説明

普通紙・電子ペーパー兼用画像形成機

【課題】普通紙・電子ペーパー兼用画像形成機内で、定着ヒートローラの発熱に起因した、電子ペーパーの表面基材への熱損傷が生じない、普通紙・電子ペーパー兼用画像形成機を提供すること。
【解決手段】シート状記録媒体として、普通紙と電子ペーパーとを選択できる画像形成機(13)であって、媒体に応じて、定着ヒートローラ(5)と定着加圧ローラ(6)とからなる定着手段(7)の配置が変動可能であり、更に、定着手段(7)の熱が、シート状記録媒体の搬送路(9)を搬送される電子ペーパーに及ぶことを遮断する熱遮断手段(8)を、進退自在に設けたことを特徴とする普通紙・電子ペーパー兼用画像形成機。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は普通紙・電子ペーパー兼用画像形成機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、電子ペーパーの普及により、電子ペーパー用画像形成機への需要が増しており、電子ペーパー専用画像形成機は各種開発されている(特許文献1、特許文献2)。また、省スペースかつ多機能で安価なプリンタとして、普通紙・電子ペーパー兼用画像形成機への需要も高まっている。
【0003】
普通紙用画像形成機は、感光体上に保持された静電気的な潜像に、トナーを付着させた後、転写ローラと前記感光体との間に普通紙を当接させて普通紙に潜像を転写し、その後、定着手段が熱と圧力で、普通紙にトナーを定着させる機構を有する。他方、電子ペーパー用画像形成機は、転写ローラと前記感光体との間に電子ペーパーを当接させて、前記感光体上に保持された潜像の静電気的データに基づいて、電子ペーパーの画像形成を行う機構を有する。従って、両画像形成機で、感光体周辺や、印刷媒体搬送部の一部は共用して利用することができる。
【0004】
ここで、電気泳動方式/粒子移動方式の原理を利用する電子ペーパーとは、基板と電極とからなる基材が対向配置された基材層と、基材層間に設けられた帯電着色粒子層とを有している画像形成媒体をいう。前記の対向電極間に電圧を加えると、帯電着色粒子が移動し、電極表面に画像を形成する。印加により形成された画像を、電圧を取り去った後も電極上に安定的に保持するためには、対向電極の各表面に強誘電体層を設ける技術が開示されている(特許文献2、特許文献3)。強誘電体は温度変化に応じて誘電分極を生じる性質を有するため、前記の画像を長期的に安定保持するためには、誘電体層が温度変化の影響を受けないことが必要となる。従って、前記文献には、強誘電体層に更に断熱手段を設ける技術も開示されている(特許文献2)。
また、単色の粒子の移動により色が変化するものに限定されず、2色以上の色にて染色されている粒子を基材間に封入し、その粒子に電圧を印加することで回転させ、電子ペーパー表面に向く色を変化させることで画像を表示させるものでもよい(特許文献4)。
また、上記電子ペーパーの説明においては、基材に電極を備えた画像形成媒体について説明したが、外部画像生成機を用いて画像を形成させる場合には、電極を備えない構成にすることも可能である(特許文献3)。この構成をとることで、光を吸収し、柔軟性が低いITO(酸化インジウム・スズ膜)電極を備えないために、反射率を高くすることや、よりフレキシビリティー性を高くすることが可能であり、また解像度が電極の間隔に依存しないため、高解像度の画像を形成することも可能である。
【0005】
電子ペーパー用基材としては、フレキシビリティーの付与あるいは、薄肉化の観点から、耐熱性には劣る熱可塑性の合成樹脂フィルムが用いられることが一般的である。したがって、前記断熱手段を設けた場合であっても、画像形成機を兼用機とした場合には、普通紙用画像形成機としての必須構成要素である定着手段の発する熱により、電子ペーパーの表面を構成する基材自体を熱損傷し、電子ペーパーの画像形成機能が損なわれてしまう問題があった。
【特許文献1】特開2000−127478号公報
【特許文献2】特開2005−241916号公報
【特許文献3】特開2004−4406号公報
