普通型コンバイン
【課題】菜種などの絡み付きの強い作物を能率よく円滑に収穫できる普通型コンバインを提供する。
【解決手段】横向き姿勢で植立作物を刈り取る主刈取り装置63と、主刈取り装置63の上方側位置で回動させて植立作物を掻き込み操作するリール式掻き込み装置64とを備え、主刈取り装置63によって刈り取られた作物の全体を投入して脱穀及び選別処理する脱穀装置を備えた普通型コンバインにおいて、主刈取り装置63の刈取作用域における横側端部位置に、縦向き姿勢で植立作物を切断する副刈取り装置7を設け、リール式掻き込み装置64を上下移動可能に構成するとともに、リール式掻き込み装置64における回転中心位置zの昇降移動軌跡Sを、下降するほど機体前方に位置するように、機体側方視で副刈取り装置7に対して傾斜設定してある。
【解決手段】横向き姿勢で植立作物を刈り取る主刈取り装置63と、主刈取り装置63の上方側位置で回動させて植立作物を掻き込み操作するリール式掻き込み装置64とを備え、主刈取り装置63によって刈り取られた作物の全体を投入して脱穀及び選別処理する脱穀装置を備えた普通型コンバインにおいて、主刈取り装置63の刈取作用域における横側端部位置に、縦向き姿勢で植立作物を切断する副刈取り装置7を設け、リール式掻き込み装置64を上下移動可能に構成するとともに、リール式掻き込み装置64における回転中心位置zの昇降移動軌跡Sを、下降するほど機体前方に位置するように、機体側方視で副刈取り装置7に対して傾斜設定してある。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水平方向に沿う横向き姿勢で植立作物を刈り取る主刈取り装置と、主刈取り装置の上方側位置で掻き込み用のタインを回動させて刈取り対象の植立作物を掻き込み操作するリール式掻き込み装置とを備え、主刈取り装置によって刈り取られた作物の全体を投入して脱穀及び選別処理する脱穀装置を備えた普通型コンバインに関する。
【背景技術】
【0002】
上記の普通型コンバインにおいては、稲麦などのように条列をなして植付けられた作物の他に、菜種やひまわりなどのように条列をなさずに植付けられた作物を収穫対象とすることがあり、従来では下記(1),(2)に記載の構造のものが知られている。
【0003】
(1)植付け作物の頂部側を掻き込みリールで掻き込んで、作物の根本側を切断装置で切断して刈り取り、刈り取った作物の全体を後方の脱穀装置に送り込むように構成するとともに、刈取対象の作物と未刈側の作物との絡み付きは分草具で押し分け分離させるように構成したもの(特許文献1参照)。
【0004】
(2)前端側の刈取り装置を持ち上げ姿勢にして、作物の頂部近くで作物(ひまわり)の花托を切断して収穫し、圃場に残る残茎稈は地面近くに位置する後方側の刈取り装置で切断して圃場へ刈倒し、刈取り対象の作物と未刈側の作物との絡み付きは分草具で押し分け分離させるように構成したもの(特許文献2参照)。
【0005】
【特許文献1】特開2005−211043号公報
【特許文献2】特開2007−89464号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
稲麦は作物同士の絡みつきがあまり強くないので、上記従来手段のように、刈取り対象の作物と未刈側の作物と絡み付きは、機体前進に伴う分草具による押し分け作用によって比較的容易に分離することができるのであるが、菜種などの絡みつきの強い作物の収穫においては、刈取り対象の作物と未刈側の作物とを分草具で押し分け分離すると、穂切れ、脱粒、未刈り作物の引き抜き、などの不具合が発生しやすい。このような不具合を少なくするためには、機体前進速度を遅くして分草具による押し分け分離作用を抑制する必要があり、高速走行による能率的な収穫を行えなくなるものであった。
【0007】
本発明は、このような点に着目してなされたものであって、菜種などの絡み付きの強い作物でも能率よく円滑に収穫できるようにすることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、水平方向に沿う横向き姿勢で植立作物を刈り取る主刈取り装置と、主刈取り装置の上方側位置で掻き込み用のタインを回動させて刈取り対象の植立作物を掻き込み操作するリール式掻き込み装置とを備え、主刈取り装置によって刈り取られた作物の全体を投入して脱穀及び選別処理する脱穀装置を備えた普通型コンバインであって、
主刈取り装置の刈取作用域における横側端部位置に、上下方向に沿う縦向き姿勢で植立作物を切断する副刈取り装置を設け、
リール式掻き込み装置を上下移動可能に構成するとともに、このリール式掻き込み装置における回転中心位置が下降するほど機体前方に位置するように、回転中心位置の昇降移動軌跡を、機体側方視で副刈取り装置に対して傾斜設定してあることを特徴とする。
【0009】
上記構成によると、主刈取り装置の刈取り作用域に導入された刈取り対象作物と未刈り作物とが強く絡まっているような場合でも、主刈取り装置の刈取り作用域における横側端部位置に配備した副刈取り装置により、絡まった作物を切断して左右に分離することで、副刈取り装置よりも主刈取り装置側にある作物を円滑に刈取り作用域に取り込むことができ、分草具による無理な押し分け分離に見られるような穂切れ、脱粒、引き抜きなどを極力少なくしながら所望の走行速度で円滑に収穫作業を行うことができる。
【0010】
植立作物の倒伏具合や稈長などに応じてリール式掻き込み装置を高さ変更することで、好適な掻き込みを行うことができる。例えば、植立作物が充分に起立しているような場合には、リール式掻き込み装置を高く高さ設定することで、植立作物の穂先側を上方後方において脱粒少なく掻き込むことができる。前方に大きく倒伏している植立作物が多い場合には、リール式掻き込み装置を低く高さ設定することで、前方に大きく倒伏している植立作物を早期のうちに後方へ掻き込んで主刈取り装置で刈り取ることができ、前方に大きく倒伏したまま刈り取って地上に落としてしまうようなことを回避することができる。
【0011】
本発明は、リール式掻き込み装置における回転中心位置の昇降移動軌跡を、機体側方視で副刈取り装置の後方側に配置したり、リール式掻き込み装置における回転中心位置の昇降移動軌跡を、機体側方視で副刈取り装置と交差配置したり、あるいは、リール式掻き込み装置における回転中心位置の昇降移動軌跡を、機体側方視で副刈取り装置の前方側に配置するように設定することで、作物の種類、稈長、倒伏具合、などの作物条件に対して好適な掻き込みを行いながら、作物同士の絡みを無理なく切断分離して円滑な刈取り収穫を行うことが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態を図面の記載に基づいて説明する
〔全体構成〕
図1〜図3に、本発明に係る普通型コンバインの全体側面と全体平面がそれぞれ示されている。この普通型コンバインは、作物同士の絡みつきの強い菜種などの作物の収穫に好適な仕様に構成されたものであって、機体フレーム10を左右一対のクローラ走行装置11に搭載して自走機体1が構成されている。自走機体1に、運転座席20を装備した搭乗運転部2と、運転座席20の下方に位置してエンジン30が装備された原動部3と、作物を脱穀及び選別処理する脱穀装置4と、脱穀選別された作物粒を袋詰め回収する袋詰め装置13とが搭載設置されている。
【0013】
自走機体1の機体前方側には、刈取り前処理装置6を前端に連結したフィーダ60が、フィーダ60の後端部の横軸心x周りで昇降揺動自在に連結されており、これらの各装置の組み合わせによって、刈取り前処理装置6で刈り取られた作物の全体をフィーダ60を介して脱穀装置4に供給して脱穀処理する普通型コンバインが構成されている。
【0014】
〔脱穀系の構成〕
