、
前記神経生理学的評価は、前記被検者の脳のニューロン集団の間での統計的に独立な時間的尺度に基づく動的脳モデルを開発し、かつ前記脳の神経生理学的評価を得るために前記動的脳モデルを解析するデータ処理システムを用いて前記脳データの集合を処理することに基づくことと、前記動的脳モデルは時間的に近接して起こる脳のニューロン集団の間での相互作用を表すことと、からなる方法。
【請求項107】
データ処理システムを使用して構造的または神経化学的な脳の病状の神経生理学的評価の自動的な取得を促進するための方法であって、前記方法は、
被検者の脳のニューロン信号を検出すべく配置された空間的に分配された複数のセンサの各々によって得られる神経生理学的活動の時系列を表す脳データの集合を得るための指示を提供する工程と、
前記データ処理システムを使用して、前記被検者の脳のニューロン集団の間での統計的に独立な時間的尺度に基づいて動的脳モデルを得るべく前記脳データの集合を処理し、かつ前記脳の神経生理学的評価を得るために前記動的脳モデルを解析する工程と、を含み、
前記動的脳モデルは時間的に近接して起こる脳のニューロン集団の間での相互作用を表す、方法。
【請求項108】
コンピュータ読み取り可能な媒体であって、前記媒体は、
コンピュータシステムに、
被検者の脳におけるニューロン信号を検出すべく配置された空間的に分配された複数のセンサの各々によって得られる神経生理学的活動の時系列を表す被検者データの集合を受信させ、前記被検者の脳のニューロン集団の間で統計的に独立な時間的尺度を表す動的脳モデルを得るために前記被検者データの集合を処理させ、かつ前記被検者の神経生理学的な状態を推定するべく前記動的脳モデルを解析させる、ように適合された指示を含む、媒体。
【請求項109】
被検者の神経生理学的活動を解析するためのシステムであって、前記システムは、
前記被検者のニューロン信号を検出すべく配置された空間的に分配された複数のセンサの各々によって得られる神経生理学的活動の時系列を表す被検者データの集合を得るデータ源と、
前記データ源に通信可能に接続されるプロセッサであって、
前記被検者の脳のニューロン集団の間で統計的に独立な時間的尺度を表す動的脳モデルを得るために前記被検者のデータの集合を処理し、かつ前記被検者の神経生理学的状態を推定するために前記動的脳モデルを解析するべくプログラム化されているプロセッサと、を含む、システム。

【図2A】
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【図2B】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【図5A】
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【図5B】
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【図5C】
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【図6】
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【図7】
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【図8A】
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【図8B】
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【図9A】
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【図9B】
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【図10】
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【図11】
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【図12A】
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【図12B】
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【図13】
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【図14】
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【図1】
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【公表番号】特表2009−542351(P2009−542351A)
【公表日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−518378(P2009−518378)
【出願日】平成19年7月6日(2007.7.6)
【国際出願番号】PCT/US2007/015545
【国際公開番号】WO2008/005513
【国際公開日】平成20年1月10日(2008.1.10)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.WINDOWS
2.イーサネット
【出願人】(509007067)リージェンツ オブ ザ ユニバーシティ オブ ミネソタ (1)
【氏名又は名称原語表記】REGENTS OF THE UNIVERSITY OF MINNESOTA
【Fターム(参考)】