【特許文献4】特開平10−333608号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、普通紙・電子ペーパー兼用画像形成機内で、定着ヒートローラの発熱に起因した、電子ペーパーの表面基材への熱損傷が生じない、普通紙・電子ペーパー兼用画像形成機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するためになされた請求項1に記載の普通紙・電子ペーパー兼用画像形成機は、シート状記録媒体として、普通紙と、一対の基材を備え、その基材間に封入された帯電粒子を有する電子ペーパーとを選択できる画像形成機であって、シート状記録媒体表面に転写される像を、静電気的な潜像として保持する感光体と、感光体上に均一電荷を付与する帯電手段と、前記帯電手段により均一電荷を付与された感光体を露光し、静電気的な潜像を生成する露光手段と、前記シート状記録媒体が普通紙の場合に、前記感光体の静電気的な潜像に付着させたトナーを前記普通紙に当接させてトナーを転写したり、前記シート状記録媒体が電子ペーパーの場合に、前記感光体に前記電子ペーパーを当接させて潜像を転写したりする転写ローラと、前記感光体の静電気的な潜像に付着させたトナーを、熱と圧力によって普通紙に定着させる、対向配置した定着ヒートローラと定着加圧ローラとからなる定着手段と、を有し、前記定着手段は、シート状記録媒体が普通紙である場合には密着し、シート状記録媒体が電子ペーパーである場合にはシート状記録媒体の搬送路から退避して配置され、この前記定着手段の退避によって生じた空間に、シート状記録媒体の搬送路を搬送される電子ペーパーを定着手段の熱から遮断する熱遮断手段を、進退自在に設けたことを特徴とするものである。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1記載の普通紙・電子ペーパー兼用画像形成機において、前記定着手段を構成する定着ヒートローラと定着加圧ローラは、シート状記録媒体が普通紙である場合には密着し、シート状記録媒体が電子ペーパーである場合には離間して配置され、この前記定着手段の離間によって生じた空間に、シート状記録媒体の搬送路を搬送される電子ペーパーを定着手段の熱から遮断する熱遮断手段を、進退自在に設けたことを特徴とするものである。
【0009】
請求項3に記載の発明は、請求項2記載の普通紙・電子ペーパー兼用画像形成機において、熱遮断手段が、相対して電子ペーパーの搬送路の一部を構成する2枚の断熱板を備えたものであり、電子ペーパーの搬送面は、前記2枚の断熱板の中間面よりも定着加圧ローラ側に位置させたものであることを特徴とするものである。
【0010】
請求項4に記載の発明は、請求項3記載の普通紙・電子ペーパー兼用画像形成機において、熱遮断手段が電子ペーパーの搬送路の一部を構成する上下2枚の断熱板を備えたものであり、定着手段は、上側に定着ヒートローラ、下側に定着加圧ローラを備えたものであり、電子ペーパーの搬送面は、前記上下2枚の断熱板の中間面よりも下側に位置させたものであることを特徴とするものである。
【0011】
請求項5に記載の発明は、請求項1または請求項2記載の普通紙・電子ペーパー兼用画像形成機において、シート状記録媒体の搬送路は、普通紙用と電子ペーパー用の、専用及び兼用搬送路から構成され、前記熱遮断手段を、シート状記録媒体が普通紙である場合には、電子ペーパー専用搬送路中に退避させる移動機構を設けたことを特徴とするものである。
【0012】
請求項6に記載の発明は、請求項1または請求項2記載の普通紙・電子ペーパー兼用画像形成機において、熱遮断手段の退避位置に、熱遮断手段を冷却するための空気流路を設けたことを特徴とするものである。
【0013】
請求項7に記載の発明は、請求項1記載の普通紙・電子ペーパー兼用画像形成機において、シート状記録媒体が、普通紙であるか電子ペーパーであるかを入力するための入力手段と、前記入力手段による入力結果が、普通紙の場合には感光体の静電気的な潜像にトナーを付着させ、電子ペーパーの場合には感光体の静電気的な潜像にトナーを付着させないトナー現像制御手段と、前記入力手段による入力結果が、普通紙の場合には定着手段をシート状記録媒体の搬送路上に配置し、電子ペーパーの場合には定着手段をシート状記録媒体の搬送路から退避させて配置する定着手段制御手段と、前記入力手段による入力結果が、電子ペーパーの場合には定着手段をシート状記録媒体の搬送路から退避させることで生じた空間に熱遮断手段を配置する熱遮断手段制御手段とを更に備えたことを特徴とするものである。