脱穀装置4は、供給された作物を機体前後向きの軸芯周りに回動する軸流型の扱胴40によって脱穀処理し、脱穀処理物を作物粒と排稈とに選別処理し、作物粒を袋詰め装置13の貯留ホッパ14に揚送供給するように構成されており、脱穀処理を経た排稈などは、自走機体1の後方に落下放出されるようになっている。図2における符号15は、機体フレーム10の横外側端に連結された補助デッキであり、機体横外方に水平に張り出した使用姿勢と、略鉛直に起立させた格納姿勢とに切換え揺動可能に支持されている。
【0015】
〔刈取り系の構成〕
刈取り前処理装置6には、プラットホーム61Aと、プラットホーム61Aの左右端に続く縦壁状の側壁61Dとを備えた前処理フレーム61が設けられており、側壁61Dの前部に左右一対のデバイダ62がそれぞれ装備されるとともに、左右の側壁61Dの下部間に亘ってバリカン型の主刈り取装置63が横架配備され、未刈り側となる機体左方の側壁61Dの前部横外側に、後述する副刈取り装置7が縦向き姿勢で配備されている。
【0016】
主刈取り装置63は、横架された刈刃支持フレーム61Bに連結固定された固定刃63Aと、固定刃63Aに対して左右に往復摺動する可動刃63Bとを組み合わせたバリカン型に構成されている。
【0017】
主刈取り装置63の上方に位置して、植立作物の上端側を前処理フレーム61の後方側に掻き込むように回転するリール式掻き込み装置64が配備される、前処理フレーム61におけるプラットホーム61Aの後部上方に搬送用オーガ65が横架配備されて、主刈取り装置63で刈り取られてプラットホーム61Aに掻き込まれた作物が、搬送用オーガ65によってフィーダ60の前側に搬送され、フィーダ60の前側に位置した作物が、搬送用オーガ65に一体回転自在に備えられた掻き込み杆65aによってフィーダ60へ送り込まれるように構成されている。
【0018】
フィーダ60は前後端が開口された角筒状に構成されており、フィーダ60の内部に設置されたチェーン式のフィーダコンベヤ60aによって搬送用オーガ65から供給される作物をフィーダ60の後端出口側に掻き揚げ搬送して、フィーダ60の後端出口から脱穀装置4に作物の全体を供給するよう構成されている。フィーダ60は、機体フレーム10との間に介装したリフトシリンダ12の作動により、前記横軸心x周りで前端側を昇降揺動自在に支持されており、フィーダ60を上下させることで刈取り前処理装置6の作業高さを任意に変更できるようになっている。
【0019】
リール式掻き込み装置64は、側方視で正五角形に形成された回転枠64hの各頂部に作物掻き込み用のタイン64bを自転駆動可能に軸支した周知の構造のものが採用されており、後述する刈取り入力軸66からベルト伝動機構64cを介して入力される動力により回転枠64hを掻き込み方向に回転駆動するとともに、これに同調してタイン64bを逆方向に自転駆動することで、タイン64bを常に下方に向けた状態で機体前方側から後方側へ円弧状の掻き込み移動軌跡Tをもって作動させるよう構成されている。
【0020】
リール式掻き込み装置64は、図12に示すように、前処理フレーム61の後端上部に横向き支点y周りに上下揺動可能に支持されたリール支持杆64dの前部に支持されており、リール支持杆64dの長手方向にスライドして前後移動可能なサドル64eにリール駆動軸64aが支持されて、サドル64eの位置変更操作を行うことによってリール駆動軸64aの回転軸心位置zを前後に位置変更できるよう構成されている。リール支持杆64dに対するサドル64eの位置固定は、リール支持杆64dを貫通する前後一対の止め孔64fのいずれかに対して止めピン64gを挿入して行うことができるようになっている。リール支持杆64dと前処理フレーム61側の固定位置とに亘って油圧シリンダ64iが架設され、油圧シリンダ64iを伸縮させることでリール式掻き込み装置64を任意に昇降して掻き込み作用高さを変更することが可能となっている。前処理フレーム61の上面に、リール支持杆64dを接当支持してリール支持杆64dの下降限度を規制するストッパボルト64jが備えられており、ストッパボルト64jのねじ込み調節によって、リール式掻き込み装置64の下降限界高さを微調節できるようになっている。
【0021】
リール式掻き込み装置64が下降されるほど回転軸心位置zが前方に移動するように、リール駆動軸64aの回転中心位置zの昇降移動軌跡Sは、起立配備された副刈取り装置7の後方側において、副刈取り装置7に対して側方視で傾斜配置され、リール式掻き込み装置64が下降限界にあると、回転中心位置zが側方視で副刈取り装置7と略重複し、リール式掻き込み装置64が上昇限界にあると、回転中心位置zが側方視で副刈取り装置7よりも高く位置するように設定されている。
【0022】
リール式掻き込み装置64の高さの変更は、作物の種類、作物の稈長、作物の倒伏具合等の刈取り作業情況に対応して行われるものであり、作物の倒伏が大きいほどリール式掻き込み装置64を前方下方に移動して、早い目の掻き込みを行う。
【0023】
図12に示すように、リール式掻き込み装置64を大きく下降させた場合のタイン64bの掻き込み移動軌跡T(d)は、機体側方視で前処理フレーム61における側壁61Dと大きく重複し、地上近くまで倒伏した作物を左右の側壁61Dの間に洩らすことなく掻き込むことができる。リール式掻き込み装置64を上昇させた場合のタイン64bの掻き込み移動軌跡T(u)は、機体側方視で側壁61Dより上方に離れ、起立した作物の高部を後方に掻き込んで主刈取り装置63に導き切断し、プラットホーム61Aに円滑に送り込むことができる。
【0024】
リール式掻き込み装置64を大きく上昇させると、前処理フレーム61における側壁61Dの上面とリール支持杆64dとの間が大きく空いて、運転作業者が側壁61Dの上面とリール支持杆64dとの間の空隙を通して未刈り地側を見通しやすいものとなる。
【0025】
プラットホーム61Aの下側の左右両端近くに左右一対のソリ体56が突設され、刈取り前処理装置6が下降された場合に、ソリ体56を接地させて刈取り前処理装置6の下降を規制して、刈取り前処理装置6の前端部が地面に突入することが回避されるようになっている。ソリ体56は、底面、前後面、および、左右側面を備えた横長の中空箱状に構成されており、下降された刈取り前処理装置6およびフィーダ60の重量を、左右のソリ体56の大きい接地面積で確実かつ安定良くに接地支持することができるとともに、ソリ体56が接地された状態で機体が操向されて、刈取り前処理装置6が横方向に引きずられても、ソリ体56内に土が入り込んで付着滞留しない構造となっている。
【0026】
プラットホーム61Aの前端は主刈取り装置63の後端に近接して配置される、プラットホーム61Aの前端には山形に隆起する案内枠61eがプラットホーム61Aの全幅に亘って設けられ、プラットホーム61Aに導かれた刈取り作物が前方にこぼれ出ることが抑制されるようになっている。
【0027】
リール式掻き込み装置64よりも後方側で、搬送用オーガ65よりも上方のフィーダ60の入り口近くでは、後方上方側へ向けて飛散防止板9が設けられている。飛散防止板9は、図11に示すように、後傾姿勢の後面部90と左右両側の側面部91とでチャンネル状に形成されている。後面部90と左右両側の側面部91とのチャンネル状の形状は、後面部90及び側面部91の上縁部分に沿うチャンネル状の上縁枠部分と上縁枠部分を支える上下向きの支え板部分とで構成された枠体92と、枠体92の内側に張設されたゴム垂れ93とで構成されている。
【0028】
飛散防止板9は、搭乗運転部2での操縦操作、あるいは前方を覗き込む際に、飛散防止板9の後方上方から覗き込む際の視野を極力狭めないように工夫しながら、前方側から跳ね上げられた菜種などを受け止めて、前方側に流下させ、フィーダ60の送り込み経路に戻すように構成されている。
【0029】