【0014】
請求項8に記載の発明は、請求項1記載の普通紙・電子ペーパー兼用画像形成機において
シート状記録媒体が、普通紙であるか電子ペーパーであるかを検出するための媒体検出手段と、
前記検出手段による検出結果が、普通紙の場合には感光体の静電気的な潜像にトナーを付着させ、電子ペーパーの場合には感光体の静電気的な潜像にトナーを付着させないトナー現像制御手段と、前記検出手段による検出結果が、普通紙の場合には定着手段をシート状記録媒体の搬送路上に配置し、電子ペーパーの場合には定着手段をシート状記録媒体の搬送路から退避させて配置する定着手段制御手段と、前記検出手段による検出結果が、電子ペーパーの場合には定着手段をシート状記録媒体の搬送路から退避させることで生じた空間に熱遮断手段を配置する熱遮断手段制御手段とを更に備えたことを特徴とするものである。
【0015】
請求項9に記載の発明は、請求項2から請求項6のいずれか1項に記載の普通紙・電子ペーパー兼用印刷機において、シート状記録媒体が、普通紙であるか電子ペーパーであるかを入力するための入力手段と、前記入力手段による入力結果が普通紙の場合には感光体の静電気的な潜像にトナーを付着させ、電子ペーパーの場合には感光体の静電気的な潜像にトナーを付着させないトナー現像制御手段と、前記入力手段による入力結果が普通紙の場合には定着ヒートローラと定着加圧ローラとを密着させて配置し、電子ペーパーの場合には定着ヒートローラと定着加圧ローラとを離間して配置する定着手段制御手段と、前記入力手段による入力結果が電子ペーパーの場合には定着ヒートローラと定着加圧ローラとを離間して生じた空間に熱遮断手段を配置する熱遮断手段制御手段とを更に備えたことを特徴とするものである。
【0016】
請求項10に記載の発明は請求項2から請求項6のいずれか1項に記載の普通紙・電子ペーパー兼用画像形成機において、シート状記録媒体が、普通紙であるか電子ペーパーであるかを検出するための媒体検出手段と、前記検出手段による検出結果が普通紙の場合には感光体の静電気的な潜像にトナーを付着させ、電子ペーパーの場合には感光体の静電気的な潜像にトナーを付着させないトナー現像制御手段と、前記検出手段による検出結果が普通紙の場合には定着ヒートローラと定着加圧ローラとを密着させて配置し、電子ペーパーの場合には定着ヒートローラと定着加圧ローラとを離間して配置する定着手段制御手段と、前記検出手段による検出結果が電子ペーパーの場合には定着ヒートローラと定着加圧ローラとを離間して生じた空間に熱遮断手段を配置する熱遮断手段制御手段とを更に備えたことを特徴とするものである
【発明の効果】
【0017】
上記課題を解決するためになされた請求項1の普通紙・電子ペーパー兼用画像形成機は、シート状記録媒体表面に転写される像を、静電気的な潜像として保持する感光体と、感光体上に均一電荷を付与する帯電手段と、前記帯電手段により均一電荷を付与された感光体を露光し、静電気的な潜像を生成する露光手段と、前記シート状記録媒体が普通紙の場合に、前記感光体の静電気的な潜像に付着させたトナーを前記普通紙に当接させてトナーを転写したり、前記シート状記録媒体が電子ペーパーの場合に、前記感光体に前記電子ペーパーを当接させて潜像を転写したりする転写ローラと、前記感光体の静電気的な潜像に付着させたトナーを、熱と圧力によって普通紙に定着させる、対向配置した定着ヒートローラと定着圧力ローラとからなる定着手段とを有する機構により、普通紙への画像形成を行い、同時に、前記感光体と、前記帯電手段と、前記露光手段と、前記転写ローラとを有する機構により、電子ペーパーへの画像形成を行うため、兼用画像形成機の感光体と、帯電手段と、露光手段と、転写ローラと、搬送路の一部を共通に使用でき、省スペースの兼用画像形成機が実現可能となる。
【0018】
更に、前記定着手段は、シート状記録媒体が電子ペーパーである場合にはシート状記録媒体の搬送路から退避して配置され、この退避によって生じた空間に、シート状記録媒体の搬送路を搬送される電子ペーパーを定着手段の熱から遮断する熱遮断手段を、進退自在に設けたことを特徴とする請求項1の普通紙・電子ペーパー兼用画像形成機によれば、普通紙・電子ペーパー兼用画像形成機内で、定着ヒートローラの発熱に起因した、電子ペーパーの表面基材への熱損傷を回避することが可能となる。
【0019】
したがって、請求項1に記載の発明によれば、普通紙・電子ペーパー兼用画像形成機内で、定着ヒートローラの発熱に起因した、電子ペーパーの表面基材への熱損傷が生じない、普通紙・電子ペーパー兼用画像形成機であって、かつ兼用画像形成機内の大部分の構成を共有することで小型化された、兼用画像形成機を提供できる。
【0020】
請求項2に記載の発明では、請求項1記載の普通紙・電子ペーパー兼用画像形成機において、前記定着手段を構成する定着ヒートローラと定着加圧ローラは、シート状記録媒体が普通紙である場合には密着し、シート状記録媒体が電子ペーパーである場合には離間して配置され、
この前記定着手段の離間によって生じた空間に、シート状記録媒体の搬送路を搬送される電子ペーパーを定着手段の熱から遮断する熱遮断手段を、進退自在に設けたことにより、前記定着手段の退避空間が不要となり、請求項1の普通紙・電子ペーパー兼用画像形成機よりも更に小型化された、兼用画像形成機を提供できる。
【0021】
請求項3に記載の発明では、請求項2記載の普通紙・電子ペーパー兼用画像形成機において、熱遮断手段が、相対して電子ペーパーの搬送路の一部を構成する2枚の断熱板を備えたものであり、電子ペーパーの搬送面は、前記2枚の断熱板の中間面よりも定着圧力ローラ側に位置させたものとすることにより、定着ヒートローラの発熱の影響を、更に減ずることが可能となる。
【0022】
請求項4に記載の発明では、請求項3記載の普通紙・電子ペーパー兼用画像形成機において、熱遮断手段が電子ペーパーの搬送路の一部を構成する上下2枚の断熱板を備えたものであり、定着手段は、上側に定着ヒートローラ、下側に定着圧力ローラを備えたものであり、電子ペーパーの搬送面は、前記上下2枚の断熱板の中間面よりも下側に位置させたものとすることにより、搬送中に、重力に従って断熱板の下側に下垂する電子ペーパーに対する、定着ヒートローラの発熱の影響を最小限に抑えることが可能となる。
【0023】
請求項5に記載の発明では、請求項1または請求項2記載の普通紙・電子ペーパー兼用画像形成機において、シート状記録媒体の搬送路は、普通紙用と電子ペーパー用の、専用及び兼用搬送路から構成され、前記熱遮断手段を、シート状記録媒体が普通紙である場合には、電子ペーパー専用搬送路中に退避させる移動機構を設けることにより、シート状記録媒体が普通紙である場合に、普通紙と電子ペーパー専用搬送路との摩擦で、熱定着される前のトナーが剥離してしまう問題が回避できる。
【0024】
請求項6に記載の発明では、請求項1または請求項2記載の普通紙・電子ペーパー兼用画像形成機において、熱遮断手段の退避位置に、熱遮断手段を冷却するための排熱口を設けることにより、シート状記録媒体が普通紙である場合に、使用されず退避している電子ペーパー用熱遮断手段を、冷却し、次回の使用時の熱遮断効果を高めることが可能となる。
【0025】
請求項7に記載の発明では、請求項1に記載の普通紙・電子ペーパー兼用画像形成機において、シート状記録媒体が、普通紙であるか電子ペーパーであるかを入力するための入力手段を設け、また、請求項9に記載の発明では、請求項2から請求項6のいずれか1項に記載の普通紙・電子ペーパー兼用画像形成機において、シート状記録媒体が、普通紙であるか電子ペーパーであるかを入力するための入力手段を設け、前記入力手段による入力結果に応じて、トナー現像制御と定着手段制御と熱遮断手段制御を行っている。従って、請求項7または請求項9に記載の発明によれば、シート状記録媒体を選択する簡易な入力操作により、普通紙・電子ペーパー兼用画像形成機の媒体変更に対応したトナー現像制御と定着手段制御と熱遮断手段制御を同時に行うことが可能となる。
【0026】