飛散防止板9は、地上に刈り取り放置された作物を拾い上げてゆくピックアップ作業を行う際に収穫物の飛散防止を行う上で有効に利用し得るものであるが、通常の刈取り作業では、特に必要のない場合が多いので取り外すことも可能であるように、前処理フレーム61に対して着脱自在となっている。
【0030】
〔伝動系の構成〕
図4に、エンジン30の動力をクローラ走行装置11、および、機体フレーム10の各装置に対する動力伝達系が示されている。図4に示すように、クローラ走行装置11に対する伝動機構は、エンジン30の出力軸30aから取り出された動力の一部が、ベルト伝動機構21を介して静油圧式無段変速装置(HST)からなる主変速装置22の入力軸22aに伝達される。主変速装置22の出力軸22bから取り出された変速動力が、ミッションケース23に入力されて、ミッションケース23の図示されていない副変速機構で更に複数段にギヤ変速され、変速動力が左右一対のクローラ走行装置11,11に伝達されるようになっている。
【0031】
主変速装置22は、入力軸22aをポンプ軸とする可変容量形の油圧ポンプ22Pと、油圧ポンプ22Pからの圧油によって正逆に無段変速駆動される定変容量形の油圧モータ22Mとで構成されており、前後進を無段変速で行うことができるようになっている。
【0032】
脱穀装置4に対する伝動機構は、エンジン30の出力軸30aから取り出された動力の一部が、ベルト伝動機構31を介して脱穀装置4の唐箕駆動軸41の一端側に伝達され、唐箕駆動軸41の他端側から取り出された動力が、ベルト伝動機構42を介して脱穀装置4の一番スクリューコンベヤ43と二番スクリューコンベヤ44とに伝達され、ベルト伝動機構42に備えた動力取り出し軸45から取り出された動力が、ベルト伝動機構46を介して脱穀装置4の選別装置駆動軸47に伝達されるようになっている。
【0033】
刈取り前処理装置6に対する伝動機構は、エンジン30の出力軸30aから取り出された動力が、ベルト伝動機構31、唐箕駆動軸41、唐箕駆動軸41の他端側に設けたベルト伝動機構32を介して伝動ケース33のケース入力軸34に伝達され、ケース入力軸34の動力の一部が伝動ケース33の扱胴駆動軸35から扱胴40に伝達される。ケース入力軸34の動力の一部が、正回転クラッチ37を介して、あるいは、伝動ケース33の刈取り出力軸36と逆回転クラッチ38とを介して、刈取り前処理装置6の刈取り入力軸66に伝達されるようになっている。
【0034】
伝動ケース33には、ケース入力軸34の端部に一体回転自在に設けたベベルギヤ48aを備えたベベルギヤ機構48が収容されている。ベベルギヤ機構48は、ベベルギヤ48aを備える他、刈取り出力軸36の端部に一体回転自在に設けたベベルギヤ48bと、ベベルギヤ48a,48bに噛み合った状態で扱胴駆動軸35に一体回転自在に設けたベベルギヤ48cとを備えて構成されている。ベベルギヤ機構48は、走行機体横向きのケース入力軸34と走行機体前後向きの扱胴駆動軸35との連動を可能にし、ケース入力軸34の回転方向と刈取り出力軸36の回転方向とが逆の回転方向になる状態でケース入力軸34と刈取り出力軸36とを連動するよう構成されている。
【0035】
図4に示すように、正回転クラッチ37は、ケース入力軸34と刈取り入力軸66の一端側とに巻回された伝動ベルト37aがテンション輪体37bによって張り状態と緩み状態とに切り換え操作されることで、入り状態と切り状態とに切り換わるようベルトテンションクラッチになっている。正回転クラッチ37は、入り状態に切り換え操作されることにより、ケース入力軸34の駆動力を刈取入力軸66に対して刈取り前処理装置6を正回転方向に駆動する駆動力として伝達する。
【0036】
図4に示すように、逆回転クラッチ38は、刈取り出力軸36と刈取入力軸66の他端側とに巻回された伝動ベルト38aがテンション輪体38bによって緊張状態と弛緩状態とに切り換え操作されることで、入り状態と切り状態とに切り換わるようベルトテンションクラッチになっている。逆回転クラッチ38は、入り状態に切り換え操作されることにより、刈取り出力軸36の駆動力を刈取入力軸66に対して刈取り前処理装置6を逆回転方向に駆動する駆動力として伝達する。
【0037】
図4に示すように、刈取り入力軸66は、フィーダコンベヤ60aを駆動するコンベヤ駆動軸となっている。刈取り入力軸66は、伝動チェーン66aを介して主刈取り装置63の駆動軸67に連動されている。駆動軸67と搬送用オーガ65の駆動軸68とが伝動チェーン66bによって連動されている。搬送用オーガ65の駆動軸68と、リール式掻き込み装置64の駆動軸64aとが、伝動チェーン66cと伝動ベルト66dとを利用した連動機構によって連動されている。
【0038】
駆動軸67からの動力は、駆動軸67に装備された周知の運動方向変換機構69に入力され、運動方向変換機構69により駆動軸67の回転運動が伝動軸67aの往復回転運動に変換される。伝動軸67aの往復回転運動により、主刈取り装置63の刈刃が直線的に往復駆動されるように構成されている。
【0039】
刈取り入力軸66は、正回転方向の駆動力が伝達されると、刈取り前処理装置6のフィーダコンベア60aと搬送用オーガ65と主刈取り装置63とリール式掻き込み装置64とが、通常の前処理作業や搬送作業を行うよう正回転方向に駆動される。逆回転方向の駆動力が伝達されると、刈取り前処理装置6のフィーダコンベア60aと搬送用オーガ65と主刈取り装置63とリール式掻き込み装置64とが、通常の作業用回転方向とは逆の回転方向に駆動される。
【0040】
副刈取り装置7への動力伝達は、主刈取り装置63の駆動系から取り出した往復運動を縦向き刈取連動機構8を介して伝達するように構成されており、縦向き刈取連動機構8については、副刈取り装置7の構成とともに後述する。
【0041】
〔副刈取り装置の構成〕
図3〜図5に示すように、刈取り前処理装置6における未刈り側(左側)の横側端部には、主刈取り装置63の刈取り作用域における未刈り側位置において、上下方向に沿う起立姿勢で、作物の切断を行う副刈取り装置7が配備されている。
【0042】
副刈取り装置7は、図5〜図8に示すように、取付け枠70の前面側位置で、相対摺動自在に構成された縦長のバリカン型刈刃からなる左右一対の刈刃体71によって構成されており、左右一対の刈刃体71は、後述する縦向き刈取連動機構8を介して主刈取り装置63の駆動力で駆動されるようになっている。
【0043】
左右一対の刈刃体71は、刈取り前処理装置6の左側の前処理フレーム61に対して下端側が固定され、上端側が支持ステー72で支持された取付け枠70に対して装着されている。
【0044】
取付け枠70は、角筒状のフレーム本体73の前面側に前方側へ突出する板状のガイド板74が突設されており、左右一対の刈刃体71、および、左右一対の刈刃体71同士を左右両側から挟持する刃体挟持部材75がガイド板74を両側から抱き込む状態に装着されていて、左右一対の刈刃体71がガイド板74に沿って上下に往復動できるように構成されている。
【0045】
上記のように構成された左右一対の刈刃体71が、縦向き刈取連動機構8を介して主刈取り装置63の作動に連動して駆動されるように連係されている。縦向き刈取連動機構8は、図4および図5,6に示すように、主刈取り装置63の可動刃63Bと連動して、可動刃63Bの往復摺動方向の運動を導き出す入力連動杆80と、入力連動杆80に連結される腕杆81aを一体に備えた前後方向向きの中継軸81と、中継軸81に外嵌された揺動部材82と、揺動部材82の往復揺動運動を左右一対の刈刃体71の上下方向の往復運動として伝える出力連動杆84と、腕杆81aの揺動による中継軸81の往復回転運動を揺動部材82の揺動運動として伝える状態及び伝動を断つ状態とに切換可能な縦刈刃クラッチ機構85とで構成されている。
【0046】
縦刈刃クラッチ機構85は、図9に示すように、中継軸81から一体に突出された係合突起81bと、係合突起81bに対して係脱自在であるように揺動部材82のボス部材83に形成された係合孔83aと、ボス部材83を中継軸81の軸線方向に位置変更させて係合突起81bと係合孔83aとの係脱操作を行う操作杆86とで構成されている。
【0047】
ボス部材83は、中継軸81に配備された付勢スプリング87によって、常時はクラッチ入り側、つまり係合突起81bと係合孔83aとが係合する側に付勢されている。操作杆86は、クラッチ切り操作、つまり係合突起81bと係合孔83aとの係合を解除した状態で、図9に示すように、前処理フレーム61の一部に形成した係止部61cに対して引っ掛け状態で固定しておくことができる。
【0048】
上記のように構成したことにより、副刈取り装置7は、主刈取り装置63の作動に伴って、主刈取り装置63の往復直線運動が入力連動杆80に伝えられ、入力連動杆80の往復直線運動が腕杆81aの揺動運動に変換され、中継軸81自身の軸心周りでの往復回転運動となる。中継軸81の往復回転運動が縦刈刃クラッチ機構85を介して揺動部材82の揺動運動、および、出力連動杆84の往復直線運動に変換されて、一対の刈刃体71がそれぞれ互いに逆方向に往復運動して対象作物を切断するように作用する。
【0049】
副刈取り装置7の駆動が必要であれば、縦刈刃クラッチ機構85を入り状態とし、不要であれば切り状態として、主刈取り装置63のみを駆動し、副刈取り装置7の駆動は単独で停止することもできる。
【0050】
副刈取り装置7は、主刈取り装置63の作物切断箇所よりも機体前方側に配設されており、前処理フレーム61の前端側に設けられるデバイダ62の前端よりは後方で、デバイダ62の分草作用面の上縁に対して、側面視で副刈取り装置7が直交もしくはほぼ直交する姿勢で配設されている。
【0051】
図3及び図14に示すように、リール式掻き込み装置64の左横端部よりも機体横外方に左側のデバイダ62が位置して、副刈取り装置7の左右方向での切断位置が、左側のデバイダ62の分草中心cよりも機体横外方に偏位して設けてあり、穂先側が絡み付いた状態の作物を分草する際に、絡みがほぐれないままで切断箇所に達した未刈り側の作物を、分草中心cよりも少し外側の箇所で切断するように構成されている。したがって、外側の未刈り側作物が切断され、主刈取り装置63で刈幅内の作物が刈り取られると、絡み付いた状態がほぐれないままの作物もリール式掻き込み装置64や搬送用オーガ65などの作用も加わって、刈取り前処理装置6から脱落する可能性少なく、フィーダ60側へ送り込まれ易くなる。
【0052】
図5、図6に示すように、縦向き刈取連動機構8における機体内側の刈刃体71を上下駆動する出力連動杆84はデバイダ62より上方に突出されており、出力連動杆84の配置部位から後方のステー72までの範囲を機体内側方から覆う側面カバー95が、取付け枠70、ステー72、前処理フレーム61などの固定部位に亘って取り付け固定されて、作物が出力連動杆84に絡みつくことなく円滑に後方に案内流動するように構成されている。機体外側の刈刃体71を上下駆動する出力連動杆84が側面カバー95で機体外側方から覆われ、未刈り作物が出力連動杆84に絡みついて引き抜かれたり、絡みつき滞留して副刈取り装置7の作動に悪影響をもたらすことが防止されている。
【0053】
図15は、比較的起立状態のよい菜種を収穫する際の形態を示し、刈取り前処理装置6を少し上昇させて、着粒の多い高部位を効率よく刈り取り収穫することになり、リール式掻き込み装置64は稈長や倒伏具合に応じた高さに調節する。
【0054】
〔別実施形態〕
本発明は、以下のような形態で実施することもできる。
(1)上記の実施の形態では、リール式掻き込み装置64における回転中心位置zの昇降移動軌跡Sを、機体側方視で副刈取り装置7の後方側に配置しているが、図16に示すように、リール式掻き込み装置64における回転中心位置zの昇降移動軌跡Sを、機体側方視で副刈取り装置7と交差配置したり、あるいは、図17に示すように、リール式掻き込み装置64における回転中心位置zの昇降移動軌跡Sを、機体側方視で副刈取り装置7の前方側に配置するように設定することで、作物の種類、稈長、倒伏具合、などの作物条件に好適な掻き込みを行いながら、作物同士の絡みを無理なく切断分離して円滑な刈取り収穫を行うことが可能となる。
【0055】
(2)図12において、リール式掻き込み装置64における回転中心位置zの昇降移動軌跡Sを、体側方視で副刈取り装置7よりもさらに後方側(図12の紙面右方)に位置させて、リール式掻き込み装置64が下降限界にあると、回転中心位置zが副刈取り装置7から後方側(図12の紙面右方)に所定間隔を置いて離れた位置に位置するように構成してもよい。
【0056】
(3)上下方向に沿う縦向き姿勢で植立作物を切断する副刈取り装置7を、刈取り前処理装置6の左右両側に設けると、機体左右両側を共に未刈り地として刈取り前進する中割り作業を行う場合、刈取り対象の作物と左右の未刈りの作物とが強く絡みついていても、これらの絡みを左右の副刈取り装置7で切断分離して、円滑に刈取り走行することが可能となる。
【0057】
(4)副刈取り装置7における一対の刈刃体71の一方を固定刃、他方を可動刃としたバリカン型に構成したり、刈刃体を備えたチェーンを縦回し駆動するチェーンソー形式に構成して実施することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】普通型コンバイン全体の左側面図
【図2】普通型コンバイン全体の右側面図
【図3】普通型コンバイン全体の平面図
【図4】伝動系統を示す線図
【図5】刈取り前処理装置を示す左側面図
【図6】副刈取り装置への伝動構造を示す正面図
【図7】副刈取り装置の横断平面図
【図8】副刈取り装置の駆動構造を示す側面図
【図9】縦刈刃クラッチ機構を示す側面図
【図10】リール式掻き込み装置の支持構造を示す一部縦断側面図
【図11】飛散防止板を示す斜視図
【図12】リール式掻き込み装置を上昇させた状態の刈取り前処理装置を示す左側面図
【図13】刈取り前処理装置を機体内側から見た右側面図
【図14】副刈取り装置における駆動部カバー構造を示す横断平面図
【図15】刈取り前処理装置を上昇させた作業状態の普通型コンバイン全体を示す左側面図
【図16】副刈取り装置とリール式掻き込み装置の配置形態の別実施例を示す概略側面図
【図17】副刈取り装置とリール式掻き込み装置の配置形態のさらに別の実施例を示す概略側面図
【符号の説明】
【0059】
4 脱穀装置
7 副刈取り装置
63 主刈取り装置
64 リール式掻き込み装置
64b タイン
z 回転中心位置
S 昇降移動軌跡
【技術分野】
【0001】
本発明は、水平方向に沿う横向き姿勢で植立作物を刈り取る主刈取り装置と、主刈取り装置の上方側位置で掻き込み用のタインを回動させて刈取り対象の植立作物を掻き込み操作するリール式掻き込み装置とを備え、主刈取り装置によって刈り取られた作物の全体を投入して脱穀及び選別処理する脱穀装置を備えた普通型コンバインに関する。
【背景技術】
【0002】
上記の普通型コンバインにおいては、稲麦などのように条列をなして植付けられた作物の他に、菜種やひまわりなどのように条列をなさずに植付けられた作物を収穫対象とすることがあり、従来では下記(1),(2)に記載の構造のものが知られている。
【0003】
(1)植付け作物の頂部側を掻き込みリールで掻き込んで、作物の根本側を切断装置で切断して刈り取り、刈り取った作物の全体を後方の脱穀装置に送り込むように構成するとともに、刈取対象の作物と未刈側の作物との絡み付きは分草具で押し分け分離させるように構成したもの(特許文献1参照)。
【0004】