請求項8に記載の発明では、請求項1に記載の普通紙・電子ペーパー兼用画像形成機において、シート状記録媒体が、普通紙であるか電子ペーパーであるかを検出するための媒体検出手段を設け、また、請求項10に記載の発明では、請求項2から請求項6のいずれか1項に記載の普通紙・電子ペーパー兼用画像形成機において、シート状記録媒体が、普通紙であるか電子ペーパーであるかを検出するための媒体検出手段を設け、前記検出手段による検出結果に応じて、トナー現像制御と定着手段制御と熱遮断手段制御を行っている。従って、請求項8または請求項10に記載の発明によれば、シート状記録媒体が普通紙であるか電子ペーパーであるかを自動検出して、媒体変更に対応したトナー現像制御と定着手段制御と熱遮断手段制御を同時に行うことが可能となり、利便性が向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
図1に、電子ペーパー使用時における本発明の実施の一形態を示し、以下、詳細に説明する。図1には、シート状記録媒体が電子ペーパーである場合の、本発明の普通紙・電子ペーパー兼用画像形成機が示されている。なお、図4に本発明の普通紙・電子ペーパー兼用画像形成機の各制御機構のブロック図を示し、図5に本発明の兼用画像形成機内の媒体搬送路の概略図を示している。
【0028】
[電子ペーパー使用時における普通紙・電子ペーパー兼用画像形成機の内部構造]
図1に示すように、本発明の実施の一形態である画像形成機13は、感光体1、帯電手段2、露光手段3、定着手段7、熱遮断手段8を備えている。前記定着手段7は定着ヒートローラ5と定着加圧ローラ6とで構成されている。更に、本発明の実施の一形態である画像形成機13は、普通紙であるか電子ペーパーであるかを検出するための媒体検出手段12と、前記検出結果が電子ペーパーの場合には、感光体の静電気的な潜像にトナーを付着させないトナー現像制御手段20とを備えている。なお、トナー現像制御手段20は図1には示されていないが、図4に示すように、前記媒体検出手段12の送信する信号を受信して、信号に基づいて現像ローラ14と感光体1との間隔を制御する信号を作成送信するものであり、画像形成機13内部に設けてもよいし、外部接続したPC等に設けてもよい。
【0029】
媒体検出手段12としては、例えば、赤外線の透過式センサーを用いた検出手段であって、普通紙の場合には赤外線が透過し、電子ペーパーの場合には赤外線が透過しないこと、もしくは赤外線を透過しないような部位を備えるようにすることを利用した検出手段がある。また、媒体検出手段12は、ユーザーが、普通紙であるか電子ペーパーであるかを入力するための媒体入力手段としてもよい。さらにはホスト側からの指令によるものでもよい。
【0030】
熱遮断手段8は、移動機構10を備えて進退自在に設けられており、本実施形態では、図5に示す電子ペーパー・普通紙兼用搬送路9aの一部であって、定着ヒートローラ5と定着加圧ローラ6とが離間して生じた空間に配置されている。また、この熱遮断手段8は、相対して、電子ペーパーの搬送路9aの一部を構成する2枚の断熱板8a、8bを備えたものであり、熱遮断手段8内部の電子ペーパーの搬送面は、前記2枚の断熱板の中間面よりも定着加圧ローラ6側に位置させている。この構造により、電子ペーパーに対する、定着ヒートローラ5からの放熱の影響をより少なくすることができる。
【0031】
なお、一定気圧下において、気体が暖まると、気体密度の低下が生じ、暖まった気体は上昇するため、定着ヒートローラ5からの放熱の影響は、定着ヒートローラ5の上側においてより大きくなる。したがって、定着ヒートローラ5が電子ペーパーに及ぼす、放熱の影響をより小さくするためには、電子ペーパーの搬送面を、前記2枚の断熱板8a、8bの中間面よりも定着加圧ローラ6側に位置させることが好ましい。本実施形態では、熱遮断手段8の上側に定着ヒートローラ5、下側に定着加圧ローラ6を備える構成とし、電子ペーパーの搬送面を、前記上下2枚の断熱板8a、8bの中間面よりも下側に位置させている。
【0032】
前記の熱遮断手段8を所定位置に配置するために、定着ヒートローラ5と定着加圧ローラ6とは、定着手段制御手段21によって制御される。具体的には、本実施形態では、シート状記録媒体が電子ペーパーであるため、定着ヒートローラ5と定着加圧ローラ6間を離間する制御がなされている。当該定着手段制御手段21は、前記の媒体検出手段12または媒体入力手段からの指示により制御される。なお、定着手段制御手段21は図1には示されていないが、図4に示すように、前記媒体検出手段12の送信する信号を受信して、信号に基づいて定着手段7を制御する信号を作成送信するものであり、画像形成機13内部に設けてもよいし、外部接続したPC等に設けてもよい。