(2)前端側の刈取り装置を持ち上げ姿勢にして、作物の頂部近くで作物(ひまわり)の花托を切断して収穫し、圃場に残る残茎稈は地面近くに位置する後方側の刈取り装置で切断して圃場へ刈倒し、刈取り対象の作物と未刈側の作物との絡み付きは分草具で押し分け分離させるように構成したもの(特許文献2参照)。
【0005】
【特許文献1】特開2005−211043号公報
【特許文献2】特開2007−89464号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
稲麦は作物同士の絡みつきがあまり強くないので、上記従来手段のように、刈取り対象の作物と未刈側の作物と絡み付きは、機体前進に伴う分草具による押し分け作用によって比較的容易に分離することができるのであるが、菜種などの絡みつきの強い作物の収穫においては、刈取り対象の作物と未刈側の作物とを分草具で押し分け分離すると、穂切れ、脱粒、未刈り作物の引き抜き、などの不具合が発生しやすい。このような不具合を少なくするためには、機体前進速度を遅くして分草具による押し分け分離作用を抑制する必要があり、高速走行による能率的な収穫を行えなくなるものであった。
【0007】
本発明は、このような点に着目してなされたものであって、菜種などの絡み付きの強い作物でも能率よく円滑に収穫できるようにすることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、水平方向に沿う横向き姿勢で植立作物を刈り取る主刈取り装置と、主刈取り装置の上方側位置で掻き込み用のタインを回動させて刈取り対象の植立作物を掻き込み操作するリール式掻き込み装置とを備え、主刈取り装置によって刈り取られた作物の全体を投入して脱穀及び選別処理する脱穀装置を備えた普通型コンバインであって、
主刈取り装置の刈取作用域における横側端部位置に、上下方向に沿う縦向き姿勢で植立作物を切断する副刈取り装置を設け、
リール式掻き込み装置を上下移動可能に構成するとともに、このリール式掻き込み装置における回転中心位置が下降するほど機体前方に位置するように、回転中心位置の昇降移動軌跡を、機体側方視で副刈取り装置に対して傾斜設定してあることを特徴とする。
【0009】
上記構成によると、主刈取り装置の刈取り作用域に導入された刈取り対象作物と未刈り作物とが強く絡まっているような場合でも、主刈取り装置の刈取り作用域における横側端部位置に配備した副刈取り装置により、絡まった作物を切断して左右に分離することで、副刈取り装置よりも主刈取り装置側にある作物を円滑に刈取り作用域に取り込むことができ、分草具による無理な押し分け分離に見られるような穂切れ、脱粒、引き抜きなどを極力少なくしながら所望の走行速度で円滑に収穫作業を行うことができる。
【0010】
植立作物の倒伏具合や稈長などに応じてリール式掻き込み装置を高さ変更することで、好適な掻き込みを行うことができる。例えば、植立作物が充分に起立しているような場合には、リール式掻き込み装置を高く高さ設定することで、植立作物の穂先側を上方後方において脱粒少なく掻き込むことができる。前方に大きく倒伏している植立作物が多い場合には、リール式掻き込み装置を低く高さ設定することで、前方に大きく倒伏している植立作物を早期のうちに後方へ掻き込んで主刈取り装置で刈り取ることができ、前方に大きく倒伏したまま刈り取って地上に落としてしまうようなことを回避することができる。
【0011】
本発明は、リール式掻き込み装置における回転中心位置の昇降移動軌跡を、機体側方視で副刈取り装置の後方側に配置したり、リール式掻き込み装置における回転中心位置の昇降移動軌跡を、機体側方視で副刈取り装置と交差配置したり、あるいは、リール式掻き込み装置における回転中心位置の昇降移動軌跡を、機体側方視で副刈取り装置の前方側に配置するように設定することで、作物の種類、稈長、倒伏具合、などの作物条件に対して好適な掻き込みを行いながら、作物同士の絡みを無理なく切断分離して円滑な刈取り収穫を行うことが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態を図面の記載に基づいて説明する
〔全体構成〕
図1〜図3に、本発明に係る普通型コンバインの全体側面と全体平面がそれぞれ示されている。この普通型コンバインは、作物同士の絡みつきの強い菜種などの作物の収穫に好適な仕様に構成されたものであって、機体フレーム10を左右一対のクローラ走行装置11に搭載して自走機体1が構成されている。自走機体1に、運転座席20を装備した搭乗運転部2と、運転座席20の下方に位置してエンジン30が装備された原動部3と、作物を脱穀及び選別処理する脱穀装置4と、脱穀選別された作物粒を袋詰め回収する袋詰め装置13とが搭載設置されている。
【0013】
自走機体1の機体前方側には、刈取り前処理装置6を前端に連結したフィーダ60が、フィーダ60の後端部の横軸心x周りで昇降揺動自在に連結されており、これらの各装置の組み合わせによって、刈取り前処理装置6で刈り取られた作物の全体をフィーダ60を介して脱穀装置4に供給して脱穀処理する普通型コンバインが構成されている。
【0014】
〔脱穀系の構成〕
脱穀装置4は、供給された作物を機体前後向きの軸芯周りに回動する軸流型の扱胴40によって脱穀処理し、脱穀処理物を作物粒と排稈とに選別処理し、作物粒を袋詰め装置13の貯留ホッパ14に揚送供給するように構成されており、脱穀処理を経た排稈などは、自走機体1の後方に落下放出されるようになっている。図2における符号15は、機体フレーム10の横外側端に連結された補助デッキであり、機体横外方に水平に張り出した使用姿勢と、略鉛直に起立させた格納姿勢とに切換え揺動可能に支持されている。
【0015】
〔刈取り系の構成〕
刈取り前処理装置6には、プラットホーム61Aと、プラットホーム61Aの左右端に続く縦壁状の側壁61Dとを備えた前処理フレーム61が設けられており、側壁61Dの前部に左右一対のデバイダ62がそれぞれ装備されるとともに、左右の側壁61Dの下部間に亘ってバリカン型の主刈り取装置63が横架配備され、未刈り側となる機体左方の側壁61Dの前部横外側に、後述する副刈取り装置7が縦向き姿勢で配備されている。
【0016】
主刈取り装置63は、横架された刈刃支持フレーム61Bに連結固定された固定刃63Aと、固定刃63Aに対して左右に往復摺動する可動刃63Bとを組み合わせたバリカン型に構成されている。
【0017】
主刈取り装置63の上方に位置して、植立作物の上端側を前処理フレーム61の後方側に掻き込むように回転するリール式掻き込み装置64が配備される、前処理フレーム61におけるプラットホーム61Aの後部上方に搬送用オーガ65が横架配備されて、主刈取り装置63で刈り取られてプラットホーム61Aに掻き込まれた作物が、搬送用オーガ65によってフィーダ60の前側に搬送され、フィーダ60の前側に位置した作物が、搬送用オーガ65に一体回転自在に備えられた掻き込み杆65aによってフィーダ60へ送り込まれるように構成されている。
【0018】
フィーダ60は前後端が開口された角筒状に構成されており、フィーダ60の内部に設置されたチェーン式のフィーダコンベヤ60aによって搬送用オーガ65から供給される作物をフィーダ60の後端出口側に掻き揚げ搬送して、フィーダ60の後端出口から脱穀装置4に作物の全体を供給するよう構成されている。フィーダ60は、機体フレーム10との間に介装したリフトシリンダ12の作動により、前記横軸心x周りで前端側を昇降揺動自在に支持されており、フィーダ60を上下させることで刈取り前処理装置6の作業高さを任意に変更できるようになっている。
【0019】