【0033】
[電子ペーパー使用時における普通紙・電子ペーパー兼用画像形成機の動作]
図4は、本発明の普通紙・電子ペーパー兼用画像形成機で行われる各制御機構のブロック図を示している。媒体検出手段12による媒体検出結果が電子ペーパーの場合には、図4に示すように、媒体検出手段12は、トナー現像制御手段20、定着手段制御手段21及び熱遮断手段制御手段22に対して、媒体が電子ペーパーであることを示す信号を送る。信号としては、例えば、媒体に赤外線センサーを照射して反射光を検出し、その光量を信号化したものがある。当該信号に従って、トナー現像制御手段20は現像ローラ14を退避させ現像ローラ14と感光体1との間を離間させる制御を行い、定着手段制御手段21は、定着ヒートローラ5と定着加圧ローラ6とを離間させる制御を行い、熱遮断手段制御手段22は、熱遮断手段8を所定位置に移動させる制御を行う。
【0034】
なお、トナー現像制御手段20のトナー現像制御方法は、トナー供給の停止や、現像ローラ駆動の停止等にすることも可能であり、定着手段制御手段21の定着手段制御方法は、定着ヒートローラ5と定着加圧ローラ6とを密着させたまま共に移動させて、熱遮断手段8配置のための所定の空間形成を行うこと等にすることも可能である。
【0035】
帯電手段2と露光手段3とにより、感光体1上に生成保持された静電気的な潜像は、転写ローラ4に印加することで、電子ペーパー上に画像として転写される。この際、前記定着手段制御の結果、現像ローラ14と感光体1との間は離間しているため、感光体1にトナーが供給されてしまうことはない。
【0036】
画像形成後の電子ペーパーは、熱遮断手段8へと搬送されるため、シート状記録媒体が普通紙の場合に用いられる画像定着手段7の発熱に起因した、電子ペーパーの表面基材への熱損傷を防ぐことができる。
【0037】
図2に、普通紙使用時における本発明の実施の一形態を示し、以下、詳細に説明する。図2には、シート状記録媒体が普通紙である場合の、本発明の普通紙・電子ペーパー兼用画像形成機が示されている。
【0038】
[普通紙使用時における普通紙・電子ペーパー兼用画像形成機の内部構造]
図2に示すように、本発明の実施の画像形成機13は、図1に示した画像形成機と同様に、感光体1、帯電手段2、露光手段3、転写ローラ4、定着手段7、熱遮断手段8、媒体検出手段12を備えている。
【0039】
シート状記録媒体が普通紙である本実施形態では、定着ヒートローラ5と定着加圧ローラ6とは密着して配置されており、熱遮断手段8は、図5に示す電子ペーパー専用搬送路9bに配置されている。なお、熱遮断手段8の退避位置は、定着ヒートローラ5と定着加圧ローラ6とが密着できるように、両ローラ間から退避すればよく、例えば、図3に示す実施形態のように、普通紙・電子ペーパー兼用搬送路9a内で上流側にシフトさせてもよい。
【0040】
[普通紙使用時における普通紙・電子ペーパー兼用画像形成機の動作]
媒体検出手段12による媒体検出結果が普通紙の場合には、図4に示すように、媒体検出手段12は、トナー現像制御手段20、定着手段制御手段21及び熱遮断手段制御手段22に対して、媒体が普通紙であることを示すの信号を送る。当該信号に従って、トナー現像制御手段20は現像ローラ14を退避させ現像ローラ14と感光体1との間を密着させる制御を行い、定着手段制御手段21は、定着ヒートローラ5と定着加圧ローラ6とを密着させる制御を行い、熱遮断手段制御手段22は、熱遮断手段8を所定位置に移動させる制御を行う。
【0041】
シート状記録媒体が普通紙の場合には、帯電手段2と露光手段3とにより、感光体1上に生成保持された静電気的な潜像上には、トナー現像制御手段20によりトナーが付着されトナー像が形成される。更に印加された転写ローラ4によって、トナー像が普通紙に転写される。
【0042】