リール式掻き込み装置64は、側方視で正五角形に形成された回転枠64hの各頂部に作物掻き込み用のタイン64bを自転駆動可能に軸支した周知の構造のものが採用されており、後述する刈取り入力軸66からベルト伝動機構64cを介して入力される動力により回転枠64hを掻き込み方向に回転駆動するとともに、これに同調してタイン64bを逆方向に自転駆動することで、タイン64bを常に下方に向けた状態で機体前方側から後方側へ円弧状の掻き込み移動軌跡Tをもって作動させるよう構成されている。
【0020】
リール式掻き込み装置64は、図12に示すように、前処理フレーム61の後端上部に横向き支点y周りに上下揺動可能に支持されたリール支持杆64dの前部に支持されており、リール支持杆64dの長手方向にスライドして前後移動可能なサドル64eにリール駆動軸64aが支持されて、サドル64eの位置変更操作を行うことによってリール駆動軸64aの回転軸心位置zを前後に位置変更できるよう構成されている。リール支持杆64dに対するサドル64eの位置固定は、リール支持杆64dを貫通する前後一対の止め孔64fのいずれかに対して止めピン64gを挿入して行うことができるようになっている。リール支持杆64dと前処理フレーム61側の固定位置とに亘って油圧シリンダ64iが架設され、油圧シリンダ64iを伸縮させることでリール式掻き込み装置64を任意に昇降して掻き込み作用高さを変更することが可能となっている。前処理フレーム61の上面に、リール支持杆64dを接当支持してリール支持杆64dの下降限度を規制するストッパボルト64jが備えられており、ストッパボルト64jのねじ込み調節によって、リール式掻き込み装置64の下降限界高さを微調節できるようになっている。
【0021】
リール式掻き込み装置64が下降されるほど回転軸心位置zが前方に移動するように、リール駆動軸64aの回転中心位置zの昇降移動軌跡Sは、起立配備された副刈取り装置7の後方側において、副刈取り装置7に対して側方視で傾斜配置され、リール式掻き込み装置64が下降限界にあると、回転中心位置zが側方視で副刈取り装置7と略重複し、リール式掻き込み装置64が上昇限界にあると、回転中心位置zが側方視で副刈取り装置7よりも高く位置するように設定されている。
【0022】
リール式掻き込み装置64の高さの変更は、作物の種類、作物の稈長、作物の倒伏具合等の刈取り作業情況に対応して行われるものであり、作物の倒伏が大きいほどリール式掻き込み装置64を前方下方に移動して、早い目の掻き込みを行う。
【0023】
図12に示すように、リール式掻き込み装置64を大きく下降させた場合のタイン64bの掻き込み移動軌跡T(d)は、機体側方視で前処理フレーム61における側壁61Dと大きく重複し、地上近くまで倒伏した作物を左右の側壁61Dの間に洩らすことなく掻き込むことができる。リール式掻き込み装置64を上昇させた場合のタイン64bの掻き込み移動軌跡T(u)は、機体側方視で側壁61Dより上方に離れ、起立した作物の高部を後方に掻き込んで主刈取り装置63に導き切断し、プラットホーム61Aに円滑に送り込むことができる。
【0024】
リール式掻き込み装置64を大きく上昇させると、前処理フレーム61における側壁61Dの上面とリール支持杆64dとの間が大きく空いて、運転作業者が側壁61Dの上面とリール支持杆64dとの間の空隙を通して未刈り地側を見通しやすいものとなる。
【0025】
プラットホーム61Aの下側の左右両端近くに左右一対のソリ体56が突設され、刈取り前処理装置6が下降された場合に、ソリ体56を接地させて刈取り前処理装置6の下降を規制して、刈取り前処理装置6の前端部が地面に突入することが回避されるようになっている。ソリ体56は、底面、前後面、および、左右側面を備えた横長の中空箱状に構成されており、下降された刈取り前処理装置6およびフィーダ60の重量を、左右のソリ体56の大きい接地面積で確実かつ安定良くに接地支持することができるとともに、ソリ体56が接地された状態で機体が操向されて、刈取り前処理装置6が横方向に引きずられても、ソリ体56内に土が入り込んで付着滞留しない構造となっている。
【0026】
プラットホーム61Aの前端は主刈取り装置63の後端に近接して配置される、プラットホーム61Aの前端には山形に隆起する案内枠61eがプラットホーム61Aの全幅に亘って設けられ、プラットホーム61Aに導かれた刈取り作物が前方にこぼれ出ることが抑制されるようになっている。
【0027】
リール式掻き込み装置64よりも後方側で、搬送用オーガ65よりも上方のフィーダ60の入り口近くでは、後方上方側へ向けて飛散防止板9が設けられている。飛散防止板9は、図11に示すように、後傾姿勢の後面部90と左右両側の側面部91とでチャンネル状に形成されている。後面部90と左右両側の側面部91とのチャンネル状の形状は、後面部90及び側面部91の上縁部分に沿うチャンネル状の上縁枠部分と上縁枠部分を支える上下向きの支え板部分とで構成された枠体92と、枠体92の内側に張設されたゴム垂れ93とで構成されている。
【0028】
飛散防止板9は、搭乗運転部2での操縦操作、あるいは前方を覗き込む際に、飛散防止板9の後方上方から覗き込む際の視野を極力狭めないように工夫しながら、前方側から跳ね上げられた菜種などを受け止めて、前方側に流下させ、フィーダ60の送り込み経路に戻すように構成されている。
【0029】
飛散防止板9は、地上に刈り取り放置された作物を拾い上げてゆくピックアップ作業を行う際に収穫物の飛散防止を行う上で有効に利用し得るものであるが、通常の刈取り作業では、特に必要のない場合が多いので取り外すことも可能であるように、前処理フレーム61に対して着脱自在となっている。
【0030】
〔伝動系の構成〕
図4に、エンジン30の動力をクローラ走行装置11、および、機体フレーム10の各装置に対する動力伝達系が示されている。図4に示すように、クローラ走行装置11に対する伝動機構は、エンジン30の出力軸30aから取り出された動力の一部が、ベルト伝動機構21を介して静油圧式無段変速装置(HST)からなる主変速装置22の入力軸22aに伝達される。主変速装置22の出力軸22bから取り出された変速動力が、ミッションケース23に入力されて、ミッションケース23の図示されていない副変速機構で更に複数段にギヤ変速され、変速動力が左右一対のクローラ走行装置11,11に伝達されるようになっている。
【0031】
主変速装置22は、入力軸22aをポンプ軸とする可変容量形の油圧ポンプ22Pと、油圧ポンプ22Pからの圧油によって正逆に無段変速駆動される定変容量形の油圧モータ22Mとで構成されており、前後進を無段変速で行うことができるようになっている。
【0032】
脱穀装置4に対する伝動機構は、エンジン30の出力軸30aから取り出された動力の一部が、ベルト伝動機構31を介して脱穀装置4の唐箕駆動軸41の一端側に伝達され、唐箕駆動軸41の他端側から取り出された動力が、ベルト伝動機構42を介して脱穀装置4の一番スクリューコンベヤ43と二番スクリューコンベヤ44とに伝達され、ベルト伝動機構42に備えた動力取り出し軸45から取り出された動力が、ベルト伝動機構46を介して脱穀装置4の選別装置駆動軸47に伝達されるようになっている。
【0033】
刈取り前処理装置6に対する伝動機構は、エンジン30の出力軸30aから取り出された動力が、ベルト伝動機構31、唐箕駆動軸41、唐箕駆動軸41の他端側に設けたベルト伝動機構32を介して伝動ケース33のケース入力軸34に伝達され、ケース入力軸34の動力の一部が伝動ケース33の扱胴駆動軸35から扱胴40に伝達される。ケース入力軸34の動力の一部が、正回転クラッチ37を介して、あるいは、伝動ケース33の刈取り出力軸36と逆回転クラッチ38とを介して、刈取り前処理装置6の刈取り入力軸66に伝達されるようになっている。
【0034】
伝動ケース33には、ケース入力軸34の端部に一体回転自在に設けたベベルギヤ48aを備えたベベルギヤ機構48が収容されている。ベベルギヤ機構48は、ベベルギヤ48aを備える他、刈取り出力軸36の端部に一体回転自在に設けたベベルギヤ48bと、ベベルギヤ48a,48bに噛み合った状態で扱胴駆動軸35に一体回転自在に設けたベベルギヤ48cとを備えて構成されている。ベベルギヤ機構48は、走行機体横向きのケース入力軸34と走行機体前後向きの扱胴駆動軸35との連動を可能にし、ケース入力軸34の回転方向と刈取り出力軸36の回転方向とが逆の回転方向になる状態でケース入力軸34と刈取り出力軸36とを連動するよう構成されている。
【0035】
図4に示すように、正回転クラッチ37は、ケース入力軸34と刈取り入力軸66の一端側とに巻回された伝動ベルト37aがテンション輪体37bによって張り状態と緩み状態とに切り換え操作されることで、入り状態と切り状態とに切り換わるようベルトテンションクラッチになっている。正回転クラッチ37は、入り状態に切り換え操作されることにより、ケース入力軸34の駆動力を刈取入力軸66に対して刈取り前処理装置6を正回転方向に駆動する駆動力として伝達する。
【0036】
図4に示すように、逆回転クラッチ38は、刈取り出力軸36と刈取入力軸66の他端側とに巻回された伝動ベルト38aがテンション輪体38bによって緊張状態と弛緩状態とに切り換え操作されることで、入り状態と切り状態とに切り換わるようベルトテンションクラッチになっている。逆回転クラッチ38は、入り状態に切り換え操作されることにより、刈取り出力軸36の駆動力を刈取入力軸66に対して刈取り前処理装置6を逆回転方向に駆動する駆動力として伝達する。
【0037】
図4に示すように、刈取り入力軸66は、フィーダコンベヤ60aを駆動するコンベヤ駆動軸となっている。刈取り入力軸66は、伝動チェーン66aを介して主刈取り装置63の駆動軸67に連動されている。駆動軸67と搬送用オーガ65の駆動軸68とが伝動チェーン66bによって連動されている。搬送用オーガ65の駆動軸68と、リール式掻き込み装置64の駆動軸64aとが、伝動チェーン66cと伝動ベルト66dとを利用した連動機構によって連動されている。
【0038】
駆動軸67からの動力は、駆動軸67に装備された周知の運動方向変換機構69に入力され、運動方向変換機構69により駆動軸67の回転運動が伝動軸67aの往復回転運動に変換される。伝動軸67aの往復回転運動により、主刈取り装置63の刈刃が直線的に往復駆動されるように構成されている。
【0039】
刈取り入力軸66は、正回転方向の駆動力が伝達されると、刈取り前処理装置6のフィーダコンベア60aと搬送用オーガ65と主刈取り装置63とリール式掻き込み装置64とが、通常の前処理作業や搬送作業を行うよう正回転方向に駆動される。逆回転方向の駆動力が伝達されると、刈取り前処理装置6のフィーダコンベア60aと搬送用オーガ65と主刈取り装置63とリール式掻き込み装置64とが、通常の作業用回転方向とは逆の回転方向に駆動される。
【0040】
副刈取り装置7への動力伝達は、主刈取り装置63の駆動系から取り出した往復運動を縦向き刈取連動機構8を介して伝達するように構成されており、縦向き刈取連動機構8については、副刈取り装置7の構成とともに後述する。
【0041】
〔副刈取り装置の構成〕
図3〜図5に示すように、刈取り前処理装置6における未刈り側(左側)の横側端部には、主刈取り装置63の刈取り作用域における未刈り側位置において、上下方向に沿う起立姿勢で、作物の切断を行う副刈取り装置7が配備されている。
【0042】
副刈取り装置7は、図5〜図8に示すように、取付け枠70の前面側位置で、相対摺動自在に構成された縦長のバリカン型刈刃からなる左右一対の刈刃体71によって構成されており、左右一対の刈刃体71は、後述する縦向き刈取連動機構8を介して主刈取り装置63の駆動力で駆動されるようになっている。
【0043】
左右一対の刈刃体71は、刈取り前処理装置6の左側の前処理フレーム61に対して下端側が固定され、上端側が支持ステー72で支持された取付け枠70に対して装着されている。
【0044】
取付け枠70は、角筒状のフレーム本体73の前面側に前方側へ突出する板状のガイド板74が突設されており、左右一対の刈刃体71、および、左右一対の刈刃体71同士を左右両側から挟持する刃体挟持部材75がガイド板74を両側から抱き込む状態に装着されていて、左右一対の刈刃体71がガイド板74に沿って上下に往復動できるように構成されている。
【0045】
上記のように構成された左右一対の刈刃体71が、縦向き刈取連動機構8を介して主刈取り装置63の作動に連動して駆動されるように連係されている。縦向き刈取連動機構8は、図4および図5,6に示すように、主刈取り装置63の可動刃63Bと連動して、可動刃63Bの往復摺動方向の運動を導き出す入力連動杆80と、入力連動杆80に連結される腕杆81aを一体に備えた前後方向向きの中継軸81と、中継軸81に外嵌された揺動部材82と、揺動部材82の往復揺動運動を左右一対の刈刃体71の上下方向の往復運動として伝える出力連動杆84と、腕杆81aの揺動による中継軸81の往復回転運動を揺動部材82の揺動運動として伝える状態及び伝動を断つ状態とに切換可能な縦刈刃クラッチ機構85とで構成されている。
【0046】
縦刈刃クラッチ機構85は、図9に示すように、中継軸81から一体に突出された係合突起81bと、係合突起81bに対して係脱自在であるように揺動部材82のボス部材83に形成された係合孔83aと、ボス部材83を中継軸81の軸線方向に位置変更させて係合突起81bと係合孔83aとの係脱操作を行う操作杆86とで構成されている。
【0047】
ボス部材83は、中継軸81に配備された付勢スプリング87によって、常時はクラッチ入り側、つまり係合突起81bと係合孔83aとが係合する側に付勢されている。操作杆86は、クラッチ切り操作、つまり係合突起81bと係合孔83aとの係合を解除した状態で、図9に示すように、前処理フレーム61の一部に形成した係止部61cに対して引っ掛け状態で固定しておくことができる。
【0048】
上記のように構成したことにより、副刈取り装置7は、主刈取り装置63の作動に伴って、主刈取り装置63の往復直線運動が入力連動杆80に伝えられ、入力連動杆80の往復直線運動が腕杆81aの揺動運動に変換され、中継軸81自身の軸心周りでの往復回転運動となる。中継軸81の往復回転運動が縦刈刃クラッチ機構85を介して揺動部材82の揺動運動、および、出力連動杆84の往復直線運動に変換されて、一対の刈刃体71がそれぞれ互いに逆方向に往復運動して対象作物を切断するように作用する。
【0049】
副刈取り装置7の駆動が必要であれば、縦刈刃クラッチ機構85を入り状態とし、不要であれば切り状態として、主刈取り装置63のみを駆動し、副刈取り装置7の駆動は単独で停止することもできる。
【0050】
副刈取り装置7は、主刈取り装置63の作物切断箇所よりも機体前方側に配設されており、前処理フレーム61の前端側に設けられるデバイダ62の前端よりは後方で、デバイダ62の分草作用面の上縁に対して、側面視で副刈取り装置7が直交もしくはほぼ直交する姿勢で配設されている。
【0051】
図3及び図14に示すように、リール式掻き込み装置64の左横端部よりも機体横外方に左側のデバイダ62が位置して、副刈取り装置7の左右方向での切断位置が、左側のデバイダ62の分草中心cよりも機体横外方に偏位して設けてあり、穂先側が絡み付いた状態の作物を分草する際に、絡みがほぐれないままで切断箇所に達した未刈り側の作物を、分草中心cよりも少し外側の箇所で切断するように構成されている。したがって、外側の未刈り側作物が切断され、主刈取り装置63で刈幅内の作物が刈り取られると、絡み付いた状態がほぐれないままの作物もリール式掻き込み装置64や搬送用オーガ65などの作用も加わって、刈取り前処理装置6から脱落する可能性少なく、フィーダ60側へ送り込まれ易くなる。