トナー像が転写された普通紙は、定着手段7へ搬送され、定着ヒートローラ5と定着加圧ローラ6により熱定着される。熱定着される前のトナー像は、不安定であって、トナー付着面への摩擦等により画像が崩れてしまう。したがって、トナー付着面と、熱遮断手段8との接触を回避するため、シート状記録媒体が電子ペーパーの場合に用いられる熱遮断手段8の退避位置は、図5に示す電子ペーパー専用搬送路9b内とすることが好ましい。ただし、図3の実施形態に示すように、図5に示す普通紙・電子ペーパー兼用搬送路9a内で上流側にシフトさせた場合であっても、媒体搬送面を、熱遮断手段8を構成する上下2枚の断熱板8a、8bの中間面よりも下側に位置させることにより、トナー付着面と熱遮断手段8との摩擦による画像崩壊は回避可能である。
【0043】
なお、熱遮断手段8の退避位置に、熱遮断手段を冷却するための空気流路11を設けることにより、シート状記録媒体が普通紙の場合である間に、熱遮断手段8に蓄積した熱を効率良く発散させ、次にシート状記録媒体が電子ペーパーに変更された際の熱遮断効率を上昇させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】電子ペーパー使用時における画像形成機の概略構成図である。
【図2】普通紙使用時における画像形成機の概略構成図である。
【図3】普通紙使用時における画像形成機の概略構成図である。
【図4】各制御機構のブロック図である。
【図5】搬送路の概略図である。
【符号の説明】
【0045】
1 感光体
2 帯電手段
3 露光手段
4 転写ローラ
5 定着ヒートローラ
6 定着加圧ローラ
7 定着手段
8 熱遮断手段
8a 断熱板
8b 断熱板
9 搬送路
9a 普通紙・電子ペーパー兼用搬送路
9b 電子ペーパー専用搬送路
9c 普通紙専用搬送路
10 熱遮断手段移動機構
11 空気流路
12 媒体検出手段
13 普通紙・電子ペーパー兼用画像形成機
14 現像ローラ
20 トナー現像制御手段
21 定着手段制御手段
22 熱遮断手段制御手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート状記録媒体として、普通紙と、
一対の基材を備え、その基材間に封入された帯電粒子を有する電子ペーパーと、
を選択できる画像形成機であって、
シート状記録媒体表面に転写される像を、静電気的な潜像として保持する感光体と、
感光体上に均一電荷を付与する帯電手段と、
前記帯電手段により均一電荷を付与された感光体を露光し、静電気的な潜像を生成する露光手段と、
前記シート状記録媒体が普通紙の場合に、前記感光体の静電気的な潜像に付着させたトナーを前記普通紙に当接させてトナーを転写したり、前記シート状記録媒体が電子ペーパーの場合に、前記感光体に前記電子ペーパーを当接させて潜像を転写したりする転写ローラと、
前記感光体の静電気的な潜像に付着させたトナーを、熱と圧力によって普通紙に定着させる、対向配置した定着ヒートローラと定着加圧ローラとからなる定着手段と、
を有し、
前記定着手段は、シート状記録媒体が電子ペーパーである場合にはシート状記録媒体の搬送路から退避して配置され、
この前記定着手段の退避によって生じた空間に、シート状記録媒体の搬送路を搬送される電子ペーパーを定着手段の熱から遮断する熱遮断手段を、進退自在に設けたことを特徴とする普通紙・電子ペーパー兼用画像形成機。
【請求項2】
前記定着手段を構成する定着ヒートローラと定着加圧ローラは、シート状記録媒体が普通紙である場合には密着し、シート状記録媒体が電子ペーパーである場合には離間して配置され、
この前記定着手段の離間によって生じた空間に、シート状記録媒体の搬送路を搬送される電子ペーパーを定着手段の熱から遮断する熱遮断手段を、進退自在に設けたことを特徴とする請求項1記載の普通紙・電子ペーパー兼用画像形成機。
【請求項3】
熱遮断手段が、相対して電子ペーパーの搬送路の一部を構成する2枚の断熱板を備えたものであり、電子ペーパーの搬送面は、前記2枚の断熱板の中間面よりも定着加圧ローラ側に位置させたものであることを特徴とする請求項2記載の普通紙・電子ペーパー兼用画像形成機。
【請求項4】
熱遮断手段が電子ペーパーの搬送路の一部を構成する上下2枚の断熱板を備えたものであり、
定着手段は、上側に定着ヒートローラ、下側に定着加圧ローラを備えたものであり、電子ペーパーの搬送面は、前記上下2枚の断熱板の中間面よりも下側に位置させたものであることを特徴とする請求項3記載の普通紙・電子ペーパー兼用画像形成機。
【請求項5】
シート状記録媒体の搬送路は、普通紙用と電子ペーパー用の、専用及び兼用搬送路から構成され、