【0052】
図5、図6に示すように、縦向き刈取連動機構8における機体内側の刈刃体71を上下駆動する出力連動杆84はデバイダ62より上方に突出されており、出力連動杆84の配置部位から後方のステー72までの範囲を機体内側方から覆う側面カバー95が、取付け枠70、ステー72、前処理フレーム61などの固定部位に亘って取り付け固定されて、作物が出力連動杆84に絡みつくことなく円滑に後方に案内流動するように構成されている。機体外側の刈刃体71を上下駆動する出力連動杆84が側面カバー95で機体外側方から覆われ、未刈り作物が出力連動杆84に絡みついて引き抜かれたり、絡みつき滞留して副刈取り装置7の作動に悪影響をもたらすことが防止されている。
【0053】
図15は、比較的起立状態のよい菜種を収穫する際の形態を示し、刈取り前処理装置6を少し上昇させて、着粒の多い高部位を効率よく刈り取り収穫することになり、リール式掻き込み装置64は稈長や倒伏具合に応じた高さに調節する。
【0054】
〔別実施形態〕
本発明は、以下のような形態で実施することもできる。
(1)上記の実施の形態では、リール式掻き込み装置64における回転中心位置zの昇降移動軌跡Sを、機体側方視で副刈取り装置7の後方側に配置しているが、図16に示すように、リール式掻き込み装置64における回転中心位置zの昇降移動軌跡Sを、機体側方視で副刈取り装置7と交差配置したり、あるいは、図17に示すように、リール式掻き込み装置64における回転中心位置zの昇降移動軌跡Sを、機体側方視で副刈取り装置7の前方側に配置するように設定することで、作物の種類、稈長、倒伏具合、などの作物条件に好適な掻き込みを行いながら、作物同士の絡みを無理なく切断分離して円滑な刈取り収穫を行うことが可能となる。
【0055】
(2)図12において、リール式掻き込み装置64における回転中心位置zの昇降移動軌跡Sを、体側方視で副刈取り装置7よりもさらに後方側(図12の紙面右方)に位置させて、リール式掻き込み装置64が下降限界にあると、回転中心位置zが副刈取り装置7から後方側(図12の紙面右方)に所定間隔を置いて離れた位置に位置するように構成してもよい。
【0056】
(3)上下方向に沿う縦向き姿勢で植立作物を切断する副刈取り装置7を、刈取り前処理装置6の左右両側に設けると、機体左右両側を共に未刈り地として刈取り前進する中割り作業を行う場合、刈取り対象の作物と左右の未刈りの作物とが強く絡みついていても、これらの絡みを左右の副刈取り装置7で切断分離して、円滑に刈取り走行することが可能となる。
【0057】
(4)副刈取り装置7における一対の刈刃体71の一方を固定刃、他方を可動刃としたバリカン型に構成したり、刈刃体を備えたチェーンを縦回し駆動するチェーンソー形式に構成して実施することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】普通型コンバイン全体の左側面図
【図2】普通型コンバイン全体の右側面図
【図3】普通型コンバイン全体の平面図
【図4】伝動系統を示す線図
【図5】刈取り前処理装置を示す左側面図
【図6】副刈取り装置への伝動構造を示す正面図
【図7】副刈取り装置の横断平面図
【図8】副刈取り装置の駆動構造を示す側面図
【図9】縦刈刃クラッチ機構を示す側面図
【図10】リール式掻き込み装置の支持構造を示す一部縦断側面図
【図11】飛散防止板を示す斜視図
【図12】リール式掻き込み装置を上昇させた状態の刈取り前処理装置を示す左側面図
【図13】刈取り前処理装置を機体内側から見た右側面図
【図14】副刈取り装置における駆動部カバー構造を示す横断平面図
【図15】刈取り前処理装置を上昇させた作業状態の普通型コンバイン全体を示す左側面図
【図16】副刈取り装置とリール式掻き込み装置の配置形態の別実施例を示す概略側面図
【図17】副刈取り装置とリール式掻き込み装置の配置形態のさらに別の実施例を示す概略側面図
【符号の説明】
【0059】
4 脱穀装置
7 副刈取り装置
63 主刈取り装置
64 リール式掻き込み装置
64b タイン
z 回転中心位置
S 昇降移動軌跡
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水平方向に沿う横向き姿勢で植立作物を刈り取る主刈取り装置と、前記主刈取り装置の上方側位置で掻き込み用のタインを回動させて刈取り対象の植立作物を掻き込み操作するリール式掻き込み装置とを備え、前記主刈取り装置によって刈り取られた作物の全体を投入して脱穀及び選別処理する脱穀装置を備えた普通型コンバインであって、
前記主刈取り装置の刈取作用域における横側端部位置に、上下方向に沿う縦向き姿勢で植立作物を切断する副刈取り装置を設け、
前記リール式掻き込み装置を上下移動可能に構成するとともに、このリール式掻き込み装置における回転中心位置が下降するほど機体前方に位置するように、前記回転中心位置の昇降移動軌跡を、機体側方視で前記副刈取り装置に対して傾斜設定してあることを特徴とする普通型コンバイン。
【請求項2】
前記リール式掻き込み装置における回転中心位置の昇降移動軌跡を、機体側方視で前記副刈取り装置の後方側に配置してある請求項1記載の普通型コンバイン。
【請求項3】
前記リール式掻き込み装置における回転中心位置の昇降移動軌跡を、機体側方視で前記副刈取り装置と交差配置してある請求項1記載の普通型コンバイン。
【請求項4】
前記リール式掻き込み装置における回転中心位置の昇降移動軌跡を、機体側方視で前記副刈取り装置の前方側に配置してある請求項1記載の普通型コンバイン。
【請求項1】
水平方向に沿う横向き姿勢で植立作物を刈り取る主刈取り装置と、前記主刈取り装置の上方側位置で掻き込み用のタインを回動させて刈取り対象の植立作物を掻き込み操作するリール式掻き込み装置とを備え、前記主刈取り装置によって刈り取られた作物の全体を投入して脱穀及び選別処理する脱穀装置を備えた普通型コンバインであって、
前記主刈取り装置の刈取作用域における横側端部位置に、上下方向に沿う縦向き姿勢で植立作物を切断する副刈取り装置を設け、
前記リール式掻き込み装置を上下移動可能に構成するとともに、このリール式掻き込み装置における回転中心位置が下降するほど機体前方に位置するように、前記回転中心位置の昇降移動軌跡を、機体側方視で前記副刈取り装置に対して傾斜設定してあることを特徴とする普通型コンバイン。
【請求項2】
前記リール式掻き込み装置における回転中心位置の昇降移動軌跡を、機体側方視で前記副刈取り装置の後方側に配置してある請求項1記載の普通型コンバイン。
【請求項3】
前記リール式掻き込み装置における回転中心位置の昇降移動軌跡を、機体側方視で前記副刈取り装置と交差配置してある請求項1記載の普通型コンバイン。
【請求項4】
前記リール式掻き込み装置における回転中心位置の昇降移動軌跡を、機体側方視で前記副刈取り装置の前方側に配置してある請求項1記載の普通型コンバイン。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2010−104328(P2010−104328A)
【公開日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−281884(P2008−281884)
【出願日】平成20年10月31日(2008.10.31)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年10月31日(2008.10.31)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】
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