前記熱遮断手段を、シート状記録媒体が普通紙である場合には、電子ペーパー専用搬送路中に退避させる移動機構を設けたことを特徴とする請求項1または2記載の普通紙・電子ペーパー兼用画像形成機。
【請求項6】
熱遮断手段の退避位置に、熱遮断手段を冷却するための空気流路を設けたことを特徴とする請求項1または2記載の普通紙・電子ペーパー兼用画像形成機。
【請求項7】
シート状記録媒体が、普通紙であるか電子ペーパーであるかを入力するための入力手段と、
前記入力手段による入力結果が、普通紙の場合には感光体の静電気的な潜像にトナーを付着させ、電子ペーパーの場合には感光体の静電気的な潜像にトナーを付着させないトナー現像制御手段と、
前記入力手段による入力結果が、普通紙の場合には定着手段をシート状記録媒体の搬送路上に配置し、電子ペーパーの場合には定着手段をシート状記録媒体の搬送路から退避させて配置する定着手段制御手段と、
前記入力手段による入力結果が、電子ペーパーの場合には定着手段をシート状記録媒体の搬送路から退避させることで生じた空間に熱遮断手段を配置する熱遮断手段制御手段と、
を更に備えたことを特徴とする請求項1記載の普通紙・電子ペーパー兼用画像形成機。
【請求項8】
シート状記録媒体が、普通紙であるか電子ペーパーであるかを検出するための媒体検出手段と、
前記検出手段による検出結果が、普通紙の場合には感光体の静電気的な潜像にトナーを付着させ、電子ペーパーの場合には感光体の静電気的な潜像にトナーを付着させないトナー現像制御手段と、
前記検出手段による検出結果が、普通紙の場合には定着手段をシート状記録媒体の搬送路上に配置し、電子ペーパーの場合には定着手段をシート状記録媒体の搬送路から退避させて配置する定着手段制御手段と、
前記検出手段による検出結果が、電子ペーパーの場合には定着手段をシート状記録媒体の搬送路から退避させることで生じた空間に熱遮断手段を配置する熱遮断手段制御手段と、
を更に備えたことを特徴とする請求項1記載の普通紙・電子ペーパー兼用画像形成機。
【請求項9】
シート状記録媒体が、普通紙であるか電子ペーパーであるかを入力するための入力手段と、
前記入力手段による入力結果が、普通紙の場合には感光体の静電気的な潜像にトナーを付着させ、電子ペーパーの場合には感光体の静電気的な潜像にトナーを付着させないトナー現像制御手段と、
前記入力手段による入力結果が、普通紙の場合には定着ヒートローラと定着加圧ローラとを密着させて配置し、電子ペーパーの場合には定着ヒートローラと定着加圧ローラとを離間して配置する定着手段制御手段と、
前記入力手段による入力結果が電子ペーパーの場合には定着ヒートローラと定着加圧ローラとを離間して生じた空間に熱遮断手段を配置する熱遮断手段制御手段と
を更に備えたことを特徴とする請求項2から請求項6のいずれか1項に記載の普通紙・電子ペーパー兼用画像形成機。
【請求項10】
シート状記録媒体が、普通紙であるか電子ペーパーであるかを検出するための媒体検出手段と、
前記検出手段による検出結果が、普通紙の場合には感光体の静電気的な潜像にトナーを付着させ、電子ペーパーの場合には感光体の静電気的な潜像にトナーを付着させないトナー現像制御手段と、
前記検出手段による検出結果が、普通紙の場合には定着ヒートローラと定着加圧ローラとを密着させて配置し、電子ペーパーの場合には定着ヒートローラと定着加圧ローラとを離間して配置する定着手段制御手段と、
前記検出手段による検出結果が、電子ペーパーの場合には定着ヒートローラと定着加圧ローラとを離間して生じた空間に熱遮断手段を配置する熱遮断手段制御手段と、
を更に備えたことを特徴とする請求項2から請求項6のいずれか1項に記載の普通紙・電子ペーパー兼用画像形成機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−251072(P2009−251072A)
【公開日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−95672(P2008−95672)
【出願日】平成20年4月2日(2008.4.2)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】